(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】車両およびその駐車設備
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20240109BHJP
B62D 63/04 20060101ALI20240109BHJP
E04H 6/06 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
B62D25/20 Z
B62D63/04
E04H6/06 A
(21)【出願番号】P 2021516317
(86)(22)【出願日】2020-04-24
(86)【国際出願番号】 JP2020017868
(87)【国際公開番号】W WO2020218596
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2023-04-12
(31)【優先権主張番号】P 2019083752
(32)【優先日】2019-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】515216468
【氏名又は名称】株式会社 BRAVE ROBOTICS
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(72)【発明者】
【氏名】石田 賢司
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105730554(CN,A)
【文献】中国実用新案第202686563(CN,U)
【文献】特開2009-132252(JP,A)
【文献】特開2012-010551(JP,A)
【文献】特開昭63-167849(JP,A)
【文献】特開2012-046997(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102007062588(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00-25/08
B62D 25/14-29/04
B62D 63/04
B60L 1/00
B60L 50/60
B60L 53/12,53/14,53/30
E04H 6/32, 6/38, 6/42
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の背面を下にして起立することができる車両であって、
前記車体の底面に配置されて
、前記車体の後部下端を中心として上下に回動可能な底面フラップと、
前記底面フラップを回動させる駆動源
と、
前記車体の前記背面に配置されて、前記車体の前記後部下端を中心として上下に回動可能な背面フラップと、
前記背面フラップを回動させる駆動源と、
を備えることを特徴とする車両。
【請求項2】
前記底面フラップの底面と前記背面フラップの外面に接触センサを設けたことを特徴とする請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記駆動源は、ギヤ付きモータであることを特徴とする請求項
1又は2に記載の車両。
【請求項4】
充電可能なバッテリと、該バッテリから供給される電力によって回転駆動される走行用の電動モータと、前記バッテリを充電するための電力を外部から受ける受電部が設けられていることを特徴とする
請求項1~3の何れかに記載の車両。
【請求項5】
車両を、その背面を下にして起立させた状態で駐車させる車両の駐車設備であって、
前記車両を、その背面を下にして起立させる起立機構と、該起立機構によって起立した前記車両を所定の位置へと移動させる移動機構を備え、
前記起立機構は、
水平なベースプレートと、該ベースプレートの長手方向一端に上下に回動可能に支持されて起立前と起立後の前記車両を載置する回動部材と、前記ベースプレートの長手方向他端に設けられた電動モータと、該電動モータの出力軸と前記回動部材とを連結するリンク機構を備える
ことを特徴とする車両
の駐車設備。
【請求項6】
前記移動機構は、ベルトコンベアであることを特徴とする請求項5に記載の車両
の駐車設備。
【請求項7】
前記ベルトコンベアに、駐車中の前記車両に対して外部から送電するための送電部を内蔵したことを特徴とする
