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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】インプリント装置、および物品製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20240109BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/02 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019226804
(22)【出願日】2019-12-16
(65)【公開番号】P2021097116
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】首藤 伸一
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-144193(JP,A)
【文献】特開2009-212449(JP,A)
【文献】特開2014-223761(JP,A)
【文献】特開2018-041774(JP,A)
【文献】特開2014-195088(JP,A)
【文献】特開2013-038117(JP,A)
【文献】米国特許第08480946(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2018/0210352(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
H01L 21/46
B29C 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上にインプリント材を供給する供給工程と、前記基板の上のインプリント材と型とを接触させる接触工程と、前記インプリント材と前記型とが接触した状態で前記インプリント材を光照射によって硬化させる硬化工程と、前記硬化したインプリント材と前記型とを分離する離型工程と含み、前記基板の隣接する複数のショット領域のそれぞれに前記供給工程が行われ、前記供給工程の後、前記複数のショット領域におけるそれぞれのショット領域ごとに、前記接触工程と、前記硬化工程と、前記離型工程を含むインプリント処理が行われるインプリント装置であって、
前記硬化工程において、ショット領域上のインプリント材に対して光を照射する照射部と、
前記照射部からの光の照射領域を規定する遮光部と、有し、
前記遮光部は、第1ショット領域における該第1ショット領域と隣接する第2ショット領域側の端部のインプリント材が前記第2ショット領域に対する前記硬化工程における光照射によって補完的に硬化されるように、前記照射領域を規定
前記第1ショット領域がインプリント対象のショット領域であり、前記第2ショット領域が前記第1ショット領域よりも後にインプリント対象になるショット領域であるとき、前記遮光部は、前記第1ショット領域と隣接する既にインプリント処理が行われたショット領域における前記第1ショット領域側の端部には光が照射され、まだインプリント処理が行われていない前記第2ショット領域には光が照射されないように、前記照射領域を規定し、更に、前記遮光部は、前記第1ショット領域の中心から、前記第2ショット領域に向かう方向とは反対の方向にオフセットした位置を中心とする領域を前記照射領域として規定する、
ことを特徴とするインプリント装置。
【請求項2】
前記照射領域は、
前記インプリント材の硬化閾値を超える第1光量の光が照射される第1照射領域と、
前記第1照射領域を包囲する前記第1照射領域の外側の領域であって、前記硬化閾値を超えない第2光量の光が照射される第2照射領域と、を含み、
前記第1ショット領域における前記第2ショット領域側の前記端部は、前記第2照射領域に含まれる、
ことを特徴とする請求項に記載のインプリント装置。
【請求項3】
前記第1ショット領域における前記第2ショット領域側の前記端部のインプリント材は、前記第2光量の光が照射されることにより、硬化状態よりは低い粘度状態であるが、前記型のパターンが転写された状態を維持する粘度状態になり、該インプリント材は、離型時に生じる離型力以上の力で前記基板に密着し、離型時に前記型には付着しない、ことを特徴とする請求項に記載のインプリント装置。
【請求項4】
基板の上にインプリント材を供給する供給工程と、前記基板の上のインプリント材と型とを接触させる接触工程と、前記インプリント材と前記型とが接触した状態で前記インプリント材を光照射によって硬化させる硬化工程と、前記硬化したインプリント材と前記型とを分離する離型工程と含み、前記基板の隣接する複数のショット領域のそれぞれに前記供給工程が行われ、前記供給工程の後、前記複数のショット領域におけるそれぞれのショット領域ごとに、前記接触工程と、前記硬化工程と、前記離型工程を含むインプリント処理が行われるインプリント装置であって、
前記硬化工程において、ショット領域上のインプリント材に対して光を照射する照射部と、
前記照射部からの光の照射領域を規定する遮光部と、
前記遮光部を駆動する駆動部と、
前記駆動部を制御する制御部と、をし、
前記遮光部は、第1ショット領域における該第1ショット領域と隣接する第2ショット領域側の端部のインプリント材が前記第2ショット領域に対する前記硬化工程における光照射によって補完的に硬化されるように、前記照射領域を規定し、
前記制御部は、前記第1ショット領域に隣接するショット領域に未露光のインプリント材が存在しない場合、前記第1ショット領域の全面に前記インプリント材の硬化閾値を超える光量の光が照射されるように前記駆動部を制御する
ことを特徴とするンプリント装置。
【請求項5】
基板の上にインプリント材を供給する供給工程と、前記基板の上のインプリント材と型とを接触させる接触工程と、前記インプリント材と前記型とが接触した状態で前記インプリント材を光照射によって硬化させる硬化工程と、前記硬化したインプリント材と前記型とを分離する離型工程と含み、前記基板の隣接する複数のショット領域のそれぞれに前記供給工程が行われ、前記供給工程の後、前記複数のショット領域におけるそれぞれのショット領域ごとに、前記接触工程と、前記硬化工程と、前記離型工程を含むインプリント処理が行われるインプリント装置であって、
前記硬化工程において、ショット領域上のインプリント材に対して光を照射する照射部と、
前記照射部からの光の照射領域を規定する遮光部と、
前記型を保持して移動する型保持部と、
前記型保持部を制御する制御部と、を有し、
前記遮光部は、第1ショット領域における該第1ショット領域と隣接する第2ショット領域側の端部のインプリント材が前記第2ショット領域に対する前記硬化工程における光照射によって補完的に硬化されるように、前記照射領域を規定し、
前記第1ショット領域インプリント対象のショット領域であり、記第2ショット領域前記第1ショット領域よりも後にインプリント対象になるショット領域であるとき、前記遮光部は、前記第1ショット領域と隣接する既にインプリント処理が行われたショット領域における前記第1ショット領域側の端部、および、まだインプリント処理が行われていない前記第2ショット領域における前記第1ショット領域側の端部にも光が照射されるように、前記照射領域を規定
前記制御部は、前記接触工程において、インプリント対象のショット領域における未露光のインプリント材と半硬化状態のインプリント材の割合に応じて前記ショット領域に対する前記型の押圧力を調整するよう前記型保持部の駆動を制御する
ことを特徴とするンプリント装置。
【請求項6】
前記遮光部は、前記照射領域の中心が前記第1ショット領域の中心と一致するように前記照射領域を規定することを特徴とする請求項に記載のインプリント装置。
【請求項7】
前記照射領域は、
前記インプリント材の硬化閾値を超える第1光量の光が照射される第1照射領域と、
前記第1照射領域を包囲する前記第1照射領域の外側の領域であって、前記硬化閾値を超えない第2光量の光が照射される第2照射領域と、
前記第2照射領域を包囲する前記第2照射領域の外側の領域であって、前記第2光量より小さい第3光量の光が照射される第3照射領域と、を含み、
