(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】監視装置、モータ駆動装置及び監視方法
(51)【国際特許分類】
H02P 29/024 20160101AFI20240109BHJP
G05B 23/02 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
H02P29/024
G05B23/02 T
(21)【出願番号】P 2019231439
(22)【出願日】2019-12-23
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】後藤 大志
(72)【発明者】
【氏名】立田 昌也
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-296309(JP,A)
【文献】特開2003-319683(JP,A)
【文献】特開2014-045381(JP,A)
【文献】特開平03-139184(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 29/024
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロック信号を出力する通信回路から出力される前記クロック信号を取得する取得部と、
前記クロック信号の周期以下の周期を有する予め決められた参照クロック信号を用いて、前記取得部によって取得された前記クロック信号の波形を解析することで、前記通信回路の誤動作の兆候の有無を判定する監視部と、
を備え
、
前記参照クロック信号は、モータに電流を供給するインバータを制御する制御部から前記監視部に供給される、監視装置。
【請求項2】
請求項1に記載の監視装置において、
前記監視部は、解析した前記クロック信号の波形が、予め決められた基本波形と異なっている場合には、前記通信回路の誤動作の兆候があると判定する、監視装置。
【請求項3】
請求項2に記載の監視装置において、
前記監視部は、前記参照クロック信号の立ち上がり又は立ち下がりのタイミングで、前記クロック信号の電圧レベルを観測することで、前記クロック信号の波形を解析する、監視装置。
【請求項4】
請求項3に記載の監視装置において、
前記監視部は、前記クロック信号の電圧レベルがハイレベル又はローレベルに維持されている時間が時間閾値以上である場合に、前記通信回路の誤動作の兆候があると判定する、監視装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の監視装置が設けられたモータ駆動装置であって、
前記モータ駆動装置は、
前記モータに電流を供給する
前記インバータと、
前記モータに供給される電流を検出する電流検出部と、
前記インバータを制御する
前記制御部と、を備え、
前記通信回路は、前記クロック信号と、前記電流検出部が検出した検出信号に応じたデータとを前記制御部に出
力する、モータ駆動装置。
【請求項6】
クロック信号を出力する通信回路から出力される前記クロック信号を、取得部が取得する取得ステップと、
監視部が、前記クロック信号の周期以下の周期を有する予め決められた参照クロック信号を用いて、前記クロック信号の波形を解析することで、前記通信回路の誤動作の兆候の有無を判定する監視ステップと、
を有
し、
前記参照クロック信号は、モータに電流を供給するインバータを制御する制御部から前記監視部に供給される、監視方法。
【請求項7】
請求項6に記載の監視方法において、
前記監視ステップでは、解析した前記クロック信号の波形が、予め決められた基本波形と異なっている場合には、前記通信回路の誤動作の兆候があると判定する、監視方法。
【請求項8】
請求項7に記載の監視方法において、
前記監視ステップでは、前記参照クロック信号の立ち上がり又は立ち下がりのタイミングで、前記クロック信号の電圧レベルを観測することで、前記クロック信号の波形を解析する、監視方法。
【請求項9】
請求項8に記載の監視方法において、
前記監視ステップでは、前記クロック信号の電圧レベルがハイレベル又はローレベルに維持されている時間が時間閾値以上である場合に、前記通信回路の誤動作の兆候があると判定する、監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視装置、モータ駆動装置及び監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、モータを制御するマイクロコンピュータが複数備えられたモータ制御装置が開示されている。特許文献1では、各々のマイクロコンピュータは、他のマイクロコンピュータのスイッチング信号の出力を外したタイミングでモータの電流値を取り込む。このため、特許文献1では、スイッチングノイズの影響を回避することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1は、ノイズ等の影響による通信回路の誤動作の兆候を把握し得るものではない。
