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特許7414356ポリテトラフルオロエチレンチューブ及びそれを使用した医療用チューブ
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  • 特許-ポリテトラフルオロエチレンチューブ及びそれを使用した医療用チューブ 図1
  • 特許-ポリテトラフルオロエチレンチューブ及びそれを使用した医療用チューブ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】ポリテトラフルオロエチレンチューブ及びそれを使用した医療用チューブ
(51)【国際特許分類】
   A61L 29/04 20060101AFI20240109BHJP
   A61L 29/14 20060101ALI20240109BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
A61L29/04 100
A61L29/14
A61M25/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023554308
(86)(22)【出願日】2023-05-16
(86)【国際出願番号】 JP2023018302
【審査請求日】2023-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2022081112
(32)【優先日】2022-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023006194
(32)【優先日】2023-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023033704
(32)【優先日】2023-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023079744
(32)【優先日】2023-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000145530
【氏名又は名称】株式会社潤工社
(72)【発明者】
【氏名】高橋 雅道
(72)【発明者】
【氏名】松田 あゆみ
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 公一朗
【審査官】田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/025814(WO,A1)
【文献】特開2018-038783(JP,A)
【文献】特開2019-130880(JP,A)
【文献】特開2008-086470(JP,A)
【文献】特開2013-176583(JP,A)
【文献】特開2004-340364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 15/00-33/18
A61M 25/00-29/04
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肉厚0.04mm以下であるポリテトラフルオロエチレンチューブであって、
該ポリテトラフルオロエチレンチューブの外面および内面のいずれか一方又は両方のぬれ張力が46mN/m以上であり、
200℃の雰囲気下で行う引張試験によって得られる応力‐ひずみ曲線において、該ポリテトラフルオロエチレンチューブの20%ひずみ引張応力σ20(N/mm)と該ポリテトラフルオロエチレンチューブの50%ひずみ引張応力σ50(N/mm)が、式(1)を満たすことを特徴とするポリテトラフルオロエチレンチューブ。
2.0 ≦ 0.1×σ20+0.3×σ50 <5.5 式(1)
【請求項2】
200℃の雰囲気下で行う引張試験において、200%以上の引張破断ひずみを有する、請求項1に記載のポリテトラフルオロエチレンチューブ。
【請求項3】
200℃の雰囲気下で行う引張試験において、前記ポリテトラフルオロエチレンチューブの20%ひずみ引張応力σ20が4.0(N/mm)以上である請求項1に記載のポリテトラフルオロエチレンチューブ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のポリテトラフルオロエチレンチューブを使用した医療用チューブ。
【請求項5】
肉厚0.04mm以下であるポリテトラフルオロエチレンチューブであって、
該ポリテトラフルオロエチレンチューブの内径3.0mm以下であり、
200℃の雰囲気下で行う引張試験によって得られる応力‐ひずみ曲線において、該ポリテトラフルオロエチレンチューブの20%ひずみ引張応力σ20(N/mm)と該ポリテトラフルオロエチレンチューブの50%ひずみ引張応力σ50(N/mm)が、式(1)を満たすことを特徴とするポリテトラフルオロエチレンチューブ。
2.0 ≦ 0.1×σ20+0.3×σ50 <5.5 式(1)

【請求項6】
200℃の雰囲気下で行う引張試験において、200%以上の引張破断ひずみを有する、請求項5に記載のポリテトラフルオロエチレンチューブ。
