IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-光電変換装置、光電変換装置の製造方法 図1
  • 特許-光電変換装置、光電変換装置の製造方法 図2
  • 特許-光電変換装置、光電変換装置の製造方法 図3
  • 特許-光電変換装置、光電変換装置の製造方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】光電変換装置、光電変換装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/146 20060101AFI20240109BHJP
【FI】
H01L27/146 D
H01L27/146 F
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2019216673
(22)【出願日】2019-11-29
(65)【公開番号】P2021086979
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石野 英明
【審査官】脇水 佳弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-191005(JP,A)
【文献】特開平06-260628(JP,A)
【文献】特開2016-018859(JP,A)
【文献】特開平06-140616(JP,A)
【文献】特開2011-035204(JP,A)
【文献】特開2018-006415(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/146
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光画素領域と、遮光画素領域とを有する光電変換装置であって、
第1面と、前記第1面とは反対の第2面とを有する半導体層と、
前記受光画素領域において前記半導体層の前記第1面上に配置された第1積層構造であって、絶縁層と、前記半導体層と前記絶縁層との間に配置された金属酸化物層と、が少なくとも積層された第1積層構造と、
前記遮光画素領域において前記半導体層の前記第1面上に配置された第2積層構造であって、遮光層と、前記半導体層と前記遮光層との間に配置された金属酸化物層と、前記金属酸化物層と前記遮光層との間に配置された第1絶縁層と、前記第1絶縁層と前記遮光層との間に配置されており水素を含有する第2絶縁層と、が少なくとも積層された第2積層構造と、を含
前記第2絶縁層は、前記金属酸化物層よりも厚く、
前記第1絶縁層は、前記第2絶縁層よりも厚く、
前記遮光層は、前記第1絶縁層よりも厚い、
ことを特徴とする光電変換装置。
【請求項2】
前記金属酸化物層は、5nm以上、かつ、20nm以下の厚さであり、
前記第1絶縁層は、70nm以上、かつ、280nm以下の厚さであり、
前記第2絶縁層は、25nm以上、かつ、100nm以下の厚さであり、
前記遮光層は、100nm以上、かつ、400nm以下の厚さである、
ことを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置
【請求項3】
前記半導体層の前記第2面側に、さらに基板を含み、
前記半導体層と前記基板との間には、複数の絶縁層および複数の配線層が配置されており、
前記第1面と前記遮光層との距離は、前記複数の配線層のうち前記第2面に最も近接する配線層と前記第2面との距離より短い、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の光電変換装置
【請求項4】
受光画素領域と、遮光画素領域とを有する光電変換装置であって、
第1面と、前記第1面とは反対の第2面とを有する半導体層と、
前記受光画素領域において前記半導体層の前記第1面上に配置された第1積層構造であって、絶縁層と、前記半導体層と前記絶縁層との間に配置された金属酸化物層と、が少なくとも積層された第1積層構造と、
前記遮光画素領域において前記半導体層の前記第1面上に配置された第2積層構造であって、遮光層と、前記半導体層と前記遮光層との間に配置された金属酸化物層と、前記金属酸化物層と前記遮光層との間に配置された第1絶縁層と、前記第1絶縁層と前記遮光層との間に配置されており水素を含有する第2絶縁層と、が少なくとも積層された第2積層構造と、を含み、
前記金属酸化物層は、5nm以上、かつ、20nm以下の厚さであり、
前記第1絶縁層は、70nm以上、かつ、280nm以下の厚さであり、
前記第2絶縁層は、25nm以上、かつ、100nm以下の厚さであり、
前記遮光層は、100nm以上、かつ、400nm以下の厚さである、
ことを特徴とする光電変換装置
【請求項5】
前記半導体層の前記第2面側に、さらに基板を含み、
前記半導体層と前記基板との間には、複数の絶縁層および複数の配線層が配置されており、
前記第1面と前記遮光層との距離は、前記複数の配線層のうち前記第2面に最も近接する配線層と前記第2面との距離より短い、
ことを特徴とする請求項4に記載の光電変換装置
【請求項6】
受光画素領域と、遮光画素領域とを有する光電変換装置であって、
第1面と、前記第1面とは反対の第2面とを有する半導体層と、
前記受光画素領域において前記半導体層の前記第1面上に配置された第1積層構造であって、絶縁層と、前記半導体層と前記絶縁層との間に配置された金属酸化物層と、が少なくとも積層された第1積層構造と、
前記遮光画素領域において前記半導体層の前記第1面上に配置された第2積層構造であって、遮光層と、前記半導体層と前記遮光層との間に配置された金属酸化物層と、前記金属酸化物層と前記遮光層との間に配置された第1絶縁層と、前記第1絶縁層と前記遮光層との間に配置されており水素を含有する第2絶縁層と、が少なくとも積層された第2積層構造と、を含み、
前記半導体層の前記第2面側に、さらに基板を含み、
前記半導体層と前記基板との間には、複数の絶縁層および複数の配線層が配置されており、
