(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】火入れ装置
(51)【国際特許分類】
A23F 3/06 20060101AFI20240109BHJP
F26B 3/28 20060101ALI20240109BHJP
F26B 3/20 20060101ALI20240109BHJP
F26B 17/24 20060101ALI20240109BHJP
F26B 17/00 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
A23F3/06 J
F26B3/28
F26B3/20
F26B17/24
F26B17/00 Z
(21)【出願番号】P 2019232492
(22)【出願日】2019-12-24
【審査請求日】2022-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】593156522
【氏名又は名称】株式会社羽田
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092510
【氏名又は名称】岡村 憲佑
(72)【発明者】
【氏名】羽田 龍則
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-143787(JP,A)
【文献】特開2008-136485(JP,A)
【文献】特開2007-143401(JP,A)
【文献】登録実用新案第3102288(JP,U)
【文献】実開昭54-33499(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F 3/06
F26B 3/28
F26B 3/20
F26B 17/24
F26B 17/00
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焙煎される原料が搬送される溝を有するトラフと、
前記トラフに対して前記原料を供給するフィーダと、
前記トラフに対して前記原料を搬送する振動を付与する原料送出機構と、
前記トラフの溝の底面に対してその上方に所定間隔を空けて対向配置され、前記溝を流れる前記原料を加熱乾燥するバーナと、
前記トラフの裏面側に設けられたヒータと
を備え、
前記ヒータは、前記トラフの長手方向に沿って、且つ前記トラフの長手方向と交差する水平方向の両端に配設されている
ことを特徴とする火入れ装置。
【請求項2】
前記フィーダよりも前段に設けられて前記原料を加湿する加湿機構を更に備える
ことを特徴とする請求項1記載の火入れ装置。
【請求項3】
前記トラフは、前記原料の搬送方向の下流に向けて徐々に高さが低くなる多段のトラフユニットを備え、
少なくとも一部の前記トラフユニットは、前記搬送方向下流側の端部に、前記原料を跳ね上げるように設けられた跳ね板を更に備える
ことを特徴とする請求項1又は2記載の火入れ装置。
【請求項4】
前記跳ね板は、前記トラフの厚さよりも厚さが薄い薄板からなり、前記端部から前記搬送方向に所定の長さで延出するように設けられている
ことを特徴とする請求項3記載の火入れ装置。
【請求項5】
前記トラフは、少なくとも上下二段に複数レーン配置され、
各レーンのトラフは、前記原料の搬送方向に沿って、下がるように段々に重なり合う階段状構造に配置された複数のトラフユニットからなる
ことを特徴とする請求項1又は2記載の火入れ装置。
【請求項6】
焙煎される原料が搬送される溝を有するトラフと、
前記トラフに対して前記原料を供給するフィーダと、
前記トラフに対して前記原料を搬送する振動を付与する原料送出機構と、
前記トラフの溝の底面に対してその上方に所定間隔を空けて対向配置され、前記溝を流れる前記原料を加熱乾燥するバーナと、
前記トラフの裏面側に設けられたヒータと
を備え、
前記トラフは、前記原料の搬送方向の下流に向けて徐々に高さが低くなる多段のトラフユニットを備え、
少なくとも一部の前記トラフユニットは、前記搬送方向下流側の端部に、前記原料を跳ね上げるように設けられた跳ね板を更に備える
ことを特徴とする火入れ装置。
【請求項7】
前記跳ね板は、先端側が基端側よりも上方に位置する
ことを特徴とする請求項6記載の火入れ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、遠赤外線加熱方式を用いて茶葉等の原料の加熱乾燥を行う火入れ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、製茶工場において製造された荒茶を加熱乾燥し、茶特有の芳香を精製して香味を向上させるための火入れ工程を行う火入れ装置が知られている(下記特許文献1参照)。この火入れ装置は、マイクロ波により茶葉を一次乾燥した後、トラフの溝を流れる茶葉を、遠赤外線を放射する放熱板を有するバーナにより二次乾燥する。これにより、茶葉の加熱乾燥を均等に行うことを可能にし、温度調整による任意の加熱乾燥を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、茶葉の火入れ工程においては、上記従来技術の特許文献1に開示されているように、茶葉を搬送するトラフの裏面側に、トラフの溝を裏面側から覆う保温材を取り付けて、トラフ自体の余熱を利用する方法も知られている。しかし、バーナの設定温度が高ければ高いほど、トラフ自体の保温材による余熱温度との温度差が生じてしまうため、任意の加熱乾燥を行うための温度制御や温度調整が難しくなる傾向があった。
【0005】
特に、茶葉のみならず、海苔等の少し大きめの原料を適切に加熱乾燥させるためには、トラフ上を搬送される原料の温度差をより少なくし、より均一に原料を拡散させて火入れを行う必要があった。
