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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】測距センサ
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/4861 20200101AFI20240109BHJP
   G01S 7/481 20060101ALI20240109BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20240109BHJP
   H01L 31/10 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
G01S7/4861
G01S7/481 Z
G01C3/06 120Q
G01C3/06 140
H01L31/10 G
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019169425
(22)【出願日】2019-09-18
(65)【公開番号】P2021047076
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西野 辰樹
【審査官】藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-081254(JP,A)
【文献】特開2019-101023(JP,A)
【文献】国際公開第2019/087783(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0250257(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 - 7/51
17/00 - 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの射出光に起因して被測定物から反射される光を受光した際に信号を出力するSPAD(Single Photon Avalanche Diode)素子と、
前記SPAD素子のカソードに並列に接続される第1の定電流源および第2の定電流源と、
前記SPAD素子と前記第1の定電流源との間に接続される第1のスイッチと、
前記SPAD素子と前記第2の定電流源との間に接続される第2のスイッチと、
前記SPAD素子および前記第1のスイッチの間と、接地電位との間に接続されるゲーティングスイッチと、
を備える測距センサ。
【請求項2】
光源からの射出光に起因して被測定物から反射される光を受光した際に信号を出力するSPAD(Single Photon Avalanche Diode)素子と、
前記SPAD素子のアノードに並列に接続される第1の定電流源および第2の定電流源と、
前記SPAD素子と前記第1の定電流源との間に接続される第1のスイッチと、
前記SPAD素子と前記第2の定電流源との間に接続される第2のスイッチと、
前記SPAD素子および前記第1のスイッチの間と、電源電圧との間に接続されるゲーティングスイッチと、
を備える測距センサ。
【請求項3】
前記被測定物に光を照射する光源と、
前記光源と、前記第1のスイッチと、前記第2のスイッチと、前記ゲーティングスイッチとを制御する制御部とをさらに備え、
前記制御部は、
前記光源の発光動作に同期させて、前記ゲーティングスイッチをオンからオフに切り替える
請求項1に記載の測距センサ。
【請求項4】
前記制御部は、
前記ゲーティングスイッチのオフ動作に同期させて、前記第1のスイッチをオフからオンに切り替え、
前記第1のスイッチをオフからオンに切り替えた後に、前記第2のスイッチをオフからオンに切り替える
請求項3に記載の測距センサ。
【請求項5】
前記制御部は、
前記第2のスイッチをオフからオンに切り替えるまでの間、前記第1のスイッチをオン状態で維持する
請求項4に記載の測距センサ。
【請求項6】
前記制御部は、
前記第2のスイッチをオフからオンに切り替えるまでの間に、前記第1のスイッチをオンからオフに切り替える
請求項4に記載の測距センサ。
【請求項7】
前記被測定物に光を照射する光源と、
前記光源と、前記第1のスイッチと、前記第2のスイッチと、前記ゲーティングスイッチとを制御する制御部とをさらに備え、
前記制御部は、
前記光源を発光させるよりも前に前記ゲーティングスイッチをオンからオフに切り替え
前記ゲーティングスイッチのオフ動作に同期させて、前記第1のスイッチをオフからオンに切り替え、
前記第1のスイッチをオフからオンに切り替えた後に、前記第2のスイッチをオフからオンに切り替える
請求項に記載の測距センサ。
【請求項8】
前記第1の定電流源の電流値は、前記第2の定電流源の電流値よりも小さい
請求項1に記載の測距センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測距センサに関する。
【背景技術】
【0002】
光を用いて被測定物までの距離を測定する測距方式の一つとして、直接ToF(Time of Flight)方式と呼ばれる測距手法が知られている。かかる直接ToF方式では、光源から射出された光が被測定物により反射された反射光を受光素子により受光し、光が射出されてから反射光として受光されるまでの時間に基づき対象までの距離を計測する(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-117970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示では、SPAD素子のゲーティング動作を素早くかつ良好に実施することができる測距センサを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示によれば、測距センサが提供される。測距センサは、SPAD(Single Photon Avalanche Diode)素子と、第1の定電流源および第2の定電流源と、第1のスイッチと、第2のスイッチと、ゲーティングスイッチとを備える。SPAD素子は、光源からの射出光に起因して被測定物から反射される光を受光した際に信号を出力する。第1の定電流源および第2の定電流源は、前記SPAD素子のカソードに並列に接続される。第1のスイッチは、前記SPAD素子と前記第1の定電流源との間に接続される。第2のスイッチは、前記SPAD素子と前記第2の定電流源との間に接続される。ゲーティングスイッチは、前記SPAD素子および前記第1のスイッチの間と、接地電位との間に接続される。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、SPAD素子のゲーティング動作を素早くかつ良好に実施することができる。なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の各実施形態に適用可能である直接ToF方式による測距を模式的に示す図である。
図2】本開示の各実施形態に適用可能である受光部が受光した時刻に基づく一例のヒストグラムを示す図である。
図3】実施形態に係る測距装置を用いた電子機器の一例の構成を示すブロック図である。
図4】実施形態に適用可能な測距装置の一例の構成をより詳細に示すブロック図である。
図5】本開示の各実施形態に係る測距センサの構成例を示すブロック図である。
図6】本開示の各実施形態に係る受光部に適用可能であるデバイスの構成の例を示す模式図である。
図7】本開示の第1実施形態に係るパルス出力部の構成例を示す回路図である。
図8】本開示の第1実施形態に係るパルス出力部の動作例を示すタイミングチャートである。
図9】本開示の第1実施形態に係る遅延回路およびパルス生成回路の構成例を示す回路図である。
図10】本開示の第1実施形態に係る遅延回路およびパルス生成回路の別の構成例を示す回路図である。
図11】本開示の第2実施形態に係るパルス出力部の構成例を示す回路図である。
図12】本開示の第2実施形態に係るパルス出力部の動作例を示すタイミングチャートである。
図13】本開示の第1実施形態の変形例に係るパルス出力部の構成例を示す回路図である。
図14】本開示の第1実施形態の変形例に係るパルス出力部の動作例を示すタイミングチャートである。
図15】本開示の第1実施形態の変形例に係るパルス出力部の別の構成例を示す回路図である。
図16】本開示の第1実施形態の変形例に係るパルス出力部の別の動作例を示すタイミングチャートである。
図17】本開示の第2実施形態の変形例に係るパルス出力部の構成例を示す回路図である。
図18】本開示の第2実施形態の変形例に係るパルス出力部の動作例を示すタイミングチャートである。
図19】本開示の第2実施形態の変形例に係るパルス出力部の別の構成例を示す回路図である。
図20】本開示の第2実施形態の変形例に係るパルス出力部の別の動作例を示すタイミングチャートである。
図21】車両制御システムの概略的な構成の一例を示すブロック図である。
図22】車外情報検出部及び撮像部の設置位置の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本開示の各実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の各実施形態において、同一の部位には同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0009】
光を用いて被測定物までの距離を測定する測距方式の一つとして、直接ToF方式と呼ばれる測距手法が知られている。かかる直接ToF方式では、光源から射出された光が被測定物により反射された反射光を受光素子により受光し、光が射出されてから反射光として受光されるまでの時間に基づき対象までの距離を計測する。
【0010】
かかる測距手法には、内部にSPAD(Single Photon Avalanche Diode)素子を備えた受光素子が受光部として用いられる。かかるSPAD素子には、受光して信号が出力された後に所定のデッドタイムがあることから、被測定物からの反射光を確実に受光して信号を出力させるため、SPAD素子は光源が発光するまで無効状態に制御されている。
【0011】
そして、光源の発光動作に同期させて、SPAD素子を無効状態から有効状態に切り替えるゲーティング動作と呼ばれる処理が測距センサ内で実施されている。
【0012】
一方で、光源からの射出光が測距センサの筐体などで反射し、迷光として被測定物からの反射光よりも早く戻ってくる場合がある。そして、かかる迷光に起因して、上述のゲーティング動作を良好に実施することができない場合がある。
【0013】
なぜなら、かかる迷光がSPAD素子に入射すると電子として蓄積されることから、かかる蓄積電子に起因してゲーティング動作の最中にSPAD素子が意図せず反応してしまう場合があるからである。
【0014】
この蓄積電子に起因する問題点を改善するためには、比較的長い時間をかけてゲーティング動作を実施することが有効である。これにより、迷光に起因する蓄積電子を消滅させながらゲーティング動作を実施することができることから、蓄積電子に起因してSPAD素子が意図せず反応してしまうことを抑制することができる。
【0015】
