(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
H04M 1/00 20060101AFI20240109BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20240109BHJP
B41J 29/46 20060101ALI20240109BHJP
B41J 29/00 20060101ALI20240109BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20240109BHJP
H04W 76/10 20180101ALI20240109BHJP
H04W 84/10 20090101ALI20240109BHJP
H04W 84/12 20090101ALI20240109BHJP
【FI】
H04M1/00 Q
H04N1/00 350
H04N1/00 002A
B41J29/46 Z
B41J29/00 T
G03G21/00 386
H04N1/00 127B
H04W76/10
H04W84/10 110
H04W84/12
(21)【出願番号】P 2019203464
(22)【出願日】2019-11-08
【審査請求日】2022-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植村 卓矢
【審査官】新井 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-021906(JP,A)
【文献】特開2013-110470(JP,A)
【文献】特開2019-186766(JP,A)
【文献】特開2018-114650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04M 1/00
H04N 1/00
B41J 29/46
B41J 29/00
G03G 21/00
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録材に画像を形成する画像形成部と、
所定位置に携帯通信端末がかざされることに基づいて、第一通信方式に従って前記携帯通信端末と通信を行う第一通信部と、
前記第一通信方式に従って前記第一通信部と前記携帯通信端末とが通信することによって前記携帯通信端末との通信が可能となり、前記第一通信方式よりも通信範囲が広い第二通信方式に従って前記携帯通信端末と無線通信を行う第二通信部と、
前記第一通信方式に従って画像形成装置から前記携帯通信端末へ送信された前記携帯通信端末と前記第二通信部との接続が確立したことを示す信号に基づいて、前記携帯通信端末を前記所定位置から離しても良い旨をユーザーに報知する報知手段と、を備える、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記報知手段は表示部を有し、
前記表示部は、前記携帯通信端末と前記第二通信部とが通信可能になったことに基づいて、前記携帯通信端末と前記第二通信部とが通信可能になったことをユーザーに報知する画面を表示し、かつ、前記携帯通信端末を前記所定位置から離しても良い旨をユーザーに報知する画面を表示する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記表示部は、前記所定位置を示す画面を表示する、
ことを特徴とする請求項
2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記表示部は、前記携帯通信端末を前記所定位置にかざすことを促すメッセージを含む画面を表示する、
ことを特徴とする請求項
2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記画像形成装置は、前記第一通信部と、前記表示部と、前記所定位置であることを示すマークと、を有する操作部を備え、
前記表示部に表示される画面の上下方向に沿った方向において、前記マークは前記メッセージよりも下側に位置する、
ことを特徴とする請求項
4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記報知手段は、前記携帯通信端末と前記第二通信部とが通信可能になったことに基づいて、前記携帯通信端末と前記第二通信部とが通信可能になった旨をユーザーに報知する光を発する発光部を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記発光部は、前記携帯通信端末と前記第二通信部とが通信可能になったことに基づいて、発光状態を変更する、
ことを特徴とする請求項
6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記画像形成装置は、画像の形成条件に関する情報を表示する表示部と、前記発光部と、を有する操作部を備え、
前記表示部に表示される画面の上下方向に沿った方向において、前記発光部は前記表示部よりも下側に設けられている、
ことを特徴とする請求項
6に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記報知手段は、前記携帯通信端末と前記第二通信部とが通信可能になったことに基づいて、前記携帯通信端末と前記第二通信部とが通信可能になった旨をユーザーに報知する音を発する音発生部を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記画像形成装置は、画像の形成条件に関する設定を表示する表示部と、前記音発生部と、を有する操作部を備え、
前記表示部に表示される画面の上下方向に沿った方向において、前記音発生部の一部は前記表示部よりも上側に設けられている、
ことを特徴とする請求項
9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
画像形成装置は、外部から供給された電源を前記画像形成部に供給する電源装置を備え、
前記第一通信方式はNFCであり、
前記第一通信部はNFCタグを有し、
前記NFCタグは、前記携帯通信端末が発した電磁波により発生する起電力によって動作し、
前記画像形成部は、前記電源装置から供給される電源によって動作する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記第一通信部は、前記携帯通信端末が前記所定位置にかざされたことに基づいて、SSIDを前記携帯通信端末に送信し、
前記第二通信部と前記携帯通信端末とは、前記携帯通信端末が前記SSIDを受信したことに基づいて互いに通信可能になる、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記画像形成装置は、人が存在することを検知する人感センサと、画像の形成条件に関する設定を表示する表示部と、を備え、
前記表示部は、前記人感センサが人を検知したことに基づいて前記所定位置を示す画面を表示する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記第一通信部は、前記携帯通信端末と近距離無線通信を行うアンテナを備え、
前記画像形成装置は、画像の形成条件に関する設定を表示する表示部と、前記アンテナと、を有する操作部を備え、
前記アンテナは、前記表示部の表面に垂直な方向に沿って前記表示部を見たときに少なくとも一部が前記表示部に重なるように配線される、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記報知手段は、前記所定位置に前記携帯通信端末がかざされたにもかかわらず前記携帯通信端末と前記第二通信部とが通信可能にならなかった場合、前記携帯通信端末と前記第二通信部とが通信可能にならなかったことをユーザーに報知する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項16】
前記第一通信方式は、NFCである、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項17】
前記第二通信方式は、WiFiダイレクト通信である、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、これらの複数の機能を有する複合機などの画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、近距離無線通信のための通信規格として、「Near Field Communication」(以下、NFCと記す)が広く用いられている。そして、WiFi(登録商標)等のNFCに比較して高速無線通信が可能な通信規格に対応させるためのペアリングやユーザの認証等に、NFCを応用する製品が登場している。ペアリングとは、装置間で無線通信するための装置情報(接続情報)を送受信する通信手続きを示す。ユーザはNFCに対応した装置同士を近接させることにより、これらの装置においてNFCとは異なる通信規格(例えばWiFi)に対応した無線通信のための煩雑な接続設定を自動的に行わせることができる(特許文献1)。こうした装置間のペアリングがNFC通信によって行われると、その後の通信はNFC通信からWiFi等の無線通信に自動的に引き継がれる(所謂、ハンドオーバー)。
