(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】LaCe添加型Pr・Nd-Fe-B系焼結磁性体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 41/02 20060101AFI20240109BHJP
H01F 1/057 20060101ALI20240109BHJP
B22F 9/04 20060101ALI20240109BHJP
C22C 38/00 20060101ALI20240109BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20240109BHJP
B22F 1/052 20220101ALI20240109BHJP
B22F 3/00 20210101ALI20240109BHJP
【FI】
H01F41/02 G
H01F1/057 170
B22F9/04 C
B22F9/04 E
C22C38/00 303D
B22F1/00 Y
B22F1/052
B22F3/00 F
(21)【出願番号】P 2022110956
(22)【出願日】2022-07-11
【審査請求日】2022-07-11
(31)【優先権主張番号】202111089037.2
(32)【優先日】2021-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】310005618
【氏名又は名称】煙台東星磁性材料株式有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100139033
【氏名又は名称】日高 賢治
(72)【発明者】
【氏名】陳秀雷
(72)【発明者】
【氏名】彭衆傑
(72)【発明者】
【氏名】董占吉
(72)【発明者】
【氏名】丁開鴻
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許第109585109(CN,B)
【文献】米国特許出願公開第2013/0154778(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0233689(US,A1)
【文献】特開2017-076680(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108231312(CN,A)
【文献】特開昭61-081607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 41/02
H01F 1/057
B22F 9/04
C22C 38/00
B22F 1/00
B22F 1/052
B22F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LaCe添加型Pr・Nd-Fe-B系焼結磁性体の製造方法であって、
(ステップ1)各材料を予め定めた割合で配合し、真空ストリップキャスト炉でR1合金及びR2合金を製造し、ここで前記R1合金はPr及び/又はNdとLa及び/又はCe元素を含み、前記R2合金はLa及びCe元素を含まずにPr及び/又はNdを含み、
前記R1合金に含まれる希土類元素の総含有量は29.00~31.00wt%であり、そのうちLa及び/又はCeの含有量は6.00~20.00wt%、その他はPr及び/又はNdであり、
前記R2合金に含まれるPr及び/又はNdの含有量は33.10~35.00wt%であり、
(ステップ2)前記R1合金及び前記R2合金を、それぞれ水素吸着処理及び脱水素処理を行い、ジェットミルによって粉砕製粉し、粉砕製粉後の前記R1合金及び前記R2合金の平均粒子径は、0.32≦前記R2合金の平均粒子径/前記R1合金の平均粒子径≦0.66の関係式を満たし、
(ステップ3)前記R1合金の粉末及び前記R2合金の粉末を
重量比1:1で混合し、
(ステップ4)混合後の粉末を成型及び配向し、冷間等静圧処理、焼結処理、時効処理して磁性体を得る、
