(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】モータ制御装置、モータ制御方法および撮像装置
(51)【国際特許分類】
H02P 8/16 20060101AFI20240109BHJP
H02P 29/62 20160101ALI20240109BHJP
【FI】
H02P8/16
H02P29/62
(21)【出願番号】P 2019128256
(22)【出願日】2019-07-10
【審査請求日】2022-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】重枝 聡一郎
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-369578(JP,A)
【文献】特開2014-026372(JP,A)
【文献】特開2012-147558(JP,A)
【文献】特開平01-091698(JP,A)
【文献】特開平11-313500(JP,A)
【文献】特開2012-129828(JP,A)
【文献】特開2015-154466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 8/16
H04N 23/66
H04N 5/222
H02P 29/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータに第一の励磁電流を供給して当該モータを回転させる第一の励磁手段と、
前記モータに第二の励磁電流を供給して当該モータの回転位置を保持する第二の励磁手段と、
前記モータの温度を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された前記モータの温度に基づいて、前記第二の励磁手段により前記モータに供給する前記第二の励磁電流を決定する決定手段と、を備え
、
前記決定手段は、
前記取得手段により取得された前記モータの温度に基づいて、基準とする励磁電流を導出する第一の導出手段と、
前記取得手段により取得された前記モータの温度の上昇率に基づいて、前記基準とする励磁電流の第一の調整値を導出する第二の導出手段と、
所定の動作時間と前記モータの温度の上昇率に基づいて、前記基準とする励磁電流の第二の調整値を導出する第三の導出手段と、を備え、
前記第一の導出手段により導出された前記基準とする励磁電流を、前記第一の調整値と前記第二の調整値とのうち大きい方の調整値によって調整し、前記第二の励磁電流として決定することを特徴とするモータ制御装置。
【請求項2】
前記第一の導出手段は、
前記取得手段により取得された前記モータの温度が高いほど、前記基準とする励磁電流を小さく導出することを特徴とする請求項
1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記第二の導出手段は、
前記取得手段により取得された前記モータの温度の上昇率が所定値よりも大きい場合、前記上昇率が前記所定値以下である場合よりも前記基準とする励磁電流を減少させるための前記
第一の調整値を大きく導出することを特徴とする請求項
1または
2に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
前記第三の導出手段は、
単位動作時間あたりの前記モータの温度の上昇率が高いほど、前記基準とする励磁電流を減少させるための前記第二の調整値を大きく導出することを特徴とする請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項5】
前記決定手段は、
前記第二の励磁電流を、前記第一の励磁手段により前記モータに供給する前記第一の励磁電流よりも小さい値に決定することを特徴とする請求項1から
4のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
【請求項6】
前記モータは、ステッピングモータであり、
前記第一の励磁手段は、前記ステッピングモータをマイクロステップ駆動させることを特徴とする請求項1から
5のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
【請求項7】
被写体を撮像する撮像手段と、
請求項1から
6のいずれか1項に記載のモータ制御装置と、
前記モータと、を備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項8】
前記モータは、前記撮像手段の撮像方向を変更するためのパンモータおよびチルトモータの少なくとも一方であることを特徴とする請求項
7に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記撮像手段は、被写体を連続して撮像し、
前記第二の励磁手段は、前記第二の励磁電流を一定として前記モータに供給することを特徴とする請求項
7または
8に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記撮像手段により連続して撮像された撮像画像をストリーミング配信する配信手段をさらに備えることを特徴とする請求項
9に記載の撮像装置。
【請求項11】
ネットワークケーブルを介してネットワーク機器から電力を受電する受電手段をさらに備えることを特徴とする請求項
7から
10のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項12】
