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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】医薬品管理システム
(51)【国際特許分類】
   G16H 40/00 20180101AFI20240109BHJP
【FI】
G16H40/00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019130001
(22)【出願日】2019-07-12
(65)【公開番号】P2021015473
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000110217
【氏名又は名称】TOPPANエッジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100206999
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 綾夏
(72)【発明者】
【氏名】林 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】青野 弘嗣
(72)【発明者】
【氏名】酒井 喬成
【審査官】梅岡 信幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-174328(JP,A)
【文献】特開2012-130779(JP,A)
【文献】特開2003-263553(JP,A)
【文献】特開2005-154045(JP,A)
【文献】特開2002-358591(JP,A)
【文献】特開2019-185526(JP,A)
【文献】国際公開第2016/027849(WO,A1)
【文献】特開2018-055544(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬品に付帯され当該医薬品を個別に識別可能な機械読取コードを、保管環境を維持しつつ複数の医薬品を保管可能な保管庫から前記医薬品を取り出す際に読み取る読取部と、
前記機械読取コードが示すシリアル番号と、使用期限とを対応付けて記憶する医薬品管理記憶部と、
前記保管庫に保管された医薬品のうち、前記読取部によって前記機械読取コードが読み取られた医薬品の当該機械読取コードが示すシリアル番号に対応する前記使用期限に基づいて、当該医薬品を使用する優先度を判定する判定部と、
判定結果を出力する出力部と、
を有し、
前記判定部は、前記医薬品の使用期限までの期間が短いほど、高い優先度であると判定する医薬品管理システム。
【請求項2】
前記医薬品に印字された使用期限に対して文字認識処理を行って得られる使用期限データと、前記医薬品に付帯される機械読取コードが示すシリアル番号とを取得し、取得した前記使用期限データと前記シリアル番号とを前記医薬品管理記憶部に記憶させるデータ登録部をさらに有し、
前記判定部は、前記医薬品管理記憶部に記憶された使用期限データが示す使用期限に基づいて、優先度を判定する
請求項に記載の医薬品管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
病院において使用される医薬品の在庫を管理するシステムがある(例えば、特許文献1)。このようなシステムを用いることで、在庫切れがないように、使用状況に応じて医薬品を補充することができる。
また、医薬品には、使用期限が設定されており、その期限内に使用されるような管理も行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4923915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、医薬品が使用期限内に使用されるように管理するためには、医薬品を使用する際に、使用期限が近づいているものを先に使用することが望ましい。従来では、医薬品を使用する際、保管場所に置いてある医薬品のいくつかについて、医薬品の外部に印字や刻印された使用期限を見て、使用期限が近づいているものを取り出して使用する必要があり、煩雑である。また、医薬品は、使用期限の他に、保存温度が決められたものもあり、その保存温度の範囲外に暴露される時間が一定条件の範囲外に逸脱した場合に、その医薬品は使用されない。そのため、医薬品は、保管状態についても考慮し、温度条件の範囲内から逸脱する可能性が高いものを優先して使用することが望ましいが、医薬品を取り出す作業者にとって、個々の医薬品について保管状態を考慮して使用する対象を決めることは、煩雑である。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、保管された医薬品のうちいずれを優先して使用するかを簡単に把握することができる医薬品管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、医薬品に付帯され当該医薬品を個別に識別可能な機械読取コードを、保管環境を維持しつつ複数の医薬品を保管可能な保管庫から前記医薬品を取り出す際に読み取る読取部と、前記機械読取コードが示すシリアル番号と、使用期限とを対応付けて記憶する医薬品管理記憶部と、前記保管庫に保管された医薬品のうち、前記読取部によって前記機械読取コードが読み取られた医薬品の当該機械読取コードが示すシリアル番号に対応する前記使用期限に基づいて、当該医薬品を使用する優先度を判定する判定部と、判定結果を出力する出力部と、を有し、前記判定部は、前記医薬品の使用期限までの期間が短いほど、高い優先度であると判定する。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように、この発明によれば、保管された医薬品のうちいずれを優先して使用するかを簡単に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】この発明の一実施形態による医薬品管理システム1の構成を示す概略ブロック図である。
