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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】(ヘテロ)アリールイミダゾロン化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/14 20060101AFI20240109BHJP
   C07D 471/04 20060101ALI20240109BHJP
   A61K 31/455 20060101ALI20240109BHJP
   A61K 31/444 20060101ALI20240109BHJP
   A61K 31/437 20060101ALI20240109BHJP
   A61K 31/4439 20060101ALI20240109BHJP
   C07D 403/14 20060101ALI20240109BHJP
   A61K 31/4184 20060101ALI20240109BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240109BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
C07D401/14 CSP
C07D471/04 107A
A61K31/455
A61K31/444
A61K31/437
A61K31/4439
C07D403/14
A61K31/4184
A61P1/04
A61P43/00 111
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020008833
(22)【出願日】2020-01-23
(65)【公開番号】P2021116240
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000104560
【氏名又は名称】キッセイ薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100151231
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 伸子
(74)【代理人】
【識別番号】100196807
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 雅人
(72)【発明者】
【氏名】森山 彰博
(72)【発明者】
【氏名】河辺 佑介
(72)【発明者】
【氏名】大津寄 悠
(72)【発明者】
【氏名】滝川 靖
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/054788(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/054825(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/030716(WO,A1)
【文献】特表2012-530136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D、A61K、A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
〔式中、
m及びuは、それぞれ独立して、0から3の整数であり;
p及びqは、それぞれ独立して、1又は2であり;
rは、0から6の整数であり;
R1は、ハロゲン原子、C1-6アルキル、シアノ、ヒドロキシ、又はカルボキシであり(mが2又は3である場合、2以上のR1は互いに異なっていてもよい);
E、G、Q及びTは、以下の(1)~(7)からなる群から選択される基:
(1) EはCR2e、QはCR2q、TはCR2t、GはN、
(2) EはCR2e、GはCR2g、TはCR2t、QはN、
(3) EはCR2e、GはCR2g、QはCR2q、TはN、
(4) EはCR2e、QはCR2q、G及びTはN、
(5) GはCR2g、TはCR2t、E及びQはN、
(6) GはCR2g、QはCR2q、E及びTはN、及び、
(7) EはCR2e、GはCR2g、QはCR2q、TはCR2t;
R2e、R2g、R2q及びR2tは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1-6アルキル、ハロC1-6アルキル、C1-6アルコキシ、ハロC1-6アルコキシ、ヒドロキシ、-CO2R4、又は-CONR5R5’であり;
R4は、水素原子、又はC1-6アルキルであり;
R5及びR5’は、それぞれ独立して、水素原子、C1-6アルキル、カルボキシC1-6アルキル、ヒドロキシC1-6アルキル、ハロC1-6アルキル、C3-8シクロアルキル、又は3~8員環ヘテロシクロアルキルであり;
環Wは、C6-10アリール、5又は6員環ヘテロアリール、9又は10員環ヘテロアリール、C3-8シクロアルキル、又は3~8員環ヘテロシクロアルキルであり;
環Zは、以下の(a)~(c)からなる群から選択される基:
【化2】
及び
【化3】
(式中、
Ra、Rb及びRcは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1-6アルキル、シアノ、ヒドロキシ、又はカルボキシであり;
Rdは、水素原子、又はC1-6アルキルである);
R3は、ハロゲン原子、C1-6アルキル、ハロC1-6アルキル、C1-6アルコキシ、ハロC1-6アルコキシ、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6アルキルスルファニル、C1-6アルキルスルフィニル、C1-6アルキルスルホニル、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、-NR6R6’、-CO2R7、-CONR8R8’、又は基Aであり(uが2又は3である場合、2以上のR3は互いに異なっていてもよい);
R6及びR6’は、それぞれ独立して、水素原子、又はC1-6アルキルであり;
R7は、水素原子、又はC1-6アルキルであり;
R8及びR8’は、それぞれ独立して、水素原子、C1-6アルキル、カルボキシC1-6アルキル、ヒドロキシC1-6アルキル、ハロC1-6アルキル、C3-8シクロアルキル、又は3~8員環ヘテロシクロアルキルであり;
基Aは、以下の(a)~(h)からなる群から選択される基:
(a)非置換又は置換基群Bから選択される1から3個の基で置換されたC6-10アリール、
(b)非置換又は置換基群Bから選択される1から3個の基で置換された5又は6員環ヘテロアリール、
(c)非置換又は置換基群Bから選択される1から3個の基で置換されたC6-10アリールC1-6アルキル、
(d)非置換又は置換基群Bから選択される1から3個の基で置換されたC6-10アリールオキシ、
(e)非置換又は置換基群Bから選択される1から3個の基で置換された5又は6員環ヘテロアリールC1-6アルキル、
(f)非置換又は置換基群Bから選択される1から3個の基で置換された5又は6員環ヘテロアリールオキシ、
(g)非置換又は置換基群Bから選択される1から3個の基で置換されたC3-8シクロアルキル、及び
(h)非置換又は置換基群Bから選択される1から3個の基で置換された3~8員環ヘテロシクロアルキル;
置換基群Bは、ハロゲン原子、C1-6アルキル、ハロC1-6アルキル、C1-6アルコキシ、ハロC1-6アルコキシ、ヒドロキシ、シアノ、-NR9R9’、-NR9SO2R10、-CO2R10、及び-CONR11R11’からなる群であり;
R9及びR9’は、それぞれ独立して、水素原子、又はC1-6アルキルであり;
R10は、水素原子、又はC1-6アルキルであり;及び
R11及びR11’は、それぞれ独立して、水素原子、C1-6アルキル、カルボキシC1-6アルキル、ヒドロキシC1-6アルキル、ハロC1-6アルキル、C3-8シクロアルキル、又は3~8員環ヘテロシクロアルキルである〕
で表される化合物又はその薬理学的に許容される塩。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物であって、以下の式:
【化4】
〔式中、
uは、0から2の整数であり;
R3’は、C1-6アルキル、ハロC1-6アルキル、C1-6アルコキシ、ハロC1-6アルコキシ、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6アルキルスルファニル、C1-6アルキルスルフィニル、C1-6アルキルスルホニル、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、-NR6R6’、-CO2R7、又は-CONR8R8’であり;
m、p、q、R1、E、G、Q、T、環W、環Z、R6、R6’、R7、R8、R8’及び基Aは請求項1と同じ意味である〕
で表される化合物又はその薬理学的に許容される塩。
【請求項3】
環Zが、以下の(A)~(J)からなる群から選択される基:
【化5】
及び
【化6】
である請求項2に記載の化合物又はその薬理学的に許容される塩。
【請求項4】
環Wが、フェニル、又は5又は6員環ヘテロアリールである請求項3に記載の化合物又はその薬理学的に許容される塩。
【請求項5】
pが2であって、かつqが1である請求項4に記載の化合物又はその薬理学的に許容される塩。
【請求項6】
mが0である請求項5に記載の化合物又はその薬理学的に許容される塩。
【請求項7】
R2e、R2g、R2q及びR2tが、それぞれ独立して、水素原子、C1-6アルキル、ハロC1-6アルキル、C1-6アルコキシ、カルボキシ、又は-CONR5R5’であり;
R5及びR5’が、それぞれ独立して、水素原子、カルボキシC1-6アルキル、又は3~8員環ヘテロシクロアルキルである請求項6に記載の化合物又はその薬理学的に許容される塩。
【請求項8】
基Aが、非置換若しくは置換基群Bから選択される1から3個の基で置換されたフェニルであり;
置換基群Bが、ハロゲン原子、C1-6アルキル、ハロC1-6アルキル、C1-6アルコキシ、ハロC1-6アルコキシ、ヒドロキシ、シアノ、又はカルボキシである請求項7に記載の化合物又はその薬理学的に許容される塩。
【請求項9】
環Zが、以下の(A)、(C)、(D)、(I)及び(J)からなる群から選択される基:
【化6】
及び
【化7】
である請求項8に記載の化合物又はその薬理学的に許容される塩。
【請求項10】
請求項9に記載の化合物であって、以下の式:
【化8】
〔式中、
E、G、Q及びTは、以下の(1)~(7)からなる群から選択される基:
(1) E、Q、TはCH、GはN、
(2) E、G、TはCH、QはN、
(3) E、G、QはCH、TはN、
(4) E、QはCH、G、TはN、
(5) G、TはCH、E、QはN、
(6) G、QはCH、E、TはN、及び、
(7) E、G、T、QはCH;
Xは、CH、CR3、又はNであり;
R3は、C1-6アルキル、又はヒドロキシであり;
基Aは、請求項8と同じ意味であり;
環Zは、請求項9と同じ意味である〕
で表される化合物又はその薬理学的に許容される塩。
【請求項11】
以下の化合物からなる群:
【化9】
及び
【化10】
から選択される化合物又はその薬理学的に許容される塩。
【請求項12】
請求項1~11の何れか一項に記載の化合物又はその薬理学的に許容される塩、及び医薬品添加物を含む医薬組成物。
【請求項13】
炎症性腸疾患の治療用医薬組成物である、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
請求項13に記載の医薬組成物であって、炎症性腸疾患が潰瘍性大腸炎又はクローン病である医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品として有用な(ヘテロ)アリールイミダゾロン化合物に関する。さらに詳しく述べれば、本発明は、プロリルヒドロキシラーゼ阻害作用を有し、潰瘍性大腸炎等の炎症性腸疾患の治療剤として有用な(ヘテロ)アリールイミダゾロン化合物又はその薬理学的に許容される塩に関する。