しかしながら、ゲーティング動作に長い時間をかけることによって、SPAD素子が無効状態から有効状態に切り替わる時間も長くなってしまう。これにより、測距センサの近くに被測定物があった場合、被測定物からの反射光が届くまでにSPAD素子を有効状態に切り替えることができない。したがって、測距センサの近くにある被測定物の距離を測定することが困難となる。
【0016】
そこで、上述の問題点を克服し、SPAD素子のゲーティング動作を素早くかつ良好に実施することができる測距センサの実現が期待されている。
【0017】
[測距方法]
本開示は、光を用いて測距を行う技術に関するものである。そこで、本開示の各実施形態の理解を容易とするために、図1および図2を参照しながら、各実施形態に適用可能な測距方法について説明する。
【0018】
図1は、本開示の各実施形態に適用可能である直接ToF方式による測距を模式的に示す図である。各実施形態では、測距方式として直接ToF方式を適用する。
【0019】
かかる直接ToF方式は、光源部2からの射出光L1が被測定物Xにより反射した反射光L2を受光部3により受光し、光の射出タイミングと受光タイミングとの差分の時間に基づき測距を行う方式である。
【0020】
測距センサ1は、光源部2と、受光部3とを備える。光源部2は、たとえばレーザダイオードである光源4(図5参照)を有し、レーザ光をパルス状に発光するように駆動される。
【0021】
光源部52からの射出光L1は、被測定物Xにより反射され、反射光L2として受光部3に受光される。受光部3は、光電変換によって光を電気信号に変換する画素アレイ部6(図5参照)を含み、受光した光に応じた信号を出力する。
【0022】
ここで、光源部52が発光した時刻(発光タイミング)を時間t0、光源部2からの射出光L1が被測定物Xにより反射された反射光L2を受光部3が受光した時刻(受光タイミング)を時間t1とする。
【0023】
定数cを光速度(2.9979×108[m/sec])とすると、測距センサ1と被測定物Xとの間の距離Dは、次式(1)により計算される。
D=(c/2)×(t1-t0) …(1)
【0024】
なお、測距センサ1は、上述の処理を、複数回繰り返して実行するとよい。また、受光部3は、複数のSPAD素子6a(図6参照)を有し、各SPAD素子6aに反射光L2が受光された各受光タイミングに基づき距離Dをそれぞれ算出してもよい。
【0025】
測距センサ1は、発光タイミングの時間t0から受光部3に光が受光された受光タイミングまでの時間tm(以下、「受光時間tm」とも呼称する。)を階級(ビン(bins))に基づき分類し、ヒストグラムを生成する。
【0026】
図2は、本開示の各実施形態に適用可能である受光部3が受光した時刻に基づく一例のヒストグラムを示す図である。図2において、横軸はビン、縦軸はビン毎の頻度を示す。ビンは、受光時間tmを所定の単位時間d毎に分類したものである。
【0027】
具体的には、ビン#0が0≦tm<d、ビン#1がd≦tm<2×d、ビン#2が2×d≦tm<3×d、…、ビン#(N-2)が(N-2)×d≦tm<(N-1)×dとなる。受光部3の露光時間を時間tepとした場合、tep=N×dとなる。
【0028】
測距センサ1は、受光時間tmを取得した回数をビンに基づき計数してビン毎の頻度200を求め、ヒストグラムを生成する。ここで、受光部3は、光源部2からの射出光L1が反射された反射光L2以外の光も受光する。
【0029】
たとえば、対象となる反射光L2以外の光の例として、測距センサ1の周囲の環境光がある。かかる環境光は、受光部3にランダムに入射する光であって、ヒストグラムにおける環境光による環境光成分201は、対象となる反射光L2に対するノイズとなる。
【0030】
一方、対象となる反射光L2は、特定の距離に応じて受光される光であって、ヒストグラムにおいてアクティブ光成分202として現れる。このアクティブ光成分202内のピークの頻度に対応するビンが、被測定物Xの距離Dに対応するビンとなる。
【0031】
測距センサ1は、そのビンの代表時間(たとえばビンの中央の時間)を上述した時間t1として取得することで、上述した式(1)に従い、被測定物Xまでの距離Dを算出することができる。このように、複数の受光結果を用いることで、ランダムなノイズに対して適切な測距が実行可能となる。
【0032】
[電子機器の構成]
図3は、各実施形態に係る測距装置を用いた電子機器の一例の構成を示すブロック図である。図3において、電子機器56は、測距装置51と、光源部52と、記憶部53と、制御部54と、光学系55と、を含む。
【0033】
光源部52は、上述した光源部301に対応し、レーザダイオードであって、例えばレーザ光をパルス状に発光するように駆動される。光源部52は、面光源としてレーザ光を射出するVCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting LASER)を適用することができる。これに限らず、光源部52として、レーザダイオードをライン上に配列したアレイを用い、レーザダイオードアレイから射出されるレーザ光をラインに垂直の方向にスキャンする構成を適用してもよい。さらにまた、単光源としてのレーザダイオードを用い、レーザダイオードから射出されるレーザ光を水平および垂直方向にスキャンする構成を適用することもできる。
【0034】
測距装置51は、上述した受光部302に対応して、複数の受光素子を含む。複数の受光素子は、例えば2次元格子状に配列されて受光面を形成する。光学系55は、外部から入射する光を、測距装置51が含む受光面に導く。
【0035】
制御部54は、電子機器56の全体の動作を制御する。例えば、制御部54は、測距装置51に対して、光源部52を発光させるためのトリガである発光トリガを供給する。測距装置51は、この発光トリガに基づくタイミングで光源部52を発光させると共に、発光タイミングを示す時間t0を記憶する。また、制御部54は、例えば外部からの指示に応じて、測距装置51に対して、測距の際のパターンの設定を行う。
【0036】
測距装置51は、受光面に光が受光されたタイミングを示す時間情報(受光時間tm)を取得した回数を所定の時間範囲内で計数し、ビン毎の頻度を求めて上述したヒストグラムを生成する。測距装置51は、さらに、生成したヒストグラムに基づき、被測定物までの距離Dを算出する。算出された距離Dを示す情報は、記憶部53に記憶される。
【0037】
図4は、各実施形態に適用可能な測距装置51の一例の構成をより詳細に示すブロック図である。図4において、測距装置51は、画素アレイ部100と、測距処理部101と、画素制御部102と、全体制御部103と、クロック生成部104と、発光タイミング制御部105と、インタフェース(I/F)106と、を含む。これら画素アレイ部100、測距処理部101、画素制御部102、全体制御部103、クロック生成部104、発光タイミング制御部105およびインタフェース(I/F)106は、例えば1つの半導体チップ上に配置される。
【0038】
図4において、全体制御部103は、例えば予め組み込まれるプログラムに従い、この測距装置51の全体の動作を制御する。また、全体制御部103は、外部から供給される外部制御信号に応じた制御を実行することもできる。クロック生成部104は、外部から供給される基準クロック信号に基づき、測距装置51内で用いられる1以上のクロック信号を生成する。発光タイミング制御部105は、外部から供給される発光トリガ信号に従い発光タイミングを示す発光制御信号を生成する。発光制御信号は、光源部52に供給されると共に、測距処理部101に供給される。
【0039】
画素アレイ部100は、2次元格子状に配列される、それぞれ受光素子を含む複数の画素回路60を含む。各画素回路60の動作は、全体制御部103の指示に従った画素制御部102により制御される。例えば、画素制御部102は、各画素回路60からの画素信号の読み出しを、行方向にp個、列方向にq個の、(p×q)個の画素回路60を含むブロック毎に制御することができる。また、画素制御部102は、当該ブロックを単位として、各画素回路60を行方向にスキャンし、さらに列方向にスキャンして、各画素回路60から画素信号を読み出すことができる。これに限らず、画素制御部102は、各画素回路60をそれぞれ単独で制御することもできる。さらに、画素制御部102は、画素アレイ部100の所定領域を対象領域として、対象領域に含まれる画素回路60を、画素信号を読み出す対象の画素回路60とすることができる。さらにまた、画素制御部102は、複数行(複数ライン)を纏めてスキャンし、それを列方向にさらにスキャンして、各画素回路60から画素信号を読み出すこともできる。
【0040】
各画素回路60から読み出された画素信号は、測距処理部101に供給される。測距処理部101は、変換部110と、生成部111と、信号処理部112と、を含む。
【0041】
各画素回路60から読み出され、画素アレイ部100から出力された画素信号は、変換部110に供給される。ここで、画素信号は、各画素回路60から非同期で読み出され、変換部110に供給される。すなわち、画素信号は、各画素回路60において光が受光されたタイミングに応じて受光素子から読み出され、出力される。
【0042】
変換部110は、画素アレイ部100から供給された画素信号を、デジタル情報に変換する。すなわち、画素アレイ部100から供給される画素信号は、当該画素信号が対応する画素回路60に含まれる受光素子に光が受光されたタイミングに対応して出力される。変換部110は、供給された画素信号を、当該タイミングを示す時間情報に変換する。
【0043】
生成部111は、変換部110により画素信号が変換された時間情報に基づきヒストグラムを生成する。ここで、生成部111は、時間情報を、設定部113により設定された単位時間dに基づき計数し、ヒストグラムを生成する。
【0044】
信号処理部112は、生成部111により生成されたヒストグラムのデータに基づき所定の演算処理を行い、例えば距離情報を算出する。信号処理部112は、例えば、生成部111により生成されたヒストグラムのデータに基づき、当該ヒストグラムの曲線近似を作成する。信号処理部112は、このヒストグラムが近似された曲線のピークを検出し、検出されたピークに基づき距離Dを求めることができる。
【0045】
信号処理部112は、ヒストグラムの曲線近似を行う際に、ヒストグラムが近似された曲線に対してフィルタ処理を施すことができる。例えば、信号処理部112は、ヒストグラムが近似された曲線に対してローパスフィルタ処理を施すことで、ノイズ成分を抑制することが可能である。
【0046】
信号処理部112で求められた距離情報は、インタフェース106に供給される。インタフェース106は、信号処理部112から供給された距離情報を、出力データとして外部に出力する。インタフェース106としては、例えばMIPI(Mobile Industry Processor Interface)を適用することができる。
【0047】
なお、上述では、信号処理部112で求められた距離情報を、インタフェース106を介して外部に出力しているが、これはこの例に限定されない。すなわち、生成部111により生成されたヒストグラムのデータであるヒストグラムデータを、インタフェース106から外部に出力する構成としてもよい。この場合、設定部113が設定する測距条件情報は、フィルタ係数を示す情報を省略することができる。インタフェース106から出力されたヒストグラムデータは、例えば外部の情報処理装置に供給され、適宜、処理される。