【0006】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消し、火入れ工程における温度制御及び温度調整を容易にして茶葉等の原料の加熱乾燥を均等且つ均一に行う適切な火入れを実現することができる火入れ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る火入れ装置は、焙煎される原料が搬送される溝を有するトラフと、前記トラフに対して前記原料を供給するフィーダと、前記トラフに対して前記原料を搬送する振動を付与する原料送出機構と、前記トラフの溝の底面に対してその上方に所定間隔を空けて対向配置され、前記溝を流れる前記原料を加熱乾燥するバーナと、前記トラフの裏面側に設けられたヒータとを備え、前記ヒータは、前記トラフの長手方向に沿って、且つ前記トラフの長手方向と交差する水平方向の両端に配設されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の一実施形態において、前記フィーダよりも前段に設けられて前記原料を加湿する加湿機構を更に備える。
【0009】
本発明の他の実施形態において、前記トラフは、前記原料の搬送方向の下流に向けて徐々に高さが低くなる多段のトラフユニットを備え、少なくとも一部の前記トラフユニットは、前記搬送方向下流側の端部に、前記原料を跳ね上げるように設けられた跳ね板を更に備える。
【0010】
本発明の更に他の実施形態において、前記跳ね板は、前記トラフの厚さよりも厚さが薄い薄板からなり、前記端部から前記搬送方向に所定の長さで延出するように設けられている。
【0011】
本発明の更に他の実施形態において、前記トラフは、少なくとも上下二段に複数レーン配置され、各レーンのトラフは、前記原料の搬送方向に沿って、下がるように段々に重なり合う階段状構造に配置された複数のトラフユニットからなる。
【0012】
また、本発明に係る火入れ装置は、焙煎される原料が搬送される溝を有するトラフと、前記トラフに対して前記原料を供給するフィーダと、前記トラフに対して前記原料を搬送する振動を付与する原料送出機構と、前記トラフの溝の底面に対してその上方に所定間隔を空けて対向配置され、前記溝を流れる前記原料を加熱乾燥するバーナと、前記トラフの裏面側に設けられたヒータとを備え、前記トラフは、前記原料の搬送方向の下流に向けて徐々に高さが低くなる多段のトラフユニットを備え、少なくとも一部の前記トラフユニットは、前記搬送方向下流側の端部に、前記原料を跳ね上げるように設けられた跳ね板を更に備える。
【0013】
本発明の他の実施形態において、前記跳ね板は、先端側が基端側よりも上方に位置する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、火入れ工程における温度制御及び温度調整を容易にして茶葉等の原料の加熱乾燥を均等且つ均一に行う適切な火入れを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る火入れ装置の一部を切り欠いて示す正面図である。
【
図2】同火入れ装置の一部を切り欠いて示す側面図である。
【
図5】同火入れ装置に用いられるセラミックプレートを示す斜視図である。
【
図8】同火入れ装置の変形例を示す拡大断面図である。
【
図9】同火入れ装置の他の変形例を示す拡大断面図である。
【
図10】本発明の第2の実施形態に係る火入れ装置の一部を切り欠いて概略的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付の図面を参照して、この発明の実施形態に係る火入れ装置を詳細に説明する。ただし、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。また、以下の実施形態においては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や一部の構成要素が省略されている場合がある。
【0017】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る火入れ装置の一部を切り欠いて示す正面図、
図2は火入れ装置の一部を切り欠いて示す側面図である。また、
図3は、
図1の一部拡大正面図であり、
図4は
図3のA-A´線拡大断面図、
図5は火入れ装置に用いられるセラミックプレートを示す斜視図である。更に、
図6は
図4のB-B´線矢視図、
図7は
図6のC-C´線拡大断面図である。
【0018】
図1~
図3に示すように、第1の実施形態に係る火入れ装置100は、茶葉や海苔等の原料を焙煎するための装置であり、例えば棚状に形成された多段フレーム1と、この多段フレーム1の上段レーンに設けられた原料投入口であるホッパ9とを備えている。なお、以下においては、原料として茶葉を例に挙げて説明するが、火入れ装置100により焙煎される原料はこれに限定されるものではない。
【0019】
火入れ装置100は、多段フレーム1によって上下方向に所定間隔をおいて支持された、茶葉が流れる上段レーン、中段レーン及び下段レーンにそれぞれ配置されたトラフ2,3,4を有する。また、火入れ装置100は、これらトラフ2~4と対向する位置に配置され、それぞれ茶葉を、例えば遠赤外線により加熱乾燥するバーナ5と、火入れ装置100の各部を自動制御するための制御装置90とを備えている。
【0020】
なお、各トラフ2~4は、図示のような上段レーン、中段レーン及び下段レーンに配置されるものに限定されることはなく、例えば上下段部による二段レーン構成や、四段以上の多段レーン構成であっても良い。ここで、例えば一段のみのシングルレーン構成のトラフを採用する場合は、トラフの長さ方向(長手方向)において、後述する多段レーン構成のトラフと同様の温度制御及び温度調整を行って、これに基づく火入れを実行することが可能な構造とすればよい。
【0021】
