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特許7414353対象物をプラズマ処理する美容方法およびプラズマ処理する装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】対象物をプラズマ処理する美容方法およびプラズマ処理する装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/44 20060101AFI20240109BHJP
【FI】
A61N1/44
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2023143847
(22)【出願日】2023-09-05
【審査請求日】2023-09-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520449057
【氏名又は名称】株式会社Dr.Visea
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】沖野 晃俊
【審査官】木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-286316(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0069956(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110536531(CN,A)
【文献】特開2017-145232(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0275344(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/00 ― 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の表面をプラズマ処理する人に対する医療行為を除く美容方法であって、
ガスを発生可能なパック材で前記対象物表面を被覆するステップと、
前記パック材から発生した前記ガスをプラズマ発生手段によってプラズマ化するステップ

を含む、美容方法。
【請求項2】
前記プラズマ発生手段は、電極を備え、前記電極は、前記対象物表面を被覆する前記パ
ック材に直接または空間を介して配置し、前記電極と前記対象物との間に電圧を印加する
、請求項1に記載の美容方法。
【請求項3】
前記電極と前記パック材との間に絶縁体を配置する、請求項2に記載の美容方法。
【請求項4】
前記絶縁体は、前記電極の表面および/または前記パック材の表面に配置される、請求
項3に記載の美容方法。
【請求項5】
前記電極は、前記パック材表面との間に空間を介して配置されている、請求項3に記載
の美容方法。
【請求項6】
前記絶縁体は、少なくともセラミックス、ガラスおよびラップのいずれか1つを含む、
請求項4に記載の美容方法。
【請求項7】
前記絶縁体は、導電率が約10-15S/m以上約10-11S/m以下の特性である
絶縁性を有している、請求項に記載の美容方法。
【請求項8】
前記対象物は、毛髪であって、
前記電極は、櫛形構造を有しており、前記電極を前記毛髪の間を移動させることによって
処理を行う、請求項に記載の美容方法。
【請求項9】
前記ガスは、炭酸ガス、酸素ガス、水素ガス、および窒素ガスのうちの少なくとも1つ
を含む、請求項1に記載の美容方法。
【請求項10】
前記パック材は、シート材を含む、請求項1に記載の美容方法。
【請求項11】
前記パック材を構成するシート材は、導電率が低い高抵抗層と、発泡層と、前記高抵抗
層よりも導電率が高い低抵抗層とを含む多層構造を有する、請求項10に記載の美容方法。
【請求項12】
対象物の表面をプラズマ処理する装置であって、
前記装置は、電極を備えたプラズマ発生手段を有し、
前記プラズマ発生手段は、電極の先端部と前記対象物との間に介在するガスをプラズマ
化するように構成されている装置と、
対象物の表面を被覆するためのガスを発生可能なパック材と
を備えた、プラズマ処理キット。
【請求項13】
前記パック材は、シート材を含む、請求項12に記載のプラズマ処理キット。
【請求項14】
前記パック材は、炭酸ガス、酸素ガス、水素ガス、および窒素ガスのうちの少なくとも
1つのガスを発生可能である、請求項12に記載のプラズマ処理キット。
【請求項15】
前記プラズマ処理は、美容または治療のための処理であり、
前記対象物は、皮膚または毛髪である、請求項12に記載のプラズマ処理キット。
【請求項16】
電極を備えたプラズマ発生手段を備えた美容処理するプラズマ処理装置によって、皮膚または毛髪を美容処理する際に用いられるパック材であって、
前記パック材は、前記美容処理に用いられるガスを発生可能なように構成されてい
とともに、前記パック材を構成するシート材は、前記プラズマ発生手段側に配置される導電率が低い高抵抗層と、
前記皮膚または毛髪に接触させる前記高抵抗層よりも導電率が高い低抵抗層
と、
前記高抵抗層と前記低抵抗層との間に積層される発泡層
を有する、パック材。
【請求項17】
前記パック材は、炭酸ガス、酸素ガス、水素ガス、および窒素ガスのうちの少なくとも
1つのガスを発生させるよう成されている、請求項16に記載のパック材。
【請求項18】