【0003】
最近では、複合機やプリンタ等の画像形成装置にも上記のNFC通信を利用したハンドオーバーのための技術が実装され始めている。一例として、画像形成装置に、SSID、IPアドレス、MACアドレス等のWiFi通信のための接続情報を予め書き込んだNFCタグを設けておく。ユーザがNFC通信及びWiFi通信に対応した携帯端末を画像形成装置の所定位置にかざすことによって、携帯端末と画像形成装置とのペアリングが行われる。そして、NFC通信を用いて、携帯端末と画像形成装置とのWiFi接続の確立を行う。WiFi接続が確立された場合、画像形成装置はWiFi通信により例えば携帯端末から画像データを受信して、受信した画像データに基づいて記録材に画像を出力する画像形成動作などを行い得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、NFC通信の場合、ユーザは通信を途切れさせないために、携帯端末を画像形成装置にかざした状態で維持する必要がある。しかしながら、従来では、NFC通信によってWiFi接続が確立された場合に、ユーザは画像形成装置においてWiFi接続が確立されたことを把握し得ず、現在の通信状況がNFC通信によるものか、WiFi通信によるものかを判断し難かった。それ故、携帯端末を画像形成装置にかざしたままにしているユーザもおり、その間、携帯端末を操作しづらかった。そこで、NFC通信によりWiFi接続が確立されたつまりは通信可能となったことに応じて、画像形成装置においてWiFi接続の確立をユーザへ報知するものが望まれていたが、未だそのようなものは提案されていない。
【0006】
本発明は、携帯端末とのWiFi接続の確立をNFC通信により行う場合に、携帯端末とWiFi接続が確立されたことに応じて、その旨を報知する画像形成装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る画像形成装置は、記録材に画像を形成する画像形成部と、所定位置に携帯通信端末がかざされることに基づいて、第一通信方式に従って前記携帯通信端末と通信を行う第一通信部と、前記第一通信方式に従って前記第一通信部と前記携帯通信端末とが通信することによって前記携帯通信端末との通信が可能となり、前記第一通信方式よりも通信範囲が広い第二通信方式に従って前記携帯通信端末と無線通信を行う第二通信部と、前記第一通信方式に従って画像形成装置から前記携帯通信端末へ送信された前記携帯通信端末と前記第二通信部との接続が確立したことを示す信号に基づいて、前記携帯通信端末を前記所定位置から離しても良い旨をユーザーに報知する報知手段と、を備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第一通信方式によって携帯通信端末と第二通信方式に従う無線通信を行う第二通信部との接続が確立されたことに応じて、ユーザーは携帯通信端末を所定位置から離すタイミングを容易に認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図4】画像形成装置の主要部の構成を示すブロック図。
【
図6】画像形成装置のハードウェア構成の一部を示すブロック図。
【
図7】画像形成装置のNFCの制御構成を示すブロック図。
【
図9】本実施形態に係る携帯端末のハードウェア構成を示すブロック図。
【
図10】携帯端末のNFCの制御構成を示すブロック図。
【
図11】(a)NFC通信の概要を説明するための図、(b)RFフィールド検知部の出力を示す図、(c)NFCタグを正常に読み取れた場合の出力を示す図、(d)NFCタグを正常に読み取れない場合の出力を示す図。
【
図12】本実施形態の接続確立処理を示すフローチャート。
【
図13】携帯端末を近接させるためのタッチ画面を示す図。
【
図15】携帯端末の接続確立報知の別の例を示す図。
【
図16】(a)携帯端末の接続確立報知のさらに別の例を示す図、(b)携帯端末を離してよい旨の報知例を示す図。
【
図17】画像形成装置と携帯端末間のNFC通信及びWiFi通信の通信手順を示す図。
【
図18】ポーリング動作について説明するための図であり、(a)RFフィールド検知部の出力を示す図、(b)IDカードを近接させた場合の出力を示す図、(c)携帯端末を近接させた場合の出力を示す図。
【
図19】携帯端末の表示画面例を示す図であり、(a)初期画面、(b)WiFi接続報知画面、(c)ジョブ選択画面、(d)データ選択画面。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施形態の画像形成装置について説明する。まず、本実施形態の画像形成装置1の概略構成について、
図1乃至
図4を用いて説明する。画像形成装置1は、例えば、コピー機能、スキャン機能、及びプリント機能など各種機能を備える一般的な複合機である。
【0013】
本実施形態の画像形成装置1は、携帯端末6(携帯通信端末)と画像形成装置1との間でNFC通信を行うことで、ユーザの認証を可能としている。そして、画像形成装置1がユーザを認証することで、ユーザが画像形成装置1を使用可能となる。また、本実施形態の画像形成装置1は、NFC通信によって携帯端末6と画像形成装置1とを無線LAN接続できるようにしている。これにより、例えば、携帯端末6内の画像データ(画像形成に関する情報)などのデータ量が大きいデータの送受信をWiFi(登録商標)などの無線LANに引き継ぎ、この画像データに基づく画像を画像形成装置1により出力できる。あるいは、画像データに限らず、例えば記録材Sの種類やサイズなどの設定データ(画像形成に関する情報)であってもよい。
【0014】
図1及び
図2に示すように、画像形成装置1は、記録材Sに画像を形成するための画像形成部としての画像形成ユニット11(
図3参照)を内部に有する装置本体1a、装置本体1aの前面に設けられた操作パネル2、人感センサ15などを備える。記録材Sとしては、用紙、プラスチックフィルム、布などのシートが挙げられる。操作パネル2は、ユーザなどのユーザによる操作指示を入力するものである。
【0015】
本実施形態に係る画像形成装置1は、
図3に示すように、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のトナーを中間転写ベルトに転写した後、記録材Sに画像を転写して画像を形成する中間タンデム方式の画像形成装置である。なお、以下の説明において、上記各色のトナーを使用する部材には添え字としてY、M、C、Kを付する。ただし、各部材の構成や動作は使用するトナーの色が異なることを除いて実質的に同じであるため、同じ構成については、代表してイエローのトナー像を形成する構成について説明し、他の色の構成については説明を省略する。
【0016】
図2は、画像形成装置1の斜視概略図である。
図3は、画像形成装置1の概略構成断面図である。画像形成装置1は、
図3に示すように、記録材Sに画像を形成するための画像形成ユニット11を備える。画像形成ユニット11は、感光ドラム301Y、301M、301C、301K、帯電ローラ302Y、302M、302C、302K、現像装置303Y、303M、303C、303Kを備える。また、一次転写ローラ305Y、305M、305C、305K、レーザスキャナユニット398、中間転写ベルト306、二次転写ローラ316、二次転写対向ローラ312などを備える。
【0017】
また、画像形成装置1は、
図2に示すように、原稿の画像を読み取る画像読取ユニット10を備える。画像読取ユニット10は、リーダ10aとADF10bから構成される。リーダ10aは、ガラス板で形成された不図示の載置台に載置された原稿の画像を光学的に読み取って画像データに変換する。ADF10bは、原稿トレイ10b1に積載された原稿を自動的に搬送して画像を読み取る。ADF10bは、回動自在に支持されており、ADF10bを回動させて上方に開放することでリーダ10aの載置台にアクセス可能となる。
【0018】
また、画像形成装置1の前面側には、画像形成に関する設定や画像読取に関する設定が可能な操作パネル2が設けられている。本実施形態の場合、操作パネル2は画像読取ユニット10よりも手前側に設けられている。そのため、ユーザは操作パネル2を容易に操作することができる。操作パネル2は、情報を表示させると共にタッチ操作により情報の入力や装置への指令などが可能な操作表示部20aと、数値等を入力するためのキー20bと、外装カバー20cを有する。操作表示部20aは、詳しくは後述するように、ソフトウェアキーを表示してそれに触れる(タッチ操作する)ことで、情報の入力や装置への指令が可能である。手動入力部としてのキー20bは、物理的に押下することで情報の入力や装置への指令が可能なハードウェアキー(物理キー)である。なお、キー20bは、省略してもよい。
【0019】
