(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】多連式引戸
(51)【国際特許分類】
E05F 17/00 20060101AFI20240109BHJP
E06B 7/36 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
E05F17/00 C
E06B7/36 F
(21)【出願番号】P 2019177837
(22)【出願日】2019-09-27
【審査請求日】2022-07-22
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】市川 聖士
(72)【発明者】
【氏名】柴田 航輔
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-081264(JP,A)
【文献】特開平10-292732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 17/00-17/02
E06B 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの移動可能な戸体を備える多連式引戸であって、
前記2つの戸体は、見付方向に移動可能な第1戸体と、少なくとも一部が前記第1戸体の見込方向の一方側に重なって配置され前記第1戸体の移動に連動して見付方向に移動可能な第2戸体と、を有し、
前記第2戸体は、見付方向の一端側に配置される第2戸体一端側連動部材であって見込方向に見た場合に前記第1戸体と前記第2戸体との重なり部分が大きくなる側に前記第1戸体が移動された場合に前記第1戸体の見付方向の一端側が当接可能な第2戸体一端側連動部材を有し、
前記第2戸体一端側連動部材は、前記第2戸体における見込方向の前記第1戸体側に配置される第1連動部と、前記第2戸体における見込方向の前記第1戸体と反対側に配置される第2連動部と、を有し、
前記第1連動部の見付方向の長さは、前記第2連動部の見付方向の長さよりも長
く形成され、
前記第2戸体一端側連動部材は、前記第2戸体の開閉方向に直交する方向に切断した場合の断面形状が、下方側が開放する略C字形状の断面形状の部分を含んで構成され、略C字形状の閉じた部分において、ネジにより、前記第2戸体の下部に固定される、多連式引戸。
【請求項2】
少なくとも2つの移動可能な戸体を備える多連式引戸であって、
前記2つの戸体は、見付方向に移動可能な第1戸体と、少なくとも一部が前記第1戸体の見込方向の一方側に重なって配置され前記第1戸体の移動に連動して見付方向に移動可能な第2戸体と、を有し、
前記第2戸体は、見付方向の一端側に配置される第2戸体一端側連動部材であって見込方向に見た場合に前記第1戸体と前記第2戸体との重なり部分が大きくなる側に前記第1戸体が移動された場合に前記第1戸体の見付方向の一端側が当接可能な第2戸体一端側連動部材を有し、
前記第2戸体一端側連動部材は、前記第2戸体における見込方向の前記第1戸体側に配置される第1連動部と、前記第2戸体における見込方向の前記第1戸体と反対側に配置される第2連動部と、を有し、
前記第1連動部の見付方向の長さは、前記第2連動部の見付方向の長さよりも長
く形成され、
前記第1戸体は、見付方向の一端側に配置される第1戸体一端側連動部材であって見込方向に見た場合に前記第1戸体と前記第2戸体との重なり部分が大きくなる側に移動された場合に前記第2戸体一端側連動部材に当接可能な第1戸体一端側連動部材を有し、
前記第2戸体は、見付方向の他端側に配置される第2戸体他端側連動部材であって見込方向に見た場合に前記第1戸体と前記第2戸体との重なり部分が小さくなる側に前記第1戸体が移動された場合に前記第1戸体一端側連動部材に当接可能な第2戸体他端側連動部材を有し、
前記第1戸体一端側連動部材、前記第2戸体一端側連動部材及び第2戸体他端側連動部材は、前記第1戸体及び前記第2戸体の開閉方向に直交する方向に切断した場合の断面形状が、同一形状となる部分を含んで構成される、多連式引戸。
【請求項3】
少なくとも2つの移動可能な戸体を備える多連式引戸であって、
前記2つの戸体は、見付方向に移動可能な第1戸体と、少なくとも一部が前記第1戸体の見込方向の一方側に重なって配置され前記第1戸体の移動に連動して見付方向に移動可能な第2戸体と、を有し、
前記第2戸体は、見付方向の一端側に配置される第2戸体一端側連動部材であって見込方向に見た場合に前記第1戸体と前記第2戸体との重なり部分が大きくなる側に前記第1戸体が移動された場合に前記第1戸体の見付方向の一端側が当接可能な第2戸体一端側連動部材を有し、
前記第2戸体一端側連動部材は、前記第2戸体における見込方向の前記第1戸体側に配置される第1連動部と、前記第2戸体における見込方向の前記第1戸体と反対側に配置される第2連動部と、を有し、
前記第1連動部の見付方向の長さは、前記第2連動部の見付方向の長さよりも長
く形成され、
前記第1戸体は、見付方向の一端側に配置される第1戸体一端側連動部材であって見込方向に見た場合に前記第1戸体と前記第2戸体との重なり部分が大きくなる側に移動された場合に前記第2戸体一端側連動部材に当接可能な第1戸体一端側連動部材を有し、
前記第2戸体は、見付方向の他端側に配置される第2戸体他端側連動部材であって見込方向に見た場合に前記第1戸体と前記第2戸体との重なり部分が小さくなる側に前記第1戸体が移動された場合に前記第1戸体一端側連動部材に当接可能な第2戸体他端側連動部材を有し、
前記第1戸体一端側連動部材、前記第2戸体一端側連動部材及び第2戸体他端側連動部材は、アルミ材料による押し出し成形で形成される多連式引戸。
【請求項4】
少なくとも2つの移動可能な戸体を備える多連式引戸であって、
前記2つの戸体は、見付方向に移動可能な第1戸体と、少なくとも一部が前記第1戸体の見込方向の一方側に重なって配置され前記第1戸体の移動に連動して見付方向に移動可能な第2戸体と、を有し、
前記第2戸体は、見付方向の一端側に配置される第2戸体一端側連動部材であって見込方向に見た場合に前記第1戸体と前記第2戸体との重なり部分が大きくなる側に前記第1戸体が移動された場合に前記第1戸体の見付方向の一端側が当接可能な第2戸体一端側連動部材を有し、
前記第2戸体一端側連動部材は、前記第2戸体における見込方向の前記第1戸体側に配置される第1連動部と、前記第2戸体における見込方向の前記第1戸体と反対側に配置される第2連動部と、を有し、
前記第1連動部の見付方向の長さは、前記第2連動部の見付方向の長さよりも長
く形成され、
前記第1連動部及び前記第2連動部それぞれの見付方向内側の端部に形成される小口には、小口端面キャップが取り付けられる連動式引戸。
【請求項5】
少なくとも2つの移動可能な戸体を備える多連式引戸であって、
