(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】受電装置、送電装置、およびそれらの制御方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/10 20160101AFI20240109BHJP
H02J 50/60 20160101ALI20240109BHJP
H02J 50/80 20160101ALI20240109BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
H02J50/10
H02J50/60
H02J50/80
H02J7/00 301D
H02J7/00 Y
(21)【出願番号】P 2019223004
(22)【出願日】2019-12-10
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】立和 航
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-007838(JP,A)
【文献】特表2016-531538(JP,A)
【文献】特開2013-027074(JP,A)
【文献】国際公開第2019/221532(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/132818(WO,A1)
【文献】特開2014-057472(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/10
H02J 50/60
H02J 50/80
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電装置から無線で受電する受電手段と、
前記送電装置と通信を行う通信手段と、
前記通信手段を用いて前記送電装置から取得される異物存在情報に基づいて、前記送電装置の送電可能範囲に異物が存在する第1の状態、前記送電可能範囲に異物が存在する可能性が有る第2の状態、前記送電可能範囲に異物が存在しない第3の状態、の少なくとも3つの状態のうちのいずれであるかを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記第1の状態であると判定された場合は第1の通知を行い、前記第2の状態であると判定された場合は前記第1の通知と異なる第2の通知を行う通知手段と、を有
し、
前記第2の通知を行った後、所定時間以内に異物が存在していないことを確認したことを示すユーザ操作が行われなかった場合に、無線による送電を停止する要求が、前記通信手段から前記送電装置に送信される、ことを特徴とする受電装置。
【請求項2】
送電装置から無線で受電する受電手段と、
前記送電装置と通信を行う通信手段と、
前記通信手段を用いて前記送電装置から取得される異物存在情報に基づいて、前記送電装置の送電可能範囲に異物が存在する第1の状態、前記送電可能範囲に異物が存在する可能性が有る第2の状態、前記送電可能範囲に異物が存在しない第3の状態、の少なくとも3つの状態のうちのいずれであるかを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記第1の状態であると判定された場合は第1の通知を行い、前記第2の状態であると判定された場合は前記第1の通知と異なる第2の通知を行う通知手段と、を有し、
前記第2の通知を行った後、所定時間以内に異物が存在していないことを確認したことを示すユーザ操作が行われた場合に、無線による送電を開始する要求が、前記通信手段から前記送電装置に送信されることを特徴とする受電装置。
【請求項3】
送電装置から無線で受電する受電手段と、
前記送電装置と通信を行う通信手段と、
前記通信手段を用いて前記送電装置から取得される異物存在情報に基づいて、前記送電装置の送電可能範囲に異物が存在する第1の状態、前記送電可能範囲に異物が存在する可能性が有る第2の状態、前記送電可能範囲に異物が存在しない第3の状態、の少なくとも3つの状態のうちのいずれであるかを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記第1の状態であると判定された場合は第1の通知を行い、前記第2の状態であると判定された場合は前記第1の通知と異なる第2の通知を行う通知手段と、
前記判定手段により前記第2の状態であると判定された場合に、無線による送電を停止する要求を、前記通信手段を用いて前記送電装置に送信する送電制御手段と、を有することを特徴とする受電装置。
【請求項4】
前記第1の状態と判定された場合に、無線による送電を停止する要求が前記通信手段から前記送電装置に送信され、
前記第1の通知は、受電が停止していること、または、異物が存在すること、のいずれかまたは両方を示す、ことを特徴とする請求項1
または2に記載の受電装置。
【請求項5】
前記第2の通知は、異物が存在しているか否かをユーザに確認するよう促す、ことを特徴とする請求項
1乃至3のいずれか1項に記載の受電装置。
【請求項6】
前記通知手段は、前記第3の状態であると判定された場合には第3の通知を行い、
前記第3の通知は、異物が存在していないことと、受電が行われていることのいずれかまたは両方を示す、ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の受電装置。
【請求項7】
前記異物存在情報は、前記少なくとも3つの状態のうちのいずれであるかを示し、
前記判定手段は、前記異物存在情報を前記送電装置から前記通信手段を介して受信することにより、異物の存在状態を判定することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の受電装置。
【請求項8】
前記異物存在情報は、電力損失、Q値、または温度のいずれか一つ以上に基づいて生成される情報である、ことを特徴とする請求項7に記載の受電装置。
【請求項9】
前記異物存在情報は、前記送電装置から電力損失、Q値、または温度のうちの一つ以上を含み、
前記判定手段は、前記送電装置から前記通信手段を介して受信した前記異物存在情報に基づいて、前記少なくとも3つの状態のうちのいずれであるかを判定することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の受電装置。
【請求項10】
前記第2の状態は、異物が存在する可能性が大きい順に少なくとも第1のレベルと第2のレベルに分けられており、
前記送電制御手段は、前記判定手段により前記第1のレベルと判定された場合は前記送電装置による送電を停止させ、前記第2のレベルと判定された場合は前記送電装置による送電を停止させないことを特徴とする請求項
3に記載の受電装置。
【請求項11】
前記判定手段は、WPC規格のReceived Power Packetに対する応答、または、WPC規格のFOD Status Packetに対する応答、のいずれかにより、前記異物存在情報を取得する、ことを特徴とする請求項1乃至
10のいずれか1項に記載の受電装置。