前記ネットワーク機器は、PoE(Power over Ethernet(登録商標))に対応していることを特徴とする請求項
11に記載の撮像装置。
【請求項13】
モータに第一の励磁電流を供給して当該モータを回転させるステップと、
前記モータに第二の励磁電流を供給して当該モータの回転位置を保持するステップと、
前記モータの温度を取得するステップと、
取得された前記モータの温度に基づいて、前記モータに供給する前記第二の励磁電流を決定するステップと、を含
み、
前記決定するステップは、
前記モータの温度に基づいて、基準とする励磁電流を導出するサブステップと、
前記モータの温度の上昇率に基づいて、前記基準とする励磁電流の第一の調整値を導出するサブステップと、
所定の動作時間と前記モータの温度の上昇率に基づいて、前記基準とする励磁電流の第二の調整値を導出するサブステップと、
導出された前記基準とする励磁電流を、前記第一の調整値と前記第二の調整値とのうち大きい方の調整値によって調整し、前記第二の励磁電流として決定するサブステップと、を含むことを特徴とするモータ制御方法。
【請求項14】
コンピュータを、請求項1から
6のいずれか1項に記載のモータ制御装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【請求項15】
コンピュータを、請求項
7から
12のいずれか1項に記載の撮像装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ制御装置、モータ制御方法および撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、機器の機械的構成要素を駆動するステッピングモータの制御方法として、特許文献1に記載の技術がある。この技術は、機器の外部温度に応じてステッピングモータの駆動方式(1-2相励磁方式/2相励磁方式)を切り替えることで、低温時のトルク不足によるメカ作動問題や、高温時の余剰トルクによるメカ騒音問題を解決する技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、監視カメラとして、ネットワークに接続されて撮像画像の配信等を行うネットワークカメラが普及している。このようなネットワークカメラは、パン機構およびチルト駆動を有し、指示されたパン位置およびチルト位置を保持するために、パンモータおよびチルトモータが、励磁処理により所定の保持トルクを出力し続けている。
そのため、上記特許文献1に記載の技術のように、モータ駆動開始時の温度に応じてメカ駆動時の駆動方式を変更するだけでは、メカ駆動停止後の位相保持状態におけるモータの消費電力を低減することはできない。
そこで、本発明は、モータの回転位置を保持する位相保持状態における消費電力を低減することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明に係るモータ制御装置の一態様は、モータに第一の励磁電流を供給して当該モータを回転させる第一の励磁手段と、前記モータに第二の励磁電流を供給して当該モータの回転位置を保持する第二の励磁手段と、前記モータの温度を取得する取得手段と、前記取得手段により取得された前記モータの温度に基づいて、前記第二の励磁手段により前記モータに供給する前記第二の励磁電流を決定する決定手段と、を備え、前記決定手段は、前記取得手段により取得された前記モータの温度に基づいて、基準とする励磁電流を導出する第一の導出手段と、前記取得手段により取得された前記モータの温度の上昇率に基づいて、前記基準とする励磁電流の第一の調整値を導出する第二の導出手段と、所定の動作時間と前記モータの温度の上昇率に基づいて、前記基準とする励磁電流の第二の調整値を導出する第三の導出手段と、を備え、前記第一の導出手段により導出された前記基準とする励磁電流を、前記第一の調整値と前記第二の調整値とのうち大きい方の調整値によって調整し、前記第二の励磁電流として決定する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、モータの回転位置を保持する位相保持状態における消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態におけるネットワークカメラシステムの概略構成図である。
【
図3】ネットワークカメラのハードウェア構成例である。
【
図4】第一の実施形態のモータ制御処理手順を示すフローチャートである。
【
図6】モータ動作状態と励磁電流との関係を示す図である。
【
図7】モータ温度と基準保持励磁電流との関係を示す図である。
【
図9】第一の実施形態における保持励磁電流の調整値の説明図である。
【
図10】第二の実施形態のモータ制御処理手順を示すフローチャートである。
【
図11】第二の実施形態における保持励磁電流の調整値の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
なお、以下に説明する実施の形態は、本発明の実現手段としての一例であり、本発明が適用される装置の構成や各種条件によって適宜修正又は変更されるべきものであり、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0009】
図1は、本実施形態におけるネットワークカメラシステム1000の構成を示すネットワーク接続図である。