前記2つの戸体は、見付方向に移動可能な第1戸体と、少なくとも一部が前記第1戸体の見込方向の一方側に重なって配置され前記第1戸体の移動に連動して見付方向に移動可能な第2戸体と、を有し、
前記第2戸体は、見付方向の一端側に配置される第2戸体一端側連動部材であって見込方向に見た場合に前記第1戸体と前記第2戸体との重なり部分が大きくなる側に前記第1戸体が移動された場合に前記第1戸体の見付方向の一端側が当接可能な第2戸体一端側連動部材を有し、
前記第2戸体一端側連動部材は、前記第2戸体における見込方向の前記第1戸体側に配置される第1連動部と、前記第2戸体における見込方向の前記第1戸体と反対側に配置される第2連動部と、を有し、
前記第1連動部及び前記第2連動部は、一体化した1つの前記第2戸体一端側連動部材の一部により構成され、
前記第1連動部の見付方向の長さは、前記第2連動部の見付方向の長さよりも長い、多連式引戸。
【請求項6】
前記第1戸体は、見付方向の一端側における見込方向の一方側及び他方側の見付面に配置される手掛け部を有する請求項1~5のいずれかに記載の多連式引戸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つの移動可能な戸体を備える多連式引戸に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、少なくとも2枚の移動可能な戸体を備える多連式引戸が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の多連式引戸は、先導側に配置され開位置と閉位置とに移動可能な第1戸体と、第1戸体に連動して移動可能な第2戸体と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の多連式引戸において、第1戸体を閉位置から開位置に移動させた場合に、第1戸体の見付方向の先端と第2戸体の見付方向の先端とが重なる位置に移動される。この場合、第1戸体の見付方向の先端と第2戸体の見付方向の先端との間に指が挟まれる可能性がある。
【0005】
本発明は、指が挟まれることを防止できる多連式引戸を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、少なくとも2つの移動可能な戸体を備える多連式引戸であって、前記2つの戸体は、見付方向に移動可能な第1戸体と、少なくとも一部が前記第1戸体の見込方向の一方側に重なって配置され前記第1戸体の移動に連動して見付方向に移動可能な第2戸体と、を有し、前記第2戸体は、見付方向の一端側に配置される第2戸体一端側連動部材であって見込方向に見た場合に前記第1戸体と前記第2戸体との重なり部分が大きくなる側に前記第1戸体が移動された場合に前記第1戸体の見付方向の一端側が当接可能な第2戸体一端側連動部材を有し、前記第2戸体一端側連動部材は、前記第2戸体における見込方向の前記第1戸体側に配置される第1連動部と、前記第2戸体における見込方向の前記第1戸体と反対側に配置される第2連動部と、を有し、前記第1連動部の見付方向の長さは、前記第2連動部の見付方向の長さよりも長い、多連式引戸に関する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態に係る多連式引戸を示す斜視図である。
【
図2】片開き多連式引戸を屋外側から見た場合の正面図である。
【
図5】固定ガラス扉の下方側の部分を示す斜視図である。
【
図6】固定ガラス扉から下部支持枠体を取り外した状態を示す斜視図である。
【
図7】固定ガラス扉の戸元側下部構成部及び戸先側下部構成部の分解斜視図である。
【
図8】中間移動ガラス扉の下方側の部分を示す斜視図である。
【
図9】中間移動ガラス扉から下部支持枠体を取り外した状態を示す斜視図である。
【
図10】中間移動ガラス扉の戸元側下部構成部及び戸先側下部構成部の分解斜視図である。
【
図11】先導ガラス扉の下方側の部分を示す斜視図である。
【
図12】先導ガラス扉から下部支持枠体を取り外した状態を示す斜視図である。
【
図13】先導ガラス扉の戸元側下部構成部及び戸先側下部構成部の分解斜視図である。
【
図14】多連式の引戸を開く際の動作を説明する図である。
【
図15】多連式の引戸を閉める際の動作を説明する図である。
【
図18】見付方向において戸先縦枠側の端部に配置された排水部品を示す斜視図である。
【
図19】見付方向において戸元縦枠側の端部に配置された排水部品を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係る多連式引戸1の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書において、「見付方向」とは、ガラス扉3,4,5の面方向を意味し、「見込方向」とは、屋内外方向(即ち、奥行き方向)を意味する。
【0009】
図1に示すように、本実施形態の多連式引戸1は、例えば、開口部構造体10に設置される。開口部構造体10は、複数の開口部111,112を有する。開口部構造体10は、複数の支柱11と、複数の上枠12と、屋根材13と、を備え、支柱11と上枠12とで形成される一側面側開口部111及び他側面側開口部112を有する。なお、開口部構造体10としては、多連式引戸1を配置可能な開口部を備えていればよく、例えば、ビルや住宅に形成される開口部などでもよい。
【0010】
本実施形態においては、多連式引戸1は、片開き多連式引戸1Aと、両開き多連式引戸1Bと、を備える。片開き多連式引戸1Aは、開口部構造体10の一側面に形成される一側面側開口部111に配置される。両開き多連式引戸1Bは、一側面に直交して配置される他側面に形成される他側面側開口部112に配置される。両開き多連式引戸1Bの基本的な構成は、片開き多連式引戸1Aを左右対称に一対の設けた構成と同じである。そのため、本実施形態の説明においては、片開き多連式引戸1Aの構成について詳細に説明する。
【0011】
片開き多連式引戸1Aは、
図2に示すように、戸元側縦枠21と、戸先側縦枠22と、3枚のガラス扉(固定ガラス扉3、中間移動ガラス扉4(第2戸体)、先導ガラス扉5(第1戸体))と、片開き多連式引戸1Aの上方に配置される上レール6と、片開き多連式引戸1Aの下方に配置される下レール7と、を備える。戸元側縦枠21は、一側面側開口部111の左右方向の一方側(例えば、
図2における左側)において、支柱11に固定される。戸先側縦枠22は、一側面側開口部111の左右方向の他方側(例えば、
図2における右側)において、支柱11に固定される。なお、本実施形態においては、固定ガラス扉3、中間移動ガラス扉4及び先導ガラス扉5の説明において、戸元側縦枠21側を戸元側といい、戸先側縦枠22側を戸先側という。
【0012】
