(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】蓄電デバイスの測定装置及び測定方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/385 20190101AFI20240109BHJP
G01R 19/00 20060101ALI20240109BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240109BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20240109BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
G01R31/385
G01R19/00 B
H01M10/48 P
H01M10/44 Q
H02J7/00 Q
(21)【出願番号】P 2020006183
(22)【出願日】2020-01-17
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 哲哉
【審査官】小川 浩史
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-75483(JP,A)
【文献】特開2018-96960(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102015200406(DE,A1)
【文献】特許第7217681(JP,B2)
【文献】特許第7328820(JP,B2)
【文献】国際公開第2021/145437(WO,A1)
【文献】特開2021-113728(JP,A)
【文献】特開2021-113729(JP,A)
【文献】特開2021-113730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36-31/396
G01R 19/00-19/32
H01M 10/42-10/48
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電デバイスの自己放電電流を測定する測定装置であって、
測定対象物
である前記蓄電デバイスの電圧の基準となる基準電圧を出力する基準デバイスと、
前記基準デバイスと前記測定対象物との電位差を測定する電位差測定手段と、
前記電位差に相当する定電圧を前記基準電圧に重畳した重畳電圧を前記測定対象物に印加する電圧印加手段と、
前記重畳電圧を印加した前記測定対象物に流れる電流を測定する電流測定手段と、
測定した前記電流に基づいて前記測定対象物の自己放電電流を演算する演算手段と、
を含む蓄電デバイスの測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電デバイスの測定装置であって、
前記測定対象物は、第一の蓄電デバイスであり、
前記基準デバイスは、
前記第一の蓄電デバイスと同じ種類である第二の蓄電デバイスである、
蓄電デバイスの測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の蓄電デバイスの測定装置であって、
前記第一及び第二の蓄電デバイスは、互いに同じ空間に配置される、
蓄電デバイスの測定装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の蓄電デバイスの測定装置であって、
前記第一及び第二の蓄電デバイスの充電状態の程度は、互いに等しい、
蓄電デバイスの測定装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の蓄電デバイスの測定装置であって、
前記基準電圧は、前記電位差が1V未満となるように設定される、
蓄電デバイスの測定装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の蓄電デバイスの測定装置であって、
前記演算手段は、前記電流測定手段によって測定される前記電流が収束したときの電流値を前記測定対象物の自己放電電流として算出する、
蓄電デバイスの測定装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の蓄電デバイスの測定装置であって、
前記電圧印加手段は、前記電位差測定手段によって測定される前記電位差に基づいて、前記基準電圧に前記定電圧を重畳することにより前記重畳電圧を印加し続ける、
蓄電デバイスの測定装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の蓄電デバイスの測定装置であって、
前記測定対象物の負極と接地線との電位差を測定する負極電圧測定手段をさらに備え、
前記電圧印加手段は、前記負極電圧測定手段によって測定される前記電位差に基づいて前記定電圧の大きさを調整し、
前記電流測定手段は、前記測定対象物に流れる電流として、前記重畳電圧を印加した前記測定対象物の負極と前記接地線との間に流れる電流を測定し、
前記演算手段は、前記電流測定手段によって測定される前記電流を用いて前記測定対象物の自己放電電流を算出する、
蓄電デバイスの測定装置。
【請求項9】
蓄電デバイスの電圧の基準となる基準電圧を出力する基準デバイスを用いて前記蓄電デバイスの自己放電電流を測定する測定方法であって、
前記蓄電デバイスと前記基準デバイスとの電位差を測定する電位差測定ステップと、
測定した前記電位差に相当する電圧を前記基準デバイスの電圧に重畳して当該電圧を前記蓄電デバイスに印加する電圧印加ステップと、
前記蓄電デバイスに流れる電流を測定する電流測定ステップと、
測定した前記電流に基づいて前記蓄電デバイスの自己放電電流を演算する演算ステップと、
を含む蓄電デバイスの測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電デバイスの自己放電電流を測定する測定装置及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、蓄電電池の開回路電圧を測定して第1の電圧を蓄電電池に提供した後、蓄電電池の端子電圧を測定して第2の電圧を蓄電電池に提供することで蓄電電池の自己放電電流を求めるシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような測定装置は、蓄電電池などの蓄電デバイスの開回路電圧に相当する第1の電圧を生成した後、蓄電電池の端子電圧を測定し、さらに測定した値を用いて第1の電圧を第2の電圧に調整することが必要になる。このため、自己放電電流を測定する際の測定処理が複雑になってしまう。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、簡易に蓄電デバイスの自己放電電流を測定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の態様によれば、蓄電デバイスの自己放電電流を測定する測定装置は、測定対象物である蓄電デバイスの電圧の基準となる基準電圧を出力する基準デバイスと、前記基準デバイスと前記測定対象物との電位差を測定する電位差測定手段と、を含む。さらに測定装置は、前記電位差に相当する定電圧を生成することにより当該定電圧を前記基準電圧に重畳した電圧を前記測定対象物に印加する電圧印加手段と、前記電圧印加手段と前記測定対象物との間に流れる電流を測定する電流測定手段と、前記電流測定手段により測定される前記電流に基づいて前記測定対象物の自己放電電流を演算する演算手段と、を含む。