【0005】
本発明の目的は、通信回路の誤動作の兆候を把握し得る監視装置、モータ駆動装置及び監視方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様による監視装置は、クロック信号を出力する通信回路から出力される前記クロック信号を取得する取得部と、前記クロック信号の周期以下の周期を有する予め決められた参照クロック信号を用いて、前記取得部によって取得された前記クロック信号の波形を解析することで、前記通信回路の誤動作の兆候の有無を判定する監視部と、を備える。
【0007】
本発明の他の態様によるモータ駆動装置は、上記のような監視装置が設けられたモータ駆動装置であって、前記モータ駆動装置は、モータに電流を供給するインバータと、前記モータに供給される電流を検出する電流検出部と、前記インバータを制御する制御部と、を備え、前記通信回路は、前記クロック信号と、前記電流検出部が検出した検出信号に応じたデータとを前記制御部に出力し、前記制御部は、前記参照クロック信号を前記監視部に出力する。
【0008】
本発明の他の態様による監視方法は、クロック信号を出力する通信回路から出力される前記クロック信号を、取得部が取得する取得ステップと、監視部が、前記クロック信号の周期以下の周期を有する予め決められた参照クロック信号を用いて、前記クロック信号の波形を解析することで、前記通信回路の誤動作の兆候の有無を判定する監視ステップと、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、通信回路の誤動作の兆候を把握し得る監視装置、モータ駆動装置及び監視方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態によるモータ駆動装置の構成を示す図である。
【
図2】クロック信号と参照クロック信号とを示すタイムチャートである。
【
図3】外乱ノイズ等の影響によってクロック信号の電圧レベルがハイレベルに維持される状態の例を示すタイムチャートである。
【
図4】通信回路の経年劣化等の影響によってクロック信号の電圧レベルがローレベルに維持される状態の例を示すタイムチャートである。
【
図5】一実施形態による監視装置の動作の例を示すフローチャートである。
【
図6】一実施形態による監視装置の動作の例を示すフローチャートである。
【
図7】クロック信号と参照クロック信号とを示すタイムチャートである。
【
図8】外乱ノイズ等の影響によってクロック信号の電圧レベルがハイレベルに維持される状態の例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明による監視装置、モータ駆動装置及び監視方法について、好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して以下に詳細に説明する。
【0012】
[一実施形態]
一実施形態による監視装置、モータ駆動装置及び監視方法について
図1~
図6を用いて説明する。
図1は、本実施形態によるモータ駆動装置の構成を示す図である。
【0013】
本実施形態によるモータ駆動装置10は、モータ12を駆動させ得る。
【0014】
モータ駆動装置10には、モータ12に電流を供給するインバータ(インバータ装置)14が備えられている。インバータ14には、不図示のコンバータ回路と、不図示のコンデンサと、不図示のインバータ回路とが備えられている。コンバータ回路は、交流電源15から供給される交流電圧を直流電圧に変換する。コンデンサは、コンバータ回路に備えられた整流回路によって整流された直流電圧を平滑化する。インバータ回路は、コンバータ回路から供給される直流電圧を交流電圧に変換し、当該交流電圧をモータ12に供給することによりモータ12を駆動させ得る。
【0015】
モータ駆動装置10には、制御部16が更に備えられている。制御部16は、モータ駆動装置10の全体の制御を司る。制御部16は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサによって構成され得るが、これに限定されるものではない。制御部16は、インバータ14を制御し得る。制御部16は、インバータ回路等に備えられたスイッチング素子(パワー素子)を適宜スイッチングすることにより、モータ12を駆動し得る。制御部16は、後述する参照クロック信号RCLKを、後述する監視部22に出力し得る。
【0016】
モータ駆動装置10には、電流検出部18が更に備えられている。電流検出部18は、インバータ14とモータ12との間に備えられている。電流検出部18は、インバータ14からモータ12に供給される電流を検出する。電流検出部18は、インバータ14からモータ12に供給される電流に応じた検出信号を、後述する通信回路20に出力する。