【請求項12】
送電装置から無線で受電する受電手段と、
前記送電装置と通信を行う通信手段と、を有する受電装置の制御方法であって、
前記通信手段を用いて前記送電装置から取得される異物存在情報に基づいて、前記送電装置の送電可能範囲に異物が存在する第1の状態、前記送電可能範囲に異物が存在する可能性が有る第2の状態、前記送電可能範囲に異物が存在しない第3の状態、の少なくとも3つの状態のうちのいずれであるかを判定する判定工程と、
前記判定工程により前記第1の状態であると判定された場合は第1の通知を行い、前記第2の状態であると判定された場合は前記第1の通知と異なる第2の通知を行う通知工程と、を有し
、
前記第2の通知を行った後、所定時間以内に異物が存在していないことを確認したことを示すユーザ操作が行われなかった場合に、無線による送電を停止する要求が、前記通信手段から前記送電装置に送信される、ことを特徴とする制御方法。
【請求項13】
送電装置から無線で受電する受電手段と、
前記送電装置と通信を行う通信手段と、を有する受電装置の制御方法であって、
前記通信手段を用いて前記送電装置から取得される異物存在情報に基づいて、前記送電装置の送電可能範囲に異物が存在する第1の状態、前記送電可能範囲に異物が存在する可能性が有る第2の状態、前記送電可能範囲に異物が存在しない第3の状態、の少なくとも3つの状態のうちのいずれであるかを判定する判定工程と、
前記判定工程により前記第1の状態であると判定された場合は第1の通知を行い、前記第2の状態であると判定された場合は前記第1の通知と異なる第2の通知を行う通知工程と、を有し、
前記第2の通知を行った後、所定時間以内に異物が存在していないことを確認したことを示すユーザ操作が行われた場合に、無線による送電を開始する要求が、前記通信手段から前記送電装置に送信される、ことを特徴とする制御方法。
【請求項14】
送電装置から無線で受電する受電手段と、
前記送電装置と通信を行う通信手段と、を有する受電装置の制御方法であって、
前記通信手段を用いて前記送電装置から取得される異物存在情報に基づいて、前記送電装置の送電可能範囲に異物が存在する第1の状態、前記送電可能範囲に異物が存在する可能性が有る第2の状態、前記送電可能範囲に異物が存在しない第3の状態、の少なくとも3つの状態のうちのいずれであるかを判定する判定工程と、
前記判定工程により前記第1の状態であると判定された場合は第1の通知を行い、前記第2の状態であると判定された場合は前記第1の通知と異なる第2の通知を行う通知工程と、
前記判定工程により前記第2の状態であると判定された場合に、無線による送電を停止する要求を、前記通信手段を用いて前記送電装置に送信する送電制御工程と、を有することを特徴とする制御方法。
【請求項15】
コンピュータを、請求項1乃至
11のいずれか1項に記載の受電装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受電装置、送電装置、およびそれらの制御方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線充電システム等の無線電力伝送システムの技術開発が広く行われている。無線電力伝送システムでは、送電装置と受電装置の間に異物が入った場合に、これを検出して送電を制限することが必要となる。無線充電の標準化団体Wireless Power Consortium(WPC)が策定する規格では、送電電力と受電電力の差である電力損失や、送電コイルにおける共振のQ値に基づいて、異物の有無を検出することが規定されている。異物の有無は、電力損失やQ値を、閾値と比較することにより行われる。
【0003】
特許文献1には、WPC規格による送電装置と受電装置の間の温度に基づいて異物の有無を検出し、異物有りと判定された場合にユーザに音声または表示で通知するとともに送電を制限することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、異物の存在を、有るか無いかの2値で検出することが困難な場合がある。例えば電力損失が、異物の有無を検出するための閾値に近い値となった場合、電力損失の測定誤差などにより、異物が有るか無いかを誤って判断してしまう可能性がある。電力損失以外の値、例えばQ値や温度に基づいて異物の有無を検出する場合にも同様の課題がある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、異物の有無に関して、ユーザに適切に通知するための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様による受電装置は、
送電装置から無線で受電する受電手段と、
前記送電装置と通信を行う通信手段と、
前記通信手段を用いて前記送電装置から取得される異物存在情報に基づいて、前記送電装置の送電可能範囲に異物が存在する第1の状態、前記送電可能範囲に異物が存在する可能性が有る第2の状態、前記送電可能範囲に異物が存在しない第3の状態、の少なくとも3つの状態のうちのいずれであるかを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記第1の状態であると判定された場合は第1の通知を行い、前記第2の状態であると判定された場合は前記第1の通知と異なる第2の通知を行う通知手段と、を有し、
前記第2の通知を行った後、所定時間以内に異物が存在していないことを確認したことを示すユーザ操作が行われなかった場合に、無線による送電を停止する要求が、前記通信手段から前記送電装置に送信される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、異物の有無に関して、ユーザに適切に通知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態による無線充電システムの構成例を示す図。
【
図2】第1実施形態に係る受電装置の構成例を示す図。
【
図3】第1実施形態に係る送電装置の構成例を示す図。
【
図4】第1実施形態に係る受電装置の処理例を示すフローチャート。
【
図5】第1実施形態に係る送電装置の処理例を示すフローチャート。
【
図6】第1実施形態に係る受電装置が行うユーザへの通知の例を示す図。
【
図7】(a)第1実施形態に係る送電装置が生成する異物存在情報を説明する図、(b)第2実施形態に係る送電装置が生成する異物存在情報を説明する図。
【
図8】(あ)、(b)は、第2実施形態に係る受電装置の動作を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
<第1実施形態>
(1)システムの構成
図1に、第1実施形態に係る無線充電システム(無線電力伝送システム)の構成例を示す。本システムは、受電装置101と送電装置102を含んで構成される。以下では、受電装置をRXと呼び、送電装置をTXと呼ぶ場合がある。TX102は、充電台103に載置されたRX101に対して無線で送電する電子機器である。RX101は、TX102から無線により送られる電力を受けて、内蔵バッテリを充電する電子機器である。以下では、RX101が充電台103に載置された場合を例にして説明を行う。