【0007】
本発明の第二の態様によれば、蓄電デバイスの電圧の基準となる基準電圧を出力する基準デバイスを用いて前記蓄電デバイスの自己放電電流を測定する測定方法は、前記蓄電デバイスと前記基準デバイスとの電位差を測定する電位差測定ステップを含む。さらに測定方法は、測定した前記電位差に相当する電圧を生成するとともに前記基準デバイスの電圧に重畳して前記蓄電デバイスに印加する電圧印加ステップと、前記蓄電デバイスに流れる電流を測定する電流測定ステップと、測定した前記電流に基づいて前記測定対象物の自己放電電流を演算する演算ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
これらの態様によれば、基準デバイスを用いることによって蓄電デバイスの電圧値に相当する電圧を蓄電デバイス自身に簡易に印加することが可能になる。したがって、簡易に蓄電デバイスの自己放電電流を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る蓄電デバイスの測定装置の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、第2実施形態に係る測定装置の構成を示す図である。
【
図3】
図3は、蓄電デバイスの自己放電電流を演算する手法を説明するための図である。
【
図4A】
図4Aは、蓄電デバイスの電圧と静電容量との関係を説明するための図である。
【
図4B】
図4Bは、蓄電デバイスの静電容量と測定時間との関係を説明するための図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態に係る蓄電デバイスの測定方法の処理手順例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、蓄電デバイスの測定方法に含まれる漏れ電流演算処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、第3実施形態に係る測定装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本発明の各実施形態について説明する。
【0011】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る蓄電デバイス10の測定装置1について説明する。以下、蓄電デバイス10の測定装置のことを単に「測定装置」と称する。
【0012】
図1は、本実施形態における蓄電デバイス10の構成及び測定装置1の構成を示す図である。
【0013】
蓄電デバイス10は、測定対象物であり、例えば、リチウムイオン二次電池の単一の蓄電セルである。蓄電デバイス10は、二次電池(化学電池)に限らず、例えば、電気二重層キャパシタであってもよい。また、蓄電デバイス10は、複数の蓄電セルが直列に接続されてなる蓄電モジュールであってもよい。
【0014】
蓄電デバイス10は、
図1のように、等価回路モデルによって示される。蓄電デバイス10は、等価回路モデルによれば、正極電極11と、負極電極12と、蓄電部13と、内部抵抗14と、並列抵抗15と、を有する。
【0015】
蓄電部13は、蓄電デバイス10の静電容量成分である。蓄電部13は、蓄電デバイス10のセル電圧よりも高い電圧が印加されると、電荷が蓄積されて充電される。蓄電部13では、充電時に流れる電流が比較的小さい場合には主に電気二重層反応が起こり、充電時に流れる電流が比較的大きい場合には主に化学反応が起こる。ここでは、蓄電部13の静電容量をCst[F]とし、蓄電部13に流れる電流をIst[A]とする。
【0016】
内部抵抗14は、正極電極11と負極電極12との間で、蓄電部13に直列に接続される直列抵抗である。ここでは、内部抵抗14の抵抗値をRir[mΩ]とし、内部抵抗14に流れる電流をIir[A]とする。
【0017】
並列抵抗15は、蓄電部13に並列に接続される抵抗であり、本実施形態では放電抵抗とも称される。並列抵抗15には、蓄電デバイス10の自己放電電流、いわゆる漏れ電流が流れる。ここでは、並列抵抗15の抵抗値をRpr[kΩ]とし、並列抵抗15に流れる自己放電電流をIpr[A]とする。
【0018】
測定装置1は、蓄電デバイス10の自己放電電流を測定するための検査装置又は検査システムである。
【0019】
本実施形態では、測定装置1は、蓄電デバイス10に対して蓄電デバイス10の開放電圧(開回路電圧)と略同一の電圧を印加し続けるとともに、電圧印加に伴って蓄電デバイス10に流入又は流出する電流の変化を検出する。そして測定装置1は、検出した電流の変化に基づいて蓄電デバイス10の自己放電電流Iprを算出する。
【0020】
測定装置1は、基準デバイス20と、電位差測定手段としての電圧計30と、電圧印加手段としての電圧印加部40と、電流測定手段としての電流計50と、演算手段としてのコントローラ60と、操作部70と、表示部80と、を備える。コントローラ60、操作部70及び表示部80は一体として構成されてもよく、別体として構成されてもよい。
【0021】
基準デバイス20は、蓄電デバイス10の電圧の基準となる基準電圧を出力する直流源であり、本実施形態では電圧生成回路などの電気回路によって構成される。基準デバイス20から出力される基準電圧は、蓄電デバイス10の電圧と基準電圧との電位差が蓄電デバイス10の電圧に比べて小さくなるように定められる。例えば、基準電圧の大きさは、複数の蓄電デバイス10の電圧についての平均値、最頻値又は中央値などの統計値に設定される。
【0022】
本実施形態では、基準デバイス20の基準電圧は、蓄電デバイス10の電圧を基準とし所定の範囲内の値に設定される。例えば、蓄電デバイス10の電圧が3V(ボルト)程度である場合、所定の範囲は、蓄電デバイス10の電圧に対して「-1V」から「+1V」までの範囲に設定される。即ち、基準電圧は、蓄電デバイス10の電圧と基準電圧との電位差が1V未満となるように予め定められる。
【0023】
また、電圧計30が7桁半(7 1/2)の直流電圧計である場合は、電圧計30の分解能を確保する観点から、上記所定の範囲は、蓄電デバイス10の電圧に対して「-100mV」から「+100mV」までの範囲に設定することが好ましい。この場合は、7桁半(7 1/2)の直流電圧計の分解能を10[nV]まで上げたとしても、電位差を高い精度で測定することが可能となる。
【0024】
あるいは、電圧計30が測定レンジを「±10mV」まで縮小可能な直流電圧計である場合は、上記所定の範囲は、蓄電デバイス10の電圧に対して「-10mV」から「+10mV」までの範囲に設定することがより好ましい。
【0025】
電圧計30は、蓄電デバイス10の電圧と基準デバイス20の基準電圧との電位差を測定する電圧測定回路である。例えば、電圧計30は、蓄電デバイス10及び基準デバイス20の両者を開放した状態において両者間の電位差を測定する。具体的には、電圧計30は、蓄電デバイス10の開放電圧と基準デバイス20の開放電圧との電位差を測定する。
【0026】
このように、蓄電デバイス10及び基準デバイス20間の電位差を測定することにより、蓄電デバイス10の電圧自体を直接測定する場合に比べて電圧計30の分解能を上げられるので、測定値の有効数字を増やすことができる。これにより、蓄電デバイス10の電圧自体を直接測定する場合に比べて、蓄電デバイス10に印加される電圧を厳密に蓄電デバイス10の電圧値に近づけることが可能となる。また、電圧計30は、測定した電位差を時系列に示す電気信号をコントローラ60に出力する。
【0027】