図2】医薬品100の外観の一例を示す図である。
図3】端末装置20の機能を説明する概略ブロック図である。
図4】保管庫30の機能を説明する概略ブロック図である。
図5】医薬品管理装置10の構成を説明する概略ブロック図である。
図6】医薬品管理記憶部102に記憶されるデータの一例を示す図である。
図7】医薬品管理システム1の医薬品管理装置10にデータを登録する登録時及び入庫時における動作を説明する図である。
図8】医薬品管理システム1の出庫時における動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態による医薬品管理システムについて図面を参照して説明する。
図1は、この発明の一実施形態による医薬品管理システム1の構成を示す概略ブロック図である。
医薬品管理システム1は、医薬品管理装置10と、端末装置20a、端末装置20bと、保管庫30a、保管庫30bと、ゲートウェイ装置40と、ネットワーク50とを含む。医薬品管理システム1は、これらの機器が連携することで、医薬品100の管理をするための各種処理を実行する。
医薬品管理装置10は、ネットワーク50を介して端末装置20と通信する機能を有するとともに、ネットワーク50とゲートウェイ装置40とを介して保管庫30a、保管庫30aと通信可能に接続される。
【0011】
端末装置20a、端末装置20bは、この医薬品管理システム1において、全部で2台設けられる場合について図示されているが、1台であってもよいし、3台以上であってもよい。以下、端末装置20aと端末装置20bとを特に識別しない場合には、単に端末装置20と称する。端末装置20は、例えば、スマートフォンやタブレット、携帯電話等の機器を用いることができる。
保管庫30a、保管庫30bは、この医薬品管理システム1において、全部で2台設けられる場合について図示されているが、1台であってもよいし、3台以上であってもよい。
例えば、保管庫30a、保管庫30bは、1つの病院内に設置される。以下、保管庫30aと保管庫30bとを特に識別しない場合には、単に保管庫30と称する場合もある。
この保管庫30は、庫内の温度を設定された目標温度に維持するよう制御する機能を有しており、例えば、冷蔵庫や冷凍庫等である。また、保管庫30は、庫内に複数の医薬品100を収容可能である。
ゲートウェイ装置40は、保管庫30とネットワーク50との間において通信可能に接続され、ゲートウェイとして機能する。
【0012】
図2は、医薬品100の外観の一例を示す図である。
医薬品100は、その外周面に、医薬品の名称110、使用期限111、商品コード112が印字されている。使用期限111は、経過時間の観点から定められ、その医薬品100の一定の品質が確保されている期限を示す。医薬品100は、この使用期限を徒過する前までに利用するよう運用される。この使用期限は、年と月によって指定されていてもよいし、年月日によって指定されていてもよい。また、使用期限は、医薬品100の外観から把握することができる形式で表されていればよく、印字ではなく捺印、刻印されている場合であってもよい。商品コード112は、商品としての医薬品を識別するコードである。商品コードは、例えばJAN(Japanese Article Number)コードを用いることができる。商品コード112は、医薬品100を個別に識別することはできないが、いずれの商品であるかを識別することができる情報である。
【0013】
また、医薬品100の外周面には、シール200が貼付されている。シール200には、機械読取コード210と、その機械読取コード210に対応する文字列211が印字されている。医薬品100が、製薬会社等から病院に納品されると、製薬会社等の納品担当者または病院の作業者によって、機械読取コード発行装置を利用して、機械読取コードを発行させる。ここでは、複数の機械読取コードがシール200に個別に印刷されることで、複数のシール200が発行される。シール200に印刷される機械読取コードは、複数のシール200について個別の異なる機械読取コード(シリアル番号)が割り当てられる。製薬会社の納品担当者または病院の作業者は、シール200が発行されると、1つのシール200を1つの医薬品100に貼付する。
機械読取コード210は、例えば、バーコードまたは二次元バーコードを用いることができる。
ここでは、機械読取コード210は、シール200に印刷され貼付される場合について説明したが、機械読取コードが医薬品100に付帯されれば、シール200以外を用いるようにしてもよい。例えば、機械読取コード210が印刷された媒体が取り付けられた収容容器に、医薬品100を収容するようにしてもよいし、機械読取コード210が印刷された媒体がクリップ等で医薬品100に取り付けられるようにしてもよい。
【0014】
図3は、端末装置20の機能を説明する概略ブロック図である。
端末装置20は、画像取得部201、文字認識部202、コード認識部203、通信部204、入力部205、出力部206、制御部207を含む。