【0048】
[測距センサの構成]
つづいて、各実施形態に係る測距センサ1の構成について、図5および図6を参照しながら説明する。図5は、本開示の各実施形態に係る測距センサ1の構成例を示すブロック図である。上述のように、測距センサ1は、光源部2と、受光部3と、筐体9とを備える。
【0049】
光源部2は、光源4と、光源駆動部5とを有する。光源4は、たとえば、垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)などのレーザダイオードで構成される。なお、光源4は、VCSELに限られず、レーザダイオードがライン上に配列されたレーザダイオードアレイなどを用いてもよい。
【0050】
光源駆動部5は、光源4を駆動する。光源駆動部5は、たとえば、受光部3の制御部8からの発光制御信号に基づき、光源4から所定のタイミングおよびパルス幅を有する射出光L1が出射されるように光源4を駆動する。
【0051】
光源駆動部5は、たとえば、ライン上に配列されるレーザダイオードを有する光源4から、レーザ光がラインに垂直の方向にスキャンされるように光源4を駆動することができる。
【0052】
受光部3は、画素アレイ部6と、パルス出力部7と、制御部8とを有する。
【0053】
画素アレイ部6は、2次元格子状に配列される複数のSPAD素子6a(図6参照)を有する。かかるSPAD素子6aでは、アバランシェ増倍が発生する大きな逆バイアス電圧をカソードに印加することにより、1光子の入射に応じて発生した電子に起因して、内部でアバランシェ増倍が生じる。
【0054】
すなわち、SPAD素子6aは、1光子の入射に応じて大電流が流れる特性を有する。そして、SPAD素子6aでは、かかる特性を利用することで、反射光L2に含まれる1光子の入射を高感度で検知することができる。
【0055】
画素アレイ部6における複数のSPAD素子6aの動作は、制御部8によって制御される。たとえば、制御部8は、各SPAD素子6aからの信号の読み出しを、行方向にn画素、列方向にm画素の、(n×m)個のSPAD素子6aを含むブロック毎に制御することができる。
【0056】
また、制御部8は、当該ブロックを単位として、各SPAD素子6aを行方向にスキャンし、さらに行毎に列方向にスキャンして、各SPAD素子6aから信号を読み出すことができる。
【0057】
なお、各実施形態において、制御部8は、各SPAD素子6aからそれぞれ単独に信号を読み出してもよい。画素アレイ部6のSPAD素子6aで発生する信号は、パルス出力部7に供給される。
【0058】
パルス出力部7は、SPAD素子6aで発生する信号に応じて、所定のパルス信号をデジタル信号として制御部8に出力する。かかるパルス出力部7の詳細については後述する。
【0059】
制御部8は、たとえば予め組み込まれるプログラムに従い、測距センサ1の全体の動作を制御する。たとえば、制御部8は、光源駆動部5を制御することにより、光源4の発光タイミングを制御する。
【0060】
また、制御部8は、パルス出力部7から出力されるパルス信号に基づいて、図2に示したヒストグラムを生成する。また、制御部8は、生成されたヒストグラムのデータに基づいて所定の演算処理を行い、被測定物Xまでの距離Dを算出する。
【0061】
筐体9は、光源部2および受光部3を収容する。一方で、図3に示すように、射出光L1が筐体9で反射すると、迷光L3として受光部3の画素アレイ部6に入射する場合がある。そして、かかる迷光L3は、被測定物Xからの反射光L2よりも早く画素アレイ部6に入射する。
【0062】
図6は、本開示の各実施形態に係る受光部3に適用可能であるデバイスの構成の例を示す模式図である。図6において、受光部3は、それぞれ半導体チップからなる受光チップ3aとロジックチップ3bとが積層されて構成される。なお、図6では、理解の容易のため、受光チップ3aとロジックチップ3bとが分離された状態で示している。
【0063】
受光チップ3aには、画素アレイ部6の領域にSPAD素子6aが2次元格子状に配列される。ロジックチップ3bには、パルス出力部7と、制御部8とが設けられる。なお、受光チップ3aおよびロジックチップ3bの構成は、図6の例に限定されない。
【0064】
[パルス出力部の構成および動作(第1実施形態)]
つづいて、第1実施形態に係るパルス出力部7の構成および動作について、図7図10を参照しながら説明する。図7は、本開示の第1実施形態に係るパルス出力部7の構成例を示す回路図である。
【0065】
図7に示すように、パルス出力部7は、第1の定電流源11と、第2の定電流源12と、第1のスイッチ13と、第2のスイッチ14と、ゲーティングスイッチ15と、インバータ16とを有する。
【0066】
第1の定電流源11は、所定の電源電圧Vddと第1のスイッチ13との間に接続され、所定の電流値I1を有する電流を第1のスイッチ13に向けて流す。第2の定電流源12は、電源電圧Vddと第2のスイッチ14との間に接続され、所定の電流値I2を有する電流を第2のスイッチ14に向けて流す。
【0067】
第1のスイッチ13は、第1の定電流源11と信号線17との間に接続され、第2のスイッチ14は、第2の定電流源12と信号線17との間に接続される。かかる信号線17は、画素アレイ部6の接続部6bを介して、ダイオードであるSPAD素子6aのカソードとインバータ16の入力端子との間を接続する。
【0068】
すなわち、第1実施形態に係るパルス出力部7では、第1の定電流源11および第2の定電流源12が、それぞれ第1のスイッチ13および第2のスイッチ14を介して、SPAD素子6aのカソードに並列に接続される。
【0069】
そして、第1の定電流源11および第2の定電流源12は、SPAD素子6aのカソードにそれぞれ電流値I1および電流値I2の電流を流す。なお、SPAD素子6aのアノードは所定の電圧Vaに接続され、インバータ16の出力端子は制御部8(図5参照)に接続される。
【0070】
ここで、制御部8は、第1のスイッチ13および第2のスイッチ14を制御することにより、SPAD素子6aのカソードに流れる電流量を制御する。第1のスイッチ13および第2のスイッチ14は、制御部8から出力されるイネーブル信号に基づいて、オン状態(導通状態)およびオフ状態(切断状態)が切り替えられる。
【0071】
具体的には、第1のスイッチ13には、イネーブル信号が直接入力される。すなわち、イネーブル信号がオフからオンに切り替わった場合、直ちに第1のスイッチ13はオフからオンに切り替わる。
【0072】
また、第2のスイッチ14には、イネーブル信号が遅延回路18およびパルス生成回路19を介して入力される。すなわち、イネーブル信号がオフからオンに切り替わった場合、所定の時間経過した後に、所定の期間だけ第2のスイッチ14はオフからオンに切り替わる。
【0073】
ゲーティングスイッチ15は、信号線17と接地電位との間に接続される。すなわち、ゲーティングスイッチ15は、SPAD素子6aおよび第1のスイッチ13の間と、接地電位との間に接続される。
【0074】
ゲーティングスイッチ15は、制御部8から出力されるイネーブル信号に基づいて、オン状態およびオフ状態が切り替えられる。具体的には、ゲーティングスイッチ15には、イネーブル信号がインバータ20を介して入力される。
【0075】
すなわち、イネーブル信号がオフからオンに切り替わった場合、直ちにゲーティングスイッチ15はオンからオフに切り替わる。そして、制御部8は、ゲーティングスイッチ15を制御することにより、SPAD素子6aのゲーティング動作を実施することができる。
【0076】
たとえば、制御部8は、ゲーティングスイッチ15をオン状態にすることにより、SPAD素子6aのカソードを接地することができる。これにより、SPAD素子6aには逆バイアス電圧が印加されなくなることから、制御部8はSPAD素子6aを無効状態にすることができる。
【0077】
一方で、制御部8は、ゲーティングスイッチ15をオフ状態にすることにより、SPAD素子6aのカソードをフローティング状態にすることができる。これにより、SPAD素子6aに逆バイアス電圧を印加することが可能となることから、制御部8はSPAD素子6aを有効状態にすることができる。
【0078】
次に、図7に加えて図8も参照しながら、第1実施形態に係るパルス出力部7の動作について説明する。図8は、本開示の第1実施形態に係るパルス出力部7の動作例を示すタイミングチャートである。
【0079】
図8の例では、初期状態においてイネーブル信号がオフ状態で維持されることから、ゲーティングスイッチ15はオン状態で維持され、SPAD素子6aは無効状態となる。
【0080】
そして、制御部8は、光源駆動部5を制御することにより、時間T1で光源4をパルス状に発光させる。これにより、時間T2で迷光L3がSPAD素子6aに入射する。図8に示すように、迷光L3は、被測定物Xからの反射光L2よりも早くSPAD素子6aに入射する。
【0081】
そして、かかる迷光L3がSPAD素子6aに入射することにより、無効状態のSPAD素子6aには電子が蓄積される。
【0082】
次に、制御部8は、光源4が発光した時間T1から所定の時間経過した時間T3で、イネーブル信号をオフからオンに切り替える。これにより、ゲーティングスイッチ15が時間T3でオンからオフに切り替わることから、SPAD素子6aのカソードはフローティング状態となる。
【0083】
また、第1のスイッチ13は、時間T3でオフからオンに切り替わる。これにより、SPAD素子6aのカソードには電流値I1の電流が第1の定電流源11から供給されることから、SPAD素子6aのカソード電圧は、0(V)から徐々に上昇する。
【0084】
このように、第1実施形態では、ゲーティング動作を開始した後、SPAD素子6aのカソードに並列に接続される複数の定電流源のうち、1つの定電流源(第1の定電流源11)を用いてSPAD素子6aのカソードを昇圧する。
【0085】
これにより、SPAD素子6aのカソードが昇圧される速度を制限することができる。したがって、第1実施形態によれば、SPAD素子6a内の蓄積電子を消滅させながらゲーティング動作を実施することができることから、蓄積電子に起因してSPAD素子6aが意図せず反応してしまうことを抑制することができる。
【0086】
そして、制御部8から送られたイネーブル信号は、上述のように、遅延回路18およびパルス生成回路19を介して第2のスイッチ14に送られる。これにより、時間T3から所定の遅延時間だけ経過した時間T4で、第2のスイッチ14がオフからオンに切り替わる。
【0087】
これにより、SPAD素子6aのカソードには電流値I1+I2の電流が第1の定電流源11および第2の定電流源12から供給されることから、SPAD素子6aのカソード電圧は、時間T4時点の電圧V1から急激に上昇する。
【0088】
そして、時間T5で所定の電圧V2に到達し、かかる時間T5で第2のスイッチ14はオンからオフに切り替わる。その後は、SPAD素子6aのカソードに電流値I1の電流が第1の定電流源11から供給されることにより、SPAD素子6aのカソード電圧は電圧V2で維持される。