【0012】
なお、RX101とTX102は無線充電以外のアプリケーションを実行する機能を有しうる。RX101の一例はスマートフォンであり、TX102の一例はそのスマートフォンを充電するためのアクセサリ機器である。RX101及びTX102は、ハードディスク装置やメモリ装置などの記憶装置であってもよいし、パーソナルコンピュータ(PC)などの情報処理装置であってもよい。また、RX101及びTX102は、例えば、撮像装置(カメラやビデオカメラ等)やスキャナ等の画像入力装置であってもよいし、プリンタやコピー機、プロジェクタ等の画像出力装置であってもよい。また、TX102がスマートフォンであってもよい。この場合、RX101は、別のスマートフォンでもよいし、無線イヤホンであってもよい。また、RX101は、自動車であってもよい。また、TX102は、自動車内のコンソール等に設置される充電器であってもよい。
【0013】
また、本実施形態では、1つのRX101及びTX102が示されているが、複数のRX101が、1つのTX102又はそれぞれ別個のTX102から送電される構成においても適用することができる。
【0014】
本システムは、WPC規格に基づいて、無線充電のための電磁誘導方式を用いた無線電力伝送を行う。すなわち、RX101とTX102は、RX101の受電コイルとTX102の送電コイルとの間で、WPC規格に基づく無線充電のための無線電力伝送を行う。なお、本システムに適用される無線電力伝送方式(無線電力伝送方法)は、WPC規格で規定された方式に限られず、他の電磁誘導方式、磁界共鳴方式、電界共鳴方式、マイクロ波方式、レーザー等を利用した方式であってもよい。また、本実施形態では、無線電力伝送が無線充電に用いられるものとするが、無線充電以外の用途で無線電力伝送が行われてもよい。
【0015】
本実施形態に係るRX101とTX102は、WPC規格に基づく送受電制御のための通信を行う。WPC規格では、電力伝送が実行されるPower Transferフェーズと実際の電力伝送が行われる前のフェーズとを含んだ、複数のフェーズが規定され、各フェーズにおいて必要な送受電制御のための通信が行われる。電力伝送前のフェーズは、Selectionフェーズ、Pingフェーズ、Identification and Configurationフェーズを含む。その他のフェーズを含んでも良い。なお、以下では、Identification and ConfigurationフェーズをI&Cフェーズと呼ぶ。
【0016】
Selectionフェーズでは、TX102が、Analog Pingを間欠的に送信し、物体が充電台103に載置されたこと(例えば充電台103にRX101や導体片等が載置されたこと)を検出する。TX102は、Analog Pingを送電した時の送電コイルの電圧値と電流値の少なくともいずれか一方を検出し、電圧値がある閾値を下回る場合又は電流値がある閾値を超える場合に物体が存在すると判断し、Pingフェーズに遷移する。
【0017】
Pingフェーズでは、TX102が、Analog Pingより大きい電力が大きいDigital Pingを送信する。Digital Pingの大きさは、充電台103の上に載置されたRX101の制御部が起動するのに十分な電力である。RX101は、受電電圧の大きさをTX102へ通知する。このように、TX102は、そのDigital Pingを受信したRX101からの応答を受信することにより、Selectionフェーズにおいて検出された物体がRX101であることを認識する。TX102は、受電電圧値の通知を受けると、I&Cフェーズに遷移する。
【0018】
I&Cフェーズでは、TX102は、RX101を識別し、RX101から機器構成情報(能力情報)を取得する。この情報には、RX101の機種や個体を表す番号、RX101が必要とする最大電力、RX101がサポートする動作モードなどの情報が含まれる。動作モードの例は、WPC規格のExtended Power Profile(以下、EPP)をサポートするか、の情報である。TX102は、機器構成情報(能力情報)に対してアクノリッジ(ACK)で応答することで、I&Cフェーズが終了してPower Transferフェーズに遷移する。なお、RX101とTX102がEPPをサポートする場合はWPC規格が定義する別の動作フェーズに遷移してさらに追加の通信や動作を行っても良い。
【0019】
Power Transferフェーズでは、送電の開始、継続、及び異物検出や満充電により送電を停止するための制御を行う。なお、以下の説明において、送電を停止する、と説明した場合、送電を完全には停止せずに、小さな電力での送電に制限することも含む。
【0020】
TX102とRX101は、これらの送受電制御のための通信を、WPC規格に基づいて無線電力伝送と同じアンテナ(コイル)を用いて送電電力に信号を重畳する通信により行う。なお、TX102とRX101との間で、送電電力に信号を重畳する通信が可能な範囲は、TX102の送電可能範囲とほぼ同様である。
【0021】
TX102とRX101は、これらの送受電制御のための通信を、WPC規格に基づいて無線電力伝送と同じアンテナ(コイル)を用いて送電電力に信号を重畳する通信により行う。また、TX102とRX101は、無線電力伝送と異なるアンテナ(コイル)を用いて、送受電制御のための通信を行ってもよい。無線電力伝送と異なるアンテナ(コイル)を用いる通信の一例としては、Bluetooth(登録商標) Low Energy規格に準拠する通信方式が挙げられる。また、無線電力伝送と異なるアンテナ(コイル)を用いる通信の他の例として、IEEE802.11規格シリーズの無線LAN(例えばWi-Fi(登録商標))、ZigBee(登録商標)が挙げられる。さらには、無線電力伝送と異なるアンテナ(コイル)を用いる通信は、NFC(Near Field Communication)、RFID(Radio Frequency Identifier)等の他の通信方式によって行われてもよい。無線電力伝送と異なるアンテナ(コイル)を用いる通信は、無線電力伝送で用いられる周波数とは異なる周波数により行われるようにしてもよい。
【0022】
(2)装置構成
続いて、第1実施形態に係る受電装置101(RX101)及び送電装置102(TX102)の構成について説明する。なお、以下で説明する構成は一例に過ぎず、説明される構成の一部(場合によっては全部が)他の同様の機能を果たす他の構成と置き換えられ又は省略されてもよく、さらなる構成が説明される構成に追加されてもよい。さらに、以下の説明で示される1つのブロックが複数のブロックに分割されてもよいし、複数のブロックが1つのブロックに統合されてもよい。
【0023】
(2.1)受電装置の構成
図2は、第1実施形態に係るRX101の構成例を示す図である。RX101は、制御部201、バッテリ202、受電部203、検出部204、受電コイル205、通信部206、通知部207、操作部208、メモリ209、タイマ210、充電部211、異物存在情報取得部212、を有する。