請求項6に記載の車両の駐車設備。
【請求項8】
車体の背面にキャスタと駆動輪および該駆動輪を回転駆動する駆動源を備え、前記車体の背面を下にして起立した状態で自走することができる車両を、その背面を下にして起立させた状態で駐車させる車両の駐車設備であって、
前記車両を、その背面を下にして起立させる起立機構を備え、
前記起立機構は、
水平なベースプレートと、該ベースプレートの長手方向一端に上下に回動可能に支持されて起立前と起立後の前記車両を載置する回動部材と、前記ベースプレートの長手方向他端に設けられた電動モータと、該電動モータの出力軸と前記回動部材とを連結するリンク機構を備える
ことを特徴とする車両の駐車設備。
【請求項9】
前記車両の前記駆動源は、ギヤ付きモータであることを特徴とする請求項8に記載の車両の駐車設備。
【請求項10】
前記車両は、充電可能なバッテリと、該バッテリから供給される電力によって回転駆動される走行用の電動モータと、前記バッテリを充電するための電力を外部から受ける受電部が設けられていることを特徴とする
請求項8又は9に記載の車両の駐車設備。
【請求項11】
前記回動部材に接触センサを設けたことを特徴とする請求項
5~10のいずれか1項に記載の車両の駐車設備。
【請求項12】
前記ベースプレート上に、駐車中の前記車両に対して外部から送電するための送電部を配置したことを特徴とする請求項
5~11のいずれか1項に記載の車両の駐車設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、起立した状態で駐車することができる車両とその駐車設備に関する。
【背景技術】
【0002】
4~6人乗りの普通自動車は、駐車スペースや維持費などの点でユーザーに大きな負担を強いる。このため、近年、「小型モビリティ」と称される車両の開発が進んでいる。この種の車両は、例えば大人1~2人乗りの電動で走行するものであって、駆動源としてエンジンを搭載する車両に比して小型・軽量化が可能となる。
【0003】
ところで、この種の車両の普及を促すためには、その保管スペースや街中での駐車スペースの確保などの課題を解決する必要がある。
【0004】
そこで、特許文献1,2には、小さなスペースに駐車可能な折り畳み式の車両が提案されている。また、特許文献3には、既存建物の屋上を利用して車両を駐車させる駐車設備が提案されている。この駐車設備は、既存建物の屋上の少なくとも一部を覆う床板を、既存建物の周囲に立設した複数の支柱で支持するとともに、地面と床板との間で車両を昇降させる昇降装置を設けて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-082827号公報
【文献】特開2014-159211号公報
【文献】特開2015-090005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1,2において提案された車両は、電動車椅子やキャスタ式の小型移動体を対象とするものであって、一般道路を普通自動車と同様に走行することができる車両を前提とするものではない。因みに、普通自動車と同様に走行することができる車両は、小型ではあるが、普通自動車と同様の形態を採るため、これを折り畳むことができない。
【0007】
また、特許文献3において提案された駐車設備は、既存建物の屋上を車両の駐車場として利用するものであって、車両自体の駐車スペースを縮小するものではないため、駐車可能な車両の台数には限界がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、それ自体の駐車スペースを最小限に抑えることができる車両と所定の駐車スペースに多くの車両を効率よく駐車させることができる駐車設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、第1発明は、車体の背面を下にして起立することができる車両(1)であって、車体の底面に配置されて車体の後部下端を中心として上下に回動可能な底面フラップ(7)と、該底面フラップ(7)を回動させる駆動源(9)を備えることを特徴とする。
【0010】
第1発明に係る車両は、背面を下にして起立した状態で駐車するため、その駐車スペースが最小限に抑えられる。このため、所定の駐車スペースに多くの車両を効率よく駐車させることができる。