前記第1面と前記遮光層との距離は、前記複数の配線層のうち前記第2面に最も近接する配線層と前記第2面との距離より短い、
ことを特徴とする光電変換装置
【請求項7】
前記第1積層構造は、前記第2絶縁層を含まない、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項8】
前記第2積層構造において、前記第2絶縁層と前記遮光層が接している、
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項9】
前記第2積層構造において、前記第2絶縁層と前記遮光層との間には、絶縁層が配置されている、
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項10】
前記金属酸化物層は、固定電荷層として機能する、
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項11】
前記第2絶縁層における水素濃度は、前記第1絶縁層および前記金属酸化物層における水素濃度よりも高い、
ことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項12】
前記第2絶縁層における水素濃度は1021atoms/cm以上である、
ことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項13】
前記第2絶縁層における水素濃度は1022atoms/cm以上である、
ことを特徴とする請求項12に記載の光電変換装置。
【請求項14】
前記金属酸化物層は、酸化アルミニウムによって構成されており、
前記第1絶縁層は、酸化シリコンによって構成されている、
ことを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項15】
前記第2絶縁層は、シリコン化合物である、
ことを特徴とする請求項1から14のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項16】
前記第2絶縁層は、窒化シリコンまたは酸窒化シリコンによって構成されている、
ことを特徴とする請求項15に記載の光電変換装置。
【請求項17】
前記遮光層は、アルミニウムまたはタングステンによって構成されている、
ことを特徴とする請求項1から16のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項18】
前記金属酸化物層と前記第1絶縁層との間には、誘電体層が配置されている、
ことを特徴とする請求項1から17のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項19】
前記誘電体層は、前記金属酸化物層よりも厚い、
ことを特徴とする請求項18に記載の光電変換装置。
【請求項20】
前記誘電体層は、酸化タンタルによって構成されている、
ことを特徴とする請求項18または19に記載の光電変換装置。
【請求項21】
請求項1から20のいずれか1項に記載の光電変換装置と、
前記光電変換装置に結像する光学系、
前記光電変換装置を制御する制御装置、
前記光電変換装置から出力された信号を処理する処理装置、
前記光電変換装置が得る情報を表示する表示装置、
前記光電変換装置が得る情報を記憶する記憶装置、
可動部または推進部を有する機械装置、
の6つのうち少なくともいずれかと、
を備える機器。
【請求項22】
受光画素領域と、遮光画素領域とを有する光電変換装置の製造方法であって、
前記光電変換装置は、
第1面と、前記第1面とは反対の第2面とを有する半導体層と、
前記受光画素領域において前記半導体層の前記第1面上に配置された第1積層構造であって、絶縁層と、前記半導体層と前記絶縁層との間に配置された金属酸化物層と、が少な
くとも積層された第1積層構造と、
前記遮光画素領域において前記半導体層の前記第1面上に配置された第2積層構造であって、遮光層と、前記半導体層と前記遮光層との間に配置された金属酸化物層と、前記金属酸化物層と前記遮光層との間に配置された第1絶縁層と、前記第1絶縁層と前記遮光層との間に配置されており水素を含有する第2絶縁層と、が少なくとも積層された第2積層構造と、を有し、
前記第2絶縁層は、前記金属酸化物層よりも厚く、
前記第1絶縁層は、前記第2絶縁層よりも厚く、
前記遮光層は、前記第1絶縁層よりも厚く、
前記第1絶縁層を、PECVD(Plasma-Enhanced Chemical
Vapor Deposition)によって形成するステップを含むことを特徴とする製造方法。
【請求項23】
受光画素領域と、遮光画素領域とを有する光電変換装置の製造方法であって、
前記光電変換装置は、
第1面と、前記第1面とは反対の第2面とを有する半導体層と、
前記受光画素領域において前記半導体層の前記第1面上に配置された第1積層構造であって、絶縁層と、前記半導体層と前記絶縁層との間に配置された金属酸化物層と、が少なくとも積層された第1積層構造と、
前記遮光画素領域において前記半導体層の前記第1面上に配置された第2積層構造であって、遮光層と、前記半導体層と前記遮光層との間に配置された金属酸化物層と、前記金属酸化物層と前記遮光層との間に配置された第1絶縁層と、前記第1絶縁層と前記遮光層との間に配置されており水素を含有する第2絶縁層と、が少なくとも積層された第2積層構造と、を有し、
前記金属酸化物層は、5nm以上、かつ、20nm以下の厚さであり、
前記第1絶縁層は、70nm以上、かつ、280nm以下の厚さであり、
前記第2絶縁層は、25nm以上、かつ、100nm以下の厚さであり、
前記遮光層は、100nm以上、かつ、400nm以下の厚さであり、
前記第1絶縁層を、PECVD(Plasma-Enhanced Chemical
Vapor Deposition)によって形成するステップを含むことを特徴とする製造方法
【請求項24】
受光画素領域と、遮光画素領域とを有する光電変換装置の製造方法であって、
前記光電変換装置は、