ユーザは、操作表示部20a又はキー20bを操作することで、数値などの情報の入力や装置への指令を行うことができる。そして、画像形成に係る記録材Sのサイズや画像形成枚数の設定等の画像形成に関する設定や、原稿サイズの設定等の画像の読み取りに関する設定を行うことができる。
【0020】
次に、画像形成装置1による画像形成動作について説明する。画像を形成する際は、まず、制御部3(
図4参照)に画像形成ジョブ信号が入力される。これにより、
図3に示すような給送ローラ311、搬送ローラ385が回転し、カセット310に積載収納された記録材Sがレジストローラ386に送り出される。次に、記録材Sは、レジストローラ386によって所定のタイミングで二次転写ローラ316と二次転写対向ローラ312に張架された中間転写ベルト306から形成される二次転写部に送り込まれる。
【0021】
一方、画像形成ユニット11においては、まず、帯電ローラ302Yにより感光ドラム301Y表面が帯電させられる。その後、画像読取ユニット10に読み取られた原稿の画像の画像信号、或いは、パーソナルコンピュータなどの外部機器から送られた画像信号等に応じてレーザスキャナユニット398が感光ドラム301Y表面にレーザ光を照射する。これにより、感光ドラム301Y表面に静電潜像が形成される。その後、現像装置303Yにより感光ドラム301Yの表面に形成された静電潜像にイエローのトナーを付着させ、感光ドラム301Y表面にイエローのトナー像を形成する。感光ドラム301Y表面に形成されたトナー像は、一次転写ローラ305Yに一次転写バイアスが印加されることで、中間転写ベルト306に一次転写される。
【0022】
同様のプロセスにより、感光ドラム301M、301C、301Kにも、マゼンタ、シアン、ブラックのトナー像が形成される。そして一次転写ローラ305M、305C、305Kに一次転写バイアスが印加されることで、これらのトナー像が中間転写ベルト306上のイエローのトナー像に対して重畳的に転写される。これにより中間転写ベルト306の表面に画像信号に応じたフルカラーのトナー像が形成される。
【0023】
その後、中間転写ベルト306が駆動ローラ317から駆動力を伝達されて周回移動することで、フルカラーのトナー像が二次転写部に送られる。そして二次転写部において二次転写ローラ316に二次転写バイアスが印加されることで、中間転写ベルト306上のフルカラーのトナー像が記録材Sに転写される。
【0024】
次に、トナー像が転写された記録材Sは、定着装置315において加熱、加圧処理が施され、これにより記録材S上のトナー像が記録材Sに定着される。その後、トナー像が定着された記録材Sは、排出ローラ313によって排出部307に排出される。
【0025】
図4に示すように、操作パネル2内(操作パネル内)には、ユーザが所持する携帯端末(外部機器)6と、近距離無線通信としてのNFC通信を行うためのNFCタグ部4が設けられている。NFCタグ部4は、詳しくは後述するように、電波の送受信を行うアンテナと、NFC通信の制御を行うICチップから構成されており、ユーザが有するスマートフォンなどの携帯端末との間で近距離無線通信であるNFC通信を行う。NFC(Near Field Communication)とは、13.56MHzの電磁波を利用した非接触無線通信規格である。
【0026】
また、画像形成装置1には、装置に接近するユーザを検知する人感センサ15が設けられている。人感センサ15は、例えば、装置本体1aの前面に配置され、画像形成装置1の前に人が存在する場合には、それを検知する。なお、人感センサ15は、操作パネル2に設けてもよい。例えば、操作パネル2の外装カバー20cに形成されたスリットの内側に人感センサ15を配置し、スリットを介して超音波を送信し、その反射波を受信することでユーザを検知するようにしてもよい。
【0027】
また、画像形成装置1は、携帯端末6と無線LAN通信を行うための無線LAN通信部5を備えている。LANは「Local Area Network」の略である。NFCタグ部4及び無線LAN通信部5は、インターフェイスを介してこの画像形成装置1の動作を制御する制御部3と接続されている。
【0028】
携帯端末6は、スマートフォンやタブレット型コンピュータなどの携帯型の機器などで、NFC通信及び無線LAN通信の機能を有するものである。ユーザは、携帯端末6を使用して画像形成装置1と無線通信を行い、画像形成装置1に各種処理を実行させる。
【0029】
[制御部]
次に、画像形成装置1のシステム構成について、
図5を用いて説明する。
図5に示す様に、画像形成装置1は、CPU7と、CPU7が演算に用いるデータが一時的に格納されるRAM(メモリ)8と、各種のプログラムが格納されているROM(記憶装置)13を備える。また、画像形成装置1の制御に関するソフトウェアや各種設定、保存された文書が格納されるHDD104を備える。
【0030】
また、画像形成装置1は、LANを介して外部機器とデータの送受信を行うネットワークインターフェイス106と、無線LAN通信を介して外部機器とデータの送受信を行う無線LAN通信部(無線LANインターフェイス)5を備える。また、操作パネル2からの入力データや操作パネル2に表示させる画像データを中継する操作部インターフェイス105を備える。
【0031】
また、画像形成装置1は、CPU7から指示を受けて特定のデバイスへの電力の供給、供給停止を切り替える電源制御部170を備える。電源制御部170は、商用電源から電源の供給を受けて各デバイスで使用される電力に変換して電力を供給可能な電源装置160を制御する。電源制御部170は、操作パネル2、ネットワークインターフェイス106、無線LAN通信部5、画像処理部150、画像読取ユニット10、画像形成ユニット11、人感センサ15への電力の供給・供給停止を制御する。上述した各デバイスや、NFCタグ部4、人感センサ15は、システムバス114を介して相互に接続されている。
【0032】
また、画像形成装置1は、画像処理を行う画像処理部150を備える。画像処理部150は、RIP110、デバイスインターフェイス111、プリンタ画像処理部112、スキャナ画像処理部113から構成されており、これらは画像バス115を介して相互に接続されている。また、画像バス115とシステムバス114は、イメージバスインターフェイス109を介して接続されており、イメージバスインターフェイス109により画像バス115とシステムバス114との中継やデータ構造の変換が行われる。
【0033】
RIP110は、ラスタイメージプロセッサであり、ページ記述言語(PDL)コードやディスプレイリストをビットマップイメージに変換する。スキャナ画像処理部113は、画像読取ユニット10で読み取られた画像データに対して補正や解像度変換などの画像処理を行う。プリンタ画像処理部112は、画像形成ユニット11で形成される画像の画像データに対して補正や解像度変換などの画像処理を行う。
【0034】
画像読取ユニット10は、スキャナバス116、デバイスインターフェイス111を介して画像バス115と接続されている。画像形成ユニット11は、プリントバス117、デバイスインターフェイス111を介して画像バス115と接続されている。デバイスインターフェイス111は、画像読取ユニット10から受信された画像データを画像バス115に送信するタイミングや、画像バス115から画像形成ユニット11へ画像データを送信するタイミングを調整する。
【0035】
[画像形成装置のハードウェア構成]
次に、制御部3、操作パネル2、人感センサ15の詳細な関係について、
図6を用いて説明する。
図6は、画像形成装置1のハードウェア構成の一部を示すブロック図である。画像形成装置1は、操作パネル2、原稿を読み取って画像データを生成する画像読取ユニット10、画像データに基づき画像形成処理を実行する画像形成ユニット11、二次元バーコード生成部12、各種情報を記憶する記憶装置(ROM)13などを備える。また、画像形成装置1は、操作パネル2内に配置されて前述したNFC通信を行う第一通信部としてのNFCタグ部4、第二通信部としての無線LAN通信部5を備える。これらの各部は制御部3とインターフェイスを介して接続されている。
【0036】
制御部3は、CPU7、メモリ(RAM)8、タイマ9を備えており、各部の動作を制御するものである。CPU7は、記憶装置13に記憶されているプログラム14を読み出して実行する。プログラム14は、制御部3を後述する各種処理を行うために機能させるプログラムである。メモリ8は、CPU7がプログラムを実行することに伴う一時的なデータなどを記憶するためのものである。タイマ9は、制御部3が各種処理を行う際に計時を行うためのものである。また、制御部3は、後述するように、NFC通信に基づいてユーザを認証する認証部としても機能する。
【0037】
操作パネル2は、前述したようにユーザによる操作を行うための操作表示部20a、キー20b(
