(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】燃料供給装置
(51)【国際特許分類】
F02M 37/04 20060101AFI20240109BHJP
F02M 37/00 20060101ALI20240109BHJP
F02M 37/20 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
F02M37/04 B
F02M37/00 331A
F02M37/20 N
(21)【出願番号】P 2020147027
(22)【出願日】2020-09-01
【審査請求日】2023-07-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000153122
【氏名又は名称】株式会社ニッキ
(74)【代理人】
【識別番号】100092864
【氏名又は名称】橋本 京子
(74)【代理人】
【氏名又は名称】橋本 克彦
(72)【発明者】
【氏名】末松 幸倫
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-257308(JP,A)
【文献】特開2000-120502(JP,A)
【文献】米国特許第05103793(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/00-37/54
B60K 11/00-15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクからエンジンに至る燃料供給路の途中に配設され、リザーバタンクを兼ねる燃料貯留槽を形成したハウジング本体と該ハウジング本体の開口部を覆い気密する蓋体からなるハウジングの内部に、貯留した燃料を圧送する燃料ポンプと、圧送する燃料を所定圧力に調整しながら余剰燃料を前記燃料貯留槽に戻すレギュレータと、前記燃料貯留槽に貯留した燃料の油面を一定レベルに維持する燃料貯留量調整手段とを備えており、前記蓋体に設けた燃料吐出パイプから所定圧力の燃料を送出してエンジンに供給する燃料供給装置において、
前記蓋体には、その内部に保持されている前記レギュレータから流下した余剰燃料を前記ハウジング本体の内壁側まで送る余剰燃料排路が形成されているとともに、前記ハウジング本体には、前記余剰燃料排路末端側の下方位置で排出された余剰燃料を受ける上向きの燃料受け面が形成されており、前記余剰燃料排路を通って排出された余剰燃料を、前記燃料受け面でいったん受けてから前記ハウジング本体の内壁面を伝って前記燃料貯留槽に戻すことを特徴とする燃料供給装置。
【請求項2】
前記余剰燃料排路が、前記蓋体の内部に保持された前記レギュレータのリターンポート下端側から前記ハウジング本体の内壁側に形成した前記燃料受け面の上方位置まで、余剰燃料が重力の作用で移動するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載した燃料供給装置。
【請求項3】
前記余剰燃料排路が、余剰燃料の吐出口がある前記リターンポート下端側から下向きに延びた縦通路を有しており、該縦通路は、下端部が上向きの当たり面で閉止されているとともに下端側の内周面の一部を側方に開口してなる排出口が形成されており、前記当たり面で流下した余剰燃料を受け止めてから前記排出口を介して前記燃料受け面の上方に排出することを特徴とする請求項2に記載した燃料供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンクからエンジンに至る燃料供給路の途中に配設される燃料供給装置に関し、殊に、燃料ポンプとレギュレータに加え燃料貯留槽を備えてリザーバを兼ねる燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料タンクに貯留した液体燃料をエンジンに供給する際に、急加速や急減速があっても燃料を途切れることなく安定的に供給するため、燃料ポンプとレギュレータに加え燃料貯留槽を備えてリザーバとしても機能する燃料供給装置を、燃料タンクからエンジンに至る燃料供給路の途中に配設することが広く行われている。
【0003】
このような燃料供給装置は、特開2008-297941号公報に記載されているように、ハウジング本体の内部でリザーバタンクを兼ねる燃料貯留槽内に貯留した燃料をエンジンに向けて圧送する燃料ポンプと、貯留した燃料の油面を一定レベルに維持するためのフロートを有した燃料貯留量調整手段と、燃料調圧手段としてのレギュレータとを備えており、レギュレータ下部に設けたリターンポートから、調圧により余剰となった燃料を燃料貯留槽に流下させながら戻す方式を採用しているのが一般的である。
【0004】
ところが、このようにレギュレータから余剰燃料を燃料貯留槽に流下させることにより貯留した燃料にベーパーが生じたりその油面が乱れてフロートを揺動させたりして、エンジンに対する燃料の安定供給を妨げてしまうという問題がある。
【0005】
また、前記燃料貯留槽は、燃料に含まれる水分や不純物等の異物を堆積させて除去する機能も有しているが、レギュレータから余剰燃料が流下することで燃料貯留槽の底部に堆積した異物が貯留燃料内に拡散して、そのままエンジンに供給されてしまうという問題もある。
【0006】
