(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】光学ユニット
(51)【国際特許分類】
G02B 26/08 20060101AFI20240109BHJP
G02B 26/10 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
G02B26/08 E
G02B26/10 104Z
(21)【出願番号】P 2020010837
(22)【出願日】2020-01-27
【審査請求日】2022-12-27
(31)【優先権主張番号】P 2019014610
(32)【優先日】2019-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年1月30日に米国モスコーンセンターにおいて配布したチラシ
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】森永 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 杏奈
(72)【発明者】
【氏名】藁科 禎久
【審査官】鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-034309(JP,A)
【文献】特開2017-215352(JP,A)
【文献】特表2007-524112(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0200105(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/08
G02B 26/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面を有するベースと、
可動ミラー部を有し、前記ベース上に配置されたミラーデバイスと、
前記ミラーデバイスを囲うように前記主面に設けられた枠部材と、
前記枠部材に接合された平板状の窓部材と、
を備え、
前記枠部材は、前記主面に設けられ、前記主面と反対側の第1頂面を含む第1壁部と、前記第1壁部に対向するように前記主面に設けられ、前記主面と反対側の第2頂面を含む第2壁部と、前記第1壁部の両端と前記第2壁部の両端とにおいて前記第1壁部と前記第2壁部とを互いに接続するように前記主面に設けられ、第3頂面を含む第3壁部と、を有し、
前記第1壁部の前記主面からの高さは、前記第2壁部の前記主面からの高さよりも低くされており、
前記窓部材は、少なくとも前記第1頂面及び前記第2頂面に接合されることにより、前記第1壁部から前記第2壁部に向かうにつれて前記主面から遠ざかるように傾斜しており、
前記第1頂面、前記第2頂面、及び、前記第3頂面は、前記窓部材の傾斜に応じた角度で傾斜しており、
前記窓部材の厚さは、前記第1壁部の前記主面からの高さの最小値よりも厚く、
前記第1壁部から前記第2壁部に向かう第1方向に沿った前記第1頂面の長さは、前記最小値よりも長
く、
前記第1壁部の一端と前記第3壁部とを接続する前記枠部材の第1角部の内側面、及び、前記第1壁部の他端と前記第3壁部とを接続する前記枠部材の第2角部の内側面は、前記主面に交差する第2方向からみて曲面状とされている、
光学ユニット。
【請求項2】
前記第1頂面のうちの前記窓部材が接合される部分の前記第1方向に沿った長さは、前記最小値よりも長い、
請求項1に記載の光学ユニット。
【請求項3】
前記第1頂面のうちの前記窓部材が接合される部分の前記第1方向に沿った長さは、前記第1頂面の全体の前記第1方向に沿った長さよりも短い、
請求項1又は2に記載の光学ユニット。
【請求項4】
前記主面には、
前記第2方向からみて前記ミラーデバイスが配置される凹部が形成されており、
前記第2方向からみて前記凹部の角部は曲面状とされている、
請求項1~3のいずれか一項に記載の光学ユニット。
【請求項5】
前記枠部材の内側面における前記窓部材側の部分、及び、前記窓部材の外側面には、前記枠部材と前記窓部材との接合材のフィレットが形成されている、
請求項1~4のいずれか一項に記載の光学ユニット。
【請求項6】
前記第1壁部における前記主面に臨む底面の前記第1方向に沿った長さは、前記最小値よりも長い、
請求項1~5のいずれか一項に記載の光学ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光スキャナパッケージが記載されている。この光スキャナパッケージは、ベース基板と枠部材と平板ガラスとを備えている。ベース基板は、基板とミラー部材とを有する。基板の表面には、凸部と窪みが形成されている。ミラー部材は、この窪みを塞ぐように設けられている。枠部材と平板ガラスとは、カバー部材を構成すると共に、凸部に接合されてベース基板と一体化されている。これにより、ミラー部材が密閉されている。また、非特許文献1には、MEMSミラーパッケージが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【文献】後呂 考亮、中村 英夫 “次世代周辺環境認識技術の開発及び実証”、[online]、JARI Research Journal 20171103、[平成31年1月9日検索]、インターネット<http://www.jari.or.jp/Portals/0/resource/JRJ_q/JRJ20171103_q.