(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/06 20060101AFI20240109BHJP
G03G 15/08 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
G03G15/06 101
G03G15/08 235
(21)【出願番号】P 2019211777
(22)【出願日】2019-11-22
【審査請求日】2022-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂巻 智幸
(72)【発明者】
【氏名】津田 俊介
【審査官】稲荷 宗良
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-311556(JP,A)
【文献】特開2015-203837(JP,A)
【文献】特開平09-034262(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/06
G03G 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体と、
前記像担持体の表面を所定の帯電電位に帯電させる帯電部と、
前記所定の帯電電位に帯電された前記像担持体の表面に静電潜像を形成する潜像形成部と、
トナーを含む現像剤を担持する現像剤担持体と、
前記現像剤担持体に担持されたトナーにより前記像担持体に形成された静電潜像を現像すべく、前記現像剤担持体に現像バイアスを印加する現像バイアス印加部と、を備え、
前記現像バイアスは、直流電圧と交流電圧とを重畳したバイアスであり、
前記現像バイアスの波形は、前記直流電圧と前記交流電圧とが重畳されたパルス部と、前記直流電圧のみのブランク部とを周期的に繰り返すものであり、以下の式を満たす、
ことを特徴とする画像形成装置。
【数1】
Vgo:前記パルス部における前記交流電圧のうち、前記直流電圧に対してトナーの正規帯電極性と同極性側の電圧
Vre:前記パルス部における前記交流電圧のうち、前記直流電圧に対してトナーの正規帯電極性と逆極性側の電圧
V1 :前記パルス部における前記交流電圧のうち、前記所定の帯電電位に対してトナーの正規帯電極性と同極性側の電圧
V2 :前記パルス部における前記交流電圧のうち、前記所定の帯電電位に対してトナーの正規帯電極性と逆極性側の電圧
T
P :前記パルス部の時間
T
B :前記ブランク部の時間
【請求項2】
前記現像バイアスの波形は、前記Vgoが印加された後に前記ブランク部が存在するように設定されている、
ことを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記現像剤担持体に担持される現像剤はトナーとキャリアを含み、
前記現像バイアスの波形は、以下の2つの式を満たす、
ことを特徴とする、請求項2に記載の画像形成装置。
【数2】
【数3】
Tgo:前記パルス部の1周期における前記Vgoの印加時間
d :前記像担持体と前記現像剤担持体の最近接位置における距離
Dc :キャリアの体積平均粒径
q :前記現像剤担持体に担持されたトナーの平均電荷量
m :トナーの平均質量
【請求項4】
前記現像バイアスの波形のデューティ比をVgo/(Vgo+Vre)とした場合、
前記デューティ比は、50%よりも大きく、90%以下である、
ことを特徴とする、請求項1ないし
3の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記現像バイアスの波形は、以下の式を満たす、
ことを特徴とする、請求項1ないし
4の何れか1項に記載の画像形成装置。
【数4】
【請求項6】
像担持体と、
前記像担持体の表面を所定の帯電電位に帯電させる帯電部と、
前記所定の帯電電位に帯電された前記像担持体の表面に静電潜像を形成する潜像形成部と、
トナーを含む現像剤を担持する現像剤担持体と、
前記現像剤担持体に担持されたトナーにより前記像担持体に形成された静電潜像を現像すべく、前記現像剤担持体に現像バイアスを印加する現像バイアス印加部と、を備え、
前記現像バイアスは、直流電圧と交流電圧とを重畳したバイアスであり、
前記現像バイアスの波形は、前記直流電圧と前記交流電圧とが重畳されたパルス部と、前記直流電圧のみのブランク部とを周期的に繰り返すものであり、以下の式を満たす、
ことを特徴とする画像形成装置。
【数5】
Vgo:前記パルス部における前記交流電圧のうち、前記直流電圧に対してトナーの正規帯電極性と同極性側の電圧
Vre:前記パルス部における前記交流電圧のうち、前記直流電圧に対してトナーの正規帯電極性と逆極性側の電圧
V1 :前記パルス部における前記交流電圧のうち、前記所定の帯電電位に対してトナーの正規帯電極性と同極性側の電圧
V2 :前記パルス部における前記交流電圧のうち、前記所定の帯電電位に対してトナーの正規帯電極性と逆極性側の電圧
T
P
:前記パルス部の時間
T
B
:前記ブランク部の時間
【請求項7】
前記現像バイアスの波形は、前記Vgoが印加された後に前記ブランク部が存在するように設定されている、
ことを特徴とする、請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記現像剤担持体に担持される現像剤はトナーとキャリアを含み、
前記現像バイアスの波形は、以下の2つの式を満たす、
ことを特徴とする、請求項2に記載の画像形成装置。
【数6】
【数7】
Tgo:前記パルス部の1周期における前記Vgoの印加時間
d :前記像担持体と前記現像剤担持体の最近接位置における距離
Dc :キャリアの体積平均粒径
q :前記現像剤担持体に担持されたトナーの平均電荷量
m :トナーの平均質量
【請求項9】
前記現像バイアスの波形のデューティ比をVgo/(Vgo+Vre)とした場合、
前記デューティ比は、50%よりも大きく、90%以下である、
ことを特徴とする、請求項6ないし8の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
像担持体と、
前記像担持体の表面を所定の帯電電位に帯電させる帯電部と、
前記所定の帯電電位に帯電された前記像担持体の表面に静電潜像を形成する潜像形成部と、
トナーとキャリアを含む現像剤を担持する現像剤担持体と、
前記現像剤担持体に担持されたトナーにより前記像担持体に形成された静電潜像を現像すべく、前記現像剤担持体に現像バイアスを印加する現像バイアス印加部と、を備え、
前記現像バイアスは、直流電圧と交流電圧とを重畳したバイアスであり、
前記現像バイアスの波形は、前記直流電圧と前記交流電圧とが重畳されたパルス部と、前記直流電圧のみのブランク部とを周期的に繰り返すもので、且つ、前記パルス部における前記交流電圧のうち、前記直流電圧に対してトナーの正規帯電極性と同極性側の電圧が印加された後に前記ブランク部が存在するように設定されており、以下の2つの式を満たす、
ことを特徴とする画像形成装置。
【数8】
【数9】
Vgo:前記パルス部における前記交流電圧のうち、前記直流電圧に対してトナーの正規帯電極性と同極性側の電圧
V1 :前記パルス部における前記交流電圧のうち、前記所定の帯電電位に対してトナーの正規帯電極性と同極性側の電圧
Tgo:前記パルス部の1周期における前記Vgoの印加時間
T
B :前記ブランク部の時間
d :前記像担持体と前記現像剤担持体の最近接位置における距離
Dc :キャリアの体積平均粒径
q :前記現像剤担持体に担持されたトナーの平均電荷量
m :トナーの平均質量
【請求項11】
前記現像バイアスの波形は、以下の式を満たす、
ことを特徴とする、請求項
10に記載の画像形成装置。
【数10】
【請求項12】
前記現像バイアスの波形は、以下の式を満たす、
ことを特徴とする、請求項
10又は
11に記載の画像形成装置。
【数11】
【請求項13】
前記パルス部における前記交流電圧のうち、前記直流電圧に対してトナーの正規帯電極性と逆極性側の電圧をVreとし、
前記現像バイアスの波形のデューティ比をVgo/(Vgo+Vre)とした場合、
前記デューティ比は、50%よりも大きく、90%以下である、
ことを特徴とする、請求項
10ないし
12の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記現像バイアスの波形は、2周期の矩形波の前記交流電圧からなる前記パルス部の後に前記ブランク部が設けられたダブルブランクパルス波形である、
ことを特徴とする、請求項10ないし13の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項15】
像担持体と、
前記像担持体の表面を所定の帯電電位に帯電させる帯電部と、
前記所定の帯電電位に帯電された前記像担持体の表面に静電潜像を形成する潜像形成部と、
トナーとキャリアを含む現像剤を担持する現像剤担持体と、
前記現像剤担持体からトナーを受け取って、該トナーを担持するトナー担持体と、
前記現像剤担持体から前記トナー担持体にトナーを受け渡すべく、前記現像剤担持体に受け渡しバイアスを印加する受け渡しバイアス印加部と、
前記トナー担持体に担持されたトナーにより前記像担持体に形成された静電潜像を現像すべく、前記トナー担持体に少なくとも直流電圧を含む現像バイアスを印加する現像バイアス印加部と、を備え、
前記受け渡しバイアスは、直流電圧と交流電圧とを重畳したバイアスであり、
前記受け渡しバイアスの波形は、前記直流電圧と前記交流電圧とが重畳されたパルス部と、前記直流電圧のみのブランク部とを周期的に繰り返すもので、且つ、前記パルス部における前記交流電圧のうち、前記直流電圧に対してトナーの正規帯電極性と同極性側の電圧が印加された後に前記ブランク部が存在するように設定されており、以下の2つの式を満たす、
ことを特徴とする画像形成装置。
【数12】
【数13】
Vgo:前記パルス部における前記交流電圧のうち、前記受け渡しバイアス印加部から前記現像剤担持体に印加された前記直流電圧に対してトナーの正規帯電極性と同極性側の電圧
V1 :前記パルス部における前記交流電圧のうち、前記現像バイアス印加部から前記トナー担持体に印加された前記直流電圧に対してトナーの正規帯電極性と同極性側の電圧
Tgo:前記パルス部の1周期における前記Vgoの印加時間
T
B :前記ブランク部の時間
d :前記トナー担持体と前記現像剤担持体の最近接位置における距離
Dc :キャリアの体積平均粒径
q :前記現像剤担持体に担持されたトナーの平均電荷量
m :トナーの平均質量
【請求項16】
前記受け渡しバイアスの波形は、以下の式を満たす、
ことを特徴とする、請求項
15に記載の画像形成装置。
【数14】
Vre:前記パルス部における前記交流電圧のうち、前記受け渡しバイアス印加部から前記現像剤担持体に印加された前記直流電圧に対してトナーの正規帯電極性と逆極性側の電圧
V2 :前記パルス部における前記交流電圧のうち、前記現像バイアス印加部から前記トナー担持体に印加された直流電圧に対してトナーの正規帯電極性と逆極性側の電圧
T
P :前記パルス部の時間
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、これらの複数の機能を有する複合機などの画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置として、像担持体に形成された静電潜像をトナーにより現像する際に、現像剤を担持した現像剤担持体に直流電圧と交流電圧とを重畳した現像バイアスを印加する構成が知られている。