前記パック材は、発泡性液体を含む、請求項16に記載のパック材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物を処理する美容方法およびプラズマ処理する装置に関し、特に、パック材から発生したガスをプラズマ化したものを対象物の表面に浸透させることで美容を行う美容方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、プラズマを皮膚に照射する美容方法が肌の手入れに用いられている。
【0003】
このような美容方法では、ノズルからプラズマ化したガス(プラズマガス)を皮膚などの対象物に照射することで、ガス中において生成された活性種(反応性の高い状態にある原子、分子、あるいはイオンなど)が皮膚に浸透することにより皮膚細胞の活性化などの処理が行われる。
【0004】
例えば、特許文献1には、皮膚組織にプラズマ化したガスをノズルから照射して皮膚疾患の治療、育毛および/または美容整形等の処置を行う皮膚組織改善装置が開示されている。
【0005】
なお、このように発生したプラズマを皮膚に向けて流す形式の他に、プラズマを流さずに電極と皮膚の間の放電で皮膚の表面にプラズマを生成する形式もあり、この場合、プラズマを介して皮膚に電流として流れることで、プラズマを流す形式と同様な効果と電流による効果が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平10-286316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献1に記載されているように、生成されたプラズマガスをノズルから対象物である皮膚に照射する場合、プラズマガス中で生成された活性種は、皮膚の深層にまで浸透せず、効果が薄かった。
【0008】
また、電極と皮膚との間で放電する場合は、放電を強くすると,強い放電電流によって皮膚が損傷したり,痛みが生じたりする場合があった。
【0009】
本発明は、従来のプラズマガスをノズルから噴射する技術に比べて、プラズマ化したガス中で生成される活性種を、対象物の深層にまで浸透させることが可能であり、電極と対象物との間での放電によりプラズマを生成する技術に比べて、安全である対象物を処理する美容方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
対象物の表面をプラズマ処理する美容方法であって、
ガスを発生可能なパック材で前記対象物表面を被覆するステップと、
前記パック材から発生した前記ガスをプラズマ発生手段によってプラズマ化するステップと
を含む、美容方法。
(項目2)
前記プラズマ発生手段は、電極を備え、前記電極は、前記対象物表面を被覆する前記パック材に直接または空間を介して配置し、前記電極と前記対象物との間に電圧を印加する、項目1に記載の美容方法。
(項目3)
前記電極と前記パック材との間に絶縁体を配置する、項目2に記載の美容方法。
(項目4)
前記絶縁体は、前記電極の表面および/または前記パック材の表面に配置される、項目3に記載の美容方法。
(項目5)
前記電極は、前記パック材表面との間に空間を介して配置されている、項目3に記載の美容方法。
(項目6)
前記絶縁体は、少なくともセラミックス、ガラスおよびラップのいずれか1つを含む、項目4に記載の美容方法。
(項目7)
前記絶縁体は、導電率が約10-15S/m以上約10-11S/m以下の特性である絶縁性を有している、項目1に記載の美容方法。
(項目8)
前記対象物は、毛髪であって、
前記電極は、櫛形構造を有しており、前記電極を前記毛髪の間を移動させることによって処理を行う、項目1に記載の美容方法。
(項目9)
前記ガスは、炭酸ガス、酸素ガス、水素ガス、および窒素ガスのうちの少なくとも1つを含む、項目1に記載の美容方法。
(項目10)
前記パック材は、シート材を含む、項目1に記載の美容方法。
(項目11)
前記パック材を構成するシート材は、導電率が低い高抵抗層と、発泡層と、前記高抵抗層よりも導電率が高い低抵抗層とを含む多層構造を有する、項目10に記載の美容方法。(項目12)
対象物の表面をプラズマ処理する装置であって、
前記装置は、電極を備えたプラズマ発生手段を有し、
前記プラズマ発生手段は、電極の先端部と前記対象物との間に介在するガスをプラズマ化するように構成されている、装置。
(項目13)
前記電極の先端部には、導電率が約10-15S/m以上約10-11S/m以下の絶縁性を有する絶縁体を備える、項目12に記載の装置。
(項目14)
前記電極は、櫛形構造を有している、項目12に記載の装置。
(項目15)
前記絶縁体は、少なくともセラミックス、ガラスおよびラップのいずれか1つを含む、項目12に記載の美容方法。
(項目16)
項目12に記載の装置と、
対象物の表面を被覆するためのガスを発生可能なパック材と
を備えた、プラズマ処理キット。
(項目17)
前記パック材は、シート材を含む、項目16に記載のプラズマ処理キット。
(項目18)
前記パック材は、炭酸ガス、酸素ガス、水素ガス、および窒素ガスのうちの少なくとも1つのガスを発生可能である、項目16に記載のプラズマ処理キット。
(項目19)
前記プラズマ処理は、美容または治療のための処理であり、
前記対象物は、皮膚または毛髪である、項目16に記載のプラズマ処理キット。
(項目20)
プラズマ処理装置によって、皮膚または毛髪をプラズマ処理する際に用いられるパック材であって、
前記パック材は、前記プラズマ処理に用いられるガスを発生可能なように構成されている、
