(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】監視カメラ
(51)【国際特許分類】
G03B 17/56 20210101AFI20240109BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20240109BHJP
G03B 17/02 20210101ALI20240109BHJP
H04N 23/50 20230101ALI20240109BHJP
G03B 11/04 20210101ALI20240109BHJP
【FI】
G03B17/56 H
G03B15/00 S
G03B17/02
H04N23/50
G03B11/04 C
(21)【出願番号】P 2020035962
(22)【出願日】2020-03-03
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】320008672
【氏名又は名称】i-PRO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 穣二
(72)【発明者】
【氏名】安田 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】岡 雅人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 利明
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英二
【審査官】登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-084525(JP,A)
【文献】特開2018-000144(JP,A)
【文献】特開2018-050247(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0267715(US,A1)
【文献】中国実用新案第204887200(CN,U)
【文献】中国実用新案第204425481(CN,U)
【文献】韓国登録特許第10-1729061(KR,B1)
【文献】独国実用新案第202014102649(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 11/04
G03B 15/00
G03B 17/02
G03B 17/56
H04N 23/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズを内方に配置した先端筒部が前面ガラスで塞がれる筐体と、
前記筐体の上面に設けられ、先端鍔部が前記前面ガラスより前方に突出する庇部材と、
前記先端鍔部に設けられ
、害虫の接近を抑制する薬剤を含有した忌避部材と、を備え
、
前記忌避部材は、前記薬剤を含有して成形された樹脂製のキャップ材であり、
前記キャップ材は、前記先端鍔部の上面に着脱自在に取り付けられる、
監視カメラ。
【請求項2】
前記忌避部材は、シート状に形成されて一方の面に粘着層を備えたシート材であり、
前記シート材は、前記先端鍔部の少なくとも上面および側面に貼着される、
請求項1に記載の監視カメラ。
【請求項3】
前記忌避部材は、前記薬剤を含有して帯状に形成され、一方の面に粘着層を備えたテープ材であり、
前記テープ材は、前記先端筒部の外周に貼着される、
請求項2に記載の監視カメラ。
【請求項4】
前記テープ材は、帯幅寸法が、10mmまたは前記先端筒部における直径の1/10のいずれか大きい値である、
請求項3に記載の監視カメラ。
【請求項5】
レンズを内方に配置した先端筒部が前面ガラスで塞がれる筐体と、
前記筐体の上面に設けられ、先端鍔部が前記前面ガラスより前方に突出する庇部材と、
前記先端鍔部の上面から前方に突出して設けられ
、害虫の接近を抑制する薬剤を含有して成形された樹脂製かつ棒状の忌避部材と、を備える、
監視カメラ。
【請求項6】
前記先端鍔部の上面に、揺動軸を中心に揺動自在な忌避部材保持部が固定され、
前記忌避部材の基端が、前記忌避部材保持部に空けられた保持穴に対して着脱自在に取り付けられる、
請求項
5に記載の監視カメラ。
【請求項7】
レンズを内方に配置した先端筒部が前面ガラスで塞がれる筐体と、
前記筐体の上面に設けられ、先端鍔部が前記前面ガラスより前方に突出する庇部材と、
前記先端鍔部の上面に取り付けられるケースと、
前記ケース内に装着され
、害虫の接近を抑制する薬剤を含有して供給リールに巻回された長尺テープ材である忌避部材の先端が巻取りリールに固定されるテープカートリッジと、
前記ケース内に設けられ、前記巻取りリールをテープ巻き取り方向に回転駆動する巻取りモータと、
前記ケースに基端が固定されて前記先端筒部の外周を略半分ずつ覆って前記先端筒部を挟み、前記供給リールと前記巻取りリールとの間の前記忌避部材を前記先端筒部の外周に沿って走行ガイドするテープガイドと、を備える、
監視カメラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、監視カメラに関する。
【背景技術】
【0002】
屋外で使用されることが多い監視カメラは、カメラレンズ、あるいはカメラレンズを覆う前面ガラスを透して、監視対象エリアを撮像する。ところが、このような監視カメラでは、屋外での使用となることから前面ガラス等の前方に、蜘蛛の巣が張られることがある。監視カメラは、前面ガラスの前に、蜘蛛の巣等の障害物が存在すれば、撮像光が遮られ、本来撮像しようとする被写体の画質が低下する。このため、従来では、蜘蛛の巣等の障害物が手作業にて除去されていたが、手間がかかるとともに設置位置が高所となる場合が多いため危険な作業となった。
【0003】
