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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/10 20060101AFI20240109BHJP
   B23Q 17/00 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
B23Q11/10 Z
B23Q17/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019218586
(22)【出願日】2019-12-03
(65)【公開番号】P2021088018
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】五十部 学
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-185350(JP,A)
【文献】特開2013-217710(JP,A)
【文献】再公表特許第2019/054018(JP,A1)
【文献】特開平07-124841(JP,A)
【文献】特開2020-121359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/00,11/08-11/10,17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面から下方に延びる脚部によって床面に設置されるとともに、使用したクーラントを流動させるスロープと、該スロープの下方において上下方向に延びて前記底面に接続する外表面とを備える工作機械本体と、
上方に開口した箱状に構成され、前記スロープの下方において前記開口の上縁を前記外表面に隣接させて前記工作機械本体に着脱可能に装着され前記スロープを流動してきた前記クーラントを回収するクーラントタンクと、
前記工作機械本体における前記上縁が隣接する前記外表面と該外表面からその下方に配置される前記脚部までの前記底面とのいずれかに配置され、前記スロープの下方に前記クーラントタンクが装着された状態において前記外表面または前記底面を流れる前記クーラントを検出するクーラントセンサと、
該クーラントセンサにより前記クーラントが検出されたことを報知する報知部とを備える工作機械。
【請求項2】
前記クーラントタンク内に、前記クーラントの液位を検出する液位センサを備え、
前記クーラントセンサにより前記クーラントが検出され、かつ、前記液位センサにより検出された前記液位が所定の閾値以下である場合に、前記報知部が前記クーラントタンクの装着不良の可能性があることを報知する請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記クーラントタンク内に、前記スロープを流動してきた前記クーラントを通過させて、該クーラント内に混入している塵埃を除去するフィルタを備え、
前記液位の前記閾値が、前記フィルタの下方に設定されている請求項2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記工作機械本体を制御する制御部を備え、
該制御部が、前記クーラントセンサにより前記クーラントが検出された場合に、前記工作機械本体を停止する請求項1から請求項3のいずれかに記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、工作機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工作機械本体に着脱可能に設置されるクーラントタンクを備え、工作機械本体において使用されたクーラントをクーラントタンク内に回収し、ポンプによって循環して再利用する工作機械が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭64-4547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
着脱式のクーラントタンクの場合には、クーラントタンクの装着が不完全であると、クーラントタンク内のクーラント液面あるいはクーラントタンクを被覆するフィルタ等におけるクーラントの跳ね返りにより、微量の液漏れが発生する可能性がある。
多量の液漏れは加工開始直後に容易に判明するが、微量の液漏れは見逃され、例えば、長時間にわたる連続運転後に液漏れが拡大してから判明することがある。したがって、微量の液漏れも防止することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、底面から下方に延びる脚部によって床面に設置されるとともに、使用したクーラントを流動させるスロープと、該スロープの下方において上下方向に延びて前記底面に接続する外表面とを備える工作機械本体と、上方に開口した箱状に構成され、前記スロープの下方において前記開口の上縁を前記外表面に隣接させて前記工作機械本体に着脱可能に装着され前記スロープを流動してきた前記クーラントを回収するクーラントタンクと、前記工作機械本体における前記上縁が隣接する前記外表面と該外表面からその下方に配置される前記脚部までの前記底面とのいずれかに配置され、前記スロープの下方に前記クーラントタンクが装着された状態において前記外表面または前記底面を流れる前記クーラントを検出するクーラントセンサと、該クーラントセンサにより前記クーラントが検出されたことを報知する報知部とを備える工作機械である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本開示の一実施形態に係る工作機械を示す全体構成図である。
