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特許7414242配管ユニット、作業用台車、及び、施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】配管ユニット、作業用台車、及び、施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04F 17/08 20060101AFI20240109BHJP
   E04G 21/14 20060101ALI20240109BHJP
   F16L 3/00 20060101ALI20240109BHJP
   F16L 3/22 20060101ALI20240109BHJP
   F16L 5/00 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
E04F17/08 Z
E04G21/14
F16L3/00 H
F16L3/22 B
F16L5/00 P
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022064938
(22)【出願日】2022-04-11
(65)【公開番号】P2023155550
(43)【公開日】2023-10-23
【審査請求日】2022-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000191319
【氏名又は名称】新菱冷熱工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】398034319
【氏名又は名称】エヌパット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117651
【弁理士】
【氏名又は名称】高垣 泰志
(72)【発明者】
【氏名】中尾 祥太
(72)【発明者】
【氏名】千葉 直樹
(72)【発明者】
【氏名】浜野 明大
(72)【発明者】
【氏名】生野 真
(72)【発明者】
【氏名】石川 将司
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-062874(JP,A)
【文献】特開平11-218260(JP,A)
【文献】実開平02-018988(JP,U)
【文献】特開平05-179808(JP,A)
【文献】特開2013-139828(JP,A)
【文献】特開2003-320051(JP,A)
【文献】特開2016-056855(JP,A)
【文献】特許第7296073(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 17/08
E04G 21/14
F16L 1/00
F16L 3/00
F16L 3/22
F16L 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物において複数フロアに渡る縦方向の配管をフロアごとに設置する配管ユニットであって、
複数の配管を保持し、設置対象フロアの床スラブに形成された開口の内側を下降させることにより前記床スラブに設置可能な架台を備え、
前記架台は、
設置対象フロアの床スラブに形成された開口に挿入可能なベース部と、
前記ベース部から下方に延びる支持部と、
を備え、
前記ベース部の内側には複数の配管が設置可能であり、前記ベース部が前記複数の配管の上部を保持すると共に、前記支持部が前記複数の配管の下部を保持し、
前記ベース部の周囲に前記開口の周縁部に当接するフランジ部を設けており、
前記ベース部は、前記開口を閉塞するように設置され、前記複数の配管の隙間に充填された不燃材により防火処理が施されていることを特徴とする配管ユニット。
【請求項2】
前記複数の配管のそれぞれには、室内機と室外機とを電気的に接続する電気ケーブルが付設されることを特徴とする請求項に記載の配管ユニット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の配管ユニットを設置対象フロアに設置する際に使用する作業用台車であって、
前記配管ユニットを挟み込むように配置可能であり、下面にキャスターが取り付けられた台車本体と、
前記台車本体の上面側に互いに対向するように配置される一対の揚重手段と、
を備え、
前記一対の揚重手段が前記配管ユニットを持ち上げた状態で前記台車本体を移動させることにより前記配管ユニットを前記設置対象フロアの床スラブに形成された開口の上方位置へ移動させることが可能であると共に、前記配管ユニットを前記開口の上方位置へ移動させた後には、前記一対の揚重手段が前記配管ユニットを前記開口の内側に下降させることにより、前記開口の周縁部に前記フランジ部を当接させた状態に設置可能としたことを特徴とする作業用台車。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の配管ユニットを設置する施工方法であって、
前記配管ユニットを横倒し姿勢にして設置対象フロアへの搬入する工程と、
前記配管ユニットを前記横倒し姿勢から起立姿勢に姿勢変化させる工程と、
前記配管ユニットを前記起立姿勢で持ち上げ、前記配管ユニットを前記設置対象フロアの床スラブに形成された開口の上方位置へ移動させる工程と、
前記配管ユニットを、前記開口の上方位置から下降させることにより、前記開口の周縁部に前記フランジ部を当接させた状態に設置する工程と、