図2参照)、操作音発生部2c、操作パネルマイコン2d、発光部2e、NFCタグ部4を備えている。操作表示部20aは、表示部2a、操作部としての操作入力部2bを有する。表示部2aは、例えば液晶パネルなどで構成され、各種情報を表示可能である。表示部2aは、例えば、画像データを制御部3から図示しない画像データ用の転送ラインを通じて受信することで、液晶パネル上に画像を映すことが可能である。また、表示部2aは、記録材S(例えば用紙)を印刷する際の種々の条件である、例えば印刷枚数、印刷用紙のサイズ、カラー/モノクロなどの画像形成に関する情報を表示可能である。
【0038】
操作入力部2bは、表示部2a上に配置されたタッチパネルなどであり、タッチ操作により情報を入力可能である。本実施形態では、操作入力部2bは、表示部2aに表示したソフトウェアキーを表示し、タッチ操作により情報を入力可能なタッチパネルとする。音発生部としての操作音発生部2cは、ユーザ操作に伴う各種の操作音やユーザに通信状況を報知する報知音などを発生するためのものである。発光部2eは、光の点滅や点灯によって装置の状態を表示したりあるいはユーザに通信状況を報知したりするための、例えばLED(Light Emitting Diode)などである。操作パネルマイコン2dは、これらを制御し、制御部3と通信する。
【0039】
NFCタグ部4は、外部機器(本実施形態では携帯端末6)とNFC通信規格(第一通信方式)に基づきNFC通信を行い、携帯端末6と制御部3との間で行われるデータ入出力を行うものである。本実施形態のNFCタグ部4は、RFID(Radio Frequency Identification)用ICで構成されておりNFCタグとして動作する。
【0040】
人感センサ15は、画像形成装置1の周囲の所定の領域内に人がいることを検知可能である。本実施形態の人感センサ15は、画像形成装置1の前面にいる人や物体を検知するセンサであり、検知信号を操作パネルマイコン2dに送る。制御部3は、例えば、画像形成装置1がスリープモードにある場合に人感センサ15が人を検知すると、操作パネル2に携帯端末6を画像形成装置1の所定位置にかざすためのタッチ画面を表示させる(
図13参照)。また、この際、画像形成装置1の状態をスリープモードからスタンバイ状態に移行させる。
【0041】
無線LAN通信部5は、無線LAN規格(第二通信方式)に基づき外部機器(本実施形態では携帯端末6)と無線LAN通信の処理を行い、携帯端末6と制御部3との間で行われるデータ入出力を行う。具体的には、無線LAN通信部5は、無線LAN通信手順にしたがって、データパケットの送信、受信の処理を行う。無線LAN規格は、NFC通信規格よりも通信範囲が広く且つ通信速度が速い無線通信のための規格である。なお、本実施形態の無線LAN通信部5は、WiFi Directなどの無線LANダイレクトモードに対応している。
【0042】
無線LANダイレクトモードでは、無線LAN通信部5が無線LANアクセスポイント(ソフトアクセスポイント)として動作することにより、外部の無線LANアクセスポイントを介さずに携帯端末6などの外部機器と無線LAN通信を行うことができる。
【0043】
二次元バーコード生成部12は、設定されたデータを認証用画像としての二次元バーコード(QRコード:登録商標)にエンコードして、二次元バーコードの画像を生成するものである。生成された二次元バーコードの画像は、操作パネル2の表示部2aに表示するようにして、ユーザが携帯端末6を使用してこの二次元バーコード画像を読み取ることができる。なお、認証用画像は、携帯端末6のカメラ38(
図9参照)で読み取り可能な画像であって、画像形成装置1がユーザを認証するための情報を含む画像である。本実施形態では、認証用画像を二次元バーコードとしているが、このような画像であれば二次元バーコードに限らない。また、本実施形態では、二次元バーコード生成部12を省略してもよい。
【0044】
[NFCタグ部のハードウェア構成]
次に、
図7を用いて、画像形成装置1におけるNFCタグ部4のハードウェア構成について説明する。NFCタグ部4は、NFCタグ制御部21、メモリ22、RF制御部23、RFインターフェイス部24、RFフィールド検知部25、ループアンテナ26などを備える。
【0045】
NFCタグ制御部21は、NFCタグ部4の各部の制御を行い、制御部3に対して、インターフェイスを介してデータの入出力を行う。NFCタグ制御部21は、タグ読み取り割り込み発生部21aを有する。
【0046】
タグ読み取り割り込み発生部21aは、携帯端末6とのNFC通信により、携帯端末6からNFCタグデータの読み取りや書き込みが行われた際に、割り込み信号を発生する。タグ読み取り割り込み発生部21aの割り込み信号は、制御部3に出力される。
【0047】
メモリ22は、NFCタグデータとして、制御部3若しくは携帯端末6から書き込まれたデータを蓄積するものであり、不揮発メモリにより構成されているものとする。また、メモリ22に書き込まれたデータは、制御部3で読み出すことが可能である。
【0048】
RF制御部23は、外部機器(本実施形態では、携帯端末6)とNFC通信を行う際に、RF通信のための電磁波の変調、復調処理を行うものである。RFは、「Radio Frequency」の略である。
【0049】
RFインターフェイス部24は、外部機器(本実施形態では、携帯端末6)とNFC通信を行う際に、電磁波の輻射を受けることにより電磁結合を行い、電磁波の受信、送信の処理を行うものである。
【0050】
RFフィールド検知部25は、外部機器とのNFC通信において、RFインターフェイス部24が電磁波の輻射を受けている間、電磁場(RFフィールド)を検知するものである。具体的には、RFフィールド検知部25は、電磁波の電力(エネルギー)を検知するものであるとする。なお、RFフィールド検知部25の検知信号は、制御部3に出力される。
【0051】
ループアンテナ26は、外部機器とNFC通信を行うためのアンテナであり、本実施形態では、携帯端末6から電磁波の輻射を受け、電磁結合を行い、電磁波による通信を行うためにループコイル状に形成されている。
【0052】
本実施形態では、NFCタグ部4は、携帯端末6から電磁波の輻射を受けることにより電磁結合を行い、この電磁結合により発生する起電力による電力供給を受けて動作するものである。なお、メモリ22、RF制御部23、RFインターフェイス部24は、NFCタグ制御部21から制御されるものとする。
【0053】
[操作パネル]
次に、
図8を用いて操作パネル2の操作表示部20aについて、より詳しく説明する。本実施形態では、操作表示部20aは、NFCアンテナを搭載しており、最下層から、表示部2a、タッチパネルである操作入力部2b、NFCアンテナであるループアンテナ26の順に重畳して配置されている。最外部には、不図示の保護ガラスが配置されていてもよい。
【0054】
即ち、操作表示部20aは、下位層には液晶等の表示部2aが配置される。表示部2aと操作パネルマイコン2d(
図6参照)は、不図示のFlexible Flat Cable(以下FFCと略す)などにて接続されている。表示部2aの上方には、タッチパネルなどの操作入力部2bが配置される。なお、操作パネル2において、上方とは、ユーザがタッチ操作する側である。
【0055】
操作入力部2bは、抵抗式や静電容量式のタッチパネルでもよく、また、光学式の構造でも構わないが、本実施形態では4線式の抵抗式のタッチパネルとする。操作入力部2bのタッチパネルは、4辺に電極が配置されており、各々の電極がFlexible Printed Circuit(以下FPCと略す)などの接続子を介して操作パネルマイコン2dに接続されている。
【0056】
操作入力部2bの上方には、NFCのアンテナパターンであるループアンテナ26が配置されている。操作入力部2b及びループアンテナ26は透明もしくは半透明なフィルムであり、表示部2aに表示される画像がループアンテナ26の上方から目視可能としている。
【0057】
本実施形態では、ループアンテナ26を1つのアンテナパターンとしているが、複数のアンテナパターンにより構成してもよい。ループアンテナ26もFPC等の接続子を介して、RFインターフェイス部24に接続されている。
【0058】
ループアンテナ26は、携帯端末6との通信において操作入力部2bの上に配置することが最も感度がよい。このため、本実施形態では、ループアンテナ26を操作入力部2bの上を覆うように配置している。なお、ループアンテナ26の位置は、これに限らず、例えば、表示部2aと操作入力部2bとの間であってもよい。また、ループアンテナ26と操作入力部2bとは一体に構成してもよい。
【0059】
本実施形態では、このようにNFC通信を行うためのアンテナであるループアンテナ26を操作パネル2内で、且つ、表示部2aの上方に表示部2aと重畳するように配置している。このため、詳しくは後述するが、操作パネル2上の表示範囲内の所定位置にユーザが携帯端末6をかざすように誘導するようなタッチ画面(
図13参照)を表示部2aに表示することができる。そして、ユーザは、携帯端末6を操作パネル2の上にかざすことでNFC通信ができる。
【0060】
[携帯端末のハードウェア構成]
次に、