図2図1の工作機械のクーラントタンクを工作機械本体に接続する状態を説明する図である。
図3図1の工作機械のクーラントタンクと工作機械本体との接続途中の状態を示す拡大縦断面図である。
図4図3の状態からクーラントタンクを上昇させた適正な接続状態を示す拡大縦断面図である。
図5図1の工作機械のクーラントタンクの工作機械本体への接続不良の一例を示す拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示の一実施形態に係る工作機械1について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る工作機械1は、図1に示されるように、工作機械本体2と、制御部3と、クーラントタンク4と、クーラントセンサ5とを備えている。
【0008】
工作機械本体2は、床面Fに設置される筐体6と、筐体6の内部に配置され、ワークを加工する際に、工具およびワークに対してクーラントLを吐出するノズル7と、筐体6内を流れ落ちたクーラントLを筐体6外部に流出させるスロープ8とを備えている。筐体6は、例えば、高さ調整可能な4箇所の脚部9によって、床面Fに設置される。
【0009】
スロープ8の下方に配置される筐体6の下面には、図3に示されるように、筐体6の幅方向に延びる1以上の溝10が備えられている。この溝10の内の1つは、図4に示されるように、後述するクーラントタンク4の一端の上縁を挿入させることにより、クーラントタンク4と筐体6との間の隙間を上下方向に蛇行させたラビリンス構造を構成し、クーラントLが上縁を超えて外部に漏れだすことを抑制することができる。
【0010】
スロープ8は、筐体6の下部に、一方向に傾斜して筐体6の外部まで延びている。スロープ8は、ノズル7から吐出され、工具およびワークを冷却および洗浄したクーラントLを傾斜に沿って流動させることにより、筐体6の外部に導いている。スロープ8の下端は、床面Fに対して間隔をあけた位置に配置されている。
【0011】
クーラントタンク4は、上方に開口した箱状に構成され、底面4aに、複数のキャスタ11と、高さ調整可能な複数の脚部12とを備えている。図3に示されるように、キャスタ11によって床面Fを移動させるときのクーラントタンク4の一端(一側面)の高さ寸法は、スロープ8の下端と床面Fとの間の間隔よりも小さく設定されている。クーラントタンク4の他の3つの側面には、一側面よりも高い飛散防止壁4bが設けられている。
【0012】
これにより、クーラントタンク4は、図2に矢印Aで示されるように、キャスタ11によって床面Fを移動させられて、図3に示されるように、一端をスロープ8の下方の隙間に挿入させられる。この状態で、クーラントタンク4はスロープ8の下端全体を下側から覆う位置に配置されるので、図4に示されるように、脚部12を調整してキャスタ11を床面Fから浮かせる位置まで上昇させられることにより、その位置に設置される。これにより、上昇した一端の上縁4cが、筐体6の下面の溝10内に挿入される。
【0013】
クーラントタンク4には、制御部3およびノズル7に接続され、制御部3によって駆動されることにより、クーラントタンク4に貯留されたクーラントLをノズル7から吐出させるポンプ13が備えられている。
また、クーラントタンク4には、工作機械本体2に装着された状態で、スロープ8の下端全体を覆う位置に配置されるフィルタ14が備えられている。フィルタ14は例えば、メッシュであり、スロープ8を流動してきたクーラントLに含まれている切り屑等の塵埃を捕捉して除去することができる。
【0014】
また、クーラントタンク4には、クーラントタンク4内に貯留されるクーラントLの液位を検出する液位センサ15が備えられている。液位センサ15は、フィルタ14よりも下方の液位を検出可能に配置され、クーラントLの液位がフィルタ14に到達する前に、これを検出することができる。
【0015】
クーラントセンサ5は、接触する液体を検出する液体センサである。クーラントセンサ5は、クーラントタンク4の一端の上縁4cが配置される筐体6の下面の溝10と、この溝10に最も近接するいずれかの脚部9との間であって、クーラントタンク4の外側に位置する筐体6の表面に配置されている。
【0016】
クーラントセンサ5を配置する表面は、例えば、図3において溝10に隣接して鉛直に延びる壁面6bまたは筐体6の底面6aである。特に、図3に示されるように、溝10と脚部9とを結ぶ経路上にあって、脚部9に隣接する筐体6の底面6aに配置されていることが好ましい。
【0017】
制御部3は、工作機械本体2を制御するとともに、モニタ(報知部)16を備えている。制御部3には、ポンプ13、クーラントセンサ5および液位センサ15が接続され、クーラントセンサ5によりクーラントLが検出されたときにはその旨をモニタ16に表示する。