また、第1の実施形態の火入れ装置100には、図示しないシュート等から投入された茶葉を一時的に滞留して搬送量を調整しつつ、ホッパ9に茶葉を供給する茶葉供給装置60が備えられている。茶葉供給装置60は、例えば駆動モータ61によって回転駆動されるスクリュー軸62(
図2参照)を備え、このスクリュー軸62の回転動作によって滞留された所定量の茶葉を搬送量を調整しつつホッパ9に供給する。この茶葉供給装置60においては、シュート等から投入された茶葉を一時的に滞留することができるので、滞留された茶葉の状態を目視によって確認することにより、火入れにおける条件設定(温度設定、温度調整等)に役立てることが可能となる。
【0022】
更に、火入れ装置100には、上段レーンに配置されたホッパ9の底面を加振する電磁式のフィーダ17が設置されている。ホッパ9に投入された茶葉は、フィーダ17の振動により、一定量ずつ上段レーンのトラフ2に押し出される。
【0023】
各トラフ2~4には、これらを振幅運動させることによって、トラフ2~4の溝2a,3a,4a内にて平均的に茶葉を拡散させ(ばらけさせ)ながら茶葉を送り出す原料送出機構としての茶葉送出機構6が設置されている。この茶葉送出機構6の細部については後述する。
【0024】
また、トラフ2,3には、上段レーンのトラフ2から中段レーンのトラフ3に茶葉が滑り落ちるように導く上中段シュート10が設置されている。同様に、トラフ3,4には、中段レーンのトラフ3から下段レーンのトラフ4に茶葉が滑り落ちるように導く中下段シュート11が設置されている。
【0025】
このような茶葉送出機構6によって、茶葉は、まずホッパ9から投入されて上段レーンのトラフ2の
図1中矢印Rで示す方向(以下、「R方向」と呼ぶ。)の端部に移る。そして、トラフ2をR方向から
図1中矢印Fで示す方向(以下、「F方向」と呼ぶ。)に向かって進む。次に、茶葉は、トラフ2のF方向の端部から上中段シュート10を滑り落ちて、中段レーンのトラフ3のF方向の端部に移り、トラフ3をF方向からR方向に向かって進む。その後、茶葉は、トラフ3のR方向の端部から中下段シュート11を滑り落ちて、下段レーンのトラフ4のR方向の端部に移り、トラフ4をR方向からF方向に向かって進み、最後に火入れ装置100の外部へ排出される。このような上段レーンから下段レーンへの茶葉の移動の間、各レーンにトラフ2~4とそれぞれ対向するように設けられたバーナ5による茶葉の加熱乾燥(火入れ)が行われる。
【0026】
そして、第1の実施形態の火入れ装置100では、バーナ5による加熱乾燥と併用して、トラフ2~4の裏面側から後述するヒータ30(
図4等参照、以下同じ。)による加熱乾燥も行われる。なお、バーナ5及びヒータ30による茶葉の加熱乾燥は、例えば別途備えられた図示しない乾燥制御装置によって、或いは制御装置90により、自動制御可能に構成され得る。例えば、各バーナ5は、多段フレーム1に設けられた後述するバーナ昇降機構8によって、各トラフ2~4との間隔を適宜調整され得る。これにより、バーナ5によるトラフ2~4に対する火入れの温度調整を間隔調整によって容易に行うことが可能となる。
【0027】
図4は、火入れ装置100の上段レーンのトラフ2の周辺の要部を拡大して示している。なお、以降においては、トラフ2~4のうち主にトラフ2を例に挙げて説明するが、特に言及しない限りその構造及び構成はトラフ3,4にも適用され得る。
図4に示すように、バーナ5は、下面側に複数のノズルが配置された平面状の照射部5aaを有するガスバーナ5aと、この照射部5aaの側方から下面側を覆うように取り付けられた放熱板としてのセラミックプレート5bとを有している。
【0028】
セラミックプレート5bは、上段レーンのトラフ2の溝2aの
図4中矢印Wで示す幅方向(以下、「W方向」と呼ぶ。)の中央部を中心として、溝2aの底面2bに向かって断面湾曲状に突出した形状に形成されている。中段レーンのトラフ3及び下段レーンのトラフ4における各バーナ5も、それぞれ同様の構造のガスバーナ5a及びセラミックプレート5bを有している。
【0029】
各バーナ5は、ガスバーナ5aでセラミックプレート5bを熱することにより、セラミックプレート5bを介して遠赤外線を放射する遠赤外線加熱方式のバーナである。なお、セラミックプレート5bの表面は、例えば遠赤外線放出塗料により覆われている。このような形状(平面状)の照射部5aaを有するガスバーナ5aを使用することで、セラミックプレート5bを介して遠赤外線をトラフ2の溝2aに向かって均等に放射することができる。従って、バーナ5により、底面2b上の茶葉を均一に乾燥することが可能となる。
【0030】
図5は、火入れ装置100の各バーナ5に用いられるセラミックプレート5bを示している。
図5に示すように、セラミックプレート5bは、トラフ2~4の溝2a,3a,4a(
図2参照、以下同じ。)上に最も平均してガスバーナ5aの放射熱を照射できるように構成されている。このため、セラミックプレート5bは、例えば孔径φ4で板厚方向に複数貫通形成された孔部5dを有するように形成されている。
【0031】
また、各バーナ5は、
図4に示すように、少なくともガスバーナ5a及びセラミックプレート5bと対向する表面がセラミックプレート5bと同様に遠赤外線放射塗料により覆われた構造のバーナカバー5cを備えている。このバーナカバー5cは、例えば上段レーンのトラフ2の溝2aの底面2b側が開口された、半楕円断面のような外形かまぼこ型に見える形状を有し、ガスバーナ5a及びセラミックプレート5bを上方から溝2aの底面2bに向かって覆っている。
【0032】
また、バーナカバー5cは、内側表面にガスバーナ5aの放射熱及びセラミックプレート5bの輻射熱をトラフ2~4側に反射させる凹面状の反射面5eを形成している。この反射面5eは、放射熱及び輻射熱をトラフ2~4の溝2a,3a,4aのW方向両端部の近傍に集中的に反射させる反射角度をもって形成されている。