【請求項7】
200℃の雰囲気下で行う引張試験において、前記ポリテトラフルオロエチレンチューブの20%ひずみ引張応力σ20が4.0(N/mm)以上である請求項5に記載のポリテトラフルオロエチレンチューブ。
【請求項8】
請求項5~7のいずれか1項に記載のポリテトラフルオロエチレンチューブを使用した医療用チューブ。
【請求項9】
ポリテトラフルオロエチレンチューブを加工したポリテトラフルオロエチレンライナーを含む医療用チューブであって、該ポリテトラフルオロエチレンライナーの肉厚0.04mm以下であるチューブであって、
該ポリテトラフルオロエチレンライナーの内径3.0mm以下であり、
200℃の雰囲気下で行う引張試験によって得られる応力‐ひずみ曲線において、該ポリテトラフルオロエチレンライナーの20%ひずみ引張応力σ’20(N/mm)と該ポリテトラフルオロエチレンライナーの50%ひずみ引張応力σ’50(N/mm)が、式(2)を満たすことを特徴とする医療用チューブ。
2.4 ≦ 0.1×σ’20+0.3×σ’50 <6.6 式(2)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素樹脂チューブに関し、特に薄肉でチューブの材質がポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」と言う)からなるチューブに関する。
【背景技術】
【0002】
血管内にカテーテルを挿入して、血管内部の病変箇所を切除・治療する血管内手術は、患者への負担が少ないことから、主流になりつつある。このような用途に用いられるカテーテルは、経皮的に体内に挿入され、チューブの先端が血管を経由して病変箇所まで到達する必要がある。そのため、カテーテルには血管内を直進するための直進性や、治療を行う術者の操作を伝えるための操作伝達性などが要求される。これらの要求を満たすために、カテーテルは特性が異なる層を積層して構成されている。カテーテル内部は、治療治具の挿入や薬液の注入などの操作に対応する必要があるため、内面は低摩擦で強度が高く、内径は出来るだけ大きくすることが要求される。一方で、カテーテルの外径は、患者への負担を考慮して小さくすることが求められる。したがって、カテーテルを構成する各層は、出来るだけ薄くすることが望まれる。
【0003】
PTFEチューブは、耐薬品性、非粘着性、低摩擦性などの優れた特性により、医療用途等において好適に用いられている。カテーテルチューブの製造方法の一つに、芯線上にPTFEを被覆し、その上に外層樹脂層を形成した後、芯線を引き抜いてカテーテルチューブを得る方法がある。芯線上にPTFEを被覆する方法としては、芯線上にPTFE分散液を塗布して焼結する方法(以下、「ディッピング法」と言う)と、芯線上にペーストを直接押し出して被覆する方法がある。
また、芯線上を薄肉に成形したPTFEチューブで被覆する方法もある。この方法では、芯線をPTFEチューブに挿通し、その状態でPTFEチューブを延伸して縮径させて、芯線の表面にPTFEチューブを接触させる。この方法においては、使用するPTFEチューブの特性として、延伸に耐える強度と延伸を可能にする伸長性の両方が必要となる。また、高い寸法精度が要求されるカテーテル製造工程においては、芯線上のPTFE層は均一な肉厚であることが望ましく、延伸するPTFEチューブには高い寸法精度と均一な伸長性を有することが要求される。
【0004】
PTFEは溶融粘度が非常に大きく、長尺のPTFE成形品は、溶融押出成形ではなくペースト押出成形により成形されることが一般的である。しかし、ペースト押出では薄肉のチューブを成形することが困難である。そこで、薄肉のPTFEチューブを成形するために、芯線上にPTFE分散液を塗布して焼結した後、芯線を除去してチューブを得るディッピング法が多く用いられてきた(例えば、特許文献1参照)。しかし、ディッピング法により成形されたチューブは、ピンホールなどの欠陥が生じる虞があり、強度に劣るなどの問題もあった。また、特許文献2には、金属芯線上にPTFE樹脂をペースト押出成形し、薄肉のチューブを得る方法が開示されている。ペースト押出は、PTFE粒子の流動配向を促進し、チューブの引張強度を向上させるとされているが、カテーテルの性能を向上させるには十分な強度が得られていなかった。
【0005】
特許文献3には、PTFEチューブをペースト押出成形で成形した後、そのPTFEチューブを長手方向に延伸することにより、チューブを薄肉化する方法が開示されている。しかしながら、PTFEチューブを延伸することにより、チューブの薄肉化及びチューブの強度の確保は実現できるが、チューブの伸長性と柔軟性が失われてしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000‐316977号公報
【文献】特開2013‐176583号公報
