(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】空調システム、通信装置、空調通信方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04L 27/00 20060101AFI20240109BHJP
F24F 11/54 20180101ALI20240109BHJP
F24F 11/88 20180101ALI20240109BHJP
F24F 11/63 20180101ALI20240109BHJP
F24F 11/49 20180101ALI20240109BHJP
【FI】
H04L27/00 Z
F24F11/54
F24F11/88
F24F11/63
F24F11/49
(21)【出願番号】P 2019190838
(22)【出願日】2019-10-18
【審査請求日】2022-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】316011466
【氏名又は名称】日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 由一
(72)【発明者】
【氏名】町田 芳広
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 慎也
【審査官】大野 友輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-004216(JP,A)
【文献】特開2005-136509(JP,A)
【文献】特開平11-196456(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/49
F24F 11/54
F24F 11/88
F24F 11/63
H04L 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室外機と複数の室内機とが通信線を介して接続される空調システムであって、
前記室内機は、
シリアルデータ通信を行うシリアルデータ通信部と、
前記通信線を介してシリアルデータ通信の信号が伝送されているか否かを示す空きチャネルを検出する第1空きチャネル検出部と、
変復調通信の搬送信号を変復調する変復調通信部と、
前記変復調通信部の出力信号を所定の利得に基づいて増幅する可変利得送信増幅部と、
変復調通信の受信S/N比を検出する受信S/N比検出部と、
前記シリアルデータ通信部との間でデータを入出力するとともに、前記変復調通信部との間でデータを入出力する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記第1空きチャネル検出部によって検出される前記空きチャネルが、前記通信線を介してシリアルデータ通信が行われていないことを示すものである場合、シリアルデータ通信に基づく第1テスト信号を送信した後、前記第1テスト信号の送信を継続しつつ、変復調通信に基づく第2テスト信号を送信し、
前記第1テスト信号及び前記第2テスト信号の送信中、前記受信S/N比検出部によって検出される受信S/N比が所定閾値以上となるように、前記可変利得送信増幅部における前記利得を設定する空調システム。
【請求項2】
前記制御部は、電源投入の直後に前記利得の設定を行い、空調運転中、設定後の前記利得に基づいて、変復調通信を行うこと
を特徴とする請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記利得の設定後の空調運転中、前記第1空きチャネル検出部によって検出される前記空きチャネルが、前記通信線を介してシリアルデータ通信が行われていることを示すものであっても、設定後の前記利得に基づいて、変復調通信を行うこと
を特徴とする請求項2に記載の空調システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記利得の設定後の空調運転中、他の機器から受信するシリアルデータ通信の信号の値が変化するタイミングにおいても、設定後の前記利得に基づいて、変復調通信を行うこと
を特徴とする請求項3に記載の空調システム。
【請求項5】
前記通信線を介して変復調通信の信号が伝送されているか否かを示す空きチャネルを検出する第2空きチャネル検出部を備え、
前記制御部は、空調運転中、前記第2空きチャネル検出部によって検出される前記空きチャネルが、前記通信線を介して変復調通信が行われていないことを示すものである場合、設定後の前記利得に基づいて、変復調通信を行うこと
を特徴とする請求項2に記載の空調システム。
【請求項6】
複数の所要受信S/N比が、変復調通信における複数の変調モードに一対一で予め対応付けられており、
前記制御部は、変復調通信における現状の変調モードに対応する前記所要受信S/N比に基づいて、前記所定閾値を設定すること
を特徴とする請求項1に記載の空調システム。
【請求項7】
前記制御部は、変復調通信における現状の変調モードに対応する前記所要受信S/N比に所定の信号減衰量を加算した値に基づいて、前記所定閾値を設定し、前記信号減衰量は、前記通信線の長さが所定の上限値である場合での前記通信線における変復調通信の信号減衰量であること
を特徴とする請求項6に記載の空調システム。
【請求項8】
前記第1テスト信号には、疑似ランダム雑音符号が含まれていること
を特徴とする請求項1に記載の空調システム。
【請求項9】
前記第2テスト信号には、疑似ランダム雑音符号が含まれていること
を特徴とする請求項1に記載の空調システム。
【請求項10】
前記制御部は、
前記第2テスト信号に所定のユニークワードを含めるようにし、
前記第1テスト信号及び前記第2テスト信号の送信中、前記受信S/N比検出部によって検出される受信S/N比が前記所定閾値以上になった場合において、前記送信中に前記変復調通信部で受信した信号に含まれるユニークワードが、前記第2テスト信号に含まれていた前記所定のユニークワードに一致しているとき、現状の前記利得を維持すること
を特徴とする請求項1に記載の空調システム。
【請求項11】
前記制御部は、前記利得の設定後、前記通信線を介してシリアルデータ通信を行う他の機器に、シリアルデータ通信に基づく所定の問合せ信号を送信した後、当該問合せ信号の送信を継続しつつ、変復調通信に基づく前記第2テスト信号を送信し、前記機器から前記問合せ信号に対する応答信号を正常に受信した場合、現状の前記利得を維持すること
を特徴とする請求項1に記載の空調システム。
【請求項12】
室外機と複数の室内機とが通信線を介して接続される空調システムであって、
前記室外機は、
シリアルデータ通信を行うシリアルデータ通信部と、
前記通信線を介してシリアルデータ通信の信号が伝送されているか否かを示す空きチャネルを検出する第1空きチャネル検出部と、
変復調通信の搬送信号を変復調する変復調通信部と、
前記変復調通信部の出力信号を所定の利得に基づいて増幅する可変利得送信増幅部と、
変復調通信の受信S/N比を検出する受信S/N比検出部と、
前記シリアルデータ通信部との間でデータを入出力するとともに、前記変復調通信部との間でデータを入出力する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記第1空きチャネル検出部によって検出される前記空きチャネルが、前記通信線を介してシリアルデータ通信が行われていないことを示すものである場合、シリアルデータ通信に基づく第1テスト信号を送信した後、前記第1テスト信号の送信を継続しつつ、変復調通信に基づく第2テスト信号を送信し、
前記第1テスト信号及び前記第2テスト信号の送信中、前記受信S/N比検出部によって検出される受信S/N比が所定閾値以上となるように、前記可変利得送信増幅部における前記利得を設定する空調システム。
【請求項13】
室外機と複数の室内機とが通信線を介して接続される空調システムに適用されて、少なくとも前記室外機と複数の前記室内機との間での通信を行う通信装置であって、
前記通信装置は、
シリアルデータ通信を行うシリアルデータ通信部と、
前記通信線を介してシリアルデータ通信の信号が伝送されているか否かを示す空きチャネルを検出する第1空きチャネル検出部と、
変復調通信の搬送信号を変復調する変復調通信部と、
前記変復調通信部の出力信号を所定の利得に基づいて増幅する可変利得送信増幅部と、