【0033】
なお、上述したW方向と直交するバーナカバー5cの長手方向の両端部は、壁状に閉塞されている。また、バーナカバー5cの内側において、第1の実施形態ではガスバーナ5aは長手方向に所定間隔をおいて複数配置されている。また、図示は省略するが、バーナ5のノズル付近には、調整バルブ付きの空気供給部が設けられている。この空気供給部は、バーナ5の内側空間5h(
図3参照)におけるノズルからのガスの噴出方向に二次空気を送るものである。
【0034】
このような構造により、各バーナ5においては、効率よく空気を供給してガスを完全燃焼させることが可能となる。そして、各バーナ5は、例えば図示しない電磁弁によりガス供給量が調整され得る構造を備える。このため、制御装置90によって電磁弁を切替制御することにより、例えば強火や弱火などの燃焼調整に基づく火入れの温度制御を容易に行うことができる。
【0035】
バーナカバー5cの各トラフ2~4に近い側の幅は、例えば各トラフ2~4の溝2a,3a,4aの幅よりも大きくなるように設定されている。バーナカバー5cのW方向中央部には、ダンパ5fを介してバーナカバー5cの内側空間5hからの燃焼ガスを、排気空間5iを通して排気するための排気筒5g(
図3参照、以下同じ。)が上段レーン、中段レーン及び下段レーン毎にそれぞれ設けられている。排気筒5gを設けることにより、火入れ装置100の機内温度を安定化させることができ、例えばガス消費量を従来よりも削減することができる。
【0036】
上段レーンのトラフ2には、その長手方向に茶葉が送られる溝2aが形成されており、この溝2a及びその底面2bに対してバーナ5が上方にて対向するように配置されている。なお、
図3においては、バーナ5は、上段レーンのトラフ2の長手方向に沿って、バーナカバー5cの内側で直列に2つ続くように複数設置されているが、この設置数は特に限定されるものではなく、トラフ2の長さに合わせて必要なバーナ5のサイズや数を適宜決定すればよい。なお、中段レーンのトラフ3及び下段レーンのトラフ4にも、同様にそれぞれ溝3a,4aが形成され、バーナ5が対向配置されている。
【0037】
トラフ2~4は、例えばアルミニウム材料からなる一枚板を折り曲げ加工したり、予め溝2a,3a,4aを備えた金属板などにより形成することができる。第1の実施形態においては、トラフ2~4には、黒色のアルマイト加工が施されている。なお、トラフ2~4の溝2a,3a,4aの幅は、例えばバーナ5のセラミックプレート5bの幅と同等からその2.5倍程度の幅の間に設定されることが望ましく、より好ましくはセラミックプレート5bの幅とほぼ等しく設定されると良い。
【0038】
本出願人の試験によると、バーナ5の照射部5aaの照射面の幅が、トラフ2の溝2aの幅の2.5分の1よりも小さくなると、トラフ2の両端での茶層の乾燥が不十分であることが確認されている。また、バーナ5の照射面の幅がトラフ2の溝2aの幅を超えると、バーナ5の熱の有効利用が図り辛くなる。例えば、バーナ5の照射面の幅が100mm程度であれば、トラフの溝2aの幅を100~250mmに設定することが好ましく、第1の実施形態では230mmに設定されている。バーナ5の照射面の幅を100mm程度としたのは、ガスバーナ5aの放射をやわらかな熱にコントロールすることができ、茶葉の加熱乾燥に最も適したサイズであることが確認されたからである。
【0039】
なお、中段レーンのトラフ3及び下段レーンのトラフ4についても、或いはその溝3a,4aの構造についても、上述したものと同様に構成され得る。また、各トラフ2~4の溝2a,3a,4aの長手方向の中央部付近には、トラフ2の溝2aの底面2b上の温度を測定する図示しない第1の温度センサが、その先端部が茶層から突出する高さとなるように配設されている。
【0040】
一方、
図4、
図6及び
図7に示すように、トラフ2には、例えば溝2aを流れる茶葉を溝2aの底面2bの裏面2c側から加熱乾燥するヒータ30が設置されている。このヒータ30は、トラフ2の底面2bの裏面2c側に、例えばバーナ5の長手方向に沿って線状に、且つバーナ5の直下(バーナ5の中心と鉛直方向に対向する位置)からバーナ5の長手方向と交差する水平方向に所定距離だけ離れた箇所、すなわち、この場合裏面2cにおけるW方向の両端近傍にそれぞれ配設された電熱ヒータからなる。なお、電熱ヒータとしては、オン動作時(電源投入後)に設定温度まで瞬時に到達するラピッド型が好ましいとされるが、これに限定されるものではなく、また、ヒータ30は線状のものに限定されるものではない。
【0041】
なお、第1の実施形態のヒータ30は、例えばトラフ2の裏面2cに直接取り付けられるのではなく、この裏面2cに取り付けられた取付補助板39を介して、裏面2c側に配設されている。具体的には、ヒータ30は、例えばリベット37により取付補助板39に固定された複数の取付治具38によって、取付補助板39に対して上述したように両端近傍に線状に配設されている。
【0042】
なお、ヒータ30は、上記のような取付治具38を介したリベット37による固定の他、例えば取付治具38を介した図示しないネジ止め等により取付補助板39に固定されても良い。その他、ヒータ30は、テープ止めや接着剤等により取付補助板39に固定するようにしても良く、このようにすれば、ヒータ30を配設する際の取付治具38やリベット37の部品点数を更に少なくすることができる。取付補助板39は、トラフ2と同様の材料からなり、例えばトラフ2の裏面2cをほぼ全て覆うような寸法(大きさ、形状)に形成されている。
【0043】
この取付補助板39の一部には、第1の温度センサとは異なる第2の温度センサ40が、リベット47により固定された取付治具42に対し、ナット41によって取付補助板39に触れない状態で取付固定されている(
