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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/49 20070101AFI20240109BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20240109BHJP
【FI】
H02M7/49
H02M7/48 M
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020213876
(22)【出願日】2020-12-23
(65)【公開番号】P2022099845
(43)【公開日】2022-07-05
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】森川 竜一
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-022313(JP,A)
【文献】特開2015-050851(JP,A)
【文献】特開2017-103919(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/49
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された複数の変換器を有するアーム部を有し、前記複数の変換器の動作により、電力の変換を行う主回路部と、
前記主回路部の動作を制御する制御装置と、
を備え、
前記複数の変換器のそれぞれは、
一対の接続端子と、
複数のスイッチング素子と、
前記複数のスイッチング素子に対して並列に接続された電荷蓄積素子と、
前記電荷蓄積素子の電圧を検出する電圧検出器と、
を有し、前記一対の接続端子を介して直列に接続されるとともに、前記複数のスイッチング素子のスイッチングにより、前記電荷蓄積素子の電圧を前記一対の接続端子間に出力する出力状態と、前記一対の接続端子間を導通させたバイパス状態と、前記複数のスイッチング素子をオフ状態とした停止状態と、を切り替え可能であり、
前記主回路部は、停止指令に基づく運転停止期間において、前記電圧検出器の検出結果を基に、前記複数の変換器のうち、前記電荷蓄積素子の電圧の大きさの大きい順番に所定数の前記変換器を前記バイパス状態とし、残りの前記変換器を前記停止状態とする電力変換装置。
【請求項2】
前記主回路部は、前記運転停止期間において、前記電荷蓄積素子の電圧の大きさの順番が変化した場合に、前記バイパス状態とする前記所定数の前記変換器を再選択する請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
直列に接続された複数の変換器を有するアーム部を有し、前記複数の変換器の動作により、電力の変換を行う主回路部と、
前記主回路部の動作を制御する制御装置と、
を備え、
前記複数の変換器のそれぞれは、
一対の接続端子と、
複数のスイッチング素子と、
前記複数のスイッチング素子に対して並列に接続された電荷蓄積素子と、
前記電荷蓄積素子の電圧を検出する電圧検出器と、
を有し、前記一対の接続端子を介して直列に接続されるとともに、前記複数のスイッチング素子のスイッチングにより、前記電荷蓄積素子の電圧を前記一対の接続端子間に出力する出力状態と、前記一対の接続端子間を導通させたバイパス状態と、前記複数のスイッチング素子をオフ状態とした停止状態と、を切り替え可能であり、
前記主回路部は、停止指令に基づく運転停止期間において、前記電圧検出器の検出結果を基に、前記複数の変換器のうち、前記電荷蓄積素子の電圧の大きさの小さい順番に少なくとも所定数の前記変換器を前記停止状態とし、前記電荷蓄積素子の電圧の大きさの大きい変換器については前記バイパス状態とする電力変換装置。
【請求項4】
直列に接続された複数の変換器を有するアーム部を有し、前記複数の変換器の動作により、電力の変換を行う主回路部と、
前記主回路部の動作を制御する制御装置と、
を備え、
前記複数の変換器のそれぞれは、
一対の接続端子と、
複数のスイッチング素子と、
前記複数のスイッチング素子に対して並列に接続された電荷蓄積素子と、
前記電荷蓄積素子の電圧を検出する電圧検出器と、
を有し、前記一対の接続端子を介して直列に接続されるとともに、前記複数のスイッチング素子のスイッチングにより、前記電荷蓄積素子の電圧を前記一対の接続端子間に出力する出力状態と、前記一対の接続端子間を導通させたバイパス状態と、前記複数のスイッチング素子をオフ状態とした停止状態と、を切り替え可能であり、
前記主回路部は、停止指令に基づく運転停止期間において、前記電圧検出器の検出結果を基に、前記複数の変換器のうち、前記電荷蓄積素子の電圧の大きさの小さい変換器については前記停止状態とし、前記運転停止期間に切り替わったタイミングから所定時間が経過するまでの期間において、前記電荷蓄積素子の電圧の大きさの大きい前記変換器を前記バイパス状態とし、前記所定時間が経過した後は、前記複数の変換器を全て前記停止状態とする電力変換装置。
【請求項5】
前記主回路部は、前記アーム部に流れる電流を検出する電流検出器をさらに有する請求項1~4のいずれか1つに記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記主回路部は、前記アーム部に流れる電流の大きさが閾値以上である場合に、前記電荷蓄積素子の電圧の大きさの大きい前記変換器を前記バイパス状態とし、前記アーム部に流れる電流の大きさが前記閾値未満である場合には、前記複数の変換器を全て前記停止状態とする請求項5記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記主回路部は、前記アーム部に流れる電流の振幅の大きさが閾値以上である場合に、前記電荷蓄積素子の電圧の大きさの大きい前記変換器を前記バイパス状態とし、前記アーム部に流れる電流の振幅の大きさが前記閾値未満である場合には、前記複数の変換器を全て前記停止状態とする請求項5記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の変換器を直列に接続した電力変換装置がある。各変換器は、複数のスイッチング素子と、複数のスイッチング素子に対して並列に接続された電荷蓄積素子と、を有する。
【0003】
上記のように構成された電力変換装置において、電力変換装置につながる負荷や系統の異常、電力変換装置の過電流などにより、電力変換装置を急停止させる場合がある。電力変換装置を急停止させる場合には、各変換器の全てのスイッチング素子をオフ状態にする操作が行われる。こうした操作は、例えば、ゲートブロック操作などと呼ばれている。
【0004】
各変換器の全てのスイッチング素子をオフ状態に切り替え、電力変換装置を急停止させると、誘導性の負荷や系統のインダクタンス成分、電力変換装置につながるトランスのインダクタンス成分の影響などにより、電力変換装置に流れる電流は、徐々に減衰していき、最終的にゼロとなる。この減衰過程の電流は、各変換器の電荷蓄積素子に流れ込み、電荷蓄積素子の電圧を大きくしてしまう可能性がある。
【0005】
電荷蓄積素子の電圧が大きくなりすぎると、電力変換装置の運転を再開する際などにも、その変換器が運転不能となってしまう。さらに、条件によっては、電荷蓄積素子の電圧の大きさにより、その変換器の電荷蓄積素子やスイッチング素子が故障してしまう可能性もある。
【0006】
このため、複数の変換器を直列に接続した電力変換装置においては、運転を急停止した際にも、各変換器の電荷蓄積素子の電圧が大きくなることを抑制できるようにすることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-12726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の実施形態は、運転を急停止した際にも、直列に接続した複数の変換器の電荷蓄積素子の電圧が大きくなることを抑制できる電力変換装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態によれば、直列に接続された複数の変換器を有するアーム部を有し、前記複数の変換器の動作により、電力の変換を行う主回路部と、前記主回路部の動作を制御する制御装置と、を備え、前記複数の変換器のそれぞれは、一対の接続端子と、複数のスイッチング素子と、前記複数のスイッチング素子に対して並列に接続された電荷蓄積素子と、前記電荷蓄積素子の電圧を検出する電圧検出器と、を有し、前記一対の接続端子を介して直列に接続されるとともに、前記複数のスイッチング素子のスイッチングにより、前記電荷蓄積素子の電圧を前記一対の接続端子間に出力する出力状態と、前記一対の接続端子間を導通させたバイパス状態と、前記複数のスイッチング素子をオフ状態とした停止状態と、を切り替え可能であり、前記主回路部は、停止指令に基づく運転停止期間において、前記電圧検出器の検出結果を基に、前記複数の変換器のうち、前記電荷蓄積素子の電圧の大きさの大きい順番に所定数の前記変換器を前記バイパス状態とし、残りの前記変換器を前記停止状態とする電力変換装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
運転を急停止した際にも、直列に接続した複数の変換器の電荷蓄積素子の電圧が大きくなることを抑制できる電力変換装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施形態に係る電力変換装置を模式的に表すブロック図である。
図2】変換器を模式的に表すブロック図である。
図3】制御装置を模式的に表すブロック図である。
図4図4(a)~図4(h)は、電力変換装置の動作の一例を模式的に表すグラフである。
図5】第2の実施形態に係る変換器を模式的に表すブロック図である。
図6】第2の実施形態に係る制御装置を模式的に表すブロック図である。
図7】第3の実施形態に係る制御装置を模式的に表すブロック図である。
図8】第4の実施形態に係る制御装置を模式的に表すブロック図である。
図9】第5の実施形態に係る制御装置を模式的に表すブロック図である。
図10】第6の実施形態に係る制御回路を模式的に表すブロック図である。
図11】電力変換装置の変形例を模式的に表すブロック図である。
図12】電力変換装置の変形例を模式的に表すブロック図である。
図13】電力変換装置の変形例を模式的に表すブロック図である。
【0012】
以下に、各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る電力変換装置を模式的に表すブロック図である。
