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特許7414402通信装置、通信装置の制御方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】通信装置、通信装置の制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 16/28 20090101AFI20240109BHJP
   H04W 28/16 20090101ALI20240109BHJP
   H04W 76/15 20180101ALI20240109BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20240109BHJP
   H04W 92/20 20090101ALI20240109BHJP
   H04B 7/022 20170101ALI20240109BHJP
   H04J 1/00 20060101ALI20240109BHJP
   H04L 27/26 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
H04W16/28 150
H04W28/16
H04W76/15
H04W84/12
H04W92/20
H04B7/022
H04J1/00
H04L27/26 100
H04L27/26 312
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019075030
(22)【出願日】2019-04-10
(65)【公開番号】P2020174282
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大内 雅智
【審査官】伊藤 嘉彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/084268(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/108901(WO,A1)
【文献】特開2017-135750(JP,A)
【文献】特表2016-501465(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0037511(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0021929(US,A1)
【文献】Adrian Garcia-Rodriguez (Nokia),Coordinated Null Steering for EHT(online),IEEE 802.11-19/0401r1,Internet<URL:https://mentor.ieee.org/802.11/dcn/19/11-19-0401-01-0eht-coordinated-null-steering-for-eht.pptx>,2019年03月12日
【文献】Kome Oteri (InterDigital),Coordinated Multi-AP Transmission for EHT(online),IEEE 802.11-19/0071r0,Internet<URL:https://mentor.ieee.org/802.11/dcn/19/11-19-0071-00-0eht-coordinated-multi-ap-transmission-for-eht.pptx>,2019年01月13日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00 - 99/00
H04B 7/022
H04B 7/24 - 7/26
H04J 1/00
H04L 27/26
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
IEEE802.11シリーズの規格に対応する通信装置であって、
1つ以上の他の通信装置が所定の周波数帯を使用してIEEE802.11シリーズの規格に準拠した協調通信を行うことが可能である場合に、それぞれがアクセスポイントとして動作する当該1つ以上の他の通信装置がビームフォーミングを実行可能でありステーションのチャネル状態を取得できるか否かを判定する第1の判定手段と、
前記第1の判定手段により、ビームフォーミングを実行可能でありチャネル状態を取得できると判定され、かつ前記1つ以上の他の通信装置と高速接続を行うことができる場合に、前記1つ以上の他の通信装置と所定の周波数チャネルを使用して並行してステーションへデータを伝送する通信方式のうちJTX(Joint Transmission)方式を選択する選択手段と、
を有することを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記通信装置と前記1つ以上の他の通信装置が、前記通信装置と前記1つ以上の他の通信装置との間で、時分割で前記所定の周波数帯を使用するスケジュール調整が可能か否かを判定する第の判定手段を更に有し、
前記第1の判定手段により、ビームフォーミングを実行可能でありチャネル状態を取得できると判定されず、前記第の判定手段により、前記スケジュール調整が可能であると判定された場合、前記選択手段は、スケジュール調整方式を選択することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記第1の判定手段により、ビームフォーミングを実行可能でありチャネル状態を取得できると判定されず、前記第の判定手段により、前記スケジュール調整が可能であると判定された場合、前記選択手段は、前記通信装置と前記1つ以上の他の通信装置が、それぞれ異なる送信電力となるように制御してから時分割で前記所定の周波数帯を用いる、送信電力制御を併用したスケジュール調整方式を選択することを特徴とする請求項に記載の通信装置。
