(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】チョップドシート製造装置及びチョップドシートの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 70/18 20060101AFI20240109BHJP
D04H 1/4209 20120101ALI20240109BHJP
D04H 1/736 20120101ALI20240109BHJP
C08J 5/04 20060101ALI20240109BHJP
B29C 70/50 20060101ALI20240109BHJP
B29C 70/54 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
B29C70/18
D04H1/4209
D04H1/736
C08J5/04
B29C70/50
B29C70/54
(21)【出願番号】P 2021180617
(22)【出願日】2021-11-04
【審査請求日】2023-08-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521482127
【氏名又は名称】スピック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100213436
【氏名又は名称】木下 直俊
(72)【発明者】
【氏名】荒井 広明
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-291924(JP,A)
【文献】特開2016-027956(JP,A)
【文献】特開2013-147782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/00-70/88
C08J 5/04- 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留し、当該液体に、樹脂を含む板状片を分散状態で浮遊させる浮遊槽と、
前記浮遊槽において浮遊した状態の前記板状片に外力を加えて配列状態を均質化する配列機構と、
配列状態を均質化された前記板状片を液面から回収する回収機構と、を備え
、
前記回収機構は、前記浮遊槽に浮遊している前記板状片をすくい上げるコンベアを含み、
前記コンベアは、前記浮遊槽から前記回収機構に向けて前記板状片が搬送される流れにおける
上流側の端部が前記浮遊槽
の水中に沈められ、下流側の端部が前記浮遊槽
の水面よりも上方に配置されている、チョップドシート製造装置。
【請求項2】
前記浮遊槽は、前記板状片の供給位置から前記回収機構に向けて前記液体を通流させており、
前記配列機構は、前記浮遊槽における、前記供給位置と前記回収機構との間において前記外力を加える請求項1に記載のチョップドシート製造装置。
【請求項3】
前記配列機構は、前記浮遊槽における前記液体の液面よりも下方に配置された気泡発生装置を有し、当該気泡発生装置で発生させた気泡の浮力によって、前記板状片に前記外力を加える請求項1又は2に記載のチョップドシート製造装置。
【請求項4】
前記配列機構は、前記浮遊槽における前記液体の液面を振動させる振動発生装置を有し、当該液面の振動によって、前記板状片に前記外力を加える請求項1から3の何れか一項に記載のチョップドシート製造装置。
【請求項5】
前記板状片を落下させながら分散しつつ前記浮遊槽に供給する供給機構を更に備え、
前記供給機構は、落下する前記板状片に向けて気流を供給して前記板状片を分散する送風機を有する請求項1から4の何れか一項に記載のチョップドシート製造装置。
【請求項6】
樹脂を含む板状片を液体に浮遊させる浮遊工程と、
浮遊した状態の前記板状片に外力を加えて配列状態を均質化する配列工程と、
配列状態を均質化された前記板状片を液面から回収する回収工程と、を含
み、
前記回収工程では、前記板状片の配列状態を崩さずに、前記液体に浮遊している前記板状片を、液面から斜め上方向に向けてすくい上げるチョップドシートの製造方法。
【請求項7】
前記板状片を落下させながら前記液体の液面に供給する供給工程を更に含み、