固定ガラス扉3は、戸元側縦枠21に固定される。中間移動ガラス扉4及び先導ガラス扉5は、
図3A~
図4に示すように、上部が上レール6に保持されると共に、下部が下レール7に保持された状態で、左右方向(見付方向)に移動可能である。上レール6の3つの上レール部分61,62,63、及び下レール7の下レール部分701,702,703は、見込方向に並んで配置されると共に、左右方向に延びて形成される。
【0013】
固定ガラス扉3、中間移動ガラス扉4及び先導ガラス扉5は、それぞれ、上レール6の3つの上レール部分61,62,63及び下レール7の3つの下レール部分701,702,703それぞれに配置され、隣り合うガラス扉の一部が見込方向に見た場合に重なった状態で、見込方向の屋外側から屋内側にこの順に配置される。固定ガラス扉3、中間移動ガラス扉4及び先導ガラス扉5は、左右方向の一方側(
図2における左側)から他方側(
図2における右側)に向けてこの順に配置される。
【0014】
固定ガラス扉3は、
図3A、
図3B及び
図4に示すように、屋外側の下レール部分701及び上レール部分61に配置される。固定ガラス扉3は、左右方向に移動しないように戸元側縦枠21に固定されるFIX扉である。固定ガラス扉3は、
図2に示すように、下部において、戸元側が、戸元側縦枠21に固定された下部規制部材221に固定されると共に、上部において、戸先側が、上部規制部材222により、左右方向の戸先側縦枠22側への移動が規制されている。
【0015】
固定ガラス扉3は、
図5~
図7に示すように、ガラスパネル31と、下部支持枠体32と、2つの戸車33,33と、見付方向の戸元側(一方側)に配置される戸元側下部構成部34と、見付方向の戸先側(他方側)に配置される戸先側下部構成部36と、を有する。戸元側下部構成部34は、
図7に示すように、屋外側が開放する断面視略C字状のキャップ取付金具341と、端部キャップ342と、戸元側下部部材35と、を有する。戸先側下部構成部36は、屋外側が開放する断面視略C字状のキャップ取付金具361と、端部キャップ362と、戸先側下部部材37と、を有する。
【0016】
ガラスパネル31は、所定の厚さを有し、屋外側から見た場合に、長方形形状に形成される。
下部支持枠体32は、左右方向に延びて形成され、ガラスパネル31の下端部を支持する。なお、本実施形態においては、固定ガラス扉3の戸元側に戸元側縦枠21(
図4参照)が設けられているものの、ガラスパネル31の上端部及び左右方向の両端部を保持するための框や保持枠は設けられていない。下部支持枠体32は、
図7に示すように、ガラス保持部321と、中空部322と、下部取付部323と、を有する。
【0017】
ガラス保持部321は、上方側に突出する一対の保持片321aを有し、上方側が開放する断面視略U状に形成され、ガラスパネル31の下端部を保持する。ガラス保持部321の下面には、2つの戸車33,33が左右方向に離間して取り付けられる。2つの戸車33,33が取り付けられた部分において、中空部322には、2つの戸車33,33が貫通して配置される開口(図示せず)が形成されている。
【0018】
中空部322は、左右方向に延びる中空状に形成され、左右方向の戸元側(一方側)の端部には、戸元側下部構成部34のキャップ取付金具341が挿入され、左右方向の戸先側(他方側)の端部には、戸先側下部構成部36のキャップ取付金具361が挿入される。キャップ取付金具341,361の左右方向の外側には、端部キャップ342,362が固定される。
【0019】
下部取付部323は、中空部322の下部において、下方に開放する断面視逆U字状に形成されており、屋内側及び屋外側において上下方向に幅を有して左右方向に延びる一対の板状部323aを有する。一対の板状部323aの左右方向の戸先側の端部には、それぞれ、戸先側の端部から同じ長さ切り欠かれた切り欠き部324が形成される。切り欠き部324の切り欠かれた左右方向の長さは、戸先側下部部材37のC字状部分371の突出部分371a,371b(後述)の左右方向の長さに対応する長さに形成される。
【0020】
下部取付部323において、左右方向の戸元側の端部には、戸元側下部部材35が取り付けられ、左右方向の戸先側の端部には、戸先側下部部材37が取り付けられる。
【0021】
戸元側下部部材35は、下方側が開放する断面視略U字形状に形成される。戸元側下部部材の上面には、複数の貫通孔351が形成される。複数の貫通孔351のうちの最も戸元側の貫通孔351aには、戸元側縦枠21に固定された下部規制部材221の先端突起221aが挿入される。これにより、固定ガラス扉3は、戸元側縦枠21に固定される。
【0022】
戸先側下部部材37は、下方側が開放する断面視略C字形状に形成されるC字状部分371と、C字状部分371の上面から左右方向の戸元側(一方側)に延出する平面状部分372と、を有する。
【0023】
戸先側下部部材37は、左右方向(開閉方向)に直交する方向に切断した断面形状が、下方側が開放する略C字形状の断面形状のC字状部分371を含んで構成され、C字状部分371の略C字形状の閉じた上面部分において、ネジにより、固定ガラス扉3の下部に固定される。
【0024】
C字状部分371は、下部支持枠体32の中空部322の見込方向の幅よりも見込方向の両側に突出する一対の突出部分371a,371bを有する。一対の突出部分371a,371bは、下部取付部323の切り欠き部324から見込方向の両方の外側に突出するように配置される。
【0025】
一対の突出部分371a,371bの上面には、下部取付部323の切り欠き部324の上側の下端縁が配置される位置において、見付方向に延びる凹溝371cが形成される。凹溝371cには、切り欠き部324の上側の下端縁が配置される。
一対の突出部分371a,371bの左右方向の内側の面には、それぞれ、小口端面キャップ375が取り付けられる。小口端面キャップ375の上面には、下部取付部323の上側の下端縁が配置される位置において、見付方向に延びる凹溝375aが形成される。凹溝375aには、切り欠き部324の上側の下端縁が配置される。
【0026】
切り欠き部324の上側の下端縁が、小口端面キャップ375の凹溝375a及びC字状部分371の突出部分371a,371bの凹溝371cに配置されることで、切り欠き部324の上側の下端縁を、外部から視認できないように隠すことができる。
【0027】
中間移動ガラス扉4は、
図3A及び
図4に示すように、見込方向の中央の上レール部分62及び下レール部分702に配置され、少なくとも一部が先導ガラス扉5の見込方向の屋外側に重なって配置される。中間移動ガラス扉4は、見込方向に見た場合に少なくとも一部が先導ガラス扉5(後述)に重なった状態で先導ガラス扉5の移動に連動して左右方向に移動可能である。また、中間移動ガラス扉4は、見込方向に見た場合に少なくとも一部が固定ガラス扉3に重なった状態で固定ガラス扉3に対して左右方向に移動可能である。
