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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】窒化物半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20240109BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20240109BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
H01L29/78 652J
H01L29/78 652T
H01L29/78 658E
H01L29/78 658G
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019220625
(22)【出願日】2019-12-05
(65)【公開番号】P2021090015
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-07-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 朋彦
(72)【発明者】
【氏名】長里 喜隆
【審査官】石塚 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-005578(JP,A)
【文献】特開2018-060985(JP,A)
【文献】特開2019-040952(JP,A)
【文献】特開2013-179221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/12
H01L 21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
n型のドリフト層と、
前記ドリフト層の上に設けられているp型の一対のボディ領域と、
前記ドリフト層の上であって前記一対のボディ領域のそれぞれとの間に設けられているn型のJFET領域と、
絶縁膜を挟んで前記一対のボディ領域と前記JFET領域に対向しているゲート電極と、
前記一対のボディ領域のそれぞれについて、前記JFET領域及び前記ドリフト層内であって前記ボディ領域から離間する位置に、上下方向に延びるn型の不純物濃度が高い高濃度領域が配置されており、
前記高濃度領域は、n型の不純物濃度が1×10 17 /cm ~2×10 17 /cm である、窒化物半導体装置。
【請求項2】
n型のドリフト層と、
前記ドリフト層の上に設けられているp型の一対のボディ領域と、
前記ドリフト層の上であって前記一対のボディ領域のそれぞれとの間に設けられているn型のJFET領域と、
絶縁膜を挟んで前記一対のボディ領域と前記JFET領域に対向しているゲート電極と、
前記一対のボディ領域のそれぞれについて、前記JFET領域及び前記ドリフト層内であって前記ボディ領域から離間する位置に、上下方向に対して傾斜して延びるn型の不純物濃度が高い高濃度領域が配置されている、窒化物半導体装置。
【請求項3】
前記高濃度領域は、前記絶縁膜から離間している、請求項1または請求項2に記載の窒化物半導体装置。
【請求項4】
前記高濃度領域は、前記一対のボディ領域のうちの近くに配置されている前記ボディ領域から0.1μm以上離間している、請求項1から3のいずれか一項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項5】
前記高濃度領域の下端から上下方向に垂直な方向では、n型の不純物濃度が前記高濃度領域よりも低い、請求項1からのいずれか一項に記載の窒化物半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、窒化物半導体装置に関する。本明細書は、特に、JFET領域を有するプレーナゲート構造の窒化物半導体装置に関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
窒化物半導体はワイドバンドギャップ半導体の一種であり、高い絶縁破壊電界特性と、高い熱伝導特性を有しており、高耐圧低損失のパワー半導体素子への応用が期待されている。以下では、説明の便宜のため、窒化物半導体を、その代表例であるGaN(窒化ガリウム)で表す場合がある。
【0003】
プレーナゲート構造の半導体装置(縦型MOSFET)は、次の構造を有している。以下では、nチャネル型の半導体装置を例に説明する。半導体基板の上にn型の半導体層が形成されており、その表面に対してゲート絶縁膜を挟んでゲート電極が配置されている。半導体層の表層にp型の一対のボディ領域が形成されている。一対のボディ領域は、半導体基板の主面の法線方向からみてその一方がゲート電極の一端と重なり、他方がゲート電極の他端と重なるように設けられている。ゲート電極の下方で一対のボディ領域の間に挟まれたn型の領域は、JFET領域(Junction FET領域)と呼ばれている。