パック材。
(項目21)
前記パック材は、炭酸ガス、酸素ガス、水素ガス、および窒素ガスのうちの少なくとも1つのガスを発生させるようの構成されている、項目20に記載のパック材。
(項目22)
前記パック材を構成するシート材は、導電率が低い高抵抗層と、発泡層と、前記高抵抗層よりも導電率が高い低抵抗層とを含む多層構造を有する、項目20に記載のパック材。
(項目23)
前記パック材は、発泡性液体を含む、項目20に記載のパック材。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来のプラズマガスをノズルから噴射する技術に比べて、プラズマ化したガス中で生成される活性種を、対象物の深層にまで浸透させることが可能であり、電極と対象物との間での放電によりプラズマを生成する技術に比べて、安全である対象物をプラズマ処理する美容方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態1による対象物(皮膚)をプラズマ処理する美容方法を説明するための図であり、対象物に対するパック材およびプラズマ処理装置のプラズマ発生手段が有する電極の配置を示す。
図2図1で説明する美容方法において、パック材から発生した炭酸ガスの泡B中に生成された二酸化炭素プラズマ(活性種)A1および空気(隙間S)中に生成されたプラズマ(活性種)A2が対象物である皮膚に浸透する様子を示す図。
図3】本発明の実施形態2による対象物(皮膚)をプラズマ処理する美容方法を説明するための図であり、パック材から発生した炭酸ガスの泡B中に生成された二酸化炭素プラズマ(活性種)A1が皮膚に浸透する様子を示す。
図4】本発明の実施形態3による対象物(皮膚)をプラズマ処理する美容方法を説明するための図であり、実施形態1の美容方法において、パック材を構成するシート材の表面を被覆するラップを用いた場合を示す。
図5】本発明の実施形態4による対象物(皮膚)をプラズマ処理する美容方法を説明するための図であり、実施形態1の美容方法において、シート材110aが単層構造であるパック材110に代えてシート材130aが多層である多層構造のパック材130を用いた場合を説明するための図である。
図6】本発明の実施形態5による対象物(頭皮および頭髪)をプラズマ処理する美容方法を説明するための図であり、頭髪に塗布されたパック材(炭酸水)から発生した炭酸ガスの泡中の二酸化炭素を、櫛形構造を有する電極部でブラズマ化して活性種(二酸化炭素プラズマ)を頭皮および頭髪に浸透させる様子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を説明する。本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0014】
本明細書において、「約」とは、後に続く数字の±10%の範囲内をいう。
【0015】
本発明は、従来のプラズマガスをノズルから噴射する技術に比べて、プラズマ化したガス中で生成される活性種を、対象物の深層にまで浸透させることが可能であり、電極と対象物との間での放電によりプラズマを生成する技術に比べて、安全である対象物をプラズマ処理する美容方法を得ることを課題とし、
対象物をプラズマ処理する美容方法であって、
ガスを発生可能なパック材で対象物表面を被覆するステップと、
パック材から発生したガスをプラズマ発生手段によってプラズマ化するステップと
を含む、美容方法を提供することにより、上記の課題を解決したものである。
【0016】
つまり、この場合、対象物表面を覆うパック材から発生するガスを直接プラズマ化するため、プラズマが対象物(皮膚など)の深層にまで浸透しやすくなるという効果を奏する。
【0017】
また、対象物の表面がパック材で被覆されているので、ガスのプラズマ化の際に対象物への放電のダメージを軽減でき、対象物に対する安全性を確保できる。
【0018】
従って、本発明の対象物をプラズマ処理する美容方法は、パック材で対象物を被覆した状態で、パック材で発生したガスをプラズマ処理装置のプラズマ発生手段によってプラズマ化するものであれば、その他の構成は、特に限定されるものではない。
【0019】
パック材は、ガスが発生可能な状態であれば任意の形態であり得る。例えば、粘度の高い液体で皮膚などに触れることでガスが発生するタイプ(いわゆる一剤式)である。しかしながら、本発明はこれに限定されず、例えば、2剤式のタイプであってもよい。
【0020】
例えば、パック材から発生するガスの種類は任意であり得る。パック材から発生するガスは、炭酸ガス、酸素ガス、水素ガス、および窒素ガスのうちの少なくとも1つを含むことが好ましい。なぜなら、これらのガスによって、後述するように対象物に対して所定の処理効果を得ることが可能であるからである。特に、対象物を皮膚や毛髪とした場合には、炭酸ガスであることが好ましい。パック材から発生するガスを炭酸ガスとすることにより、皮膚または毛髪の殺菌、または血流増加のためのプラズマ処理として優れた効果を奏することができる。しかしながら、本発明はこれに限定されない。
【0021】
例えば、ガスが酸素ガスである場合、対象物のプラズマ処理は、皮膚または毛髪の殺菌のための処理として優れた効果を奏することができる。
【0022】
また、ガスが水素ガスである場合、対象物のプラズマ処理は、皮膚または毛髪の殺菌または還元のための処理として優れた効果を奏することができる。
【0023】
