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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】工作機械のテレスコピックカバー
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/08 20060101AFI20240109BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
B23Q11/08 A
B23Q11/00 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019220436
(22)【出願日】2019-12-05
(65)【公開番号】P2021088040
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】角 剛
(72)【発明者】
【氏名】船越 晃
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-255953(JP,A)
【文献】特開2018-039071(JP,A)
【文献】特開2004-130437(JP,A)
【文献】特開2018-086715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/00,11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械の固定部に取り付けられる一対の第1カバー部材と、
前記固定部に対して所定の直線方向に往復移動可能な可動部に取り付けられ、前記可動部とともに移動可能な一対の第2カバー部材と、
前記第1カバー部材及び前記第2カバー部材の間にそれぞれ挟持される一対の第3カバー部材と、
前記一対の第3カバー部材を一定距離となるように互いに連結する第1の連結部材と、
前記一対の第3カバー部材と前記第1の連結部材とで構成される第3カバー部材連結体に、前記所定の直線方向に離隔して回転可能に軸支される第1の円盤及び第2の円盤と、
前記第1の円盤及び前記第2の円盤に架け渡される第1の索条と、を備え、
前記第1の索条において、前記第1の円盤の回転中心と前記第2の円盤の回転中心とを結ぶ線分を挟んだ両側にそれぞれ配置される部位のうちの一方が前記固定部に固定され、他方が前記可動部に固定され、
前記第1カバー部材及び前記第3カバー部材の間にそれぞれ挟持される一対の第4カバー部材と、
前記一対の第4カバー部材を一定距離となるように互いに連結する第2の連結部材と、
前記一対の第4カバー部材と前記第2の連結部材とで構成される第4カバー部材連結体に、前記所定の直線方向に離隔して回転可能に軸支される第3の円盤及び第4の円盤と、
前記第3の円盤及び前記第4の円盤に架け渡される第2の索条と、を更に備え、
前記第2の索条において、前記第3の円盤の回転中心と前記第4の円盤の回転中心とを結ぶ線分を挟んだ両側にそれぞれ配置される部位のうちの一方が前記固定部に固定され、他方が前記第3カバー部材連結体に固定される、工作機械のテレスコピックカバー。
【請求項2】
前記第1の索条及び前記第2の索条に接触して前記可動部の移動に伴って前記第1の索条及び前記第2の索条を清掃する清掃部材を有する、請求項1に記載の工作機械のテレスコピックカバー。
【請求項3】
工作機械の固定部に取り付けられる一対の第1カバー部材と、
前記固定部に対して所定の直線方向に往復移動可能な可動部に取り付けられ、前記可動部とともに移動可能な一対の第2カバー部材と、
前記第1カバー部材及び前記第2カバー部材の間にそれぞれ挟持される一対の第3カバー部材と、
前記一対の第3カバー部材を一定距離となるように互いに連結する第1の連結部材と、
前記一対の第3カバー部材と前記第1の連結部材とで構成される第3カバー部材連結体に、前記所定の直線方向に離隔して回転可能に軸支される第1の円盤及び第2の円盤と、
前記第1の円盤及び前記第2の円盤に架け渡される第1の索条と、を備え、
前記第1の索条において、前記第1の円盤の回転中心と前記第2の円盤の回転中心とを結ぶ線分を挟んだ両側にそれぞれ配置される部位のうちの一方が前記固定部に固定され、他方が前記可動部に固定され、
