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特許7414279生体情報取得システム、健康管理サーバーおよびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】生体情報取得システム、健康管理サーバーおよびシステム
(51)【国際特許分類】
   G16H 10/00 20180101AFI20240109BHJP
【FI】
G16H10/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020187746
(22)【出願日】2020-11-11
(62)【分割の表示】P 2020547240の分割
【原出願日】2019-10-04
(65)【公開番号】P2021015642
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-09-28
(31)【優先権主張番号】P 2018189523
(32)【優先日】2018-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】509339821
【氏名又は名称】アトナープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102934
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 彰
(72)【発明者】
【氏名】ムルティ プラカッシ スリダラ
(72)【発明者】
【氏名】桶本 和男
(72)【発明者】
【氏名】今井 彰
【審査官】原 秀人
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-057979(JP,A)
【文献】特開平04-164214(JP,A)
【文献】特開平05-045356(JP,A)
【文献】特開2012-022367(JP,A)
【文献】岩崎 武史 外,乳幼児の水分補給マネジメントシステムの開発,第74回(平成24年)全国大会講演論文集(4) インタフェース コンピュータと人間社会,日本,一般社団法人情報処理学会,2012年03月06日,pp. 4-947 ~ 4-948
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
G06Q 50/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
健康管理サーバーが、複数の便器の各々の便器に関連付けられたデータ取得モジュールから排尿単位で送信される排尿に関する情報を含む生体監視データおよび前記各々の便器を識別する便器識別情報と、ユーザーの端末から送信される前記ユーザーが使用中の前記各々の便器を特定するための便器識別情報とにより排尿単位で前記ユーザーの使用中の便器を特定し、使用中の前記ユーザーに関連付けされた前記生体監視データを取得することと、
前記ユーザーの端末に、排尿の間隔を少なくとも含む前記生体監視データを解析して、熱中症の可能性を含む前記ユーザーの健康状態に関連する情報を提供することとを含む、方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記生体監視データは、前記使用中の便器に排出される尿の少なくとも一部が連続的または断続的に採取された尿サンプルに含まれる尿中成分の情報を含む、方法。
【請求項3】
排尿単位で使用中の便器を特定し、使用中のユーザーに関連付けされた生体監視データを取得する健康管理サーバーであって、
複数の便器の各々の便器に関連付けられたデータ取得モジュールから排尿単位で送信される排尿に関する情報を含む前記生体監視データおよび前記各々の便器を識別する便器識別情報と、前記ユーザーの端末から送信される前記ユーザーが使用中の前記各々の便器を特定するための便器識別情報とにより排尿単位で前記ユーザーの使用中の便器を特定する生体監視データ収集モジュールと、
前記ユーザーに関連付けられた排尿の間隔を少なくとも含む前記生体監視データを解析して、熱中症の可能性を含む前記ユーザーの健康状態に関連する情報を、前記ユーザーの端末へ提供するように構成された健康監視モジュールを有する、健康管理サーバー。
【請求項4】
請求項3において、
前記生体監視データは、前記使用中の便器に排出される尿の少なくとも一部が連続的または断続的に採取された尿サンプルに含まれる尿中成分の情報を含み、
前記健康監視モジュールは、排尿単位の特定の時間の前記尿中成分の情報を参照して前記健康状態に関連する情報を生成するように構成されたモジュールを含む、健康管理サーバー。
【請求項5】
請求項4において、
前記健康監視モジュールは、排尿単位の全経過時間の前記尿中成分の情報を参照して前記健康状態に関連する情報を生成するように構成されたモジュールを含む、健康管理サーバー。
【請求項6】
請求項4または5において、
前記健康監視モジュールは、複数の排尿単位の前記尿中成分を蓄積した情報を参照して前記健康状態に関連する情報を生成するように構成されたモジュールを含む、健康管理サーバー。
【請求項7】
請求項4ないし6のいずれかにおいて、
前記健康監視モジュールは、複数の排尿単位の前記尿中成分の変動を参照して前記健康状態に関連する情報を生成するように構成されたモジュールを含む、健康管理サーバー。
【請求項8】
請求項4ないし7のいずれかにおいて、
前記ユーザーに関連付けられた前記生体監視データを解析して、薬物の排出量を推定するように構成された薬物監視モジュールを有する、健康管理サーバー。
【請求項9】
コンピュータを請求項3ないし8いずれかに記載の健康管理サーバーとして機能させる命令を有するプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿中成分を測定することを含む生体情報取得システム、健康管理サーバーおよびシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、日常生活を営んでいるだけで医者の診断に近い健康診断を自動的に受けられる健康管理システムが記載されている。このシステムでは、個人宅便器、病院端末、栄養士端末および家族宅端末をインターネットで接続する。個人宅便器は、トイレ使用毎に尿分析項目についての陰性陽性中性判定を自動的に行う機能と、この尿成分の分析結果データを病院端末に送信する機能と、表示機能とを有する。病院端末は、お年寄り宅便器から分析結果データを受信すると、お年寄りの健康状態を自動的に解析する機能と、解析により異常が認められた場合にはその症状をお年寄り宅便器へ送信して表示させる機能を有する。栄養士端末は、病院端末から症状を受信すると、献立データベースに格納しているサンプル献立リストから、最適な食事の献立を自動選択して個人宅便器および家族宅端末に提示し、家族宅端末は、病院端末から症状、栄養士端末から食事の献立をそれぞれ受信すると表示する。
【0003】