前記供給工程では、落下する前記板状片に向けて気流を供給して前記板状片を分散する請求項6に記載のチョップドシートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チョップドシート製造装置及びチョップドシートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チョップドシートは、所定の長さに切断された繊維材料(例えば、炭素繊維)を樹脂中に含む、複合材料のシート材である。チョップドシートは、樹脂中に含む繊維材料を連続繊維とせず、不連続繊維として利用できるので、成形時の流動性が良く、成形時の型への立体賦形性に優れている。しかも、チョップドシートは、成形品の強度を連続繊維並みに高めることができる。
【0003】
特許文献1には、複数枚のチョップドプリプレグシート材を重ね合せて所要の厚さに形成された擬似等方補強シート材が記載されている。また、特許文献1には、以下の事項が記載されている。擬似等方補強シート材は、加熱加圧により成形して最終的に成形品を得るための中間材料である。プリプレグシート材は、炭素繊維束等の強化繊維束中に熱可塑性樹脂が含侵されたものである。チョップドプリプレグシート材は、プリプレグシート材を所要の幅及び長さに切断して作成される。また、特許文献1では、チョップドプリプレグシート材を厚さ方向に多数枚積層する際に、繊維方向が満遍なくばらつくように配向させて積層させることが非常に難しい点が指摘されている。そして、チョップドプリプレグシート材が同じような方向に偏向して配向されて積層すると、積層時のムラも生じ易くなってしまうおそれがあることが指摘されている。
【0004】
特許文献1には、一方向に引き揃えられた強化繊維をマトリックス樹脂に含浸させたセミプリプレグシートを作製する工程と、作製したセミプリプレグシートを細断して多数のチョップドセミプリプレグシートを作製する工程と、作製した多数のチョップドセミプリプレグシートを二次元的にランダムに配向して重ね合わせた状態で互いに一体化した層状体を作製する工程と、作製した層状体を複数積層して一体化することにより疑似等方補強シート材を作製する工程と、作製した疑似等方補強シート材を1枚もしくは複数枚積層し、加圧、加熱して所望の形状の成形品を得る工程と、を含む擬似等方補強シート材の製造方法が記載されている。擬似等方補強シート材は、複数のチョップドセミプリプレグシート材(板状片の一例)が、自然落下等により分散させてランダムに重ね合せることで、強化繊維材料の繊維方向が二次元方向にランダムに配向するように重ね合せた状態とされている。詳述すると、層状体を形成する際に、チョップドセミプリプレグシート材を搬送ベルト上の積層位置に自然落下させて分散させている。
【0005】
特許文献2には、一方向に配列した不連続繊維の束が、その繊維方向がランダムになるように積層された状態で仮固定されて成るチョップドシートが記載されている。特許文献2には、炭素繊維の糸を開繊したテープに紛末状バインダーを熱溶融により付着させ、これを長さ50mmにチョップしたもの(板状片の一例)を平板状にランダムに散布積層し100℃で加熱圧着により仮固定させて、チョップドシートを作成した具体例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-27956号公報
【文献】特開2018-192717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のごとく、チョップドシートは、その繊維の方向がランダムに配向(分散)するように製造することを要する。特に繊維材を含む板状片を積層させてチョップドシートを製造する場合には、その板状片をランダムに配向させることを要する。しかしながら、従来技術にあっては、板状片を積層させてチョップドシートを製造する場合、板状片を必要十分にランダムに配向させつつ、生産性を向上させることが難しかった。そのため、板状片を必要十分にランダムに配向させつつ、生産性を向上させることができるチョップドシート製造装置及びチョップドシートの製造方法の提供が望まれる。
【0008】
本発明は、かかる実状に鑑みて為されたものであって、その目的は、板状片の方向をランダムに配向させつつ、生産性を向上させることができるチョップドシート製造装置及びチョップドシートの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係るチョップドシート製造装置は、