【0017】
モータ駆動装置10には、通信回路20が更に備えられている。通信回路20は、電流検出部18から供給される検出信号に応じたデータDを、制御部16に出力する。即ち、通信回路20は、インバータ14からモータ12に供給される電流を示すデータDを、制御部16に出力する。通信回路20は、クロック信号CLKに従ってデータDを制御部16に出力する。通信回路20は、データDを制御部16に出力するのみならず、クロック信号CLKをも制御部16に出力する。
【0018】
モータ駆動装置10には、監視装置24が更に備えられている。監視装置24には、取得部21と、監視部22とが備えられている。取得部21と、監視部22とは、例えばCPU等のプロセッサによって構成され得るが、これに限定されるものではない。取得部21は、通信回路20から出力されるクロック信号CLKを取得し得る。監視部22は、取得部21によって取得されたクロック信号CLKの波形を解析し得る。監視部22は、クロック信号CLKの周期T1(
図2参照)以下の周期T2(
図2参照)を有する予め決められた参照クロック信号RCLKを用いて、クロック信号CLKの波形を解析し得る。参照クロック信号RCLKは、例えば制御部16から供給され得るが、これに限定されるものではない。
【0019】
外乱ノイズ、通信回路20の経年劣化等の影響によって通信回路20に誤動作の兆候がある場合には、クロック信号CLKの波形が通常時とは異なった状態となり得る。監視部22は、クロック信号CLKの波形を解析することで、通信回路20の誤動作の兆候の有無を判定し得る。監視部22は、解析したクロック信号CLKの波形が、予め決められた基本波形と異なっている場合には、通信回路20の誤動作の兆候があると判定する。基本波形は、通常時のクロック信号CLKの波形、即ち、外乱ノイズ等の影響を受けていないクロック信号CLKの波形と同等の波形である。
【0020】
監視部22は、参照クロック信号RCLKの立ち上がり又は立ち下がりのタイミングで、クロック信号CLKの電圧レベルを観測することで、クロック信号CLKの波形を解析し得る。即ち、監視部22は、参照クロック信号RCLKの立ち上がり又は立ち下がりのタイミングで、クロック信号CLKの電圧レベルを観測することで、解析したクロック信号CLKの波形が、予め決められた基本波形と異なっているか否かを判定し得る。
【0021】
図2は、クロック信号と参照クロック信号とを示すタイムチャートである。参照クロック信号RCLKの周期T2が、クロック信号CLKの周期T1より短く設定されている場合の例が
図2には示されている。ここでは、説明の便宜上、参照クロック信号RCLKの周期T2が、クロック信号CLKの周期T1の4分の1である場合の例が示されている。なお、クロック信号CLKをより高精度に解析する観点からは、参照クロック信号RCLKの周期T2が、クロック信号CLKの周期T1に対して充分に小さいことが好ましい。参照クロック信号RCLKの立ち上がりのタイミングでクロック信号CLKの電圧レベルが観測される場合の例が、
図2には示されている。
【0022】
図2に示す例においては、タイミングt1において参照クロック信号RCLKが立ち上がる。なお、タイミング一般について説明する際には、符号tを用い、個々のタイミングについて説明する際には、符号t1、t2、t3、・・・を用いる。監視部22は、タイミングt1において、クロック信号CLKの電圧レベルを観測する。
図2に示す例においては、タイミングt1におけるクロック信号CLKの電圧レベルはL、即ち、ローレベルである。
【0023】
タイミングt1に対して1周期T2だけ後のタイミングであるタイミングt2において、参照クロック信号RCLKが立ち上がる。監視部22は、タイミングt2において、クロック信号CLKの電圧レベルを観測する。
図2に示す例においては、タイミングt2におけるクロック信号CLKの電圧レベルはH、即ち、ハイレベルである。
【0024】
タイミングt2に対して1周期T2だけ後のタイミングであるタイミングt3において、参照クロック信号RCLKが立ち上がる。監視部22は、タイミングt3において、クロック信号CLKの電圧レベルを観測する。
図2に示す例においては、タイミングt3におけるクロック信号CLKの電圧レベルはHである。
【0025】
タイミングt3に対して1周期T2だけ後のタイミングであるタイミングt4において、参照クロック信号RCLKが立ち上がる。監視部22は、タイミングt4において、クロック信号CLKの電圧レベルを観測する。
図2に示す例においては、タイミングt4におけるクロック信号CLKの電圧レベルはLである。
【0026】
タイミングt4に対して1周期T2だけ後のタイミングであるタイミングt5において、参照クロック信号RCLKが立ち上がる。監視部22は、タイミングt5において、クロック信号CLKの電圧レベルを観測する。