特許文献2には、尿中に含まれる特定成分の高精度な定性・定量測定を実施可能とすることにより、便器としての使い勝手を劣化させることなく、衛生的、かつ、デザイン性に優れた採尿機構部を有する便器ユニットを実現することが記載されている。使用者の尿を下水に対して排出するための水封手段としての溜水およびトラップと、溜水を貯えるボール面と、溜水の水位を変える水位可変手段と、使用者の尿を採取するための採尿手段とを有する便器ユニットにおいて、採尿手段は前記ボール面に構成されると共に、採尿手段は尿採取動作時以外には溜水水位より下方に位置し、尿採取動作時は溜水水位位置より上方となるよう、溜水の水位可変手段を制御するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-166985号公報
【文献】特開2005-106621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの文献には、便器に排出される尿の成分を測定して健康状態を解析するアイディアは示されているが、実際に便器に排出される尿中の成分を測定するシステムが一般に利用される状況には至っていない。その理由の1つは、尿中の成分は、食事、水分摂取、発汗などの影響を受けて、1日の中でも時間による変動が大きいことである。また、尿には健康状態を示す多くの成分が含まれているが、尿中の成分を測定した結果を、ユーザーに簡単に、また安全にフィードバックする必要があることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、便器に排出される尿の少なくとも一部が連続的または断続的に採取された尿サンプルに含まれる尿中成分の情報を含む生体監視データを取得するように構成されたデータ取得モジュールと、ユーザーが使用中の便器を特定するための便器識別情報を非接触でユーザーの端末が取得するように構成された第1の識別モジュールと、排尿単位で便器識別情報を介して便器を使用中のユーザーを特定するユーザー識別情報と関連付けされる生体監視データを含む個々人の健康監視情報を出力するように構成された出力モジュールとを有する生体情報取得システムである。第1の識別モジュールの一例は、QRコード(登録商標)などの2次元コードである。便器が設置されたトイレの内部が外部から画像あるいは音声などを通してモニターされる状態を作らずに、各ユーザーの健康監視情報を収集できる。
【0007】
このシステムは、便器を使用中のユーザーを特定するユーザー識別情報と関連付けられる生体識別情報を取得するように構成された第2の識別モジュールを有し、出力モジュールは、生体識別情報またはユーザー識別情報と関連付けされた個々人の健康監視情報を出力するように構成されたモジュールを含んでもよい。
【0008】
多くの人は日常生活において、一か所のトイレではなく、多くの場所、例えば、自宅、会社、駅やサービスエリアの公衆トイレ、列車や飛行機などの乗り物に備え付けられたトイレを使って排尿する。便器に付随する生体情報取得システムにより取得された生体監視データと、ユーザーの端末、例えば、携帯電話、スマートホン、スマートグラス、スマートウォッチ、その他のウェアラブル端末により取得される便器識別情報とを関連付けして、例えば、ネットワーク(クラウド、コンピュータネットワーク)を介して健康管理サーバーに集積することにより、様々な場所における排尿の情報を集積することが可能となり、健康管理に役立てることができる。例えば、一日の畜尿による尿中排泄量を推定でき、それを基準に健康状態を推定できる。また、逆に、尿中成分の濃度変動や排尿の間隔などから、ユーザーのその時々の健康状態を推定することも可能であり、様々な症状、例えば、熱中症を予防したり、過労による疾病を予防したりすることが可能となる。健康管理サーバーとしての機能を個人の端末で実現されるようにアプリケーション(プログラム、プログラム製品)として、記録媒体に記録して提供してもよい。
【0009】
データ取得モジュールは、排出される尿の少なくとも一部を連続的または断続的に採取し、透光性の検出部を通すように構成されたサンプリングモジュールと、検出部に光を照射して尿サンプルに含まれる尿中成分の情報を取得するように構成された分析モジュールとを備えていてもよい。サンプリングモジュールの典型的なものは、便器に排出される尿の少なくとも一部を連続的または断続的に採取し、透光性の検出部を通して便器に排出するように構成されたモジュールである。分析モジュールの典型的なものは、尿サンプルにレーザーを照射してラマンスペクトルを取得するように構成されたモジュールを含むものである。
【0010】
便器に排出される尿の少なくとも一部を連続的または断続的に採取し、透光性の検出部を通して便器に排出する、フロータイプのサンプリングモジュールと、ラマンスペクトル(ラマン光)を用いた分析装置のような、光を用いて間接的に流体に含まれる成分をリアルタイムで測定できる分析モジュールを組み合わせることにより、一回の排尿の最初から最後までの尿サンプルに含まれる尿中成分を排尿単位で、すべて、時間経過とともに取得することができる。したがって、この生体情報取得システムでは、所望のタイミングの尿中成分、例えば、中間尿の尿中成分の情報を取得することも可能であり、初期尿あるいは終了時の尿中成分の情報を取得することも可能であり、さらに、排尿単位、すなわち、初期から終了までの尿中成分の情報を取得することも可能である。このため、健康状態を推定するための尿中成分の情報を、健康状態を推定するために適したタイミングで取得できる。
【0011】
さらに、洗浄機能付きの便器ついては、サンプリングされた液体の成分から尿サンプルか洗浄液かの判別も可能である。このため、一回に排泄される尿量を時間または適当な流量測定機構を用いて精度よく測定でき、測定された尿中成分の情報に基づき、排尿された尿中成分の全量を推定することも可能となり、畜尿成分に基づく推定も可能となる。
【0012】
本発明の他の態様の1つは、複数の生体情報取得システムから健康監視情報がネットワークを介して提供される健康管理サーバーである。健康管理サーバーは、ユーザー端末を介して取得された便器識別情報、あるいは生体情報生体識別情報により判明するユーザー識別情報により特定されたユーザーの生体監視データを解析して、ユーザーの健康状態に関連する情報を、特定されたユーザーが使用中の便器に対応する生体情報取得システムのディスプレイ、または、特定されたユーザーの端末へ、ネットワークを介して提供するように構成された健康監視モジュールを有してもよい。
【0013】
本発明の他の態様の1つは、健康管理サーバーと、健康管理サーバーとネットワーク(コンピュータネットワーク、クラウド)を介して通信可能な複数の生体情報取得システムとを有する健康管理システムである。
【0014】
本発明のさらに異なる他の態様の1つは、情報取得システムを介して個々人の健康を支援する方法である。情報取得システムは、便器に排出される尿の少なくとも一部が連続的または断続的に採取された尿サンプルに含まれる尿中成分を検出するように構成されたデータ取得モジュールと、ユーザーが使用中の便器を特定するための便器識別情報を非接触でユーザーの端末が取得するように構成された第1の識別モジュールと、出力モジュールとを含む。当該方法は、以下のステップを含む。