を有することを特徴とする施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物においてフロアごとに設置される配管ユニット、その施工に用いられる作業用台車、及び、配管ユニットの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数フロアを有する建築物では、空調用の室外機が屋上に設置され、その室外機と各フロアに設置される空気調和機(例えば室内機)との間を接続するための配管(竪配管)が複数フロアに渡って縦方向に設置される。従来、この種の配管の施工方法として、ライザーユニット工法が知られている(例えば、特許文献1,2)。ライザーユニット工法とは、工場において複数フロア分の長さに加工された複数の配管を集約してユニット化し、そのユニット化された配管を建築物の施工現場にトラックにて搬送し、施工現場でユニット化された配管をクレーンで吊り上げ、躯体工事中の建築物の内部に吊り降ろして据え付ける工法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-139828号公報
【文献】特開平11-223009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の施工方法は、工事中の建築現場に設置されたクレーンを使用するため、多数の作業員が必要であると共に、配管の据え付けに手間取るなどして工程が遅延すると、建築工事全体に影響を与えるという問題がある。
【0005】
また、従来の施工方法は、複数フロア分の長さを有する配管をクレーンで吊り降ろして所定高さ位置に据え付ける際には、クレーンによる微妙な高さ調整を行わなければならず、作業効率が著しく悪いという問題もある。例えば、特許文献1の配管ユニットは、建築物の躯体に形成された開口に係合させる一対の取付部材を有している。一対の取付部材は、開口の幅よりも側方に突出しない第1の位置と、開口の幅よりも側方に突出する第2の位置との間で移動する可動部を有している。配管ユニットをクレーンで吊り上げて開口に吊り降ろしていく際には、可動部を第1の位置に仮固定しておき、一対の取付部材が開口に対して所定の高さ位置に達したときに可動部の仮固定を解除し、第1の位置から第2の位置へ移動させることにより、配管ユニットを開口周縁上部に係止させるようにしている。しかし、クレーンで配管ユニットを吊り降ろす際に、一対の取付部材が開口に対して所定高さ位置となるように微妙な高さ調整を行うことが必要であり、作業効率が悪い。
【0006】
そこで、本発明は、クレーンを用いることなく、従来よりも小人数の作業員でフロアごとに設置していくことを可能にした配管ユニット、その施工に用いられる作業用台車、及び、配管ユニットの施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、第1に、本発明は、建築物において複数フロアに渡る縦方向の配管をフロアごとに設置する配管ユニットであって、複数の配管を保持し、設置対象フロアの床スラブに形成された開口の内側を下降させることにより前記床スラブに設置可能な架台を備え、前記架台は、設置対象フロアの床スラブに形成された開口に挿入可能な矩形状のベース部と、前記ベース部の四隅から下方に延びる支持部と、を備え、前記ベース部の内側には複数の配管が設置可能であり、前記ベース部が前記複数の配管の上部を保持すると共に、前記支持部が前記複数の配管の下部を保持し、前記ベース部の周囲に前記開口の周縁部に当接するフランジ部を設けており、前記ベース部は、前記開口を閉塞するように設置され、前記複数の配管の隙間に充填された不燃材により防火処理が施されていることを特徴とする構成である。
【0010】
に、本発明は、上記第1の構成を有する配管ユニットにおいて、前記複数の配管のそれぞれには、室内機と室外機とを電気的に接続する電気ケーブルが付設されることを特徴とする構成である。
【0011】
に、本発明は、請求項1又は2に記載の配管ユニットを設置対象フロアに設置する際に使用する作業用台車であって、前記配管ユニットを挟み込むように配置可能であり、下面にキャスターが取り付けられた台車本体と、前記台車本体の上面側に互いに対向するように配置される一対の揚重手段と、を備え、前記一対の揚重手段が前記配管ユニットを持ち上げた状態で前記台車本体を移動させることにより前記配管ユニットを前記設置対象フロアの床スラブに形成された開口の上方位置へ移動させることが可能であると共に、前記配管ユニットを前記開口の上方位置へ移動させた後には、前記一対の揚重手段が前記配管ユニットを前記開口の内側に下降させることにより、前記開口の周縁部に前記フランジ部を当接させた状態に設置可能としたことを特徴とする構成である。
【0012】
に、本発明は、請求項1又は2に記載の配管ユニットを設置する施工方法であって、前記配管ユニットを横倒し姿勢にして設置対象フロアへの搬入する工程と、前記配管ユニットを前記横倒し姿勢から起立姿勢に姿勢変化させる工程と、前記配管ユニットを前記起立姿勢で持ち上げ、前記配管ユニットを前記設置対象フロアの床スラブに形成された開口の上方位置へ移動させる工程と、前記配管ユニットを、前記開口の上方位置から下降させることにより、前記開口の周縁部に前記フランジ部を当接させた状態に設置する工程と、を有することを特徴とする構成である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、建築現場のクレーンを用いることなく、従来よりも小人数の作業員でフロアごとに配管ユニットを設置していくことが可能であり、低コストで効率的に配管ユニットを設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】配管ユニットの一構成例を示す斜視図である。