前記第1ショット領域における前記第2ショット領域側の前記端部は、前記第2照射領域に含まれ、前記第2ショット領域における前記第1ショット領域側の端部は、前記第3照射領域に含まれる、
ことを特徴とする請求項またはに記載のインプリント装置。
【請求項8】
基板の上にインプリント材を供給する供給工程と、前記基板の上のインプリント材と型とを接触させる接触工程と、前記インプリント材と前記型とが接触した状態で前記インプリント材を光照射によって硬化させる硬化工程と、前記硬化したインプリント材と前記型とを分離する離型工程と含み、前記基板の隣接する複数のショット領域のそれぞれに前記供給工程が行われ、前記供給工程の後、前記複数のショット領域におけるそれぞれのショット領域ごとに、前記接触工程と、前記硬化工程と、前記離型工程を含むインプリント処理が行われるインプリント装置であって、
前記硬化工程において、ショット領域上のインプリント材に対して光を照射する照射部と、
前記照射部からの光の照射領域を規定する遮光部と、
前記型を保持して移動する型保持部と、
前記型保持部を制御する制御部と、をし、
前記遮光部は、第1ショット領域における該第1ショット領域と隣接する第2ショット領域側の端部のインプリント材が前記第2ショット領域に対する前記硬化工程における光照射によって補完的に硬化されるように、前記照射領域を規定し、
前記第1ショット領域がインプリント対象のショット領域であり、前記第2ショット領域が前記第1ショット領域よりも後にインプリント対象になるショット領域であるとき、前記遮光部は、前記第1ショット領域と隣接する既にインプリント処理が行われたショット領域における前記第1ショット領域側の端部、および、まだインプリント処理が行われていない前記第2ショット領域における前記第1ショット領域側の端部にも光が照射されるように、前記照射領域を規定し、
前記制御部は、前記接触工程において、インプリント対象のショット領域に対して前記型が傾かないように前記型の姿勢を補正しながら前記型と前記インプリント材との接触が行われるよう前記型保持部を制御する
ことを特徴とするンプリント装置。
【請求項9】
基板の上にインプリント材を供給する供給工程と、前記基板の上のインプリント材と型とを接触させる接触工程と、前記インプリント材と前記型とが接触した状態で前記インプリント材を光照射によって硬化させる硬化工程と、前記硬化したインプリント材と前記型とを分離する離型工程と含み、前記基板の隣接する複数のショット領域のそれぞれに前記供給工程が行われ、前記供給工程の後、前記複数のショット領域におけるそれぞれのショット領域ごとに、前記接触工程と、前記硬化工程と、前記離型工程を含むインプリント処理が行われるインプリント装置であって、
前記硬化工程において、ショット領域上のインプリント材に対して光を照射する照射部と、
前記照射部からの光の照射領域を規定する遮光部と、有し、
前記遮光部は、第1ショット領域における該第1ショット領域と隣接する第2ショット領域側の端部のインプリント材が前記第2ショット領域に対する前記硬化工程における光照射によって補完的に硬化されるように、前記照射領域を規定し、
前記第1ショット領域がインプリント対象のショット領域であり、前記第2ショット領域が前記第1ショット領域よりも後にインプリント対象になるショット領域であるとき、前記遮光部は、前記第1ショット領域と隣接する既にインプリント処理が行われたショット領域における前記第1ショット領域側の端部、および、まだインプリント処理が行われていない前記第2ショット領域における前記第1ショット領域側の端部にも光が照射されるように、前記照射領域を規定し、
前記複数のショット領域に対して前記インプリント処理が行われるショット領域の順序は、前記インプリント材の粘度分布がショット領域内で対称形となる順序であることを特徴とするンプリント装置。
【請求項10】
基板の上にインプリント材を供給する供給工程と、前記基板の上のインプリント材と型とを接触させる接触工程と、前記インプリント材と前記型とが接触した状態で前記インプリント材を光照射によって硬化させる硬化工程と、前記硬化したインプリント材と前記型とを分離する離型工程と含み、前記基板の隣接する複数のショット領域のそれぞれに前記供給工程が行われ、前記供給工程の後、前記複数のショット領域におけるそれぞれのショット領域ごとに、前記接触工程と、前記硬化工程と、前記離型工程を含むインプリント処理が行われるインプリント装置であって、
前記硬化工程において、ショット領域上のインプリント材に対して光を照射する照射部と、
前記照射部からの光の照射領域を規定する遮光部と、有し、
前記遮光部は、第1ショット領域における該第1ショット領域と隣接する第2ショット領域側の端部のインプリント材が前記第2ショット領域に対する前記硬化工程における光照射によって補完的に硬化されるように、前記照射領域を規定し、
前記第1ショット領域がインプリント対象のショット領域であり、前記第2ショット領域が前記第1ショット領域よりも後にインプリント対象になるショット領域であるとき、前記遮光部は、前記第1ショット領域と隣接する既にインプリント処理が行われたショット領域における前記第1ショット領域側の端部、および、まだインプリント処理が行われていない前記第2ショット領域における前記第1ショット領域側の端部にも光が照射されるように、前記照射領域を規定し、
前記第1ショット領域が、前記複数のショット領域のうちの、隣接する前記第2ショット領域がない終端のショット領域である場合、前記第1ショット領域から更に1ショット領域分ずれた領域に対して前記硬化工程を実施することにより、前記第1ショット領域における前記インプリント材の粘度分布を対称形にし、その後、前記第1ショット領域に対して前記インプリント処理を実施する、ことを特徴とするンプリント装置。
【請求項11】
請求項1乃至1のうちいずれか1項に記載のインプリント装置により基板の上にパターンを形成する工程と、
前記パターンが形成された基板を加工する工程と、
を含み、前記加工された基板から物品を製造することを特徴とする物品製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント装置、および物品製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスを製造するための新たなパターン形成技術として、インプリント技術が注目されている。インプリント装置は、シリコンウエハやガラスプレート等の基板の上のインプリント材に型を接触させた状態でインプリント材を硬化させ、硬化したインプリント材から型を剥離することによって基板上にインプリント材のパターンを形成する。なお、インプリント材を硬化させる方法の一つとして、光(紫外線)の照射によってインプリント材を硬化させる光硬化法がある。
【0003】
インプリント装置においては、インプリント材と型を接触させたときにインプリント材がパターン領域外にはみ出す場合があり、これが後続のインプリント処理に影響を及ぼす可能性がある。これに対し、特許文献1には、インプリント材がパターン領域外にはみ出して型に付着した状態でもインプリントが続行できるよう、ショット外周領域のインプリント材を完全硬化させず柔らかい状態にすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-212449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のインプリント装置では、基板にインプリント材を供給(塗布)する供給工程、インプリント材と型とを接触させる接触工程、インプリント材を硬化させる硬化工程、インプリント材から型を引き離す離型工程が、ショット領域ごとに繰り返される。しかし近年では、スループット向上のために、基板上の隣接する複数のショット領域または基板の全ショット領域に供給工程を先に実施しておき、その後、ショット領域ごとに接触工程、硬化工程、離型工程を実施するシーケンスが考えられている。本明細書において、このようなシーケンスを「マルチエリア先行塗布」ともいう。
【0006】