変復調通信の受信S/N比を検出する受信S/N比検出部と、
前記シリアルデータ通信部との間でデータを入出力するとともに、前記変復調通信部との間でデータを入出力する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記第1空きチャネル検出部によって検出される前記空きチャネルが、前記通信線を介してシリアルデータ通信が行われていないことを示すものである場合、シリアルデータ通信に基づく第1テスト信号を送信した後、前記第1テスト信号の送信を継続しつつ、変復調通信に基づく第2テスト信号を送信し、
前記第1テスト信号及び前記第2テスト信号の送信中、前記受信S/N比検出部によって検出される受信S/N比が所定閾値以上となるように、前記可変利得送信増幅部における前記利得を設定する通信装置。
【請求項14】
室外機と複数の室内機とが通信線を介して行う空調通信方法であって、
前記室外機又は前記室内機が、
前記通信線を介してシリアルデータ通信の信号が伝送されていないことを示す空きチャネルを検出した場合、シリアルデータ通信に基づく第1テスト信号を送信した後、前記第1テスト信号の送信を継続しつつ、変復調通信に基づく第2テスト信号を送信する送信ステップと、
前記第1テスト信号及び前記第2テスト信号の送信中、変復調通信の受信S/N比が所定閾値以上となるように、変復調通信の出力信号を増幅する際の利得を設定する利得設定ステップと、を含む空調通信方法。
【請求項15】
請求項14に記載の空調通信方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
室外機や複数台の室内機が通信ケーブルを介して接続されてなる空調システムの通信方式として、従来は、機器の制御・監視を目的とした低速のシリアルデータ通信が行われていた。しかしながら、近年、機器から取得可能な情報に基づく運用の最適化の他、予兆検知等へのIoT(Internet of Things)の活用が取り組まれ、データの通信速度の高速化が望まれている。このような技術に関して、例えば、特許文献1には、低周波伝送データの信号の変化のタイミングを避けて、高周波伝送データを低周波伝送データに重畳させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、前記したように、低周波伝送データの信号の変化のタイミングを避けて、高周波伝送データが低周波伝送データに重畳される。その結果、時間軸上の一部の区間でしか信号の多重化(信号の重畳)がなされないため、信号の多重化に関して、時間的な利用効率をさらに高める余地がある。
【0005】
また、例えば、既設の室外機や室内機の設備更新(リプレース)を行って、通信の高速化を図る場合、既設の室外機や室内機の全てを同時に入れ替えることが困難であるため、設備更新が段階的に行われることが多い。このような場合、既設の室外機や室内機と、新設の室外機や室内機と、が併存するため、シリアルデータ通信に基づく信号と、高速の変復調通信に基づく信号と、が通信線上で干渉し、送信先でデータが適切に受信されない可能性がある。
【0006】
しかも、既設の室内機は天井等の建築物に埋設されているため、信号多重化用の電子部品の設置工事を行う場合、多大な費用・時間がかかる。また、追加の電子部品を電気的に安定動作させるための後付け固定方法も考慮する必要がある。前記した設備更新を段階的に行う場合でも、シリアルデータ通信の信号に変復調通信の信号を適切に多重化させ、通信を効率的に行うことが望まれている。
【0007】
そこで、本発明は、シリアルデータ通信の信号に変復調通信の信号を適切に多重化させることが可能な空調システム等を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した課題を解決するために、本発明は、制御部が、第1空きチャネル検出部によって検出される空きチャネルが、通信線を介してシリアルデータ通信が行われていないことを示すものである場合、シリアルデータ通信に基づく第1テスト信号を送信した後、第1テスト信号の送信を継続しつつ、変復調通信に基づく第2テスト信号を送信し、前記第1テスト信号及び前記第2テスト信号の送信中、受信S/N比検出部によって検出される受信S/N比が所定閾値以上となるように、可変利得送信増幅部における前記利得を設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シリアルデータ通信の信号に変復調通信の信号を適切に多重化させることが可能な空調システム等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る空調システムの構成図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る空調システムにおいて、既設室外機、既設室内機、高速通信室外機、及び高速通信室内機の送信データや受信データの一例を示すタイムチャートである。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る空調システムが備える高速通信室内機の構成図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る空調システムにおいて、可変利得送信増幅器の利得の設定に関するフローチャートである。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る空調システムにおいて、可変利得送信増幅器の利得を設定する処理の一例を示すタイムチャートである。
【
図6】本発明の第1実施形態に係る空調システムにおいて、OFDM通信の変調モード、通信速度、及び所要受信S/N比の対応関係の一例を示す説明図である。
【
図7】本発明の第1実施形態に係る空調システムが備える高速通信室外機の構成図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る空調システムの構成図である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係る空調システムにおいて、通信線の種類と、通信線の断面積と、通信線の長さの上限値Dmaxにおける伝送損失Lmaxと、の関係を示す数値例の説明図である。
【
図10】本発明の第3実施形態に係る空調システムにおいて、可変利得送信増幅器の利得の設定に用いられるAMIテストデータの説明図である。
【
図11】本発明の第4実施形態に係る空調システムにおいて、可変利得送信増幅器の利得の設定に用いられるOFDMテストデータの説明図である。
【
図12】本発明の第5実施形態に係る空調システムにおいて、可変利得送信増幅器の利得の設定に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
≪第1実施形態≫
図1は、第1実施形態に係る空調システム100の構成図である。
空調システム100は、冷房や暖房等の空調を行うシステムであり、ビル等の建物に設置されている。
図1では、既設空調設備Gから高速通信空調設備Hへの設備更新を段階的に行う過程で、既設空調設備Gと高速通信空調設備Hとが併存している状態を図示している。
【0012】
図1に示すように、既設空調設備Gは、一台の既設室外機11と、複数(m台)の既設室内機21~2mと、を備えている。既設室外機11は、図示はしないが、圧縮機、膨張弁、四方弁、室外熱交換器、室外ファン等を備えている。複数の既設室内機21~2mは、図示はしないが、それぞれ、室内熱交換器や室内ファン等を備えている。そして、既設室外機11と、並列接続された複数の既設室内機21~2mと、が冷媒配管(図示せず)を介して接続され、周知の冷凍サイクルで冷媒が循環する一系統の冷媒回路(図示せず)をなしている。
【0013】
図1の例では、既設室外機11及び既設室内機21~2mが、通信線fuを介して、バス接続されている。なお、本実施形態では、既設室外機11及び既設室内機21~2mにおいて、AMI(Alternate Mark Inversion)変調に基づくシリアルデータ通信が行われる例について説明する。前記したシリアルデータ通信とは、通信線fuを介して、1ビットずつ順番にデータを伝送する通信方式である。
【0014】
