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  • 特許-半導体パッケージ用ポリイミドフィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】半導体パッケージ用ポリイミドフィルム
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/29 20060101AFI20240109BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20240109BHJP
   C09J 7/29 20180101ALI20240109BHJP
   C09J 179/08 20060101ALI20240109BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20240109BHJP
   H01L 23/50 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
H01L23/30 R
C09J7/29
C09J179/08
C09J11/04
H01L23/50 R
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021512789
(86)(22)【出願日】2019-06-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-04
(86)【国際出願番号】 KR2019007342
(87)【国際公開番号】W WO2020050481
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】10-2018-0106800
(32)【優先日】2018-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519068308
【氏名又は名称】アイピーアイ・テック・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】IPI TECH INC.
【住所又は居所原語表記】272-27,Munji-ro,Yuseong-gu,Daejeon 34050,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ, ギェウン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ソンス
(72)【発明者】
【氏名】パク,ホヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ,テソク
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ジュファン
【審査官】豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-017648(JP,A)
【文献】特開2003-017644(JP,A)
【文献】特開2003-327932(JP,A)
【文献】国際公開第2007/010902(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
H01L21/56
H01L23/28- 23/31
H01L23/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルム;
前記基材フィルム上に位置する非熱可塑性ポリイミド層;及び、
前記非熱可塑性ポリイミド層上に位置する熱可塑性ポリイミド層;とを含み、
ここで、前記基材フィルムと前記非熱可塑性ポリイミド層との20℃~200℃における平均線熱膨張係数差は、15ppm/K以下であり、
前記熱可塑性ポリイミド層は、無機フィラーを含むものの、前記無機フィラーは、前記熱可塑性ポリイミド層の樹脂100重量部に対して5~20重量部を含み、
前記非熱可塑性ポリイミド層のリードフレームに対する25℃における接着力は、10gf/cm未満であり、
前記熱可塑性ポリイミド層のリードフレームに対する25℃における接着力は、50gf/cm~200gf/cmである、
半導体パッケージ用ポリイミドフィルム。
【請求項2】
前記非熱可塑性ポリイミド層と前記熱可塑性ポリイミド層との20℃~200℃における平均線熱膨張係数差は、30ppm/K以下である、
請求項1に記載の半導体パッケージ用ポリイミドフィルム。
【請求項3】
前記熱可塑性ポリイミド層は、20℃~200℃における40ppm/K~50ppm/Kの平均線熱膨張係数を有する、
請求項1に記載の半導体パッケージ用ポリイミドフィルム。
【請求項4】
前記熱可塑性ポリイミド層は、190℃~230℃のガラス転移温度を有する、
請求項1に記載の半導体パッケージ用ポリイミドフィルム。
【請求項5】
前記非熱可塑性ポリイミド層に接する前記基材フィルムの表面は、前記非熱可塑性ポリイミド層との接着力を高めるために表面処理された、