【0011】
また、上記車両(1)は、車体の背面に配置されて車体の後部下端を中心として上下に回動可能な背面フラップ(8)と、該背面フラップ(8)を回動させる駆動源(11)を備えていてもよい。
【0012】
上記構成によれば、駐車時に背面フラップを回動させてこれを地面に接地させておけば、起立した車両を当該背面フラップによって安定的に受けることができる。
【0013】
また、前記車両(1)において、前記底面フラップ(7)の底面と前記背面フラップ(8)の外面に接触センサ(10,12)を設けてもよい。
【0014】
上記構成によれば、底面フラップと背面フラップの動作時にこれらに設けられた接触センサの何れか一方または双方が地面以外との接触を感知すると、底面フラップと背面フラップの駆動源を停止させ、底面フラップと背面フラップの回動を中止させることによって、高い安全性を確保することができる。
【0015】
また、第2発明は、車体の背面を下にして起立した状態で自走することができる車両(1”)であって、車体の背面にキャスタ(17)と駆動輪(18)および該駆動輪(18)を回転駆動する駆動源を備えることを特徴とする。
【0016】
第2発明によれば、駐車時に起立した車両を自走させてこれを任意の駐車位置へと移動させることができる。
【0017】
ここで、前記底面フラップ(7)や背面フラップ(8)或いは車両に設けられた自走のための駆動源(9,11)として、ギヤ付きモータを用いてもよい。これによれば、モータの出力トルクを増幅して各部に伝達することができる。
【0018】
また、第1および第2発明に係る車両(1,1’,1”)に、充電可能なバッテリと、該バッテリから供給される電力によって回転駆動される走行用の電動モータと、前記バッテリを充電するための電力を外部から受ける受電部(13)を設け、当該車両(1,1’,1”)を電動車両として構成してもよい。
【0019】
上記構成によれば、電動車両としての車両の小型・軽量化を図ることができる。
【0020】
また、第2発明に係る車両(1’)の駐車設備(20)は、車両(1’)を、その背面を下にして起立させる起立機構と、該起立機構によって起立した車両(1’)を所定の位置へと移動させる移動機構を備えることを特徴とする。
【0021】
上記駐車設備によれば、駐車時に起立機構によって起立した車両を移動機構によって所定の駐車位置へと移動させて駐車させることができる。
【0022】
ここで、前記移動機構は、ベルトコンベア(25)であってもよい。これによれば、起立した車両をベルトコンベアに載せて所定の駐車位置へと移動させることができる。
【0023】
また、前記ベルトコンベア(25)に、駐車中の前記車両(1’)に対して外部から送電するための複数の送電部(31)を内蔵してもよい。このように構成することによって、車両に搭載されたバッテリを駐車中に充電することができる。
【0024】
第3発明は、自走が可能な車両(1”)を、その背面を下にして起立させた状態で駐車させる車両(1”)の駐車設備(20”)であって、前記車両(1”)を、その背面を下にして起立させる起立機構を備えることを特徴とする。
【0025】
第3発明によれば、起立機構によって起立した車両を所定の駐車位置へと自走させて駐車させることができる。
【0026】
ここで、前記起立機構は、水平なベースプレート(21)と、該ベースプレート(21)の長手方向一端に上下に回動可能に支持されて起立前と起立後の車両(1’,1”)を載置する回動部材(22)と、前記ベースプレート(21)の長手方向他端に設けられた電動モータ(23)と、該電動モータ(23)の出力軸(23a)と前記回動部材(22)とを連結するリンク機構(24)を備えるものとしてもよい。
【0027】
上記起立機構によれば、電動モータを駆動してリンク部材を動作させ、起立前の車両が投入されて載置された回動部材をリンク部材の動作によって略90°回動させることによって、車両をその背面を下にして垂直に起立させることができる。
【0028】
ここで、前記回動部材(22)に接触センサ(27,28)を設けてもよい。このように回動部材に接触センサを設けることによって、回動部材の回動中に接触センサが障害物を検知した場合には、電動モータの駆動を停止して回動部材の回動を中止することができ、これによって高い安全性が確保される。