【0024】
制御部201は、例えばメモリ209に記憶されている制御プログラムを実行することにより、RX101の全体を制御する。すなわち、制御部201は、
図2で示す各機能部を制御する。また、制御部201は、RX101における受電制御に関する制御を行う。さらに、制御部201は、無線電力伝送以外のアプリケーションを実行するための制御を行ってもよい。制御部201は、例えばCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等の1つ以上のプロセッサを含んで構成される。なお、制御部201は、特定用途向け集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理に専用のハードウェアで構成されてもよい。また、制御部201は、所定の処理を実行するようにコンパイルされたFPGA(Field Programmable Gate Array)等のアレイ回路を含んで構成されてもよい。制御部201は、各種処理を実行中に記憶しておくべき情報をメモリ209に記憶させる。また、制御部201は、タイマ210を用いて時間を計測しうる。
【0025】
バッテリ202は、RX101全体に対して、制御部201によるRX101の制御や、受電と通信に必要な電力を供給する。また、バッテリ202は、受電コイル205を介して受信された電力を蓄電する。
【0026】
受電コイル205において、TX102の送電コイルから放射された電磁波により誘導起電力が発生し、受電部203は、受電コイル205において発生した電力を取得する。受電部203は、受電コイル205において電磁誘導により生じた交流電力を取得する。そして、受電部203は、交流電力を直流又は所定周波数の交流電力に変換して、バッテリ202を充電するための処理を行う充電部211に電力を出力する。すなわち、受電部203は、RX101における負荷に対して電力を供給する。さらに、受電部203は、現在の受電電力値を制御部201に通知することで、制御部201において、任意のタイミングで、その瞬間の受電電力値を知ることができるようにする。なお、受電電力の測定と制御部201への通知は、受電部203以外で行うように構成してもよい。
【0027】
検出部204は、WPC規格に基づいて、RX101が充電台103に載置されていることを検出する。検出部204は、例えば、受電部203が受電コイル205を介してWPC規格のDigital Pingを受電した時の受電コイル205の電圧値と電流値のうち少なくともいずれか一方を検出する。検出部204は、例えば、電圧値が所定の電圧閾値を下回る場合又は電流値が所定の電流閾値を超える場合に、RX101が充電台103に載置されていると判定することができる。
【0028】
通信部206は、TX102との間で、上述のようなWPC規格に基づく制御通信を行う。通信部206は、受電コイル205から入力された電磁波を復調してTX102から送信された情報を取得し、その電磁波を負荷変調することによってTX102へ送信すべき情報を電磁波に重畳することにより、TX102との間で通信を行う。すなわち、通信部206で行う通信は、TX102の送電コイルから送信される電磁波に重畳されて行われる。なお、通信部206は、上述したように、無線電力伝送と異なるアンテナを用いて、送受電制御のための通信を行ってもよい。
【0029】
通知部207は、視覚的、聴覚的、触覚的等の任意の手法で、ユーザに対して情報を通知する。通知部207は、例えば、RX101の充電状態や、
図1のようなTX102及びRX101を含む無線電力伝送システムの電力伝送に関する状態を、ユーザに通知する。通知部207は、例えば、液晶ディスプレイやLED、スピーカ、振動発生回路、その他の通知デバイスを含んで構成される。
【0030】
操作部208は、ユーザからのRX101に対する操作を受け付ける受付機能を有する。操作部208は、例えば、ボタンやキーボード、マイク等の音声入力デバイス、加速度センサやジャイロセンサ等の動き検出デバイス、又はその他の入力デバイスを含んで構成される。なお、タッチパネルのように、通知部207と操作部208とが一体化されたデバイスが用いられてもよい。
【0031】
メモリ209は、上述のように、識別情報や機器構成情報などの各種情報や制御プログラムなどを記憶する。また、メモリ209は、制御部201が各種処理を実行中に、必要に応じて情報を記憶させる作業メモリとして機能する。なお、メモリ209は、制御部201と異なる機能部によって得られた情報を記憶してもよい。
【0032】
タイマ210は、例えば起動された時刻からの経過時間を測定するカウントアップタイマや、設定された時間からカウントダウンするカウントダウンタイマ等によって、計時を行う。
【0033】
充電部211は、受電部203から供給される電力により、バッテリ202に充電する。また充電部211は、制御部201の制御に基づいて、バッテリ202への充電を開始、または停止し、さらにバッテリ202への充電に使用する電力を、バッテリ202の充電状態に基づいて調整する。充電部211で使用する電力が変化すると、それに応じて受電部203から供給される電力、すなわちRX101における受電電力も変化する。充電部211は、RX101における負荷である。
【0034】
異物存在情報取得部212は、通信部206を用いてTX102から異物存在情報を取得する。異物存在情報は、異物が存在する、異物が存在する可能性がある、異物が存在しない、の3段階で表される。なお、異物存在情報は3段階よりも多い段階で表されても良い。異物存在情報取得部212は、制御部201上で動作するプログラムであり、その実体は例えばメモリ209に格納され、実行する際に制御部201によって読み出される。なお、異物存在情報取得部212は、制御部201とは別のCPUで動作するように構成してもよい。
【0035】
(2.2)送電装置の構成
図3は本実施形態に係るTX102の構成例を示す図である。TX102は、一例において、制御部301、電源部302、送電部303、検出部304、送電コイル305、通信部306、通知部307、操作部308、メモリ309、タイマ310、及び、異物存在情報送信部311を有する。
【0036】
制御部301は、例えばメモリ309に記憶されている制御プログラムを実行することにより、TX102の全体を制御する。すなわち、制御部301は、
図3で示す各機能部を制御する。また、制御部301は、TX102における送電制御に関する制御を行う。さらに、制御部301は、無線電力伝送以外のアプリケーションを実行するための制御を行ってもよい。制御部301は、例えばCPUやMPU等の1つ以上のプロセッサを含んで構成される。なお、制御部301は、特定用途向け集積回路(ASIC)等の特定の処理に専用のハードウェアや、所定の処理を実行するようにコンパイルされたFPGA等のアレイ回路を含んで構成されてもよい。制御部301は、各種処理を実行中に記憶しておくべき情報をメモリ309に記憶させる。また、制御部301は、タイマ310を用いて時間を計測しうる。
