(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】改質リグニン補強型ゴムの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 21/00 20060101AFI20240109BHJP
C08L 97/00 20060101ALI20240109BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240109BHJP
C08K 3/30 20060101ALI20240109BHJP
C08H 7/00 20110101ALI20240109BHJP
【FI】
C08L21/00
C08L97/00
C08K3/04
C08K3/30
C08H7/00
(21)【出願番号】P 2022544780
(86)(22)【出願日】2021-03-24
(86)【国際出願番号】 CN2021082680
(87)【国際公開番号】W WO2021244109
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2022-07-22
(31)【優先権主張番号】202010484885.2
(32)【優先日】2020-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521264534
【氏名又は名称】南京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】朱 晨杰
(72)【発明者】
【氏名】徐 新建
(72)【発明者】
【氏名】応 漢杰
(72)【発明者】
【氏名】李 明
(72)【発明者】
【氏名】庄 偉
(72)【発明者】
【氏名】欧陽 平凱
(72)【発明者】
【氏名】沈 涛
(72)【発明者】
【氏名】単 軍強
【審査官】南 宏樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0204368(US,A1)
【文献】特表2019-521205(JP,A)
【文献】特開2012-246453(JP,A)
【文献】特開2016-060749(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08H 7/00
C07G 1/00
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
改質リグニン補強型ゴムの製造方法であって、
前記改質リグニンは、炭素炭素二重結合を含む化合物、硫黄元素を含む化合物、及び水酸基を封鎖可能な化合物によりリグニンに複合改質処理を行って得られたものであり、
前記改質リグニンの製造方法は、炭素炭素二重結合を含む化合物及び硫黄元素を含む化合物を加えて改質した後、水酸基を封鎖可能な化合物を加えて改質し、
前記炭素炭素二重結合を含む化合物は、ビニル基、アクリル基、ブタジエニル基、オレイン酸基、リノール酸基、リノレン酸基、
及びアラキドン酸基のいずれか1種の基を含む化合物であり、
前記硫黄元素を含む化合物は、式Iで表されるメルカプト系シランカップリング剤、ビス-[γ-(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィド、チオール、過硫酸カリウム、メルカプトベンゾチアゾール、硫黄及びテトラメチルチウラムモノスルフィドのいずれか1種又は複数種の組み合わせであり、
【化1】
[式中、前記R
1、R
2、R
3はそれぞれ独立して-O-R
6(ただし、R
6はアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基から選ばれる)から選ばれ、
前記R
4は-(CH
2)
n-(ただし、nは1~10から選ばれるいずれか1つの整数である)から選ばれ、
前記R
5はH、CN又は(C=O)-R
6(ただし、R
6は分岐又は非分岐、飽和又は不飽和の脂肪族、芳香族又は混合した脂肪族/芳香族の一価のC1~C30炭化水素基から選ばれる)から選ばれる。]、
前記水酸基を封鎖可能な化合物は、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤及びアルミネートカップリング剤のいずれか1種又は複数種の組み合わせであり、
前記ゴムは、天然ゴム、ブチルゴム及びスチレンブタジエンゴムのいずれか1種であることを特徴とする改質リグニン補強型ゴムの製造方法。
【請求項2】
前記リグニンは、アルカリリグニン、ソーダリグニン、有機溶媒リグニン及び酵素加水分解リグニンのいずれか1種又は複数種の組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載の改質リグニン補強型ゴムの製造方法。
【請求項3】
前記炭素炭素二重結合を含む化合物は、5個以上の炭素原子を含む