図2】架台を示す斜視図である。
図3】ベース部の内部構造を示す図である。
図4】架台に設置される配管の構成例を示す図である。
図5】配管ユニットの施工方法の概念を示す図である。
図6】配管ユニットに第1施工具及び第2施工具を取り付けた例を示す図である。
図7】配管ユニットを施工する際に使用される作業用台車の一例を示す図である。
図8】設置対象フロアに配管ユニットを搬入する例を示す図である。
図9】配管ユニットに作業用台車を組み付ける例を示す図である。
図10】配管ユニットを持ち上げた状態を示す図である。
図11】配管ユニットを横倒し姿勢から起立姿勢に姿勢変化させる例を示す図である。
図12】配管ユニットを床スラブの開口の上方位置へ移動させる例を示す図である。
図13】補助部材を取り付けた例を示す図である。
図14】配管ユニットを床スラブの開口の上方位置へ移動させた例を示す図である。
図15】第1施工具が配管ユニットを支持している状態を示す図である。
図16】配管ユニットに第2施工具を取り付けた状態を例示する図である。
図17】配管ユニットから第1施工具を取り外した状態を例示する図である。
図18】配管ユニットを床スラブの開口に設置した状態を例示する図である。
図19】下階フロアの床スラブに配管ユニットを設置した後、上階フロアの床スラブに配管ユニットを設置した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下において参照する各図面では互いに共通する部材に同一符号を付しており、それらについての重複する説明は省略する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態における配管ユニット1を示す斜視図である。この配管ユニット1は、建築物の複数フロアに渡って縦方向に配置される複数の配管(竪配管)を集約したユニットであり、複数の配管をフロアごとに設置可能としたものである。例えば、この配管ユニット1は、新築工事中の建築物において下階フロアから上階フロアに向かって1フロアずつ順に設置可能とされている。
【0017】
この配管ユニット1は、山形鋼や溝形鋼などの複数の鋼材を溶接等によって直方体状に組み付けて形成される架台2と、その架台2に取り付けられ、架台2に保持される複数の配管10とを備えている。架台2は、上部に設けられる箱形のベース部3と、ベース部3の下面四隅から下方に延びる支持部4とを備えた耐震架台として構成される。複数の配管10は、架台2の内側において所定間隔を隔てた状態で縦方向(鉛直方向)に配置され、ベース部3の上面及び下面を貫通するように設置される。これら複数の配管10は、上部がベース部3に固定され、下部が支持部4に固定される。
【0018】
図2は、架台2を示す斜視図である。ベース部3は、その上面側に複数の孔27が形成された上板25を有する。また、ベース部3は、下面側にも、上板25と同じ位置に複数の孔27が形成された下板26を有している。複数の配管10は、上板25と下板26に形成された複数の孔27に挿通され、ベース部3の内側を上下に貫通するように設置される。
【0019】
また、ベース部3の周囲側面には、水平方向に突出するフランジ部21が形成されている。このフランジ部21は、複数フロアのうちの設置対象フロアにおいて躯体(床スラブなど)に形成される開口110(図5参照)の周縁部よりも更に外側に突出するように形成される。また、フランジ部21は、ベース部3に対して一体形成されており、配管ユニット1の全重量を支持できるように十分な強度を有している。
【0020】
ベース部3の上板25の左右両側には、例えば溝形鋼で形成された一対の支持壁5,5が所定間隔を隔てて立設している。これら一対の支持壁5,5の上端には、上板25の上方位置を左右方向に横断する複数の取付金具8が取り付けられる。取付金具8は、配管10の上部をベース部3に固定するための金具であり、例えば断面L形のアングル材によって構成される。複数の取付金具8のそれぞれには、U字状の配管バンド9(図1参照)を取り付けるための複数の孔8aが形成されている。上板25の孔27から上方に突出する配管10の上部を配管バンド9で拘束し、配管バンド9の両端をボルトとナットで孔8aに固定することにより、配管10の上部がベース部3に固定される。
【0021】
支持部4は、ベース部3の下面四隅から下方に延びる複数の支柱6を有している。複数の支柱6は、例えば、架台2の前方左右両側に配置される支柱6a,6bと、架台2の後方左右両側に配置される支柱6b,6cとを有する。また、支持部4は、架台2の左右両側の下部において前後方向に延びる連結部7,7を有している。これら連結部7,7は、架台2の左側前後2箇所に配置される支柱6a,6cの下端を相互に連結すると共に、架台2の右側前後2箇所に配置される支柱6b,6dの下端を相互に連結する。つまり、連結部7,7は、支持部4の下端において互いに平行な状態に配置される。そして連結部7,7の上面側には、ベース部3の下方位置を左右方向に横断する複数の取付金具8が取り付けられる。これら複数の取付金具8は、ベース部3に取り付けられる上述した取付金具8と同様であり、配管10の下部を支持部4に固定するための金具である。すなわち、一対の連結部7,7間を横断する複数の取付金具8のそれぞれには、U字状の配管バンド9(図1参照)を取り付けるための複数の孔8aが形成されている。そしてベース部3から下方に延びる配管10の下部を配管バンド9で拘束し、配管バンド9の両端をボルトとナットで孔8aに固定することにより、配管10の下部が支持部4に固定される。