前記索条に接触して前記可動部の移動に伴って前記索条を清掃する清掃部材を有する、工作機械のテレスコピックカバー。
【請求項4】
前記清掃部材は、前記索条を挟むことによって前記索条を清掃する挟着部材によって構成される、請求項に記載の工作機械のテレスコピックカバー。
【請求項5】
前記清掃部材は、前記索条に接触して前記索条を清掃する刷毛を有するブラシによって構成される、請求項に記載の工作機械のテレスコピックカバー。
【請求項6】
前記索条は、張力調整部材を有する、請求項~5のいずれか1項に記載の工作機械のテレスコピックカバー。
【請求項7】
前記可動部を往復移動させる電動機と、
前記電動機の駆動を制御する制御装置と、を更に備え、
前記制御装置は、前記可動部の反転動作時の前記電動機の物理量を検出し、検出した物理量を正常な物理量と比較することによってテレスコピックカバーの異常検出を行う、請求項1~6のいずれか1項に記載の工作機械のテレスコピックカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械のテレスコピックカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械においては、送り軸等の機構部を切粉や切削液から保護するために、伸縮可能なテレスコピックカバーが使用されている。テレスコピックカバーは、機構部に固定されるカバーと機構部に固定されないカバーとで構成され、工作機械の機構部が高速・高加減速で動作するのに伴って、高速・高加減速で収縮/伸長動作する。その際、機構部に固定されないカバーが制限なく移動して他のカバーと衝突することによって、衝撃や騒音を発生させる。
【0003】
従来、テレスコピックカバーの移動時の衝撃や騒音の問題に対して、機構部に固定されないカバーにラック及びピニオンを有する減速装置を取り付け、機構部の移動に対して低速で移動させることによって、テレスコピックカバーが高速・高加減速で動作しても衝撃や騒音が発生しないようすることが知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-192332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の技術では、カバーにラック及びピニオンを有する減速装置を別途取り付ける必要があるため、部品点数が増加し、コスト増となる問題がある。しかも、テレスコピックカバーに減速装置を取り付けるためのスペースが必要であるため、テレスコピックカバーが大型化する問題もある。そのため、簡単な構造で省スペースな工作機械のテレスコピックカバーが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、工作機械の固定部に取り付けられる一対の第1カバー部材と、前記固定部に対して所定の直線方向に往復移動可能な可動部に取り付けられ、前記可動部とともに移動可能な一対の第2カバー部材と、前記第1カバー部材及び前記第2カバー部材の間にそれぞれ挟持される一対の第3カバー部材と、前記一対の第3カバー部材を一定距離となるように互いに連結する第1の連結部材と、前記一対の第3カバー部材と前記第1の連結部材とで構成される第3カバー部材連結体に、前記所定の直線方向に離隔して回転可能に軸支される第1の円盤及び第2の円盤と、前記第1の円盤及び前記第2の円盤に架け渡される第1の索条と、を備え、前記第1の索条において、前記第1の円盤の回転中心と前記第2の円盤の回転中心とを結ぶ線分を挟んだ両側にそれぞれ配置される部位のうちの一方が前記固定部に固定され、他方が前記可動部に固定される。
【発明の効果】
【0007】
一態様によれば、簡単な構造で省スペースな工作機械のテレスコピックカバーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る工作機械のテレスコピックカバーを示す説明図である。
図2図1中の(ii)-(ii)線に沿う断面図である。
図3図1に示す工作機械のテレスコピックカバーにおいて可動部がX1方向に移動した状態を示す説明図である。
図4】清掃部材を有する工作機械のテレスコピックカバーを示す説明図である。