【0003】
特許文献1には、このような現像バイアスとして、交流電圧を印加せずに直流電圧のみを印加するブランク部を有するブランクパルスを用いることで、画像のがさつきを抑制する構成が提案されている。
【0004】
また、特許文献2には、交流成分におけるトナーの正規帯電極性(マイナス極性)とは逆極性(プラス極性)側の成分のデューティ比を94[%]以上とすることで、画像の粒状性が低下することを抑制する構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7―271161号公報
【文献】特開2016-11981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように現像バイアスをブランクパルスとしたり、特許文献2のようにデューティ比を変えたりした場合、画像のがさつきなどを改善できるものの、像担持体の非画像部にトナーが付着するかぶりが発生し易くなる虞がある。
【0007】
本発明は、画像のがさつきを改善しつつかぶりの発生を抑制できる構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の画像形成装置は、像担持体と、前記像担持体の表面を所定の帯電電位に帯電させる帯電部と、前記所定の帯電電位に帯電された前記像担持体の表面に静電潜像を形成する潜像形成部と、トナーを含む現像剤を担持する現像剤担持体と、前記現像剤担持体に担持されたトナーにより前記像担持体に形成された静電潜像を現像すべく、前記現像剤担持体に現像バイアスを印加する現像バイアス印加部と、を備え、前記現像バイアスは、直流電圧と交流電圧とを重畳したバイアスであり、前記現像バイアスの波形は、前記直流電圧と前記交流電圧とが重畳されたパルス部と、前記直流電圧のみのブランク部とを周期的に繰り返すものであり、以下の式を満たすことを特徴とする。
【数1】
Vgo:前記パルス部における前記交流電圧のうち、前記直流電圧に対してトナーの正規帯電極性と同極性側の電圧
Vre:前記パルス部における前記交流電圧のうち、前記直流電圧に対してトナーの正規帯電極性と逆極性側の電圧
V1 :前記パルス部における前記交流電圧のうち、前記所定の帯電電位に対してトナーの正規帯電極性と同極性側の電圧
V2 :前記パルス部における前記交流電圧のうち、前記所定の帯電電位に対してトナーの正規帯電極性と逆極性側の電圧
T
P :前記パルス部の時間
T
B :前記ブランク部の時間
【0009】
また、本発明の画像形成装置は、像担持体と、前記像担持体の表面を所定の帯電電位に帯電させる帯電部と、前記所定の帯電電位に帯電された前記像担持体の表面に静電潜像を形成する潜像形成部と、トナーを含む現像剤を担持する現像剤担持体と、前記現像剤担持体に担持されたトナーにより前記像担持体に形成された静電潜像を現像すべく、前記現像剤担持体に現像バイアスを印加する現像バイアス印加部と、を備え、前記現像バイアスは、直流電圧と交流電圧とを重畳したバイアスであり、前記現像バイアスの波形は、前記直流電圧と前記交流電圧とが重畳されたパルス部と、前記直流電圧のみのブランク部とを周期的に繰り返すものであり、以下の式を満たすことを特徴とする。
【数2】
Vgo:前記パルス部における前記交流電圧のうち、前記直流電圧に対してトナーの正規帯電極性と同極性側の電圧
Vre:前記パルス部における前記交流電圧のうち、前記直流電圧に対してトナーの正規帯電極性と逆極性側の電圧
V1 :前記パルス部における前記交流電圧のうち、前記所定の帯電電位に対してトナーの正規帯電極性と同極性側の電圧
V2 :前記パルス部における前記交流電圧のうち、前記所定の帯電電位に対してトナーの正規帯電極性と逆極性側の電圧
T
P
:前記パルス部の時間
T
B
:前記ブランク部の時間
【0010】
また、本発明の画像形成装置は、像担持体と、前記像担持体の表面を所定の帯電電位に帯電させる帯電部と、前記所定の帯電電位に帯電された前記像担持体の表面に静電潜像を形成する潜像形成部と、トナーとキャリアを含む現像剤を担持する現像剤担持体と、前記現像剤担持体に担持されたトナーにより前記像担持体に形成された静電潜像を現像すべく、前記現像剤担持体に現像バイアスを印加する現像バイアス印加部と、を備え、前記現像バイアスは、直流電圧と交流電圧とを重畳したバイアスであり、前記現像バイアスの波形は、前記直流電圧と前記交流電圧とが重畳されたパルス部と、前記直流電圧のみのブランク部とを周期的に繰り返すもので、且つ、前記パルス部における前記交流電圧のうち、前記直流電圧に対してトナーの正規帯電極性と同極性側の電圧が印加された後に前記ブランク部が存在するように設定されており、以下の2つの式を満たすことを特徴とする。
【数3】
【数4】
Vgo:前記パルス部における前記交流電圧のうち、前記直流電圧に対してトナーの正規帯電極性と同極性側の電圧
V1 :前記パルス部における前記交流電圧のうち、前記所定の帯電電位に対してトナーの正規帯電極性と同極性側の電圧
Tgo:前記パルス部の1周期における前記Vgoの印加時間
T
B
:前記ブランク部の時間
d :前記像担持体と前記現像剤担持体の最近接位置における距離
Dc :キャリアの体積平均粒径
q :前記現像剤担持体に担持されたトナーの平均電荷量
m :トナーの平均質量
【0011】
また、本発明の画像形成装置は、像担持体と、前記像担持体の表面を所定の帯電電位に帯電させる帯電部と、前記所定の帯電電位に帯電された前記像担持体の表面に静電潜像を形成する潜像形成部と、トナーとキャリアを含む現像剤を担持する現像剤担持体と、前記現像剤担持体からトナーを受け取って、該トナーを担持するトナー担持体と、前記現像剤担持体から前記トナー担持体にトナーを受け渡すべく、前記現像剤担持体に受け渡しバイアスを印加する受け渡しバイアス印加部と、前記トナー担持体に担持されたトナーにより前記像担持体に形成された静電潜像を現像すべく、前記トナー担持体に少なくとも直流電圧を含む現像バイアスを印加する現像バイアス印加部と、を備え、前記受け渡しバイアスは、直流電圧と交流電圧とを重畳したバイアスであり、前記受け渡しバイアスの波形は、前記直流電圧と前記交流電圧とが重畳されたパルス部と、前記直流電圧のみのブランク部とを周期的に繰り返すもので、且つ、前記パルス部における前記交流電圧のうち、前記直流電圧に対してトナーの正規帯電極性と同極性側の電圧が印加された後に前記ブランク部が存在するように設定されており、以下の2つの式を満たすことを特徴とする。
【数5】
【数6】
Vgo:前記パルス部における前記交流電圧のうち、前記受け渡しバイアス印加部から前記現像剤担持体に印加された前記直流電圧に対してトナーの正規帯電極性と同極性側の電圧
V1 :前記パルス部における前記交流電圧のうち、前記現像バイアス印加部から前記トナー担持体に印加された前記直流電圧に対してトナーの正規帯電極性と同極性側の電圧
Tgo:前記パルス部の1周期における前記Vgoの印加時間
T
B :前記ブランク部の時間
d :前記トナー担持体と前記現像剤担持体の最近接位置における距離
Dc :キャリアの体積平均粒径
q :前記現像剤担持体に担持されたトナーの平均電荷量
m :トナーの平均質量
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、画像のがさつきを改善しつつかぶりの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1の実施形態に係る画像形成装置の概略構成断面図。
【
図2】第1の実施形態に係る現像装置の概略構成断面図。
【
図3】ベタ部とハイライト部の電位関係を示す模式図。
【
図4】第1の実施形態に係る現像バイアスの波形を示す模式図。
【
図5】現像バイアスのデューティ比を説明するための模式図。
【
図6】現像バイアスのデューティ比の測定に関する模式図。
【
図7】第2の実施形態に係る現像バイアスの波形を示す模式図。
【
図8】第3の実施形態に係る現像装置の概略構成断面図。
【
図9】第4の実施形態に係る構成を説明するために示す、現像部の模式図。
【
図11】第5の実施形態に係る現像装置の概略構成断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態について、
図1乃至
図6を用いて説明する。まず、本実施形態の画像形成装置100の概略構成について、
図1を用いて説明する。本実施形態では、画像形成装置100の一例として、タンデム型のフルカラープリンタを用いた場合について説明する。
【0015】
[画像形成装置]
本実施形態の画像形成装置100は、電子写真方式を採用したフルカラーの画像形成装置100で、4つの画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdを備える。なお、各画像形成部の構成は、現像色が異なる以外は実質的に同一とされる。このため、以下、特に区別を要しない場合は、代表して画像形成部Paについて説明し、その他の画像形成部については、その画像形成部の構成であることを示す添え字b、c、dを符号に付して、詳しい説明を省略する。
【0016】
画像形成部Paは、トナー像を担持する像担持体としての感光ドラム1aを備える。感光ドラム1aは、電子写真用の感光体の一例であり、円筒状に形成されている。このような感光ドラム1aは、
図1の矢印方向(反時計方向)に回転する。感光ドラム1aの周囲には、帯電部としての帯電器2a、潜像形成部としてのレーザビームスキャナ3a、現像装置4a、一次転写ローラ6a、クリーニング装置19aなどが配置されている。
【0017】
次に、上記構成の画像形成装置100の全体の通常モードにおける画像形成シーケンスについて説明する。先ず、感光ドラム1aの表面が、帯電器2aによって一様に、所定の帯電電位に帯電される。通常モードでは感光ドラム1aは、矢示の反時計方向に例えば273mm/secのプロセススピード(周速度)で回転する。帯電器2aによって帯電された感光ドラム1aは、次に、露光装置の一例であるレーザビームスキャナ3aにより、画像信号により変調されたレーザ光により走査露光が行われる。
【0018】
レーザビームスキャナ3aは、半導体レーザを内蔵しており、この半導体レーザは、入力された画像データに基づいて制御され、レーザ光を射出する。例えば、CCD等の光電変換素子を有する原稿読み取り装置から入力された原稿画像情報信号(画像データ)に対応して、或いは、外部端末から入力された画像情報信号に対応して制御され、レーザ光を射出する。これによって、帯電器2aによって帯電された感光ドラム1aの表面電位が画像部において変化して、感光ドラム1a上に静電潜像が形成される。
【0019】
このように感光ドラム1a上に形成された静電潜像は、現像装置4aによってトナーにより反転現像され、可視画像、即ち、トナー像とされる。本実施形態では、現像装置4aは、現像剤としてトナー及びキャリアを含む現像剤を使用する二成分現像方式を用いる。即ち、各現像装置4a、4b、4c、4dは、各色のトナーを含む二成分現像剤を収容している。具体的には、現像装置4aにはイエロー(Y)のトナーを、現像装置4bにはマゼンタ(M)のトナーを、現像装置4cにはシアン(C)のトナーを、現像装置4dにはブラック(K)のトナーを、それぞれ収容している。したがって、上述の工程を各画像形成部Pa、Pb、Pc、Pd毎に行うことによって、感光ドラム1a、1b、1c、1d上に、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナー像が形成される。