第1面と、前記第1面とは反対の第2面とを有する半導体層と、
前記受光画素領域において前記半導体層の前記第1面上に配置された第1積層構造であって、絶縁層と、前記半導体層と前記絶縁層との間に配置された金属酸化物層と、が少なくとも積層された第1積層構造と、
前記遮光画素領域において前記半導体層の前記第1面上に配置された第2積層構造であって、遮光層と、前記半導体層と前記遮光層との間に配置された金属酸化物層と、前記金属酸化物層と前記遮光層との間に配置された第1絶縁層と、前記第1絶縁層と前記遮光層との間に配置されており水素を含有する第2絶縁層と、が少なくとも積層された第2積層構造と、を有し、
前記半導体層の前記第2面側に、さらに基板を有し、
前記半導体層と前記基板との間には、複数の絶縁層および複数の配線層が配置されており、
前記第1面と前記遮光層との距離は、前記複数の配線層のうち前記第2面に最も近接する配線層と前記第2面との距離より短く、
前記第1絶縁層を、PECVD(Plasma-Enhanced Chemical
Vapor Deposition)によって形成するステップを含むことを特徴とす
る製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換装置、光電変換装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
裏面照射型の固体撮像素子(光電変換装置)には、受光画素領域と遮光画素(以下、OB画素)領域が設けられている。受光画素領域とは、入射した光が画素(フォトダイオード)まで届くような領域であり、OB画素領域とは、入射した光が画素まで届く前に遮光される領域である。そして、この2つの画素が取得したデータの差分によりダークノイズを除くことによって、高精度な撮影を可能としている。
【0003】
また、裏面照射型の固体撮像素子では、半導体基板において光電変換部が形成された面と反対の面が光入射面である。光入射面は、半導体基板とその他材料との界面であるため、暗電流(光を当てないでも流れる電流)の発生源となる。このような光入射面において発生する暗電流を低減するための技術として、光入射面において高密度な固定電荷を有する金属酸化物層を形成して、金属酸化物層によるチャージ蓄積効果によって暗電流源を不活化する方法が知られている。ここで、信号電荷として電子を用いる場合には、固定電荷の極性は負がよく、正極性のチャージを蓄積することで、暗電流源を不活化できる。金属酸化物層には、酸化ハフニウム層、酸化アルミニウム層、酸化タンタル層が用いられている。
【0004】
しかし、暗電流低減の機能を有する金属酸化物層(金属酸化物膜)を画素領域全域にわたり形成しても、受光画素領域に対してOB画素領域の暗電流レベルが高くなる現象(いわゆるOB段差)が発生してしまい、画素性能が劣化する。そこで、特許文献1では、受光画素領域よりもOB画素領域の方における金属酸化物層を厚く形成することによって、2つの領域のOB段差を抑制する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-191005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、周辺回路領域におけるトランジスタの誤動作防止の観点から、固定電荷を有する金属酸化物層の影響は小さくした方がよい。そこで、水素を含有する絶縁層(水素含有絶縁層)をOB画素領域に配置して、水素含有絶縁層の水素によって暗電流源そのものを不活化する方法が考えられる。ここで、水素含有絶縁層の中にはプラズマCVDで形成した窒化シリコン層、酸窒化シリコン層、酸化シリコン層のように正の固定電荷を持つものがある。そのような正の固定電荷を持つ水素含有絶縁層もまたチャージ蓄積効果を有する。しかし、負極性のチャージを蓄積するため、金属酸化物層によりチャージ蓄積効果を打ち消す方向に作用する。よって、このような水素含有絶縁層をOB画素領域に配置することはOB段差の低減、つまり画素性能の劣化の抑制という観点から望ましくない。
【0007】
そこで、本発明は、光電変換装置において、画素性能の劣化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの態様は、
受光画素領域と、遮光画素領域とを有する光電変換装置であって、
第1面と、前記第1面とは反対の第2面とを有する半導体層と、
前記受光画素領域において前記半導体層の前記第1面上に配置された第1積層構造であって、絶縁層と、前記半導体層と前記絶縁層との間に配置された金属酸化物層と、が少なくとも積層された第1積層構造と、
前記遮光画素領域において前記半導体層の前記第1面上に配置された第2積層構造であって、遮光層と、前記半導体層と前記遮光層との間に配置された金属酸化物層と、前記金属酸化物層と前記遮光層との間に配置された第1絶縁層と、前記第1絶縁層と前記遮光層との間に配置されており水素を含有する第2絶縁層と、が少なくとも積層された第2積層構造と、を含
前記第2絶縁層は、前記金属酸化物層よりも厚く、
前記第1絶縁層は、前記第2絶縁層よりも厚く、
前記遮光層は、前記第1絶縁層よりも厚い、
ことを特徴とする光電変換装置である。
本発明の1つの態様は、
受光画素領域と、遮光画素領域とを有する光電変換装置であって、
第1面と、前記第1面とは反対の第2面とを有する半導体層と、
前記受光画素領域において前記半導体層の前記第1面上に配置された第1積層構造であって、絶縁層と、前記半導体層と前記絶縁層との間に配置された金属酸化物層と、が少なくとも積層された第1積層構造と、
前記遮光画素領域において前記半導体層の前記第1面上に配置された第2積層構造であって、遮光層と、前記半導体層と前記遮光層との間に配置された金属酸化物層と、前記金属酸化物層と前記遮光層との間に配置された第1絶縁層と、前記第1絶縁層と前記遮光層との間に配置されており水素を含有する第2絶縁層と、が少なくとも積層された第2積層構造と、を含み、
前記金属酸化物層は、5nm以上、かつ、20nm以下の厚さであり、