【0028】
中間移動ガラス扉4は、左右方向の戸先側縦枠22側へ移動する場合に、
図4に示すように、下部において、戸元側の端部が、固定ガラス扉3の戸先側の端部の戸先側下部部材37のC字状部分371に当接することにより、左右方向の戸先側縦枠22側への移動が規制されると共に、
図2に示すように、上部において、戸先側の端部が、上部規制部材223に当接することにより、左右方向の戸先側縦枠22側への移動が規制されている。また、中間移動ガラス扉4は、左右方向の戸元側縦枠21側へ移動する場合に、
図4に示すように、下部において、戸先側の端部が、固定ガラス扉3の戸先側の端部の戸先側下部部材37のC字状部分371に当接することにより、左右方向の戸元側縦枠21側への移動が規制される。
【0029】
中間移動ガラス扉4は、
図8~
図10に示すように、ガラスパネル41と、下部支持枠体42と、2つの戸車43,43と、見付方向の戸元側(一方側)に配置される戸元側下部構成部44と、見付方向の戸先側(他方側)に配置される戸先側下部構成部46と、隙間塞ぎ材48(
図2、
図4参照)と、を有する。戸元側下部構成部44は、
図10に示すように、屋外側が開放する断面視略C字状のキャップ取付金具441と、端部キャップ442と、戸元側下部連動部材45(第2戸体一端部側連動部材)と、を有する。戸先側下部構成部46は、屋外側が開放する断面視略C字状のキャップ取付金具461と、端部キャップ462と、戸先側下部連動部材47(第2戸体他端部側連動部材)と、を有する。
【0030】
ガラスパネル41は、所定の厚さを有し、屋外側から見た場合に、長方形形状に形成される。ガラスパネル41の戸元側の端部には、
図2に示すように、隙間塞ぎ材48が取り付けられる。隙間塞ぎ材48は、
図4に示すように、突出片481を有する。突出片481は、固定ガラス扉3と中間移動ガラス扉4との間の隙間を塞ぐように、ガラスパネル41の戸元側の端面から、固定ガラス扉3のガラスパネル31の屋内側の面側に突出するように形成される。
【0031】
下部支持枠体42は、左右方向に延びて形成され、ガラスパネル41の下端部を支持する。なお、本実施形態においては、ガラスパネル41の戸元側の端部に隙間塞ぎ材48(
図4参照)が設けられているものの、ガラスパネル41の上端部及び左右方向の両端部を保持するための框や保持枠は設けられていない。下部支持枠体42は、
図10に示すように、ガラス保持部421と、中空部422と、下部取付部423と、を有する。
【0032】
ガラス保持部421は、上方側に突出する一対の保持片421aを有し、上方側が開放する断面視略U状に形成され、ガラスパネル41の下端部を保持する。ガラス保持部421の下面には、2つの戸車43,43が左右方向に離間して取り付けられる。2つの戸車43,43が取り付けられた部分において、中空部422には、2つの戸車43,43が貫通して配置される開口(図示せず)が形成されている。
【0033】
中空部422は、左右方向に延びる中空状に形成され、左右方向の戸元側(一方側)の端部には、戸元側下部構成部44のキャップ取付金具441が挿入され、左右方向の戸先側(他方側)の端部には、戸先側下部構成部46のキャップ取付金具461が挿入される。キャップ取付金具441,461の左右方向の外側には、端部キャップ442,462が固定される。
【0034】
下部取付部423は、中空部422の下部において、下方に開放する断面視逆U字状に形成されており、屋内側及び屋外側において上下方向に幅を有して左右方向に延びる一対の板状部423aを有する。
【0035】
一対の板状部423aの左右方向の戸先側の端部には、それぞれ、戸先側の端部から同じ長さ切り欠かれた切り欠き部424が形成される。切り欠き部424の切り欠かれた左右方向の長さは、戸先側下部連動部材47のC字状部分471の突出部分471a(後述)の左右方向の長さに対応する長さに形成される。
【0036】
一対の板状部423aの左右方向の戸元側の端部には、それぞれ、戸元側の端部から切り欠かれた切り欠き部425,426が形成される。屋外側の切り欠き部425の切り欠かれた左右方向の長さは、前述の左右方向の戸先側の端部の切り欠き部424の長さと同じであり、屋内側の切り欠き部426の切り欠かれた左右方向の長さは、屋外側の切り欠き部425の長さよりも長い。屋外側の切り欠き部425の切り欠かれた左右方向の長さは、戸元側下部連動部材45のC字状部分451の屋外側の突出部分451a(後述)の左右方向の長さに対応する長さに形成され、屋内側の切り欠き部426の切り欠かれた左右方向の長さは、戸元側下部連動部材45のC字状部分451の屋内側の突出部分451b(後述)の左右方向の長さに対応する長さに形成される。
【0037】
下部取付部423において、左右方向の戸元側の端部には、戸元側下部連動部材45が取り付けられ、左右方向の戸先側の端部には、戸先側下部連動部材47が取り付けられる。
【0038】
戸元側下部連動部材45は、見込方向に見た場合に先導ガラス扉5と中間移動ガラス扉4との重なり部分が大きくなる側に先導ガラス扉5が移動された場合に、先導ガラス扉5の左右方向の戸元側(一端側)に配置される戸元側下部連動部材55(後述)が当接可能である(
図14参照)。戸元側下部連動部材45は、
図10に示すように、下方側が開放する断面視略C字形状に形成されるC字状部分451と、C字状部分451の上面から左右方向の戸先側(他方側)に延出する平面状部分452と、を有する。
【0039】
戸元側下部連動部材45は、中間移動ガラス扉4の左右方向(開閉方向)に直交する方向に切断した場合の断面形状が、下方側が開放する略C字形状の断面形状のC字状部分451を含んで構成され、C字状部分451の略C字形状の閉じた上面部分において、ネジにより、中間移動ガラス扉4の下部に固定される。
【0040】
C字状部分451は、下部支持枠体42の中空部422の見込方向の幅よりも見込方向の両側に突出する一対の突出部分451a,451bを有する。一対の突出部分451a,451bは、下部取付部423の切り欠き部425,426から見込方向の両方の外側に突出するように配置される。
【0041】
屋外側の突出部分451a(第2連動部)は、中間移動ガラス扉4における見込方向の固定ガラス扉3が配置される側(見込方向の先導ガラス扉5と反対側、見込方向の屋外側)に突出する。屋外側の突出部分451aは、切り欠き部425を介して、下部取付部423の見込方向の屋外側に突出する。
【0042】