【0004】
JFET領域のn型不純物の濃度を高めると、電流が流れ易くなるため、オン抵抗が下がることが知られている(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-199000号公報
【文献】特開2016-058661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
JFET領域のn型不純物の濃度を高めると、オン抵抗が下がる。しかし、その一方、JFET領域のn型不純物の濃度を高めると、電界強度が高まるため、耐圧特性が低下するという背反がある。本明細書は、JFET領域を有するプレーナゲート構造の窒化物半導体縦型MOSFETに関し、耐圧の確保と低いオン抵抗の両立を図る技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書が開示する窒化物半導体装置は、n型のドリフト層と、前記ドリフト層の上に設けられているp型の一対のボディ領域と、前記ドリフト層の上であって前記一対のボディ領域のそれぞれとの間に設けられているn型のJFET領域と、絶縁膜を挟んで前記一対のボディ領域と前記JFET領域に対向しているゲート電極と、前記一対のボディ領域のそれぞれについて、前記JFET領域及び前記ドリフト層内であって前記ボディ領域から離間する位置に、上下方向に延びるn型の不純物濃度が高い高濃度領域が配置されている。
【0008】
この構成によれば、電流の流れ方向に高濃度領域を配置することができる。これにより、高濃度領域では電流が流れ易くなるため、オン抵抗を低下させることができる。また、高濃度領域がボディ領域と離間して配置されているため、半導体装置のオン状態で高濃度領域に空乏層が生じることが抑制される。これにより、オン抵抗が高くなることを抑制することができる。また、高濃度領域以外の領域では、空乏層が延びるため、電界強度が高くならない。この結果、耐圧の劣化は抑制される。これにより、本明細書が開示する窒化物半導体装置は、耐圧の確保と低いオン抵抗の両立を図ることができる。
【0009】
前記高濃度領域は、前記絶縁膜から離間していてもよい。この構成によれば、絶縁膜近傍に高濃度領域以外の領域を配置することによって、半導体装置のオフ状態において、空乏層が狭くなることを防止することができる。これにより、絶縁膜近傍の電界が上昇することを抑制することができる。これにより、耐圧の劣化を抑制することができる。
【0010】
前記高濃度領域は、前記一対のボディ領域のうちの近くに配置されている前記ボディ領域から0.1μm以上離間していてもよい。この構成によれば、オン抵抗を低下することができる。
【0011】
前記高濃度領域の下端から上下方向に垂直な方向では、n型の不純物濃度が前記高濃度領域よりも低くてもよい。この構成によれば、前記高濃度領域の下端から上下方向に垂直に広がる領域において、空乏層が狭くなることを防止することができる。これにより、耐圧劣化を抑制することができる。
【0012】
本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施例の半導体装置の要部断面図である。
図2】第1実施例の半導体装置の製造方法を説明する図である。
図3図2に続く半導体装置の製造方法を説明する図である。
図4図3に続く半導体装置の製造方法を説明する図である。
図5図4に続く半導体装置の製造方法を説明する図である。
図6図5に続く半導体装置の製造方法を説明する図である。
図7】高濃度領域とボディ領域との距離とオン抵抗との関係を示すグラフである。
図8】高濃度領域とボディ領域との距離と耐圧との関係を示すグラフである。
図9】第2実施例の半導体装置の要部断面図である。
図10】第2実施例の半導体装置の製造方法を説明する図である。
図11】第3実施例の半導体装置の要部断面図である。
図12】第4実施例の半導体装置の要部断面図である。
図13】第5実施例の半導体装置の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施例)
図1図8を参照して第1実施例の窒化物半導体装置を説明する。第1実施例の窒化物半導体装置は、窒化ガリウム(GaN)を用いた縦型MOSFETである。その縦型MOSFETは、プレーナゲート構造を有する。以下では、説明の便宜上、窒化物半導体装置を単純に半導体装置と称する。図1に半導体装置100の要部断面図を示す。
【0015】