特許文献1には、前面ガラス前方の障害物を自動除去するカメラハウジングが開示されている。このカメラハウジングは、風力で羽根車を回転させ、羽根車下部に取付けた回転板を回転させて、蜘蛛の巣を除去する。カメラハウジングは、使用するテレビカメラを収納し、カメラハウジングの前方に設けられた風力により回転する羽根車と、羽根車の回転により、カメラハウジングの前方で回転する回転板とを有し、カメラハウジング前面の視界障害物を風力による回転板の回転により除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来のカメラハウジングは、風力を利用することによりカメラハウジング前方の障害物を除去するので、無風時の回転板が回転していない間には、蜘蛛の巣がつくられるという課題があった。
【0006】
ところで、監視カメラには、撮像された画像を解析して画像中に移動体(例えば不審な人物)を検知できるものもある。この種の監視カメラでは、移動体を検知した後、移動体の検知に伴って警報(アラーム)を発報する。従って、特に夜間に蜘蛛の巣自体あるいは巣に絡まった獲物等が風により移動すると、撮像用に照らされる照明光が蜘蛛の巣あるいは獲物等に反射した光により移動体を検知したと誤って解析してしまい、誤報を発することによって、監視精度が劣化する可能性があった。例えば誤報が警備会社等に送信されれば、不要な出動等が発生することもある。また、上記のカメラハウジングにおいても、一旦張られた蜘蛛の巣が、除去される際に回転板の回転で移動すれば、同様に移動体を検知したと誤って解析してしまい、誤報を発することによって監視精度が劣化する可能性があった。
【0007】
本開示は、上述した従来の事情に鑑みて案出され、撮像される画像の画質の低下および監視精度の劣化を抑制する監視カメラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、レンズを内方に配置した先端筒部が前面ガラスで塞がれる筐体と、前記筐体の上面に設けられ、先端鍔部が前記前面ガラスより前方に突出する庇部材と、前記先端鍔部に設けられ、害虫の接近を抑制する薬剤を含有した忌避部材と、を備え、前記忌避部材は、前記薬剤を含有して成形された樹脂製のキャップ材であり、前記キャップ材は、前記先端鍔部の上面に着脱自在に取り付けられる、監視カメラを提供する。
【0009】
また、本開示は、レンズを内方に配置した先端筒部が前面ガラスで塞がれる筐体と、前記筐体の上面に設けられ、先端鍔部が前記前面ガラスより前方に突出する庇部材と、前記先端鍔部の上面から前方に突出して設けられ、害虫の接近を抑制する薬剤を含有して成形された樹脂製かつ棒状の忌避部材と、を備える、監視カメラを提供する。
【0010】
また、本開示は、レンズを内方に配置した先端筒部が前面ガラスで塞がれる筐体と、前記筐体の上面に設けられ、先端鍔部が前記前面ガラスより前方に突出する庇部材と、前記先端鍔部の上面に取り付けられるケースと、前記ケース内に装着され、害虫の接近を抑制する薬剤を含有して供給リールに巻回された長尺テープ材である忌避部材の先端が巻取りリールに固定されるテープカートリッジと、前記ケース内に設けられ、前記巻取りリールをテープ巻き取り方向に回転駆動する巻取りモータと、前記ケースに基端が固定されて前記先端筒部の外周を略半分ずつ覆って前記先端筒部を挟み、前記供給リールと前記巻取りリールとの間の前記忌避部材を前記先端筒部の外周に沿って走行ガイドするテープガイドと、を備える、監視カメラを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、撮像される画像の画質の低下および監視精度の劣化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1に係る監視カメラ100の外観斜視図
【
図5】テープ材の幅寸法と忌避効能の実験結果を表す相関図
【
図6】実施の形態1の変形例に係る監視カメラ100Aの斜視図
【
図7】実施の形態1の変形例に係る監視カメラ100Aの先端鍔部を下方より見た斜視図
【
図10】キャップ材の側部係止構造を表す要部拡大斜視図
【
図11】実施の形態2に係る監視カメラ200の斜視図
【
図13】実施の形態3に係る監視カメラ300の斜視図
【
図14】
図13に示したテープカートリッジおよびテープガイドの斜視図
【
図15】実施の形態1に係るシート材が多数積層された監視カメラの側面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、適宜図面を参照しながら、本開示に係る監視カメラを具体的に開示した実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0014】
(実施の形態1)
先ず、実施の形態1に係る監視カメラ100を説明する。
図1は、実施の形態1に係る監視カメラ100の外観斜視図である。実施の形態1に係る監視カメラ100は、ボックス型である。監視カメラ100は、設置環境が例えば屋外である。なお、監視カメラ100は、工場あるいは倉庫内などの屋内に設置されても構わない。
【0015】
監視カメラ100は、筐体11と、庇部材13と、忌避部材とを主要な構成として有する。
【0016】
筐体11は、ベース部15を介して建物の外壁等の外壁面に固定される。ベース部15の略中央部分あるいは中央部分には、垂直に突出する支持杆17が設けられる。支持杆17の先端には、ベース側ブラケット19が第1回転軸21を中心に回転自在に支持される。第1回転軸21は、上述した外壁面(沿直面)に対して所定の角度(45度程度)で前傾している。支持杆17とベース側ブラケット19とは、第1回転軸21回りの回転方向aで回転する。この回転は、固定ねじ23により固定可能となる。ベース側ブラケット19の先端には、カメラ側ブラケット25が第2回転軸27を中心に回転自在に支持される。第2回転軸27は、外壁面に沿う方向となる。ベース側ブラケット19とカメラ側ブラケット25とは、第2回転軸回りの回転方向bで回転する。この回転は、固定ねじ29により固定可能となる。カメラ側ブラケット25の上端には、カメラベース31がチルト軸33を中心に回転自在に支持される。カメラ側ブラケット25とカメラベース31とは、チルト軸回りの回転方向cで回転する。この回転は、固定ねじ35により固定可能となる。