【0020】
また、各画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdの下方位置には、中間転写体である中間転写ベルト5が配置される。中間転写ベルト5は、ローラ61、62、63に懸架され、矢印方向に移動自在とされる。各感光ドラム1a~1d上のトナー像は、一次転写部材としての一次転写ローラ6a~6dによって中間転写ベルト5に順次転写される。これによって、中間転写ベルト5上にてイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナー像が重ね合わされ、フルカラー画像が形成される。また、中間転写ベルト5上に転写されずに感光ドラム1a上に残ったトナーは、クリーニング装置19aに回収される。
【0021】
この中間転写ベルト5上のフルカラー画像は、給送カセット12から取り出され、給送ローラ13、給送ガイド11を経由して進行したシート(用紙、OHPシートなど)などの記録材Sに、二次転写ローラ10の作用により転写される。記録材Sに転写されずに中間転写ベルト5の表面に残ったトナーは、中間転写ベルトクリーニング装置18に回収される。一方、トナー像が転写された記録材Sは、定着器16に送られ、画像の定着が行われ、排出トレー17に排出される。
【0022】
[現像装置]
次に、
図2を参照して、現像装置4aについて説明する。他の現像装置4b~4dは、現像装置4aと同様の構成であるため、説明を省略する。現像装置4aは、二成分現像剤を収容する現像容器22と、現像剤担持体としての現像スリーブ28と、搬送部材としての第1及び第2の搬送スクリュー25、26とを有する。また、本実施形態の現像装置4aは、現像容器22の内部を、その略中央部が現像スリーブ28の回転軸線方向に沿って延在する隔壁27によって、収容部である現像室23と攪拌室24とに上下に区画した縦攪拌型の構成としている。現像剤は、現像室23及び攪拌室24に収容されている。
【0023】
現像室23及び攪拌室24には、第1及び第2の搬送スクリュー25、26がそれぞれ配置されている。第1の搬送スクリュー25は、上側の現像室23の底部に現像スリーブ28の回転軸線方向に沿ってほぼ平行に配置されており、
図2中の時計回りに回転して現像室23内の現像剤を回転軸線方向に沿って一方向に攪拌しつつ搬送する。また、第2の搬送スクリュー26は、下側の攪拌室24内の底部に第1の搬送スクリュー25とほぼ平行に配置され、第1の搬送スクリュー25と反対方向の
図2中の反時計回りに回転する。そして、第2の搬送スクリュー26は、攪拌室24内の現像剤を、回転軸線方向に沿って第1の搬送スクリュー25とは反対方向に攪拌しつつ搬送する。
【0024】
このように、第1及び第2の搬送スクリュー25、26の回転による搬送によって、現像剤が隔壁27の両端部の開口部(不図示)を通じて現像室23と攪拌室24との間で循環される。
【0025】
ここで、本実施形態にて用いられる非磁性のトナーと、磁性を有するキャリアを含む二成分現像剤について説明する。トナーは、結着樹脂、着色剤、そして、必要に応じてその他の添加剤を含む着色樹脂粒子にコロイダルシリカ微粉末のような外添剤が外添されている。本実施形態で用いているトナーは、負帯電性のポリエステル系樹脂であり、体積平均粒径は3μm以上、8μm以下が好ましい。したがって、本実施形態のトナーの正規帯電極性は負極性となる。
【0026】
また、キャリアは、例えば表面酸化或は未酸化の鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、クロム、希土類などの金属、及びそれらの合金、或は酸化物フェライトなどが好適に使用可能であり、これらの磁性粒子の製造法は特に制限されない。キャリアは、体積平均粒径が20~50μm、好ましくは25~45μmであり、抵抗率が107Ωcm以上、好ましくは108Ωcm以上である。本実施形態では、108Ωcmのものを用いた。
【0027】
現像容器22の感光ドラム1aに対向した現像位置に相当する位置には開口部が形成されており、この開口部に現像スリーブ28が感光ドラム1a側に一部露出するように回転可能に配設されている。現像スリーブ28は、現像容器22に収容された現像剤を担持して搬送し、感光ドラム1aの現像位置に現像剤を供給する。
【0028】
現像スリーブ28に担持された現像剤の穂(磁気ブラシ)は、穂切り部材である規制ブレード29により長さ(コート量)が規制される。ここで、現像スリーブ28の直径を例えば20mm、感光ドラム1aの直径を例えば80mm、この現像スリーブ28と感光ドラム1aとの最近接位置における距離dを例えば約250μmの距離とする。これにより、現像スリーブ28に担持され規制ブレード29により長さを規制された状態で現像位置に搬送された現像剤の穂を、現像部にて感光ドラム1aと接触させて、感光ドラム1a上の静電潜像の現像を行えるように設定している。
【0029】
規制ブレード29は、現像スリーブ28の回転軸線に沿って延在した板状のステンレスなどで形成された非磁性部材で構成され、感光ドラム1aと対向する位置よりも現像スリーブ28の回転方向上流側に配設されている。そして、規制ブレード29の先端部と現像スリーブ28との間を現像剤のトナーとキャリアの両方が通過して、現像部へと送られる。
【0030】
現像部へ搬送される現像剤量は、規制ブレード29の現像スリーブ28の表面との間隙を調整することによって、現像スリーブ28上に担持した現像剤の磁気ブラシの穂切り量が規制されることで調整される。本実施形態においては、規制ブレード29によって、現像スリーブ28上の単位面積当りの現像剤コート量を、例えば30mg/cm2に規制している。また、規制ブレード29と現像スリーブ28は、間隙を200~1000μm、好ましくは300~700μmに設定される。本実施形態では、400μmに設定した。なお、本実施形態では、規制ブレード29として非磁性部材を使用しているが、磁性部材を使用してもよい。
【0031】
現像スリーブ28は、アルミニウムやステンレスのような非磁性材料で構成され、その内部には磁界発生部としてのマグネットローラ28mが非回転状態で設置されている。このマグネットローラ28mは、現像部において感光ドラム1aに対向して配置された現像極S2を有する。また、マグネットローラ28mは、規制ブレード29に対向して配置された磁極S1と、磁極S1、S2の間に配置された磁極N2と、現像室23及び攪拌室24にそれぞれ対向して配置された磁極N1及びN3とを有している。
【0032】
このように内部にマグネットローラ28mを有する現像スリーブ28は、現像時に
図2の矢印方向(時計方向)に回転することにより、現像剤を担持しつつ搬送する。そして、規制ブレード29による磁気ブラシの穂切りによって層厚を規制された現像剤を、感光ドラム1aと対向した現像部に搬送し、感光ドラム1a上に形成された静電潜像に現像剤を供給して潜像を現像する。
【0033】
この時、感光ドラム1aと対向する現像部においては、現像スリーブ28が、感光ドラム1aの移動方向と順方向で移動し、周速比は、感光ドラム1aに対して例えば1.75倍で移動している。この周速比に関しては、0~3.0倍の間で設定され、好ましくは、1.2~2.0倍の間に設定されれば、何倍でも構わない。移動速度比は、大きくなればなるほど現像効率はアップするが、あまり大きすぎると、トナー飛散や現像剤劣化等の問題が発生する可能性があるので、上記の範囲内で設定することが好ましい。
【0034】
[現像バイアス]
次に、現像装置4aの現像スリーブ28に印加される現像バイアスについて説明する。本実施形態では、現像バイアス印加部としての電源30(
図2)から現像スリーブ28に現像バイアスを印加することで、現像スリーブ28に担持されたトナーにより感光ドラム1aに形成された静電潜像を現像する。この現像バイアスは、現像効率、つまり、静電潜像へのトナーの付与率を向上させるために、直流電圧と交流電圧とを重畳したバイアス電圧としている。
【0035】
図3に、画像濃度が最大であるベタ部と画像濃度が低いハイライト部の潜像電位を模式的に示す。画像濃度が低いハイライト部を形成するドット潜像は、最大の現像コントラストVcontが小さく、特に高解像度を目指した場合、現像バイアスの直流成分(DC成分)と露光により形成された潜像電位Vlとが同程度となってしまうことがある。現像コントラストVcontは、
図3に示すように、現像バイアスの直流成分Vdcと、露光による潜像電位V
Lとの差である。このようなハイライト部のドット潜像の現像コントラストは、トナーが感光ドラム1a側につくか現像スリーブ28側につくか非常に不安定なコントラストである。そのため、上記潜像を現像する場合は、潜像のむらや現像剤コートむら、トナーの粒径のばらつきなど各種のむらに対応したドットの欠落が発生し易く、画像にがさつきが発生し易い。したがって、現像バイアスの波形によっては、ハイライト部のがさつきに差が出る。このため、ハイライト部のがさつきを改善する現像バイアスの波形が望まれる。
【0036】
図4は、本実施形態に係る電源30が出力する現像バイアスの波形を示す図である。
図4の縦軸は電圧、横軸は時間であり、縦軸は上方がマイナスとなるように表示している。電源30は、矩形波の交流成分と直流成分が重畳された現像バイアスを現像スリーブ28に印加する。本実施形態では、-500Vの直流電圧と、ピーク・ツウ・ピーク電圧Vppが1160V、周波数fが12.6kHzの交流電圧を印加している。
【0037】
一般に、二成分現像法においては、交流電圧を印加すると現像効率が増して画像は高品位になるが、逆にかぶりが発生し易くなる。このため、現像スリーブ28に印加する直流電圧Vdcと感光ドラム1aの帯電電位(即ち、非画像部の表面電位)Vdとの間に電位差Vback(=|Vd-Vdc|、かぶり取り電位ともいう)を設けることにより、かぶりを抑制することが行なわれる。本実施形態ではVback=150Vに設定した。つまり、感光ドラム1aの帯電電位Vd=-650V、現像バイアスの直流電圧Vdc=-500Vとしている。
【0038】
なお、感光ドラム1aの帯電電位Vdは、暗減衰があるため帯電直後と現像部では異なる。本実施形態では、現像部での現象を対象としているため、本明細書中の感光ドラム1aの帯電電位Vdは現像部での値を指すこととする。これは感光ドラム1aの潜像電位VL等のその他の電位に関しても同様である。
【0039】
本実施形態の現像バイアスの波形は、直流電圧に交流電圧が重畳されたパルス部と、直流電圧のみのブランク部とを周期的に繰り返すものである。即ち、現像バイアスの波形は、交流電圧が間欠的に間引かれて直流電圧のみとなった部分が設けられているブランクパルス波形である。本明細書では、交流電圧が重畳された部分をパルス部、交流成分が間引かれて直流電圧のみになった部分をブランク部と呼ぶ。因みに、交流電圧の間引きが無い(ブランク部が無い)現像バイアス波形のことは矩形波形と呼ぶ。ブランクパルス波形を用いることで、矩形波形に対して交流電圧のうちのトナー戻し側成分、即ち、トナーの正規帯電極性(本実施形態ではマイナス極性)と逆極性(プラス極性)側成分の印加比率を下げる。そして、潜像の浅いハイライト部の再現性を高め、がさつきを改善可能である。