図5】挟着部材を有する清掃部材を示す斜視図である。
図6】刷毛を有する清掃部材を示す斜視図である。
図7】索条に張力調整部材が設けられた工作機械のテレスコピックカバーを示す説明図である。
図8】工作機械におけるテレスコピックカバーを駆動させるための構成を示すブロック図である。
図9】可動部が反転動作した際の正常時の電動機の物理量を示すグラフである。
図10】可動部が反転動作した際の異常時の電動機の物理量を示すグラフである。
図11】可動部が反転動作した際の異常時の電動機の物理量を示すグラフである。
図12】制御装置によるテレスコピックカバーの異常検出動作を示すフローチャートである。
図13】他の一実施形態に係る工作機械のテレスコピックカバーを示す説明図である。
図14図13中の(xiv)-(xiv)線に沿う断面図である。
図15図13に示す工作機械のテレスコピックカバーにおいて可動部がX1方向に移動した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は、一実施形態に係る工作機械のテレスコピックカバーを示す説明図である。図2は、図1中の(ii)-(ii)線に沿う断面図である。図3は、図1に示す工作機械のテレスコピックカバーにおいて可動部がX1方向に移動した状態を示す説明図である。
図1及び図2に示すテレスコピックカバー1は、一対の第1カバー部材11A,11Bと、一対の第2カバー部材12A,12Bと、一対の第3カバー部材13A,13Bとを有し、工作機械の固定部2と可動部3との間に配置される。
【0010】
固定部2は、工作機械の例えばサドルである。可動部3は、工作機械の例えばテーブルである。可動部3は、図1に示すように、固定部2に対して、図示しない電動機の回転駆動によって、相反するX1方向及びX2方向に沿う直線方向に往復移動可能である。
【0011】
第1カバー部材11A,11Bは、テレスコピックカバー1の最も内側のカバーであり、カバー内部を固定部2側に向けて、固定部2の上面2aにそれぞれ固定されている。第1カバー部材11A,11Bは、固定部2の上面2aにおいて、図1における左右両端部からそれぞれ外側に向けて張り出している。
【0012】
第2カバー部材12A,12Bは、テレスコピックカバー1の最も外側のカバーであり、工作機械の可動部3の下面3aに固定されている。第2カバー部材12A,12Bは、可動部3の下面3aにおいて、図1における左右両端部からそれぞれ外側に向けて張り出している。第2カバー部材12A,12Bは、固定部2には固定されていない。
【0013】
第3カバー部材13A,13Bは、第1カバー部材11A,11Bと第2カバー部材12A,12Bとの間にそれぞれ挟持され、第1カバー部材11A,11Bをそれぞれ外側から抱え込んでいる。第2カバー部材12A,12Bは、第3カバー部材13A,13B及び第1カバー部材11A,11Bの両方をそれぞれ外側から抱え込んでいる。第3カバー部材13A,13Bは、固定部2及び可動部3には固定されていない。
【0014】
これによって、第1カバー部材11A,11B、第2カバー部材12A,12B及び第3カバー部材13A,13Bは、入れ子状に重ね合わされる。図1に示すように、テレスコピックカバー1において、可動部3が中立状態で停止した際、第1カバー部材11A,11Bは、可動部3の移動方向の最外側に配置される。第2カバー部材12A,12Bは、可動部3の移動方向の最内側に配置される。第3カバー部材13A,13Bは、可動部3の移動方向における第1カバー部材11A,11Bと第2カバー部材12A,12Bの間に配置される。
【0015】
一対の第3カバー部材13A,13Bのそれぞれ一対の側板131A,131Aと131B,131Bとに亘って、可動部3の移動方向に沿って延びる一対の連結部材132,132が取り付けられている。連結部材132,132は、第3カバー部材13A,13Bを一定距離となるように一体に連結することによって、第3カバー部材連結体130を構成する。連結部材132,132は、本開示における第1の連結部材に対応する。
【0016】