前記第1絶縁層は、70nm以上、かつ、280nm以下の厚さであり、
前記第2絶縁層は、25nm以上、かつ、100nm以下の厚さであり、
前記遮光層は、100nm以上、かつ、400nm以下の厚さである、
ことを特徴とする光電変換装置である。
本発明の1つの態様は、
受光画素領域と、遮光画素領域とを有する光電変換装置であって、
第1面と、前記第1面とは反対の第2面とを有する半導体層と、
前記受光画素領域において前記半導体層の前記第1面上に配置された第1積層構造であって、絶縁層と、前記半導体層と前記絶縁層との間に配置された金属酸化物層と、が少なくとも積層された第1積層構造と、
前記遮光画素領域において前記半導体層の前記第1面上に配置された第2積層構造であって、遮光層と、前記半導体層と前記遮光層との間に配置された金属酸化物層と、前記金属酸化物層と前記遮光層との間に配置された第1絶縁層と、前記第1絶縁層と前記遮光層との間に配置されており水素を含有する第2絶縁層と、が少なくとも積層された第2積層
構造と、を含み、
前記半導体層の前記第2面側に、さらに基板を含み、
前記半導体層と前記基板との間には、複数の絶縁層および複数の配線層が配置されており、
前記第1面と前記遮光層との距離は、前記複数の配線層のうち前記第2面に最も近接する配線層と前記第2面との距離より短い、
ことを特徴とする光電変換装置である。

【0009】
本発明の1つの態様は、
受光画素領域と、遮光画素領域とを有する光電変換装置の製造方法であって、
前記光電変換装置は、
第1面と、前記第1面とは反対の第2面とを有する半導体層と、
前記受光画素領域において前記半導体層の前記第1面上に配置された第1積層構造であって、絶縁層と、前記半導体層と前記絶縁層との間に配置された金属酸化物層と、が少なくとも積層された第1積層構造と、
前記遮光画素領域において前記半導体層の前記第1面上に配置された第2積層構造であって、遮光層と、前記半導体層と前記遮光層との間に配置された金属酸化物層と、前記金属酸化物層と前記遮光層との間に配置された第1絶縁層と、前記第1絶縁層と前記遮光層との間に配置されており水素を含有する第2絶縁層と、が少なくとも積層された第2積層構造と、を有し、
前記第2絶縁層は、前記金属酸化物層よりも厚く、
前記第1絶縁層は、前記第2絶縁層よりも厚く、
前記遮光層は、前記第1絶縁層よりも厚く、
前記第1絶縁層を、PECVD(Plasma-Enhanced Chemical
Vapor Deposition)によって形成するステップを含むことを特徴とする製造方法である。
本発明の1つの態様は、
受光画素領域と、遮光画素領域とを有する光電変換装置の製造方法であって、
前記光電変換装置は、
第1面と、前記第1面とは反対の第2面とを有する半導体層と、
前記受光画素領域において前記半導体層の前記第1面上に配置された第1積層構造であって、絶縁層と、前記半導体層と前記絶縁層との間に配置された金属酸化物層と、が少なくとも積層された第1積層構造と、
前記遮光画素領域において前記半導体層の前記第1面上に配置された第2積層構造であって、遮光層と、前記半導体層と前記遮光層との間に配置された金属酸化物層と、前記金属酸化物層と前記遮光層との間に配置された第1絶縁層と、前記第1絶縁層と前記遮光層との間に配置されており水素を含有する第2絶縁層と、が少なくとも積層された第2積層構造と、を有し、
前記金属酸化物層は、5nm以上、かつ、20nm以下の厚さであり、
前記第1絶縁層は、70nm以上、かつ、280nm以下の厚さであり、
前記第2絶縁層は、25nm以上、かつ、100nm以下の厚さであり、
前記遮光層は、100nm以上、かつ、400nm以下の厚さであり、
前記第1絶縁層を、PECVD(Plasma-Enhanced Chemical
Vapor Deposition)によって形成するステップを含むことを特徴とする製造方法である
本発明の1つの態様は、
受光画素領域と、遮光画素領域とを有する光電変換装置の製造方法であって、
前記光電変換装置は、
第1面と、前記第1面とは反対の第2面とを有する半導体層と、
前記受光画素領域において前記半導体層の前記第1面上に配置された第1積層構造であって、絶縁層と、前記半導体層と前記絶縁層との間に配置された金属酸化物層と、が少なくとも積層された第1積層構造と、
前記遮光画素領域において前記半導体層の前記第1面上に配置された第2積層構造であって、遮光層と、前記半導体層と前記遮光層との間に配置された金属酸化物層と、前記金属酸化物層と前記遮光層との間に配置された第1絶縁層と、前記第1絶縁層と前記遮光層との間に配置されており水素を含有する第2絶縁層と、が少なくとも積層された第2積層構造と、を有し、
前記半導体層の前記第2面側に、さらに基板を有し、
前記半導体層と前記基板との間には、複数の絶縁層および複数の配線層が配置されており、
前記第1面と前記遮光層との距離は、前記複数の配線層のうち前記第2面に最も近接する配線層と前記第2面との距離より短く、
前記第1絶縁層を、PECVD(Plasma-Enhanced Chemical
Vapor Deposition)によって形成するステップを含むことを特徴とする製造方法である
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光電変換装置において画素性能の劣化を抑制するうえで有利な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1に係る半導体装置を示す模式図である。
図2】実施形態1に係る固体撮像素子の断面図である。
図3】実施形態2に係る固体撮像素子の断面図である。
図4】実施形態2に係るその他の固体撮像素子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための実施形態を説明する。なお、以下の説明および図面において、複数の図面にわたって共通の構成については共通の符号を付している。そのため、複数の図面を相互に参照して共通する構成を説明し、共通の符号を付した構成については適宜説明を省略する。