【背景技術】
【0002】
炎症性腸疾患(IBD)は、免疫の過剰応答により腸管粘膜に炎症及び潰瘍が生じる慢性疾患である。IBDには、例えば、潰瘍性大腸炎及びクローン病が含まれる。
潰瘍性大腸炎は、原因不明のびまん性非特異性炎症が生じる大腸の疾患である。大腸の粘膜が侵され、粘膜にびらん又は潰瘍を形成することがある。潰瘍性大腸炎は、血便、びらん、潰瘍等が認められる「活動期」と、活動期の所見が消失する「寛解期」に分けることができる。その経過中に再燃と寛解を繰り返すことが多いため、長期間の治療を要する。
潰瘍性大腸炎の治療には、まず5-アミノサリチル酸製剤(5-ASA)が標準薬として用いられる。しかしながら、5-ASAの有効性は50~65%程度であり、5-ASAの投与により寛解が認められる患者は、30~45%程度である。5-ASAの効果が認められない場合、ステロイド剤が用いられる。それらの薬剤に加えて免疫抑制剤、抗TNFα抗体等が潰瘍性大腸炎の治療に用いられることがある。しかしながら、いずれの薬剤にも副作用、慎重な投与が求められる等の課題があり、新たな作用メカニズムを有する潰瘍性大腸炎の治療剤が求められている。
【0003】
IBDの病態において、低酸素誘導因子1α(HIF-1α)が消化管上皮のバリア機能に関連した遺伝子の発現を誘導することが知られている。HIF-1αは、低酸素誘導因子α(HIF-α)のサブタイプの1つである。HIF-αは低酸素の環境下(Hypoxia)で安定化され、低酸素に応答した様々な遺伝子の転写を活性化する。一方、酸素が豊富に存在する環境下(Normoxia)では、HIF-αのプロリン残基がプロリル水酸化酵素(PHDs)によって水酸化され、そのHIF-αはプロテアソーム分解を受ける。
【0004】
PHDsは、PHD1、PHD2及びPHD3の3つのサブタイプが知られている。PHD2阻害剤としてAKB-4924が知られており、AKB-4924は、大腸組織においてHIF-1αを安定化することが報告されている(非特許文献1)。さらに、AKB-4924はトリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)誘発大腸炎モデルにおいて、改善効果が認められている。
【0005】
一方、PHDs阻害剤、例えばRoxadustat及びDaprodustatは、造血作用を有し、貧血治療剤としても開発されている(非特許文献2)。
【0006】
PHDs阻害剤として、例えば、スピロ化合物が特許文献1及び2、並びに非特許文献3及び4に記載されている。また、ヘテロアリールイミダゾロンを含む化合物が特許文献3に、アリールイミダゾロンを含む化合物が特許文献4にそれぞれ記載又は例示されている。しかしながら、上記文献には、本願発明の(ヘテロ)アリールイミダゾロン化合物は、記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許出願公開第2011/0152304号明細書
【文献】米国特許出願公開第2010/0137297号明細書
【文献】米国特許出願公開第2019/0202830号明細書
【文献】国際公開第2005/035498号
【非特許文献】
【0008】
【文献】Ellen Marksら、「Inflamm. Bowel. Dis.」、2015年、第21巻、第2号、p.267-275
【文献】Mun Chiang Chanら、「Molecular Aspects of Medicine」、2016年、第47-48巻、p.54-75
【文献】Guanghui Dengら、「Bioorganic & Medicinal Chemistry」、2013年、第21巻、p.6349-6358
【文献】Petr Vachalら、「Journal of Medicinal Chemistry」、2012年、第55巻、p.2945-2959
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、PHD2阻害作用を有し、炎症性腸疾患の治療に有用な新規化合物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、下記式(I)で表される化合物又はその薬理学的に許容される塩に関する。すなわち、本発明は、以下の〔1〕~〔14〕等に関する。
〔1〕式(I):
【化1】

〔式中、
m及びuは、それぞれ独立して、0から3の整数であり;
p及びqは、それぞれ独立して、1又は2であり;
rは、0から6の整数であり;
R1は、ハロゲン原子、C1-6アルキル、シアノ、ヒドロキシ、又はカルボキシであり(mが2又は3である場合、2以上のR1は互いに異なっていてもよい);
E、G、Q及びTは、以下の(1)~(7)からなる群から選択される基:
(1) EはCR2e、QはCR2q、TはCR2t、GはN、
(2) EはCR2e、GはCR2g、TはCR2t、QはN、
(3) EはCR2e、GはCR2g、QはCR2q、TはN、
(4) EはCR2e、QはCR2q、G及びTはN、
(5) GはCR2g、TはCR2t、E及びQはN、
(6) GはCR2g、QはCR2q、E及びTはN、及び、
(7) EはCR2e、GはCR2g、QはCR2q、TはCR2t;
R2e、R2g、R2q及びR2tは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1-6アルキル、ハロC1-6アルキル、C1-6アルコキシ、ハロC1-6アルコキシ、ヒドロキシ、-CO2R4、又は-CONR5R5’であり;
R4は、水素原子、又はC1-6アルキルであり;
R5及びR5’は、それぞれ独立して、水素原子、C1-6アルキル、カルボキシC1-6アルキル、ヒドロキシC1-6アルキル、ハロC1-6アルキル、C3-8シクロアルキル、又は3~8員環ヘテロシクロアルキルであり;
環Wは、C6-10アリール、5又は6員環ヘテロアリール、9又は10員環ヘテロアリール、C3-8シクロアルキル、又は3~8員環ヘテロシクロアルキルであり;
環Zは、以下の(a)~(c)からなる群から選択される基:
【化2】

及び
【化3】
(式中、
Ra、Rb及びRcは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1-6アルキル、シアノ、ヒドロキシ、又はカルボキシであり;
Rdは、水素原子、又はC1-6アルキルである);
R3は、ハロゲン原子、C1-6アルキル、ハロC1-6アルキル、C1-6アルコキシ、ハロC1-6アルコキシ、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6アルキルスルファニル、C1-6アルキルスルフィニル、C1-6アルキルスルホニル、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、-NR6R6’、-CO2R7、-CONR8R8’、又は基Aであり(uが2又は3である場合、2以上のR3は互いに異なっていてもよい);
R6及びR6’は、それぞれ独立して、水素原子、又はC1-6アルキルであり;
R7は、水素原子、又はC1-6アルキルであり;
R8及びR8’は、それぞれ独立して、水素原子、C1-6アルキル、カルボキシC1-6アルキル、ヒドロキシC1-6アルキル、ハロC1-6アルキル、C3-8シクロアルキル、又は3~8員環ヘテロシクロアルキルであり;
基Aは、以下の(a)~(h)からなる群から選択される基:
(a)非置換又は置換基群Bから選択される1から3個の基で置換されたC6-10アリール、
(b)非置換又は置換基群Bから選択される1から3個の基で置換された5又は6員環ヘテロアリール、
(c)非置換又は置換基群Bから選択される1から3個の基で置換されたC6-10アリールC1-6アルキル、
(d)非置換又は置換基群Bから選択される1から3個の基で置換されたC6-10アリールオキシ、
(e)非置換又は置換基群Bから選択される1から3個の基で置換された5又は6員環ヘテロアリールC1-6アルキル、
(f)非置換又は置換基群Bから選択される1から3個の基で置換された5又は6員環ヘテロアリールオキシ、
(g)非置換又は置換基群Bから選択される1から3個の基で置換されたC3-8シクロアルキル、及び
(h)非置換又は置換基群Bから選択される1から3個の基で置換された3~8員環ヘテロシクロアルキル;
置換基群Bは、ハロゲン原子、C1-6アルキル、ハロC1-6アルキル、C1-6アルコキシ、ハロC1-6アルコキシ、ヒドロキシ、シアノ、-NR9R9’、-NR9SO2R10、-CO2R10、及び-CONR11R11’からなる群であり;
R9及びR9’は、それぞれ独立して、水素原子、又はC1-6アルキルであり;
R10は、水素原子、又はC1-6アルキルであり;及び
R11及びR11’は、それぞれ独立して、水素原子、C1-6アルキル、カルボキシC1-6アルキル、ヒドロキシC1-6アルキル、ハロC1-6アルキル、C3-8シクロアルキル、又は3~8員環ヘテロシクロアルキルである〕
で表される化合物又はその薬理学的に許容される塩。
〔2〕前記〔1〕に記載の化合物であって、以下の式:
【化4】
〔式中、
uは、0から2の整数であり;
R3’は、C1-6アルキル、ハロC1-6アルキル、C1-6アルコキシ、ハロC1-6アルコキシ、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6アルキルスルファニル、C1-6アルキルスルフィニル、C1-6アルキルスルホニル、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、-NR6R6’、-CO2R7、又は-CONR8R8’であり;
m、p、q、R1、E、G、Q、T、環W、環Z、R6、R6’、R7、R8、R8’及び基Aは前記〔1〕と同じ意味である〕
で表される化合物又はその薬理学的に許容される塩。
〔3〕環Zが、以下の(A)~(J)からなる群から選択される基:
【化5】
及び
【化6】
である前記〔1〕又は〔2〕に記載の化合物又はその薬理学的に許容される塩。
〔4〕環Wが、フェニル、又は5又は6員環ヘテロアリールである前記〔1〕~〔3〕の何れかに記載の化合物又はその薬理学的に許容される塩。
〔5〕pが2であって、かつqが1である前記〔1〕~〔4〕の何れかに記載の化合物又はその薬理学的に許容される塩。
〔6〕mが0である前記〔1〕~〔5〕の何れかに記載の化合物又はその薬理学的に許容される塩。
〔7〕R2e、R2g、R2q及びR2tが、それぞれ独立して、水素原子、C1-6アルキル、ハロC1-6アルキル、C1-6アルコキシ、カルボキシ、又は-CONR5R5’であり;
R5及びR5’が、それぞれ独立して、水素原子、カルボキシC1-6アルキル、又は3~8員環ヘテロシクロアルキルである前記〔1〕~〔6〕の何れかに記載の化合物又はその薬理学的に許容される塩。
〔8〕基Aが、非置換若しくは置換基群Bから選択される1から3個の基で置換されたフェニルであり;
置換基群Bが、ハロゲン原子、C1-6アルキル、ハロC1-6アルキル、C1-6アルコキシ、ハロC1-6アルコキシ、ヒドロキシ、シアノ、又はカルボキシである前記〔1〕~〔7〕の何れかに記載の化合物又はその薬理学的に許容される塩。
〔9〕環Zが、以下の(A)、(C)、(D)、(I)及び(J)からなる群から選択される基:
【化7】

及び
【化8】
である前記〔1〕~〔8〕の何れかに記載の化合物又はその薬理学的に許容される塩。
〔10〕前記〔1〕~〔9〕の何れかに記載の化合物であって、以下の式:
【化9】
〔式中、
E、G、Q及びTは、以下の(1)~(7)からなる群から選択される基:
(1) E、Q、TはCH、GはN、
(2) E、G、TはCH、QはN、
(3) E、G、QはCH、TはN、
(4) E、QはCH、G、TはN、
(5) G、TはCH、E、QはN、
(6) G、QはCH、E、TはN、及び、
(7) E、G、T、QはCH;
Xは、CH、CR3、又はNであり;