【0040】
本実施形態では、
図4に示したように、現像バイアスの波形は、2周期の矩形波の交流電圧からなるパルス部の後にブランク部が設けられたダブルブランクパルス(WBP)波形である。ブランク部の長さは、矩形波1周期分と同等の時間としている。パルス部からブランク部で移行する際は、交流電圧のうち現像駆動側成分、即ち、トナーの正規帯電極性(本実施形態ではマイナス極性)と同極性(マイナス極性)側成分の電圧印加終了直後にブランク部が続くようにしている。これは、ブランク部は直前の状態の影響を受けやすく、現像駆動側成分の電圧印加終了後にブランク部が続くようにした方が、潜像の浅いハイライト部の再現性を高める効果が高く、がさつきをより改善可能だからである。逆に、トナー戻し側成分の電圧印加終了直後にブランク部が続くようにすると、潜像の浅いハイライト部の再現性が低下し、がさつきが発生し易くなる傾向となる。
【0041】
ここで、
図4に示す現像バイアスの波形のVgo、Vre、V1、V2、Tgo、Treを次の様に定義する。
Vgo:パルス部における交流電圧のうち、直流電圧に対してトナーの正規帯電極性と同極性側の電圧
Vre:パルス部における交流電圧のうち、直流電圧に対してトナーの正規帯電極性と逆極性側の電圧
V1 :パルス部における交流電圧のうち、所定の帯電電位に対してトナーの正規帯電極性と同極性側の電圧
V2 :パルス部における交流電圧のうち、所定の帯電電位に対してトナーの正規帯電極性と逆極性側の電圧
Tgo:パルス部の1周期におけるVgoの印加時間
Tre:パルス部の1周期におけるVreの印加時間
【0042】
Vgo、Vreは、現像バイアスの直流電圧Vdcを基準とした現像駆動側成分及びトナー戻し側成分であり、V1、V2は、感光ドラム1aの帯電電位Vdを基準とした現像駆動側成分及びトナー戻し側成分である。また、Vgo、V1が現像駆動側成分であり、Vre、V2がトナー戻し側成分である。なお、トナーの正規帯電極性は、本実施形態ではマイナス極性としたが、プラス極性であっても良い。また、トナーの正規帯電極性がマイナス極性である場合に、トナーの正規帯電極性と逆極性側といっても、これはプラス極性であることを意味するものではない。即ち、基準(Vdc又はVd)に対してプラス極側の電圧であることを意味し、本実施形態のようにマイナス極性の現像バイアスを印加している場合には、トナーの正規帯電極性と逆極性側であってもマイナス極性である。但し、プラス極性となる場合もある。
【0043】
本実施形態においては、直流電圧Vdcを基準として、交流電圧のトナー戻し側成分の印加電圧が現像駆動側成分の印加電圧よりも小さくなるようデューティ比を変更している。ここで、デューティ比を変更したデューティ波形について
図5を用いて説明する。まず、上述のように、交流電圧の現像駆動側成分の印加電圧をVgo、トナー戻し側成分の印加電圧をVreとした場合に、全体に対する現像駆動側成分の比率Vgo/(Vgo+Vre)をデューティ比と呼ぶ。
【0044】
この時、現像駆動側成分の印加時間Tgoとトナー戻し側成分の印加時間Treは概ね印加電圧と逆の比率となるように変更している(Tgo:Tre≒Vre:Vgo)。そのため、交流電圧の1周期のうち現像駆動側成分の積分値と、トナー戻り側成分の積分値は略一定となる。即ち、
図5のVdcよりも上側のハッチング部の面積Vgo×Tgoと、
図5のVdcよりも下側のハッチング部分の面積Vre×Treは、Vgo×Tgo≒Vre×Treとなる。このように設定することで、交流電圧と直流電圧が重畳されたパルス部と直流成分のみからなるブランク部で実効電圧レベルを略一定にできる。なお、デューティ比は印加時間を元にTre/(Tgo+Tre)と定義しても良い。
【0045】
本実施形態では、交流電圧のトナー戻し側成分の印加電圧が現像駆動側成分の印加電圧よりも小さくなるようにデューティ比を変更している。具体的には、デューティ比を75%とした。デューティ比を50%よりも高くし、トナー戻し側成分の印加電圧を小さくすることで、潜像の浅いハイライト部の再現性を高め、がさつきを改善可能である。
【0046】
ここまで述べたように、本実施形態の現像バイアスの波形は、デューティ比を50%よりも大きくしたデューティ波形と、ブランク部を設けたブランクパルス波形を足し合わせたデューティ・ブランクパルス波形である。つまり、交流電圧のトナー戻し側成分の印加電圧比率を小さくすると同時に、交流電圧のトナー戻し側成分の電圧の総印加時間も少なくしている。そのため、より効果的に潜像の浅いハイライト部の再現性を高め、がさつきを改善可能である。
【0047】
但し、デューティ比を50%よりも大きくして交流電圧のトナー戻し側成分の印加電圧比率を小さくすると、感光ドラム1aの非画像部に対してもトナーが付きやすくなり、かぶりが発生しやすくなる懸念がある。また、ブランク部を設け交流電圧のトナー戻し側成分の電圧印加時間を少なくしても同様に、かぶりが発生しやすくなる懸念がある。そのため、両者を足し合わせたデューティ・ブランクパルス波形では、非画像部にトナーが付く、かぶりの発生が懸念となる。
【0048】
つまり、デューティ比が50%より高いデューティ波形にさらにブランク部を設けたデューティ・ブランクパルス波形にすることで、より効果的に潜像の浅いハイライト部の再現性を高め、がさつきを改善可能である。しかしながら、このようなデューティ・ブランクパルス波形の場合、デューティ比やブランク部の長さを調整して、非画像部にトナーが付く、かぶりの発生を抑制することが求められる。
【0049】
デューティ比が比較的低く、トナー戻し側成分の印加電圧比率が高めの場合は、ブランク時間を長めに設定してトナー戻し成分の電圧印加時間を短くすることで、ハイライト部の再現性を高めた方が良い。一方で、デューティ比が比較的高く、トナー戻し側成分の印加電圧比率が低めの場合は、ハイライト部の再現性よりもかぶりの発生の方が懸念されるので、ブランク部の時間を長くしすぎない方が良い。
【0050】
上記を式で表すために、ハイライト部の浅い潜像として、
図4に示した通り、潜像の電位Vlが現像バイアスの直流成分Vdcと同程度の潜像を考えることにする。なお、この潜像の深さは代表例であり必ずしもこの値である必要はない。一口にハイライト部と言っても、画像濃度によって各々潜像も異なり潜像電位も異なる。また、ドット内の潜像深さも一様ではなく、ドットの中央部と周辺部で潜像深さは異なる。そのため、本実施形態では潜像の電位Vlが現像バイアスの直流成分Vdcと同程度の潜像を考えることにする。発明者らの検討によれば、ベタ部の潜像電位VLよりも浅い反射濃度0.6以下のハイライト部の潜像に関していえば、潜像の電位Vlが現像バイアスの直流成分Vdcと完全に一致しなくとも、本実施形態の効果はそれなりに得ることができることがわかった。なお、反射濃度は、分光濃度計X-Rite504/508(X-Rite(株)製)により測定した。
【0051】
ハイライト部の浅い潜像部のVl≒Vdcに対するトナー戻し側成分の印加電圧比率は、Vre/(Vgo+Vre)と表せる。即ち、Vl≒Vdcなので、現像バイアスの直流電圧Vdcを基準とした現像駆動側成分及びトナー戻し側成分Vgo、Vreを用いて、上述のように印加電圧比率を表すことができる。また、
図4に示したように、現像バイアスの波形において、パルス部の印加時間をT
P、ブランク部の印加時間をT
Bとすると、ブランク部の印加時間の比率は、T
B/(T
P+T
B)となる。
【0052】
ここで、Vre/(Vgo+Vre)の値が小さい時はブランク部の時間が短くてもハイライト部の再現性に問題がでにくいが、この値が大きい時はブランク部の時間を長く設定することでハイライト部の再現性を高めることができる。このため、本実施形態では、ハイライト部の再現性を高めるべく、Vdcに対するトナー戻し側成分の印加電圧比率Vre/(Vre+Vgo)よりも、ブランク部の比率T
B/(T
P+T
B)が大きくなるように、ブランク部の時間T
Bを設定している。上記を式で表すと以下の式(1)のようになる。
【数7】
【0053】
一方、非画像部のかぶりに関しては、非画像部の電位であるVdに対するトナー戻し側成分の印加電圧比率V2/(V1+V2)が関係する。この値が大きい時はブランク部の時間が長くてもかぶりに問題がでにくいが、この値が小さい時はブランク部の時間を短く設定することでかぶりを抑制できる。このため、本実施形態では、非画像部のかぶりを抑制すべく、Vdに対するトナー戻し側成分の印加電圧比率V2/(V1+V2)の1.5倍よりもブランク部の比率T
B/(T
P+T
B)が小さくなるように、ブランク部の時間T
Bを設定している。上記を式で表すと以下の式(2)のようになる。
【数8】
【0054】
上記式(1)と式(2)をまとめれば、以下の式(3)のようになる。
【数9】
【0055】
よって、この式(3)を満たすようにブランク部の時間TBを調整することにより、ハイライト再現性とかぶりの抑制を両立することが可能である。
【0056】
なお、
図4から明らかなように、V2=Vre+Vbackの関係がある。またVgo+Vre=V1+V2なので、式(3)は以下の式(4)のようにも書き表せる。
【数10】
【0057】
このことからTBだけでなく、Vbackを調整することでも式(3)の関係を満たすことができる。Vbackに関しては、本実施形態では150Vとしたが、50V~200Vの範囲で設定することが好ましい。Vbackを50V以上とした理由は、非画像部の電位の安定性を考えると、50V未満(例えば0V)ではかぶりが生じ易くなる可能性があるためである。また、Vbackを200Vよりも大きくした場合、非画像部にキャリアが付着する懸念があるため、Vbackを200V以下としている。
【0058】
なお、より好ましくは、次の式(5)に示すように、Vdに対するトナー戻し側成分の印加電圧比率V2/(V1+V2)よりもブランク部の比率T
B/(T
P+T
B)が小さくなるように、ブランク部の時間T
Bを設定することが好ましい。このように設定することで、かぶりをより抑制することが可能である。
【数11】
【0059】
また、デューティ比Vgo/(Vgo+Vre)は、これまで述べてきたように、ハイライト再現性の観点から50%よりも大きいことが好ましい。但し、デューティ比が高すぎるとかぶりが大幅に発生し易くなる懸念があるため、以下の式(6)を満たすことが好ましい。即ち、デューティ比は90%以下とすることが好ましい。
【数12】
【0060】
この式(6)は、以下の式(7)のようにも書くことができる。
【数13】
【0061】
したがって、好ましくは以下の式(8)を満たすことが好ましい。この式を満たせば自ずと式(6)を満たす。
【数14】
【0062】
【0063】
上述のように、本実施形態では、式(3)を満たすことで、画像のがさつきを改善しつつかぶりの発生を抑制できる。また、好ましくは式(5)を、より好ましくは式(8)を、更に好ましくは式(9)満たすようにする。
【0064】
[実施例]
次に、ハイライト部のがさつきと非画像部のかぶりの発生レベルに関して行った実験について説明する。実験では、上述の画像形成装置100において、主にブランク部の長さを変更しながら、ハイライト部のがさつき及び非画像部のかぶりの発生状態を評価した。がさつきの評価は、反射濃度0.4付近、212線/inchのライン画像を用いて行った。なお、反射濃度は、分光濃度計X-Rite504/508(X-Rite(株)製)により測定した。