【0013】
<実施形態1>
図1は、本実施形態に係る半導体装置APRを説明する模式図である。半導体装置APRは、第1半導体基板100および第2半導体基板200を含む半導体デバイスICのほかに、半導体デバイスICを実装するためのパッケージPKGを含む。本実施形態では、
半導体装置APRは、固体撮像素子(光電変換装置)である。半導体デバイスICは、画素回路PXCがマトリックス配列された画素領域PXとその周辺の周辺領域PRを有する。周辺領域PRには、周辺回路を設けることができる。
【0014】
また、半導体装置APRは、機器EQPに備えられている。ここで、機器EQPは、光学系OPT、制御装置CTRL、処理装置PRCS、表示装置DSPL、記憶装置MMRYおよび機械装置MCHNの少なくともいずれかを備え得る。機器EQPについては、後述にて詳細に説明する。
【0015】
図2は、実施形態1に係る半導体装置APRの一例である固体撮像素子(光電変換装置)の模式的断面図である。固体撮像素子は、第1半導体基板100(第1半導体層)と第2半導体基板200(第2半導体層)を含んでいる。第1半導体基板100と第2半導体基板200との間には、複数の絶縁層および複数の配線層が配置されている。なお、以下では、特別な説明がない限り、絶縁層は、酸化シリコン層、窒化シリコン層、酸窒化シリコン層、炭素含有酸化シリコン層、フッ素含有酸化シリコン層などである。以下では、第2半導体基板200に対して第1半導体基板100が存在する方向(位置)を「上」と称する。本実施形態では、第1半導体基板100に対して上から光が入射する。
【0016】
(第1半導体基板の内部の構成)
第1半導体基板100では、界面001’’(第1面)が光入射面であり、界面001’’の反対側の(対をなす)界面003’(第2面)において画素105が設けられる。第1半導体基板100の界面003’側(第2面側)に第2半導体基板200が配置されている。
【0017】
画素105は、素子分離101、フォトダイオード102、転送電極103、拡散層104、その他トランジスタ(不図示)を含む。
【0018】
素子分離101は、STI構造を有し、第1半導体基板100の素子領域(活性領域)を画定する。フォトダイオード102は、光を電荷に変換する光電変換部である。転送電極103は、フォトダイオード102の電荷を、拡散層104に転送する。
【0019】
なお、第1半導体基板100には、図2に示した素子以外の素子をあわせて設けることも可能である。例えば、図2に示した素子以外の素子とは、信号処理を担う周辺回路領域を構成するトランジスタ、キャパシタ、抵抗などである。
【0020】
なお、受光画素領域010は画素に光が入射する領域であり、受光画素領域010に属する画素105は光が入射する受光画素である。一方、遮光画素領域010’は画素への光の入射が遮られる領域であり、遮光画素領域010’に属する画素105は、後述する遮光層によって光が遮られる遮光画素である。
【0021】
(第1半導体基板よりも下部の構成)
第1半導体基板100の界面003’の下には、第1層間絶縁層106、コンタクトプラグ107、第1配線層108が設けられる。第1層間絶縁層106の下には、第2層間絶縁層109、第2配線層110、第1配線層108と第2配線層110を接続するプラグ111が設けられる。さらに第2層間絶縁層109の下には、第3層間絶縁層112、第3配線層113、第2配線層110と第3配線層113を接続するプラグ114が設けられる。さらに、第3層間絶縁層112の下には、絶縁層115が設けられる。絶縁層115は、第2半導体基板200上に設けられた絶縁層201と接合している。
【0022】
このような複数の絶縁層を介して接合することにより、第1半導体基板100と第2半
導体基板200は一体化している。なお、本実施形態では、第1配線層108と第2配線層110と第3配線層113との3層の配線層が形成されているものとしているが、これに限らずに必要に応じて配線層の追加、または削除することが可能である。また、各配線層や各プラグは、アルミニウムなどの導電体によって形成することができる。
【0023】
また、本実施形態では、第2半導体基板200において素子が設けられていないが、素子が設けてられていてもよい。この場合、第1半導体基板100の素子と第2半導体基板200の素子との間で電気信号の通信を行うための相互接続配線を設ける。相互接続配線の一部をなす構造体として、ハイブリットボンディング構造体、TSV構造体などがある。ハイブリットボンディング構造体の場合は、絶縁層115および絶縁層201のそれぞれに電極パッドが設けられており、絶縁層115と絶縁層201の接合面に加えて電極パッド同士も接合面をなす。また、第2半導体基板200において素子を形成しない場合には、第2半導体基板200の代わりに、単なる支持基板であるガラス基板などを用いてもよい。
【0024】
(第1半導体基板よりも上部の構成)
また、界面001’’上(第1面上)には、受光画素領域010において第1積層構造002が設けられ、遮光画素領域010’において第2積層構造002’が設けられる。また、第1積層構造002および第2積層構造002’は、絶縁層307をさらに含み、絶縁層307の上には光学構造308が設けられている。
【0025】
第1積層構造002は、金属酸化物層301、誘電体層302、絶縁層303、絶縁層305を含む。第2積層構造002’は、金属酸化物層301、誘電体層302、絶縁層303、絶縁層304’、絶縁層305、遮光層306’を含む。ここで、第1積層構造002と第2積層構造002’は共通化された、金属酸化物層301と絶縁層303と絶縁層305を含む。
【0026】
金属酸化物層301は、光入射面である界面001’’上に設けられている。金属酸化物層301は、負の固定電荷を有する固定電荷層として機能する。このため、金属酸化物層301は、界面001’’における暗電流を低減する。金属酸化物層301は、受光画素領域010および遮光画素領域010’の両方に跨る。金属酸化物層301は、例えば、酸化ハフニウム層、酸化アルミニウム層などである。また、金属酸化物層301が酸化アルミニウム層である場合には、金属酸化物層301における水素濃度は1021atoms/cmに近い値である。なお、金属酸化物層301は、絶縁層としても機能し得る。
