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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】携帯型補助検出システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/107 20060101AFI20240109BHJP
   G01N 21/49 20060101ALI20240109BHJP
   G01N 21/53 20060101ALI20240109BHJP
   G01N 21/41 20060101ALI20240109BHJP
   G08B 21/12 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
G08B17/107 A
G01N21/49 Z
G01N21/53 B
G01N21/41 101
G08B21/12
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2021513369
(86)(22)【出願日】2019-05-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-02
(86)【国際出願番号】 US2019031265
(87)【国際公開番号】W WO2019217519
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2022-01-24
(31)【優先権主張番号】62/670,217
(32)【優先日】2018-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591003493
【氏名又は名称】キャリア コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】CARRIER CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】リンカーン,デイヴィッド エル.
(72)【発明者】
【氏名】ピーチ,マーシン
(72)【発明者】
【氏名】バーンクラント,マイケル ジェイ.
【審査官】永田 義仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-069626(JP,A)
【文献】特開2010-025728(JP,A)
【文献】特開2016-197016(JP,A)
【文献】特開2015-095754(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C2/00-99/00
G01N21/00-21/01
21/17-21/61
G08B17/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの一次ハザード検出器と、前記少なくとも1つの一次ハザード検出器と通信するために接続されたコントローラとを含むホスト検出システムと、
前記ホスト検出システムの近くに一時的に導入され、前記ホスト検出システムの前記コントローラとリンクして追加の検出機能を提供することができる少なくとも1つの携帯型補助ハザード検出器であって、前記少なくとも1つの携帯型補助ハザード検出器は、
少なくとも1つの光源であって、前記各光源が動作時に光ビームを放出する前記少なくとも1つの光源と、
前記光ビームと検査対象との相互作用に応答してセンサ信号を放出するように動作可能である少なくとも1つの光センサと、
表面プラズモンセンサであって、前記光ビームと前記表面プラズモンセンサとの相互作用に応答して、第2のセンサ信号を放出するように動作可能な前記表面プラズモンセンサと、
を有する、前記少なくとも1つの携帯型補助ハザード検出器と、
を含み、
前記表面プラズモンセンサはプリズムを含んでおり、
前記光ビームを第1及び第2の二次光ビームに分割するように動作可能なビームスプリッタをさらに含み、前記第1の二次光ビームは前記プリズムに向けられ、前記第2の二次光ビームは前記少なくとも1つの携帯型補助ハザード検出器の外部に向けられる、検出システム。
【請求項2】
前記少なくとも1つの光源は、紫外線光源及び可視光源を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記センサ信号を前記コントローラに送信するように動作可能な無線送信機をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
ユニバーサルシリアルバス(USB)コネクタと、前記USBコネクタに接続された回路基板とをさらに含み、前記少なくとも1つの光源及び前記少なくとも1つの光センサが前記回路基板に取り付けられている、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記回路基板上に取り付けられ、前記光ビームと表面プラズモンセンサとの相互作用に応答して第2のセンサ信号を放出するように動作可能な前記表面プラズモンセンサをさらに含む、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記少なくとも1つの光源及び前記少なくとも1つの光センサを封入する防水ケーシングをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
ホスト検出システムの近くに一時的に導入され、前記ホスト検出システムのコントローラとリンクして追加の検出機能を提供することができる携帯型補助ハザード検出器であって、前記携帯型補助ハザード検出器は、少なくとも1つの光源であって、前記各光源は、動作時に光ビームを放出する、前記少なくとも1つの光源と、前記光ビームと検査対象との相互作用に応答してセンサ信号を放出するように動作可能である少なくとも1つの光センサと、表面プラズモンセンサであって、前記光ビームと前記表面プラズモンセンサとの相互作用に応答して、第2のセンサ信号を放出するように動作可能な前記表面プラズモンセンサと、を有する、前記携帯型補助ハザード検出器、
を含み、
前記表面プラズモンセンサはプリズムを含んでおり、
前記光ビームを第1及び第2の二次光ビームに分割するように動作可能なビームスプリッタをさらに含み、前記第1の二次光ビームは前記プリズムに向けられ、前記第2の二次光ビームは前記携帯型補助ハザード検出器の外部に向けられる、検出器。
【請求項8】
ユニバーサルシリアルバス(USB)コネクタと、前記USBコネクタに接続された回路基板とをさらに含み、前記少なくとも1つの光源、前記少なくとも1つの光センサ及び前記表面プラズモンセンサが前記回路基板に取り付けられている、請求項7に記載の検出器。
【請求項9】
前記少なくとも1つの光源は、紫外線光源及び可視光源を含む、請求項7に記載の検出器。
【請求項10】
前記センサ信号を前記コントローラに送信するように動作可能な無線送信機をさらに含む、請求項7に記載の検出器。
【請求項11】
前記少なくとも1つの光源及び前記少なくとも1つの光センサを封入する防水ケーシングをさらに含む、請求項7に記載の検出器。