図7参照)。この第2の温度センサ40は、好ましくは図示のように、トラフ2の溝2aのW方向の中央部付近において、その裏面2c側の温度を測定可能な位置に適宜配設されると良い。
【0044】
第2の温度センサ40は、より好ましくは、トラフ2の溝2aのW方向の中央部付近であって鉛直方向にバーナ5とは重ならない位置、例えばトラフ2の長手方向の端部付近の位置(ホッパ9寄りの位置、上中段シュート10寄りの位置等)に配設されると良い。このように配設すれば、第2の温度センサ40によって、バーナ5の放射熱及び輻射熱の影響を極力受けない状態のヒータ30による加熱温度を測定することが可能となる。
【0045】
また、図示は省略するが、トラフ2は、その裏面2c側に、例えば溝2a及び取付補助板39を裏面2c側から覆うように配設された保温材を備えていても良い。この場合、保温材は、ヒータ30が配設された取付補助板39を、トラフ2との間で挟み込むような状態に取り付けられる。なお、上述したヒータ30や第2の温度センサ40は、トラフ2の裏面2cに取付補助板39を介さずに直接取り付けられていても良く、ヒータ30及び第2の温度センサ40等は、トラフ3,4においても上記と同様に配設されている。
【0046】
このように構成された火入れ装置100は、バーナ5及びヒータ30により、トラフ2の溝2aを流れる茶葉を、溝2aの底面2bの上方側からのみならず、下方側である裏面2c側からも加熱しつつ火入れを行うことが可能となる。そして、バーナ5による放射熱及び輻射熱並びにヒータ30による加熱は、それぞれ個別に制御することができるので、火入れ工程における温度制御や温度調整をより繊細且つ容易にして、より一層茶葉の加熱乾燥を均等且つ均一に行うことが可能となる。
【0047】
なお、ヒータ30を上記のようにトラフ2の溝2aの裏面2c側において、W方向の両端近傍に配設した理由は次のものによる。すなわち、本出願人の試験によると、例えば長さが100cmで幅が50cmのアルミニウム製のトラフ2を用意し、このトラフ2と平行に15cm程上方の位置に長さが70cmで幅が10cmのバーナ5を配置した。そして、バーナ5により照射を行い温度を測定した。
【0048】
測定の結果、バーナ5の長手方向及びW方向の中心部の温度が最も高くなるが、バーナ5の直下であっても長手方向の中心部より長手方向に沿って10cm離れた位置で最も高い温度から-15℃程度、20cm離れた位置で-20℃程度と温度が低くなることが判明した。また、W方向では中心部を含むバーナ5の幅寸法(それぞれ中心部から5cmずつの位置)からW方向に沿って10cm離れると-30℃以上温度が低くなることが判明した。このため、バーナ5の長手方向の端に行くほど、またW方向の端に行くほど、バーナ5により照射された熱の放熱が進むため、中心部温度との温度差は拡大するといえる。
【0049】
従って、このような放熱特性を有するバーナ5の加熱に伴う温度の低下をトラフ2の溝2aの裏面2c側から補助するため、本出願人はヒータ30をW方向の両端近傍に配設した。なお、上記の試験においては、線状のヒータ30のW方向の幅を10mmとし、各ヒータ30をそれぞれ中心部から5cm以上開けて(すなわち、各ヒータ30間の距離は10cm以上開けて)配設し、ヒータ30の温度を50℃~100℃となるように設定した。
【0050】
その結果、トラフ2に対する上下からの熱によって、トラフ2の溝2a上の茶葉に均一な温度で火入れが行われるようになり、茶葉は本来加熱することでやや色落ちする特性を有するため加熱乾燥される茶葉が少し白くなるという現象が見られたが、全体的に緑色の濃さが増して、味に丸味が増すこととなった。なお、バーナ5とトラフ2との間の距離(鉛直方向の間隔)が縮まる、すなわちバーナ5の配置位置が低くなるほど、トラフ2の中心部と長手方向及びW方向の各両端部との温度差が広がる傾向があるため、ヒータ30による補助的な温度制御や温度調整がより有用となることが判明した。
【0051】
なお、火入れ装置100は、多段フレーム1の外周側において、各段のレーンのバーナ5の外周部と水平方向に対向する部分が、例えば外周カバー部1a(
図2参照)によりそれぞれ覆われた構造を備えている。この外周カバー部1aは、バーナ5への火入れ時にバーナ5と各トラフ2~4との間への不要な外気の入り込みを防ぐと共に、取り外しが容易にできる安全カバーの役割も担っている。
【0052】
外周カバー部1aは、
図2に示すように、例えばその高さh1が200mm~高さh2が300mmなど、火入れ装置100の実際の大きさに合わせた所定の寸法範囲で設計された上で、多段フレーム1に取り付けられている。この外周カバー部1aを備えることで、多段フレーム1のバーナ5の外周回り以外の開放部分から熱気を逃し、加熱乾燥中の茶葉が不必要に蒸れたり色落ちしたりすることを防止することができる。また、外周カバー部1a以外の開放部分から、火入れ工程の後の掃除等を容易に行うことが可能となる。
【0053】
茶葉送出機構6は、
図1に示すように、例えば各トラフ2~4のR方向側の端部近傍に設置されている。多段フレーム1における最下段のレーンの下段フレーム1bのR方向側の端部近傍には、ブラケット19を介してモータ18が載置されている。一方、下段レーンの下段フレーム1bには、下方に延出した位置の軸受21bを介して回転軸21が備えられている。
【0054】
モータ18と回転軸21とは、プーリ18a、タイミングベルト23及びプーリ21aを介して連結されている。また、回転軸21の外周には、図示しない偏心スリーブが回転軸21に対して偏心した状態で設けられている。なお、中段レーン及び上段レーンの下段フレーム1bにも、上記と同様の軸受21b、回転軸21、テンショナー機構49を介したタイミングベルト23、偏心スリーブ及びプーリ21aが備えられている。従って、各回転軸21は、モータ18とすべて連結された状態となっている。