液体を貯留し、当該液体に、樹脂を含む板状片を分散状態で浮遊させる浮遊槽と、
前記浮遊槽において浮遊した状態の前記板状片に外力を加えて配列状態を均質化する配列機構と、
配列状態を均質化された前記板状片を液面から回収する回収機構と、を備えている。
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係るチョップドシートの製造方法は、
樹脂を含む板状片を液体に浮遊させる浮遊工程と、
浮遊した状態の前記板状片に外力を加えて配列状態を均質化する配列工程と、
配列状態を均質化された前記板状片を液面から回収する回収工程と、を含む。
【発明の効果】
【0011】
繊維の方向をランダムに配向させつつ、生産性を向上させることができるチョップドシート製造装置及びチョップドシートの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】チョップドシート製造装置の全体構成を示す図である。
【
図2】板状片(チョップ材)の形状の一例を示す斜視図である。
【
図3】配列状態を均質化する前の、板状片の浮遊状態の一例を示す上面図である。
【
図4】板状片を液体に浮遊させた状態で気泡を供給して配列状態を均質化している状態を説明する模式図である。
【
図5】板状片を液体に浮遊させた状態で配列状態を均質化した後の状態を説明する模式図である。
【
図6】配列状態を均質化された状態における、板状片の浮遊状態の一例を示す上面図である。
【
図7】配列状態を均質化された板状片をコンベアのメッシュで捕集した状態の一例を説明する模式図である。
【
図8】板状片が接着され、シート化(成形)した状態説明する模式図である。
【
図9】シート化された板状片(成形品)の一例を示す上面図である。
【
図10】板状片を液体に浮遊させた状態で液面を振動させて配列状態を均質化している状態を説明する模式図である。
【
図11】別のチョップドシート製造装置の全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面に基づいて、本発明の実施形態に係るチョップドシート製造装置及びチョップドシートの製造方法について説明する。
【0014】
(概要の説明)
図1に示すように、本実施形態に係るチョップドシート製造装置100(以下、製造装置100と記載する)は、水L(液体の一例)を貯留し、水Lに、樹脂を含む板状片1を分散状態で浮遊させる浮遊槽4と、浮遊槽4において浮遊した状態の板状片1に外力を加えて配列状態を均質化する配列機構5と、配列状態を均質化された板状片1を液面から回収する回収機構6と、を備えている。
【0015】
製造装置100によれば、樹脂を含む板状片1を水Lに浮遊させる浮遊工程と、浮遊した状態の板状片1に外力を加えて配列状態を均質化する配列工程と、配列状態を均質化された板状片1を液面から回収する回収工程と、を含むチョップドシートの製造方法を実現することができる。
【0016】
製造装置100によれば、板状片1の方向をランダムに配向させつつ、チョップドシートの生産性を向上させることができる。
【0017】
(詳細の説明)
本実施形態の製造装置100は、
図1に示すように、上述の浮遊槽4、配列機構5及び回収機構6に加えて、更に、供給機構3、乾燥成形装置7及び巻回装置8を備えている。板状片1は、供給機構3から浮遊槽4に供給され、配列機構5で配列状態を均質化される。その後、板状片1は、回収機構6で捕集され、乾燥成形装置7に搬送されて乾燥及び成形され後、巻回装置8で巻き取りされる。なお、本実施形態における板状片1の配列状態の均質化とは、板状片1をランダムに配向させること、換言すれば、板状片1の集合を全体としてみた場合に、板状片が、平面上においてあらゆる向きに等しい確率で向くように分散させることを言う。以下では、板状片1が供給機構3から、浮遊槽4、回収機構6、乾燥成形装置7及び巻回装置8へ供給、搬送される流れにおける、供給機構3から見て巻回装置8の側を下流側、巻回装置8から見て供給機構3の側を上流側と記載する場合がある。
【0018】
板状片1は、本実施形態では、炭素繊維などの繊維束中に熱可塑性樹脂を含侵した板材(いわゆる、プリプレグシート材)を短冊状に切断した、いわゆるチョップ材である。板状片1の形状は、