電圧印加部40は、電圧計30によって測定された電位差に相当する定電圧を基準デバイス20の基準電圧に重畳(合成)した電圧である重畳電圧を蓄電デバイス10に印加する。ここにいう定電圧とは、電圧計30による電位差の測定値に相当する一定の電圧のことである。
【0028】
電圧印加部40は、基準デバイス20に直列接続される。また、電圧印加部40には、電圧印加部40から出力される電流が蓄電デバイス10を経由して電圧印加部40に戻る電流経路を構成するための信号線401が接続される。信号線401の一端は電圧印加部40に接続され、他端は蓄電デバイス10の負極電極12と基準デバイス20の負極電極との双方に接続される。
【0029】
例えば、電圧印加部40は、定電圧回路によって構成され、電圧計30によって測定された電位差に相当する定電圧を生成することにより、生成した定電圧を基準電圧に重畳して、蓄電デバイス10に印加される重畳電圧を生成する。
【0030】
あるいは、電圧印加部40は、一般的な加算回路によって構成することもできる。この場合、電圧印加部40は、電圧計30による電位差の測定値を示す電圧指令信号をコントローラ60から受信すると、その電圧指令信号に応じて、電位差の測定値に相当する定電圧を基準電圧に加算することにより、いわゆるオフセット補正を行う。
【0031】
この場合、加算回路のうち一方の入力端子にはコントローラ60の制御端子が接続され、他方の入力端子には基準デバイス20の正極電極が接続される。そして、加算回路を構成するオペアンプ(増幅回路)の非反転入力端子(+)には信号線401が接続され、加算回路の二つの入力端子の各々は、互いに抵抗素子を介してオペアンプの反転入力端子(-)に接続される。また、加算回路を構成する三つの抵抗素子の値は、電圧計30による電位差の測定値に相当する定電圧が生成されるとともに当該定電圧が基準電圧に加算されるように定められる。
【0032】
このように、電圧印加部40は、コントローラ60からの指示に従い、電圧計30によって測定された電位差に基づいて、当該電位差の測定値に相当する定電圧を基準電圧に重畳することにより蓄電デバイス10に重畳電圧を印加し続ける。このため、電圧印加部40により、蓄電デバイス10の正極電極11と負極電極12との両電極間には、生成された定電圧を基準電圧に重畳した重畳電圧が印加される。
【0033】
このとき、電圧印加部40によって生成される定電圧は、電圧計30による電位差の測定値に基づいて設定される。電圧計30による電位差の測定値については、上述のように、蓄電デバイス10の電圧自体を直接測定した値に比べて有効桁数が多くなるので、測定値の確度が高い。それゆえ、電圧印加部40は、確度の高い定電圧を生成することができる。
【0034】
したがって、電圧印加部40は、基準デバイス20及び電圧印加部40から蓄電デバイス10に印加される重畳電圧を、比較的厳密に、蓄電デバイス10の電圧値となるように調整することができる。例えば、重畳電圧は、蓄電デバイス10の電圧値に対して、マイクロボルト(μV)単位以下の精度で調整される。
【0035】
蓄電デバイス10に対して一定の重畳電圧が印加されると、電圧印加部40と蓄電デバイス10との間に電流が流れて両者は平衡状態となる。このとき、蓄電デバイス10に印加される重畳電圧と蓄電デバイス10自体の電圧との差分が小さくなるほど、重畳電圧を印加してから平衡状態に到達するまでの時間が短くなる。したがって、蓄電デバイス10への印加電圧の誤差が小さくなるほど測定時間を短縮することが可能となる。
【0036】
平衡状態においても、蓄電デバイス10の並列抵抗15に自己放電電流Iprが流れ続けるので、蓄電部13に蓄積された電荷は並列抵抗15を通過して負極電極12に移動する。一方、蓄電部13には電圧印加部40から一定の重畳電圧が印加された状態であるため、自己放電によって蓄電部13の電荷が減少した分だけ、電圧印加部40から蓄電部13に電荷が補充される。それゆえ、電圧印加部40から蓄電デバイス10には、蓄電デバイス10の自己放電電流Iprの大きさと同程度の電流が流れ続けることになる。
【0037】
電流計50は、電圧印加部40から蓄電デバイス10に一定の重畳電圧を印加した状態において蓄電デバイス10に流れる電流を測定する電流測定回路である。
【0038】
本実施形態では、電流計50は、IV変換回路によって構成される。このIV変換回路は、入力電流がバーチャルショートでグランドに流れることになるので、測定対象物の終点に配置される。このため、電流計50は、蓄電デバイス10の負極電極12側に配置され、電圧印加部40の接地端子に接続される信号線401と蓄電デバイス10の負極電極12との間に流れる電流を測定する。これに代えて、電流計50は、蓄電デバイス10の正極電極11側に配置され、電圧印加部40の出力端子と蓄電デバイス10の正極電極11との間に流れる電流を測定してもよい。
【0039】
このように、電流計50は、電圧印加部40から重畳電圧を印加した状態での蓄電デバイス10に流れる電流を測定し、測定した電流の大きさを時系列に示す電気信号を蓄電デバイス10の自己放電電流Iprとしてコントローラ60に出力する。
【0040】
コントローラ60は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータによって構成される制御装置である。
【0041】
コントローラ60は、複数のマイクロコンピュータによって構成することも可能である。コントローラ60は、ROMに記憶されたプログラムをCPUによって読み出すことにより、電圧計30、電圧印加部40及び電流計50などの測定装置1の各部の動作を制御する。
【0042】
コントローラ60は、電圧計30を用いて電圧印加部40から蓄電デバイス10への電圧供給を制御し、その後に電流計50を用いて蓄電デバイス10の自己放電電流特性を求める。即ち、コントローラ60は、電流計50が測定した電流に基づいて蓄電デバイス10の自己放電電流Iprを演算する。
【0043】
本実施形態では、コントローラ60は、蓄電デバイス10と基準デバイス20との電位差の測定値を電圧計30から取得し、取得した測定値と同じ値を示す電圧指令値を電圧印加部40に出力する。これにより、電圧印加部40は、蓄電デバイス10と基準デバイス20との電位差に相当する定電圧を生成して定電圧と基準電圧とを重畳した重畳電圧を蓄電デバイス10の正極電極11に印加する。
【0044】
電圧印加部40から蓄電デバイス10の正極電極11に重畳電圧を印加した状態において、コントローラ60は、蓄電デバイス10の負極電極12から出力される電流の大きさを示す電気信号を電流計50から取得する。そしてコントローラ60は、取得した電気信号に基づいて正極電極11から負極電極12に流れる電流が収束したときの電流値を検出し、検出した電流値を蓄電デバイス10の自己放電電流Iprとして推定する。
【0045】
そして、コントローラ60は、自己放電電流Iprの推定値が正常範囲内にある場合には、蓄電デバイス10が正常であると判定し、自己放電電流Iprの推定値が正常範囲内にない場合には、蓄電デバイス10が異常であると判定する。このように、コントローラ60は、蓄電デバイス10の良否を判定する。コントローラ60は、蓄電デバイス10の良否を判定した結果、又は自己放電電流Iprの推定値などを表示部80に出力する。
【0046】
操作部70は、測定装置1の動作を操作するマウス及びキーボードなどの入力装置によって構成される。操作部70は、例えば、蓄電デバイス10の自己放電電流Iprを測定する測定処理の開始又は停止をコントローラ60に指示する。
【0047】