このような問題に対し、本願出願人は、先に特開2016-205169号及び特開2018-105129号公報において、
図3に示す燃料供給装置1Bのように、燃料ポンプ30と燃料貯留槽100を備えたハウジング本体20Aの内部に配置したフロート50の上方に、レギュレータ40を保持するための部品であるレギュレータ保持部材6を配設することを提案している。
【0007】
このレギュレータ保持部材6には、レギュレータ40を挿入して保持する凹部からハウジング本体20Aの内壁面側まで至る樋状の余剰燃料排路62が形成されており、この余剰燃料排路62を通ってハウジング本体20Aの内壁面側まで余剰燃料を送りながら内壁面を伝って燃料貯留槽100まで返送させる機能を有している。
【0008】
そのため、この燃料供給装置1Bにおいて上述のようなレギュレータ保持部材6を、ハウジング20内部の蓋体20Bの下面側に設けたことにより、レギュレータ40から余剰燃料が燃料貯留槽100に流下することを原因として貯留燃料にベーパーが発生したり油面に乱れが生じたりするのを防止することができ、上述した弊害の発生を回避可能としている。
【0009】
しかしながら、このようにレギュレータを保持しながらハウジング本体20Aの内壁面を伝って余剰燃料を燃料貯留槽100に返送する機能を有したレギュレータ保持部材6を燃料供給装置1Bの内部に設けることは、部品点数の増加と組立工程における手間の増大に繋がることにもなるため、コスト面において不利になりやすいという難点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2008-297941号公報
【文献】特開2016-205169号公報
【文献】特開2018-105129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記のような問題点を解決しようとするものであり、リザーバを兼ねる燃料供給装置について、コストの過剰な増大を招くことなく余剰燃料の流下に伴う弊害の発生を最小限に抑えられるものとして、燃料を安定的に供給できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するためになされた本発明である燃料供給装置は、燃料タンクからエンジンに至る燃料供給路の途中に配設され、リザーバタンクを兼ねる燃料貯留槽を形成したハウジング本体と該ハウジング本体の開口部を覆い気密する蓋体からなるハウジングの内部に、貯留した燃料を圧送する燃料ポンプと、圧送する燃料を所定圧力に調整しながら余剰燃料を前記燃料貯留槽に戻すレギュレータと、前記燃料貯留槽に貯留した燃料の油面を一定レベルに維持する燃料貯留量調整手段とを備えており、前記蓋体に設けた燃料吐出パイプから所定圧力の燃料を送出してエンジンに供給する燃料供給装置において、
前記蓋体には、その内部に保持されている前記レギュレータから流下した余剰燃料を前記ハウジング本体の内壁側まで送る余剰燃料排路が形成されているとともに、前記ハウジング本体には、前記余剰燃料排路末端側の下方位置で排出された余剰燃料を受ける上向きの燃料受け面が形成されており、前記余剰燃料排路を通って排出された余剰燃料を、前記燃料受け面でいったん受けてから前記ハウジング本体の内壁面を伝って前記燃料貯留槽に戻すことを特徴とする。
【0013】
このように、レギュレータから流下した余剰燃料をハウジング本体の内壁側に送る余剰燃料排路を蓋体に形成するとともに、その余剰燃料排路末端側の下方で排出された燃料を受ける上向きの燃料受け面をハウジング本体に形成したことにより、レギュレータから排出された余剰燃料がハウジング本体の垂直な内壁面や油面に直接当たらない状態を確保して、従来例のようにレギュレータ保持部材を別途設けなくても余剰燃料の流下に伴う弊害の発生を最小限に抑えることが可能になるため、部品点数や組立ての手間の増加を伴うことなく燃料の安定供給を実現することができる。
【0014】
また、この燃料供給装置において、その余剰燃料排路が、蓋体に保持されたレギュレータのリターンポート下端側からハウジング本体の内壁側に形成した燃料受け面の上方位置まで、余剰燃料が重力の作用で移動するように形成されていることにしたものとすれば、比較的簡易な構成により低コストに抑えやすいものとなる。
【0015】
この場合、その余剰燃料排路が、余剰燃料の吐出口があるリターンポート下端側から下向きに延びた縦通路を有しており、その縦通路は、下端部が上向きの当たり面で閉止されているとともに下端側の内周面の一部を側方に開口してなる排出口が形成されており、その当たり面で流下した余剰燃料を受け止めてから排出口を介して燃料受け面の上方に排出するものとすれば、流下した余剰燃料の下向きの勢いを緩衝しながらハウジング本体内壁面側に向かう横向きの流れに変換して燃料受け面上に排出することができるため、下向きに排出された余剰燃料がその流下の勢いで燃料油面を揺らしたりベーパーを発生させたりすることを有効に防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
