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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】画像読取装置及び画像処理装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/04 20060101AFI20240109BHJP
   H04N 1/387 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
H04N1/04 106A
H04N1/12 Z
H04N1/387 800
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019208242
(22)【出願日】2019-11-18
(65)【公開番号】P2021082927
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 諭史
【審査官】橋爪 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-050800(JP,A)
【文献】特開2016-163168(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00
H04N 1/04- 1/207
H04N 1/38- 1/393
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿が載置されるトレイと、
前記トレイに載置された前記原稿を搬送方向に搬送する搬送路と、
前記搬送方向とは直交する幅方向に移動可能な様に構成される第1規制部材及び第2規制部材を有し、前記トレイに載置された前記原稿を前記幅方向の両側から抑える規制手段と、
前記搬送路の読取位置において画像を読み取る読取手段と、
前記原稿が前記読取位置に到達する前から、少なくとも前記原稿が前記読取位置を抜けるまでの間に前記読取手段が読み取った画像データが示す読取画像における前記原稿の角度の値を検出する検出手段と、
前記画像データを補正する補正手段と、
前記検出手段により検出された前記原稿の角度が閾値より大きいかを判断し、前記幅方向のサイズが異なる複数の前記原稿が前記トレイに載置される混載モードであるかを判断し、前記補正手段により前記画像データの補正を行うか否かを制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記検出手段により検出された前記角度の値が前記閾値より大きいと判断し、かつ、前記混載モードであると判断した場合、前記補正手段に前記閾値を用いて前記画像データの補正を行わせ、前記検出手段により検出された前記角度の値が前記閾値より大きいと判断し、かつ、前記混載モードではないと判断した場合、前記補正手段に前記画像データの補正を行わせないことを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記検出手段が検出する前記読取画像における前記原稿の角度は、前記原稿の前記搬送方向における先端側の辺の前記幅方向に対する角度であり、
前記補正手段は、前記閾値を用いて前記画像データの補正を行う場合、補正後の前記画像データが示す画像における前記原稿の前記先端側の辺の方向が前記幅方向に近づく様に、前記閾値だけ前記原稿を回転させる補正を前記画像データに対して行うことを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記検出手段により検出された前記角度の値が前記閾値以下である場合、前記制御手段は、補正後の前記画像データが示す画像における前記先端側の辺の方向が前記幅方向となる様に、前記補正手段に前記画像データ補正を行わせることを特徴とする請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
原稿が載置されるトレイと、
前記トレイに載置された前記原稿を搬送方向に搬送する搬送路と、
前記搬送方向とは直交する幅方向に移動可能な様に構成される第1規制部材及び第2規制部材を有し、前記トレイに載置された前記原稿を前記幅方向の両側から抑える規制手段と、
前記搬送路の読取位置において画像を読み取る読取手段と、
を有する画像読取装置から、前記読取手段が読み取った画像データを取得して処理する画像処理装置であって、
前記画像データは、前記原稿が前記読取位置に到達する前から、少なくとも前記原稿が前記読取位置を抜けるまでの間に前記読取手段が読み取ったデータであり、
前記画像処理装置は、