さらに、ガスが窒素ガスである場合、対象物のプラズマ処理は、一酸化窒素発生による皮膚の治療のための処理として優れた効果を奏することができる。
【0024】
そして、パック材の形態も、任意の形態であり得る。例えば、パック材は、シート材を含むことが好ましい。このようにシート材を含むことで、プラズマ化するガスを発生する液体を泡状になるようにシート材に含浸させて、対象物の表面上で保持することが可能となる。
【0025】
シート材は、簡単な単層構造でもよいが、多層構造とすることで、シート材に種々の機能を持たせることができる。
【0026】
例えば、シート材は、発泡性液体を発泡させる発泡層と、導電性の高い低抵抗層と、導電性の高い低低抵抗層に比べて導電性の低い高抵抗層とを含むものでもよい。
ここで、低抵抗とは、海水程度の低効率および/または導電率である。例えば、抵抗率は約10~約30Ωm、導電率だと約0.1S/m以下である。1つの実施形態において、低効率は約20Ωm、導電率は約0.05S/mである。
また、高抵抗とは、蒸留水程度の低効率および/または導電率である。例えば、抵抗率約10Ωm以上、導電率では約10-6S/m以下である。1つの実施形態において、低効率は約10Ωm、導電率は約10-7S/mである。
【0027】
この場合、導電性の低い高抵抗層は、対象物および電極のうちの電極側に配置すると,パック材を構成するシート材の電極側の表面をラップ(絶縁材)で被覆した場合と同じ効果(プラズマの安定生成)が得られる。
【0028】
また、導電性の高い低抵抗層は、電流を分散させる働きがあるので,対象物(皮膚)への電流刺激が軽減され、この効果は、低抵抗層を対象物(皮膚)側に配置した方が望ましいと考えられる。
【0029】
しかしながら、本発明はこれに限定されない。例えば、頭皮、頭髪などに対してプラズマ処理を行う場合には、パック材はシート材を含まず、頭皮あるいは頭髪に直に塗布することができるシート材を含まない液状やジェル状などであってもよい。
【0030】
例えば、プラズマ発生手段は、電極を備え、電極は、対象物表面を被覆するパック材に直接または空間を介して配置され、電極と対象物との間に電圧を印加するものである。本発明のプラズマ処理装置は、プラズマ発生手段によって、電極と対象物との間に位置するパック材に電界を印加することができ、パック材で発生したガスのプラズマ化を行うことが可能となる。
【0031】
また、パック材は、炭酸水などの発泡性の液体を含むものに限定されず、パック材は,発泡性でなく、微小な気泡(マイクロバブル)を含む液体であってもよい。
【0032】
電極の形状や素材は、任意であり得る。例えば、形状としては、板状体、円柱体などの筒状体、櫛型形状などがあり得る。しかし、本発明はこれに限定されない。また、電極の材料は任意であり得る。例えば、タングステン、チタン、ステンレスなど、鉄、アルミなどに比べての腐食しにくい材料が用いられることが好ましい。
【0033】
また、パック材から発生したガスをプラズマ化する際には、電極とパック材との間に絶縁体を配置してもよい。この場合、パック材で発生したガスのプラズマを介して電極と対象物との間で生じる放電を、絶縁体(その導電率、厚さなど)により抑制することが可能となり、電極と対象物との間での強い放電を抑えて皮膚などの対象物に与えられる放電の衝撃を弱めることができる。
【0034】
ただし、皮膚などの対象物に及ぶ強い放電による刺激の低減よりも、強い活性種による対象物のプラズマ処理を優先したい場合は、電極とパック材との間に絶縁体を設けなくてもよい。
【0035】
また、絶縁体は、電極の表面およびパック材の表面の少なくとも一方に配置され得る。
【0036】
絶縁体をパック材の表面に配置することで、対象物に浸透する活性種をパック材から発生するものに実質的に制限できる。一方、絶縁体を電極の表面に配置し、絶縁体とパック材の表面との間に隙間を空けることで、対象物に浸透する活性種を、パック材から発生するものと大気のプラズマに含まれるものとを混合したものにすることができる。さらに、絶縁体を電極とパック材との間で、絶縁体の表面とパック材の表面とに接するように配置することで、パック材の内部以外での活性種の生成を回避できる。
【0037】
また、電極は、パック材表面に直接接するように配置してもよいし、パック材表面との間に空間を介して配置されていてもよい。パック材表面との間に空間を介して配置することにより、この空間に存在する大気では、印加される電界により構成ガスのプラズマ化がなされ、種々のプラズマガスが対象物に侵入することとなり、対象物のプラズマ処理の効果として種々のガスによる効果を得ることが可能となる。
【0038】
また、絶縁体は、絶縁性を有するものであれば任意の材質および形態であってもよい。例えば、絶縁体としてはセラミックス、ガラスまたはラップであり得る。
【0039】
ラップは、薄膜からなるフィルム状または所定の厚みを有するシート状の樹脂(例えば、高分子)からなる。
【0040】
ラップの素材や厚みなどは任意であり得る。例えば、素材としては、一般的にはポリ塩化ビニルであるがこれに限定されない。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、ガラス繊維含有樹脂などであってもよい。厚さは,約0.01mmから約0.1mm程度が好ましい。薄くなると,放電で穴が開く可能性があり、約1mmなどの厚い厚さになると、放電を生成するための電圧が高くなるので、皮膚への電流損傷が懸念され、また、高電圧の電源が必要で,消費電力も増加する。