・データ取得モジュールが、尿中成分の情報を含む生体監視データを取得すること。
・前後して、あるいは並行して、端末から得られた便器識別情報を介して便器を使用中のユーザーのユーザー識別情報が判明すること。
・出力モジュールが、排尿単位でユーザー識別情報と関連付けられる生体監視データを含む個々人の健康監視情報を出力すること。
【0015】
本発明のさらに異なる他の態様の1つは、コンピュータを上記に記載の健康管理サーバーとして機能させる命令を有するプログラム(プログラム製品)である。プログラムは適当な形態の記録媒体に格納して提供することができる。本発明のさらに異なる他の態様、目的および効果については、以下においてさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】健康管理システムの一例を示すブロック図。
図2】生体情報取得システムの一例を示すブロック図。
図3】健康管理システムにおいて健康状態に関連する情報をフィードバックする過程を示すフローチャート。
図4】日常生活で尿中成分の情報を含む生体監視データが収集される様子を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に、様々な場所のトイレからの情報を集積可能な健康管理システムの概要を示している。この健康管理システム1は、ユーザー8の自宅2のトイレ12、ユーザー8が勤務する会社3のトイレ13、駅やサービスエリアなどの公衆トイレ14、飛行機5のトイレ15、新幹線などの列車6のトイレ16などに、それぞれ設置された生体情報取得システム20と、それぞれの生体情報取得システム20からクラウド(ネットワーク、コンピュータネットワーク、インターネット)9を介して健康監視情報(健康監視データ)30の提供を受ける健康管理サーバー50とを含む。
【0018】
各生体情報取得システム20から提供される健康監視情報30は、ユーザー8がそれぞれのトイレ12~16で排出した尿に含まれる成分(尿中成分)の情報を含む生体監視データ32を含む。健康監視情報30は、生体監視データ32が取得された便器40の識別情報(便器識別情報)41、生体監視データ32が取得された日時(タイムスタンプ)、気温などの生体監視データ32の取得環境の情報を含む属性データ42を含んでいてもよい。
【0019】
健康監視情報30は、ユーザー8を識別するための生体識別情報31を含んでいてもよい。生体識別情報31の一例は、顔認証情報、網膜認証情報、指紋認証情報などである。生体識別情報31としては、非接触で、各生体情報取得システム20のカメラ28aから得られた画像を処理することにより取得でき、さらに、特別な動作を伴わずに取得できる顔認証情報または網膜認証情報などが適している。生体識別情報31は、顔認証情報などの生体(人体)に関する情報に限らず、顔認証情報により識別あるいは認証されたユーザー8の個人を特定する情報、ID、認証データなどであってもよい。
【0020】
生体監視データ32は、それぞれのトイレ12~16の便器40に排出した一回分(排尿単位)の尿(排尿)に含まれる成分の情報を、時間経過および流量(尿排出量)ともに含んでもよい。生体監視データ32には、さらに、赤外線などを用いて間接的に得られる体温、顔色などの情報が含まれていてもよい。生体監視データ32は、トイレ12~16の内部で取得可能な人体に関するデータであり、できる限り人体そのものに非接触で、人体から得られる情報であってもよい。
【0021】
健康管理サーバー50は、異なる場所のトイレ12~16に配置された複数の生体情報取得システム20から得られた生体監視データ32を、ユーザー8を識別するユーザー識別情報33の単位でデータベース(DB)52に蓄積する生体監視データ収集モジュール51と、DB52に蓄積されたユーザー8の生体監視データ32を解析して、ユーザー8に健康状態を示す情報(健康情報)を提供(フィードバック)するように構成された健康監視モジュール53とを含む。生体監視データ収集モジュール51は、健康監視情報30がユーザー8の生体識別情報31を含んでいる場合は、生体識別情報31によりユーザー8を識別し、ユーザー識別情報33と生体監視データ32とを関連付けする。健康監視情報30に生体識別情報31が含まれていない場合は、ユーザー8の端末8tから送信される便器識別情報41と、健康監視情報30に含まれている便器識別情報41とをそれぞれの情報に含まれているタイムスタンプなどを加味して照合し、ユーザー識別情報33と生体監視データ32とを関連付けする。
【0022】
便器40の単位で設けられている生体情報取得システム20は、ユーザー8が使用中の便器40を特定するための便器識別情報41を非接触でユーザー8の端末8tが取得するように構成された第1の識別モジュール(便器識別モジュール)45を含む。便器識別モジュール45の一例は、トイレの壁、ドアの内側などの目につきやすい場所に設けられた(取り付けられた)QRコード(登録商標)などの2次元コードであり、ユーザー8は端末8tのカメラ8cで便器識別モジュール45を撮影することにより、非接触で、便器識別情報41を取得し、健康管理サーバー50に送信できる。端末8tは、便器識別情報41とともに、ユーザー識別情報33を健康管理サーバー50に供給してもよく、便器識別情報41を取得した日時(タイムスタンプ)を含めた情報を健康管理サーバー50に供給してもよい。ユーザー識別情報33、タイムスタップなどは、端末8tから便器識別情報41の提供を受けた生体監視データ収集モジュール51が、便器識別情報41を受信した日時、ユーザー8の端末8tの登録情報などから自動的に生成してもよい。
【0023】
便器識別モジュール45は、近距離無線通信(NFC、Near Field Communication)により端末8tと通信して便器識別情報41を提供するものであってもよい。2次元コードなどを用いて、端末8tのカメラ8cにより便器識別情報41を取得可能とする便器識別モジュール45は、ユーザー識別に関する情報を、端末8tの情報を含めて、生体情報取得システム20と異なる通信ルートにより健康管理サーバー50に提供できる。このため、ユーザー8に関する情報のセキュリティーを向上できる。さらに、コードなどの識別情報を端末8tで撮像するタイプの便器識別モジュール45は、端末8tとの通信規格を問わない簡易な構成であるなど、初期コスト、維持コストを含めて多くのメリットがある。また、便器識別モジュール45を設けることにより、便器40が設置されているトイレの中を、生体識別情報31を取得するためのカメラなどにより監視する必要がなく、プライバシーの保護という点でのメリットを得ることができる。便器識別情報41を取得する端末8tは、スマートホンなどの携帯電話に限定されず、スマートウォッチ、スマートグラスなどのその他のウェアラブルな通信端末であってもよい。
【0024】