前記画像データが示す読取画像における前記原稿の角度の値を検出する検出手段と、
前記画像データを補正する補正手段と、
前記検出手段により検出された前記原稿の角度が閾値より大きいかを判断し、前記幅方向のサイズが異なる複数の前記原稿が前記トレイに載置される混載モードであるかを判断し、前記補正手段により前記画像データの補正を行うか否かを制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記検出手段により検出された前記角度の値が前記閾値より大きいと判断し、かつ、前記混載モードであると判断した場合、前記補正手段に前記閾値を用いて前記画像データの補正を行わせ、前記検出手段により検出された前記角度の値が前記閾値より大きいと判断し、かつ、前記混載モードではないと判断した場合、前記補正手段に前記画像データの補正を行わせないことを特徴とする画像処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置が読み取った画像データの補正技術に関する。
【背景技術】
【0002】
画像読取装置は、原稿に光を照射し、撮像部を備えた読取部でその反射光を検出することで当該原稿の画像を読み取る。画像読取装置として、自動原稿送り装置(ADF)により原稿トレイに載置された原稿を搬送路に給送し、搬送路を搬送される原稿を読取部で読み取るものがある。この様な画像読取装置においては、原稿を搬送するローラのニップ圧や回転速度のばらつきにより、原稿の斜行や、搬送方向と直交する方向(幅方向)における原稿位置のバラつきが生じ得る。特許文献1は、原稿の第1面の画像データから検出された原稿の先端の影の主走査方向に対する傾きから第1面が読み取られる際の原稿の斜行角度を検出し、原稿の第2面の画像データから検出された原稿の先端の影の主走査方向に対する傾きから第2面が読み取られる際の原稿の斜行角度を検出し、検出された斜行角度に基づき、第1面及び第2面ぞれぞれの画像データを回転補正する構成を開示している。
【0003】
ここで、補正可能な角度は、補正処理に使用する画像メモリの容量等により制限される。特許文献2は、原稿の斜行角度が、補正可能な最大角度(以下、最大補正角度)より大きい場合、その後の処理、具体的には、傾き補正を実行しないか、最大補正角度分の傾き補正を行うかをユーザに選択させる構成を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-118911号公報
【文献】特開2000-244728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
原稿の斜行が最大補正角度より大きくなることを抑えるため、原稿トレイには原稿の幅方向における位置を規制するサイド規制板が設けられる。しかしながら、原稿トレイに載置された原稿の幅方向におけるサイズ(以下、原稿幅)が小さい場合、サイド規制板による原稿の規制が働きにくく、原稿の斜行角度が最大補正角度より大きい斜行角度となることが生じ得る。特許文献2の構成では、原稿が最大補正角度より大きく斜行する度に、その後の処理を選択するための操作をユーザが行う必要があり、画像読取装置の操作性が低下してしまう。
【0006】
本発明は、画像読取装置の操作性が低下してしまうことを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によると、画像読取装置は、原稿が載置されるトレイと、前記トレイに載置された前記原稿を搬送方向に搬送する搬送路と、前記搬送方向とは直交する幅方向に移動可能な様に構成される第1規制部材及び第2規制部材を有し、前記トレイに載置された前記原稿を前記幅方向の両側から抑える規制手段と、前記搬送路の読取位置において画像を読み取る読取手段と、前記原稿が前記読取位置に到達する前から、少なくとも前記原稿が前記読取位置を抜けるまでの間に前記読取手段が読み取った画像データが示す読取画像における前記原稿の角度の値を検出する検出手段と、前記画像データを補正する補正手段と、前記検出手段により検出された前記原稿の角度が閾値より大きいかを判断し、前記幅方向のサイズが異なる複数の前記原稿が前記トレイに載置される混載モードであるかを判断し、前記補正手段により前記画像データの補正を行うか否かを制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記検出手段により検出された前記角度の値が前記閾値より大きいと判断し、かつ、前記混載モードであると判断した場合、前記補正手段に前記閾値を用いて前記画像データの補正を行わせ、前記検出手段により検出された前記角度の値が前記閾値より大きいと判断し、かつ、前記混載モードではないと判断した場合、前記補正手段に前記画像データの補正を行わせないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、画像読取装置の操作性が低下してしまうことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態による画像読取装置の構成図。