ことを特徴とするLaCe添加型Pr・Nd-Fe-B系焼結磁性体の製造方法。
【請求項2】
前記(ステップ2)における粉砕製粉後の前記R1合金の平均粒子径は、3.1~5.5μmであり、粉砕製粉後の前記R2合金の平均粒子径は、1.0~3.6μmである、
ことを特徴とする請求項1に記載のLaCe添加型Pr・Nd-Fe-B系焼結磁性体の製造方法。
【請求項3】
前記(ステップ1)において、前記R1合金及び前記R2合金は、B、Co、Cu、Ga、Ti、Al及びFe元素を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のLaCe添加型Pr・Nd-Fe-B系焼結磁性体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性体の製造技術分野に属し、特にLa及び/又はCeを添加したPr・Nd-Fe-B系焼結磁性体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
希土類元素のリッチ化は、Pr・Nd-Fe-B系磁性体の製造コスト削減の重要な技術手段である。希土類元素中、LaやCeなどの価格の安い軽希土類元素は磁気特性パラメータが低いことから、これらを添加すると磁気特性が顕著に低下してしまう欠点を有している。
【0003】
例えば、Nd2Fe14Bの飽和磁化Jsは1.6T、異方性磁場HAは73kOe、Pr2Fe14Bの飽和磁化Jsは1.56T、異方性磁場HAは75kOeであるのに対し、La2Fe14Bの飽和磁化Jsは1.38T、異方性磁場HAは20kOe、Ce2Fe14Bの飽和磁化Jsは1.17T、異方性磁場HAは26kOeである。
【0004】
このように、価格の安いLaやCe等の軽希土類元素を活用しながらも、磁性材料の磁気特性への影響を可能な限り低減するために、近年、多主相プロセス、表層結晶粒界拡散、結晶間添加等の方法によって磁気特性を改良する方法が行われている。
【0005】
例えば、中国特許公開第CN102800454A号には、「低コスト2主相Ce永久磁性体合金及びその製造方法」として、Nd-Fe-B及び(Ce、Re)-Fe-BのHAが異なる二つの主相を形成することで、比較的高い磁気特性を得る製造方法が開示されている。しかしながらこの方法では(Ce、Re)-Fe-B主相のHAの低下が顕著であり、磁気特性の向上は限定的にすぎない。また中国特許公開第CN106710768A号には、「水素化(Nd、Ce)-Fe-B焼結磁性体の保磁力向上方法」として、2主相プロセスにNd-HX粉末を添加し、(Nd、Ce)-Fe-Bの外層にNdの硬質磁性体層を形成することで、結晶磁気異方性を向上さる技術が開示されている。この方法によれば、保磁力は効果的に向上するものの、3つの粉体を製造して混合する必要があることから製造プロセスが煩雑化し、かつ焼結工程において、添加したNd-HX粉末の脱水素化を考慮する必要があることから、製造プロセスの難易度が高い課題がある。さらに、中国特許公告第CN102842400B号には、「La-Ce添加による低コストNd-Fe-B系焼結磁性体の製造方法」として、Nd-Fe-BのNdリッチ相を特殊処理したLaCe粉末に置き換え、Nd-Fe-B主相へのLaCeの過度の侵入を防ぐことで、製品の磁気特性を向上させるとともに、コストを削減する技術が開示されている。しかしながらこの方法は、La及びCeを最高活性の希土類元素としており、LaCe粉末は酸化及び窒化し易いことから、添加効果に影響を及ぼす問題を有している。また、LaCe粉末自体の製造工程の難易度が高く、製造プロセスの制御コストに課題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】中国特許公開CN102800454A号公報
【文献】中国特許公開CN106710768A号公報