屋内側の突出部分451b(第1連動部)は、中間移動ガラス扉4における見込方向の先導ガラス扉5が配置される側(見込方向の屋内側)に突出する。屋内側の突出部分451bは、切り欠き部426を介して、下部取付部423の見込方向の屋内側に突出する。屋内側の突出部分451bの左右方向(見付方向)の長さは、屋外側の突出部分451aの左右方向(見付方向)の長さよりも長く形成される。
【0043】
屋外側の突出部分451a及び屋内側の突出部分451bの上面には、下部取付部423の切り欠き部425,426の上側の下端縁が配置される位置において、見付方向に延びる凹溝451cが形成される。凹溝451cには、切り欠き部425,426の上側の下端縁が配置される。
【0044】
一対の突出部分451a,451bの左右方向の内側の面には、それぞれ、小口端面キャップ455が取り付けられる。小口端面キャップ455の上面には、下部取付部423の切り欠き部425,426の上側の下端縁が配置される位置において、見付方向に延びる凹溝455aが形成される。凹溝455aには、切り欠き部425,426の上側の下端縁が配置される。
【0045】
切り欠き部425,426の上側の下端縁が、小口端面キャップ455の凹溝455a及びC字状部分451の突出部分451a,451bの凹溝451cに配置されることで、切り欠き部425,426の上側の下端縁を、外部から視認できないように隠すことができる。
【0046】
戸先側下部連動部材47は、見込方向に見た場合に先導ガラス扉5と中間移動ガラス扉4との重なり部分が小さくなる側に先導ガラス扉5が移動された場合に、先導ガラス扉5の戸元側下部連動部材55(後述)に当接可能である(
図15参照)。戸先側下部連動部材47は、
図10に示すように、下方側が開放する断面視略C字形状に形成されるC字状部分471と、C字状部分471の上面から左右方向の戸元側(一方側)に延出する平面状部分472と、を有する。C字状部分471の一対の突出部分471a,471bの左右方向の内側の面には、それぞれ、小口端面キャップ475が取り付けられる。
戸先側下部連動部材47及び小口端面キャップ475の構成は、固定ガラス扉3の戸先側下部部材37と同様の構成であるため、その説明を省略する。
【0047】
先導ガラス扉5は、
図3A、
図3C及び
図4に示すように、屋内側の下レール部分703及び上レール部分63に配置され、中間移動ガラス扉4に対して左右方向に移動可能である。先導ガラス扉5は、左右方向の戸先側縦枠22側へ移動する場合に、
図4に示すように、下部において、戸元側の端部が、中間移動ガラス扉4の戸先側の端部の戸先側下部連動部材47のC字状部分471に当接することにより、左右方向の戸先側縦枠22側への移動が規制されると共に、戸先側の端部が、戸先側縦枠22に当接することより、戸先側縦枠22側への移動が規制されている。また、先導ガラス扉5は、左右方向の戸元側縦枠21側へ移動する場合に、
図4に示すように、下部において、戸元側の端部が、固定ガラス扉3の戸先側の端部の戸元側下部連動部材45のC字状部分451に当接して移動することにより、中間移動ガラス扉4を連動して移動させる。
【0048】
先導ガラス扉5は、
図11~
図13に示すように、ガラスパネル51と、下部支持枠体52と、2つの戸車53,53と、見付方向の戸元側に配置される戸元側下部構成部54と、見付方向の戸先側に配置される戸先側下部構成部56と、隙間塞ぎ材58(
図2、
図4参照)と、戸先錠591と、戸先手掛け部592(手掛け部)と、を有する。戸元側下部構成部54は、屋外側が開放する断面視略C字状のキャップ取付金具541と、端部キャップ542と、戸元側下部連動部材55(第1戸体一端部側連動部材)と、を有する。戸先側下部構成部56は、屋外側が開放する断面視略C字状のキャップ取付金具561と、端部キャップ562と、戸先側下部部材57と、を有する。
【0049】
ガラスパネル51は、所定の厚さを有し、屋外側から見た場合に、長方形形状に形成される。ガラスパネル51の戸元側の端部には、
図2に示すように、隙間塞ぎ材58が取り付けられる。隙間塞ぎ材58は、
図4に示すように、突出片581を有する。突出片581は、中間移動ガラス扉4と先導ガラス扉5との間の隙間を塞ぐように、ガラスパネル51の戸元側の端面から、中間移動ガラス扉4のガラスパネル41の屋内側の面側に突出するように形成される。
【0050】
ガラスパネル51の戸先側の上下方向の略中央における見込方向の屋内側及び屋外側には、戸先手掛け部592が配置される。戸先手掛け部592は、ガラスパネル51の屋外側の見付面に配置される屋外側手掛け部592aと、ガラスパネル51の屋内側の見付面に配置される屋内側手掛け部592bと、を有する。
【0051】
下部支持枠体52は、
図11~
図14に示すように、左右方向に延びて形成され、ガラスパネル51の下端部を支持する。なお、本実施形態においては、ガラスパネル51の戸元側の端部に隙間塞ぎ材58(
図4参照)が設けられているものの、ガラスパネル51の上端部及び左右方向の両端部を保持するための框や保持枠は設けられていない。下部支持枠体52は、
図13に示すように、ガラス保持部521と、中空部522と、下部取付部523と、を有する。
【0052】
ガラス保持部521は、上方側に突出する一対の保持片521aを有し、上方側が開放する断面視略U状に形成され、ガラスパネル51の下端部を保持する。ガラス保持部521の下面には、2つの戸車53,53が左右方向に離間して取り付けられる。2つの戸車53,53が取り付けられた部分において、中空部522には、2つの戸車53,53が貫通して配置される開口(図示せず)が形成されている。
【0053】
中空部522は、左右方向に延びる中空状に形成され、左右方向の戸元側(一方側)の端部には、戸元側下部構成部54のキャップ取付金具541が挿入され、左右方向の戸先側(他方側)の端部には、戸先側下部構成部56のキャップ取付金具561が挿入される。キャップ取付金具541,561の左右方向の外側には、端部キャップ542,562が固定される。
【0054】
下部取付部523は、中空部522の下部において、下方に開放する断面視逆U字状に形成されており、屋内側及び屋外側において上下方向に幅を有して左右方向に延びる一対の板状部523aを有する。一対の板状部523aの左右方向の戸元側の端部には、それぞれ、戸元側の端部から同じ長さ切り欠かれた切り欠き部524が形成される。切り欠き部524の切り欠かれた左右方向の長さは、戸元側下部連動部材55の突出部分551a,551b(後述)の左右方向の長さに対応する長さに形成される。
【0055】
下部取付部523において、左右方向の戸元側の端部には、戸元側下部連動部材55が取り付けられ、左右方向の戸先側の端部には、戸先側下部部材57が取り付けられる。
【0056】
戸元側下部連動部材55は、見込方向に見た場合に先導ガラス扉5と中間移動ガラス扉4との重なり部分が大きくなる側に先導ガラス扉5が移動された場合に、中間移動ガラス扉4の戸元側下部連動部材45に当接可能である(