R3は、C1-6アルキル、又はヒドロキシであり;
基Aは、前記〔8〕と同じ意味であり;
環Zは、前記〔9〕と同じ意味である〕
で表される化合物又はその薬理学的に許容される塩。
〔11〕以下の化合物からなる群:
【化10】
及び
【化11】
から選択される化合物又はその薬理学的に許容される塩。
〔12〕前記〔1〕~〔11〕の何れかに記載の化合物又はその薬理学的に許容される塩、及び医薬品添加物を含む医薬組成物。
〔13〕炎症性腸疾患の治療用医薬組成物である、前記〔12〕に記載の医薬組成物。
〔14〕前記〔13〕に記載の医薬組成物であって、炎症性腸疾患が潰瘍性大腸炎又はクローン病である医薬組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明の化合物は、優れたPHD2阻害作用を有する。したがって、本発明の化合物又はその薬理学的に許容される塩は、炎症性腸疾患の治療剤として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態についてより詳細に説明する。
【0013】
本発明において、各用語は、特に断らない限り、以下の意味を有する。
【0014】
「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を意味する。R1、R2e、R2g、R2q、R2t及びR3のハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
「C1-6アルキル」とは、炭素数1~6の直鎖状又は分岐状のアルキル基を意味する。例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル等が挙げられる。
「C2-6アルケニル」とは、炭素数2~6の直鎖状又は分岐状のアルケニル基を意味する。例えば、ビニル、アリル、1-プロペニル、イソプロペニル等が挙げられる。
「C2-6アルキニル」とは、炭素数2~6の直鎖状又は分岐状のアルキニル基を意味する。例えば、エチニル、2-プロピニル等が挙げられる。
「C1-6アルコキシ」とは、炭素数1~6の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基を意味する。例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ等が挙げられる。
【0015】
「カルボキシC1-6アルキル」とは、1個のカルボキシで置換されたC1-6アルキルを意味する。例えば、カルボキシメチル等が挙げられる。
「ヒドロキシC1-6アルキル」とは、1個の水酸基で置換されたC1-6アルキルを意味する。例えば、ヒドロキシメチル、1-ヒドロキシエチル、1-ヒドロキシ-1,1-ジメチルメチル、2-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル、3-ヒドロキシプロピル等が挙げられる。
「ハロC1-6アルキル」とは、1~3個の同種又は異種のハロゲン原子で置換されたC1-6アルキルを意味する。例えば、モノフルオロメチル、2-フルオロエチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、3,3,3-トリフルオロプロピル、4,4,4-トリフルオロブチル等が挙げられる。
「ハロC1-6アルコキシ」とは、1~3個の同種又は異種のハロゲン原子で置換されたC1-6アルコキシを意味する。例えば、モノフルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ等が挙げられる。
【0016】
「C1-6アルキルスルファニル」とは、(C1-6アルキル)-S-で表される基を意味する。
「C1-6アルキルスルフィニル」とは、(C1-6アルキル)-S(=O)-で表される基を意味する。
「C1-6アルキルスルホニル」とは、(C1-6アルキル)-SO2-で表される基を意味する。例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル等が挙げられる。
【0017】
「C6-10アリール」とは、フェニル、又はナフチルを意味する。基Aとしては、フェニルが好ましい。
「5又は6員環ヘテロアリール」とは、酸素原子、窒素原子および硫黄原子から選択される1~4個のヘテロ原子を環内に含む5又は6員環の芳香族複素環基を意味する。例えば、フリル、ピロリル、チエニル、イミダゾリル、ピラゾリル、1,2,4-トリアゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル等が挙げられる。環Wとしては、チエニル、ピリジル等が好ましく、ピリジルがより好ましい。基Aとしては、ピリジル等が好ましい。
「9又は10員環ヘテロアリール」とは、酸素原子、窒素原子および硫黄原子から選択される1~4個のヘテロ原子を環内に含む二環式の芳香族複素環基を意味する。例えば、インドリル、イソインドリル、ベンゾフリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾイミダゾリル、プリル、ベンゾトリアゾリル、キノリル、イソキノリル、キナゾリル、キノキサリル、シンノリル、プテリジニル、クロメニル、イソクロメニル等が挙げられる。環Wとしては、キノリル等が好ましい。
「C3-8シクロアルキル」とは、3~8員環の飽和炭化水素基を意味する。例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられる。
「3~8員環ヘテロシクロアルキル」とは、酸素原子、窒素原子および硫黄原子から選択される1若しくは2個のヘテロ原子を環内に含む3~8員環のヘテロシクロアルキル基を意味する。例えば、アジリジノ、アゼチジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、1-ピロリジニル、ピペリジノ、4-ピペリジニル、1-ピペラジニル、1-ピロリル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル等が挙げられる。R5及びR5’としては、テトラヒドロピラニル等が好ましい。
【0018】
「C6-10アリールC1-6アルキル」とは、1個のC6-10アリールで置換されたC1-6アルキルを意味する。例えば、ベンジルが挙げられる。
「C6-10アリールオキシ」とは、(C6-10アリール)-O-で表される基を意味する。例えば、フェノキシが挙げられる。
「5又は6員環ヘテロアリールC1-6アルキル」とは、1個の5又は6員環ヘテロアリールで置換されたC1-6アルキルを意味する。
「5又は6員環ヘテロアリールオキシ」とは、(5又は6員環ヘテロアリール)-O-で表される基を意味する。
【0019】
C6-10アリール、5又は6員環ヘテロアリール、C3-8シクロアルキル、又は、3~8員環ヘテロシクロアルキルが、置換基群Bから選択される2又は3個の基で置換される場合、それぞれの基は同一でも異なっていてもよい。
【0020】
C6-10アリール、5又は6員環ヘテロアリール、C3-8シクロアルキル、又は、3~8員環ヘテロシクロアルキルを含む基が、置換基群Bから選択される基で置換される場合、そのC6-10アリール部分、5又は6員環ヘテロアリール部分、C3-8シクロアルキル部分、又は、3~8員環ヘテロシクロアルキル部分が置換されることを意味する。
【0021】
本文中、図中及び表中の以下の略語は、それぞれ以下の意味である。
CDI:カルボニルジイミダゾール
CPME:シクロペンチルメチルエーテル
DEAD:アゾジカルボン酸ジエチル
DIPEA:N,N-ジイソプロピルエチルアミン
DMA:N,N-ジメチルアセトアミド
DMAP:4-ジメチルアミノピリジン
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO:ジメチルスルホキシド
DMTMM:4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド
EDC・HCl:1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩
HOBt:1-ヒドロキシベンゾトリアゾール
LAH:水素化リチウムアルミニウム
LDA:リチウムジイソプロピルアミド
NaBH(OAc)3:ナトリウムトリアセトキシボロハイドライド
NMP:1-メチル-2-ピロリジノン
Pd(amphos)Cl2:ビス(ジ-tert-ブチル(4-ジメチルアミノフェニル)ホスフィン)ジクロロパラジウム(II)
Pd(PPh3)4:テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)
Pd2(dba)3:トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)
THF:テトラヒドロフラン
TsCl:p-トルエンスルホニルクロリド
T3P(登録商標):プロピルホスホン酸無水物(環状トリマー)
Xantphos:4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン
9-BBN:9-ボラビシクロ[3.3.1]ノナン
アミノシリカゲル:アミノプロピル化シリカゲル
ODSカラムクロマトグラフィー:オクタデシルシリル化シリカゲルカラムクロマトグラフィー
Process:工程
Scheme:スキーム
Ref.No.:参考例番号
Ex.No.:実施例番号
Structure:構造式
Physical data:物性値
IC50:50%阻害濃度
FITC:フルオロセインイソチオシアネート
1H-NMR:水素核磁気共鳴スペクトル
DMSO-d6:ジメチルスルホキシド-d6
CDCl3:クロロホルム-d1
MS:質量分析
ESI_APCI:エレクトロスプレーイオン化法-大気圧化学イオン化法のマルチイオン化法
【0022】
式(I)で表される化合物の一つの実施態様として、例えば、以下の式で表される化合物が挙げられる。式中、u及びR3’は、上記〔2〕と同じ意味である。それ以外の記号は、上記〔1〕と同じ意味である。
【化12】
【0023】
式(I)で表される化合物の一つの実施態様として、下記式で表される基が、以下の(a)~(d)からなる群から選択される基である化合物が挙げられる。
【化13】
式中の記号は、上記〔1〕と同じ意味である。
【化14】
及び
【化15】
【0024】
式(I)で表される化合物の一つの実施態様として、上記〔1〕に記載の化合物であって、以下の〔A〕~〔H〕からなる群から選択される基又はそれらの組合せが好ましい。
〔A〕m及びuは、それぞれ独立して、0から3の整数である。
〔B〕p及びqは、それぞれ独立して、1又は2である。
〔C〕rは、0又は1である。
〔D〕R1は、ハロゲン原子、又はメチルである。
〔E〕E、G、Q及びTは、以下の(1)~(7)からなる群から選択される原子:
(1) EはCR2e、QはCR2q、TはCR2t、GはN、
(2) EはCR2e、GはCR2g、TはCR2t、QはN、
(3) EはCR2e、GはCR2g、QはCR2q、TはN、
(4) EはCR2e、QはCR2q、G及びTはN、
(5) GはCR2g、TはCR2t、E及びQはN、
(6) GはCR2g、QはCR2q、E及びTはN、及び、
(7) EはCR2e、GはCR2g、QはCR2q、TはCR2t;
R2e、R2g、R2q及びR2tは、水素原子、メチル、トリフルオロメチル、メトキシ、トリフルオロメトキシ、-CO2H、又は-CONR5R5’であり;
R5及びR5’は、それぞれ独立して、水素原子、カルボキシメチル、又はテトラヒドロピラニルである。
〔F〕環Wは、フェニル、ナフチル、チエニル、ピリジル、キノリル、又はシクロヘキシルである。
〔G〕環Zは、以下の(a)~(c)からなる群から選択される基:
【化16】

及び
【化17】
式中、Ra、Rb及びRcは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、メチル、シアノ、ヒドロキシ、又はカルボキシであり、Rdは、水素原子、又はメチルである。