【0029】
また、駐車設備(20”)の前記ベースプレート(21)上に、駐車中の前記車両(1”)に対して外部から送電するための複数の送電部(31)を配置してもよい。これによれば、ベースプレート上の車両に搭載されたバッテリの充電を駐車中に行うことができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、車両をその背面を下にして起立した状態で駐車させることができるため、その駐車スペースを最小限に抑えることができ、所定の駐車スペースに多くの車両を効率よく駐車させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】第1発明に係る車両を前方斜め上方から見た斜視図である。
【
図2】第1発明に係る車両の底面フラップと背面フラップが開いた状態を後方斜め下方から見た斜視図である。
【
図3】
図3A~
図3Eは第1発明に係る車両が起立する過程を模式的に示す側面図である。
【
図4】
図4A~
図4Cは第1発明に係る複数の車両が駐車する過程を示す斜視図である。
【
図5】第2発明に係る駐車設備に駐車する車両を後方斜め上方から見た斜視図である。
【
図7】
図7A~
図7Eは第2発明に係る駐車設備に複数の車両を駐車させる過程を示す側面図である。
【
図8】第3発明に係る車両を後方斜め上方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付図面を参照して本発明(第1~第3発明)の実施の形態を説明する。
【0033】
[第1発明]
まず、第1発明の実施の形態を
図1~
図6に基づいて以下に説明する。
図1は第1発明に係る車両を前方斜上方から見た斜視図、
図2は同車両の底面フラップと背面フラップが開いた状態を後方斜め下方から見た斜視図であり、図示の車両(小型車両)1は、大人2人乗りの四輪の電動車両であって、図示しないが、これには走行用の動力源としての電動モータと、該電動モータに電力を供給するバッテリが搭載されている。そして、この車両1においては、電動モータからの駆動力が左右一対の前輪2または後輪3に伝達されてこれらの前輪2または後輪3が回転駆動されることによって、当該車両1が路上を走行する。このため、電動車両である図示の車両1は、駆動源としてエンジンを搭載する車両に比して小型・軽量に構成されている。
【0034】
そして、この車両1においては、金属によって略矩形ボックス状に成形された車体フレーム4の背面4aは、垂直に起立する平面を成しており、車体フレーム4の上面開口部は、上方に開くことができる跳ね上げ式のルーフ5によって覆われている。ここで、ルーフ5は、例えば軽量な樹脂によって構成されており、少なくともその前面と左右両側面は、それぞれ透明なフロントウインドウとサイドウインドウとして構成されている。このように、本実施の形態に係る車両1は、跳ね上げ式のルーフ5を備えているため、左右に開閉するドアを備える通常の車両に比して、当該車両1に対する乗員の乗降に必要なスペース、つまりは当該車両1の周囲に駐車する他の車両との間のスペースが最小限に抑えられる。
【0035】
そして、この車両1の車体フレーム4とルーフ5によって囲まれた車室の前後には、乗員が着座するための2つのシート6が前後に配置されている。
【0036】
なお、後述のように(
図3および
図4参照)、車両1は駐車時に背面4aを下にして倒立するが、車体フレーム4の背面4aに近い後部左右には、車両1が起立したときに作用する当該車両1の自重に対して強度的に十分耐えることができるように側面視台形状の補強部4Aが形成されている。
【0037】
ところで、本実施の形態に係る車両1においては、車体フレーム4の後端下部を中心として上下に回動(開閉)可能な矩形平板状の底面フラップ7と背面フラップ8がそれぞれ設けられている。ここで、底面フラップ7は、車体フレーム4の下面の幅方向において左右一対の前輪2と後輪3との間を前後方向に沿って配置された細長い部材であって、その前端部7aは、上方に向かって斜め前方に屈曲しており、後端部が車体フレーム4に対して上下に回動可能に軸支されている。そして、この底面フラップ7の後端部の幅方向中央は、