図14参照)。戸元側下部連動部材55は、
図13に示すように、下方側が開放する断面視略C字形状に形成されるC字状部分551と、C字状部分551の上面から左右方向の戸先側(他方側)に延出する平面状部分552と、を有する。C字状部分551の一対の突出部分551a,551bの左右方向の内側の面には、それぞれ、小口端面キャップ555が取り付けられる。
戸元側下部連動部材55及び小口端面キャップ555の構成は、固定ガラス扉3の戸先側下部部材37及び小口端面キャップ375を左右反対とした構成と同様の構成であるため、その説明を省略する。
また、戸先側下部部材57の構成は、前述の固定ガラス扉3の戸元側下部部材35を左右反対とした構成と同様の構成である。
【0057】
以上のように構成される先導ガラス扉5、中間移動ガラス扉4及び固定ガラス扉3において、先導ガラス扉5の戸元側下部連動部材55、中間移動ガラス扉4の戸元側下部連動部材45及び戸先側下部連動部材47、並びに、固定ガラス扉3の戸先側下部部材37は、アルミ材料による押し出し成形で形成される。また、戸元側下部連動部材55、戸元側下部連動部材45、戸先側下部連動部材47及び戸先側下部部材37において、戸元側下部連動部材55のC字状部分551、戸元側下部連動部材45のC字状部分451、戸先側下部連動部材47のC字状部分471、及び、戸先側下部部材37のC字状部分371は、断面形状が全て同じ形状である。
【0058】
そのため、戸元側下部連動部材55、戸元側下部連動部材45、戸先側下部連動部材47及び戸先側下部部材37は、先導ガラス扉5、中間移動ガラス扉4及び固定ガラス扉3の左右方向(開閉方向)に直交する方向に切断した場合の断面形状が、同一形状となる部分を含んで構成される。これにより、戸元側下部連動部材55、戸元側下部連動部材45、戸先側下部連動部材47及び戸先側下部部材37は、断面視略C字状の同じ形材を加工することで形成することができる。つまり、本実施形態においては、アルミ材料を押し出し成形することで、断面視略C字形状の形材を形成した後に、切り欠き加工を施すことで、戸元側下部連動部材55、戸元側下部連動部材45、戸先側下部連動部材47及び戸先側下部部材37を製作できる。これにより、同じ断面の形材を加工するだけで、戸元側下部連動部材55、戸元側下部連動部材45、戸先側下部連動部材47及び戸先側下部部材37を製作できるため、製造コストを低減できる。また、戸元側下部連動部材55、戸元側下部連動部材45及び戸先側下部連動部材47が、アルミ材料から形成されるため、同じ材料の同色で形成されるため、色差がなく、意匠性を向上できる。
【0059】
片開き多連式引戸1Aにおいて、固定ガラス扉3、中間移動ガラス扉4及び先導ガラス扉5を、閉位置から開位置に移動させる場合には、
図14に示すように、片開き多連式引戸1Aが閉位置に位置された状態において、先導ガラス扉5の戸先手掛け部592に手を掛けて、先導ガラス扉5を左右方向の戸元側に移動させる。これにより、先導ガラス扉5の戸元側の戸元側下部連動部材55の屋外側の突出部分551aが、中間移動ガラス扉4の戸元側の戸元側下部連動部材45の屋内側の突出部分451bに当接すると、先導ガラス扉5の戸元側へ移動が規制されて、中間移動ガラス扉4の戸先側の端部には、引き残し領域Xが形成される。そのため、中間移動ガラス扉4の戸先側の端部側において、指が挟まれることを防止できる。その後、先導ガラス扉5を更に左右方向の戸元側に移動させることで、先導ガラス扉5と中間移動ガラス扉4とを連動させて左右方向の戸元側に移動させる。これにより、中間移動ガラス扉4の戸先側の戸先側下部連動部材47の屋外側の突出部分471aが、固定ガラス扉3の戸先側の戸先側下部部材37の屋内側の突出部分371bに当接すると、中間移動ガラス扉4の左右方向の戸元側への移動が規制された状態で、片開き多連式引戸1Aは、開位置に位置される。
【0060】
一方、片開き多連式引戸1Aにおいて、固定ガラス扉3、中間移動ガラス扉4及び先導ガラス扉5を、開位置から閉位置に移動させる場合には、
図15に示すように、先導ガラス扉5の戸先手掛け部592に手を掛けて、先導ガラス扉5を左右方向の戸先側に移動させる。ここで、中間移動ガラス扉4の戸先側の端部には、引き残し領域Xが形成されるため、戸先手掛け部592における屋外側手掛け部592a及び屋内側手掛け部592bのいずれにも、容易に手を掛けることができる。これにより、先導ガラス扉5の戸元側の戸元側下部連動部材55の屋外側の突出部分551aが、中間移動ガラス扉4の戸先側の戸先側下部連動部材47の屋内側の突出部分471bに当接すると、先導ガラス扉5の戸先側への移動に連動して、中間移動ガラス扉4が戸先側へ引き出される。その後、先導ガラス扉5を更に左右方向の戸先側に移動させることで、先導ガラス扉5と中間移動ガラス扉4とを連動させて左右方向の戸先側に移動させる。これにより、中間移動ガラス扉4の戸元側下部連動部材45の屋外側の突出部分451aが、固定ガラス扉3の戸先側の戸先側下部部材37の屋内側の突出部分371bに当接すると、中間移動ガラス扉4の左右方向の戸先側への移動が規制された状態で、片開き多連式引戸1Aは、閉位置に位置される。
【0061】
次に、上レール6及び下レール7について説明する。
上レール6は、
図3Aに示すように、開口部構造体10の一側面側開口部111における上枠12の下面に固定され、
図2に示すように、左右方向(見込方向)に延びる。
上レール6は、
図3Aに示すように、見込方向に並ぶ3つの上レール部分61,62,63を有し、3つの上レール部分61,62,63には、それぞれ、3つのガラス扉3,4,5それぞれが配置される。上レール6は、上レールベース部材65と、屋外側仕切り枠66と、屋内側仕切り枠67と、を有する。
【0062】
上レールベース部材65は、
図3Aに示すように、下方が開放した断面視略U字状に形成される。上レールベース部材65は、上面板651と、見込方向に離間して配置された一対の側面板652と、上面板651の下面に形成された一対の屋外側枠取付溝653及び一対の屋内側枠取付溝654と、一対の側面板652の下端部側に形成された2つのモヘヤ取付溝655と、を有する。上面板651は、上枠12の下面にネジ固定される。
【0063】
一対の屋外側枠取付溝653は、上面板651の下面の屋外側において、屋外側の上レール部分61が配置される領域に、見込方向の内側に互いが向かい合って開放する溝状に形成される。一対の屋内側枠取付溝654は、上面板651の下面の屋内側において、屋内側の上レール部分63が配置される領域に、見込方向の内側に互いが向かい合って開放する溝状に形成される。
2つのモヘヤ取付溝655は、一対の側面板652の下端部の内側の面に形成され、モヘヤ取付溝655には、モヘヤ部材68が取り付けられる。