【0065】
がさつきは、反射濃度0.3~0.5付近において、特に、人間の目の感度的に目立ち易いことがこれまでの感応評価から既に分かっている。がさつきが無くなめらかなものを〇、がさつきが目立たなくなめらかなものを△、がさつきが目立つものを×とした。
【0066】
かぶりの評価は、画像形成装置100を30℃80%RHの環境下で、べた白画像を出力してかぶりを評価した。評価は、目視にて行い、かぶりがほとんど目立たないものを〇、かぶりが少ないものを△、かぶりがやや多いものを×とした。表1に、実験に用いた波形及び評価結果を示す。
【表1】
【0067】
波形の「WBP」は、現像バイアスの波形が2周期の矩形波の交流電圧からなるパルス部の後にブランク部が設けられたダブルブランクパルス波形であることを示す。また、波形の「矩形」は、交流電圧の間引きが無い(ブランク部が無い)現像バイアス波形であることを示す。
【0068】
また、実施例1-1~4は、現像バイアスの波形が本実施形態で説明した条件を満たし、比較例1-1~2は、満たさない。具体的には、
実施例1-1の波形は、式(5)や式(9)を満たす。
実施例1-2の波形は、式(3)や式(8)は満たすが、式(5)や式(9)は満たさない。
一方、比較例1-1及び比較例1-2の波形は、式(3)や式(8)を満たさない。
また、実施例1-3は、実施例1-1と同様の波形であるが、Vppを実施例1-1に比べて大きく設定している。この波形は実施例1-1の波形と同様に式(5)や式(9)を満たす。
また、実施例1-4は、デューティ比を65%、言い換えればVre/(Vre+Vgo)=0.35とした場合であり、実施例1-4の波形は、式(3)や式(8)は満たすが、式(5)や式(9)は満たさない。
【0069】
表1から明らかなように、実施例1-1のように1波長分のブランク部を設けた場合、がさつきとかぶりの双方に関して良好な結果が得られた。実施例1-1は、現像バイアスの波形が上述のようには式(5)や式(9)を満たすため、トナー戻し側成分を小さくしながらも、ブランク部の長さを適正に設けたことで、ハイライト部のがさつきと非画像部のかぶりの抑制が両立したと考えられる。
【0070】
また、実施例1-2のように2波長分のブランク部を設けた場合も、がさつきに関して良好な結果が得られた。かぶりに関しては、実施例1-1の時よりはやや低下したものの、比較的良好な結果が得られた。上述のように、実施例1-2の波形は、実施例1-1と異なり、式(5)や式(9)を満たさないため、かぶりに関して実施例1-1にやや劣る結果となったと考えられる。
【0071】
一方、比較例1-1のように3波長分のブランク部の長さを設けた場合は、がさつきに関して良好な結果が得られたが、かぶりに関しては目立つようになった。比較例1-1の波形は、式(3)や式(8)を満たさず、トナー戻し側成分を小さくしつつ、ブランク部の長さも長く設定してしまったため、がさつきの評価は良好だが、かぶりの評価が低下してしまったと考えられる。
【0072】
また、比較例1-2のようにブランクを設けない矩形波形の場合は、かぶりに関しては良好な結果が得られたが、がさつきが目立った。比較例1-2は、トナー戻し成分を小さくしたものの、ブランク部を設けなかったために、かぶりの評価は良好だが、がさつきの評価が低下してしまったと考えられる。
【0073】
これまで、交流電圧のVdcに対するトナー戻し側成分の印加電圧比率を小さくすることで、がさつきを良化するということについて述べてきた。がさつきの評価を良化するためには、トナー戻し側成分の印加電圧比率ではなく印加電圧強度を小さくしてもよさそうである。これに対して本実施形態では、印加電圧比率を小さくしているのは、単純にVppを下げるなど現像駆動側成分も小さくしてしまう方法で印加電圧強度を下げると、ベタ部の現像が不安定になり、濃度変動が発生する懸念があるからである。そこで、トナー戻し側成分の印加電圧比率を小さくするようにすることで、逆に現像駆動側成分の電圧強度を保てるようにしている。
【0074】
しかし、トナー戻し側成分の印加電圧強度が効く場合もある。実施例1-3は実施例1-1と同様の波形であるが、Vppを実施例1-1に比べて大きく設定している。実施例1-3は、がさつきは良好だが実施例1-1の波形の場合に比べるとやや劣る結果となった。これは、Vdcに対するトナー戻し側成分の印加電圧強度Vreが実施例1-1の波形の場合は290Vであったのに対して、実施例1-3は500Vと大きいためと思われる。したがって、Vdcに対するトナー戻し側成分の印加電圧強度Vreに関しては、Vre≦500Vに設定することが好ましく、より好ましくはVre≦400V、さらに好ましくは実施例1-1のようにVre≦300Vとすることが良い。但し、Vdcに対するトナー戻し側成分の印加電圧強度Vreが低すぎると、かぶりが発生しやすくなる懸念があるため、Vre≧100Vに設定することが好ましい。
【0075】
また、デューティ比に関していえば本実施形態では75%としたが、デューティ比はこれに限らない。但し、先に述べたように、デューティ比を高くして、トナー戻し側成分の印加電圧比率を小さくすることで、現像駆動側成分の電圧強度を保ちつつ、トナー戻し側成分の印加電圧強度を小さくできる。このようにすると、ベタ部の画像品位を維持しつつ、ハイライト部のがさつきも良化することができる。そのため、デューティ比は65%以上に設定することが好ましく、好ましくは70%以上とすることがよく、さらに好ましくは実施例1-1のように75%以上とすることがよい。但し、デューティ比が高すぎると、トナー戻し側成分の印加電圧強度が小さくなりすぎるため、かぶりが発生しやすくなる懸念が生じる。そのため、デューティ比は90%以下とすることが好ましい。
【0076】
実施例1-4は、デューティ比が65%の場合の実験結果であるが、かぶりに関しては、実施例1-1の時よりはやや悪化するものの、それでも比較的良好な結果が得られた。実施例1-4の波形は式(5)や式(9)を満たさないため、かぶりに関して実施例1-1にやや劣る結果となったと考えられる。
【0077】
一方、実施例1-4は、がさつきに関しても比較的良好なものの実施例1-1の時よりはやや悪化する結果が得られた。これは、ハイライト部の潜像深さVdcに対するトナー戻し側成分の印加電圧比率は0.35と比較的低めに保たれているが、非画像部Vdに対するトナー戻し側成分の印加電圧比率が0.48と0.5にかなり近づいていることが原因と考えられる。即ち、実施例1-4は、Vre/(Vre+Vgo)が0.35と低めではあるが、V2/(V1+V2)が0.48となり、実施例1-1よりも高いため、がさつきの評価が低下したと考えられる。
【0078】
ハイライト部のドットの潜像の最深部はVdc程度の潜像深さだが、実際には
図4にも模式的に示したように潜像の電位は分布を持っており、深さがVdc以下の部分が多くを占める。これは、レーザやLED等の露光装置の光源のスポット強度分布や感光ドラムでの露光の散乱、また露光で発生した電子の拡散などに起因する。そのため、Vdcに対するトナー戻し側成分の印加電圧比率を小さくしていても、Vdに対するトナー戻し側成分の印加電圧比率が0.5以上になると、ハイライト部のドットの潜像最深部以外は多少なりの影響を受ける可能性がでてくる。そのため、既に式(9)で示したように、Vdに対するトナー戻し側成分の印加電圧比率V2/(V1+V2)は0.5未満となるように設定することが好ましい。
【0079】
なお、本実験では、テクトロニクス社製のオシロスコープ「型番DPO2014B」を用いて現像バイアス波形を測定し、TREK社製の表面電位計(モデル344)を用いて感光ドラム1a上の暗部電位Vdを測定した。どちらも、測定時は多少なりノイズがのっているため、その場合は平均値を用いることとする。
【0080】
上述したように、感光ドラム1a上の電位は現像位置での電位である。現像位置の電位は現像位置に表面電位計のプローブを設置することで測定可能であるが、設置が難しい場合は、別の位置で測定した結果より現像位置の電位を予測する方法でも構わない。
【0081】
現像バイアス波形に関しては、出力時の現像スリーブ28と感光ドラム1aとの間の静電容量等の変化でなまり具合の影響を受けやすい。そのため、本実験では、現像バイアス波形を実測してデューティ比を算出する場合、なまりの影響を特に受けやすいため印加電圧ではなく、印加時間を元に算出することとした。
図6には、なまった場合の現像バイアス波形の例を示した。現像バイアス波形のなまりは、電位を変化させた場合に生じる過渡現象に起因する電位の応答の遅延である。そのため、電位の状態は静電容量等の影響を受けやすいが、電位を変化させたタイミングは影響を受けにくい。そのため、本実験では、
図6に丸で囲って示した電位の変化開始タイミングを元にデューティ比を算出することにした。
【0082】
<第2の実施形態>
第2の実施形態について、
図7を用いて説明する。第1の実施形態では、現像バイアスの波形として、ダブルブランクパルス(WBP)波形を用いた場合について説明した。これに対して本実施形態では、現像バイアスの波形として、シングルブランクパルス(SBP)波形を用いている。その他の構成及び作用は第1の実施形態と同様であるため、同様の構成には同じ符号を付して説明及び図示を省略又は簡略にし、以下、第1の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0083】
本実施形態では、
図7に示すように、現像バイアスの波形として、1周期の矩形波のパルス部の後にブランク部を配置したシングルブランクパルス波形(以下、SBPという)を用いた。SBPでも、第1の実施形態と同様での考え方が成り立つ。即ち、本実施形態の場合も、第1の実施形態で示した各式を満たす。
【0084】
[実施例]
次に、ハイライト部のがさつきと非画像部のかぶりの発生レベルに関して行った実験について説明する。実験は、第1の実施形態の実施例で述べたのと同様な方法により、画像形成装置100において、主にブランク部の長さを変更しながら、ハイライト部のがさつき及び非画像部のかぶりの発生状態を評価した。これらの評価方法などについても第1の実施形態の実施例と同様である。表2に、実験に用いた波形及び評価結果を示す。
【表2】
【0085】
実施例2-1~2は、現像バイアスの波形が本実施形態で説明した条件を満たし、比較例2-1は、満たさない。具体的には、
実施例2-1の波形は、式(5)や式(9)を満たす。
実施例2-2の波形は、式(3)や式(8)は満たすが、式(5)や式(9)は満たさない。
一方、比較例2-1の波形は、式(3)や式(8)を満たさない。
【0086】
表2から明らかなように、実施例2-1のように半波長分のブランク部を設けた場合、がさつきとかぶりの双方に関して良好な結果が得られた。実施例2-1の波形は式(5)や式(9)を満たすため、トナー戻し側成分を小さくしながらも、ブランク部の長さを適正に設けたことで、ハイライト部のがさつきと非画像部のかぶりの抑制が両立したと考えられる。
【0087】
また、実施例2-2のように1波長分のブランク部を設けた場合も、がさつきに関して良好な結果が得られた。かぶりに関しては、実施例2-1の時よりはやや低下したものの、比較的良好な結果が得られた。上述のように、実施例2-2の波形は、実施例2-1と異なり、式(5)や式(9)は満たさないため、かぶりに関して実施例2-1にやや劣る結果となったと考えられる。
【0088】