図2】一実施形態による画像読取装置の制御構成図。
図3】一実施形態によるエッジ検出部での処理の説明図。
図4】一実施形態による原稿情報の説明図。
図5】一実施形態によるレジストレーション補正処理の説明図。
図6】一実施形態による原稿の読取処理のフローチャート。
図7】一実施形態による原稿の読取処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
<第一実施形態>
図1は、本実施形態による画像読取装置100の構成図である。なお、以下の説明において、原稿の搬送方向を副走査方向とも呼び、副走査方向と直交する方向を幅方向又は主走査方向とも呼ぶものとする。トレイ102には、複数の原稿101が載置され得る。サイド規制部材123は、主走査方向においてトレイ102の両側に設けられる2つの規制板を有し、2つの規制板は、主走査方向において移動可能な様に構成される。ユーザが2つの規制板の主走査方向の距離(間隔)を調整することで、原稿101は、図の手前側と奥側から抑えられる。この結果、原稿101の主走査方向における位置が規制される。なお、2つの規制板は、トレイ102の主走査方向の中心位置に対して等距離となる様に可動する。また、2つの規制板の間隔に応じて、トレイ102の内部に設置された不図示のボリューム抵抗の抵抗値が変動する様に構成される。画像読取装置のコントローラ200(図2)は、ボリューム抵抗の抵抗値から2つの規制板の主走査方向の間隔(即ち、原稿101の主走査方向における長さ)を検出することができる。
【0012】
ピックアップローラ103は、トレイ102に載置されている原稿101を画像読取装置100の内部に給送する。分離ローラ104及び105は、ピックアップローラ103により複数の原稿101が同時に給送されることを防ぐために設けられる。搬送路に給送された原稿101は、搬送ローラ106及びリードローラ107によって読取位置Aに向けて搬送される。
【0013】
読取位置Aには透明なガラス108が配置されており、ガラス108に対して搬送路と逆側には読取部109Aが設けられる。読取部109Aは、LED110、イメージセンサ111及び光学部品群112を有し、原稿101の表面(第1面)側から画像を読み取る。なお、LED110は、ガラス108を介して原稿101の表面に光を照射する。光学部品群112は、ガラス108を介して受信する原稿101での反射光をイメージセンサ111に導く。イメージセンサ111は、受光する反射光に基づきアナログ画像データを出力する。なお、イメージセンサ111は、主走査方向に渡る1ライン分の画像を同時に読み取る。したがって、原稿101を搬送しながら、複数回、イメージセンサ111により1ライン分の画像を読み取ることで、イメージセンサ111は、原稿101全体を含む画像データを出力することができる。読取部109Aの図示しないA/D変換部は、アナログ画像データをデジタル画像データに変換してコントローラ200(図2)に出力する。
【0014】
原稿101の搬送方向において、読取位置Aの上流側には、原稿101を検知する検知センサ113が設けられる。コントローラ200は、検知センサ113が原稿を検知している期間に基づき原稿の副走査方向の長さを検出する。また、コントローラ200は、検知センサ113が原稿101を検知したタイミングに基づき読取部109Aが読み取りを開始するタイミング及び読み取りを行う期間を判定する。本実施形態において、コントローラ200は、搬送方向において、原稿101が検知センサ113によって検知されてから原稿101の先端側の辺が読取位置Aに到達するまでのタイミングから、少なくとも原稿101の後端が読取位置Aを抜けるまでの間、読取部109Aに読み取りを行わせる。読取部109Aと原稿101との距離を安定させるため、押さえローラ114及び115は、原稿101をガラス108に向けて押さえる。なお、押さえローラ114及び115の間の読取部109Aと正対する位置には白色のガイド板116が配置される。
【0015】