【0017】
監視カメラ100は、第1回転軸21、第2回転軸27およびチルト軸33を中心とした回転を組み合わせることにより、ベース部15より前方のほぼ任意な方向へ撮像方向を向けることが可能となる。なお、第1回転軸21、第2回転軸27およびチルト軸33を中心とした回転は、360度以下の回転角度に規制されている。
【0018】
筐体11は、カメラベース31に支持される略直方体の本体ケース37を有する。本体ケース37の前部には、フロントケースである略円筒状の先端筒部39を有する。本体ケース37を挟んで先端筒部39の反対側には、バックカバー41が設けられる。筐体11は、カメラレンズ43(レンズの一例)を内方に配置した先端筒部39が、前面ガラス45で塞がれている。前面ガラス45の内側には、カメラレンズ43の外周に沿うようにして赤外光照射部(図示略)が配置される。赤外光照射部は、夜間照明用のLED(Light Emission Diode)を備える。なお、先端筒部39を外部から塞ぐものとして、前面ガラス45の代わりに、透明樹脂成型品あるいは透明樹脂板等であってもよい。
【0019】
筐体11の上面には、太陽光などの外光のカメラレンズ43への入射を抑制するサンシェードである庇部材13が設けられる。庇部材13は、前面ガラス45より前方に突出する先端鍔部47を有する。庇部材13は、筐体11の上面を覆うカメラ前後方向に長い矩形板部49を有して形成される。矩形板部49は、先端側が先端鍔部47となる。矩形板部49は、両側の長辺部から下方に折り曲げられて、先端筒部39、本体ケース37およびバックカバー41の上部を覆う一対の側板部51を有する。矩形板部49は、先端筒部39を覆う部分が先端鍔部47となる。側板部51は、先端鍔部47において、先端に向かって徐々に先端鍔部47に接近して折り曲げ部分がなくなる傾斜辺を有する。
【0020】
先端鍔部47には、忌避部材が設けられる。忌避部材は、蜘蛛等の害虫の接近を抑制する薬剤(防虫成分)を含有して形成される。なお、薬剤は、蜘蛛の他、例えば、ゴキブリ、蟻、ムカデ等や、ネズミ等の小動物あるいは害虫等にも有効となる。薬剤は、天然由来成分を用いた害虫忌避組成物であり、かつ常温常湿の場所はもちろんのこと、高温多湿の場所であっても、害虫忌避成分を除放することができ、長期間に亘って害虫忌避効果を発揮することが可能となる。
【0021】
この薬剤を含有する忌避部材としては、例えば株式会社ニックス社製の製品ARINIX(登録商標)等を用いることができる。この天然由来成分の害虫忌避剤としては、例えば、タイワンヒノキ、アスナロ、ヒノキアスナロ(青森ヒバ)等に含まれるヒノキチオールや、ヒノキに含まれるカジノール誘導体(α-カジノール、T-カジノール)や、クローブ、ナツメグ、コリアンダー、クミン等の香油植物に多く含まれるゲラニオール、ピネン、カリオフィレン、ボルネオール、オイゲノール等が挙げられる。
【0022】
図2は、
図1に示した監視カメラ100の要部拡大図である。実施の形態1に係る監視カメラ100では、忌避部材が、シート材53となる。シート材53は、例えば、半透明の薄厚(0.2mm程度)なシート状に形成される。シート材53は、一方の面に粘着層が設けられる。粘着層は、一方のシート面に塗布等により設けられてもよく、両面粘着シートが貼り合わされて設けられてもよい。シート材53は、粘着面に離型紙が貼られ、この離型紙を剥離することにより、先端鍔部47に容易に貼着される。
【0023】
図3は、
図2の平面図である。シート材53は、先端鍔部47の少なくとも上面および側面55に貼着される。先端鍔部47は、両側に、側板部51が垂下して折り曲げられているので、シート材53は、先端鍔部47および一対の側板部51を含んだ1枚の展開形状で切り取られ、切れ目無く先端鍔部47と両側の側板部51とに渡って連続して貼着される。なお、実施の形態1では、シート材53が先端鍔部47および側板部51に貼着される例を説明するが、シート材53は、庇部材13の上面全体および全ての側板部51に貼着されてもよい。また、これに加えて、シート材53は、先端鍔部47の下面に貼着されてもよい。
【0024】
図4は、
図2の側面図である。監視カメラ100は、上述した薬剤と同様の効能を含有して帯状に形成されたテープ材57が、直径Bを有する先端筒部39の外周に貼着されてもよい。テープ材57は、一方の面に粘着層を備えることにより、先端筒部39の全外周に貼着される。上記のシート材53は、シート材先端位置が、先端鍔部47の先端に一致して貼着される。テープ材57は、テープ材先端位置が、シート材後端位置59と一致する。テープ材57は、このテープ材先端位置から所定の帯幅寸法Aを有して形成される。
【0025】
図5は、テープ材57の幅寸法と忌避効能の実験結果を表す相関図である。先端筒部39の外周に貼着されるテープ材57は、実験で得られた知見により、帯幅寸法Aが、10mmまたは先端筒部39における直径Bの1/10のいずれか大きい値で設定される。テープ材57の帯幅寸法Aは、
図5に示すように、3mmまたは先端筒部39における直径Bの1/30のいずれか大きい値では、10mmまたは先端筒部39における直径Bの1/10のいずれか大きい値の時の効能と比べると効能(効果)が相当に小さい。また、テープ材57の帯幅寸法Aは、5mmまたは先端筒部39における直径Bの1/20のいずれか大きい値では、10mmまたは先端筒部39における直径Bの1/10のいずれか大きい値の時の効能(効果)と比べると劣るが、一定の蜘蛛等の害虫の忌避効果が得られた。さらに、テープ材57は、帯幅寸法Aを、10mmまたは先端筒部39における直径Bの1/10のいずれか大きい値とすることにより、確実かつ十分な効果が得られることが分かった。