図9を用いて、携帯端末6のハードウェア構成について説明する。携帯端末6は、制御部31、操作パネル34、記憶装置35、NFC_R/W部36、無線LAN通信部37、カメラ38、二次元バーコード解析部39などを備える。制御部31は、携帯端末6を制御するものであり、CPU32、メモリ33から構成される。CPU32は、記憶装置35に記憶されている各種プログラムを読み出して実行する。メモリ33は、CPU32がプログラムを実行することに伴う一時的なデータなどを記憶するものである。
【0061】
操作パネル34は、ユーザによる操作指示を入力する構成を備えている。即ち、操作パネル34は、液晶パネルにより構成され各種情報を表示する表示部34aと、その表示部34a上のタッチパネルなどの操作入力部34bで構成される。また、操作に伴う各種の操作音を発生するための操作音発生部34cをあわせて備えている。記憶装置35は、前述した各種プログラムなどを記憶するものである。
【0062】
NFC_R/W部36は、外部機器(本実施形態では画像形成装置1)とNFC通信規格に基づきNFC通信を行い、画像形成装置1と制御部3との間で行われるデータ入出力を行うものである。本実施形態のNFC_R/W部36は、NFCのリーダ/ライタとして動作する。即ち、NFC通信によるデータの読み込み及び書き込みを行う。
【0063】
無線LAN通信部37は、無線LAN規格に基づいて外部機器(本実施形態では画像形成装置1)との通信処理を行い、画像形成装置1と制御部31の間で行われるデータ入出力処理を行う。本実施形態の無線LAN通信部37は、無線LAN規格に基づき無線LAN通信の処理を行うものであり、具体的には無線LAN通信手順にしたがって、データパケットの送信、受信の処理を行う。
【0064】
カメラ38は、撮像用のカメラである。二次元バーコード解析部39は、読み取った二次元バーコードを解析して二次元バーコードのデータを取得するものである。また、図示していないが、携帯端末6は、バッテリや電源制御部など携帯端末として必要な電源供給の構成を備えている。なお、本実施形態では、カメラ38及び二次元バーコード解析部39を省略してもよい。
【0065】
[NFC_R/W部のハードウェア構成]
次に、
図10を用いて、携帯端末6におけるNFC_R/W部36のハードウェア構成について説明する。NFC_R/W部36は、NFC_R/W制御部41、RF制御部42、RFインターフェイス部43、ループアンテナ44などを備える。
【0066】
NFC_R/W制御部41は、NFC_R/W部36の各部の制御を行い、制御部31に対して、インターフェイスを介してデータの入出力を行う。RF制御部42は、外部機器とNFC通信を行う際に、RF通信のための電磁波の変調、復調処理を行うものである。RFインターフェイス部43は、外部機器とNFC通信を行う際に、電磁波を輻射して電磁結合を行い、電磁波の受信、送信の処理を行うものである。
【0067】
ループアンテナ44は、外部機器とNFC通信を行うためのアンテナであり、本実施形態では、画像形成装置1に対して電磁波を輻射して、電磁結合を行い、電磁波による通信を行うためにループコイル状に形成されている。なお、RF制御部42、RFインターフェイス部43は、NFC_R/W制御部41により制御されるものとする。
【0068】
[NFC通信]
次に、
図7、
図9、
図10を参照して
図11(a)乃至
図11(d)を用い、携帯端末6のNFC_R/W部36が画像形成装置1のNFCタグ部4と電磁結合を行い、NFC通信によりNFCタグ部4のNFCタグデータを読み取る動作について説明する。なお、詳細なNFC通信の通信プロトコルはNFC通信規格に従うものとして、以下では電磁結合によるNFC通信の動作概要について述べる。
【0069】
まず、
図11(a)に示すように、NFC_R/W部36は、NFCタグ部4のNFCタグデータを読み取るためのポーリング動作を行う。ポーリング動作は、複数の機器やソフトウェアを円滑に連携させるための制御方式の1つである。ユーザが携帯端末6を画像形成装置1のNFCタグ部4に近接させることに応じて、NFC_R/W部36はポーリング動作を開始する。
【0070】
NFC_R/W制御部41は、RF制御部42を制御して、NFCタグを読み取るためのコマンドデータを送信すべく、NFC通信規格に基づき電磁波を変調する。この変調波はRFインターフェイス部43にもたらされる。NFC_R/W制御部41は、RFインターフェイス部43を制御して、もたらされた変調波を送信する。
【0071】
送信された変調波はRFインターフェイス部43からループアンテナ44にもたらされ、電磁波として輻射される。この輻射された電磁波によりNFC_R/W部36とNFCタグ部4の近傍にはRFフィールド(電磁場)が形成され、NFC_R/W部36とNFCタグ部4は電磁結合する。
【0072】
NFCタグ部4においては、ループアンテナ26が電磁波の輻射を受けることにより、電磁波が受信される。受信された電磁波は、RFインターフェイス部24にもたらされ、RFインターフェイス部24は電磁結合による起電力を発生する。この起電力によりNFCタグ部4は電力を得て動作する。同時に、RFインターフェイス部24で受信された電磁波は、RF制御部23にもたらされる。
【0073】
NFCタグ制御部21は、RF制御部23を制御して、RF制御部23にもたらされた変調された電磁波を復調して復調データを得る。NFCタグ制御部21は、復調データを得て、これがNFCタグデータを読み取るためのコマンドデータであることを検知する。
【0074】
そこで、NFCタグ制御部21は、メモリ22にNFCタグデータとして書き込まれているデータを読み出し、コマンドデータに対するレスポンスデータとしてRF制御部23に転送する。NFCタグ制御部21は、RF制御部23を制御して、NFCタグデータであるレスポンスデータを送信すべく、NFC通信規格に基づき電磁波を変調し、この変調波はRFインターフェイス部24にもたらされる。
【0075】
NFCタグ制御部21は、RFインターフェイス部24を制御して、もたらされた変調波を送信する。送信された変調波はRFインターフェイス部24からループアンテナ26にもたらされ、電磁波として輻射される。この時点で、NFCタグ制御部21は、NFCタグデータを読み取るためのコマンドデータの受信に対応して、NFCタグデータをレスポンスデータとして送信完了したものとして、タグ読み取り割り込み発生部21aにより割り込み信号を発生させる。
【0076】
一方、NFC_R/W制御部41においては、ループアンテナ44が、NFCタグ制御部21から輻射されたレスポンスデータに基づき変調された電磁波を受信する。受信された電磁波は、RFインターフェイス部43を介して、RF制御部42にもたらされる。
【0077】
NFC_R/W制御部41は、RF制御部42を制御して、RF制御部42にもたらされた変調された電磁波を復調して復調データを得る。そして、NFC_R/W制御部41は、NFCタグ部4のNFCタグデータの読み取りが完了したことを制御部31に通知する。同時に、NFC_R/W制御部41は、読み取ったNFCタグデータを制御部31に転送する。
【0078】
なお、画像形成装置1のNFCタグ部4が携帯端末6のNFC_R/W部36のデータを取得する場合も、データを出力する側とデータを読み取る側が逆になるのみであり、通信方法は同様である。
【0079】
図11(b)は、上述したNFC_R/W部36がNFCタグ部4のNFCタグデータの読み取りを行っている際の、NFCタグ部4のRFフィールド検知部25の検知出力を示す図である。携帯端末6が画像形成装置1に近接されると、上述したように、NFC_R/W部36が電磁波を輻射してNFCタグ部4との間にRFフィールドを形成する。そして、NFCタグ部4が電磁波を受けている間、NFC_R/W部36とNFCタグ部4は電磁結合してNFC通信を行い得る。NFCタグ部4では、ループアンテナ26で受けた電磁波がRFインターフェイス部24を介してRFフィールド検知部25にもたらされる。RFフィールド検知部25は、電磁波の電力(エネルギー)を検知しているときにRFフィールド検知「ON」信号52を出力し、電磁波の電力(エネルギー)を検知していないときにRFフィールド検知「OFF」信号51を出力する。
【0080】
通常、携帯端末6のNFC_R/W部36によりNFCタグ部4のNFCタグデータを読み取るために、携帯端末6は定期的に電磁波を輻射するポーリング動作によりNFC通信を行う。その場合、携帯端末6は消費電力を低減するために、電磁波を常時輻射するのではなく、所定の時間間隔(ポーリング間隔と呼ぶ)で定期的に電磁波を輻射して、NFCタグデータ読み取りのためのNFC通信を行う。そして、ユーザが携帯端末6を画像形成装置1(詳しくはNFCタグ部4)に近接させている場合、RFフィールド検知部25はポーリング間隔に応じて輻射される電磁波の電力を検知し得る。それ故、携帯端末6が画像形成装置1に近接されており、NFCタグ部4が電磁波を受けている間、RFフィールド検知部25はRFフィールド検知「ON」信号52をポーリング間隔で発生する。
【0081】
その後、ユーザが携帯端末6を画像形成装置1(詳しくはNFCタグ部4)から離すと、RFフィールド検知部25は電磁波の電力を検知しないため、RFフィールド検知「OFF」信号51を出力し続ける。