図1に表したように、電力変換装置10は、主回路部12と、制御装置14と、を備える。電力変換装置10は、例えば、直流送電システムに用いられる。電力変換装置10は、直流送電システムにおいて、交流電力系統2及び一対の直流送電線3、4に接続される。
【0014】
直流送電システムは、例えば、変圧器6を有する。電力変換装置10の主回路部12は、変圧器6を介して交流電力系統2に接続される。交流電力系統2の交流電力は、三相交流電力である。より詳しくは、対称三相交流電力である。変圧器6は、交流電力系統2の三相交流電力を主回路部12に対応した交流電力に変換する。変圧器6は、主回路部12に合わせて三相交流電力の各相の実効値を変化させる。変圧器6は、三相変圧器である。変圧器6は、必要に応じて設けられ、省略可能である。主回路部12には、交流電力系統2の三相交流電力を直接供給してもよい。
【0015】
電力変換装置10は、交流電力系統2から供給された三相交流電力を直流電力に変換し、変換後の直流電力を直流送電線3、4に供給する。また、電力変換装置10は、直流送電線3、4から供給された直流電力を三相交流電力に変換し、変換後の三相交流電力を交流電力系統2に供給する。このように、電力変換装置10は、交流から直流への交直変換、及び、直流から交流への交直変換を行う。
【0016】
例えば、直流送電線3は、直流電力の高圧側の送電線であり、直流送電線4は、直流電力の低圧側の送電線である。電力変換装置10は、直流送電線3側が高圧、直流送電線4側が低圧となるように、変換後の直流電力を直流送電線3、4に出力する。
【0017】
主回路部12は、交流電力系統2と各直流送電線3、4との間に設けられる。主回路部12は、三相交流電力から直流電力への変換、及び、直流電力から三相交流電力への変換を行う。主回路部12は、例えば、直列に接続された複数の変換器を有するマルチレベル電力変換器である。主回路部12は、例えば、MMC(Modular Multilevel Converter)型の電力変換器である。MMC型の主回路部12は、直列に接続された複数の変換器を有する。各変換器は、ハーフブリッジ接続又はフルブリッジ接続された複数のスイッチング素子と、各スイッチング素子に並列に接続された電荷蓄積素子と、を有する。主回路部12は、複数の変換器の動作により、電力の変換を行う。主回路部12は、例えば、複数の変換器の各スイッチング素子のスイッチングにより、交直変換を行う。
【0018】
制御装置14は、主回路部12に接続されている。制御装置14は、各スイッチング素子のオン・オフを制御することにより、主回路部12による三相交流電力から直流電力への変換、及び、直流電力から三相交流電力への変換を制御する。
【0019】
主回路部12は、第1及び第2の一対の直流端子20a、20bと、第1~第3の3つの交流端子21a~21cと、第1~第6の6つのアーム部22a~22fと、を有する。
【0020】
第1直流端子20aは、高圧側の直流送電線3に接続される。第2直流端子20bは、低圧側の直流送電線4に接続される。これにより、主回路部12によって変換された直流電力が直流送電線3、4に供給されるとともに、直流送電線3、4から供給された直流電力が主回路部12に入力される。
【0021】
第1アーム部22aは、第1直流端子20aに接続される。第2アーム部22bは、第1アーム部22aと第2直流端子20bとの間に接続される。第1アーム部22a及び第2アーム部22bは、各直流端子20a、20bの間に直列に接続される。
【0022】
第3アーム部22cは、第1直流端子20aに接続される。第4アーム部22dは、第3アーム部22cと第2直流端子20bとの間に接続される。第3アーム部22c及び第4アーム部22dは、第1アーム部22a及び第2アーム部22bに対して並列に接続される。
【0023】
第5アーム部22eは、第1直流端子20aに接続される。第6アーム部22fは、第5アーム部22eと第2直流端子20bとの間に接続される。すなわち、第5アーム部22e及び第6アーム部22fは、第1アーム部22a及び第2アーム部22bに対して並列に接続されるとともに、第3アーム部22c及び第4アーム部22dに対して並列に接続される。
【0024】
主回路部12では、第1アーム部22a及び第2アーム部22bによって第1レグLG1が構成され、第3アーム部22c及び第4アーム部22dによって第2レグLG2が構成され、第5アーム部22e及び第6アーム部22fによって第3レグLG3が構成される。すなわち、この例において、主回路部12は、3レグ、6アームの三相インバータである。第1アーム部22a、第3アーム部22c及び第5アーム部22eは、上側アームである。第2アーム部22b、第4アーム部22d及び第6アーム部22fは、下側アームである。このように、主回路部12は、複数のスイッチング素子によって構成される複数のアーム部及び複数のレグを有する。主回路部12は、例えば、2レグ、4アームの単相インバータなどでもよい。アーム部及びレグの数は、上記に限ることなく、任意の数でよい。
【0025】
第1アーム部22aは、直列に接続された複数の変換器UP1、UP2…UPMを有する。第2アーム部22bは、直列に接続された複数の変換器UN1、UN2…UNMを有する。第3アーム部22cは、直列に接続された複数の変換器VP1、VP2…VPMを有する。第4アーム部22dは、直列に接続された複数の変換器VN1、VN2…VNMを有する。第5アーム部22eは、直列に接続された複数の変換器WP1、WP2…WPMを有する。第6アーム部22fは、直列に接続された複数の変換器WN1、WN2…WNMを有する。
【0026】
但し、以下では、各変換器UP1、UP2…UPM、UN1、UN2…UNM、VP1、VP2…VPM、VN1、VN2…VNM、WP1、WP2…WPM、WN1、WN2…WNMをまとめて呼称する場合に、「変換器CEL」と称す。
【0027】
各アーム部22a~22fにおいて、M、M、M、M、M、Mは、直列接続された変換器CELの台数を表す。各アーム部22a~22fにおいて、直列接続される変換器CELの台数は、例えば、100台~120台程度である。但し、直列接続される変換器CELの台数は、これに限ることなく、任意の台数でよい。
【0028】
各アーム部22a~22fに設けられる変換器CELの台数は、実質的に同じである。例えば、多数の各変換器CELが接続される場合には、主回路部12の動作に影響のない範囲において、各アーム部22a~22fに設けられる変換器CELの台数が異なってもよい。例えば、1つのアーム部に100台の変換器CELを直列に接続する場合、別のアーム部に設ける変換器CELの台数は、1~2台異なってもよい。
【0029】
各アーム部22a~22fのそれぞれは、バッファリアクトル23a~23fと、複数の電流検出器24a~24fと、をさらに有する。また、電力変換装置10は、電圧検出部25をさらに有する。
【0030】
各バッファリアクトル23a~23fは、各アーム部22a~22fのそれぞれにおいて、各変換器CELに直列に接続される。第1アーム部22aのバッファリアクトル23aは、交流端子21aと第1アーム部22a及び第2アーム部22bとの接続点と変換器UP1との間に設けられる。第2アーム部22bのバッファリアクトル23bは、交流端子21aと第1アーム部22a及び第2アーム部22bとの接続点と変換器UN1との間に設けられる。第3アーム部22cのバッファリアクトル23cは、交流端子21bと第3アーム部22c及び第4アーム部22dとの接続点と変換器VP1との間に設けられる。第4アーム部22dのバッファリアクトル23dは、交流端子21bと第3アーム部22c及び第4アーム部22dとの接続点と変換器VN1との間に設けられる。第5アーム部22eのバッファリアクトル23eは、交流端子21cと第5アーム部22e及び第6アーム部22fとの接続点と変換器WP1との間に設けられる。第6アーム部22fのバッファリアクトル23fは、交流端子21cと第5アーム部22e及び第6アーム部22fとの接続点と変換器WN1との間に設けられる。
【0031】
電流検出器24aは、第1アーム部22aに設けられ、第1アーム部22aに流れる電流を検出する。すなわち、電流検出器24aは、第1アーム部22aのアーム電流を検出する。電流検出器24aは、図示を省略した配線などを介して制御装置14に接続されている。電流検出器24aは、検出した第1アーム部22aの電流値を制御装置14に入力する。これにより、制御装置14には、第1アーム部22aの電流値が入力される。
【0032】
以下同様に、電流検出器24bは、第2アーム部22bに流れる電流を検出し、検出した電流値を制御装置14に入力する。電流検出器24cは、第3アーム部22cに流れる電流を検出し、検出した電流値を制御装置14に入力する。電流検出器24dは、第4アーム部22dに流れる電流を検出し、検出した電流値を制御装置14に入力する。電流検出器24eは、第5アーム部22eに流れる電流を検出し、検出した電流値を制御装置14に入力する。電流検出器24fは、第6アーム部22fに流れる電流を検出し、検出した電流値を制御装置14に入力する。
【0033】
電圧検出部25は、交流電力系統2の各相の交流電圧(相電圧)を検出し、検出値を制御装置14に入力する。電圧検出部25は、変圧器6の一次側に接続してもよいし、二次側に接続してもよい。
【0034】
主回路部12では、第1アーム部22aと第2アーム部22bとの接続点、第3アーム部22cと第4アーム部22dとの接続点、及び、第5アーム部22eと第6アーム部22fとの接続点のそれぞれが、交流出力点となる。
【0035】
第1交流端子21aは、第1アーム部22aと第2アーム部22bとの接続点に接続される。第2交流端子21bは、第3アーム部22cと第4アーム部22dとの接続点に接続される。第3交流端子21cは、第5アーム部22eと第6アーム部22fとの接続点に接続される。各交流端子21a~21cは、例えば、変圧器6に接続される。
【0036】
各変換器CELは、信号線26を介して制御装置14と接続される。制御装置14は、信号線26を介して変換器CELに制御信号を入力することにより、変換器CELの動作を制御する。また、変換器CELは、例えば、変換器CELの制御及び動作保護に関する制御信号や保護信号を図示されていない別の信号線を介して制御装置14に入力する。
【0037】
図2は、変換器を模式的に表すブロック図である。
図2に表したように、変換器CELは、チョッパ回路40と、制御部42と、給電回路44と、電圧検出器46と、を有する。
【0038】
チョッパ回路40は、第1接続端子50aと、第2接続端子50bと、第1スイッチング素子51と、第2スイッチング素子52と、電荷蓄積素子55と、を有する。各スイッチング素子51、52のそれぞれは、一対の主端子と、制御端子と、を含む。制御端子は、一対の主端子間に流れる電流を制御する。各スイッチング素子51、52には、例えば、IGBTなどの自己消弧素子が用いられる。一対の主端子は、例えば、エミッタ及びコレクタであり、制御端子は、例えば、ゲートである。