健康管理サーバー50の健康監視モジュール53は、健康状態に関連する情報(健康情報)39を、リアルタイムで、ユーザー8が排尿しているトイレの生体情報取得システム20のディスプレイ29に表示するようにフィードバックしてもよく、ユーザー8が登録している携帯端末8tに健康情報39が表示されるようにフィードバックしてもよい。健康情報39には、尿中成分に含まれる各種マーカー物質の濃度が正常と判断される範囲か否かといった生体内の状態に関する情報の他に、排尿の量と頻度などから水分摂取量が十分か否かを含む熱中症などに対する対応のアドバイス、尿中成分より判断される飲酒・飲食などに関するアドバイスを含んでいてもよい。
【0025】
健康監視モジュール53は、生体監視データ32に含まれる尿中成分に関するデータを解析するように構成された尿中成分解析モジュール54と、尿中成分解析モジュール54の解析結果を参照してユーザー8の健康状態を判断するように構成された健康診断モジュール55と、薬物の排出量を推定するように構成された薬物監視モジュール56とを含んでいてもよい。診断モジュール55は、尿中成分解析モジュール54の解析結果の他に、生体監視データ32に含まれる体温などのその他の生体情報を参照してもよく、ユーザー8が通院する、または人間ドックなどで検査を受けた病院7からの診断結果35を参照して、ユーザー8の健康状態を判断してもよい。
【0026】
薬物監視モジュール56は、病院7において処方されている医薬の処方箋37を参照し、投薬効果を含めた治療薬物モニタリングを行ってもよい。薬物監視モジュール56は、個々人の薬物動態/薬物力学(PK/PD)モデル化をおこなってもよく、個々人の症状と薬物代謝とに適したテーラーメイド薬物療法のモニタリングを行ってもよい。
【0027】
尿中成分解析モジュール54は、典型的には、生体監視データ32に含まれる、排尿単位の特定の時間の尿中成分の情報を参照して健康状態に関連する情報、例えば、健康状態を示す情報39を生成するように構成されたモジュール54aと、排尿単位の全経過時間の尿中成分の情報を参照して健康状態に関連する情報39を生成するように構成されたモジュール54bと、複数の排尿単位の尿中成分を蓄積した情報を参照して健康状態に関連する情報39を生成するように構成されたるモジュール54cと、複数の排尿単位の尿中成分の変動を参照して健康状態に関連する情報39を生成するように構成されたモジュール54dとを含む。
【0028】
健康管理サーバー50の一例は、CPUおよびメモリなどのコンピュータ資源を備えたサーバー(コンピュータ)であり、メモリ52に格納されたプログラム59を、CPU58で実行することにより上記の機能をコンピュータに実装することができる。個人用の健康管理サーバー50としての機能をアプリケーションソフトウェア(アプリ)として提供することも可能であり、個人の端末8tに健康管理サーバー50としての機能を実装してもよい。
【0029】
この健康管理システム1には、ネットワーク(クラウド)9に接続された、他のタイプの生体監視デバイスを含んでいてもよい。生体監視デバイスの1つは、生体内部の情報を取得するように構成されたシステム60であり、ユーザー8の皮膚に装着してユーザー8の血中成分の情報を含む生体内部の監視データ69を健康管理サーバー50へ提供してもよい。このシステム(生体監視デバイス、生体監視端末)60は、半透膜を備えたマイクロダイアリシス(Microdialysis、微小透析)プローブを体内に挿入して透析液を回収するマイクロダイアリシスモジュール63と、回収された透析液中の成分をリアルタイムで検出するラマン分光分析モジュール62と、得られた血中成分を含む生体内部(体内)の監視データ69を、ネットワーク9を介して健康管理サーバー50へ提供する通信モジュール61とを含む。マイクロダイアリシスモジュール63により、ユーザー8にほとんど負担をかけずに、体内、例えば血管から透析液を回収することができる。ラマン分光分析モジュール62により透析液を分析することにより、ウェアラブルなシステム60を用いて、リアルタイムに、体内の情報を、ネットワーク9を介して収集できる。また、透析液をラマン分光分析モジュール62によりリアルタイムで分析することにより、透析液が代謝して成分あるいは濃度が変化した分析結果となることを阻止できる。生体内部の情報を取得するシステム60は、皮膚外から光、例えばラマン散乱(ラマンスペクトル)を用いて、血管中の血中成分を取得する非侵襲な測定モジュールを備えていてもよい。
【0030】
図2に、生体情報取得システム20の一例を示している。生体情報取得システム20は、便器40に排出される尿の少なくとも一部が連続的または断続的に採取された尿サンプルに含まれる尿中成分の情報を含む生体監視データ32を取得するように構成されたデータ取得モジュール(尿検査モジュール)21と、ユーザー8が使用中の便器40を特定するための便器識別情報41を非接触でユーザー8の端末8tが取得するように構成された第1の識別モジュール(便器識別モジュール)45と、排尿単位で便器識別情報41を介して便器40を使用中のユーザー8を特定するユーザー識別情報33と関連付けされた生体監視データ32を含む個々人の健康監視情報30を出力するように構成された出力モジュール(通信ユニット、通信モジュール)26とを有する。生体情報取得システム20は、便器40を使用中のユーザー8を特定するための生体識別情報31を取得するように構成された第2の識別モジュール(生体識別モジュール、生体識別ユニット)28と、排尿単位で生体識別情報31と関連付けされた生体監視データ32を含む個々人の健康監視情報30を出力するように構成されたモジュール(通信ユニット、通信モジュール)27とを含んでいてもよい。
【0031】
データ取得モジュールである尿検査モジュール(尿検査ユニット)21は、それぞれの便器40に対応して設けられており、典型的には、便器40に取り付けられていてもよい。この生体情報取得システム20では、個々の便器40の使用者、すなわち、使用中のユーザー8を特定して観察できる位置に、尿検査モジュール21と一対一に対応して設けられたユーザーインターフェイスモジュール(UIモジュール、UIユニット)22を備えていてもよい。UIモジュール22に、生体識別モジュール28、通信モジュール27およびユーザー8に情報を提供するディスプレイ29が搭載されていてもよい。UIモジュール22は、非接触でユーザー8を識別でき、ユーザー8に対して情報を提供できるものであってもよい。
【0032】
尿検査モジュール21と、UIモジュール22とは一対一に関連づけられており、有線で接続されていてもよく、無線で接続されていてもよく、個別にネットワーク9に接続されていてもよい。UIモジュール22は、スマートフォン端末あるいはタブレット端末を用いたユニットであってもよい。
【0033】
尿検査モジュール21は、便器40に排出される尿の少なくとも一部を連続的または断続的に採取し、透光性の検出部24を通して便器40に排出するように構成されたサンプリングモジュール23と、検出部24に光25aを照射して尿サンプル23sに含まれる尿中成分の情報を取得するように構成された分析モジュール25と、尿中成分の情報を排尿単位で含む生体監視データ32を出力するように構成された通信モジュール26とを有する。サンプリングモジュール23は、便器40に出入りするように設けられたサンプリングノズル49から尿サンプル23sを吸引して、透光性の部材、例えば、ガラスまたは透明なプラスチックからなる検出部24に供給するマイクロポンプ23aを含み、検出部24にアップフローとなるように尿サンプル23sを強制循環させて、検出部24内における気泡の発生を抑制する。