表示部80は、コントローラ60による判定結果又は演算結果などの情報を表示して使用者に通知する。表示部80は、例えばタッチスクリーンであり、使用者が情報を視認可能、かつ使用者が操作可能なように構成されてもよい。
【0048】
次に、第1実施形態による作用効果について説明する。
【0049】
本実施形態における蓄電デバイス10の自己放電電流Iprを測定する測定装置1は、測定対象物である蓄電デバイス10の電圧の基準となる基準電圧を出力する基準デバイス20と、基準デバイス20と蓄電デバイス10との電位差を測定する電圧計30と、を備える。さらに測定装置1は、電圧計30によって測定された電位差に相当する定電圧を基準電圧に重畳した重畳電圧を蓄電デバイス10に印加する電圧印加部40と、電圧印加部40と蓄電デバイス10との間に流れる電流を測定する電流計50と、を備える。そして測定装置1は、電流計50により測定される電流に基づいて蓄電デバイス10の自己放電電流Iprを演算するコントローラ60と、を含む。
【0050】
この構成によれば、基準デバイス20を用いることにより蓄電デバイス10に対して自己の電圧値に相当する電圧を簡易に印加することが可能となる。したがって、簡易な構成により、蓄電デバイス10の自己放電電流Iprを測定することができる。
【0051】
これに加え、基準デバイス20の電圧を基準とし、電圧計30を用いて蓄電デバイス10の電圧を間接的に測定することで電圧計30の分解能を上げられるので、蓄電デバイス10の電圧自体を直接測定した場合に比べて測定値の誤差を小さくすることができる。
【0052】
このように、確度の高い測定値に基づいて電位差に相当する定電圧の値がマイクロボルト(μV)単位以下の精度で厳密に設定されるので、蓄電デバイス10への印加電圧を蓄電デバイス10自体の電圧値に精度よく調整することができる。また、電圧印加部40によって生成される定電圧の大きさは、蓄電デバイス10の電圧から基準デバイス20の電圧を差し引いた差分であるため、蓄電デバイス10の電圧自体を生成する場合に比べて電圧印加部40の回路構成を簡易にすることができる。
【0053】
即ち、本実施形態によれば、基準デバイス20を用いることによって、蓄電デバイス10の電圧自体を直接測定したときの測定値に蓄電デバイス10への印加電圧を調整する場合に比べて簡易かつ正確に、蓄電デバイス10の電圧値に調整することが可能となる。これにより、電圧印加部40から蓄電デバイス10に流れる電流が収束するのに要する時間が短くなるので、短い時間で蓄電デバイス10における自己放電電流Iprを測定することができる。
【0054】
さらに、蓄電デバイス10に重畳電圧を印加してから電流計50によって測定される電流が収束するまでの電流変動(低下量)が抑制されるので、信号対雑音比(S/N比)が高くなる。それゆえ、蓄電デバイス10に流れる電流が収束したときの電流値を、収束前の電流の変化率から精度よく予測することが可能となる。これにより、電流が収束する前に蓄電デバイス10の自己放電電流Iprが得られるので、測定時間をさらに短縮することができる。
【0055】
また、本実施形態における電圧印加部40は、電圧計30によって測定された電位差に基づき、当該電位差に相当する定電圧を基準デバイス20の基準電圧に重畳する。これにより、電圧印加部40は、蓄電デバイス10の電圧に相当する電圧を印加し続ける。
【0056】
この構成によれば、電圧計30による電位差の測定値については、蓄電デバイス10の電圧自体を直接測定した場合に比べて確度が高くなる。このため、確度の高い測定値を用いて定電圧を生成することができるので、蓄電デバイス10に印加される重畳電圧を蓄電デバイス10の電圧値となるよう厳密に調整することが可能となる。
【0057】
また、本実施形態における基準デバイス20の基準電圧は、蓄電デバイス10及び基準デバイス20間の電位差が1V未満となるように設定される。これにより、例えば3[V]以上の蓄電デバイス10を直接測定する場合に比べて電圧計30の分解能を上げられるので、電圧計30による測定値の測定精度と略同じ精度で蓄電デバイス10への印加電圧を調整することができる。
【0058】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る測定装置2について
図2乃至
図6を参照しながら説明する。
【0059】
図2は、本実施形態における測定装置2の構成を示す図である。測定装置2のうち
図1に示した測定装置1と同じ構成については同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0060】
本実施形態の測定装置2は、基準デバイス20の一例として測定対象物と同じ種類である蓄電デバイス10Aを備えており、この点が第1実施形態とは異なる。さらに本実施形態では、電圧印加部40が定電圧生成回路41及びスイッチ42を備えている。
【0061】
蓄電デバイス10Aは、蓄電デバイス10に印加される電圧の基準となる基準電圧を生成する基準デバイス20を構成する。本実施形態では、蓄電デバイス10Aは、蓄電デバイス10と種類が同じ蓄電デバイスである。そのため、測定対象物である蓄電デバイス10を第一の蓄電デバイスと称し、基準デバイス20を構成する蓄電デバイス10Aを第二の蓄電デバイス又は他の蓄電デバイスと称することができる。
【0062】
蓄電デバイス10Aの電気特性は、蓄電デバイス10と同様の電気特性を有する。このため、蓄電デバイス10Aの電圧(起電圧)は、雰囲気温度及び雰囲気湿度などの周囲環境の変化に起因して、蓄電デバイス10の電圧変動と同じように変動する。
【0063】
さらに蓄電デバイス10,10Aの電圧の温度特性は、蓄電デバイス10,10Aの充電状態によっても変化する。即ち、蓄電デバイス10,10Aの温度特性は、蓄電デバイス10,10Aの電圧値ごとに変化する。このため、基準デバイス20の充電状態は、測定対象物である蓄電デバイス10の充電状態に近づけることが好ましい。それゆえ、蓄電デバイス10及び基準デバイス20としては、充電状態の程度が互いに等しい二つの蓄電デバイスを用意することが好ましい。
【0064】
また、本実施形態において、蓄電デバイス10及び蓄電デバイス10Aは互いに同じ空間に配置される。例えば、蓄電デバイス10及び蓄電デバイス10Aは、雰囲気温度を一定に維持可能な恒温槽の中に配置される。
【0065】
定電圧生成回路41は、電圧計30によって測定される電位差に基づいて当該電位差に相当する定電圧を生成する。定電圧生成回路41は、所定の基準電位を生成する基準電源と、基準電源にて生成される基準電位を増幅するオペアンプ(増幅回路)と、を備え、このオペアンプは、コントローラ60からの電圧指令値に応じて基準電位の増幅率を変化させる。
【0066】
スイッチ42は、蓄電デバイス10A及び定電圧生成回路41から基準電圧と定電圧との重畳電圧を蓄電デバイス10に印加するための接続回路である。スイッチ42は、コントローラ60からの指示に従って、蓄電デバイス10と基準デバイス20との間を接続する。
【0067】
本実施形態では、電圧計30が蓄電デバイス10と基準デバイス20との電位差を測定している間は、スイッチ42は、定電圧生成回路41と蓄電デバイス10の正極電極11との間を遮断する。これにより、蓄電デバイス10及び基準デバイス20の双方が開放状態となるので、定電圧生成回路41から双方にノイズが混入するのを抑制することができる。それゆえ、上記電位差を精度よく測定することができる。
【0068】