図2に示すように、例えば、長さ10mmから30mm程度で、幅3mmから10mmの、上面視で矩形状である。板状片1の厚みは、例えば、0.5mm以上5mm以下である。
【0019】
図1に示すように、供給機構3は、板状片1を、後述する浮遊槽4に供給させる機構である。供給機構3は、例えば、板状片1を収容する供給容器31と、供給容器31を振動させて供給容器31から板状片1を浮遊槽4に落下させる振動装置32と、供給容器31から落下した板状片1に空気を吹き付ける送風機33とを備えている。
【0020】
供給容器31には、浮遊槽4に供給される板状片1が収容される。供給容器31には、供給口としての開口部31aが設けられている。供給容器31は、振動装置32によって加えられた振動によって流動化した板状片1を、開口部31aから落下させて浮遊槽4に板状片1を供給する。以下では、浮遊槽4における、供給容器31から板状片1が落下する落下位置又は領域を、供給位置と記載する。
【0021】
振動装置32は、供給容器31を振動させるための振動発生装置である。振動装置32は、例えば供給容器31の下面に取り付けられる。
【0022】
送風機33は、いわゆるブロアやファンである。送風機33は、供給容器31の開口部31aから落下する板状片1に向けて気流を供給し、板状片1が浮遊槽4に落下するまでに板状片1を適度に分散させる。
【0023】
浮遊槽4は、板状片1を分散状態で水Lに浮遊させながら下流側へ板状片1を搬送する浮遊工程が行われる槽である。浮遊槽4は、水Lが貯留され、板状片1を浮遊させるための第一槽41と、第一槽41中に水流(水Lの流れ)を発生させるポンプ機構とを有する。ポンプ機構は、第一槽41からの排水(水L)を貯留する第二槽42と、第二槽42に貯留された排水を第一槽41に供給するポンプ43とを備えている。
【0024】
第一槽41は、供給位置から回収機構6に至るまでの範囲に延在し、上方側が解放された(開口する)槽である。第一槽41は、例えば上面視で矩形状であり、矩形における長手方向が、上流から下流に向く方向に沿っている。第一槽41は、供給機構3から落下した板状片1を捕集し、貯留された水Lで板状片1を浮遊させる。第一槽41の上方には、板状片1の飛散を防止するためのカバーを設置してもよい。
【0025】
第一槽41は、板状片1を浮遊させた状態で、板状片1を回収機構6に供給する。第一槽41では、後述する配列機構5によって、板状片1が均質化される。なお、板状片1の水に対する比重は1を超える(例えば、比重1.5)が、板状片1の表面は樹脂で覆われており疎水性を示すことから、板状片1は水Lにはじかれて、第一槽41において水Lに浮遊することができる。板状片1の浮遊状態については後述する。
【0026】
第一槽41では、板状片1の供給位置から回収機構6に向けて、すなわち、下流側に向けて水Lが通流されている。この水Lの通流により、第一槽41では、板状片1は回収機構6に向けて搬送される。本実施形態では、第一槽41における、板状片1の供給位置の側に、ポンプ43が接続されており、第二槽42から水Lが供給されるようになっている。供給された水Lは、回収機構6に向けて流れ、その後、第二槽42に流れ落ちる。これにより、第一槽41では、板状片1の供給位置から回収機構6に向けた水流が発生する。
【0027】
配列機構5は、第一槽41における、供給位置と回収機構6との間において浮遊した状態の板状片1に外力を加えて板状片1の配列状態を均質化する均質化工程を行うための機構である。本実施形態において配列機構5は、第一槽41の槽内(水Lの水中)、すなわち、水Lの水面よりも下方に配置された気泡発生装置51を有する。
【0028】
気泡発生装置51は、送気ポンプなどから供給された空気を第一槽41の水中で排気し、第一槽41内で気泡A(
図4参照)を発生させる気泡発生工程を行うための装置である。気泡発生装置51は、例えば、パイプに複数の貫通孔を形成し、パイプ内に供給された空気を当該貫通孔から第一槽41の水中に排気するものであってよい。気泡発生装置51は、供給位置から回収機構6の手前(上流側)までの範囲にわたり、上流側から下流側に所定の間隔で複数個配置されてよい。配列機構5による、板状片1の配列状態の均質化については後述する。