【0089】
ここまで説明したように、第1実施形態では、時間T4になるまでの間に、SPAD素子6a内の蓄積電子を十分に消滅させることができる。換言すると、第1実施形態では、SPAD素子6a内の蓄積電子を十分に消滅させることができる時間を、遅延回路18で設定される遅延時間に設定する。
【0090】
これにより、時間T4からSPAD素子6aのカソード電圧を急激に上昇させたとしても、かかるSPAD素子6aが意図せず反応してしまうことを抑制することができる。
【0091】
さらに、第1実施形態では、時間T4から複数の定電流源をいずれも用いてSPAD素子6aのカソードを昇圧することにより、SPAD素子6aのカソード電圧が電圧V2になるまでの時間を短縮することができる。すなわち、第1実施形態では、ゲーティング動作を短い時間で終了させることができる。
【0092】
したがって、第1実施形態によれば、SPAD素子6aのカソードに複数の定電流源を並列に接続することにより、SPAD素子6aのゲーティング動作を素早くかつ良好に実施することができる。
【0093】
また、第1実施形態では、第1の定電流源11の電流値I1が、第2の定電流源12の電流値I2よりも小さいとよい。これにより、第2のスイッチ14がオン状態となる時間T4までは、SPAD素子6aのカソードが昇圧する速度をより制限することができる。また、第2のスイッチ14がオン状態となった時間T4からは、SPAD素子6aのカソード電圧をより急激に上昇させることができる。
【0094】
したがって、第1実施形態によれば、SPAD素子6aのゲーティング動作をさらに素早くかつ良好に実施することができる。
【0095】
また、第1実施形態では、制御部8が、第2のスイッチ14をオフからオンに切り替えるまでの間(すなわち、時間T4までの間)、第1のスイッチ13をオン状態で維持するとよい。
【0096】
これにより、時間T4までにSPAD素子6aのカソード電圧を継続的に昇圧することができることから、SPAD素子6aのカソードを電圧V2に昇圧するまでの時間を短くすることができる。したがって、第1実施形態によれば、SPAD素子6aのゲーティング動作をさらに素早く実施することができる。
【0097】
時間T5以降のタイミングチャートについての説明を続ける。時間T5において、SPAD素子6aのカソードには、ガイガーモードと呼ばれるなだれ増幅が起きる寸前の状態になるまで、逆バイアスの電圧V2が印加されている。
【0098】
すなわち、時間T5において、SPAD素子6aのカソードから出力される信号は、この電圧V2となる。そして、インバータ16には所定のしきい電圧以上の電圧V2が信号として入力されることから、インバータ16はローレベルの信号S1(図7参照)を出力する。
【0099】
そして、電圧V2が印加されたSPAD素子6aに、時間T6で反射光L2に起因する1光子が入射すると、SPAD素子6aがブレイクダウンして第1の定電流源11に電流が流れる。
【0100】
これにより、SPAD素子6aのカソード電圧は電圧V2から急激に減少し、しきい電圧より小さくなると、インバータ16はハイレベルの信号S1を出力する。
【0101】
そして、SPAD素子6aのカソード電圧は、時間T7でSPAD素子6a内のなだれ増幅が停止することから、0(V)で下げ止まる。さらに、SPAD素子6aのカソード電圧は、第1の定電流源11を介してSPAD素子6aが再充電されることにより上昇する(いわゆるクエンチング動作)。
【0102】
そして、SPAD素子6aのカソード電圧がしきい電圧以上になると、インバータ16はローレベルの信号S1を出力する。
【0103】
このように、インバータ16は、SPAD素子6aに反射光L2が入射すると、かかる反射光L2に起因するパルス状の信号S1を制御部8に出力する。最後に、SPAD素子6aのカソード電圧は時間T8で所定の電圧V2に復帰し、SPAD素子6aは初期状態に戻る。
【0104】
図9は、本開示の第1実施形態に係る遅延回路18およびパルス生成回路19の構成例を示す回路図である。図9に示すように、遅延回路18は、インバータ18a、18bと、CMOS回路18cと、定電流源18dと、否定論理積回路18eと、コンデンサ18fとを有する。
【0105】
遅延回路18の入力端子18iは、インバータ18aの入力端子に接続される。インバータ18aの出力端子は、CMOS回路18cの入力端子およびインバータ18bの入力端子に接続される。
【0106】
CMOS回路18cには、定電流源18dによって所定の電流が供給される。CMOS回路18cの出力端子は、否定論理積回路18eにおける一方の入力端子に接続される。
【0107】
否定論理積回路18eにおける他方の入力端子は、インバータ18bの出力端子に接続される。否定論理積回路18eの出力端子は、遅延回路18の出力端子18oに接続される。コンデンサ18fは、CMOS回路18cの出力端子と、接地電位との間に接続される。
【0108】
ここまで説明した回路構成において、定電流源18dの電流値およびコンデンサ18fの容量値を適宜調整することにより、遅延回路18の遅延時間を制御することができる。
【0109】
パルス生成回路19は、CMOS回路19aと、定電流源19bと、排他的論理和回路19cと、コンデンサ19dとを有する。パルス生成回路19の入力端子19iは、CMOS回路19aの入力端子に接続されるとともに、排他的論理和回路19cにおける一方の入力端子に接続される。
【0110】
CMOS回路19aには、定電流源19bによって所定の電流が供給される。CMOS回路19aの出力端子は、排他的論理和回路19cにおける他方の入力端子に接続される。
【0111】
排他的論理和回路19cの出力端子は、パルス生成回路19の出力端子19oに接続される。コンデンサ19dは、CMOS回路19aの出力端子と、接地電位との間に接続される。
【0112】
ここまで説明した回路構成において、定電流源19bの電流値およびコンデンサ19dの容量値を適宜調整することにより、パルス生成回路19から出力されるパルスの長さを制御することができる。
【0113】
なお、遅延回路18およびパルス生成回路19の回路構成は、図9の例に限られない。図10は、本開示の第1実施形態に係る遅延回路18およびパルス生成回路19の別の構成例を示す回路図である。
【0114】
図10の例では、遅延回路18が、インバータ18a、18b、18hと、否定論理積回路18eと、インバータ群18gとを有する。
【0115】
遅延回路18の入力端子18iは、インバータ18aの入力端子に接続される。インバータ18aの出力端子は、インバータ群18gの入力端子およびインバータ18bの入力端子に接続される。
【0116】
インバータ群18gは、直列に接続された偶数個(図では4個)のインバータを有する。インバータ群18gの出力端子は、インバータ18hの入力端子に接続される。インバータ18hの出力端子は、否定論理積回路18eにおける一方の入力端子に接続される。
【0117】
否定論理積回路18eにおける他方の入力端子は、インバータ18bの出力端子に接続される。否定論理積回路18eの出力端子は、遅延回路18の出力端子18oに接続される。
【0118】
ここまで説明した回路構成において、インバータ群18gの個数を適宜調整することにより、遅延回路18の遅延時間を制御することができる。
【0119】
パルス生成回路19は、排他的論理和回路19cと、インバータ群19eと、インバータ19fとを有する。パルス生成回路19の入力端子19iは、インバータ群19eの入力端子に接続されるとともに、排他的論理和回路19cにおける一方の入力端子に接続される。
【0120】
インバータ群19eは、直列に接続された偶数個(図では4個)のインバータを有する。インバータ群19eの出力端子は、インバータ19fの入力端子に接続される。インバータ19fの出力端子は、排他的論理和回路19cにおける他方の入力端子に接続される。排他的論理和回路19cの出力端子は、パルス生成回路19の出力端子19oに接続される。
【0121】
ここまで説明した回路構成において、インバータ群19eの個数を適宜調整することにより、パルス生成回路19から出力されるパルスの長さを制御することができる。
【0122】
[第2実施形態]
つづいて、第2実施形態に係るパルス出力部7の構成および動作について、図11および図12を参照しながら説明する。図11は、本開示の第2実施形態に係るパルス出力部7の構成例を示す回路図である。
【0123】
図11に示すように、パルス出力部7は、第1の定電流源11と、第2の定電流源12と、第1のスイッチ13と、第2のスイッチ14と、ゲーティングスイッチ15と、インバータ16とを有する。
【0124】
第1の定電流源11は、第1のスイッチ13と接地電位との間に接続され、所定の電流値I1を有する電流を接地電位に向けて流す。第2の定電流源12は、第2のスイッチ14と接地電位との間に接続され、所定の電流値I2を有する電流を接地電位に向けて流す。
【0125】
第1のスイッチ13は、第1の定電流源11と信号線17との間に接続され、第2のスイッチ14は、第2の定電流源12と信号線17との間に接続される。かかる信号線17は、画素アレイ部6の接続部6bを介して、SPAD素子6aのアノードとインバータ16の入力端子との間を接続する。
【0126】
すなわち、第2実施形態に係るパルス出力部7では、第1の定電流源11および第2の定電流源12が、それぞれ第1のスイッチ13および第2のスイッチ14を介して、SPAD素子6aのアノードに並列に接続される。
【0127】
そして、第1の定電流源11および第2の定電流源12は、SPAD素子6aのアノードから接地電位にそれぞれ電流値I1および電流値I2の電流を流す。なお、SPAD素子6aのカソードは所定の電圧Vcに接続され、インバータ16の出力端子は制御部8(図5参照)に接続される。
【0128】
ここで、制御部8は、第1のスイッチ13および第2のスイッチ14を制御することにより、SPAD素子6aのアノードから流れる電流量を制御する。第1のスイッチ13および第2のスイッチ14は、制御部8から出力されるイネーブル信号に基づいて、オン状態およびオフ状態が切り替えられる。
【0129】
具体的には、第1のスイッチ13には、イネーブル信号が直接入力される。すなわち、イネーブル信号がオフからオンに切り替わった場合、直ちに第1のスイッチ13はオフからオンに切り替わる。
【0130】
また、第2のスイッチ14には、イネーブル信号が遅延回路18およびパルス生成回路19を介して入力される。すなわち、イネーブル信号がオフからオンに切り替わった場合、所定の時間経過した後に、所定の期間だけ第2のスイッチ14はオフからオンに切り替わる。なお、遅延回路18およびパルス生成回路19は、第1実施形態と同様の回路を用いることができる。
【0131】
ゲーティングスイッチ15は、信号線17と電源電圧Vddとの間に接続される。すなわち、ゲーティングスイッチ15は、SPAD素子6aおよび第1のスイッチ13の間と、電源電圧Vddとの間に接続される。
【0132】
ゲーティングスイッチ15は、制御部8から出力されるイネーブル信号に基づいて、オン状態およびオフ状態が切り替えられる。具体的には、ゲーティングスイッチ15には、イネーブル信号がインバータ20を介して入力される。