そして、定電圧生成回路41が電位差の測定値に基づき定電圧を生成した後、スイッチ42は、定電圧生成回路41と蓄電デバイス10の正極電極11との間を接続する。スイッチ42は、コントローラ60から電流計50による電流測定の停止を指示するための制御信号を受け付けると、定電圧生成回路41と蓄電デバイス10の正極電極11との間を遮断する。
【0069】
次に、
図3を参照して、蓄電デバイス10の自己放電電流Iprを演算する手法について説明する。
【0070】
図3は、電圧印加部40から蓄電デバイス10に流入する充電電流の変化の例を示す図である。縦軸は、電流計50を用いて測定された蓄電デバイス10の充電電流[mA]であり、横軸は、充電電流が1.0[mA]まで低下した時点からの経過時間[s]である。
【0071】
図3に示す例では、蓄電デバイス10はリチウムイオン電池である。そして破線及び実線のデータは、共に、雰囲気温度が22±2[℃]の温度範囲内に収まるよう管理された空間で蓄電デバイス10の充電電流を測定したときのデータであり、蓄電デバイス10が正常な状態であるときの電流変化である。
【0072】
破線のデータは、蓄電デバイス10Aからなる基準デバイス20を用いて蓄電デバイス10の充電電流を測定したときのデータであり、蓄電デバイス10及び10A間の電位差は5[mV]である。
【0073】
詳細には、破線のデータは、蓄電デバイス10及び10A間の電位差の測定値に相当する定電圧を基準電圧に重畳して蓄電デバイス10に印加したときの充電電流の変化である。即ち、破線のデータは、本実施形態の測定装置2によって取得された電流変化の例である。この例では、蓄電デバイス10及び蓄電デバイス10Aが同じ空間に配置されている。
【0074】
一方、実線のデータは、基準デバイス20を用いることなく、電源回路により蓄電デバイス10の電圧自体の測定値と略同一の定電圧を生成して蓄電デバイス10に印加したときの電流変化を示す比較例である。この定電圧の調整精度は、本実施形態の重畳電圧と同程度とした。
【0075】
この比較例では、電源回路から蓄電デバイス10への印加電圧は一定であるのに対し、雰囲気温度の僅かな変化によって蓄電デバイス10の電圧自体が変動しているため、蓄電デバイス10の充電電流が上下に変動しながら徐々に低下している。この理由について詳細に説明する。
【0076】
蓄電デバイス10がリチウムイオン電池である場合は、蓄電デバイス10を収容している部屋の雰囲気温度が約0.5[℃]変化しただけでも、蓄電デバイス10の電圧は約5[μV]変動する。これに対し、蓄電デバイス10の自己放電電流Iprを精度よく測定するには、マイクロボルト(μV)単位以下の精度で蓄電デバイス10への印加電圧を調整することが必要になる。このため、蓄電デバイス10の温度変化に伴って蓄電デバイス10の電圧が変動すると、変動した分だけ蓄電デバイス10の充電電流も大きく変動してしまう。
【0077】
それゆえ、
図3に示すように、経過時間が概ね3,800[s]を経過した時点においては、実線のデータが0[mA]を下回ってしまい、蓄電デバイス10から放電電流が流出していることがわかる。このように、雰囲気温度の僅かな変化によって蓄電デバイス10の電圧が変動して蓄電デバイス10の電圧が電源回路から印加されている電圧よりも高くなってしまい、コントローラ60での自己放電電流Iprの測定処理に大きな影響を与えてしまう。
【0078】
この対策として、本実施形態では、蓄電デバイス10と同じ種類の蓄電デバイス10Aが基準デバイス20として用いられているので、雰囲気温度が僅かに変化したとしても、蓄電デバイス10の電圧変動と同じように基準デバイス20の基準電圧も変動する。
【0079】
それゆえ、
図3に示すように、破線のデータは、実線のデータに比べて上下の変動が抑えられた状態で、時間の経過とともになだらかに低下している。そして、経過時間が測定時間Tに達したところで、蓄電デバイス10の充電電流が殆ど変化しなくなり、充電電流が概ね一定となって収束する。この収束した充電電流の値が蓄電デバイス10の自己放電電流Iprとして推定される。
【0080】
このように、蓄電デバイス10と同様の電気特性を有する蓄電デバイス10Aを基準デバイス20として用いることにより、蓄電デバイス10の周囲環境に起因する電圧変動に合わせて、蓄電デバイス10に印加される重畳電圧を変化させることができる。したがって、電流計50によって測定される電流において、蓄電デバイス10の自己放電に起因する漏れ電流成分を維持しつつ、その他の環境起因の電圧変動に伴うノイズ成分を低減することができる。
【0081】
仮に、雰囲気湿度の僅かな変化によっても電圧が変動するような蓄電デバイス10を測定対象物とする場合であっても、その測定対象物と同種の蓄電デバイスを基準デバイス20として用いることにより、上記ノイズ成分を低減することができる。このように、雰囲気温度及び雰囲気湿度などの周囲環境の変化に伴って蓄電デバイス10の電圧が変動するような場合は、特に、同種の蓄電デバイス10Aを基準デバイス20として用いることで、蓄電デバイス10の自己放電電流Iprを正確に測定することが可能となる。
【0082】
次に、
図4A及び
図4Bを参照して、蓄電デバイス10における蓄電部13の静電容量Cstを考慮した自己放電電流Iprの測定手法について説明する。
【0083】
図4Aは、蓄電デバイス10の電圧と蓄電デバイス10の静電容量Cstとの関係を例示する図である。
図4Bは、蓄電デバイス10の静電容量Cstと蓄電デバイス10の充電電流の変化との関係を例示する図である。
【0084】
図4Aにおいて、横軸が蓄電デバイス10の電圧であり、縦軸が蓄電デバイス10の静電容量Cstである。そして実線のデータは、リチウムイオン電池からなる蓄電デバイス10の電圧-静電容量特性を実測したデータである。
【0085】
図4Aに示す最小点Aは、蓄電デバイス10の電圧が約3.0[V]のときに蓄電デバイス10の静電容量Cstが最小となる点であり、最大点Bは、蓄電デバイス10の電圧が約3.7[V]のときに静電容量Cstが最大となる点である。また、極小点Cは、蓄電デバイス10の電圧が約3.0[V]のときに静電容量Cstが極小となる点である。
【0086】
この例では、蓄電デバイス10の充電量が増加するにつれて蓄電デバイス10の電圧が上昇するので、蓄電デバイス10の電圧値は、蓄電デバイス10の充電状態を示す指標とみなすことができる。このため、
図4Aに示すように、蓄電デバイス10の電圧値によって蓄電デバイス10の静電容量Cstが変化することから、蓄電デバイス10の充電状態によって蓄電デバイス10の静電容量Cstが変化することがわかる。
【0087】
蓄電デバイス10の静電容量Cstは、蓄電デバイス10に重畳電圧を印加してから蓄電デバイス10の充電電流が収束するまでの測定時間に影響を与える。具体的には、蓄電デバイス10の静電容量Cstが大きくなるほど上記測定時間は長くなってしまう。
【0088】
なお、
図3に示した破線のデータは最大点Bにおいて取得されたものであり、自己放電電流Iprの測定時間Tは比較的長いといえる。続いて、測定時間と蓄電デバイス10の静電容量Cstとの関係について
図4Bを参照して説明する。
【0089】
図4Bにおいて、縦軸及び横軸は、
図3の縦軸及び横軸と同じである。そして破線のデータは、
図4Aに示した最大点Bでの蓄電デバイス10の充電電流の変化であり、
図3に示した破線のデータと同じである。
【0090】
図4Bに示す実線のデータは、
図4Aに示した最小点Aでの蓄電デバイス10の充電電流の変化である。即ち、実線のデータは、蓄電デバイス10の静電容量Cstが最小となる電圧値(充電状態)において電流計50が測定した充電電流の変化であり、この測定時間T1は、破線のデータの測定時間Tに比べて短くなっている。