ビニルシランであることを特徴とする請求項1に記載の改質リグニン補強型ゴムの製造方法。
【請求項4】
改質リグニン、ゴム、カーボンブラック、加硫剤、加硫助剤を密閉式混練機に加えて混練し、混練ゴムを得るステップ(1)と、
ステップ(1)で得られた混練ゴムをオープンロールに入れて薄通しを繰り返した後、ゴム加硫機で加硫性能を測定し、加硫プレスでホットプレス成形するステップ(2)と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の改質リグニン補強型ゴムの製造方法。
【請求項5】
ステップ(1)では、改質リグニンと、ゴム、カーボンブラック、加硫剤、加硫助剤との質量部比率は(2~50):100:(1~20):(0.5~2.5):(0.5~10)であることを特徴とする請求項4に記載の改質リグニン補強型ゴムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム分野に属し、具体的には、改質リグニン補強型ゴム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ゴム(NR)は、シス-1,4-ポリイソプレンを主成分とする天然高分子化合物であり、その成分の91%~94%がゴム炭化水素(シス-1,4-ポリイソプレン)であり、残りが蛋白質、脂肪酸、灰分、糖類などの非ゴム物質であり、天然ゴムは、最も広く用いられている汎用ゴムである。現在、ゴム産業での使用コストを低減しつつ、ゴムの特性をさらに向上させるために、通常、カーボンブラック、ホワイトカーボンなどの他の材料(非特許文献1)を配合物に充填する必要がある。近年、カオリン、炭酸カルシウム、タルク、モンモリロナイトなどの無機物のゴムへの応用に関する研究がますます増えている。しかし、エネルギー不足の深刻化に伴い、持続可能に発展させるように、新しいエネルギーを見つけることが急務となっている。
【0003】
また、リグニンは、セルロースに次ぐ世界第2位のバイオマス資源として、高度に架橋された分子構造と、優れた耐老化性や熱安定性などの他の優れた性能とを有し、ゴム分野での応用も徐々に拡大する傾向にあり、従来技術において長い間バイオ精錬産業や製紙産業の廃棄物として環境汚染になるという問題を効果的に解決できるだけではなく、資源の再生利用を実現している。張翠美(非特許文献2)らは、アルカリリグニンをゴムに直接応用して研究を行った結果から、アルカリリグニンを10%~50%充填すると、混練ゴム中にフィラーネットワークがほとんど存在せず、ゴム-フィラー相互作用が弱くて、アルカリリグニン粒子間に凝集が発生することを示した。したがって、リグニンをゴムに直接応用した場合には、凝集が発生することで、関連特性の向上に寄与しない。本実験室の以前の研究「リグニン-不飽和カルボン酸塩複合補強剤及びゴムへの応用」の結果から、リグニン極性基と不飽和カルボン酸塩金属イオンとの間のキレート作用を利用して、リグニン自身の分子間力を効果的に弱めることによって、その凝集を弱めることができ、さらにゴムマトリックス中のリグニンの分散に有利であり、ゴムの加硫過程にイオン架橋を生成し、ゴムの機械的物性を向上させることが分かった。しかし、リグニンと不飽和カルボン酸塩とを粉砕することによりリグニン-不飽和カルボン酸塩を得るものであるが、粉砕はエネルギー消費量が多いだけではなく、一定の粉塵汚染が発生するとともに、粉砕により粒径が不均一になるなどの欠点があり、ゴムの特性に影響を与える。同時に、この改質方法は、リグニンとゴムとの作用力に大きな変化がないため、リグニンのゴム分野への応用を促進するように、新規で、便利で、エネルギー消費量が少なく、環境に優しい改質方法を開発する必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】古山種俊、Steinbuchel,A.、生物高分子(第2巻)、ポリイソプレン[M]、北京:化学工業出版社、2004
【文献】張翠美、崔雪静、ソンジュニ、姜瑞玉、趙季若,馮鶯、アルカリリグニンで天然ゴムを充填する特性への研究[J]、生物質化学工学、2017/第3期
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明の目的:本発明が解決しようとする課題は、従来技術の不足に対して、改質リグニン補強型ゴムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の構想:従来技術は、ゴム分野においてリグニンの分散が不均一であることと、リグニンとゴムとの結合強度が弱いことから、リグニンのゴム分野における発展が制限されていた。したがって、本発明は、上記の問題点に鑑み、炭素炭素二重結合を含む化合物、硫黄元素を含む化合物、及び水酸基を封鎖可能な化合物によりリグニンを改質し、これをゴム分野に応用したものを開発する。