読取位置Aを通過した原稿101は、搬送ローラ117により読取位置Bに向けて搬送される。読取位置Bには透明なガラス118が配置されており、ガラス118に対して搬送路とは逆側には読取部109Bが設けられている。読取部109Bは、読取部109Aと同様の構成であり、原稿101の裏面(第2面)側から画像を読み取る。読取部109Bが読み取りを開始するタイミング及び読み取りを行う期間も、検知センサ113が原稿を検知したタイミングに基づき判定される。読取部109Bに正対する位置には白色のガイド板119が配置される。読取位置Bを通過した原稿101は、排紙ローラ120により排紙トレイ121に排出される。ガラス108の右側にはシェーディングデータを取得する際の基準読取部材である白色基準板122が設けられる。なお、原稿101の表面のみを読み取る読取処理の場合、読取部109Aによる読み取りのみが行われ、読取部109Bによる読み取りは行われない。
【0016】
図2は、画像読取装置100の制御構成図である。コントローラ200のCPU203は、不揮発性メモリ209に格納されているプログラムを実行することで画像読取装置100を制御する。搬送モータ201は、図1の各ローラの駆動源であり、CPU203の制御により回転駆動される。操作部202は、ユーザインタフェースを提供する。上述した様に、読取部109A及び109Bは、デジタル画像データをコントローラ200に出力する。この画像データは、反射光の強度が大きいほど高い数値となる。この数値レベルを、以下では、輝度レベルと表現する。また、以下では、読取部109Aが出力する画像データを表面画像データと表記し、読取部109Bが出力する画像データを裏面画像データと表記する。
【0017】
読取部109A及び109Bのイメージセンサ111は、主走査方向に渡り、R(赤)、G(緑)、B(青)の光を受光する複数の画素を有している。読取部109Aが出力する表面画像データはシェーディング回路204Aに入力され、読取部109Bが出力する裏面画像データはシェーディング回路204Bに入力される。シェーディング回路204A及び204Bは、画像データに対して加減算や乗除算を行うことで、LED110の光量の不均一性や、イメージセンサ111の画素毎の感度ムラの影響を補正(シェーディング補正)し、主走査方向に均一な画像データを生成する。シェーディング回路204Aによるシェーディング補正後の表面画像データは、画像メモリ205に格納される。一方、シェーディング回路204Bによるシェーディング補正後の裏面画像データは、画像反転回路210に入力される。画像反転回路210は、裏面画像データの主走査方向を反転させる。これは、本実施形態において、読取部109A及び読取部109Bは同様の構成であり、読取部109Bが読み取る画像は、読取部109Aが読み取る画像に対して主走査方向が反転しているからである。画像反転回路210による処理後の裏面画像データは、画像メモリ205に格納される。
【0018】
シェーディング回路204Aから出力される表面画像データはエッジ検出部206にも入力される。エッジ検出部206は、表面画像データが示す読取画像から原稿の検出対象辺を検出する。本実施形態において、検出対象辺は、原稿101の先端側の辺(先端エッジ)である。なお、本実施形態では、入力されるRGBの画像データの内のGの画像データを使用して原稿の先端エッジを検出するものとする。しかしながら、先端エッジの検出に使用する色は任意である。
【0019】
図3は、エッジ検出部206による先端エッジの検出処理の説明図である。図3は、先端エッジが読取位置Aに到達する前から所定の時間毎に読取部109Aによって得られた主走査方向における画素の列を副走査方向に結合させた画像を示している。上述した様に、エッジ検出部206に入力される表面画像データは、原稿101の先端エッジが読取位置Aに到達する前の時刻からのものである。つまり、エッジ検出部206による画像の読み取りが開始されると、まずガイド板116が読み取られる。つまり、エッジ検出部206に入力される表面画像データは、ガイド板116を示す画像データ及び原稿101の先端エッジを含む。エッジ検出部206は、主走査方向に3画素、かつ、副走査方向に3画素の計9画素分の領域を1つのブロックとして表面画像データの2値化処理を実行する。以下では、読取部109Aの主走査方向の画素数を7500個とし、読取部109Aは、原稿が読取位置Aを通過する際、12000回の読み取りを行うものとする。そして、主走査方向の画素位置をn(1≦n≦7500)と表記し、副走査方向の画素位置をm(1≦m≦12000)と表記する。また、1つのブロックの9つの画素の輝度値をpx(x=0~8)とし、その最大値及び最小値をpmax及びpminと表記する。
【0020】