【請求項4】
前記ステーションが、属しているネットワークと重複する他のネットワークにも属しているか否かを判定する第の判定手段を更に有し、
前記第1の判定手段により、ビームフォーミングを実行可能でありチャネル状態を取得できると判定されず、前記第の判定手段により、前記ステーションが前記他のネットワークに属していると判定された場合、前記選択手段は、前記通信装置と前記1つ以上の他の通信装置が異なる周波数帯を用いて協調通信を実現するCoordinated OFDMA(直交周波数分割多元接続)方式を選択することを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項5】
前記Coordinated OFDMA方式が選択された場合、前記通信装置は第1のRU(Resource Unit)を用いて前記ステーションとの通信を実行し、前記他の通信装置は、前記通信装置が使用する前記第1のRUとは異なるRUを用いて前記ステーションとの通信を実行することを特徴とする請求項に記載の通信装置。
【請求項6】
前記第1の判定手段により、ビームフォーミングを実行可能でありチャネル状態を取得できると判定されず、前記第の判定手段により、前記ステーションが前記他のネットワークに属していないと判定された場合、前記選択手段は、前記通信装置と前記1つ以上の他の通信装置との間で、前記周波数帯を少なくとも一部を重複させて使用するFractional Coordinated OFDMA方式を選択することを特徴とする請求項又はに記載の通信装置。
【請求項7】
前記第1の判定手段は、無線品質を示す値が所定値以上であることを条件に前記ステーションのチャネル状態を取得できると判定する、ことを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の通信装置。
【請求項8】
IEEE802.11シリーズの規格に対応する通信装置によって実行される制御方法であって、
1つ以上の他の通信装置が所定の周波数帯を使用してIEEE802.11シリーズの規格に準拠した協調通信を行うことが可能である場合に、それぞれがアクセスポイントとして動作する当該1つ以上の他の通信装置がビームフォーミングを実行可能でありステーションのチャネル状態を取得することが可能である否かを判定する判定工程と、
前記判定工程においてビームフォーミングを実行可能でありチャネル状態を取得できると判定され、かつ前記1つ状の他の通信装置と高速接続を行うことができる場合に、前記1つ以上の他の通信装置と所定の周波数チャネルを使用して並行してステーションへデータを伝送する通信方式のうちJTX(Joint Transmission)方式を選択する選択工程と、
を有することを特徴とする通信装置の制御方法。
【請求項9】
コンピュータを、請求項1からのいずれか1項に記載の通信装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線LANにおける通信制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
無線LAN(Wireless Local Area Network)に関する通信規格としてIEEE802.11シリーズ規格が知られている。IEEE802.11ax規格では、OFDMAを用いて、高いピークスループットに加え、混雑状況下での通信速度向上を実現している。なお、OFDMAとは、Orthogonal Frequency-Division Multiple Accessの略であり、直交周波数分割多元接続とも称される。現在、更なるスループット向上のために、IEEE802.11ax規格の後継規格として、IEEE802.11 EHT(Extreme(またはExtremely) High Throughput)と呼ばれるStudy Groupが、IEEEにおいて発足した。IEEE802.11 EHTが目指すスループット向上の方策のひとつとして、複数のAP(アクセスポイント)が協調して動作するMulti-AP Coordination(マルチAP協調)構成が検討されている。マルチAP協調構成では、複数のAPが協調して動作することにより、接続する無線LAN端末に対して、ひとつのAPのときよりも、高速あるいは安定した通信を行うことが可能となる。マルチAP協調構成を実現する技術方式は複数存在する。
【0003】
また、IEEE802.11シリーズの規格に準拠する無線LAN環境において、Distributed MIMO(Multiple-Input Multiple-Output)(D-MIMO)通信が提案されている(特許文献1)。D-MIMOは、複数のAPがひとつの無線LAN端末に対して同タイミングにおいて同周波数チャネルで通信する技術であり、空間の多重利用によって、高速通信を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2018/263045号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、マルチAP協調構成を実現する技術方式は複数存在する。しかしながら、マルチAP協調構成において通信する通信装置間の通信条件等に応じて、どのようにマルチAP協調構成を実現する技術方式を決定するかについてはこれまで提案されていなかった。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、マルチAP協調構成を実現する技術方式を適切に決定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様による通信装置は、以下の特徴を有する。