画像取得部201は、医薬品100の外観を撮影し、撮影データを生成する。
画像取得部201が撮影データを生成するタイミングとしては、病院に入荷された医薬品100を医薬品管理装置10にデータを登録する登録時、保管庫30に医薬品100を入庫する入庫時、保管庫30から医薬品100を出庫する出庫時等がある。
画像取得部201は、医薬品100の使用期限111、商品コード112、機械読取コード210が撮像領域に収まるようにして撮像する。
【0015】
文字認識部202は、画像取得部201によって生成された撮像データに含まれる使用期限を表す文字列を対象として文字認識処理を行い、使用期限を表す使用期限データを生成する。文字認識部202は、例えば、撮影データに含まれる文字列のうち、使用期限を示す項目名である「使用期限」、「有効期限」、「消費期限」、「保存期限」等の文字列を抽出し、この抽出された文字列の近傍に存在する数字を含む文字列を使用期限として抽出する。これにより、商品コードや機械読取コードに対応する文字列とは識別した上で抽出することができる。また、年月を記述している可能性がある文字列が特定された場合に、その文字列を使用期限として抽出してもよい。年月を記述している可能性がある文字列としては、例えば、「20」で始まる6桁または8桁の文字列が特定された場合には、「20YY年MM年」あるいは「20YY年MM年DD日」のように年月あるいは年月日を示している文字列として見なして抽出してもよい。または、「20」を含む6桁または8桁の文字列が特定された場合には、「MM年20YY年」あるいは「MM年DD日20YY年」のように月、年あるいは月、日、年を示している文字列として見なして抽出してもよい。
文字認識部202は、医薬品100を医薬品管理装置10にデータを登録する登録時において、文字認識処理を行う。
文字認識処理としては、例えば、OCR(Optical character recognition)処理を用いてもよい。
【0016】
コード認識部203は、画像取得部201によって生成された撮像データから、商品コード112と、機械読取コード210とを認識する。
コード認識部203は、病院に入荷された医薬品100を医薬品管理装置10にデータを登録する登録時においては、商品コード112と、機械読取コード210との認識処理を行う。
コード認識部203は、保管庫30に医薬品100を入庫する入庫時、保管庫30から医薬品100を出庫する出庫時においては、機械読取コード210の認識処理を行う。
【0017】
通信部204は、ネットワーク50を介して医薬品管理装置10と通信を行う。
入力部205は、タッチパネル等の入力デバイスであり、端末装置20の利用者の操作入力を受け付ける。
出力部206は、例えば、表示装置やスピーカ等であり、各種情報を出力する。
制御部207は、端末装置20内の各部を制御する。
制御部207は、医薬品管理装置10にデータを登録する登録時において、文字認識部202によって得られた使用期限データと、コード認識部203によって得られた商品コード及び機械読取コード(シリアル番号)とを医薬品管理装置10に送信する。
制御部207は、入庫時において、コード認識部203によって得られた機械読取コード(シリアル番号)と、入庫する対象の保管庫30に設けられた管理タグ301の管理タグIDと、入庫であることを示すステータスデータとを医薬品管理装置10に送信する。
制御部207は、出庫時において、コード認識部203によって得られた機械読取コード(シリアル番号)と、出庫する対象の保管庫30に設けられた管理タグ301の管理タグIDと、出庫であることを示すステータスデータとを医薬品管理装置10に送信する。
【0018】
図4は、保管庫30の機能を説明する概略ブロック図である。
保管庫30は、管理タグ301、センサ302、収容部303を含む。
管理タグ301は、複数の保管庫30のそれぞれに設けられる。管理タグ301は、それぞれの個別に識別するデータである管理タグIDが割り当てられており、管理タグ301内部の記憶領域に記憶している。
【0019】
管理タグ301は、取り付けられる保管庫30の収容部303内の温度がセンサ302によって測定された温度データを取得し、温度データと、測定した日時と、自身に割り当てられた管理タグIDとを含む測定データを生成して、ゲートウェイ装置40を介して医薬品管理装置10に送信する機能を有する。管理タグ301は、一定時間毎に測定データを生成し、医薬品管理装置10に送信する。管理タグ301は、測定データの送信は、例えば、BLE(Bluetooth Low Energy)(Bluetoothは登録商標)を用いた通信、3G(3rd Generation)を用いた通信、LTE(Long Term Evolution)を用いた通信、Wi-Fi(登録商標)を用いた通信等のいずれかの通信方式によって送信する。
【0020】
また、管理タグ301は、所定の通信距離内に近づけられた端末装置20に対し、自身に割り当てられた管理タグIDを送信する。端末装置20に対して管理タグIDを送信する場合、管理タグ301は、例えば、NFC(Near Field Communication)用いた通信によって送信する。
管理タグ301は、保管庫30のうち、ゲートウェイ装置40や端末装置20と通信を行うことが可能な位置に設置される。例えば、管理タグ301は、保管庫30の正面側の表面に取り付けられる。
【0021】