マルチエリア先行塗布においては、インプリント対象のショット領域上のインプリント材を硬化させるための光が隣接ショット領域にも届き、隣接ショット領域上のインプリント材も部分的に硬化させてしまう。そのため、1つのショット領域内に硬化状態の異なるインプリント材が混在することになる。その場合、接触工程において、押圧力不足により未露光のインプリント材を適切な力で押圧できずパターンを良好に形成できないばかりか、型のパターン部が破損する可能性もある。
【0007】
特許文献1には、上記のように、ショット外周領域のインプリント材を完全硬化させず柔らかい状態にすることが記載されているが、マルチエリア先行塗布のようなシーケンスは想定されていないため、上記のような課題に対処することはできない。
【0008】
本発明は、例えば、型のパターン部の保護性能とスループットの両立に有利なインプリント装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面によれば、基板の上にインプリント材を供給する供給工程と、前記基板の上のインプリント材と型とを接触させる接触工程と、前記インプリント材と前記型とが接触した状態で前記インプリント材を光照射によって硬化させる硬化工程と、前記硬化したインプリント材と前記型とを分離する離型工程と含み、前記基板の隣接する複数のショット領域のそれぞれに前記供給工程が行われ、前記供給工程の後、前記複数のショット領域におけるそれぞれのショット領域ごとに、前記接触工程と、前記硬化工程と、前記離型工程を含むインプリント処理が行われるインプリント装置であって、前記硬化工程において、ショット領域上のインプリント材に対して光を照射する照射部と、前記照射部からの光の照射領域を規定する遮光部と、有し、前記遮光部は、第1ショット領域における該第1ショット領域と隣接する第2ショット領域側の端部のインプリント材が前記第2ショット領域に対する前記硬化工程における光照射によって補完的に硬化されるように、前記照射領域を規定前記第1ショット領域がインプリント対象のショット領域であり、前記第2ショット領域が前記第1ショット領域よりも後にインプリント対象になるショット領域であるとき、前記遮光部は、前記第1ショット領域と隣接する既にインプリント処理が行われたショット領域における前記第1ショット領域側の端部には光が照射され、まだインプリント処理が行われていない前記第2ショット領域には光が照射されないように、前記照射領域を規定し、更に、前記遮光部は、前記第1ショット領域の中心から、前記第2ショット領域に向かう方向とは反対の方向にオフセットした位置を中心とする領域を前記照射領域として規定する、ことを特徴とするインプリント装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、例えば、型のパターン部の保護性能とスループットの両立に有利なインプリント装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】インプリント装置の構成を示す図。
図2】インプリントシーケンスの例を示す図。
図3】ショット領域と光の照射領域の関係を示す図。
図4】隣接する複数のショット領域と光の照射範囲の関係を示す図。
図5】ショット領域と光の照射領域の関係を示す図。
図6】隣接する複数のショット領域と光の照射範囲の関係を示す図。
図7】インプリント装置の構成を示す図。
図8】インプリントシーケンスの例を示す図。
図9】ショット領域と光の照射領域の関係を示す図。
図10】隣接する複数のショット領域と光の照射範囲の関係を示す図。
図11】隣接する複数のショット領域と光の照射範囲の関係を示す図。
図12】実施形態における物品製造方法を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0013】
<第1実施形態>
まず、実施形態に係るインプリント装置の概要について説明する。インプリント装置は、基板上に供給されたインプリント材を型と接触させ、インプリント材に硬化用のエネルギーを与えることにより、型の凹凸パターンが転写された硬化物のパターンを形成する装置である。
【0014】
インプリント材としては、硬化用のエネルギーが与えられることにより硬化する硬化性組成物(未硬化状態の樹脂と呼ぶこともある)が用いられる。硬化用のエネルギーとしては、電磁波、熱等が用いられうる。電磁波は、例えば、その波長が10nm以上1mm以下の範囲から選択される光、例えば、赤外線、可視光線、紫外線などでありうる。硬化性組成物は、光の照射により、あるいは、加熱により硬化する組成物でありうる。これらのうち、光の照射により硬化する光硬化性組成物は、少なくとも重合性化合物と光重合開始剤とを含有し、必要に応じて非重合性化合物または溶剤を更に含有してもよい。非重合性化合物は、増感剤、水素供与体、内添型離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、ポリマー成分などの群から選択される少なくとも一種である。インプリント材は、インプリント材供給装置により、液滴状、或いは複数の液滴が繋がってできた島状又は膜状となって基板上に配置されうる。インプリント材の粘度(25℃における粘度)は、例えば、1mPa・s以上100mPa・s以下でありうる。基板の材料としては、例えば、ガラス、セラミックス、金属、半導体、樹脂等が用いられうる。必要に応じて、基板の表面に、基板とは別の材料からなる部材が設けられてもよい。基板は、例えば、シリコンウエハ、化合物半導体ウエハ、石英ガラスである。
【0015】
図1は、第1実施形態におけるインプリント装置100の構成を示す図である。本明細書および図面においては、水平面をXY平面とするXYZ座標系において方向が示される。一般には、基板1はその表面が水平面(XY平面)と平行になるように基板ステージ10の上に置かれる。よって以下では、基板1の表面に沿う平面内で互いに直交する方向をX軸およびY軸とし、X軸およびY軸に垂直な方向をZ軸とする。また、以下では、XYZ座標系におけるX軸、Y軸、Z軸にそれぞれ平行な方向をX方向、Y方向、Z方向という。
【0016】
基板ステージ10は、基板1を保持して位置決め駆動する。型2を保持する型保持部20は、型2を駆動する型駆動部(インプリントヘッド)として機能する。また、型保持部20は、補正部21を介して型2を保持する。補正部21は、型2の形状を補正する形状補正機構を持つ。型保持部20の駆動によって、型2と基板1上のインプリント材31との接触、および型2と基板1上のインプリント材31との分離(離型)が行われうる。供給部30(ディスペンサ)は、基板1の上にインプリント材を供給(吐出)する。供給部30は、基板1の上に配置されたインプリント材を塗布する機能を有していてもよい。照射部40は、型2と基板1上のインプリント材31とが接触した状態でインプリント材31を硬化させるために、型2を介してインプリント材31に光(紫外線)を照射する。照射部40は、i線および/またはg線を発生するハロゲンランプまたは水銀ランプ等の光源を含みうる。遮光部41は、照射部40からのショット領域に対する光の照射領域を規定する開口(絞り)を形成している。駆動部45は、遮光部41を駆動して開口の大きさを調整する。
【0017】
制御部50は、インプリント装置100の各部を統括的に制御してインプリント処理の実行を管理する。制御部50は、CPU、マイクロコントローラ、あるいはマイクロプロセッサのような処理部を含む。処理部は、制御部50の内部または外部にあるメモリに記憶されたインプリント処理に係る制御プログラムを実行する。
【0018】
インプリント装置100の構成は概ね以上のとおりである。次に、インプリント装置100によるインプリント処理を説明する。
インプリント処理は、基板上に供給されたインプリント材と型とを接触させる接触工程と、インプリント材を硬化させる硬化工程と、インプリント材と型とを分離する離型工程とを含みうる。本実施形態では、基板の上にインプリント材を供給する供給工程を、隣接する複数のショット領域または基板の全ショット領域に対して一括して先に実施しておく。その後、ショット領域ごとにインプリント処理(接触工程、硬化工程、離型工程)が実施される。本実施形態ではこのようなシーケンスが採用される(マルチエリア先行塗布)。以下、このシーケンスに従う動作を具体的に説明する。この動作は、処理部50が制御プログラムを実行することによって実施される。
【0019】