図2に示す例においては、タイミングt5におけるクロック信号CLKの電圧レベルはLである。
【0027】
この後も、監視部22は、上記と同様にして、参照クロック信号RCLKの立ち上がりのタイミングt6、t7、t8、t9において、クロック信号CLKの電圧レベルを観測する。
図2に示す例においては、タイミングt6、t7、t8、t9におけるクロック信号CLKの電圧レベルはH、H、L、Lである。
【0028】
この後も、監視部22は、上記と同様にして、参照クロック信号RCLKの立ち上がりのタイミングt10、t11、t12、t13において、クロック信号CLKの電圧レベルを観測する。
図2に示す例においては、タイミングt10、t11、t12、t13におけるクロック信号CLKの電圧レベルはH、H、L、Lである。
【0029】
参照クロック信号RCLKの周期T2がクロック信号CLKの周期T1の4分の1である場合、参照クロック信号RCLKの立ち上がりのタイミングtで観測されるクロック信号CLKの電圧レベルは、上述したように、H、H、L、Lの繰り返しとなる。監視部22は、参照クロック信号RCLKの立ち上がりのタイミングtで順次観測されるクロック信号CLKの電圧レベルがH、H、L、Lの繰り返しである場合には、クロック信号CLKの波形が予め決められた基本波形と同じであると判定し得る。
【0030】
外乱ノイズ等の影響によって、クロック信号CLKの電圧レベルがハイレベル又はローレベルに維持される場合がある。通信回路20は、クロック信号CLKに従ってデータDを出力するため、クロック信号CLKがハイレベル又はローレベルに維持された場合には、データDが正常に出力されない可能性がある。即ち、クロック信号CLKの電圧レベルがハイレベル又はローレベルに維持された場合には、通信回路20に誤動作が生じている可能性がある。
【0031】
図3は、外乱ノイズ等の影響によってクロック信号の電圧レベルがハイレベルに維持される状態の例を示すタイムチャートである。なお、外乱ノイズ等の影響によってクロック信号CLKの電圧レベルがハイレベルに維持される状態の例が
図3には示されているが、外乱ノイズ等の影響によってクロック信号CLKの電圧レベルがローレベルに維持される場合もある。
図3に示す例においては、タイミングt1~t7で観測されるクロック信号CLKの電圧レベルは、
図2に示す例の場合と同様となっている。しかしながら、
図3に示す例においては、タイミングt8で観測されるクロック信号CLKのレベルは、Hとなっている。上述したように、
図2に示す例においては、タイミングt8で観測されるクロック信号CLKのレベルは、Lである。このように、
図3に示す例においては、タイミングt8で観測されるクロック信号CLKのレベルが、
図2に示す例の場合と異なっている。タイミングt8で観測されるクロック信号CLKのレベルが、
図2に示す例の場合と
図3に示す例の場合とで異なっているのは、
図3に示す例においては、タイミングt7とタイミングt8との間の期間において外乱ノイズ等の影響が生じたためである。
図3に示す例においては、タイミングt9以降で観測されるクロック信号CLKの電圧レベルは、
図2に示す例の場合と同様となっている。
【0032】
図2に示す例においては、タイミングt6~t9で観測されるクロック信号CLKの電圧レベルは、H、H、L、Lである。これに対し、
図3に示す例においては、タイミングt6~t9で観測されるクロック信号CLKの電圧レベルは、H、H、H、Lである。即ち、
図3に示す例においては、クロック信号CLKの波形が予め決められた基本波形と同じになっていない。クロック信号CLKの波形が予め決められた基本波形と同じになっていないため、監視部22は、通信回路20の誤動作の兆候があると判定する。
【0033】
図4は、通信回路の経年劣化等の影響によってクロック信号の電圧レベルがローレベルに維持される状態の例を示すタイムチャートである。なお、通信回路20の経年劣化等の影響によってクロック信号CLKの電圧レベルがローレベルに維持される場合の例が
図4には示されているが、通信回路20の経年劣化等の影響によってクロック信号CLKの電圧レベルがハイレベルに維持される場合もある。
図4に示す例においては、タイミングt1~t9で観測されるクロック信号CLKの電圧レベルは、
図2に示す例の場合と同様となっている。しかしながら、
図4に示す例においては、タイミングt10以降で観測されるクロック信号CLKのレベルは、L、L、L、L、・・・となっている。上述したように、
図2に示す例においては、タイミングt10以降で観測されるクロック信号CLKのレベルは、H、H、L、L、・・・である。このように、
図4に示す例においては、タイミングt10以降で観測されるクロック信号CLKのレベルが、
図2に示す例の場合と異なっている。タイミングt10以降で観測されるクロック信号CLKのレベルが、
図2に示す例の場合と