【0022】
また、支持部4には、支柱6の所定高さ位置に、後述する第1施工具30を取り付けるための取付部22が設けられている。例えば、取付部22は、ボルトとナットから成る締結部材を取り付け可能な孔として形成される。
【0023】
更に、ベース部3に設けられた一対の支持壁5には、前後方向の両端位置に、後述する第2施工具40を取り付けるための取付部23が設けられている。例えば、取付部23は、ボルトとナットから成る締結部材を取り付け可能な孔として形成される。
【0024】
図3は、架台2に配管10が取り付けられた状態のベース部3の内部構造を示す図である。図3に示すように、配管10は、ベース部3を上下方向に貫通するように設置される。また、ベース部3の内側には、複数の配管10の隙間に、不燃材29が充填されている。不燃材29は、冷媒用被覆銅管貫通処理材として用いられるものであり、例えば熱膨張耐火材を含んでおり、火災時の高温によって熱膨張し、ベース部3の内部を完全に隠蔽できる特性を有している。この不燃材29は、上板25及び下板26の孔27を閉鎖している。このようにベース部3の内側に充填される不燃材29によってベース部3には防火処理が施される。したがって、ベース部3は、耐火機能を備えた構造となる。
【0025】
図4は、架台2に設置される配管10の構成例を示す図である。例えば、配管10は、空調用の3つの冷媒配管11,12,13を1つに束ねることで形成される。冷媒配管11,12,13は、建築物の屋上に設置される室外機と各フロアに設置される空気調和機(例えば室内機)との間で冷媒を循環させるための配管である。そのため、冷媒配管11,12,13を1つに束ねて形成される配管10は、建築物のいずれかのフロアに設置された空気調和機に接続される配管である。言い換えると、1つの配管10に含まれる3つの配管11,12,13は、同じフロアの空気調和機に接続される。冷媒配管11,12,13はいずれも銅管であり、その外周面が筒状の断熱材14によって被覆されている。各冷媒配管11,12,13は、例えば設置対象フロアにおける床面から天井面までの長さと同程度若しくはそれよりも短い長さに予め形成され、粘着テープ18などによって1つに束ねられる。尚、図例では、3本の冷媒配管11,12,13を1つに束ねた場合を例示しているが、1つに束ねる冷媒配管の本数は3本に限られない。
【0026】
また、配管10には、電気ケーブル16が付設される。具体的には、配管10は、冷媒配管11,12,13と共に、電気ケーブル16を挿通可能なスリーブ15を束ねた構成となっている。そのスリーブ15には、建築物の屋上に設置される室外機と各フロアに設置される空気調和機(例えば室内機)との間で電気信号を送受信するための電気ケーブル16が挿通され、配管10に付設される。図4の拡大図Aに示すように、電気ケーブル16の上端は、スリーブ15の上端開口から上方に延びており、その先端にコネクタ17aが装着されている。また、図4の拡大図Bに示すように、電気ケーブル16の下端は、スリーブ15の下端開口から下方に延びている。電気ケーブル16がスリーブ15よりも長い場合は、結束バンドなどを用いて電気ケーブル16を巻いた状態で保持しておくことが好ましい。そして電気ケーブル16の下端には、コネクタ17bが装着されている。
【0027】
架台2には、上記のような構成を有する複数の配管10が左右方向及び前後方向に並設される。それら複数の配管10は、それぞれ異なるフロアの空気調和機に接続される。したがって、架台2は、複数フロアのそれぞれに配置される複数の配管10を保持することが可能である。
【0028】
上記のような配管ユニット1は、工場において図1に示す状態に組み付けられ、建築現場へと搬送され、建築現場に設置される仮設エレベータを用いて設置対象フロアへと搬入される。つまり、配管ユニット1は、建築工事中に設置されるクレーンを使用することなく、設置対象フロアへ搬入することが可能である。そして設置対象フロアへ搬入されると、配管ユニット1は、設置箇所に据え付けられる。
【0029】
図5は、配管ユニット1の施工方法の概念を示す図である。図5に示すように、建築中の建造物において各フロアの床スラブ100には、縦方向の配管10を通すための開口110が形成されている。配管ユニット1は、その開口110の内側に対して下降させることにより、設置対象フロアの床スラブ100に設置される。上述したように、架台2のベース部3に設けられたフランジ部21は開口110の周縁部よりも更に外側に突出するように形成される。そのため、開口110の上方から開口110の内側に向けて配管ユニット1を下降させていくと、フランジ部21が開口110の周縁部に当接し、ベース部3を開口110に嵌め込んだ状態で配管ユニット1を床スラブ100に設置することができる。したがって、配管ユニット1を開口110に向けて下降させる際には、フランジ部21が床スラブ100に当接するまで下降させれば良いため、配管ユニット1の微妙な高さ調整を行う必要はなく、作業効率を向上させることができる。
【0030】
