(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】カバーを備えたリアクトル
(51)【国際特許分類】
H01F 37/00 20060101AFI20240109BHJP
H01F 30/12 20060101ALI20240109BHJP
H01F 27/24 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
H01F37/00 M
H01F30/12 G
H01F27/24 H
(21)【出願番号】P 2019175752
(22)【出願日】2019-09-26
【審査請求日】2022-06-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 友和
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-029443(JP,A)
【文献】実開昭59-145080(JP,U)
【文献】実開昭63-016488(JP,U)
【文献】実開昭61-097884(JP,U)
【文献】特開2018-147982(JP,A)
【文献】特開平04-099397(JP,A)
【文献】実開平02-009488(JP,U)
【文献】実開昭61-065817(JP,U)
【文献】登録実用新案第3023301(JP,U)
【文献】中国実用新案第207113179(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 37/00
H01F 30/12
H01F 27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア本体を具備し、該コア本体は、外周部鉄心と、前記外周部鉄心の内面に接するか、または、該内面に結合されるように配置された少なくとも三つの鉄心と、該鉄心に巻回されたコイルとを含んでおり、
前記少なくとも三つの鉄心のうちの一つの鉄心と該一つの鉄心に隣接する他の鉄心との間には磁気的に連結可能なギャップが形成されており、
さらに、前記コイルと接続され、ケーブルと接続されるように構成された通電部と、
前記通電部を覆うようにして設けられた
単一部材からなるカバーと、を備え、
少なくとも一つの切欠が前記カバーの側面に
のみ形成されており、少なくとも一つの調節部材が前記カバーの前記側面に設けられていて、前記切欠の周方向に延びると共に、前記切欠の面積を調節しており、
前記少なくとも一つの調節部材は前記切欠から切離されるか、または前記切欠が形成された面に対して折曲げられるよう構成されている、ことを特徴とする、リアクトル。
【請求項2】
前記少なくとも一つの調節部材は、前記カバーに一体的に形成されており、
前記少なくとも一つの調節部材と前記カバーとは薄肉部または穿孔部により連結されている、請求項1に記載のリアクトル。
【請求項3】
前記少なくとも一つの調節部材は、前記ケーブルの半径方向に順次配置された複数の調節部材であり、
該複数の調節部材は穿孔部または薄肉部により互いに連結されている、請求項1に記載のリアクトル。
【請求項4】
前記少なくとも一つの調節部材が、前記切欠の周方向に順次配置された複数の小型調節部材より構成される、請求項1に記載のリアクトル。
【請求項5】
前記少なくとも三つの鉄心の数は3の倍数である、請求項1から4のいずれか一項に記載のリアクトル。
【請求項6】
前記少なくとも三つの鉄心の数は4以上の偶数である、請求項1から4のいずれか一項に記載のリアクトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバーを備えたリアクトルに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、コア本体は、外周部鉄心と、外周部鉄心の内側に配置されていてコイルが巻回される複数の鉄心とを含んでいる。そして、リアクトルは、そのようなコア本体と、コイルと接続されていてケーブルと接続されるように構成された通電部と、通電部に取付けられる感電防止のためのカバーとを主に含んでいる。通電部に含まれる複数の端子は、コイルから延びるリードにそれぞれ接続される。
【0003】
ここで、リアクトルにおいては、準拠する規格に応じて使用するケーブルの断面積が指定される場合がある( 例えば、北米規格:NFPAに準拠する/ 準拠しない) 。この北米規格:NFPAを例にとると、同規格に準拠する場合は準拠しない場合に比べてケーブルの断面積が大きくなる。