ネットワークカメラシステム1000は、ネットワークカメラ(以下、単に「カメラ」という。)100と、ネットワーク機器200と、クライアント装置300と、を備える。
カメラ100とネットワーク機器200とは、ネットワークケーブルによって接続されている。ネットワークケーブルは、例えばLANケーブルである。また、ネットワーク機器200とクライアント装置300とは、ネットワーク400によって接続されており、所定の通信プロトコルを利用して相互に通信を行うことができる。なお、ネットワーク400は、ネットワーク機器200とクライアント装置300との間で通信可能な構成であれば、その通信規格、規模および構成は問わない。また、ネットワーク400への物理的な接続形態は、有線であってもよいし、無線であってもよい。
【0010】
カメラ100は、クライアント装置300から送信されるカメラ制御コマンドに従って被写体を撮像する撮像処理を行い、撮像画像を取得する撮像装置である。また、カメラ100は、取得された撮像画像を、ネットワーク機器200およびネットワーク400を介してクライアント装置300等へ配信する配信処理を行うことができる。本実施形態において、カメラ100は、連続して撮像処理を行い、連続して撮像された撮像画像(映像)をストリーミング配信する配信処理を行うことができる。
また、カメラ100は、撮像方向を変更可能なPTカメラ(Pan Tilt カメラ)である。カメラ100は、パン機構およびチルト機構といった駆動機構を有し、撮像方向を左右方向や上下方向に変更することができる。なお、カメラ100は、撮像方向および撮像画角を変更可能なPTZカメラ(Pan Tilt Zoom カメラ)であってもよい。
【0011】
クライアント装置300は、例えばパーソナルコンピュータ(PC)といったユーザが操作可能な装置とすることができる。クライアント装置300は、カメラ制御コマンドを入力したり、カメラ制御コマンドの実行結果やカメラ100によって撮像された撮像画像などを表示したりするためのユーザインタフェース(UI)をユーザに提供することができる。
【0012】
以下、カメラ100の構成について具体的に説明する。
図1に示すように、カメラ100は、レンズ110と、システム制御部111と、撮像素子112と、信号処理回路113と、撮像制御回路114と、メモリ転送回路115と、メモリ121と、ネットワークI/F122と、を備える。また、カメラ100は、モータ制御部130と、電源制御回路140と、温度センサ制御部150と、を備える。
【0013】
カメラ100のカメラ機能は、レンズ110と、システム制御部111と、撮像素子112と、信号処理回路113と、撮像制御回路114と、メモリ転送回路115と、によって実現される。
レンズ110は、ズームレンズ、フォーカスレンズ、防振レンズ、絞り羽根を含むレンズ群を備えるレンズ装置である。レンズ110は、CPUを搭載しており、カメラ100の本体部から入力される指示によって、レンズ群の各ブロックを制御する。具体的には、ズームレンズの制御、フォーカスレンズの制御、防振レンズの制御、絞り羽根の制御を行う。レンズ110は、カメラ100の本体に着脱可能とすることができる。なお、レンズ110は、カメラ100の本体に一体的に構成されていてもよい。
【0014】
撮像素子112は、レンズ110を通して結像した光を電荷に変換し撮像信号を生成する。
信号処理回路113は、撮像素子112により生成された撮像信号を入力してデジタル化し、撮像画像を生成する。
撮像制御回路114は、撮像画像の出力周期と同じ周期で撮像素子112を制御する。また、撮像素子112における蓄積時間が撮像画像の出力周期よりも長い場合は、撮像素子112から撮像信号を出力できない期間、信号処理回路113のフレームメモリの撮像画像を保持するように信号処理回路113を制御する。
メモリ転送回路115は、信号処理回路113によってデジタル化された撮像画像をメモリ121へ転送する。
【0015】
カメラ100のネットワーク通信機能は、システム制御部111と、メモリ121と、ネットワークI/F122と、によって実現される。
システム制御部111は、メモリ転送回路115によってメモリ121に転送された撮像画像を、ネットワークI/F122を通じてネットワーク機器200に送信する。これにより、ネットワーク400を介してクライアント装置300に撮像装置が配信される。
また、ネットワークI/F122は、クライアント装置300からネットワーク400を介して送信されるカメラ制御コマンドを受信し、システム制御部111へ伝達する。この場合、システム制御部111は、カメラ制御コマンドに対するレスポンスを、ネットワークI/F122を通じて外部のネットワーク機器200に送信することで、ネットワーク400を介してクライアント装置300へ送信する。
【0016】
システム制御部111は、ネットワークI/F122を介して伝達されたカメラ制御コマンドを解析し、当該コマンドに従って処理を行う。例えば、信号処理回路113に対する画質の設定指示や、モータ制御部130に対するパン動作、チルト動作の動作指示を行う。この場合、信号処理回路113は、システム制御部111からの設定指示に基づいて画像処理を行う。また、モータ制御部130は、システム制御部111からの動作指示に基づいて、パン機構を実現するパン駆動部131と、チルト機構を実現するチルト駆動部132とを制御する。ここで、パン駆動部131とチルト駆動部132とは、それぞれモータと歯車とベルトとを含む。パン駆動部131およびチルト駆動部132の構成については後述する。