【0034】
サンプリングモジュール23は、検出部24を流れる尿サンプル23sの流量を監視するフローメータ23bを含む。マイクロポンプ23aにより、サンプリングノズル49内に一定の尿が保持されるようにサンプリングノズル49から尿サンプル23sを吸引し、排尿量に比例した流量の尿サンプル23sを検出部24に流して尿分析することができる。また、排尿時間をモニタリングすることにより一回の排尿量を推定することが可能である。
【0035】
検出部24内を流れる尿サンプル23sに光を当てて得られるスペクトルを取得することにより尿サンプル23sに含まれる成分(尿中成分)の情報を取得する分光分析型の分析モジュール25の一例はラマン分析装置であり、特に、微量分析に適したCARS(コヒーレント反ストークスラマン散乱、Coherent Anti-Stokes Raman Scattering)分析装置、SRS(誘導ラマン散乱、Stimulated Raman Scattering)を採用してもよい。CARS分析モジュール25は、検出部24にポンプ光およびストークス光25aを照射するレーザーモジュール25bと、検出部24から出力されるCARS光(ラマンスペクトル)25dを解析する検出モジュール(スペクトロメータ)25cとを含む。CARS分析装置は、微量成分を短時間に検出することができ、サンプリングモジュール23により連続的に採取され、検出部24を流れる尿サンプル23sの尿中成分の情報を連続的に取得する分析モジュール25として好適である。
【0036】
分析モジュール25において検出する対象となる尿定性測定項目の例は、ブドウ糖(GLU)、蛋白質(PRO)、アルブミン(ALB)、ビリルビン(BIL)、ウロビリノーゲン(URO)、pH(PH)、潜血(BLD、ヘモグロビン、血尿)、ケトン体(KET)、亜硝酸塩(NIT)、白血球(LEU)、クレアチニン(CRE)、アルブミン/クレアチニン比(A/C)、マイクログロブリンである。
【0037】
図2に示す生体監視データ32を出力する通信モジュール26は、尿中成分の情報を測定時間の経過と関連させた経過情報を含む生体監視データ32を出力するように構成されたモジュール26aと、尿中成分の情報を排尿量の時間経過と関連させた経過情報を含む生体監視データ32を出力するように構成されたモジュール26bとを含む。通信モジュール26は、生体監視データ32を便器識別情報41および/またはタイムスタンプなどの属性データ42とともに出力してもよい。生体監視データ32に基づきユーザー8の健康状態を判断する健康管理サーバー50は、健康状態の判断に有効なマーカー成分を、中間尿のタイミングで判断したり、排尿全体の平均値で判断したり、畜尿量を推定して判断したりすることができる。排尿時間は、振動や音をマイクロホンなどのセンサーで取得して判断してもよく、サンプリングノズル49に受ける尿量により判断してもよく、サンプリングノズル49を介して洗浄水を収集したことを分析モジュール25で検出することにより判断してもよい。
【0038】
UI(ユーザーインターフェイス)モジュール22は、画像処理により生体識別情報31を取得するためのカメラ28aを含む生体識別モジュール(第2の識別モジュール、生体識別情報取得モジュール)28と、健康管理サーバー50から受信した健康状態を示す情報を出力するディスプレイ29と、ネットワーク(クラウド)9を介して健康管理サーバー50と通信する通信モジュール(出力モジュール)27とを含む。UIモジュール22は簡易な構成のタブレット型端末であってもよい。UIモジュール22は、便器40に向かって排尿する姿勢のユーザー8の顔または瞳の画像をカメラ28aが取得できる位置に設置される。したがって、UIモジュール22にディスプレイ29を搭載することにより、そのディスプレイ29はユーザー8が見やすい位置となり、ディスプレイ29に表示される情報はユーザー8に到達しやすい。このため、ディスプレイ29に、健康管理サーバー50からネットワーク9を介して提供される健康情報39に基づき健康状態を表示してもよい。さらに、健康状態とともに、あるいは別に、ディスプレイ29にユーザー8をターゲットした広告を表示することにより宣伝効果を高めることができる。UIモジュール22は、ディスプレイ29を介して情報をユーザー8に提供することのみを目的とした構成であってもよい。
【0039】
カメラ28aは、人感センサーとして機能してもよい。個人的な情報、例えば、健康にかかわる情報をディスプレイ29に表示しても、ユーザー8が便器40から離れるとすぐにディスプレイ29から消去することができる。ディスプレイ29をタッチセンサーとして利用し、指紋を生体識別情報として取得してもよい。また、洗浄式の便器の場合、洗浄操作を行うスイッチに指紋照合を行う機能を付加して、生体識別情報として取得してもよい。
【0040】
UIモジュール22は、ユーザー8が保有する端末、例えば、スマートフォン8t、スマートウォッチあるいはスマートグラスなどのウェアラブル端末を極めて短い距離、例えば数cmあるいはそれ以下の近距離無線通信、または範囲が限られた可視光通知などの、限られた範囲の無線または光通信により認識(および/または認証)するユーザー識別モジュール22aを備えていてもよい。ユーザー識別モジュール22aは、生体識別モジュール28とともに、あるいは生体識別モジュール28の代わりに、便器40を使用中のユーザー8を識別する情報(ユーザー識別情報)33を取得してもよく、このユーザー識別情報33は、生体識別情報31とともに、あるいは生体識別情報31の代わりに用いられてもよい。また、ユーザー8が保有する端末8tを承認するために、生体識別情報31が用いられてもよい。
【0041】
さらに、ユーザー8の端末8tが認証され、端末8tがUIモジュール22またはデータ取得モジュール21と通信可能な場合は、端末8tを介して生体監視データ32が健康管理サーバー50に提供されてもよい。すなわち、通信モジュール27または26は、便器40を使用中のユーザー8の所有物であると特定された、または認証された端末8tに対して、生体監視データ32を送信してもよい。通信モジュール27または26は、インターネット9を介して、健康管理サーバー50とともに端末8tに生体監視データ32を送信してもよく、Bluetooth(登録商標)、無線LAN、携帯電話網などの手段を介して端末8tに生体監視データ32を送信してもよい。端末8tに、個人向けの健康管理サーバー50として機能するアプリケーション8aが実装されていてもよい。
【0042】