【0029】
回収機構6は、第一槽41において水面に浮遊している板状片1を、その配列状態を崩さずに、水面からすくい上げて回収する回収工程を行うための機構である。回収機構6は、例えば、網状の捕集装置を備えてよい。本実施形態では、回収機構6は、第一槽41から浮遊している板状片1をすくい上げる網状のベルトBを有する第一ベルトコンベア61を備えている。
【0030】
第一ベルトコンベア61は、第一槽41に浮遊している板状片1をすくい上げて、板状片1を、後述する乾燥成形装置7に搬送する回収及び搬送装置である。第一ベルトコンベア61では、上流側となる第一槽41から下流側となる乾燥成形装置7に向けて、網状に形成されたベルトBが移動するようになっている。本実施形態では、第一ベルトコンベア61は、上流側の端部を第一槽41の水中に沈めた状態で、下流側を、第一槽41の水面よりも上方において、乾燥成形装置7に隣接させた状態とされている。すなわち、第一ベルトコンベア61のベルトBは、下流側が上流側よりも上方に位置するように、傾斜して配置されている。第一ベルトコンベア61は、第一槽41の水中から水上へ移動する過程で、第一槽41に浮遊している板状片1をすくい上げてベルトB上に捕集し、そのまま板状片1を乾燥成形装置7へ搬送する。板状片1が第一ベルトコンベア61で搬送される態様については後述する。
【0031】
乾燥成形装置7は、第一ベルトコンベア61から搬送されてきた板状片1を乾燥させ、更に、板状片1を板状の成型板9(チョップドシートの一例)に成型する装置である。乾燥成形装置7は、水切り機構71と、第二ベルトコンベア72と、第二ベルトコンベア72を収容する乾燥槽73と、成形ローラ74とを備えている。
【0032】
第二ベルトコンベア72は、第一ベルトコンベア61から搬送されてきた板状片1を引き続いて乾燥槽73へ供給して乾燥槽73の槽内を通過させ、更に後述する巻回装置8に供給する搬送装置である。本実施形態では、第二ベルトコンベア72は、第一ベルトコンベア61と一体の搬送装置であり、第一ベルトコンベア61の下流側が第二ベルトコンベア72である。本実施形態において、第二ベルトコンベア72における、後述する乾燥槽73の槽内を通過した後であって、巻回装置8の手前側は、所定距離だけ搬送のみを行う区間とされている。この搬送のみを行う区間は、冷却ゾーンとして確保されている。冷却ゾーンについては後述する。
【0033】
水切り機構71は、第一ベルトコンベア61から搬送されてきた板状片1に空気流を吹き付けて、板状片1に付着している水滴を除去する機構である。水切り機構71は、例えば、空気を吹き出すノズルと、ノズルに空気を供給するコンプレッサやブロアなどを備えていればよい。水切り機構71は、第一ベルトコンベア61又は第二ベルトコンベア72における乾燥槽73の入口よりも上流側に配置される。
【0034】
乾燥槽73は、第二ベルトコンベア72を収容するジャケット73aと、槽内(ジャケット73a内)で赤外線を発生したりする電気コイルなどの加熱機構73bとを有する。第二ベルトコンベア72上を搬送される板状片1は、ジャケット73a内を通過する過程で、加熱機構73bにより加熱乾燥される。ジャケット73aには水蒸気を排気する排気口73cを設けてもよい。
【0035】
成形ローラ74は、例えば、第二ベルトコンベア72上で搬送されている板状片1をベルトBの上面側と下面側とで挟み込んでプレスする一対のロールを備えて成形装置である。成形ローラ74により、第二ベルトコンベア72上で搬送される板状片1は、板状の成型板9に成型される。板状片1が板状に成形される態様については後述する。
【0036】
成形ローラ74による成形は、乾燥槽73十分に板状片1を昇温させてからプレスのみを行って成形してもよいし、成形ローラ74を加熱ローラとして、板状片1を加熱しながらプレスして成形してもよい。成形ローラ74は、例えば乾燥槽73内に配置されてよい。本実施形態では、ジャケット73a内で板状片1を十分に昇温させて溶着させ、溶着させた板状片1を成形ローラ74でプレスして板状に仕上げ成型している。
【0037】
乾燥槽73及び成形ローラ74により成形された成型板9は、乾燥槽73から搬出された後、巻回装置8に至るまでの、第二ベルトコンベア72の冷却ゾーンによって、搬送中に外気にさらされて冷却される。冷却ゾーンにおいては、必要に応じて冷却風などを供給して成型板9の冷却を促進してもよい。