供給工程において、供給部30の直下で基板ステージ10をX方向またはY方向に駆動させながら供給部30からインプリント材を吐出することにより、基板1上のショット領域(インプリント領域)にインプリント材31が供給される。本実施形態においては、基板1上の隣接する複数のショット領域に一括してインプリント材が供給される。
【0020】
次に、接触工程において、基板ステージ10は型保持部20の直下に移動する。ショット領域が型保持部20の直下に来たところで基板ステージ10は停止する。その後、型保持部20が型2を降下させることにより型2と基板1上のインプリント材31との接触が開始される。このとき、補正部21は型2のパターン部が所定の形状となるように型2を補正する。型2が基板1上のインプリント材31と接触することにより、型2のパターン部にインプリント材31が充填される。
【0021】
次に、硬化工程において、照射部40は光(紫外線)を照射してインプリント材を硬化させる。その後、離型工程において、型保持部20が型2を上昇させることにより、硬化したインプリント材から型2を引き離される。
【0022】
離型動作が完了した後、基板ステージ10は、次のショット領域が型保持部20の直下に来るように駆動する。基板1上のショット領域が型保持部20の直下に来たら、そのショット領域に対して、接触工程、硬化工程、離型工程が実施される。この一連の動作は、基板1上にインプリント材が供給された全てのショット領域に対して繰り返し行われる。全てのショット領域でインプリント処理を終えたら、基板1はインプリント装置100の外に搬出される。
【0023】
図2を参照して、インプリント装置100による基板1に対するインプリントシーケンスの例を説明する。図2の例では、供給工程において、X方向に沿う一行単位で、各ショット領域にインプリント材が供給され、その後、当該行におけるショット領域ごとに接触工程、硬化工程、離型工程が行われる。このようなマルチエリア先行塗布においては、従来、インプリント対象のショット領域上のインプリント材を硬化させるための光が隣接ショット領域にも届き、隣接ショット領域上のインプリント材も部分的に硬化させてしまう。そのため、1つのショット領域内に硬化状態の異なるインプリント材が混在することになる。その場合、接触工程において、押圧力不足により未露光のインプリント材を適切な力で押圧できずパターンを良好に形成できないばかりか、型のパターン部が破損する可能性もある。また、1つのショット領域内に硬化状態の異なるインプリント材が混在する場合、インプリント材と型と接触時に型が滑る、または型が傾くことによりパターンを良好に形成できないばかりか、型のパターン部が破損する可能性もある。
【0024】
本実施形態では、遮光部41は、第1ショット領域における該第1ショット領域と隣接する第2ショット領域側の端部のインプリント材が第2ショット領域に対する硬化工程における光照射によって補完的に硬化されるように、照射領域を規定する。これにより上記のような課題が解決される。以下、具体例を説明する。
【0025】
図2(A)は、ハッチングされたショット領域31cには既にインプリントが完了しており、白地で示されたショット領域31sには、まだインプリント材が供給されていない状態を示している。図2(B)において、ドッティングされたショット領域31aは、図2(A)の状態から、直前にインプリントが完了した行の隣の行のショット領域であり、インプリント材が供給された状態を示している。なお、本例では、一行内の全てのショット領域にインプリント材が供給されているが、1個のショット領域だけにインプリント材が供給されてもよいし、1個飛ばしで複数のショット領域にインプリント材が供給されてもよい。
【0026】
図2(C)は、ショット領域31bに対してインプリントが行われている時、すなわち、型保持部20が型2を降下させることにより型2とショット領域31b上のインプリント材とが接触した状態を示している。その後、照射部40が光を照射してインプリント材を硬化させ、型保持部20が型2を上昇させることにより、硬化したインプリント材から型2を引き離す。これにより、ショット領域31bに新たなパターンが形成される。
【0027】
図2(C)で示されたインプリント処理の後、図2(D)に示されるように、インプリント対象のショット領域が隣に移る。図2(D)において、図2(C)でインプリントの対象であったショット領域は、インプリントが完了したことを表すハッチングで示されている。基板ステージ10は、次のショット領域が型保持部20の直下になるように駆動する。なお本例では、インプリントの順を-Y側から+Y側、-X側から+X側へと順々にインプリントしているが、インプリント順は、装置の生産性や構成を考えて任意に選択されうる。
【0028】
図3は、インプリント装置100において、-Y方向から+Y方向へ、-X方向から+X方向の順にインプリントする際の基板1上のショット領域s15と、照射部40から照射される光との関係を示している。図3(A)は、ショット領域s15と、ショット領域s15に対して照射部40からの光の照射領域との関係を示している。図3(B)は、ショット領域のX方向の位置と露光量との関係を示している。図3(B)の縦軸は、インプリント材の硬化閾値に対する露光量の割合を示す。図3(B)は、ショット領域のX方向の中央部では、露光量はインプリント材の硬化閾値を超えるが、X方向の端部では、露光量はインプリント材の硬化閾値に達しないことを示している。
【0029】
図3(A)において、第1照射領域42aは、インプリント材の硬化閾値を超える第1光量の光が照射される領域であり、第1照射領域42aのX方向の幅およびY方向の幅はそれぞれ、Ix1およびIy1で示されている。第2照射領域42bは、第1照射領域42aを包囲する、第1照射領域42aの外側の領域である。第2照射領域42bのX方向の幅およびY方向の幅はそれぞれIx2およびIy2で示されている。第2照射領域42bは、インプリント材の硬化閾値は超えないが、離型時にインプリント材が型2に付着しない程度に硬化できる第2光量の光が照射される領域である。第1照射領域42aと第2照射領域42bは、同一の光源からの光が照射される領域であってもよいし、別々の光源からの光が同時に照射される領域であってもよい。第1照射領域42aと第2照射領域42bとの間の位置関係は、例えば、X方向およびY方向の中心が同じである位置関係である。
【0030】
ショット領域s15は、型2が基板1上のインプリント材と接触してパターンが形成される、インプリント対象のショット領域(第1ショット領域)であり、X方向の幅およびY方向の幅はそれぞれSx、Syで示されている。SxおよびSyの値は、装置の生産性や生産物の用途によって任意に設定される。ここでは、インプリント順が-Y方向から+Y方向、-X方向から+X方向の順に設定されている。この場合、照射部40からショット領域s15に対して露光光を照射する際、ショット領域s15に隣接する-X側(紙面左側)の領域と-Y側(紙面下側)の領域には、インプリント材がない、もしくはインプリント材が露光済みである。ショット領域s15に隣接する+Y側(紙面上側)の領域にはインプリント材は未供給である。ショット領域s15に隣接する+X側(紙面右側)には、s15より後にインプリント対象になるショット領域(第2ショット領域)があり、そこには未露光状態(未硬化状態)のインプリント材が存在する。
【0031】
この場合、インプリント対象のショット領域s15の全面を含むように光が照射された場合、ショット領域s15の隣のショット領域のインプリント材の一部も硬化する。インプリント材の一部が硬化した状態でインプリントを実施した場合、型2が破損して所望のパターンを形成することができない可能性がある。そこで本実施形態では、例えば、遮光部41は次の条件を満たすように照射領域を規定する。
(a)インプリント対象のショット領域s15と隣接するショット領域のうち、既にインプリント処理が行われたショット領域におけるショット領域s15側の端部には光が照射され、かつ、
(b)インプリント対象のショット領域s15と隣接するショット領域のうち、まだインプリント処理が行われていないショット領域には光が照射されないこと。
【0032】