【0039】
各スイッチング素子51、52は、一対の主端子間に電流を流せるようにするオン状態と、一対の主端子間に流れる電流を遮断するオフ状態と、を切り替える。オフ状態は、一対の主端子間に完全に電流が流れない状態に限ることなく、例えば、変換器CELの動作に影響の無い程度の微弱な電流が一対の主端子間に流れる状態でもよい。オフ状態は、換言すれば、一対の主端子間に電流を十分に小さくした状態である。各スイッチング素子51、52には、例えば、ノーマリオフ型の半導体素子が用いられる。
【0040】
第2スイッチング素子52の一対の主端子は、第1スイッチング素子51の一対の主端子に対して直列に接続される。電荷蓄積素子55は、第1スイッチング素子51及び第2スイッチング素子52に対して並列に接続される。電荷蓄積素子55は、例えば、コンデンサである。
【0041】
第1接続端子50aは、第1スイッチング素子51と第2スイッチング素子52との間に接続される。第2接続端子50bは、第1スイッチング素子51の第2スイッチング素子52に接続された主端子と反対側の主端子に接続される。
【0042】
また、第1スイッチング素子51には、一対の主端子に対して逆並列に整流素子51dが接続されている。整流素子51dの順方向は、第1スイッチング素子51の一対の主端子間に流れる電流の向きに対して逆向きである。同様に、第2スイッチング素子52には、一対の主端子に対して逆並列に整流素子52dが接続されている。整流素子51d、52dは、いわゆる還流ダイオードである。
【0043】
同一アーム部内の複数の変換器CELは、一対の接続端子50a、50bを介して直列に接続される。チョッパ回路40に対する電力の供給は、各接続端子50a、50bを介して行われる。チョッパ回路40において、各スイッチング素子51、52は、ハーフブリッジ接続されている。第1スイッチング素子51は、いわゆるローサイドスイッチであり、第2スイッチング素子52は、いわゆるハイサイドスイッチである。
【0044】
制御部42は、各スイッチング素子51、52のオン・オフを制御する。制御部42は、制御回路60と、駆動回路61、62と、を有する。制御回路60は、信号線26を介して制御装置14に接続されている。制御装置14は、各スイッチング素子51、52のオン・オフを制御するための制御信号を信号線26を介して制御回路60に送信する。制御回路60は、入力された制御信号に基づいて、各スイッチング素子51、52のオン・オフを切り替えるための駆動信号を駆動回路61、62に入力する。
【0045】
駆動回路61は、第1スイッチング素子51の制御端子に接続されている。駆動回路62は、第2スイッチング素子52の制御端子に接続されている。駆動回路61、62は、制御回路60から入力された駆動信号に基づいて、各スイッチング素子51、52のオン・オフを切り替える。これにより、制御装置14からの制御信号に応じて、各スイッチング素子51、52のオン・オフが制御される。制御装置14は、各変換器CEL毎に制御信号を生成し、各変換器CELのそれぞれの各スイッチング素子51、52のオン・オフを制御する。これにより、制御装置14は、主回路部12による電力の変換を制御する。なお、制御部42の構成は、上記に限ることなく、各スイッチング素子51、52のオン・オフを制御可能な任意の構成でよい。
【0046】
給電回路44は、チョッパ回路40の電荷蓄積素子55に対して並列に接続されている。給電回路44は、電荷蓄積素子55に蓄積された電荷を基に、制御部42の制御電源を生成し、生成した制御電源を制御部42に供給する。給電回路44は、例えば、制御回路60及び駆動回路61、62のそれぞれに対応する制御電源を生成し、制御回路60及び駆動回路61、62のそれぞれに対応する制御電源を供給する。制御部42は、給電回路44からの制御電源の供給に応じて動作する。
【0047】
電圧検出器46は、電荷蓄積素子55と電気的に接続されている。また、電圧検出器46は、例えば、信号線26を介して制御装置14と接続されている。電圧検出器46は、電荷蓄積素子55の電圧Vcを検出し、検出結果を制御装置14に入力する。
【0048】
図3は、制御装置を模式的に表すブロック図である。
図3に表したように、制御装置14は、制御指令生成部100と、停止指令生成部102と、停止制御部104と、インタロック部106と、遅延回路108と、電圧抑制制御部110と、切替器112と、を有する。なお、図3では、便宜的に、制御装置14のうち、1つの変換器CELに対する制御信号を生成する部分のみを図示している。
【0049】
制御指令生成部100は、複数の変換器CELの各スイッチング素子51、52のスイッチングを制御するための制御指令を生成する。制御指令生成部100は、1つの変換器CELに対し、第1スイッチング素子51のスイッチングを制御するための第1制御指令と、第2スイッチング素子52のスイッチングを制御するための第2制御指令と、を生成する。
【0050】
制御指令生成部100は、例えば、第1スイッチング素子51をオフ状態とする際に、第1制御指令をローレベルとし、第1スイッチング素子51をオン状態とする際に、第1制御指令をハイレベルとする。同様に、制御指令生成部100は、例えば、第2スイッチング素子52をオフ状態とする際に、第2制御指令をローレベルとし、第2スイッチング素子52をオン状態とする際に、第2制御指令をハイレベルとする。但し、各制御指令の状態と各スイッチング素子51、52の状態との関係は、上記に限定されるものではない。各制御指令は、各スイッチング素子51、52のスイッチングを制御可能な任意の指令でよい。
【0051】
制御指令生成部100は、例えば、主回路部12の交流の出力電圧の基準となる信号波(電圧基準)と、搬送波(キャリア信号)と、を基に、各変換器CELのそれぞれの第1制御指令及び第2制御指令を生成する。
【0052】
停止指令生成部102は、主回路部12の運転を停止させるための停止指令を生成する。停止指令は、換言すれば、主回路部12を運転させる運転期間と、主回路部12の運転を停止させる運転停止期間と、を切り替えるための指令である。停止指令は、例えば、ゲートブロック指令などと呼ばれる場合もある。停止指令生成部102は、例えば、電力変換装置10のシーケンス制御や保護制御を担う。停止指令生成部102は、主回路部12を運転や停止させる際に、停止指令を操作する。停止指令生成部102は、例えば、系統の事故などにより、アーム電流が過大になると、停止指令を操作し、アーム電流を減衰させて主回路部12を保護する。
【0053】
停止指令生成部102は、例えば、外部から入力されるアーム電流の検出値や指令などに基づいて停止指令の状態を操作し、主回路部12の運転を停止させる。換言すれば、停止指令生成部102は、外部からの入力に基づいて主回路部12を停止させる状態か否かを判定し、停止させる状態であると判定したことに応答して主回路部12の運転を停止させる停止指令を出力する。なお、停止指令は、制御装置14内で生成することなく、上位のコントローラなどの外部の装置から制御装置14に入力してもよい。
【0054】
停止指令生成部102は、例えば、主回路部12を運転させる際に、停止指令をローレーベルとし、主回路部12の運転を停止させる際に、停止指令をハイレベルとする。換言すれば、停止指令は、主回路部12を運転させる際に、ローレーベルとなり、主回路部12の運転を停止させる際に、ハイレベルとなる。但し、停止指令の状態と主回路部12の運転の状態との関係は、上記に限定されるものではない。
【0055】
停止制御部104には、制御指令生成部100から出力された各制御指令が入力されるとともに、停止指令生成部102から出力された停止指令が入力される。停止制御部104は、停止指令が主回路部12を運転させる状態の時にのみ、制御指令生成部100から入力された各制御指令を出力する。そして、停止制御部104は、停止指令が主回路部12の運転を停止させる状態の時には、各スイッチング素子51、52をオフ状態とする制御指令を出力する。
【0056】
停止制御部104は、例えば、1つの変換器CELに対して2つのAND回路104a、104bを有する。換言すれば、停止制御部104は、各変換器CELのそれぞれに対し、第1制御指令に対応するAND回路104aと、第2制御指令に対応するAND回路104bと、を有する。
【0057】
AND回路104aの一方の入力には、第1制御指令が入力される。AND回路104aの他方の入力には、NOTゲートを介して停止指令が入力される。AND回路104bの一方の入力には、第2制御指令が入力される。AND回路104bの他方の入力には、NOTゲートを介して停止指令が入力される。これにより、停止指令が、主回路部12を運転させるローレーベルの時には、各制御指令に応じた出力が、AND回路104a、104bから出力され、停止指令が、主回路部12の運転を停止させるハイレベルの時には、各スイッチング素子51、52をオフ状態とするローレベルが、AND回路104a、104bから出力される。
【0058】
停止制御部104の出力は、インタロック部106に入力される。インタロック部106は、変換器CELの第1スイッチング素子51及び第2スイッチング素子52が短絡状態になるような制御信号を排除したり、各スイッチング素子51、52の最小のオン期間や最小のオフ期間を確保するように、第1制御指令を補正した信号である第1制御信号、及び第2制御指令を補正した信号である第2制御信号を出力する。
【0059】
制御装置14は、インタロック部106から出力された第1制御信号及び第2制御信号を信号線26を介して対応する変換器CELに入力する。第1制御信号は、例えば、制御回路60を介して第1駆動信号に変換され、駆動回路61に入力される。第2制御信号は、例えば、制御回路60を介して第2駆動信号に変換され、駆動回路62に入力される。
【0060】
これにより、第1制御信号がハイレベルの時には、第1スイッチング素子51がオン状態となり、第1制御信号がローレベルの時には、第1スイッチング素子51がオフ状態となる。同様に、第2制御信号がハイレベルの時には、第2スイッチング素子52がオン状態となり、第2制御信号がローレベルの時には、第2スイッチング素子52がオフ状態となる。第1制御信号及び第2制御信号は、同時にハイレベルにならないように、制御指令生成部100あるいはインタロック部106によって制御される。
【0061】
第2制御信号がハイレベルの時には、電荷蓄積素子55の電圧が各接続端子50a、50b間に現れる。第1制御信号がハイレベルの時には、各接続端子50a、50b間が導通し、各接続端子50a、50b間の電圧は、実質的にゼロになる。
【0062】