【0133】
すなわち、イネーブル信号がオフからオンに切り替わった場合、直ちにゲーティングスイッチ15はオンからオフに切り替わる。そして、制御部8は、ゲーティングスイッチ15を制御することにより、SPAD素子6aのゲーティング動作を実施することができる。
【0134】
たとえば、制御部8は、ゲーティングスイッチ15をオン状態にすることにより、SPAD素子6aのアノードを電源電圧Vddにすることができる。これにより、SPAD素子6aには逆バイアス電圧が印加されなくなることから、制御部8はSPAD素子6aを無効状態にすることができる。
【0135】
一方で、制御部8は、ゲーティングスイッチ15をオフ状態にすることにより、SPAD素子6aのアノードをフローティング状態にすることができる。これにより、SPAD素子6aに逆バイアス電圧を印加することが可能となることから、制御部8はSPAD素子6aを有効状態にすることができる。
【0136】
次に、図11に加えて図12も参照しながら、第2実施形態に係るパルス出力部7の動作について説明する。図12は、本開示の第2実施形態に係るパルス出力部7の動作例を示すタイミングチャートである。
【0137】
図12の例では、初期状態においてイネーブル信号がオフ状態で維持されることから、ゲーティングスイッチ15はオン状態で維持され、SPAD素子6aは無効状態となる。
【0138】
そして、制御部8は、光源駆動部5を制御することにより、時間T1で光源4をパルス状に発光させる。これにより、時間T2で迷光L3がSPAD素子6aに入射する。そして、かかる迷光L3がSPAD素子6aに入射することにより、無効状態のSPAD素子6aには電子が蓄積される。
【0139】
次に、制御部8は、光源4が発光した時間T1から所定の時間経過した時間T3で、イネーブル信号をオフからオンに切り替える。これにより、ゲーティングスイッチ15が時間T3でオンからオフに切り替わることから、SPAD素子6aのアノードはフローティング状態となる。
【0140】
また、第1のスイッチ13は、時間T3でオフからオンに切り替わる。これにより、SPAD素子6aのアノードから電流値I1の電流が第1の定電流源11によって流されることから、SPAD素子6aのアノード電圧は、電源電圧Vddから徐々に低下する。
【0141】
このように、第2実施形態では、ゲーティング動作を開始した後、SPAD素子6aのアノードに並列に接続される複数の定電流源のうち、1つの定電流源(第1の定電流源11)を用いてSPAD素子6aのアノードを降圧する。
【0142】
これにより、SPAD素子6aのアノードが降圧される速度を制限することができる。したがって、第2実施形態によれば、SPAD素子6a内の蓄積電子を消滅させながらゲーティング動作を実施することができることから、蓄積電子に起因してSPAD素子6aが意図せず反応してしまうことを抑制することができる。
【0143】
そして、制御部8から送られたイネーブル信号は、上述のように、遅延回路18およびパルス生成回路19を介して第2のスイッチ14に送られる。これにより、時間T3から所定の遅延時間だけ経過した時間T4で、第2のスイッチ14がオフからオンに切り替わる。
【0144】
これにより、SPAD素子6aのアノードからは電流値I1+I2の電流が第1の定電流源11および第2の定電流源12によって流されることから、SPAD素子6aのアノード電圧は、時間T4時点の電圧V4から急激に低下する。
【0145】
そして、時間T5で所定の電圧V3に到達し、かかる時間T5で第2のスイッチ14はオンからオフに切り替わる。その後は、SPAD素子6aのアノードから電流値I1の電流が第1の定電流源11によって流されることにより、SPAD素子6aのアノード電圧は電圧V3で維持される。
【0146】
ここまで説明したように、第2実施形態では第1実施形態と同様、時間T4になるまでの間に、SPAD素子6a内の蓄積電子を十分に消滅させることができる。換言すると、第2実施形態では、SPAD素子6a内の蓄積電子を十分に消滅させることができる時間を、遅延回路18で設定される遅延時間に設定する。
【0147】
これにより、時間T4からSPAD素子6aのアノード電圧を急激に低下させたとしても、かかるSPAD素子6aが意図せず反応してしまうことを抑制することができる。
【0148】
さらに、第2実施形態では、時間T4から複数の定電流源をいずれも用いてSPAD素子6aのアノードを降圧することにより、SPAD素子6aのアノード電圧が電圧V3になるまでの時間を短縮することができる。すなわち、第2実施形態では、ゲーティング動作を短い時間で終了させることができる。
【0149】
したがって、第2実施形態によれば、SPAD素子6aのアノードに複数の定電流源を並列に接続することにより、SPAD素子6aのゲーティング動作を素早くかつ良好に実施することができる。
【0150】
また、第2実施形態では、第1の定電流源11の電流値I1が、第2の定電流源12の電流値I2よりも小さいとよい。これにより、第2のスイッチ14がオン状態となる時間T4までは、SPAD素子6aのアノードが降圧する速度をより制限することができる。また、第2のスイッチ14がオン状態となった時間T4からは、SPAD素子6aのアノード電圧をより急激に低下させることができる。
【0151】
したがって、第2実施形態によれば、SPAD素子6aのゲーティング動作をさらに素早くかつ良好に実施することができる。
【0152】
また、第2実施形態では、制御部8が、第2のスイッチ14をオフからオンに切り替えるまでの間(すなわち、時間T4までの間)、第1のスイッチ13をオン状態で維持するとよい。
【0153】
これにより、時間T4までにSPAD素子6aのアノード電圧を継続的に降圧することができることから、SPAD素子6aのアノードを電圧V3に降圧するまでの時間を短くすることができる。したがって、第2実施形態によれば、SPAD素子6aのゲーティング動作をさらに素早く実施することができる。
【0154】
時間T5以降のタイミングチャートについての説明を続ける。時間T5において、SPAD素子6aのアノードには、ガイガーモードと呼ばれるなだれ増幅が起きる寸前の状態になるまで、逆バイアスの電圧V3が印加されている。
【0155】
すなわち、時間T5において、SPAD素子6aのアノードから出力される信号は、この電圧V3となる。そして、インバータ16には所定のしきい電圧より小さい電圧V3が信号として入力されることから、インバータ16はハイレベルの信号S1(図11参照)を出力する。
【0156】
そして、電圧V3が印加されたSPAD素子6aに、時間T6で反射光L2に起因する1光子が入射すると、SPAD素子6aがブレイクダウンして第1の定電流源11に電流が流れる。
【0157】
これにより、SPAD素子6aのアノード電圧は電圧V3から急激に上昇し、しきい電圧以上になると、インバータ16はローレベルの信号S1を出力する。
【0158】
そして、SPAD素子6aのアノード電圧は、時間T7でSPAD素子6a内のなだれ増幅が停止することから、電源電圧Vddで上げ止まる。さらに、SPAD素子6aのアノード電圧は、第1の定電流源11によって電流が流されることにより低下する(いわゆるクエンチング動作)。
【0159】
そして、SPAD素子6aのアノード電圧がしきい電圧より小さくなると、インバータ16はハイレベルの信号S1を出力する。
【0160】
このように、インバータ16は、SPAD素子6aに反射光L2が入射すると、かかる反射光L2に起因するパルス状の信号S1を制御部8に出力する。最後に、SPAD素子6aのアノード電圧は時間T8で所定の電圧V3に復帰し、SPAD素子6aは初期状態に戻る。
【0161】
[各種変形例]
つづいて、パルス出力部7の各種変形例について、図13図20を参照しながら説明する。
【0162】
<第1の実施形態の変形例>
図13は、本開示の第1実施形態の変形例に係るパルス出力部7の構成例を示す回路図である。図13の例は、イネーブル信号を第1のスイッチ13および第2のスイッチ14に伝達する経路の構成が、図7に示した第1実施形態と異なる。
【0163】
具体的には、第1のスイッチ13には、イネーブル信号がパルス生成回路19を介して入力されるとともに、イネーブル信号が遅延回路18Aを介して入力される。
【0164】
すなわち、イネーブル信号がオフからオンに切り替わった場合、所定の期間だけ第1のスイッチ13はオフからオンに切り替わり、さらに所定の時間経過した後に、第1のスイッチ13はオフからオンに切り替わる。
【0165】
また、第2のスイッチ14には、イネーブル信号がパルス生成回路19および遅延回路18Bを介して入力される。すなわち、イネーブル信号がオフからオンに切り替わった場合、所定の時間経過した後に、所定の期間だけ第2のスイッチ14はオフからオンに切り替わる。
【0166】
次に、図13に加えて図14も参照しながら、第1実施形態の変形例に係るパルス出力部7の動作について説明する。図14は、本開示の第1実施形態の変形例に係るパルス出力部7の動作例を示すタイミングチャートである。
【0167】
図14の例では、初期状態においてイネーブル信号がオフ状態で維持されることから、ゲーティングスイッチ15はオン状態で維持され、SPAD素子6aは無効状態となる。
【0168】
そして、制御部8は、光源駆動部5を制御することにより、時間T11で光源4をパルス状に発光させる。これにより、時間T12で迷光L3がSPAD素子6aに入射する。そして、かかる迷光L3がSPAD素子6aに入射することにより、無効状態のSPAD素子6aには電子が蓄積される。
【0169】
次に、制御部8は、光源4が発光した時間T11から所定の時間経過した時間T13で、イネーブル信号をオフからオンに切り替える。これにより、ゲーティングスイッチ15が時間T13でオンからオフに切り替わることから、SPAD素子6aのカソードはフローティング状態となる。
【0170】
また、第1のスイッチ13は、時間T13でオフからオンに切り替わる。これにより、SPAD素子6aのカソードには電流値I1の電流が第1の定電流源11から供給されることから、SPAD素子6aのカソード電圧は、0(V)から徐々に上昇する。
【0171】
一方で、この変形例では、第1のスイッチ13が時間T14でオンからオフに切り替わることから、SPAD素子6aのカソード電圧は時間T14から所定の電圧V1aで一定となる。
【0172】
そして、制御部8から送られたイネーブル信号は、上述のように、パルス生成回路19および遅延回路18Bを介して第2のスイッチ14に送られる。これにより、時間T14から所定の遅延時間だけ経過した時間T15で、第2のスイッチ14がオフからオンに切り替わる。
【0173】
これにより、SPAD素子6aのカソードには電流値I2の電流が第2の定電流源12から供給されることから、SPAD素子6aのカソード電圧は、時間T15時点の電圧V1aから急激に上昇する。そして、時間T16で所定の電圧V2に到達し、かかる時間T16で第2のスイッチ14はオンからオフに切り替わる。
【0174】