【文献】特開2004‐340364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来の薄肉PTFEチューブの上述の問題を解決すべく、適度な伸長性と十分な強度を有するとともに、PTFEチューブを芯線等の被覆に用いる場合に必要な、延伸時の均一性が良好な薄肉PTFEチューブを提供し、柔軟性および寸法精度に優れる医療用チューブを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために、特許請求の範囲に記載の構成を採用できる。例えば、肉厚が約0.04mm以下であるポリテトラフルオロエチレンチューブであって、該ポリテトラフルオロエチレンチューブの外面および内面のいずれか一方又は両方のぬれ張力が46mN/m以上であり、200℃の雰囲気下で行う引張試験によって得られる応力‐ひずみ曲線において、該ポリテトラフルオロエチレンチューブの20%ひずみ引張応力σ20(N/mm)と該ポリテトラフルオロエチレンチューブの50%ひずみ引張応力σ50(N/mm)が、2.0 ≦ 0.1×σ20+0.3×σ50 <5.5 (式(1))を満たすことを特徴とするポリテトラフルオロエチレンチューブである。
【0009】
好適な実施形態では、200℃の雰囲気下で行う引張試験において、200%以上の引張破断ひずみを有し、また、200℃の雰囲気下で行う引張試験において、20%ひずみ引張応力σ20が4.0(N/mm)以上であるポリテトラフルオロエチレンチューブである。
【0010】
また、次のような特許請求の範囲に記載の構成を採用できる。例えば、肉厚が約0.04mm以下であるポリテトラフルオロエチレンチューブであって、該ポリテトラフルオロエチレンチューブの内径が約3.0mm以下であり、200℃の雰囲気下で行う引張試験によって得られる応力‐ひずみ曲線において、該ポリテトラフルオロエチレンチューブの20%ひずみ引張応力σ20(N/mm)と該ポリテトラフルオロエチレンチューブの50%ひずみ引張応力σ50(N/mm)が、2.0 ≦ 0.1×σ20+0.3×σ50 <5.5 (式(1))を満たすことを特徴とするポリテトラフルオロエチレンチューブである。
【0011】
また、別の一例では、ポリテトラフルオロエチレンチューブを使用した医療用チューブであって、前記ポリテトラフルオロエチレンチューブは、肉厚が約0.04mm以下であり、かつ、該ポリテトラフルオロエチレンチューブの外面および内面のいずれか一方又は両方のぬれ張力が46mN/m以上であり、200℃の雰囲気下で行う引張試験によって得られる応力‐ひずみ曲線において、該ポリテトラフルオロエチレンチューブの20%ひずみ引張応力σ20(N/mm)と該ポリテトラフルオロエチレンチューブの50%ひずみ引張応力σ50(N/mm)が、上述の式(1)を満たすものである。
また、ポリテトラフルオロエチレンチューブを使用した医療用チューブであって、前記ポリテトラフルオロエチレンチューブは、肉厚が約0.04mm以下であり、かつ、該ポリテトラフルオロエチレンチューブの内径が約3.0mm以下であり、200℃の雰囲気下で行う引張試験によって得られる応力‐ひずみ曲線において、該ポリテトラフルオロエチレンチューブの20%ひずみ引張応力σ20(N/mm)と該ポリテトラフルオロエチレンチューブの50%ひずみ引張応力σ50(N/mm)が、上述の式(1)を満たすものである。
さらに、別の一例では、ポリテトラフルオロエチレンチューブを加工したポリテトラフルオロエチレンライナーを含む医療用チューブであって、該ポリテトラフルオロエチレンライナーの肉厚が約0.04mm以下であるチューブであって、該ポリテトラフルオロエチレンライナーの内径が約3.0mm以下であり、かつ、該ポリテトラフルオロエチレンライナーは、200℃の雰囲気下で行う引張試験によって得られる応力‐ひずみ曲線において、該ポリテトラフルオロエチレンライナーの20%ひずみ引張応力σ’20(N/mm)と該ポリテトラフルオロエチレンライナーの50%ひずみ引張応力σ’50(N/mm)が、2.4 ≦ 0.1×σ’20+0.3×σ’50 <6.6(式(2))を満たすものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のPTFEチューブは、強度と適度な伸長性を有しており、さらに延伸時の均一性が良好であるため、PTFEチューブを延伸して使用する用途において、好適に用いることができる。芯線上に被覆されたPTFEチューブは、均一で寸法のばらつきが小さく、柔軟性と寸法精度に優れている。本発明のPTFEチューブは、高い寸法精度が要求される製品に使用することができ、特に医療用チューブのライナー等として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明のPTFEチューブの寸法について説明するチューブ断面の模式図である。
図2図2は、本発明のPTFEチューブに関する式(1)の中辺の値と外径のばらつき(変動係数CV)との関係を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態のPTFEチューブについて詳しく説明する。以下に説明する実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定する意図ではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の成立に必須であるとは限らない。