【0037】
電源部302は、TX102全体に対して、制御部301によるTX102の制御や、送電と通信に必要な電力を供給する。電源部302は、例えば、商用電源またはバッテリである。バッテリには、商用電源から供給される電力が蓄電される。
【0038】
送電部303は、電源部302から入力される直流又は交流電力を、無線電力伝送に用いる周波数帯の交流周波数電力に変換し、その交流周波数電力を送電コイル305へ入力することによって、RX101に受電させるための電磁波を発生させる。なお、送電部303によって生成される交流電力の周波数は、例えば数百kHz(例えば、110kHz~205kHz)程度である。送電部303は、制御部301の指示に基づいて、RX101に送電を行うための電磁波を送電コイル305から出力させるように、交流周波数電力を送電コイル305へ入力する。また、送電部303は、送電コイル305に入力する電圧(送電電圧)又は電流(送電電流)、又はその両方を調節することにより、出力させる電磁波の強度を制御する。送電電圧又は送電電流を大きくすると電磁波の強度が強くなり、送電電圧又は送電電流を小さくすると電磁波の強度が弱くなる。また、送電部303は、制御部301の指示に基づいて、送電コイル305からの送電が開始又は停止されるように、交流周波数電力の出力制御を行う。さらに、送電部303は、現在の送電電力値を制御部301に通知することで、制御部301において、任意のタイミングで、その瞬間の送電電力値を知ることができるようにする。なお、送電電力の測定と制御部301への通知は、送電部303以外で行うように構成してもよい。
【0039】
検出部304は、WPC規格に基づいて、充電台103に物体が載置されているかを検出する。検出部304は、具体的には、充電台103のInterface Surfaceに物体が載置されたか否かを検出する。検出部304は、例えば、送電部303が、送電コイル305を介してWPC規格のAnalog Pingを送電した時の送電コイル305の電圧値と電流値の少なくとも一方を検出する。なお、検出部304は、インピーダンスの変化を検出してもよい。そして、検出部304は、電圧が所定電圧値を下回る場合又は電流値が所定電流値を超える場合に、充電台103に物体が載置されていると判定しうる。なお、この物体が受電装置であるかその他の異物であるかは、続いて通信部306によって通信で送信されるDigital Pingに対して所定の応答の有無により判定される。すなわち、TX102が所定の応答を受信した場合には、その物体が受電装置であると判定され、そうでなければ、その物体が受電装置ではない物体であると判定される。
【0040】
通信部306は、RX101との間で、上述のようなWPC規格に基づく制御通信を行う。通信部306は、送電コイル305から出力される電磁波を変調し、RX101へ情報を伝送して、通信を行う。また、通信部306は、送電コイル305から出力されてRX101において変調された電磁波を復調してRX101が送信した情報を取得する。すなわち、通信部306で行う通信は、送電コイル305から送信される電磁波に重畳されて行われる。なお、通信部306は、上述したように、無線電力伝送と異なるアンテナを用いて、送受電制御のための通信を行ってもよい。
【0041】
通知部307は、視覚的、聴覚的、触覚的等の任意の手法で、ユーザに対して情報を通知する。通知部307は、例えば、TX102の充電状態や、
図1のようなTX102とRX101とを含む無線電力伝送システムの電力伝送に関する状態を示す情報を、ユーザに通知する。通知部307は、例えば、液晶ディスプレイやLED、スピーカ、振動発生回路、その他の通知デバイスを含んで構成される。
【0042】
操作部308は、ユーザからのTX102に対する操作を受け付ける受付機能を有する。操作部308は、例えば、ボタンやキーボード、マイク等の音声入力デバイス、加速度センサやジャイロセンサ等の動き検出デバイス、又はその他の入力デバイスを含んで構成される。なお、タッチパネルのように、通知部307と操作部308とが一体化されたデバイスが用いられてもよい。
【0043】
メモリ309は、各種情報や制御プログラムなどを記憶する。また、メモリ309は、制御部301が各種処理を実行中に、必要に応じて情報を記憶させる作業メモリとして機能する。なお、メモリ309は、制御部301と異なる機能部によって得られた情報を記憶してもよい。
【0044】
タイマ310は、例えば起動された時刻からの経過時間を測定するカウントアップタイマや、設定された時間からカウントダウンするカウントダウンタイマ等によって、計時を行う。
【0045】
異物存在情報送信部311は、異物存在情報を生成したうえで、通信部306を用いてRX101に送信する。異物存在情報の生成方法については後述する。異物存在情報送信部311は、制御部301上で動作するプログラムであり、その実体は例えばメモリ309に格納され、実行する際に制御部301によって読み出される。なお、異物存在情報送信部311は、制御部301とは別のCPUで動作するように構成してもよい。
【0046】
(3)処理の流れ
続いて、RX101及びTX102が実行する処理の流れの例について説明する。
【0047】
(3.1)受電装置における処理
図4は、RX101が実行する処理の流れの例を示すフローチャートである。本処理は、例えばRX101の制御部201がメモリ209から読み出したプログラムを実行することによって実現されうる。本処理には、異物存在情報取得部212における処理も含まれる。なお、以下に説明する本処理の手順の少なくとも一部がハードウェアによって実現されてもよい。この場合のハードウェアは、例えば、所定のコンパイラを用いて、各処理ステップを実現するためのプログラムからFPGA等のゲートアレイ回路を用いた専用回路を自動的に生成することによって実現されうる。また、本処理は、RX101の電源がオンとされたことに応じて、バッテリ202若しくはTX102からの給電によりRX101が起動したことに応じて、又はRX101のユーザが無線充電アプリケーションの開始指示を入力したことに応じて、実行されうる。また、他の契機によって本処理が開始されてもよい。
【0048】
RX101は、送受電に関する処理の開始後、WPC規格のSelectionフェーズとPingフェーズとして規定される処理を実行し、自装置がTX102に載置されるのを待つ(S401)。そして、RX101は、例えば、TX102からのDigital Pingを検出することによって、TX102の充電台103に載置されたことを検出する。そして、RX101は、Digital Pingを検出すると、Signal Strength Packet(受電電圧値)をTX102に送信する。
【0049】
RX101は、自装置がTX102の充電台103に載置されたことを検出すると、通信部206により、WPC規格のI&Cフェーズとして規定される処理を実行して、TX102へ識別情報と機器構成情報(能力情報)を送信する(S402)。なお、RX101は、WPC規格のI&Cフェーズの通信以外の方法で、RX101の識別情報と機器構成情報(能力情報)をTX102に通知してもよい。