電極の先端部に設けられる絶縁体の導電率は、任意であり得るが、好ましくは導電率約10-15S/m以上、約10-11S/m以下であり得る。しかしながら、あまりに導電率が高すぎると放電電流が一か所に集中しすくなるという不具合が生じる。また、低い分には問題はないが、材料として入手可能なものである必要がある。
【0041】
プラズマガスに晒される絶縁体をセラミックで構成することで、プラズマによる電極の損傷を抑制でき、経年劣化を低減できる。また、絶縁体をラップとすることで、電極とパック材との間に位置する絶縁体を薄くでき、例えば、低い電圧でもプラズマを生成できる。また、電極は、櫛形構造を有していることが好ましい。この場合、炭酸水などが含まれるパック材を塗布した毛髪の中に電極を配置することで、パック材から発生したガス(例えば炭酸ガス)を対象物近傍でプラズマ化することが可能となり、毛髪、頭皮の深層にも浸透させることができ、毛髪、頭皮の活性化処理を高い精度で行うことができる。また、パック材は、種類の異なるものを重ねて塗布するようにしてもよい。
【0042】
パック材は、ガスを発生可能な状態であれば、液状、ジェル状であってもよいし、ガスが液状、ジェル状で含浸されたシート材(例えば、織布、不織布、ガーゼなどの布)を含むものであってもよい。パック材は、あらかじめ微小な気泡(マイクロバブル)を含む液体であってもよい。さらに、パック材には、美容液、トリートメント液などを含ませていてもよい。
また、ここでのパック材は、導電率が低い方(抵抗が高い方)が気泡をプラズマ化しやすくなる一方で,導電率が高い方(抵抗が低い)が電流の集中を防げるので,痛くなくなるという特性を有するものであるが、実質的には、電極の導電率より小さく、絶縁体の導電率より大きいものであると言える。
さらに、パック材の特性として、導電率以外に、殺菌、細胞活性化、皮膚疾病の治癒促進などの処理を行うのに特に適したものが用いられる。
例えば、プラズマの処理をする事で皮膚などに導入する量が増えることを踏まえて、二酸化炭素を発生させるパックとしては、防腐剤を使用しない洗い流すタイプのクリーム状のパックを選ぶことが好ましい。水素を発生させるパックでは、紙ベースのパックしかないので、防腐剤を天然由来の物でなるべく微量にすることが好ましい。また、プラズマの電気刺激での肌の赤みを抑える抗炎症成分を多く配合することで期待にあったパックを実現できる。髪のトリートメントパックとしては、髪のキューティクルに良いとされる成分を複数配合することが好ましい。
【0043】
このように本発明の対象物をプラズマ処理する美容方法は、パック材で対象物を被覆した状態で、パック材で発生したガスをプラズマ処理装置のプラズマ発生手段によってプラズマ化するものであれば、その他の構成は、特に限定されるものではないが、以下の実施形態1~4では、シート材を含むパック材から発生したガスのプラズマにより対象物をプラズマ処理する美容方法として、電極とパック材との間に絶縁体を配置する美容方法を説明する。
【0044】
特に、実施形態1の対象物をプラズマ処理する美容方法では、プラズマ処理装置が電極と対象物との間に電圧を印加するとき、電極と対象物との間に位置する絶縁体が電極に密着しかつ絶縁体とパック材との間に隙間を空けた状態とする。
【0045】
実施形態2の対象物をプラズマ処理する美容方法では、電極と対象物との間に電圧を印加するとき、電極と対象物との間に位置する絶縁体の一方の面が電極に密着しかつ絶縁体の他方の面がパック材と密着する状態とする。
【0046】
実施形態3の対象物を処理する美容方法では、電極と対象物との間に電圧を印加するとき、電極と対象物との間に位置する絶縁体が電極に密着しかつ絶縁体とパック材との間に隙間を空け、さらに、パック材の絶縁体側の面をラップで被覆した状態とする。
【0047】
実施形態4の対象物を処理する美容方法では、実施形態1のシート材が単層構造であるパック材に代えて、シート材が多層構造であるパック材を用いる。
【0048】
さらに、実施形態5では、シート材を含まないパック材から発生したガスを、櫛形構造を有する電極を用いてプラズマ化して、頭皮、頭髪をプラズマで処理する美容方法を説明する。
【0049】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0050】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1による対象物をプラズマ処理する美容方法を説明するための図であり、対象物に対するパック材および電極の配置を示している。
【0051】
この実施形態1の対象物をプラズマ処理する美容方法では、パック材110としてシート材110aに炭酸水などの発泡性液体を含浸させたものを用い、このパック材110を対象物(ここでは人体の皮膚)130上に配置する。
この状態で、プラズマ処理装置が有するプラズマ発生手段を用いてパック材110の炭酸の泡B(図2参照)を形成している二酸化炭素ガスをプラズマ化する。
【0052】
ここで、プラズマ発生手段は、電源10と、板状の電極100と、板状の絶縁体120とを有しており、板状の電極100はパック材110を構成するシート材110aに対向するようにシート材110a上に絶縁体120を介して配置され、電源10の一方の端子に接続され、電源の他方の端子は対象物130に接続される。
【0053】