図2に示すように、車体フレーム4側に設けられた駆動源としてのギヤ付きモータ9に連結されている。なお、車両1においては、駐車時以外においては、底面フラップ7は、
図1に示すように、当該車両1の底面を覆うように水平状態を維持している。また、
図2に示すように、この底面フラップ7の底面の一部には、接触センサ10が設けられている。
【0038】
また、背面フラップ8は、車両1の背面4aの外径形状に沿った矩形プレートとして構成されており、
図2に示すように、その下端部の左右両側は、車体フレーム4側に設けられた駆動源としての左右のギヤ付きモータ11に連結されている。この背面フラップ8は、当該車両1の駐車時以外においては、
図1に示すように、垂直に起立して当該車両1の背面4aを覆っている。そして、
図2に示すように、この背面フラップ8の外面上部には接触センサ12が設けられており、同背面フラップ8の下部には、バッテリを充電するための電力を外部から受ける受電部13が設けられている。
【0039】
なお、後述のように、車両1は、駐車時には背面4aを下にして垂直に起立するが、この車両1が起立した状態でもバッテリに液漏れが発生しないようにするため、該バッテリには、いかなる姿勢においても液漏れが生じないリチウム系バッテリが使用されている。また、ギヤ付きモータ9,11は、駆動源であるモータに、その駆動トルクを増幅するための減速ギヤが内蔵されたものである。
【0040】
次に、以上のように構成された車両1の駐車方法を
図3および
図4に基づいて以下に説明する。
【0041】
図3A~
図3Eは車両が起立する過程を模式的に示す側面図、
図4A~
図4Cは複数の車両が駐車する過程を示す斜視図であり、車両1を駐車場に駐車させる場合には、該車両1は、前述のように背面4aを下にして垂直に起立した状態で駐車するが、その起立課程を
図3A~
図3Eに基づいて説明する。
【0042】
すなわち、
図3Aに示すように、車両1が駐車場の所定位置に到着すると、
図2に示すギヤ付きモータ9が起動される。このようにギヤ付きモータ9が駆動されると、
図3Bに示すように、底面フラップ7が回動して地面に着地する。この状態からギヤ付きモータ9をさらに駆動し続けると、該ギヤ付きモータ9の駆動力が地面からの反力となって車両1を起立させる動力として機能するため、この動力によって車両1がその後端下部(ギヤ付きモータ9の軸心)を中心として
図3Bの矢印方向(時計方向)に回動する。
【0043】
また、
図2に示すギヤ付きモータ11が起動されると、背面フラップ8は、その下端部(ギヤ付きモータ11の軸心)を中心として
図3Bの矢印方向(時計方向)に回動し(開き)、地面に接地する。なお、この課程で、底面フラップ7と背面フラップ8にそれぞれ設けられた接触センサ10,12の何れか一方または双方が地面以外のものを検知すると、ギヤ付きモータ9,11の駆動が停止され、車両1の回動(起立)と背面フラップ8の回動(開き)が停止されて高い安全性が確保される。
【0044】
その後、ギヤ付きモータ9の駆動を続けると、車両1は、
図3Cに示す経過を経て
図3Dに示すように背面4aを下にして背面フラップ8の上に垂直に起立する。その後、ギヤ付きモータ9を駆動して底面フラップ7を
図3Dの矢印方向(時計方向)に回動させれば、
図3Eに示すように、垂直に起立した車両1の底面が底面フラップ7によって覆われ、車両1に対する一連の起立動作が完了し、当該車両1は、駐車場の所定の位置に垂直に起立した状態で駐車することになる。
【0045】
以上の一連の駐車作業が複数台の車両1に対して行われると、
図4Aに示すように、先ず、最初の1台の車両1が駐車場の所定の位置(一番奥の位置)に垂直に起立した状態で駐車するが、駐車場の床面には、所定の間隔で複数(図示例では3つ)の送電部14が予め設置されており、駐車中の車両1の受電部13(
図2参照)には、送電部14から無線または有線で電力が送られ、受電部13で受け取られた電力は、車両1に搭載された不図示のバッテリの充電に供される。このため、車両1は、これに搭載されたバッテリの充電が駐車中になされる。
【0046】
以上の作業を2台目、3台目の車両1に対して順次行うと、この2台目と3台目の車両1は、
図4B、
図4Cに示すように、垂直に起立した状態で整然と駐車される。なお、