すなわち、IEEE802.11シリーズの規格に対応する通信装置であって、1つ以上の他の通信装置が所定の周波数帯を使用してIEEE802.11シリーズの規格に準拠した協調通信を行うことが可能である場合に、それぞれがアクセスポイントとして動作する当該1つ以上の他の通信装置がビームフォーミングを実行可能でありステーションのチャネル状態を取得できるか否かを判定する第1の判定手段と、前記第1の判定手段により、ビームフォーミングを実行可能でありチャネル状態を取得できると判定され、かつ前記1つ状の他の通信装置と高速接続を行うことができる場合に、前記1つ以上の他の通信装置と所定の周波数チャネルを使用して並行してステーションへデータを伝送する通信方式のうちJTX(Joint Transmission)方式を選択する選択手段と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
マルチAP協調構成を実現する技術方式を適切に決定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ネットワーク構成例を示す図。
図2】APのハードウェア構成例を示す図。
図3】APの機能構成例を示す図。
図4】APにより実行される処理のフローチャート。
図5】いくつかのマルチAP協調方式に従う構成を説明するための模式図。
図6】チャネル状態確認とnull steering構成を説明するためのシーケンスチャート。
図7】JTX(D-MIMO)構成を説明するためのシーケンスチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
(ネットワーク構成)
図1に、本実施形態における無線通信ネットワークの構成例を示す。AP(アクセスポイント)102が管理するBSS(Basic Service Set)1(BSS1)のネットワークは二点鎖線の円101で示される。また、AP105が管理するBSS2のネットワークは点線の円104で示される。無線LAN端末であるSTA(ステーション)103、106は、複数のAPと接続関係を維持することが可能である。AP102、105とSTA103、106は、IEEE802.11 EHT(Extreme(またはExtremely) High Throughput)規格に準拠する機器(EHT機器)である。また、AP102とAP105は、マルチAP協調(Multi-AP Coordination)動作に対応する(マルチAP協調機能を有する)。マルチAP協調機能を有するAP間では、APは他のAPと所定の周波数帯を協調して使用して協調通信を行うことができる。これにより、接続する無線LAN端末に対して、ひとつのAPのときよりも、高速あるいは安定した通信を実現することができる。ここで、安定した状態とは、良好な信号雑音比、低干渉、低遅延、低ジッタの任意の組み合わせの状態である。マルチAP協調機能を実現する技術方式(マルチAP協調方式)は、後述するように様々な方式が存在する。
【0012】
バックホール100は、異なるBSSのネットワークを管理する複数のAPが相互通信するための通信手段である。バックホール100は、Ethernet(登録商標)や電話回線のような有線方式で構成されてもよく、または、LTE(Long-Term Evolution)やWiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)のような無線方式で構成されてもよい。あるいは、バックホール100は、IEEE802.11シリーズの規格の無線LANで構成されてもよい。バックホール100がそのような無線LANで構成される場合、AP102、105とSTA103、106間で使用される無線チャネルと同じでも異なっていてもよい。
【0013】
なお、図1に示す無線通信ネットワークの構成は説明のための例に過ぎず、例えば、更に広範な領域に多数のEHT機器およびレガシー機器(IEEE802.11a/b/g/n/ax規格に従う通信装置)を含むネットワークが構成されてもよい。また、図1に示した各通信装置の配置に限定されず、様々な通信装置の位置関係に対しても、以下の議論を適用可能である。
【0014】
(APの構成)
図2は、AP102のハードウェア構成を示すブロック図である。なお、AP105もAP102と同様のハードウェア構成を有する。AP102は、そのハードウェア構成の一例として、記憶部201、制御部202、機能部203、入力部204、出力部205、通信部206、および1本以上のアンテナ207を有する。
【0015】
記憶部201はROMやRAM等のメモリにより構成され、後述する各種動作を行うためのプログラムや、無線通信のための通信パラメータ等の各種情報を記憶する。なお、記憶部201として、ROM、RAM等のメモリの他に、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、DVDなどの記憶媒体を用いてもよい。また、記憶部201が複数のメモリ等を備えていてもよい。
【0016】
制御部202は、例えばCPUやMPU等のプロセッサ、ASIC(特定用途向け集積回路)、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)等により構成される。ここで、CPUはCentral Processing Unitの、MPUは、Micro Processing Unitの頭字語である。記憶部201に記憶されたプログラムを実行することにより、APを制御する。なお、制御部202は、記憶部201に記憶されたプログラムとOS(Operating System)との協働により、AP102を制御するようにしてもよい。また、制御部202がマルチコア等の複数のプロセッサから成り、AP102を制御するようにしてもよい。また、制御部202は、機能部203を制御して、撮像や印刷、投影等の所定の処理を実行する。機能部203は、AP102が所定の処理(撮像や印刷、投影等を含み得る)を実行するためのハードウェアである。