【0064】
屋外側仕切り枠66は、屋外側及び下方側が開放した断面視略L字状に形成される。屋外側仕切り枠66は、上レールベース部材65の屋外側枠取付溝653に見込方向の両端部が挿入される上面板661と、上面板661の屋内側の端部側から下方に延びる側面板662と、を有する。側面板662の下端部における屋外側及び屋内側の両面には、モヘヤ取付溝663が形成され、モヘヤ取付溝663には、モヘヤ部材68が取り付けられる。
【0065】
屋内側仕切り枠67は、屋内側及び下方側が開放した断面視略L字状に形成される。屋内側仕切り枠67は、上レールベース部材65の屋内側枠取付溝654に見込方向の両端部が挿入される上面板671と、上面板671の屋外側の端部側から下方に延びる側面板672と、を有する。側面板672の下端部における屋外側及び屋内側の両面には、モヘヤ取付溝673が形成され、モヘヤ取付溝673には、モヘヤ部材68が取り付けられる。
【0066】
本実施形態においては、上レール6は、各上レール部分61,62,63において、上レールベース部材65の上面板651の下面とガラスパネル31,41,51それぞれの上端との間の距離を、従来よりも広く形成している。そのため、上レール6の一対の側面板や仕切板の上下方向の長さが、従来の上レールと比べて長く形成されている。従来の上レールの場合、1つの金型を用いて押し出し成形により、上レールの一対の側面板や仕切板を一体の部材で製造することが可能であった。しかし、本実施形態のように、上レール6の一対の側面板や仕切板の上下方向の長さが、従来の上レールと比べて長い場合、一体部品からなる形材を、1つの金型を用いて押し出し成形により製造することが難しい。そのため、本発明においては、上レール6を、3部材(上レールベース部材65、屋外側仕切り枠66及び屋内側仕切り枠67)に分割したものを形成して、これらの3部材を組み合わせることで上レール6を構成している。
【0067】
下レール7は、
図2に示すように、固定ガラス扉3、中間移動ガラス扉4及び先導ガラス扉5の下方に配置され、
図4に示すように、固定ガラス扉3、中間移動ガラス扉4及び先導ガラス扉5に対応した位置に3列で形成される。下レール7は、固定ガラス扉3、中間移動ガラス扉4及び先導ガラス扉5が配置される範囲には、レール部分701,702,703が形成される。
図16に示すように、下レール7の上面において、固定ガラス扉3、中間移動ガラス扉4及び先導ガラス扉5が配置される範囲(レール部分701,702,703)には、走行部カバー部材73が配置されている。また、下レール7の上面において、固定ガラス扉3、中間移動ガラス扉4及び先導ガラス扉5が配置されない範囲には、平面カバー部材74が配置されている。
【0068】
下レール7は、
図3A~
図3C及び
図17に示すように、ベース部材71と、2つの足部材72と、3つの走行部カバー部材73と、2つの平面カバー部材74と、を有する。ベース部材71、足部材72、走行部カバー部材73及び平面カバー部材74は、同じ材料(例えばアルミ材料)で形成される。ベース部材71、足部材72、走行部カバー部材73及び平面カバー部材74が同じ材料の同色で形成されるため、色差がなく、意匠性に優れる。
下レール7の長手方向の両端部には、
図17に示すように、それぞれ、排水部品75(排水部材)が配置される。
【0069】
ベース部材71は、左右方向に延びて形成される。ベース部材71は、
図3A~
図3Cに示すように、上方側から下方側に貫通したネジ71aにより基礎(被固定部材)に固定される。ネジ71aの頭部とベース部材71との間には、ゴムパッキン71bが配置される。ベース部材71の左右方向の両端部には、
図18及び
図19に示すように、上下方向に貫通する排水用の複数の排水用貫通孔716が形成される。複数の排水用貫通孔716は、左右方向の両端部において、各レール部分701,702,703に対応して見込方向に離間して形成される。
【0070】
ベース部材71は、
図17に示すように、屋外側に配置される一面側部材711と、屋内側に配置される他面側部材712と、一面側部材711と他面側部材712とを接続して形成される部材取付部713と、を有する。部材取付部713の下面には、2つの足部材72が取り付けられ、部材取付部713の上面には、3つの走行部カバー部材73及び2つの平面カバー部材74が取り付けられる。部材取付部713は、下面に形成され下方に開放すると共に長手方向に延びる2つの足部材取付溝部714と、上面に形成され上方に開放すると共に長手方向に延びる3つのカバー部材取付溝715と、を有する。
【0071】
2つの足部材取付溝部714には、それぞれ、足部材72が取り付けられる。足部材72は、ベース部材71とは別部材で構成され、足部材取付溝部714において、ベース部材71の下部に取り付けられる。足部材72は、長手方向に延びて形成され、長手方向の長さがベース部材71の長さよりも短く形成される。足部材72の長手方向の端部は、ベース部材71の長手方向の端部よりも、後述する排水部品75が配置される分だけ長手方向の内側に位置する。
【0072】
足部材72は、下部に配置され断面視T字状のT字状部721と、T字状部721の上面に形成される2つの係止片722と、を有する。足部材72は、T字状部721の突出部が下方に突出した状態で、2つの係止片722を足部材取付溝部714に嵌め込むことで取り付けられる。
【0073】
カバー部材取付溝715には、
図16及び
図17に示すように、3つの走行部カバー部材73と、2つの平面カバー部材74と、が取り付けられる。
【0074】
3つの走行部カバー部材73は、それぞれ、固定ガラス扉3、中間移動ガラス扉4及び先導ガラス扉5が配置される領域及び移動される領域に対応する長さに形成され、カバー部材取付溝715に取り付けられる。走行部カバー部材73の長手方向の端部が下レール7の長手方向の途中に位置する場合には、走行部カバー部材73の長手方向の端部には、端部キャップ733が取り付けられる。
【0075】
走行部カバー部材73は、上部に配置され断面視逆T字状の逆T字状部731と、逆T字状部731の下面に形成される2つの係止片732と、を有する。走行部カバー部材73は、逆T字状部731のレール突出部731aが上方に突出した状態で、2つの係止片732をカバー部材取付溝715に嵌め込むことで取り付けられる。
【0076】
2つの平面カバー部材74は、それぞれ、固定ガラス扉3、中間移動ガラス扉4及び先導ガラス扉5が配置されない領域において、カバー部材取付溝715に取り付けられる。2つの平面カバー部材74は、それぞれ、平面板部741と、2つの係止片742と、を有する。平面カバー部材74は、平面板部741が上方に配置された状態で、2つの係止片742をカバー部材取付溝715に嵌め込むことで取り付けられる。