【0050】
続いてRX101は、TX102から充電のための受電を開始し、充電部211でバッテリ202への充電を開始する(S403)。S403以降はWPC規格のPower Transfer Phaseで規定される制御により、満充電または異物を検知するまで受電する制御を行う。本実施形態では、満充電または異物の検出による送受電制御を説明するが、実施形態に示される制御以外の制御が行われても良い。また、WPC規格以外の方法で送受電制御が行われてもよい。
【0051】
RX101は、S403で充電のための受電を開始した後、受電部203で現在の受電電力値を検出し、TX102に受電電力情報として送信し(S404)、TX102から異物存在情報を取得する(S405)。例えば、受電電力情報をWPC規格のReceived Power Packetにて送信し、その応答を受信することにより異物存在情報を取得する。この場合、TX102は、Received Power Packetの応答に異物存在情報を含めて送信する。
【0052】
ここで、異物存在情報は、1:異物は存在しない、2:異物が存在する可能性有り、3:異物が存在する、のいずれかの値である。なお、前述のとおり、1~3の数字と意味は他の組み合わせでもよい。異物存在情報に基づいて、以下の分岐を行う(S406)。
【0053】
まず、S406において、異物存在情報=1:異物が存在しない、の場合について説明する。この場合、RX101は充電を継続し(S407)、RX101は通知部207を用いてユーザに充電中であることを通知する(S408)。
【0054】
S408において通知部207を用いて行われる通知の例を
図6(A)に示す。
図6(A)において、RX101としての電子機器は、充電中か否かを表すLED701、各種の表示を行う液晶ディスプレイ702を有する。LED701と液晶ディスプレイ702はユーザに通知を行う通知部を構成する。RX101は、LED701を点灯させて充電中であることを示す。このとき、図示の例では、液晶ディスプレイ702には何も表示されない。なお、液晶ディスプレイに充電の進捗としてバッテリ202の残量をパーセントで表示するようにしても良いし、他の表示を行うようにしても良い。また、LED701の点灯及び液晶ディスプレイ702の表示に加えてあるいはこれらに代えて音声や振動による通知が行われても良い。ここで、S407で充電を継続する長さは、メモリ209に予め保持しておいてタイマ210で計測した所定時間としてもよいし、TX102から所定のパケットを受信するまでとしてもよい。
【0055】
RX101は、充電とその通知を行った後(S407、S408)、バッテリ202が満充電となったかを確認し、満充電でなければ(S409でNO)、S404に戻って受電電力情報を送信する。満充電であれば(S409でYES)、充電を停止し(S412)、TX102に送電停止要求を送信したうえで(S413)、通知部207を用いてユーザに充電を停止していることを通知し(S414)、処理を終了する。なおRX101は、S414で処理を終了した後、S401に戻って再びTX102に載置されるのを待つようにしても良い。
【0056】
S414において充電を停止していることを通知する通知例を
図6(C)に示す。RX101は、充電中か否かを表すLED701を消灯させる。このとき、図示の例では、液晶ディスプレイ702には何も表示されない。なお、液晶ディスプレイ702に、充電を停止した旨の文字を表示してもよいし、他の表示を行っても良い。また、LED701および液晶ディスプレイ702による通知に加えてあるいはこれらに代えて音声や振動による通知が行われても良い。
【0057】
次に、S406において、異物存在情報=2:異物が存在する可能性有り、の場合を説明する。この場合、RX101は、通知部207を用いて、ユーザに異物がないことを確認するように通知する(S410)。この通知の後、所定時間以内に操作部208においてユーザによる確認操作(異物が存在しないことの確認操作)が完了した場合(S411でYES)、処理はS408に進み、RX101は充電を継続する。そうでない場合(S411でNO)、処理はS412に進み、RX101は充電を停止する。S408以降の処理、およびS412以降の処理は前述のとおりである。
【0058】
ここで、S410およびS411における通知部207と操作部208の例を
図6(B)に示す。S410の時点ではまだ充電を継続しているため、充電中か否かを表すLED701は点灯状態とする。また液晶ディスプレイ702には、ユーザに異物がないことを確認するよう促すメッセージと、確認ボタン703を表示する。操作部208は液晶ディスプレイ702と一体となったタッチパネルであり、確認ボタン703がタップされたことを検出して、ユーザによって異物がないことが確認された、という操作情報を取得する。なお、
図6(B)の通知においては、異物があれば除去してから確認ボタン703を押すよう促すメッセージを加えても良い。
【0059】
次に、S406において、異物存在情報=3:異物が存在する、の場合について説明する。この場合、RX101は、充電を停止し(S412)、TX102に送電停止要求を送信したうえで(S413)、通知部207を用いてユーザに充電を停止していることを通知し(S414)、処理を終了する。なお、S406からS412に進む前に、通知部207において、異物が存在する旨の通知を行っても良い。この通知は
図6(A)(B)(C)のいずれとも異なる。
【0060】
以上に述べたS404~S414の説明をまとめると、TX102から取得した異物存在情報が、異物が存在しないことを示している場合には、充電を継続するとともにユーザに
図6(A)の通知を行う(S407、S408)。異物存在情報が、異物が存在する可能性が有ることを示している場合には、ユーザに
図6(B)の通知を行うとともに、ユーザによる確認操作の結果に基づいて充電を継続または停止する(S410、S411、S407、S412)。異物存在情報が、異物が存在することを示している場合には、充電を停止するとともにユーザに
図6(C)の通知を行う(S412~S414)。満充電になった場合にも充電を停止する(S412~S414)。
【0061】
(3.2)送電装置における処理
続いて、TX102が実行する処理の流れの例について、
図5を用いて説明する。本処理は、例えばTX102の制御部301がメモリ309から読み出したプログラムを実行することによって、実現されうる。なお、以下の手順の少なくとも一部がハードウェアによって実現されてもよい。この場合のハードウェアは、例えば、所定のコンパイラを用いて、各処理ステップを実現するためのプログラムからFPGA等のゲートアレイ回路を用いた専用回路を自動的に生成することによって実現されうる。また、本処理は、TX102の電源がオンとされたことに応じて、TX102のユーザが無線充電アプリケーションの開始指示を入力したことに応じて、又は、TX102が商用電源に接続され電力供給を受けていることに応じて、実行されうる。また、他の契機によって本処理が開始されてもよい。