このように、複数の変換器CELは、制御装置14からの制御信号に基づく各スイッチング素子51、52のスイッチングにより、電荷蓄積素子55の電圧を各接続端子50a、50b間に出力する出力状態と、各接続端子50a、50b間を導通させたバイパス状態と、各スイッチング素子51、52をオフ状態とした停止状態と、を切り替え可能である。なお、インタロック部106は、各変換器CELに設けてもよい。インタロック部106は、例えば、各変換器CELの制御回路60に設けてもよい。また、制御回路60を介することなく、インタロック部106から出力される第1制御信号及び第2制御信号を第1駆動信号及び第2駆動信号として各変換器CELの駆動回路61、62に直接的に入力する構成としてもよい。
【0063】
第1制御信号及び第2制御信号がともにローレベルの時(変換器CELが停止状態の時)には、アーム電流の向きによって各接続端子50a、50b間の電圧が決まる。例えば、第1接続端子50aから主回路P端子側の向き(第2接続端子50bから第1接続端子50aに向かう向き)にアーム電流が流れている時には、整流素子51dがオンし、各接続端子50a、50b間の電圧は、実質的にゼロになる。反対に、主回路P端子側から第1接続端子50aの向き(第1接続端子50aから第2接続端子50bに向かう向き)にアーム電流が流れている時には、整流素子52dがオンし、電荷蓄積素子55が充電され、各接続端子50a、50b間には、電荷蓄積素子55の電圧が現れる。
【0064】
遅延回路108は、停止指令生成部102と停止制御部104との間に設けられている。遅延回路108は、例えば、停止指令生成部102と停止制御部104のAND回路104aとの間に設けられる。遅延回路108は、停止指令生成部102から第1制御指令側のAND回路104aに入力される停止指令の変化を所定時間遅らせる。換言すれば、遅延回路108は、停止指令の変化を所定時間遅らせた遅延停止指令をAND回路104aに入力する。遅延回路108は、例えば、AND回路104aに入力される停止指令のローレベルからハイレベルへの変化を所定時間遅らせるオンディレイを設定する。これにより、第1制御指令側のAND回路104aに入力される遅延停止指令の変化は、第2制御指令側のAND回路104bに入力される停止指令の変化よりも所定時間遅れる。
【0065】
遅延回路108が停止指令を遅らせる所定時間は、例えば、系統の事故などにより過大となったアーム電流を減衰させるのに必要な時間に設定される。より具体的には、遅延回路108の所定時間は、例えば、過大となったアーム電流が減衰して実質的にゼロになるのに十分な時間に設定される。遅延回路108の所定時間は、例えば、1msから数十ms程度に設定される。
【0066】
電圧抑制制御部110は、停止指令に基づいて主回路部12の運転を停止させた際に、アーム電流によって変換器CELの電荷蓄積素子55が充電されることによる電荷蓄積素子55の電圧の大きさの増大を抑制するための制御指令を生成する。
【0067】
電圧抑制制御部110には、例えば、信号線26を介して各変換器CELから制御装置14に入力された各変換器CELのそれぞれの電荷蓄積素子55の電圧の情報と、第1スイッチング素子51及び第2スイッチング素子52をオフ状態とする変換器CELの台数の情報と、が入力される。変換器CELの台数の情報は、換言すれば、停止状態とする変換器CELの台数の情報である。
【0068】
停止状態とする変換器CELの台数は、例えば、主回路部12の運転を停止させた際に、アーム電流を減衰させるのに必要な電圧を出力できるだけの変換器CELの台数に設定される。停止状態とする変換器CELの台数は、例えば、交流電力系統2の電圧が変圧器6により主回路部12側に変圧された電圧よりも高い電圧を、主回路部12の交流端子21a~21cに出現可能な台数に設定する。このように、停止状態とする変換器CELの台数を設定することにより、例えば、主回路部12の運転を停止させた際に、アーム部が短絡状態となってしまったり、少ない台数の変換器CELに対して過度な電流や電圧が入力されてしまうことを抑制することができる。
【0069】
電圧抑制制御部110は、入力された電圧の情報と、台数の情報と、を基に、電圧の大きさの増大を抑制するための制御指令を生成する。電圧抑制制御部110は、1つのアーム部に直列に接続された複数台の変換器CELのうち、電荷蓄積素子55の電圧の低い変換器CELから順番に、入力された台数の情報と同じ数の変換器CELの第1スイッチング素子51をオフ状態とする制御指令を生成する。換言すれば、電圧抑制制御部110は、1つのアーム部に直列に接続された複数台の変換器CELのうち、電荷蓄積素子55の電圧の低い変換器CELから順番に、入力された台数の情報と同じ数の変換器CELについては、ローレベルの制御指令を生成する。電圧抑制制御部110は、1つのアーム部に直列に接続された複数台の変換器CELのうち、電荷蓄積素子55の電圧の大きさの小さい変換器CELから順番に、所定数の変換器CELを停止状態とする。
【0070】
そして、電圧抑制制御部110は、1つのアーム部に直列に接続された複数台の変換器CELのうち、残りの変換器CELについて、第1スイッチング素子51をオン状態とする制御指令を生成する。換言すれば、電圧抑制制御部110は、1つのアーム部に直列に接続された複数台の変換器CELのうち、電荷蓄積素子55の電圧の高い変換器CELから順番に、1つのアーム部の各変換器CELの直列接続数から入力された台数の情報の数を引いた数の変換器CELの第1スイッチング素子51をオン状態とする制御指令を生成する。電圧抑制制御部110は、残りの変換器CELについては、ハイレベルの制御指令を生成する。電圧抑制制御部110は、1つのアーム部に直列に接続された複数台の変換器CELのうち、電荷蓄積素子55の電圧の大きさの大きい変換器CELから順番に、所定数の変換器CELをバイパス状態とする。
【0071】
電圧抑制制御部110は、入力された電圧の情報を基に、各変換器CELの電荷蓄積素子55の電圧の大きさの順番を確認する。電圧抑制制御部110は、例えば、各変換器CELの電荷蓄積素子55の電圧の大きさの順番を、所定時間の経過に基づいて定期的に確認する。電圧抑制制御部110は、順番が変化した場合には、変化した順番に応じて、第1スイッチング素子51をオフ状態とする変換器CELと、第1スイッチング素子51をオン状態とする変換器CELと、を再選択する。換言すれば、電圧抑制制御部110は、電荷蓄積素子55の電圧の大きさの順番が変化した場合に、バイパス状態とする所定数の変換器CELを再選択する。
【0072】
切替器112は、制御指令生成部100と停止制御部104との間、及び電圧抑制制御部110と停止制御部104との間に設けられている。より詳しくは、切替器112は、制御指令生成部100と停止制御部104のAND回路104aとの間、及び電圧抑制制御部110と停止制御部104のAND回路104aとの間に設けられている。
【0073】
また、切替器112は、停止指令生成部102と接続されている。切替器112には、停止指令生成部102から停止指令が入力される。切替器112は、停止指令が主回路部12を運転させる状態の時には、制御指令生成部100から出力された第1制御指令を停止制御部104のAND回路104aに入力する。そして、切替器112は、停止指令が主回路部12の運転を停止させる状態の時には、電圧抑制制御部110から出力された電圧の大きさの増大を抑制するための制御指令を停止制御部104のAND回路104aに入力する。
【0074】
図4(a)~図4(h)は、電力変換装置の動作の一例を模式的に表すグラフである。 図4(a)~図4(h)は、アーム部内の1つの変換器CELの動作の一例を模式的に表している。
図4(a)は、制御指令生成部100で生成される第2制御指令の一例を表す。
図4(b)は、制御指令生成部100で生成される第1制御指令の一例を表す。
図4(c)は、停止指令生成部102で生成される停止指令の一例を表す。
図4(d)は、遅延回路108から出力される遅延停止指令の一例を表す。
図4(e)は、インタロック部106から出力される第2制御信号の一例を表す。
図4(f)は、インタロック部106から出力される第1制御信号の一例を表す。
図4(g)は、変換器CELの電荷蓄積素子55の電圧の一例を表す。
図4(h)は、アーム部に流れるアーム電流の一例を表す。
【0075】
図4(a)~図4(h)では、正弦波状のアーム電流を流して運転している最中に、系統の故障などにより、アーム電流の過電流が発生した状況での動作の一例を表している。主回路部12が正常に動作している場合、停止指令生成部102は、停止指令をローレベルに設定する(図4(a)~図4(h)の時刻t0~t1)。換言すれば、主回路部12が正常に動作している場合には、停止指令生成部102は、主回路部12を運転期間にする状態に停止指令を設定する。
【0076】
停止指令がローレベルである場合には、切替器112が、制御指令生成部100で生成された第1制御指令を停止制御部104のAND回路104aに入力する。また、停止指令がローレベルである場合には、AND回路104aが、制御指令生成部100で生成された第1制御指令を出力し、AND回路104bが、制御指令生成部100で生成された第2制御指令を出力する。
【0077】
従って、停止指令がローレベルである場合には、制御指令生成部100で生成された第1制御指令に応じた第1制御信号がインタロック部106から出力されるとともに、制御指令生成部100で生成された第2制御指令に応じた第2制御信号がインタロック部106から出力される。これにより、停止指令がローレベルである場合には、制御指令生成部100の第1制御指令に基づいて変換器CELの第1スイッチング素子51のスイッチングが制御されるとともに、制御指令生成部100の第2制御指令に基づいて変換器CELの第2スイッチング素子52のスイッチングが制御される。停止指令がローレベルである場合には、変換器CELが、制御装置14からの制御信号に基づいて出力状態又はバイパス状態に切り替えられる。
【0078】
停止指令生成部102は、例えば、アーム電流の過電流を検出した際に、停止指令をローレベルからハイレベルに切り替える(図4(a)~図4(h)の時刻t1)。換言すれば、停止指令生成部102は、アーム電流の過電流を検出した際に、主回路部12を運転期間にする状態から主回路部12を運転停止期間にする状態に停止指令を切り替える。
【0079】
停止指令がハイレベルに切り替わると、AND回路104bは、ローレベルを出力する。従って、停止指令がハイレベルである場合には、第2制御信号がローレベルとなり、第2制御指令の状態に関わらず、第2スイッチング素子52は、オフ状態となる。
【0080】
一方で、AND回路104aに対しては、遅延回路108が、停止指令の変化を所定時間遅らせた遅延停止指令を入力する。従って、停止指令がローレベルからハイレベルに切り替わった際にも、停止指令の切り替わりのタイミングから所定時間が経過するまでの期間については、第1スイッチング素子51のスイッチングの制御が可能となる。