センサ302は、管理タグ301に対して電気的に接続されており、収容部303の内部の環境を測定し、測定結果を管理タグ301に出力する。測定対象の環境としては、例えば、温度、湿度等である。なお、医薬品100によっては、保管する際の条件として湿度が規定されている場合には、湿度を測定するようにしてもよいし、保管する際の条件として遮光することが定められている場合には、照度を測定するようにしてもよい。この実施形態においては、温度を測定する場合について説明する。
【0022】
収容部303は、収容部303の内部を設定温度の範囲内となるように維持する。収容部303は、例えば、冷蔵室または、冷凍庫である。収容部303には、例えば、複数段の棚があり、それぞれの棚に、複数の医薬品(例えば、医薬品100a、…医薬品100n)を並べて載置することが可能である。
【0023】
図5は、医薬品管理装置10の構成を説明する概略ブロック図である。
医薬品管理装置10は、通信部101、医薬品管理記憶部102、データ登録部103、判定部104、制御部105を有する。
通信部101は、ネットワーク50を介して端末装置20と通信を行う機能を有するとともに、ネットワーク50とゲートウェイ装置40とを介して、保管庫30の管理タグ301と通信を行う機能を有する。
医薬品管理記憶部102は、機械読取コード(シリアル番号)と、使用期限または、保管庫に保管された期間における温度の履歴を示す温度履歴との少なくともいずれか一方を含む品質データを記憶する。
図6は、医薬品管理記憶部102に記憶されるデータの一例を示す図である。
医薬品管理記憶部102は、シリアル番号、商品コード、使用期限、保管庫ID、入庫日時、出庫日時、温度データを記憶する。
シリアル番号は、医薬品100に付帯されたシール200に印字された機械読取コードが示すデータである。
商品コードは、医薬品100の外周面に印刷された商品コード112を示すデータである。
使用期限は、医薬品100の外周面に印刷された使用期限を示す使用期限データである。
保管庫IDは、医薬品100が収容された保管庫30を識別するデータである。この保管庫IDは、管理タグIDを用いることで、いずれの保管庫30であるかを識別できるようになっている。
入庫日時は、医薬品100が保管庫30に入庫された日時を表すデータである。
出庫日時は、医薬品100が保管庫30から出庫された日時を表すデータである。
温度データは、医薬品100が入庫された時点から出庫された時点までの間における収容部303内の温度が測定された温度データである。
【0024】
また、医薬品管理記憶部102は、商品コードと品質条件データを対応づけて記憶することもできる。品質条件データは、商品コードが示す医薬品100毎に定められるデータであって、保存条件を逸脱したとしても、品質に与える影響を許容することができる条件を示すデータである。
ここで、保存条件は、例えば、保存温度を規定する条件であり、例えば、保存温度の上限を表す保存上限温度、保存温度の下限温度を表す保存下限温度、のうち少なくともいずれか一方を用いる。保存上限温度として例えば6℃が設定されている場合には、医薬品を6℃以下の環境で保存する必要がある。また、保存下限温度として例えば2℃が設定されている場合には、医薬品を2℃未満にならない環境で保存する必要がある。また、保存上限温度(例えば6℃)と保存下限温度(2℃)の両方が設定されている場合には、医薬品を保存上限温度と保存下限温度との間の温度(例えば2℃から6℃)で保存する必要がある。すなわち、保存条件として保存温度が規定された医薬品については、医薬品が病院に納品されてから実際に使用するまでの間は、冷蔵機能あるいは冷凍機能がある保管庫において、この保存条件を満たすような温度を維持するように保存される。
品質条件データは、保存条件から逸脱した温度、時間、回数の少なくともいずれか1つの項目に基づいて設定される。いずれの項目を用いるかについては、医薬品の特性に応じて決定されればよい。ここで、品質条件データの一例として、(1)逸脱上限温度、(2)逸脱下限温度、(3)逸脱温度範囲と暴露時間の上限値、(4)逸脱温度範囲と暴露時間の上限値と回数、を用いた(1)から(4)の場合についてそれぞれ説明する。
(1)逸脱上限温度を用いる場合
品質条件データとして、逸脱上限温度が用いられる場合、この逸脱上限温度を超えた医薬品については使用しない。例えば、保存上限温度が6℃、保存下限温度が2℃として設定され、逸脱上限温度が15℃として設定された医薬品について、2℃から6℃の間で保存しており、一時的に保存範囲温度(2℃から6℃)の範囲外に暴露された場合であって、その温度が15℃を超えた場合には、使用することができない。
(2)逸脱下限温度を用いる場合
品質条件データとして、逸脱下限温度が用いられる場合、この逸脱下限温度を下回った医薬品については使用しない。例えば、保存上限温度が6℃、保存下限温度が2℃として設定され、逸脱下限温度が0℃として設定された医薬品について、2℃から6℃の間で保存しており、一時的に保存範囲温度(2℃から6℃)の範囲外に暴露され、その温度が0℃を下回った場合には、使用することができない。
(3)逸脱温度範囲と暴露時間の上限値
品質条件データとして、逸脱温度範囲と暴露時間の上限値が用いられる場合、一時的に保存範囲温度を逸脱したとしても、逸脱温度範囲内であり、かつ、暴露時間の上限値に到達していない医薬品については使用が許容される。例えば、保存上限温度が6℃未満、保存下限温度が2℃として設定され、逸脱温度範囲が6℃から15℃が設定され、暴露時間の上限値が1時間として設定された医薬品について、2℃から6℃の間で保存しており、一時的に保存範囲温度(2℃から6℃)の範囲外に暴露され、その温度が10℃であり、暴露時間が10分である場合には、逸脱温度範囲内であって、暴露時間の上限値に到達していないため、その医薬品は使用が許容される。ただし、逸脱温度範囲を超えるか(例えば28℃)、暴露時間の上限値を超えた場合(例えば2時間)には、その医薬品は使用できない。