すなわち、図3(A)の例では、+X方向側には露光光がはみ出さないように、第2照射領域42bが調整される。よって、本実施形態では、第2照射領域42bとショット領域s15の両方の+X側の端が一致するように調整される。また、露光対象のショット領域の-X方向、±Y方向に関しては、露光光が隣のショット領域にはみ出ても問題ないため、装置の生産性の観点からインプリント材の硬化閾値を超える露光光が露光対象のショット領域からはみ出すように調整されうる。よって、第2照射領域42bとショット領域s15は、Y方向の中心が一致するように調整される。第1照射領域42aのIx1およびIy1と、ショット領域s15のSxおよびSyの関係は、次式で表される。
【0033】
Ix1≧Sx (1)
Iy1≧Sy (2)
【0034】
また、第1照射領域42aおよび第2照射領域42bの中心とショット領域s15の中心との間のX方向の距離dxは、次式で表される。
【0035】
dx=(Ix2-Sx)/2 (3)
【0036】
dxの方向は、インプリント順によって決定される。インプリント順が-X方向から+X方向に進む順である場合、dxの方向は、ショット領域s15の中心から、次のインプリント対象のショット領域に向かう方向(+X方向)とは反対の方向(-X方向)になる。遮光部41は、ショット領域s15の中心から-X方向にオフセットした位置を中心とする領域を照射領域として規定する。
【0037】
第1照射領域42aおよび第2照射領域42bの露光量および照射領域の調整は、光源の照度を調整することにより行われてもよいし、照射部40の遮光部41を調整することにより行われてもよい。あるいは、遮光膜が設けられた遮光モールドを用いることにより調整が行われてもよい。パターン領域の外側に設けられた遮光膜の膜厚等を調整することにより露光量や照射領域を調整することができる。
【0038】
図4は、連続してインプリントされる隣接するショット領域s15、s16、s17と、照射部40から照射される光との関係を示している。基板1上のインプリントは、-Y方向から+Y方向へ、-X方向から+X方向の順に実施される。図4(A1)、(B1)、(C1)はそれぞれ、ショット領域s15、s16、s17をインプリントしている最中の基板1の状態を示している。図4(A2)、(B2)、(C2)はそれぞれ、ショット領域s15、s16、s17をインプリントしている最中のショット領域s15、s16、s17上のインプリント材の状態を示している。図4(A3)、(B3)、(C3)はそれぞれ、ショット領域s15、s16、s17のX方向の位置と露光量との関係を示している。図4(A3)、(B3)、(C3)の縦軸は、インプリント材の硬化閾値に対する露光量の割合を示す。また、実線は各ショット領域までの露光の積算量、破線は各ショット領域の露光中の露光量、点線は各ショット領域直前までの露光履歴である。
【0039】
ショット領域s15におけるショット領域s16側(第2ショット領域側)の端部のインプリント材31dは、半硬化状態であることを示している。インプリント材31aに対して硬化閾値以下の光が照射されることにより、インプリント材31aは半硬化状態のインプリント材31dになる。半硬化状態とは、硬化状態よりは低い粘度状態であるが、型2のパターンが転写された状態を維持する粘度状態である。また、インプリント材31dと基板1とは、離型時に生じる離型力以上の力で密着しているため、離型によってインプリント材31dが型2側に付着することはない。インプリント材自体の密着力、およびインプリント材と基板1との密着力は、インプリント材の物性、状態、基板1の表面状態、および周囲の環境雰囲気によって決定される。なお、図4(A1)、(B1)、(C1)では、基板1のエッジ部付近のショットは省略されているが、装置の生産性向上の観点からはエッジ部における領域にもインプリントが行われうる。
【0040】
図4(A2)において、ショット領域s15のうち硬化閾値を超える光量が露光された第1照射領域42aのインプリント材31bは硬化し、硬化閾値以下の光量が露光された第2照射領域42bのインプリント材31dは半硬化状態となる。ショット領域s15における半硬化状態のインプリント材31dは、隣のショット領域s16のインプリント時における光照射によって補完的に露光されて硬化する。
【0041】
同様に、図4(B2)において、ショット領域s16のうち硬化閾値を超える光量が露光された第1照射領域42aのインプリント材31bは硬化し、硬化閾値以下の光量が露光された第2照射領域42bのインプリント材は半硬化状態となる。ショット領域s16における半硬化状態のインプリント材31dは、隣のショット領域s17への光照射によって補完的に露光されて硬化する。
【0042】
なお、硬化閾値を超える光量で露光されたインプリント材は、その後更に露光されても硬化状態は変化せず、良好なパターンが維持される。しかし、使用される全てのインプリント材がこの限りではない状況が想定される。そのため、ショット領域内のインプリント材の積算露光量分布は概ね同一であることが望ましく、一つの基準として8%以下で実施することが望ましい。ショット領域s24においては、隣接するショット領域に未露光のインプリント材が存在しない。この場合、制御部50は、ショット領域s24の全面にインプリント材の硬化閾値を超える光量の光が照射されるように駆動部45を制御するようにしてもよい。これにより、ショット領域s24では一括でインプリント材が硬化される。また、照射部40の遮光部41を駆動させず、ショット領域s24を露光後、ショット領域s24から+X軸方向に1ショット領域分ずれた位置に光を照射してショット領域s24上のインプリント材を補完的に硬化させてもよい。ショット領域s24が基板1の外周部に差し掛かっている場合で、未露光のインプリント材が第1照射領域42a内に収まる場合は、遮光部41の調整位置を変えずに露光を行うことが望ましい。未露光のインプリント材が第1照射領域42a外にある場合は、遮光部41を駆動し第1照射領域42a、第2照射領域42bを大きくして露光する。あるいは、ショット領域s24を露光後、ショット領域s24から+X軸方向に1ショット領域分ずれた位置に光を照射してショット領域s24上のインプリント材を補完的に硬化させてもよい。インプリント装置100は、この一連の動作を基板1の全ショット領域に対して行い、型2のパターンを全ショット領域上に形成する。
【0043】
図5は、インプリント装置100において、-Y方向から+Y方向へ、-X方向から+X方向の順にインプリントする際の基板1上のショット領域s15と、照射部40から照射される光との関係を示している。図5(A)は、ショット領域s15と、ショット領域s15に対して照射部40からの光の照射領域との関係を示している。図5(B)は、ショット領域のX方向の位置と露光量との関係を示している。図5(B)の縦軸は、インプリント材の硬化閾値に対する露光量の割合を示す。
【0044】
図5(A)において、第1照射領域42aは、インプリント材の硬化閾値を超える第1光量の光が照射される領域であり、第1照射領域42aのX方向の幅およびY方向の幅はそれぞれ、Ix1およびIy1で示されている。第2照射領域42bは、第1照射領域42aを包囲する、第1照射領域42aの外側の領域である。第2照射領域42bのX方向の幅およびY方向の幅はそれぞれIx2およびIy2で示されている。第3照射領域42cは、第2照射領域42bを包囲する、第2照射領域42bの外側の領域である。第3照射領域のX方向の幅およびY方向の幅はそれぞれIx3およびIy3で示されている。第2照射領域42bは、インプリント材の硬化閾値は超えないが、離型時にインプリント材が型2に付着しない程度に硬化できる第2光量の光が照射される領域である。第3照射領域42cは、第2光量より小さい第3光量であって型2を壊すことなくインプリントすることが可能な程度の第3光量の光が照射される領域である。第1照射領域42a、第2照射領域42b、および第3照射領域42cは、同一の光源からの光が照射される領域であってもよいし、別々の光源からの光が同時に照射される領域であってもよい。第1照射領域42a、第2照射領域42b、および第3照射領域42cの間の位置関係は、例えば、X方向およびY方向の中心が同じである位置関係である。すなわち、遮光部41は、各照射領域42a、第2照射領域42b、および第3照射領域42cの中心がインプリント対象のショット領域s15の中心と一致するように、各照射領域を規定している。