【0081】
また、停止指令がローレベルからハイレベルに切り替わると、切替器112が、電圧抑制制御部110から出力された電圧の大きさの増大を抑制するための制御指令を停止制御部104のAND回路104aに入力する。
【0082】
図4(a)~図4(h)の時刻t1においては、該当する変換器CELの電荷蓄積素子55の電圧が、同一アーム部内の他の変換器CELの電荷蓄積素子55の電圧よりも比較的低く、電圧抑制制御部110が、該当する変換器CELについてローレベルの制御指令を生成した状態を表している。すなわち、図4(a)~図4(h)の時刻t1においては、AND回路104bの出力に基づいて第2スイッチング素子52がオフ状態となり、電圧抑制制御部110の制御に基づいて第1スイッチング素子51もオフ状態となった状態を表している。換言すれば、図4(a)~図4(h)の時刻t1においては、該当する変換器CELが、停止状態となった状態を表している。
【0083】
各スイッチング素子51、52がオフ状態となり、かつ第1接続端子50aから第2接続端子50bに向かう向きにアーム電流が流れている場合には、整流素子52dがオンし、電荷蓄積素子55がアーム電流によって充電される。これにより、電荷蓄積素子55の電圧が上昇する(図4(a)~図4(h)の時刻t1~t2)。
【0084】
電荷蓄積素子55の電圧が上昇し、同一アーム部内の各変換器CELの電荷蓄積素子55の電圧の大きさの順番が変化すると、電圧抑制制御部110が、変化した順番に応じて、第1スイッチング素子51をオフ状態とする変換器CELと、第1スイッチング素子51をオン状態とする変換器CELと、を再選択する。換言すれば、電圧抑制制御部110が、変化した順番に応じて、停止状態とする変換器CELと、バイパス状態とする変換器CELと、を再選択する。
【0085】
図4(a)~図4(h)では、時刻t2において、各変換器CELの電荷蓄積素子55の電圧の大きさの順番が変化し、電圧抑制制御部110が、該当する変換器CELについてハイレベルの制御指令を生成した状態を表している。
【0086】
また、図4(g)では、時刻t2において第1スイッチング素子51をオン状態とした際の電荷蓄積素子55の電圧の変化の一例を実線で表すとともに、時刻t2においても第1スイッチング素子51をオフ状態としたままの際の電荷蓄積素子55の電圧の変化の一例を破線で表している。
【0087】
図4(g)に破線で表したように、第1スイッチング素子51をオフ状態としたままの場合(該当する変換器CELが停止状態のままの場合)には、アーム電流が減衰し、実質的にゼロとなるまで、電荷蓄積素子55がアーム電流によって充電される。このため、電荷蓄積素子55の電圧が過電圧となり、該当する変換器CELが運転不能となってしまったり、該当する変換器CELの故障などを招いてしまう可能性が生じる。
【0088】
これに対し、電圧抑制制御部110が、該当する変換器CELの制御指令をローレベルからハイレベルに切り替えると、第1スイッチング素子51がオン状態となる。すなわち、該当する変換器CELが、停止状態からバイパス状態に切り替わる。これにより、第1接続端子50aから第2接続端子50bに向かう向きにアーム電流が流れている場合においても、各接続端子50a、50b間が導通し、各接続端子50a、50b間の電圧が、実質的にゼロになる。これにより、図4(g)に実線で表したように、アーム電流による電荷蓄積素子55の充電が抑制され、該当する変換器CELの電荷蓄積素子55の電圧の上昇が抑制される(図4(a)~図4(h)の時刻t2)。
【0089】
停止指令の切り替わりのタイミングから所定時間が経過すると、遅延回路108が、遅延停止指令をローレベルからハイレベルに切り替える。遅延停止指令がハイレベルに切り替わると、AND回路104aは、ローレベルを出力する。従って、遅延停止指令がハイレベルである場合には、第1制御信号がローレベルとなり、第1制御指令や電圧抑制制御部110の制御指令の状態に関わらず、第1スイッチング素子51は、オフ状態となる。すなわち、運転停止期間に切り替わったタイミングから所定時間が経過した後は、複数の変換器CELが全て停止状態となる。
【0090】
前述のように、停止指令を遅らせる所定時間は、例えば、系統の事故などにより過大となったアーム電流を減衰させるのに必要な時間に設定される。アーム電流が十分に減衰した後に第1スイッチング素子51をオフ状態とすることにより、第1スイッチング素子51をオフ状態とした後にも、アーム電流による電荷蓄積素子55の充電を抑制することができる。また、所定時間の経過後に第1スイッチング素子51及び第2スイッチング素子52をオフ状態としておくことにより、例えば、系統側や直流送電線側に流出入する電流をより確実に減衰できる。
【0091】
以上、説明したように、本実施形態に係る電力変換装置10では、主回路部12が、停止指令に基づく運転停止期間において、電圧検出器46の検出結果を基に、複数の変換器CELのうち、電荷蓄積素子55の電圧の大きさの小さい変換器CELについては停止状態とし、電荷蓄積素子55の電圧の大きさの大きい変換器CELについてはバイパス状態とする。この例では、主回路部12は、制御装置14の制御に基づいて、運転停止期間において、電荷蓄積素子55の電圧の大きさの小さい変換器CELを停止状態とし、電荷蓄積素子55の電圧の大きさの大きい変換器CELをバイパス状態とする。換言すれば、この例では、制御装置14が、運転停止期間において、主回路部12の複数の変換器CELのうち、電荷蓄積素子55の電圧の大きさの小さい変換器CELを停止状態とし、電荷蓄積素子55の電圧の大きさの大きい変換器CELをバイパス状態とする。
【0092】
このように、運転停止期間において、電荷蓄積素子55の電圧の大きさの大きい変換器CELをバイパス状態とすることにより、停止指令に基づいて主回路部12の運転を急停止した際にも、直列に接続した複数の変換器CELの電荷蓄積素子55の電圧が大きくなることを抑制することができる。例えば、直列に接続された複数の変換器CELのうちの一部の変換器CELの電荷蓄積素子55の電圧が大きくなり、各変換器CELの電荷蓄積素子55の電圧の大きさに偏りが生じてしまうことを抑制することができる。
【0093】
また、本実施形態に係る電力変換装置10では、主回路部12が、運転停止期間において、電荷蓄積素子55の電圧の大きさの大きい順番に所定数の変換器CELをバイパス状態とし、残りの変換器CELを停止状態としている。これにより、例えば、アーム部が短絡状態となってしまったり、少ない台数の変換器CELに対して過度な電流や電圧が入力されてしまうことを抑制することができる。あるいは、主回路部12に流出入する電流をより確実に減衰させることができる。
【0094】
この例では、第1スイッチング素子51及び第2スイッチング素子52をオフ状態とする(停止状態とする)変換器CELの台数の情報を電圧抑制制御部110に対して設定することにより、主回路部12において、電荷蓄積素子55の電圧の大きさの大きい順番に所定数の変換器CELがバイパス状態となり、残りの変換器CELが停止状態となるようにしている。例えば、上記とは反対に、バイパス状態とする変換器CELの台数の情報を電圧抑制制御部110に設定することにより、主回路部12において、電荷蓄積素子55の電圧の大きさの大きい順番に所定数の変換器CELがバイパス状態となり、残りの変換器CELが停止状態となるようにしてもよい。主回路部12が、運転停止期間において、電荷蓄積素子55の電圧の大きさの大きい順番に所定数の変換器CELをバイパス状態とし、残りの変換器CELを停止状態とするための構成は、上記に限ることなく、上記を実現可能な任意の構成でよい。
【0095】
また、本実施形態に係る電力変換装置10では、主回路部12が、運転停止期間において、電荷蓄積素子55の電圧の大きさの順番が変化した場合に、バイパス状態とする所定数の変換器CELを再選択する。この例において、主回路部12は、制御装置14の制御に基づいて、運転停止期間において、電荷蓄積素子55の電圧の大きさの順番が変化した場合に、バイパス状態とする所定数の変換器CELを再選択する。換言すれば、制御装置14が、運転停止期間において、電荷蓄積素子55の電圧の大きさの順番が変化した場合に、バイパス状態とする所定数の変換器CELを再選択する。これにより、例えば、一部の変換器CELの電荷蓄積素子55の電圧が大きくなり、各変換器CELの電荷蓄積素子55の電圧の大きさに偏りが生じてしまうことを、より確実に抑制することができる。
【0096】
また、本実施形態に係る電力変換装置10では、主回路部12が、運転停止期間において、少なくとも所定数の変換器CELを停止状態とする。主回路部12は、電荷蓄積素子55の電圧の大きさの小さい順番に所定数の変換器CELを停止状態とする。これにより、例えば、アーム部が短絡状態となってしまったり、少ない台数の変換器CELに対して過度な電流や電圧が入力されてしまうことを、より確実に抑制することができる。主回路部12に流出入する電流をより確実に減衰させることができる。
【0097】
この例では、第1スイッチング素子51及び第2スイッチング素子52をオフ状態とする(停止状態とする)変換器CELの台数の情報を電圧抑制制御部110に対して設定することにより、運転停止期間において、少なくとも所定数の変換器CELを停止状態としている。但し、主回路部12が、運転停止期間において、少なくとも所定数の変換器CELを停止状態とするための構成は、上記に限ることなく、上記を実現可能な任意の構成でよい。
【0098】
また、本実施形態に係る電力変換装置10では、主回路部12が、運転停止期間に切り替わったタイミングから所定時間が経過するまでの期間において、電荷蓄積素子55の電圧の大きさの大きい変換器CELをバイパス状態とし、所定時間が経過した後は、複数の変換器CELを全て停止状態としている。これにより、例えば、主回路部12に流出入する電流をより確実に減衰させることができる。但し、これに限ることなく、運転停止期間の全ての期間において、電荷蓄積素子55の電圧の大きさの大きい変換器CELをバイパス状態に切り替えるようにしてもよい。
【0099】
この例では、制御装置14に遅延回路108を設け、遅延回路108で所定時間のオンディレイを設定することにより、所定時間が経過した後は、複数の変換器CELが全て停止状態となるようにしている。但し、運転停止期間に切り替わったタイミングから所定時間が経過するまでの期間において、電荷蓄積素子55の電圧の大きさの大きい変換器CELをバイパス状態とし、所定時間が経過した後は、複数の変換器CELを全て停止状態とするための構成は、上記に限ることなく、上記を実現可能な任意の構成でよい。
【0100】
(第2の実施形態)