また、制御部3は、クーラントセンサ5によりクーラントLが検出されかつ液位センサ15により閾値以下のクーラントLの液位が検出されているときには、クーラントタンク4の接続不良の可能性がある旨をモニタ16に表示する。
【0018】
また、制御部3は、クーラントセンサ5によりクーラントLが検出されかつ液位センサ15により閾値より大きなクーラントLの液位が検出されているときには、クーラントタンク4内のクーラントLの量が多すぎる旨をモニタ16に表示する。液位の閾値は、フィルタ14よりも下方の位置に設定されている。
【0019】
このように構成された本実施形態に係る工作機械1の作用について以下に説明する。
本実施形態に係る工作機械1によりワークの加工を行うには、クーラントタンク4をキャスタ11によって床面Fに沿って移動させ、クーラントタンク4の一端を工作機械本体2のスロープ8の下端と床面Fとの間に挿入する。この状態で、脚部12を調整してクーラントタンク4を上昇させ、キャスタ11を浮かせるとともに、クーラントタンク4の一端の上縁4cを工作機械本体2の筐体6の溝10内に挿入する。
【0020】
次に、クーラントタンク4に設けられたポンプ13を制御部3およびノズル7に接続し、液位センサ15を制御部3に接続する。そして、所定量のクーラントLをクーラントタンク4内に貯留し、制御部3の作動によりポンプ13を駆動する。これにより、ノズル7からクーラントLを吐出させることができる。
【0021】
ノズル7から吐出され、ワークを冷却および洗浄した後のクーラントLは、筐体6内を流れ落ちて、スロープ8により受け止められ、スロープ8の傾斜によって筐体6外部に放出される。スロープ8を流動してきたクーラントLはフィルタ14を通過させられることにより塵埃を除去された状態で、クーラントタンク4内に戻される。
【0022】
ここで、クーラントタンク4の工作機械本体2への接続が不良である場合について説明する。上述したように、クーラントタンク4は工作機械1の外部からスロープ8の下方に挿入されて、脚部12の調整により上昇させられることにより、一端の上縁4cが溝10内に挿入された適正な接続状態となる。しかしながら、スロープ8の下方への挿入量が十分ではない場合、一端の上縁4cが溝10内に挿入されていない場合、あるいは、クーラントLの量が多すぎる場合等には、クーラントタンク4内において飛散したミスト状のクーラントLが、クーラントタンク4の上縁4cと筐体6との隙間からクーラントタンク4外に放出されることがある。
【0023】
このようにして放出されたクーラントLは、図5に矢印Bで示されるように、筐体6の表面に付着して、筐体6の底面6aに沿って広がり、筐体6の底面6aから下方に延びている脚部9を伝って床面Fに流下する。このようにして、床面Fに流下するクーラントLの量は極微量である。
【0024】
この場合において、本実施形態に係る工作機械1によれば、筐体6の溝10と脚部9とを結ぶ経路上にクーラントセンサ5が配置されているので、筐体6の床面Fから脚部9を経由して流下するクーラントLが存在すれば、これを迅速に検出することができる。そして、クーラントセンサ5によりクーラントLが検出されたときにはその旨がモニタ16に表示されるので、クーラントLの漏れを迅速にオペレータに報知することができる。
【0025】
したがって、クーラントLの漏れが発生した場合には、それが極微量であったとしても、長時間にわたって見逃されることを防止することができ、連続運転後に液漏れが拡大する不都合の発生を防止することができるという利点がある。
さらに、本実施形態によれば、クーラントLの漏れが発生している場合に、液位センサ15により検出される液位が閾値以下であるときには、クーラントタンク4の接続不良の可能性があることがモニタ16に表示される。
【0026】
また、クーラントLの漏れが発生している場合に、液位センサ15により検出される液位が閾値よりも大きいときには、クーラントタンク4内のクーラントLの量が多すぎることがモニタ16に表示される。
したがって、オペレータはクーラントLの漏れの原因を迅速に特定することができ、早期にクーラントLの漏れをなくすための措置を施すことができる。
【0027】
なお、本実施形態においては、制御部3が、クーラントLの漏れの発生をモニタ16に表示することとしたが、他の報知方法、例えば、音声、ライト、振動等によって報知してもよい。また、モニタ16に表示することに代えて、あるいはこれに加えて、クーラントLの漏れが発生したときには、制御部3が工作機械本体2およびポンプ13を停止させることにしてもよい。
【0028】
また、本実施形態においては、クーラントセンサ5として、接触する液体を検出可能な液体センサを例示したが、これに代えて、溝10から脚部9までの経路上におけるクーラントLの有無を検出することができれば、他の任意のセンサを用いてもよい。クーラントセンサ5としては、例えば、クーラントLの漏れる経路を撮影するカメラを採用してもよい。あるいは、クーラントLの漏れる経路の温度分布を測定する温度センサを採用してもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 工作機械
2 工作機械本体
3 制御部
4 クーラントタンク
5 クーラントセンサ
6a 底面
8 スロープ
9 脚部
14 フィルタ
15 液位センサ
16 モニタ(報知部)
F 床面
L クーラント
図1
図2
図3
図4
図5