【0015】
本発明の実施形態では、PTFEチューブの肉厚は、約0.04mm以下である。具体的には約0.005mm~約0.04mmであり、好ましくは約0.01mm~約0.04mmであり、より好ましくは、約0.01mm~約0.03mmである。肉厚が薄いことは、カテーテルの層の一部として使用した場合に、カテーテルの機能を妨げることなく、カテーテルの細径化に貢献できる。少なくとも、チューブ内部の気密性を確保するのに十分な肉厚であることが好ましい。PTFEチューブの肉厚は、マイクロスコープなどを用いて、PTFEチューブの長手軸方向に対して垂直に切断した断面を測定することにより確認することができる。または、PTFEチューブの内径をピンゲージで測定することが可能な場合は、内径をピンゲージで測定し、チューブの端部にピンゲージを挿入した状態でその上からダイヤルゲージ等で外径を測定し、計算式(肉厚=(外径-内径)/2)により算出することもできる。 また、本発明の実施形態では、PTFEチューブの内径は、約3.0mm以下である。具体的には約0.20mm~約3.0mmであることが好ましく、約0.25mm~約2.0mmであることがより好ましい。図1は、PTFEチューブの断面1の模式図であり、チューブの寸法に関して説明する図である。チューブの断面が円形である場合、チューブの内径とはチューブの断面の内側の直径を意味する。図1で説明すると、内径とは、内側の円の直径であり、それは内側の円の中心Cを通る直線上の、内側の円上の点Aと点Bとの直線距離である。内径は、均等に2か所(直線の角度を約90°変えて2か所)~4か所(直線の角度を約45°変えて4か所)程度測定し、その平均値をPTFEチューブ内径として採用する。PTFEチューブの肉厚は、円の中心Cを通過する直線上の、内側の円上の点Aと外側の円上の点A’との距離であり、また、内側の円上の点A’と外側の円上の点B’との距離でもある。肉厚は、均等に4か所~8か所程度測定し、その平均値をPTFEチューブ肉厚として採用する。
【0016】
200℃の雰囲気下で行う引張試験によって得られる応力‐ひずみ曲線において、該ポリテトラフルオロエチレンチューブの伸び率が20%のときの引張応力(20%ひずみ引張応力)をσ20(N/mm)、該ポリテトラフルオロエチレンチューブの伸び率が50%のときの引張応力(50%ひずみ引張応力)をσ50(N/mm)としたとき、本発明のPTFEチューブは(その肉厚が0.04mm以下である場合)、式(1)を満たすと、本願発明の課題を解決できる。式(1)は、データ解析の結果

2.0 ≦ 0.1×σ20+0.3×σ50 <5.5 式 (1)

得られたものであり、PTFEチューブの延伸時の均一性との相関が高い。式(1)の右辺の値は、5.5であることが好ましく、5.0であることがより好ましい。式(1)の左辺の値が小さすぎると、PTFEチューブを延伸するときの強度が十分に得られない場合がある。式(1)の左辺の値は、2.0であることが好ましく、3.0 であることがより好ましい。また、本発明のPTFEチューブは、その内径が約3.0mm以下である場合に、式(1)を満たすとより効果が向上しやすい傾向がある。
PTFEチューブの上に外層樹脂層などが形成される場合、PTFEチューブを加工して得られたPTFEライナーの、式(1)の右辺の値と左辺の値は、いずれも2割程度増加する傾向がある。そこで、そのPTFEライナーについて得られた上述の値から2割程度減算した値を、本発明のPTFEチューブの値として扱うことができる。
【0017】
また、本発明のポリテトラフルオロエチレンチューブは、200℃の雰囲気下で行う引張試験において、引張破断ひずみが200%以上であることが好ましい。また、200℃の雰囲気下で行う引張試験におけるポリテトラフルオロエチレンチューブの20%ひずみ引張応力σ20が4.0(N/mm)以上であることが好ましい。また、該ポリテトラフルオロエチレンチューブの20%ひずみ引張応力σ20は、11.0(N/mm)より小さいことが好ましい。
【0018】
また、本発明のポリテトラフルオロエチレンチューブは、200℃の雰囲気下で行う引張試験において、ポリテトラフルオロエチレンチューブの50%ひずみ引張応力σ50が6.0(N/mm)以上であることが好ましい。また、ポリテトラフルオロエチレンチューブの50%ひずみ引張応力σ50は、14.0(N/mm)より小さいことが好ましい。
強度と適度な伸長性を備える本発明のPTFEチューブを使用した医療用チューブは、良好な柔軟性を有するチューブとすることができる。
【0019】
本発明のPTFEチューブは、チューブの外面および内面のいずれか一方又は両方のぬれ張力が46mN/m以上であり、60mN/m以上であることがより好ましい。PTFEチューブ表面のぬれ張力は、表面をエッチング(物理的または化学的に改質)することにより調節することができる。具体的には、プラズマ、コロナ放電、またはイオンビームなどを用いたエッチング、金属ナトリウムとアンモニアやナフタレンの混合物を用いたエッチングなどを実施することができる。例えば、ナフタレン+金属ナトリウム+ジグリム溶液を用いたエッチングでは、チューブ表面のぬれ張力を70mN/m以上とすることも可能である。本発明のPTFEチューブは、チューブ外面のぬれ張力が46mN/m以上であり、とくに医療用チューブのライナーとして使用した場合、医療用チューブ内側表面にかかる荷重に対して、内層(PTFE層)の強度を維持しやすい。