炭素炭素二重結合を含む化合物、硫黄元素を含む化合物によりリグニンを改質することにより、リグニンに炭素炭素二重結合を含む長鎖を持たせるとともに、一定の硫黄元素を含み、ゴムとの作用時に、含まれる二重結合がゴム中のオレフィンと結合作用を発生させることができ、リグニンとゴムとの結合力を高め、そして、改質後のリグニンの長鎖がゴムと絡み合って両者の作用力をさらに高め、さらに、改質後のリグニンが一定の硫黄元素を含み、硫黄元素が加硫過程のゴムとの結合力をさらに高めて、製造されたゴムの特性をさらに高め、加硫剤の使用を低減することができ、最後に、水酸基を封鎖可能な化合物により改質した後、リグニンの極性を著しく低下させることにより、リグニンをゴムの極性とより近づけるため、ゴムとリグニンとの間の作用力をさらに高め、全体としてゴムの特性を向上させる。
【0007】
さらに本発明が解決しようとする課題は、上記の改質リグニン補強型ゴムの製造方法を提供する。
【0008】
上記の技術的課題を解決するために、本発明は、改質リグニン補強型ゴムの製造方法を開示し、前記改質リグニンは、炭素炭素二重結合を含む化合物、硫黄元素を含む化合物、及び水酸基を封鎖可能な化合物によりリグニンに対して複合改質処理を行って得られたものである。
【0009】
前記化合物が炭素炭素二重結合及び硫黄元素の両方を含むことができる場合は、炭素炭素二重結合のみを含む化合物、及び硫黄元素のみを含む化合物の代わりに、この化合物のみを用いてもよい。
【0010】
前記リグニンは、アルカリリグニン、ソーダリグニン、有機溶媒リグニン及び酵素加水分解リグニンのいずれか1種又は複数種の組み合わせである。
【0011】
前記炭素炭素二重結合を含む化合物は、ビニル基、アクリル基、ブタジエニル基、オレイン酸基、リノール酸基、リノレン酸基、アラキドン酸基及びフタル酸ジエン基のいずれか1種の基を含む化合物である。
【0012】
好ましくは、前記炭素炭素二重結合を含む化合物は、ビニル基及びアクリル基のいずれか一方又は両方の基の組み合わせを含む化合物である。
【0013】
前記アクリル基を含む化合物は、アクリル酸亜鉛、アクリル酸マグネシウム、アクリル酸カルシウムを含むが、これらに限定されるものではない。
【0014】
さらに好ましくは、前記炭素炭素二重結合を含む化合物は、5個以上の炭素原子を含む長鎖化合物であり、より好ましくは、10個以上の炭素原子を含む長鎖化合物である。
【0015】
よりさらに好ましくは、前記長鎖改質剤は、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニル(2-メトキシエトキシ)シラン及びビニルトリアセトキシシランのいずれか1種であるビニルシランである。
【0016】
前記硫黄元素を含む化合物は、式Iで表されるメルカプト系シランカップリング剤、ビス-[γ-(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィド、チオール、過硫酸カリウム、メルカプトベンゾチアゾール、硫黄、テトラメチルチウラムモノスルフィドのいずれか1種又は複数種の組み合わせであり、好ましくは、前記硫黄元素を含む化合物は、ビス-[γ-(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィド、メルカプトベンゾチアゾール、硫黄及びテトラメチルチウラムモノスルフィドのいずれか1種又は複数種の組み合わせである。
【化1】
[式中、前記R
1、R
2、R
3はそれぞれ独立して-O-R
6(ただし、R
6はアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基から選ばれる)から選ばれ、前記R
4は-(CH
2)
n-(ただし、nは1~10から選ばれるいずれか1つの整数である)から選ばれ、前記R
5はH、CN又は(C=O)-R
6(ただし、R
6は分岐又は非分岐、飽和又は不飽和の脂肪族、芳香族又は混合した脂肪族/芳香族の一価のC1~C30炭化水素基から選ばれる)から選ばれる。]
【0017】
好ましくは、前記R1、R2、R3がそれぞれ独立して-OCH3又は-OCH2CH3から選ばれ、前記nが2~10から選ばれ、前記R5がHである。
【0018】
より好ましくは、式Iで表されるメルカプト系シランカップリング剤が3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン又は(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシランである。
【0019】
前記水酸基を封鎖可能な化合物は、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤及びアルミネートカップリング剤のいずれか1種又は複数種の組み合わせである。
【0020】