【0027】
誘電体層302は、金属酸化物層301の上に設けられる。誘電体層302は、反射防止層として機能する。誘電体層302には、金属酸化物層301より屈折率が高い層が選択される。この層は、例えば、酸化化合物である酸化タンタル層などである。誘電体層302が酸化タンタル層である場合は、誘電体層302自体も負の固定電荷を持つ固定電荷層としても機能する。また、誘電体層302は、絶縁層でもある。誘電体層302は、受光画素領域010および遮光画素領域010’の両方に跨る。また、誘電体層302の厚さは、金属酸化物層301よりも厚い。なお、誘電体層302は必須の構成ではなく、形成されていなくともよい。
【0028】
絶縁層303は、誘電体層302の上に設けられる。絶縁層303は、誘電体層でもある。絶縁層303は、受光画素領域010および遮光画素領域010’の両方に跨る。絶縁層303は、例えば、酸化化合物であり、シリコン化合物である、酸化シリコン層である。
【0029】
絶縁層304’は、水素を含有する絶縁層であり、遮光画素領域010’において、絶縁層303の上に設けられる。絶縁層304’の水素によって暗電流源は不活化する。絶縁層304’は、酸化化合物、窒化化合物、シリコン化合物などであり得る。具体的には、絶縁層304’は、水素を含有する酸化シリコン層、窒素化シリコン層、酸窒化シリコン層、酸化アルミ二ウム層のいずれかであり得る。また、金属酸化物層301、誘電体層302および絶縁層303はいずれも水素を含有し得るが、絶縁層304’における水素濃度は、これらの3つの層における水素濃度よりは高く(大きく)、好ましくは1021atoms/cm以上である。なお、金属酸化物層301が酸化アルミニウム層である場合には、金属酸化物層301よりも水素濃度を高くするために、絶縁層304’の水素濃度は1022atoms/cm以上であるとよい。
【0030】
絶縁層305は、受光画素領域010の絶縁層303および絶縁層304’の上に設けられている。絶縁層305は、受光画素領域010と遮光画素領域010’の両方に跨る。
【0031】
遮光層306’は、遮光画素領域010’において絶縁層305の上に設けられており、入射する光が画素に到達することを遮る。遮光層306’は、例えば、タングステン層、窒化チタン層、アルミ系合金層などである。
【0032】
なお、遮光画素領域010’における界面001’’に迷光などの光が入射することを抑制するためには、遮光層306’の界面001’’からの距離(間隔;最短距離)は短い方がよい。具体的には、遮光層306’の界面001’’からの距離をD1とし、界面003’から第1配線層108までの距離をD2とすると、D1はD2よりも短いことが目安になる。ここで、第1配線層108は、第1半導体基板100と第2半導体基板200との間に配置された複数の配線層のうち界面003’に最も近接する配線層である。
【0033】
絶縁層307は、受光画素領域010の絶縁層305および遮光層306’の上に設けられる。絶縁層307は、受光画素領域010および遮光画素領域010’の両方に跨る。
【0034】
光学構造308は、絶縁層307の上に設けられており、入射光を各画素に導く。光学構造308は、層内レンズ、カラーフィルタ、マイクロレンズなどを含むが、詳細は省略する。
【0035】
ここで、第1積層構造002と第2積層構造002’とを比較する。第2積層構造002’は、第1積層構造002が含まない絶縁層304’を1層含んでいる。また、金属酸化物層301および誘電体層302と、絶縁層304’との間に絶縁層303が設けられている。ここで、誘電体層302は、材質によっては金属酸化物層としても機能し得る。なお、金属酸化物層301と絶縁層304’との間に配置される絶縁層は、1層である必要はなく、複数層であってもよい。
【0036】
このように、本実施形態では、金属酸化物層301と絶縁層304’との間に絶縁層303が存在する。このことによって、金属酸化物層301および絶縁層304’の固定電荷が異なる極性(逆極性)であったとしても、絶縁層303によって絶縁層304’と界面001”との距離が離れるため、絶縁層304’によるチャージ蓄積効果が緩和される。従って、水素含有絶縁層の固定電荷の極性によらずに、遮光画素領域に水素含有絶縁層を配置でき、OB段差の低減が実現できるため、画素性能の劣化を抑制することができる。なお、絶縁層303自体も、多少なりとも固定電荷を有する。絶縁層303が酸化シリコン層の場合には、絶縁層303は正の固定電荷を有することが多い。その場合、絶縁層303の固定電荷密度は可能な限り低い方がよく、望ましくは金属酸化物層301の固定
電荷密度と比較して1桁以上低い方がよい。
【0037】
[機器EQPについて]
以下、図1が示す、半導体装置APRを備える機器EQPについて詳細に説明する。ここで、半導体装置APRは、上述のように、第1半導体基板100を有する半導体デバイスICのほかに、半導体デバイスICを収容するパッケージPKGを含むことができる。パッケージPKGは、半導体デバイスICが固定された基体と、半導体デバイスICに対向するガラスなどの蓋体と、基体に設けられた端子と半導体デバイスICに設けられた端子とを接続するボンディングワイヤやバンプなどの接続部材と、を含むことができる。
【0038】
機器EQPは、光学系OPT、制御装置CTRL、処理装置PRCS、表示装置DSPL、記憶装置MMRYの少なくともいずれかを備えることができる。光学系OPTは、半導体装置APRに結像するものであり、例えばレンズやシャッター、ミラーである。制御装置CTRLは、半導体装置APRを制御するものであり、例えばASICなどの光電変換装置である。
【0039】