図3に示す例の場合とで異なっているのは、
図4に示す例においては、タイミングt8以降において通信回路20の経年劣化等の影響が生じたためである。
【0034】
図2に示す例においては、タイミングt10~t13で観測されるクロック信号CLKの電圧レベルは、H、H、L、Lである。これに対し、
図4に示す例においては、タイミングt10~t13で観測されるクロック信号CLKの電圧レベルは、L、L、L、Lである。即ち、
図4に示す例においては、クロック信号CLKの波形が予め決められた基本波形と同じになっていない。クロック信号CLKの波形が予め決められた基本波形と同じになっていないため、監視部22は、通信回路20の誤動作の兆候があると判定する。
【0035】
本実施形態による監視装置24の動作の例について
図5を用いて説明する。
図5は、本実施形態による監視装置の動作の例を示すフローチャートである。
【0036】
ステップS1において、通信回路20は、クロック信号CLKに従ったデータDを出力するとともにクロック信号CLKを出力する。ステップS1は、継続的に行われる。
【0037】
ステップS2において、監視部22は、参照クロック信号RCLKを用いて、クロック信号CLKの波形を解析する。ステップS2は、継続的に行われる。
【0038】
ステップS3において、監視部22は、解析したクロック信号CLKの波形が、予め決められた基本波形と異なっているか否かを判定する。解析したクロック信号CLKの波形が、予め決められた基本波形と異なっている場合には(ステップS3においてYES)、ステップS4に遷移する。解析したクロック信号CLKの波形が、予め決められた基本波形と異なっていない場合には(ステップS3においてNO)、ステップS5に遷移する。
【0039】
ステップS4において、監視部22は、通信回路20の誤動作の兆候があると判定する。こうして、
図5に示す処理が完了する。
【0040】
ステップS5において、監視部22は、通信回路20の誤動作の兆候がないと判定する。こうして、
図5に示す処理が完了する。
【0041】
監視部22は、クロック信号CLKの電圧レベルがH又はLに維持されている時間が時間閾値Tth以上である場合に、通信回路20の誤動作の兆候があると判定するようにしてもよい。クロック信号CLKが正常な場合には、クロック信号CLKがH又はLに維持されている時間は、クロック信号CLKの周期の2分の1である。かかる時間閾値Tthは、クロック信号CLKの周期の2分の1に対してある程度のマージンが確保された値に設定され得る。クロック信号CLKがHに維持されている時間の始期は、例えば、クロック信号CLKの電圧レベルがLからHに遷移したことが監視部22によって検出されたタイミングである。クロック信号CLKがHに維持されている時間の終期は、例えば、クロック信号CLKの電圧レベルがHからLに遷移したことが監視部22によって検出されたタイミングである。クロック信号CLKがLに維持されている時間の始期は、例えば、クロック信号CLKの電圧レベルがHからLに遷移したことが監視部22によって検出されたタイミングである。クロック信号CLKがLに維持されている時間の終期は、例えば、クロック信号CLKの電圧レベルがLからHに遷移したことが監視部22によって検出されたタイミングである。
【0042】
本実施形態による監視装置24の動作の例について
図6を用いて説明する。
図6は、本実施形態による監視装置の動作の例を示すフローチャートである。クロック信号CLKの電圧レベルがハイレベル又はローレベルに維持されている時間が時間閾値Tth以上である場合に通信回路20の誤動作の兆候があると判定する例が
図6には示されている。
【0043】
ステップS1において、通信回路20は、クロック信号CLKに従ったデータDを出力するとともにクロック信号CLKを出力する。ステップS1は、継続的に行われる。
【0044】
ステップS2において、監視部22は、参照クロック信号RCLKを用いて、クロック信号CLKの波形を解析する。ステップS2は、継続的に行われる。
【0045】
ステップS11において、監視部22は、クロック信号CLKの電圧レベルがH又はLに維持されている時間が時間閾値Tth以上であるか否かを判定する。クロック信号CLKの電圧レベルがH又はLに維持されている時間が時間閾値Tth以上である場合には(ステップS11においてYES)、ステップS4に遷移する。クロック信号CLKの電圧レベルがH又はLに維持されている時間が時間閾値Tth未満である場合には(ステップS11においてNO)、ステップS5に遷移する。
【0046】
ステップS4において、監視部22は、通信回路20の誤動作の兆候があると判定する。こうして、
図6に示す処理が完了する。
【0047】
ステップS5において、監視部22は、通信回路20の誤動作の兆候がないと判定する。こうして、
図6に示す処理が完了する。
【0048】