【0020】
以下、本発明の実施形態について詳しく述べる。
チューブの成形に使用されるPTFEパウダーには、ファインパウダーとモールディングパウダーの二種類がある。本発明の実施形態で使用するのは、せん断応力を加えるとフィブリル化を伴って変形する性質を持つファインパウダーが好ましい。本発明の実施形態で使用するポリテトラフルオロエチレン樹脂は、テトラフルオロエチレン(以下、「TFE」と言う)のホモポリマーであっても、変性PTFEであっても良い。変性PTFEは、TFEと少量のTFE以外の単量体とを重合させたものである。少量のTFE以外の単量体は、たとえば、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)などが挙げられる。一般に、変性PTFEは、成形品の耐熱性、耐摩耗性、耐屈曲性などの特性を向上させるために用いられる。本発明の実施形態で使用するポリテトラフルオロエチレン樹脂としては、上記で挙げたPTFE種を単一であっても、複数種のブレンドしたものであってもよい。また、本発明のポリテトラフルオロエチレンチューブは、その機能を損なわない限り少量であれば、上述のポリテトラフルオロエチレン樹脂以外のポリマーを含むことができる。
【0021】
PTFEファインパウダーは、平均粒径が0.2~0.5μmの一次粒子が凝集して平均粒径400~700μmの二次粒子を形成しているものが一般的である。常温においても振動などにより容易にフィブリル化する性質があり、塊を形成しやすい。この性質を利用したのがペースト押出成形である。一般にペースト押出成形とは、PTFEと、助剤(潤滑剤)と呼ばれる有機溶剤とを混合し圧縮して予備成形体を作成し、その予備成形体を押出機に投入して圧力をかけ、フィルムやチューブ、線状被覆材などの形状に押し出す方法である。本発明のPTFEチューブにおいては、押出成形されたPTFEチューブの均一性が重要であるため、PTFE予備成形体の内部構造が均一となるように予備成形体を作成することが好ましい。具体的には、例えば、予備成形体を作成する前に助剤と混合したPTFEファインパウダーは、塊を形成しないように取り扱い、形成された塊は予備成形体の圧縮金型に投入する前に篩で除去することが好ましい。
【0022】
助剤は、PTFEファインパウダーに添加してペースト状にし、押出機で成形することを可能にする。本発明の実施形態で使用する助剤は、潤滑性が高い有機溶剤であることが好ましい。PTFEファインパウダーに助剤を添加した後、押出機で金型を通してチューブに成形するが、成形中に助剤が揮発すると安定した成形が困難になり好ましくない。本発明の実施形態で使用する助剤は初留点(IBP)が150℃以上のものが好ましい。PTFEファインパウダーと助剤をチューブ形状に成形した後、チューブを焼成する前に助剤を揮発させて除去する。このとき確実に助剤を除去できるように、助剤のIBPは250℃以下であることが好ましい。潤滑性が高く、150℃~250℃のIBPを有する有機溶剤として、石油系溶剤等がよく用いられている。
【0023】
本発明の実施形態で使用する助剤は、PTFEの界面張力18.5mN/mよりも3mN/m以上高い界面張力を有することがより好ましい。助剤の界面張力が高いことで、助剤がPTFE粒子間を必要以上に移動せず、粒子表面に留まり易くなると考えられる。PTFEのペースト押出成形では、押出時に金型内でPTFE粒子同士が摺動し、粒子表面がフィブリル化する。そのフィブリルが絡み合うことで流動しにくくなり、押出圧力が上昇する。このとき、PTFE粒子の周囲に存在する助剤が、PTFE粒子間、およびPTFE粒子と金型内壁との潤滑性を高め、PTFE粒子間の絡み合いを適度に抑制し、押出圧力の過剰な上昇を防止する。例えば、肉厚0.04mm以下のPTFEチューブを押出成形する場合、金型内の流路は極めて狭く、樹脂は高Reduction Ratio(以下、「RR」と言う。)の条件下で流動することになり、金型内壁とPTFE粒子との間、およびPTFE粒子間のせん断力が大きくなる。PTFE粒子に急激に高いせん断応力が加わると、PTFE粒子は一気にフィブリル化し、押出圧力が上昇する。しかし、PTFE粒子間に滞留する助剤が、PTFE粒子間およびPTFE粒子と金型内壁との間のせん断力を低減し、PTFEの急激過ぎるフィブリル化を抑制する効果が期待される。
【0024】
本発明の実施形態のチューブは、ポリテトラフルオロエチレン樹脂に、フィラーまたはその他の樹脂を含むものであっても良い。フィラーとして、例えば、カーボン、アルミナなどの金属酸化物、焼成PTFE、PTFE以外のフッ素樹脂やその他の樹脂からなる樹脂フィラーなどが挙げられる。上記フィラーのうち、1種または複数種類をPTFEに混合して使用することが出来る。また、PTFEチューブを複数の層で構成し、そのいずれかの層のみにフィラーまたはその他の樹脂を含む層を配することも可能である。
【0025】