また、制御部8から送られたイネーブル信号が遅延回路18Aを介して第1のスイッチ13に送られる。これにより、時間T16で、第1のスイッチ13がオフからオンに切り替わる。これにより、SPAD素子6aのカソードに電流値I1の電流が第1の定電流源11から供給されることから、SPAD素子6aのカソード電圧は電圧V2で維持される。
【0175】
なお、図14に記載した時間T17~T19における動作については、図8の例における時間T6~T8の動作と同様であることから、詳細な説明は省略する。
【0176】
ここまで説明したように、第1実施形態の変形例では、ゲーティング動作の際に、第1の定電流源11によるSPAD素子6aへの電流供給を時間T14で一旦停止することにより、SPAD素子6aのカソード電圧を電圧V1aで一定にする。
【0177】
このように、0(V)よりも高く、かつSPAD素子6aのブレイクダウン電圧(電圧V2)よりも低い電圧でカソード電圧を一定にすることにより、迷光L3に起因して蓄積される電子をSPAD素子6aから良好に排出することができる。
【0178】
なぜなら、0(V)に近い電圧でSPAD素子6aのカソード電圧を一定にすることにより、SPAD素子6aをわざと小さくブレイクダウンさせることができるため、かかるブレイクダウンによってSPAD素子6a内から蓄積電子を消滅させることができるからである。
【0179】
なお、SPAD素子6aをわざと小さくブレイクダウンさせたとしても、かかる小さなブレイクダウンは短時間で終了し、SPAD素子6aは直ぐに安定状態に戻ることから、全体のゲーティング動作における悪影響はほとんど無い。
【0180】
なお、ここまで説明した変形例を実施可能なイネーブル信号の伝達経路の構成は、図13の例に限られない。図15は、本開示の第1実施形態の変形例に係るパルス出力部7の別の構成例を示す回路図である。
【0181】
図15の例では、第1のスイッチ13には、イネーブル信号がパルス生成回路19Aを介して入力されるとともに、イネーブル信号が遅延回路18Aを介して入力される。
【0182】
これにより、図15の例でも、イネーブル信号がオフからオンに切り替わった場合、所定の期間だけ第1のスイッチ13をオフからオンに切り替えることができる。さらに、図15の例でも、さらに所定の時間経過した後に、第1のスイッチ13をオフからオンに切り替えることができる。
【0183】
また、第2のスイッチ14には、イネーブル信号が遅延回路18Bおよびパルス生成回路19Bを介して入力される。これにより、図15の例でも、イネーブル信号がオフからオンに切り替わった場合、所定の時間経過した後に、所定の期間だけ第2のスイッチ14をオフからオンに切り替えることができる。
【0184】
かかる図15の例では、それぞれ独立したパルス生成回路19A、19Bでパルスを生成可能であることから、第1のスイッチ13をオンで維持する時間と第2のスイッチ14をオンで維持する時間とを個別に制御することができる。したがって、図15の例によれば、ゲーティング動作をさらに円滑に実施することができる。
【0185】
また、図13および図15に示したパルス出力部7では、図14の例とは別の動作も実施可能である。図16は、本開示の第1実施形態の変形例に係るパルス出力部7の別の動作例を示すタイミングチャートである。
【0186】
図16の例は、光源4を発光させる前にゲーティング動作を開始する例である。最初に、制御部8は、光源4を発光させる時間T23より所定の時間だけ前の時間T21で、イネーブル信号をオフからオンに切り替える。
【0187】
これにより、ゲーティングスイッチ15が時間T21でオンからオフに切り替わることから、SPAD素子6aのカソードはフローティング状態となる。
【0188】
また、第1のスイッチ13は、時間T21でオフからオンに切り替わる。これにより、SPAD素子6aのカソードには電流値I1の電流が第1の定電流源11から供給されることから、SPAD素子6aのカソード電圧は、0(V)から徐々に上昇する。そして、SPAD素子6aのカソード電圧は、時間T22から所定の電圧V1aで一定となる。
【0189】
そして、制御部8は、光源駆動部5を制御することにより、時間T23で光源4をパルス状に発光させる。これにより、時間T24で迷光L3がSPAD素子6aに入射する。
【0190】
ここで、図16の例では、迷光L3が入射した時間T24ですでにSPAD素子6aのカソード電圧が電圧V1aに昇圧されていることから、SPAD素子6aは小さくブレイクダウンし、SPAD素子6aのカソード電圧は0(V)に低下する。
【0191】
このように、図16の例では、迷光L3でSPAD素子6a内にブレイクダウンが発生することから、迷光L3が入射した場合でも、迷光L3に起因する電子はSPAD素子6a内に蓄積されない。
【0192】
すなわち、図16の例では、光源4を発光させる前に第1のスイッチ13をオフからオンに切り替えて、迷光L3の入射でSPAD素子6aをわざと小さくブレイクダウンさせることにより、迷光L3に起因する電子の蓄積を抑制することができる。
【0193】
したがって、図16の例によれば、ゲーティング動作の際にSPAD素子6a内で迷光L3に起因する電子の蓄積を抑制することができる。
【0194】
なお、図16に記載した時間T25~T29における動作については、図14の例における時間T16~T19の動作と同様であることから、詳細な説明は省略する。
【0195】
<第2の実施形態の変形例>
図17は、本開示の第2実施形態の変形例に係るパルス出力部7の構成例を示す回路図である。図13の例は、イネーブル信号を第1のスイッチ13および第2のスイッチ14に伝達する経路の構成が、図11に示した第2実施形態と異なる。
【0196】
具体的には、第1のスイッチ13には、イネーブル信号がパルス生成回路19を介して入力されるとともに、イネーブル信号が遅延回路18Aを介して入力される。
【0197】
すなわち、イネーブル信号がオフからオンに切り替わった場合、所定の期間だけ第1のスイッチ13はオフからオンに切り替わり、さらに所定の時間経過した後に、第1のスイッチ13はオフからオンに切り替わる。
【0198】
また、第2のスイッチ14には、イネーブル信号がパルス生成回路19および遅延回路18Bを介して入力される。すなわち、イネーブル信号がオフからオンに切り替わった場合、所定の時間経過した後に、所定の期間だけ第2のスイッチ14はオフからオンに切り替わる。
【0199】
次に、図17に加えて図18も参照しながら、第2実施形態の変形例に係るパルス出力部7の動作について説明する。図18は、本開示の第2実施形態の変形例に係るパルス出力部7の動作例を示すタイミングチャートである。
【0200】
図14の例では、初期状態においてイネーブル信号がオフ状態で維持されることから、ゲーティングスイッチ15はオン状態で維持され、SPAD素子6aは無効状態となる。
【0201】
そして、制御部8は、光源駆動部5を制御することにより、時間T11で光源4をパルス状に発光させる。これにより、時間T12で迷光L3がSPAD素子6aに入射する。そして、かかる迷光L3がSPAD素子6aに入射することにより、無効状態のSPAD素子6aには電子が蓄積される。
【0202】
次に、制御部8は、光源4が発光した時間T11から所定の時間経過した時間T13で、イネーブル信号をオフからオンに切り替える。これにより、ゲーティングスイッチ15が時間T13でオンからオフに切り替わることから、SPAD素子6aのアノードはフローティング状態となる。
【0203】
また、第1のスイッチ13は、時間T13でオフからオンに切り替わる。これにより、SPAD素子6aのアノードから電流値I1の電流が第1の定電流源11に流されることから、SPAD素子6aのアノード電圧は、電源電圧Vddから徐々に低下する。
【0204】
一方で、この変形例では、第1のスイッチ13が時間T14でオンからオフに切り替わることから、SPAD素子6aのアノード電圧は時間T14から所定の電圧V4aで一定となる。
【0205】
そして、制御部8から送られたイネーブル信号は、上述のように、パルス生成回路19および遅延回路18Bを介して第2のスイッチ14に送られる。これにより、時間T14から所定の遅延時間だけ経過した時間T15で、第2のスイッチ14がオフからオンに切り替わる。
【0206】
これにより、SPAD素子6aのアノードから電流値I2の電流が第2の定電流源12に流されることから、SPAD素子6aのアノード電圧は、時間T15時点の電圧V4aから急激に低下する。そして、時間T16で所定の電圧V3に到達し、かかる時間T16で第2のスイッチ14はオンからオフに切り替わる。
【0207】
また、制御部8から送られたイネーブル信号が遅延回路18Aを介して第1のスイッチ13に送られる。これにより、時間T16で、第1のスイッチ13がオフからオンに切り替わる。これにより、SPAD素子6aのアノードから電流値I1の電流が第1の定電流源11に流されることから、SPAD素子6aのアノード電圧は電圧V3で維持される。
【0208】
なお、図18に記載した時間T17~T19における動作については、図12の例における時間T6~T8の動作と同様であることから、詳細な説明は省略する。
【0209】
ここまで説明したように、第2実施形態の変形例では、ゲーティング動作の際に、第1の定電流源11によるSPAD素子6aからの電流放出を時間T14で一旦停止することにより、SPAD素子6aのアノード電圧を電圧V4aで一定にする。
【0210】
このように、電源電圧Vddよりも低く、かつSPAD素子6aのブレイクダウン電圧(電圧V3)よりも高い電圧でアノード電圧を一定にすることにより、迷光L3に起因して蓄積される電子をSPAD素子6aから良好に排出することができる。
【0211】
なぜなら、電源電圧Vddに近い電圧でSPAD素子6aのアノード電圧を一定にすることにより、SPAD素子6aをわざと小さくブレイクダウンさせることができるため、かかるブレイクダウンによってSPAD素子6a内から蓄積電子を消滅させることができるからである。
【0212】
なお、SPAD素子6aをわざと小さくブレイクダウンさせたとしても、かかる小さなブレイクダウンは短時間で終了し、SPAD素子6aは直ぐに安定状態に戻ることから、全体のゲーティング動作における悪影響はほとんど無い。
【0213】
なお、ここまで説明した変形例を実施可能なイネーブル信号の伝達経路の構成は、図17の例に限られない。図19は、本開示の第2実施形態の変形例に係るパルス出力部7の別の構成例を示す回路図である。
【0214】
図19の例では、第1のスイッチ13には、イネーブル信号がパルス生成回路19Aを介して入力されるとともに、イネーブル信号が遅延回路18Aを介して入力される。
【0215】
これにより、図19の例でも、イネーブル信号がオフからオンに切り替わった場合、所定の期間だけ第1のスイッチ13をオフからオンに切り替えることができる。さらに、図19の例でも、さらに所定の時間経過した後に、第1のスイッチ13をオフからオンに切り替えることができる。
【0216】
また、第2のスイッチ14には、イネーブル信号が遅延回路18Bおよびパルス生成回路19Bを介して入力される。これにより、図19の例でも、イネーブル信号がオフからオンに切り替わった場合、所定の時間経過した後に、所定の期間だけ第2のスイッチ14をオフからオンに切り替えることができる。
【0217】