設置対象フロアにおいて配管ユニット1を開口110に向けて下降させていく手法は特に限定されるものではなく、どのような手法を用いても構わない。ただし、図5に示す例では、配管10の下端が支柱6の下端よりも更に下方に延びている。配管10に含まれる冷媒配管11,12,13は脆弱であり、破損しやすい。そのため、図5に示すように配管10の下端が支柱6の下端よりも更に下方に延設されている場合には、配管10に対して負荷を掛けないことに配慮しながら配管ユニット1を設置対象フロアに設置することが必要となる。
【0031】
そこで、以下においては、配管10の下端が支柱6の下端よりも更に下方に延設されている場合に、好適に利用し得る施工方法の一例について説明する。
【0032】
図6は、配管ユニット1に対して第1施工具30及び第2施工具40を取り付けた例を示す図である。第1施工具30は、架台2の支持部4の前面側及び後面側の2箇所に取り付けられる。また、第2施工具40は、ベース部3の上面において前方側及び後方側の2箇所に取り付けられる。
【0033】
第1施工具30は、左右方向に配置された一対の支柱6,6間を水平方向に配置される連結部材31と、連結部材31の両端部に固着された脚部32,32とを有し、架台2の前面側及び後面側のそれぞれに着脱可能である。連結部材31の両端上面側には、取付金具33,33が設けられている。取付金具33,33は、ボルトとナットから成る締結部材によって、支柱6,6の所定高さ位置に設けられている取付部22,22に取り付けられる。脚部32,32は、支柱6の前面又は後面に沿うように配置され、取付金具33,33が支柱6,6の取付部22,22に取り付けられることにより、脚部32,32の下端が概ね支持部4の中央の高さ位置となるように設置される。このような第1施工具30は、水平方向に配置される連結部材31の中央位置に、外側に向かって突出する軸部35を有している。例えば、軸部35は、例えば頭部を有するボルトによって構成され、ボルトの頭部が連結部材31の表面から所定間隔離れた位置に設けられることによって頭部と連結部材31との間に露出するボルトの軸部で形成される。
【0034】
第2施工具40は、ベース部3の上方位置を左右方向に配置される連結部材41と、連結部材41の両端部に固着された脚部42,42とを有する。この第2施工具40は、脚部42,42の下端が、ボルトとナットから成る締結部材によって、ベース部3の支持壁5に設けられた取付部23に取り付けられる。このような第2施工具40は、水平方向に配置される連結部材41の中央位置に、外側に突出する軸部45を有している。例えば、軸部45は、例えば頭部を有するボルトによって構成され、ボルトの頭部が連結部材41の表面から所定間隔離れた位置に設けられることによって頭部と連結部材41との間に露出するボルトの軸部で形成される。
【0035】
配管ユニット1は、設置対象フロアに設置される際、図6に示すように第1施工具30及び第2施工具40が装着される。ただし、後述するように、第1施工具30は配管ユニット1の施工中において前段の工程で使用され、第2施工具40は後段の工程で使用される。そのため、はじめに第1施工具30のみを配管ユニット1に装着して前段の工程を行い、後段の工程に移るときに第2施工具40を配管ユニット1に装着するようにしても構わない。
【0036】
次に、図7は、配管ユニット1を施工する際に使用される作業用台車50の一例を示す図である。この作業用台車50は、配管ユニット1の架台2を挟み込むように配置可能であり、下面にキャスター55が取り付けられた台車本体51と、台車本体51の上面側に互いに対向するように配置される一対の揚重手段52,52とを備えている。
【0037】
台車本体51は、配管ユニット1の架台2の前後方向の幅よりも広い間隔で互いに対向するように配置される一対のビーム53,53と、それら一対のビーム53,53の両端を相互に連結する一対の連結ビーム54,54とを備えている。一対のビーム53,53の両端には、下面側にキャスター55が取り付けられている。キャスター55は、鉛直軸周りに旋回可能な車輪を備えており、作業用台車50を任意の方向に移動可能に支持している。
【0038】
連結ビーム54,54は、例えばボルトとナットによる締結部材56を用いて一対のビーム53,53の両端を連結するように取り付けられる。2つの連結ビーム54,54が一対のビーム53,53の両端に取り付けられると、台車本体51は、平面視矩形状のフレーム枠となる。また、締結部材56は取り外し可能であるため、2つの連結ビーム54,54のうちの少なくとも一方は、台車本体51から取り外すことができる。2つの連結ビーム54,54のうちの一方が台車本体51から取り外されると、台車本体51は、平面視コ字状のフレーム枠となる。
【0039】