【0004】
大きい断面積のケーブルを用いた場合には、カバーとケーブルとの間の隙間がほとんど無いので作業者がリアクトルの通電部の端子などに接触することはない。しかしながら、小さい断面積のケーブルを用いた場合には、作業者の指などがカバーとケーブルとの間の隙間に進入して通電部の端子などに接触してしまうという問題があった。
【0005】
特許文献1には、感電保護のためのカバーが、前述した隙間を埋める収縮可能な部材を備えることが開示されている。このような収縮可能な部材が存在するので、通電部に接続されるべきケーブルの直径に関わらず、作業者が通電部の端子などに接触するのを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1において作業者が収縮可能な部材を押圧すると、収縮可能な部材が容易に変形するので、作業者が通電部の端子などに接触して危険にさらされる場合がある。
【0008】
それゆえ、通電部に接続されるべきケーブルの直径に関わらず、作業者が通電部の端子などに容易に接触するのを防止することのできる、リアクトルを提供することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の1番目の態様によれば、コア本体を具備し、該コア本体は、外周部鉄心と、前記外周部鉄心の内面に接するか、または、該内面に結合されるように配置された少なくとも三つの鉄心と、該鉄心に巻回されたコイルとを含んでおり、前記少なくとも三つの鉄心のうちの一つの鉄心と該一つの鉄心に隣接する他の鉄心との間には磁気的に連結可能なギャップが形成されており、さらに、前記コイルと接続され、ケーブルと接続されるように構成された通電部と、前記通電部を覆うようにして設けられた単一部材からなるカバーと、を備え、少なくとも一つの切欠が前記カバーの側面にのみ形成されており、少なくとも一つの調節部材が前記カバーの前記側面に設けられていて、前記切欠の周方向に延びると共に、前記切欠の面積を調節しており、前記少なくとも一つの調節部材は前記切欠から切離されるか、または前記切欠が形成された面に対して折曲げられるよう構成されている、ことを特徴とする、リアクトルが提供される。
【発明の効果】
【0010】
1番目の態様においては、接続されるべきケーブルの直径に応じて、調節部材を切離すか、または折曲げることにより、ケーブルを通電部に接続しつつ、ケーブルとカバーの開口部との間の隙間を最小限に調節できる。このため、通電部に接続されるべきケーブルの直径に関わらず、作業者が通電部の端子などに容易に接触するのを防止することができる。
本発明の目的、特徴及び利点は、添付図面に関連した以下の実施形態の説明により一層明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第一の実施形態に基づくリアクトルの端面図である。
【
図2A】
図1に示されるリアクトルの分解斜視図である。
【
図2B】第一の実施形態に基づくリアクトルの斜視図である。
【
図3B】小さい断面積のケーブルが接続された
図3Aと同様の図である。
【
図3C】大きい断面積のケーブルが接続された
図3Aと同様の図である。
【
図4A】他の実施形態におけるカバーに形成された切欠の断面図である。
【
図4B】他の実施形態におけるカバーに形成された切欠の他の断面図である。
【
図5】第二の実施形態に基づくリアクトルのカバーの拡大図である。
【
図6】
図5に示されるカバーの閉鎖部材の拡大図である。
【
図8】変形例におけるカバーの閉鎖部材の拡大図である。
【
図9】更に他の実施形態に基づくリアクトルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の図面において同様の部材には同様の参照符号が付けられている。理解を容易にするために、これら図面は縮尺を適宜変更している。
図1は第一の実施形態に基づくリアクトルの端面図である。
図1に示されるように、リアクトル5は、断面が六角形の外周部鉄心20と、外周部鉄心20の内方に配置された少なくとも三つの鉄心コイル31~33とを含んでいる。また、鉄心の数は3の倍数であるのが好ましく、それにより、リアクトル5を三相リアクトルとして使用できる。なお、外周部鉄心20が多角形形状または円形であってもよい。
【0013】