【0017】
入力部204は、ユーザからの各種操作の受付を行う。出力部205は、ユーザに対して各種出力を行う。ここで、出力部205による出力とは、画面上への表示や、スピーカによる音声出力、振動出力等の少なくともひとつを含む。なお、タッチパネルのように入力部204と出力部205の両方を1つのモジュールで実現するようにしてもよい。
【0018】
通信部206は、IEEE 802.11シリーズの規格に準拠した無線通信の制御や、Wi-Fi(登録商標)に準拠した無線通信の制御や、IP(Internet Protocol)通信の制御を行う。更に、通信部206は1本以上のアンテナ207を制御して、無線通信のための無線信号の送受信を行う。1本以上のアンテナ207は、後述するようなD-MIMO(Distributed Multiple-Input Multiple-Output)通信も可能なように構成され得る。
【0019】
図3は、AP102の機能構成例を示すブロック図である。なお、AP105もAP102と同様の機能構成を有する。AP102は、その機能構成の一例として、無線LAN制御部301、UI制御部302、選択部303、Single-AP構成制御部304、JTX構成制御部305、null steering構成制御部306、Coordinated OFDMA構成制御部307、Fractional Coordinated OFDMA構成制御部308、およびスケジュール調整構成制御部309を有する。
【0020】
無線LAN制御部301は、他の無線LAN装置(例えば他のAPやSTA)との間で無線信号の送受信を行うための回路及びそれらを制御するプログラムを含んで構成される。無線LAN制御部301は、IEEE802.11規格シリーズに従って、フレーム生成及びフレーム送信や、他の無線LAN装置からの無線フレームの受信等、無線LANの通信制御を実行する。また、無線LAN制御部301は、受信した無線フレームを解析して、当該無線フレームに含まれる情報により、所定の条件が満たされるか否かを判定する機能も有する。
【0021】
UI制御部302は、AP102の不図示のユーザによる、入力部204(図2)に対する操作を受け、当該操作に対応する制御信号を、各構成要素に伝達するための制御や、出力部205(図2)に対する出力(表示等も含む)制御を行う。
【0022】
選択部303は、無線LAN制御部301による解析/判定の結果に応じて、AP102による通信方式を選択(決定)する。選択部303の動作の詳細については、図4を用いて後述する。Single-AP構成制御部304は、選択部303によりSingle-AP方式が選択された場合に、当該方式に従う構成を実現するための通信制御を行う。JTX構成制御部305は、選択部303によりJTX(Joint Transmission(ジョイント送信))方式が選択された場合に、当該方式に従う構成を実現するための通信制御を行う。null steering構成制御部306は、選択部303によりnull steering方式が選択された場合に、当該方式に従う構成を実現するための通信制御を行う。Coordinated OFDMA構成制御部307は、選択部303によりCoordinated OFDMA方式が選択された場合に、当該方式に従う構成を実現するための通信制御を行う。Fractional Coordinated OFDMA構成制御部308は、選択部303によりFractional Coordinated OFDMA方式が選択された場合に、当該方式による構成を実現するための通信制御を行う。スケジュール調整構成制御部309は、選択部303によりスケジュール調整方式が選択された場合に、当該方式に従う構成を実現するための通信制御を行う。Single-AP構成制御部304、JTX構成制御部305、null Steering構成制御部306、Coordinated OFDMA構成制御部307、Fractional Coordinated OFDMA構成制御部308、およびスケジュール調整構成制御部309の機能部の動作については後述する。
【0023】
(STAの構成)
AP102、106の通信相手装置であるSTA103、106のハードウェア構成は、上記のAP102のハードウェア構成(図2)と同様な構成であり得る。すなわち、STA103、106は、記憶部201、制御部202、機能部203、入力部204、出力部205、通信部206、および1本以上のアンテナ207を有して構成され得る。また、STA103、106の機能構成については図示しないが、AP102により選択された通信方式に従う構成で通信可能なように構成され得る。
【0024】
(処理の流れ)
続いて、上述のように構成されるAPにより実行される処理の流れについて説明する。図4は、AP102により実行される、通信方式の選択処理のフローチャートを示す。図4に示す処理は、AP102がBSS1のネットワーク(図1の円101)を確立する際、または、BSS1のネットワーク運用中の任意のタイミングで行われ得る。図4に示すフローチャートは、AP102の制御部202が記憶部201に記憶されている制御プログラムを実行し、情報の演算および加工並びに各ハードウェアの制御を実行することにより実現され得る。
【0025】