かかる図19の例では、それぞれ独立したパルス生成回路19A、19Bでパルスを生成可能であることから、第1のスイッチ13をオンで維持する時間と第2のスイッチ14をオンで維持する時間とを個別に制御することができる。したがって、図19の例によれば、ゲーティング動作をさらに円滑に実施することができる。
【0218】
また、図17および図19に示したパルス出力部7では、図18の例とは別の動作も実施可能である。図20は、本開示の第2実施形態の変形例に係るパルス出力部7の別の動作例を示すタイミングチャートである。
【0219】
図20の例は、光源4を発光させる前にゲーティング動作を開始する例である。最初に、制御部8は、光源4を発光させる時間T23より所定の時間だけ前の時間T21で、イネーブル信号をオフからオンに切り替える。
【0220】
これにより、ゲーティングスイッチ15が時間T21でオンからオフに切り替わることから、SPAD素子6aのアノードはフローティング状態となる。
【0221】
また、第1のスイッチ13は、時間T21でオフからオンに切り替わる。これにより、SPAD素子6aのアノードからは電流値I1の電流が第1の定電流源11に流されることから、SPAD素子6aのアノード電圧は、電源電圧Vddから徐々に低下する。そして、SPAD素子6aのアノード電圧は、時間T22から所定の電圧V4aで一定となる。
【0222】
そして、制御部8は、光源駆動部5を制御することにより、時間T23で光源4をパルス状に発光させる。これにより、時間T24で迷光L3がSPAD素子6aに入射する。
【0223】
ここで、図20の例では、迷光L3が入射した時間T24ですでにSPAD素子6aのアノード電圧が電圧V4aに降圧されていることから、SPAD素子6aは小さくブレイクダウンし、SPAD素子6aのアノード電圧は電源電圧Vddに上昇する。
【0224】
このように、図20の例では、迷光L3でSPAD素子6a内にブレイクダウンが発生することから、迷光L3が入射した場合でも、迷光L3に起因する電子はSPAD素子6a内に蓄積されない。
【0225】
すなわち、図20の例では、光源4を発光させる前に第1のスイッチ13をオフからオンに切り替えて、迷光L3の入射でSPAD素子6aをわざと小さくブレイクダウンさせることにより、迷光L3に起因する電子の蓄積を抑制することができる。
【0226】
したがって、図20の例によれば、ゲーティング動作の際にSPAD素子6a内で迷光L3に起因する電子の蓄積を抑制することができる。
【0227】
なお、図20に記載した時間T25~T29における動作については、図18の例における時間T16~T19の動作と同様であることから、詳細な説明は省略する。
【0228】
[効果]
第1実施形態に係る測距センサ1は、SPAD(Single Photon Avalanche Diode)素子6aと、第1の定電流源11および第2の定電流源12と、第1のスイッチ13と、第2のスイッチ14と、ゲーティングスイッチ15とを備える。SPAD素子6aは、光源4からの射出光L1に起因して被測定物Xから反射される光(反射光L2)を受光した際に信号S1を出力する。第1の定電流源11および第2の定電流源12は、SPAD素子6aのカソードに並列に接続される。第1のスイッチ13は、SPAD素子6aと第1の定電流源11との間に接続される。第2のスイッチ14は、SPAD素子6aと第2の定電流源12との間に接続される。ゲーティングスイッチ15は、SPAD素子6aおよび第1のスイッチ13の間と、接地電位との間に接続される。
【0229】
これにより、SPAD素子6aのゲーティング動作を素早くかつ良好に実施することができる。
【0230】
第2実施形態に係る測距センサ1は、SPAD(Single Photon Avalanche Diode)素子6aと、第1の定電流源11および第2の定電流源12と、第1のスイッチ13と、第2のスイッチ14と、ゲーティングスイッチ15とを備える。SPAD素子6aは、光源4からの射出光L1に起因して被測定物Xから反射される光(反射光L2)を受光した際に信号S1を出力する。第1の定電流源11および第2の定電流源12は、SPAD素子6aのアノードに並列に接続される。第1のスイッチ13は、SPAD素子6aと第1の定電流源11との間に接続される。第2のスイッチ14は、SPAD素子6aと第2の定電流源12との間に接続される。ゲーティングスイッチ15は、SPAD素子6aおよび第1のスイッチ13の間と、電源電圧Vddとの間に接続される。
【0231】
これにより、SPAD素子6aのゲーティング動作を素早くかつ良好に実施することができる。
【0232】
また、各実施形態に係る測距センサ1は、光源4と、制御部8とをさらに備える。光源4は、被測定物Xに光(射出光L1)を照射する。制御部8は、光源4と、第1のスイッチ13と、第2のスイッチ14と、ゲーティングスイッチ15とを制御する。そして、制御部8は、光源4の発光動作に同期させて、ゲーティングスイッチ15をオンからオフに切り替える。
【0233】
これにより、迷光L3によってSPAD素子6aを反応させることなく、被測定物Xからの反射光L2によってSPAD素子6aを反応させることができることから、被測定物Xとの距離Dを精度よく測定することができる。
【0234】
また、各実施形態に係る測距センサ1において、制御部8は、ゲーティングスイッチ15のオフ動作に同期させて、第1のスイッチ13をオフからオンに切り替える。また、制御部8は、第1のスイッチ13をオフからオンに切り替えた後に、第2のスイッチ14をオフからオンに切り替える。
【0235】
これにより、SPAD素子6aのゲーティング動作を素早くかつ良好に実施することができる。
【0236】
また、各実施形態に係る測距センサ1において、制御部8は、第2のスイッチ14をオフからオンに切り替えるまでの間、第1のスイッチ13をオン状態で維持する。
【0237】
これにより、SPAD素子6aのゲーティング動作をさらに素早く実施することができる。
【0238】
また、各実施形態に係る測距センサ1において、制御部8は、第2のスイッチ14をオフからオンに切り替えるまでの間に、第1のスイッチ13をオンからオフに切り替える。
【0239】
これにより、迷光L3に起因して蓄積される電子をSPAD素子6aから良好に排出することができる。
【0240】
また、各実施形態に係る測距センサ1において、制御部8は、光源4を発光させるよりも前にゲーティングスイッチ15をオンからオフに切り替える。
【0241】
これにより、ゲーティング動作の際にSPAD素子6a内で迷光L3に起因する電子の蓄積を抑制することができる。
【0242】
また、各実施形態に係る測距センサ1において、第1の定電流源11の電流値I1は、第2の定電流源の電流値I2よりも小さい。
【0243】
これにより、SPAD素子6aのゲーティング動作をさらに素早くかつ良好に実施することができる。
【0244】
[移動体への応用例]
本開示に係る技術(本技術)は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、自動車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、自動二輪車、自転車、パーソナルモビリティ、飛行機、ドローン、船舶、ロボット等のいずれかの種類の移動体に搭載される装置として実現されてもよい。
【0245】
図21は、本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例である車両制御システムの概略的な構成例を示すブロック図である。
【0246】
車両制御システム12000は、通信ネットワーク12001を介して接続された複数の電子制御ユニットを備える。図21に示した例では、車両制御システム12000は、駆動系制御ユニット12010、ボディ系制御ユニット12020、車外情報検出ユニット12030、車内情報検出ユニット12040、及び統合制御ユニット12050を備える。また、統合制御ユニット12050の機能構成として、マイクロコンピュータ12051、音声画像出力部12052、及び車載ネットワークI/F(Interface)12053が図示されている。
【0247】
駆動系制御ユニット12010は、各種プログラムにしたがって車両の駆動系に関連する装置の動作を制御する。例えば、駆動系制御ユニット12010は、内燃機関又は駆動用モータ等の車両の駆動力を発生させるための駆動力発生装置、駆動力を車輪に伝達するための駆動力伝達機構、車両の舵角を調節するステアリング機構、及び、車両の制動力を発生させる制動装置等の制御装置として機能する。
【0248】
ボディ系制御ユニット12020は、各種プログラムにしたがって車体に装備された各種装置の動作を制御する。例えば、ボディ系制御ユニット12020は、キーレスエントリシステム、スマートキーシステム、パワーウィンドウ装置、あるいは、ヘッドランプ、バックランプ、ブレーキランプ、ウィンカー又はフォグランプ等の各種ランプの制御装置として機能する。この場合、ボディ系制御ユニット12020には、鍵を代替する携帯機から発信される電波又は各種スイッチの信号が入力され得る。ボディ系制御ユニット12020は、これらの電波又は信号の入力を受け付け、車両のドアロック装置、パワーウィンドウ装置、ランプ等を制御する。
【0249】
車外情報検出ユニット12030は、車両制御システム12000を搭載した車両の外部の情報を検出する。例えば、車外情報検出ユニット12030には、撮像部12031が接続される。車外情報検出ユニット12030は、撮像部12031に車外の画像を撮像させるとともに、撮像された画像を受信する。車外情報検出ユニット12030は、受信した画像に基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等の物体検出処理又は距離検出処理を行ってもよい。
【0250】
撮像部12031は、光を受光し、その光の受光量に応じた電気信号を出力する光センサである。撮像部12031は、電気信号を画像として出力することもできるし、測距の情報として出力することもできる。また、撮像部12031が受光する光は、可視光であっても良いし、赤外線等の非可視光であっても良い。
【0251】
車内情報検出ユニット12040は、車内の情報を検出する。車内情報検出ユニット12040には、例えば、運転者の状態を検出する運転者状態検出部12041が接続される。運転者状態検出部12041は、例えば運転者を撮像するカメラを含み、車内情報検出ユニット12040は、運転者状態検出部12041から入力される検出情報に基づいて、運転者の疲労度合い又は集中度合いを算出してもよいし、運転者が居眠りをしていないかを判別してもよい。
【0252】
マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車内外の情報に基づいて、駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置の制御目標値を演算し、駆動系制御ユニット12010に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両の衝突回避あるいは衝撃緩和、車間距離に基づく追従走行、車速維持走行、車両の衝突警告、又は車両のレーン逸脱警告等を含むADAS(Advanced Driver Assistance System)の機能実現を目的とした協調制御を行うことができる。