台車本体51は、一対のビーム53,53のそれぞれの上面中央に立設する揚重手段52,52を備えている。揚重手段52,52は、例えば手動式のリフト装置によって構成される。揚重手段52,52は、所定高さを有する筐体57を有し、その筐体57に架台2を支持して昇降させる昇降機構を搭載している。揚重手段52,52は、互いに対向するように配置された筐体57の正面側に上下方向に開口した開口部が設けられると共に、筐体57の背面側に操作ハンドル58が設けられている。操作ハンドル58は、筐体57の内部に設けられた巻取器65を動作させるものである。巻取器65には、チェーンやワイヤーロープなどの索条64の端部が接続されている。そのため、操作ハンドル58が回転軸L1を中心に所定方向に回転操作されると、巻取器65は、操作ハンドル58と共に内部の巻取ドラムを回転させ、索条64を巻き取ったり、繰り出したりする。例えば操作ハンドル58には、切り替え可能なワンウェイクラッチが設けられており、巻き取り操作や繰り出し操作の途中で操作ハンドル58から手が離されたとしても逆方向に回転しない構造となっている。巻取器65から延びる索条64は、筐体57内部の上部に取り付けられた滑車63に架けられており、その先端には筐体57の正面側の開口部に沿って上下方向に移動する支持部材61が取り付けられている。支持部材61は、架台2を支持する部材である。図7の拡大図Cに示すように、支持部材61は、例えば水平方向に所定長さを有する金属板によって構成され、その長手方向の中央部に、上向きにU字状に切り欠いた係止部62を有している。この係止部62は、第1施工具30の軸部35及び第2施工具40の軸部45のそれぞれを受け入れて係止することにより、軸部35,45のそれぞれを軸支する。
【0040】
次に、上記のような作業用台車50を用いて配管ユニット1を設置対象フロアに施工する手順について説明する。まず、配管ユニット1は、工場で組み付けられた後、架台2の前後両面に第1施工具30が取り付けられる。そして、図8に示すように架台2の側面にキャスター19が取り付けられ、架台2を横倒し姿勢にしてキャスター39を接地させる。配管ユニット1は、図8に示す横倒し姿勢でトラックに積載され、工場から建築現場へと搬送される。建築現場に到着すると、配管ユニット1は横倒し姿勢のままでトラックから降ろされ、建築現場の仮設エレベータを利用して設置対象フロアへと搬入される。つまり、本実施形態の配管ユニット1は、建築現場のクレーンを用いることなく、設置対象フロアへ搬入することが可能である。そのため、クレーンを用いる場合に比べて少ない人数で配管ユニット1を設置対象フロアへ搬入することができる。尚、図8では、架台2の側面にキャスター39を取り付けた例を示しているが、これに限られるものではない。例えば、架台2を横倒し姿勢にして作業用台車50とは別の台車に積載した状態で工場から設置対象フロアへ搬入しても構わない。
【0041】
設置対象フロアに配管ユニット1が搬入されると、図9に示すように、作業用台車50を準備する。このとき、作業用台車50の1つの連結ビーム54を台車本体51から取り外しておく。そして一対のビーム53,53の間に架台2を挿入し、台車本体51から取り外していた連結ビーム54を台車本体51に装着する。その結果、図9に示すように、作業用台車50に設けられている一対の揚重手段52,52の間に配管ユニット1が配置された状態となる。その後、操作ハンドル58を所定方向に回転させて揚重手段52,52の支持部材61を第1施工具30に設けられた軸部35の高さ位置に合わせ、支持部材61の係止部62に軸部35を係止させる。
【0042】
続いて揚重手段52,52の操作ハンドル58を同時に所定方向に回転させて索条74を巻き取っていく。その結果、支持部材61が上昇し、図10に示すように、配管ユニット1は、作業用台車50の揚重手段52,52によって持ち上げられた状態となる。
【0043】
配管ユニット1を所定高さまで持ち上げると、次に図11に示すように配管ユニット1をR方向に回転させ、配管ユニット1を横倒し姿勢から起立姿勢に姿勢変化させる。すなわち、支持部材61に設けられたU字状の係止部62は、第1施工具30の軸部35を回動可能に軸支しているため、軸部35を中心に配管ユニット1を回転させることにより、配管ユニット1を横倒し姿勢から起立姿勢に変化させることができる。配管ユニット1の側面にキャスター39が取り付けられている場合、配管ユニット1を起立姿勢にした後にキャスター39を配管ユニット1から簡単に取り外すことができる。
【0044】
その後、作業用台車50は、配管ユニット1を起立姿勢で持ち上げたまま、図12の矢印F2で示すように配管ユニット1を設置対象フロアの設置箇所へ移動させる。図12に示すように、設置対象フロアにおいて配管ユニット1の設置箇所には、床スラブ100に開口110が形成されている。作業用台車50は、配管ユニット1を床スラブ100に形成された開口110の上方位置へと移動させる。
【0045】
また、配管ユニット1を持ち上げたままで作業用台車50を移動させるときには、配管ユニット1が軸部35を中心に揺動することを防止するために、図13に示すような補助部材70を取り付けるようにしても良い。図13に示す補助部材70は、概略コ字状の形状を有する金具であり、架台2の支持部4の左右両側面に取り付けられる。この補助部材70は、架台2の側面において前後方向に延びる架台接続金具71と、その架台接続金具71の前後方向両端において下方に延びる脚部72,72とを備えている。架台接続金具71は、支持部4の下端部に、ボルトとナットから成る締結部材によって固定される。脚部72,72は、その下端部がボルトとナットから成る締結部材によって一対のビーム53,53に固定される。このような補助部材70が架台2の左右両側面に取り付けられることにより、配管ユニット1の下部が作業用台車50に固定される。したがって、作業用台車50が配管ユニット1を持ち上げたままで移動するとき、配管ユニット1が軸部35を中心に揺動することを防止でき、安全に配管ユニット1を移動させることができるようになる。この補助部材70は、配管ユニット1が開口110の上方位置へ移動すると、配管ユニット1及び架台2から取り外される。尚、配管ユニット1を持ち上げたままで作業用台車50を移動させる際に、図13に示した補助部材70を取り付けるか否かは任意である。