(4)逸脱温度範囲と暴露時間の上限値と暴露回数
品質条件データとして、逸脱温度範囲と暴露時間の上限値と暴露回数が用いられる場合、一時的に保存範囲温度を逸脱したとしても、暴露時間の上限値に到達していない時間内であって、逸脱温度範囲内に達した暴露回数が上限回数までである場合には、その医薬品については使用が許容される。
保存上限温度が6℃未満、保存下限温度が2℃として設定され、逸脱温度範囲が6℃から15℃が設定され、暴露時間の上限値が1時間、暴露回数の上限である上限回数が2回として設定された医薬品を例として説明する。この医薬品が、2℃から6℃の間で保存しており、一時的に保存範囲温度(2℃から6℃)の範囲外の10℃に10分間暴露され、その後、保存範囲温度(例えば5℃)にて保存された後、また一時的に保存範囲温度の範囲外の12℃に15分間暴露された場合には、保存範囲温度を逸脱した際の温度がいずれも逸脱温度範囲内(1回目が10℃、2回目が12℃)であり、暴露時間がいずれも、上限値内(1回目が10分、2回目が15分)であり、暴露回数が上限回数内(2回)であり、逸脱温度範囲、暴露時間、暴露回数のいずれの項目についても、その範囲内であるため、この医薬品は使用が許容される。ただし、逸脱温度範囲を超えた場合(例えば28℃)、暴露時間の上限値を超えた場合(例えば2時間)、暴露回数が上限回数を超えた場合(例えば3回以上)には、その医薬品は使用できない。
【0025】
データ登録部103は、医薬品に印字された使用期限に対して文字認識処理を行って得られる使用期限データと、医薬品に付帯される機械読取コード(シリアル番号)とを、端末装置20から通信部101を介して受信することで取得し、医薬品管理記憶部102に記憶させる。データ登録部103は、使用期限データとシリアル番号だけでなく、商品コードも取得し、登録することができる。
【0026】
判定部104は、品質データに基づいて、保管庫に保管された医薬品のうち、読取部によって機械読取コードが読み取られた医薬品を使用する優先度を判定する。
判定部104は、前記品質データに含まれる使用期限に基づいて、医薬品の使用期限までの期間が短いほど、高い優先度であると判定する。
判定部104は、品質データに含まれる温度履歴と、前記医薬品に対して定められた基準温度を示す品質条データとに基づいて、品質レベルを特定し、特定された品質レベルに基づいて、優先度を判定する。
判定部104は、品質データに基づいて、複数の保管庫に保管されたそれぞれの医薬品を対象として、読取部によって機械読取コードが読み取られた医薬品を使用する優先順位を判定する。
【0027】
制御部105は、判定部104の判定結果を出力する。この出力は、例えば、通信部101を介して端末装置20に対して行われる送信処理であってもよい。
制御部105は、前記読取部によって機械読取コードが読み取られた医薬品よりも優先度が高い医薬品が保管された保管庫があるか否かに応じた情報を出力する。
【0028】
図7は、医薬品管理システム1の医薬品管理装置10にデータを登録する登録時及び入庫時における動作を説明する図である。
まず、医薬品管理記憶部102は、品質条件データを記憶する(ステップS1)。この記憶は、医薬品管理装置10の管理者によって、キーボードやマウス等の入力デバイスを利用して入力されるか、外部装置等から品質条件データを取り込むことで記憶する。
医薬品100が病院に納品されると(ステップS10)、病院の作業者は、機械読取コードが印字されたシール200を準備し、納品された医薬品100のそれぞれに貼り付ける。シール200が貼り付けられる位置は、商品コードと使用期限が印字された面であって、商品コードと使用期限に重ならない位置であると、使用期限、機械読取コードを1つの画像に収まるように撮影できることで、これらの対応関係が1つの撮像データから把握できる点において好ましい。また、機械読取コードが印字されたシール200を用いることで、ICタグ等を用いて個体識別する場合に比べて、コストを安く抑えることができる。
シリアル番号を示す機械読取コードが印字されたシール200が、医薬品100のそれぞれに貼り付けられることで、医薬品100を個別に認識することが可能となる。
シール200が貼り付けられると、端末装置20は、起動指示が入力されると、医薬品100を登録する画面を起動し、続いて、作業者から「登録モード」を選択する指示が入力されると、「登録モード」に移行する。そして、医薬品100の使用期限、商品コード、機械読取コードが撮影範囲に収まるようにして撮影ボタンが押されると、画像取得部201は、撮像し(ステップS11)、撮像データを生成する。撮像データが生成されると、文字認識部202は、撮像データから使用期限データを取得し(ステップS12)、コード認識部203は、商品コードとシリアル番号とを取得する(ステップS13)。これらのデータが取得されると、制御部207は、通信部204によって、使用期限データ、商品コード、シリアル番号、ユーザIDとを医薬品管理装置10に送信する(ステップS14)。
【0029】