〔H〕R3は、ハロゲン原子、メチル、トリフルオロメチル、メトキシ、トリフルオロメトキシ、ビニル、メチルチオ、エチルスルホニル、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、ジメチルアミノ、-CO2R7、-CONR8R8’、又は基Aであり(uが2である場合、2つのR3は互いに異なっていてもよい);
R7は、水素原子、又はメチルであり;
R8及びR8’は、それぞれ独立して、水素原子、又はカルボキシメチルであり;
基Aは、以下の(a)~(f)からなる群から選択される基:
(a)非置換又は置換基群Bから選択される1から2個の基で置換されたフェニル、
(b)ピリジル、
(c)ベンジル、
(d)フェニルオキシ、
(e)シクロプロピル、及び
(f)モルホリノ;
置換基群Bは、ハロゲン原子、メチル、トリフルオロメチル、メトキシ、トリフルオロメトキシ、ヒドロキシ、シアノ、-NHSO2R10及び-CO2R10’からなる群:
R10及びR10’は、それぞれ独立して、水素原子、又はメチルである。
【0025】
一つの実施態様として、例えば、以下の式(II)で表される化合物が挙げられる。
【化18】
式中、環Vは以下の(a)~(d)からなる群から選択される基であり、u及びR3'は、上記〔2〕と同じ意味である。それ以外の記号は、上記〔1〕と同じ意味である。
【化19】
及び
【化20】
【0026】
式(II)で表される化合物の一つの実施態様として、以下の化合物が挙げられる。
【化21】
及び
【化22】
【0027】
式(I)で表される化合物において、1つ又はそれ以上の不斉炭素原子が存在する場合、本発明は、各々の不斉炭素原子がR配置の化合物、S配置の化合物及びそれらの任意の組み合わせの化合物も包含する。また、それらのラセミ化合物、ラセミ混合物、単一のエナンチオマー及びジアステレオマー混合物も本発明の範囲に含まれる。
【0028】
式(I)で表される化合物において、シス-トランス異性体が存在する場合、本発明は、そのシス-トランス異性体のいずれも包含する。
【0029】
式(I)で表される化合物において、互変異性体が存在する場合、本発明は、その互変異性体の何れも含む。
【0030】
本発明において、立体化学の決定は、当技術分野で周知の方法で行うこともできる。
【0031】
式(I)で表される化合物は、必要に応じて常法に従い、その薬理学的に許容される塩にすることもできる。このような塩としては、酸付加塩又は塩基との塩を挙げることができる。
【0032】
酸付加塩としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の鉱酸との酸付加塩、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、プロピオン酸、クエン酸、コハク酸、酒石酸、フマル酸、酪酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、炭酸、安息香酸、グルタミン酸、アスパラギン酸等の有機酸との酸付加塩を挙げることができる。
【0033】
塩基との塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等の無機塩基との塩、N-メチル-D-グルカミン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、モルホリン、ピロリジン、アルギニン、リジン、コリン等の有機塩基との塩を挙げることができる。
【0034】
式(I)で表される化合物又はその薬理学的に許容される塩が、例えば結晶として存在する場合、本発明は、何れの結晶形も含む。例えば、薬理学的に許容される塩には、水又はエタノール等の医薬品として許容される溶媒との溶媒和物、適当な共結晶形成剤(Coformer)との共結晶等も含まれる。
【0035】
式(I)で表される化合物において、各原子の一部は、それぞれ対応する同位体で置き換わっていてもよい。本発明は、これら同位体で置き換わった化合物も含む。同位体の例としては、それぞれ2H、3H、11C、13C、14C、36Cl、18F、123I、125I、13N、15N、15O、17O、18O、32P、及び35Sで表される水素原子、炭素原子、塩素原子、フッ素原子、ヨウ素原子、窒素原子、酸素原子、リン原子、及び硫黄原子の同位体が挙げられる。一つの実施態様として、式(I)で表される化合物の一部の水素原子が2H(D:重水素原子)で置き換わった化合物が挙げられる。
【0036】
式(I)で表される化合物において、一部の原子が同位体で置き換わった化合物は、市販の同位体が導入されたビルディングブロックを用いて、後述の製造方法と同様な方法で製造することができる。例えば、式(I)で表される化合物の一部の水素原子が重水素原子で置き換わった化合物は、前記方法、及び文献記載の方法(例えば、有機合成化学協会誌、第65巻、12号、1179-1190ページ、2007年参照)を用いて製造することもできる。また、例えば、式(I)で表される化合物の一部の炭素原子が13Cで置き換わった化合物は、上記方法、及び文献記載の方法(例えば、RADIOISOTOPES、第56巻、11号、35-44ページ、2007年参照)を用いて製造することもできる。
【0037】
式(I)で表される化合物は、例えばスキーム1に示す方法若しくはそれに準じた方法、又は文献記載の方法若しくはそれに準じた方法に従い製造することができる。
【0038】
各工程の反応において、原料物質や試薬が市販されている場合には、市販品を用いることができる。各工程の反応において、反応時間は、使用する原料物質、溶媒、反応温度などにより異なるが、特に記載の無い場合、通常30分~3日間である。
各工程の反応において、反応温度は、使用する原料物質や溶媒などにより異なるが、特に記載の無い場合、通常-78℃から還流温度である。
各工程の反応において、圧力は、使用する原料物質、溶媒、反応温度などにより異なるが、特に記載の無い場合、通常1気圧~20気圧である。
各工程の反応において、Biotage社製Initiatorなどのマイクロウェーブ反応装置を用いることもできる。マイクロウェーブ反応装置を用いて反応を行う場合、使用する原料物質、溶媒、及び機種などにより異なるが、圧力範囲:1~30bar、出力領域:1~400W、反応温度:室温~300℃、反応時間:1分~1日間の条件下で反応を行うことができる。
【0039】
各工程の反応において、特に記載の無い場合、これらの反応は、無溶媒、または適当な溶媒を用いて行われる。適当な溶媒の例としては、その反応に対して不活性な溶媒が挙げられる。溶媒の具体例としては、各工程に対応する参考例若しくは実施例に記載されている溶媒、又は以下の溶媒が挙げられる。
【0040】
アルコール類:メタノール、エタノール、tert-ブチルアルコール、2-プロパノールなど;
エーテル類:ジエチルエーテル、THF、1,2-ジメトキシエタン、1,4-ジオキサン、2-メチルオキソラン、CPMEなど;
芳香族炭化水素類:クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、トルエン、キシレンなど;
飽和炭化水素類:シクロヘキサン、n-ヘキサンなど;
アミド類:DMF、DMA、NMPなど;
ハロゲン化炭化水素類:ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、四塩化炭素など;
ニトリル類:アセトニトリルなど;
スルホキシド類:DMSOなど;
芳香族有機塩基類:ピリジンなど;
酸無水物類:無水酢酸など;
有機酸類:ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸など;
エステル類:酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸イソプロピルなど;
ケトン類:アセトン、メチルエチルケトンなど;
水。
上記溶媒は、二種以上を適当な割合で混合して用いてもよい。
【0041】
各工程の反応において、塩基を用いる場合、これらの反応は、それぞれの反応に適した塩基を用いて行われる。塩基の具体例としては、各工程に対応する参考例若しくは実施例に記載されている塩基、又は以下の塩基が挙げられる。
無機塩基類:水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウムなど;
有機塩基類:トリエチルアミン、DIPEA、ジエチルアミン、ピリジン、DMAP、2,6-ルチジン、ピペリジンなど;
金属アルコキシド類:ナトリウムエトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムtert-ブトキシドなど;
アルカリ金属水素化物類:水素化ナトリウムなど;
金属アミド類:ナトリウムアミド、LDA、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド、カリウムビス(トリメチルシリル)アミドなど;
有機マグネシウム類:メチルマグネシウムブロミド、イソプロピルマグネシウムクロリド、アリルマグネシウムブロミド、フェニルマグネシウムブロミドなど;
有機リチウム類:n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウムなど。
【0042】
各工程の反応において、酸又は酸性触媒を用いる場合、これらの反応は、それぞれの反応に適した酸又は酸性触媒を用いて行われる。酸又は酸性触媒の具体例としては、各工程に対応する参考例若しくは実施例に記載されている酸若しくは酸性触媒、又は以下の酸若しくは酸性触媒が挙げられる。
無機酸類:塩酸、硫酸、硝酸、臭化水素酸、リン酸など;
有機酸類:酢酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、p-トルエンスルホン酸、10-カンファースルホン酸など;
ルイス酸:三フッ化ホウ素-ジエチルエーテルコンプレックス、よう化亜鉛、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、チタニウム(IV)クロリドなど。
【0043】
各工程の反応において、縮合剤を用いる場合、これらの反応は、それぞれの反応に適した縮合剤を用いて行われる。縮合剤の具体例としては、各工程に対応する参考例若しくは実施例に記載されている縮合剤、又は以下の縮合剤が挙げられる。
カルボジイミド類:EDC・HCl、N,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミドなど;
カルボジイミダゾール類:CDIなど;
ウロニウム及びホスホニウム塩類:O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル) -N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート、1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスファートなど;
トリアジン類:DMTMMなど;
その他:T3Pなど。
【0044】
各工程の反応において、還元剤を用いる場合、これらの反応は、それぞれの反応に適した還元剤を用いて行われる。還元剤の具体例としては、各工程に対応する参考例若しくは実施例に記載されている還元剤、又は以下の還元剤が挙げられる。
金属水素化物類:LAH、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、NaBH(OAc)3、水素化シアノホウ素ナトリウム、水素化ジイソブチルアルミニウムなど;
ボラン類:ボラン-テトラヒドロフランコンプレックス、9-BBN、ピコリンボランなど。
【0045】