【0082】
RFフィールド検知部25の出力の遷移について、さらに説明する。
図11(c)は、携帯端末6によりNFCタグ部4のNFCタグデータが正常に読み取れた場合のRFフィールド検知部25の出力を示した図である。
図11(d)は、携帯端末6によりNFCタグ部4のNFCタグデータが正常に読み取れない場合のRFフィールド検知部25の出力を示した図である。
【0083】
図11(c)に示すように、携帯端末6が画像形成装置1に近接されていると、NFCタグ部4のRFフィールド検知部25はRFフィールド検知「ON」信号52をポーリング間隔で出力する。これに伴い、NFC_R/W部36はNFCタグデータの読み取りを行う。そして、携帯端末6が画像形成装置1に近接されていなければ、NFCタグ部4のRFフィールド検知部25はRFフィールド検知「OFF」信号51を出力する。このように、RFフィールド検知部25は、携帯端末6を近接させている時間t1の間、RFフィールド検知「ON」信号52がポーリング間隔で発生され、その後、携帯端末6が画像形成装置1から離されると、RFフィールド検知「OFF」信号51を出力する。
【0084】
携帯端末6が画像形成装置1に近接されていると、NFCタグ部4のRFフィールド検知部25はRFフィールド検知「ON」信号52をポーリング間隔で出力する。ここで、NFC_R/W部36はポーリングによりNFCタグデータの読み取りを行うが、NFC通信に障害があると、NFCタグデータの読み取りが正常に完了しない。この場合、
図11(d)に示すように、RFフィールド検知部25は、携帯端末6を近接させている時間t2の間、RFフィールド検知「ON」信号52をポーリング間隔で継続的に出力する。
【0085】
上述のように、本実施形態の画像形成装置1は、携帯端末6とのペアリングをNFC通信によって行うことで、その後のデータ送受信を無線LAN等に引き継ぐハンドオーバーを行うことができる。即ち、ユーザは、携帯端末6を画像形成装置1に近接させるだけで、無線LAN接続のための煩雑な設定をそれらの装置に自動的に行わせることができる。画像形成装置1では、携帯端末6を所持しているユーザを認証して、この携帯端末6と無線LAN接続を行う。
【0086】
ここで、ユーザの認証(個人認証)を行うための設定情報である、例えば、IDやPASSWORDなどの情報は、携帯端末6の記憶装置35に記憶されている。携帯端末6のNFC_R/W部36は、画像形成装置1のNFCタグ部4からの読み取りに対して、記憶装置35から読み取った上述の設定情報をNFCタグデータとして出力する。これにより、画像形成装置1は、個人認証に必要な設定情報を取得することができ、携帯端末6を所持しているユーザを認証する。
【0087】
他方、無線LANダイレクトモードを行うための接続情報である、例えば、SSID、暗号化キー、IPアドレスなどの接続情報は、画像形成装置1の記憶装置13に記憶されている。画像形成装置1のNFCタグ部4のメモリ22には、記憶装置13から読み取ったSSID、暗号化キー、IPアドレスなどの接続情報が書き込まれている。画像形成装置1のNFCタグ部4は、携帯端末6のNFC_R/W部36からの読み取りに対して、メモリ22から読み取った上述の接続情報をNFCタグデータとして出力する。これにより、携帯端末6は無線LAN接続に必要な接続情報を取得することができ、画像形成装置1は携帯端末6を所持しているユーザを認証して、この携帯端末6と無線LAN接続を行い得る。
【0088】
上述のように、本実施形態の場合、NFC通信に対応した携帯端末6をユーザが画像形成装置1側のNFCタグ部4に近接させることによって、画像形成装置1や携帯端末6が個人認証や無線LAN接続(例えばWiFi接続)のための接続情報を取得する。そして、画像形成装置1は個人認証やWiFi接続の設定を自動的に行い、WiFi接続の確立後にNFC通信を終了する。その後、画像形成装置1はWiFi通信により携帯端末6との間でデータ送受信を自動的に行い得る。
【0089】
ところで、従来では、携帯端末6を画像形成装置1にかざしている場合に、NFC通信が行われている状態であるか、既にWiFi通信によるデータ送受信可能な状態であるか、ユーザは現在の通信状態を画像形成装置1から把握する術がなかった。それ故、既に述べた通り、ユーザは携帯端末6を画像形成装置1にかざしたままにしておくしかなく、その間、ユーザは携帯端末6を操作しづらい。そこで、本実施形態ではそうした点に鑑み、画像形成装置1側においてWiFi接続が確立されたことをユーザに報知することで、ユーザが携帯端末6を画像形成装置1から離して操作できるようにした。以下、そのような制御を実現するための本実施形態の「接続確立処理」について説明する。
【0090】
[接続確立処理]
WiFi接続の確立をユーザに報知するための制御部3のCPU7の動作について、
図6、
図7を参照しながら
図12のフローチャートを用いて説明する。
図12に示す「接続確立処理」は、ユーザにより携帯端末6が画像形成装置1に近接され、携帯端末6と画像形成装置1間でNFC通信が開始されることに応じて、画像形成装置1のCPU7により実行される。
【0091】
「接続確立処理」について説明する前に、携帯端末6と画像形成装置1間でNFC通信を行うために、ユーザが画像形成装置1において携帯端末6をかざす位置を示す「タッチ画面」について説明する。
図13に、「タッチ画面」を示す。
図13に示す「タッチ画面」は、ユーザが携帯端末6をかざす位置を示すターゲットマークを表示したものである。本実施形態では、携帯端末6とNFC通信を行うためのNFCタグ部4のループアンテナ26が操作パネル2内に配置されているため、ターゲットマークは操作パネル2内に表示される。なお、
図13に示した画面は一例であり、ユーザが携帯端末6をかざす位置を理解できればどのような表示であってもよい。また、画像形成装置1に近接させる際に、携帯端末6に予め表示させておく「初期画面」については後述する(
図19(a)参照)。
【0092】
「接続確立処理」(接続モード)について説明すると、
図12に示すように、NFC通信が開始されると、CPU7は無線LANダイレクト通信に必要な接続情報を携帯端末6へ送信する(S1)。接続情報の送信後、CPU7は画像形成装置1と携帯端末6との無線LAN接続が確立されたか否かを判定する(S2)。画像形成装置1と携帯端末6との無線LAN接続が確立された場合(S2のYes)、CPU7は画像形成装置1において無線LAN接続が確立された旨をユーザに報知する(S3)。画像形成装置1において無線LAN接続が確立された旨をユーザに報知する方法としては、例えば
図14に示すように、操作パネル2に設けられた操作音発生部2c(例えばスピーカなど)から音を発生させるとよい。また、
図15に示すように、操作パネル2の発光部2e(例えばLEDなど)を点灯あるいは点滅させるなどして発光部2eの発光状態を変更してもよい。さらに、
図16(a)に示すように、操作パネル2の表示部2aに「端末との接続を確立しました」などして、表示部2aの表示状態を変更させてもよい。こうすることにより、ユーザは画像形成装置1と携帯端末6との無線LAN接続が確立された旨を理解できる。なお、この際に、CPU7は無線LAN接続が確立された旨を携帯端末6にも表示させるようにしてよい(後述の
図19(b)に示す「WiFi接続報知画面」参照)。また、本実施形態の場合、画像形成装置1との無線LAN接続が確立された後であっても、画像形成装置1と携帯端末6との間でNFC通信によるデータ送受信が行われ得る(後述する
図17参照)。その場合、画像形成装置1と携帯端末6との無線LAN接続を確立し、NFC通信により携帯端末6へ無線LAN接続が確立したことを通知後、
図16(b)に示すように、携帯端末6を画像形成装置1から離してよい旨を表示部2aに表示する。
【0093】
他方、携帯端末6と無線LAN接続が確立されていない場合(S2のNo)、CPU7は接続情報を携帯端末6へ再送信するリトライ処理を所定回数繰り返したか否かを判定する(S4)。所定時間内にリトライ処理を所定回数繰り返していない場合(S4のNo)、CPU7はステップS1の処理に戻って接続情報を携帯端末6へ再送信する(リトライ処理)。所定時間内にリトライ処理を所定回数繰り返したにも関わらず、携帯端末6と無線LAN接続が確立されなかった場合(S4のYes)、CPU7はNFC通信による無線LAN接続の確立失敗を表示部2aに表示するなどしてユーザに報知する(S5)。
【0094】
なお、
図12に示した処理では全ての制御をCPU7で実行する例を説明したが、接続情報の送信(
図12のS1)はCPU7の命令に従ってNFCタグ制御部21に実行させてもよい。
【0095】
上記したCPU7による携帯端末6と無線LAN接続が確立されたか否かの判定方法(
図12のS2参照)について、
図6、
図7、
図9、
図10を参照しながら
図17を用いて説明する。