医薬品管理装置10のデータ登録部103は、通信部101によって、端末装置20から使用期限データ、商品コード、シリアル番号とを受信すると、医薬品管理記憶部102に記憶する(ステップS15)。これら情報が記憶されると、データ登録部103は、登録が完了したことを端末装置20に送信する(ステップS16)。端末装置20は、この登録完了の通知を受信し、出力部206の画面上に表示する。これにより、作業員は、登録が完了したことを確認することができる。
このような登録処理は、1つの医薬品毎に行ってもよいし、ステップS11、S12、S13を登録対象の医薬品のそれぞれについて行った後で、ステップS14の送信を行ってもよい。
【0030】
次に、病院の作業者は、保管庫30に医薬品100を入庫する場合、端末装置20において、「入庫モード」を選択する指示を入力する。作業者から「入庫モード」を選択する指示が入力されると、端末装置20は、「入庫モード」に移行する。そして、医薬品100のシリアル番号が撮影範囲に収まるようにして撮影ボタンが押されると、画像取得部201は、撮像し(ステップS20)、撮像データを生成する。撮像データが生成されると、コード認識部203は、シリアル番号を取得する(ステップS21)。シリアル番号が取得されると、制御部207は、「保管庫の識別情報を入力して下さい」というメッセージを出力部206の画面上に表示する。ここでは、「保管庫1」、「保管庫2」等の保管庫を選択する選択肢を表示する。これを受けて、作業員は、「保管庫1」の選択肢を選択する操作入力を入力部205から行うか、医薬品100を入庫する対象の保管庫30に取り付けられた管理タグ301に近づける。端末装置20は、例えば、「保管庫1」の選択肢が操作入力された場合には、「保管庫1」に設置された管理タグ301の管理タグIDを特定し(ステップS22)、ステップS21において取得されたシリアル番号とを通信部204によって医薬品管理装置10に送信する(ステップS23)。あるいは、端末装置20は、入庫する対象の保管庫30に取り付けられた管理タグ301に対して通信可能な距離まで近づけられると、NFC通信によって、管理タグ301から管理タグIDを読み出すことで保管庫の特定をし(ステップS22)、読み出した管理タグIDと、ステップS21において取得されたシリアル番号とを通信部204によって医薬品管理装置10に送信する(ステップS23)。
このような入庫処理は、入庫する対象の医薬品毎に行ってもよいし、ステップS20、S21、S22を入庫対象の医薬品のそれぞれについて行った後で、端末装置20が、作業者によって送信ボタンが押されたことに応じて、取得された各シリアル番号と、管理タグ301の管理タグIDとを医薬品管理装置10に送信するようにしてもよい。これにより、複数の医薬品について、機械読取コードを取得する都度、医薬品管理装置10に送信せず、纏めて送信することができる。
【0031】
医薬品管理装置10のデータ登録部103は、通信部101によって、端末装置20からシリアル番号と管理タグIDを受信すると、医薬品管理記憶部102にこれらの情報を記憶するとともに、入庫日時を記憶する(ステップS23)。入庫日時は、端末装置20からシリアル番号と管理タグIDとを受信した日付と時刻を用いるか、または、端末装置20においてシリアル番号と管理タグIDとを送信する時点における日付と時刻を用いるようにしてもよい。これらの日付、時刻は、医薬品管理装置10内の時計機能によって示される日付と時刻または、端末装置20内の時計機能によって示される日付と時刻を用いるようにしてもよい。
そして、これら情報が記憶されると、データ登録部103は、入庫登録が完了したことを端末装置20に送信する(ステップS24)。端末装置20は、この入庫登録完了の通知を受信し、出力部206の画面上に表示する。これにより、作業員は、入庫登録が完了したことを確認することができる。その上で、保管庫30の扉を開け、入庫登録を行った医薬品100を保管庫30に入れ(ステップS25)、扉を閉める。これにより、医薬品100と、当該医薬品100が入れられた保管庫30との関係を、医薬品管理装置10において把握することができる。
【0032】
ここで、医薬品100を保管庫30の収容部303に配置する場合、納品された時期が新しいものを奥側に配置し、納品された時期が古いものを手前側に配置するようにすることで、先に納品された医薬品を取り出しやすくすることができる。一般に、先に納品された医薬品の方が、使用期限が古い傾向にあり、また、暴露時間も長くなる可能性が高い。
また、入庫した際に、入庫順を示す札を医薬品100のそれぞれに取り付けるようにしてもよい。これにより、札に記載された入庫順を手がかりに、入庫順序が簡単に把握でき、使用期限が古いものや、暴露時間が長いものを見つけやすくすることができる。
【0033】
保管庫30の管理タグ301は、センサ302によって収容部303内の温度を一定時間毎(例えば、数秒毎または数分毎等)に測定し、測定結果を温度データとして自身に割り当てられた管理タグIDとともにゲートウェイ装置40を介して医薬品管理装置10に送信する(ステップS30、S31)。これにより、医薬品管理記憶部102の保管庫ID(管理タグID)に対応する温度データとして、管理タグ301から送信された温度データと受信した時刻とともに順次記憶される。
【0034】
図8は、医薬品管理システム1の出庫時における動作を説明する図である。