一方、比較例2-1のように1.5波長分のブランク部の長さを設けた場合は、がさつきに関して良好な結果が得られたが、かぶりに関しては目立つようになった。比較例2-1の波形は、式(3)や式(8)を満たさず、トナー戻し側成分を小さくしつつ、ブランク部の長さも長く設定してしまったため、がさつきの評価は良好だが、かぶりの評価が低下してしまったと考えられる。
【0089】
<第3の実施形態>
第3の実施形態について、
図8を用いて説明する。本実施形態は、上述の各実施形態と現像装置の構成が異なる。その他の構成及び作用、並びに、現像装置の機能が共通な構成については、図示及び説明を省略又は簡略にし、以下、第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0090】
本実施形態の現像装置4Aは、二成分現像方式を用いた画像形成方法のなかでもタッチダウン現像方式(ハイブリッド現像方式ともいわれる)を採用している。タッチダウン現像方式は、二成分現像剤を担持するマグネットローラを内包した現像剤担持体としての供給ローラ28Aに加え、供給ローラ28Aから
図8のP1の位置で受け取ったトナーを担持するトナー担持体としての現像ローラ31を備えている。
【0091】
具体的には、本実施形態の現像装置4Aは、二成分現像剤を収容する現像容器22Aと、現像剤担持体としての供給ローラ28Aと、トナー担持体としての現像ローラ31と、搬送部材としての第1及び第2の搬送スクリュー25A、26Aとを有する。また、本実施形態の現像装置4Aは、現像容器22Aの内部を、その略中央部が供給ローラ28Aの回転軸線方向に沿って延在する隔壁27Aによって、収容部である現像室23Aと攪拌室24Aとに左右に区画した構成としている。現像剤は、現像室23A及び攪拌室24Aに収容されている。
【0092】
現像室23A及び攪拌室24Aにおいて、現像剤が第1及び第2の搬送スクリュー25A、26Aに攪拌、搬送される構成は、第1の実施形態の現像装置と同様である。一方、供給ローラ28Aは、第1の実施形態の現像スリーブ28と同様に、内部にマグネットローラが配置され、現像室23A内の現像剤を表面に担持して矢印方向に回転する。供給ローラ28Aに担持された現像剤は、規制ブレード29Aにより層厚が規制され、現像ローラ31と対向する位置であるP1まで運ばれる。
【0093】
現像ローラ31は、P1の位置において供給ローラ28Aからトナーを受け取って、トナーを担持し、矢印方向に回転する。この際、供給ローラ28Aには、受け渡しバイアス印加部としての電源32から受け渡しバイアスが印加されることで、供給ローラ28Aから現像ローラ31にトナーが受け渡される。受け渡しバイアスは、例えば、直流電圧と交流電圧とを重畳した電圧であり、その波形は、第1の実施形態の現像バイアスで説明したブランク部を有するブランクパルス波形であっても良いし、ブランク部を有しない矩形波形であっても良い。なお、受け渡しバイアスの波形は、次述する現像バイアスの波形とパルスの位相を異ならせることが好ましい。
【0094】
このように供給ローラ28Aに受け渡しバイアスが印加されることで、供給ローラ28Aに担持されたトナーとキャリアを含む現像剤のうちのトナーが現像ローラ31に受け渡される。現像ローラ31は、受け渡されたトナーを担持して回転し、規制ブレード29Aに層厚を規制された後、不図示の感光ドラムと対向する位置にトナーを搬送する。この際、現像ローラ31には、現像バイアス印加部としての電源30Aから第1の実施形態の現像バイアスと同様の現像バイアスが印加される。即ち、本実施形態の現像バイアスの波形は、第1の実施形態で説明した式(3)、(5)、(8)、(9)の何れかの式も満たす。なお、受け渡しバイアスと現像バイアスの少なくとも何れかのバイアスの波形は、第2の実施形態の現像バイアスの波形と同様にシングルブランクパルス波形としても良い。
【0095】
このように現像ローラ31に現像バイアスが印加されることで、現像ローラ31に担持されたトナーにより感光ドラム上に形成された静電潜像が現像される。本実施形態の場合も、第1の実施形態又は第2の実施形態と同様の現像バイアスを印加しているため、これらの実施形態と同様に、がさつきとかぶりの抑制を図れる。
【0096】
また、このようなタッチダウン現像方式では、供給ローラ28Aや現像ローラ31に交流電圧を印加すると、供給ローラ28Aと現像ローラ31のトナー受け渡し位置である
図8のP1の位置でトナーが往復運動を繰り返すことになる。そのため、P1の位置ではトナーが飛散し易い。これに対して本実施形態のように現像ローラ31に印加する現像バイアスとしてブランク部を備えたブランクパルス波形を採用した場合は、ブランク部を持たない矩形波形の場合よりも往復運動を少なくできる。このため、トナー飛散を軽減できるというメリットもある。
【0097】
<第4の実施形態>
第4の実施形態について、
図1ないし
図5を参照しつつ、
図9及び
図10を用いて説明する。上述の第1の実施形態では、現像バイアスの波形が式(3)、(5)、(8)、(9)の何れかを満たすようにした。これに対して本実施形態では、現像バイアスの波形が以下で説明するような式を満たすようにしている。その他の構成及び作用は、上述の第1の実施形態と同様であるため、同様の構成には同じ符号を付して説明及び図示を省略又は簡略にし、以下、第1の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0098】
本実施形態でも、第1の実施形態で述べたように、現像バイアスの波形のデューティ比は、50%よりも大きく、90%以下としている。そして、本実施形態でも現像バイアスの波形を、デューティ比が50%より高いデューティ波形にさらにブランク部を設けたデューティ・ブランクパルス波形にすることで、がさつきを改善可能である。しかしながら、このようなデューティ・ブランクパルス波形の場合、デューティ比やブランク部の長さを調整して、非画像部にトナーが付く、かぶりの発生を抑制することが求められる。
【0099】
非画像部へのトナー付着は、主として現像バイアス電位が感光ドラム1aの帯電電位(暗部電位ともいう)Vdよりもマイナス側の時に発生する。つまり、現像バイアスのパルス部のうち現像駆動側成分の印加時に発生する。このように発生した非画像部に付着したトナーが、パルス部のトナー戻し側成分やブランク部でうまく回収されない時に、かぶりとなってしまう。
【0100】
上述のように、ハイライト部の再現性を高めるために、現像バイアス波形のデューティ比を50%よりも大きくし交流電圧のトナー戻し側成分の印加電圧比率を小さくする。これと同時に、ブランク部を設け交流電圧のトナー戻し側成分の電圧印加時間を少なくする。このような現像バイアス波形の場合、パルス部の現像駆動側成分の印加時に感光ドラム1aの非画像部に付着したトナーが多すぎると、トナーが回収しきれずにかぶりやすくなる。したがって、かぶりを抑制するためには現像駆動側成分の印加時に非画像部に付着するトナー量をそもそも減らすことが望まれる。
【0101】
発明者らの検討によれば、非画像部へのトナー付着量は、交流電圧のうち現像駆動側成分の印加電圧の絶対値が大きい場合や印加時間が長い場合に増える傾向がある。これは、トナーが現像駆動側成分の印加時に進む距離で説明できる。この距離が長いほど、現像領域の広範囲に存在するトナーが感光ドラムに付着してしまう可能性がある。したがって、交流電圧のうち現像駆動側成分の印加時にトナーが進む距離を長くしすぎなくするのがよい。発明者らの検討によれば、現像駆動側成分の印加時にトナーが進む距離をキャリアの体積平均粒径Dc以下に設定することで、非画像部へのトナー付着を効果的に抑制できることがわかった。
【0102】
以下、トナーの動きを説明しながら、上述した内容について説明する。
図9は現像部の現像剤の様子を示した図である。実際には現像中はキャリアが感光ドラム1aとの間に図示するような穂を形成し、半分以上の空間はトナーが自由に往復できる状態になっている。このため、本明細書においては、キャリアの存在を無視した形で説明する。
【0103】
ここで、現像駆動側成分の印加時にトナーが進む距離をキャリアの体積平均粒径以下に設定するということは、以下のことを意味する。即ち、現像駆動側成分の印加時に、
図9中に示した感光ドラム1aからキャリア平均粒径Dcの距離に相当する破線αよりも感光ドラム1a側のトナーしか感光ドラム1aに付着できないということである。言い換えれば、感光ドラム1aに接触しているキャリアに付着したトナーは、現像駆動側成分の印加時間を短くしても感光ドラム1aに付着してしまう。このため、現像駆動側成分の印加時にトナーが進む距離をキャリアの体積平均粒径以下に設定することで、感光ドラム1aに付着したキャリアよりも現像スリーブ28側のキャリアに付着したトナーが感光ドラム1aに付着しないようにしている。これにより、非画像部に付着するトナー量が制限されるため、その後のトナー戻し側成分の印加時やブランク部の印加時のかぶり取り電位Vbackにより概ねトナーは回収される。
【0104】
図9にて、dは感光ドラム1aと現像スリーブ28との間のギャップである。即ち、dは、像担持体としての感光ドラム1aと現像剤担持体としての現像スリーブ28の最近接位置における距離である。また、現像スリーブ28に担持されたトナーの平均電荷量をq、トナーの平均質量をmとする。この場合に、感光ドラム1aの表面電位が暗部電位Vdの非画像部で、現像駆動側成分の印加時間Tgo(
図4参照)にトナーが進む距離は以下の式(10)のように書き表せる。
【数16】
【0105】
まず、電荷qのトナーが電界Eから受ける力は|q|Eである。非画像部の感光ドラム1aの電位Vdに対する現像駆動側成分の印加電位との差分はV1である(
図4参照)。したがって、E=V1/dとなるので、電荷qのトナーが電界Eから受ける力は|q|×(V1/d)と書ける。このため、初速度0の条件で、q×(V1/d)の力を受けながら、現像駆動側成分の印加時間Tgoの間にトナーが進む距離は、上述の式(10)のように書ける。
【0106】
現像駆動側成分の印加時にトナーが進む距離をキャリアの体積平均粒径以下に設定するということは、式(10)に示した距離が、キャリア体積平均粒径Dc以下であればよい。即ち、以下の式(11)を満たせばよい。
【数17】
【0107】
よって、式(11)を満たすように現像バイアスの波形のTgoを設定することで、非画像部へのトナー付着を効果的に抑制できる。Tgoは周波数やデューティ比によって制御可能である。なお、式(11)において、式(10)に示した距離をDc/10より大きくした理由は、この距離が短くてもかぶりに関しては問題ないが、画像部のドット再現性に影響が出かねないからである。
【0108】
発明者らの検討によれば、現像駆動側成分の印加時間Tgoの間にトナーが進む距離をキャリア体積平均粒径Dcの1.5倍以下(
図9の点線βに相当)に抑えておけば、かぶりが少ない状態を維持できた。これは、これまでキャリアの存在を無視して議論を進めてきたが、実際にはキャリアが存在するため、キャリア体積平均粒径Dcの1.5倍以下としていても、実際に進む距離は概ねそれ以下となるからである。そのため、好ましくは式(11)を満たすことが好ましいが、次の式(12)を満たしても、上述した効果をある程度得ることができる。
【数18】
【0109】