第3カバー部材連結体130における第3カバー部材13A,13Bの側板131A,131Bの外面側に、それぞれ第1の滑車133Aと第2の滑車133Bが回転可能に軸支されて取り付けられている。第1の滑車133A及び第2の滑車133Bは、可動部3の移動方向に沿う直線方向に離隔して設けられている。第1の滑車133A及び第2の滑車133Bは、図2に示すように、第3カバー部材13A,13Bの一対の側板131A,131A、131B,131Bのうちの一方の側板131A,131Bに設けられるが、両方の側板131A,131A、131B,131Bにそれぞれ設けられてもよい。また、第1の滑車133A及び第2の滑車133Bは、側板131A,131Bの内面側に取り付けられてもよい。
【0017】
第1の滑車133A及び第2の滑車133Bは、本開示における第1の円盤及び第2の円盤にそれぞれ対応する。円盤(索輪)は、後述する索条が架け渡され、索条の移動に従って回転する部材である。第1の円盤及び第2の円盤は、第1の滑車133A及び第2の滑車133Bの他に、スプロケット、歯車等を使用することができる。
【0018】
第1の滑車133A及び第2の滑車133Bには、索条134が架け渡されている。索条134は、図1に示すように、第1の滑車133Aの回転中心と第2の滑車133Bの回転中心とを結ぶ線分C1を挟んで両側に配置される部位のうちの下側部位134aにおいて、固定部2の上面2aの固定部側索条取付部21に取り付けられ、上側部位134bにおいて、可動部3の下面3aの可動部側索条取付部31に取り付けられている。固定部側索条取付部21は、固定部2の可動部3の移動方向に沿う方向の中央部に配置され、可動部側索条取付部31は、可動部3の移動方向の中央部に配置されている。これによって、第3カバー部材連結体130は可動部3に連結され、可動部3のX1方向及びX2方向の移動に同期して同じ方向に移動可能である。
【0019】
この索条134は、本開示における第1の索条に対応する。索条は、円盤に架け渡される索条物であり、円盤の外周に沿って湾曲可能な柔軟性、屈曲性を有する。索条134は、使用される第1の円盤及び第2の円盤の種類に応じて、ワイヤ、ロープ、紐、鋼線、チェーン、平ベルト、Vベルト、歯付きベルト等を使用することができる。
【0020】
索条134は、無端状、有端状のどちらでもよい。索条134が無端状の索条によって構成される場合は、固定部側索条取付部21及び可動部側索条取付部31は、索条134の下側部位134aの一部分及び上側部位134bの一部分をそれぞれ挟着することによって索条134を固定することができる。索条134が有端状の2本の索条によって構成される場合は、第1の滑車133A及び第2の滑車133Bにそれぞれ個別に架けられた索条における線分C1を挟んだ下側部位134a,134aの端部を、それぞれ固定部側索条取付部21に固定し、上側部位134b,134bの端部を、それぞれ可動部側索条取付部31に固定することによって索条134を固定することができる。また、索条134は、有端状の1本の索条を、第1の滑車133A及び第2の滑車133Bに架け渡すとともに、その両端部を固定部側索条取付部21又は可動部側索条取付部31に固定し、線分C1を挟んだ下側部位134aの一部分又は上側部位134bの一部分を、可動部側索条取付部31又は固定部側索条取付部21で挟着することによって固定してもよい。
【0021】
このように構成されるテレスコピックカバー1において、可動部3及び第2カバー部材12A,12Bが一体となってX1方向及びX2方向に移動すると、可動部側索条取付部31が索条134の上側部位134bをX1方向及びX2方向に移動させる。これによって、第3カバー部材連結体130は、可動部3の移動に同期して同じ方向に移動する。しかし、第3カバー部材連結体130は、第1の滑車133A及び第2の滑車133Bに架け渡された索条134を介して可動部3と連結されているため、図3に示すように、例えば、可動部3がX1方向に距離L1だけ移動して停止すると、第3カバー部材連結体130は、可動部3が移動した距離L1の半分の距離L2だけX1方向に移動して停止する。そのため、第3カバー部材13A,13Bが、第1カバー部材11A,11B及び第2カバー部材12A,12B等に衝突することによって衝撃や騒音を発生させることはない。第3カバー部材連結体130には、第1の滑車133A、第2の滑車133B及び索条134を設けるだけであるため、部品点数及びスペースも少なくて済む。よって、簡単な構造で省スペースな3重構造を有する工作機械のテレスコピックカバー1を提供することができる。
