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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】高周波入力結合器
(51)【国際特許分類】
   H01P 1/04 20060101AFI20240109BHJP
   H01P 1/08 20060101ALI20240109BHJP
   H05H 7/02 20060101ALI20240109BHJP
   H05H 7/16 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
H01P1/04
H01P1/08
H05H7/02
H05H7/16
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020006182
(22)【出願日】2020-01-17
(65)【公開番号】P2021114690
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】503382542
【氏名又は名称】キヤノン電子管デバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀治
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-141849(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 1/04
H01P 1/08
H01P 5/00- 5/22
H05H 7/02
H05H 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円環状の高周波透過窓、この高周波透過窓の内周側に接合される内側スリーブ、この内側スリーブに接合される真空側内側チョーク、前記高周波透過窓の外周側に接合される外側スリーブ、この内側スリーブに接合される真空側外側チョークを有する高周波透過窓構体と、
前記真空側外側チョークに取り付けられる外導体と、
前記外導体の内側に配置される内導体と、
前記内導体を前記真空側内側チョークに着脱可能に取り付ける着脱取付機構と
を備え
前記着脱取付機構は、前記内導体と前記真空側内側チョークとのいずれか一方に設けられたねじ孔と、他方に設けられ前記ねじ孔に螺合されるねじ軸とを有する
ことを特徴とする高周波入力結合器
【請求項2】
円環状の高周波透過窓、この高周波透過窓の内周側に接合される内側スリーブ、この内側スリーブに接合される真空側内側チョーク、前記高周波透過窓の外周側に接合される外側スリーブ、この内側スリーブに接合される真空側外側チョークを有する高周波透過窓構体と、
前記真空側外側チョークに取り付けられる外導体と、
前記外導体の内側に配置される内導体と、
前記内導体を前記真空側内側チョークに着脱可能に取り付ける着脱取付機構と
を備え、
前記着脱取付機構は、前記内導体に設けられたねじ孔と、前記真空側内側チョークを挿通して前記内導体の前記ねじ孔に螺合され前記内導体を前記真空側内側チョークに締結するボルトとを有する
ことを特徴とする高周波入力結合器。
【請求項3】
前記内導体と前記真空側内側チョークの互いに対向される対向面の少なくとも一方は、溝部を有する
ことを特徴とする請求項または記載の高周波入力結合器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、高周波入力結合器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、荷電粒子(電子,イオン,陽子)加速器において、クライストロンなどの高周波増幅器から放出された高周波(マイクロ波)を加速空胴に入射する際に高周波入力結合器(カプラ)が用いられている。この高周波入力結合器は、加速空胴に高周波(マイクロ波)を入射するとき、加速空胴に対して良好なカップリングを持たせることのできる構造を有している。高周波入力結合器は、主に高周波透過窓構体と外導体と内導体(アンテナ)より構成される。外導体は主にろう接やボルト締めで高周波透過窓構体と接合され、内導体は主にろう接や溶接で高周波透過窓構体と接合される。外導体と内導体は同軸構造を形成しており、同軸度が高いこと(外導体に対し、内導体の偏芯が少ないこと)、内導体の表面が平滑であることなどが要求される。
【0003】
高周波入力結合器は、その製造工程において、内導体は主にろう接や溶接で高周波透過窓構体と接合される。製造工程中の取り扱いなどで内導体の表面に傷や打痕などを発生させてしまう場合もある。実際に高周波透過窓構体を使用する際には内導体はハイパワーな高周波に曝されることになるので、このような内導体の表面の傷や打痕は放電や電界放出の原因になる。
【0004】
そのため、内導体の表面にキズや打痕を発生させてしまった場合、高周波入力結合器全体が不良品となることもある。このような場合、内導体だけ交換できれば、高周波入力結合器全体が不良品となることはなくなるが、内導体を高周波透過窓構体にろう接や溶接で一度接合すると取り外すことはできなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-113503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、内導体を交換可能とする高周波入力結合器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態の高周波入力結合器は、円環状の高周波透過窓、高周波透過窓の内周側に接合される内側スリーブ、内側スリーブに接合される真空側内側チョーク、高周波透過窓の外周側に接合される外側スリーブ、内側スリーブに接合される真空側外側チョークを有する高周波透過窓構体と、真空側外側チョークに取り付けられる外導体と、外導体の内側に配置される内導体と、内導体を真空側内側チョークに着脱可能に取り付ける着脱取付機構とを備える。着脱取付機構は、内導体と真空側内側チョークとのいずれか一方に設けられたねじ孔と、他方に設けられねじ孔に螺合されるねじ軸とを有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態を示す高周波入力結合器の断面図である。