【文献】中国特許公告CN102842400B号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来技術が有する課題や問題を解消し、安価な軽希土類元素であるLa及び/又はCe元素を用いながらも、磁性体の磁気特性が低下しないLaCe添加型Pr・Nd-Fe-B系焼結磁性体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本願発明は、LaCe添加型Pr・Nd-Fe-B系焼結磁性体の製造方法であって、
(ステップ1)各材料を予め定めた割合で配合し、真空ストリップキャスト炉でR1合金及びR2合金を製造し、ここで前記R1合金はPr及び/又はNdとLa及び/又はCe元素を含み、前記R2合金はLa及びCe元素を含まずにPr及び/又はNdを含み、
(ステップ2)前記R1合金及び前記R2合金を、それぞれ水素吸着処理及び脱水素処理を行い、ジェットミルによって粉砕製粉し、粉砕製粉後の前記R1合金及び前記R2合金の平均粒子径は、0.32≦前記R2合金の平均粒子径/前記R1合金の平均粒子径≦0.66の関係式を満たし、
(ステップ3)前記R1合金の粉末及び前記R2合金の粉末を混合し、
(ステップ4)混合後の粉末を成型及び配向し、冷間等静圧処理、焼結処理、時効処理して磁性体を得る、
ことを特徴とする。
【0009】
また、前記(ステップ1)における前記R1合金に含まれる希土類元素の総含有量は、29.00~31.00wt%である、ことを特徴とする。
【0010】
また、前記R1合金に含まれる希土類元素のうち、La及び/又はCeの含有量は6.00~20.00wt%であり、その他はPr及び/又はNdである、ことを特徴とする。
【0011】
また、前記(ステップ1)における前記R2合金に含まれるPr及び/又はNdの含有量は33.10~35.00wt%である、ことを特徴とする。
【0012】
また、前記(ステップ2)における粉砕製粉後の前記R1合金の平均粒子径は、3.1~5.5μmであり、粉砕製粉後の前記R2合金の平均粒子径は、1.0~3.6μmである、ことを特徴とする。
【0013】
また、前記(ステップ1)において、前記R1合金及び前記R2合金は、B、Co、Cu、Ga、Ti、Al及びFe元素を含む、ことを特徴とする。
【0014】
さらに、前記(ステップ3)における前記R1合金の粉末及び前記R2合金の粉末の混合比は、1:1である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、安価な軽希土類元素であるLa及び/又はCe元素を用いながらも、磁性体の磁気特性が低下しないLaCe添加型Pr・Nd-Fe-B系焼結磁性体を提供することができる。R2合金粉末は重希土類であるPr及び/又はNdを含み、軽希土類であるLaとCeを含まないことで多くのPr・Ndリッチ相を形成するとともに、合金粉末の平均粒子径が小さいことから、La及び/又はCeを含むR1合金粉末粒子の外表面を良好にコーティングすることができる。
【0016】
また焼結及び時効処理工程において、R2合金粉末のPr・Ndリッチ相をLa及び/又はCeを含むR1粉末の外表面から拡散させ、R1合金粉末の外表面に硬質磁性体層を形成することで、La及び/又はCeを含む主相の磁気特性を向上させ、La及び/又はCeを用いたことによる磁気特性の悪化を抑制することができる。
【0017】
更に、本発明で用いる2つの合金粉末は、その粒子径比によって、より良好なコーティング効果を得ることができ、2つの合金に含まれる希土類元素の含有量を調整することで希土類元素の適切な濃度勾配を生じさせ、且つPr-Ndリッチ相はLa及び/又はCe含有粒子の外表面を十分にコーティングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本願発明に係るLaCe添加型Pr・Nd-Fe-B系焼結磁性体の構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本願発明の各実施形態について詳細に説明する。各実施例は、本発明の解釈のみに用いるものであり、本願発明の構成を限定するものではない。
【0020】
<実施例1>