【請求項12】
ユニバーサルシリアルバス(USB)コネクタと、
前記USBコネクタに接続された回路基板と、
前記回路基板に取り付けられた少なくとも1つの光源であって、前記各光源は、動作時に光ビームを放出する、前記少なくとも1つの光源と、
前記回路基板に取り付けられた少なくとも1つの光センサであって、前記各光センサは、前記光ビームと検査対象との相互作用に応答してセンサ信号を放出するように動作可能である、前記少なくとも1つの光センサと、
を含む、検出器であって
前記回路基板に取り付けられた表面プラズモンセンサであって、前記表面プラズモンセンサと前記光ビームとの相互作用に応答して第2のセンサ信号を放出するように動作可能な前記表面プラズモンセンサと、前記光ビームを第1及び第2の二次光ビームに分割するように動作可能なビームスプリッタと、をさらに含み、前記表面プラズモンセンサはプリズムを含んでおり、前記第1の二次光ビームは前記プリズムに向けられ、前記第2の二次光ビームは前記検出器の外部に向けられる、検出器。
【請求項13】
前記少なくとも1つの光源は、紫外線光源と可視光源とを含み、前記回路基板に取り付けられ、前記センサ信号をコントローラに送信するように動作可能な無線送信機をさらに含む、請求項12に記載の検出器。
【請求項14】
前記少なくとも1つの光源及び前記少なくとも1つの光センサを封入する防水ケーシングをさらに含む、請求項13に記載の検出器。
【請求項15】
複数の携帯型補助ハザード検出器を領域に導入することであって、前記複数の携帯型補助ハザード検出器の各々をコントローラとリンクして、前記領域内の検出機能を提供し、前記複数の携帯型補助ハザード検出器の各々は、少なくとも1つの光源であって、前記各光源が動作時に光ビームを放出する、前記少なくとも1つの光源と、前記光ビームと検査対象との相互作用に応答してセンサ信号を放出するように動作可能な少なくとも1つの光センサと、表面プラズモンセンサであって、前記表面プラズモンセンサと前記光ビームとの相互作用に応答して、第2のセンサ信号を放出するように動作可能な表面プラズモンセンサと、前記光ビームを第1及び第2の二次光ビームに分割するように動作可能なビームスプリッタと、を有しており、前記表面プラズモンセンサはプリズムを含み、前記第1の二次光ビームは前記プリズムに向けられ、前記第2の二次光ビームは前記複数の携帯型補助ハザード検出器の各々の外部に向けられる、前記複数の携帯型補助ハザード検出器を導入することと、
前記センサ信号に基づいて、標的種が前記検査対象に存在するかどうかを判定することと、
を含む、方法。
【請求項16】
前記標的種が前記検査対象中に存在するかどうかを前記判定することは、前記携帯型補助ハザード検出器のうちの少なくとも2つからの前記センサ信号の集合に基づく、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記センサ信号に基づいて、前記標的種が移動しているか、または拡散しているかを判定することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記標的種が存在するという判定に基づいて、前記領域内の暖房、換気及び空調システムの動作を変更することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記検出器のうちの1つの前記センサ信号を使用してスペクトルから前記標的種の化学的同一性を判定することと、前記スペクトルを別の前記検出器の前記センサ信号からの別のスペクトルと比較することによって前記化学的同一性を検証することとをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記検出器の2つ以上にわたって前記標的種の濃度が増加する傾向があるかどうかを判定することと、前記傾向が存在する場合にアラームをトリガすることとをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記センサ信号の集合分布に基づいて、前記検出器にわたる前記標的種の濃度の平均値及び変動性を判定することと、前記平均値及び前記変動性の両方が増加した場合にアラームをトリガすることとをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記標的種が存在するという別の前記携帯型補助ハザード検出器からの判定に基づいて、前記携帯型補助ハザード検出器のうちの1つにおけるサンプリングレートを増加させることをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記標的種を検出した前記携帯型補助ハザード検出器に最も近い前記携帯型補助ハザード検出器の1つまたは複数でのみ前記サンプリングレートを増加させることを含み、リモートである前記携帯型補助ハザード検出器の1つまたは複数はサンプリングレートを変更しない、請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2018年5月11日に出願された米国仮出願第62/670,217号の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
検出システムは、多くの場合、住宅、オフィスビル、空港、スポーツ会場などに設置され、脅威イベントの早期警告のために煙や化学物質を識別する。例として、システムは、火災の早期警告として微量の煙粒子、環境の毒性の早期警告として微量の標的化学物質、または人間、荷物、小包もしくはその他の物体の保安検査中に微量の浮遊物質を識別するように設計され得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示の一例による検出システムは、少なくとも1つの一次ハザード検出器と、少なくとも1つの一次ハザード検出器と通信するために接続されたコントローラとを含むホスト検出システムと、ホスト検出システムの近くに一時的に導入され、ホスト検出システムのコントローラとリンクして追加の検出機能を提供することができる少なくとも1つの携帯型補助ハザード検出器とを含む。少なくとも1つの携帯型補助ハザード検出器は少なくとも1つの光源を含む。各光源は動作時に光ビームを放出する。少なくとも1つの光センサは、光ビームと検査対象との相互作用に応答してセンサ信号を放出するように動作可能である。
【0004】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態は、光ビームと表面プラズモンセンサとの相互作用に応答して、第2のセンサ信号を放出するように動作可能な表面プラズモンセンサを含む。
【0005】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態において、表面プラズモンセンサはプリズムを含む。
【0006】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態は、光ビームを第1及び第2の二次光ビームに分割するように動作可能なビームスプリッタを含む。第1の二次光ビームはプリズムに向けられ、第2の二次光ビームは少なくとも1つの携帯型補助ハザード検出器の外部に向けられる。