処理装置PRCSは、半導体装置APRから出力された信号を処理するものであり、AFE(アナログフロントエンド)あるいはDFE(デジタルフロントエンド)を構成するための、CPUやASICなどの光電変換装置である。表示装置DSPLは、半導体装置APRで得られた情報(画像)を表示する、EL表示装置や液晶表示装置である。記憶装置MMRYは、半導体装置APRで得られた情報(画像)を記憶する、磁気デバイスや半導体デバイスである。記憶装置MMRYは、SRAMやDRAMなどの揮発性メモリ、あるいは、フラッシュメモリやハードディスクドライブなどの不揮発性メモリである。
【0040】
機械装置MCHNは、モーターやエンジンなどの可動部あるいは推進部を有する。機器EQPでは、半導体装置APRから出力された信号を表示装置DSPLに表示したり、機器EQPが備える通信装置(不図示)によって外部に送信したりする。そのために、機器EQPは、半導体装置APRが有する記憶回路や演算回路とは別に、記憶装置MMRYや処理装置PRCSをさらに備えることが好ましい。機械装置MCHNは、半導体装置APRから出力され信号に基づいて制御されてもよい。
【0041】
また、機器EQPは、撮影機能を有する情報端末(例えばスマートフォンやウエアラブル端末)やカメラ(例えばレンズ交換式カメラ、コンパクトカメラ、ビデオカメラ、監視カメラ)などの電子機器に適する。カメラにおける機械装置MCHNはズーミングや合焦、シャッター動作のために光学系OPTの部品を駆動することができる。
【0042】
また、機器EQPは、車両や船舶、飛行体などの輸送機器であり得る。輸送機器における機械装置MCHNは移動装置として用いられ得る。輸送機器としての機器EQPは、半導体装置APRを輸送するものや、撮影機能により運転(操縦)の補助および/または自動化を行うものに好適である。運転(操縦)の補助および/または自動化のための処理装置PRCSは、半導体装置APRで得られた情報に基づいて移動装置としての機械装置MCHNを操作するための処理を行うことができる。あるいは、機器EQPは内視鏡などの医療機器や、測距センサなどの計測機器、電子顕微鏡のような分析機器であってもよい。
【0043】
従って、本実施形態に係る半導体装置(固体撮像素子)を用いれば、半導体装置の高性能化が可能である。そのため、例えば、半導体装置を輸送機器に搭載して、輸送機器の外部の撮影や外部環境の測定を行う際に優れた画質や測定精度を得ることができる。よって、輸送機器の製造、販売を行う上で、本実施形態に係る半導体装置を輸送機器に搭載することを決定することは、輸送機器自体の性能を高める上で有利である。
【0044】
<実施形態2>
以下では、実施形態1に係る半導体装置APRの一例である固体撮像素子における第1積層構造002と第2積層構造002’の構成のみを変更した実施形態2に係る固体撮像素子(光電変換装置)を説明する。
【0045】
図3は、実施形態2に係る固体撮像素子の模式的断面図である。なお、本実施形態に係る固体撮像素子における第1半導体基板100の内部および第1半導体基板100よりも下部の構成については、実施形態1に係る固体撮像素子と同様であるため説明は省略する。また、実施形態1と同様の構成には、本実施形態においても同じ符号を付している。
【0046】
本実施形態では、界面001’’上には、受光画素領域010において第1積層構造006が設けられ、遮光画素領域010’において第2積層構造006’が設けられる。また、第1積層構造006および第2積層構造006’の絶縁層307の上部には、光学構造308が設けられている。
【0047】
第1積層構造006は、金属酸化物層301、誘電体層302、絶縁層303を含む。第2積層構造006’は、金属酸化物層301、誘電体層302、絶縁層303、絶縁層304’、遮光層306’を含む。つまり、本実施形態では、実施形態1とは異なり、絶縁層305がいずれの積層構造にも設けられていない。また、第1積層構造006および第2積層構造006’が含む金属酸化物層301と絶縁層303は共通である。
【0048】
絶縁層303は、誘電体層302の上に設けられる。本実施形態では、絶縁層303は、受光画素領域010および遮光画素領域010’の両方に跨る。
【0049】
絶縁層304’は、遮光画素領域010’において、絶縁層303の上に設けられる。なお、受光画素領域010には、絶縁層304’は設けられない。遮光層306’は、絶縁層304’の上に、絶縁層304’と接するように設けられている。
【0050】
なお、遮光層306’の界面001’’からの距離をD3とし、界面003’から第1配線層108までの距離をD4とすると、遮光画素領域010’における界面001’’への光の入射を抑制するために、D3はD4よりも短いとよい。
【0051】
ここで、第1積層構造006と第2積層構造006’とを比較する。第2積層構造006’は、第1積層構造006が含まない絶縁層304’を1層含んでいる。また、絶縁層304’と遮光層306’が接する構造となっている。また、金属酸化物層301と絶縁層304’との間に絶縁層303が設けられている。このような構成にすることで、絶縁層304’と界面001“との距離を離すことができる。これにより、絶縁層304’によるチャージ蓄積効果が緩和されるので、金属酸化物層301および絶縁層304’の固定電荷が異なる極性(逆極性)であったとしても、画素性能の劣化を抑制できる。
【0052】
また、いっそうの電界緩和効果を持たせるためには、絶縁層303の厚さを厚くすることが望ましいが、絶縁層303を厚くする場合には光入射面である界面001’’から遮光層306’までの距離が増えてしまい、迷光の問題が生じえる。本実施形態では、絶縁層304’と遮光層306’が接する構造であるために、界面001’’から遮光層306’までの距離の増加を抑制しつつ、絶縁層303の厚さを厚くすることができる。このように、迷光を抑えつつ、水素含有絶縁層の固定電荷の極性によらずに遮光画素領域に水素含有絶縁層を配置でき、OB段差の低減が実現できるので、画素性能の劣化をさらに抑制することができる。
【0053】