このように、非画像部に関しては、交流電圧の現像駆動側成分の印加時間Tgoの間に進む距離はキャリア体積平均粒径の1.5倍より短いほうがかぶりを抑制できる。一方、ハイライト部の再現性を考えると、画像部に関してはトナーの進む距離はキャリア体積平均粒径より長いほうがよい。両者が同時に設定できればかぶりとハイライト再現性の両立が可能となる。本実施形態では、ブランク部をうまく利用することで、両者の両立は可能としている。
【0110】
これを式で表すために、ハイライト部の浅い潜像として、
図4に示した通り、潜像の電位Vlが現像バイアスの直流成分Vdcと同程度の潜像を考えることにする。なお、この潜像の深さは代表例であり必ずしもこの値である必要はない。一口にハイライト部と言っても、画像濃度によって各々潜像も異なり潜像電位も異なる。また、ドット内の潜像深さも一様ではなく、ドットの中央部と周辺部で潜像深さは異なる。そのため、本実施形態では潜像の電位Vlが現像バイアスの直流成分Vdcと同程度の潜像を考えることにする。発明者らの検討によれば、ベタ部の潜像電位VLよりも浅い反射濃度0.6以下のハイライト部の潜像に関していえば、潜像の電位Vlが現像バイアスの直流成分Vdcと完全に一致しなくとも、本実施形態の効果は概ね得ることができることがわかった。なお、反射濃度は、分光濃度計X-Rite504/508(X-Rite(株)製)により測定した。
【0111】
ハイライト部に対応する感光ドラム1aの表面電位がVl≒Vdc程度の浅い潜像部においては、トナーが感光ドラム1a側方向に力を受けるのは、パルス部の現像駆動側成分の印加時のみである。但し、本実施形態のように現像駆動側成分の印加後にブランク部が続く場合は、その間もトナーは、慣性により感光ドラム1a側に進み続ける。即ち、表面電位がVl≒Vdc程度のハイライト部に関しては、ブランク部では直流電圧Vdcと同じ電位となるため、単純に考えれば電位差が無く電界も発生しない。したがって、直前のパルス部の現像駆動側成分で加速されたトナーがブランク部ではそのまま慣性で進み続けることになる。このため本実施形態では、このブランク部も含めてトナーが進む距離をキャリア体積平均粒径より長くすることで、ハイライト部の再現性を高めるようにしている。
【0112】
感光ドラム1aの表面電位が電位Vl=Vdcのハイライト部の電位と、感光ドラム1aの現像駆動側成分の印加電位との差分はVgoである(
図4参照)。この時、電荷qのトナーが電界Eから受ける力は|q|×(Vgo/d)と書ける。初速度0の条件で、q×(Vgo/d)の力を受けながら、現像駆動側成分の印加時間Tgo(
図4参照)の間と、その後のブランク部の時間T
B(
図4参照)の間にトナーが進む距離は、以下の式(13)のように書ける。
【数19】
【0113】
ブランク部も含めてトナーが進む距離をキャリア体積平均粒径より長くするということは、式(13)に示した距離が、キャリア平均粒径Dcよりも大きければよい。即ち、以下の式(14)を満たせばよい。
【数20】
【0114】
なお、式(14)において、上限を2dとした理由は、ブランク部の時間TBが無駄に長すぎると、余計なトナーが感光ドラム1a近傍にとどまりやすくなり、そのトナーの一部が非画像部に付着し、かぶりが発生しやすくなる懸念があるからである。ブランク部を含めてトナーが進む距離が感光ドラム1aと現像スリーブ28間の距離d以上であれば、ハイライト部を再現するには十分な量のトナーが供給され、それ以上ブランク時間TBをのばしても効果が飽和する。しかし、現実の系では、今回簡単のために省略したトナーとキャリア間の付着力等も考慮する必要がある。そのため、上記式(13)によるトナーが進む距離としては、2d程度あれば十分である。そのため、上限を2dとした。
【0115】
より好ましくは、ブランク部も含めてトナーが進む距離が現像スリーブ28と感光ドラム1a間の距離dの半分より大きくなるように設定するのことが良い。このように設定することで、現像スリーブ28と感光ドラム1a間に供給された半分以上のトナーが現像に寄与でき、ハイライト再現性をより高めることができる。即ち、式(15)を満たすことが好ましい。
【数21】
【0116】
上記式(15)を満たすように現像バイアス波形の特にブランク部印加時間TBを設定することで、ハイライト部の再現性を保つことが可能である。なお、本実施形態でも、現像バイアスの波形は、第1の実施形態で説明したダブルブランクパルス波形でも良いし、第2の実施形態で説明したシングルブランクパルス波形であっても良い。
【0117】
上述のように、本実施形態では、式(12)と式(14)を満たすことで、画像のがさつきを改善しつつかぶりの発生を抑制できる。また、式(11)や式(15)を満たすようにすることがより好ましい。なお、現像バイアスの波形が、第1の実施形態で説明した式(3)、(5)、(8)、(9)の何れかの式も満たすことが好ましい。即ち、現像バイアスの波形は、式(12)及び式(14)、好ましくは式(11)や式(15)を満たすと共に、式(3)、(5)、(8)、(9)の何れかの式を満たすことで、画像のがさつきを改善しつつかぶりの発生を抑制する効果がより得られる。
【0118】
[実施例]
次に、ハイライト部のがさつきと非画像部のかぶりの発生レベルに関して行った実験について説明する。実験は、第1の実施形態の実施例で述べたのと同様な方法により、画像形成装置100において、主に周波数とブランク部の長さを変更しながら、ハイライト部のがさつき及び非画像部のかぶりの発生状態を評価した。これらの評価方法などについても第1の実施形態の実施例と同様である。表3に、実験に用いた波形及び評価結果を示す。なお、本実施例の実験においては、現像スリーブ28と感光ドラム1aとの距離(ギャップ)dが2.5×10
-4mとした。また、実験に用いたキャリアの体積平均粒径Dcは5.0×10
-5mであった。また、トナーの摩擦帯電電荷量|q|/mは3.0×10
-2C/kgであった。
【表3】
【0119】
実施例3-1~3は、現像バイアスの波形が本実施形態で説明した条件を満たし、比較例3-1~2は、満たさない。具体的には、
実施例3-1の波形は、式(11)や式(14)、(15)を満たす。
実施例3-2の波形は、式(12)や式(14)、(15)は満たすが、式(11)は満たさない。
実施例3-3の波形は、式(11)や式(14)を満たすが、式(15)は満たしていない。
一方、比較例3-1の波形は、式(11)、(12)や式(14)を満たさない。
比較例3-2の波形は、式(11)を満たすが、式(14)を満たさない。
【0120】
表3から明らかなように、実施例3-1のようにパルス部の周波数を12.6kHzにすると共に、1波長分のブランク部を設けた場合、がさつきとかぶりの双方に関して良好な結果が得られた。上述のように、実施例3-1の波形は、式(11)や式(14)を満たす。具体的には、実施例3-1の場合、周波数を高め、かつ、デューティ比も高めにし、現像駆動側成分の印加時間Tgoを短く設定できたことで非画像部のかぶりを抑制できたと考えられる。一方で、ブランク部を1波長分設けたことでハイライト部へのトナー飛翔を維持でき、がさつきの発生を抑えられたと考えられる。
【0121】
実施例3-2のようにパルス部の周波数を9kHzとした場合も、がさつきに関して良好な結果が得られた。かぶりに関しては、実施例3-1の時よりはやや発生しやすくなるものの、比較的良好な結果が得られた。このような実施例3-2の波形は、上述のように式(14)は満たすが、式(11)は満たさず、その代わり式(12)を満たす。そのため、かぶりに関して実施例3-1にやや劣る結果となったと考えられる。
【0122】
一方、比較例3-1のようにパルス部の周波数を6kHzまで低くした場合は、がさつき、かぶりが共に発生しやすくなった。比較例3-1の場合、波形が式(11)、(12)や式(14)を満たさない。具体的には、周波数を低くした結果、現像駆動側成分の印加時間Tgoが長くなり、非画像部にトナーが付着しやすくなってしまったと考えられる。また、周波数を低くした結果、ブランク部の長さも長くなり、結果ハイライト部にトナーは付着しやすくなっている。但し、必要以上に(式(14)の上限を越してしまうほど)ブランク時間が長くなってしまい、この観点でも、非画像部にトナーが付着しやすくなっている。結果、かぶりが発生しやすくなったと考えられる。
【0123】
比較例3-2のようにブランクを設けない矩形波形の場合は、かぶりに関しては良好な結果が得られたが、がさつきが目立った。比較例3-2の波形は、上述のように、式(11)を満たすが式(14)は満たさない。具体的には、ブランク部を設けなかったために、かぶりは良好だが、ハイライト部の再現性が低下しがさつきが発生しやすくなってしまったと考えられる。
【0124】
実施例3-3は実施例3-1に対して、ブランク長のみ半波長分に短くしている。この場合は、かぶりに関して良好な結果が得られた。がさつきに関しては、実施例3-1の時よりはやや発生しやすくなるものの、比較的良好な結果が得られた。実施例3-3の波形は、上述のように式(11)、式(14)を満たすが、式(15)は満たしていない。そのため、がさつきに関しては、より広範囲のトナーがハイライト再現性に寄与する実施例3-1の設定に対して、やや劣る結果となったと考えられる。
【0125】
なお、本実験では、テクトロニクス社製のオシロスコープ「型番DPO2014B」を用いて現像バイアス波形を測定し、TREK社製の表面電位計(モデル344)を用いて感光ドラム1a上の暗部電位Vdを測定した。どちらも、測定時は多少なりノイズがのっているため、その場合は平均値を用いることとする。
【0126】
上述したように、感光ドラム1a上の電位は現像位置での電位である。現像位置の電位は現像位置に表面電位計のプローブを設置することで測定可能であるが、設置が難しい場合は、別の位置で測定した結果より現像位置の電位を予測する方法でも構わない。
【0127】
[トナーの電荷量の測定]
また、本実施形態では、トナーの摩擦帯電電荷量|q|/mは、
図10に示す測定装置を使用して測定した。まず、摩擦帯電量を測定しようとするトナーをキャリアと合して2成分現像剤の形にして、50~100ml容量のポリエチレン製のビンに入れ、約10~40秒間手で振盪する。ついでこの現像剤を約0.1~0.5g、底が635メッシュの導電性スクリーン143である金属製の測定容器142に入れ、測定容器142に金属製の蓋144を被せる。この状態の測定容器142全体の重量を計り、これをW1(kg)とする。
【0128】
次に、測定容器142を吸引機141に設置し、吸引口147から吸引し、風量調節弁146を調節して、真空計145の圧力を150mmAqとする。なお、吸引機141の少なくとも測定容器142と接する部分は絶縁体としている。この状態で十分、好ましくは2分間吸引を行い、トナーを吸引除去する。このときの測定容器142に接続した電位計149が示す電位を読み、これをVt(V)とする。また吸引後の測定容器142全体の重量を計り、これをW2(kg)とする。測定容器142に電位計149と並列接続したコンデンサ148の容量をC(F)とすると、トナーの摩擦帯電量は、下式:
トナーの摩擦帯電量|q|/m(C/kg)=C×Vt/(W1-W2)
で計算される。
【0129】
本発明者らは電位計149として、ケースレー社製の低電流電位計6514型を使用した。この電位計は電荷測定機能を備えているので、発明者らは上記式の電荷量|q|=C×Vtを直接この電位計で測定した。
【0130】