病院の作業者は、保管庫30から医薬品100を出庫する場合、端末装置20において、「出庫モード」を選択する指示を入力する。作業者から「出庫モード」を選択する指示が入力されると、端末装置20は、「出庫モード」に移行する。そして、保管庫30の扉を開けて、出庫する対象の医薬品100を取り出し(ステップS30)、取り出した医薬品100のシリアル番号が撮影範囲に収まるようにして撮影ボタンが押されると、画像取得部201は、撮像し(ステップS31)、撮像データを生成する。撮像データが生成されると、コード認識部203は、シリアル番号を取得する(ステップS32)。シリアル番号が取得されると、端末装置20は、取得されたシリアル番号と出庫処理であることを示す情報とを医薬品管理装置10に送信する(ステップS33)。
【0035】
医薬品管理装置10の判定部104は、端末装置20から、シリアル番号と出庫処理であることを示す情報とを受信すると、受信したシリアル番号に対応する使用期限または温度データに基づいて、保管庫30に保管された各医薬品のうち、今回受信したシリアル番号によって特定される医薬品が使用する優先度を判定する(ステップS34)。例えば、判定部104は、医薬品管理記憶部102に記憶されたデータの使用期限データを参照し、今回受信したシリアル番号によって特定される医薬品の使用期限データが示す使用期限よりも短い使用期限の医薬品が保管庫30にあるか否かを判定し、当該シリアル番号によって特定される医薬品の使用期限よりも短い使用期限の医薬品が保管庫30にある場合には、今回受信したシリアル番号によって特定される医薬品の優先度が低いと判定し、当該シリアル番号によって特定される医薬品の使用期限よりも短い使用期限の医薬品が保管庫30にない場合には、今回受信したシリアル番号によって特定される医薬品の優先度が高いと判定する。これにより、出庫しようとしている対象の医薬品よりも使用期限が迫っている医薬品が他にあるか否かを特定することができる。
【0036】
また、判定部104は、温度データを用いて優先度を判定することもできる。温度データを用いて優先度を判定する場合、判定部104は、今回受信したシリアル番号に対応する商品コードを読み出し、この商品コードに対応する品質条件データを読み出す。そして、判定部104は、温度データのログと、品質条件データが示す条件とに基づいて、品質レベルを特定する。例えば、温度データのログが、品質条件データが示す温度を超えたか否かを判定する。この判定は、今回受診したシリアル番号に対応する商品コードと同じ商品コードの医薬品について、それぞれ行う。そして判定部104は、今回受信したシリアル番号の医薬品について、品質条件データが示す温度を超えている場合には、この医薬品について、優先度が高いと判定する。一方、今回受信したシリアル番号の医薬品について、品質条件データが示す温度を超えていない場合には、同じ商品コードの医薬品について、品質条件データが示す温度を超えている医薬品があるか否かを判定し、超えている医薬品がある場合には、今回受信したシリアル番号の医薬品よりも他の医薬品の方が優先度が高い(あるいは今回受信したシリアル番号の医薬品は、他の医薬品よりも優先度が低い)と判定し、超えている医薬品がない場合には、今回受信したシリアル番号の医薬品と他の医薬品との優先度は同じであると判定する。
【0037】
また、判定部104は、温度データと、基準温度の範囲とその基準温度の範囲毎の暴露時間とを示すデータを用いて優先度を判定することもできる。この場合、判定部104は、今回受信したシリアル番号に対応する商品コードを読み出し、この商品コードに対応する品質条件データを読み出す。そして、判定部104は、温度データのログと、品質条件データが示す条件とに基づいて、品質レベルを特定する。例えば、判定する対象の医薬品についての温度データのログが、冷蔵庫または冷凍庫において保管する際の一定の温度範囲の上限温度(T1℃)よりも高い温度である基準温度の範囲に入っている時間がない場合には、優先度が最も低い(品質レベル「高」)と判定し、基準温度の範囲に入っている時間が暴露時間の上限値以内である場合には、優先度が高い(品質レベル「高」)と判定し、温度データのログの基準温度の範囲に入っている時間が、暴露時間を超えている場合には、使用できないと判定する。判定部104は、このような判定を、出庫しようとしている対象の医薬品と、当該医薬品と同じ商品コードの医薬品のそれぞれについて判定する。そして、判定部104は、出庫しようとしている対象の医薬品の優先度よりも高い優先度の医薬品(品質レベルが低い医薬品)があるか否かを判定し、出庫しようとしている対象の医薬品の優先度よりも高い優先度の医薬品(品質レベルが低い医薬品)があれば、今回受信したシリアル番号の医薬品よりも他の医薬品の方が優先度が高い(あるいは今回受信したシリアル番号の医薬品は、他の医薬品よりも優先度が低い)と判定し、出庫しようとしている対象の医薬品の優先度よりも高い優先度の医薬品(品質レベルが低い医薬品)がない場合には、今回受信したシリアル番号の医薬品との優先度は同じであると判定する。なお、温度データのログの基準温度の範囲に入っている時間が、暴露時間を超えており、使用できないと判定された場合には、使用できないことを判定結果として得る。
なお、ここでは、判定部104は、基準温度の範囲に入っている時間が暴露時間の上限値以内である医薬品が複数ある場合には、暴露時間の長さに応じて、優先度をさらに細分化して判定するようにし、暴露時間が長いほど、優先度が高いと判定するようにしてもよい。
【0038】