【0017】
電源制御部140は、例えばDC-DCコンバータであり、通電する制御モジュールを切り替えるスイッチ回路等を備える。電源制御部140は、ネットワーク機器200もしくは外部電源500から、ネットワークケーブルもしくは電源ケーブルを介して電力を受電し、カメラ100の電源制御を行う。
つまり、ネットワーク機器200は、カメラ100からクライアント装置300への撮像画像の配信を受けるのみではなく、ネットワークケーブルを介したカメラ100への電力供給が可能である。ネットワーク機器200は、例えば、IEEE802.3af規格に準拠したPoE(Power over Ethernet(登録商標))による給電が可能なハブである。なお、ネットワーク機器200は、IEEE802.3at規格に準拠したPoE+(PoE Plus)による給電が可能であってもよい。また、ネットワーク機器200は、PoE+よりもさらに多くの電力が使用可能なUPoE(Universal Power over Ethernet)規格の給電機能を備えてもよい。さらに、ネットワーク機器200は、ハブ装置以外であってもよい。
【0018】
外部電源500は、商用電源や直流電源であり、電源ケーブルを介してカメラ100へ給電することが可能である。
温度センサ制御部150は、温度センサ151とデータ通信処理を行うことが可能であり、温度センサ151により計測された温度情報を取得する。温度センサ151は、パン駆動部131およびチルト駆動部132がそれぞれ有するパンモータおよびチルトモータの温度を計測する。
【0019】
図2(a)~
図2(c)は、パン駆動部131およびチルト駆動部132の構成を説明する図である。ここで、
図2(a)は、カメラ100を上面から見た図、
図2(b)は、カメラ100を側面から見た図、
図2(c)は、カメラ100を正面から見たスケルトン図でありモータと歯車とを示すための簡易図である。
図2(a)~
図2(c)に示すように、カメラ100は、ボトムケース161と、ターンテーブル162と、カメラヘッド支柱163と、カメラヘッド164と、を備える。さらに、
図2(c)に示すように、カメラ100は、パンモータ171と、チルトモータ172と、モータ歯車173、174と、ベルト175、176と、駆動メカ歯車177、178とを備える。
【0020】
パン駆動部131は、ボトムケース161と、ターンテーブル162と、パンモータ171と、モータ歯車173と、ベルト175と、駆動メカ歯車177と、を備える。パンモータ171は、モータ歯車173を回転させ、ベルト175により駆動メカ歯車177へ動力を伝達して、ターンテーブル162を水平方向に回転させることができる。ターンテーブル162が水平方向に回転することで、カメラヘッド164は、左右方向に-175度から+175度まで回転することができる。
チルト駆動部132は、ターンテーブル162の上に設けられたカメラヘッド支柱163と、カメラヘッド164と、チルトモータ172と、モータ歯車174と、ベルト176と、駆動メカ歯車178と、を備える。チルトモータ172は、モータ歯車174を回転させ、ベルト176により駆動メカ歯車178へ動力を伝達して、カメラヘッド164を垂直方向に回転させることができる。カメラヘッド164は、水平方向を0度として斜め下方向-45°から真上方向90度まで回転することができる。
このように、本実施形態のカメラ100は、カメラヘッド164を水平方向および垂直方向に回転することで、撮像方向を左右方向および上下方向に変えて撮像することができる。
【0021】
図3は、カメラ100のハードウェア構成例である。
カメラ100は、CPU101、ROM102、RAM103、撮像部104、2次記憶装置105および通信I/F106を備える。CPU101、ROM102、RAM103、撮像部104、2次記憶装置105および通信I/F106は、内部バス107に接続されている。
CPU101は、カメラ100における動作を統括的に制御する。ROM102は、CPU101が処理を実行するために必要なプログラムやデータを記憶する不揮発性メモリである。RAM103は、CPU101の主メモリ、ワークエリア等として機能する。CPU101は、処理の実行に際してROM102から必要なプログラム等をRAM103にロードし、当該プログラム等を実行することで各種の機能動作を実現する。
【0022】
撮像部104は、
図1に示すレンズ110や撮像素子112などを備えることができる。2次記憶装置105は、HDD(ハードディスクドライブ)やフラッシュメモリ、SDカード等に代表される不揮発性の記憶装置であり、着脱可能な構成であってもよい。2次記憶装置105は、
図1に示すメモリ121を備えることができる。通信I/F106は、
図1に示すネットワークI/F122を備えることができる。
【0023】
本実施形態のカメラ100は、撮像動作中に、パン駆動部131のパンモータ171あるいはチルト駆動部132のチルトモータ172に励磁電流を供給することで各モータを回転させ、各駆動部131、132を駆動するPT動作を行う。また、カメラ100は、各モータの回転を停止させて各駆動部131、132を目標位置で停止させた後、各モータに保持励磁電流を供給することでモータの回転位置を保持する位相保持動作を行う。このとき、カメラ100は、各モータの温度に基づいて保持励磁電流を決定する。