図3(A)のA点のように9画素全てがガイド板116(白色)の箇所では9画素全てが白画素となるためpmaxとpminの差は小さい値となる。一方、図3(A)のB点のようにガイド板116(白色)と先端エッジの影(グレー)との境目では、9画素の中に白画素とグレー画素が混在するため、pmaxとpminの差が大きくなる。従って、pmaxとpminの差が所定の閾値pthよりも大きい場合、ブロック内に先端エッジの候補となる画素(以下、エッジ候補画素と称する)があると判定することができる。本実施形態では、ブロック内のpmaxとpminの差が所定の閾値pthよりも大きいと、当該ブロックの中央画素(座標(n、m)の画素)をエッジ候補画素と判定する。この判定処理を、n=1、n=7500、m=1、m=12000を除く各n、mに対して行うことで原稿101の先端エッジを判定することができる。図3(A)は、8ビット(輝度レベル:0~255)のGの画像データが示す画像であり、図3(B)は、図3(A)の画像の画像データを閾値pth=14で2値化した画像データが示す画像である。図3(B)の白色は、上記検出処理によりエッジ候補と判定された画素を示している。図3(B)に示す複数のエッジ候補画素の内、副走査方向において最も先端側にある主走査方向のエッジ候補画素の列が、原稿101の先端エッジとして検出される。
【0021】
図2に戻り、エッジ検出部206が出力する2値化データは、表面原稿情報判定部207に入力される。なお、表面原稿情報判定部207に入力される2値化データが示す画像は、図4の点線で示す範囲の画像であり、原稿101を包含するものである。この点線の範囲は、n=1~7500、m=1~12000である。表面原稿情報判定部207は、入力される2値化データに基づき表面の原稿情報(以下、表面原稿情報)を判定する。ここで、表面原稿情報は、読取画像における原稿の位置及び角度を示す情報である。なお、原稿101の位置とは、原稿101の所定の第1位置の表面画像内における位置(x1,y1)である。本実施形態では、この第1位置を、原稿101の先端エッジの2つの端部の内の一方(図4の左側)の端部とする。また、原稿101の角度とは、表面画像内における原稿101の所定の辺の表面画像の基準方向に対する角度である。本実施形態では、当該所定の辺を原稿101の先端エッジとし、基準方向を主走査方向とする。つまり、原稿101の角度は、図4のθ1である。なお、搬送方向において先端エッジが位置(x1,y1)よりも上流側に傾く場合、角度θ1は負の値をとり、先端エッジが位置(x1,y1)よりも下流側に傾く場合、角度θ1は正の値をとるものとする。また、表面原稿情報判定部207は、原稿101の先端エッジの2つの端部の主走査方向における距離(幅)Wを判定する。そして、表面原稿情報判定部207は、表面原稿情報と、幅WをCPU203に出力する。
【0022】
CPU203は、表面原稿情報、つまり、位置(x1,y1)及び角度θ1を補正部208に出力する。補正部208は、位置(x1,y1)及び角度θ1に基づき、画像メモリに格納されている表面画像データの斜行補正(レジストレーション補正)を行う。図5は、補正部208が実行するレジストレーション補正の説明図である。補正部208は、角度θ1に基づき原稿101の先端側の辺が主走査方向と平行となる様に表面画像データを変換する。以下、この変換を傾き補正また角度補正として参照する。図5(A)は、表面画像データが示す読取画像が、図4の画像である場合において、原稿101の先端の辺が主走査方向と平行になる様に傾き補正を行った状態を示している。補正部208は、さらに、原稿の第1位置が、読取画像の基準位置となる様に、平行移動する変換を表面画像データに対して行う。本実施形態は、この基準位置を座標(1,1)とする。以下、この変換を位置補正として参照する。図5(B)は、原稿の第1位置が基準位置となる様に、図5(A)の画像の位置補正を行った状態を示している。この処理により、表面画像データは、原稿101の第1位置が画像の基準位置(1、1)になり、斜行も補正された画像を示す様になる。補正部208は、レジストレーション補正を行った表面画像データを出力する。
【0023】
なお、裏面画像データのレジストレーション補正も表面画像データのレジストレーション補正と同様に実行される。なお、裏面画像データのレジストレーション補正に使用する裏面原稿情報については、表面原稿情報に基づき判定することができる。或いは、画像反転回路210による反転後の裏面画像データもエッジ検出部206に入力し、表面原稿情報と同様に、裏面画像データから裏面原稿情報を検出する構成とすることもできる。
【0024】