【0091】
このように、蓄電デバイス10の静電容量Cstが比較的小さくなる蓄電デバイス10の充電状態のときに、蓄電デバイス10の自己放電電流Iprを測定することにより、測定時間をさらに短縮することができる。例えば、
図4Aに示す極小点Cにおいて蓄電デバイス10の充電電流を測定することにより、蓄電デバイス10が安定した状態において迅速に蓄電デバイス10の自己放電電流Iprを求めることができる。
【0092】
次に、上記実施形態における蓄電デバイス10の自己放電電流Iprを測定する測定方法について
図5を参照して説明する。
【0093】
図5は、測定装置2を用いた測定方法の一例を示すフローチャートである。なお、
図5に示される処理手順例は、測定装置1を用いた測定方法にも適用することができる。
【0094】
図5に示す例では、測定装置2は、例えば雰囲気温度を一定に維持可能な恒温槽の中に蓄電デバイス10及び基準デバイス20を収容するなどし、これらの温度変化を抑制した環境にて蓄電デバイス10の自己放電電流Iprを測定する測定処理を実行する。
【0095】
まず、上記測定処理を実行するにあたり、測定装置1を蓄電デバイス10に接続する。本実施形態では、電圧計30、電圧印加部40及び電流計50を介して、蓄電デバイス10と基準デバイス20とが互いに並列に接続される。
【0096】
ステップS1では、基準デバイス20は、蓄電デバイス10の電圧の基準となる基準電圧を出力する。例えば、基準デバイス20と電圧印加部40との間に、双方を互いに接続又は遮断するスイッチが配置されている場合は、コントローラ60は、基準デバイス20の基準電圧が電圧印加部40に供給されるよう、スイッチの通電状態をOFFからONに切り替える。
【0097】
ステップS2では、電圧計30は、基準デバイス20と蓄電デバイス10との電位差を測定する。本実施形態では、コントローラ60は、電圧計30に対して基準デバイス20の基準電圧と蓄電デバイス10の電圧との電位差を測定させる。これにより、蓄電デバイス10及び基準デバイス20間の電位差の大きさに対応する電気信号、即ち電位差の測定値が、電圧計30からコントローラ60に供給される。
【0098】
ステップS3では、電圧印加部40は、蓄電デバイス10及び基準デバイス20間の電位差に相当する定電圧を生成する。本実施形態では、コントローラ60は、電位差の測定値と同じ値である電圧指令値を電圧印加部40に出力する。これにより、電圧印加部40の出力電圧は、マイクロボルト単位以下の精度で蓄電デバイス10及び基準デバイス20間の電位差となるよう厳密に調整される。
【0099】
ステップS4では、電圧印加部40は、生成した定電圧を基準デバイス20の基準電圧に重畳して蓄電デバイス10に印加する。本実施形態では、コントローラ60は、蓄電デバイス10と定電圧生成回路41との間を接続するよう、スイッチ42の通電状態をOFFからONに切り替える。
【0100】
ステップS5では、電流計50は、重畳電圧を印加した状態での蓄電デバイス10に流れる電流を測定する。本実施形態では、コントローラ60は、電流計50に対して電圧印加部40と蓄電デバイス10との間に流れる電流の測定を開始させる。これにより、蓄電デバイス10に流れる電流の大きさに対応する電気信号が電流計50からコントローラ60に供給される。
【0101】
ステップS6では、コントローラ60は、電流計50からの電気信号に示される電流に基づいて蓄電デバイス10の自己放電電流Iprを演算する。本実施形態では、コントローラ60は、自己放電電流Iprを演算するための漏れ電流演算処理を実行する。この漏れ電流演算処理については
図6を参照して後述する。
【0102】
ステップS6の処理が完了すると、本実施形態における測定方法についての一連の処理手順が終了する。
【0103】
図6は、ステップS6で実行される漏れ電流演算処理の一例を示すフローチャートである。この例では、コントローラ60は、漏れ電流演算処理(S6)として、電圧印加部40から蓄電デバイス10に流れる印加電流の変化に基づいて蓄電デバイス10の良否を判定する。
【0104】
ステップS61では、コントローラ60は、電圧印加部40と蓄電デバイス10との間に流れる電流が収束したか否かを判定する。本実施形態では、コントローラ60は、電流計50が測定した電流の変化率が所定の値を下回る場合には、その電流が収束したと判定し、電流の変化率が所定の値以上である場合には、その電流が収束していないと判定する。所定の値は、例えばゼロ又は電流計50の測定精度を考慮した値に設定される。
【0105】
これに代えて、コントローラ60は、所定の時間連続して電流の変化率が所定の値を下回る場合に、電流が収束したと判定してもよい。あるいは、
図3に示したように、コントローラ60は、電流計50が測定した電流の大きさが例えば1[mA]などの特定の電流値に達してからの経過時間が所定の測定時間Tにした場合に、電流が収束したと判定してもよい。
【0106】
このように、コントローラ60は、電流計50によって測定される電流が収束したか否か、即ち電流の変化が殆どなくなったか否かを判定することができる。
【0107】
ステップS61にて、電流計50によって測定される電流が収束していないと判定された場合には、コントローラ60は、電流が収束したと判定されるまで待機する。一方、電流が収束したと判定された場合には、コントローラ60は、ステップS62へ移行する。
【0108】
ステップS62では、コントローラ60は、電流計50によって測定される電流が収束したときの電流値を求め、その電流値を蓄電デバイス10の自己放電電流Iprとして設定する。このように、コントローラ60は、蓄電デバイス10の自己放電電流Iprを演算する。
【0109】
ステップS63では、コントローラ60は、演算した自己放電電流Iprの電流値が所定の閾値Th以下であるか否か、即ち自己放電電流Iprの電流値が適正であるか又は過小であるかを判断する。このように、コントローラ60は、自己放電電流Iprの電流値が閾値Thを超えているか否かを判断する。所定の閾値Thは、蓄電デバイス10の製品規格、実験データ、統計データ、又はシミュレーション結果などを考慮してあらかじめ定められる。
【0110】
そして、自己放電電流Iprの電流値が閾値Th以下であると判断された場合には、蓄電デバイス10が正常な状態、即ち放電抵抗の抵抗値が適正範囲内にあるので、コントローラ60は、ステップS64へ移行する。一方、ステップS63にて、自己放電電流Iprの電流値が閾値Thを上回ると判断された場合には、蓄電デバイス10の自己放電電流Iprが異常な状態、即ち放電抵抗の抵抗値が過小であるので、コントローラ60は、ステップS65へ移行する。
【0111】
ステップS64では、コントローラ60は、蓄電デバイス10が正常な状態であるとして、表示部80にその旨を表示して通知する。一方、ステップS65では、コントローラ60は、蓄電デバイス10が異常な状態であるとして、表示部80にその旨を表示して通知する。
【0112】
このように、ステップS64の処理が完了すると、蓄電デバイス10の良否判定が完了して漏れ電流演算処理(S6)が終了する。そして
図5に示す処理手順に戻り、本実施形態における測定方法についての一連の処理手順が終了する。
【0113】
次に、第2実施形態による作用効果について説明する。
【0114】
本実施形態において、第一の蓄電デバイスである蓄電デバイス10を測定する測定装置2は、第1実施形態と同様、基準デバイス20、電圧計30、電圧印加部40、電流計50及びコントローラ60を含む。そして基準デバイス20は、第二の蓄電デバイスである蓄電デバイス10Aからなる。