鉄心コイル31~33のそれぞれは、鉄心41~43と該鉄心41~43に巻回されたコイル51~53とを含んでいる。外周部鉄心20および鉄心41~43は、複数の磁性板、例えば鉄板、炭素鋼板、電磁鋼板を積層するか、または圧粉鉄心から作成される。
【0014】
図1から分かるように、鉄心41~43は互いに同一の寸法であり、外周部鉄心20の周方向におおよそ等間隔に配置されている。
図1においては鉄心41~43のそれぞれの半径方向外側端部は外周部鉄心20に接している か、または一体的に形成されている。
【0015】
さらに、鉄心41~43のそれぞれの半径方向内側端部は外周部鉄心20の中心に向かって収斂しており、その先端角度は約120度である。そして、鉄心41~44の半径方向内側端部は、磁気的に連結可能なギャップ101~103を介して互いに離間している。
【0016】
言い換えれば、第一の実施形態においては鉄心41の半径方向内側端部は、隣接する二つの鉄心42、43のそれぞれの半径方向内側端部とギャップ101、103を介して互いに離間している。他の鉄心42~43についても同様である。なお、ギャップ101~103の寸法は互いに等しいことが理想的であるが、等しくなくても良い。また、後述する実施形態においては、ギャップ101~103等の表記および鉄心コイル31~33等の表記を省略する場合がある。
【0017】
このように、第一の実施形態においては鉄心コイル31~33を外周部鉄心20の内側に配置している。言い換えれば、鉄心コイル31~33は外周部鉄心20により取囲まれている。このため、コイル51~53からの磁束が外周部鉄心20の外部に漏洩するのを低減できる。
【0018】
図2Aは
図1に示されるリアクトルの分解斜視図であり、
図2Bは第一の実施形態に基づくリアクトルの斜視図である。これら図面に示されるように、外周部鉄心20の下端面には、エンドプレート付きの取付部90が取付けられている。取付部90はリアクトル5を所定位置に取付ける役目を果たす。なお、リアクトル5が取付部90を必ずしも含んでいなくてもよい。
【0019】
図2Aにおいては、コイル51~53のそれぞれから二つのリード51a~53a、51b~53bが延びている。リード51a~53aは入力側、リード51b~53bは出力側である。そして、リード51a~53a、51b~53bはそれぞれ個別に湾曲され、それにより、リード51a~53aおよびリード51b~53bの先端はそれぞれ一列に整列されている。後述する端子に接続する目的でリード51a~53a、51b~53bの先端をさらに湾曲させてもよい。
【0020】
外周部鉄心20の上方には通電部60が示されている。通電部60は外周部鉄心20に概ね対応した外形を有している。通電部60の軸方向高さは、外周部鉄心20からのコイル51~53の突出部分よりも大きい。通電部60は、入力側のリード51a~53aに接続される入力側端子、および出力側のリード51b~53bに接続される出力側端子をその上面に備えている。これら入力側端子および出力側端子はコイル51~53のリード51a~53aおよびリード51b~53bにそれぞれ接続される。さらに、通電部60は後述するケーブルと接続されるように構成されている。
【0021】
さらに、通電部60の上方には感電防止用のカバー70が示されている。カバー70は絶縁体、例えば硬質の樹脂から形成されるのが好ましい。第一の実施形態におけるカバー70は外周部鉄心20に概ね対応した外形を有している。カバー70の側面において、通電部60の入力側端子に対応した位置および出力側端子に対応した位置に切欠75が形成されている。
【0022】
さらに、少なくとも一つの通気口71がカバー70の上面に形成されている。通気口71は、コイル51~53などが発熱した場合に放熱する役目を果たす。通気口71は、日本工業規格の保護等級IP2に従って、人間の指が入らない程度の面積を有するのが好ましい。あるいは、通気口71は、日本工業規格の保護等級IP1に従って、人間の手が入らない程度の面積を有するのが好ましい。これにより、作業者の安全を確保することができる。
【0023】
さらに、通気口71は、工具のみ、特に工具のプローブのみが進入可能な穴であってもよい。つまり、工具、例えばテスターをそのような穴に通して、端子に接触させ、電圧などを測定することができる。
【0024】
コイル51~53のリード51a~53aを通電部60の入力側端子に接続すると共に、リード51b~53bを通電部60の出力側端子に接続する。そして、通電部60を外周部鉄心20の上端面に取付けて、ネジまたは所定の治具で固定する。その後、入力側端子および出力側端子を後述するケーブルに結線する。