ここで、電極100および絶縁体120は、シート材110aの表面の形状と同じ平面形状を有している。絶縁体120にはセラミック材料、ビニールシートなどが用いられている。
【0054】
また、絶縁体120は、電極100と対象物130との間での強い放電を防ぐものであり、パック材110のシート材110aと絶縁体120との間に隙間S(図2参照)が空き、電極100と絶縁体120とが密着するように配置される。
【0055】
このように対象物130に対してパック材110および電極100を配置した状態で交流電源10をオンすると、電極100と皮膚130との間に電界が印加され、シート材110aに含浸されている炭酸水の泡Bを形成する炭酸ガスがプラズマ化する。
【0056】
図2は、図1で説明する美容方法において、炭酸ガスの泡B中に生成された二酸化炭素プラズマ(活性種)A1および空気(隙間S)中に生成されたプラズマ(活性種)A2が皮膚に浸透する様子を示す。
【0057】
この場合、絶縁体120とパック材110との隙間Sでは、空気を構成するガスがプラズマ化され、パック材110では、シート材110aに含浸している炭酸水の泡Bを形成する二酸化炭素ガスがプラズマ化され、その結果、対象物130には、二酸化炭素ガスのプラズマ化により生成された活性種A1だけでなく、空気を構成するガスのプラズマ化により生成された活性種A2が浸透することとなる。なお、この場合、パック材110と絶縁体120との間に隙間Sがあるので、パック材110で生成された活性種A1の一部A1aがこの隙間Sに放出される。
【0058】
このように実施形態1に示すプラズマ処理装置によって、対象物をプラズマ処理する美容方法では、シート材に炭酸などの発泡性液体を含浸させたパック材110を用い、パック材110で対象物130を被覆した状態で、パック材110が発生する泡Bを構成するガスをプラズマ化するので、パック材110があるところでは、プラズマが対象物近傍で発生して対象物(皮膚など)に浸透することとなり、効率よくプラズマが対象物に浸透させることが可能となる。その結果、パック材110で生成された活性種は、皮膚などの対象物130のパック材110に接する部分に全域にわたって確実に対象物130に届くこととなる。これにより、皮膚の殺菌、細胞活性化、皮膚疾病の治癒促進、損傷部分の止血などの処置を従来のプラズマ化されたガスをノズルから照射する技術に比べて、より効果的にかつ効率的に行うことができる。また、対象物の表面がパック材で被覆されているので、ガスのプラズマ化の際に対象物である皮膚への放電のダメージを軽減でき、対象物に対する安全性を確保できる。
【0059】
本発明のプラズマ処理装置とパック材とをパッケージ化(プラズマ処理キット)とすることが好ましい。そのようにすることで、求められる対象物の美容方法に応じて適したパック材と本発明のプラズマ処理装置とを組み合わせて使用するが可能となる。
【0060】
なお、パック材110で生成されるガス(気体)の種類を変更することで、対象物130をプラズマ処理することによる機能、効果を変更することができる。
【0061】
例えば、酸素をプラズマ化して得られる活性種では、皮膚などの対象物130に対する強力な殺菌効果が得られ、二酸化炭素をプラズマ化して得られる活性種では、皮膚などの対象物130に対する殺菌、血流増加、pH上昇などの効果が得られ、水素をプラズマ化して得られる活性種では、皮膚などの対象物130に対する還元、殺菌などの効果が得られ、窒素をプラズマ化して得られる活性種では、皮膚などの対象物130に対する一酸化窒素の発生による治癒促進といった効果が得られる。上記記載では皮膚などについての効果を記載したが、殺菌や還元などの処理は、皮膚など人体に限らず金属体など無機物にも適用可能である。
【0062】
さらに、パック材110を構成するシート材110aに含浸させる発泡性液体やジェルの成分を変えると、その他の活性種の発生が可能となる。例えば、パック材110のシート材110aに過酸化水素水を含浸させると、OHラジカルに発生による強力な殺菌効果が得られる。パック材がガスを発生させない液体の状態が維持されるものである場合、液体をプラズマ化することは困難であるため、本発明で記載されているような効果を奏することは難しい。
【0063】
この場合、パック材110のシート材には液体が含浸されているので、発砲により気化したプラズマから発せられる紫外線が液体を含むパック材110を介して皮膚などに到達することとなり、紫外線が皮膚などに直接届くことはなく、安全性を確保できる。
【0064】
また、パック材110はシート材に液体を含浸させた構造となっているので、プラズマ化の際の温度上昇を液体による冷却効果で抑えることができ、安全性を確保できる。
【0065】
また、電源の他方の端子を皮膚に接続しているので、プラズマ発生のための強電界が皮膚に印加され、これにより皮膚の引き締め、細胞活性化などの効果が得られ、同時に、プラズマを介した電流が皮膚を流れることとなり、これによっても皮膚の引き締め、細胞活性化などの効果が得られる。
【0066】
さらに、パック材110のシート材110aの成分およびシート材110aに含浸させる成分を変えることで、皮膚や毛髪に流れる電流を制御可能であり、例えば、電流路を分散させて局所的な刺激や発熱を低減することができる。
【0067】
なお、実施形態1では、パック材110と絶縁体120とはこれらの間に隙間Sを空けて配置しているが、パック材110(具体的にはシート材110a)と絶縁体120とはこれらが密着するように配置してもよく、以下の実施形態2ではこのような配置で、パック材110内でプラズマを発生する美容方法を説明する。