【0115】
この構成によれば、第1実施形態と同様、基準デバイス20を用いることにより、電圧計30の分解能を上げられるので、蓄電デバイス10に印加される電圧の調整精度を高めることができる。これにより、蓄電デバイス10の自己放電電流Iprを測定するための測定時間を短縮することができる。
【0116】
これに加え、基準デバイス20は、蓄電デバイス10と同じ種類である第二の蓄電デバイス又は他の蓄電デバイスからなる蓄電デバイス10Aによって構成される。それゆえ、蓄電デバイス10及び基準デバイス20の双方の電圧は、雰囲気温度及び雰囲気湿度などの周囲環境の変化に起因して互いに同じように変動する。したがって、基準デバイス20及び電圧印加部40の双方から蓄電デバイス10に印加される重畳電圧は、周囲環境の変化に起因する蓄電デバイス10の電圧変動と同じように変化する。
【0117】
それゆえ、電圧印加部40と蓄電デバイス10との間に流れる電流のうち、蓄電デバイス10自体の電圧と蓄電デバイス10への印加電圧との差分に伴う電流成分以外は、主に、蓄電デバイス10の自己放電に起因する電流成分となる。このため、電流計50によって測定される電流が収束したときの電流値を特定することによって、精度よく蓄電デバイス10の自己放電電流Iprを推定することができる。
【0118】
このように、基準デバイス20として測定対象物と同じ電気特性を有する蓄電デバイス10Aを用いることによって、電流計50によって測定される電流のうち、蓄電デバイス10の周囲環境の変化に伴う電流成分を抑制することができる。これにより、電流計50が測定した電流が収束したときに、蓄電デバイス10の自己放電に起因する電流成分を的確に抽出することができる。
【0119】
また、基準デバイス20として蓄電デバイス10Aを用いることにより、基準電圧を生成する電気回路を用いる場合に比べてその電気回路を削減できるので、測定装置2の製造コストを低減しつつ簡易に基準デバイス20を構成することができる。さらに、蓄電デバイス10及び基準デバイス20は同じ種類の蓄電デバイスであるため、双方の電位差は、概ね1[V]未満であって比較的小さいので、電圧印加部40の回路構成を小型にしつつ、蓄電デバイス10に印加される重畳電圧の調整精度を高めることができる。即ち、本実施形態によれば、測定装置2から蓄電デバイス10への印加電圧の調整精度の向上と、測定装置2の製造コスト及びサイズの低減といった二つの相反する課題を同時に解決することができる。
【0120】
また、本実施形態において、蓄電デバイス10と蓄電デバイス10Aからなる基準デバイス20とは、互いに同じ空間に配置される。
【0121】
この構成によれば、蓄電デバイス10及び基準デバイス20の双方の周囲環境の変化がほぼ一致するので、基準デバイス20の電圧変動を周囲環境に起因する蓄電デバイス10の電圧変動に近づけることができる。それゆえ、
図3の破線に示したように、電流計50によって測定される電流のうち、蓄電デバイス10の周囲環境の僅かな変化に起因するノイズ成分を的確に抑制することができる。
【0122】
また、本実施形態において蓄電デバイス10及び基準デバイス20の双方の充電状態の程度は互いに等しくすることが好ましい。
【0123】
蓄電デバイス10,10Aの周囲環境の変化に起因する電圧変動は、蓄電デバイス10,10Aの充電状態によっても変化する場合がある。この対策として、上記構成によれば、蓄電デバイス10及び基準デバイス20の双方の充電状態が同等になるので、双方の充電状態が異なる場合に比べて基準デバイス20の電圧変動を蓄電デバイス10の電圧変動に近づけることができる。よって、蓄電デバイス10の周囲環境の変化に起因するノイズ成分が電圧印加部40と蓄電デバイス10との間に流れる電流に混入するのを抑制することができる。
【0124】
また、本実施形態におけるコントローラ60は、電流計50によって測定される電流が収束したときの電流値を蓄電デバイス10の自己放電電流Iprとして算出する。
【0125】
この構成によれば、蓄電デバイス10の自己放電電流Iprとして、電圧印加部40から蓄電デバイス10に流れる電流が収束したときの電流値が用いられる。これにより、電圧印加部40から蓄電デバイス10に流れる電流が収束する前の電流変化率を用いて自己放電電流Iprを求める場合に比べて、蓄電デバイス10の自己放電電流Iprを精度よく推定することができる。
【0126】
(第3実施形態)
次に、
図7を参照して、第3実施形態に係る測定装置3について説明する。
図7は、本実施形態における測定装置3の構成を示す図である。
【0127】
本実施形態の測定装置3は、電流計50及びコントローラ60に代えて、電圧計31、電流計50A、スイッチ51及びコントローラ60Aを備えている。他の構成については、
図2に示した測定装置2と同じ構成であるため、ここでは同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0128】
電圧計31は、蓄電デバイス10の負極電極12と接地線121との電位差を測定する負極電圧測定手段を構成する。電圧計31は、蓄電デバイス10の負極電極12と接地線121との間に接続され、負極電極12の電位と接地線121の電位との電位差を測定する電圧測定回路である。接地線121は、グランドに接地された接地端子に対して接続される線である。接地線121の電位は、測定装置3の基準となる基準電位であり、例えば0[V]に設定される。
【0129】
電圧計31は、接地線121を基準として蓄電デバイス10の負極電極12の電圧を測定する。電圧計31によって測定される電圧は、電圧計30による電位差の測定値よりも小さな値である。このため、電圧計31の分解能を電圧計30の分解能に比べて上げることができるので、電圧計30の測定値の有効数字よりも電圧計31の測定値の有効数字を増やすことが可能となる。
【0130】
電圧印加部40は、電圧計31によって測定された電位差に基づいて定電圧の大きさを調整する電圧調整手段を構成する。電圧印加部40の構成は、第1及び第2実施形態と同様の構成である。
【0131】
本実施形態では、電圧印加部40は、コントローラ60からの指示に従い、電圧計30が測定した電位差に基づいて、蓄電デバイス10及び基準デバイス20間の電位差に相当する定電圧を生成する。そして電圧印加部40は、生成した定電圧の大きさを電圧計31によって測定された電位差に応じて変化させる。
【0132】
上述のように、電圧計31の分解能は電圧計30の分解能に比べて高くできるので、電圧印加部40によって生成される定電圧を、第1及び第2実施形態に比べて蓄電デバイス10と基準デバイス20との電位差の真値に近づけることできる。よって、電圧印加部40から蓄電デバイス10に印加される重畳電圧を、第1及び第2実施形態に比べて厳密に、蓄電デバイス10の電圧値に調整することができる。
【0133】
電流計50Aは、電圧印加部40から重畳電圧を印加した蓄電デバイス10の負極電極12と接地線122との間に流れる電流を測定する電流測定手段を構成する。電流計50Aは、第1及び第2実施形態の電流計50に対応する。
【0134】
本実施形態では、電流計50Aは、蓄電デバイス10の負極電極12と接地線122との間に接続され、負極電極12と接地線122との間に流れる電流を測定する電流測定回路である。電流計50Aは、電圧印加部40から蓄電デバイス10に重畳電圧が供給された状態において蓄電デバイス10の負極電極12から接地線122に流れる電流を、自己放電電流Iprを特定するためのパラメータとして測定する。
【0135】