【0046】
図14に示すように、配管ユニット1を床スラブ100の開口110の上方位置へ移動させると、作業用台車50に設けられた揚重手段52,52の操作ハンドル58を所定方向へ回転させ、配管ユニット1を下降させていく。これに伴い、架台2は、複数の配管10を保持した状態で支持部4を開口110の内側へ進入させ、下階フロアに向かって下降する。架台2の前面側及び後面側に取り付けられている第1施工具30の脚部32,32は、開口110の周縁部よりも外側に突出している。そのため、配管ユニット1を開口110に向かって下降させていくと、図15に示すように、第1施工具30の脚部32,32が開口110の周縁部の床スラブ100に接触し、配管ユニット1の下降が止まる。このとき、配管ユニット1は、第1施工具30によって所定高さ位置に保持される。
【0047】
図15に示すように、配管ユニット1が第1施工具30によって支持された状態になると、図16に示すように、ベース部3の上面の前面側及び後面側の2箇所に第2施工具40を取り付ける。ただし、第2施工具40は、これまでの工程においてベース部3に取り付けても構わない。例えば、第2施工具40は工場において予めベース部3に取り付けるようにしても良い。
【0048】
そして配管ユニット1が第1施工具30によって支持された状態において、揚重手段52,52の支持部材61を第1施工具30の軸部35から取り外し、支持部材61の高さ位置を第2施工具40に設けられた軸部45に合わせ、支持部材61の係止部62に軸部45を係止させる。
【0049】
その後、揚重手段52,52の操作ハンドル58を所定方向に回転させることにより、第2施工具40を介して配管ユニット1を持ち上げる。これにより、第1施工具30の脚部32,32は、開口110周辺の床スラブ100から浮いた状態となる。第1施工具30の脚部32,32が床スラブ100から浮いた状態となると、図17に示すように、第1施工具30を配管ユニット1から取り外す。これにより、配管ユニット1は開口110に対して更に下降させることが可能な状態となる。
【0050】
第1施工具30を取り外した後、揚重手段52,52の操作ハンドル58を所定方向に回転させ、配管ユニット1を開口110に対して下降させていく。これに伴い、架台2は、複数の配管10を保持した状態で支持部4を開口110に対して深く進入し、ベース部3の下部が開口110に嵌まる。そしてベース部3に設けられたフランジ部21が開口110の周縁に当接すると、配管ユニット1の下降が止まる。すなわち、フランジ部21が開口110の周縁に当接して配管ユニット1を下降させることができなくなると、配管ユニット1を適切に位置決めできたことになる。このとき、配管ユニット1の微妙な高さ調整を行う必要がない。
【0051】
その後、支持部材61を第2施工具40の軸部45から取り外し、作業用台車50を撤去する。また、配管ユニット1のベース部3に取り付けられた第2施工具40も配管ユニット1から取り外す。そしてアンカーボルトなどを用いてフランジ部21を床スラブ100に固定すれば、配管ユニット1の設置が完了する。フランジ部21がアンカーボルトなどによって床スラブ100に固定されることにより、配管ユニット1の架台2は、建築物の躯体と一体構造物となる。
【0052】
図18は、設置対象フロアの床スラブ100に配管ユニット1を設置した状態を示す図である。上述したように配管ユニット1は、上階フロアの床スラブ100に形成された開口110から下降させて設置されるため、支持部4が下階フロアの天井スペースに突出した状態に設置される。支持部4は、架台2によって支持される配管10と略同等の長さを有しており、配管10の下部を保持している。そのため、配管ユニット1に設けられている配管10は、上部及び下部が架台2によって躯体に固定された状態に設置される。したがって、架台2は、地震発生時において配管10の振動を抑制することが可能であり、脆弱な配管10の破損を防ぐことができる。
【0053】
また、図18に示すように配管ユニット1が設置されると、ベース部3が床スラブ100の開口110に嵌め込まれた状態となり、床スラブ100の開口110がベース部3によって閉塞される。加えて、ベース部3の内部には防火処理が施されている。そのため、配管ユニット1が開口110に設置されると、上階フロアと下階フロアとの間に防火区画を実現することができると共に、火災時の煙突化現象を防止することもできる。つまり、本実施形態の配管ユニット1は、上階フロアの床スラブ100の開口110に対して下降させて設置するだけで防火区画を実現できると共に、開口110を閉塞して煙突化現象を防止できるため、作業効率に優れている。
【0054】
また、配管ユニット1は、架台2に保持されている複数の配管10のそれぞれに室内機と室外機とを電気的に接続する電気ケーブル16が付設されている。そのため、配管ユニット1を床スラブ100の開口110に設置した後に電気ケーブル16を配線する作業を別途行う必要がない。それ故、上階フロアと下階フロアとの間に電気ケーブル16を配線する作業を省略できる点においても作業効率を向上させることができる。
【0055】