各工程において、官能基の種類により保護基が必要な場合は、常法に従い適宜導入及び除去の操作を組み合わせて実施をすることもできる。保護基の種類、保護、及び脱保護に関しては、例えば、Theodora W. Greene & PeterG. M. Wuts著編、「Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis」、fourth edition、Wiley-Interscience、2006年に記載の方法を挙げることができる。
【0046】
各工程において、保護基の除去を行う場合、これらの反応は、加水分解反応などを用いて行うことができる。
【0047】
各工程において、加水分解反応を行う場合、これらの反応は、酸、又は塩基の存在下で反応を行うことができる。酸及び塩基としては、上述の例が挙げられる。
【0048】
各工程において、接触還元反応を行う場合、これらの反応は、水素雰囲気下、触媒の存在下で反応を行うことができる。触媒としては、パラジウム炭素粉末、白金炭素粉末、ラネーニッケルなどが挙げられる。
【0049】
各工程において、還元反応を行う場合、これらの反応は、還元剤の存在下で反応を行うことができる。還元剤としては、上述の例が挙げられる。
【0050】
各工程において、アミド化反応を行う場合、これらの反応は、縮合剤及び塩基の存在下、または縮合剤の存在下で反応を行うことができる。縮合剤及び塩基としては、上述の例が挙げられる。縮合剤としてカルボジイミド類を用いる場合は、必要に応じてHOBt、DMAPなどの添加剤を反応に加えてもよい。また、アミド化反応は、ハロゲン化アシル、又は酸無水物を用いて行うこともできる。
【0051】
各工程において、還元的アミノ化反応を行う場合、これらの反応は、還元剤の存在下で反応を行うことができる。還元剤としては、上述の例が挙げられる。還元剤としては、好ましくはNaBH(OAc)3などが挙げられる。
【0052】
各工程において、芳香族求核置換反応を行う場合、これらの反応は、塩基の存在下で反応を行うことができる。塩基としては、上述の例が挙げられる。
【0053】
各工程において、分子内カルボニル化反応を行う場合、これらの反応は、縮合剤の存在下で反応を行うことができる。縮合剤としては、上述の例が挙げられる。
【0054】
各工程において、ウルマン縮合反応を行う場合、これらの反応は、銅触媒、配位子及び塩基の存在下で反応を行うことができる。銅触媒としては、ヨウ化銅などが挙げられる。配位子としては、N,N’-ジメチルエチレンジアミンなどが挙げられる。塩基としては、上述の例が挙げられる。
【0055】
各工程において、チャン・ラム・エヴァンスカップリング反応を行う場合、これらの反応は、銅触媒及び塩基の存在下で反応を行うことができる。銅触媒としては、酢酸銅(II)などが挙げられる。塩基としては、上述の例が挙げられる。
【0056】
各工程において、光延反応を行う場合、これらの反応は、アゾジカルボン酸エステル及びホスフィンの存在下で反応を行うことができる。アゾジカルボン酸エステルとしては、DEADなどが挙げられる。ホスフィンとしては、トリフェニルホスフィンなどが挙げられる。
【0057】
各工程において、鈴木-宮浦クロスカップリング反応を行う場合、これらの反応は、パラジウム触媒及び塩基の存在下で反応を行うことができる。パラジウム触媒としては、Pd(amphos)Cl2などが挙げられる。塩基としては、上述の例が挙げられる。
【0058】
各工程において、特に記載の無い場合、式中の記号は、前記〔1〕と同じ意味を持つ。Yは、臭素原子、ヨウ素原子、ボロン酸、又はヒドロキシである。Y’は、フッ素原子又は塩素原子である。
【0059】
式(I)で表される化合物は、例えば、スキーム1に記載の工程1-1~1-3の方法に従い、製造することができる。
【化23】
【0060】
工程1-1
化合物(1-3)は、化合物(1-1)と化合物(1-2)のウルマン縮合反応、チャン・ラム・エヴァンスカップリング反応、又は光延反応により製造することもできる。
Yが臭素原子又はヨウ素原子であり、rが0であり、環Wがアリール又はヘテロアリールである場合、ウルマン縮合反応が好ましい。Yがボロン酸であり、rが0であり、環Wがアリール又はヘテロアリールである場合、チャン・ラム・エヴァンスカップリング反応が好ましい。Yがヒドロキシであり、rが0であり、環Wがシクロアルキル又はヘテロシクロアルキルである場合、光延反応が好ましい。Yがヒドロキシであり、rが1~6の整数である場合、光延反応が好ましい。
【0061】
工程1-2
化合物(1-4)は、化合物(1-3)の保護基を除去することにより製造することもできる。
【0062】
工程1-3
化合物(I)は、化合物(1-4)と化合物(1-5)の還元的アミノ化反応により製造することもできる。必要に応じて、保護基の除去を行っても良い。
【0063】
化合物(1-1)は、例えば、スキーム2に記載の工程2-1~2-3の方法に従い、製造することができる。
【化24】
【0064】
工程2-1
化合物(2-3)は、化合物(2-1)と化合物(2-2)の芳香族求核置換反応により製造することもできる。
【0065】
工程2-2
化合物(2-4)は、化合物(2-3)の接触還元反応により製造することもできる。
【0066】
工程2-3
化合物(1-1)は、化合物(2-4)の分子内カルボニル化反応により製造することもできる。
【0067】
上記に示したスキームは、式(I)で表される化合物又はその製造中間体を製造する為の方法の例示である。上記スキームは、当業者の容易に理解され得るようなスキームへの様々な改変が可能である。
【0068】
式(I)で表される化合物及びその製造中間体は、必要に応じて、当該技術分野の当業者にとって周知の単離及び精製手段である、溶媒抽出、晶析、再結晶、クロマトグラフィー、分取高速液体クロマトグラフィー等により、単離及び精製することもできる。
【0069】
シリカゲルカラムクロマトグラフィー及びアミノシリカゲルカラムクロマトグラフィーとしては、例えば、SNAP Ultra及びSNAP Isolute NH2 (バイオタージ)、並びにHi-Flashカラム(山善)等を用いたフラッシュクロマトグラフィーが挙げられる。
【0070】
ODSカラムクロマトグラフィーとしては、例えば、分取精製LCシステム(Gilson、流速:30 mL/min、検出:UV at 225 nm)及びカラム:CAPCELL PAK C18 UG80(5 μm 20x50 mm)及びSunFire C18 Prep OBD(5μm 19x50 mm)を用いた分取が挙げられる。
【0071】
本発明の化合物は、優れたPHD2阻害作用を有するので、IBDの治療剤として使用できる(Nature Reviews Drug Discovery, 2014, 13, p.852-869参照)。本発明において、IBDには、例えば、潰瘍性大腸炎、クローン病、腸管型ベーチェット、感染性腸炎、放射線性腸炎、薬剤性腸炎、虚血性腸炎、腸間膜静脈硬化症(静脈硬化性大腸炎)、閉塞性大腸炎、及び膠原病に伴う腸炎が含まれる。好ましくは、本発明の化合物は、潰瘍性大腸炎又はクローン病の治療剤として用いることができる(Inflamm. Bowel. Dis., 2015, 21 (2), p.267-275参照)。
【0072】
本発明において、「治療」には「予防」の意味が含まれる。例えば、潰瘍性大腸炎の治療には、「再燃予防」及び「寛解維持」の意味が含まれる。
【0073】
本発明の化合物の大腸炎に対する治療効果は、試験例2に記載した方法又は当該技術分野において周知の方法に従い確認することができる。例えば、Biol. Pharm. Bull 2004, 27 (10), p.1599-1603等に記載の方法又はそれに準じた方法が挙げられる。
【0074】
本発明の医薬組成物は、用法に応じ種々の剤型のものが使用される。このような剤型としては、例えば、散剤、顆粒剤、細粒剤、ドライシロップ剤、錠剤、カプセル剤、注射剤、液剤、軟膏剤、坐剤、貼付剤、及び注腸剤を挙げることができる。
【0075】
本発明の医薬組成物は、式(I)で表される化合物又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含む。
【0076】
本発明の医薬組成物は、式(I)で表される化合物又はその薬理学的に許容される塩、及び少なくとも1つの医薬品添加物を用いて調製される。これら医薬組成物は、その剤型に応じ製剤学的に公知の手法により、適切な賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、希釈剤、緩衝剤、等張化剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、溶解補助剤等の医薬品添加物と適宜混合、希釈又は溶解することにより調製することもできる。
【0077】
本発明の医薬組成物を治療に用いる場合、式(I)で表される化合物又はその薬理学的に許容される塩の投与量は、患者の年齢、性別、体重、疾患及び治療の程度等により適宜決定される。1日投与量を1回、2回、3回又は4回に分けて投与してもよい。好ましくは、本発明の医薬組成物は、経口投与される。
経口投与の場合、成人に対する投与量は、例えば、0.1~1000mg/日の範囲で定めることができる。一つの実施態様として、経口投与量は、1~500mg/日の範囲で定めることもでき、好ましくは10~200mg/日の範囲である。
非経口投与の場合、成人に対する投与量は、例えば、0.1~1000mg/日で定めることができる。一つの実施態様として、非経口投与量は、0.5~200mg/日の範囲で定めることもでき、好ましくは1~20mg/日の範囲である。
【0078】
一つの実施態様として、本発明の医薬組成物は、PHDs阻害剤以外の他の薬剤と組み合わせて使用することもできる。炎症性腸疾患の治療において組み合わせて使用することができる他の薬剤としては、例えば、5-ASA、ステロイド剤、免疫抑制剤、抗TNFα抗体、ヤヌスキナーゼ阻害剤、及びα4β7インテグリン抗体が挙げられる。
【0079】
式(I)で表される化合物又はその薬理学的に許容される塩と他の薬剤とを組み合わせて使用する場合、これらの有効成分を一緒に含有する製剤、又はこれらの有効成分の個々を別々に製剤化した製剤として投与することができる。別々に製剤化した場合、それらの製剤を別々に、又は同時に投与することができる。また、式(I)で表される化合物又はその薬理学的に許容される塩の投与量は、組み合わせて使用する他の薬剤の投与量に応じて、適宜減量してもよい。
【0080】
式(I)で表される化合物は、適宜プロドラッグに変換して使用してもよい。例えば、式(I)で表される化合物のプロドラッグは、相当するハロゲン化物等のプロドラッグ化試薬を用いて、プロドラッグを構成する基を導入し、精製することにより製造することもできる。プロドラッグを構成する基としては、例えば、「医薬品の開発」(廣川書店、1990年)第7巻 p.163-198に記載の基が挙げられる。
【実施例
【0081】
以下に、本発明を実施例にもとづいてさらに詳細に説明するが、本発明はその内容に限定されるものではない。
【0082】
下記の実施例に記載された化合物名は、市販の試薬を除き、ChemDraw Professional (PerkinElmer)、MarvinSketch (ChemAxon)等を用いて命名した。
【0083】
参考例A-1
(S)-3-((4-ニトロピリジン-3-イル)アミノ)ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル
3-フルオロ-4-ニトロピリジン(1.11g)、(S)-3-アミノピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(1.46g)、炭酸カリウム(2.16g)およびトルエン(10mL)の混合物を、マイクロ波照射下、100℃で1時間撹拌した。反応混合物を酢酸エチル及び水の混合物にあけて撹拌した。その混合物を酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥し、減圧下濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:n-ヘキサン/酢酸エチル=90/10~10/90)にて精製し、表題化合物(1.87g)を得た。