請求項1に記載の半導体パッケージ用ポリイミドフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体パッケージ用ポリイミドフィルムに関するものであって、より具体的には、基材フィルムと熱可塑性ポリイミド層との間の平均線熱膨張係数差を減らして、熱可塑性ポリイミド層の剥離現象を防止することができるだけでなく、リードフレームに付着する熱可塑性ポリイミド層が、パッケージング工程の温度以下のガラス転移温度を有することにより、封止工程の完了後、容易に剥離可能な半導体パッケージ用ポリイミドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドフィルムは、機械的かつ熱的寸法安定性に優れ、化学的安定性を有する特性によって電気、電子材料、宇宙、航空及び電気通信の分野に広く利用されている。このようなポリイミドフィルムは、部品の軽薄短小化により微細なパターンを有する軟性回路基板材料、一例としてTAB(Tape Automated Bonding)やCOF(Chip On Film)などのベースフィルムとして多く使用されている。
【0003】
また、半導体パッケージの一面(半導体素子)のみを封止し、他面に露出したリードフレームを外部接続用として使用する構造のパッケージが開発されている。かかる構造を有する半導体パッケージは、リードフレームが封止樹脂から突出していないため、軽薄短小化が可能である利点があるものの、半導体パッケージの封止時、リードフレームの裏面(backside)に封止樹脂が侵透する不良が発生しやすい。
【0004】
これによって、半導体パッケージの封止の前、リードフレームに接着フィルムを付着させた後に封止工程を行い、半導体パッケージの封止後、接着フィルムを剥離することにより、リードフレームの裏面に封止樹脂が侵透する問題を防ぐ試みが行われている。
【0005】
このような接着フィルムは、通常、基材フィルム上に、リードフレームに付着する熱可塑性ポリイミド層が積層された構造を有する。
【0006】
このとき、リードフレームの裏面に接着フィルムを付着した後に行われる封止工程は、相対的に高温(例えば、200℃以上)で行われるが、封止工程中、熱可塑性ポリイミド層が基材フィルムから剥離するか、熱可塑性ポリイミド層が変性されて封止後、リードフレームから容易に剥離しない問題が発生し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した技術的背景下で、本発明は、基材フィルムと、基材フィルム上に積層される熱可塑性ポリイミド層との間の平均線熱膨張係数差を減らして、高温における熱可塑性ポリイミド層の剥離現象を防止可能な半導体パッケージ用ポリイミドフィルムを提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、リードフレームに付着する熱可塑性ポリイミド層が、封止工程の温度以下のガラス転移温度を有することにより、パッケージング工程の完了後、容易に剥離可能な半導体パッケージ用ポリイミドフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記技術的課題を解決するため本発明の一側面によれば、基材フィルム、前記基材フィルム上に位置する非熱可塑性ポリイミド層、及び前記非熱可塑性ポリイミド層上に位置する熱可塑性ポリイミド層、とを含む半導体パッケージ用ポリイミドフィルムが提供される。
【0010】
ここで、非熱可塑性ポリイミド層は、基材フィルムと、熱可塑性ポリイミド層との間の平均線熱膨張係数差を減らして、基材フィルムから熱可塑性ポリイミド層が剥離することを防止可能な平均線熱膨張係数の補償層として役割する。
【0011】
非熱可塑性ポリイミド層が、基材フィルムと熱可塑性ポリイミド層との間の平均線熱膨張係数の補償層として役割するためには、非熱可塑性ポリイミド層も、基材フィルムとの平均線熱膨張係数差が少なくて、高温工程中、基材フィルムから剥離する可能性が少なくなければならない。
【0012】
このために、基材フィルムと非熱可塑性ポリイミド層との20℃~200℃における平均線熱膨張係数差は、30ppm/K以下であることが好ましい。
【0013】
また、非熱可塑性ポリイミド層から熱可塑性ポリイミド層が剥離する可能性を減らすために、非熱可塑性ポリイミド層と前記熱可塑性ポリイミド層との20℃~200℃における平均線熱膨張係数差は、30ppm/K以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、基材フィルムと、基材フィルム上に積層される熱可塑性ポリイミド層との間の平均線熱膨張係数差を減らして、高温における熱可塑性ポリイミド層の剥離現象を防止可能である。
【0015】
また、リードフレームに付着する熱可塑性ポリイミド層は、封止工程の温度以下のガラス転移温度を有することにより、パッケージング工程の完了後、容易に剥離可能である。
【0016】