【0055】
一方、トラフ2~4のR方向側の端部近傍には、
図3に示すように、係止部材17aを介して連結軸24がそれぞれ設けられている。各回転軸21と各連結軸24とは、回転運動を回転振幅運動に変換する連結部材であるコンロッド22を介してそれぞれ連結されている。なお、各回転軸21と各連結軸24との配置関係は、常に連結軸24が回転軸21よりも茶葉の送り出し方向の先頭側(前側)に配置されるように設計されている。
【0056】
これにより、モータ18の回転によってタイミングベルト23を介して各回転軸21が同期回転し、この回転運動が各コンロッド22を介して各連結軸24の微小回転振幅運動に変換される。このトラフ2~4の微小回転振幅運動によって、茶葉は飛び跳ねるようにして各トラフ2~4の溝2a,3a,4a内を進んでいく。従って、各トラフ2~4は水平となるように設置することが好ましい。トラフ2~4に傾斜を付けると茶葉の流れは良好となるものの、平均して流れ難くなり、茶葉が飛び跳ねるよりも擦って進むような動きとなってしまうからである。
【0057】
茶葉送出機構6は、上記のように、上下に隣設されたプーリ21a同士をタイミングベルト23で連結し、各回転軸21をモータ18と連結された状態に構成している。これにより、トラフの段数にかかわらず、1台のモータ18で茶葉送出機構6を駆動することができ、各段のレーンにモータを備える場合と比較してコストを削減することが可能となる。なお、この場合、各段のレーンの茶葉送出機構6による回転位相を均等にズラす(例えば、3つのトラフ2~4の場合には120°ずつズラす)ことにより、火入れ装置100全体の振動抑制と振動による移動とを防止することができる。
【0058】
茶葉送出機構6による茶葉の送出速度は、各回転軸21に対して偏心スリーブの位置を変えることなどで調整することが可能である。各トラフ2~4には、
図1に示すように、茶葉送出機構6による運動を妨げないように、トラフ2~4をそれぞれ多段フレーム1に揺動可能に弾性保持する複数の板ばね7が、茶葉の進行方向に向かって前下方に傾斜する状態で設置されている。なお、板ばね7の代わりに、コイルばね等の弾性部材を採用することも可能である。
【0059】
バーナ昇降機構8は、例えば
図1~4に示すように、減速機構付きのモータ25と、このモータ25の回転軸に連結されたベベルギア機構28aとを備えている。また、保持部材26によって回転可能に保持された同期軸27と、この同期軸27を介して連結されたベベルギア機構28bとを備えている。ベベルギア機構28a,28bは、同期軸27を介してモータ25の回転軸と連結されている。
【0060】
同期軸27と直交するように配置されたベベルギア機構28a,28bの螺軸29は、多段フレーム1に固定保持されているナットスリーブ30aに回転可能に保持されている。この螺軸29は、バーナ5に対して、昇降軸8a及びアームロッド8dを介して接続されている。昇降軸8aは、バーナ5の上下動作をガイドして昇降動作を安定させる軸ガイド8bを介して多段フレーム1に支持されている。
【0061】
次に、このように構成された火入れ装置100の動作について説明する。
【0062】
火入れ装置100に投入された茶葉は、茶葉供給装置60を介して上段レーンのトラフ2から下段レーンのトラフ4へとバーナ5及びヒータ30によって適宜加熱乾燥されながら移動していく。各トラフ2~4の中心部に設置された第1の温度センサは、茶葉とバーナ5との間の温度をモニタリングする。また、各トラフ2~4の裏面側に取付補助板39に触れない状態で設置された第2の温度センサ40は、トラフ2~4の裏面側の温度をモニタリングする。そして、これらの温度や茶葉の状態を考慮しながら、制御装置90により加熱乾燥の程度を適宜調整しながら火入れを行う。なお、第2の温度センサ40は、検出する温度が、第1の温度センサが検出する温度よりも約10℃~約30℃程度低い温度となるような位置に配置される。
【0063】
火入れ全体としての加熱温度を測定する第1の温度センサは、バーナ5による遠赤外線の輻射熱の温度を優先的に検出するので、火入れ工程としての温度調整はこの第1の温度センサからの検出温度に基づき行えば良い。そして、バーナ5を点火して設定温度に達したところでトラフ2~4に茶葉を流し始め、その状態でヒータ30をオン動作させるようにする。
【0064】
ヒータ30の加熱温度を検出する第2の温度センサ40は、上述したように取付補助板39に取り付けられているため、各トラフ2~4とは非接触な状態に配置される。ヒータ30の設定温度は100℃以下(50℃~100℃)と低く、第1の温度センサにより検出される温度の方が高いため、ヒータ30をオン動作させたとしても火入れの設定温度に変化は生じない。換言すれば、火入れの設定温度を変化させない程度のヒータ30による補助的な加熱が行われることとなる。
【0065】
すなわち、ヒータ30の設定温度はバーナ5の設定温度よりも低くする必要があり、例えば0℃~100℃、より好ましくは50℃~100℃の範囲内において、第2の温度センサ40からの検出温度に基づき適宜調整されることが好ましい。ヒータ30の加熱温度がバーナ5の設定温度より高くなってしまうと、火入れの設定温度が上昇してしまい、遠赤外線による香り引き出し効果が著しく薄れてしまうからである。
【0066】
火入れ工程における調整は、具体的には、バーナ昇降機構8を制御してバーナ5と茶葉との距離を適切に調整したり、バーナ5の火力を調整したり、ヒータ30の加熱温度を調整したりすることで行われる。これにより、茶葉の加熱乾燥を自動的且つ緻密に調整することができる。
【0067】