【0062】
図5において、TX102は、まず、WPC規格のSelectionフェーズとPingフェーズとして規定されている処理を実行し、RX101の載置を待ち受ける(S501)。具体的には、TX102は、WPC規格のAnalog Pingを繰り返し、間欠的に送信し、充電台103に載置される物体の有無を検出する。そして、TX102は、充電台103に物体が載置されたことを検出した場合、Digital Pingを送信する。そして、そのDigital Pingに対する所定の応答(Signal Strength Packet)があった場合に、検出された物体がRX101であり、RX101が充電台103に載置されたと判定する。
【0063】
TX102は、RX101の載置を検出すると、通信部306により、前述のI&Cフェーズの通信を実行し、そのRX101から識別情報と機器構成情報(能力情報)を取得する(S502)。なお、TX102は、WPC規格のI&Cフェーズの通信以外の方法で、RX101の識別情報と機器構成情報(能力情報)をRX101から取得してもよい。
【0064】
続いてTX102は、RX101へ充電のための送電を開始する(S503)。S503以降はWPC規格のPower Transfer Phaseで規定される制御により、満充電または異物を検知するまで送電する制御を行う。なお、本実施形態で説明される制御以外の制御が行われても良い。また、WPC規格以外の方法で制御されてもよい。
【0065】
TX102は、S503で充電のための送電を開始した後、RX101から現在の受電電力情報を受信する(S504)。さらに、この受電電力情報に含まれる現在の受電電力値と、送電部303で検出した自装置の現在の送電電力値との差から、現在の電力損失を求め、電力損失に基づいて3段階の異物存在情報を生成する(S505)。TX102は、上記のように生成した異物存在情報をRX101に送信する(S506)。なお、S504では、例えば、WPC規格のReceived Power Packetを受信することで受電電力情報を得ることができる。S506では、TX102は、例えば、このReceived Power Packetに対する応答に異物存在情報を含めて送信する。
【0066】
電力損失から異物存在情報を生成する方法を、
図7(a)を用いて説明する。TX102の送電コイル305とRX101の受電コイル205の間に異物が存在すると、異物により電力が消費され、電力損失が大きくなる。そこで、電力損失が十分に大きな値、例えば750mW以上の場合は、異物存在情報=3(TX102の送電可能範囲に異物が存在する状態(第1の状態)であることを示す)とする。また、電力損失が十分に小さな値、例えば250mW以下の場合は、異物存在情報=1(送電可能範囲に異物が存在しない状態(第3の状態)であることを示す)、とする。また、250mWから750mWの間の場合は、異物存在情報=2(送電可能範囲に異物が存在する可能性が有る状態(第2の状態)であることを示す)、とする。これは、電力損失の測定誤差などにより、異物の有無、すなわち、異物が存在するかしないかを確定することが困難であることを意味する。
【0067】
なお、ここでは異物の存在状態を表す異物存在情報の値を、意味に応じて1、2、または3としたが、この割り当てについても3段階の判別ができれば他の値を割り当ててもよい。また、
図7(a)で説明した電力損失の閾値250mWと750mWは一例であり、他の閾値が用いられても良い。これらの閾値はTX102のメモリ209に予め保持していてもよいし、送電電力の大きさに応じて動的に閾値を設定しても良い。送電電力の大きさに応じて閾値を設定する場合、WPC規格で定義されるCalibrationフェーズの処理の結果を用いても良い。また、異物存在情報として、電力損失の値を直接用いても良い。この場合、RX101側において250mWや750mWといった閾値を保持して、3段階の判別を行ってもよい。この場合、S505と同様の処理により、RX101が異物存在情報(電力損失の値)に基づいて、異物の存在状態が上述した第1の状態~第3の状態のいずれであるかを判断するようにしてもよい。
【0068】
また、異物存在情報は、異物の有無によって変動する値であれば、電力損失以外の値に基づいて生成しても良い。例えば、WPC規格で定義される、送電コイル305における共振のQ値に基づいて生成しても良い。なお、異物存在情報をQ値に基づいて生成する場合は、RX101は、WPC規格のFOD Status Packetに対する応答パケットで異物存在情報を取得するようにしても良い。また、異物存在情報を、TX102とRX101の間の温度に基づいて生成しても良い。さらに、異物の有無によって変動する値を一つ以上組み合わせて0~100%の異物存在確率を求め、これを異物存在情報としても良い。この場合、例えば80%以上なら異物が存在する、20%以下なら異物が存在しない、20%と80%の間なら異物が存在する可能性が有る、と定義すると、3段階に分けることができる。また、異物存在情報として、上記の電力損失の値、Q値、温度の少なくとも一つ以上が直接用いられても良い。
【0069】
図5に戻り、TX102は、上記のように生成した異物存在情報をRX101に送信(S506)した後、RX101から送電停止要求を受信したか否かを判断する(S507)。RX101から送電停止要求を受信した場合(S507でYES)、送電を停止して本処理を終了する(S508)。そうでなければ(S507でNO)、送電を継続したままS504に戻る。なおTX102は、S505で異物存在情報=3:異物が存在する、となった場合には、RX101から送電停止要求を受信するのを待たずに、自発的に送電を停止するように制御してもよい。また、TX102は、S508で処理を終了した後、S501に戻って再びRX101が載置されるのを待つようにしても良い。
【0070】
(3.3)システムの動作
図4、
図5を用いて説明したRX101とTX102を含むシステムの動作を、例を挙げて説明する。
【0071】
まず、異物が存在せず、TX102が検出する電力損失が250mW以下となっている場合に説明する。この場合、TX102のS505、S506において異物存在情報=1:異物は存在しない、という情報が生成、送信される。するとRX101のS406の分岐によりS407に処理が進み、充電が行われるとともに通知部207は充電中を示す
図6(A)となる。すなわち、ユーザは異物の確認や操作を行わなくても、自動的に充電が行われる。
【0072】
次に、異物が充電台103に部分的にかかる等して存在し、TX102が検出する電力損失が250mWと750Wの間となった場合について説明する。この場合、TX102のS505、S506において異物存在情報=2:異物が存在する可能性が有る、という情報が生成、送信される。するとRX101のS406の分岐によりS411に処理が進み、通知部207が
図6(B)を通知することにより、ユーザの確認結果に基づいて充電の継続または停止が行われる。
【0073】