また、判定部104は、温度データと、基準温度の範囲とその基準温度の範囲毎の暴露時間と、回数を示すデータを用いて優先度を判定することもできる。この場合、判定部104は、今回受信したシリアル番号に対応する商品コードを読み出し、この商品コードに対応する品質条件データを読み出す。そして、判定部104は、温度データのログと、品質条件データが示す条件とに基づいて、品質レベルを特定する。例えば、判定する対象の医薬品についての温度データのログが、冷蔵庫または冷凍庫において保管する際の一定の温度範囲の上限温度(T1℃)よりも高い温度である基準温度の範囲に入っている時間がない場合には、優先度が最も低い(品質レベル「高」)と判定し、基準温度の範囲に入っている時間が暴露時間の上限値以内であって、基準温度の範囲に入った回数の上限値内である場合には、暴露時間の長さと基準温度の範囲に入った回数とを、他の同じ商品コードの医薬品についてもそれぞれ判定し、優先度を判定する。
出庫しようとしている医薬品よりも暴露時間が長い、あるいは暴露された回数が多い医薬品が無ければ、出庫しようとしている医薬品の優先度が高いと判定し、出庫しようとしている医薬品よりも暴露時間が長い、あるいは暴露された回数が多い医薬品があれば、その暴露時間や回数に応じて、優先度を判定する。例えば、暴露された回数が同じであれば、暴露された時間が長い医薬品ほど高い優先度であると判定し、暴露された回数が他の医薬品よりも少ない場合には、優先度が低いと判定することができる。なお、温度データのログの基準温度の範囲に入っている時間が、暴露時間を超えている場合、または回数の上限値を超えている場合には、判定部104は、使用できないと判定する。
なお、使用期限データを用いた優先度の判定と、温度データを用いた優先度の判定は、いずれか一方のみを行ってもよいし、両方行ってもよい。
【0039】
ここで、保管庫30に収容された医薬品100は、通常であれば、冷蔵あるいは冷凍の環境において保管されているため、品質を維持するための温度の範囲で保管することができるが、保管庫30の扉の開けっ放し、停電、故障等の原因により、一時的に、目標温度を維持できないことがある。このような場合が生じていたとしても、センサ302によって環境を測定し、保管状況を把握することができる。
【0040】
判定部104による優先度の判定が行われると、制御部105は、判定結果を通信部101を介して端末装置20に送信する(ステップS35)。制御部105は、判定結果を端末装置20に送信する際、出庫対象としてシリアル番号が読み取られた医薬品よりも優先度が高い医薬品がある場合には、その優先度が高い医薬品が保管された保管庫を示す保管庫IDも送信する。
端末装置20は、この判定結果を受信すると、受信した優先度の判定結果を画面上に表示する(ステップS36)。ここでは、優先度が高い医薬品が保管された保管庫を示す保管庫IDを受信した場合には、その保管庫IDについても表示する。作業員は、この表示された優先度の判定結果を参照することで、出庫対象の医薬品を実際に出庫してよいか、あるいは、他の医薬品を先に出庫すべきかを簡単に判断することができる。また、出庫しようとしている保管庫30とは別の保管庫30に優先度の高い医薬品がある場合には、その保管庫30を確認することで、優先度の高い医薬品を簡単に見つけることができる。
【0041】
以上説明した実施形態において、温度データは、医薬品管理装置10が管理タグ301から受信すると、受信した管理タグに対応する温度データのデータとしてそれぞれ記憶する場合について説明したが、温度データを蓄積するデータベースを医薬品管理記憶部102とは別に設けるようにしてもよい。この場合、温度データは、測定時間と温度データとを対応づけて、保管庫30毎に記憶する。そして、出庫処理を実行する際に、出庫対象の商品コードに該当する各医薬品について、保管されている保管庫30の温度データのうち、入庫時間から出庫処理をする時間までの間の温度データを抽出し、医薬品管理記憶部102の各商品について対応付けするようにしてもよい。
【0042】
また、上述した実施形態において、出庫時に出庫対象の医薬品100に付帯されたシール200から機械読取コードを読み取ることで、優先度の判定を行う場合について説明したが、端末装置20において、「出庫モード」にし、出庫対象の商品コードあるいは医薬品名などを指定することで、この指定された商品コードの医薬品のそれぞれについて、優先度を判定し、優先度の高い順で画面に表示するようにしてもよい。これにより、どの保冷庫30からいずれの医薬品100を出庫すればよいかの見当をつけた上で、取り出すことができる。
【0043】
上述した実施形態における医薬品管理装置10、または端末装置20をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0044】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0045】
1…医薬品管理システム、10…医薬品管理装置、20…端末装置、20a…端末装置、20b…端末装置、30…保管庫、30a…保管庫、30b…保管庫、40…ゲートウェイ装置、50…ネットワーク、100…医薬品、100a…医薬品、100n…医薬品、101…通信部、102…医薬品管理記憶部、103…データ登録部、104…判定部、105…制御部、110…名称、111…使用期限、112…商品コード、200…シール、201…画像取得部、202…文字認識部、203…コード認識部、204…通信部、205…入力部、206…出力部、207…制御部、210…機械読取コード、211…文字列、301…管理タグ、302…センサ、303…収容部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8