このように、本実施形態では、クロック信号CLKの周期T1以下の周期T2を有する予め決められた参照クロック信号RCLKを用いて、クロック信号CLKの波形が解析される。解析したクロック信号CLKの波形が、予め決められた基本波形と異なっている場合には、通信回路20の誤動作の兆候があると判定される。このように、本実施形態によれば、通信回路20の誤動作の兆候の有無を良好に把握することができる。
【0049】
(変形例)
本実施形態の変形例による監視装置について
図7及び
図8を用いて説明する。
図7は、クロック信号と参照クロック信号とを示すタイムチャートである。
【0050】
本変形例では、参照クロック信号RCLKの周期T2が、クロック信号CLKの周期T1と同等に設定されている。本変形例では、参照クロック信号RCLKの立ち上がりのタイミングと立ち下がりのタイミングとでクロック信号CLKの電圧レベルが観測される。
【0051】
図7に示すように、タイミングt21において参照クロック信号RCLKが立ち上がる。なお、タイミング一般について説明する際には、符号tを用い、個々のタイミングについて説明する際には、符号t21、t22、t23、・・・を用いる。監視部22は、タイミングt21において、クロック信号CLKの電圧レベルを観測する。
図7に示す例においては、タイミングt21におけるクロック信号CLKの電圧レベルはH、即ち、ハイレベルである。
【0052】
タイミングt21に対して半周期((T2)/2)だけ後のタイミングであるタイミングt22において、参照クロック信号RCLKが立ち下がる。監視部22は、タイミングt22において、クロック信号CLKの電圧レベルを観測する。
図7に示す例においては、タイミングt22におけるクロック信号CLKの電圧レベルはL、即ち、ローレベルである。
【0053】
タイミングt22に対して半周期((T2)/2)だけ後のタイミングであるタイミングt23において、参照クロック信号RCLKが立ち上がる。監視部22は、タイミングt23において、クロック信号CLKの電圧レベルを観測する。
図7に示す例においては、タイミングt23におけるクロック信号CLKの電圧レベルはHである。
【0054】
タイミングt23に対して半周期((T2)/2)だけ後のタイミングであるタイミングt24において、参照クロック信号RCLKが立ち下がる。監視部22は、タイミングt24において、クロック信号CLKの電圧レベルを観測する。
図7に示す例においては、タイミングt24におけるクロック信号CLKの電圧レベルはLである。
【0055】
タイミングt24に対して半周期((T2)/2)だけ後のタイミングであるタイミングt25において、参照クロック信号RCLKが立ち上がる。監視部22は、タイミングt25において、クロック信号CLKの電圧レベルを観測する。
図7に示す例においては、タイミングt25におけるクロック信号CLKの電圧レベルはHである。
【0056】
この後も、監視部22は、上記と同様にして、参照クロック信号RCLKの立ち上がりのタイミングt26、t27、t28、t29、t30において、クロック信号CLKの電圧レベルを観測する。
図7に示す例においては、タイミングt26、t27、t28、t29、t30におけるクロック信号CLKの電圧レベルはL、H、L、H、Lである。
【0057】
参照クロック信号RCLKの周期T2がクロック信号CLKの周期T1と同等である場合、参照クロック信号RCLKの立ち上がり及び立ち下がりのタイミングtで観測されるクロック信号CLKの電圧レベルは、上述したように、H、L、H、Lの繰り返しとなる。監視部22は、参照クロック信号RCLKの立ち上がり及び立ち下がりのタイミングtで順次観測されるクロック信号CLKの電圧レベルがH、L、H、Lの繰り返しである場合には、クロック信号CLKの波形が予め決められた基本波形と同じであると判定し得る。
【0058】
上述したように、外乱ノイズ等の影響、通信回路20の経年劣化等の影響によって、クロック信号CLKの電圧レベルがハイレベル又はローレベルに維持される場合がある。
図8は、外乱ノイズ等の影響によってクロック信号の電圧レベルがハイレベルに維持される状態の例を示すタイムチャートである。
図8に示す例においては、タイミングt21~t23で観測されるクロック信号CLKの電圧レベルは、
図7に示す例の場合と同様となっている。しかしながら、
図8に示す例においては、タイミングt24で観測されるクロック信号CLKのレベルは、Hとなっている。上述したように、
図7に示す例においては、タイミングt24で観測されるクロック信号CLKのレベルは、Lである。このように、
図8に示す例においては、タイミングt24で観測されるクロック信号CLKのレベルが、
図7に示す例の場合と異なっている。タイミングt24で観測されるクロック信号CLKのレベルが、
図7に示す例の場合と
図8に示す例の場合とで異なっているのは、