【0026】
次に、実施の形態1に係る監視カメラ100の作用を説明する。
【0027】
実施の形態1に係る監視カメラ100は、レンズ(例えばカメラレンズ43)を内方に配置した先端筒部39が前面ガラス45で塞がれる筐体11と、筐体11の上面に設けられ、先端鍔部47が前面ガラス45より前方に突出する庇部材13と、先端鍔部47に設けられ、蜘蛛等の害虫の接近を抑制する薬剤を含有した忌避部材と、を備える。
【0028】
実施の形態1に係る監視カメラ100では、カメラレンズ43を有するカメラが、筐体11に収容される。筐体11は、箱状の本体ケース37の先端に、例えば円筒状の先端筒部39を有している。先端筒部39は、軸線に光軸を沿わしたカメラレンズ43を内方に配置している。この先端筒部39は、カメラレンズ43の前方で、前面ガラス45により塞がれる。つまり、監視カメラ100は、前面ガラス45を通った光がカメラレンズ43により、撮像素子の受光面に結像される。なお、カメラは、前面ガラス45に代えて、カメラレンズ43が最前面に配置されるものであってもよい。また、筐体11は、夜間照明用のLEDを備えることができる。
【0029】
この筐体11の上面には、先端鍔部47を有した庇部材13が設けられる。庇部材13は、筐体11の上面に取り付けられることで、先端鍔部47が、前面ガラス45より前方に突出して配置される。これにより、庇部材13は、カメラレンズ43へ入射する直接的な太陽光等の外光を遮蔽可能としている。
【0030】
先端鍔部47には、忌避部材が設けられる。忌避部材は、蜘蛛の接近を抑制する薬剤を含有して形成される。忌避部材は、プラスチックに薬剤を添加して成形した例えばシート材53、テープ材57、バー、長尺テープ材等とすることができる。
【0031】
監視カメラ100は、忌避部材が先端鍔部47の上面に設けられることにより、前面ガラス45より前方の上方へ突き出した先端鍔部47に、蜘蛛が接近しにくくなる。先端鍔部47は、蜘蛛が接近しなくなることにより、足場糸(円網の横糸を張る時の足場として網の中心から粗く張られる糸)等が張られなくなる。これにより、前面ガラス45の前方には、少なくとも先端鍔部47から張られる障害物としての蜘蛛の巣が作られにくくなる。これらの効果は、円網に限らず、その他の棚網、不規則網、皿網、扇網、条網等についても同様と考えられる。
【0032】
その結果、監視カメラ100では、蜘蛛の巣等の障害物が前面ガラス45の前方に作られにくくなるので、撮像光が遮られ、被写体の画質が劣化することが抑制される。そして、蜘蛛の巣等の障害物を手作業にて除去する必要がなくなるので、監視機能を維持するメンテナンス作業の労力および高所作業での危険性を大幅に軽減できる。
【0033】
これに加え、蜘蛛の巣等の障害物がカメラレンズ43の前方に作られにくくなるので、蜘蛛の巣自体や巣に絡まった獲物等が風により移動し、その撮像光によって移動体検知センサが作動することを低減できる。その結果、誤報の発報を抑制して、監視精度の劣化を抑制することができる。
【0034】
また、監視カメラ100において、忌避部材は、シート状に形成されて一方の面に粘着層を備えたシート材53である。シート材53は、先端鍔部47の少なくとも上面および側面55に貼着される。
【0035】
この監視カメラ100では、蜘蛛の接近を抑制する薬剤を含有したシート材53が、粘着層を介して先端鍔部47の上面および側面55に貼着される。シート材53を貼り付けるのみで、ガラスより前方の上方へ突き出した先端鍔部47に、蜘蛛が接近しにくくなる。先端鍔部47は、蜘蛛が接近しなくなることにより、足場糸等が張られなくなり、前面ガラス45の前方には、少なくとも先端鍔部47から張られる障害物としての蜘蛛の巣が作られにくくなる。
【0036】
この監視カメラ100では、忌避部材がシート材53となるので、殆ど目立たず、監視カメラ100の見栄えを損ねることがない。また、忌避部材を安価にできる。また、シート材53は、粘着層を離型紙で剥離可能に覆い、所定形状に切断しておくことにより、庇部材13に容易に貼着することができる。また、筐体11からの突出部材が無いので、忌避部材に風圧が作用することによる筐体11の振動も生じることがない。
【0037】
また、監視カメラ100では、薬剤を含有して帯状に形成され、一方の面に粘着層を備えたテープ材57が、先端筒部39の外周に貼着される。
【0038】
また、この監視カメラ100では、先端鍔部47に貼着されたシート材53に加え、先端筒部39の外周にも、蜘蛛の接近を抑制する薬剤を含有したテープ材57が貼着される。その結果、さらに蜘蛛が接近しなくなり、前面ガラス45の前方には、障害物としての蜘蛛の巣がより作られにくくなる。
【0039】
また、監視カメラ100において、テープ材57は、帯幅寸法が、10mmまたは先端筒部39における直径の1/10のいずれか大きい値である。
【0040】
この監視カメラ100では、テープ材57の帯幅寸法Aが、10mm以上に設定されることにより、忌避効果を確保することができる。また、先端筒部39の直径Bが100mm以上の監視カメラ100では、大型の蜘蛛が巣を作ることが考えられる。その場合においても、テープ材57が、先端筒部39における直径Bの1/10で確保されることになるので、蜘蛛のサイズに応じ帯幅寸法Aを大きくして忌避効果を高めることが可能となる。
【0041】
次に、実施の形態1の変形例に係る監視カメラ100Aを説明する。
【0042】
図6は、実施の形態1の変形例に係る監視カメラ100Aの斜視図である。実施の形態1の変形例に係る監視カメラ100Aでは、忌避部材が、薬剤を含有して成形された樹脂製のキャップ材61となる。キャップ材61は、先端鍔部47の上面に着脱自在に取り付けられる。
【0043】
キャップ材61は、庇部材13の先端鍔部47と、先端鍔部47の両側の側板部51とを覆って装着される。キャップ材61は、先端鍔部47とほぼ同形状のキャップ本体部63の後端両側に、両側の各側板部51に係止可能となる一対の側板係止腕65が形成される。