【0007】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態において、少なくとも1つの光源は、紫外線光源及び可視光源を含む。
【0008】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態は、センサ信号をコントローラに送信するように動作可能な無線送信機を含む。
【0009】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態は、ユニバーサルシリアルバス(USB)コネクタと、USBコネクタに接続された回路基板とを含む。少なくとも1つの光源及び少なくとも1つの光センサは回路基板に取り付けられている。
【0010】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態は、回路基板上に取り付けられ、光ビームと表面プラズモンセンサとの相互作用に応答して第2のセンサ信号を放出するように動作可能な表面プラズモンセンサを含む。
【0011】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態は、少なくとも1つの光源及び少なくとも1つの光センサを封入する防水ケーシングを含む。
【0012】
本開示の一例による検出器は、ホスト検出システムの近くに一時的に導入され、ホスト検出システムのコントローラとリンクして追加の検出機能を提供することができる携帯型補助ハザード検出器を含む。携帯型補助ハザード検出器は、少なくとも1つの光源を有する。当該各光源は、動作時に光ビームを放出する。少なくとも1つの光センサは、光ビームと検査対象との相互作用に応答してセンサ信号を放出するように動作可能である。
【0013】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態は、光ビームと表面プラズモンセンサとの相互作用に応答して、第2のセンサ信号を放出するように動作可能な表面プラズモンセンサを含む。
【0014】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態は、光ビームを第1及び第2の二次光ビームに分割するように動作可能なビームスプリッタを含む。第1の二次光ビームはプリズムに向けられ、第2の二次光ビームは少なくとも1つの携帯型補助ハザード検出器の外部に向けられる。
【0015】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態は、ユニバーサルシリアルバス(USB)コネクタと、USBコネクタに接続された回路基板とを含む。少なくとも1つの光源、少なくとも1つの光センサ及び表面プラズモンセンサは回路基板に取り付けられている。
【0016】
少なくとも1つの光源は、紫外線光源及び可視光源を含む、請求項10に記載の検出器である。
【0017】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態は、センサ信号をコントローラに送信するように動作可能な無線送信機を含む。
【0018】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態は、少なくとも1つの光源及び少なくとも1つの光センサを封入する防水ケーシングを含む。
【0019】
本開示の一例による検出器は、ユニバーサルシリアルバス(USB)コネクタと、USBコネクタに接続された回路基板と、回路基板に取り付けられた少なくとも1つの光源とを含む。当該各光源は、動作時に光ビームを放出し、回路基板に取り付けられた少なくとも1つの光センサの当該各光センサは、光ビームと検査対象との相互作用に応答してセンサ信号を放出するように動作可能である。
【0020】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態は、回路基板に取り付けられた表面プラズモンセンサであって、表面プラズモンセンサと光ビームとの相互作用に応答して第2のセンサ信号を放出するように動作可能な表面プラズモンセンサと、光ビームを第1及び第2の二次光ビームに分割するように動作可能なビームスプリッタとを含む。第1の二次光ビームはプリズムに向けられ、第2の二次光ビームは少なくとも1つの携帯型補助ハザード検出器の外部に向けられる。
【0021】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態において、少なくとも1つの光源は、紫外線光源と可視光源とを含み、回路基板に取り付けられ、センサ信号をコントローラに送信するように動作可能な無線送信機をさらに含む。
【0022】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態は、少なくとも1つの光源及び少なくとも1つの光センサを封入する防水ケーシングを含む。
【0023】
本開示の一例による方法は、複数の携帯型補助ハザード検出器を領域に導入することと、携帯型補助ハザード検出器をコントローラとリンクして、領域内の検出機能を提供することとを含む。当該各携帯型補助ハザード検出器は、少なくとも1つの光源を有する。当該各光源は動作時に光ビームを放出する。少なくとも1つの光センサは、光ビームと検査対象との相互作用に応答してセンサ信号を放出するように動作可能であり、センサ信号に基づいて、標的種が検査対象に存在するかどうかを判定する。
【0024】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態において、標的種が検査対象中に存在するかどうかを判定することは、携帯型補助ハザード検出器のうちの少なくとも2つからのセンサ信号の集合に基づく。
【0025】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態は、センサ信号に基づいて、標的種が移動しているか、または拡散しているかを判定することを含む。
【0026】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態は、標的種が存在するという判定に基づいて、領域内の暖房、換気及び空調システムの動作を変更することを含む。
【0027】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態は、検出器のうちの1つのセンサ信号を使用してスペクトルから標的種の化学的同一性を判定することと、スペクトルを別の検出器のセンサ信号からの別のスペクトルと比較することによって化学的同一性を検証することとを含む。
【0028】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態は、検出器の2つ以上にわたって標的種の濃度が増加する傾向があるかどうかを判定することと、傾向が存在する場合にアラームをトリガすることとを含む。
【0029】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態は、センサ信号の集合分布に基づいて、検出器にわたる標的種の濃度の平均値及び変動性を判定することと、平均値及び変動性の両方が増加した場合にアラームをトリガすることとを含む。