なお、上述の実験では、トナーの摩擦帯電電荷量|q|/mが3.0×10-2C/kgのトナーを用いたが、トナーの摩擦帯電電荷量はこの値に限らない。例えば、1.0×10-2C/kg以上、7.0×10-2C/kg以下の範囲内であれば、本実施形態を好ましく適用可能である。1.0×10-2C/kgより小さいと、トナーにかかる電界力が弱くなり、トナーの飛翔の制御が難しくなる。また、7.0×10-2C/kgよりも大きいと、トナーの電荷量が大きくトナーとキャリア間の電界付着力が大きくなり、トナーの飛翔の制御が難しくなる。より好ましくは、1.0×10-2C/kg以上、5.0×10-2C/kg以下の範囲内とする。
【0131】
トナーの摩擦帯電電荷量|q|/mは使用環境に応じて変化しやすい。そこで、温度23℃湿度60%の環境での値を代表値として用いた。画像のがさつきやかぶりの発生といった課題は、トナーの摩擦帯電電荷量|q|/mが小さい場合により顕著に発生しやすい。そのため、温度23℃湿度60%の環境のように適度に湿度があり|q|/mが高くなりすぎない値を代表値として用いれば、その他の環境でも概ね発明の効果が得られる。
【0132】
[現像スリーブ28と感光ドラム1aの間のギャップdの調整]
現像スリーブ28と感光ドラム1aの間のギャップdに関しては、次のように調整した。即ち、現像スリーブ28と感光ドラム1aの間に設定したい厚さのギャップゲージを挿入し、ギャップゲージをスペーサにすることで、感光ドラム1aと現像スリーブ28の中心間距離を調整することで、ギャップdを所望の値とした。本実施形態の場合は、250μmのギャップゲージを用いて調整した。
【0133】
なお、ギャップにレーザ光を照射して走査し、反射光を検知することで、このギャップを計測しつつ、感光ドラム1aと現像スリーブ28の中心間距離を調整して所定の対向間隔に合わせ込んでも構わない。
【0134】
[キャリアの体積平均粒径の測定]
次に、現像剤のキャリアの体積平均粒径(D50)の測定方法について述べる。まず、粒度分布などは、レーザ回折・散乱方式の粒度分布測定装置(商品名:マイクロトラックMT3300EX、日機装(株)製)を用いて測定を行った。
【0135】
キャリアなどの体積平均粒径(D50)の測定には、乾式測定用の試料供給機(商品名:ワンショットドライ型サンプルコンディショナー Turbotrac、日機装(株)製)を装着して行った。Turbotracの供給条件として、真空源として集塵機を用い、風量33l/秒、圧力17kPaとした。制御は、ソフトウェア上で自動的に行った。粒径は、体積平均の累積値である50%粒径(D50)を求めた。制御及び解析は、付属ソフト(バージョン10.3.3-202D)を用いて行った。測定条件は、以下のとおりである。
【0136】
Set Zero時間:10秒
測定時間:10秒
測定回数:1回
粒子屈折率:1.81%
粒子形状:非球形
測定上限:1408μm
測定下限:0.243μm
測定環境:温度23℃/湿度50%RH
【0137】
<第5の実施形態>
第5の実施形態について、
図11を用いて説明する。なお、本実施形態の現像装置4Bは、
図8に示した現像装置4Aと同様のタッチダウン方式の現像装置であり、基本的な構成は現像装置4Aと同様である。また、本実施形態の場合、供給ローラ28Aに印加される受け渡しバイアスの波形を、上述の第4の実施形態で説明した現像バイアスの波形と同様に、式(12)と式(14)を満たすようにし、好ましくは式(11)や式(15)を満たすようにしている。このため、その他の構成及び作用については、図示及び説明を省略又は簡略にし、以下、第3の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0138】
上述のように、本実施形態の現像装置4Bは、タッチダウン現像方式を採用しており、トナー担持体としての現像ローラ31は、現像剤担持体としての供給ローラ28Aから
図11のP1の位置で受け取ったトナーを担持する。この際、供給ローラ28Aには、受け渡しバイアス印加部としての電源30Bから受け渡しバイアスが印加されることで、供給ローラ28Aから現像ローラ31にトナーが受け渡される。トナーが受け渡された現像ローラ31は、現像バイアス印加部としての電源33から現像バイアスが印加されることで、現像ローラ31に担持されたトナーにより不図示の感光ドラム上に形成された静電潜像を現像する。
【0139】
上述の受け渡しバイアス及び現像バイアスは、例えば、直流電圧に交流電圧を重畳した電圧である。また、受け渡しバイアス及び現像バイアスの波形は、第1の実施形態の現像バイアスで説明したブランク部を有するブランクパルス波形とする。なお、受け渡しバイアスの波形と次述する現像バイアスの波形とは、パルスの位相を互いに異ならせることが好ましい。また、現像バイアスの波形は、ブランク部を有しない矩形波形であっても良い。
【0140】
ここで、供給ローラ28Aから現像ローラへトナーを移動させる際、現像ローラ31へのトナー供給不足が生じると、感光ドラム上の潜像へのトナーの現像に影響を与えかねない。通常、供給ローラ28Aから現像ローラ31へトナー移動させるために、両者に印加されるバイアスの直流電圧(DC成分)には電位差が設けられている。電位差を大きくすればトナーの移動量を多くできるが、供給ローラ28Aと現像ローラ31との間で放電などが発生しかねない。
【0141】
そこで、本実施形態では、受け渡しバイアスとして、第4の実施形態で説明した現像バイアスと同様の波形を有するバイアスを印加するようにしている。即ち、受け渡しバイアスの波形は、
図4に示したように、直流電圧に交流電圧が重畳されたパルス部と、直流電圧のみのブランク部とを周期的に繰り返すものである。且つ、受け渡しバイアスの波形は、パルス部における交流電圧のうち、直流電圧に対してトナーの正規帯電極性と同極性側の電圧が印加された後にブランク部が存在するように設定されている。そして、受け渡しバイアスの波形は、前述した式(12)と式(14)を満たし、好ましくは式(11)や式(15)を満たすようにしている。
【0142】
なお、本実施形態では、
図4に示す現像バイアスの波形のVgo、Vre、V1、V2、Tgo、Treを次の様に定義する。
Vgo:パルス部における交流電圧のうち、電源30Bから供給ローラ28Aに印加された直流電圧に対してトナーの正規帯電極性と同極性側の電圧
Vre:パルス部における交流電圧のうち、電源30Bから供給ローラ28Aに印加された直流電圧に対してトナーの正規帯電極性と逆極性側の電圧
V1 :パルス部における交流電圧のうち、電源33から現像ローラ31に印加された直流電圧に対してトナーの正規帯電極性と同極性側の電圧
V2 :パルス部における交流電圧のうち、電源33から現像ローラ31に印加された直流電圧に対してトナーの正規帯電極性と逆極性側の電圧
Tgo:パルス部の1周期におけるVgoの印加時間
Tre:パルス部の1周期におけるVreの印加時間
【0143】
また、現像ローラ31と供給ローラ28Aの最近接位置における距離をd、キャリアの体積平均粒径をDc、供給ローラ28Aに担持されたトナーの平均電荷量をq、トナーの平均質量をmとする。また、TPはパルス部の時間、TBはブランク部の時間である。
【0144】
供給ローラ28Aに印加する受け渡しバイアスの波形をこのように設定することで、少ない電位差でも供給ローラ28Aから現像ローラ31へトナーを移動させることが可能となる。そして、電位差を小さくできれば、上述の放電などの発生を抑制できる。
【0145】
ここで、第4の実施形態では、現像スリーブ28と感光ドラム1aの最近接位置におけるギャップをdとしていたが、本実施形態では、上述のように供給ローラ28Aと現像ローラ31の最近接位置におけるギャップをdとする。また、第4の実施形態における感光ドラム1aの帯電電位Vdは、現像ローラ31の電位(交番電界の場合はその直流成分)Vtに相当する。即ち、上述のV1、V2を、電源33から現像ローラ31に印加された直流電圧を基準とした値とする。要は、第4の実施形態の現像スリーブ28は、本実施形態の供給ローラ28Aに対応し、第4の実施形態の感光ドラム1aは、本実施形態の現像ローラ31に対応する。これにより、第4の実施形態で説明した内容と同様に、各式を用いることができ、第4の実施形態の現像バイアスと同様の効果が得られる。
【0146】
また、このようなタッチダウン現像方式では、供給ローラ28Aや現像ローラ31に交流電圧を印加すると、供給ローラ28Aと現像ローラ31のトナー受け渡し位置である
図8のP1の位置でトナーが往復運動を繰り返すことになる。そのため、P1の位置ではトナーが飛散し易い。これに対して本実施形態のように供給ローラ28Aや現像ローラ31に印加するバイアスとしてブランク部を備えたブランクパルス波形を採用した場合は、ブランク部を持たない矩形波形の場合よりも往復運動を少なくできる。このため、トナー飛散を軽減できるというメリットもある。
【0147】
上述のように、本実施形態では、受け渡しバイアスの波形が、式(12)と式(14)を満たすようにし、好ましくは式(11)や式(15)を満たすようにしている。なお、受け渡しバイアスの波形が、第1の実施形態で説明した式(3)、(5)、(8)、(9)の何れかの式も満たすことが好ましい。また、受け渡しバイアスの波形は、第1の実施形態で説明したダブルブランクパルス波形でも良いし、第2の実施形態で説明したシングルブランクパルス波形であっても良い。
【0148】
<他の実施形態>
上述の各実施形態は、適宜組み合わせて実施可能である。例えば、第1、第2、第3の実施形態において、それぞれ、現像バイアスの波形が、式(3)、(5)、(8)、(9)の何れかの式を満たすと共に、第4の実施形態で説明した式(12)及び式(14)を満たすようにしても良い。更には式(11)や式(15)を満たすようにしても良い。
【0149】
また、画像形成装置100は、フルカラープリンタに限らず、モノクロやモノカラーのプリンタであってもよい。また、画像形成装置100は、プリンタ、各種印刷機、複写機、FAX、これらの複数の機能を有する複合機等であっても良い。
【0150】
また、上述の各実施形態では、像担持体として、ドラム状の有機感光体である感光ドラム1a~1dを使用したが、勿論、アモルファスシリコン感光体等の無機感光体を使用することもできる。また、ベルト状の感光体を用いることも可能である。帯電方式、転写方式、クリーニング方式、定着方式に関しても、上記方式に限られるものではない。
【0151】
また、上述の第1、第2、第4の実施形態では、現像室23及び攪拌室24が上下に配置された現像装置4に本発明を適用した場合について説明したが、現像装置はこれには限られない。例えば、従来から使用されているような現像室及び攪拌室が水平に配置された現像装置、或いは、その他の形態の現像装置においても、本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0152】
1a、1b、1c、1d・・・感光ドラム(像担持体)/2a、2b、2c、2d・・・帯電器(帯電部)/3a、3b、3c、3d・・・レーザビームスキャナ(潜像形成部)/4a、4b、4c、4d、4A、4B・・・現像装置/28・・・現像スリーブ(現像剤担持体)/28A・・・供給ローラ(現像剤担持体)/30、30A・・・電源(現像バイアス印加部)/30B・・・電源(受け渡しバイアス印加部)/31・・・現像ローラ(トナー担持体)/32・・・電源(受け渡しバイアス印加部)/33・・・電源(現像バイアス印加部)/100・・・画像形成装置