このように、本実施形態では、カメラ100が、モータの駆動制御を行うモータ制御装置として動作する場合について説明する。
【0024】
次に、本実施形態におけるカメラ100の動作について説明する。
図4は、カメラ100が実行するモータ制御処理の手順を示すフローチャートである。この
図4の処理は、例えばカメラ100が撮像動作を開始したタイミングで開始される。ただし、
図4の処理の開始タイミングは、上記のタイミングに限らない。カメラ100は、CPU101が必要なプログラムを読み出して実行することにより、
図4に示す各処理を実現することができる。以降、アルファベットSはフローチャートにおけるステップを意味するものとする。
【0025】
まずS1において、カメラ100は、撮像動作を行いながら、モータ温度を所定の周期ごとに取得する。具体的には、温度センサ制御部150が温度センサ151とデータ通信処理を行い、温度センサ151が計測したパンモータ171およびチルトモータ172の温度データを所定の周期で取得する。システム制御部111は、温度センサ制御部150と所定の周期でデータ通信処理を行い、温度データを取得して一時的にRAMなどに記憶する。
次にS2において、システム制御部111は、モータの温度上昇率ΔTを算出する。温度上昇率は、例えば周期的に取得されるモータ温度のうち、最新のモータ温度とその一回前に取得されたモータ温度とから算出することができる。
【0026】
S3では、システム制御部111は、パン駆動あるいはチルト駆動の動作要求(PT駆動要求)があるか否かを判定する。例えば、システム制御部111は、ネットワーク400を介してクライアント装置300から送信されるカメラ制御コマンドにPT駆動要求が含まれるか否かを判定する。そして、システム制御部111は、PT駆動要求がないと判定した場合にはS1に戻り、PT駆動要求があると判定した場合にはS4に移行する。
S4では、モータ制御部130は、パン駆動部131あるいはチルト駆動部132を駆動開始する。つまり、システム制御部111は、モータ制御部130に対して駆動要求を送信し、モータ制御部130は、当該駆動要求を受けてパン駆動部131あるいはチルト駆動部132に搭載されたモータを駆動する。
【0027】
ここで、モータの駆動方法について説明する。
カメラ100は、パン機構とチルト機構の作動のために、パンモータ171とチルトモータ172とを備えている。ここで、パンモータ171およびチルトモータ172は、マイクロステップ駆動が可能なステッピングモータである。
ここで、マイクロステップ駆動とは、ステッピングモータの基本ステップ角度を、減速機構などの機械的要素なしに細かく分割できる機能である。1パルスを入力したときのステップ角度が細かくなるため、モータがスムーズに回転し、モータの振動を大幅に小さくすることが可能である。
【0028】
図5に示すように、ステッピングモータは、例えば8分割のマイクロステップ停止分解能を持ち、1-2相励磁方式により駆動される。また、
図6に示すように、ステッピングモータは、電源投入(電源ON)後、励磁電流ImでPWM制御されることにより駆動開始し、加速状態から等速状態、さらには減速状態へと遷移し、目標のマイクロステップ位置で停止する。
また、ステッピングモータは、電流制御方式によりA相B相の電流量(励磁電流)を制御することで、指示されたマイクロステップ位置でモータ位相を保持することが可能である。位相保持中においては、保持励磁電流Isを継続して供給することにより、モータに所定の保持トルクを発生させモータの回転位置を保持することができる。本実施形態では、モータ温度に応じて保持励磁電流Isを決定する。ここで、保持励磁電流Isは、励磁電流Imよりも小さい値とする。
図4のS4におけるモータの駆動開始処理は、モータを励磁電流ImでPWM制御することにより、モータを上記の加速状態から等速状態へと遷移させる処理である。
【0029】
S5では、システム制御部111は、S1において取得された最新のモータ温度に基づいて、基準となる保持励磁電流(基準保持励磁電流)Iaを決定する。基準保持励磁電流Iaは、
図7の実線に示すように、モータ温度が飽和温度に達するまでは、モータ温度に比例して小さくなる値である。なお、基準保持励磁電流Iaは、
図7の破線で示す最小励磁電流Iminに対して、所定量大きい電流値となるように設計する。ここで、最小励磁電流Iminは、モータ位相を保持するための最小トルクとなる励磁電流である。
S6では、システム制御部111は、S2において算出された温度上昇率ΔTの値に基づいて、モータの温度上昇率が高いか低いかを判定する。具体的には、システム制御部111は、温度上昇率ΔTと所定値TH1とを比較する。そして、システム制御部111は、温度上昇率ΔTが所定値TH1以下であると判定した場合は、モータの温度上昇率が低いと判断してS7に移行する。一方、システム制御部111は、温度上昇率ΔTが所定値TH1よりも大きいと判定した場合は、モータの温度上昇率が高いと判断してS8に移行する。
【0030】
ここで、モータの温度特性について述べる。
まずは、モータの温度上昇率について、
図8を用いて説明する。モータ温度は、モータへの通電を継続すると、
図8に示すように飽和温度に達するまで上昇を続ける。このとき、モータ温度の上昇率は、モータの設置環境温度やモータの形状(直径Φなど)により異なる。例えば
図8に示すように、モータの直径Φが小さいほど、モータの温度上昇率は高い。