【0084】
参考例A-2
(S)-3-((3-ニトロピリジン-4-イル)アミノ)ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル
3-フルオロ-4-ニトロピリジンの代わりに4-クロロ-3-ニトロピリジンを用い、参考例A-1と同様の方法により表題化合物を得た。
【0085】
参考例A-3
(S)-3-((2-ニトロピリジン-3-イル)アミノ)ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル
3-フルオロ-2-ニトロピリジン(1.00g)、(S)-3-アミノピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(1.31g)、炭酸カリウム(1.95g)およびDMF(10mL)の混合物を、マイクロ波照射下、80℃で1時間撹拌した。反応混合物を酢酸エチル及び水の混合物にあけて撹拌した。その混合物を酢酸エチルで抽出した。有機層を水及び飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥し、減圧下濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:n-ヘキサン/酢酸エチル=80/20~20/80)にて精製し、表題化合物(1.73g)を得た。
【0086】
参考例A-4
(S)-3-((2-ニトロフェニル)アミノ)ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル
3-フルオロ-2-ニトロピリジンの代わりに1-フルオロ-2-ニトロベンゼンを用い、参考例A-3と同様の方法により表題化合物を得た。
【0087】
参考例B-1
(S)-3-((4-アミノピリジン-3-イル)アミノ)ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル
参考例A-1(1.87g)及びエタノール(30mL)の混合物に、アルゴン雰囲気下、パラジウム10%-炭素(0.19g,wet)を加えた。その混合物を水素雰囲気下、室温で4時間撹拌した。反応混合物をセライト(登録商標)ろ過し、ろ液を減圧下濃縮して表題化合物(1.68g)を得た。
【0088】
参考例B-2
(S)-3-((3-アミノピリジン-4-イル)アミノ)ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル
参考例A-1の代わりに参考例A-2を用い、参考例B-1と同様の方法により表題化合物を得た。
【0089】
参考例B-3
(S)-3-((2-アミノピリジン-3-イル)アミノ)ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル
参考例A-1の代わりに参考例A-3を用い、参考例B-1と同様の方法により表題化合物を得た。
【0090】
参考例B-4
(S)-3-((2-アミノフェニル)アミノ)ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル
参考例A-1の代わりに参考例A-4を用い、参考例B-1と同様の方法により表題化合物を得た。
【0091】
参考例C-1
(S)-3-(2-オキソ-1,2-ジヒドロ-3H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-3-イル)ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル
参考例B-1(1.68g)及びTHF(15mL)の混合物に、CDI(1.96g)を加えた。その混合物を室温で1時間撹拌した。反応混合物に水酸化ナトリウム水溶液(5mol/L,3mL)を加えて10分間撹拌した。その混合物に塩酸(2mol/L,7.5mL)及び水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:n-ヘキサン/酢酸エチル/メタノール=80/20/0~0/100/0~0/90/10)にて精製し、表題化合物(1.86g)を得た。MS(ESI_APCI,m/z):303(M-H)-
【0092】
参考例C-2
(S)-3-(2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル)ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル
参考例B-1の代わりに参考例B-2を用い、参考例C-1と同様の方法により表題化合物を得た。MS(ESI_APCI,m/z):303(M-H)-
【0093】
参考例C-3
(S)-3-(2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-1-イル)ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル
参考例B-1の代わりに参考例B-3を用い、参考例C-1と同様の方法により表題化合物を得た。MS(ESI_APCI,m/z):303(M-H)-
【0094】
参考例C-4
(S)-3-(2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル
参考例B-1の代わりに参考例B-4を用い、参考例C-1と同様の方法により表題化合物を得た。MS(ESI_APCI,m/z):302(M-H)-
【0095】
参考例M-1
4-(5-ブロモピリジン-2-イル)安息香酸メチル
アルゴン雰囲気下、2,5-ジブロモピリジン(10.0g)、(4-(メトキシカルボニル)フェニル)ボロン酸(9.12g)、Pd(PPh3)4(1.46g)、炭酸カリウム(11.7g)、1,4-ジオキサン(56mL)及びメタノール(24mL)の混合物を、80℃で2時間撹拌した。室温に放冷後、反応混合物にジクロロメタン及び水を加えて攪拌した。その混合物をセライトろ過し、ろ液をジクロロメタンで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下濃縮した。得られた残渣にメタノール(50mL)を加え、30分間加熱還流した。その混合物を氷冷下で30分間撹拌し、生じた不溶物をろ取した。得られた固体を氷冷したメタノールで洗浄した後、減圧乾燥し、表題化合物(8.78g)を得た。
【0096】
参考例E-1
(S)-3-(1-(6-(4-(メトキシカルボニル)フェニル)ピリジン-3-イル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-3H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-3-イル)ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル
参考例C-1(500mg)、参考例M-1(480mg)、N,N’-ジメチルエチレンジアミン(0.21mL)、ヨウ化銅(I)(375mg)、炭酸カリウム(454mg)及びアセトニトリル(5mL)の混合物を、マイクロ波照射下、100℃で1時間撹拌した。反応混合物を酢酸エチルにあけて撹拌した。その混合物をセライトろ過し、ろ液を減圧下濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:n-ヘキサン/酢酸エチル/メタノール=80/20/0~0/100/0~0/90/10)にて精製し、表題化合物(366mg)を得た。
【0097】
参考例E-2
(S)-3-(1-([1,1'-ビフェニル]-4-イル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-3H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-3-イル)ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル
参考例M-1の代わりに4-ヨード-1,1'-ビフェニルを用い、参考例E-1と同様の方法により表題化合物を得た。
【0098】
参考例E-3
(S)-3-(3-(6-(4-(メトキシカルボニル)フェニル)ピリジン-3-イル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル)ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル
参考例C-1の代わりに参考例C-2を用い、参考例E-1と同様の方法により表題化合物を得た。
【0099】
参考例E-4
(S)-3-(3-(4'-(メトキシカルボニル)-[1,1'-ビフェニル]-4-イル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル)ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル
参考例C-1及び参考例M-1の代わりに、それぞれ参考例C-2及び4'-ブロモ-[1,1'-ビフェニル]-4-カルボン酸メチル用い、参考例E-1と同様の方法により表題化合物を得た。
【0100】
参考例E-5
(S)-3-(3-(6-(4-(メトキシカルボニル)フェニル)ピリジン-3-イル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-1-イル)ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル
参考例C-3(239mg)、参考例M-1(252mg)、N,N’-ジメチルエチレンジアミン(0.10mL)、ヨウ化銅(I)(179mg)、炭酸カリウム(217mg)及びアセトニトリル(4mL)の混合物を、マイクロ波照射下、100℃で2時間撹拌した。反応混合物を水及び酢酸エチルの混合物にあけて撹拌した。その混合物をセライトろ過し、ろ液を酢酸エチルで抽出した。有機層を28%アンモニア水溶液および飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:n-ヘキサン/酢酸エチル=70/30~20/80)にて精製し、表題化合物(131mg)を得た。
【0101】
参考例E-6
(S)-3-(3-(4'-(メトキシカルボニル)-[1,1'-ビフェニル]-4-イル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-1-イル)ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル
参考例C-1及び参考例M-1の代わりに、それぞれ参考例C-3及び4'-ブロモ-[1,1'-ビフェニル]-4-カルボン酸メチル用い、参考例E-1と同様の方法により表題化合物を得た。
【0102】
参考例E-7
(S)-3-(3-(6-(4-(メトキシカルボニル)フェニル)ピリジン-3-イル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル
参考例C-3の代わりに参考例C-4を用い、参考例E-5と同様の方法により表題化合物を得た。
【0103】
参考例E-8
(S)-3-(3-([1,1'-ビフェニル]-4-イル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル
参考例C-1及び参考例M-1の代わりに、それぞれ参考例C-4及び4-ヨード-1,1'-ビフェニルを用い、参考例E-1と同様の方法により表題化合物を得た。
【0104】
参考例E-9
2-(6-(4-(メトキシカルボニル)フェニル)ピリジン-3-イル)-1-オキソ-2,9-ジアザスピロ[5.5]ウンデカン-9-カルボン酸tert-ブチル