スイッチ51は、コントローラ60Aからの指示に従って、蓄電デバイス10の負極電極12と接地線122との間に接続され、負極電極12と接地線122との間を接続又は遮断する回路素子である。
【0136】
本実施形態では、スイッチ51は、電圧計31が蓄電デバイス10の負極電極12と接地線121との電位差を測定する場合は、電流計50Aに過大な電流が流入するのを回避するために、負極電極12と接地線122との間を遮断する。また、電圧印加部40が蓄電デバイス10に対して重畳電圧の印加を開始した時にスイッチ51は、蓄電デバイス10の自己放電電流Iprを測定するため、負極電極12と接地線122との間を接続する。
【0137】
コントローラ60Aは、電流計50Aが測定した電流を用いて測定対象物である蓄電デバイス10の自己放電電流Iprを算出する演算手段を構成する。コントローラ60Aは、第1及び第2実施形態のコントローラ60に対応する処理ユニットである。
【0138】
本実施形態では、まず、コントローラ60Aは、スイッチ51の通電状態をOFFにして蓄電デバイス10の負極電極12と電流計50Aとの間を遮断する。そしてコントローラ60Aは、電圧計30から、蓄電デバイス10及び基準デバイス20間の電位差の測定値を取得し、取得した測定値に基づいて当該測定値と概ね一致する基本定電圧を生成するように電圧印加部40の動作を制御する。基本定電圧とは、定電圧の基本となる電圧のことである。
【0139】
さらに、コントローラ60Aは、電圧計31から、蓄電デバイス10の負極電極12と接地線121との電位差の測定値を取得する。そしてコントローラ60Aは、電圧計31から取得した測定値に基づいて、基本定電圧を補正するための当該測定値に相当する補正電圧を上述の基本定電圧に合成するように電圧印加部40の動作を制御する。これにより、電圧印加部40において補正電圧を基本定電圧に合成した定電圧が生成される。このように、コントローラ60Aは、オフセット補正を行うことにより、電圧印加部40から出力される定電圧の大きさを調整する。
【0140】
そして、コントローラ60Aは、基準デバイス20及び電圧印加部40から、調整後の定電圧に基準電圧を重畳した重畳電圧を蓄電デバイス10に印加する。蓄電デバイス10に重畳電圧を印加した状態において、コントローラ60Aは、スイッチ51の通電状態をONにし、電流計50Aから蓄電デバイス10の負極電極12と接地線122との間に流れる電流の大きさに対応する電気信号を取得する。
【0141】
続いて、コントローラ60Aは、電流計50Aから取得した電気信号に基づいて蓄電デバイス10の自己放電電流Iprを推定する。例えば、コントローラ60Aは、電流計50Aからの電気信号に示される電流が収束したときの電流値を蓄電デバイス10の自己放電電流Iprとして推定する。
【0142】
なお、本実施形態では基準デバイス20を蓄電デバイス10Aによって構成したが、電気回路によって構成してもよい。この場合であっても、第1実施形態に比べて電圧印加部40から蓄電デバイス10に印加される重畳電圧を精度よく蓄電デバイス10の電圧値に調整することができる。
【0143】
また、測定装置3は、例えば特許文献1に記載された回路構成を適用してもよい。この場合、電圧印加部40は、基準電圧素子、D/A変換器及びバッファ増幅器を備える電圧源によって構成され、電圧計30は、ユニティゲイン増幅器及びD/A変換器を備える電圧測定回路によって構成される。そして電圧計31及び電流計50Aの機能は、高利得増幅器、A/D変換器、電流検知抵抗器及び二つのスイッチを備える多重化V-I回路によって実現される。
【0144】
また、本実施形態では電流計50Aを蓄電デバイス10の負極電極12側に配置したことから、蓄電デバイス10の負極電極12と接地線122との間の配線抵抗が無視できない場合は、その配線抵抗の抵抗値を考慮して電流が収束したときの電流値を補正できる。即ち、配線抵抗が無視できない場合は、コントローラ60Aにおいて算出した自己放電電流Iprを配線抵抗の抵抗値に基づいて補正することが可能となるので、蓄電デバイス10の自己放電電流Iprの推定精度を高めることができる。
【0145】
また、本実施形態では電流計50Aを蓄電デバイス10の負極電極12側に配置したが、蓄電デバイス10の正極電極11側に電流計50Aを配置して電圧印加部40の出力端子と蓄電デバイス10の正極電極11との間に流れる電流を測定してもよい。この場合であっても、蓄電デバイス10の自己放電電流Iprを検出することができる。
【0146】
次に、第3実施形態による作用効果について説明する。
【0147】
本実施形態における測定装置3は、第2実施形態と同様、基準デバイス20、電圧計30、電圧印加部40、電流計50A、及びコントローラ60Aを含み、基準デバイス20は蓄電デバイス10Aである。
【0148】
このように、基準デバイス20を用いることにより、第2実施形態と同様、電圧計30の分解能を上げられるので、蓄電デバイス10に印加される重畳電圧の調整精度を高めることができる。さらに、基準デバイス20として蓄電デバイス10Aを用いることにより、周囲環境の変化に起因する蓄電デバイス10の電圧変動に伴って電圧印加部40から蓄電デバイス10に流れる電流が変動するのを抑制することができる。
【0149】
このため、第2実施形態と同様、蓄電デバイス10に対する印加電圧の調整精度を高めるとともに、電圧印加部40から蓄電デバイス10に流れる印加電流のうち、蓄電デバイス10の自己放電に起因する漏れ電流成分以外の変動成分を低減することができる。
【0150】
これに加え、本実施形態における測定装置3は、蓄電デバイス10の負極電極12(負極)と接地線121との電位差を測定する電圧計31をさらに備え、電圧印加部40は、電圧計31により測定された電位差に基づいて定電圧の大きさを調整する。そして電流計50Aは、電圧印加部40から重畳電圧を印加した蓄電デバイス10の負極電極12と接地線122との間に流れる電流を測定し、コントローラ60Aは、電流計50Aが測定した電流に基づいて蓄電デバイス10の自己放電電流Iprを算出する。
【0151】
このように、測定装置3は、電圧計31を用いて蓄電デバイス10の負極電極12と接地線121との電位差を測定し、その測定した値に基づき電圧印加部40から出力される定電圧の電圧値を調整する。このとき、電圧計31の分解能は電圧計30の分解能よりも高くすることができるので、電圧印加部40から出力される定電圧を、第2実施形態に比べて蓄電デバイス10及び基準デバイス20間の電位差の真値に近づけることができる。
【0152】
したがって、蓄電デバイス10に印加される重畳電圧の調整精度が高まるので、電流計50Aによって測定される電流が収束するまでの時間を短縮することができる。それゆえ、短い時間で、かつ精度よく蓄電デバイス10の自己放電電流Iprを推定することができる。
【0153】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。例えば、測定装置1乃至3には操作部70及び表示部80が備えられているが、操作部70及び表示部80の少なくとも一方を省略してもよい。
【符号の説明】
【0154】
1~3 測定装置
10 蓄電デバイス(測定対象物、第一の蓄電デバイス)
10A 蓄電デバイス(基準デバイス、第二の蓄電デバイス)
12 負極電極(負極)
20 基準デバイス
30 電圧計(電位差測定手段)
31 電圧計(負極電圧測定手段)
40 電圧印加部(電圧印加手段)
41 電圧生成回路
42、51 スイッチ
50、50A 電流計(電流測定手段)
60、60A コントローラ(演算手段)
121、122 接地線