S401で、AP102の無線LAN制御部301は、AP102の周辺に存在するAP(周辺AP)が存在するかについて、確認と探索を行う。ここで、周辺APは、AP102により無線または有線で通信可能なAPを指す。また、確認と探索の手順には、無線通信においてBeaconフレームを受信する、または、有線通信においてブロードキャスト/マルチキャストによりフレームを受信するパッシブな手順と、問い合わせフレームを送信するアクティブな手順がある。図1のネットワーク構成の場合、AP102は、確認と探索の結果、AP105を周辺APとして発見する。
【0026】
周辺APが発見できなかった場合(S401でNo)、処理はS403へ進む。S403では、選択部303は、Single-AP方式を選択して、処理を終了する。Single-AP構成とは、APがBSSのネットワークを運用管理する際に、他APの制御を必要としない構成である。Single-AP構成が選択されると、AP102のSingle-AP構成制御部304は、BSS1のネットワーク(図1における円101)を、AP105の制御なしに単独で管理するための制御を行う。
【0027】
周辺APを発見できた場合(S401でYes)、処理はS402へ進む。S402では、無線LAN制御部301は、発見した周辺APがマルチAP協調動作に対応するか(マルチAP協調機能を有するか)否かを判定する。無線LAN制御部301は、S401における周辺APの探索動作の際に受信したフレームに含まれる、能力(Capabilities)に関するInformation element(情報要素)等に基づいて、周辺APがマルチAP協調動作に対応するか否かを判定し得る。なお、上述したように、図1のネットワーク構成の場合、AP102とAP105はマルチAP協調動作に対応している。周辺APがマルチAP協調動作に対応していない場合は(S402でNo)、処理はS403へ進み、選択部303は、Single-AP方式を選択して、処理を終了する。
【0028】
周辺APがマルチAP協調動作に対応している場合は(S402でYes)、処理はS404に進む。S404では、無線LAN制御部301は、自AP(AP102)と各周辺APが、これらのAPに接続している全STAからCSI(Channel State Information:チャネル状態情報)を取得できるか否かを判定する。図1のネットワーク構成の場合、AP102がSTA103に加えSTA106とのチャネル情報を取得できるか、および、AP105がSTA106に加えSTA103とのチャネル情報を取得できるかを判定する。なお、CSIは、NDP(Null Data Packet)を用いたsounding(サウンディング)手順、またはbeamforming(ビームフォーミング)手順によって取得できる。この手順で取得できる情報は、IEEE802.11規格のCSI Report fieldは、SNR(Signal-to-Noise Ratio)とCSI Matrixとして規定されている。
【0029】
ここで、CSI取得可能となる条件の一例を説明する。第一の条件は、あるAPと、当該APと周辺APに接続している全STAとが電波到達範囲にあることである。なお、単に電波が到達するだけでなく、RSSI(Received Signal Strength Indicator)、または、CQI(Channel Quality Indicator:チャネル品質指標)が既定値以上という条件を加えてもよい。第二の条件は、STAが、ひとつのAPの管理下にある状態で、その他の周辺APに、データを送信できることである。ここで、管理下にあるとは、IEEE 802.11シリーズの規格のAssociation(接続)を確立していることである。このように同時に複数のAPと接続を確立する機能をMulti-AP Association機能と呼ぶ。一般に、APは、STAと接続する際の能力(Capabilities)に関するInformation element(情報要素)の交換によって、STAのMulti-AP Association対応可否を把握している。更に、マルチAP協調動作に対応しているAP間では、それぞれの端末のMulti-AP Association対応可否情報を交換できる。CSI取得可能となる条件は、上記第一の条件および/または第二の条件に限定されず、他の条件を用いてもよい。例えば、Implicit beamformingを使用することができるという条件である。Implicit beamformingとは、NDPによるsoundingなしに(既定のチャネル状態とみなして)beamformingを行うことを指す。Implicit beamformingは、例えば、ユーザにより入力部204(図2)を介して所定の設定が行われた場合や、通信相手装置との通信でRSSIが良好な場合に、使用可能とすることができる。Implicit beamformingを使用する条件が満たされる場合(Implicit beamformingを使用できる場合)、APは、NDPによるsoundingなしに既定値のチャネル状態を取得できたものとして、その後の送信処理を行うことができる。
【0030】
S404で全STAのCSIを取得可能であると判定した場合は(S404でYes)、処理はS405へ進み、それ以外の場合は(S404でNo)、処理はS408へ進む。S404でYesの場合はCSIを用いた通信方式が選択され、S404でNoの場合はCSIを用いない通信方式が選択されることになる。
【0031】