1-オキソ-2,9-ジアザスピロ[5.5]ウンデカン-9-カルボン酸tert-ブチル(322mg)、参考例M-1(292mg)、Xantphos (52mg)、Pd2(dba)3(27mg)、炭酸セシウム(461mg)及び1,4-ジオキサン(1mL)の混合物を、マイクロ波照射下、120℃で10時間撹拌した。反応混合物にジクロロメタン加えて攪拌した。その混合物をセライトろ過し、ろ液を減圧下濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:n-ヘキサン/酢酸エチル=70/30~0/100)にて精製し、表題化合物(95mg)を得た。
【0105】
参考例G-1
(S)-2-((3-(1-(6-(4-(メトキシカルボニル)フェニル)ピリジン-3-イル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-3H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-3-イル)ピロリジン-1-イル)メチル)イソニコチン酸メチル
参考例E-1(338mg)及び塩化水素-1,4-ジオキサン溶液(4mol/L,3mL)の混合物を、室温で1時間撹拌した。反応混合物を減圧下濃縮した。
得られた化合物(320mg)、2-ホルミルイソニコチン酸メチル(108mg)、トリエチルアミン(0.46mL)及びジクロロメタン(3mL)の混合物に、NaBH(OAc)3(556mg)を加えた。その混合物を室温で30分間撹拌した。反応混合物にメタノール(3mL)を加え、30分間撹拌した。その混合物を減圧下濃縮した。得られた残渣をアミノシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:n-ヘキサン/酢酸エチル=80/20~0/100)にて精製し、表題化合物(218mg)を得た。
【0106】
参考例J-1
1-メチル-1H-イミダゾール-5-カルボン酸tert-ブチル
1-メチル-1H-イミダゾール-5-カルボン酸(5.00g)、tert-ブタノール(37.7mL)、ピリジン(16.0mL)及びTsCl(15.11g)の混合物を室温で一晩撹拌した。反応混合物に水及び酢酸エチルを加えて撹拌した後、その混合物を酢酸エチルで抽出した。有機層を水及び飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下濃縮して表題化合物(6.24g)を得た。
【0107】
参考例J-2
2-ホルミル-1-メチル-1H-イミダゾール-5-カルボン酸tert-ブチル
参考例J-1(5.82g)、DMF(7.43mL)及びTHF(60mL)の混合物にドライアイス/アセトン浴中、-70℃以下でLDA(1.0mol/L,THF/n-ヘキサン溶液,48mL)をゆっくり滴下した。反応混合物を氷冷下で10分間撹拌した。再度、反応混合物にドライアイス/アセトン浴中、-70℃以下でLDA(1.0 mol/L,THF/n-ヘキサン溶液,16mL)およびDMF(1mL)をゆっくり滴下した。さらに反応混合物を氷冷下で10分間撹拌した。反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて5分間撹拌した後、その混合物を酢酸エチルで抽出した。有機層を水及び飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下濃縮して表題化合物(6.72g)を得た。
【0108】
参考例G-2
(S)-2-((3-(1-(6-(4-(メトキシカルボニル)フェニル)ピリジン-3-イル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-3H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-3-イル)ピロリジン-1-イル)メチル)-1-メチル-1H-イミダゾール-5-カルボン酸tert-ブチル
2-ホルミルイソニコチン酸メチルの代わりに参考例J-2を用い、参考例G-1と同様の方法により表題化合物を得た。
【0109】
参考例G-3
(S)-2-((3-(1-([1,1'-ビフェニル]-4-イル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-3H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-3-イル)ピロリジン-1-イル)メチル)-1-メチル-1H-イミダゾール-5-カルボン酸tert-ブチル
参考例E-1及び2-ホルミルイソニコチン酸メチルの代わりに、それぞれ参考例E-2及び参考例J-2を用い、参考例G-1と同様の方法により表題化合物を得た。
【0110】
参考例G-4
(S)-2-((3-(3-(6-(4-(メトキシカルボニル)フェニル)ピリジン-3-イル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)メチル)イソニコチン酸メチル
参考例E-1の代わりに参考例E-3を用い、参考例G-1と同様の方法により表題化合物を得た。
【0111】
参考例G-5
(S)-2-((3-(3-(6-(4-(メトキシカルボニル)フェニル)ピリジン-3-イル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)メチル)-1-メチル-1H-イミダゾール-5-カルボン酸tert-ブチル
参考例E-1及び2-ホルミルイソニコチン酸メチルの代わりに、それぞれ参考例E-3及び参考例J-2を用い、参考例G-1と同様の方法により表題化合物を得た。
【0112】
参考例G-6
(S)-2-((3-(3-(4'-(メトキシカルボニル)-[1,1'-ビフェニル]-4-イル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)メチル)-1-メチル-1H-イミダゾール-5-カルボン酸tert-ブチル
参考例E-1及び2-ホルミルイソニコチン酸メチルの代わりに、それぞれ参考例E-4及び参考例J-2を用い、参考例G-1と同様の方法により表題化合物を得た。
【0113】
参考例G-7
(S)-2-((3-(3-(6-(4-(メトキシカルボニル)フェニル)ピリジン-3-イル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)メチル)イソニコチン酸メチル
参考例E-5(315mg)及び塩化水素-1,4-ジオキサン溶液(4mol/L,2mL)の混合物を、室温で8時間撹拌した。反応混合物を減圧下濃縮した。
得られた化合物(120mg)、トリエチルアミン(0.056mL)及びTHF(2mL)の混合物に、2-ホルミルイソニコチン酸メチル(57mg)及びNaBH(OAc)3(84mg)を加えた。その混合物を室温で2時間撹拌した。反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:n-ヘキサン/酢酸エチル/メタノール=20/80/0~0/100/0~0/90/10)にて精製し、表題化合物(129mg)を得た。
【0114】
参考例G-8
(S)-2-((3-(3-(6-(4-(メトキシカルボニル)フェニル)ピリジン-3-イル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)メチル)-1-メチル-1H-イミダゾール-5-カルボン酸tert-ブチル
2-ホルミルイソニコチン酸メチルの代わりに参考例J-2を用い、参考例G-7と同様の方法により表題化合物を得た。
【0115】
参考例G-9
(S)-2-((3-(3-(4'-(メトキシカルボニル)-[1,1'-ビフェニル]-4-イル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)メチル)-1-メチル-1H-イミダゾール-5-カルボン酸tert-ブチル
参考例E-1及び2-ホルミルイソニコチン酸メチルの代わりに、それぞれ参考例E-6及び参考例J-2を用い、参考例G-1と同様の方法により表題化合物を得た。
【0116】
参考例G-10
(S)-2-((3-(3-(6-(4-(メトキシカルボニル)フェニル)ピリジン-3-イル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)ピロリジン-1-イル)メチル)イソニコチン酸メチル
参考例E-7(718mg)、メタノール(3mL)及び塩化水素-1,4-ジオキサン溶液(4mol/L,2mL)の混合物を、室温で2時間撹拌した。反応混合物を減圧下濃縮した。
得られた化合物(200mg)、トリエチルアミン(0.093mL)及びTHF(2mL)の混合物に、2-ホルミルイソニコチン酸メチル(95mg)及びNaBH(OAc)3(141mg)を加えた。その混合物を室温で2時間撹拌した。反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下濃縮した。得られた残渣にn-ヘキサン/酢酸エチル混合溶媒(1/9)を加えた。その混合物を氷冷下で30分間撹拌し、不溶物をろ取した。得られた固体を乾燥して表題化合物(188mg)を得た。
【0117】
参考例G-11
(S)-2-((3-(3-(6-(4-(メトキシカルボニル)フェニル)ピリジン-3-イル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)ピロリジン-1-イル)メチル)-1-メチル-1H-イミダゾール-5-カルボン酸tert-ブチル
2-ホルミルイソニコチン酸メチルの代わりに参考例J-2を用い、参考例G-10と同様の方法により表題化合物を得た。
【0118】
参考例G-12
(S)-2-((3-(3-([1,1'-ビフェニル]-4-イル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)ピロリジン-1-イル)メチル)-1-メチル-1H-イミダゾール-5-カルボン酸tert-ブチル
参考例E-1及び2-ホルミルイソニコチン酸メチルの代わりに、それぞれ参考例E-8及び参考例J-2を用い、参考例G-1と同様の方法により表題化合物を得た。
【0119】
参考例G-13
2-((2-(6-(4-(メトキシカルボニル)フェニル)ピリジン-3-イル)-1-オキソ-2,9-ジアザスピロ[5.5]ウンデカン-9-イル)メチル)-1-メチル-1H-イミダゾール-5-カルボン酸tert-ブチル
参考例E-1及び2-ホルミルイソニコチン酸メチルの代わりに、それぞれ参考例E-9及び参考例J-2を用い、参考例G-1と同様の方法により表題化合物を得た。
【0120】
参考例N-1
2-((2-(6-(4-カルボキシフェニル)ピリジン-3-イル)-1-オキソ-2,9-ジアザスピロ[5.5]ウンデカン-9-イル)メチル)-1-メチル-1H-イミダゾール-5-カルボン酸
参考例G-13(81mg)、水(0.6mL)及び濃硫酸(0.03mL)の混合物を、120℃で1時間撹拌した。室温に放冷後、反応混合物に水酸化リチウム(4mol/L,0.49mL)を加えて1時間撹拌した。その混合物に塩酸(1mol/L,0.85mL)を加え、減圧下濃縮した。得られた残渣に水を加え、不溶物をろ取した。得られた固体を乾燥して表題化合物(42mg)を得た。MS(ESI_APCI,m/z):504(M+H)+
【0121】
一部の参考例の化学構造式及びPHD2阻害活性(試験例1参照)を以下の表に示す。
【0122】
【表1】
【0123】
【表2】
【0124】
実施例L-1
(S)-2-((3-(3-(6-(4-(メトキシカルボニル)フェニル)ピリジン-3-イル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)ピロリジン-1-イル)メチル)-1-メチル-1H-イミダゾール-5-カルボン酸