また、AMI変調とは、“0”,“1”のシリアルデータを1ビットずつ順番に送信する際、“1”が発生するたびに信号の正・負の極性を交互に入れ替える通信方式である。このようなAMI変調として、9.6kb/sで信号を伝送する、いわゆるHBS方式(Home Bus System)を用いるようにしてもよい。
【0015】
図1に示すように、既設室外機11は、シリアルデータ通信を行うためのシリアル通信部11aを備えている。また、既設室内機21~2mについても同様である(符号21a~2ma参照)。既設室外機11は、例えば、既設室内機21~2mに対して、所定のブロードキャストコマンド(各既設室内機21~2mへの報知信号)やユニキャストコマンド(特定の室内機への報知信号)を送信する。既設室内機21~2mは、自分宛てのコマンドに対しては、既設室外機11に所定のレスポンス(応答信号)を送信する。
【0016】
図1の例では、既設室外機11が既設室内機22宛てに所定のユニキャストコマンドを送信し(破線矢印)、既設室内機22が既設室外機11宛てにレスポンスを送信している(一点鎖線)。なお、
図1では省略しているが、前記したユニキャストコマンドやレスポンスは、通信線fu等を介して、宛先以外の他の各機器(例えば、後記する高速通信室内機41)にも達するが、自身が宛先でない場合、それらの機器はコマンド等を無視するようになっている。
【0017】
一方、高速通信空調設備Hは、一台の高速通信室外機31(室外機、通信装置)と、複数(n台)の高速通信室内機41~4n(室内機、通信装置)と、を備えている。高速通信空調設備Hも、既設空調設備Gと同様に、所定の冷媒回路(既設空調設備Gとは別系統の冷媒回路:図示せず)を備えている。
【0018】
図1の例では、高速通信室外機31及び高速通信室内機41~4nが、通信線fvを介して、バス接続されている。また、互いの距離が比較的短い既設室内機2mと高速通信室外機31とが、通信線fwを介して接続されている。つまり、既設室外機11、既設室内機21~2m、高速通信室外機31、及び高速通信室内機41~4nが、各通信線を介して、バス接続されている。これによって、例えば、既設空調設備G及び高速通信空調設備Hのうち一方が所定の管理コンピュータ(図示せず)に接続されていれば、他方も管理コンピュータからのデータを受信できるという利点がある。
【0019】
なお、高速通信室外機31及び高速通信室内機41~4nは、通信方式として、シリアルデータ通信及び変復調通信の両方を行うことができるようになっている。前記した変復調通信として、例えば、高周波搬送波をデジタル変調する直交振幅変調方式(Quadrature Amplitude Modulation:QAM)や直交周波数分割多重方式(Orthogonal Frequency-Division Multiplexing:OFDM)を用いることができるが、これに限定されるものではない。これらの変調方式は、帯域幅当たりの伝送速度が高く、また、IoT(Internet of Things)に適用しやすいといった利点がある。
【0020】
なお、QAM通信やOFDM通信を行う際、例えば、ITU-T G.9903(02/2012) Narrowband otrhogonal frequency division multiplexing power line communication transceiver for G3-PLC networks に準拠し、154kHz~487kHzの周波数帯域で通信を行うにしてもよい。本実施形態では、一例として、高速通信室外機31や高速通信室内機41~4nが、シリアルデータ通信及びOFDM通信の両方を行うことができるものとして説明する。
【0021】
図1に示すように、高速通信室外機31は、シリアルデータ通信を行うためのシリアル通信部31aを備えるとともに、OFDM通信を行うためのOFDM通信部31bも備えている。なお、高速通信室内機41~4nも同様である(符号41a~4na、41b~4nb参照)。
【0022】
高速通信室外機31は、例えば、OFDM通信に基づくブロードキャストコマンドやユニキャストコマンドを、通信線fvを介して高速通信室内機41~4nに送信する。高速通信室内機41~4nは、自分宛てのコマンドに対しては、OFDM通信に基づくレスポンスを高速通信室外機31に送信する。なお、高速通信室外機31や高速通信室内機41~4nが、OFDM通信の他にシリアルデータ通信も行えるようになっている理由については後記する。
【0023】
図2は、既設室外機、既設室内機、高速通信室外機、及び高速通信室内機の送信データや受信データの一例を示すタイムチャートである(適宜、
図1も参照)。
以下の例では、
図2に示す「既設室内機」が、m台のうちの既設室内機21(
図1参照)であり、また、「高速通信室内機」が、n台のうちの高速通信室内機41(
図1参照)であるものとして説明する。
【0024】
図2の例では、既設室外機11から既設室内機21へのコマンドとして、所定のAMI送信データが送信され、既設室内機21では、AMI受信データとして正常に受信されている(時刻t1~t2)。そして、既設室内機21から既設室外機11へのレスポンスとして、所定のAMI送信データが送信され、既設室外機11では、AMI受信データとして正常に受信されている(時刻t3~t4)。この時刻t1~t4の期間では、通信線fu上の信号として、AMI信号(
図2の実線)が2パケット発生している。
【0025】
なお、通信線fuを介して他の機器からAMI信号が伝送されている間は、自身からAMI信号を送信しないように、既設室外機11及び既設室内機21~2mが予め設定されている。これによって、AMI信号が通信線fu上で衝突しないようにしている。
【0026】
また、
図2の例では、高速通信室外機31から高速通信室内機41へのコマンドとして、所定のOFDM送信データが送信され、高速通信室内機41では、OFDM受信データとして正常に受信されている(時刻t5~t6)。そして、高速通信室内機41から高速通信室外機31へのレスポンスとして、所定のOFDM送信データが送信され、高速通信室外機31では、OFDM受信データとして正常に受信されている(時刻t7~t8)。この時刻t5~t8の期間では、通信線上の信号として、OFDM信号(
図2の破線)が2パケット発生している。
【0027】
また、
図2の例では、時刻t9~t11において、高速通信室外機31からのコマンドとして、所定のOFDM送信データが送信されている。さらに、前記したコマンド(OFDM送信データ)の送信開始の直後、時刻t10~t12において、既設室外機11から別のコマンドとして、所定のAMI送信データ送信されている。その結果、時刻t10~t11において、OFDM送信データとAMI送信データとが通信線上で衝突している(
図2の斜線部分)。
【0028】
このような信号の衝突が生じる理由は、既設室外機11や既設室内機21~2mがAMI通信に対応している一方、OFDM通信には対応しておらず、OFDM空きチャネル検出回路(図示せず)を備えていないからである。前記したOFDM空きチャネル検出回路とは、OFDM通信の信号が通信線vを介して伝送されているか否かを検出する回路である。
【0029】
例えば、所定のOFDM信号が、高速通信室外機31から高速通信室内機41に送信された場合、このOFDM信号は、通信線fw,fu(
図1参照)を順次に介して、既設空調設備Gにも伝送される。しかしながら、既設室外機11や既設室内機21~2mは、前記したように、OFDM空きチャネル検出回路(図示せず)を備えていないため、OFDM信号の伝送を検知できない。
【0030】
その結果、OFDM信号が通信線fu等を介して伝送されていても、それを検知できない既設室外機11や既設室内機21~2mからAMI信号が送信されることがある。その結果、前記したように、AMI信号とOFDM信号とが通信線上で衝突する(
図2の時刻t10~t11)。そこで、本実施形態では、このような信号の衝突が生じても通信が適切に行われるように、高速通信室外機31や高速通信室内機41~4nが構成されている。
【0031】
図3は、空調システムが備える高速通信室内機41の構成図である。
図3に示すように、高速通信室内機41は、前記したOFDM通信部41b(
図1参照)に含まれる構成として、制御部1と、OFDM通信モデム2(変復調通信部)と、可変利得送信増幅器3(可変利得送信増幅部)と、OFDM受信回路4と、OFDM空きチャネル検出器5(第2空きチャネル検出部)と、記憶部6と、を備えている。