前記シランカップリング剤は、ビニルシランがビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニル(2-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(エチル)、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシランであることを含むが、これらに限定されるものではなく、より好ましくは、前記シランカップリング剤は、ビニルシランがビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニル(2-メトキシエトキシ)シラン及びビニルトリアセトキシシランのいずれか1種又は複数種の組み合わせである。
【0021】
前記チタネートカップリング剤は、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルジオレイン酸アシルオキシ(ジオクチルホスフェート)チタネート、モノアルコキシ不飽和脂肪酸チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネートとトリエタノールアミンとのキレート化合物、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネートを含むが、これらに限定されるものではない。
【0022】
前記改質リグニンは、以下のいずれかの方法で製造されて得られたものである。
(1)浸漬法:リグニンと改質剤とをエタノール、メタノール、アセトン又は水に浸漬し、乾燥させて得られる。
(2)ブレンド法:リグニンと改質剤とをブレンダーに入れてブレンドして、得られる。
(3)気流改質法:改質剤をメタノール、エタノール又はアセトン溶液に配合し(改質剤が液体である場合は、溶液に配合する必要がなく、直接スプレーするだけでよい)、さらに気流粉砕と表面改質との一体化装置でリグニンを改質し、前記気流粉砕と表面改質との一体化装置は、すでに中国特許第101433876号明細書の気流粉砕と表面改質との一体化装置及びその超微粒子を製造するプロセスに開示されている。
【0023】
好ましくは、上記の改質リグニンの製造方法は、炭素炭素二重結合を含む化合物及び硫黄元素を含む化合物を加えて改質した後、水酸基を封鎖可能な化合物を加えて改質する。
【0024】
前記浸漬法は、好ましくは、
炭素炭素二重結合を含む化合物及び硫黄元素を含む化合物をエタノールに分散させて、第1溶液を得、水酸基を封鎖可能な化合物をエタノールに分散させて、第2溶液を得るステップ(I)と、
リグニンが浸潤状態になるまで(改質剤のエタノール溶液を滴下しても浸潤状態にならない場合は、直接エタノールを滴下してリグニンが浸潤状態になるまで)リグニンを第1溶液に分散させて、リグニンのエタノール溶液を得、静置して、乾燥するステップ(II)と、
リグニンが浸潤状態になるまで(改質剤のエタノール溶液を滴下しても浸潤状態にならない場合は、直接エタノールを滴下してリグニンが浸潤状態になるまで)ステップ(II)で得られたリグニンを第2溶液に分散させ、リグニンのエタノール溶液を得、静置して、乾燥して得られるステップ(III)と、を含む。
【0025】
ステップ(I)では、前記分散は、炭素炭素二重結合含む化合物及び硫黄元素を含む化合物にエタノールを滴下することである。
【0026】
ステップ(I)では、炭素炭素二重結合を含む化合物、硫黄元素を含む化合物及び水酸基を封鎖可能な化合物の濃度は、特に制限がなく、均一に分散させていればよく、それぞれ1~8g/mLであることが好ましい。
【0027】
ステップ(II)では、前記分散は、リグニンに第1溶液を滴下し、炭素炭素二重結合を含む化合物及び硫黄元素を含む化合物の使用量がそれぞれリグニンの1~4wt%であり、好ましくは2wt%である。
【0028】
ステップ(III)では、前記分散は、第2溶液をステップ(II)で得られたリグニンに滴下し、水酸基を封鎖可能な化合物の使用量がリグニンの0.5~4wt%である。
【0029】
上記のステップでは、前記滴下する速度を特に限定するものではない。
【0030】
前記ブレンド法は、リグニンと、炭素炭素二重結合を含む化合物及び硫黄元素を含む化合物とをブレンダーに入れて、ブレンダーの温度が90~120℃になるまでブレンドした後、水酸基を封鎖可能な化合物を加えて10~20分間ブレンドすることが好ましい。炭素炭素二重結合を含む化合物及び硫黄元素を含む化合物の使用量がそれぞれリグニンの1~4wt%であり、水酸基を封鎖可能な化合物の使用量がリグニンの0.5~0.8wt%である。
【0031】
前記気流改質法は、好ましくは、
炭素炭素二重結合を含む化合物及び硫黄元素を含む化合物をエタノールに分散させて、第3溶液を得、水酸基を封鎖可能な化合物をエタノールに分散させて、第4溶液を得るステップ(i)と、