図6は、本実施形態による画像読取処理のフローチャートである。なお、図6のフローチャートは、原稿の表面の画像のみを読取部109Aで読み取る読取指示がユーザに入力された場合の画像読取処理を示している。読取指示の入力により、コントローラ200は、S10で、トレイ102上の原稿101の給送及び搬送を開始する。コントローラ200は、S11で、検知センサ113が原稿を検知するまで待機する。検知センサ113が原稿を検知すると、コントローラ200は、読取部109Aによる画像の読取開始タイミング及び読み取りの期間を判定する。そして、コントローラ200は、判定した読取開始タイミングであるS12から、表面画像データの画像メモリ205への格納を開始する。なお、S12において、表面画像データのエッジ検出部206への出力も開始される。エッジ検出部206は、原稿の先端エッジを検出する検出処理を行う。そして、S13において、表面原稿情報判定部207は、先端エッジの検出結果に基づき表面原稿情報を判定する。
【0025】
表面原稿情報判定部207による表面原稿情報の判定が完了すると、CPU203は、角度θ1が、閾値以下、つまり、最大補正角度以下であるか否かを判定する。角度θ1が最大補正角度以下であると、補正部208は、S15において、画像メモリ205に格納された表面画像データのレジストレーション補正を行う。コントローラ200は、S16において、補正部208が画像メモリ205に格納されている表面画像データのレジストレーション補正を行って、補正後の画像データを出力するまで待機する。補正部208が、補正後の画像データを出力すると、コントローラ200は、S17において、画像を読み取る次の原稿がトレイ102にあるかを判定する。次の原稿がある場合、コントローラ200は、S10から処理を繰り返す。一方、次の原稿が無い場合、コントローラ200は、図6の処理を終了する。
【0026】
また、S14において、角度θ1が、最大補正角度より大きいと、CPU203は、S18において、混載モードであるか否かを判定する。混載モードとは、トレイ102に、主走査方向のサイズ(幅)が異なる複数の原稿を載置するモードである。混載モードにおいては、原稿の搬送中に当該原稿の主走査方向における長さが検知される。具体的には、例えば、搬送路に主走査方向に並べて設けられた複数のシートセンサの検知結果に基づいて原稿の主走査方向における長さが検知されてもよい。或いは、読取部109Aによって読み取られた画像に基づいて原稿の主走査方向における長さが検知されてもよい。画像読取装置を混載モードにするか否かは、ユーザが操作部202を介して画像読取装置に設定する。混載モードの場合、サイド規制部材123の主走査方向の間隔は、載置されている原稿の最大幅に対応する値となる。この場合、最大幅より小さい幅の原稿101については、サイド規制部材123による規制が働かず、それが、最大補正角度より大きい斜行の原因となる。この場合、CPU203は、最大補正角度で画像データの角度補正を行うことを補正部208に通知する。したがって、補正部208は、S19で、角度θ1が最大補正角度であるものとして角度補正を行う。具体的には、補正部208は、角度補正後の画像データが示す画像における原稿101の先端側の辺が主走査方向に近づく様に、最大補正角度だけ原稿を回転させる補正を行う。なお、この場合、角度補正後の画像データが示す画像において原稿の先端側の辺は主走査方向に対して傾いているため、位置補正(図5(B))を行わない構成とすることができる。或いは、角度補正後の画像データが示す画像における原稿の先端側の辺の傾きを考慮して、原稿が画像からはみ出さない範囲で位置補正を行う構成とすることもできる。また、原稿の先端側の辺の主走査方向に対する傾きは小さく、かつ、通常の原稿には余白があるため、図5(B)で説明した様に位置補正を行う構成とすることもできる。S19でのレジストレーション補正後、コントローラ200は、S16に処理を進める。
【0027】
一方、S18において、混載モードではない場合、原稿101はサイド規制部材123により規制されている。この場合、CPU203は、最大補正角度より大きい角度θ1は、誤検知である可能性が高いと判断する。したがって、CPU203は、補正部208に表面画像データのレジストレーション補正を行わないことを指示する。この場合、補正部208は、S16で、画像メモリ205に格納された表面画像データのレジストレーション補正を行うことなく読み出して出力する。
【0028】
以上、本実施形態では、斜行角度θ1が最大補正角度より大きい場合、画像読取装置のモードに関する設定値に従い、レジストレーション補正を行うか否かを決定する。この設定値は、トレイ102に様々な幅の原稿101を載置する混載モードであるか否かを示す値である。より詳しくは、CPU203は、混載モードであるか否かにより、サイド規制部材123による原稿101の規制が働いているか否かを判定する。そして、規制が働いていないと判定すると、規制が働いていないことが最大補正角度より大きい斜行の原因であると判定して、最大補正角度での角度補正を行う。一方、規制が働いていると判定すると、検出された斜行角度は誤検出であると判定し、画像データの補正を行わない様にする。この構成により、画像読取装置の操作性が低下してしまうことを抑制することができる。