尿検査モジュール21と、生体識別モジュール28を含むUIモジュール22とは有線または無線で接続されていてもよく、尿検査モジュール21またはUIモジュール22が、生体識別情報31および生体監視データ32を含む健康監視データ30を、ネットワーク9を介して健康管理サーバー50に提供してもよい。通信モジュール27または26は、排尿単位で生体識別情報31と生体監視データ32とを関連付けしてネットワーク9を介して健康管理サーバー50に提供してもよい。尿検査モジュール21およびUIモジュール22は、個々にネットワーク9に接続されていてもよい。尿検査モジュール21と生体識別モジュール28との対応関係が事前に明確になっていれば、健康管理サーバー50は、生体識別情報31と、生体監視データ32とをネットワーク9を介して別々に受け取っても、イベント発生の時刻、場所などにより、それらの情報31および32の関連性を判断することができる。
【0043】
図3に、健康管理システム1において、採取された尿の検査に基づいて健康状態を示す情報をユーザー8にフィードバックし、ユーザーの健康を支援する方法100の一例を示している。ステップ101において、便器40に対応して設けられた生体情報取得システム20が便器40の使用が開始されたか否かを判断する。便器40の使用の開始は生体情報取得システム20から健康管理サーバー50に送信される。便器40の使用開始は、ユーザー端末8tから便器識別情報41が送信されたこと、または、生体識別モジュール28が便器40を使用しているユーザー8を認識したことで判断してもよく、尿検査モジュール21が排尿を検出したことで判断してもよい。便器40が使用されると、健康管理サーバー50のデータ収集モジュール51は、ステップ102において、ユーザー端末8tから便器識別情報41を受信している場合は、ステップ103において、便器40を使用中のユーザー8のユーザー識別情報33を取得し、その便器40に対応する生体情報取得システム20から送信される生体監視データ32とユーザー識別情報33とを関連づけるようにする。
【0044】
ステップ104において生体識別モジュール28のカメラ28aを用いて取得された画像から生体識別情報31を取得可能な場合は、ステップ105において、生体識別情報31からユーザー識別情報33を取得し、その便器40に対応する生体情報取得システム20から送信される生体監視データ32とユーザー識別情報33とを関連づけるようにする。ステップ106において、便器40を使用中のユーザー8が、生体識別情報31などから、予め健康管理サーバー50を利用するように登録されたユーザー8であることが確認できなければ、尿サンプルの分析を行わないか、または分析結果は破棄される。
【0045】
ステップ107において、データ取得モジュールである尿検査モジュール21が、便器40から採取された尿サンプルの分析を行い、尿中成分の情報を含む生体監視データ32を取得(生成)する。生体監視データ32を取得するステップ107は、便器識別情報41を取得したり、生体識別情報31を取得するステップと前後して行われてもよく、並行して行われてもよい。ステップ108において、通信モジュール26または27が、便器40を用いて排尿が行われるごとに(排尿単位で)、ユーザー識別情報33に関連付けられる生体監視データ32を含む健康監視情報30をネットワーク経由で健康管理サーバー50へ送信する。通信モジュール26または27は、個人向けの健康管理サーバー50がユーザー8の端末8tに実装されている場合は、生体監視データ32を含む健康監視情報30を、無線LAN、Bluetooth(登録商標)などの適当な通信方法により端末8tに送信してもよい。
【0046】
ステップ109において、健康管理サーバー50は、ユーザー識別情報33により特定されたユーザー8の生体監視データ32を解析して、ユーザー8の健康状態に関連する情報39を特定されたユーザー8の登録および/または認証された端末8tへ、ネットワーク9を介して提供する。健康管理サーバー50は、特定されたユーザー8が使用中の便器40に対応する情報取得システム20に健康状態に関連する情報39をフィードバックし、そのディスプレイ29に情報39を出力するようにしてもよい。また、健康管理サーバー50には、ネットワークに接続された情報取得システム60から、ユーザー8の血中成分を含む情報69が提供されていてもよい(ステップ120)。健康管理サーバー50は、尿として体外に排出された成分に関する情報32を生体情報取得システム20によりリアルタイムに取得するとともに、血中成分を含む体内に関する情報69を、人体に取り付けられた情報取得システム60からリアルタイムに取得してもよい。健康管理サーバー50は、尿、血液などの体液をラボなどでの解析を待たずに、それらに含まれる人体に関する情報を解析し、ユーザー8の健康に関わる情報をユーザー8に発信(提供)することができる。ステップ110において、ユーザー8の端末8tが健康管理サーバー50から提供された情報39を表示する。
【0047】
図4に、健康管理システム1において、複数の生体情報取得システム20から健康管理サーバー50に健康監視データ30が収集される様子を示している。ユーザー8が、朝、自宅2のトイレ12を使用して排尿71をすると、トイレ12に設置された生体情報取得システム20が、尿中成分(たとえば、Y成分)の情報81を含む生体監視データ32を含む健康監視データ30を、ネットワーク9を介して健康管理サーバー50に提供する。次に、ユーザー8が、出勤途中で、駅の公衆トイレ14を使用して排尿72をすると、公衆トイレ14に設置された生体情報取得システム20が、尿中成分の情報82を含む生体監視データ32を含む健康監視データ30を、ネットワーク9を介して健康管理サーバー50に提供する。
【0048】
次に、ユーザー8が会社3のトイレ13を使用して排尿73をすると、トイレ13に設置された生体情報取得システム20が、尿中成分の情報83を含む生体監視データ32を含む健康監視データ30を、ネットワーク9を介して健康管理サーバー50に提供する。同様に、昼に、ユーザー8がレストランのトイレを使用して排尿74をすると、レストランのトイレに設置された生体情報取得システム20が、尿中成分の情報84を含む生体監視データ32を含む健康監視データ30を、ネットワーク9を介して健康管理サーバー50に提供する。
【0049】
さらに、ユーザー8が、午後、打合せ先に出かける際に、列車6のトイレ16を使用し排尿75をすると、トイレ16に設置された生体情報取得システム20が、尿中成分の情報85を含む生体監視データ32を含む健康監視データ30を、ネットワーク9を介して健康管理サーバー50に提供する。ユーザー8が、退社後、ジムあるいはフィットネスクラブを使用し、そのトイレを使用して排尿76をすると、ジムのトイレに設置された生体情報取得システム20が、尿中成分の情報86を含む生体監視データ32を含む健康監視データ30を、ネットワーク9を介して健康管理サーバー50に提供する。さらに、夜、自宅2のトイレ12を使用して排尿77をすると、トイレ12に設置された生体情報取得システム20が、尿中成分の情報87を含む生体監視データ32を含む健康監視データ30を、ネットワーク9を介して健康管理サーバー50に提供する。
【0050】