半導体装置100は、窒化ガリウム(n型の窒化物半導体)を材料とする基板3、n型のドリフト層4、p型の一対のボディ領域5a、5b、n型のソース領域6a、6b、ゲート絶縁膜12、ゲート電極8、ソース電極9、ドレイン電極2、JFET(Junction Field Effect Transistor)領域7を備えている。また、ドリフト層4及びJFET領域7の中に、一対の高濃度領域10a、10bが設けられている。図1は、JFET領域7と一対のボディ領域5a、5bとその周辺のみを示している。半導体装置100は、図1と同じ構造を複数備えており、それらの構造の周囲を耐圧構造が囲んでいる。耐圧構造については説明を省略する。
【0016】
基板3は、n型不純物を含む窒化ガリウム(GaN)を材料としている。基板3の裏面全体にドレイン電極2がオーミック接触している。基板3は、ドリフト層4がエピタキシャル成長するための下地板である。
【0017】
ドリフト層4は、基板3の上に半導体物質をエピタキシャル成長させた層である。ドリフト層4は、n型不純物を含む窒化ガリウム(GaN)を材料とする。n型不純物の例としては、シリコン(Si)が挙げられる。
【0018】
ドリフト層4の上にp型の一対のボディ領域5a、5bが設けられている。なお、一対のボディ領域5a、5bを以下では、ボディ領域5と総称する場合がある。ボディ領域5は、p型不純物を含んでいる。p型不純物の例としては、マグネシウム(Mg)が挙げられる。ボディ領域5のうち、後述するソース領域6とJFET領域7に挟まれた部分は、チャネル領域と呼ばれることがある。また、p型のボディ領域5の下にp型不純物をボディ領域5よりも高濃度に含むベース領域が設けられることもある。
【0019】
一対のボディ領域5a、5bに挟まれた領域がJFET領域7である。JFET領域7は、ドリフト層4と連続しており、ドリフト層4と一体である。すなわち、実施例の半導体装置100では、JFET領域7は、n型不純物を含む窒化ガリウム(GaN)を材料としており、n型不純物の濃度は、ドリフト層4の不純物濃度に等しい。
【0020】
ボディ領域5a、5bの上にソース領域6a、6bが設けられている。ソース領域6a、6bは、ボディ領域5a、5bによって、ドリフト層4から隔てられている。ソース領域6a、6bは、n型不純物を高濃度に含んでいる。n型不純物の例は、前述したように、シリコン(Si)である。一対のソース領域6a、6bを以下ではソース領域6と総称する場合がある。ソース領域6にソース電極9がオーミック接触している。なお、ボディ領域5の表層でソース領域6に接するようにp型の半導体領域であるコンタクト領域が設けられることがあるが、図1では、コンタクト領域の図示は省略した。コンタクト領域は、p型不純物をボディ領域5よりも高濃度に含む。
【0021】
ゲート電極8は、ゲート絶縁膜12を挟んでJFET領域7と対向するように配置されている。ゲート電極8は、基板3の法線方向からみて、一端が一方のボディ領域5aと重なり、他端が他方のボディ領域5bと重なるように配置されている。別言すれば、ゲート電極8は、ゲート絶縁膜12を挟んでJFET領域7と一対のボディ領域5a、5bに対向している。基板3と平行な平板状のゲート電極8を有しているので、半導体装置100は、プレーナゲート型と呼ばれる。
【0022】
ゲート電極8とソース電極9の上部は絶縁層に覆われているが、その絶縁層の図示は省略してある。
【0023】
ドリフト層4及びJFET領域7内に、n型不純物をJFET領域7よりも高濃度に含む一対の高濃度領域10a、10bが設けられている。高濃度領域10a、10bでは、n型不純物(例えばシリコン)の濃度が、ドリフト層4及びJFET領域7におけるn型不純物の濃度よりも高い。なお、一対の高濃度領域10a、10bを以下では、高濃度領域10と総称する場合がある。
【0024】
高濃度領域10aは、ゲート絶縁膜12の下端からゲート絶縁膜12に対して垂直方向に延びて、ドリフト層4の中間位置において屈曲して、ゲート絶縁膜12に平行に延びている。高濃度領域10aは、全長に亘って、一定の幅を有している。高濃度領域10aは、ボディ領域5aのドリフト層4及びJFET領域7との界面に対して平行に配置されている。高濃度領域10aとボディ領域5aのドリフト層4及びJFET領域7との界面との距離Lは、高濃度領域10aの全長に亘って一定である。距離Lは、0.1μm以上であって1.0μm以下である。
【0025】
次いで、半導体装置100の製造方法を説明する。図2に示すように、まず、n型の窒化物半導体(窒化ガリウム)を材料とする基板3の上に、有機金属気相成長(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:MOCVD)法などにより、n型のドリフト層4を形成する。ドリフト層4も窒化ガリウムを材料とする。次いで、図3に示すように、JFET領域7に対応する領域の両側をエッチング(ドライ又はウェット)して、トレンチを形成する。この工程では、半導体装置100において、高濃度領域10a、10bとドリフト層4との界面となる位置までエッチングにて除去される。