【0045】
ショット領域s15は、型2が基板1上のインプリント材と接触してパターンが形成されるインプリント対象の領域であり、X方向の幅およびY方向の幅はそれぞれSx、Syで示されている。SxおよびSyの値は、装置の生産性や生産物の用途によって任意に設定される。インプリント順が-Y方向から+Y方向、-X方向から+X方向の順に設定されている場合を考える。この場合、照射部40からショット領域s15に対して露光光を照射する際、ショット領域s15に隣接する-X側の領域と-Y側の領域には、インプリント材がない、もしくはインプリント材が露光済みである。ショット領域s15に隣接する+Y側の領域にはインプリント材は未供給である。ショット領域s15に隣接する+X側の領域には、未露光状態のインプリント材が存在する。この場合、露光対象のショット領域s15の全面を含むように露光光が照射された場合、ショット領域s15の隣のショット領域のインプリント材の一部も硬化する。インプリント材の一部が硬化した状態でインプリントを実施した場合、型2が破損して所望のパターンを形成することができない可能性が高まる。そのような事態を回避するため、露光対象のショット領域外にはみ出す露光光は、インプリント材の硬化閾値以下にする。更に、露光された隣のショット領域をインプリントする際、型2を壊すことなくインプリントできるように、ショット領域外にはみ出す光の光量が調整される。本実施形態において、インプリント対象のショット領域s15(第1ショット領域)における隣接ショット領域(第2ショット領域)側の端部は、第2照射領域42bに含まれる。また、隣接ショット領域(第2ショット領域)におけるショット領域s15(第1ショット領域)側の端部は、第3照射領域42cに含まれる。第1照射領域42a、第2照射領域42b、第3照射領域42c、およびショット領域s15の関係は、次式で表される。
【0046】
Ix1<Sx=Ix2<Ix3 (4)
Sy<Iy1<Iy2<Iy3 (5)
【0047】
第1照射領域42a、第2照射領域42b、および第3照射領域43cの露光量および照射領域の調整は、光源の照度を調整することにより行われてもよいし、照射部40の遮光部41を調整することにより行われてもよい。あるいは、遮光モールドを用いることにより調整が行われてもよい。
【0048】
図6は、連続してインプリントされる基板1上の隣接するショット領域s15、s16、s17と、照射部40から照射される光との関係を示している。基板1上のインプリントは、-Y方向から+Y方向へ、-X方向から+X方向の順に実施される。図6(A1)、(B1)、(C1)はそれぞれ、ショット領域s15、s16、s17をインプリントしている最中の基板1の状態を示している。図6(A2)、(B2)、(C2)はそれぞれ、ショット領域s15、s16、s17をインプリントしている最中のショット領域s15、s16、s17上のインプリント材の状態を示している。図6(A3)、(B3)、(C3)はそれぞれ、ショット領域s15、s16、s17のX方向の位置と露光量との関係を示している。図6(A3)、(B3)、(C3)の縦軸は、インプリント材の硬化閾値に対する露光量の割合を示す。また、実線は各ショット領域までの露光の積算量、破線は各ショット領域の露光中の露光量、点線は各ショット領域直前までの露光履歴である。
【0049】
第3照射領域42cにおいて、インプリント材31aに対して硬化閾値以下の光量の光が照射されると、インプリント材31aは半硬化状態のインプリント材31eになる。インプリント材31eは、型2を破損させることなく基板1上にパターンを形成できる程度の流動性を維持した状態である。インプリント材31eの状態は、インプリント材の物性、基板1の表面状態、周囲の環境雰囲気、および積算露光量によって決定される。なお、図6(A1)、(B1)、(C1)では、基板1のエッジ部付近のショットは省略されているが、装置の生産性向上の観点からはエッジ部における領域にもインプリントが行われうる。
【0050】
図6(A2)において、ショット領域s15のうち硬化閾値を超える光量で露光された第1照射領域42aのインプリント材31bは硬化し、硬化閾値以下の光量で露光された第2照射領域42bのインプリント材31dは半硬化状態となる。また、隣のショット領域s16のうちの第3照射領域42cのインプリント材31eは硬化閾値以下の少ない光量で露光されて半硬化状態となる。
【0051】
図6(B2)において、ショット領域s16のうち硬化閾値を超える光量で露光された第1照射領域42aのインプリント材は硬化してインプリント材31bとなる。また、第2照射領域42bのインプリント材は、ショット領域s15の第3照射領域42cの露光によって既に半硬化状態となっており、硬化閾値以下の光量の光が追加的に照射されることにより硬化する。こうして、ショット領域s15における半硬化状態のインプリント材31dは、隣のショット領域s16への光照射によって補完的に露光されて硬化する。
【0052】
ショット領域s16をインプリントする時、ショット領域s15のインプリントによって、ショット領域s16の一部は半硬化状態となっている。そのため、型2とインプリント材31aおよび31dとを接触させる際、インプリント材31dはインプリント材31aよりも粘度が高いため、押圧力不足になり所望のパターンを形成することができない可能性がある。そこで、制御部50は、ショット領域内において粘度状態の違うインプリント材が存在する場合、未露光のインプリント材31aと半硬化状態のインプリント材31dの割合に応じて押圧力を決定する。制御部50は、接触工程において、ショット領域に対する型2の押圧力が上記決定された押圧力に調整されるよう型保持部20の駆動を制御する。
【0053】
ここで、未露光のインプリント材31aの領域をRa、半硬化状態のインプリント材31dの領域をRdとする。また、未露光のインプリント材31aがショット領域全域にある状態で必要とされる押圧力をFa、半効果状態のインプリント材31dがショット領域全域にある状態で必要とされる押圧力をFdとする。この場合、粘度の違うインプリント材が混在するショット領域に対するインプリントにおける押圧力F1は、次式で表される。
【0054】
Ra=Sx×Sy-(Ix3-Ix2)/2×Sy (6)
Rd=(Ix3-Ix2)/2×Sy (7)
F1=(Fa×Ra+Fd×Rd)/(Sx×Sy) (8)
【0055】
押圧力Faおよび押圧力Fdは、使用されるインプリント材の種類によって異なるため、インプリント装置100を用いて実際に求めることが望ましい。また、ショット領域内に粘度状態の違うインプリント材31aおよび31dが存在する場合、型2を基板1上のインプリント材31aおよび31dと接触させる場合、型2が滑る、もしくは型2が傾き、所望のパターンを形成できない可能性がある。そこで、制御部50は、ショット領域s16をインプリントする場合は、接触工程において、型2の姿勢を補正しながら型2とインプリント材との接触が行われるよう型保持部20を制御する。型2の姿勢の補正は、例えば、インプリント材31aおよび31dとの接触前もしくは接触した時点における型2の姿勢と接触後の型2の姿勢との差分に基づく。補正に用いられる差分は、型保持部20の駆動軸の力の差分を用いてもよいし、型保持部20の駆動量が分かるようにリニアスケールを配置し、その差分を用いてもよい。また、ショット領域にインプリント材31aしか存在しないショット領域の型2との接触時に生じる型2の姿勢を記憶し、その姿勢を基準に差分を補正してもよい。
【0056】
また、インプリント時に型2の姿勢が傾かないように、粘度分布がショット領域内で対称形になるように露光を行う方法が採用されてもよい。これは例えば、複数のショット領域に対してインプリント処理が行われるショット領域の順序を、インプリント材の粘度分布がショット領域内で対称形となる順序にすることで達成される。具体的には、X方向のインプリントの順番を1ショット領域飛ばしで行い、+X方向端のショット領域、もしくはその1つ手前のショット領域をインプリントしたら、-X方向側の未露光のショット領域のインプリントを順番に行うことで達成される。