図4Cには3台の車両1の駐車状態を示すが、同様の作業を繰り返すことによって4台以上の複数台の車両1を垂直に起立した状態で駐車させることができ、各車両1に搭載されたバッテリの充電を駐車中に行うことができる。
【0047】
ところで、車両1は、その全高Hは全長L(
図4A参照)よりも小さい(H<L)ため、本実施の形態のように、車両1を背面4aを下にして垂直に起立した状態で駐車させると、所定の駐車スペースに駐車可能な車両1の台数が多くなり、多数の車両1を効率よく駐車させることができる。実際には、通常の車両の1台分の駐車スペースに6台の車両1を起立した状態で駐車させることができ、車両1の街中での駐車スペースの確保などの課題を解決することができる。
【0048】
[第2発明]
次に、第2発明の実施の形態を
図5~
図7に基づいて以下に説明する。
【0049】
図5は第2発明に係る駐車設備に駐車する車両を後方斜め上方から見た斜視図であり、図示の車両1’においては、垂直な平面状の背面に矩形平板状の背面プレート15が固設されている。なお、本実施の形態に係る車両1’も電動車両であって、その基本構成は、実施の形態1に係る車両1のそれと同じであるため、
図5においては、
図1および
図2において示したものと同一要素には同一符号を付しており、以下、それらについての再度の説明は省略する。
【0050】
ところで、背面プレート15の上端部と下端部の幅方向中央には、矩形ブロック状の支持台16が幅方向に沿って固設されており、同背面プレート15の下側の支持台16の上方には、当該車両1’に搭載された不図示のバッテリを充電するための電力を外部から受ける受電部13が設けられている。
【0051】
次に、以上のように構成された車両1’を垂直に起立させた状態で駐車させるための駐車設備20を
図6に基づいて以下に説明する。
【0052】
図6は第2発明に係る駐車設備の斜視図であり、図示の駐車設備20は、水平な細長い矩形のベースプレート21と、該ベースプレート21の長手方向一端(
図6の左端)に上下方向に回動可能に軸支された回動部材22と、ベースプレート21の長手方向他端(
図6の右端)に配置された駆動源である電動モータ23と、該電動モータ23の出力軸23aと回動部材22とを連結する左右一対のリンク機構24と、ベースプレート21の幅方向中央部に長手方向に沿って配置されたベルトコンベア25を含んで構成されている。
【0053】
回動部材車両1’を駐車時に垂直に起立させるための起立機構を構成するものであって、起立前の車両1’を載置するプレート22Aと、該プレート22Aに対して直角を成して起立後の車両1’を載置するプレート22Bと、これらのプレート22A,22Bの左右両側端同士を連結する左右の側板22Cとで構成されており、これは左右の側板22Cの基端部(角部)に幅方向に挿通する軸26によってベースプレート21に対して上下方向に回動可能に支持されている。より詳細には、ベースプレート21の長手方向一端の左右には、一対のブラケット21Aが立設されており、これらのブラケット21Aに軸26の左右両端部が回動可能に支持されることによって、回動部材22がベースプレート21に上下に回動可能に軸支されている。
【0054】
ここで、可動部材22のプレート22Bには、ベルトコンベア25との干渉を避けるための矩形の切欠き22aが形成されており、このプレート22Bの切欠き22aを挟んでこれの左右両側の外面には接触センサ27が設けられている。また、他方のプレート22Aの外面の幅方向中央部にも接触センサ28が設けられている。
【0055】
電動モータ23は、ベースプレート21の長手方向他端(
図6の右端)に幅方向に沿って横置き状態で配置されており、該電動モータ23の幅方向に長い出力軸23aの両端には、左右のリンク機構24を構成するリンク部材24Aの一端が結着されている。
【0056】
ここで、左右の各リンク機構24は、2つのリンク部材24A,24B同士を軸29によって回動可能に連結することによって構成されており、一方のリンク部材24Aの一端は、前述のように電動モータ23の出力軸23aに結着されており、他方のリンク部材24Bの一端は、回動部材22の側板22Cの端部に軸30によって回動可能に連結されている。
【0057】