【0022】
図4は、清掃部材を有する工作機械のテレスコピックカバーを示す説明図である。図1図3に示すテレスコピックカバー1と同一符号の部位は同一構成の部位であるため、それらの詳細な説明は上記説明を援用し、以下の説明を省略する。
清掃部材4,4は、第3カバー部材連結体130を構成する連結部材132に、第1の滑車133A及び第2の滑車133Bにそれぞれ近接して取り付けられている。清掃部材4,4は、それぞれ索条134の下側部位134a及び上側部位134bに接触し、可動部3の移動に伴って、索条134における第1の滑車133A及び第2の滑車133Bに架け渡される部位を清掃する。これによって、万一、工作機械の加工に伴って発生する切粉等の異物が索条134に付着しても、その異物の付着に起因する索条134や第1の滑車133A及び第2の滑車133Bの摩耗の発生や索条134の脱落の発生を防止することができる。
【0023】
清掃部材4,4の具体的な構成について、図5及び図6を用いて説明する。図5は、挟着部材41を有する清掃部材4を示す斜視図である。図6は、刷毛42aを有する清掃部材4を示す斜視図である。
図5に示す清掃部材4は、索条134の下側部位134a及び上側部位134bを挟着する一対の挟着部材41,41によって構成される。挟着部材41,41は、互いの接合面に、索条134の下側部位134a及び上側部位134bをそれぞれ収容する凹溝41a,41aが形成されている。挟着部材41,41は、互いの凹溝41a,41aを突き合わせることによって、索条134を挿通させる挿通空間41b,41bを構成する。可動部3の移動に伴って索条134が挿通空間41b,41b内を通過すると、切粉等の異物が除去される。また、挟着部材41,41は、索条134の下側部位134a及び上側部位134bを一定距離に維持することができる。そのため、索条134は、上下方向に広がったり狭まったりすることなく、可動部3の移動に伴って円滑に案内される。
【0024】
挟着部材41,41の具体的な材質は、索条134の移動を阻害せずに清掃可能なものであれば制限なく使用できる。例えば、挟着部材41,41は、樹脂製又はゴム製のスポンジ、フェルト、布等によって構成することができる。一対の挟着部材41,41は、図5に示すように、索条134の下側部位134a及び上側部位134bをまとめて挟着するものに限らない。図示しないが、2組の挟着部材41,41が、索条134の下側部位134a及び上側部位134bをそれぞれ独立して挟着するように構成されてもよい。
【0025】
図6に示す清掃部材4は、索条134の下側部位134a及び上側部位134bに接触する刷毛42aを有するブラシ42によって構成される。ブラシ42は、刷毛42aを索条134の下側部位134a及び上側部位134bに対してそれぞれ接触させるように連結部材132に取り付けられている。索条134は、可動部3の移動に伴って、ブラシ42の刷毛42aと接触することよって、上記同様に切粉等の異物が除去される。ブラシ42は、図示しないが、索条134を両側から刷毛42aで挟着するように設けられてもよい。また、ブラシ42は、第1の滑車133A及び第2の滑車133Bにそれぞれ架け渡される部位に沿って刷毛42aが接触するように設けられてもよい。
【0026】
図7は、索条に張力調整部材が設けられた工作機械のテレスコピックカバーを示す説明図である。図1図3に示すテレスコピックカバー1と同一符号の部位は同一構成の部位であるため、それらの詳細な説明は上記説明を援用し、以下の説明を省略する。
張力調整部材5,5は、引っ張る方向の力に対して抵抗する方向の力を発生するコイルばね等の弾性部材によって構成され、索条134に取り付けられている。
【0027】