【0068】
(実施形態2)
図3は、本発明の実施形態2による対象物をプラズマ処理する美容方法を説明するための図であり、パック材110に含浸した炭酸ガスの泡中に生成された二酸化炭素プラズマ(活性種)A1が皮膚に浸透する様子を示す。
【0069】
この実施形態2の対象物をプラズマ処理する美容方法は、パック材110と絶縁体120とをこれらが密着するように配置した状態で、パック材110を用いてプラズマを生成する点でのみ実施形態1の対象物をプラズマ処理する美容方法と異なる。
【0070】
このように対象物130に対してパック材110および電極100を配置した状態で交流電源10をオンすると、電極100と皮膚130との間に電界が印加され、シート材110aに含浸されている炭酸水の泡Bを形成する二酸化炭素ガスがプラズマ化する。
【0071】
この場合、絶縁体120とパック材110とが密着しているので、実施形態1のような絶縁体120とパック材110との間での空気を構成するガスのプラズマ化が行われず、パック材110では、シート材110aに含浸している炭酸の泡Bを形成する二酸化炭素ガスがプラズマ化される。
【0072】
その結果、対象物130には、炭酸ガスのプラズマ化により生成された二酸化炭素活性種A1だけが浸透することとなる。なお、この場合、パック材110と絶縁体120との隙間はないので、パック材110で生成された活性種A1の一部がパック材110と絶縁体120との隙間に放出されることはない。
【0073】
また、実施形態1の変形例としてその他の変形例を実施形態3として説明する。
【0074】
(実施形態3)
図4は、本発明の実施形態3による対象物をプラズマ処理する美容方法を説明するための図であり、実施形態1の美容方法において、パック材を構成するシート材の表面を被覆するラップを用いた場合を示す。
【0075】
この実施形態3の対象物をプラズマ処理する美容方法は、実施形態1の対象物をプラズマ処理する美容方法において、電極と対象物との間に電圧を印加するとき、パック材を構成するシート材110aの絶縁体側の面をラップ120aで被覆した状態とする点で実施形態1の対象物をプラズマ処理する美容方法とは異なる。
【0076】
このようにパック材を構成するシート材110aの絶縁体側の面をラップ120aで被覆した状態で交流電源10をオンすると、電極100と皮膚130との間に電界が印加され、シート材110aに含浸されている炭酸水の泡Bを形成する二酸化炭素ガスがプラズマ化する。
【0077】
この場合、パック材を構成するシート材110aの絶縁体側の面をラップ120aで被覆しているので、絶縁体120とパック材110との隙間Sで空気を構成するガスのプラズマ化が行われても、その活性種は、パック材110に浸透することはなく、皮膚には、パック材110に含浸した炭酸の泡を形成するガスのプラズマ化で得られた活性種のみが浸透することとなる。
【0078】
この場合、絶縁体120とパック材110との間で、空気を構成するガスのプラズマ化が行われても、その活性種は皮膚に浸透しないので、空気のプラズマ化による活性種の浸透を考慮せずに、パック材110から生成された炭酸ガスのプラズマ化による活性種の発生を行うことができる。
【0079】
なお、実施形態1~3では、パック材110として、これを構成するシート材110aが単層構造であるものを示したが、このシート材は、多層構造を有していてもよい。
【0080】
例えば、実施形態1の美容方法では、シート材110aが単層構造であるパック材110に代えて、シート材310aが多層構造であるパック材310を用いてもよく、以下の実施形態4では、シート材310aが多層構造であるパック材310内でプラズマを発生する美容方法を説明する。
【0081】
(実施形態4)
図5は、本発明の実施形態4による対象物(皮膚)をプラズマ処理する美容方法を説明するための図であり、実施形態1の美容方法において、シート材110aが単層構造であるパック材110に代えてシート材130aが多層構造である多層構造のパック材130を用いた場合を示す。
【0082】
この実施形態4の美容方法は、実施形態1の美容方法において、対象物の表面には、シート材110aが単層構造であるパック材110に代えて、シート材が多層構造であるパック材310を配置した状態で、電極と対象物との間に電圧を印加する。
【0083】
ここで、シート材310aは、発泡性液体を発泡させる発泡層311と、導電性の高い低抵抗層313と、低抵抗層に比べて導電性の低い高抵抗層312とを含む。なお、パック材310のシート材310aを構成する高抵抗層312、発泡層311および低抵抗層313は、プラズマを遮断するものではく、プラズマを通過させるものであることは言うまでもない。
【0084】
なお、多層構造のシート材を構成する個々の層はこれらに限定されるものではなく、さらに多くの層を含んでいてもよい。
【0085】
この場合、導電性の低い高抵抗層312は、対象物130および電極100のうちの電極側に配置すると,パック材310を構成するシート材310aの電極側の表面をラップ(絶縁材)で被覆した場合と同じ効果(プラズマの安定生成)が得られる。また、高抵抗層312の導電性を絶縁体120と同程度に小さくして絶縁性を高めることで、絶縁体120はなくすことも可能である。
【0086】