【0038】
第二ベルトコンベア72から巻回装置8へ搬送された成型板9は、出荷などのために巻回装置8で巻き取られ、ロール状とされる。
【0039】
以下では、
図3から
図9を参照しつつ、板状片1の浮遊状態、板状片1の配列状態の均質化、板状片1が第一ベルトコンベア61で搬送される態様及び板状への成型について説明する。
【0040】
図3、
図4に示すように、供給機構3から第一槽41に落下した直後の板状片1は、積層した状態で水面に浮遊する。供給機構3から落下した直後の板状片1の層(集合)は、全体としてみた場合に、板状片1が、水面上(平面上)において、あらゆる向きに等しい確率で向くようには分散されていない。また、板状片1の層を全体としてみた場合に、上下方向において、水面に沿わず、ばらつき、かつ、比較的厚みのある状態で積層して浮遊している。
【0041】
なお、板状片1の層は、供給機構3からの板状片1の供給量が多くなれば厚くなり、供給量が少なくなれば薄くなる。また、板状片1の層は、第一槽41の水Lの通流速度が遅ければ(第一槽41における板状片1の滞留時間が長ければ)厚くなり、通流速度が早ければ(第一槽41における板状片1の滞留時間が短ければ)薄くなる。
【0042】
本実施形態では、
図4に示すように、第一槽41に浮遊した状態の板状片1の下方から、配列機構5の気泡発生装置51によって気泡Aが供給される。この気泡Aが水中を上昇して水面に達する過程で、板状片1は、気泡Aの浮力や気泡Aがはじける際の衝撃力などの外力、すなわち、上方へ持ち上げる力や振動を加えられる。板状片1は樹脂で被覆されているため、板状片1同士は滑らかに滑り、また、板状片1は水面に浮遊するから、外力を繰り返し加えられるにしたがって、板状片1は、
図5に示すように、水面に沿って配向するようになり、単位面積当たりの積層枚数は変わらない状態で薄く積層する状態に変化していく。また、外力を繰り返し加えられるにしたがって、板状片1は、
図6に示すように、板状片1の層を全体としてみた場合に、水面上において、あらゆる向きに等しい確率で向くように分散していく。このように、板状片1は第一槽41に浮遊した状態で下流側に流れながら、第一ベルトコンベア61に至るまでの間に均質化していく。
【0043】
均質化された後の板状片1の層は、均質化されるまでの板状片1の層の厚さよりも薄くなる。均質化された後の板状片1の層は、均質化されるまでの板状片1の層の厚さと同様に、供給機構3からの板状片1の供給量が多くなれば厚くなり、供給量が少なくなれば薄くなる。また、板状片1の層は、第一槽41の水Lの通流速度が遅ければ厚くなり、通流速度が早ければ薄くなる。
【0044】
図7に示すように、均質化された後の板状片1の層は、第一ベルトコンベア61のベルトBですくい上げられる。第一ベルトコンベア61のベルトBですくい上げられる板状片1の層は、第一槽41で均質化された後の板状片1の層が厚い場合に厚くなり、均質化された後の板状片1の層が薄いと薄くなる。
【0045】
すくい上げられた板状片1の層は、乾燥槽73及び成形ローラ74(
図1参照)により成形されて、
図8、
図9に示すような、板状の成型板9に成型される。成型板9は、板状片1が平面上においてあらゆる向きに等しい確率で向くように分散された状態で固定化された板状体となる。
【0046】
成型板9は、切断された不連続繊維を含むことから、成型板9を原料に用いて成型体を成型する際の流動性が良くなる。また、成型板9は、板状片1の分散により繊維の方向がランダムに配向していることから、成型板9を原料に用いた成型体の強度は高いものとなる。成型板9の目付量は、第一ベルトコンベア61のベルトB(
図1参照)ですくい上げられた板状片1の層が厚い場合に大きくなり、すくい上げられた板状片1の層が薄いと小さくなる。
【0047】
このように、
図1に示す製造装置100は、配列機構5を備えることで、容易に均質化を行える。そのため、製造装置100は、成型板9の目付量や生産速度の変更を容易に行える。例えば供給機構3からの板状片1の供給量を多くしつつ、第一槽41の水Lの通流速度を早くして成型板9の目付量を一定としながら生産速度を向上させることなどができる。すなわち、製造装置100は、均質化を行いつつ、成型板9の生産性を容易に向上させることができる。