【0253】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車両の周囲の情報に基づいて駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置等を制御することにより、運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0254】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で取得される車外の情報に基づいて、ボディ系制御ユニット12020に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で検知した先行車又は対向車の位置に応じてヘッドランプを制御し、ハイビームをロービームに切り替える等の防眩を図ることを目的とした協調制御を行うことができる。
【0255】
音声画像出力部12052は、車両の搭乗者又は車外に対して、視覚的又は聴覚的に情報を通知することが可能な出力装置へ音声及び画像のうちの少なくとも一方の出力信号を送信する。図21の例では、出力装置として、オーディオスピーカ12061、表示部12062及びインストルメントパネル12063が例示されている。表示部12062は、例えば、オンボードディスプレイ及びヘッドアップディスプレイの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0256】
図22は、撮像部12031の設置位置の例を示す図である。
【0257】
図22では、撮像部12031として、撮像部12101、12102、12103、12104、12105を有する。
【0258】
撮像部12101、12102、12103、12104、12105は、例えば、車両12100のフロントノーズ、サイドミラー、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部等の位置に設けられる。フロントノーズに備えられる撮像部12101及び車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部12105は、主として車両12100の前方の画像を取得する。サイドミラーに備えられる撮像部12102、12103は、主として車両12100の側方の画像を取得する。リアバンパ又はバックドアに備えられる撮像部12104は、主として車両12100の後方の画像を取得する。車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部12105は、主として先行車両又は、歩行者、障害物、信号機、交通標識又は車線等の検出に用いられる。
【0259】
なお、図22には、撮像部12101ないし12104の撮影範囲の一例が示されている。撮像範囲12111は、フロントノーズに設けられた撮像部12101の撮像範囲を示し、撮像範囲12112,12113は、それぞれサイドミラーに設けられた撮像部12102,12103の撮像範囲を示し、撮像範囲12114は、リアバンパ又はバックドアに設けられた撮像部12104の撮像範囲を示す。例えば、撮像部12101ないし12104で撮像された画像データが重ね合わせられることにより、車両12100を上方から見た俯瞰画像が得られる。
【0260】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、距離情報を取得する機能を有していてもよい。例えば、撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、複数の撮像素子からなるステレオカメラであってもよいし、位相差検出用の画素を有する撮像素子であってもよい。
【0261】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を基に、撮像範囲12111ないし12114内における各立体物までの距離と、この距離の時間的変化(車両12100に対する相対速度)を求めることにより、特に車両12100の進行路上にある最も近い立体物で、車両12100と略同じ方向に所定の速度(例えば、0km/h以上)で走行する立体物を先行車として抽出することができる。さらに、マイクロコンピュータ12051は、先行車の手前に予め確保すべき車間距離を設定し、自動ブレーキ制御(追従停止制御も含む)や自動加速制御(追従発進制御も含む)等を行うことができる。このように運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0262】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を元に、立体物に関する立体物データを、2輪車、普通車両、大型車両、歩行者、電柱等その他の立体物に分類して抽出し、障害物の自動回避に用いることができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両12100の周辺の障害物を、車両12100のドライバが視認可能な障害物と視認困難な障害物とに識別する。そして、マイクロコンピュータ12051は、各障害物との衝突の危険度を示す衝突リスクを判断し、衝突リスクが設定値以上で衝突可能性がある状況であるときには、オーディオスピーカ12061や表示部12062を介してドライバに警報を出力することや、駆動系制御ユニット12010を介して強制減速や回避操舵を行うことで、衝突回避のための運転支援を行うことができる。
【0263】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、赤外線を検出する赤外線カメラであってもよい。例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在するか否かを判定することで歩行者を認識することができる。かかる歩行者の認識は、例えば赤外線カメラとしての撮像部12101ないし12104の撮像画像における特徴点を抽出する手順と、物体の輪郭を示す一連の特徴点にパターンマッチング処理を行って歩行者か否かを判別する手順によって行われる。マイクロコンピュータ12051が、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在すると判定し、歩行者を認識すると、音声画像出力部12052は、当該認識された歩行者に強調のための方形輪郭線を重畳表示するように、表示部12062を制御する。また、音声画像出力部12052は、歩行者を示すアイコン等を所望の位置に表示するように表示部12062を制御してもよい。
【0264】
以上、本開示に係る技術が適用され得る車両制御システムの一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、撮像部12031に適用され得る。具体的には、図5の測距センサ1は、撮像部12031に適用することができる。撮像部12031に本開示に係る技術を適用することにより、SPAD素子のゲーティング動作を素早くかつ良好に実施することができる。
【0265】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示の技術的範囲は、上述の実施形態そのままに限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。また、異なる実施形態及び変形例にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0266】
たとえば、上記の各実施形態では、SPAD素子6aに2つの定電流源を並列に接続した例について示したが、SPAD素子6aに並列に接続される定電流源の数は2つに限られず、3つ以上の定電流源が並列に接続されていてもよい。
【0267】
また、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、また他の効果があってもよい。
【0268】
なお、本技術は以下のような構成も取ることができる。
(1)
光源からの射出光に起因して被測定物から反射される光を受光した際に信号を出力するSPAD(Single Photon Avalanche Diode)素子と、
前記SPAD素子のカソードに並列に接続される第1の定電流源および第2の定電流源と、
前記SPAD素子と前記第1の定電流源との間に接続される第1のスイッチと、
前記SPAD素子と前記第2の定電流源との間に接続される第2のスイッチと、
前記SPAD素子および前記第1のスイッチの間と、接地電位との間に接続されるゲーティングスイッチと、
を備える測距センサ。
(2)
光源からの射出光に起因して被測定物から反射される光を受光した際に信号を出力するSPAD(Single Photon Avalanche Diode)素子と、
前記SPAD素子のアノードに並列に接続される第1の定電流源および第2の定電流源と、
前記SPAD素子と前記第1の定電流源との間に接続される第1のスイッチと、
前記SPAD素子と前記第2の定電流源との間に接続される第2のスイッチと、
前記SPAD素子および前記第1のスイッチの間と、電源電圧との間に接続されるゲーティングスイッチと、
を備える測距センサ。
(3)
前記被測定物に光を照射する光源と、
前記光源と、前記第1のスイッチと、前記第2のスイッチと、前記ゲーティングスイッチとを制御する制御部とをさらに備え、
前記制御部は、
前記光源の発光動作に同期させて、前記ゲーティングスイッチをオンからオフに切り替える
前記(1)または(2)に記載の測距センサ。
(4)
前記制御部は、
前記ゲーティングスイッチのオフ動作に同期させて、前記第1のスイッチをオフからオンに切り替え、
前記第1のスイッチをオフからオンに切り替えた後に、前記第2のスイッチをオフからオンに切り替える
前記(3)に記載の測距センサ。
(5)
前記制御部は、
前記第2のスイッチをオフからオンに切り替えるまでの間、前記第1のスイッチをオン状態で維持する
前記(4)に記載の測距センサ。
(6)
前記制御部は、
前記第2のスイッチをオフからオンに切り替えるまでの間に、前記第1のスイッチをオンからオフに切り替える
前記(4)に記載の測距センサ。
(7)
前記制御部は、前記光源を発光させるよりも前に前記ゲーティングスイッチをオンからオフに切り替える
前記(4)~(6)のいずれか一つに記載の測距センサ。
(8)
前記第1の定電流源の電流値は、前記第2の定電流源の電流値よりも小さい
前記(1)~(7)のいずれか一つに記載の測距センサ。
【符号の説明】
【0269】
1 測距センサ
4 光源
6a SPAD素子
7 パルス出力部
8 制御部
11 第1の定電流源
12 第2の定電流源
13 第1のスイッチ
14 第2のスイッチ
15 ゲーティングスイッチ
図1
図2
図3
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図5
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図22