(ステップ1)予め定めた割合に応じて材料を配合し、真空ストリップキャスト炉でR1合金及びR2合金を作成した。R1合金中の各元素及び含有量(重量百分率)は、Nd:23.00%、Ce:6.00%、B:0.95%、Co:1.00%、Al:0.60%、Cu:0.15%、Ga:0.40%、Ti:0.15%、残りはFe及び不可避の不純物である。R2合金中の各元素及び含有量(重量百分率)は、Pr:35.00%、B:0.95%、Co:1.00%、Al:0.60%、Cu:0.15%、Ga:0.40%、Ti:0.15%、残りはFe及び不可避の不純物である。真空ストリップキャスト炉でR1合金及びR2合金を、それぞれストリップキャスト合金薄片へと加工した。
【0021】
(ステップ2)各ストリップキャスト合金薄片に対し、通常の水素吸着処理及び脱水素処理を行った後、R1合金を平均粒子径5.5μmの粉末に粉砕し、R2合金を平均粒子径3.6μmの粉末に粉砕した。
【0022】
(ステップ3)R1合金の粉末とR2合金の粉末を、重量比1:1の割合で混合した。
【0023】
(ステップ4)2つの合金を均一に混合した後、成型、配向及び冷間等静圧処理し、その後1030℃で5時間焼結し、室温まで冷却した後、850℃まで昇温して3時間保温し、再度室温まで冷却した後に500℃まで昇温して3時間保温した。
【0024】
<実施例2>
(ステップ1)予め定めた割合に応じて材料を配合し、真空ストリップキャスト炉でR1合金及びR2合金を作成した。R1合金中の各元素及び含有量(重量百分率)は、Nd:8.80%、Pr:2.20%、Ce:10.00%、La:10.00%、B:0.95%、Co:1.00%、Al:0.60%、Cu:0.15%、Ga:0.40%、Ti:0.15%、残りはFe及び不可避の不純物である。R2合金中の各元素及び含有量(重量百分率)は、Nd:26.50%、Pr:6.60%、B:0.95%、Co:1.00%、Al:0.60%、Cu:0.15%、Ga:0.40%、Ti:0.15%、残りはFe及び不可避の不純物である。真空ストリップキャスト炉でR1合金及びR2合金を、それぞれストリップキャスト合金薄片へと加工した。
【0025】
(ステップ2)各ストリップキャスト合金薄片に対し、通常の水素吸着処理及び脱水素処理を行った後、R1合金を平均粒子径3.1μmの粉末に粉砕し、R2合金を平均粒子径1.0μmの粉末に粉砕した。
【0026】
(ステップ3)R1合金の粉末とR2合金の粉末を、重量比1:1の割合で混合した。
【0027】
(ステップ4)2つの合金を均一に混合した後、成型、配向及び冷間等静圧処理し、その後1030℃で5時間焼結し、室温まで冷却した後、850℃まで昇温して3時間保温し、再度室温まで冷却した後に500℃まで昇温して3時間保温した。
【0028】
<実施例3>
(ステップ1)予め定めた割合に応じて材料を配合し、真空ストリップキャスト炉でR1合金及びR2合金を作成した。R1合金中の各元素及び含有量(重量百分率)は、Pr:18.00%、La:12.00%、B:0.95%、Co:1.00%、Al:0.60%、Cu:0.15%、Ga:0.40%、Ti:0.15%、残りはFe及び不可避の不純物である。R2合金中の各元素及び含有量(重量百分率)は、Nd:34.00%、B:0.95%、Co:1.00%、Al:0.60%、Cu:0.15%、Ga:0.40%、Ti:0.15%、残りはFe及び不可避の不純物である。真空ストリップキャスト炉でR1合金及びR2合金を、それぞれストリップキャスト合金薄片へと加工した。
【0029】
(ステップ2)各ストリップキャスト合金薄片に対し、通常の水素吸着処理及び脱水素処理を行った後、R1合金を平均粒子径4.0μmの粉末に粉砕し、R2合金を平均粒子径2.0μmの粉末に粉砕した。
【0030】
(ステップ3)R1合金の粉末とR2合金の粉末を、重量比1:1の割合で混合した。
【0031】
(ステップ4)2つの合金を均一に混合した後、成型、配向及び冷間等静圧処理し、その後1030℃で5時間焼結し、室温まで冷却した後、850℃まで昇温して3時間保温し、再度室温まで冷却した後に500℃まで昇温して3時間保温した。