本実施形態において、パンモータ171とチルトモータ172とは、それぞれカメラ100の異なる位置に搭載されているため、放熱特性の違いが大きく、温度上昇率は異なる。具体的には、パンモータ171とチルトモータ172においてモータ温度が飽和温度になるまでの時間には、10分~60分程度の差が発生すると考えられる。
【0031】
次に、モータ温度による励磁トルク特性の違いについて説明する。
図5に示すように、ステッピングモータは、ステータ181と、ローター182と、コイル183と、を備える。モータ停止時の位相を保持するための励磁トルクである保持励磁トルクは、コイル183の磁力とステータ181の磁力とにより決まる。ここで、コイル183は、電流を流すことにより磁力を発生させ、流す電流量により磁力の大きさを制御することができる。また、ステータ181は、永久磁力をもち、高温になるほど磁力は増加する。
つまり、ステッピングモータは、モータ温度が高温であるほど、位相保持のための励磁電流を少なくしても同じ保持励磁トルクを実現できるという特性をもつ。
【0032】
S7では、システム制御部111は、モータ温度が飽和温度に達したか、もしくは飽和温度直前かどうかを判定する。具体的には、システム制御部111は、温度上昇値ΔTと所定値TH2とを比較する。そして、システム制御部111は、温度上昇率ΔTが所定値TH2よりも大きいと判定した場合は、モータ温度は上昇中であり飽和温度に達していないか飽和温度直前ではないと判断してS9に移行する。一方、システム制御部111は、温度上昇率ΔTが所定値TH2以下であると判定した場合は、モータ温度は飽和温度に達したか飽和温度直前であると判断し、S10に移行する。
【0033】
S8では、システム制御部111は、保持励磁電流の調整値ΔIを決定し、S11に移行する。調整値ΔIは、温度上昇率ΔTに基づいて決定される値であり、このS8では、温度上昇率ΔTが高い場合の調整値ΔI=Ixとする。
S9では、システム制御部111は、保持励磁電流の調整値ΔIを、温度上昇率ΔTが低い場合の調整値ΔI=Iyとし、S11に移行する。
S10では、システム制御部111は、保持励磁電流の調整値ΔIを、モータ温度が飽和温度である場合の調整値ΔI=0とし、S11に移行する。
【0034】
S11では、システム制御部111は、モータ温度に基づいて導出された基準保持励磁電流Iaを、温度上昇率ΔTに基づいて導出された調整値ΔIによって調整し、保持励磁電流Isを決定する。具体的には、システム制御部111は、基準保持励磁電流Iaから調整値ΔIを減算することで、保持励磁電流Isを算出する。
ここで、保持励磁電流の調整値ΔIについて説明する。S8において決定される調整値Ixと、S9において決定される調整値Iyとは、
図9に示すようにIx>Iyの関係を有する。つまり、モータ温度の温度上昇率ΔTが所定値よりも大きい場合には、温度上昇率ΔTが当該所定値以下である場合よりも基準保持励磁電流Iaを減少させるための調整値ΔIを大きく導出することで保持励磁電流Isを小さくしてモータの位相保持を行う。これにより、モータ温度の過渡状態における省電効果をより向上することができる。なお、保持励磁電流Isは、上述した最小保持励磁電流Iminに対して大きい値となるように調整値ΔIを設定するものとする。
【0035】
図9の二点鎖線a、bで示すように、モータ温度が飽和温度まで比例的に上昇する場合、モータ温度の温度上昇率ΔTは点線c、dで示すようになる。ここで、モータの直径Φが小さく、モータ温度が二点鎖線aで示すように変化する場合、温度上昇中の温度上昇率ΔTは点線cで示すように高くなる。このときの温度上昇率ΔTが所定値よりも大きい場合、調整値ΔIはIxに設定される。一方、モータの直径Φが大きく、モータ温度が二点鎖線bで示すように緩やかに変化する場合、温度上昇中の温度上昇率ΔTは点線dで示すように低くなる。このときの温度上昇率ΔTが所定値以下である場合、調整値ΔIはIyに設定される。
【0036】
S12では、モータ制御部130は、パン駆動部131あるいはチルト駆動部132を停止する。つまり、システム制御部111は、モータ制御部130へ停止要求を送信し、モータ制御部130は、当該停止要求を受けてパン駆動部131あるいはチルト駆動部132に搭載されたモータの回転を停止する。このS12におけるモータの駆動停止処理は、モータを励磁電流ImでPWM制御することにより、モータを
図6における等速状態から減速状態へと遷移させる処理である。
【0037】
次にS13では、モータ制御部130は、パン駆動部131あるいはチルト駆動部132のメカ位相を保持する処理を行う。具体的には、モータ制御部130は、パンモータあるいはチルトモータが指定されたマイクロステップ位置で位相保持するように、システム制御部111がS11において決定した保持励磁電流IsでパンモータあるいはチルトモータをPWM制御する。
ここで、モータの位相保持処理について説明する。位相保持処理では、モータへ保持励磁電流Isを出力し続けることにより、所定の保持トルクを発生させてモータ位相の保持を実現する。つまり、位相保持処理中は、保持励磁電流Isを変更しない。
位相保持処理中に保持励磁電流Isを変更すると、ステッピングモータの位相が不安定状態になる。そして、この影響を受けて、パンおよびチルトの位置が変化して撮像方向が変化してしまい、常時撮像を行っているネットワークカメラにおいては撮像画像の品質低下となるため、望ましくない。以上のような理由から、本実施形態におけるカメラ100では、モータの作動停止後、位相保持中の保持励磁電流は切り替えずに一定とする。