【0026】
次いで、図4図5示すように、図2の方法と同様の成長法で、高濃度領域10と、高濃度領域10の上方に位置するドリフト層4bと、ボディ領域5と、で構成されるエピタキシャル層を連続的に再成長させる。この工程では、n型不純物の濃度を調整することによって、高濃度領域10とドリフト層4bとを連続的に成長させる。
【0027】
次に、図6に示すように、化学的機械研磨(Chemical Mechanical Polishing)などにより、表面を研磨することによって、ボディ領域5a、5b、の上面と、ドリフト層4の上面と、高濃度領域10a、10bの上面と、JFET領域7の上面が面一になるように平坦化する。
【0028】
次いで、イオン注入ならびに活性化アニール処理により、p型のボディ領域5a、5bのそれぞれの表面の一部にn型のソース領域6a、6bを形成する。ソース領域は、有機金属気相成長法によるボディ領域形成の際に、ボディ領域5の上に成膜したものから作成してもよい。次に、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)、減圧-CVD(Low Pressure Chemical Vapor Deposition:LP-CVD)、原子堆積法(Atomic Layer Deposition:ALD)などの方法により、ゲート絶縁膜12を形成する。
【0029】
次いで、ゲート電極8を形成ならびに加工する。ゲート絶縁膜12の一部を除去し、ソース電極9を形成する。また、基板3の裏面側にドレイン電極2を形成する。ゲート電極8、ソース電極9、ドレイン電極2の材料としては、ポリシリコン、あるいは、アルミニウムやチタンなどの金属が挙げられる。これにより、図1に示す半導体装置100が形成される。
【0030】
半導体装置100は、JFET領域7及びドリフト層4の中に、n型不純物濃度がJFET領域7及びドリフト層4よりも高い高濃度領域10a、10bを備えている。この構成によれば、半導体装置100がオン状態である場合において、ソース電極9からドレイン電極2に流れる電流の流れ方向(即ち上下方向)に、高濃度領域10a、10bを配置することができる。これにより、オン抵抗を低下させることができる。また、電流が比較的に低抵抗の高濃度領域10a、10bを流れることによって、電流経路を、ドリフト層4内で拡大させることができる。これにより、オン抵抗を低下させることができる。
【0031】
図7は、高濃度領域10a、10bのn型不純物濃度が異なる4種類の半導体装置100及び、高濃度領域10a、10bを含まない比較例の半導体装置を用いて、ボディ領域5a、5bと高濃度領域10a、10bとの距離Lを変化させた場合の、オン抵抗のシミュレーション結果を示すグラフである。図7のグラフでは、横軸が距離Lであり、縦軸がオン抵抗である。縦軸では、上に向かってオン抵抗が高くなる。結果102は、高濃度領域10a、10bを含まない比較例の半導体装置を示す。高濃度領域10a、10bを含まない半導体装置では、距離Lは特定されないため、オン抵抗の値は一定である。結果104、106、108、110は、それぞれ、高濃度領域10a、10bの濃度が1×1017/cm、2×1017/cm、5×1017/cm、1×1018/cmの半導体装置100の結果である。なお、ドリフト層4のn型不純物濃度は、1×1016/cmである。
【0032】
高濃度領域10a、10bの濃度がいずれの値であっても、半導体装置100では、高濃度領域10a、10bを含まない比較例の半導体装置と比較して、オン抵抗を低下することができる。また、高濃度領域10a、10bの濃度が高いほど、オン抵抗は低くなる。さらに、濃度が1×1017/cm、2×1017/cmである半導体装置100では、距離Lが0.05μm以上である場合、特に好ましくは、0.1μm以上である場合に、オン抵抗が大きく低下している。なお、シミュレーションで用いた半導体装置100では、JFET領域7の幅(図1の左右方向の幅)が、2.0μmであった。このことから、距離Lは、JFET領域7の幅の2.5%以上であることが好ましいということができる。また、距離Lが0.3μm以下、即ちJFET領域7の幅の15%以下の場合に、オン抵抗が比較的に小さかった。
【0033】