【0032】
また、高速通信室内機41は、前記したシリアル通信部41a(
図1参照)に含まれる構成として、制御部1と、AMIデータ通信回路7(シリアルデータ通信部)と、AMI送信回路8と、AMI受信回路9と、AMI空きチャネル検出器10(第1空きチャネル検出部)と、記憶部6と、を備えている。なお、制御部1及び記憶部6は、
図1のシリアル通信部41aに含まれるとともに、OFDM通信部41bにも含まれている。
【0033】
制御部1は、図示はしないが、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、各種インタフェース等の電子回路を含んで構成されている。そして、ROMに記憶されたプログラムを読み出してRAMに展開し、CPUが各種処理を実行するようになっている。
【0034】
制御部1は、AMIデータ通信回路7との間でデータを入出力するとともに、OFDM通信モデム2との間でデータを入出力する。例えば、制御部1は、所定のプログラムに基づいて、OFDM送信データを生成する。このOFDM送信データは、後記する可変利得送信増幅器3の利得を設定する際のテストデータとして送信されることもあり、また、空調運転中の制御信号等として送信されることもある。
【0035】
また、制御部1は、所定のプログラムに基づいて、AIM送信データを生成する。このAIM送信データは、主として、後記する可変利得送信増幅器3の利得の設定を行う際のテストデータとして送信される。
また、制御部1は、OFDM通信モデム2やOFDM空きチャネル検出器5の他、AMIデータ通信回路7やAMI空きチャネル検出器10との間で所定のデータをやり取りする。このようなデータのやり取りに関して、まず、OFDM通信モデム2へのOFDM送信データの出力について説明し、残りの各信号の入出力については順を追って説明する。
【0036】
制御部1は、前記したように、自身が生成したOFDM送信データをOFDM通信モデム2に出力する。OFDM通信モデム2は、OFDM通信(変復調通信)の搬送信号を変復調する。すなわち、OFDM通信モデム2は、制御部1から入力されるOFDM送信データを所定に変調してOFDM高周波信号とし、このOFDM高周波信号を可変利得送信増幅器3に差動出力する。
【0037】
可変利得送信増幅器3は、OFDM通信モデム2の出力信号を所定の利得に基づいて増幅する。すなわち、可変利得送信増幅器3は、OFDM通信モデム2から入力されるOFDM高周波信号を所定の利得に基づいて差動増幅する。そして、可変利得送信増幅器3は、差動増幅後の信号をP極の通信線fvp、及びN極の通信線fvnに差動出力する。なお、可変利得送信増幅器3の出力側のコンデンサCa,Cbは、ノイズ除去用のフィルタとして用いられる。
【0038】
OFDM受信回路4は、通信線fvp,fvnからの差動信号を受信して増幅し、増幅後の差動信号をOFDM通信モデム2に出力するとともに、後記するOFDM空きチャネル検出器5にも出力する。
【0039】
OFDM通信モデム2は、OFDM受信回路4から入力される差動信号を復調し、復調後の差動信号を、OFDM受信データとして制御部1に出力する。また、OFDM通信モデム2は、受信S/N比検出器2a(受信S/N比検出部)を備えている。この受信S/N比検出器2aは、OFDM通信(変復調通信)の受信S/N比を検出するものである。すなわち、受信S/N比検出器2aは、OFDM受信回路4を介して受信される信号の受信S/N比を検出する。
【0040】
次に、他の構成について順を追って説明しつつ、電源投入後に高速通信室内機41で行われる信号の利得の設定についても説明する。
OFDM空きチャネル検出器5は、OFDM通信(変復調通信)の空きチャネルを検出する。前記したように、OFDM通信の「空きチャネル」とは、通信線fvを介してOFDM通信(変復調通信)の信号が伝送されているか否かを示すものである。すなわち、OFDM空きチャネル検出器5は、OFDM受信回路4から自身に入力される差動信号に所定のOFDM信号が含まれているか否かを検出する。
【0041】
OFDM受信回路4からの差動信号にOFDM信号が含まれている場合、OFDM空きチャネル検出器5は、“Busy”を示す信号をOFDM空きチャネルとして制御部1に出力する。なお、高速通信室内機41がOFDM信号を送信していない状態で、OFDM空きチャネルが“Busy”である場合には、高速通信室外機31又は他の高速通信室内機42~4nからのOFDM信号が、通信線fvを介して伝送されている。このような場合、OFDM信号同士の衝突が起きないように、制御部1は、OFDM通信モデム2へのOFDM送信データの出力を控える。
【0042】
一方、OFDM受信回路4からの差動信号にOFDM信号が含まれていない場合、OFDM空きチャネル検出器5は、“Empty”を示す信号をOFDM空きチャネルとして制御部1に出力する。このようにOFDM空きチャネルが“Empty”である場合、その時点では、通信線fvを介したOFDM信号の伝送は行われていない。したがって、制御部1は、OFDM空きチャネルが“Empty”であるときには、OFDM送信データの出力を適宜に行う。
【0043】
図3に示すAMIデータ通信回路7は、シリアルデータ通信を行う回路である。すなわち、AMIデータ通信回路7は、既設室外機11や既設室内機21~2mと同様のAMI通信に対応しており、AMI符号化や復号を行う。具体的には、後記するテストデータとして、所定のAIM送信データが制御部1から入力された場合、AMIデータ通信回路7は、AIM送信データをAMI符号化し、AMI符号化後の信号をAMI送信回路8に出力する。
【0044】
ちなみに、
図3では、高速通信室内機41に接続される通信線fvとして、P極の通信線fvp、及びN極の通信線fvnを便宜的に図示しているが、OFDM通信モデム2及びAMIデータ通信回路7における差動入出力の通信線への接続は、いずれも無極性である。
【0045】
図3に示すAMI送信回路8は、AMIデータ通信回路7から入力されるAMI信号を差動増幅し、差動増幅後のAMI信号を通信線fvp,fvnに差動出力する。なお、AMI送信回路8の出力側のコンデンサCc,Cdは、ノイズ除去用のフィルタとして用いられる。
AMI受信回路9は、通信線fvp,fvnを介して入力される差動信号を受信して増幅し、増幅後の差動信号をAMI送信回路8に出力するとともに、後記するAMI空きチャネル検出器10にも出力する。
【0046】
AMIデータ通信回路7は、AMI受信回路9から入力される差動信号を復号し、復号後の信号をAMI受信データとして制御部1に出力する。
AMI空きチャネル検出器10は、シリアルデータ通信の空きチャネルを検出する。すなわち、AMI空きチャネル検出器10は、AMI受信回路9から自身に入力される差動信号に所定のAMI信号が含まれているか否かを検出する。なお、シリアルデータ通信の「空きチャネル」とは、通信線fvを介してシリアルデータ通信の信号が伝送されているか否かを示すものである。
【0047】
AMI受信回路9からの差動信号にAMI信号が含まれている場合、AMI空きチャネル検出器10は、“Busy”を示す信号をAMI空きチャネルとして制御部1に出力する。このようにAMI空きチャネルが“Busy”である間は、他の機器からのAMI信号が通信線fvを介して伝送されている。したがって、AMI空きチャネルが“Busy”である間は、AMI信号同士の衝突が起きないように、制御部1は、AMIデータ通信回路7へのAMI送信データの出力を控える。
【0048】
一方、AMI受信回路9からの差動信号にAMI信号が含まれていない場合、AMI空きチャネル検出器10は、“Empty”を示す信号をAMI空きチャネルとして制御部1に出力する。このようにAMI空きチャネルが“Empty”である場合、その時点では、通信線fvを介したAMI信号の伝送が行われていない。したがって、制御部1は、AMI空きチャネルが“Empty”であるときには、AMI送信データの出力を適宜に行う。
【0049】
図4は、可変利得送信増幅器3の利得の設定に関するフローチャートである(適宜、
図3を参照)。
なお、電源の投入をトリガとして、