第3溶液をスプレーノズルにより粉砕室にスプレーし、炭素炭素二重結合を含む化合物及び硫黄元素を含む化合物を粉砕室のリグニン表面に吸着させながら2~3分間粉砕するステップ(ii)と、
第4溶液をスプレーノズルにより粉砕室にスプレーし、水酸基を封鎖可能な化合物を粉砕室のリグニン表面に吸着させながら2~4分間粉砕し、サイクロンにより分離して得られるステップ(iii)と、を含む。
【0032】
ステップ(i)では、炭素炭素二重結合を含む化合物、硫黄元素を含む化合物及び水酸基を封鎖可能な化合物の濃度は、特に制限がなく、均一に分散させていればよく、それぞれ1~8g/mLであることが好ましい。
【0033】
ステップ(ii)では、炭素炭素二重結合を含む化合物及び硫黄元素を含む化合物の使用量がそれぞれリグニンの1~4wt%であり、粉砕用空気の温度が90~120℃である。
【0034】
ステップ(iii)では、水酸基を封鎖可能な化合物の使用量がリグニンの0.5~0.8wt%であり、粉砕用空気の温度が90~120℃である。
【0035】
前記ゴムは、天然ゴム、ブチルゴム及びスチレンブタジエンゴムのいずれか1種である。
【0036】
前記改質リグニン補強型ゴムの製造方法は、
改質リグニン、ゴム、カーボンブラック、加硫剤、加硫助剤を密閉式混練機に加えて混練し、混練ゴムを得るステップ(1)と、
ステップ(1)で得られた混練ゴムをオープンロールに入れて薄通しを繰り返した後、ゴム加硫機で加硫性能を測定し、加硫プレスでホットプレス成形するステップ(2)と、を含む。
【0037】
ステップ(1)では、改質リグニンとゴムとの質量部比率が(2~50):100である。
【0038】
ステップ(1)では、ゴム、カーボンブラック、加硫剤、加硫助剤の質量部比率は100:(1~20):(0.5~2.5):(0.5~10)であり、前記混練の温度が20~120℃であり、混練の時間が5~30minである。
【0039】
ステップ(2)では、前記薄通しの回数は5~30回であり、加硫プレスの温度が120~180℃であり、ホットプレス時間がゴム加硫機で測定した正加硫時間t90である。
【0040】
上記方法で得られた改質リグニン補強型ゴムも本発明の保護範囲内である。
【発明の効果】
【0041】
従来技術に比べて、本発明の有益な効果は、以下の通りである。
(1)本発明は、炭素炭素二重結合を含む化合物によりリグニンを改質することにより、リグニンに炭素炭素二重結合を含む長鎖を持たせ、ゴムとの作用時に、含まれる二重結合がゴム中のオレフィンと結合作用を発生させることができ、リグニンとゴムとの結合力を高め、そして、改質後のリグニンの長鎖がゴムと絡み合って両者の作用力をさらに高める。
(2)本発明は、硫黄元素を含む化合物によりリグニンを改質することにより、リグニンが一定の硫黄元素を含み、硫黄元素がリグニンとゴムとの間の作用力を高め、製造されたゴムの特性をさらに向上させ、加硫剤の使用を低減し、リグニンのカーボンブラックへの代替量をさらに高めることができる。
(3)本発明は、水酸基を封鎖可能な化合物により改質した後、リグニンの極性を著しく低下させることができ、リグニンをゴムの極性とより近づけるため、ゴムとリグニンとの間の作用力をさらに高め、全体としてゴムの特性を向上させ、そして、水酸基を封鎖することにより、リグニンの凝集も少なくなり、リグニンのゴムにおける分散性をさらに向上させる。
(4)本発明は、一括改質と比較して、先に炭素炭素二重結合を含む化合物及び硫黄元素を含む化合物を用いてリグニンを改質し、さらに水酸基を封鎖可能な化合物により改質することにより、リグニンの改質効果を効果的に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】異なるカップリング剤による改質リグニンの水接触角。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下の実施例により、本発明をより良く理解することができる。しかしながら、当業者であれば、実施例に記述される内容は本発明を説明するためのものであり、特許請求の範囲に記述された本発明の詳細を限定するものではないことを容易に理解するであろう。
【0044】
本実施例における検出方法は、以下の通りである。
【0045】
水接触角試験:予め乾燥したリグニン試料を赤外線プレス成形機で均一なシートにプレスし、接触角試験機で試料シートの水接触角を測定した。
【0046】
粒度試験:乾燥処理したリグニン試料を1:50の固液比で水に加え、30分間超音波分散し、適量をレーザー粒度計に滴下して粒度分析を行った。
【0047】
ゴムの引張特性は、UTM6104電子万能試験機においてGB/T528-2009に準じて試験した。
【0048】
ゴムの硬度試験方法:スプラインをショアデュロメータA上に置き、デュロメータの脚が試料と水平に接触するようにハンドルを押し下げ、1秒以内に読み取る。