【0030】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態は、標的種が存在するという別の携帯型補助ハザード検出器からの判定に基づいて、携帯型補助ハザード検出器のうちの1つにおけるサンプリングレートを増加させることを含む。
【0031】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態は、標的種を検出した携帯型補助ハザード検出器に最も近い1つまたは複数の携帯型補助ハザード検出器でのみサンプリングレートを増加させることを含む。リモートである携帯型補助ハザード検出器の1つまたは複数はサンプリングレートを変更しない。
【0032】
本開示の様々な特徴及び利点は、以下の詳細な説明から当業者に明らかになるであろう。詳細な説明に添付された図面は、以下のように簡単に説明することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】少なくとも1つの携帯型補助ハザード検出器を有する検出システムの一例を示す図である。
図2】携帯型補助ハザード検出器の一例を示す図である。
図3図2の携帯型補助ハザード検出器を示す図である。
図4】複数の光源及び光センサを有する別の携帯型補助ハザード検出器の例を示す図である。
図5】表面プラズモンセンサを有する別の携帯型補助ハザード検出器の例を示す図である。
図6】表面プラズモンセンサの一例を示す図である。
図7】制御ストラテジの例を示すために、集合センサ信号の分布を有するグラフの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
住宅、オフィスビル、空港、スポーツ会場などの検出システムは、脅威イベントの早期警告のために煙または化学物質を識別する。このようなシステムの機能は限られている場合がある。例えば、システムは既存の検出器の機能に制限されており、脅威イベント中もシステムは動作し続ける可能性があるが、脅威イベントが識別されると、脅威イベントが展開するにつれて、システムの分析機能の向上が制限される可能性がある。本明細書に開示されるのは、脅威イベントの前または最中に検出機能を増強するためにホスト検出システムに追加することができる携帯型補助検出システムである。
【0035】
図1は、危険物質について領域22内の検査対象を監視するための検出システム20(「システム20」)の一例を概略的に示している。例えば、領域22は、建物、空港、スポーツ会場などであり得るが、これらに限定されない。危険物質は、煙、他の微粒子、化学物質、生物剤、1つまたは複数の標的種または脅威イベントを示すか、脅威イベントの影響を受け得る他の物質であり得る。
【0036】
この例では、システム20は、少なくとも1つの一次ハザード検出器26(「検出器26」)及びコントローラ28を含むホスト検出システム24を含む。コントローラ28は、接続30を介して検出器26と通信するために通信可能に接続されている。本明細書における通信接続または通信は、光接続、有線接続、無線接続またはそれらの組み合わせを指し得ることを理解すべきである。コントローラ28は、本明細書に記載の機能を実行するように構成された(例えば、プログラムされた)ハードウェア(例えば、1つまたは複数のマイクロプロセッサ及びメモリ)、ソフトウェアまたはその両方を含み得る。
【0037】
検出器26は、検査対象において少量の微粒子(例えば、煙粒子、粉塵蒸気または他の微粒子)、化学物質及び/または生物剤を検出することができる煙探知器または室内空気質センサであり得るが、これらに限定されない。検出器26のタイプの例は、イオン化検出器、光電吸引検出器、光電チャンバまたはチャンバーレス検出器、電気化学センサ、表面プラズモン共鳴センサ、光音響検出器及びそれらの組み合わせを含み得る。
【0038】
一例として、ホスト検出システム24は、領域22の常設装置である。これに関して、検出システム24の少なくとも一部分は、領域22に構造的に統合されたハードウェアを含み得る。例えば、検出器26は、建物または場所のインフラを介して配線され得る、及び/または検出器26は、検出器26を収容または取り付けるように構造的に適合された建物統合ハードウェアまたはインフラを介して設置され得る。図1は、領域22内のシステム20の要素を含むが、システム20の要素のいくつかは、本明細書に説明する方法及び構成を可能にするために領域22内の検査対象への近接が必要でない限り、領域22に隣接するか外側に配置され得る。例えば、本明細書に記載するように、検出器のいくつかまたは全ては、通常、領域に統合されるが、コントローラ28は、それが検出器26の通信範囲内にあるという条件で、領域22に隣接するか、または領域22の外側にあり得る。
【0039】
ホスト検出システム24は、通常、危険物質の存在を識別し、アラームをトリガするための早期警告システムとして構成され得る。例えば、検出器26は、煙、他の微粒子、化学物質及び/または生物剤の存在について空気を監視し、コントローラ28は、煙、他の微粒子、化学物質及び/または生物剤が空気中に存在するとの判定に応じて、アラームをトリガする。コントローラ28はまた、これらに限定されないが、暖房、換気及び空調(HVAC)システムなどの、建物または場所のインフラ内の他のシステムを制御するように構成され得る。
【0040】
ホスト検出システム24は、検出機能を確立した有限数の検出器26を含むという点で制限されている。例えば、検出器26は全て、化学物質または生物剤を識別することができない煙探知器であり得、または検出器26は、煙が検出された後、さらなる有用データを提供しない可能性がある。
【0041】
これに関して、システム20は、1つまたは複数の携帯型補助ハザード検出器32(「検出器32」)を含む。検出器32は、追加の検出機能を提供するために、ホスト検出システム24の近く(例えば、領域22内またはその近くで、コントローラ28の通信範囲内)に一時的に導入することができる(34で表される)。例えば、検出器32は、煙、化学物質または生物剤が領域22ですでに検出されると、脅威イベント中に検出分析機能を増強するために、ホスト検出器システム24に追加され得る。そのような使用は、脅威イベント中の領域22での人及び資源の管理を容易にすることができ、その後、ホスト検出システム24が動作を再開する間、検出器32はシステム20から取り外されてよい。別の例として、検出器32は、任意の脅威イベントの前にホスト検出器システム24に追加され、脅威イベントを示すために検出分析機能を増強することができる。この場合、検出器32は、スポーツイベントまたは他の人の集まりなどで一時的に機能を高めるために使用されてよく、その後、ホスト検出システム24が動作を継続している間、検出器32はシステム20から取り外されてよい。追加の例では、検出器32は、上記のように配置可能であり得るか、あるいは、独立した検出システムとして使用され得る。
【0042】