【0044】
図7は、実施の形態1の変形例に係る監視カメラ100Aの先端鍔部47を下方より見た斜視図である。キャップ材61は、外形が先端鍔部47の外形よりも若干延出して形成される。これにより、蜘蛛等の害虫による足場糸を、より張りにくくすることができる。キャップ本体部63の先端中央には、先端係止板67が形成されている。先端係止板67は、キャップ本体部63の先端とで、先端鍔部47の先端を挟む。これにより、キャップ材61は、後方への離脱および上方への浮き上がりが規制される。
【0045】
図8は、キャップ材61を斜め下方より見た斜視図である。キャップ本体部63には、先端係止板67の反対側に、後端係止爪69が形成される。また、両側のそれぞれの側板係止腕65には、側板部51を下方より受け入れる係合溝部71が形成されている。
【0046】
図9は、キャップ材61の上部係止構造を表す断面図である。キャップ材61は、後端係止爪69が、先端鍔部47の段部73に係止することにより、前方への離脱が規制される。つまり、キャップ材61は、先端係止板67と後端係止爪69とにより、前端の浮き上りおよび前後方向の移動が規制される。
【0047】
図10は、キャップ材61の側部係止構造を表す要部拡大斜視図である。さらに、キャップ材61は、両側の側板係止腕65に形成された係合溝部71が、左右それぞれの側板部51の下方から係合することにより、後端の浮上が規制され、風圧等によっても容易に脱落しないように確実な装着が可能となる。
【0048】
次に、実施の形態1の変形例に係る監視カメラ100Aの作用を説明する。
【0049】
監視カメラ100Aでは、忌避部材が、薬剤を含有して成形された樹脂製のキャップ材61であり、キャップ材61が、先端鍔部47の上面に着脱自在に取り付けられている。
【0050】
この監視カメラ100Aでは、忌避部材が、薬剤を含有して成形された樹脂製のキャップ材61となる。キャップ材61は、先端鍔部47に、着脱自在に取り付けられる。忌避部材がキャップ材61となるので、殆ど目立たず、監視カメラ100Aの見栄えを損ねることがない。また、筐体11からの突出部材が無いので、忌避部材に風圧が作用することによる筐体11の振動も生じることがない。さらに、薬効が低下したキャップ材61は、先端鍔部47から脱着して廃棄し、新しいキャップ材61を先端鍔部47に装着して交換することにより、薬効を容易に更新させることができる。これにより、監視カメラ100Aは、常に、最適な薬効を維持することができる。
【0051】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2に係る監視カメラ200を説明する。監視カメラでは、近傍に位置する建物躯体や、樹木の枝から張られる網も抑制可能としたい場合がある。
【0052】
図11は、実施の形態2に係る監視カメラ200の斜視図である。なお、実施の形態2において、実施の形態1に係る監視カメラ100の構成(具体的には、
図1~
図4に示した部材・部位)と同等の部材・部位には同一の符号を付し重複する説明は省略する。
【0053】
実施の形態2に係る監視カメラ200は、先端鍔部47の上面から前方に突出する樹脂製かつ棒状の忌避部材(例えばバー75)が設けられる。バー75は、先端鍔部47の上面から前方へ突出して設けられる。バー75は、実施の形態1と同様に蜘蛛の接近を抑制する効能を有する薬剤をプラスチックに添加した樹脂製の成形品として作られている。バー75は、丸棒状、角棒状、細長い矩形板状(棒状の一例)とすることができる。
【0054】
先端鍔部47の上面には、揺動軸77を中心に揺動自在な忌避部材保持部の一例としてのバー保持部79が固定される。バー保持部79は、ベース片81を有する。ベース片81は、両面粘着テープ等により先端鍔部47の上面に固定される。ベース片81には、一対の支持片83が平行に起立し、この支持片83は揺動軸77の両端を支持する。揺動軸77には、バー保持部79が揺動自在に支持される。バー保持部79には、バー75の基端が挿入される保持穴85が形成される。バー75は、保持穴85に対して着脱自在に取り付けられる。バー保持部79は、例えば揺動軸77に、ねじ軸を用いることができる。ねじ軸は、一対の支持片83を貫通してナットに螺合することにより、一対の支持片83を締め付けてバー75を所定の揺動角度で固定可能にできる。
【0055】
図12は、
図11に示した監視カメラ200の側面図である。監視カメラ200は、遠くの被写体を撮像する場合には、カメラレンズ43を含む光学系が焦点距離の長い望遠側に設定される。一方、比較的近くの被写体を撮像する場合には、カメラレンズ43を含む光学系が焦点距離の短い広角側に設定される。望遠設定時には、光軸が水平のとき、カメラレンズ43の光軸に対する仰角および伏角は、小さくなる(例えば20度程度)。一方、広角設定時には、光軸が水平のとき、カメラレンズ43の光軸に対する仰角および伏角が大きくなる(例えば45度程度)。
【0056】
先端鍔部47の上面から前方へ突出して設けられるバー75は、この内、仰角の範囲よりも上側に配置されように所定の角度範囲θ(
図12参照)で揺動角度が角度調節されて、撮像画像に映り込まないように配置される。
【0057】
次に、実施の形態2に係る監視カメラ200の作用を説明する。
【0058】
監視カメラ200は、カメラレンズ43を内方に配置した先端筒部39が前面ガラス45で塞がれる筐体11と、筐体11の上面に設けられ、先端鍔部47が前面ガラス45より前方に突出する庇部材13と、先端鍔部47の上面から前方に突出して設けられ、蜘蛛の接近を抑制する薬剤を含有して成形された樹脂製かつ棒状の忌避部材と、を備える。
【0059】