【0049】
実施例1:改質リグニンの製造(浸漬法)
表1に従って炭素炭素二重結合を含む化合物及び硫黄元素を含む化合物を秤量し、撹拌して均一に混合して、炭素炭素二重結合を含む化合物及び硫黄元素を含む化合物の濃度がそれぞれ2g/mLとなるように、エタノールを加えて、第1溶液を得、表1に従って水酸基を封鎖可能な化合物を秤量し、物質の濃度が2g/mLとなるように、エタノールを加えて、第2溶液を得、表1における炭素炭素二重結合を含む化合物、硫黄元素を含む化合物及び水酸基を封鎖可能な化合物を、エタノールに溶解させる必要がない場合は、そのまま使用し、これらの化合物の使用量を以下の2段落の説明により制御した。
【0050】
酵素加水分解リグニン10gに第1溶液を滴下し(炭素炭素二重結合を含む化合物及び硫黄元素を含む化合物の使用量はそれぞれ酵素加水分解リグニンの2wt%である)、リグニンが浸潤状態になるまでエタノール(約8mL)を滴下して十分に混合し、30分間静置し、改質リグニンを真空乾燥オーブンに入れ、60℃で真空乾燥してエタノールを完全に揮発させ、粉砕機で2分間粉砕した。
【0051】
粉砕した材料に第2溶液を滴下し(水酸基を封鎖可能な化合物の使用量は酵素加水分解リグニンの4wt%である)、リグニンが浸潤状態になるまでエタノールを滴下して十分に混合し、30分間静置し、改質リグニンを真空乾燥オーブンに入れ、60℃で真空乾燥してエタノールを完全に揮発させ、粉砕機で1分間粉砕した。
【0052】
【0053】
表2及び
図1に基づいて結果を解析した。
(1)改質後の酵素加水分解リグニンの接触角試験を行ったところ、表2から、未改質の酵素加水分解リグニンの接触角が62°であることに比べて、改質後のリグニンの接触角が向上していることが分かった。
(2)他の改質に比べて、実施例1~12は水酸基を封鎖しておらず、改質後のリグニンの接触角は80°であり、実施例1における他の実施例よりも低く、水酸基を封鎖可能な物質を用いて改質することがとても必要であることが分かった。実施例1-1~1-3は異なる化合物を用いて酵素加水分解リグニンの水酸基を封鎖し、三つの接触角は比較的類似している。
(3)実施例1-4~1-8は、異なるスルフィドの接触角への影響を検討し、結果から、実施例1-7及び実施例1-8以外は、異なるスルフィドが接触角に対する影響が大きくないことが分かった。これは、実施例1-7及び1-8は、メルカプト基を含有するとともに、シランを含有し、所定の水酸基封鎖効果があるシランカップリング剤を用いるためである。
(4)実施例1-9~1-11は、異なる炭素炭素二重結合を含む化合物を用いて改質し、かつビニルトリアセトキシシランを用いて水酸基を封鎖したものであるが、この3つの実施例は、アクリル酸に比べて、二重結合を含む長鎖を用いて改質したものであり、得られた改質後の酵素加水分解リグニンの接触角が著しく向上し、特に実施例1-9は、その接触角が101°に達し、リグニンの極性が大きく改善されていることが分かった。
【0054】
【0055】
実施例2:改質リグニンの製造(気流改質法)
表1における番号4、9、10、12に従って、実施例1と同様な方法で第1溶液及び第2溶液を製造する。
【0056】
酵素加水分解リグニンを約100℃の高圧空気により粉砕室に噴射し、同時に、第1溶液(流量が40mL/minである)をスプレーノズルにより粉砕室にスプレーし、気流分級ホイールの回転数が2000rpmで、2分間運転し、第2溶液(流量が40mL/minである)をスプレーノズルにより粉砕室にスプレーし、気流分級ホイールの回転数が2000rpmで、3分間運転し、サイクロンにより分離して、4種類の改質リグニンであるlignin4、lignin9、lignin10、lignin12をそれぞれ得た。米国のMicrotrac社製のS3500レーザー粒度分布計により粒径を測定し、三つのD50が1.6μm、1.4μm、1.7μm及び2.3μmであり、実施例1では、同じ方法を用いて製造された改質リグニンの粒径がこれよりも大きくなっていることから、気流粉砕法によりリグニンの粒径をさらに低減することができ、ゴムへのリグニンの応用にさらに有利であることが分かった。
【0057】
実施例3:リグニン補強型ゴムの製造
(1)酵素加水分解リグニン(粒径が2.1μmに気流粉砕された)10gと、実施例2で製造されたlignin4、lignin9、lignin10、lignin12と、実施例2で製造されたlignin13、lignin14(表1の番号13、番号14)と、天然ゴム40g、10gの高耐摩耗性カーボンブラックN330と、硫黄1g、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド0.6gと、酸化亜鉛2gと、ステアリン酸0.8gとをこの順に密閉式混練機にそれぞれ加え、100℃の条件で20分間密閉混練した。