検出器32はコンパクトで携帯可能であり、コントローラ28に配線されていない。検出器32は、手で簡単に領域22に運ぶことができ、一時的に領域22に配置することができる。一例として、検出器32の「携帯性」の性質は、検出器26よりも携帯性が高い検出器32を指す。例えば、検出器26は、通常、複数の留めネジ及び構造内の対応する穴などによって、領域22内の構造に侵襲的に取り付けられる(領域22の構造への恒久的な変更を必要とする「破壊的」設置)。しかしながら、検出器32は、留めネジを伴うことなく、または穴を必要とすることなく、非侵襲的に領域22に配置される(領域22の構造に恒久的な変更を必要としない「非破壊」設置)。したがって、検出器32は、領域22内の事実上どこからでも動作するように自由に移動及び配置することができる、すなわち、検出器26とは異なり、検出器32は、領域22内で位置が固定されていない。
【0043】
起動時に(例えば、デバイスの電源を入れるか、またはオンにする)、検出器32は、検出器26に加えて、ホスト検出システム24のコントローラ28とリンクして、化学検出、化学識別、煙探知、生物剤検出及びそれらの組み合わせなどであるが、これらに限らない検出機能を提供する。例えば、コントローラ28は、検出器26から収集されたデータを利用することができ、これについては、以下でさらに詳細に説明する。
【0044】
図2は、検出器32の1つの代表的な例を示し、これは、図3の側面図にも示されている。この例では、検出器32は、ユニバーサルシリアルバス(USB)プラットフォーム上にあり、USBコネクタ33及び回路基板35を含む。この点に関して、検出器32は、(検出器32に電力を供給するために)プラグインによってホスト検出システム24の近くに導入されると、物理的なデバイス構成またはユーザの介入を必要とすることなく、ホスト検出システム24によって検出することができる「プラグアンドプレイ」デバイスであり得る。
【0045】
検出器32は、回路基板35に動作可能に取り付けられた少なくとも1つの光源36及び少なくとも1つの光センサ38を有する。回路基板35、光源(複数可)36及び光センサ(複数可)38は、ケーシング37に封入されており、ケーシング37は、共に取り付けられた上部及び下部のケーシング部品を含み得る。ケーシング37は、ケーシング部品37a、37bが共に密封されるように防水性であり得る。ケースは、デバイスの電力状態、センサ読み取り値、通信状態及び検出器の動作の他の表示など、検出器32の状態を示すために、コントローラ40に通信可能に接続された光または小型LCD画面(図示せず)などの視覚的インジケータを含み得る。検出器32はまた、温度センサ、湿度センサなどの他のセンサを含み得る。検出器32は、USBコネクタ33を介して電力を供給されてよく、したがって、オンボードバッテリを排除し得る。あるいは、検出器32は、オンボードバッテリを有し、USBコネクタ33を有さない自立デバイスであり得る。
【0046】
各光源36は、動作時に光ビームB1を放出する(図3)。検出器32は、制御モジュール40をさらに含んでよく、各光源36は、42で制御モジュール40に通信可能に接続され得る。制御モジュール40は、検出器32について本明細書に記載された機能を実行するように構成される(例えば、プログラムされる)ハードウェア(例えば、1つまたは複数のマイクロプロセッサ及びメモリ)、ソフトウェアまたはその両方を含み得る。一例として、制御モジュール40は、BACnetなどであるがこれに限定されない、ホスト検出器システム24と同じ通信プロトコルで構成され得る。制御モジュール40はさらに、コントローラ28が各検出器32の位置を知ることを可能にするために、全地球測位システム(GPS)受信機を含み得る。追加的または代替的に、コントローラ28は、ローカルエリア無線ネットワークにおける三角測量を利用して、各検出器32の位置を特定することができる。別の代替案として、検出器32の位置を手動でコントローラ28に入力することができる。
【0047】
光源36は、制御モジュール40が、オフ/オン、光強度の変化(電力またはエネルギ密度)、光波長の変化及び/またはパルス周波数の変化に関して光源36の動作を制御することができるように、制御モジュール40と通信可能に接続されている。一例として、光源36は、ある波長で、または制御された方法で変更され得る波長範囲にわたって光ビームを放出することができる発光ダイオードまたはレーザである。さらに、各波長では、光の強度及び/またはパルス周波数は制御可能な方法で変更することができる。例えば、制御モジュール40は、光源36を制御することによって、波長、強度及び/またはパルス周波数の範囲にわたって検査対象をスキャンすることができる。別の例では、1つまたは複数の光源36は、250nm~532nm、400nm~1100nmまたは900nm~25000nmの波長範囲の光を放出する。波長範囲は、フィルタによって調整することができるか、または光源36を選択して、波長範囲内に入る100nm以下のスペクトル幅を有する光を生成することができる。光源を制御して、標的種に一致する複数の個別の波長を生成し、感度と選択性を向上させることもできる。本明細書で使用される場合、「光」は、可視スペクトルの波長ならびに近赤外線及び近紫外線の領域を指す場合がある。
【0048】
各光センサ38は、44で制御モジュール40に通信可能に接続されている。各光センサ38は、光ビームB1と検査対象との相互作用に応答してセンサ信号を放出するように動作可能であり、これは、図面ではAで表される。光センサ38は、フォトダイオード、バイポーラフォトトランジスタ、感光性電界効果トランジスタなどであるが、これらに限定されない固体センサであり得る。光センサ38は、光ビームB1と検査対象Aとの相互作用からの受信散乱光S1に応答する。センサ信号は、光センサ38によって受信される散乱光S1の強度に比例する。
【0049】
センサ信号は、制御モジュール40のメモリに保存され、及び/または送信機46を介してホスト検出システム24のコントローラ28に送信され得る。制御モジュール40、コントローラ28、制御モジュール40とコントローラ28との両方、またはその組み合わせは、散乱光の強度に基づいて、危険物質が検査対象中に存在するかどうかを判定することができる。光源36がある波長範囲にわたってスキャンすることができる場合、制御モジュール40、コントローラ28、制御モジュール40とコントローラ28との両方またはその組み合わせは、波長範囲にわたる散乱光のスペクトルから汚染物質の化学的同一性をさらに判定し得る。これらの2つの判定は、本明細書では、それぞれ、存在判定及び同一性判定と呼ばれ得る。
【0050】
存在の判定は、センサ信号の強度を分析することによって行うことができる。例えば、物質が存在しない場合、センサ信号は低くなる。これは、ベースラインまたはバックグラウンド信号と見なされ得る。物質が存在し、光を散乱させると、センサ信号はベースライン信号と比較して増加する。物質の質量が多いほど散乱が大きくなり、センサ信号が比例して増加する。所定の閾値を超える増加は、物質が存在する指標として役立つ。
【0051】