【0032】
図1は、本願発明に係るLaCe添加型Pr・Nd-Fe-B系焼結磁性体の構造を示す模式図であり、粒子径の大きなR1合金の外表面に、粒子径の小さなR2合金がコーティングされ、R2合金粉末のPr・Ndリッチ相をLa及び/又はCeを含むR1粉末の外表面から拡散させ、R1合金粉末の外表面に硬質磁性体層を形成する様子を示している。
【0033】
実施例1~実施例3におけるR1合金及びR2合金中の希土類元素の含有量を表1に、また実施例1~実施例3におけるR1合金粉末及びR2合金粉末の平均粒子径、及び得られた磁性体の磁気特性を表2にそれぞれ示す。
【0034】
<表1>実施例1~3におけるR1、R2合金中の希土類元素の含有量
【0035】
<表2>実施例1~3におけるR1、R2合金粉末の平均粒子径及び磁気特性
【0036】
本願発明に係る方法によって製造された磁性体と対比するため、以下の比較例1~3を作成した。
<比較例1>
(ステップ1)予め定めた割合に応じて材料を配合し、真空ストリップキャスト炉でR1合金及びR2合金を作成した。R1合金中の各元素及び含有量(重量百分率)は、Nd:23.00%、Ce:6.00%、B:0.95%、Co:1.00%、Al:0.60%、Cu:0.15%、Ga:0.40%、Ti:0.15%、残りはFe及び不可避の不純物である。R2合金中の各元素及び含有量(重量百分率)は、Pr:35.00%、B:0.95%、Co:1.00%、Al:0.60%、Cu:0.15%、Ga:0.40%、Ti:0.15%、残りはFe及び不可避の不純物である。真空ストリップキャスト炉でR1合金及びR2合金を、それぞれストリップキャスト合金薄片へと加工した。
【0037】
(ステップ2)各ストリップキャスト合金薄片に対し、通常の水素吸着処理及び脱水素処理を行った後、R1合金を平均粒子径3.6μmの粉末に粉砕し、R2合金を平均粒子径3.6μmの粉末に粉砕した。
【0038】
(ステップ3)R1合金の粉末とR2合金の粉末を、重量比1:1の割合で混合した。
【0039】
(ステップ4)2つの合金を均一に混合した後、成型、配向及び冷間等静圧処理し、その後1030℃で5時間焼結し、室温まで冷却した後、850℃まで昇温して3時間保温し、再度室温まで冷却した後に500℃まで昇温して3時間保温した。
【0040】
<比較例2>
(ステップ1)予め定めた割合に応じて材料を配合し、真空ストリップキャスト炉でR1合金及びR2合金を作成した。R1合金中の各元素及び含有量(重量百分率)は、Nd:26.00%、Ce:6.00%、B:0.95%、Co:1.00%、Al:0.60%、Cu:0.15%、Ga:0.40%、Ti:0.15%、残りはFe及び不可避の不純物である。R2合金中の各元素及び含有量(重量百分率)は、Pr:32.00%、B:0.95%、Co:1.00%、Al:0.60%、Cu:0.15%、Ga:0.40%、Ti:0.15%、残りはFe及び不可避の不純物である。真空ストリップキャスト炉でR1合金及びR2合金を、それぞれストリップキャスト合金薄片へと加工した。
【0041】
(ステップ2)各ストリップキャスト合金薄片に対し、通常の水素吸着処理及び脱水素処理を行った後、R1合金を平均粒子径5.5μmの粉末へと粉砕し、R2合金を平均粒子径3.6μmの粉末に粉砕した。
【0042】
(ステップ3)R1合金の粉末とR2合金の粉末を、重量比1:1の割合で混合した。
【0043】
(ステップ4)2つの合金を均一に混合した後、成型、配向及び冷間等静圧処理し、その後1030℃で5時間焼結し、室温まで冷却した後、850℃まで昇温して3時間保温し、再度室温まで冷却した後に500℃まで昇温して3時間保温した。
【0044】
<比較例3>