バーナ5の設定温度を、例えば上段レーンが約100℃、中段レーンが約110℃及び下段レーンが約130℃とした場合、上記のようにヒータ30の設定温度は100℃以下として、更にバーナ5の余熱温度及び保温材による保温温度を考慮すれば、ヒータ30による実際の加熱温度は平均的に約50℃~約60℃であることが判明した。火入れ装置100における火入れ性能とは、茶葉の素材を活かせる範囲で強い火がどこまで入れられるか、或いは思い切った火入れができるかにより左右されるので、結果的に強い火入れができるほど火入れ性能が高く、茶葉の香りと旨味を引き出すことが可能である。なお、茶葉の色味を保ったまま火入れするためには、できるだけ短時間で熱エネルギーを茶葉に与えて加熱乾燥することが必要となる。
【0068】
このような点を考慮して、第1の実施形態の火入れ装置100では、バーナ5のみならずヒータ30によりトラフ2~4を僅かに補助的に加熱するよう構成した。これにより、ヒータ30を備えない火入れ装置とバーナ5による火入れ設定温度を同じにした場合であっても、より強い火が入り水色の濃い旨味を引き出すことが可能となった。
【0069】
なお、各トラフ2~4における茶葉は、蒸らすことなく少量をできるだけ薄くのばして流し、一葉一葉に弱火で時間をかけてじっくり火入れすることが好ましいが、第1の実施形態の火入れ装置100によれば、バーナ5とヒータ30により温度制御や温度調整が容易な状態で火入れを行うので、茶葉の加熱乾燥をより均等且つ均一に行うことが可能となる。
【0070】
すなわち、フィーダ17によって、茶葉が各トラフ2~4の溝2a,3a,4a上で重なることがない程度、すなわち茶層から各トラフ2~4の溝2a,3a,4aの底面の表面が見え隠れする程度に、茶層が薄くなるように茶葉を供給するが、これに加えて火入れの温度に関してはバーナ5及びヒータ30を制御して最適に調整するので、加熱乾燥をより均等且つ均一に行うことができる。
【0071】
図8は、火入れ装置100の変形例を示す拡大断面図、
図9は、火入れ装置100の他の変形例を示す拡大断面図である。
図8及び
図9に示すように、火入れ装置100のトラフ2は、例えばW方向に茶葉が送られる溝2aが所定間隔をおいて2列平行に設置されたものであっても良い。トラフ3,4についても、溝3a,4aが同様に2列平行に設置されても良い。2つの溝2aが平行に形成されたトラフ2は、例えば一つの溝2aを備えた金属板を繋ぎ合わせて形成したり、上記のような一枚板を折り曲げ加工して形成したりすることができる。これらの溝2aのW方向の最外側の端部近傍には、それぞれ裏面2c側に上記のようなヒータ30が配設される。なお、ヒータ30は、各溝2aのW方向の中心部に近い端部近傍には、それぞれ設けられなくて良い。中心部に近ければ各バーナ5の加熱により重なり合う輻射熱によって、懸念されるほどの温度低下が発生しないからである。
【0072】
また、火入れ装置100のバーナ5は、トラフ2の各溝2a毎にそれぞれ対向配置されてもよい。これらバーナ5は、
図8に示すように、2列のバーナ5が一つのステー14により連結され、一つのバーナ昇降機構8により同時に昇降可能に構成されても、
図9に示すように、それぞれのバーナ5が別々のバーナ昇降機構8により独自に昇降可能に構成されても良い。このように構成すれば、上述した作用効果と共に更に茶葉の火入れ処理能力をより一層向上させることが可能となる。
【0073】
[第2の実施形態]
図10は、本発明の第2の実施形態に係る火入れ装置の一部を切り欠いて概略的に示す正面図、
図11は
図10のD矢視図である。なお、以降の説明においては、第1の実施形態及びその変形例と同一又は相当する構成要素に関しては、同一の符号を付しているので、重複する説明は省略する。
【0074】
図10及び
図11に示すように、第2の実施形態に係る火入れ装置100Aは、次の点で第1の実施形態に係る火入れ装置100と相違している。すなわち、第2の実施形態の火入れ装置100Aは、フィーダ17の前段に茶葉を加湿する加湿機構220を有する点、上段レーンのトラフ120及び中段レーンのトラフ130からなる上下二段のレーンが、それぞれ第1トラフユニット121,131、第2トラフユニット122,132、第3トラフユニット123,133及び第4トラフユニット124,134の複数のトラフユニットからなる点、トラフ120の第1~第3トラフユニット121,122及び123に跳ね板210が設けられている点、バーナ105が、複数のバーナユニット105A,105B,105Cを有する点、並びにバーナ105が、各トラフユニットに対してその長手方向がトラフの短手方向と平行となるように設けられている点、が第1の実施形態の火入れ装置100と相違している。
【0075】
加湿機構220は、火入れのときの茶葉に対する外気の影響を極力避けるために設けられる。具体的には、加湿機構220は、フィーダ17からトラフ120の第1トラフユニット121に移動する直前の茶葉に対し、湿度60%程度の雰囲気を作り出すものである。この湿度60%程度の雰囲気は、火入れに最も適した湿度と言われており、このような加湿機構220を備えることで、この雰囲気中に茶葉を通過させることができ、これにより、茶葉に対して少ししんなりする程度の適度な湿度が与えられ、より熱を吸収しやすくさせて、香りと味成分を出やすくさせることが可能となる。
【0076】
すなわち、茶葉供給装置60からホッパ9に投入された茶葉はフィーダ17によってトラフ120の第1トラフユニット121に載せられる。そして例えば振動により第1~第4トラフユニット121~124移動して火入れが行われる。この火入れの前(すなわち、第1トラフユニット121に載せられる前)に加湿機構220によって茶葉に適度な湿り気を持たせるようにした本出願人の試験によると、火入れ後の色が鮮やかになりより鮮明になると共に、味に旨味が増すことが確認されている。なお、加湿機構220には加湿ノズル(図示せず)と湿度計221が取り付けられている。加湿ノズルからは水又はお湯等が噴霧され、湿度計221によって加湿機構220内の湿度が測定される。従って、加湿ノズルからの噴霧量を調整することにより、茶葉に与える湿度の調整を行うことができる。