図17は、本実施形態における画像形成装置1と携帯端末6間のNFC通信及びWiFi通信の通信手順を示す図である。ただし、ここでは、携帯端末6側から画像形成装置1に対しポーリング信号が送信される場合、つまり携帯端末6のNFC_R/W部36がポーリング動作を開始する場合を例に説明する。
【0096】
まず、携帯端末6が画像形成装置1のNFCタグ部4に近接されると、携帯端末6(詳しくはNFC_R/W部36)は、NFCタグ部4のNFCタグデータを読み取るために、ポーリング動作を行う(S1000)。携帯端末6はポーリング動作を行うことによって、他のシステム(例えば、近接させた携帯端末以外の携帯端末など)と競合することなく、画像形成装置1に通信可能に接続される。画像形成装置1では、携帯端末6によりポーリング動作が行われることに応じてNFCタグ部4が起動される。そして、携帯端末6では、NFC_R/W制御部41がRF制御部42を制御して、NFC通信規格に基づき電磁波を変調する。この変調波がRFインターフェイス部43へと伝送され、RFインターフェイス部43によりループアンテナ44を介して電磁波として輻射される。この輻射された電磁波によりNFC_R/W部36とNFCタグ部4の近傍にRFフィールドが形成されて、NFC_R/W部36とNFCタグ部4とが電磁結合される。これにより、NFC通信が開始される。
【0097】
NFC通信の開始後、画像形成装置1では、ループアンテナ26により携帯端末6から輻射される電磁波を受信する。受信された電磁波はRFインターフェイス部24に伝送され、RFインターフェイス部24は電磁結合による起電力を発生する。この起電力によりNFCタグ部4は電力を得て動作する。同時に、RFインターフェイス部24で受信された電磁波は、RF制御部23に伝送される。
【0098】
NFCタグ制御部21はRF制御部23を制御して、RF制御部23に伝送された電磁波を復調して復調データを得る。NFCタグ制御部21は復調データを得ることで、携帯端末6からNFCタグデータの読み取り要求がなされていることを検知できる。NFCタグ制御部21は、NFCタグデータの読み取り要求がなされていることを検知すると、メモリ22にNFCタグデータとして書き込まれている接続情報(SSID、暗号化キー、IPアドレス)を読み出してRF制御部23に転送する。
【0099】
NFCタグ制御部21はRF制御部23を制御し、転送された接続情報をNFC通信規格に基づいて変調する。変調された接続情報は、RFインターフェイス部24、ループアンテナ26を介して電磁波(レスポンスデータ)として輻射される(S1001)。NFCタグ制御部21は、レスポンスデータの送信を終えたことに応じて、タグ読み取り割り込み発生部21aにより割り込み信号を発生させる。
【0100】
そして、携帯端末6では、ループアンテナ44により画像形成装置1から輻射された電磁波(レスポンスデータ)が受信される。受信された電磁波は、RFインターフェイス部43を介してRF制御部42に伝送される。NFC_R/W制御部41はRF制御部42を制御して、RF制御部42に伝送された電磁波を復調して復調データを得る。その後、携帯端末6では、NFC_R/W制御部41により画像形成装置1から接続情報を読み取ったことが制御部31に通知される。同時に、NFC_R/W制御部41は、読み取った接続情報を制御部31に転送する。
【0101】
携帯端末6はNFC通信により画像形成装置1から接続情報を取得すると、取得した接続情報に基づき、画像形成装置1に対してWiFi接続の「接続要求」(所定信号)を送信する(S1002)。一般的に、WiFiなどの無線通信では、中継地点の役割を果たすアクセスポイントにWiFi対応の端末が接続することで通信ネットワークが形成される。本実施形態では、画像形成装置1がアクセスポイントに相当対応し、携帯端末6にWiFi対応の端末に相当する。ここで、例えばアクセスポイントの役割を果たす画像形成装置1が複数存在する場合、携帯端末6はいずれの画像形成装置1(アクセスポイント)に接続するかを選択しなくてはならない。ユーザは携帯端末6を接続する画像形成装置1を携帯端末6に識別させる必要があり、そのときの識別標識の役割を果たすのが「SSID」である。NFC通信により携帯端末6と画像形成装置1とが接続されていない場合、ユーザは携帯端末6に表示される複数の「SSID」の中から接続したい画像形成装置1に対応する「SSID」を選択して送信する必要がある。この点、本実施形態のように、NFC通信に接続されている場合は、NFC通信によって自動的にユーザが接続したい画像形成装置1に対応する「SSID」が取得されることで、ユーザは手動で「SSID」を選択しなくて済む。
【0102】
「SSID」により画像形成装置1が識別された場合、次に携帯端末6と画像形成装置1間にWiFi接続を確立するが、そのためには暗号化キーが必要である。暗号化キーは、通信内容を暗号化するためのものである。ユーザは手動で「SSID」を選択した場合、暗号化キーも手動で入力する必要がある。本実施形態では、「SSID」と同様に暗号化キーもNFCタグデータに含まれている。そのため、ユーザが携帯端末6をNFCタグ部4にタッチすることにより、画像形成装置1から「SSID」に加えて暗号化キーも携帯端末6へ送られてくる。
【0103】
また、本実施形態では、画像形成装置1のIPアドレスに関する情報もNFCタグデータに含まれている。そのため、携帯端末6はNFCタグデータを取得することにより、ネットワーク上における画像形成装置1のアドレスを知ることができる。
【0104】
以上により、画像形成装置1による携帯端末6の認証(ユーザ認証)が終了すると、画像形成装置1は携帯端末6とのWiFi接続を確立する。そして、画像形成装置1はWiFi接続を確立すると、携帯端末6からのWiFi接続の「接続要求」(S1002)に対するWiFi通信の「接続応答」をNFC通信により携帯端末6へ送信する(S1003)。CPU7は、携帯端末6に対し「接続応答」を送信したときに無線LAN接続が確立されたと判定し、その「接続応答」の送信後にNFC通信を終了する。こうして、SSIDと暗号化キーを用いた認証が行われた段階でWiFi通信が開始されるが、その状態では「接続応答」を携帯端末6に対して送信するために依然としてNFC通信が続いている。そして、CPU7は「接続応答」を携帯端末6に対して送信を完了したタイミングでNFC通信を終了する。「接続応答」の送信を完了したら、CPU7は上述したように携帯端末6を画像形成装置1から離してよい旨を表示部2aに表示する(
図16(b)参照)。なお、本実施形態の場合、CPU7は複数回の接続情報の送信後、所定時間内(例えば5秒以下)に携帯端末6から「接続要求」を受信しなければ無線LAN接続を確立し得ない。
【0105】
なお、上述したような携帯端末6から画像形成装置1に対してポーリング動作がなされる構成に限らず、画像形成装置1から携帯端末6に対してポーリング動作がなされる構成であってもよい。そこで、画像形成装置1から携帯端末6に対してポーリング動作がなされる構成の場合について、
図18(a)乃至
図18(c)を用いて説明する。
【0106】
画像形成装置1と無線通信可能な電子モジュールとしては、携帯端末6の他に、例えばIDカードが挙げられる。携帯端末6はNFC_R/W部36によりNFC通信をする際に、内蔵されている電池の電力を用いて電磁波を輻射する、所謂アクティブ型の電子モジュールである。他方、IDカードは電池を内蔵していないため、自身が電力を用いて電磁波を輻射することができない。IDカードはNFC通信する際に、受信した電磁波をエネルギー源として電磁波を輻射する、所謂パッシブ型の電子モジュールである。電子モジュールが上記したアクティブ型かパッシブ型かによって、ポーリング動作は異なる。
【0107】
既に述べたように、ポーリング動作は複数の機器やソフトウェアを円滑に連携させるための制御方式の1つであり、画像形成装置1はポーリング動作によって通信可能距離内にある携帯端末6やIDカードなどの電子モジュールの検知を行い得る。
図18(a)に示すように、電子モジュールを検知するためのポーリング信号を出力する出力動作、及び当該ポーリング信号に対する電子モジュールからの応答信号の受信を所定時間監視する監視動作を1セットとして、それらの動作が所定回数繰り返される。したがって、ポーリング動作中、ポーリング信号は所定の出力間隔で出力されることになる。なお、以下においては、ポーリング動作中の期間、即ちポーリング信号を出力して電子モジュールの検知を行っている期間を「検知期間」と称す。
【0108】
画像形成装置1のNFCタグ部4は、検知期間中にNFCタグ部4の通信可能距離内に電子モジュールが侵入した場合に、当該電子モジュールからレスポンスデータを受信する。ここで、NFCタグ部4の通信可能距離内に進入した電子モジュールがパッシブ型(例えば、IDカードなど)である場合と、アクティブ型(例えば、携帯端末6)である場合とでは、NFCタグ部4が受信するレスポンスデータの受信タイミングが異なる。レスポンスデータの受信タイミングとは、ポーリング信号を出力してから当該ポーリング信号に応じたレスポンスデータを受信するまでの期間である。
【0109】