以下、本発明の実施形態のチューブの製造方法について説明する。
[予備成形体の成形]
PTFEファインパウダーと助剤とを、タンブラーなどで混合する。PTFEにフィラーなどを添加する場合は、この工程で添加すると良い。PTFEファインパウダーは、篩などで塊を除去して使用する。PTFEと助剤の混合物を篩に通して塊を取り除いた後、圧縮して加圧成形し、予備成形体を作成する。予備成形体は、その内部まで均一に圧縮されていることが望ましい。PTFEチューブを複数の層で構成する場合は、例えば、サイズの異なる予備成形体を組み合わせて、複数の層で構成した予備成形体を作成することができる。
[押出成形]
作成した予備成形体を押出機にセットし、金型を通してチューブ形状に成形する。
押出機の金型の出口温度は、80℃以上150℃以下が好ましく、90℃以上120℃以下がより好ましい。金型の温度が高いと、PTFE粒子表面のフィブリル化が促進され、形成されたフィブリルの絡み合いが強くなる傾向がある。また、金型から押出されたチューブの冷却速度も、ポリテトラフルオロエチレンチューブの20%ひずみ引張応力σ20の値と50%ひずみ引張応力σ50の値に影響を与え得る。例えば、ダイ出口からPTFEが吐出された後の金型周辺をヒーターで覆うことで、金型出口周辺におけるチューブ形状のPTFEの温度を調節することができる。本発明のPTFEチューブにおいては、その温度は60℃~120℃が適当であると考えられる。予備成形体の押出速度、押出温度が一定になるように調整し、押出圧力が一定となるように成形を行うことが好ましい。チューブの押出は、一定の安定した状態で行い、チューブの送り出しと引取り(巻取り)のバランスを調節して、チューブ押出成形の工程から乾燥工程、チューブ焼成工程まで、成形したチューブに負荷がかからないように取り扱うのが良い。
[乾燥工程]
チューブ形状に成形したPTFEは、PTFEの融点以下の温度に設定された加熱炉を通すことで加熱され、助剤を揮発させる。後工程でPTFEの焼成を行う際、助剤が多く残留した状態はチューブの品質上好ましくないため、十分に揮発させる。助剤としてIBPが150℃~250℃のものを用いると、乾燥工程で助剤を十分に除去することが容易である。乾燥工程でチューブが延伸されることを抑えるために、チューブの送り出し、引取りのバランスをとりラインテンションを調整することが好ましい。
[チューブ焼成工程]
乾燥させたチューブ形状に成形されたPTFEは、PTFE の融点以上の温度に加熱することで焼成される。通常は、焼成温度は400℃前後である。チューブを構成するPTFEが融点以上の温度で加熱されると、PTFE粒子同士が融着し、PTFEチューブとなる。
[エッチング処理工程]
PTFEチューブの表面を物理的及び/又は化学的にエッチング処理する。
【0026】
発明を、下記の実施例でより詳細に説明する。下記の実施例は、発明を例示するものであって、本発明の内容を下記の実施例によって限定することを意図するものではない。
【実施例
【0027】
<200℃の雰囲気下で行う引張試験>
恒温槽内で試料温度を制御して引張試験を行うことができる試験機を用いて、200℃の雰囲気下で以下の試験条件で引張試験を行った。
[引張試験条件]
試験温度 200℃±3℃
初期チャック間距離 50mm
試験速度 50mm/min

測定に適した長さにカットしたチューブをそのまま測定サンプルとし、チューブが破断するまで測定を継続して、データを取得した。試験サンプル数はできるだけ5個以上とし、各応力値については、これらの測定値の算術平均値を用いた。引張ひずみε(%)は、チャック間距離の増加量ΔL(mm)を初期チャック間距離L(mm)で除した値であり、 ε(%)=(ΔL/L)×100 として求めた。試験機のチャックにセットしたチューブが長手方向に20%伸長したとき(10mm伸長したとき)の応力を20%ひずみ引張応力σ20、σ’20 とし、長手方向に50%伸長したとき(25mm伸長したとき)の応力を50%ひずみ引張応力σ50、σ’50とした。PTFEチューブをライナーとして、その上に外層樹脂層などが形成されたチューブについて、そのライナーの測定を行う場合、外層樹脂層を溶解剤などで剥離・除去して、ライナー部分のみで引張試験を実施することができる。

<加熱延伸試験>
1000mm以上の長さにカットしたチューブサンプル(20個のサンプルを用意した。)に、チューブより20mm程度短い長さの芯線を挿通する。一方の端部はチューブと芯線の端を揃えてラミネーターに固定し、他方の端部は、チューブのみに錘を固定して吊り下げる。ここでは、錘の重量は、チューブ断面積0.1mmあたり、150gとした。300℃に加熱したヒーターを、吊り下げたチューブの上から下に移動させながら加熱し、PTFEチューブを延伸して芯線上にラミネートした。ヒーターの移動速度は、100mm/minとした。PTFEチューブをラミネートした芯線(以下、被覆芯線という)を冷却し、その寸法を測定した。外径が一定の芯線を使用しているため、被覆芯線の外径と芯線の外径から被覆したPTFEチューブの肉厚を算出することが可能である。ここでは、被覆芯線の外径のばらつきを、被覆したPTFEチューブの伸張性のばらつきとして取り扱い、評価した。