図8は、高濃度領域10a、10bのn型不純物濃度が異なる4種類の半導体装置100及び、高濃度領域10a、10bを含まない比較例の半導体装置を用いて、ボディ領域5a、5bと高濃度領域10a、10bとの距離Lを変化させた場合の、耐圧のシミュレーション結果を示すグラフである。図8のグラフでは、横軸が距離Lであり、縦軸が耐圧である。縦軸では、上に向かって耐圧が高くなる。結果202は、高濃度領域10a、10bを含まない比較例の半導体装置を示す。高濃度領域10a、10bを含まない半導体装置では、距離Lを特定することができないため、オン抵抗の値は一定である。結果204、206、208、210は、それぞれ、高濃度領域10a、10bの濃度が1×1017/cm、2×1017/cm、5×1017/cm、1×1018/cmの半導体装置100の結果である。
【0034】
図8から明らかなように、図7のオン抵抗とは逆に、高濃度領域10a、10bの濃度が高いほど、耐圧は低くなる。しかしながら、濃度が1×1017/cm、2×1017/cmである半導体装置100では、高濃度領域10a、10bを含まない比較例の半導体装置と比較して、耐圧はそれほど変わらない。このことから、少なくとも、高濃度領域10a、10bの濃度が、1×1017/cm~2×1017/cmであれば、特に、耐圧の低下を抑制しつつ、オン抵抗を低下させることができるということができる。また、要求性能によっては、濃度が5×1017/cm以下であってもよい。
【0035】
(第2実施例)
図9に、第2実施例の半導体装置200の断面図を示す。半導体装置200は、半導体装置100と比較して、高濃度領域20a、20bの構成が、高濃度領域10a、10bの構成と異なる。半導体装置200のその他の構成は、半導体装置100の構成と同一である。高濃度領域20a、20bは、ドリフト層4及びJFET領域7内において、ゲート絶縁膜12の下端からゲート絶縁膜12に対して垂直方向に延びている。一方、高濃度領域20a、20bは、高濃度領域10a、10bと異なり、ゲート絶縁膜12に平行に延びる部分を有していない。即ち、高濃度領域20a、20bの下端において、ゲート絶縁膜12に平行な方向(即ち、上下方向に対して垂直な方向)には、ドリフト層4が配置される。即ち、高濃度領域20a、20bの下端におけるゲート絶縁膜12に平行な方向では、高濃度領域20a、20bよりもn型不純物濃度が低い。
【0036】
次いで、半導体装置200の製造方法を説明する。半導体装置200は、半導体装置100の製造方法の図4の状態において、高濃度領域10が再成長された段階で、再成長を停止する。次いで、図10に示すように、ドライエッチングによって、ドリフト層4aの上方に向く面に形成された高濃度領域10を除去する。これにより、高濃度領域20a、20bがドリフト層4a上に残留する。その後、図5の工程と同様に、ドリフト層4b、ボディ領域5を連続的に再成長させる。次いで、半導体装置100の工程と同様に、表面の平坦化、ソース領域6a、6b、ゲート絶縁膜12、ゲート電極8、ソース電極9及びドレイン電極2を形成することによって、半導体装置200が形成される。
【0037】
半導体装置200は、半導体装置100と同様に、オン抵抗を低下させることができる。また、半導体装置200では、高濃度領域20a、20bの下端からゲート絶縁膜12に対して平行方向に広がる領域において、高濃度領域20a、20bよりも不純物濃度が低い領域が配置されることによって、空乏層が狭くなることを防止することができる。これにより、耐圧劣化を抑制することができる。
【0038】
(第3実施例)
図11に、第3実施例の半導体装置300の断面図を示す。半導体装置300は、半導体装置100と比較して、高濃度領域30a、30bの構成が、高濃度領域10a、10bの構成と異なる。半導体装置300のその他の構成は、半導体装置100の構成と同一である。高濃度領域30a、30bは、ドリフト層4及びJFET領域7内において、ゲート絶縁膜12の下端から離間した位置から、ゲート絶縁膜12に対して垂直方向に延びている。即ち、高濃度領域30a、30bの上端とゲート絶縁膜12との間には、ドリフト層4(即ち、高濃度領域30a、30bよりも不純物濃度が低い領域)が配置されている。また、高濃度領域30a、30bは、高濃度領域10a、10bと同様に、ゲート絶縁膜12に平行に延びる部分を有する。
【0039】
次いで、半導体装置300の製造方法を説明する。半導体装置200は、半導体装置10の製造方法の図4及び図5の再成長の工程において、高濃度領域30a、30bを形成する際に、成膜温度を高くすることによって、n型不純物の上方から下方へ向けての拡散を促進させる。これにより、高濃度領域が下方から成長するように調整される。この結果、高濃度領域30a、30bが形成される。なお、変形例では、JFET領域7を小さくすることによって、n型不純物の上方から下方へ向けての拡散を促進させることによって、高濃度領域30a、30bを形成してもよい。次いで、半導体装置100の工程と同様に、表面の平坦化、ソース領域6a、6b、ゲート絶縁膜12、ゲート電極8、ソース電極9及びドレイン電極2を形成することによって、半導体装置300が形成される。