また、リードフレームに付着する場合、熱可塑性ポリイミド層と基材フィルムとの間の平均線熱膨張係数差が大きい場合には、リードフレームの曲げ現象が発生する可能性があるため、本発明によれば、非熱可塑性ポリイミド層を導入することにより、平均線熱膨張係数差を減らして、リードフレームの曲げ現象又はポリイミドフィルムの剥離現象を減らすことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施例による半導体パッケージ用ポリイミドフィルムの断面を概略的に示した図面。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明をより理解しやすくするために、便宜上、特定の用語を本願に定義する。本願で他に定義しない限り、本発明に使われる科学用語及び技術用語は、当該技術分野における通常の知識を有する者にとって一般的に理解される意味を有する。また、文脈上、特に指定しない限り、単数形態の用語は、それの複数形態も含むものであり、複数形態の用語は、それの単数形態も含むものと理解しなければならない。
【0019】
以下では、本発明による半導体パッケージ用ポリイミドフィルムをより詳説する。
【0020】
図1は、本発明の一実施例による半導体パッケージ用ポリイミドフィルムを示した断面図である。
【0021】
図1を参照すれば、本発明の一実施例による半導体パッケージ用ポリイミドフィルム100は、基材フィルム120、基材フィルム120上に位置する非熱可塑性ポリイミド層140、非熱可塑性ポリイミド層140上に位置する熱可塑性ポリイミド層160、とを含む。
【0022】
ここで、基材フィルム120は、半導体パッケージの製造工程中に加わる高温での変性を防止するために、耐熱性を確保可能な素材からなるフィルムであることが好ましい。
【0023】
このような基材フィルム120を形成する素材としてはポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルファイド、ポリエーテルケトン、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン、及びポリエチレンナフタレートなどのような樹脂がある。
【0024】
本発明の一実施例による半導体パッケージ用ポリイミドフィルム100を具現するため基材フィルム120の素材は、上述した様々な樹脂の他の素材も使用されうるが、このような樹脂を用いて形成された基材フィルム120は、20℃~200℃における20ppm/K以下の平均線熱膨張係数を有するように形成されることが好ましい。
【0025】
基材フィルム120の20℃~200℃における平均線熱膨張係数が20ppm/Kよりも大きい場合、リードフレームと接着後、リードフレームとの平均線熱膨張係数差によるリードフレームの曲げ現象(warpage)が発生するか、接着されたポリイミドフィルムが剥離するおそれがある。
【0026】
また、基材フィルム120のガラス転移温度は、ポリイミドフィルム100の耐熱性を確保するために、少なくとも150℃以上であることが好ましい。
【0027】
基材フィルム120の厚さは、特に制限されないが、ポリイミドフィルム100をリードフレームに付着した後、リードフレームのバリ(burr)が発生することを防止するために、150μm以下の厚さを有することが好ましい。
【0028】
また、非熱可塑性ポリイミド層140との接着力を高めるために、非熱可塑性ポリイミド層140に接する基材フィルム120の表面は、表面処理されても良い。
【0029】
このような表面処理は、基材フィルム120の表面粗度を変化させる処理であって、フィルムの表面粗度を変化させる処理方法としては化学的処理、物理的処理、プラズマ処理又はコロナ処理などがある。
【0030】
ここで、非熱可塑性ポリイミド層140は、基材フィルム120と熱可塑性ポリイミド層160との間の平均線熱膨張係数差を減らして、基材フィルム120から熱可塑性ポリイミド層160が剥離することを防止可能な平均線熱膨張係数の補償層として役割する。
【0031】
このような非熱可塑性ポリイミド層140を形成する素材としては、熱硬化性ポリイミド樹脂などがあるが、必ずしもこれに制限されるものではなく、熱可塑性ポリイミド樹脂に例えば、フェノール樹脂のような熱硬化性樹脂を混合して形成することができる。
【0032】
また、非熱可塑性ポリイミド層140は、基材フィルム120と熱可塑性ポリイミド層160との間の平均線熱膨張係数の補償層として役割するためには、非熱可塑性ポリイミド層140も、基材フィルムとの平均線熱膨張係数差が少なくて、高温工程中、基材フィルム120から剥離する可能性が少なくなければならない。
【0033】
このために、非熱可塑性ポリイミド層140は、20℃~200℃における40ppm/K以下の平均線熱膨張係数を有するものの、基材フィルム120との20℃~200℃における平均線熱膨張係数差が30ppm/K以下になるようにすることが好ましい。
【0034】