図7に示す張力調整部材5,5は、第1の滑車133Aから固定部側索条取付部21に至る索条134の下側部位134aと固定部側索条取付部21との間と、第2の滑車133Bから可動部側索条取付部31に至る索条134の上側部位134bと可動部側索条取付部31との間にそれぞれ設けられている。しかし、張力調整部材5,5は、索条134の下側部位134aの途中及び上側部位134bの途中にそれぞれ設けられてもよい。索条134がこのような張力調整部材5,5を有することによって、索条134を第1の滑車133A及び第2の滑車133Bに架け渡す際に張力を緩める必要がなく、第1の滑車133A及び第2の滑車133Bに架け渡された索条134を所定の張力に維持することができる。
【0028】
図8は、工作機械におけるテレスコピックカバーを駆動させるための構成を示すブロック図である。
図8に示すように、工作機械は、可動部3を往復移動させる電動機100と、電動機100の駆動を制御する制御装置200と、各種の情報をオペレータに表示する表示部300と、を有する。
【0029】
電動機100は、制御装置200によって駆動制御され、可動部3をX1方向及びX2方向に所定速度で往復移動させる。制御装置200は、この可動部3の往復移動において、可動部3の移動方向がX1方向からX2方向に反転動作する時、及びX2方向からX1方向に反転動作する時の電動機100の物理量を検出する機能を有する。電動機100の物理量は、具体的には、電動機100印加される電流、電力等である。
【0030】
テレスコピックカバー1は、例えば索条134の伸び等が発生すると、動作時のガタつきが大きくなり、可動部3の移動に対する追従性が悪くなる。テレスコピックカバー1の追従性の悪化は、可動部3の移動に影響を与え、その結果、可動部3の反転動作時の電動機100の負荷が変化する。よって、可動部3の反転動作時の電動機100の物理量の変化を検出することによって、テレスコピックカバー1の異常の有無を検出することができる。そのため、制御装置200は、可動部3の反転動作時の電動機100の物理量の変化から、以下のようにしてテレスコピックカバー1の異常検出を行う。
【0031】
図9は、可動部が反転動作した際の正常時の電動機の物理量を示すグラフである。横軸は時間、縦軸は物理量を示している。この物理量は電動機100のトルク変動を示している。可動部3は、時間T1において反転動作している。このとき、電動機100の物理量は、反転動作直後に所定の変動を示している。制御装置200は、このような反転動作時の正常時の電動機100の物理量の変化を予め記憶している。
【0032】
図10及び図11は、可動部が反転動作した際の異常時の電動機の物理量を示すグラフである。図10では、可動部3の反転動作時(時間T11)に対して、電動機100の物理量の変化が現れるまでの時間が正常時に比べて長くなっている。これは、例えば、テレスコピックカバー1の索条134に伸びが発生することが原因であると推測される。また、図11では、可動部3の反転動作時(T12)の電動機100の物理量の変化が正常時に比べて大きく乱れている。これは、例えば、索条10に異物が付着していることが原因であると推測される。したがって、制御装置200は、図10及び図11に示す電動機100の物理量の変化を、図9に示す正常時の電動機100の物理量の変化と比較することによって、テレスコピックカバー1に異常が発生していることを判別することができる。
【0033】
図12は、制御装置によるテレスコピックカバーの異常検出動作を示すフローチャートである。制御装置200は、工作機械の加工動作に伴って、電動機100の駆動を制御して可動部3を反転動作させる(S1)。この反転動作時に、制御装置200は、電動機100の物理量を取得する(S2)。
【0034】
電動機100の物理量を取得した後、制御装置200は、取得した物理量を予め記憶されている正常時の物理量と比較する(S3)。比較の結果、物理量は正常であると判断された場合(ステップS3においてYES)、制御装置200は、可動部3の移動動作を継続させ、ステップS1からの処理を繰り返す。
【0035】
ステップS3において比較の結果、物理量は異常であると判断された場合(ステップS3においてNO)、制御装置200は、表示部300に警告表示を行い、オペレータに対してテレスコピックカバー1の異常を報知する(S4)。表示部300は、例えば液晶モニタ画面である。表示部300は、液晶モニタ画面に加えて、警告ブザーの鳴動、警告ランプの点滅等を行ってもよい。警告表示の後、制御装置200は、可動部3の移動を停止させる(S5)。