【0048】
以上のようにして、チョップドシート製造装置及びチョップドシートの製造方法を提供することができる。
【0049】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、配列機構5が気泡発生装置51を有し、第一槽41内で気泡Aを発生させて、気泡Aにより外力を板状片1に加え、第一槽41に浮遊した状態の板状片1を均質化していく場合を説明した。しかしながら、配列機構5が板状片1に外力を加えて配列状態を均質化する機構や方法は、気泡発生装置51に限られない。配列機構5は、第一槽41に浮遊した状態の板状片1に対して外力を加えられるものであればよい。
【0050】
例えば、配列機構5は、気泡発生装置51と共に、又は、気泡発生装置51に代えて、
図10、
図11に示すような、第一槽41の液面又は板状片1を叩く又は揺らす(振動させる)振動発生工程を行うためのパドル装置55を有してもよい。
図10、
図11では、パドル装置55が、上流側から下流側にかけて所定の間隔で複数個配置されている場合を示している。パドル装置55は、
図11に示すように、供給位置の直後から回収機構6の手前となる位置に配置してよい。パドル装置55は、例えば上下にピストン運動するような動作を行う物であってよい。
図10に示すように、パドル装置55は、例えば、第一槽41の幅方向(短手方向)にその長手方向を沿わせて配置した棒状のパドル55aを、支持軸55bを介して上下にピストン運動させる構造であってよい。
【0051】
図10に示すように、第一槽41の液面又は板状片1は、パドル装置55により、叩かれ、また揺らされて振動する。これにより、板状片1に外力を加えて板状片1の配列状態を均質化させることができる。
【0052】
(2)上記実施形態では、供給機構3が供給容器31と、供給容器31を振動させて供給容器31から板状片1を浮遊槽4に落下させる振動装置32と、供給容器31から落下した板状片1に空気を吹き付ける送風機33とを備えている場合を説明した。しかしながら、送風機33は必須ではない。供給機構3に送風機33を備えて供給容器31から落下する板状片1を分散することに代えて、配列機構5で均質化を行う際に板状片1に加える外力を大きくしたり、第一槽41における板状片1の滞留時間を長くしたりして、分散及び均質化を促進してもよい。
【0053】
(3)上記実施形態では、供給機構3が供給容器31と、供給容器31を振動させて供給容器31から板状片1を浮遊槽4に落下させる振動装置32と、を備えている場合を説明した。しかしながら、振動装置32は必須ではない。振動装置32に代えて、例えばスクリュー型やパドル型の送り出し又は掻き出し機構を備え、これら機構により、供給容器31から板状片1を浮遊槽4に落下させてもよい。
【0054】
(4)上記実施形態では、供給機構3が供給容器31と、供給容器31を振動させて供給容器31から板状片1を浮遊槽4に落下させる振動装置32と、を備えている場合を説明した。しかしながら、供給容器31から浮遊槽4に板状片1を供給する態様は、落下に限られない。供給容器31から浮遊槽4に向けて傾斜面を設け、当該傾斜面に板状片1を滑らせて、供給容器31から浮遊槽4に板状片1を流し込んでもよい。この場合、当該傾斜面を振動させて、傾斜面上で板状片1を分散させながら浮遊槽4に板状片1を流し込んでもよい。
【0055】
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、チョップドシート製造装置及びチョップドシートの製造方法に適用できる。
【符号の説明】
【0057】
1 板状片
100 製造装置(チョップドシート製造装置)
3 供給機構
31 供給容器
31a 開口部
32 振動装置
33 送風機
4 浮遊槽
41 第一槽
41a カバー
42 第二槽
43 ポンプ
5 配列機構
51 気泡発生装置
55 パドル装置
55a パドル
55b 支持軸
6 回収機構
61 第一ベルトコンベア
7 乾燥成形装置
71 水切り機構
72 第二ベルトコンベア
73 乾燥槽
73a ジャケット
73b 加熱機構
73c 排気口
74 成形ローラ
8 巻回装置
9 成型板(チョップドシート)
A 気泡
B ベルト
L 水(液体)