また、導電性の高い低抵抗層313は、電流を分散させる働きがあるので,対象物(皮膚)への電流刺激が軽減され、この効果は、低抵抗層313を対象物(皮膚)側に配置した方が望ましいと考えられる。
【0087】
実施形態4の美容方法のその他の構成は、実施形態1の美容方法と同一である。
【0088】
さらに、実施形態5では、シート材を含まないパック材から発生したガスを、櫛形構造を有する電極を用いてプラズマ化して、頭皮、頭髪をプラズマ処理する美容方法を説明する。
【0089】
(実施形態5)
図6は、本発明の実施形態5による対象物をプラズマ処理する美容方法を説明するための図であり、図6(a)は、頭髪に塗布されたパック材(炭酸水)の泡中の二酸化炭素ガスを櫛形電極200でブラズマ化して活性種(二酸化炭素プラズマ)を頭皮および頭髪に浸透させる様子を示し、図6(b)は、櫛形電極200の構造を示す。
【0090】
この実施形態5の対象物をプラズマ処理する美容方法では、実施形態1の対象物をプラズマ処理する美容方法で用いる電極100に代えて、櫛形構造を有する電極(櫛形電極)200が用いられ、パック材210としては、炭酸などの発泡性液体を含浸させるシート材を含まない、発泡性液体のみで構成したものが用いられる。
【0091】
そして、この実施形態5の対象物をプラズマ処理する美容方法は、櫛形電極200と頭皮230との間に電圧を印加して、発泡性液体であるパック材210のプラズマ化により活性種を発生させ、この活性種により、対象物である頭皮230および頭髪230aのプラズマ処理を行うものである。
【0092】
ここで、プラズマ発生手段は、電源10と、導電性の櫛形電極部200bとこれを支持する絶縁性の支持部200bとを含む櫛形電極200とから構成されている。実施形態1から実施形態4の美容方法で用いるプラズマ発生手段における絶縁体120は含んでいない。
【0093】
櫛形電極200の電極である櫛形電極部200bは、電源10の一方の端子に接続され、電源10の他方の端子は対象物である頭皮230に接続される。また、パック材210は、頭皮の所定の範囲(太い一点鎖線で囲んだ領域)の頭髪230aに塗布されている。
【0094】
このように頭皮230および頭髪230aに対してパック材210を塗布し、交流電源10をオンして櫛形電極部200bを頭髪230aおよび頭皮230に近づけるとともに移動させることによって、櫛形電極部200bと皮膚230との間に電界が印加され、頭皮230および頭髪230aに塗布されているパック材210の泡を形成する二酸化炭素ガスがプラズマ化する。
【0095】
この場合、櫛形電極部200bとパック材210との隙間では、空気を構成するガスがプラズマ化され、パック材210である炭酸水の泡を形成する二酸化炭素ガスがプラズマ化され、その結果、頭皮230および頭髪230aには、二酸化炭素ガスのプラズマ化により生成された活性種A1だけでなく、空気を構成するガスのプラズマ化により生成された活性種A2が浸透することとなる。
【0096】
このように実施形態5の対象物をプラズマ処理する美容方法では、炭酸などの発泡性液体であるパック材210を頭皮230および頭髪230aに塗布し、パック材210でできた泡を構成するガスを対象物近傍でプラズマ化するので、パック材210で生成された活性種は、頭皮230および頭髪230aのうちのパック材210が塗布された部分に深層深くまたパック材の全域にわたって確実に届くこととなる。これにより、頭皮をはじめとする皮膚、および頭髪をはじめとする毛髪の殺菌、細胞活性化、皮膚疾病の治癒促進、損傷部分の止血などの効果が作業効率よく得られる。
【0097】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、プラズマ化したガス中で生成される活性種を、従来技術に比べて効率よく対象物の広い領域に浸透させることが可能であり、電極と対象物との間での放電によりプラズマを生成する技術に比べて、安全である対象物を処理する美容方法を得ることができるものとして有用である。
【符号の説明】
【0099】
10 電源
100 電極
110、210、310 パック材(炭酸パック)
110a、310a シート材
120 セラミック(絶縁体)
130 皮膚(対象物)
200 櫛形電極
200a 櫛形電極部
200b 支持部
210 パック材の塗布範囲
230 頭皮(対象物)
230a 頭髪(対象物)
311 発泡層
312 高抵抗層
313 低抵抗層
A1 二酸化炭素プラズマによる活性種(COプラズマ)
A2 空気のプラズマによる活性種(大気プラズマ)
B 炭酸ガスの泡(炭酸水中の気泡)
【要約】
【課題】本発明の課題は、従来のプラズマガスをノズルから噴射する技術に比べて、プラズマ化したガス中で生成される活性種を、対象物の深層にまで浸透させることが可能であり、電極と対象物との間での放電によりプラズマを生成する技術に比べて、安全である対象物を処理する美容方法を得ることを目的とする。
【解決手段】本発明は、対象物130をプラズマ処理する美容方法であって、ガスを発生可能なパック材110で対象物表面を被覆するステップと、パック材110から発生したガスをプラズマ発生手段によってプラズマ化するステップとを含むであり、例えば、プラズマ発生手段は、電極100を備え、電極100は、対象物表面を被覆するパック材110に直接または空間を介して配置し、電極100と対象物130との間に電圧を印加する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6