S405では、無線LAN制御部301は、AP102と周辺APとの接続状態を確認し、高速接続可能であるかを判定する。ここで、高速接続が可能な状態とは、APとSTAの通信に影響を与えることなく、独立してAPと周辺APの通信が可能である状態のことである。この状態を満たす第一の例は、APと周辺AP通信用のバックホール100が、Ethernet(登録商標)やxDSL(種々のDigital Subscriber Line)のような有線通信、またはLTE(Long-Term Evolution)やWiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)といった公衆無線通信であることである。この状態を満たす第二の例は、APと周辺APがMulti-band(マルチバンド)またはMulti-channel(マルチチャネル)に対応している(Multi-bandまたはMulti-channelを介して接続されている)ことである。ここで、Multi-bandに対応していることは、無線LANの複数の運用周波数帯で、同時に通信できることを意味する。よって、例えば、APとSTAの間では、2.4GHz帯を用い、APと周辺APの間では、5GHz帯や6GHz帯を用いるという通信が含まれる。また、Multi-channelに対応していることは、無線LANの複数の周波数チャネルで、同時に通信できることを意味する。よって、例えば、5GHz帯というひとつの帯域で、APとSTAの間は、W52(36ch、40ch、44ch、48ch)の4個のチャネルを用い、APと周辺APの間は、W56(100ch、104ch、...、140ch)の11個のチャネルを用いる通信が含まれる。
【0032】
S405で高速接続可能であると判定した場合は(S405でYes)、処理はS406へ進む。S406では、選択部303は、マルチAP協調構成の方式として、JTX(Joint Transmission)方式を選択し、終了する。S405で高速接続可能ではないと判定したときは(S405でNo)、処理はS407に進む。S407では、選択部303は、マルチAP協調構成の方式として、null steering方式を選択し、処理を終了する。なお、null steering(ヌルステアリング)をビームのゼロ点形成と称することもある。
【0033】
S404で全STAのCSIを取得可能でないと判定した場合は(S404でNo)、処理はS408へ進む。S408では、無線LAN制御部301は、時分割で所定の周波数帯を使用する、通信スケジュールの調整が可能であるか否かを判定する。無線LAN制御部301は、通信スケジュールの調整が可能であるか否かを、周辺APと交換した能力(Capabilities)に関するInformation element(情報要素)等により判定し得る。また、システムにおいて各APが予め通信スケジュールの調整は可能か否かが設定されていてもよい。通信スケジュールの調整が可能であると判定した場合は(S408でYes)、処理はS409へ進む。S409では、選択部303は、マルチAP協調構成の方式として、スケジュール調整方式を選択し、処理を終了する。
【0034】
S408で通信スケジュールの調整が可能でないと判定した場合は(S408でNo)、処理はS410へ進む。S410では、無線LAN制御部301は、干渉制限(Interference limited)STA(端末)が存在するかを判定する。ここで、干渉制限STAとは、自身が接続していないAPからの通信の影響を受ける(自身が属するBBSのネットワークと重複する他のBBSのネットワークにも属する)STAを指す。図1のネットワーク構成の場合、STA103とSTA106は、共に干渉制限STAとなる。影響を受けないSTAは、非干渉制限(Non-Interference limited)STAと呼ばれる。例えば、図1において、STA106がBBS1のネットワーク(円101)の外で、かつ、BBS2のネットワーク(円104)の内にあれば、非干渉制限STAとなる。無線LAN制御部301は、各STAから、位置情報や受信したフレームの強度/品質が既定レベル以上であることの報告を受けて、S410の判定を行い得る。例えば、各STAは、接続しているAP(自身が属するBSSのネットワーク)とは異なるAP(他のBSSのネットワーク)からのフレームを既定レベル以上の強度/品質で受信したとき、自身が接続するAPにその情報を報告し得る。更に、AP間では、当該情報を共有しているものとする。無線LAN制御部301は当該情報を受けることにより、S410の判定を行い得る。強度/品質の一例はRSSI(Received Signal Strength Indicator)である。
【0035】
干渉制限STAが存在すると判定した場合は(S410でYes)、処理はS411へ進む。S411では、選択部303は、マルチAP協調構成の方式として、Coordinated OFDMA方式を選択し、処理を終了する。S410で干渉制限STAが存在しないと判定した場合は(S410でNo)、処理はS412へ進む。S412では、選択部303は、マルチAP協調構成の方式として、Fractional Coordinated OFDMA方式を選択し、処理を終了する。
【0036】
次に、選択部303により選択されたマルチAP協調方式に従う構成について説明する。図5(a)~(c)は、いくつかのマルチAP協調方式に従う構成を説明するための模式図であり、(a)Coordinated OFDMA構成(S411)、(b)Fractional Coordinated OFDMA構成(S412)、(c)スケジュール調整構成(S409)を示す。図5(d)については後述する。なお、図5(a)~(d)に共通な表記法として、横軸は時間、縦軸は周波数を示す。ここで、時間軸の絶対的な区間長や時間の粒度・単位は、マルチAP協調構成のユースケースによって、変化し得る。たとえば、IEEE 802.11のTU(Time Unit)というマイクロ秒から、人間の感度や操作に関連するミリ秒や秒、あるいはそれ以上の数値や単位であってもよい。また、周波数軸の粒度・単位は、一例としてIEEE 802.11axから規定されたOFDMAにおける通信の周波数帯単位であるRU(Resource Unit:リソースユニット)としている。しかし、この粒度・単位もAPとSTAの能力によっては、Multi-band通信で使用可能なバンド(周波数帯)やMulti-channel通信で使用可能なチャネルとしてもよい。また、実線の矩形はAP102(BSS1のネットワーク)が用いる時間軸/周波数領域、一点鎖線の矩形はAP105(BSS2のネットワーク)が用いる時間軸/周波数領域を示す。