図4に示す一連の処理が開始されるようにしてもよい。ステップS101において、高速通信室内機41の制御部1は、AMI空きチャネルが“Empty”であるか否かを判定する。AMI空きチャネルが“Empty”ではなく、“Busy”である場合(S101:No)、制御部1の処理はステップS101に戻る。この場合、通信線fvを介してAMI信号が伝送されている最中だからである。
【0050】
一方、ステップS101においてAMI空きチャネルが“Empty”である場合(S101:Yes)、制御部1の処理はステップS102に進む。言い換えると、AMI空きチャネル検出器10(第1空きチャネル検出部)によって検出される空きチャネルが、通信線fvを介してシリアルデータ通信が行われていないことを示すものである場合(S101:Yes)、制御部1の処理はステップS102に進む。
【0051】
ステップS102において制御部1は、AMI送信データ(
図3参照)として、AMIテストデータを送信する。本実施形態では、このAMIテストデータと、後記するOFDMテストデータと、を敢えて衝突させた状態で、可変利得送信増幅器3の利得を設定するようにしている。
【0052】
前記したように、既設室外機11(
図1参照)や既設室内機21~2m(
図1参照)は、OFDM信号を検知できない一方、AMI信号を検知することはできる。したがって、高速通信室内機41からAMIテストデータが送信されている間は、既設室外機11や既設室内機21~2mからAMI信号が送信されるおそれはない。また、高速通信室外機31や他の高速通信室内機42~4nからAMI送信データが出力されるおそれもない。したがって、ステップS102のAMIテストデータは、高速通信室内機41からのAMIテストデータによって、通信線fu,fv,fw(
図1参照)を占有する機能も有している。
【0053】
このようにAMIテストデータを送信した後、ステップS103において制御部1は、OFDM送信データ(
図3参照)として、OFDMテストデータを送信する。より詳しく説明すると、制御部1は、AMIデータ通信回路7(シリアルデータ通信部)を介して、シリアルデータ通信に基づくAMIテストデータ(第1テスト信号)を送信した後、このAMIテストデータの送信を継続しつつ、OFDM通信モデム2(変復調通信部)を介して、変復調通信に基づくOFDMテストデータ(第2テスト信号)を送信する(S102、S103:送信ステップ)。これによって、通信線fu,fv,fw(
図1参照)上で、AMIテストデータとOFDMテストデータとが衝突する。
【0054】
ステップS104において制御部1は、OFDM受信S/N比を検出する。より詳しく説明すると、制御部1は、AMIテストデータの送信(S102)、及び、OFDMテストデータの送信(S103)を継続しつつ、OFDM通信モデム2の受信S/N比検出器2aから入力されるOFDM受信S/N比を読み込む。
【0055】
ステップS105において制御部1は、ステップS104で検出したOFDM受信S/N比が所定閾値以上であるか否かを判定する。前記した所定閾値は、OFDM信号とAMI信号とが通信線fu,fv,fw(
図1参照)上で衝突しても、送信先でOFDM信号が適切に受信されるか否かの判定基準となる閾値であり、予め設定されている。
【0056】
ステップS105において、OFDM受信S/N比が所定閾値以上である場合(S105:Yes)、制御部1の処理は、後記するステップS107に進む。一方、ステップS105において、OFDM受信S/N比が所定閾値未満である場合(S105:No)、制御部1の処理はステップS106に進む。
ステップS106において制御部1は、可変利得送信増幅器3の利得を増加させる。なお、ステップS106における利得の増加幅は、予め設定されている。ステップS106の処理を行った後、制御部1の処理はステップS105に戻る。
【0057】
ちなみに、ステップS104の他、ステップS105,S106の処理中も、制御部1は、AMIテストデータの送信(S102)、及び、OFDMテストデータの送信(S103)を継続している。つまり、制御部1は、AMIテストデータ及びOFDMテストデータが通信線fu,fv,fw(
図1参照)上で衝突している状態で、OFDM受信S/Nが所定閾値以上となるように(S105:Yes)、可変利得送信増幅器3の利得を段階的に増加させる(S106)。
【0058】
ステップS105において、OFDM受信S/N比が所定閾値以上である場合(S105:Yes)、制御部1の処理は、ステップS107に進む。
ステップS107において制御部1は、可変利得送信増幅器3の利得を現状の値で設定し、利得の設定に関する一連の処理を終了する(END)。このように、制御部1は、AMIテストデータ(第1テスト信号)及びOFDMテストデータ(第2テスト信号)の送信中(S102,S103)、受信S/N比検出器2a(受信S/N比検出部)によって検出される受信S/N比が所定閾値以上となるように、可変利得送信増幅器3(可変利得送信増幅部)における利得を設定する(S105~S107:利得設定ステップ)。
【0059】
これによって、例えば、空調運転中、高速通信室外機31(
図1参照)から高速通信室内機41に所定のOFDM信号が送信された直後に、既設室外機11(
図1参照)からAMI信号が送信され、両者(OFDM信号・AMI信号)が通信線上で衝突しても(
図2の時刻t10~t11)、高速通信室内機41においてOFDM信号が適切に受信される。
【0060】
なお、制御部1が、電源投入の直後に利得の設定等(S101~S107)を行い、空調運転中、設定後の利得(
図4のS107)に基づいて、OFDM通信(変復調通信)を行うようにしてもよい。例えば、制御部1は、前記した利得の設定後の空調運転中、AMI空きチャネル検出器10(第1空きチャネル検出部)によって検出される空きチャネルが、通信線を介してシリアルデータ通信が行われていることを示すものであっても、設定後の利得に基づいて、所定のOFDM通信(変復調通信)を行う。前記したように利得が所定に設定されるため(S107)、通信線fv上でAMI信号とOFDM信号とが衝突しても、OFDM受信S/N比として所定閾値以上(S105)の値が確保される。
【0061】
また、制御部1は、前記した利得の設定後(S107)の空調運転中、他の機器(例えば、既設室外機11:
図1参照)から受信するシリアルデータ通信の信号の値が変化するタイミングにおいても、設定後の利得に基づいて、所定のOFDM通信(変復調通信)を行う。これによって、時間的に高効率でOFDM通信を行うことができる。
【0062】
その他、空調運転中、OFDM空きチャネル検出器5(第2空きチャネル検出部)によって検出される空きチャネルが、通信線fv等を介してOFDM通信(変復調通信)が行われていないことを示すものである場合、制御部1は、設定後の利得(
図4のS107)に基づいて、所定のOFDM通信を行う。これによって、OFDM信号同士の衝突を回避し、通信の信頼性を高めることができる。
【0063】
図5は、可変利得送信増幅器3の利得を設定する処理の一例を示すタイムチャートである(適宜、
図3、
図4を参照)。
なお、
図5の各横軸は時刻である。また、
図5の縦軸には、高速通信室内機41で送受信される複数の信号を示している。また、
図5に示す時刻t21の直前に電源が投入されたものとする。電源投入時において、可変利得送信増幅器3の利得は、所定の初期値に設定される。
【0064】
図5に示すように、時刻t21の直前には、AMI空きチャネルが“Empty”になっている(
図4のS101:Yes)。したがって、時刻t21において制御部1は、AMI通信に基づく信号で通信線fu,fv,fw(
図1参照)を占有するために、まず、AMI送信データとして、所定のAMIテストデータを送信する(
図4のS102)。
【0065】
そして、AMIテストデータの送信を継続しつつ、時刻t22において制御部1は、OFDM送信データとして、所定のOFDMテストデータを送信する(
図4のS103)。そうすると、通信線fv等では、
図3の一点鎖線の矢印で示すAMIテスト信号(“HLink”)と、破線矢印で示すOFDMテスト信号と、が衝突する(時刻t22~t24)。この衝突中、OFDM受信回路4で受信されるOFDM信号は、受信S/N比検出器2aに出力される。そして、受信S/N比検出器2aによって検出されたOFDM受信S/N比が制御部1に出力される(
図4のS104)。
【0066】