この監視カメラ200では、カメラレンズ43を有するカメラが、筐体11に収容される。筐体11は、箱状の本体ケース37の先端に、例えば円筒状の先端筒部39を有している。先端筒部39は、軸線に光軸を沿わしたカメラレンズ43を内方に配置している。この先端筒部39は、カメラレンズ43の前方で、前面ガラス45により塞がれる。つまり、監視カメラ200は、前面ガラス45を通った光がカメラレンズ43により、撮像素子の受光面に結像される。なお、カメラは、前面ガラス45に代えて、カメラレンズ43が最前面に配置されるものであってもよい。また、筐体11は、夜間照明用のLEDや移動体検知センサを備えることができる。
【0060】
この筐体11の上面には、先端鍔部47を有した庇部材13が設けられる。庇部材13は、筐体11の上面に取り付けられることで、先端鍔部47が、前面ガラス45より前方に突出して配置される。これにより、庇部材13は、カメラレンズ43へ入射する直接的な太陽光を遮蔽可能としている。
【0061】
先端鍔部47には、バー75が設けられる。バー75は、先端鍔部47の上面から前方へ突出して設けられる。バー75は、蜘蛛の接近を抑制する上記と同様の薬剤をプラスチックに添加した樹脂製の成形品として作られている。バー75は、丸棒状、角棒状、細長い矩形板状とすることができる。棒状のバー75は、風の抵抗を小さくして、強風時における筐体11の振動を抑制することができる。板状のバー75は、先端鍔部47の上方空間において、空気に接する薬効面積を大きくし、蜘蛛の忌避効果を高めることができる。
【0062】
監視カメラ200は、バー75が先端鍔部47の上面に設けられることにより、前面ガラス45より前方の上方へ突き出した先端鍔部47に、蜘蛛が接近しにくくなる。先端鍔部47は、蜘蛛が接近しなくなることにより、足場糸(円網の横糸を張る時の足場として網の中心から粗く張られる糸)等が張られなくなる。これにより、前面ガラス45の前方には、少なくとも先端鍔部47から張られる障害物としての蜘蛛の巣が作られにくくなる。これらの効果は、円網に限らず、その他の棚網、不規則網、皿網、扇網、条網等についても同様と考えられる。
【0063】
その結果、監視カメラ200では、蜘蛛の巣等の障害物が前面ガラス45の前方に作られにくくなるので、撮像光が遮られ、被写体の画質が劣化することが抑制される。そして、蜘蛛の巣等の障害物を手作業にて除去する必要がなくなるので、監視機能を維持するメンテナンス作業の労力および高所作業での危険性を大幅に軽減できる。
【0064】
これに加え、蜘蛛の巣等の障害物がカメラレンズ43の前方に作られにくくなるので、蜘蛛の巣自体や巣に絡まった獲物等が風により移動し、その撮像光によって移動体検知センサが作動することを低減できる。その結果、誤報の発報を抑制して、監視精度の劣化を抑制することができる。
【0065】
さらに、この監視カメラ200では、先端鍔部47の上面のみを忌避部材の設置面積とする場合に比べ、先端鍔部47より前方上方の広い空間にバー75を突き出して、薬効を作用させることができる。バー75は、1本でもよいが、複数本とすることによりさらに薬効を高め、蜘蛛の忌避効果を増大させることができる。
【0066】
これにより、監視カメラ200は、庇部材13のみに限らず、監視カメラ200の近傍に位置する建物躯体や、樹木の枝から張られる網も抑制可能となる。
【0067】
また、監視カメラ200では、先端鍔部47の上面に、揺動軸77を中心に揺動自在なバー保持部79が固定され、バー75の基端が、バー保持部79に空けられた保持穴85に対して着脱自在に取り付けられる。
【0068】
この監視カメラ200では、先端鍔部47の上面に、バー保持部79が固定される。バー保持部79は、バー75の基端を保持する保持穴85が形成される。バー75は、基端をこの保持穴85に挿入することにより、バー保持部79を介して先端鍔部47に支持される。
【0069】
ここで、バー保持部79は、先端鍔部47の上面に沿う方向の揺動軸77を中心に揺動自在となる。バー75は、カメラレンズ43の光軸に対する挟角が調節可能となっている。
【0070】
監視カメラ200は、上記のように、光軸が水平のとき、望遠設定時には、カメラレンズ43の光軸に対する仰角および伏角が小さくなり、広角設定時には、カメラレンズ43の光軸に対する仰角および伏角が大きくなる。
【0071】
監視カメラ200は、この望遠設定時または広角設定時に応じて、バー保持部79を揺動させ、バー75を仰角の範囲よりも上側に配置できる。その結果、監視カメラ200は、望遠設定または広角設定に応じ、バー75が撮像画像に映り込まないようにして、最適位置にバー75を調節できる。また、薬効が低下したバー75は、保持穴85から抜き取って廃棄し、新しいバー75を保持穴85に挿入して交換することにより、薬効を容易に更新させることができる。これにより、監視カメラ200は、常に、最適な位置で、最適な薬効を維持することができる。
【0072】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3に係る監視カメラ300を説明する。監視カメラでは、忌避部材を交換する手間が省け、蜘蛛の巣除去作業におけるメンテナンスフリーを可能としたい場合がある。
【0073】
図13は、実施の形態3に係る監視カメラ300の斜視図である。なお、実施の形態3において、実施の形態1に係る監視カメラ100の構成(具体的には、
図1~
図4に示した部材・部位)と同等の部材・部位には同一の符号を付し重複する説明は省略する。
【0074】
実施の形態3に係る監視カメラ300は、ケース87と、テープカートリッジ89と、巻取りモータ91と、テープガイド93とを主要な構成として有する。
【0075】
ケース87は、先端鍔部47の上面に取り付けられる。このケース87には、テープカートリッジ89、巻取りモータ91が収容される。また、ケース87は、巻取りモータ91や、モータ制御回路に給電する電池(図示略)を収容してもよい、なお、監視カメラ300は、これらの電源を監視カメラ300の筐体11に収容されている電源部(図示略)より供給されるようにしてもよい。この場合、ケース87は、電池を収容する必要が無くなる。