【0025】
次いで、カバー70を通電部60の上端面に配置する。
図2Aに示されるように、カバー70に形成された穴79は通電部60の上面に形成された穴69に対応している。これらの穴79、69にネジを通して螺合させ、それにより、カバー70を通電部60に固定する。なお、通電部60も同様にして外周部鉄心20に固定してもよい。これにより、
図2Bに示されるリアクトル5が得られる。
【0026】
図3Aはカバーに形成された切欠の拡大図である。
図3Aに示されるように、切欠75は通電部60の上面と共に開口部を形成している。切欠75が他の形状であってもよい。また、切欠75の内面には、切欠75の面積を調節する少なくとも一つの調節部材80が少なくとも部分的に設けられている。
図3Aにおいては、調節部材80は切欠75の周方向に延びている。
【0027】
さらに、
図3Aにおいては、調節部材80とカバー70とは、少なくとも一つの穿孔と該穿孔に隣接する接続部からなる穿孔部89Aにより互いに連結されている。調節部材80および穿孔部89Aはカバー70と一体的に形成されているのが好ましい。接続部の厚みは、調節部材80およびカバー70の厚みよりも小さくてもよい。
【0028】
図3Bは小さい断面積のケーブルが接続された
図3Aと同様の図である。
図3Bにおいては、小さい断面積のケーブル91、例えばNFPAに準拠しないケーブルが切欠75に挿入されて通電部60の入力側端子または出力側端子に公知の手法で接続される。調節部材80が切欠75の内面に設けられているので、ケーブル91と切欠75の内面との間に隙間はほとんどない。このため、小さい断面積のケーブル91を切欠75に通して前述した端子に接続する場合であっても、作業者の指などが切欠75とケーブルとの間の隙間に進入して通電部60の端子などに接触するのを避けられる。
【0029】
しかしながら、
図3Aおよび
図3Bに示される切欠75に、大きい断面積のケーブル92、例えばNFPAに準拠するケーブルを挿入することはできない。この点に関し、
図3Cは大きい断面積のケーブルが接続された
図3Aと同様の図である。
図3Cにおいては、調節部材80が排除されている。
【0030】
前述したように、調節部材80は穿孔部89Aにより切欠75に接続されている。穿孔部89Aの強度はカバー70および調節部材80の強度よりも小さいので、作業者は指で調節部材80をつまんで、カバー70から容易に切離すことができる。これにより、
図3Cに示される切欠75の面積は
図3Aおよび
図3Bに示される切欠75の面積よりも大きくなる。従って、大きい断面積のケーブル92であっても、切欠75を通して通電部60の端子に接続することができる。この場合にも、ケーブル92と切欠75の内面との間に隙間はほとんどないので、作業者の指などが切欠75とケーブルとの間の隙間に進入して通電部60の端子などに接触するのを避けられる。
【0031】
このように、本開示においては、接続されるべきケーブル91、92の直径に応じて、調節部材80を切離すことにより、ケーブル91、92を通電部に接続しつつ、ケーブル91、92とカバー70の切欠75との間の隙間を最小限に調節できる。このため、通電部60に接続されるべきケーブル91、92の直径に関わらず、作業者が通電部60の端子などに容易に接触するのを防止することが可能となる。
【0032】
ところで、
図4Aは他の実施形態におけるカバーに形成された切欠の断面図である。
図4Aにおいては、調節部材80とカバー70とが薄肉部89Bにより連結されている。薄肉部89Bの厚みは調節部材80の厚みおよびカバー70の厚みよりも小さい。なお、調節部材80の厚みとカバー70の厚みとはほぼ同じであるか、または調節部材80の厚みがカバー70の厚みと薄肉部89Bの厚みとの間であるのが好ましい。さらに、前述したのと同様に、調節部材80および薄肉部89Bはカバー70と一体的に形成されているのが好ましい。
【0033】
図4Bは他の実施形態におけるカバーに形成された切欠の他の断面図である。
図4Bから分かるように、作業者は調節部材80をつまんで、薄肉部89Bからカバー70に対して約90°だけ折曲げるようにしてもよい。この場合にも、前述したのと同様な効果が得られるのが分かるであろう。なお、作業者が通電部60の端子などに接触するのを更に避けるために、調節部材80をカバー70の外側に向かって折曲げるのが好ましい。
【0034】
図5は第二の実施形態に基づくリアクトルのカバーの拡大図である。