被覆芯線の両端数十mmは、ラミネート加工時に損傷を受ける可能性があるため、両端数十mmを除いた部分で被覆芯線の寸法を測定した。外径は、1本の被覆芯線の全長にわたって、できるだけ均等に6か所以上で測定した。測定は、1測定点あたり、2点(測定角度が90°変化する2点)~4点(測定角度が45°変化する4点)程度で、径方向(断面方向)に均等に行い、それらの測定値の算術平均をその測定点の外径Dとした。また、1つのサンプル内の全長にわたって6か所以上で、上記のように測定を行い、各測定点の外径Dの算術平均値を、そのサンプルの外径平均値Dとした。また、そのサンプル内での外径のばらつきは、サンプル内での外径の変動係数を算出することで確認した。1つのサンプル内での外径の変動係数CVは、外径の偏差(測定点の外径D‐外径平均値D)と外径の分散(外径の偏差の2乗平均)を算出し、外径の標準偏差(外径の分散の平方根)を算出し、その外径の標準偏差を外径平均値Dで除して、算出した。残り19個のサンプルについて同じ作業を繰り返した。算出した20個の各サンプル内での外径の変動係数CVの算術平均値を、「外径の変動係数CV」とした。

<ぬれ張力試験>
ぬれ張力は、ISO 8296に準拠して測定を行った。具体的には、ぬれ張力測定用の試験用混合液(ぬれ張力試験用混合液)を、綿棒を使用してPTFEチューブの表面に素早く塗布し、その液膜の状態で判断した。綿棒で描かれた線の状態に2秒間変化がみられなければ、PTFEチューブの表面張力は、当該ぬれ張力試験用混合液の表面張力以上と判断される。逆に、綿棒で描かれたぬれ張力試験用混合液の線の幅が2秒未満で縮まったり、液膜が破れたりする場合は、当該ぬれ張力試験用混合液よりも表面張力が低い混合液を使用して評価する。
【0028】
実施例1
容器に、篩で塊を除去したPTFEファインパウダー100質量部と、助剤18質量部を入れて混合し、篩で塊を取り除いた後、その混合物を圧縮して予備成形体を作成した。この予備成形体を、シリンダー径20mm、マンドレル径10mmの押出成形機に投入し、金型温度100℃で押出してチューブ形状に成形した。金型出口からPTFEが吐出された後の金型周辺をヒーターで覆い、金型出口周辺の温度を90℃に調節した。成形したチューブは、150℃に設定した第1乾燥炉、220℃に設定した第2乾燥炉、430℃に設定した焼成炉を通過させて、乾燥と焼成を行った。得られたチューブは、内径0.60mm、肉厚0.028mmであった。得られたチューブの表面にテトラエッチ(登録商標)を塗布し、アルコール、水で洗浄してエッチング処理を行い、本発明の実施形態のPTFEチューブを作成した。得られたPTFEチューブを長さ約100mmにカットし、引張試験用サンプルとした。 上記の方法に従って、200℃の雰囲気下で引張試験を行った。また、得られたPTFEチューブを1000mm程度にカットし、評価用サンプルとした。もう一方で、外径0.51mm、長さが980mm程度の芯線を用意し、上記の方法に従って加熱延伸試験を実施した。また、上記の方法に従って、ぬれ張力を測定した。

実施例2
実施例1と同様に作成した予備成形体を、シリンダー径30mm、マンドレル径10mmの押出成形機に押出成形機に投入し、金型温度90℃で押出してチューブ形状に成形した。金型出口からPTFEが吐出された後の金型周辺をヒーターで覆い、金型出口周辺の温度を80℃に調節した。実施例1と同様に、成形したチューブは、乾燥炉と焼成炉を通過させて、乾燥と焼成を行った。得られたチューブは、内径1.72mm、肉厚0.038mmであった。得られたチューブの表面にテトラエッチ(登録商標)を塗布し、アルコール、水で洗浄してエッチング処理を行い、本発明の実施形態のPTFEチューブを作成した。得られたPTFEチューブを長さ約100mmにカットし、引張試験用サンプルとした。 上記の方法に従って、200℃の雰囲気下で引張試験を行った。また、得られたPTFEチューブを1000mm程度にカットし、評価用サンプルとした。もう一方で、外径1.45mm、長さが980mm程度の芯線を用意し、上記の方法に従って加熱延伸試験を実施した。また、上記の方法に従って、ぬれ張力を測定した。

実施例3
実施例1と同様に作成した予備成形体を、押出成形機に投入し、金型温度100℃で押出してチューブ形状に成形した。金型出口からPTFEが吐出された後の金型周辺をヒーターで覆い、金型出口周辺の温度を80℃に調節した。実施例1と同様に、成形したチューブは、乾燥炉と焼成炉を通過させて、乾燥と焼成を行った。得られたチューブは、内径0.475mm、肉厚0.028mmであった。得られたチューブの表面を、印加電圧10kV 、周波数18kHz、励起ガスArガスを用いて発生させたプラズマ中を6.0m/minの速度で通過させてプラズマ処理し、本発明の実施形態のPTFEチューブを作成した。得られたPTFEチューブを長さ約100mmにカットし、引張試験用サンプルとした。上記の方法に従って、200℃の雰囲気下で引張試験を行った。また、得られたPTFEチューブを1000mm程度にカットし、評価用サンプルとした。もう一方で、外径0.41mm、長さが980mm程度の芯線を用意し、上記の方法に従って加熱延伸試験を実施した。また、上記の方法に従って、ぬれ張力を測定した。