ベルトコンベア25は、公知であるためにその構成の詳細については説明を省略するが、互いに平行に配置された不図示の駆動ローラと従動ローラとの間に無端状の帯状ベルトを巻装して構成されており、駆動ローラを駆動源である不図示の電動モータによって回転駆動することによって帯状ベルトが移動する。なお、ベルトコンベア25には、複数(図示例では3つ)の送電部31が長手方向に適当な間隔で内蔵されている。
【0058】
次に、
図5に示す車両1’を
図6に示す駐車設備20を用いて駐車させる方法を
図7A~
図7Eに基づいて以下に説明する。
【0059】
図7A~
図7Eは複数の車両1’を駐車させる過程を示す斜視図であり、車両1’は、
図6に示す駐車設備20によって垂直に起立した状態で駐車される。
【0060】
すなわち、車両1’を垂直に起立させる前の状態においては、駐車設備20の回動部材22は、
図7Aに示すように、プレート22Aが水平になる姿勢に保たれており、当該駐車設備20へと移動してきた車両1’は、駐車設備20の回動部材22の水平なプレート22Aへと移動して該プレート22A上に載置される。
【0061】
上記状態から、駐車設備20の電動モータ23が駆動され、該電動モータ23の出力軸23aが回転して左右の各リンク機構24の一方のリンク部材24Aが
図7Bに示すようにモータ23の出力軸23aを中心として図示矢印方向(時計方向)に回動すると、他方のリンク部材24Bが
図7Bの矢印方向に引っ張られるために回動部材22が軸26を中心として矢印方向(時計方向)に回動する。この動作が継続して行われると、やがて車両1’は、
図7Cに示すように垂直に起立し、その背面が下となって回動部材22のプレート22B上に載置される。このとき、車両1’は、その背面に固設された背面プレート15に突設された支持台16を介して回動部材22の水平なプレート22B上に載置される。なお、この過程で、回動部材22のプレート22A,22Bにそれぞれ設けられた接触センサ28,27の何れか一方または双方がベースプレート21以外のものを検知すると、電動モータ23の駆動が停止され、車両1’の回動(起立)が停止されて高い安全性が確保される。
【0062】
上述のように、車両1’が回動部材22のプレート22B上で垂直に起立すると、ベルトコンベア25が駆動され、垂直に起立した車両1’がベルトコンベア25によって
図7Dに示すようにベースプレート21の一番奥(
図7Dの右端)へと移送され、この車両1’が駐車設備20のベースプレート21上に垂直に起立した状態で駐車されることになる。そして、この駐車した車両1’の受電部13(
図5参照)には、ベルトコンベア25に内蔵された送信部31から無線または有線で電力が送られ、受電部13で受け取られた電力は、車両1’に搭載された不図示のバッテリの充電に供される。このため、車両1’においては、駐車中にバッテリの充電がなされる。
【0063】
以上の作業を2台目、3台目の車両1’に対して順次行うと、この2台目と3台目の車両1’は、
図7Eに示すように、垂直に起立した状態で整然と駐車される。なお、
図7Eには3台の車両1’の駐車状態を示すが、駐車設備20のベースプレート21の長さを長くして同様の作業を繰り返すことによって、4台以上の複数台の車両1’を垂直に起立した状態で駐車させることができ、各車両1’に搭載されたバッテリの充電を駐車中に行うことができる。
【0064】
ところで、車両1’は、その全高が全長よりも小さいため、本実施の形態のように、車両1’を背面を下にして垂直に起立した状態で駐車させると、所定の駐車スペースに駐車可能な車両1’の台数が多くなり、多数の車両1’を効率よく駐車させることができ、この種の車両1’の街中での駐車スペースの確保などの課題を解決することができる。
【0065】
[第3発明]
次に、第3発明の実施の形態を
図8~
図10に基づいて以下に説明する。
【0066】
図8は第3発明に係る駐車設備に駐車する車両を後方斜め上方から見た斜視図であり、図示の車両1”においては、垂直な平面状の背面に矩形平板状の背面プレート15が固設されている。なお、本実施の形態に係る車両1”も電動車両であって、その基本構成は、実施の形態1に係る車両1のそれと同じであるため、
図8においては、
図1および
図2において示したものと同一要素には同一符号を付しており、以下、それらについての再度の説明は省略する。
【0067】