【0038】
以上説明したように、本実施形態におけるカメラ100は、撮像方向を変更するためのモータ(パンモータ171、チルトモータ172)を備える。カメラ100は、モータに励磁電流Imを供給して当該モータを回転させ、PT動作を実現する。また、カメラ100は、PT動作が完了した後、モータに保持励磁電流Isを供給して当該モータの回転位置を保持する位相保持動作を行う。このとき、カメラ100は、モータの温度を取得し、取得されたモータ温度に基づいて、保持励磁電流Isを決定する。
具体的には、カメラ100は、モータ温度に基づいて、基準保持励磁電流Iaを導出し、モータの温度上昇率ΔTに基づいて、基準保持励磁電流Iaの調整値ΔIを導出する。そして、カメラ100は、基準保持励磁電流Iaから調整値ΔIを減算することで、基準保持励磁電流Iaを調整値ΔIによって調整し、その結果を保持励磁電流Isとして決定する。
【0039】
このように、カメラ100は、モータの温度特性を考慮して適切な保持励磁電流Isを決定することが可能である。これにより、カメラ100が備えるパン機構およびチルト機構の駆動停止後におけるパンモータ171およびチルトモータ172の位相保持中の消費電力を適切に低減することができる。また、モータの温度上昇率ΔTに応じて保持励磁電流Isを調整することができるので、モータ温度の過渡状態においても、適切な消費電力でモータの位相保持を行うことができる。さらに、モータの形状や搭載位置、カメラ100の設置環境に応じてモータの温度上昇率ΔTが異なる場合であっても、それぞれ適切な消費電力でモータの位相保持を行うことができる。また、モータ温度に基づいて導出される基準保持励磁電流Iaを、温度上昇率ΔTに基づいて導出される調整値ΔIによって調整し、保持励磁電流Isを決定することができるので、モータごとに保持励磁電流Isを決定するためのテーブルを持つ必要がない。
【0040】
また、保持励磁電流Isの決定に際し、カメラ100は、モータ温度が高いほど、基準保持励磁電流Iaを小さく導出することができる。このように、高温になるほど位相保持のための励磁電流を小さくしても同じ保持トルクを実現できるという励磁トルク特性を考慮し、適切な基準保持励磁電流Iaを導出することができる。
さらに、カメラ100は、モータの温度上昇率ΔTが所定値よりも大きい場合、温度上昇率ΔTが当該所定値以下である場合よりも基準保持励磁電流Iaを減少させるための調整値ΔIを大きく導出することができる。したがって、モータ温度の過渡状態において適切に基準保持励磁電流Iaを調整し、適切な保持励磁電流Isを導出することができる。
また、カメラ100は、保持励磁電流Isを、励磁電流Imよりも小さい値として決定することができる。したがって、適切にモータの位相保持状態における消費電力を低減させることができる。
【0041】
さらに、カメラ100は、被写体を連続して撮像しており、位相保持状態においては、保持励磁電流Isの切り替えは行わない。つまり、位相保持状態において、保持励磁電流Isを一定としてモータに供給することができる。これにより、モータの位相を保持すべき状態でモータの位相が不安定になることを防止し、パン、チルト位置が変化してしまうことを防止することができる。
したがって、撮像方向を適切に固定することができ、連続して撮像された撮像画像(映像)をストリーミング配信する場合、配信映像の品質確保が図れる。
【0042】
また、カメラ100は、ネットワークケーブルを介してネットワーク機器200から電力を受電可能なネットワークカメラとすることができる。監視カメラなどに使用されるネットワークカメラにおいては、近年、撮像センササイズの大型化や画像処理エンジンの高性能化などに伴い、消費電力の増加が著しい。その中でも、PTモータが消費する電力は特に大きい。本実施形態におけるカメラ100は、PTモータの位相保持状態における消費電力を適切に低減することができるネットワークカメラとすることができる。
【0043】
ここで、ネットワーク機器200は、PoEに対応した電源とすることができる。PoEにおいては、給電装置となるネットワーク機器200が供給可能な電力は、最大で15.4Wである。このように、カメラ100がネットワーク機器200から受電可能な電力にPoE規格に準じた上限がある場合であっても、カメラ100を構成する主要なモジュールの消費電力の合計をPoE給電能力に収めることができる。例えば、PoE+においては、PoEよりも多くの電力を供給可能であるが、PoE+対応のハブが必要となりコストが嵩むが、本実施形態では、ネットワーク機器200をPoEに対応した電源とすることで、コストを削減することが可能である。
【0044】
(第二の実施形態)
次に、本発明における第二の実施形態について説明する。
上述した第一の実施形態では、モータの温度上昇率に基づいて保持励磁電流の調整値ΔIを決定する場合について説明した。この第二の実施形態では、さらに単位動作時間あたりのモータの温度上昇率を考慮して、保持励磁電流の調整値ΔIを決定する場合について説明する。
【0045】
本実施形態におけるネットワークカメラシステムの構成は、
図1に示すネットワークシステム1000と同様である。
ただし、本実施形態におけるカメラ100は、
図4に示すモータ制御処理に替えて、
図10に示すモータ制御処理を実行する点で第一の実施形態とは異なる。なお、この
図10において、
図4と同一処理を行うステップには