図8に示す例においては、タイミングt23とタイミングt24との間の期間において外乱ノイズ等の影響が生じたためである。
図8に示す例においては、タイミングt25以降で観測されるクロック信号CLKの電圧レベルは、
図7に示す例の場合と同様となっている。
【0059】
図7に示す例においては、タイミングt23、t24で観測されるクロック信号CLKの電圧レベルは、H、Lである。これに対し、
図8に示す例においては、タイミングt23、t24で観測されるクロック信号CLKの電圧レベルは、H、Hである。即ち、
図8に示す例においては、クロック信号CLKの波形が予め決められた基本波形と同じになっていない。クロック信号CLKの波形が予め決められた基本波形と同じになっていないため、監視部22は、通信回路20の誤動作の兆候があると判定する。
【0060】
このように、参照クロック信号RCLKの周期T2が、クロック信号CLKの周期T1と同等に設定されていてもよい。本変形例によっても、通信回路20の誤動作の兆候の有無を良好に把握することができる。
【0061】
本発明についての好適な実施形態を上述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能である。
【0062】
例えば、上記実施形態では、参照クロック信号RCLKが制御部16から監視部22に供給される場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、参照クロック信号RCLKを生成するクロック発振回路が、監視部22内に備えられていてもよい。
【0063】
上記実施形態をまとめると以下のようになる。
【0064】
監視装置(24)は、クロック信号(CLK)を出力する通信回路(20)から出力される前記クロック信号を取得する取得部(21)と、前記クロック信号の周期(T1)以下の周期(T2)を有する予め決められた参照クロック信号(RCLK)を用いて、前記取得部によって取得された前記クロック信号の波形を解析することで、前記通信回路の誤動作の兆候の有無を判定する監視部(22)と、を備える。このような構成によれば、通信回路の誤動作の兆候の有無を良好に把握することができる。
【0065】
前記監視部は、解析した前記クロック信号の波形が、予め決められた基本波形と異なっている場合には、前記通信回路の誤動作の兆候があると判定するようにしてもよい。
【0066】
前記監視部は、前記参照クロック信号の立ち上がり又は立ち下がりのタイミングで、前記クロック信号の電圧レベルを観測することで、前記クロック信号の波形を解析するようにしてもよい。
【0067】
前記監視部は、前記クロック信号の電圧レベルがハイレベル又はローレベルに維持されている時間が時間閾値(Tth)以上である場合に、前記通信回路の誤動作の兆候があると判定するようにしてもよい。
【0068】
モータ駆動装置(10)は、上記のような監視装置が設けられたモータ駆動装置であって、前記モータ駆動装置は、モータ(12)に電流を供給するインバータ(14)と、前記モータに供給される電流を検出する電流検出部(18)と、前記インバータを制御する制御部(16)と、を備え、前記通信回路は、前記クロック信号と、前記電流検出部が検出した検出信号に応じたデータ(D)とを前記制御部に出力し、前記制御部は、前記参照クロック信号を前記監視部に出力する。
【0069】
監視方法は、クロック信号を出力する通信回路から出力される前記クロック信号を、取得部が取得する取得ステップ(S1)と、監視部が、前記クロック信号の周期以下の周期を有する予め決められた参照クロック信号を用いて、前記クロック信号の波形を解析することで、前記通信回路の誤動作の兆候の有無を判定する監視ステップ(S2~S5)と、を有する。
【0070】
前記監視ステップでは、解析した前記クロック信号の波形が、予め決められた基本波形と異なっている場合には、前記通信回路の誤動作の兆候があると判定するようにしてもよい。
【0071】
前記監視ステップでは、前記参照クロック信号の立ち上がり又は立ち下がりのタイミングで、前記クロック信号の電圧レベルを観測することで、前記クロック信号の波形を解析するようにしてもよい。
【0072】
前記監視ステップでは、前記クロック信号の電圧レベルがハイレベル又はローレベルに維持されている時間が時間閾値以上である場合に、前記通信回路の誤動作の兆候があると判定するようにしてもよい。
【0073】
前記参照クロック信号は、モータに電流を供給するインバータを制御する制御部から前記監視部に供給されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0074】
10:モータ駆動装置 12:モータ
14:インバータ 15:交流電源
16:制御部 18:電流検出部
20:通信回路 21:取得部
22:監視部 24:監視装置
CLK:クロック信号 D:データ
RCLK:参照クロック信号 Tth:時間閾値