(2)ステップ(1)で得られた混練ゴムをオープンロールに入れて7回薄通してシート状に成形し、ゴム加硫機で加硫性能を測定して180℃で正加硫時間t90が3分であり、加硫プレスを用いて180℃の条件で3分間ホットプレス成形させて、得られたゴムをそれぞれRu-lignin、Ru-lignin4、Ru-lignin9、Ru-lignin10、Ru-lignin12、Ru-lignin13、Ru-lignin14とし、検出結果を表3に示す。
【0058】
【0059】
表3から、同一粒径の場合には、未改質リグニンに比べて、改質後リグニンから製造されたゴムの特性が大幅に向上されることが分かった。水酸基を封鎖していないリグニンlignin12、及びlignin13、lignin14に比べて、3種類の化合物を用いて同時に改質したlignin4、lignin9、lignin10は、接触角を向上させた後に、ゴムの特性を著しく向上させることができた。また、lignin4はアクリル酸亜鉛を用いて二重結合改質を行ったものであり、アクリル酸亜鉛の鎖長がビニルトリメトキシシランよりも短いが、アクリル酸亜鉛がゴムとの加硫作用に有利であるため、lignin9と同様の効果が得られた。
【0060】
実施例4
実施例3におけるRu-lignin9の製造方法と同様に、天然ゴムをブチルゴム及びクロロプレンゴムに換えた。ブチルゴムで製造されたものの特性を測定したところ、引張強度は27.8MPa、破断伸びは870%、300%モジュラスは7.5MPa、100%モジュラスは3.6MPa、引張り永久歪みは11.7%、硬度は79であった。クロロプレンゴムで製造されたものの特性を測定したところ、引張強度は18.3MPa、破断伸びは578%、300%モジュラスは5.8MPa、100%モジュラスは4.4MPa、引張り永久歪みは3.9%、硬度は65であった。これにより、本発明で製造された改質リグニンは、天然ゴムに比べて極性付きクロロプレンゴムに適さないことが分った。
【0061】
比較例1:他の順序の製造方法
第1溶液及び第2溶液の順序を入れ替えた以外は、実施例2の製造方法と同様に、表1における番号9の配合で改質リグニンを製造して、改質リグニンlignin91を得た。
【0062】
第1溶液及び第2溶液を混合した以外は、実施例2の製造方法と同様に、表1における番号9の配合で改質リグニンを製造した。即ち、酵素加水分解リグニンを約100℃の高圧空気により粉砕室に噴射し、同時に、第1溶液及び第2溶液の混合溶液(流量が40mL/minである)をスプレーノズルにより粉砕室にスプレーし、気流分級ホイールの回転数が2000rpmで、5分間運転し、サイクロンにより分離して、改質リグニンlignin92を得た。
【0063】
実施例3におけるRu-lignin9の製造方法と同様に、lignin9をそれぞれlignin91及びlignin92に換え、製造してゴムRu-lignin91及びRu-lignin92を得た。ゴムの特性試験は、表4から、本発明の製造順序に比べて、第1溶液及び第2溶液の順序を入れ替えた後、即ち先に水酸基を封鎖して、硫黄元素を含む化合物及び二重結合を含む化合物により改質した場合は、三つを併用した場合よりも特性が劣ることが分かった。
【0064】
【0065】
比較例4:
表1における番号9の配合における物質で改質リグニンをそれぞれ製造し、実施例2と同様の製造方法を用い、即ち3種類の化合物を溶液に配合して、3種類の化合物の溶液を得、酵素加水分解リグニンを約100℃の高圧空気により粉砕室に噴射し、3種類の化合物の溶液(流量が40mL/minである)をスプレーノズルにより粉砕室にそれぞれスプレーし、気流分級ホイールの回転数が2000rpmで、5分間運転し、サイクロンにより分離して、改質リグニンlignin93(ビニルトリメトキシシランの改質剤)、lignin94(2-メルカプトベンゾチアゾールの改質剤)及びlignin95(ビニルトリアセトキシシラン)を得た。
【0066】
実施例3におけるRu-lignin9の製造方法と同様に、lignin9をそれぞれlignin93、lignin94及びlignin95に換え、製造してゴムRu-lignin93、Ru-lignin94及びRu-lignin95を得た。ゴムの特性を測定した結果を表5に示す。表5から分かるように、特性が所定に向上しているものの、その向上効果が小さく、本発明が三つを併用した場合にのみ優れた効果が得られた。
【0067】
【0068】
実施例5
実施例3におけるRu-lignin9の製造方法と同様に、lignin9の使用量をそれぞれ20部、30部、40部及び50部に換え、製造されたゴムをRu-lignin9-20、Ru-lignin9-30、Ru-lignin9-40及びRu-lignin9-50とした。また、実施例3におけるRu-lignin12の製造方法と同様に、lignin12の使用量をそれぞれ20部、30部、40部及び50部に換え、製造されたゴムをRu-lignin12-20、Ru-lignin12-30、Ru-lignin12-40及びRu-lignin12-50とした。その測定結果を