非熱可塑性ポリイミド層140は、基材フィルム120との20℃~200℃における平均線熱膨張係数差が30ppm/K以下になることにより、リードフレームの裏面にポリイミドフィルム100を付着した後に行われる高温(例えば、200℃以上)でのダイアタッチ、ワイヤリング工程中、非熱可塑性ポリイミド層140が基材フィルム120から剥離する可能性を減らすことができる。
【0035】
また、非熱可塑性ポリイミド層140は、リードフレームに対する25℃における接着力が10gf/cm未満であることが好ましい。
【0036】
非熱可塑性ポリイミド層140は、リードフレームに対する直接的な接着用途として存在する層ではないものの、非熱可塑性ポリイミド層140上に熱可塑性ポリイミド層160が完全に積層されず、一部の非熱可塑性ポリイミド層140が露出し得る。
【0037】
ただ、露出した非熱可塑性ポリイミド層140がリードフレームと接着しても、非熱可塑性ポリイミド層140は、リードフレームに対する低い接着力を有することにより、封止工程後、ポリイミドフィルム100の剥離に影響を与えない。
【0038】
上述した非熱可塑性ポリイミド層140の厚さは、特に制限されないものの、半導体パッケージ工程中、ワイヤリング工程を行う際に、バウンシングを防止するために0.3μm~5μm以下の厚さを有することが好ましい。
【0039】
また、非熱可塑性ポリイミド層140は、高温の封止工程中、非熱可塑性ポリイミド層140が柔軟になることを防止するために、320℃以上のガラス転移温度を有することが好ましい。
【0040】
非熱可塑性ポリイミド層140のガラス転移温度は、320℃よりも小さい場合、リフローなどの高温工程を行う際に、非熱可塑性ポリイミド層と熱可塑性ポリイミド層との間の界面状態が変わり、リードフレームとの接着力が強くなって、リードフレームからフィルムを除去する際に、異物が残留する可能性が高い。
【0041】
また、リードフレームの接着後、高温工程時、リードフレームの曲げ現象が大きくなるにつれて、基材フィルム100から非熱可塑性ポリイミド層140が剥離するか、非熱可塑性ポリイミド層140と熱可塑性ポリイミド層160が基材フィルム100から剥離して、ポリイミドフィルム100がリードフレーム上に完全に付着することができない可能性がある。
【0042】
一方、熱可塑性ポリイミド層160は、非熱可塑性ポリイミド層140上に位置する。
【0043】
熱可塑性ポリイミド層160は、エーテル基、ケトン基及びメチル基から選択される少なくとも一つの作用基を含む芳香族ジアミンとエーテル基、ケトン基及びメチル基から選択される少なくとも一つの作用基を含む芳香族ジアンヒドリド(aromatic dianhydride)を有機溶媒に合成して製造されたポリアミック酸を含む樹脂を用いて形成することができる。
【0044】
このとき、芳香族ジアミンは、下記化1で表される3,3’-ジメチル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミンを含んでいても良い。
【0045】
【化1】
【0046】
また、芳香族ジアンヒドリドは、下記化2で表される3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボキシルジアンヒドリド(3,3’,4,4’-benzophenontetracarbolxylic dianhydride)を含んでいても良い。
【0047】
【化2】
【0048】
有機溶媒としては、NMP(N-メチル-2-ピロリドン)、DMAC(ジメチルアセトアマイド)、DMF(ジメチルホルムアマイド)、ジメチルスルホキシド及び乳酸エチルから選択される少なくとも一つを用いることができ、必ずしもこれに制限されるものではない。
【0049】
また、さらに熱可塑性ポリイミド層160を形成するための樹脂には、樹脂100重量部に対して5~20重量部の無機フィラーがさらに含まれていても良い。
【0050】
熱可塑性ポリイミド層160に無機フィラーを含ませることにより、非熱可塑性ポリイミド層140と熱可塑性ポリイミド層160との接着力を向上させて、非熱可塑性ポリイミド層140から熱可塑性ポリイミド層160が剥離する問題を防止することができる。また、無機フィラーは、熱可塑性ポリイミド層160と非熱可塑性ポリイミド層140との間の平均線熱膨張係数差を減らして、高温工程中、非熱可塑性ポリイミド層140から熱可塑性ポリイミド層160が剥離しないようにすることができる。また、熱可塑性ポリイミド層160に無機フィラーを含ませることにより、熱可塑性ポリイミド層160とリードフレームとの間の接着力を制御することができる。
【0051】
本発明で用いられる無機フィラーの非制限的な例としては、SiO2、Al23又はZnOなどがあり、無機フィラーの平均径は、1Å~100nmであってもよい。
【0052】
本発明の一実施例による半導体パッケージ用ポリイミドフィルム100は、基材フィルム120と熱可塑性ポリイミド層160との間に介した非熱可塑性ポリイミド層140を含み、非熱可塑性ポリイミド層140は、基材フィルム120と熱可塑性ポリイミド層160との間の平均線熱膨張係数を有することにより、ポリイミドフィルム100全体における平均線熱膨張係数の急激な変化を減らすことが可能である。