次に、異物は存在しないが、回路の損失や誤差により、TX102が検出する電力損失が250mWと750Wの間となった場合について説明する。この場合、TX102のS505、S506において異物存在情報=2:異物が存在する可能性が有る、という情報が生成、送信される。するとRX101のS406の分岐によりS411に処理が進み、通知部207が
図6(B)を通知することにより、ユーザの確認結果に基づいて充電の継続または停止が行われる。
【0074】
次に、異物が存在し、TX102が検出する電力損失が750mW以上となった場合について説明する。この場合、TX102のS505、S506において異物存在情報=3:異物が存在する、という情報が生成、送信される。するとRX101のS406の分岐により、S412に処理が進み、充電が停止するともに通知部207は充電停止を示す
図6(C)となる。すなわち、ユーザは異物の確認や操作を行わなくても、自動的に充電が停止する。
【0075】
以上のことから、第1実施形態の受電装置によれば、異物の存在を、有るか無いかの2値で判断することが困難な場合に、ユーザに対して異物がないことを確認するよう通知することができる。これにより、より適切にユーザ操作を促すことができる。
また、第1実施形態において、異物が存在しない場合にも、受電装置がその旨の通知を行うようにしたが、その通知を行う省略することもできる。つまり、ユーザにとって、異物が存在しない場合には、異物を除去する処理などを行う必要がないため、通知を省略することで、電力の消費が抑制され、充電時間が短縮される効果が得られる。
【0076】
<第2実施形態>
第2実施形態に係る無線充電システム(無線電力伝送システム)の構成、RX101の構成、TX102の構成は第1実施形態(
図1~
図3)と同様である。第1実施形態と第2実施形態とでは、異物存在情報により「異物が存在する可能性有り」と判定された場合のRX101における処理が異なる。
【0077】
第1実施形態においては、異物存在情報=2:異物が存在する可能性が有る、となった場合に、TX102は送電を継続し、RX101において所定時間以内にユーザによる確認が行われなかったらRX101からの要求に基づいて送電停止する、とした。すなわち、ユーザによる確認を待つ間、送電を継続するように制御していた。
【0078】
これに対して第2実施形態では、異物存在情報=2:異物が存在する可能性が有る、となった場合に、TX102は送電を停止し、RX101において所定時間以内にユーザによる確認が行われたらRX101からの要求に基づいて送電開始するように構成する。すなわち、ユーザによる確認を待つ間は、送電を停止するように制御する。このようにすることで、実際に異物が存在した場合に、ユーザによる確認を待っている間に異物に送電されることを抑止することができる。
【0079】
図8(a)は、第2実施形態のRX101による動作を説明するフローチャートである。
図8(a)は、
図4のS410~S411に置き換わる処理を示している。S406で第2の状態(異物が存在する可能性有り)と判定された場合に、RX101は、充電と受電を停止する(S901)。この処理は、S412およびS413と同様の処理である。その後、RX101は、ユーザに異物がないことを確認するように指示する(S410)。第2実施形態では、充電が停止しているため、
図6(B)においてLED701が消灯した状態となる。充電・送電を停止している旨を液晶ディスプレイ702に表示してもよい。その後、所定時間内にユーザからの確認が得られなければ(S411でNO)、処理をS414へ進める。一方、所定時間内にユーザからの確認が得られた場合(S411でYES)、RX101はTX102から受電およびバッテリ202の充電を再開し(S902)、処理をS407へ進める。
【0080】
また、異物が存在する可能性有りの状態について、異物が存在する可能性の大きい順に少なくとも第1のレベルと第2のレベルに分け、第1のレベルと判定された場合と第2のレベルと判定された場合とで処理を異ならせるようにしてもよい。
【0081】
例えば、TX102における異物存在情報を
図7(b)のように4段階で生成し、RX101では、異物が存在する可能性が低い場合には、送電を継続しつつユーザの確認を待ち、異物が存在する可能性が高い場合には、送電を停止ししてユーザの確認を待ってもよい。これにより、異物が存在する可能性が小さい場合にのみ、異物が存在しなかった場合に充電を早く完了させることを優先することができる。
【0082】
この場合の処理を
図8(b)に示す。
図8(b)は、
図4のS410~S411に置き換わる処理を示している。S406で第2の状態(異物が存在する可能性有り)と判定された場合に、RX101は、さらにその可能性のレベルが第1のレベル(異物存在情報=3)か第2のレベル(異物存在情報=2)かを判定する(S911)。第1のレベルと判定された場合、RX101は、充電と受電を停止する(S912)。この処理は、S412およびS413と同様の処理である。第2のレベルと判定された場合、RX101はS912をスキップし、受電を継続する。
【0083】
その後、RX101は、ユーザに異物がないことを確認するように指示する(S410)。第1のレベルと判定されている場合は充電が停止しているため、
図6(B)においてLED701が消灯した状態となる。このとき、充電・送電を停止している旨を液晶ディスプレイ702に表示してもよい。第2のレベルと判定されている場合は、充電が継続しているため、
図6(B)の表示状態となる。その後、所定時間内にユーザからの確認が得られなければ(S411でNO)、処理をS414へ進める。一方、所定時間内にユーザからの確認が得られた場合(S411でYES)、RX101はTX102から受電およびバッテリ202の充電を再開し(S913)、処理をS407へ進める。なお、第2のレベルと判定されている場合は、受電及び充電が継続しているので、S913はNOPとなる。
【0084】
以上のように、「異物が存在する可能性有り」の状態をさらに分けて受電/充電、および通知を制御することで、きめの細かい受電制御、ユーザ通知が可能となる。
【0085】
<その他の実施形態>
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0086】
なお、
図4、
図5、
図8のフローチャ-トで示される処理の少なくとも一部がハードウェアにより実現されてもよい。ハードウェアにより実現する場合、例えば、所定のコンパイラを用いることで、各処理を実現するためのプログラムからFPGA(Field Programmable Gate Array)上に自動的に専用回路を生成すればよい。また、FPGAと同様にして、Gate Array回路を形成し、ハードウェアとして実現するようにしてもよい。
【0087】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0088】
101:受電装置、102:送電装置、201:制御部、203:受電部、206:通信部、207:通知部、212:異物存在情報取得部、