これらの健康監視データ30に含まれる生体監視データ32は、同時に取得される便器識別情報41および/または生体識別情報31により、生体監視データ32を使用したユーザー8のユーザー識別情報33と関連付けられる。生体識別情報31を提供する生体識別モジュール(第2の識別モジュール)22は、男性用の便器40を中心に設けられてもよく、便器識別情報41を提供する便器識別モジュール(第1の識別モジュール)45は個室となる腰掛型の便器40に対応して設けられてもよい。健康管理サーバー50では、様々な場所のトイレから、様々なタイミングで送られている健康監視データ30を、その都度の便器40に関連付けられたユーザー識別情報33に基づいてユーザー毎に蓄積するとともに解析し、その時々において、ユーザー8にとって有用な、健康状態を示す情報および健康状態を維持するための情報を健康関連情報39としてユーザー8にフィードバックできる。
【0051】
生体監視データ32に含まれる尿中成分の一例はアルブミンであり、尿中アルブミンは、一次性腎疾患をはじめとする慢性腎臓病や、高血圧、糖尿病などの腎障害促進因子が存在する場合に、長期的に増加する。したがって、尿中アルブミンは早期の腎障害を検出するうえで有用である。その一方、尿中アルブミンは、食事、水分摂取、体位、運動などにより短期的に変動する。このため、24時間畜尿に含まれる数値や、夜間畜尿に含まれる数値により、健康状態が判断されるとともに、随時尿についてはクレアチニン補正値により健康状態が判断される。
【0052】
健康管理サーバー50には、ユーザー8が、一日に、様々な箇所のトイレを利用して排尿したときに含まれる尿中アルブミンのデータが集積される。また、排尿時間および/または排尿の量についても、生体監視データ32に含まれている情報から推定することが可能である。したがって、ユーザー8は、通常の生活を行うだけで、24時間畜尿および/または夜間畜尿に含まれる尿中アルブミンの数値を精度よく推定することが可能となる。
【0053】
また、その時々にトイレで排出される随時尿については、排尿(放尿)の最初から最後までの尿中成分の情報が生体監視データ32に含まれているので、成分が安定した中間尿における尿中成分を抽出し、尿中アルブミンとともに尿中クレアチニンの値を得ることができる。したがって、アルブミンのクレアチニン補正値に基づいて、その時々の排尿に基づいても健康状態を判断できる。
【0054】
健康管理サーバー50は、様々な解析を可能とするモジュール54aから54dを含む尿中成分解析モジュール54を備えており、上記のような比較的長い期間の体の健康状態を監視する機能とともに、ユーザー8の日常的な活動により尿中の成分が変化することを利用して、ユーザー8に短期間、例えば、時間単位で変化する環境に対して健康を維持するための情報を健康情報39として提供することも可能である。例えば、クラウド9を介して収集される健康監視データ30により、排尿間隔が長くなったり、尿中成分の濃度が大きく上昇すると、水分補給が不足していることが示唆されているとして、ユーザー8に対して熱中症やエコノミークラス症候群などを予防する対策をとるようにアドバイスすることができる。
【0055】
生体情報取得システム20は、国内のみならず、世界中のトイレに簡単に装着することが可能であり、ワールドワイドに分散配置された生体情報取得システム20を含む健康管理システム1においては、クラウド(コンピュータネットワーク)9を介して尿中成分の情報を含む生体監視データ32を、ユーザー8の日常生活を全く阻害することなく収集し、24時間、365日、継続してユーザー8の健康状態を監視および管理することができる。ユーザー8は、定期的な精密検査を行い、自己の健康状態を集中してチェックするとともに、精密検査から精密検査の間は、健康管理システム1により、その間に排出される尿中成分により、健康状態を24時間365日、継続して自動的にチェックすることが可能となる。
【0056】
ユーザー8に対して、健康管理システム1によるサービスを無償または無償に近い額で提供することも可能である。例えば、健康管理システム1のサービスを受けることによりユーザー8が罹患するリスクを低減することが可能であり、保険会社は、このサービスをユーザー8に無償で提供することにより保険の支払いリスクを低減することが可能となる。また、交通機関を運営する会社においては、このサービスを無償で提供することにより、エコノミークラス症候群などのユーザーを搬送中のリスクを低減することが可能となる。また、この健康管理システム1は、健康管理サーバー50から提供される健康情報39とともに、ユーザー8の健康維持に適した商品またはサービスの情報を効率的にユーザー8に提供するシステムとして好適である。
【0057】
上記においては、便器に排出された尿をサンプリングするシステムを例に説明しているが、尿検査を行う生体情報取得システム20は、尿カテーテルを装着した患者から排出される尿をサンプリングして解析するシステムであってもよい。健康管理サーバー50は、薬物の排出量を推定するように構成された薬物監視モジュール56を含んでいてもよい。例えば、ハイリスク薬剤の多くは投与量などを厳密に調整しなくてはならない。しかしながら、薬物代謝には個体差があり、かつモニタリングの為の採血にも負担を伴う。多くの薬剤は肝臓で分解されて、尿中に投薬した状態または濃度で尿中に排出されることは少なく、逆に、尿中の分解産物を検出することにより、投薬の有用性をモニタリングできる。このような薬剤を投与されている患者の多くは、尿カテーテルが挿入されており、尿カテーテルに排出される尿中成分をモニタリングすることにより、投薬の効果を含めて、患者の状態を24時間連続してモニタリングできる。また、抗生物質が投薬されている場合は、その多くは尿中にそのまま排出されるので、モニタリングは容易であると考えられる。
【0058】
尿中の成分を含む監視データ32をリアルタイムで取得できる生体情報取得システム20と、血中成分を含む体内の監視データ69をリアルタイムで収集できるシステム60との組み合わせは、新薬開発プロセスなどにおいて重要コンポーネントである薬物動態/薬物力学(PK/PD)モデル化に有効である。PK/PDモデルは、時間の経過に伴う薬物投与の効果と有効性を予測するための数学的手法であり、薬物動態モデルは、身体における薬物への反応を吸収、分配、代謝、排出の観点で表し、薬物力学モデルでは、薬物濃度を有効性(または安全性)にリンクして、薬物が身体に及ぼす影響を表す。個々人に対して明確に特徴付けられたPK/PDモデル(パーソナルPK/PDモデル)は、テーラーメイド医薬の設計をガイドする上でも重要なツールとなり得る。健康管理サーバー50の薬物監視モジュール56は、ユーザー8に処方されている医薬に対して、血中成分および尿中成分をリアルタイムに取得することにより、ユーザー8に適したPK/PDモデルを生成し、検証するとともに、時間経過による変化を、継続的に、リアルタイムまたはそれに近い環境でモニタリングすることができる。
【0059】