図2に示す。図から分かるように、lignin9の使用量は50部とすることができ、50部の使用量では特性が低下するものの、元の10部の使用量よりも高いが、Ru-lignin12は、lignin12の使用量の増加に伴い、30部では特性が低下するため、本発明で選択した長鎖二重結合を含む改質剤は、リグニンを改質した後、ゴムの特性を著しく向上させることができ、さらにカーボンブラックの代替量も向上させる。
【0069】
本発明は、改質リグニン補強型ゴム及びその製造方法の構想及び方法を提供し、具体的にこの技術的手段を実現する方法や経路が多く、以上の説明は単に本発明の好ましい実施形態に過ぎず、当業者であれば、本発明の原理から逸脱しない限り、更なる改良及び修正を行うことができ、これらの改良及び修正も本発明の保護範囲と見なされるべきであることに留意されたい。本実施例において明確にしていない各構成要素は、従来技術を用いて実現することができる。
【0070】
(付記)
(付記1)
改質リグニン補強型ゴムの製造方法であって、
前記改質リグニンは、炭素炭素二重結合を含む化合物、硫黄元素を含む化合物、及び水酸基を封鎖可能な化合物によりリグニンに複合改質処理を行って得られたものであることを特徴とする改質リグニン補強型ゴムの製造方法。
【0071】
(付記2)
前記リグニンは、アルカリリグニン、ソーダリグニン、有機溶媒リグニン及び酵素加水分解リグニンのいずれか1種又は複数種の組み合わせであることを特徴とする付記1に記載の改質リグニン補強型ゴムの製造方法。
【0072】
(付記3)
前記炭素炭素二重結合を含む化合物は、ビニル基、アクリル基、ブタジエニル基、オレイン酸基、リノール酸基、リノレン酸基、アラキドン酸基及びフタル酸ジエン基のいずれか1種の基を含む化合物であることを特徴とする付記1に記載の改質リグニン補強型ゴムの製造方法。
【0073】
(付記4)
前記炭素炭素二重結合を含む化合物は、5個以上の炭素原子を含む長鎖化合物であることを特徴とする付記2又は3に記載の改質リグニン補強型ゴムの製造方法。
【0074】
(付記5)
前記硫黄元素を含む化合物は、式Iで表されるメルカプト系シランカップリング剤、ビス-[γ-(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィド、チオール、過硫酸カリウム、メルカプトベンゾチアゾール、硫黄及びテトラメチルチウラムモノスルフィドのいずれか1種又は複数種の組み合わせでることを特徴とする付記1に記載の改質リグニン補強型ゴムの製造方法。
【化2】
[式中、前記R
1、R
2、R
3はそれぞれ独立して-O-R
6(ただし、R
6はアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基から選ばれる)から選ばれ、
前記R
4は-(CH
2)
n-(ただし、nは1~10から選ばれるいずれか1つの整数である)から選ばれ、
前記R
5はH、CN又は(C=O)-R
6(ただし、R
6は分岐又は非分岐、飽和又は不飽和の脂肪族、芳香族又は混合した脂肪族/芳香族の一価のC1~C30炭化水素基から選ばれる)から選ばれる。]
【0075】
(付記6)
前記水酸基を封鎖可能な化合物は、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤及びアルミネートカップリング剤のいずれか1種又は複数種の組み合わせであることを特徴とする付記1に記載の改質リグニン補強型ゴムの製造方法。
【0076】
(付記7)
前記改質リグニンの製造方法は、炭素炭素二重結合を含む化合物及び硫黄元素を含む化合物を加えて改質した後、水酸基を封鎖可能な化合物を加えて改質することを特徴とする付記1に記載の改質リグニン補強型ゴムの製造方法。
【0077】
(付記8)
前記ゴムは、天然ゴム、ブチルゴム及びスチレンブタジエンゴムのいずれか1種であることを特徴とする付記1に記載の改質リグニン補強型ゴムの製造方法。
【0078】
(付記9)
改質リグニン、ゴム、カーボンブラック、加硫剤、加硫助剤を密閉式混練機に加えて混練し、混練ゴムを得るステップ(1)と、
ステップ(1)で得られた混練ゴムをオープンロールに入れて薄通しを繰り返した後、ゴム加硫機で加硫性能を測定し、加硫プレスでホットプレス成形するステップ(2)と、を含むことを特徴とする付記1に記載の改質リグニン補強型ゴムの製造方法。
【0079】
(付記10)
ステップ(1)では、改質リグニンと、ゴム、カーボンブラック、加硫剤、加硫助剤との質量部比率は(2~50):100:(1~20):(0.5~2.5):(0.5~10)であることを特徴とする付記7に記載の改質リグニン補強型ゴムの製造方法。