【0040】
半導体装置300は、半導体装置100と同様に、オン抵抗を低下させることができる。また、半導体装置300では、ゲート絶縁膜12の下方にドリフト層4を配置することができる。この構成によれば、ゲート絶縁膜12の下方において、空乏層が狭くなることを防止することができる。これにより、ゲート絶縁膜12近傍の電界強度が上昇することを抑制することができる。この結果、耐圧の劣化を抑制することができる。
【0041】
(第4実施例)
図12に、第4実施例の半導体装置400の断面図を示す。半導体装置400は、半導体装置200と比較して、高濃度領域40a、40bの構成が、高濃度領域20a、20bの構成と異なる。半導体装置400のその他の構成は、半導体装置200の構成と同一である。高濃度領域40a、40bは、第3実施例の高濃度領域30a、30bと同様に、ドリフト層4及びJFET領域7内において、ゲート絶縁膜12の下端から離間した位置から、ゲート絶縁膜12に対して垂直方向に延びている。即ち、高濃度領域40a、40bの上端とゲート絶縁膜12との間には、ドリフト層4(即ち、高濃度領域40a、40bよりも不純物濃度が低い領域)が配置されている。
【0042】
次いで、半導体装置400の製造方法を説明する。半導体装置400は、半導体装置200の製造方法と同様の製造方法によって、作製される。但し、高濃度領域を形成する際に、第3実施例と同様に、成膜温度を高くすることによって、n型不純物の上方から下方へ向けての拡散を促進させる。これにより、高濃度領域40a、40bが形成される。
【0043】
半導体装置400は、半導体装置100と同様に、オン抵抗を低下させることができる。また、半導体装置400は、半導体装置200及び半導体装置300と同様に、耐圧の低下を抑制することができる。
【0044】
(第5実施例)
図13に、第5実施例の半導体装置500の断面図を示す。半導体装置500は、半導体装置100と比較して、高濃度領域50a、50bの構成が、高濃度領域10a、10bの構成と異なる。また、ボディ領域505a、505bの構成が、ボディ領域5a、5bの構成と異なり、JFET領域507の構成が、JFET領域7の構成と異なる。さらに、ドリフト層504の構成が、ドリフト層4の構成と異なる。半導体装置500のその他の構成は、半導体装置100の構成と同一である。
【0045】
JFET領域507では、側面が傾斜しており、ゲート絶縁膜12に向かって、幅が狭くなっている。高濃度領域50a、50bは、ゲート絶縁膜12の下端からゲート絶縁膜12に対して垂直方向から傾斜して延びている。高濃度領域50a、50bは、JFET領域507の側面に沿って延びている。高濃度領域50a、50bは、ドリフト層504の中間位置において屈曲して、ゲート絶縁膜12に平行に延びている。ドリフト層504は、高濃度領域50a、50bとボディ領域505a、505bとの間において、高濃度領域50a、50bに沿って、ゲート絶縁膜12に対して垂直方向から傾斜している。同様に、ボディ領域505a、505bのドリフト層504側の面は、ドリフト層504に沿って、傾斜して配置されている。
【0046】
次いで、半導体装置500の製造方法を説明する。半導体装置500は、半導体装置100の製造方法の図3のエッチングの工程において、ドライエッチングの条件を調整することによって、JFET領域507の側面が傾くようにエッチングを実施する。その他の工程は、半導体装置100の製造方法と同様である。
【0047】
半導体装置500は、半導体装置100と同様に、オン抵抗を低下させることができる。また、半導体装置500では、高濃度領域50a、50bが上下方向、即ち電流の流れ方向に対して傾斜しているため、比較的に低抵抗の高濃度領域50a、50bを電流が通過する際に、電流経路が広がる。これにより、オン抵抗が低下される。
【0048】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0049】
例えば、ドリフト層4のうち、高濃度領域10a、10bよりもボディ領域5a、5bに近い領域では、高濃度領域10a、10bよりもボディ領域5a、5bに遠い領域と比較して、n型不純物濃度が高くてもよいし、低くてもよい。
【0050】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0051】
2:ドレイン電極、3:基板、4:ドリフト層、5a、5b:ボディ領域、6a、6b:ソース領域、7:JFET領域、8:ゲート電極、9:ソース電極、10a、10b:高濃度領域、12:ゲート絶縁膜、100:半導体装置
図1
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図13