例えば、IDカードはポーリング信号を受信すると、そのポーリング信号の反射波としてレスポンスデータを出力する。この場合、NFCタグ部4の通信可能距離内にIDカードが侵入した際において、NFCタグ部4がポーリング信号を出力してからレスポンスデータを受信するまでの期間は、
図18(b)に示すようになる。これに対して、携帯端末6は自らの電力でレスポンスデータを送信する機器であるため、パッシブ型の電子モジュールとは異なり、ポーリング信号を受信した直後にレスポンスデータを出力する必要がない。そのため、
図18(c)に示すように、NFCタグ部4の通信可能距離内に携帯端末6が侵入した際において、NFCタグ部4がポーリング信号を出力してからレスポンスデータを受信するまでの期間はIDカードの場合よりも長くなる。なお、NFCタグ部4は、ポーリング動作中に電子モジュールからレスポンスデータを受信した場合には、ポーリング動作を中断して、これ以降のNFC通信のための各処理をCPU7に引き継ぐ。
【0110】
NFCタグ部4は、電子モジュールからレスポンスデータを受けたことに応じて、SSIDおよび暗号化キーを電子モジュールに対して送信する。これらのデータは容量も小さいため、NFC通信により送信することができる。電子モジュールは、NFCタグ部4から受信したSSIDおよび暗号化キーを用いてWiFiへハンドオーバー接続する。電子モジュールからWiFi通信の「接続要求」がなされ、その後、画像形成装置1が電子モジュールに対して「接続応答」を送信したタイミングで、CPU7はWiFi接続が確立されたと判定してWiFi接続の接続確立を報知する。
【0111】
ここで、携帯端末6を用いたユーザ操作の一例について、
図9を参照しながら
図19(a)乃至
図19(d)を用いて簡単に説明する。
図19(a)は、NFC通信を行うために携帯端末6にてアプリケーションプログラムが立ち上げられた場合に、携帯端末6(詳しくは表示部34a)に表示される初期画面である。このとき、携帯端末6はポーリング動作を行うために電磁波を輻射している。本実施形態では、初期画面に「キャンセル」ボタンが表示されている。ユーザにより「キャンセル」ボタンがタッチ操作された場合、携帯端末6はポーリング動作を行うための電磁波の輻射を止め、当該アプリケーションプログラムは終了される。また、
図19(a)の「複合機探索中」の表示が開始された場合、表示開始から所定時間が経過すると、自動的に当該アプリケーションプログラムは終了される。
【0112】
図19(b)は、携帯端末6と画像形成装置1とのWiFi接続が確立されたことに応じて、表示部34aに表示される「WiFi接続報知画面」である。即ち、「WiFi接続報知画面」は、携帯端末6のCPU32が画像形成装置1から「接続応答」を受信した場合に表示部34aに一時的に表示される。この画面が表示されることにより、ユーザは携帯端末6側で、携帯端末6と画像形成装置1とのWiFi接続が確立されたことを確認し得る。上述したように、画像形成装置1は、WiFi接続が確立されたことをユーザに知らせる報知音を、「接続応答」を携帯端末6に送信するタイミングで発生させる。それ故、画像形成装置1から報知音が発生されてから、
図19(b)に示した「WiFi接続報知画面」が携帯端末6に表示される。しかしながら、この時間差は数msであるため、ユーザの体感としてはほぼ同時である。
【0113】
図19(b)に示した「WiFi接続報知画面」の表示後、携帯端末6の表示は自動的に
図19(c)に示した「ジョブ選択画面」に遷移される。「ジョブ選択画面」は、ユーザに実行したいジョブを選択させるための画面である。
図19(c)に示した「ジョブ選択画面」には、ジョブの一例として「取り込む」「プリントする」のいずれかのジョブを選択可能な2つのボタンと、「アプリを終了する」ための1つのボタンとが表示されている。なお、ジョブ選択画面に表示されるジョブの種類並びにそれに対応して表示されるボタンの数は2つに限らない。「取り込む」「プリントする」以外のジョブが選択できてもよいし、これらのジョブに加えて他のジョブを選択できる仕様であっても構わない。
【0114】
ここで、本実施形態におけるアプリケーションプログラムを用いて、画像形成装置1に実行させることが可能な「取り込む」ジョブと「プリントする」ジョブとについて、簡単に説明する。「取り込む」ジョブは、画像形成装置1に原稿を読み取らせて(所謂、原稿スキャン)、読み取った原稿の画像データを携帯端末6に記憶するための機能である。画像形成装置1は、原稿を読み取るために画像読取ユニット10(
図2参照)を使用する。即ち、
図19(b)に示した「WiFi接続報知画面」が表示され、ユーザは携帯端末6と画像形成装置1とのWiFi接続が確立されたことを確認すると、携帯端末6に取り込みたい原稿を画像読取ユニット10にセットする。その後、ユーザが
図19(c)に示したジョブ選択画面で「取り込む」ボタンをタッチ操作すると、画像読取ユニット10による原稿の読み取りが開始される。そして、原稿の読み取りが終了すると、画像形成装置1は読み取った原稿の画像データをWiFi通信により携帯端末6に送信する。携帯端末6は、WiFi通信により画像形成装置1から受信した原稿の画像データをメモリ33に記憶する。
【0115】
「プリントする」ジョブは、携帯端末6に保存されている画像データを画像形成装置1にて印刷するための機能である。ユーザが
図19(c)に示したジョブ選択画面で「プリントする」ボタンをタッチ操作すると、携帯端末6の表示は
図19(d)に示した「データ選択画面」に遷移する。「データ選択画面」は、画像形成装置1を用いて印刷可能な画像データの一覧を表示した画面である。この「データ選択画面」において、ユーザは印刷したい画像データを選択し得る。画像データが選択された場合、選択された画像データがWiFi通信により携帯端末6から画像形成装置1へ送信される。画像形成装置1は携帯端末6から画像データを受信することに応じて画像形成ジョブを開始し、記録材Sに受信した画像データに基づく画像を形成する。このようにして、ユーザは携帯端末6のメモリ33や記憶装置35に記憶されている写真や文書などの印刷を行うことができる。WiFi通信などの無線通信はNFC通信などの近距離無線通信に比べ、単位時間あたりに通信可能なデータ量が大きいことから、写真や文書などのデータ量が大きい画像データを比較的に短時間で送受信可能である。なお、
図19(c)に示した「ジョブ選択画面」における「アプリを終了する」ボタンがタッチ操作された場合、立ち上げられたアプリケーションプログラムが終了される。
【0116】
なお、WiFi通信後の携帯端末6を用いたユーザ操作は上述した例に限らない。例えば、携帯端末6にてアプリケーションプログラムが立ち上げられた場合に、携帯端末6に
図19(c)に示した「ジョブ選択画面」が表示されるようにしてもよい。この場合に、例えばジョブ選択画面の「プリントする」ボタンがユーザによりタッチ操作されたとする。そして、ユーザが印刷したい画像データを選択(
図19(d)参照)した上で、携帯端末6を画像形成装置1の操作パネル2(
図6参照)に近接させたとする。そうすると、携帯端末6が操作パネル2に近接されたことに応じて、上記したようにNFC通信及びWiFi通信が行われて、選択された画像データに基づく画像が記録材Sに画像形成される。この場合、ユーザは印刷を希望する画像データを選択してから携帯端末6を操作パネル2に近接させればよいことから、そうした操作は簡易である。
【0117】
以上のように、本実施形態では、ユーザが携帯端末6を画像形成装置1に近接させると、携帯端末6と画像形成装置1との間でNFC接続が確立され、携帯端末6は画像形成装置1からNFCタグに記憶されているWiFi接続のための接続情報を受信する。携帯端末6は受信した接続情報に基づいて、画像形成装置1との間でNFCよりも通信範囲が広く且つ通信速度が速いWiFi接続を確立し、それ以降、携帯端末6と画像形成装置1間のデータ送受信はWiFi通信により行われる。画像形成装置1では、WiFi接続の確立後にNFC通信を終了するが、その際に、携帯端末6を近接する必要がなくなったことをユーザに報知する。これによって、ユーザは例えWiFi通信によるデータ送受信中であっても携帯端末6を画像形成装置1から離すことができるので、携帯端末6を操作しやすくなる。
【0118】
<他の実施形態>
なお、上述の実施形態では、携帯端末6とNFC通信を行うためのNFCタグ部4のループアンテナ26を操作パネル2内に配置した構成について説明した(
図7参照)。ただし、ループアンテナ26は、操作パネル2外にあってもよい。例えば、操作パネル2に隣接した位置に設けてもよい。この場合、操作パネル2の表示部2aに携帯端末6をかざす所定位置として、ループアンテナ26が配置されている位置を指し示す表示を行うようにすると好ましい。
【符号の説明】
【0119】
1…画像形成装置、2…操作パネル、2a…表示部、2b…操作入力部(操作部)、2c…音発生部(操作音発生部)、2e…発光部、3…制御部、4…第一通信部(NFCタグ部)、5…第二通信部(無線LAN通信部)、6…携帯通信端末(携帯端末)、11…画像形成部(画像形成ユニット)、26…ループアンテナ(アンテナ)