同一性の判定は、光ビームB1の波長範囲にわたりセンサ信号を分析することによって行うことができる。例えば、検査対象は波長範囲にわたってスキャンされ、強度対波長(または同等の単位)の時間スペクトルが収集される。異なる物質は、異なる波長の光の吸収及び散乱に関して異なる反応を示す。したがって、様々なタイプの汚染物質のスペクトル(ベースラインまたはバックグラウンドスペクトルを考慮に入れる)は異なり、制御モジュール40及び/またはコントローラ28のメモリに存在し得るスペクトルライブラリまたはデータベースとスペクトルを比較によって、汚染物質のタイプを識別するためのシグネチャとして使用することができる。このようにして、これらに限定されないが、カルボニル、シラン、シアネート、一酸化炭素及び炭化水素などの物質の化学的同一性を判定することができる。
【0052】
制御モジュール40はまた、送信機46とのアドホック通信機能(例えば、アドホックwifi、独自の無線プロトコルもしくはBluetooth、またはそれらの組み合わせなど)のために構成することができる。アドホック機能は、検出器32内の処理リソースを利用して、他の検出器32からのデータを集合する。集合されたデータは、検出器32のアラーム判定を確認するために評価される。一例では、生体粒子の進化プルームは、検出器32によって検出されるが、周辺の検出器32によっては検出されない。信頼度の低いアラームが発行される場合がある(つまり、低いアラーム)。より多くの検出器32が生体粒子の進化プルームを検出するにつれて、アラームの信頼性が高まり、アラームレベルが上昇し、結果として高いアラームが生じる。アラームレベルは、どの応答または通知がトリガされるかを示している場合がある。アラームレベルが低い場合、警備員に通知するか、またはHVACシステムを自動的に変更してエリアを換気する場合がある。高いアラーム応答は、建物、エリアまたは部屋の避難通知を開始する場合がある。例えば、アドホック通信機能は、検出器32が、ホスト検出システム24のコントローラ28、他の検出器32、またはスタンドアロンシステムの場合は別のコントローラとの通信を可能にする。
【0053】
さらなる例では、検出器32も低電力方式を採用している。一例では、低電力方式では、検出器32は低いサンプルレートで動作する。例えば、サンプルレートでは、10~60秒ごとに1つのサンプルの読み取りが必要になる場合がある。検出器32のうちの1つが標的種の存在を検出した場合、検出器32は、より高いサンプルレートでのサンプリングを応答可能なように開始することができる。高サンプルレートの例は、1秒あたり1回のサンプリングである。その検出器32が依然として高サンプリングレートで標的種の存在を検出し続ける場合、検出器32は他の検出器32にアラーム信号を送信することができる。アラーム信号は、他の検出器32をトリガして高サンプルレートになり、標的種の存在を確認し、標的種が存在する場所に関する情報を提供するのに役立つ。1つの追加の例では、全ての検出器32が高サンプルレートになるのではなく、最も近い検出器32検出器のみが高サンプルレートになるため、少なくとも1つまたは2つのリモート検出器32は高サンプルレートにならない。
【0054】
別の例では、検出器32は、データ統合を使用して感度を高めるために使用される。例えば、検出器32のうちの1つが標的種の存在を検出するが、標的種の濃度が個々の検出器のアラーム閾値を超えない場合、その検出器32は、他の検出器、または少なくとも近くの検出器32をトリガし、高サンプルレートになり得る。これは、次に、より多くの検出器32からより多くのデータを収集することによって感度を高める。次に、高サンプルレートで動作する複数の検出器32は、個々の検出器のアラーム閾値を超えない濃度で標的種の存在を検出することもできる。コントローラ28は、この状態を監視し、それが発生した場合にアラームをトリガする。
【0055】
図4は、携帯型補助ハザード検出器132の別の例を示す。本開示において、同様の参照番号は、適切な場合には同様の要素を示し、その100または倍数を追加した参照番号は、対応する要素の同じ特徴及び利点を組み込むと理解される修正された要素を示す。この例では、検出器132は、142で制御モジュール40と通信可能に接続された追加の光源136と、144で制御モジュール40と通信可能に接続された追加の光センサ138とを含む。
【0056】
光源136は、動作時に光ビームB2を放出し、これは、光源36からの光ビームB1の角度とは異なる角度で検出器132に向けられ得る。一例として、光源136は、ある波長で、またはある波長範囲にわたって光ビームを放出することができる発光ダイオードまたはレーザである。さらに、各波長では、光の強度及び/またはパルス周波数は制御された方法で変更することができる。例えば、制御モジュール40は、光源を制御することによって、波長、強度及び/またはパルス周波数の範囲にわたって検査対象をスキャンすることができる。別の例では、光源136は、生化学的検出及び蛍光分光法を可能にする紫外線を生成することができる。
【0057】
光センサ138は、フォトダイオード、バイポーラフォトトランジスタ、感光性電界効果トランジスタなどであるがこれらに限定されない固体センサであり得る。光センサ138は、光ビームB2と検査対象Aとの相互作用からの受信前方散乱光S2に応答する。センサ信号は、光センサ138によって受信される散乱光S2の強度に比例する。光センサ138はまた、特定の波長帯域の光のみを受信するような波長依存性を有することができる。この機能は、光センサ138の感知要素に組み込まれ得るか、あるいは、フィルタを光センサ138の前に配置することができる。例えば、蛍光測定の場合、光は波長範囲Aで放出されるが、光センサ138は、波長範囲Bの光のみを検出することができ、これは範囲Aと重なる場合と重ならない場合がある。
【0058】
制御モジュール40、コントローラ28またはその両方は、光センサ38、138からのセンサ信号を比較して、検査対象に関する情報を識別するか、または故障状態を識別するように構成され得る。例えば、光源36、136は、危険物質の識別を強化するために、異なる波長または周波数で動作され得る。一例として、光散乱の単一のシグネチャスペクトルではなく、光源136及び光センサ138は、異なる周波数、波長、周波数範囲または波長範囲で第2のシグネチャスペクトルを提供することができ、これらは、危険物質を区別するために使用され得る。危険物質は、それ以外の場合は同様のスペクトルを有し、煙粒子、粉塵及び蒸気を区別するか、または粒子サイズを決定し得る。
【0059】
さらなる例では、センサ信号を使用して、危険物質ではない光ビームB1、B2のラインに障害物(例えば、手)がある障害状態を識別することができる。例えば、そのような障害物は、光センサ138への前方散乱を完全にまたはほぼ完全に遮断し得るが、光センサ38への散乱を生成し得る。この状況を特定し、制御モジュール40、コントローラ28またはその両方で障害状態をトリガして、危険物質ではなく障害物としての読み取りを無視することができる。
【0060】