制御部1は、前記したOFDM受信S/N比が、例えば、所定閾値である5.0[dB]以上であるか否かを判定する(
図4のS105)。
図5の例では、時刻t22~t23において、AMI信号及びOFDM信号の衝突中におけるOFDM受信S/N比が3.0[dB]であり、所定閾値である5.0[dB]未満となっている(
図4のS105:No)。したがって、制御部1は、可変利得送信増幅器3の利得を所定に増加させる(
図4のS106)。
【0067】
その結果、通信線上のOFDM信号がさらに増幅され(時刻t23~t24)、それに伴って、OFDM受信S/N比が6.0[dB]になっている。したがって、制御部1は、OFDM受信S/N比が5.0[dB]以上になっていると判定し(
図4のS105:Yes)、可変利得送信増幅器3の利得を現状の値(初期値+3dB)に設定する(
図4のS107)。これによって、その後の空調運転中、通信線fv等においてAMI信号とOFDM信号とが衝突しても、ビット誤りが発生することなく、送信先でOFDM信号が適切に受信される。
【0068】
そして、前記したように可変利得送信増幅器3の利得を設定した後、制御部1は、OFDMテストデータ及びAMIテストデータの出力を順次に終了させる(時刻t24,t25)。その後、
図5では図示していないが、制御部1は、空調制御を行うためのOFDM信号を適宜に入出力する。
【0069】
図6は、OFDM通信の変調モード、通信速度、及び所要受信S/N比の対応関係の一例を示す説明図である。
OFDM通信では、複数の変調モードに対応して、通信速度の他、所要受信S/N比が予め設定されている。なお、所要受信S/N比とは、AMI信号と、所定の変調モードに基づくOFDM信号と、が通信線fv等で衝突した場合でも、OFDM信号が送信先で適切に受信されるように予め設定された受信S/N比である。
【0070】
例えば、BPSK(Binary Phase Shift Keying)という変調モードでは、通信速度が94[kb/s]であり、所要受信S/N比が2.0[dB]になっている。その他にも、OFDM通信においては、QPSK(Quarter Phase Shift Keying)や8PSK(8 Phase Shift Keying)の他、16QAM(16 Quadrature Amplitude Modulation)といった変調モードもある。
【0071】
なお、
図4のステップS105で用いる「所定閾値」として、前記した所要受信S/N比そのものを用いてもよいし、また、所要受信S/N比よりも余裕のある大きな所定の値を用いるようにしてもよい。
【0072】
このように、複数の所要受信S/N比が、OFDM通信(変復調通信)における複数の変調モードに一対一で予め対応付けられている。そして、制御部1は、OFDM通信における現状の変調モードに対応する所要受信S/N比に基づいて、OFDM受信S/N比の所定閾値(S105)を設定する。これによって、さまざまな変調モードに対応して、適切に通信を行うことができる。
【0073】
なお、残りの高速通信室内機42~4n(
図1参照)の構成や処理も、前記した高速通信室内機41(
図3~
図6)と同様である。次に、高速通信室外機31の構成等について、
図7を用いて簡単に説明する。
【0074】
図7は、空調システムが備える高速通信室外機31の構成図である。
なお、
図7に示す高速通信室外機31の各構成に付した符号は、説明の便宜上、高速通信室内機41(
図3参照)のものと同一にしている。
図7に示すように、通信に関する構成としては、高速通信室外機31も高速通信室内機41(
図3参照)と同様の構成を備えている。また、高速通信室外機31が実行する処理についても、高速通信室内機41の処理(
図4~
図6)と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0075】
<効果>
第1実施形態によれば、通信線fv等においてAMIテストデータとOFDMテストデータとを衝突させた状態で(
図4のS101~S103)、OFDM受信S/N比が所定閾値以上となるように、可変利得送信増幅器3の利得が調整される(
図4のS104~S107)。これによって、例えば、高速通信室外機31からOFDM信号が送信されているとき、既設室外機11(
図1参照)からAMI信号が送信されて、OFDM信号とAMI信号が通信線fv等で衝突しても、OFDM信号が送信先で適切に受信される。
【0076】
また、AMI信号の符号が変化するタイミングでも、OFDM信号の送受信を継続できるため、これまでよりもOFDM通信の単位時間当たりの利用率を高めることができる。このように、第1実施形態によれば、シリアルデータ通信の信号に変復調通信の信号を多重化させることが可能な空調システム100を提供できる。
【0077】
また、第1実施形態によれば、ビルの天井や壁に既に設置されている既設室外機11や既設室内機21~2mに、OFDM空きチャネル検出回路を追加するといった工事が不要である。したがって、空調システム100の設備更新の際のコストを削減できる。
【0078】
≪第2実施形態≫
第2実施形態(
図8参照)は、高速通信室外機31の配置が異なっている点が、第1実施形態(
図1参照)とは異なっている。また、第2実施形態は、通信線fu,fv,fr,fsの長さに基づいて、OFDM受信S/N比の所定閾値が設定される点が、第1実施形態とは異なっている。なお、その他の点(高速通信室外機31や高速通信室内機41~4nの構成等:
図3、
図4、
図7参照)については、第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態とは異なる部分について説明し、重複する部分については説明を省略する。
【0079】
図8は、第2実施形態に係る空調システム100Aの構成図である(適宜、
図7も参照)。
図8の例では、空調システム100Aの設備更新を段階的に行う過程で、高速通信室外機31が、既設室外機11や既設室内機21~2mを挟んで、高速通信室内機41~4nから離れた場所に設置されている。
図8に示すように、高速通信室外機31は、通信線frを介して、既設室外機11に接続されている。また、既設空調設備Gに最も近い位置に配置された高速通信室内機41は、通信線fsを介して、既設室内機2mに接続されている。つまり、高速通信室外機31、既設室外機11、既設室内機21~2m、及び高速通信室内機41~4nが順次に、各通信線を介してバス接続されている。
【0080】
このような接続形態では、高速通信室外機31と、この高速通信室外機31に対して最も離れている高速通信室内機4nと、の通信線の長さの全長(
図8に示す長さD1)が比較的長くなることがある。なお、空調システム100Aの通信線の長さとして許容される上限値Dmaxが、予め定められている。さらに、前記した上限値Dmaxの長さの通信線に関して、OFDM通信の所定帯域における信号の伝送損失Lmax[dB]が予め測定され、高速通信室外機31や高速通信室内機41~4nの記憶部6に格納されている。
【0081】
図9は、通信線の種類と、通信線の断面積と、通信線の長さの上限値Dmaxにおける伝送損失Lmaxと、の関係を示す数値例の説明図である。
図9に示すように、通信線の種類や断面積によって、通信線の長さの上限値Dmaxにおける伝送損失Lmaxの大きさが異なっている。
【0082】
例えば、通信線として、断面積が0.75mm
2である2芯線のケーブルを用いる場合、伝送損失Lmaxの大きさは2.5[dB]である。
図8の構成を例に説明すると、通信線の長さD1が上限値Dmaxに等しい場合、高速通信室外機31から最も離れている高速通信室内機4nにOFDM信号が伝送される場合、通信線fr,fu,fs,fvにおいて、約2.5[dB]の伝送損失(信号減衰量)が生じる。
【0083】
第2実施形態では、このような伝送損失に基づいて、高速通信室外機31の制御部1(
図7参照)が、
図4のS105の判定処理に用いる所定閾値を設定するようにしている。すなわち、制御部1は、OFDM受信S/N比に関する所定閾値を、以下の式(1)に基づいて設定する。
【0084】
受信S/N比の所定閾値=所要受信S/N比+伝送損失Lmax ・・・(1)
【0085】
例えば、通信線fr,fu,fsとして、断面積が0.75mm