【0057】
また、+X方向端のショット領域s24(図6)をインプリントする場合を考える。ショット領域s24は、一行における隣接する複数のショット領域のうちの、次に隣接するショット領域がない終端のショット領域である。この場合、ショット領域s24から+X方向に更に1ショット領域分ずれた領域に対して硬化工程を実施する。これにより、ショット領域s24におけるX方向の両側には半硬化状態のインプリント材31eが作られ、インプリント材の粘度分布が対称形になる。その後、ショット領域s24に対してインプリント処理が実施される。
【0058】
ショット領域s15およびショット領域s24に関しては、X方向に隣接するショット領域が存在しない場合、第1照射領域42aのIx1およびIy1をSxおよびSyまで拡張して露光してもよい。第1照射領域42aの拡張は、照射部40の遮光部41を駆動させ調整すればよい。また、事前もしくは事後に1ショット領域分だけずらして露光を行ってもよい。ショット領域s15またはs24が基板1の外周部に差し掛かっている場合、未露光のインプリント材が第1照射領域42a内に収まる場合は、遮光部41の調整位置を変えずに露光を行ってもよい。未露光のインプリント材が第1照射領域42a外にある場合は、遮光部41を駆動し第1照射領域42a、第2照射領域42bを大きくして露光する。あるいは、ショット領域s15の露光前に、ショット領域s15から-X軸方向に1ショット領域分ずれた位置に露光光を照射し、ショット領域s15を硬化させてもよい。また、ショット領域s24を露光後、ショット領域s24から+X軸方向に1ショット領域分ずれた位置に露光光を照射し、ショット領域s24を硬化させてもよい。インプリント装置100は、この一連の動作を基板1の全ショット領域に対して行い、型2のパターンを全ショット領域上に形成する。
【0059】
<第2実施形態>
図7は、第2実施形態におけるインプリント装置101の構成を示す図である。第1実施形態(図1)では、インプリント材31は供給部30によって基板1の上に供給されたが、本実施形態では、インプリント材32は、インプリント装置101の外部にある例えばコーターディベロッパー等によって基板1に塗布される。その他の構成は概ね第1実施形態と同じである。
【0060】
図8を参照して、第2実施形態におけるインプリント装置101による基板1に対するインプリントシーケンスの例を説明する。はじめに、インプリント装置101の外部にある例えばコーターディベロッパーによって、インプリント材32aが基板1上の全面に塗布される。そのことを示すため、図8では基板全面が薄くドッティングされている。濃くドッティングされたショット領域32bは、型2によってインプリントをしている最中の状態を示している。ハッチングで示されたショット領域32cは、既に型2によってインプリントが完了した状態を示している。
【0061】
図8(A)は、複数のショット領域のうち下から3行のショット領域へのインプリントが完了した状態を示している。インプリント装置101は、次にインプリントする領域が型2の直下に配置されるよう基板ステージ10を駆動させる。図8(B)は、ショット領域32bに対するインプリントを行っている最中を示しており、型保持部20が型2を降下させることにより型2とショット領域32b上のインプリント材とが接触した状態を示している。図8(C)は、対象ショット領域が図8(B)状態から隣のショットに移行し(すなわち隣のショット領域が型2の直下に来るよう基板ステージ10を駆動し)、そのショット領域32bをインプリントしている状態を示している。本実施形態では、インプリントの順を-Y側から+Y側へ、-X側から+X側へと順々にインプリントしているが、装置の生産性や構成を考えて任意に選択される。
【0062】
図9は、インプリント装置100において、-Y方向から+Y方向へ、-X方向から+X方向の順にインプリントする際の基板1上のショット領域s15と、照射部40からの照射される光との関係を示している。図9(A)は、ショット領域s15と、ショット領域s15に対して照射部40から光の照射領域との関係を示している。図9(B)は、ショット領域のX方向の位置と露光量との関係を示している。図9(B)の縦軸は、インプリント材の硬化閾値に対する露光量の割合を示す。図9(B)は、ショット領域のX方向の中央部では、露光量はインプリント材の硬化閾値を超えるが、X方向の端部では、露光量はインプリント材の硬化閾値に達しないことを示している。
【0063】
図9(A)において、第1照射領域43aは、インプリント材の硬化閾値を超える光量の光が照射される領域であり、第1照射領域43aのX方向の幅およびY方向の幅はそれぞれ、Ix1およびIy1で示されている。第2照射領域43bは、第1照射領域43aを包囲する、第1照射領域43aより大きい領域である。第2照射領域43bのX方向の幅およびY方向の幅はそれぞれIx2およびIy2で与えられる。第2照射領域43bにおける第1照射領域43aの外側の領域は、インプリント材の硬化閾値は超えないが、離型時にインプリント材が型2に付着しない程度に硬化できる光量の光が照射される領域である。第1照射領域43aと第2照射領域43bは、同一の光源からの光が照射される領域であってもよいし、別々の光源からの光が同時に照射される領域であってもよい。第1照射領域43aと第2照射領域43bとの間の位置関係は、例えば、X方向およびY方向の中心が同じ位置関係である。
【0064】
ショット領域s15は、型2が基板1上のインプリント材と接触してパターンを形成する領域であり、X方向の幅およびY方向の幅はそれぞれSx、Syで示されている。SxおよびSyの値は、装置の生産性や生産物の用途によって任意に設定される。インプリント順が-Y方向から+Y方向、-X方向から+X方向の順に設定されている場合を考える。この場合、照射部40からショット領域s15に対して露光光を照射する際、ショット領域s15に隣接する-X側の領域と-Y側の領域には、インプリント材がない、もしくはインプリント材が露光済みである。ショット領域s15に隣接する+X側の領域と+Y側の領域には、未露光状態のインプリント材が存在する。露光対象のショット領域s15の全面を含むように光が照射された場合、ショット領域s15の隣のショット領域のインプリント材の一部も硬化する。インプリント材の一部が硬化した状態でインプリントを実施した場合、型2が破損して所望のパターンを形成することができない可能性がある。そのため、例えば、露光対象のショット領域の+X方向側と+Y方向側には露光光がはみ出さないように調整される。よって、本実施形態では、第2照射領域43bとショット領域s15は、+X方向の端部で一致し、かつ、+Y方向の端部で一致するように調整される。また、露光対象のショット領域の-X方向、-Y方向の隣接ショット領域には露光光が照射されても問題がないため、装置の生産性の観点からインプリント材の硬化閾値を超える露光光が露光対象のショット領域からはみ出すように調整されてよい。よって、第1照射領域43aのIx1およびIy1と、ショット領域s15のSxおよびSyの関係は、次式で表される。
【0065】
Ix1≧Sx (9)
Iy1≧Sy (10)
【0066】
また、第1照射領域43aおよび第2照射領域43bの中心とショット領域s15の中心との間のX方向の距離dx、Y方向の距離dyは、次式で表される。dxおよびdyの方向は、インプリント順によって決定され、インプリント順が-Y方向から+Y方向、-X方向から+X方向に進む順である場合は、ショット領域s15の中心から-X方向および-Y方向になる。
【0067】
dx=(Ix2-Sx)/2 (11)
dy=(Iy2-Sy)/2 (12)
【0068】
第1照射領域43aおよび第2照射領域43bの露光量および照射領域の調整は、光源の照度を調整することにより行われてもよいし、照射部40の遮光部41を調整することにより行われてもよい。あるいは、遮光モールドを用いることにより調整が行われてもよい。
【0069】
図10は、隣接するショット領域s15、s16、s17、s25、s26、s27に関して、連続してインプリントする際の各ショット領域におけるインプリント材の状態を示している。図10(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)はそれぞれ、ショット領域s15、s16、s17、s25、s26、s27に対して露光中のインプリント材の状態を示している。