図5は、第2の実施形態に係る変換器を模式的に表すブロック図である。
図5に表したように、この例の変換器CELaでは、チョッパ回路40が、フルブリッジ回路48に置き換えられている。なお、上記第1の実施形態と機能・構成上実質的に同じものについては、同符号を付し、詳細な説明は、省略する。
【0101】
フルブリッジ回路48は、第1スイッチング素子51と第2スイッチング素子52とを有するとともに、第3スイッチング素子53と第4スイッチング素子54とをさらに有する。第3スイッチング素子53、第4スイッチング素子54には、第1スイッチング素子51、第2スイッチング素子52と実質的に同じ素子が用いられる。
【0102】
第4スイッチング素子54の一対の主端子は、第3スイッチング素子53の一対の主端子に対して直列に接続される。また、第3スイッチング素子53及び第4スイッチング素子54は、第1スイッチング素子51及び第2スイッチング素子52に対して並列に接続される。電荷蓄積素子55は、第1スイッチング素子51及び第2スイッチング素子52に対して並列に接続されるとともに、第3スイッチング素子53及び第4スイッチング素子54に対して並列に接続される。
【0103】
第3スイッチング素子53には、一対の主端子に対して逆並列に整流素子53dが接続されている。第4スイッチング素子54には、一対の主端子に対して逆並列に整流素子54dが接続されている。
【0104】
変換器CELaの第1接続端子50aは、第1スイッチング素子51と第2スイッチング素子52との間に接続されている。第2接続端子50bは、第3スイッチング素子53と第4スイッチング素子54との間に接続されている。この例において、第2接続端子50bは、第3スイッチング素子53を介して第1スイッチング素子51の第2スイッチング素子52に接続された主端子と反対側の主端子に接続される。
【0105】
変換器CELaでは、第1スイッチング素子51と第4スイッチング素子54とをオン状態にし、第2スイッチング素子52と第3スイッチング素子53とをオフ状態にすることにより、各接続端子50a、50b間に+Vcの電圧が現れる。
【0106】
また、第2スイッチング素子52と第3スイッチング素子53とをオン状態にし、第1スイッチング素子51と第4スイッチング素子54とをオフ状態にすることにより、各接続端子50a、50b間に-Vcの電圧が現れる。
【0107】
さらに、ローサイド側の第1スイッチング素子51及び第3スイッチング素子53をオン状態にし、ハイサイド側の第2スイッチング素子52及び第4スイッチング素子54をオフ状態にする。もしくは、ハイサイド側の第2スイッチング素子52及び第4スイッチング素子54をオン状態にし、ローサイド側の第1スイッチング素子51及び第3スイッチング素子53をオフ状態にする。これにより、各接続端子50a、50b間が導通され、各接続端子50a、50b間に実質的に0Vが現れる。
【0108】
このように、この変換器CELaでは、各接続端子50a、50b間に、+Vc、0、-Vcの3レベルの電圧を出力することができる。変換器CELaは、複数のスイッチング素子51~54のスイッチングにより、+Vcの電圧を各接続端子50a、50b間に出力する第1出力状態と、-Vcの電圧を各接続端子50a、50b間に出力する第2出力状態と、各接続端子50a、50b間を導通させたバイパス状態と、各スイッチング素子51~54をオフ状態と、を切り替えることができる。
【0109】
第3スイッチング素子53及び第4スイッチング素子54は、第1スイッチング素子51及び第2スイッチング素子52と同様に、制御部42に接続され、制御部42によってオン・オフを制御される。制御部42は、例えば、各スイッチング素子51~54のそれぞれに対応する4つの駆動回路61~64を有する。制御回路60は、制御装置14から入力された制御信号に基づいて、各駆動回路61~64の動作を制御する。これにより、各スイッチング素子51~54のオン・オフが制御される。
【0110】
図6は、第2の実施形態に係る制御装置を模式的に表すブロック図である。
図6に表したように、制御装置14aは、停止制御部120と、インタロック部122と、切替器124と、をさらに有する。
【0111】
制御装置14aにおいて、制御指令生成部100は、1つの変換器CELaに対し、第1スイッチング素子51のスイッチングを制御するための第1制御指令と、第2スイッチング素子52のスイッチングを制御するための第2制御指令と、第3スイッチング素子53のスイッチングを制御するための第3制御指令と、第4スイッチング素子54のスイッチングを制御するための第4制御指令と、を生成する。
【0112】
制御指令生成部100は、生成した第3制御指令と第4制御指令とを停止制御部120に入力する。停止制御部120は、例えば、1つの変換器CELaに対して2つのAND回路120a、120bを有する。以下、停止制御部120の構成は、停止制御部104の構成と実質的に同じであり、インタロック部122の構成は、インタロック部106の構成と実質的に同じであり、切替器124の構成は、切替器112の構成と実質的に同じであるから、詳細な説明は省略する。
【0113】
制御装置14aでは、停止指令がローレベルである場合には、切替器112が、制御指令生成部100で生成された第1制御指令を停止制御部104のAND回路104aに入力し、切替器124が、制御指令生成部100で生成された第3制御指令を停止制御部120のAND回路120aに入力する。そして、停止指令がローレベルである場合には、AND回路104aが、制御指令生成部100で生成された第1制御指令を出力し、AND回路104bが、制御指令生成部100で生成された第2制御指令を出力し、AND回路120aが、制御指令生成部100で生成された第3制御指令を出力し、AND回路120bが、制御指令生成部100で生成された第4制御指令を出力する。
【0114】
従って、停止指令がローレベルである場合には、制御指令生成部100で生成された第1制御指令に応じた第1制御信号がインタロック部106から出力されるとともに、制御指令生成部100で生成された第2制御指令に応じた第2制御信号がインタロック部106から出力され、制御指令生成部100で生成された第3制御指令に応じた第3制御信号がインタロック部122から出力されるとともに、制御指令生成部100で生成された第4制御指令に応じた第4制御信号がインタロック部122から出力される。
【0115】
この際、インタロック部122は、インタロック部106と同様に、第3スイッチング素子53及び第4スイッチング素子54が短絡状態になるような制御信号を排除したり、各スイッチング素子53、54の最小のオン期間や最小のオフ期間を確保するように、第3制御信号及び第4制御信号を出力する。これにより、停止指令がローレベルである場合には、制御指令生成部100の各制御指令に基づいて変換器CELaの各スイッチング素子51~54のスイッチングが制御される。
【0116】
停止指令がハイレベルに切り替わると、AND回路104b、120bは、ローレベルを出力する。従って、停止指令がハイレベルである場合には、第2制御信号及び第4制御信号がローレベルとなり、第2制御指令及び第4制御指令の状態に関わらず、ハイサイド側の第2スイッチング素子52及び第4スイッチング素子54は、オフ状態となる。
【0117】
一方で、AND回路104a、120aに対しては、遅延回路108が、停止指令の変化を所定時間遅らせた遅延停止指令を入力する。従って、停止指令がローレベルからハイレベルに切り替わった際にも、停止指令の切り替わりのタイミングから所定時間が経過するまでの期間については、第1スイッチング素子51及び第3スイッチング素子53のスイッチングの制御が可能となる。
【0118】
また、停止指令がローレベルからハイレベルに切り替わると、切替器112が、電圧抑制制御部110から出力された電圧の大きさの増大を抑制するための制御指令を停止制御部104のAND回路104aに入力するとともに、切替器124が、電圧抑制制御部110から出力された電圧の大きさの増大を抑制するための制御指令を停止制御部120のAND回路120aに入力する。
【0119】
該当する変換器CELaの電荷蓄積素子55の電圧の大きさが、同一アーム部内の他の変換器CELaの電荷蓄積素子55の電圧の大きさよりも比較的小さく、電圧抑制制御部110が、該当する変換器CELaについてローレベルの制御指令を生成した場合には、ローサイド側の第1スイッチング素子51及び第3スイッチング素子53もオフ状態となる。
【0120】
各スイッチング素子51~54がオフ状態となった場合には、アーム電流の向きによって、各接続端子50a、50b間の電圧が決まる。例えば、第1接続端子50aから主回路P端子側の向き(第2接続端子50bから第1接続端子50aに向かう向き)にアーム電流が流れている時には、整流素子51d、54dがオンし、電荷蓄積素子55が充電され、各接続端子50a、50b間には、-Vcの電圧が現れる。反対に、主回路P端子側から第1接続端子50aの向き(第1接続端子50aから第2接続端子50bに向かう向き)にアーム電流が流れている時には、整流素子52d、53dがオンし、電荷蓄積素子55が充電され、各接続端子50a、50b間には、+Vcの電圧が現れる。
【0121】
このように、フルブリッジ回路48の構成では、各スイッチング素子51~54がオフ状態となった場合に、どちらの方向にアーム電流が流れていたとしても、電荷蓄積素子55が充電され、電荷蓄積素子55の電圧の大きさが大きくなる。
【0122】
電圧抑制制御部110は、例えば、1つのアーム部に直列に接続された複数台の変換器CELaのうち、電荷蓄積素子55の電圧の大きさ(電圧の絶対値)の小さい変換器CELaから順番に、入力された台数の情報と同じ数の変換器CELaの第1スイッチング素子51及び第3スイッチング素子53をオフ状態とする制御指令を生成する。そして、電圧抑制制御部110は、1つのアーム部に直列に接続された複数台の変換器CELaのうち、残りの変換器CELaについて、第1スイッチング素子51及び第3スイッチング素子53をオン状態とする制御指令を生成する。換言すれば、電圧抑制制御部110は、1つのアーム部に直列に接続された複数台の変換器CELaのうち、電荷蓄積素子55の電圧の大きさの大きい変換器CELaから順番に、1つのアーム部の各変換器CELaの直列接続数から入力された台数の情報の数を引いた数の変換器CELaの第1スイッチング素子51及び第3スイッチング素子53をオン状態とする制御指令を生成する。
【0123】
電荷蓄積素子55の電圧が大きくなり、同一アーム部内の各変換器CELaの電荷蓄積素子55の電圧の大きさの順番が変化し、電圧抑制制御部110が、該当する変換器CELaの制御指令をローレベルからハイレベルに切り替えると、ローサイド側の第1スイッチング素子51及び第3スイッチング素子53がオン状態となる。