【0077】
以上の3つの走行部カバー部材73及び2つの平面カバー部材74は、カバー部材取付溝715に取り付けられることで、ベース部材71を基礎に固定するネジ71aを隠すことができる。これにより、下レール7の意匠性を向上できる。
【0078】
2つの排水部品75は、
図17~
図19に示すように、それぞれ、足部材72の長手方向の両端部の外側においてベース部材71の下部に配置される。2つの排水部品75は、それぞれ、ベース部材71の下方であって、足部材72の長手方向の端部の外側に形成されたスペースに配置される。足部材72の長手方向の端部の外側に形成されたスペースは、足部材72の長手方向の長さをベース部材71の長手方向の長さよりも短くすることで形成されたスペースである。
【0079】
排水部品75は、
図17に示すように、外形が見込方向に延びる直方体形状に形成され、上方側及び屋外側が開放した箱状に形成される。排水部品75は、屋内側の端部が閉止されると共に屋外側の端部にスリット状の開口が形成される。
【0080】
以上のように構成される下レール7においては、走行部カバー部材73とベース部材71との間の隙間から浸入した水や、平面カバー部材74とベース部材71との間の隙間から浸入した水は、
図18及び
図19に示すように、走行部カバー部材73及び平面カバー部材74の下方において、ベース部材71の部材取付部713の上面を流れて、長手方向の両端部の排水用貫通孔716を通して、排水部品75に流入する。排水部品75に流入した水は、屋外側の端部の開口から外部に排出される。
【0081】
以上説明した本実施形態によれば、以下のような効果を奏する。
本実施形態の多連式引戸1Aは、見付方向に移動可能な先導ガラス扉5と、少なくとも一部が先導ガラス扉5の見込方向の屋外側に重なって配置され先導ガラス扉5の移動に連動して見付方向に移動可能な中間移動ガラス扉4と、を有し、中間移動ガラス扉4は、見付方向の戸元側に配置される戸元側下部連動部材45であって見込方向に見た場合に先導ガラス扉5と中間移動ガラス扉4との重なり部分が大きくなる側に先導ガラス扉5が移動された場合に先導ガラス扉5の左右方向の戸元側が当接可能な戸元側下部連動部材45を有し、戸元側下部連動部材45は、屋内側(中間移動ガラス扉4における見込方向の先導ガラス扉5側)に配置される突出部分451bと、屋外側(中間移動ガラス扉4における見込方向の先導ガラス扉5と反対側)に配置される突出部分451aと、を有し、屋内側の突出部分451bの見付方向の長さは、屋外側の突出部分451aの見付方向の長さよりも長い。
【0082】
そのため、屋内側の突出部分451bの見付方向の長さを、屋外側の突出部分451aの見付方向の長さよりも長く構成することで、屋内側の突出部分451bに先導ガラス扉5の戸先側に当接させることができる。これにより、先導ガラス扉5の戸先側の端部には、中間移動ガラス扉4と重ならない引き残し領域Xが形成される。従って、先導ガラス扉5の戸先側の端部に引き残し領域Xが形成されるため、先導ガラス扉5と中間移動ガラス扉4との間に指が挟まれることを防止できる。
【0083】
また、本実施形態においては、戸元側下部連動部材45は、中間移動ガラス扉4の左右方向(開閉方向)に直交する方向に切断した場合の断面形状が、下方側が開放する略C字形状の断面形状の部分を含んで構成され、略C字形状の閉じた部分において、中間移動ガラス扉4の下部に配置された状態でネジにより固定される。これにより、戸元側下部連動部材45を中間移動ガラス扉4の下部に容易に取り付けることで、先導ガラス扉5と中間移動ガラス扉4との間に指が挟まれることを防止する構成を容易に実現できる。
【0084】
また、本実施形態においては、戸元側下部連動部材55、戸元側下部連動部材45及び戸先側下部連動部材47は、先導ガラス扉5及び中間移動ガラス扉4の左右方向(開閉方向)に直交する方向に切断した場合の断面形状が、同一形状となる部分を含んで構成される。そのため、断面形状が同一形状となる形材を加工することで、戸元側下部連動部材55、戸元側下部連動部材45及び戸先側下部連動部材47を製作することができるため、戸元側下部連動部材55、戸元側下部連動部材45及び戸先側下部連動部材47の製造コストを低減できる。
【0085】
また、本実施形態においては、戸元側下部連動部材55、戸元側下部連動部材45及び戸先側下部連動部材47は、アルミ材料による押し出し成形で形成される。これにより、戸元側下部連動部材55、戸元側下部連動部材45及び戸先側下部連動部材47が同一の材料から形成されるため、同じ材料の同色で形成されるため、色差がなく、意匠性を向上できる。
【0086】
また、本実施形態においては、先導ガラス扉5は、見付方向の戸先側における見込方向の屋外側及び屋内側の見付面に配置される戸先手掛け部592を有する。そのため、戸先手掛け部592を、先導ガラス扉5の戸先側の端部の引き残し領域Xに配置できる。これにより、戸先手掛け部597に手を掛けることで、先導ガラス扉5を容易に開閉することができる。
【0087】
また、本実施形態においては、中間移動ガラス扉4における見込方向の先導ガラス扉5側に配置される突出部分451b及び中間移動ガラス扉4における見込方向の先導ガラス扉5と反対側に配置される突出部分451aそれぞれの見付方向内側の端部に形成される小口には、小口端面キャップ455が取り付けられる。そのため、形材を加工して戸元側下部連動部材45を製作した場合に、突出部分451a,451bの見付方向内側の端部に形成される小口を小口端面キャップ455で覆うことができる。これにより、小口にバリなどが形成されても視認されないため意匠性を向上できると共に、小口にバリが形成されても手が触れることを防止できる。
【0088】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
例えば、多連式引戸1Aを2つの移動可能なガラス扉(戸体)を備えて構成したが、これに限定されず、3つ以上の移動可能なガラス扉(戸体)を備えて構成してもよい。
【0089】
また、前記実施形態においては、多連式引戸において戸元側の扉を固定ガラス扉3としたが、これに限定されない。例えば、戸元側に戸袋を設けて、先導ガラス扉5(第1戸体)及び中間移動ガラス扉4(第2戸体)を、戸袋に出し入れするように構成してもよい。
【符号の説明】
【0090】
1、1A 多連式引戸
5 先導ガラス扉(第1戸体)
4 中間移動ガラス扉(第2戸体)
45 戸元側下部連動部材(第2戸体一端部側連動部材)
47 戸先側下部連動部材(第2戸体他端部側連動部材)
55 戸元側下部連動部材(第1戸体一端部側連動部材)
451a 突出部分(第2連動部)
451b 突出部分(第1連動部)
455 小口端面キャップ
592 戸先手掛け部(手掛け部)