図4と同一ステップ番号を付し、以下、処理の異なる部分を中心に説明する。
【0046】
S21では、システム制御部111は、パンモータ171およびチルトモータ172の温度上昇率ΔTの積分値ΔTiを算出する。具体的には、温度上昇率ΔTと所定の動作時間tとを用いて、単位動作時間あたりの温度上昇率に相当する積分値ΔTiを算出する。ここで、動作時間tは任意の時間とし、本実施形態では60秒としている。
次にS22では、システム制御部111は、S21において算出された単位動作時間あたりの温度上昇率ΔTiと、所定の基準調整値Ibとに基づいて、保持励磁電流の調整値Iiを算出する。調整値Iiは、単位動作時間あたりの温度上昇率ΔTiが高いほど大きい値となる。
【0047】
次にS23では、システム制御部111は、S22において算出された調整値Iiと、S9において用いられる調整値Iyとを比較する。そして、システム制御部111は、Ii<Iyであると判定した場合は、S11に移行し、Ii≧Iyであると判定した場合は、S24に移行する。
S24では、システム制御部111は、S22において算出された調整値Iiを、調整値ΔIとして決定し、S11に移行する。このように、単位動作時間あたりの温度上昇率ΔTiが高く、単位動作時間あたりの温度上昇率ΔTiをもとに決定される調整値Iiが、温度上昇率ΔTをもとに決定される調整値Iy以上である場合、調整値Iiを調整値ΔIとして決定する。
【0048】
ここで、モータの温度上昇の特徴について述べる。
カメラ100では、起動直後において、パン駆動部131およびチルト駆動部132の初期化処理やレンズの初期化処理、光学フィルタの初期化処理など、通常の撮像動作時には行わない処理が行われる。このため、起動直後の消費電力は大きく、発熱量が多くなる。この影響により、起動直後のモータの温度上昇率は高くなる傾向となる。そして、ネカメラ100は、起動後しばらくすると、撮像処理やネットワークへの配信処理などの安定動作状態となり温度もほぼ安定する。このため、モータへ伝導する熱量は安定し、モータ温度は飽和温度になる直前では非常に低い温度上昇率で温度上昇を続ける。
【0049】
つまり、カメラ100を起動した後、モータ温度は、
図11の二点差線で示すようなカーブで飽和温度まで上昇する。そのため、モータ温度上昇率の単位動作時間あたりの温度上昇率ΔTiは、点線で示すように起動直後は比較的大きく、時間経過とともに徐々に小さくなっていく。この場合、単位動作時間あたりの温度上昇率ΔTiに基づいて決定される調整値Iiは、実線で示すよう起動直後は比較的大きく、時間経過とともに徐々に小さく導出される。
【0050】
このように、本実施形態におけるカメラ100は、単位動作時間あたりのモータの温度上昇率ΔTiに基づいて、基準保持励磁電流Iaの調整値Iiを導出する。そして、カメラ100は、モータの温度上昇率ΔT基づいて導出された調整値Iyと単位動作時間あたりの温度上昇率ΔTiに基づいて導出された調整値Iiとのうち大きい方を調整値ΔIとして基準保持励磁電流Iaを調整し、保持励磁電流Isとして決定する。
これにより、ネットワークカメラの起動直後の発熱要因の影響を考慮した保持励磁電流Isを決定することができる。したがって、PTモータの位相保持状態における消費電力を適切に低減することができる。
【0051】
このとき、カメラ100は、単位動作時間あたりのモータの温度上昇率ΔTiが高いほど、基準保持励磁電流Iaを減少させるための調整値Iiを大きく導出することができる。モータの温度上昇率に応じてリニアに保持励磁電流を決定できるため、より適切に省電力化を実現することができる。
【0052】
以上説明したように、本発明の各実施形態によれば、モータ温度の上昇率に応じて適切な保持励磁電流を設定することが可能となる。また、ネットワークカメラの起動時の温度上昇の影響に応じて適切な保持励磁電流を設定することが可能となる。さらに、モータの飽和温度直前の温度上昇率が小さい場合において適切な保持励磁電流を設定することが可能となる。これにより、モータ温度の過渡状態および安定状態に関わらず、モータの位相保持中の省電力化が可能となる。
【0053】
(変形例)
上記各実施形態においては、モータ制御装置が制御対象とするモータが、ネットワークカメラ100が備えるパンモータ171およびチルトモータ172である場合について説明したが、上記に限定されるものではない。制御対象のモータは、位相保持を行うことが可能なステッピングモータであればよく、例えば、フォーカスレンズやズームレンズ等のレンズを光軸方向に移動するレンズ駆動機構が備えるモータであってもよい。
また、上記各実施形態においては、ネットワークカメラ100がモータ制御装置として動作する場合について説明したが、上記に限定されるものではない。モータ制御装置が制御対象とするモータは、ネットワークカメラ以外の機器に搭載されたモータであってもよく、ネットワークカメラ以外の機器がモータ制御装置として動作することもできる。
【0054】
(その他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0055】
100…ネットワークカメラ、110…レンズ、111…システム制御部、130…モータ制御部、131…パン駆動部、132…チルト駆動部、150…温度センサ制御部、151…温度センサ、171…パンモータ、172…チルトモータ、200…ネットワーク機器、300…クライアント装置、400…ネットワーク、500…外部電源、1000…ネットワークカメラシステム