【0037】
図5(a)は、Coordinated OFDMA構成の模式図である。当該構成は、Coordinated OFDMA構成制御部307によって実現される。この構成では、複数のBSS(APとSTA)の間で、RUを明確に区分けする。つまりAP102とSTA103、AP105とSTA106のそれぞれが通信で使用するRUは、重複(オーバーラップ)しない。なお、図5(a)のエッジSTA(edge STA)は、干渉制限STA(Interference limited STA)と同義語である。
【0038】
図5(b)は、Fractional Coordinated OFDMA構成の模式図である。この構成は、Fractional Coordinated OFDMA構成制御部308によって実現される。この構成では、複数のBSS(APとSTA)間で使用するRUは、一部あるいは全てが重複してもよい。なお、図では、わかりやすさのために、ふたつの矩形をずらして表記しているが、全く重なっていてもよい。このように、Fractionalとは、周波数が完全に分割されていない、つまり、ところどころ(断片的)がOFDMAのように使用されている、という意味である。また、図5(b)のセンターSTA(center STA)とは、非干渉制限STA(Non―Interference limited STA)と同義語である。
【0039】
図5(c)は、スケジュール調整構成の模式図である。この構成は、スケジュール調整構成制御部309によって実現される。この構成では、BSS1のネットワーク(AP102とSTA103)とBSS2のネットワーク(AP105とSTA106)の通信の時間が、明確に区切られている。すなわち、BSS1のネットワークとBSS2のネットワークでは、同じ周波数帯を時分割で利用する。図における、TU1(Time Unit)とTU2のUnit(単位)は、前述したように、AP間で調整できれば、どのような時間であってもかまわない。
【0040】
図5(a)~(c)の構成に従う通信によれば、複数のAPとSTAにおいて協調することにより、時間リソースまたは周波数リソース(リソースユニット、バンド、チャネル)を有効に使うことができ、無線媒体の効率的利用につながる。
【0041】
図6は、null steering構成(S407)を説明するためのシーケンス図である。この構成は、null steering構成制御部306によって実現される。この方式では、まず、各APが、STAとの通信のCSIを取得する。F601は、AP102とSTA103間のチャネル状態確認の手順である。上述したように、一例として、APはNDPを送信し、STAがNDPの受信に応じてチャネル状態を推定し、当該チャネル情報をCSIとしてフィードバックする。同様に、F602ではAP105とSTA103、F603ではAP102とSTA106、F604ではAP105とSTA106のそれぞれについて、チャネル状態確認手順を実行する。F605では、AP102とAP105との間で、それぞれのチャネル状態確認の情報を交換し、共有する。この情報交換によって、APから複数STAへのDL(ダウンリンク)MU(マルチユーザ)動作を、複数のAPが同時に行うことも可能になる。また、CSIの取得においては、STAからAPに送信したときの状態についても確認するようにしてもよい。この情報は、マルチAP協調動作として、複数STAからAPへのUP(アップリンク) MU(マルチユーザ)動作を行う場合に使用される。
【0042】
なお、null steering構成は、ビームフォーミングのビームのnull点を向けることから、Coordinated BF(BeamForming)、または、Coordinated BF and Nullingと呼ばれることもある。
【0043】
次に、F606で、AP102からAP105にnull steering TF(Trigger Frame)を送る。このTFは、次の送信動作のタイミングを計るためのものである。ここで、AP102とAP105のどちらが、このTFを送信するかのネゴシエーションは、F605の手順で行われているものとする。このF606からSIFS(Short Inter Frame Space)経過後、あるいは他の既定時間経過後の607で、AP102からSTA103宛てのデータフレームを送信する。このデータフレームは、STA106においては、ビームのnull点となるので、STA106の受信動作には影響を与えない。同様に、F608で、AP105からSTA106宛てのデータフレームを送信する。このデータフレームは、STA103においては、ビームのnull点となるので、STA103の受信動作には影響を与えない。
【0044】
このnull steering構成に従う通信によれば、複数のAPとSTAにおいて協調することにより、時間リソースまたは周波数リソース(リソースユニット、バンド、チャネル)を区分けすることなく使うことができ、無線媒体の効率的利用につながる。
【0045】