【0076】
ケース87に収容されるテープカートリッジ89は、供給リール95と、巻取りリール97とを内方に備える。供給リール95には、蜘蛛の接近を抑制する上記と同様の薬剤を含有した長尺テープ材99が巻回される。この長尺テープ材99の先端は、巻取りリール97に固定される。巻取りモータ91は、この巻取りリール97をテープ巻き取り方向に回転駆動することにより、供給リール95に巻回された長尺テープ材99を巻取りリール97に巻き取る。
【0077】
図14は、
図13に示したテープカートリッジ89およびテープガイド93の斜視図である。ケース87には、テープガイド93の基端が固定される。テープガイド93は、一対の半円弧状部101を有し、先端筒部39の外周を略半分ずつ覆って先端筒部39を挟む。テープガイド93は、供給リール95と巻取りリール97との間の長尺テープ材99を、先端筒部39の外周に沿って走行ガイドする。
【0078】
カートリッジケース103の下面には、供給リール95と巻取りリール97との間の長尺テープ材99を、カートリッジケース103の外方(下方)へ引き出して迂回走行路を作るための一対のスリット開口部105が形成されている。スリット開口部105は、供給リール95の近傍と、巻取りリール97の近傍とで一対が離間して設けられている。なお、スリット開口部105は、これら一対のものが一つに繋がった開口部であってもよい。
【0079】
供給リール95に巻回された長尺テープ材99は、先端側がこの供給リール95の近傍のスリット開口部105から一旦カートリッジケースの外へ引き出される。引き出された長尺テープ材99は、テープガイド93の外周を走行した後、巻取りリール97の近傍のスリット開口部105からカートリッジケース103の中へ引き込まれて巻取りリール97に巻回される。カートリッジケース103の内部には、これら長尺テープ材99の走行経路を形成するための複数のガイドローラ107が設けられていてもよい。
【0080】
この監視カメラ300は、温度センサ、タイマ、テープ巻取制御部を備えてもよい。テープ巻取制御部は、温度センサおよびタイマからの検出信号およびカウント値に基づき、巻取りモータ91を駆動制御する。監視カメラ300は、巻取りモータ91をテープ巻取制御部により制御することにより、例えば蜘蛛が巣を張らない冬季を除く期間で、週一回、長尺テープ材99を自動巻き取りするように巻き取りスケジュールを設定することが可能となる。
【0081】
次に、実施の形態3に係る監視カメラ300の作用を説明する。
【0082】
監視カメラ300は、カメラレンズ43を内方に配置した先端筒部39が前面ガラス45で塞がれる筐体11と、筐体11の上面に設けられ、先端鍔部47が前面ガラス45より前方に突出する庇部材13と、先端鍔部47の上面に取り付けられるケース87と、ケース内に装着され蜘蛛の接近を抑制する薬剤を含有して供給リール95に巻回された長尺テープ材99の先端が巻取りリール97に固定されるテープカートリッジ89と、ケース内に設けられ、巻取りリール97をテープ巻き取り方向に回転駆動する巻取りモータ91と、ケース87に基端が固定されて先端筒部39の外周を略半分ずつ覆って先端筒部39を挟み、供給リール95と巻取りリール97との間の長尺テープ材99を先端筒部39の外周に沿って走行ガイドするテープガイド93と、を備える。
【0083】
この監視カメラ300では、カメラレンズ43を有するカメラが、筐体11に収容される。筐体11は、箱状の本体ケース37の先端に、例えば円筒状の先端筒部39を有している。先端筒部39は、軸線に光軸を沿わしたカメラレンズ43を内方に配置している。この先端筒部39は、カメラレンズ43の前方で、前面ガラス45により塞がれる。つまり、監視カメラ300は、前面ガラス45を通った光がカメラレンズ43により、撮像素子の受光面に結像される。なお、カメラは、前面ガラス45に代えて、カメラレンズ43が最前面に配置されるものであってもよい。また、筐体11は、夜間照明用のLEDや移動体検知センサを備えることができる。
【0084】
この筐体11の上面には、先端鍔部47を有した庇部材13が設けられる。庇部材13は、筐体11の上面に取り付けられることで、先端鍔部47が、前面ガラス45より前方に突出して配置される。これにより、庇部材13は、カメラレンズ43へ入射する直接的な太陽光を遮蔽可能としている。
【0085】
先端鍔部47には、ケース87が設けられる。ケース87は、先端鍔部47の上面に例えば着脱自在に取り付けられる。ケース87は、テープカートリッジ89および巻取りモータ91を内方に収容し、下部にテープガイド93を固定している。テープカートリッジ89は、カートリッジケース103が、扁平矩形箱状に形成される。カートリッジケース103は、薄厚な厚み方向がカメラレンズ43の光軸に沿う方向となり、かつ長辺が先端鍔部47の上面に沿う方向で配置される。
【0086】
カートリッジケース103には、供給リール95と巻取りリール97のそれぞれの回転軸部が長辺に沿う方向に離間して、回転自在に保持されている。それぞれの回転軸部の回転中心は、カメラレンズ43の光軸に沿う方向となる。
【0087】
供給リール95には、蜘蛛の接近を抑制する薬剤を含有して成形された長尺テープ材99が巻回されている。この長尺テープ材99の先端は、巻取りリール97の回転軸部の外周に固定されている。長尺テープ材99の先端が固定された回転軸部は、ケース内に設けられた巻取りモータ91により、長尺テープ材99を巻き取る方向に回転駆動される。
【0088】
カートリッジケース103の下面には、一対のスリット開口部105の間に、テープガイド93が固定される。テープガイド93は、先端筒部39の外周を略半分ずつ覆って先端筒部39を挟持可能とする。テープガイド93は、例えばばね性を有するばね鋼や硬質樹脂材により略半円弧状に湾曲して形成され、所定の挟持力により先端筒部39の外周を挟むことができる弾性を備えている。