参考例G-11(220mg)、メタノール(1.2mL)、水(1.2mL)及び濃硫酸(0.039mL)の混合物を、100℃で3時間撹拌した。室温に放冷後、析出物をろ取した。得られた固体を乾燥して、表題化合物(187mg)を得た。
【0125】
実施例1
(S)-2-((3-(1-(6-(4-カルボキシフェニル)ピリジン-3-イル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-3H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-3-イル)ピロリジン-1-イル)メチル)イソニコチン酸
参考例G-1(217mg)、メタノール(1.5mL)及び水(0.5mL)の混合物に、水酸化リチウム(4mol/L,0.38mL)を加えた。その混合物を65℃で1時間撹拌した。室温に放冷後、反応混合物に塩酸(6mol/L,0.26mL)を加え、50℃で30分間撹拌した。析出物をろ取した後、得られた固体を乾燥して表題化合物(143mg)を得た。
【0126】
実施例2
(S)-2-((3-(1-(6-(4-カルボキシフェニル)ピリジン-3-イル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-3H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-3-イル)ピロリジン-1-イル)メチル)-1-メチル-1H-イミダゾール-5-カルボン酸
参考例G-2(274mg)、エタノール(2.5mL)、水(2.5mL)及び濃硫酸(0.048mL)の混合物を、90℃で2時間撹拌した。室温に放冷後、反応混合物に水酸化リチウム・一水和物(189mg)を加えた。その混合物を室温で30分間撹拌した後、不溶物をろ去した。ろ液をODSカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:ギ酸水溶液(0.1%)/アセトニトリル=98/2~10/90)にて精製し、表題化合物(36mg)を得た。
【0127】
実施例3
(S)-2-((3-(1-([1,1'-ビフェニル]-4-イル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-3H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-3-イル)ピロリジン-1-イル)メチル)-1-メチル-1H-イミダゾール-5-カルボン酸
参考例G-3(70mg)、ジクロロメタン(0.5mL)及びトリフルオロ酢酸(0.5mL)の混合物を、1時間加熱還流した。室温に放冷後、反応混合物を減圧下濃縮した。得られた残渣をODSカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:ギ酸水溶液(0.1%)/アセトニトリル=90/10~30/70)にて精製し、表題化合物(42mg)を得た。
【0128】
実施例4
(S)-2-((3-(3-(6-(4-カルボキシフェニル)ピリジン-3-イル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)メチル)イソニコチン酸
参考例G-1の代わりに参考例G-4を用い、実施例1と同様の方法により表題化合物を得た。
【0129】
実施例5
(S)-2-((3-(3-(6-(4-カルボキシフェニル)ピリジン-3-イル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)メチル)-1-メチル-1H-イミダゾール-5-カルボン酸
参考例G-2の代わりに参考例G-5を用い、実施例2と同様の方法により表題化合物を得た。
【0130】
実施例6
(S)-2-((3-(3-(4'-カルボキシ-[1,1'-ビフェニル]-4-イル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)メチル)-1-メチル-1H-イミダゾール-5-カルボン酸
参考例G-6(62mg)、メタノール(0.5mL)、水(0.5mL)及び濃硫酸(0.022mL)の混合物を、90℃で1時間撹拌した。室温に放冷後、反応混合物に水酸化リチウム・一水和物(85mg)を加えた。その混合物を室温で30分間撹拌した。反応混合物をODSカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:ギ酸水溶液(0.1%)/アセトニトリル=90/10~30/70)にて精製し、表題化合物(22mg)を得た。
【0131】
実施例7
(S)-2-((3-(3-(6-(4-カルボキシフェニル)ピリジン-3-イル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)メチル)イソニコチン酸
参考例G-1の代わりに参考例G-7を用い、実施例1と同様の方法により表題化合物を得た。
【0132】
実施例8
(S)-2-((3-(3-(6-(4-カルボキシフェニル)ピリジン-3-イル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)メチル)-1-メチル-1H-イミダゾール-5-カルボン酸
参考例G-6の代わりに参考例G-8を用い、実施例6と同様の方法により表題化合物を得た。
【0133】
実施例9
(S)-2-((3-(3-(4'-カルボキシ-[1,1'-ビフェニル]-4-イル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)メチル)-1-メチル-1H-イミダゾール-5-カルボン酸
参考例G-9(54mg)、メタノール(0.2mL)、水(1.0mL)及び濃硫酸(0.04mL)の混合物を、マイクロ波照射下、110℃で1時間撹拌した。反応混合物に水酸化リチウム・一水和物(100mg)を加え、50℃で1時間撹拌した。反応混合物をODSカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:ギ酸水溶液(0.1%)/アセトニトリル=90/10~30/70)にて精製し、表題化合物(24mg)を得た。
【0134】
実施例10
(S)-2-((3-(3-(6-(4-カルボキシフェニル)ピリジン-3-イル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)ピロリジン-1-イル)メチル)イソニコチン酸
参考例G-1の代わりに参考例G-10を用い、実施例1と同様の方法により表題化合物を得た。
【0135】
実施例11
(S)-2-((3-(3-(6-(4-カルボキシフェニル)ピリジン-3-イル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)ピロリジン-1-イル)メチル)-1-メチル-1H-イミダゾール-5-カルボン酸
実施例L-1(187mg)、メタノール(2.2mL)及び水(0.7mL)の混合物に、水酸化リチウム水溶液(4mol/L,0.34mL)を加えた。その混合物を65℃で1時間撹拌した。室温に放冷後、反応混合物にメタノール(1.1mL)及び塩酸(6mol/L,0.23mL)を加え、50℃で30分間撹拌した。不溶物をろ去し、ろ液を氷冷下で30分間撹拌した。析出物をろ取した後、得られた固体を乾燥して表題化合物(68mg)を得た。
【0136】
実施例12
(S)-2-((3-(3-([1,1'-ビフェニル]-4-イル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)ピロリジン-1-イル)メチル)-1-メチル-1H-イミダゾール-5-カルボン酸
参考例G-3の代わりに参考例G-12を用い、実施例3と同様の方法により表題化合物を得た。
【0137】
実施例の化学構造式、物性値、及びPHD2阻害活性(試験例1参照)を以下の表に示す。
【0138】
【表3】
【0139】
【表4】
【0140】
試験例1 PHD2阻害試験
(1)ヒトPHD2184-418の発現・調製
GenBankアクセッションID:CAC42509で表されるタンパク質の184~418番のアミノ酸残基を含むヒトPHD2184-418を以下の方法で発現・調製した。
ヒトPHD2184-418の発現コンストラクトにN-末端ヒスチジンタグを組み込んだものをpET-30a(+)ベクターに導入し、配列を確認した。このベクターをBL21(DE3)株に導入し、抗生物質を含んだLB培地にて37℃で培養した。培養後、細胞溶解溶液を細胞に加え、超音波破砕により破砕懸濁した。破砕懸濁液を遠心し、上清をNiカラムを用いて精製し、ヒトPHD2184-418を得た。
(2)試験方法
ヒトHIF-1αの556~574番のアミノ酸残基(部分ペプチド)を含むHIF-1α556-574のN-末端にFITC-Ahxが組み込まれたヒトHIF-1α556-574(FITCラベル化HIF-1α556-574)を基質とした。FITCラベル化HIF-1α556-574を用いて、2-oxoglutarateと試験化合物(PHD阻害剤)との競合阻害をFITCラベル化HIF-1α556-574の蛍光偏光の変化により、以下の方法で評価した。
酵素(ヒトPHD2184-418)及び基質を10 mM HEPES、150 mM NaCl、10μM MnCl2・4H2O、2μM 2-oxoglutarate及び0.05% Tween-20を含んだアッセイ緩衝液(pH 7.4)で希釈した。試験化合物をDMSOで希釈した。試験化合物、ヒトPHD2184-418を384ウェルプレート(Corning、黒色、不透明底)にあらかじめ添加し、FITCラベル化HIF-1α556-574を添加することにより反応を開始した。37℃で60分間インキュベーションした後に、PHERAstar FSX(BMG Labtech)にて蛍光偏光(励起波長470 nm、蛍光波長530 nm)を測定した。各ウェルの蛍光偏光を測定し、試験化合物のヒトPHD2結合阻害活性を試験物質無添加群の値に基づいて計算した。
(3)結果
上述の表に示したように、本発明の化合物は、PHD2とHIF-1αとの結合を阻害した。したがって、本発明の化合物は、PHD2阻害剤として有用であることが明らかとなった。
【0141】
試験例2 大腸炎モデルにおける治療効果
(1)TNBS誘発大腸炎モデルラット
TNBSをラットの大腸内に投与することにより大腸局所的に炎症が惹起され、腸管内のバリア機能が破綻し、腸管膜の透過性が亢進することが知られている。そこで、試験化合物の経口投与による腸管膜の透過性抑制作用を薬効の指標として評価した。
(2)試験方法
8週齢のSLC:SD雄性ラット(日本エスエルシー)を用いた。ペントバルビタール麻酔下にて50%エタノールで調整した28 mg/mL TNBSを大腸内の肛門から8 cmの部位に300μL投与し、炎症を惹起させた。溶媒処置群には50%エタノールを300μL投与した。TNBSを投与する前に48時間絶食を行った。翌日から、0.05%メチルセルロース溶液で調製した試験化合物を1日1回経口投与し、計3日間投与した。投与3日後、試験化合物投与4時間後に50 mg/kg FITCを経口投与し、4時間後にイソフルラン麻酔下にて頸静脈から採血を行った。血清を遠心分離し、PHERAstar FSX(BMG Labtech)にて蛍光強度を検出することにより、腸管膜を介して循環血に透過したFITC濃度を測定した。試験化合物の腸管膜の透過性抑制率を試験物質無添加群の値を0、TNBS未処置群の値を100として計算した。
(3)結果
各試験化合物の腸管膜の透過性抑制率(%,平均値)(Inhibition)を以下に示す。
【表5】
TNBSの投与により亢進したFITCの腸管膜透過性は、本発明の化合物の投与により抑制された。したがって、本発明の化合物は、炎症性腸疾患の治療剤として有用であることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明の化合物又はその薬理学的に許容される塩は、炎症性腸疾患の治療剤として有用である。