図5に示される切欠75は調節部材80により完全に閉鎖されている。
【0035】
さらに、
図6は
図5に示されるカバーの閉鎖部材の拡大図である。第二の実施形態においては複数、例えば三つの調節部材81~83が示されている。これら調節部材81~83のそれぞれは切欠75の周方向に延びると共に、ケーブル(
図6には示さない)の半径方向または切欠75の高さ方向において順次配置されている。ただし、一部の調節部材、例えば調節部材82、83が最初から除去されていて、切欠75が部分的にのみ閉鎖されていてもよい。
【0036】
調節部材81は、切欠75の周方向に延びていて穿孔部89Aにより切欠75に連結されている。同様に、調節部材82は、切欠75の周方向に延びていて穿孔部89Aにより調節部材81に連結されている。同様に、調節部材83は、切欠75の周方向に延びていて穿孔部89Aにより調節部材82に連結されている。
【0037】
図7A~
図7Cは閉鎖部材の部分拡大図である。
図7Aにおいては、調節部材83が調節部材82から切離されている。従って、調節部材83を切り離すことにより形成された切欠75に、直径が比較的小さいケーブル90Aを適切に挿入して前述した端子に接続できる。ケーブル90Aと切欠75との間に隙間はほとんど無いので、作業者の指などが切欠75とケーブル90Aとの間の隙間に進入することはなく、作業者が通電部60の端子などに接触することもない。
【0038】
図7Bにおいては、調節部材82、83が調節部材81から切離されている。従って、調節部材82、83を切り離すことにより形成された切欠75に、直径が比較的大きいケーブル90Bを適切に挿入して前述した端子に接続できる。前述したのと同様に、ケーブル90Bと切欠75との間に隙間はほとんど無いので、作業者の指などが切欠75とケーブル90Bとの間の隙間に進入することはない。
【0039】
図7Cにおいては、全ての調節部材81~83が切欠75から切離されている。従って、調節部材81~83を切り離すことにより形成された切欠75に、直径が更に大きいケーブル90C(例えば北米規格:NFPAに準拠するケーブル)を適切に挿入して前述した端子に接続できる。前述したのと同様に、ケーブル90Cと切欠75との間に隙間はほとんど無いので、作業者の指などが切欠75とケーブル90Cとの間の隙間に進入することはない。
【0040】
このように、第二の実施形態においては、複数の調節部材81~83のうちの幾つかまたは全てを切離すことにより、種々の寸法のケーブルを挿入した場合であっても、作業者の安全を確保することができる。なお、穿孔部89Aの代わりに、薄肉部89Bが用いられていて調節部材81~83のうちの少なくとも一つが折曲げられる場合であっても、同様の効果が得られる。
【0041】
さらに、
図8は変形例におけるカバーの閉鎖部材の拡大図である。
図8においては、調節部材81が、切欠75の周方向に順次配置された複数の小型調節部材81a~81fより構成されている。同様に、調節部材82は、切欠75の周方向に順次配置された複数の小型調節部材82a~82fより構成されており、調節部材83が、切欠75の周方向に順次配置された複数の小型調節部材83a~83fより構成されている。
【0042】
調節部材81の複数の小型調節部材81a~81fは穿孔部89Aまたは薄肉部89Bにより互いに連結されている。他の調節部材82、83の複数の小型調節部材82a~82f、83a~83fも同様である。
【0043】
複雑な断面を有するケーブルを切欠75に挿入する必要がある場合には、作業者は、そのような複雑な断面に対応するように小型調節部材81a~83fのうちの少なくとも一つを切り離すか、または折曲げることができる。従って、複雑な断面を有するケーブルであっても、そのようなケーブルを切欠75に容易に挿入し、その結果、前述したのと同様な効果を得ることができる。
【0044】
図9は更に他の実施形態におけるリアクトル5の断面図である。
図9に示されるリアクトル5は、略八角形状の外周部鉄心20と、外周部鉄心20の内方に配置された、前述したのと同様な四つの鉄心コイル31~34とを含んでいる。これら鉄心コイル31~34はリアクトル5の周方向に等間隔で配置されている。また、鉄心の数は4以上の偶数であるのが好ましく、それにより、リアクトル5を単相リアクトルとして使用できる。
【0045】