【0036】
このように、制御装置200は、テレスコピックカバー1の異常検出時に可動部3の移動を停止させるため、テレスコピックカバー1の破損を防止することができる。しかし、制御装置200は、テレスコピックカバー1の異常検出時に警告表示のみを行い、オペレータからの可動部3の移動停止の指示があるまで、可動部3の移動(工作機械による加工)を継続させるようにしてもよい。
【0037】
図13は、他の一実施形態に係る工作機械のテレスコピックカバーを示す説明図である。図14は、図13中の(xiv)-(xiv)線に沿う断面図である。図15は、図13に示す工作機械のテレスコピックカバーにおいて可動部がX1方向に移動した状態を示す説明図である。図1図3に示すテレスコピックカバー1と同一符号の部位は同一構成の部位であるため、それらの詳細な説明は上記説明を援用し、以下の説明を省略する。
このテレスコピックカバー6は、一対の第4カバー部材14A,14Bを更に有している。
【0038】
第4カバー部材14A,14Bは、第1カバー部材11A,11Bと第3カバー部材13A,13Bとの間にそれぞれ挟持され、第1カバー部材11A,11Bをそれぞれ外側から抱え込んでいる。第3カバー部材13A,13Bは、第4カバー部材14A,14B及び第1カバー部材11A,11Bの両方をそれぞれ外側から抱え込んでいる。第2カバー部材12A,12Bは、第4カバー部材14A,14B、第3カバー部材13A,13B及び第1カバー部材11A,11Bをそれぞれ外側から抱え込んでいる。第4カバー部材14A,14Bは、固定部2及び可動部3には固定されていない。
【0039】
これによって、第1カバー部材11A,11B、第2カバー部材12A,12B、第3カバー部材13A,13B及び第4カバー部材14A,14Bは、入れ子状に重ね合わされる。図13に示すように、テレスコピックカバー6において、可動部3が中立状態で停止した際、第1カバー部材11A,11Bは、可動部3の移動方向の最外側に配置される。第2カバー部材12A,12Bは、可動部3の移動方向の最内側に配置される。第3カバー部材13A,13Bは、可動部3の移動方向における第1カバー部材11A,11Bと第2カバー部材12A,12Bの間に配置される。第4カバー部材14A,14Bは、可動部3の移動方向における第1カバー部材11A,11Bと第3カバー部材13A,13Bの間に配置される。
【0040】
一対の第4カバー部材14A,14Bのそれぞれ一対の側板141A,141Aと141B,141Bとに亘って、可動部3の移動方向に沿って延びる一対の連結部材142,142が取り付けられている。連結部材142,142は、第4カバー部材14A,14Bを一定距離となるように一体に連結することによって、第4カバー部材連結体140を構成する。連結部材142,142は、本開示における第2の連結部材に対応する。
【0041】
この第3カバー部材連結体130において、第1の滑車133A及び第2の滑車133Bは、第3カバー部材13A,13Bの側板131A,131Bの内面側に配置されている。
【0042】
第4カバー部材連結体140において、第1の滑車133A及び第2の滑車133Bに対面する第4カバー部材14A,14Bの側板141A,141Bの外面側に、それぞれ第3の滑車143Aと第4の滑車143Bが回転可能に軸支されて取り付けられている。第3の滑車143A及び第4の滑車143Bは、可動部3の移動方向に沿う直線方向に離隔し、且つ、第1の滑車133A及び第2の滑車133Bよりも可動部3の移動方向に沿う両外側に設けられている。第3の滑車143Aの回転中心と第4の滑車143Bの回転中心とを結ぶ線分C2は、第1の滑車133Aの回転中心と第2の滑車133Bの回転中心とを結ぶ線分C1よりも固定部2に近い下位に配置されている。
【0043】
第3の滑車143A及び第4の滑車143Bは、本開示における第3の円盤及び第4の円盤にそれぞれ対応する。第3の円盤及び第4の円盤も、第3の滑車143A及び第4の滑車143Bの他に、スプロケット、歯車等を使用することができる。
【0044】
第3の滑車143A及び第4の滑車143Bには、有端状の索条144が架け渡されている。索条144は、図13に示すように、線分C2を挟んで両側に配置される部位のうちの下側部位144aにおいて、索条134の下側部位134aとともに固定部2の固定部側索条取付部21に取り付けられている。