【0053】
熱可塑性ポリイミド層160は、20℃~200℃における40ppm/K~50ppm/Kの平均線熱膨張係数を有し得、特に、非熱可塑性ポリイミド層140上に位置する熱可塑性ポリイミド層160は、高温工程中、非熱可塑性ポリイミド層140から剥離しないために、非熱可塑性ポリイミド層140と熱可塑性ポリイミド層160の20℃~200℃における平均線熱膨張係数差は、30ppm/K以下であることが好ましい。
【0054】
また、熱可塑性ポリイミド層160は、190℃~230℃のガラス転移温度を有することにより、高温の封止工程時、ゴムのように柔軟になることにより、リードフレームとの接着力を向上させることができる。
【0055】
また、熱可塑性ポリイミド層160は、リードフレームに対する25℃における接着力が50gf/cm~200gf/cmであることが好ましい。
【0056】
熱可塑性ポリイミド層160は、リードフレームに対する直接的な接着用途として存在する層であって、リードフレームに対する25℃における接着力が50gf/cm未満である場合、リードフレームに対する接着力が低くて、エポキシモールド注入時、エポキシ漏れ(leakage)及びバリ(burr)が発生する可能性がある反面、リードフレームに対する25℃における接着力が200gf/cmよりも大きい場合、リードフレームに対する接着力が高すぎて封止後、リードフレームからポリイミドフィルム100の剥離時、残留物が残るおそれがある。
【0057】
上述した熱可塑性ポリイミド層160の厚さは、特に制限されないが、温度変化による熱可塑性ポリイミド層160の体積変化によって、ポリイミドフィルム100に屈曲が発生することを防止するために、0.3μm~5μm以下の厚さを有することが好ましい。
【0058】
以下では、本発明の具体的な実施例を提示する。ただ、下記に記載の実施例は、本発明を具体的に例示するか説明するためのものに過ぎず、これによって本発明が制限されてはならない。
【0059】
ポリイミドフィルムの製造方法
実施例1
4,4’-ジアミノジフェニルエーテルとピロメリト酸ジアンヒドリドを用いて非熱可塑性ポリイミド樹脂(樹脂A)を重合しており、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼンと、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンジアンヒドリド、4,4’-オキシジフタル酸無水物を用いて、熱可塑性ポリイミド層を形成するための樹脂(樹脂B)を合成し、樹脂質量に対し15%のシリカを添加して複合化を行った。
【0060】
厚さ100μm、20℃~200℃における平均線熱膨張係数が17ppm/KであるGF100(SKCKolonPI)フィルムを基材フィルムとして用いており、基材フィルムの片面に樹脂Aを2μmの厚さに塗布した後、300℃に熱処理して、非熱可塑性ポリイミド層を形成した。
【0061】
このとき、非熱可塑性ポリイミド層の20℃~200℃における平均線熱膨張係数は、30ppm/Kであった。
【0062】
次いで、非熱可塑性ポリイミド層上に樹脂Bを1μmの厚さに塗布した後、300℃に熱処理し、熱可塑性ポリイミド層を形成して、ポリイミドフィルムを製造した。
【0063】
このとき、熱可塑性ポリイミド層のガラス転移温度は、200℃であり、20℃~200℃における平均線熱膨張係数は、40ppm/Kであった。
【0064】
比較例1
熱可塑性ポリイミド層の20℃~200℃における平均線熱膨張係数は、90ppm/Kであり、ガラス転移温度が180℃であったことを除いて、実施例1と同じ方法によりポリイミドフィルムを製造した。
【0065】
比較例2
非熱可塑性ポリイミド層を形成せずに、基材フィルム上に熱可塑性ポリイミド層を形成したことを除いて、実施例1と同じ方法によりポリイミドフィルムを製造した。
【0066】
ポリイミドフィルムに対する残留物の評価
残留物の評価方法
ポリイミドフィルムの耐熱性を評価するために、半導体パッケージのリードフレームの裏面にポリミイドフィルムを付着した後、190℃で5分、260℃で1分、175℃で3分間、段階的に熱処理した後、リードフレームからポリイミドフィルムを除去した後、リードフレームの表面に残っている残留物の数量を顕微鏡を利用して確認した。
【0067】
残留物の評価基準
○:リードフレームの表面残留物の全体面積と比べて、5%以内
△:リードフレームの表面残留物の全体面積と比べて、5~30%以内
×:リードフレームの表面残留物の全体面積と比べて、30%以上
【0068】
【表1】
【0069】
以上、本発明の一実施例について説明したが、当該技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載した本発明の思想から外れない範囲内において、構成要素の付加、変更、削除又は追加などによって本発明を多様に修正及び変更することができ、これも本発明の権利範囲内に含まれるといえる。
図1