図19は、下階フロアの床スラブ100bに配管ユニット1を設置した後、上階フロアの床スラブ100aに配管ユニット1を設置した状態を示す図である。例えば、下階フロアの床スラブ100bに配管ユニット1が設置されると、その配管ユニット1に保持されている配管10の上端は、床スラブ100bから高さh1の位置にある。ここで、高さh1は、例えば500~1000mm程度である。ただし、配管ユニット1が設置されるフロアによっては、高さh1が1000mmを超えることもある。一方、上階フロアの床スラブ100aに設置される配管ユニット1は、下階フロアのフロア高Hよりも短い長さの配管10を保持しており、上階の床スラブ100aに設置されると、その配管10の下端と、下階フロアに設置された配管10の上端との間に、隙間h2を生じさせる。この隙間h2は、例えば500~1000mm程度である。ただし、配管ユニット1が設置されるフロアによっては、高さh2が1000mmを超えることもある。そして上階フロアの床スラブ100aに配管ユニット1が設置された後、隙間h2の長さに相当する短管(冷媒配管)を隙間h2に挿入し、メカニカル継手などの継手を用いて上側の配管10と下側の配管10とを相互に接続する。これにより、各フロアに設置される複数の配管ユニット1によって保持される配管10が相互に連結される。
【0056】
また、電気ケーブル16についても、下階フロアの床スラブ100bに設置した配管ユニット1に保持されている電気ケーブル16のコネクタ17aと、上階フロアの床スラブ100aに設置した配管ユニット1に保持されている電気ケーブル16のコネクタ17bとを接続する。これにより、各フロアに設置される複数の配管ユニット1によって保持されている電気ケーブル16を相互に連結し、導通させることができる。
【0057】
また、配管ユニット1を設置する際に使用する作業用台車50は、台車本体51の上面側において互いに対向するように配置される一対の揚重手段52,52を備えており、一対の揚重手段52,52が配管ユニット1を持ち上げた状態で台車本体51を移動させることにより配管ユニット1を設置対象フロアの床スラブ100に形成された開口110の上方位置へ移動させることが可能であると共に、配管ユニット1を開口110の上方位置へ移動させた後には、一対の揚重手段52,52が配管ユニット1を開口110の内側に下降させることにより、開口110の周縁部にフランジ部21を当接させた状態に設置することが可能である。このような作業用台車50を用いれば、建築現場のクレーンを用いることなく、小人数で配管ユニット1を設置することが可能であり、低コストで効率的に施工できるという利点がある。
【0058】
以上、本発明に関する好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態において説明したものに限定されるものではない。すなわち、本発明には、上記実施形態において説明したものに種々の変形例を適用したものが含まれる。
【0059】
例えば、上記実施形態では、揚重手段52,52としてリフト装置が手動式である場合を例示した。しかし、揚重手段52,52は、手動式に限られるものではない。
【0060】
また、上記実施形態では、作業用台車50を用いて配管ユニット1を設置する際に、配管ユニット1に第1施工具30及び第2施工具40が取り付けられる例を説明した。しかし、一対の揚重手段52,52の高さが十分にある場合には、第1施工具30を取り付けることは必要でなく、揚重手段52,52の支持部材61が第2施工具40の軸部45を支持して配管ユニット1を持ち上げるようにしても構わない。また、第2施工具40は、架台2のベース部3に対して一体形成されたものであっても構わない。この場合、第2施工具40を配管ユニット1に取り付けたり、配管ユニット1を取り外したりする作業を行う必要がなくなるため、作業効率を更に向上させることができる。
【0061】
また、上記実施形態では、配管ユニット1に設けられる複数の配管10の下端が支持部4の下端よりも更に下方まで延びている場合を例示した。しかし、複数の配管10の下端は、支持部4の下端よりも上方に位置するように配置しても構わない。この場合、配管ユニット1を起立姿勢に変化させたときには、支持部4の下端を接地させた状態で配管ユニット1を床スラブ100に仮置きできる。そのため、上述した第1施工具30を取り付ける必要がなくなるという点で作業効率を更に向上させることができる。
【0062】
また、上記実施形態では、フランジ部21がベース部3の周囲側面から水平方向に突出している例を説明した。しかし、フランジ部21は、ベース部3の側面の中央の高さ位置から水平方向に突出するものに限られない。例えば、フランジ部21は、ベース部3の上面と面一に形成されていても良いし、ベース部3の下面と面一に形成されていても構わない。尚、フランジ部21がベース部3の下面と面一に形成されている場合、配管ユニット1が開口110に設置されてもベース部3は開口110の内側に嵌まり込んだ状態にはならない。しかし、ベース部3は開口110を閉塞できるという点では、上記実施形態と同様であるため、何ら問題はない。
【0063】
また、上記実施形態では、一例として、作業用台車50を用いて配管ユニット1を施工する例を説明した。しかし、配管ユニット1を施工する際には、上述した作業用台車50を用いる手法とは異なる手法を用いても構わない。
【符号の説明】
【0064】
1…配管ユニット、2…架台、3…ベース部、4…支持部、10…配管、16…電気ケーブル、50…作業用台車、51…台車本体、52…揚重手段、100,100a,100b…床スラブ(躯体)、110…開口。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19