ところで、背面プレート15の上端部と下端部の左右両側には、キャスタ17と駆動輪18がそれぞれ回転可能に配置されている。ここで、左右の駆動輪18は、背面プレート15の下端部の両駆動輪18の間に固設されたモータケース19に内蔵された不図示のギヤ付きモータによって回転駆動される。また、背面プレート15の上半部の幅方向中央には、矩形の開口窓15aが形成されており、同背面プレート15の開口窓15aの下方には、当該車両1”に搭載された不図示のバッテリを充電するための電力を外部から受ける受電部13が設けられている。
【0068】
次に、以上のように構成された車両1”を垂直に起立させた状態で駐車させるための駐車設備20’を
図9に基づいて以下に説明する。
【0069】
図9は第3発明に係る駐車設備の斜視図であり、図示の駐車設備20’の基本構成は、
図6に示した第2発明に係る駐車設備20のそれと同じである。したがって、
図9においては、
図6に示したものと同一要素には同一符号を付しており、以下、それらについての再度の説明は省略する。
【0070】
図9に示す第3発明に係る駐車設備20’も、
図6に示す第2発明に係る駐車設備20と同様に、水平な細長い矩形のベースプレート21と、該ベースプレート21の長手方向一端(
図9の左端)に上下方向に回動可能に軸支された回動部材22と、ベースプレート21の長手方向他端(
図9の右端)に配置された駆動源である電動モータ23と、該電動モータ23の出力軸23aと可動部材22とを連結する左右一対のリンク機構24を含んで構成されているが、これには第2発明に係る駐車設備20に設けられたベルトコンベア25(
図6参照)が設けられていない。なお、ベースプレート21上には、複数(図示例では3つ)の送電部31が長手方向に適当な間隔で配置されている。
【0071】
【0072】
図10A~
図10Eは複数の車両1”を駐車させる過程を示す斜視図であり、車両1”は、
図9に示す駐車設備20’によって垂直に起立した状態で駐車される。
【0073】
すなわち、車両1”は、第2発明に係る駐車設備20における
図7A~
図7Cに示す過程と同様の
図10A~
図10Cに示す過程を経て、その背面を下にして駐車設備20’のベースプレート21上に垂直に起立される。この状態では、垂直に起立した車両1”は、背面プレート15に回転可能に設けられた左右一対のキャスタ17と駆動輪18を介してベースプレート21上に垂直に起立している(
図10C参照)。
【0074】
次に、上記状態から背面プレート15に設けられた不図示のギヤ付きモータを起動すると、このギヤ付きモータによって左右一対の駆動輪18が回転駆動されるため、車両1”は、
図10Dに示すように、駐車設備20’のベースプレート21上を奥側(図示矢印方向)方向に移動して所定の位置に起立した状態で駐車されることになる。そして、この駐車した車両1”の受電部13(
図8参照)には、ベースプレート21上に設置された送電部31から無線または有線で電力が送られ、受電部13で受け取られた電力は、車両1”に搭載された不図示のバッテリの充電に供される。このため、車両1”においては、駐車中にバッテリの充電がなされる。
【0075】
以上の作業を2台目、3台目の車両1”に対して順次行うと、この2台目と3台目の車両1”は、
図10Eに示すように、垂直に起立した状態で整然と駐車される。なお、
図10Eには3台の車両1”の駐車状態を示すが、駐車設備20’のベースプレート21の長さを長くして同様の作業を繰り返すことによって、4台以上の複数台の車両1”を垂直に起立した状態で駐車させることができ、各車両1”に搭載されたバッテリの充電を駐車中に行うことができる。
【0076】
したがって、第3発明に係る駐車設備20’によっても、第2発明に係る駐車設備20(
図6参照)と同様に、車両1”を背面を下にして垂直に起立した状態で整然と駐車させることができるため、所定の駐車スペースに駐車可能な車両1”の台数が多くなり、多数の車両1”を効率よく駐車させることができ、この種の車両1”の街中での駐車スペースの確保などの課題を解決することができる。
【0077】
なお、以上説明した第1~第3発明は、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、請求の範囲および明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能である。