(ステップ1)予め定めた割合に応じて材料を配合し、真空ストリップキャスト炉でR1合金及びR2合金を作成した。R1合金中の各元素及び含有量(重量百分率)は、Nd:7.20%、Pr:1.80%、Ce:11.00%、La:11.00%、B:0.95%、Co:1.00%、Al:0.60%、Cu:0.15%、Ga:0.40%、Ti:0.15%、残りはFe及び不可避の不純物である。R2合金中の各元素及び含有量(重量百分率)は、Nd:26.50%、Pr:6.60%、B:0.95%、Co:1.00%、Al:0.60%、Cu:0.15%、Ga:0.40%、Ti:0.15%、残りはFe及び不可避の不純物である。真空ストリップキャスト炉でR1合金及びR2合金を、それぞれストリップキャスト合金薄片へと加工した。
【0045】
(ステップ2)各ストリップキャスト合金薄片に対し、通常の水素吸着処理及び脱水素処理を行った後、R1合金を平均粒子径3.1μmの粉末に粉砕し、R2合金を平均粒子径1.0μmの粉末に粉砕した。
【0046】
(ステップ3)R1合金の粉末とR2合金の粉末を、重量比1:1の割合で混合した。
【0047】
(ステップ4)2つの合金を均一に混合した後、成型、配向及び冷間等静圧処理し、その後1030℃で5時間焼結し、室温まで冷却した後、850℃まで昇温して3時間保温し、再度室温まで冷却した後に500℃まで昇温して3時間保温した。
【0048】
比較例1~比較例3におけるR1合金及びR2合金中の希土類元素の含有量を表3に、また比較例1~比較例3におけるR1合金粉末及びR2合金粉末の平均粒子径及び得られた磁性体の磁気特性を表4にそれぞれ示す。
【0049】
<表3>比較例1~3におけるR1、R2合金中の希土類元素の含有量
【0050】
<表4>比較例1~3におけるR1、R2合金粉末の平均粒子径及び磁気特性
【0051】
上記表2、表4に示すとおり、本発明の方法を用いて製造した磁性体である実施例1では、Ceの含有量を3.00wt%としているが、Brが12.45kGs、Hcjが19.35kOeであり、実施例2では、La及びCeの含有量を10.00wt%としているが、Brが12.05kGs、Hcjが16.13kOeであり、実施例3では、Laの含有量を6.00wt%としているが、Brが12.43kGs、Hcjが17.05kOeと、いずれも良好な磁気特性が得られた。
【0052】
実施例1と比較例1は成分が同一であるが、実施例1のR1合金及びR2合金の平均粒子径は5.5μmと3.6μmであり、2つの合金粉末が適切な粒子径差を有し、良好なコーティング構造を形成できることで、良好な磁気特性を得ることができている。
【0053】
比較例1のR1合金粉末及びR2合金粉末の平均粒子径はいずれも3.6μmとしているが、その保磁力は実施例1ほど大きくない。これは、比較例1のR1合金粉末とR2合金粉末に粒子径差がないことで、Pr-Ndリッチ相に十分なコーティング構造を形成できていないからであり、更には、焼結及び時効処理において、La及び/又はCeを含む主相結晶粒子の外表面に希土類元素の拡散による有効な硬質磁性体層を形成できないことに起因する。
【0054】
実施例1と比較例2を対比すると、R1合金粉末及びR2合金粉末の平均粒子径、混合後の希土類元素の総量及びCeの含有量が同一であるものの、比較例2ではR2合金の希土類元素の総量が僅かに32.00wt%と少なく、R2合金粉末中のPr・Ndリッチ相も少ない。R1合金粉末及びR2合金粉末の平均粒子径の差によってコーティング構造を形成したとしても、Pr・Ndリッチ相でLa及び/又はCeを含む主相結晶粒子の外表面をコーティングするには不十分であり、焼結及び時効処理において十分な硬質磁性体層を形成することができず、比較例2のBrは12.34kGs、Hcjは18.27kOeと実施例1の磁気特性を下回っている。
【0055】
比較例3の磁気特性が悪い主たる要因は、La及びCeの添加量が多すぎるからであり、La及びCeの過度の添加によって不純物相が形成され、結果として総合的な磁気特性も低くなっている。
【0056】
以上説明した各実施例は、いずれも本発明の好ましい実施形態の一例に過ぎず、本発明を限定するものではなく、本発明の技術思想の範囲内で行われる修正、同等の置換、改良等は、全て本発明の保護範囲内に属する。