【0045】
索条144の上側部位144bは、索条144の一対の端部144c,144dを有する。図14に示すように、索条144の一対の端部144c,144dのうち、第3の滑車143A側の端部144cは、第1の滑車133Aの回転軸と同軸状になるように第3カバー部材13Aに設けられた索条端部取付部135Aに固定され、第4の滑車143B側の端部144dは、第2の滑車133Bの回転軸と同軸状になるように第3カバー部材13Bに設けられた索条端部取付部135Bに固定されている。これによって、第4カバー部材連結体140は、可動部3に連結され、可動部3のX1方向及びX2方向の移動に同期して第3カバー部材連結体130がX1方向及びX2方向に移動するのに伴って、同じ方向に移動する。
【0046】
この索条144は、本開示における第2の索条に対応する。この索条144も、使用される第3の円盤及び第4の円盤に応じて、ワイヤ、ロープ、紐、鋼線、チェーン、平ベルト、Vベルト、歯付きベルト等を使用することができる。
【0047】
有端状の索条144は、2本の索条によって構成されてもよいし、1本の索条によって構成されてもよい。索条144が2本の索条によって構成される場合は、下側部位144a,144aの端部は、それぞれ固定部側索条取付部21に固定される。索条144が1本の索条によって構成される場合は、固定部側索条取付部21は、索条144の下側部位144aの一部分を挟着することによって索条144を固定することができる。
【0048】
このように構成されるテレスコピックカバー6において、図15に示すように、例えば、可動部3がX1方向に距離L10だけ移動して停止すると、第3カバー部材連結体130は、可動部3が移動した距離L10の半分の距離L20だけX1方向に移動して停止する。また、第4カバー部材連結体140も可動部3及び第3カバー部材連結体130の移動に同期して同じ方向に移動する。しかし、第4カバー部材連結体140は、第3の滑車143A及び第4の滑車143Bに架け渡された索条144を介して第3カバー部材連結体130と連結されているため、第3カバー部材連結体130が移動した距離L20の半分の距離L30だけX1方向に移動して停止する。そのため、第3カバー部材13A,13B及び第4カバー部材14A,14Bが、第1カバー部材11A,11B及び第2カバー部材12A,12B等に衝突することによって衝撃や騒音を発生させることはない。第4カバー部材連結体140には、第3の滑車143A、第4の滑車143B及び索条144を設けるだけであるため、部品点数及びスペースも少なくて済む。よって、簡単な構造で省スペースな4重構造を有する工作機械のテレスコピックカバー6を提供することができる。
【0049】
このテレスコピックカバー6の各索条134,144にも、上記同様にして、清掃部材4、張力調整部材5を設けることができる。また、カバー部材の数は、テレスコピックカバーでより大きな領域を覆いたい場合や、テレスコピックカバーの長さを短くしたい場合には、カバー部材の増加に応じて滑車と索条を追加するだけで、カバーの段数を更に増加させることができる。
【符号の説明】
【0050】
1,6 テレスコピックカバー
11A,11B 第1カバー部材
12A,12B 第2カバー部材
13A,13B 第3カバー部材
130 第3カバー部材連結体
132 連結部材(第1の連結部材)
133A 第1の滑車(第1の円盤)
133B 第2の滑車(第2の円盤)
134 索条(第1の索条)
14A,14B 第4カバー部材
140 第4カバー部材連結体
142 連結部材(第2の連結部材)
143A 第3の滑車(第3の円盤)
143B 第4の滑車(第4の円盤)
144 索条(第2の索条)
2 固定部
3 可動部
4 清掃部材
41 挟着部材
42 ブラシ
42a 刷毛
5 張力調整部材
100 電動機
200 制御装置
C1 第1の滑車及び第2の滑車の回転中心を結ぶ線分
C2 第3の滑車及び第4の滑車の回転中心を結ぶ線分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15