図面から分かるように、それぞれの鉄心コイル31~34は、半径方向に延びる鉄心41~44と該鉄心に巻回されたコイル51~54とを含んでいる。鉄心41~44のそれぞれの半径方向外側端部は、外周部鉄心20に接するか、もしくは 外周部鉄心20と一体的に形成されている。
【0046】
さらに、鉄心41~44のそれぞれの半径方向内側端部は外周部鉄心20の中心近傍に位置している。
図9においては鉄心41~44のそれぞれの半径方向内側端部は外周部鉄心20の中心に向かって収斂しており、その先端角度は約90度である。そして、鉄心41~44の半径方向内側端部は、磁気的に連結可能なギャップ101~104を介して互いに離間している。
【0047】
図9に示されるような4以上の偶数の鉄心を有する外周部鉄心の一方の端面に、同様な構成の通電部60を取付け、同様な構成のカバー70を通電部60にさらに取付ける。そのようなリアクトル5であっても、前述したのと同様な理由により、通電部に接続されるべきケーブルの直径に関わらず、作業者が通電部に容易に接触するのを防止することができる。
【0048】
本開示の態様
1番目の態様によれば、コア本体(5)を具備し、該コア本体は、外周部鉄心(20)と、前記外周部鉄心の内面に接するか、または、該内面に結合されるように配置された少なくとも三つの鉄心(41~44)と、該鉄心に巻回されたコイル(51~54)とを含んでおり、前記少なくとも三つの鉄心のうちの一つの鉄心と該一つの鉄心に隣接する他の鉄心との間には磁気的に連結可能なギャップ(101~104)が形成されており、さらに、前記コイルと接続され、ケーブルと接続されるように構成された通電部(60)と、前記通電部を覆うようにして設けられたカバー(70)と、を備え、前記カバーに形成された少なくとも一つの切欠(75)には、前記切欠の面積を調節する少なくとも一つの調節部材(80、81~83)が少なくとも部分的に設けられており、前記少なくとも一つの調節部材は前記切欠から切離されるか、または前記切欠が形成された面に対して折曲げられるよう構成されている、ことを特徴とする、リアクトル(6)が提供される。
2番目の態様によれば、1番目の態様において、前記少なくとも一つの調節部材は、前記カバーに一体的に形成されており、前記少なくとも一つの調節部材と前記カバーとは穿孔部(89A)または薄肉部(89B)により連結されている。
3番目の態様によれば、1番目の態様において、前記ケーブルの半径方向に順次配置された複数の前記調節部材を具備し、該複数の調節部材は穿孔部または薄肉部により互いに連結されている。
4番目の態様によれば、1番目の態様において、前記少なくとも一つの調節部材が、前記切欠の周方向に順次配置された複数の小型調節部材(81a~81f、82a~82f、83a~83f)より構成される。
5番目の態様によれば、1番目から4番目のいずれかの態様において、前記少なくとも三つの鉄心の数は3の倍数である。
6番目の態様によれば、1番目から4番目のいずれかの態様において、前記少なくとも三つの鉄心の数は4以上の偶数である。
【0049】
態様の効果
1番目の態様においては、接続されるべきケーブルの直径に応じて、調節部材を切離すか、または折曲げることにより、ケーブルを通電部に接続しつつ、ケーブルとカバーの開口部との間の隙間を最小限に調節できる。このため、通電部に接続されるべきケーブルの直径に関わらず、作業者が通電部の端子などに容易に接触するのを防止することができる。
2番目の態様においては、調節部材を容易に切離し/折り曲げることができる。
3番目の態様においては、複数の調節部材のうちの少なくとも一つを切離し/折り曲げることにより、種々の寸法のケーブルに容易に対応できる。
4番目の態様においては、複雑な断面を有するケーブルに容易に対応できる。
5番目の態様においては、リアクトルを三相リアクトルとして使用できる。
6番目の態様においては、リアクトルを単相リアクトルとして使用できる。
【0050】
以上、本発明の実施形態を説明したが、後述する請求の範囲の開示範囲から逸脱することなく様々な修正及び変更を為し得ることは、当業者に理解されよう。
【符号の説明】
【0051】
5 コア本体
6 リアクトル
20 外周部鉄心
31~34 鉄心コイル
41~44 鉄心
51~54 コイル
51a~53a、51b~53b リード
60 通電部
69 穴
70 カバー(感電防止カバー)
71 通気口
75 切欠
79 穴
80、81~83 調節部材
81a~81f、82a~82f、83a~83f 小型調節部材
89A 穿孔部
89B 薄肉部
90A~90C、91、92 ケーブル
101~104 ギャップ