【0070】
基板1上のインプリントは、-Y方向から+Y方向へ、-X方向から+X方向の順に実施される。図10(A)において、インプリント対象であるショット領域s15のうち硬化閾値を超える光量が露光された領域のインプリント材32bは硬化し、硬化閾値以下の光量が露光された領域のインプリント材32dは半硬化状態となる。ショット領域s15における半硬化状態のインプリント材32dは、隣のショット領域s16、s25、s26のインプリント時における光照射によって補完的に露光されて硬化する。ただし、ショット領域s15の半硬化状態のインプリント材32dは、s26のインプリント時における光照射によらずとも硬化するよう光強度を上げてよい。
【0071】
同様に、図10(B)において、インプリント対象であるショット領域s16のうち硬化閾値を超える光量が露光された領域のインプリント材32bは硬化し、硬化閾値以下の光量が露光された領域のインプリント材32dは半硬化状態となる。ショット領域s16における半硬化状態のインプリント材32bは、隣のショット領域s17、s26、s27のインプリント時における光照射によって補完的に露光されて硬化する。
【0072】
隣接するショット領域に未露光のインプリント材が存在しない場合は、第1照射領域43aおよび第2照射領域43bを拡大して一括でインプリント材を硬化させてもよい。また、第1照射領域43aおよび第2照射領域43bを変えず、1ショット領域分ずれた位置に光を照射することで半硬化状態のインプリント材を硬化させてもよい。インプリント装置101は、この一連の動作を基板1の全ショット領域に対して行い、型2のパターンを全ショット領域上に形成する。
【0073】
図11は、隣接するショット領域s25、s26、s27、s35、s36、s37に関して、連続してインプリントする際の各ショット領域におけるインプリント材の状態を示している。図11(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)はそれぞれ、ショット領域s25、s26、s27、s35、s36、s37に対して露光中のインプリント材の状態を示している。
【0074】
第3照射領域42cにおいて、インプリント材32aに対して硬化閾値以下の光量の光が照射されると、インプリント材32aは半硬化状態のインプリント材32eとなる。インプリント材32eは、型2を破損させることなく基板1上にパターンを形成できる程度の流動性を維持した状態である。インプリント材32eの状態は、インプリント材の物性、基板1の表面状態、周囲の環境雰囲気、および積算露光量によって決定される。
【0075】
各ショット領域において、第1照射領域42aのインプリント材32bは、硬化閾値を超える光量で露光されて硬化する。第2照射領域42bのインプリント材32dおよび第3照射領域42cのインプリント材32eは、硬化閾値以下の光量で露光されて半硬化状態になる。この半硬化状態にされたインプリント材32d,32eは、X方向またはY方向に関して隣接するショット領域のインプリント時の第2照射領域42bおよび第3照射領域42cへの光照射によって硬化する。例えば、図11(B)において、ショット領域s26のうち硬化閾値以下の光量で露光された第2照射領域42bのインプリント材は半硬化状態となる。このインプリント材は、図11(C)、(D)、(E)、(F)で示されるように、ショット領域S26に隣接するショット領域s27、s35、s36、s37のインプリント時の第2照射領域42bおよび第3照射領域42cへの光照射によって硬化する。
【0076】
ところで、ショット領域s26をインプリントするとき、領域の一部のインプリント材は半硬化状態となっている。そのため、型2を基板1上のインプリント材32aおよびインプリント材32dと接触させる際、インプリント材32dはインプリント材32aよりも粘度が高いため、押圧力不足により所望のパターンを形成することができない可能性がある。そこで、実施形態では、ショット領域内における未露光のインプリント材32aと半硬化状態のインプリント材32dの割合に応じて押圧力が決定される。
【0077】
また、型2を基板1上の粘度状態の違うインプリント材32aおよびインプリント材32dと接触させる場合、型2が滑るまたは型2が傾くことにより所望のパターンを形成することができない可能性がある。そこで、実施形態では、型2の姿勢を補正しながら接触動作が行われるようにしてもよい。接触動作時における型2の押圧力および型2の姿勢は、第1実施形態で説明したような方法で補正される。
【0078】
また、第1実施形態と同様に、型2の姿勢が傾かないように、ショット領域内のインプリント材の配置が対称形となるようにインプリント順を変えて露光を行ってもよい。インプリント装置101は、この一連の動作を基板1の全ショット領域に対して行い、型2のパターンを全ショット領域上に形成する。
【0079】
<物品製造方法の実施形態>
インプリント装置を用いて形成した硬化物のパターンは、各種物品の少なくとも一部に恒久的に、或いは各種物品を製造する際に一時的に、用いられる。物品とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、型等である。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMのような、揮発性或いは不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAのような半導体素子等が挙げられる。型としては、インプリント用のモールド等が挙げられる。
【0080】
硬化物のパターンは、上記物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられるか、或いは、レジストマスクとして一時的に用いられる。基板の加工工程においてエッチング又はイオン注入等が行われた後、レジストマスクは除去される。
【0081】
次に、物品製造方法について説明する。図12の工程SAでは、絶縁体等の被加工材2zが表面に形成されたシリコン基板等の基板1zを用意し、続いて、インクジェット法等により、被加工材2zの表面にインプリント材3zを付与する。ここでは、複数の液滴状になったインプリント材3zが基板上に付与された様子を示している。
【0082】
図12の工程SBでは、インプリント用の型4zを、その凹凸パターンが形成された側を基板上のインプリント材3zに向け、対向させる。図12の工程SCでは、インプリント材3zが付与された基板1zと型4zとを接触させ、圧力を加える。インプリント材3zは型4zと被加工材2zとの隙間に充填される。この状態で硬化用のエネルギーとして光を型4zを介して照射すると、インプリント材3zは硬化する。
【0083】
図12の工程SDでは、インプリント材3zを硬化させた後、型4zと基板1zを引き離すと、基板1z上にインプリント材3zの硬化物のパターンが形成される。この硬化物のパターンは、型の凹部が硬化物の凸部に、型の凸部が硬化物の凹部に対応した形状になっており、即ち、インプリント材3zに型4zの凹凸パターンが転写されたことになる。
【0084】
図12の工程SEでは、硬化物のパターンを耐エッチングマスクとしてエッチングを行うと、被加工材2zの表面のうち、硬化物が無いか或いは薄く残存した部分が除去され、溝5zとなる。図12の工程SFでは、硬化物のパターンを除去すると、被加工材2zの表面に溝5zが形成された物品を得ることができる。ここでは硬化物のパターンを除去したが、加工後も除去せずに、例えば、半導体素子等に含まれる層間絶縁用の膜、つまり、物品の構成部材として利用してもよい。
【0085】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0086】
100:インプリント装置、1:基板、2:型、10:基板保持部、20:型保持部、30:供給部、31:インプリント材、40:照射部、41:遮光部、50:制御部
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