【0089】
テープガイド93は、供給リール95のスリット開口部105から引き出されて巻取りリール97のスリット開口部105から引き込まれるまでの間の迂回走行路における長尺テープ材99を外周面で走行ガイドする。なお、先端鍔部47には、それぞれのスリット開口部105とテープガイド93との間の長尺テープ材99が通過するための通過スリットが、先端から切り込まれている。
【0090】
監視カメラ300では、巻取りリール97が巻取りモータ91の駆動により巻き取り開始されると、テープガイド93に掛け渡されていた長尺テープ材99がスリット開口部105から引き込まれて巻取りリール97に巻き取られる。長尺テープ材99の巻き取り長さは、テープガイド93に掛け渡された迂回走行路分の長さとすることができる。迂回走行路分の長尺テープ材99が巻取りリール97に巻き取られることにより、同じ長さの長尺テープ材99が供給リール95から繰り出されて、テープガイド上の迂回走行路に新たに配置される。
【0091】
監視カメラ300は、蜘蛛の接近を抑制する薬剤が添加された長尺テープ材99が先端筒部39の外周に設けられることにより、前面ガラス45の近傍に、蜘蛛が接近しにくくなる。先端筒部39は、蜘蛛が接近しなくなることにより、足場糸(円網の横糸を張る時の足場として網の中心から粗く張られる糸)等が張られなくなる。これにより、前面ガラス45の前方には、少なくとも先端筒部39に張られる障害物としての蜘蛛の巣が作られにくくなる。これらの効果は、円網に限らず、その他の棚網、不規則網、皿網、扇網、条網等についても同様と考えられる。
【0092】
その結果、監視カメラ300では、蜘蛛の巣等の障害物が前面ガラス45の前方に作られにくくなるので、撮像光が遮られ、被写体の画質が劣化することが抑制される。そして、蜘蛛の巣等の障害物を手作業にて除去する必要がなくなるので、監視機能を維持するメンテナンス作業の労力および高所作業での危険性を大幅に軽減できる。
【0093】
これに加え、蜘蛛の巣等の障害物がカメラレンズ43の前方に作られにくくなるので、蜘蛛の巣自体や巣に絡まった獲物等が風により移動し、その撮像光によって移動体検知センサが作動することを低減できる。その結果、誤報の発報を抑制して、監視精度の劣化を抑制することができる。
【0094】
さらに、監視カメラ300では、巻取りモータ91を駆動して、長尺テープ材99を巻き取ることにより、外部環境に晒されて薬効が低下した長尺テープ材99を新しい部分に交換し、薬効を容易に更新させることができる。これにより、監視カメラ300では、常に、最適な薬効を維持でき、蜘蛛の忌避効果を長期に渡り安定して作用させることができる。その結果、忌避部材を交換する手間が省け、蜘蛛の巣除去作業におけるメンテナンスフリーを実現することができる。
【0095】
従って、上記した各実施の形態に係る監視カメラ100、監視カメラ100A、監視カメラ200、監視カメラ300によれば、画質の劣化および監視精度の劣化を抑制できる。
【0096】
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各種の実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0097】
なお、上述した実施の形態1において、シート材53を多重(多層)に構成し(
図15参照)、薬剤による害虫を近寄らせない抑制効能(効果)の有効期間が過ぎると、上から1枚ずつ剥がしていき、下層のシート材53を露出させることにより害虫抑制の有効期間を実質的に延長できる。
図15は、実施の形態1に係るシート材が多数積層された監視カメラ100の側面図である。実施の形態1に係る監視カメラ100において、シート材53は単層構造として構成されてもよいし、
図15に示すように複数の層で構成された積層構造として構成されてもよい。シート材53に含有される薬剤により害虫を近寄らせない抑制効能(効果)は、主に紫外線により劣化する可能性がある。
【0098】
このため、上段側(言い換えると、側面55の底面から最も遠い側)から下段側(言い換えると、側面55の底面側)に向かって、シート材53、紫外線遮光シート153および両面テープ151の順に、シート材53、紫外線遮光シート153および両面テープ151が同様に繰り返して積層されてもよい。
図15では、シート材53、紫外線遮光シート153および両面テープ151の1セットが、一例として3段積層された構成が図示されている。
【0099】
図15では、両面テープ151の面積は、剥がし易さを考慮して紫外線遮光シート153よりも小さくなっているが、同一面積でも構わない。この場合、両面テープ151が側面55の底面に貼られる。つまり、シート材53の劣化がメンテナンス時等において確認されれば作業員の手により随時剥がされればよい。なお、紫外線遮光シート153の代わりに、紫外線遮光機能を有する印刷パターンでもよい。これにより、紫外線遮光シート153の下段となるシート材53は紫外線から遮光されるので、上段側のシート材53(つまり、薬剤の害虫抑制の効果が劣化したシート材53)が剥がされた後は紫外線による劣化の少ないシート材を露出できる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本開示は、撮像される画像の画質の低下および監視精度の劣化を抑制する監視カメラとして有用である。
【符号の説明】
【0101】
11 筐体
13 庇部材
39 先端筒部
43 カメラレンズ
45 前面ガラス
47 先端鍔部
53 シート材
55 側面
57 テープ材
61 キャップ材
75 バー
77 揺動軸
79 バー保持部
85 保持穴
87 ケース
89 テープカートリッジ
91 巻取りモータ
93 テープガイド
95 供給リール
97 巻取りリール
99 長尺テープ材
100、100A、200、300 監視カメラ