図7は、JTX構成(S406)を説明するためのシーケンス図である。ここで、JTX構成とは、複数のAPがひとつのSTAにデータを送信する構成を指す。この構成は、JTX構成制御部305によって実現される。このJTXを実現する無線技術のひとつとして、D-MIMOがある。ここで、D-MIMOとは、Distributed MIMO、または、Distributed MU MIMOの略である。このD-MIMOとは、同時刻、同チャンネル(または、OFDMAのRU:Resource Unit)において、複数のアクセスポイントがひとつのSTAと通信する技術であり、空間の多重利用によって、高速通信を実現するものである。
【0046】
このD-MIMO方式では、まず、各APが、STAとの通信におけるCSIを取得する。これは、図6のF601からF604の処理と同様であり、説明を省略する。次にF701では、AP102とAP105との間で、マスターAP決定手順を実行する。マスターAPとは、D-MIMOの動作を制御するAPであり、M-AP(Master Access Point:マスター・アクセスポイント)とも称される。M-APの制御によってJTXを実行するのが、S-AP(Slave AP:スレーブ・アクセスポイント)である。本例では、AP102がマスターAPに決定されたとし、F702で、AP102がマスターAPの動作を開始する。また、F703で、AP105がスレーブAPの動作を開始する。
【0047】
F704では、バックホール100を介して、AP102とAP105の間で、データを共有する。このようなバックホールを介した通信により、「AP間の通信」と「APとSTA間の通信」を並行して行うことができる。F705で、AP102は、AP105にJTX TF(Trigger Frame)を送る。このJTX TFは、AP105の送信を起動することとそのタイミングを指定するためのものである。F706で、AP102は、STA106にデータを送信し、F707で、AP105は、STA106にデータを送信し、F706とF707のタイミングは同期している。同様に、F708で、AP102は、STA103にデータを送信し、F709で、AP102は、STA106にデータを送信し、F708と7F09のタイミングは同期している。このような同期は、JTX TFのSIFS(Short Inter Frame Space)経過後に送信するという規定によって実現されている。なお、この送信タイミング同期の規定は、JTX TFに絶対時間やSIFS以外の相対時間を含めることでもよい。このJTX構成に従う通信によれば、複数のAPとSTAにおいて、ひとつの周波数帯において実効的な多重通信が可能になり、高速通信(高スループット通信)が可能となる。
【0048】
なお、F706とF708やF707とF709において、それぞれ同じデータを送信するようにしてもよい。このように複数APが協調動作することによって、冗長ではあるが、通信の確実性や安定性が向上するという効果が生まれる。
【0049】
<変形例1>
JTXのひとつの例として、複数AP協調動作の対象となるSTAがひとつの場合がある。図1の構成では、AP102とAP105が、STA106にD-MIMOで通信する場合に相当する。図7を参照し、F710で、AP102は、JTXで実際に送信するデータをAP105に送る。F711で、AP102は、AP105にJTX TF(Trigger Frame)を送る。F712で、AP105は、STA106にデータを送信する。F713で、AP102は、STA106にデータを送信する。ここで、F712とF713のタイミングは、上記と同様の理由により同期している。
【0050】
なお、この変形例では、AP102はSTA103とのチャネル状態を必要としない。よって、図4のS404における判定は、AP102とSTA106に関する条件のみによる判定であってもよい。また、この変形例は、AP102とSTA103の接続を排除するものではない。AP102は、AP105と協調しているので、AP105が送信を行わないタイミングで、STA103と通信することができる。この動作は、Single-AP構成制御部304によるものでもよい。また、F712とF713において、それぞれ同じデータを送信するようにしてもよい。このように複数APが協調動作することによって、冗長ではあるが、通信の確実性や安定性が向上するという効果が生まれる。
【0051】
<変形例2>
上記の実施形態で説明したスケジュール調整構成(S409)に送信電力制御(TPC:Transmission Power Control)を併用しても良い。図5(d)に、送信出力制御を併用したスケジュール調整方式の模式図を示す。図の実線矩形はAP102/BSS1、一点鎖線はAP105/BSS2が、それぞれ使用する領域である。また、塗りつぶしは、TPC有りであることを示す。図5(d)において、BSS1のネットワークを管理するAP102は、TU1区間では、送信電力を通常の値として、TU2区間では、TPCにより送信電力を制限した値とする。BSS2のネットワークを管理するAP105は、TU1区間では、TPCにより送信電力を制限した値とし、TU2区間では、送信電力を通常の値とする。ここで、この送信電力制御を、IEEE 802.11axから導入された空間再利用(SR:Spatial Reuse)技術の応用によって実現してもよい。
【0052】
このように、以上に説明した実施形態によれば、無線媒体の使用効率、システム全体および個別の通信装置による通信速度、安定性、の向上に寄与する。
【0053】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0054】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0055】
102、105:AP(アクセスポイント)、103、106:STA(無線LAN端末)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7