レギュレータから流下した余剰燃料をハウジング本体の内壁面側に送る余剰燃料排路を蓋体に形成するとともに、その余剰燃料排路末端側の下方位置で排出された燃料を受ける上向きの燃料受け面をハウジング本体に形成した本発明によると、コストの過剰な増大を招くことなく余剰燃料の流下に伴う弊害の発生を最小限に抑えながら、燃料を安定的に供給可能なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明における好ましい実施の形態の燃料供給装置の縦断面部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。
【0019】
図1は、本実施の形態の燃料供給装置1Aの縦断面図であり、燃料供給装置1Aは、装置の筺体であるハウジング2の内部に、燃料ポンプ3、レギュレータ4、燃料貯留槽(図示せず)を備えており、同じく図示しない燃料タンクからエンジンに至る燃料供給路の途中に配設されることで、燃料供給手段として機能することに加えリザーバとしても機能するものであり、急加速や急減速があっても燃料を途切れることなく安定的に供給できるようになっている。
【0020】
この燃料供給装置1Aは、リザーバタンクとしても機能する燃料貯留槽を内部に形成したハウジング本体2Aと、その開口部を気密的に塞ぐ蓋体2Bを備えており、これらで中空のハウジング2を構成しており、蓋体2Bの上面側には、燃料を導入する図示しない燃料導入パイプと燃料を吐出する燃料吐出パイプ24を備えている。
【0021】
また、
図2は、
図1のハウジング本体2AにおけるA-A線に沿う断面図を示しており、このハウジング本体2Aには、図示しない燃料貯留槽と、貯留した燃料を圧送するタービンベーンポンプ等の電動式の燃料ポンプ3と、先端側にフロート5を片持ち式に有した弁レバーの基端側で弁を開閉して貯留燃料の油面を一定レベルに維持する燃料貯留量調整手段が配設されている。
【0022】
そして、本発明の燃料供給装置1Aにおいて、ハウジング2の上部を構成しながらレギュレータ4を保持している蓋体2Bには、レギュレータ4から流下した余剰燃料をハウジング本体2Aの内壁側に送るための余剰燃料排路28が形成されており、そのハウジング本体2Aには、余剰燃料排路28末端側の下方位置で排出された余剰燃料を受ける上向きの燃料受け面29が設けられており、余剰燃料排路28を通って排出された余剰燃料を、燃料受け面29でいったん受けてからハウジング本体2Aの内壁面を伝って燃料貯留槽に戻す構成としたものである。
【0023】
即ち、レギュレータ4から下向きに流下した余剰燃料をハウジング本体2Aの内壁側に送る余剰燃料排路28が、蓋体2Bの一部に一体的に設けられているとともに、その余剰燃料排路28末端側の下方で排出された燃料を受ける上向きの燃料受け面29が、ハウジング本体2Aの内壁側から延設された状態で一体的に形成されたものとなっている。
【0024】
従って、従来例のようにレギュレータ保持部材を追加して部品点数を増やしたり組立工程の手間を増大させたりすることなく、レギュレータから排出された余剰燃料が燃料貯留槽の垂直な壁面や油面に直接衝突しない状態を確保しながら、余剰燃料の流下に伴う弊害の発生を最小限に抑えることができ、燃料の安定供給を実現可能なものにしている。
【0025】
また、本実施の形態においては、蓋体2B下面側から延設した余剰燃料排路28が、蓋体2B内部に保持しているレギュレータ4のリターンポートの下端側から、ハウジング本体2A内壁面から横向きに延設された燃料受け面29の上方位置に至るまで、そのまま重力の作用で余剰燃料が移動するように形成されている。
【0026】
具体的には、前記余剰燃料排路28は、レギュレータ4の吐出口があるリターンポート下端側から下向きに延びた縦通路28aの下端部が、上向きの当たり面28bで閉止されており、この当たり面28bで流下する余剰燃料をいったん受け止め、その縦通路28a下端側の内周面の一部が側方に開口して形成された排出口28cから、余剰燃料を燃料受け面29の上方に向かって横向きに排出させる構造となっている。
【0027】
そのため、リターンポートから吐出されて縦向きの縦通路28aを流下した余剰燃料の下向きの勢いを下端側の当たり面28bで緩衝しながら、これを縦通路28a下端側部分の側方に開口した排出口28cで横向きの流れに変換して、それよりも僅かに低い位置にある燃料受け面29の上方に向かって排出する機能を発揮するため、レギュレータ4から下向きに流下した余剰燃料がその流下の勢いで燃料油面を揺らしたりベーパーを発生させたりする弊害を充分に抑制することができる。
【0028】
尚、上述した余剰燃料排路28を構成する部分については、蓋体2Bと一体成形で設けることには限定されず、蓋体2Bに後付けで設けても良いことは言うまでもない。また、上述した燃料受け面29を上面に有した部分についても、ハウジング本体2Aと一体成形で設けるだけではなく、板状の部材等をハウジング本体2Aに後付けにより設けて形成することができる。
【0029】
以上、述べたように、本発明によると、エンジンへの燃料供給路の途中に配設されリザーバを兼ねる燃料供給装置について、コストの過剰な増大を招くことなく余剰燃料の流下に伴う弊害の発生を最小限に抑えられるものとして、燃料を安定的に供給できるようになった。
【符号の説明】
【0030】
1A 燃料供給装置、2 ハウジング、2A ハウジング本体、2B 蓋体、3 燃料ポンプ、4 レギュレータ、5 フロート、24 燃料吐出パイプ、28 余剰燃料排路、28a 縦通路、28b 当たり面、28c 排出口、29 燃料受け面