【0124】
第1スイッチング素子51及び第3スイッチング素子53がオン状態になると、どちらの向きにアーム電流が流れている場合においても、各接続端子50a、50b間の電圧が、実質的にゼロになる。これにより、アーム電流による電荷蓄積素子55の充電が抑制され、該当する変換器CELaの電荷蓄積素子55の電圧が大きくなることが抑制される。
【0125】
停止指令の切り替わりのタイミングから所定時間が経過すると、遅延回路108が、遅延停止指令をローレベルからハイレベルに切り替える。遅延停止指令がハイレベルに切り替わると、AND回路104a、120aは、ローレベルを出力する。従って、遅延停止指令がハイレベルである場合には、第1制御信号及び第3制御信号がローレベルとなり、第1スイッチング素子51及び第3スイッチング素子53は、オフ状態となる。
【0126】
停止指令を遅らせる所定時間は、第1の実施形態と同様に、系統の事故などにより過大となったアーム電流を減衰させるのに必要な時間に設定される。アーム電流が十分に減衰した後に第1スイッチング素子51及び第3スイッチング素子53をオフ状態とすることにより、第1スイッチング素子51及び第3スイッチング素子53をオフ状態とした後にも、アーム電流による電荷蓄積素子55の充電を抑制することができる。
【0127】
このように、変換器CELa及び制御装置14aの構成においても、上記第1の実施形態と同様に、停止指令に基づいて主回路部12の運転を急停止した際にも、直列に接続した複数の変換器CELaの電荷蓄積素子55の電圧が大きくなることを抑制することができる。
【0128】
このように、MMC型の電力変換装置10に用いられる変換器は、チョッパ回路40でもよいし、フルブリッジ回路48でもよい。なお、上記実施形態では、電荷蓄積素子55の電圧の大きさが大きくなった際にオン状態に切り替える第1スイッチング素子51及び第3スイッチング素子53をローサイド側としている。フルブリッジ回路48の構成においては、上記と反対に、第1スイッチング素子51及び第3スイッチング素子53をハイサイド側とし、第2スイッチング素子52及び第4スイッチング素子54をローサイド側としてもよい。ハイサイド側の第1スイッチング素子51及び第3スイッチング素子53をオン状態とした場合にも、上記と同様に、各接続端子50a、50b間を導通させ、電荷蓄積素子55の電圧の大きさが大きくなることを抑制することができる。
【0129】
(第3の実施形態)
図7は、第3の実施形態に係る制御装置を模式的に表すブロック図である。
図7に表したように、制御装置14bにおいては、信号線26を介して各変換器CELから制御装置14に入力された各変換器CELのそれぞれの電荷蓄積素子55の電圧の情報と、電荷蓄積素子55の電圧の大きさの閾値の情報とが、電圧抑制制御部110aに入力されている。なお、図7では、チョッパ回路40に対応する制御装置14bの例を示している。制御装置14bは、チョッパ回路40に限ることなく、フルブリッジ回路48に対応するものでもよい。
【0130】
電圧抑制制御部110aは、入力された電圧の情報と、電圧の大きさの閾値の情報と、を基に、電圧の大きさの増大を抑制するための制御指令を生成する。電圧抑制制御部110aは、1つのアーム部に直列に接続された複数台の変換器CELのうち、電荷蓄積素子55の電圧の大きさが閾値未満の変換器CELについては、第1スイッチング素子51をオフ状態とする制御指令を生成する。換言すれば、電圧抑制制御部110aは、1つのアーム部に直列に接続された複数台の変換器CELのうち、電荷蓄積素子55の電圧の大きさが閾値未満の変換器CELについては、ローレベルの制御指令を生成する。電圧抑制制御部110aは、1つのアーム部に直列に接続された複数台の変換器CELのうち、電荷蓄積素子55の電圧の大きさが閾値未満の変換器CELについては、停止状態とする制御指令を生成する。
【0131】
そして、電圧抑制制御部110aは、1つのアーム部に直列に接続された複数台の変換器CELのうち、電荷蓄積素子55の電圧の大きさが閾値以上の変換器CELについては、第1スイッチング素子51をオン状態とする制御指令を生成する。換言すれば、電圧抑制制御部110aは、1つのアーム部に直列に接続された複数台の変換器CELのうち、電荷蓄積素子55の電圧の大きさが閾値以上の変換器CELについては、ハイレベルの制御指令を生成する。電圧抑制制御部110aは、1つのアーム部に直列に接続された複数台の変換器CELのうち、電荷蓄積素子55の電圧の大きさが閾値以上の変換器CELについては、バイパス状態とする制御指令を生成する。
【0132】
電圧抑制制御部110aは、入力された電圧の情報を基に、各変換器CELの電荷蓄積素子55の電圧の大きさが閾値以上か否かを確認する。電圧抑制制御部110aは、例えば、入力された電圧の情報を基に、各変換器CELの電荷蓄積素子55の電圧の大きさが閾値以上か否かを定期的に確認する。電圧抑制制御部110aは、各変換器CELの電荷蓄積素子55の電圧の大きさの閾値以上か否かの状態が変化した場合には、電圧の状態に応じて制御指令を変化させる。
【0133】
このように、第1スイッチング素子51及び第2スイッチング素子52をオフ状態とする変換器CELの台数の情報に代えて、電荷蓄積素子55の電圧の大きさの閾値の情報を基に、電圧の大きさの増大を抑制するための制御指令を生成してもよい。主回路部12は、運転停止期間において、電荷蓄積素子55の電圧の大きさが所定値以上の変換器CELをバイパス状態とし、電荷蓄積素子55の電圧の大きさが所定値未満の変換器CELを停止状態とする。
【0134】
制御装置14bでは、電荷蓄積素子55の電圧の大きさが閾値以上となった変換器CELにおいて、第1スイッチング素子51がオン状態となり、該当する変換器CELがバイパス状態となる。これにより、各接続端子50a、50b間の電圧が、実質的にゼロになるとともに、アーム電流による電荷蓄積素子55の充電が抑制され、その後の電荷蓄積素子55の電圧の大きさが実質的に一定となる。従って、制御装置14bの構成においても、上記各実施形態と同様に、停止指令に基づいて主回路部12の運転を急停止した際にも、直列に接続した複数の変換器CELの電荷蓄積素子55の電圧が大きくなることを抑制することができる。
【0135】
この例では、入力された電圧の情報と、電圧の大きさの閾値の情報と、を電圧抑制制御部110aに設定することにより、主回路部12が、運転停止期間において、電荷蓄積素子55の電圧の大きさが所定値以上の変換器CELをバイパス状態とし、電荷蓄積素子55の電圧の大きさが所定値未満の変換器CELを停止状態とするようにしている。但し、電荷蓄積素子55の電圧の大きさが所定値以上の変換器CELをバイパス状態とし、電荷蓄積素子55の電圧の大きさが所定値未満の変換器CELを停止状態とするための構成は、上記に限ることなく、上記を実現可能な任意の構成でよい。
【0136】
(第4の実施形態)
図8は、第4の実施形態に係る制御装置を模式的に表すブロック図である。
図8に表したように、制御装置14cにおいては、遅延回路108に代えて、比較器130とAND回路132とが設けられている。
【0137】
比較器130には、電流検出器24a~24fのいずれかによって検出された該当する変換器CELの含まれるアーム部のアーム電流の検出値と、そのアーム電流の閾値の情報と、が入力される。比較器130は、アーム電流の検出値が閾値以上か否かを比較し、その比較結果を出力する。比較器130は、例えば、アーム電流の検出値が閾値以上である場合に、ローレベルの出力信号を出力し、アーム電流の検出値が閾値未満である場合に、ハイレベルの出力信号を出力する。
【0138】
AND回路132には、停止指令と、比較器130の出力信号と、が入力される。AND回路132の出力は、停止制御部104のAND回路104aに入力される。これにより、AND回路132は、比較器130の出力信号がハイレベルの場合にのみ、停止指令が停止制御部104のAND回路104aに入力されるようにする。すなわち、AND回路132は、アーム電流の検出値が閾値未満である場合にのみ、停止指令が停止制御部104のAND回路104aに入力されるようにする。
【0139】
制御装置14cの構成では、停止指令がハイレベルとなっても、アーム電流が閾値未満になるまで、電荷蓄積素子55の電圧の大きい当該アーム部内の変換器CELの各接続端子50a、50b間の電圧が、優先的に実質的にゼロになるとともに、アーム電流による電荷蓄積素子55の充電が抑制され、その後の電荷蓄積素子55の電圧の大きさが実質的に一定となる。
【0140】
アーム電流が小さくなると、電荷蓄積素子55を充電する電力も小さくなるため、第1スイッチング素子51をオフ状態としても、変換器CELの電荷蓄積素子55の電圧の大きさの増大を小さくすることができる。
【0141】
また、チョッパ回路40の構成の変換器CELにおいては、アーム電流が負極性、すなわち、第1接続端子50aから主回路P側にアーム電流が流れる状態である場合には、電荷蓄積素子55を充電することがない。このため、第1スイッチング素子51をオフ状態としても、変換器CELの電荷蓄積素子55の電圧が上昇することはない。
【0142】
従って、制御装置14cの構成においても、上記各実施形態と同様に、停止指令に基づいて主回路部12の運転を急停止した際にも、直列に接続した複数の変換器CELの電荷蓄積素子55の電圧が大きくなることを抑制することができる。
【0143】
このように、チョッパ回路40の構成の変換器CELについては、停止指令の切り替わりのタイミングから所定時間が経過するまでの期間について、第1スイッチング素子51のスイッチングの制御を可能とする構成に限ることなく、アーム電流が閾値未満になるまで、第1スイッチング素子51のスイッチングの制御を可能とする構成としてもよい。換言すれば、主回路部12は、アーム部に流れる電流の大きさが閾値以上である場合に、電荷蓄積素子55の電圧の大きさの大きい変換器CELをバイパス状態とし、アーム部に流れる電流の大きさが閾値未満である場合には、複数の変換器CELを全て停止状態とする構成でもよい。
【0144】
この例では、アーム電流の検出値と、アーム電流の閾値の情報と、を比較器130に設定することにより、アーム部に流れる電流の大きさが閾値以上である場合に、電荷蓄積素子55の電圧の大きさの大きい変換器CELをバイパス状態とし、アーム部に流れる電流の大きさが閾値未満である場合には、複数の変換器CELを全て停止状態とするようにしている。アーム部に流れる電流の大きさが閾値以上である場合に、電荷蓄積素子55の電圧の大きさの大きい変換器CELをバイパス状態とし、アーム部に流れる電流の大きさが閾値未満である場合には、複数の変換器CELを全て停止状態とするための構成は、上記に限ることなく、上記を実現可能な任意の構成でよい。