図5は、携帯型補助ハザード検出器232の別の例を示す。この例では、検出器232は、ビームスプリッタ50及び表面プラズモンセンサ52を含む。ビームスプリッタ50は、光ビームB1を第1及び第2の二次光ビームB3及びB4に分割するように動作可能である。第1の二次光ビームB3は、表面プラズモンセンサ52に向けられ、第2の光ビームB4は、検出器232の外部に向けられる。表面プラズモンセンサ52は、54で制御モジュール40に通信可能に接続され、光ビームB3と表面プラズモンセンサ52との相互作用に応答してセンサ信号を放出するように動作可能である。上記の例と同様に、光センサ38は、光ビームB4と検査対象Aとの相互作用から受信した前方散乱光S1に応答する。
【0061】
図6は、表面プラズモンセンサ52の一例を示す。表面プラズモンセンサ52は、第1の面56a上に金または銀のコーティングなどの薄い金属フィルム58でコーティングされたプリズム56を含む。プリズム56は、光ビームB3を光センサ60に反射するように配置されている。
【0062】
金属フィルム58は検査対象に曝される。光ビームB3は、第2の面56bを通ってプリズム56に入射し、入射角R1で、プリズム56と金属フィルム58との界面に向かって伝播する。光ビームB3は、共鳴角R2で界面を反射する。光ビームB3は、金属フィルム58の表面プラズモンポラリトンを励起する。検査対象が危険物質を含む場合、その物質は金属フィルム58の表面と相互作用し、それによってプラズモン応答及び結果として生じる共鳴角R2を局所的に変化させる。光センサ60は、共鳴角R2を監視し、センサ信号を制御モジュール40に放出するために使用される。理解されるように、表面プラズモン共鳴及びデバイスは既知であり、他のタイプの表面プラズモンセンサ及び技術を使用することができる。
【0063】
表面プラズモンセンサ52は、危険物質が検査対象中に存在するかどうかについて、光センサ38が行った誤った判定を独立して識別するのに役立ち得る。一例として、表面プラズモンセンサ52のセンサ信号がバックグラウンド信号を上回る閾値を超える場合、危険物質が存在するという肯定的な存在判定がなされる。次に、この肯定的な存在判定を、光センサ38のセンサ信号が行った存在判定と比較して、障害があるかどうかを識別することができる。光センサ38からの否定的な存在判定があり、表面プラズモンセンサ52からの肯定的な存在判定がある場合、障害がトリガされる可能性がある。光センサ38からの肯定的な存在判定があるが、表面プラズモンセンサ52からの否定的な存在判定がある場合、障害をトリガし、通知信号を生成することができる。したがって、表面プラズモンセンサ52は、あるレベルの冗長性を光センサ38に提供する。
【0064】
さらなる例では、表面プラズモンセンサ52はまた、光センサ38及び表面プラズモンセンサ52にわたる別個のシグネチャに基づいて、危険物質の化学的同一性を区別するのに役立つことができる。例えば、硫化水素(H2S)などの危険物質は、光センサ38及び表面プラズモンセンサ52で類似しているが同一ではない応答を生成する、類似した化学類似体を有する場合がある。類似体を区別するために、光センサ38及び表面プラズモンセンサ52にわたる応答がコンパイルされて、各類似体のシグネチャサムプリントが生成される。次に、類似体のシグネチャをシグネチャのライブラリと比較して、危険物質がどの類似体であるかを特定することができる。追加的または代替的に、光センサ38及び表面プラズモンセンサ52にわたる応答は、類似体を識別及び区別するための基盤を構築するために、制御モジュール40またはホスト検出システム24のニューラルネットワークに入力することができる。
【0065】
次の例は、検出器32/132/232の制御ストラテジを示す。本例は、検出器32のみに言及するが、検出器132/232にも適用可能であることを理解されたい。程度の差はあれ個別に機能する単一の検出器または検出器のグループとは異なり、検出器32は、早期検出及び脅威イベントの応答性を強化し得るグループでの制御ストラテジを提供する。
【0066】
一例では、検出器32は、検出された種を識別及び追跡するためのグループ、すなわち検出ネットワークとして機能する。例えば、検出器32のうちの1つが標的種(例えば、煙)を識別する場合、それに応答して、コントローラ28は、他の検出器32も標的種を識別したかどうかを判定することができる。他の検出器32が標的種を識別しない場合、標的種の存在の信頼レベルは低い。その結果、コントローラ28は、アクションを全く行わないか、またはシステムアラーム設定に応じて、低レベルのアラームをトリガする可能性がある。しかしながら、1つまたは複数の追加の検出器32も標的種を識別する場合、標的種が存在するという信頼レベルが高くなる。それに応答して、コントローラ28は、アラームをトリガし、及び/または応答アクションを行うことができる。アクションの例は、建物または場所インフラのHVACシステムで1つまたは複数の変更の命令である。例えば、標的種の拡散能力を低下させるために、ダンパを開いた状態から閉じた状態に移動させることができる、及び/またはファン及びコンプレッサを非アクティブにすることができる。
【0067】
さらなる例では、検出器32はグループとして使用され、1つは高濃度限度に基づいており、もう1つは検出器32の傾向検出に基づいている、2プロング検出ストラテジを提供する。第1の手法(高濃度)では、検出器32のいずれか1つに標的種の濃度に対するアラームレベルがある。検出器32のいずれか1つでレベルを超えると、コントローラ28はアラームをトリガする。限定されるわけではないが、アラームはセンサ信号から設定され得る。例えば、センサ信号の強度は、領域22における標的種の濃度を表す。コントローラ28は、センサ信号を統計的に集合し、全ての検出器32にわたる分布を生成する。高濃度のアラームレベルは、分布の平均値(例えば、分布の統計標準偏差の倍数)に関して設定することができる。したがって、検出器32のいずれか1つでの標的種の濃度がアラーム限度を超える場合、コントローラ28はアラームをトリガするであろう。
【0068】
第2の手法(傾向検出)では、コントローラ28は、検出器の2つ以上にわたる標的種の濃度の増加を探す。この手法では、脅威イベントは傾向に基づいて識別されるが、濃度が高レベルに到達する前に、上記の第1の手法でアラームをトリガするだろう。例えば、コントローラ28は、検出器32のうちの1つでの濃度の増加を識別し、その事前設定された期間内に、1つまたは複数の他の検出器32での濃度の増加を識別し得る。したがって、ある期間にわたって、コントローラ28は、濃度が増加している検出器32の数の漸進的な増加を識別する。期間は変化する可能性があるが、一例では、約1秒から約1000秒ほどの比較的短い時間であり得、これは、比較的急速に展開/拡散する脅威イベントに対処するように設計されている。
【0069】
濃度が増加している(ただし、上記のアラーム限度を下回っている)検出器32の数においてこの漸進的な増加を識別すると、コントローラ28は、反応を示さないか、低レベルのアラームをトリガするか、または高レベルのアラームをトリガすることができる。一例では、この応答の決定木は、濃度が増加している検出器32の数に基づいている。例えば、単一の検出器32のみの濃度が増加している場合、コントローラ28は何のアクションも行わない。2~4個の検出器の濃度が増加している場合、コントローラ28は、低レベルのアラームをトリガする。5個以上の検出器の濃度が増加している場合、コントローラ28は高レベルのアラームをトリガする。理解されるように、これらの様々な応答をトリガする検出器32の数は変えることができる。言い換えれば、コントローラ28は、上記の第1の手法のアラーム限度未満である、濃度が増加している検出器32の数に依存する応答を選択するように構成またはプログラムすることができる。