【0029】
<第二実施形態>
続いて、第二実施形態について、第一実施形態との相違点を中心に説明する。第一実施形態では、角度θ1が最大補正角度より大きい(図6のS14でNo)場合、混載モードであるか否かにより処理を変えていた。本実施形態では、角度θ1が最大補正角度より大きい場合、サイド規制部材123の2つの規制板の間隔Dと、表面原稿情報判定部207が判定する幅Wに基づきその後の処理を制御する。
【0030】
図7は、本実施形態による画像読取処理のフローチャートである。なお、図6に示す画像読取処理と同様の処理ステップについては同じステップ番号を付与してその説明については省略する。コントローラ200は、S10で原稿の給送を開始すると、S20で、サイド規制部材123の2つの規制板の間隔Dを検知する。また、本実施形態において、表面原稿情報判定部207は、S21において、表面原稿情報と、読取画像における原稿101の主走査方向の長さ(幅)W(図4参照)を判定する。そして、S14において、角度θ1が、最大補正角度より大きいと、CPU203は、S22において、幅Wが、間隔Dから所定値Cを減じた値より小さいかを判定する。所定値Cは、原稿の斜行により原稿幅より読取画像における幅Wが小さくなることを考慮するためのマージンである。幅Wが、間隔Dから所定値Cを減じた値より小さいと、サイド規制部材123が適切に調整されていないと判断される。つまり、サイド規制部材123による規制が働いていないと判断され、それが、最大補正角度より大きい斜行の原因であると判断される。この場合、CPU203は、最大補正角度で画像データの角度を補正することを補正部208に通知する。一方、幅Wが、間隔Dから所定値Cを減じた値より小さくないと、原稿101は、サイド規制部材123により規制されている。この場合、CPU203は、最大補正角度以上の角度θ1は、誤検知である可能性が高いと判断し、補正部208に表面画像データのレジストレーション補正を行わないことを指示する。
【0031】
以上、本実施形態では、斜行角度θ1が最大補正角度より大きい場合、画像読取装置が検知する検知値に従い、レジストレーション補正を行うか否かを決定する。この検知値は、トレイ102において原稿の斜行を規制するサイド規制部材123の主走査方向の間隔である。より詳しくは、CPU203は、検知値と原稿101の幅とを比較することでサイド規制部材123による原稿101の規制が働いているか否かを判定する。そして、規制が働いていないと判定すると、規制が働いていないことが最大補正角度より大きい斜行の原因であると判定して、最大補正角度での角度補正を行う。一方、規制が働いていると判定すると、検出された斜行角度は誤検出であると判定し、画像データの補正を行わない様にする。この構成により、画像読取装置の操作性が低下してしまうことを抑制することができる。なお、本実施形態では、図4に示す様に、読取画像における原稿の主走査方向の幅Wを検出していたが、読取画像において検出する原稿の先端エッジの長さを検出する構成とすることもできる。この場合、先端エッジの長さとサイド規制部材123の主走査方向の間隔とを比較して、サイド規制部材123による規制が働いているか否かを判定する。
【0032】
なお、上記実施形態における画像読取装置は、読取部109A及び読取部109Bを有し、1回の原稿の搬送で原稿の両面の画像を読み取るものであったが、1つの読取部109Aのみを有する画像読取装置に対しても本発明を適用することができる。また、本発明は、画像処理装置として実現することもできる。画像処理装置は、図2に示すコントローラ200を有し、画像読取装置が出力する画像データに対するレジストレーション補正を実行する。また、画像処理装置は、画像読取装置が混載モードであるか否かの設定値や、サイド規制部材123の間隔Dの検知値を画像読取装置から取得する。
【0033】
[その他の実施形態]
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0034】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0035】
102:トレイ、123:サイド規制部材、109A:読取部、206:エッジ検出部、207:表面原稿情報判定部、208:補正部、207:CPU
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7