治療薬物モニタリングを行うことにより薬物動態を検証するための測定対象物としては、尿中に排出される薬剤(主に抗生物質)およびハイリスク薬を挙げることができる。ハイリスク薬としては、キニジン、バンコマイシン、アセトアミノフェン、カルバマゼピン、ミコフェノール酸モフェチル、サリチル酸、フェニトイン、シクロスポリン、バルプロ酸、プリミドン、プロカインアミド、フェノバルビタール、プロカインアミド代謝物、リドカインを挙げることができる。
【0060】
また、生体情報取得システム20の検査対象には、上記において例示した成分に限らず、尿中に含まれる様々な成分であってもよく、例えば、癌マーカー、ドーピング検査対象物などであってもよい。また、上記において開示した生体情報取得システム20は、他のシステム、例えば、ラボ用に尿サンプルを保存するシステムなどとの併用も可能であり、本発明は、上記において例示したシステムに限定されることはない。
上記には、便器に排出される尿の少なくとも一部が連続的または断続的に採取された尿サンプルに含まれる尿中成分の情報を含む生体監視データを取得するように構成されたデータ取得モジュールと、ユーザーが使用中の前記便器を特定するための便器識別情報を非接触で前記ユーザーの端末が取得するように構成された第1の識別モジュールと、排尿単位で前記便器識別情報を介して前記便器を使用中のユーザーを特定するユーザー識別情報と関連付けされる前記生体監視データを含む個々人の健康監視情報を出力するように構成された出力モジュールとを有する生体情報取得システムが開示されている。前記第1の識別モジュールは、2次元コードを含んでもよい。システムは、さらに、前記便器を使用中のユーザーを特定する前記ユーザー識別情報と関連付けられる生体識別情報を取得するように構成された第2の識別モジュールを有し、前記出力モジュールは、前記生体識別情報または前記ユーザー識別情報と関連付けされた前記個々人の健康監視情報を出力するように構成されたモジュールを含んでもよい。前記第2の識別モジュールは、画像処理により前記生体識別情報を取得するように構成されたモジュールを含んでもよい。前記データ取得モジュールは、排出される尿の少なくとも一部を連続的または断続的に採取し、透光性の検出部を通すように構成されたサンプリングモジュールと、前記検出部に光を照射して前記尿サンプルに含まれる尿中成分の情報を取得するように構成された分析モジュールとを含んでもよい。前記分析モジュールは、前記尿サンプルにレーザーを照射してラマンスペクトルを取得するように構成されたモジュールを含んでもよい。前記データ取得モジュールは、前記尿中成分の情報を測定時間の経過と関連させた経過情報を含む前記生体監視データを出力するように構成されたモジュールを含んでもよい。前記データ取得モジュールは、前記尿中成分の情報を排尿量の時間経過と関連させた経過情報を含む前記生体監視データを出力するように構成されたモジュールを含んでもよい。前記出力モジュールは、排尿単位で、前記ユーザー識別情報と関連付けられる前記生体監視データを、ネットワークを介して健康管理サーバーに提供するように構成されたモジュールを含んでもよい。システムは、前記健康管理サーバーからの情報を出力するディスプレイを有していてもよい。
上記には、1または複数の生体情報取得システムから前記健康監視情報がネットワークを介して提供される健康管理サーバーであって、前記ユーザー識別情報に関連付けられた前記生体監視データを解析して、前記ユーザーの健康状態に関連する情報を、前記特定されたユーザーが使用中の便器に対応する前記生体情報取得システムのディスプレイ、または、前記特定されたユーザーの端末へ、ネットワークを介して提供するように構成された健康監視モジュールを有する、健康管理サーバーが開示されている。前記健康監視モジュールは、排尿単位の特定の時間の前記尿中成分の情報を参照して前記健康状態に関連する情報を生成するように構成されたモジュールを含んでもよい。前記健康監視モジュールは、排尿単位の全経過時間の前記尿中成分の情報を参照して前記健康状態に関連する情報を生成するように構成されたモジュールを含んでもよい。前記健康監視モジュールは、複数の排尿単位の前記尿中成分を蓄積した情報を参照して前記健康状態に関連する情報を生成するように構成されたモジュールを含んでもよい。前記健康監視モジュールは、複数の排尿単位の前記尿中成分の変動を参照して前記健康状態に関連する情報を生成するように構成されたモジュールを含んでもよい。サーバーは、前記ユーザー識別情報に関連付けられた前記生体監視データを解析して、薬物の排出量を推定するように構成された薬物監視モジュールを有してもよい。
上記には、健康管理サーバーと、複数の生体情報取得システムであって、前記健康管理サーバーとネットワークを介して通信可能な複数の生体情報取得システムとを有する健康管理システムが開示されている。このシステムは、前記ユーザーの血中成分の情報を含む生体内部の監視データを、前記ネットワークを介して前記健康管理サーバーへ提供するように構成された情報取得システムを有してもよい。
上記には、便器に対応して設けられる情報取得システムを介して個々人の健康を支援する方法が開示されている。前記情報取得システムは、前記便器に排出される尿の少なくとも一部が連続的または断続的に採取された尿サンプルに含まれる尿中成分を検出するように構成されたデータ取得モジュールと、ユーザーが使用中の前記便器を特定するための便器識別情報を非接触で前記ユーザーの端末が取得するように構成された第1の識別モジュールと、出力モジュールとを含む。当該方法は、前記データ取得モジュールが、前記尿中成分の情報を含む生体監視データを取得することと、生体監視データを取得することと前後してあるいは並行して、前記端末から得られた前記便器識別情報を介して前記便器を使用中のユーザーのユーザー識別情報が判明することと、前記出力モジュールが、排尿単位で前記ユーザー識別情報と関連付けられる前記生体監視データを含む個々人の健康監視情報を出力することを有する。この方法は、前記健康管理サーバーが、前記ユーザー識別情報に関連付けられた前記生体監視データを解析して、前記ユーザーの健康状態に関連する情報を、前記特定されたユーザーが使用中の便器に対応する前記情報取得システムのディスプレイ、または、前記特定されたユーザーの端末へ、ネットワークを介して提供することを有していてもよい。この方法は、生体内部の情報を取得するシステムが、前記ユーザーの血中成分の情報を含む生体内部の監視データを、ネットワークを介して前記健康管理サーバーへ供給することを有していてもよい。また、上記には、上記に記載の健康管理サーバーとして機能させる命令を有するプログラムが開示されている。
【0061】
なお、上記において開示したシステム、装置、画像、症例、数値などの情報は一例であり、本発明はこれらの記載および表示に限定されるものではない。また、上記において、図面を参照して本発明の特定の実施形態を説明したが、様々な他の実施形態および変形例は本発明の範囲および精神から逸脱することなく当業者が想到し得ることであり、そのような他の実施形態および変形は以下の請求の範囲の対象となり、本発明は以下の請求の範囲により規定されるものである。
【符号の説明】
【0062】
1 健康管理システム、 20 生体情報取得システム、 50 健康管理サーバー
図1
図2
図3
図4