2である2芯線のケーブルを用い、さらに、通信モードとしてQPSKを用いる場合、制御部1は、電源投入後に次のような処理を行う。すなわち、制御部1は、式(1)に基づき、所要受信S/N比である5.0[dB]と、伝送損失Lmaxである2.5[dB]と、の和をとって、OFDM受信S/N比の所定閾値(
図4のS105)を7.5[dB]に設定する。そして、制御部1は、この7.5[dB]という所定閾値に基づいて、可変利得送信増幅器3での利得の設定を行う(
図4参照)。
【0086】
これによって、例えば、高速通信室外機31(
図3参照)から高速通信室内機4n(
図8参照)にOFDM信号が伝送される過程で所定の伝送損失が生じても、受信側の高速通信室内機4nでは、OFDM受信S/N比として、5.0dB(
図6の所要受信S/N比)以上の値を確保できる。
【0087】
このように、制御部1は、変復調通信における現状の変調モードに対応する所要受信S/N比(
図6参照)に所定の伝送損失(信号減衰量)を加算した値に基づいて、OFDM受信S/N比に関する所定閾値(
図4のS105)を設定する。前記した所定の伝送損失(信号減衰量)は、通信線の長さが所定の上限値である場合での通信線における変復調通信の伝送損失である。なお、高速通信室外機31の他、それぞれの高速通信室内機41~4nにおいても同様の処理が行われる。
【0088】
<効果>
第2実施形態によれば、通信線fu,fv,fr,fsの長さに基づいて、OFDM受信S/N比の所定閾値(
図4のS105)が設定される。したがって、高速通信室外機31と高速通信内機4nとを接続する通信線fu,fv,fr,fsの全長が比較的長い場合でも、OFDM通信を適切に行うことができる。
【0089】
≪第3実施形態≫
第3実施形態は、可変利得送信増幅器3の利得を設定する際のAMIテストデータ(第1テスト信号)にPN符号(疑似ランダム雑音信号)が含まれている点が、第1実施形態とは異なっている。なお、その他の点(高速通信室外機31や高速通信室内機41~4nの構成等:
図3、
図4、
図7参照)については、第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態とは異なる部分について説明し、重複する部分については説明を省略する。
【0090】
図10は、可変利得送信増幅器3の利得の設定に用いられるAMIテストデータの説明図である(適宜、
図3を参照)。
図10に示すように、AMIテストデータにおいて、宛先ユニットアドレス、発信元ユニットアドレス、及び、複数のPN符号が順次に配列されている。なお、宛先ユニットアドレスや発信元ユニットアドレスの他、複数のPN符号の各データの前には、所定のスタートビット(ST)が挿入され、各データの末尾には所定のストップビット(SP)が挿入されている。
【0091】
図10に示す符号列のうち、3バイト目以後のPN符号(Psuedo random Noise bit sequence)は、AMIテストデータをOFDMテストデータと衝突させる際、信号スペクトラムを拡散させるために用いられる疑似ランダム信号である。なお、複数のPN符号が、全体として連続するPN符号系列(例えば、PN15段の2
15-1ビット長)をなすようにしてもよい。
【0092】
このようなAMIテストデータは、例えば、制御部1(
図3参照)に内蔵された調歩同期回路(スタートストップビット同期回路ともいう:図示せず)によって生成される。そして、可変利得送信増幅器3の利得を設定する際には、
図10に示すAMIテストデータが、AMIデータ通信回路7(
図3参照)を介して送信される。なお、AMIテストデータの生成は、高速通信室内機41~4nの他、高速通信室外機31においても同様に行われる。
【0093】
<効果>
第3実施形態によれば、AMIテストデータにPN符号を含めることで、信号スペクトラムが拡散し、OFDM周波数帯域に干渉する高調波レベルを平均化できる。したがって、受信S/N比検出器2a(
図3参照)において、第1実施形態よりもOFDM受信S/N比を高精度に検出できる。
【0094】
≪第4実施形態≫
第4実施形態は、OFDM受信S/N比が所定閾値以上になった後、OFDM信号の送信時・受信時において所定のユニークワードが一致しているかを制御部1が確認する点が、第1実施形態とは異なっている。なお、その他の点(高速通信室外機31や高速通信室内機41~4nの構成等:
図3、
図4、
図7参照)については、第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態とは異なる部分について説明し、重複する部分については説明を省略する。
【0095】
図11は、可変利得送信増幅器3の利得の設定に用いられるOFDMテストデータの説明図である(適宜、
図3を参照)。
図11に示すように、OFDMテストデータは、ヘッダと、このヘッダに続くペイロードと、を含んでいる。ヘッダは、所定のプリアンブル、宛先ユニットアドレス、発信元ユニットアドレス、変調モード、及びペイロードサイズを示すデータが順次に配列されている。
【0096】
図11に示すように、ペイロードは、複数のユニークワード(Unique Word:UW)を含んでいる。なお、ユニークワードとは、OFDMテスト信号の送信側・受信側(
図3の構成では、いずれも制御部1)において既知である固定パターンの信号である。それぞれのユニークワードは、個別識別符号や同期用信号に用いられる情報を含んでおり、そのビット長は、例えば、32ビット~128ビットである。このように第4実施形態では、制御部1が、OFDMテストデータ(第2テスト信号)に所定のユニークワードを含めるようにしている。
【0097】
そして、高速通信室内機41の制御部1は、可変利得送信増幅器3の利得の設定に関して、次の処理を実行する。すなわち、AMIテストデータ(第1テスト信号)及びOFDMテストデータ(第2テスト信号)の送信中、受信S/N比検出器2a(受信S/N比検出部)によって検出される受信S/N比が所定閾値以上になった場合において(
図4のS105:Yes)、前記した送信中にOFDM通信モデム2(変復調通信部)で受信した信号に含まれるユニークワードが、OFDMテストデータに含まれていた所定のユニークワードに一致しているとき、制御部1は、現状の利得を維持する。
【0098】
一方、ユニークワードに一致していない場合、制御部1は、利得の設定を再び行う。例えば、制御部1は、可変利得送信増幅器3の利得をさらに増加させ、AMIテストデータとOFDMテストデータとを再び衝突させる処理を、ユニークワードが一致するまで繰り返す。なお、前記した処理は、他の高速通信室内機42~4n(
図1参照)の他、高速通信室外機31(
図1参照)においても実行される。
【0099】
<効果>
第4実施形態によれば、ユニークワードが一致していることに基づき、AMI信号とOFDM信号とが衝突してもビット誤りが生じていないことを制御部1が確認できる。これによって、制御部1は、可変利得送信増幅器3の利得を適切な値に設定できるため、空調運転時の通信に関する信頼性をさらに高めることができる。
【0100】
≪第5実施形態≫
第5実施形態は、可変利得送信増幅器3の利得の設定後、制御部1が、シリアルデータ通信を行う他の機器(例えば、既設室外機11)に問合せ信号を送信し、その後に応答信号を受信できることを確認する点が、第1実施形態とは異なっている。なお、その他の点(高速通信室外機31や高速通信室内機41~4nの構成等:
図3、
図7参照)については、第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態とは異なる部分について説明し、重複する部分については説明を省略する。
【0101】
図12は、可変利得送信増幅器3の利得の設定に関するフローチャートである(適宜、
図3を参照)。
なお、
図12において、第1実施形態で説明した
図4と同様の処理(S101~S107)には、同一のステップ番号を付している。
ステップS107において可変利得送信増幅器3の利得を設定した後、ステップS108において、高速通信室内機41の制御部1は、AMIデータ通信回路7を介して、AMI通信に基づく問合せ信号(確認要求信号ともいう)を送信する。すなわち、制御部1は、可変利得送信増幅器3における利得の設定後、通信線fv等を介してシリアルデータ通信を行う他の機器(例えば、既設室外機11:
図1参照)に、シリアルデータ通信に基づく所定の問合せ信号を送信する。この問合せ信号には、所定の送信先アドレスの他に、高速通信室内機41自身のアドレスも含まれている。
【0102】
なお、問合せ信号の送信先は、AMI通信が可能な他の機器であれば、特に限定されず、既設室外機11(
図1参照)の他、既設室内機21~2mや高速通信室外機31、高速通信室内機42~4mであってもよい。
【0103】
このように問合せ信号を送信した後、ステップS109において制御部1は、OFDMテストデータを送信する。すなわち、制御部1は、問合せ信号の送信(S108)を継続しつつ、OFDM通信モデム2(変復調通信部)を介して、OFDM通信(変復調通信)に基づくOFDMテストデータを送信する(S109)。これによって、AMI通信の問合せ信号と、OFDMテストデータと、が通信線fv等において衝突する。仮に、前記した衝突があっても、問合せ信号の送信先である既設室外機11において問合せ信号が正常に受信された場合、この既設室外機11からは、高速通信室内機41のアドレスを指定して、ACK信号が送信される。
【0104】
ステップS110において制御部1は、問合せ信号に対する応答信号を正常に受信したか(つまり、ACK信号を受信したか)否かを判定する。ステップS110において応答信号を正常に受信した場合(S110:Yes)、制御部1の処理はステップS111に進む。このような応答信号を受信することで、通信線fv等においてAMI信号とOFDM信号とが衝突した場合でも、OFDM通信の他、AMI通信も適切に行われていることを制御部1が確認できる。つまり、ステップS107で設定した可変利得送信増幅器3の利得が適切であったことを制御部1が確認できる。
【0105】
ステップS111において制御部1は、可変利得送信増幅器3の利得を現状の値で維持し、一連の処理を終了する(END)。すなわち、問合せ信号の送信先である機器(例えば、既設室外機11)から応答信号を正常に受信した場合(S110:Yes)、制御部1は、可変利得送信増幅器3の利得として、現状の値を維持する(S111)。一方、ステップS110において応答信号を正常に受信できなかった場合(S110:No)、制御部1の処理はステップS112に進む。
【0106】
ステップS112において制御部1は、可変利得送信増幅器3の利得の増加等を実行する。なお、ステップS110においてNACK信号を受信した場合には、ステップS112において利得の増加等を行うことなく、ステップS108の処理に戻って、制御部1が問合せ信号の送信を再び行うようにしてもよい。
【0107】
<効果>
第5実施形態によれば、AMI通信の問合せ信号に対する応答信号を正常に受信できたか否かに基づいて(S110)、可変利得送信増幅器3の利得が適切であったか否かを制御部1が確認できる。これによって、AMI信号とOFDM信号とが通信線fv等で衝突しても、OFDM通信の他に、AMI通信もビット誤りなく正常に行われることを制御部1が確認できる。したがって、第5実施形態によれば、通信に関する信頼性をさらに高めることができる。
【0108】
≪変形例≫
以上、本発明に係る空調システム100等について各実施形態で説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、各実施形態では、電源が投入されるたびに、可変利得送信増幅器3(
図3参照)の利得を設定する処理(
図4参照)が行われる場合について説明したが、これに限らない。すなわち、可変利得送信増幅器3の利得を試運転段階で制御部1が設定し、設定後の利得を記憶部6(不揮発性メモリ)に格納するようにしてもよい。そして、電源が投入された場合、制御部1は、記憶部6から読みだした所定の利得に基づいて、可変利得送信増幅器3を制御する。
【0109】
また、各実施形態で説明した各通信線として、電力線を用いるようにしてもよい。また、各通信線の接続形態は、バス型に限定されず、スター型といった他の接続形態であってもよい。
【0110】
また、各実施形態は、HBS(AMI)方式のシリアルデータ通信の他、RS-485といった他の方式のシリアルデータ通信にも適用可能である。また、各実施形態は、G3-PLCに基づく変復調通信の他、IEEE1901に準拠しているHD-PLCといった他の変復調通信にも適用可能である。
【0111】
また、各実施形態では、高速通信室内機41(
図3参照)の受信S/N比検出器2aがOFDM通信モデム2に含まれている構成について説明したが、これに限らない。すなわち、OFDM通信モデム2とは別に受信S/N比検出器(図示せず)が設けられていてもよい。なお、高速通信室外機31や他の高速通信室内機42~4nやについても同様のことがいえる。
【0112】
また、第3実施形態では、AMIテストデータ(第1テスト信号)にPN符号(疑似ランダム雑音信号)を含める例について説明したが、これに限らない。例えば、制御部1が、AMIテストデータ(第1テスト信号)に代えて、OFDMテストデータ(第2テスト信号)にPN符号(疑似ランダム雑音符号)を含めるようにしてもよい。これによって、OFDM受信S/N比を高精度に検出できる。また、なお、第1テスト信号とともに、第2テスト信号にもPN符号(疑似ランダム雑音符号)を含めるようにしてもよい。
【0113】
また、各実施形態で説明した高速通信室内機41や高速通信室外機31の通信に関する構成(
図3、
図7参照)と同様の構成を備える通信装置を設けるようにしてもよい。前記した通信装置は、高速通信室内機41~4n(
図1参照)や高速通信室外機31に内蔵されていてもよいし、また、高速通信室内機41~4nや高速通信室外機31とは別個に設けられていてもよい。すなわち、高速通信室外機31(室外機)と複数の高速通信室内機41~4n(室内機)とが通信線fv等を介して接続される空調システム100に適用されて、少なくとも高速通信室外機31と複数の高速通信室内機41~4nとの間での通信を行う通信装置であって、前記した通信装置が、例えば、
図3の高速通信室内機41と同様の構成を備えるようにしてもよい。この通信装置が実行する処理については、各実施形態(
図4等)と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0114】
また、各実施形態では、空調システム100の設備更新が段階的に行われる場合について説明したが、これに限らない。例えば、既設室外機11及び既設室内機21~2mに、高速通信室外機31及び高速通信室内機41~4nが増設される場合にも、各実施形態を適用できる。
また、各実施形態で説明した空調システムは、ビル用マルチエアコン(Variable Refrigerant Flow:VRF)の他、様々な種類の空調システムに適用可能である。
【0115】
また、各実施形態で説明した空調通信方法をコンピュータに実行させるための所定のプログラムの他、データベース、ファイル等の情報は、メモリやハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置や、IC(Integrated Circuit)カード、SDカード、DVD(Digital Versatile Disc)等の記録媒体に格納することも可能である。
【0116】
また、各実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に記載したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、前記した機構や構成は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての機構や構成を示しているとは限らない。
【符号の説明】
【0117】
100,100A 空調システム
11 既設室外機
21,22,・・・,2m 既設室内機
31 高速通信室外機(室外機、通信装置)
41,42,・・・,4n 高速通信室内機(室内機、通信装置)
1 制御部
2 OFDM通信モデム(変復調通信部)
2a 受信S/N比検出器(受信S/N比検出部)
3 可変利得送信増幅器(可変利得送信増幅部)
4 OFDM受信回路
5 OFDM空きチャネル検出器(第2空きチャネル検出部)
6 記憶部
7 AMIデータ通信回路(シリアルデータ通信部)
8 AMI送信回路
9 AMI受信回路
10 AMI空きチャネル検出器(第1空きチャネル検出部)
fu,fv,fw,fr,fs 通信線