図2】高周波入力結合器の基本的な概略構造を示す断面図である。
図3】第2の実施形態を示す高周波入力結合器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、第1の実施形態を、図1および図2を参照して説明する。
【0010】
図2は高周波入力結合器10の基本的な概略構造を示す断面図である。高周波入力結合器10は、一端側(図2の下側)である大気側が例えばクライストロンなどの高周波増幅器の導波管に接続され、他端側(図2の上側)である真空側が加速器に接続される。高周波入力結合器10は、高周波増幅器から放射された高周波(マイクロ波)を伝送する図示しない導波管と加速器の加速空胴との間を結合するとともに、大気側である導波管内の大気圧と真空側である加速空胴内の高真空とを隔絶し、高周波を加速空胴に入射するのに用いられる。
【0011】
高周波入力結合器10は、中心軸12を中心として同軸に配置される円筒状の外導体13と円柱状の内導体14を有している。これら外導体13と内導体14との間を通じて高周波を伝送する。さらに、高周波入力結合器10は、外導体13および内導体14と接合される高周波透過窓構体15を備えている。
【0012】
外導体13は、例えば銅などの金属製で、円筒状に形成されている。外導体13は、例えばろう接(ろう付け接合)やボルト締めで高周波透過窓構体15と接合されている。
【0013】
内導体14は、例えば銅などの金属製で、円柱状に形成されている。内導体14は、外導体13の内側に位置され、先端側が外導体13の先端側よりも突出されている。この内導体14の先端側は、加速器の加速空胴に突出配置されるアンテナ部14aである。なお、内導体14の内部は空胴状に設けられていてもよい。
【0014】
高周波透過窓構体15は、大気側と真空側とを隔離して気密を保ち高周波を透過する高周波透過窓17、高周波の伝送路を構成する外側スリーブ18および内側スリーブ19を備えている。高周波透過窓17の材料には、例えばアルミナなどのセラミックが用いられている。高周波透過窓17は、中央に円形の孔を有する円板状(円環状)に形成されている。そして、高周波透過窓17の孔に内側スリーブ19が挿入され、高周波透過窓17が外側スリーブ18の内側に挿入され、高周波透過窓17の外側および内側が外側スリーブ18および内側スリーブ19に対してそれぞれろう接により接合されている。また、外側スリーブ18および内側スリーブ19の材料には、例えば銅が用いられている。外側スリーブ18および内側スリーブ19は、同軸に配置させるように円筒状に形成されている。
【0015】
高周波透過窓構体15は、外側スリーブ18の大気側および真空側の端部にそれぞれ接合されている大気側外側チョーク20および真空側外側チョーク21、内側スリーブ19の大気側および真空側の端部にそれぞれ接合されている大気側内側チョーク22および真空側内側チョーク23、大気側外側チューク20と真空側外側チョーク21の外周部に接合されて連結する外周円筒24、大気側外側チョーク20に接合されている大気側フランジ25、および真空側外側チョーク21に設けられているまたは接合されている真空側フランジ26をさらに備えている。これらの各接合にはろう接もしくは溶接が用いられている。大気側フランジ25は高周波増幅器の導波管にボルト締めで接合され、真空側フランジ26は外導体13がろう接またはボルト締めで接合されている。
【0016】
そして、一般的に、内導体14は高周波透過窓構体15の真空側内側チョーク23にろう接や溶接で接合されている。そのため、製造工程中に内導体14の表面に傷や打痕などを発生させてしまった場合、内導体14だけを交換することができず、高周波入力結合器10全体が不良品となることがある。
【0017】
次に、図1は第1の実施形態の高周波入力結合器10を示す。
【0018】
高周波入力結合器10は、内導体14を高周波透過窓構体15に着脱可能に取り付ける着脱取付機構30を備えている。
【0019】
着脱取付機構30は、内導体14に対向する高周波透過窓構体15の真空側内側チョーク23の端面の中心に設けられたねじ孔31と、高周波透過窓構体15の真空側内側チョーク23に対向する内導体14の端面の中心から突設されたねじ軸32とを備えている。そして、ねじ軸32がねじ孔31に螺合されることにより、内導体14が高周波透過窓構体15の真空側内側チョーク23に接合して取り付けられる。ねじ孔31とねじ軸32は、高周波入力結合器10の中心軸12を中心として設けられている。
【0020】
なお、内導体14側にねじ孔31を設け、高周波透過窓構体15の真空側内側チョーク23側にねじ軸32を設けてもよい。
【0021】
また、内導体14と対向する真空側内側チョーク23の端面には、周辺部に内導体14と接合する環状の接合部33が設けられているとともに、この接合部33の内側領域であってねじ孔31に連通する内側領域に凹状の溝部34が設けられている。
【0022】
なお、内導体14側に、接合部33および溝部34を設けてもよい。あるいは、高周波透過窓構体15の真空側内側チョーク23と内導体14の両方に、接合部33および溝部34を設けてもよい。
【0023】
そして、内導体14のねじ軸32を高周波透過窓構体15の真空側内側チョーク23のねじ孔31に螺合することにより、内導体14を高周波透過窓構体15の真空側内側チョーク23に接合させて締め付け固定できる。