【0145】
(第5の実施形態)
図9は、第5の実施形態に係る制御装置を模式的に表すブロック図である。
図9に表したように、制御装置14dは、制御装置14cの構成に加えて、絶対値演算器134をさらに有している。
【0146】
絶対値演算器134には、電流検出器24a~24fのいずれかによって検出された該当する変換器CELの含まれるアーム部のアーム電流の検出値が入力される。絶対値演算器134は、入力されたアーム電流の検出値の絶対値を演算することにより、そのアーム電流の振幅(アーム電流の絶対値の大きさ)を演算し、演算したアーム電流の振幅を比較器130に入力する。
【0147】
比較器130は、アーム電流の振幅が閾値以上か否かを比較し、その比較結果を出力する。比較器130は、例えば、アーム電流の振幅が閾値以上である場合に、ローレベルの出力信号を出力し、アーム電流の振幅が閾値未満である場合に、ハイレベルの出力信号を出力する。
【0148】
制御装置14dの構成では、停止指令がハイレベルとなっても、アーム電流の振幅が閾値未満になるまで、電荷蓄積素子55の電圧の大きい当該アーム部内の変換器CELの各接続端子50a、50b間の電圧が、優先的に実質的にゼロになるとともに、アーム電流による電荷蓄積素子55の充電が抑制され、その後の電荷蓄積素子55の電圧の大きさが実質的に一定となる。
【0149】
アーム電流の振幅が小さくなると、電荷蓄積素子55を充電する電力も小さくなるため、第1スイッチング素子51をオフ状態としても、変換器CELの電荷蓄積素子55の電圧の大きさの増大を小さくすることができる。
【0150】
従って、制御装置14dの構成においても、上記各実施形態と同様に、停止指令に基づいて主回路部12の運転を急停止した際にも、直列に接続した複数の変換器CELの電荷蓄積素子55の電圧が大きくなることを抑制することができる。
【0151】
このように、アーム電流の振幅が閾値未満になるまで、第1スイッチング素子51のスイッチングの制御を可能とする構成としてもよい。換言すれば、主回路部12は、アーム部に流れる電流の振幅の大きさが閾値以上である場合に、電荷蓄積素子55の電圧の大きさの大きい変換器CELをバイパス状態とし、アーム部に流れる電流の振幅の大きさが閾値未満である場合には、複数の変換器CELを全て停止状態とする構成でもよい。
【0152】
アーム電流の振幅と閾値とを比較する構成とした場合には、双方向に流れるアーム電流によって電荷蓄積素子55が充電されるフルブリッジ回路48の構成においても、電荷蓄積素子55の電圧が大きくなることを適切に抑制することができる。例えば、フルブリッジ回路48の構成の変換器CELaに対応する制御装置14aにおいて、遅延回路108を比較器130、AND回路132、及び絶対値演算器134に置き換えてもよい。
【0153】
この例では、アーム電流の振幅の検出値と、アーム電流の振幅の閾値の情報と、を比較器130に設定することにより、アーム部に流れる電流の振幅の大きさが閾値以上である場合に、電荷蓄積素子55の電圧の大きさの大きい変換器CELをバイパス状態とし、アーム部に流れる電流の振幅の大きさが閾値未満である場合には、複数の変換器CELを全て停止状態とするようにしている。アーム部に流れる電流の振幅の大きさが閾値以上である場合に、電荷蓄積素子55の電圧の大きさの大きい変換器CELをバイパス状態とし、アーム部に流れる電流の振幅の大きさが閾値未満である場合には、複数の変換器CELを全て停止状態とするための構成は、上記に限ることなく、上記を実現可能な任意の構成でよい。
【0154】
(第6の実施形態)
図10は、第6の実施形態に係る制御回路を模式的に表すブロック図である。
図10は、変換器CELの制御回路60の変形例である制御回路60aを模式的に表している。
図10に表したように、この例では、停止制御部104、インタロック部106、遅延回路108、電圧抑制制御部110、及び切替器112が、変換器CELの制御回路60aに設けられている。この場合、制御装置14においては、これらを省略可能である。この場合、制御装置14には、制御指令生成部100と停止指令生成部102とが設けられていればよい。
【0155】
制御回路60aには、例えば、制御装置14から信号線26を介して第1制御信号と第2制御信号と停止指令とが入力されるとともに、同一アーム部内の各変換器CELのそれぞれの電荷蓄積素子55の電圧の情報と、第1スイッチング素子51及び第2スイッチング素子52をオフ状態とする変換器CELの台数の情報と、がさらに入力される。
【0156】
これにより、この例では、停止指令に基づいて主回路部12の運転を急停止した際にも、直列に接続した複数の変換器CELの電荷蓄積素子55の電圧が大きくなることを抑制するための制御が、各変換器CELの制御回路60aで行われる。
【0157】
このように、各変換器CELの電荷蓄積素子55の電圧が大きくなることを抑制するための制御は、制御装置14側に限ることなく、各変換器CEL側で行ってもよい。主回路部12は、各変換器CELの動作に基づいて、運転停止期間において、電荷蓄積素子55の電圧の大きさの小さい変換器CELを停止状態とし、電荷蓄積素子55の電圧の大きさの大きい変換器CELをバイパス状態としてもよい。換言すれば、複数の変換器CELのそれぞれの動作により、運転停止期間において、主回路部12の複数の変換器CELのうち、電荷蓄積素子55の電圧の大きさの小さい変換器CELが停止状態となり、電荷蓄積素子55の電圧の大きさの大きい変換器CELがバイパス状態となる構成としてもよい。
【0158】
各変換器CELの電荷蓄積素子55の電圧が大きくなることを抑制するための制御を各変換器CEL側で行う場合には、演算負荷を分散させ、制御装置14における演算負荷を軽減させることができる。
【0159】
一方で、各変換器CELの電荷蓄積素子55の電圧が大きくなることを抑制するための制御を各変換器CEL側で行う場合には、各変換器CELのそれぞれの電荷蓄積素子55の電圧の情報などを各変換器CELのそれぞれに入力しなければならず、制御装置14と各変換器CELとの間の通信負荷が増大してしまう可能性がある。
【0160】
これに対して、各変換器CELの電荷蓄積素子55の電圧が大きくなることを抑制するための制御を制御装置14側で行う場合には、制御装置14と各変換器CELとの間の通信負荷を抑えることができる。
【0161】
例えば、図7に関して説明した例のように、運転停止期間において、電荷蓄積素子55の電圧の大きさが所定値以上の変換器CELをバイパス状態とし、電荷蓄積素子55の電圧の大きさが所定値未満の変換器CELを停止状態とする制御を、各変換器CELのそれぞれで行ってもよい。この場合には、各変換器CELのそれぞれの電荷蓄積素子55の電圧の情報などを各変換器CELのそれぞれに入力する必要がなく、各変換器CELの自身の電荷蓄積素子55の電圧の情報のみで制御を行うことができるため、通信負荷の増大を抑えつつ、制御装置14の演算負荷を軽減させることができる。
【0162】
(その他の変形例)
上記各実施形態では、主回路部12にMMC型の電力変換器を用いている。主回路部12は、MMC型に限ることなく、例えば、MV(Medium Voltage)型の電力変換器など、複数の変換器CELを直列に接続する他の方式の電力変換器でもよい。
【0163】
電力変換装置10は、直流送電システムに限ることなく、交流から直流への変換及び直流から交流への変換が必要な他の任意のシステムなどに適用してもよい。主回路部12による交直変換は、交流から直流及び直流から交流の双方に限ることなく、交流から直流又は直流から交流の一方のみでもよい。また、主回路部12は、例えば、交流交流直接変換回路などでもよい。
【0164】
図11図13は、電力変換装置の変形例を模式的に表すブロック図である。
図11に表した電力変換装置10aの主回路部12aのように、主回路部12aの構成は、例えば、複数のアーム部22a~22cをデルタ結線した構成でもよい。
【0165】
図12に表した電力変換装置10bの主回路部12bのように、主回路部12bの構成は、例えば、複数のアーム部22a~22cをスター結線した構成でもよい。
【0166】
図13に表した電力変換装置10cの主回路部12cのように、主回路部12cの構成は、例えば、複数のアーム部22a~22iをマトリックス結線した構成でもよい。主回路部12cは、例えば、変圧器6aを介して交流電力系統2aと接続されるとともに、変圧器6bを介して交流電力系統2bと接続され、交流電力を直接的に別の交流電力に変換することにより、2つの交流電力系統2a、2bを連系させるものなどでもよい。主回路部12cは、例えば、モジュラーマトリックスコンバータなどでもよい。
【0167】
このように、主回路部は、必ずしも複数のレグを有しなくてもよい。主回路部は、少なくとも複数のアーム部を有していればよい。主回路部の構成は、電力の変換が可能な任意の構成でよい。電力変換装置は、例えば、周波数変換装置、直流送電装置、無効電力補償装置、あるいは電力潮流制御装置などでもよい。
【0168】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0169】
2、2a、2b…交流電力系統、 3、4…直流送電線、 6、6a、6b…変圧器、 10、10a~10c…電力変換装置、 12、12a~12c…主回路部、 14、14a~14d…制御装置、 20a…第1直流端子、 20b…第2直流端子、 21a…第1交流端子、 21b…第2交流端子、 21c…第3交流端子、 22a…第1アーム部、 22b…第2アーム部、 22c…第3アーム部、 22d…第4アーム部、 22e…第5アーム部、 22f…第6アーム部、 23a~23f…バッファリアクトル、 24a~24f…電流検出器、 25…電圧検出部、 26…信号線、 40…チョッパ回路、 42…制御部、 44…給電回路、 46…電圧検出器、 50a…第1接続端子、 50b…第2接続端子、 51…第1スイッチング素子、 51d…整流素子、 52…第2スイッチング素子、 52d…整流素子、 53…第3スイッチング素子、 53d…整流素子、 54…第4スイッチング素子、 54d…整流素子、 55…電荷蓄積素子、 60、60a…制御回路、 61~64…駆動回路、 100…制御指令生成部、 102…停止指令生成部、 104…停止制御部、 106…インタロック部、 108…遅延回路、 110、110a…電圧抑制制御部、 112…切替器、 120…停止制御部、 122…インタロック部、 124…切替器、 130…比較器、 132…AND回路、 134…絶対値演算器、 CEL、CELa…変換器、 LG1…第1レグ、 LG2…第2レグ、 LG3…第3レグ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13