ここで、本実施形態に係る第1半導体基板100よりも上部の構成について、さらに具
体的な例を説明する。上述に説明したように、第1半導体基板100の界面001’’上に配置された第1積層構造006では、界面001’’から順に金属酸化物層301、誘電体層302、絶縁層303が積層されており、その上部にさらに絶縁層307が形成されている。また、第2積層構造006’では、界面001’’から順に金属酸化物層301、誘電体層302、絶縁層303、絶縁層304’、遮光層306が積層されている。第2積層構造006’の遮光層306の上部にさらに絶縁層307が形成されている。
【0054】
つまり、第1積層構造006において、絶縁層303は誘電体層302よりも界面001’’から離れた位置の層にあり、誘電体層302は金属酸化物層301よりも界面001’’から離れた位置の層にある。また、第2積層構造006’において、遮光層306は絶縁層304’よりも界面001’’から離れた位置の層にあり、絶縁層304’は絶縁層303よりも界面001’’から離れた位置の層にある。第2積層構造006’において、絶縁層303は誘電体層302よりも界面001’’から離れた位置の層にあり、誘電体層302は金属酸化物層301よりも界面001’’から離れた位置の層にある。
【0055】
また、他の言い方をすれば、第1積層構造006において、絶縁層303と、第1半導体基板100と絶縁層303との間に配置された金属酸化物層301とが、少なくとも積層されている。第2積層構造006’において、遮光層306と、第1半導体基板100と遮光層306との間に配置された金属酸化物層301と、金属酸化物層301と遮光層306との間に配置された絶縁層303と、とが少なくとも積層されている。また、第2積層構造006’において、絶縁層303と遮光層306との間に配置された絶縁層304’とが少なくとも積層されている。なお、第1積層構造006における絶縁層303と、第2積層構造006’における絶縁層303とは、共通(一体)にされている必要はなく、異なる絶縁層であってもよい。
【0056】
なお、層の厚さについては、遮光層306>絶縁層303>絶縁層304’≒誘電体層302>金属酸化物層301の関係が成立することが望ましい。
【0057】
金属酸化物層301は、厚さ5~20nm(5nm以上かつ20nm以下)、好ましくは10nmのAlによって形成(構成)される。誘電体層302は、厚さ25~100nm(25nm以上かつ100nm以下)、好ましくは50nmのTaによって形成(構成)される。絶縁層303は、厚さ70~280nm(70nm以上かつ280nm以下)、好ましくは140nmのP-SiO(PECVDで形成された酸化シリコン)によって形成(構成)される。なお、絶縁層303は、第1積層構造006では絶縁層304’の形成の際に行われるエッチングによって削られるため、第2積層構造006の絶縁層303よりも第1積層構造006’の絶縁層303の方の厚さが薄い。つまり、第2積層構造006’における絶縁層303は好ましくは厚さ140nmであり、第1積層構造002における絶縁層303は好ましくは厚さ140nm未満である。絶縁層304’は、水素を含有する、厚さ25~100nm(25nm以上100nm以下)、好ましくは50nmのP-SiN(PECVD法で形成された窒化シリコン)によって形成(構成)される。遮光層306は、厚さ100~400nm(100nm以上かつ400nm以下)、好ましくは200nmのAlCuによって形成(構成)される。ここで、遮光層306にはW(タングステン)を用いてもよく、また遮光層306の上下にTi/TiN構造があってもよい。また、絶縁層307は、P-SiOによって形成(構成)される。
【0058】
従って、半導体装置ARPを製造する場合には、製造方法として、Alによって金属酸化物層301を形成するステップ、Taによって誘電体層302を形成するステップ、P-SiOによって絶縁層303を形成するステップが含まれ得る。さらに、製造方法として、P-SiNによって絶縁層304’を形成するステップ、AlCuによ
って遮光層306を形成するステップ、P-SiOによって絶縁層307を形成するステップが含まれ得る。
【0059】
なお、絶縁層303は、製造過程において、PECVD(Plasma-Enhanced Chemical Vapor Deposition)によって形成されている。PECVDによって形成されることによれば、絶縁層303における固定電荷密度を1010cm-2に近い、十分に低い数値にすることが可能である。このため、画素性能の劣化の抑制に適する半導体装置APRを形成(製造)可能である。
【0060】
なお、絶縁層304’は、水素を含有する、P-SiONによって形成されていてもよい。また、絶縁層303は、常圧CVD(Chemical Vapor Deposition)または準常圧CVDによって形成されてもよい。このように形成した場合には、PECVDによって絶縁層303を形成した場合と同様に、固定電荷密度を十分に低い数値にすることが可能である。
【0061】
また、図4に示すように、受光画素領域010における画素間(素子分離101の上部)に、第2積層構造006’と同様の積層構造006’’がグリッド状に配置されていてもよい。このとき、積層構造006’’の幅は、素子分離101と同程度の幅で構成されているとよい。なお、実施形態1についても同様に、この構成を適用することが可能である。
【0062】
以上、説明した実施形態および変形例は、技術思想を逸脱しない範囲において適宜変更が可能である。なお、実施形態および変形例の開示内容は、本明細書に明記したことのみならず、本明細書および本明細書に添付した図面から把握可能な全ての事項を含む。
【符号の説明】
【0063】
010:受光画素領域、010’:遮光画素領域、
001’’:界面、003’:界面、102:フォトダイオード、
002:第1積層構造、002’:第2積層構造、301:金属酸化物層、
303,305:絶縁層、304’:絶縁層、306’:遮光層
図1
図2
図3
図4