実施例4
実施例1と同様に作成した予備成形体を、押出成形機に投入し、金型温度100℃で押出してチューブ形状に成形した。金型出口からPTFEが吐出された後の金型周辺をヒーターで覆い、金型出口周辺の温度を100℃に調節した。実施例1と同様に、成形したチューブは、乾燥炉と焼成炉を通過させて、乾燥と焼成を行った。得られたチューブは、内径0.49mm、肉厚0.038mmであった。得られたチューブの表面にテトラエッチ(登録商標)を塗布し、アルコール、水で洗浄してエッチング処理を行い、本発明の実施形態のPTFEチューブを作成した。得られたPTFEチューブを長さ約100mmにカットし、引張試験用サンプルとした。 上記の方法に従って、200℃の雰囲気下で引張試験を行った。また、得られたPTFEチューブを1000mm程度にカットし、評価用サンプルとした。もう一方で、外径0.41mm、長さが980mm程度の芯線を用意し、上記の方法に従って加熱延伸試験を実施した。また、上記の方法に従って、ぬれ張力を測定した。

実施例5
実施例1と同様に作成した予備成形体を、押出成形機に投入し、金型温度80℃で押出してチューブ形状に成形した。金型出口からPTFEが吐出された後の金型周辺をヒーターで覆い、金型出口周辺の温度を60℃に調節した。実施例1と同様に、成形したチューブは、乾燥炉と焼成炉を通過させて、乾燥と焼成を行った。得られたチューブは、内径0.50mm、肉厚0.022mmであった。得られたチューブの表面を、印加電圧10kV 、周波数18kHz、励起ガスArガスを用いて発生させたプラズマ中を2m/minの速度で通過させてプラズマ処理し、本発明の実施形態のPTFEチューブを作成した。得られたPTFEチューブは、長さ約100mmにカットし、引張試験用サンプルとした。 上記の方法に従って、200℃の雰囲気下で引張試験を行った。また、得られたPTFEチューブを1000mm程度にカットし、評価用サンプルとした。もう一方で、外径0.41mm、長さが980mm程度の芯線を用意し、上記の方法に従って加熱延伸試験を実施した。また、上記の方法に従って、ぬれ張力を測定した。

実施例6
実施例1と同様に作成した予備成形体を、シリンダー径44mmの押出成形機に投入し、金型温度100℃で押出してチューブ形状に成形した。金型出口からPTFEが吐出された後の金型周辺をヒーターで覆い、金型出口周辺の温度を80℃に調節した。実施例1と同様に、成形したチューブは、乾燥炉と焼成炉を通過させて、乾燥と焼成を行った。得られたチューブは、内径2.68mm、肉厚0.033mmであった。得られたチューブの表面にテトラエッチ(登録商標)を塗布し、アルコール、水で洗浄してエッチング処理を行い、本発明の実施形態のPTFEチューブを作成した。得られたPTFEチューブを長さ約100mmにカットし、引張試験用サンプルとした。 上記の方法に従って、200℃の雰囲気下で引張試験を行った。また、得られたPTFEチューブを1000mm程度にカットし、評価用サンプルとした。もう一方で、外径2.42mm、長さが980mm程度の芯線を用意し、上記の方法に従って加熱延伸試験を実施した。また、上記の方法に従って、ぬれ張力を測定した。
【0029】
各実施例の結果を表1に示す。
【0030】
【表1】

実施例は、いずれもポリテトラフルオロエチレンチューブの20%ひずみ引張応力σ20(N/mm)とポリテトラフルオロエチレンチューブの50%ひずみ引張応力σ50(N/mm)が上述の式(1)を満たしており、芯線をPTFEチューブで被覆したときの外径のばらつき(外径の変動係数CV)が小さく、均一な伸長性を示すことが確認された。図2は、実施例のPTFEチューブについて、式(1)の中辺の値と、外径のばらつき(外径の変動係数CV)をプロットした図であり、このプロットから、関係式(1)が、芯線をPTFEチューブで被覆したときの均一な伸長性と高い相関性を有することが確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明のPTFEチューブは、チューブのライナーなどに好適に用いることができ、本発明のPTFEチューブを使用した多層チューブは、特に医療用チューブ等に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0032】
1 PTFEチューブ(断面)

【要約】
本発明は、適度な伸長性と十分な強度を有するとともに、延伸時の均一性が良好な薄肉PTFEチューブを提供し、柔軟性および寸法精度に優れる医療用チューブを提供するものである。本発明のポリテトラフルオロエチレンチューブは、肉厚が約0.04mm以下であるポリテトラフルオロエチレンチューブであって、該ポリテトラフルオロエチレンチューブの外面および内面のいずれか一方又は両方のぬれ張力が46mN/m以上であり、200℃の雰囲気下で行う引張試験によって得られる応力‐ひずみ曲線において、該ポリテトラフルオロエチレンチューブの20%ひずみ引張応力σ20(N/mm)と該ポリテトラフルオロエチレンチューブの50%ひずみ引張応力σ50(N/mm)が、2.0 ≦ 0.1×σ20+0.3×σ50<5.5(式(1))を満たす。


図1
図2