【0077】
上段レーンのトラフ120及び中段レーンのトラフ130は、それぞれ第1~第4トラフユニット121~124,131~134が、茶葉の搬送方向に沿って下がるように段々に重なりあう階段状構造に配置されている。すなわち、各トラフユニット121~124,131~134は、茶葉の搬送方向の下流に向けて徐々に高さが低くなるように多段に配置され、図示しない茶葉送出機構6によって振幅運動させられる。
【0078】
跳ね板210は、例えばトラフ120において、第1~第4トラフユニット121~124のうちの少なくとも一つの端部に設けられていれば良く、図示の例では茶葉の搬送方向中間辺りに端部が来るように配置された第2トラフユニット122のみならず、第1及び第3トラフユニット121,123の端部にもそれぞれ設けられている。具体的には、跳ね板210は、トラフ120の第1~第3トラフユニット121~123において、茶葉の搬送方向下流側の溝2aの底面2bの端部に、それぞれ例えばリベット211により取付固定されている。このように設けられた跳ね板210は、例えばトラフ120(第1~第3トラフユニット121~123)の厚さが3mm~5mmとすると、0.1mm~0.2mm程度の厚さ、すなわち、トラフ120よりも薄い板状部材(薄板)からなる。跳ね板210は、溝2aに対して、W方向はほぼ同じ寸法で形成され、搬送方向には開放端部から30mm~100mm程度の所定の長さで延出するように設けられる。
【0079】
跳ね板210は、第1~第3トラフユニット121~123が振動することにより、
図10中矢印Nで示す上下方向に振動が倍加するように動く。これにより、トラフ120を流れてきた茶葉は、跳ね板210を通過するときに大きく煽られるように跳ね上げられ、例えば回転させられて下流側のトラフユニットに載るときに適度に混合される。
【0080】
従って、火入れ装置100Aは、跳ね板210の作用により茶葉を回転混合しながら裏表なく均一に火入れすることができるので、例えば火入れがし難い粒状の原料等、様々な原料に対しても容易且つ均一に火入れを行うことが可能となる。なお、海苔などの茶葉に比べて少し大きめの原料を火入れする場合は、跳ね板210を先端側が基端側よりも上方に位置するように、例えば跳ね板210の搬送方向先端側を上方向に向けて少し曲げた形状にして取り付けておけば、よりスムーズな回転を付与できることが確認されている。この跳ね板210は、第1~第4トラフユニット121~124,131~134の全てに設けられても良く、任意のトラフユニットのみに設けられていても良い。
【0081】
バーナ105は、トラフ120の第1~第4トラフユニット121~124に対し、それぞれ1セットずつ4つ設けられている。各バーナ105のセットは、複数のバーナユニット105A,105B,105Cにより構成されている。また、各バーナ105のセットは、図示しないバーナ昇降機構の機能を兼ねたバーナコントローラ106により、加熱温度や加熱態様、トラフユニット121~124との間の距離等を自在に調整し得る構造となっている。
【0082】
バーナ105は、各バーナユニット105A,105B,105Cが、その長手方向がトラフ120の短手方向(W方向)と平行となるように設けられている。すなわち、各バーナユニット105A~105Cは、その長手方向が茶葉の搬送方向と交差する態様、具体的には、
図11に示すように、第2トラフユニット122のW方向にそれぞれの長手方向が沿って、且つ茶葉の搬送方向に並ぶように各バーナユニット105A~105Cが並設された状態で設けられる。他のトラフユニット121,123,124に対してもバーナ105は同様に設けられるため、以下では第2トラフユニット122を例に挙げて説明する。
【0083】
ヒータ30は、第2トラフユニット122の裏面側に、バーナユニット105A等の長手方向と交差する方向、すなわち第2トラフユニット122の長手方向に沿って線状に配置されている。
【0084】
このように構成すれば、第1の実施形態の火入れ装置100の作用効果と同様に、ヒータ30による補助的な温度制御や温度調整がより有用となる構造を実現して更に茶葉の火入れ処理能力をより一層向上させることができる。これと共に、バーナ105がこのようにセット単位で配置され、且つトラフ120等も各トラフユニット121~124等に分割された構成となっているので、セット単位やユニット単位で火入れ装置の規模を増設、或いは削減することが容易な構造を実現する。なお、第2の実施形態においても、バーナ105、トラフ120等の配置数やユニット数或いはヒータ30の数などは、任意に変更可能である。
【0085】
以上、本発明のいくつかの実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0086】
例えば、上記の第1の実施形態では、トラフ2等の長手方向とバーナ5の長手方向とが同方向(平行)となるようにトラフ2等に対してバーナ5が配置されていたが、第2の実施形態のバーナ105をトラフ2等に対してセット単位で適用するようにしても良い。これとは逆に、第1の実施形態のバーナ5を第2の実施形態のトラフ120等に適用するようにしても良い。
【符号の説明】
【0087】
1 多段フレーム
2,3,4,120,130 トラフ
2a,3a,4a 溝
5,105 バーナ
5a ガスバーナ
5b セラミックプレート
6 茶葉送出機構
7 板ばね
8 バーナ昇降機構
9 ホッパ
17 フィーダ
30 ヒータ
60 茶葉供給装置
100,100A 火入れ装置
105A,105B,105C バーナユニット
106 バーナコントローラ
121,131 第1トラフユニット
122,132 第2トラフユニット
123,133 第3トラフユニット
124,134 第4トラフユニット
210 跳ね板