【0070】
追加の第3の手法では、上記の手法と共に、または上記の手法のいずれかの代わりに使用することができる。この第3の手法では、上記の第1の手法でアラームをトリガするだろう高レベルに濃度が到達する前に、傾向にも基づいて識別されるという点では第2の手法と部分的に類似している。第3の手法では、コントローラ28は、検出器32のセンサ信号の統計集合から得られた分布の平均値において、経時的な1つまたは複数の特定の傾向を探す。最も一般的には、この手法は動作の遅いイベントの区別を目的としているため、この期間は第2の手法の上記の期間よりも長くなるだろう。例えば、コントローラ28は、分布の平均及び変動性が経時的に(例えば、約15分を超え、最大では数日または数週間までの期間にわたって)変化するかどうかを識別し、結果に基づいて、異なるタイプのイベントを区別する。
【0071】
次のシナリオは、第3の手法の2つの例を示しており、第1の例は非脅威イベントであり、第2の例は脅威イベント向けである。空中の花粉の増加は非脅威イベントであるが、アラームのトリガを回避するよう、このタイプのイベントを識別することができない他のシステムでは、花粉が検出されてアラームが鳴る(これは脅威の誤表示になるだろう)。花粉レベルの増加は、ノード36間の微粒子濃度の緩やかな増加を引き起こす場合があり、これは、期間にわたって、分布の平均値を増加させる。しかしながら、花粉は全てのノード36で空気中に浸透しているため、分布の変動は一定のままであるか、または期間中にほとんど変化しない。この場合、コントローラ28は応答アクションを行わない。
【0072】
図7は、そのようなイベント及び分布の平均値を増加させる影響をグラフで示している。図13は、微粒子濃度に対する集合センサ出力の分布70及び72を示している。分布70は、非脅威の状態、すなわち、バックグラウンド状態を表す。分布72は後の集合を表し、分布70と比較して右にシフトされる。右へのシフトは、(ピークでの)平均値の増加を示す。分布の幅は変動性を表す。ここで、分布70及び72の両方が比較的狭いベルカーブであるため、分布70及び72の変動性は実質的に同一である。
【0073】
第3の手法の例を示す第2のシナリオは、動作の遅い脅威イベントに関連している。緩やかな燻煙燃焼イベントまたは生物剤の放出もまた、ノード36間の微粒子濃度に緩やかな増加を引き起こし得る。しかしながら、このタイプのイベントは、分散に異なる影響を及ぼす。花粉のように、燃焼または生物剤からの微粒子は、期間中の分布の平均値を増加させる。しかし、微粒子が燻煙の位置から放出されるか、または生物剤が放出ポイントから放出されるため、ノード36間の濃度は異なる可能性が高い。現場または放出ポイントに近いノード36は、濃度が高くなる可能性がある。その結果、分布の平均値が増加するだけでなく、分布の変動も増加する。この場合、コントローラ38は、平均値の増加及び変動性の増加の識別に応答してアラームをトリガする。このようにして、コントローラ38は、平均を増加させるが分布の変動性を変化させない花粉レベルの増加などの無害なイベントと、平均を増加させ、分布の変動性も増加させる燻煙燃焼または生物剤散布などの潜在的な脅威イベントとを区別する。
【0074】
図7は、平均及び変動性の増加を示す。図13は、燻煙燃焼または生物剤放出イベントを表す、集合センサ出力対微粒子濃度の分布74を示す。分布74は分布70よりも後の集合を表し(バックグラウンド状態)、分布70と比較して右にシフトされる。右へのシフトは、(ピークでの)平均値の増加を示す。分布70は狭いベルカーブであり、分布74は広いベルカーブであるため、分布70及び74の変動性は実質的に異なる。
【0075】
別の例では、検出器32の検出ネットワークを使用して、識別された標的種が移動しているか拡散しているかを識別することができる。例えば、標的種のクラウドは、いくつかの検出器32を囲み得るが、他の検出器32を囲むことはできない。コントローラ28は、瞬間的に、いくつかの検出器32に標的種が存在するが、他の検出器には存在しないことを識別する。後で、コントローラ28は、以前に標的種を識別したのと同じ検出器32に加えて、標的種を識別する追加の検出器32があることを識別する。このパターンから、特に(しかし、それだけではないが)標的種の新たな追加の読み取り値を有する検出器32が、以前に標的種を検出した検出器32に近接している場合、コントローラ28は、標的種が広がっていると判定する。同様に、後で、コントローラ28が、代わりに、標的種を識別する追加の検出器32があるが、標的種を識別した以前の検出器32がもはや標的種を識別しないことを識別する場合、コントローラ28は、標的種は動いているが拡大していないと判定する。
【0076】
さらなる例では、検出器32は、波長範囲にわたって検査対象をスキャンして、種の化学的同一性を判定するために使用することができる強度対波長の時間スペクトルを提供することができる。コントローラ28は、異なる検出器32からのスペクトルを使用して、種を区別し、同じまたは異なる種が各検出器32で検出されるかどうかを識別することができる。コントローラ28はまた、種の存在を検証するために、異なる検出器32からのスペクトルを使用することができる。例えば、1つの検出器32が種Aを検出する場合、コントローラ28は、別の検出器32も種Aを検出しない限り、種Aの検出が偽陽性であると判定することができる。
【0077】
別の例では、検出器32の動作は、1つまたは複数の検出器32によって検出された標的種の存在に基づいて修正され得る。例えば、検出器32は、検出器32が単一の波長または波長範囲を使用して、標的種が検査対象中に存在するかどうかを単純に検出する第1の存在モードで動作することができる。1つまたは複数の検出器32が存在を検出すると、コントローラ28は、検出器32が波長範囲にわたって検査対象をスキャンして種の化学的同一性を判定する第2の識別モードで動作するように検出器32に命令することができる。
【0078】
図示の例には特徴の組み合わせが示されているが、本開示の様々な実施形態の利点を実現するためにそれらの全てを組み合わせる必要はない。言い換えれば、本開示の一実施形態に従って設計されたシステムは、必ずしも、図面のいずれか1つに示される特徴の全て、または図面に概略的に示される部分の全てを含むとは限らない。さらに、1つの例示的な実施形態の選択された特徴は、他の例示的な実施形態の選択された特徴と組み合わせることができる。
【0079】
前述の説明は、実際には、制限的ではなく例示的なものである。必ずしも本開示から逸脱するものではない、開示される実施例に対する変形及び修正が、当業者に明らかとなり得る。本開示に与えられる法的保護の範囲は、以下の特許請求の範囲を検討することによってのみ決定することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7