【0024】
このとき、真空側内側チョーク23の端面には周辺部の接合部33の内側領域に溝部34が設けられていることにより、真空側内側チョーク23の端面の内側領域は内導体14と接合せず、真空側内側チョーク23の端面の周辺部である接合部33だけが内導体14と接合し、これら接合部33と内導体14との間に強い締付力が作用し、真空側内側チョーク23と内導体14の電気的な接触を確実にすることができる。
【0025】
また、仮に製造工程中に内導体14の表面に傷や打痕などを発生させてしまった場合には、内導体14を螺合解除方向に回動させることにより、内導体14だけを外して交換することができる。
【0026】
そして、第1の実施形態によれば、内導体14を高周波透過窓構体15に着脱可能に取り付ける着脱取付機構30を備えることにより、内導体14だけを交換することができる。
【0027】
また、着脱取付機構30は、内導体14と高周波透過窓構体15のいずれか一方に設けられたねじ孔31と、他方に設けられねじ孔31に螺合されるねじ軸32とを有する構成とすることにより、簡単な構成で内導体14を着脱可能にできる。
【0028】
また、内導体14と高周波透過窓構体15の互いに対向される対向面の少なくとも一方が溝部34を有することにより、ねじ孔31とねじ軸32の螺合による締付力が内導体14と高周波透過窓構体15との接合面に作用し、内導体14と高周波透過窓構体15との電気的な接触を確実にすることができる。
【0029】
次に、図3は第2の実施形態の高周波入力結合器10を示す。
【0030】
第1の実施形態とは着脱取付機構30の構成が異なる。
【0031】
着脱取付機構30は、高周波透過窓構体15に対向する内導体14の端面に設けられたねじ孔41と、高周波透過窓構体15を挿通して内導体14のねじ孔41に螺合されるボルト42とを有している。そして、ボルト42により、内導体14を高周波透過窓構体15に締結する。
【0032】
ボルト42は、頭部42aおよびねじ軸部42bを有している。ボルト42のねじ軸部42bが高周波透過窓構体15の大気側から挿通され、高周波透過窓構体15を貫通して内導体14のねじ孔41に螺合される。
【0033】
真空側内側チョーク23の中心には、ボルト42のねじ軸部42bが挿通される挿通孔43が設けられている。真空側内側チョーク23の大気側にはボルト42の頭部42aが係合する凹状の係合部44が設けられている。
【0034】
また、内導体14と真空側内側チョーク23が互いに対向する対向面には、周辺部に互いに接合する環状の接合部45,33が設けられているとともに、これら接合部45,33の内側領域であってねじ孔41および挿通孔43にそれぞれ連通する内側領域に凹状の溝部34が設けられている。
【0035】
また、内導体14と真空側内側チョーク23は、例えばステンレス鋼製で、表面に銅のめっき層が形成されている。そのため、内導体14と真空側内側チョーク23の間に例えばアルミニウム製の断面略六角で環状のシール部材46を挟み込み、内導体14と真空側内側チョーク23の間の真空気密を確保するように構成されている。
【0036】
そして、シール部材46を介在して内導体14と真空側内側チョーク23を組み合わせ、ボルト42を真空側内側チョーク23の挿通孔43の大気側から挿通して内導体14のねじ孔41に螺合することにより、内導体14を真空側内側チョーク23に接合させて締め付け固定する。
【0037】
このとき、内導体14と真空側内側チョーク23の互いに対向する端面には周辺部の接合部45,33の内側領域に溝部34が設けられていることにより、内導体14と真空側内側チョーク23の端面の内側領域は接合せず、内導体14と真空側内側チョーク23の端面の周辺部である接合部45,33だけが接合し、これら接合部45,33の間に強い締付力が作用し、内導体14と真空側内側チョーク23との電気的な接触を確実にすることができる。
【0038】
さらに、内導体14と真空側内側チョーク23の間でシール部材46を挟み込み、内導体14と真空側内側チョーク23の間の真空気密を確保する。
【0039】
また、仮に製造工程中に内導体14の表面に傷や打痕などを発生させてしまった場合には、ボルト42を螺合解除方向に回動させることにより、ボルト42が内導体14から外れ、内導体14だけを外して交換することができる。
【0040】
そして、第2の実施形態によれば、内導体14を高周波透過窓構体15に着脱可能に取り付ける着脱取付機構30を備えることにより、内導体14だけを交換することができる。
【0041】
また、着脱取付機構30は、内導体14に設けられたねじ孔41と、高周波透過窓構体15を挿通して内導体14のねじ孔41に螺合され内導体14を高周波透過窓構体15に締結するボルト42とを有する構成とすることにより、簡単な構成で内導体14を着脱可能にできる。
【0042】
また、内導体14と高周波透過窓構体15の互いに対向される対向面の少なくとも一方が溝部34を有することにより、ねじ孔41とボルト42の螺合による締付力が内導体14と高周波透過窓構体15との接合面に作用し、内導体14と高周波透過窓構体15との電気的な接触を確実にすることができる。
【0043】
なお、ボルト42は、1本に限らず、複数本を用いてもよい。
【0044】
また、着脱取付機構30は、例えば内導体14を高周波透過窓構体15に引っ掛けて取り付ける爪構造でもよい。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0046】
10 高周波入力結合器
13 外導体
14 内導体
15 高周波透過窓構体
18 外側スリーブ
19 内側スリーブ
21 真空側外側スリーブ
23 真空側内側スリーブ
30 着脱取付機構
31 ねじ孔
32 ねじ軸
34 溝部
41 ねじ孔
42 ボルト
図1
図2
図3