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した光スキャナパッケージにおいては、平板ガラスからの入射光が、ミラー部材のミラーにより反射され、その反射光が平板ガラスを介して出射される。ここでは、平板ガラスは、ミラー面に対して傾斜されている。これにより、平板ガラスでの反射により生じるノイズ光の進行方向が、反射光の進行方向と分離される。その結果、ミラーの揺動による反射光のスキャンへのノイズ光の影響を抑制している。このように、上記技術分野にあっては、ノイズの抑制が望まれている。一方で、上記技術分野にあっては、信頼性の向上も望まれている。
【0006】
そこで、本発明は、ノイズを抑制しつつ信頼性を向上可能な光学ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る光学ユニットは、主面を有するベースと、可動ミラー部を有し、ベース上に配置されたミラーデバイスと、ミラーデバイスを囲うように主面に設けられた枠部材と、枠部材に接合された平板状の窓部材と、を備え、枠部材は、主面に設けられ、主面と反対側の第1頂面を含む第1壁部と、第1壁部に対向するように主面に設けられ、主面と反対側の第2頂面を含む第2壁部と、第1壁部の両端と第2壁部の両端とにおいて第1壁部と第2壁部とを互いに接続するように主面に設けられ、第3頂面を含む第3壁部と、を有し、第1壁部の主面からの高さは、第2壁部の主面からの高さよりも低くされており、窓部材は、少なくとも第1頂面及び第2頂面に接合されることにより、第1壁部から第2壁部に向かうにつれて主面から遠ざかるように傾斜しており、第1頂面、第2頂面、及び、第3頂面は、窓部材の傾斜に応じた角度で傾斜しており、窓部材の厚さは、第1壁部の主面からの高さの最小値よりも厚く、第1壁部から第2壁部に向かう第1方向に沿った第1頂面の長さは、最小値よりも長い。
【0008】
この光学ユニットにおいては、光の入出射部を提供する窓部材が、当該窓部材を支持する枠部材の第2壁部から第1壁部に向かうにつれて、ベースの主面に近づくように傾斜している。したがって、可動ミラー部での反射光のスキャンに対して、窓部材での反射で生じるノイズ光が影響し難く、ノイズが抑制される。一方、このような光学ユニットにおいては、可動ミラー部(ミラー面)をできるだけ大きくすることが有利となる。しかしながら、可動ミラー部を大きくすると、ミラーデバイスのサイズが大きくなり、結果としてミラーデバイスを囲う枠部材も大きくなる。ノイズの抑制の観点から傾斜させた窓部材の傾斜角を維持しつつ、窓部材及び枠部材を大きくすると、第1壁部と第2壁部との高低差が大きくなる。そうすると、枠部材の強度のバランスが悪くなり、全体としての強度が低下するおそれがある。
【0009】
これに対して、この光学ユニットにあっては、第1壁部の高さの最小値よりも厚い窓部材を枠部材に接合するようにすることによって、全体としての強度のバランスを保ち、強度の低下を抑制している。また、この光学ユニットにあっては、第1壁部から第2壁部に向かう第1方向に沿った第1壁部の頂面(第1頂面)の長さを、第1壁部の高さの最小値よりも長くしている。これにより、第1壁部における第3壁部との接続部分である両端や、第1壁部における両端の間の中央部分が、第1方向に変位するような第1壁部の変形が抑制される。さらには、第1壁部(枠部材)に対して、第1壁部の高さの最小値よりも厚い窓部材が接合されることにより、第1壁部の高さ方向への変形も抑制される。少なくとも以上の理由から、この光学ユニットによれば、信頼性も向上される。
【0010】
本発明に係る光学ユニットにおいては、第1頂面のうちの窓部材が接合される部分の第1方向に沿った長さは、最小値よりも長くてもよい。この場合、第1壁部における第3壁部との接続部分である両端や、第1壁部における両端の間の中央部分が、第1方向に変位するような第1壁部の変形がさらに抑制される。したがって、信頼性がさらに向上される。
【0011】
本発明に係る光学ユニットにおいては、第1頂面のうちの窓部材が接合される部分の第1方向に沿った長さは、第1頂面の全体の第1方向に沿った長さよりも短くてもよい。この場合、第1壁部の相対的に低い部分に対して、窓部材との接合を形成しない(窓部材と接触しない)余白部分が生じるため、第1壁部の破損が抑制される。したがって、信頼性がさらに向上される。
【0012】
本発明に係る光学ユニットにおいては、主面には、主面に交差する第2方向からみてミラーデバイスが配置される凹部が形成されており、第2方向からみて凹部の角部は曲面状とされていてもよい。この場合、枠部材からベースへ作用する応力、及び、ベースからミラーデバイスへ作用する応力が緩和される。したがって、信頼性がさらに向上される。
【0013】
本発明に係る光学ユニットにおいては、枠部材の内側面における窓部材側の部分、及び、窓部材の外側面には、枠部材と窓部材との接合材のフィレットが形成されていてもよい。この場合、枠部材と窓部材との接合部が延びる方向について、枠部材と窓部材とのずれが生じることが抑制される。したがって、信頼性がさらに向上される。
【0014】
本発明に係る光学ユニットにおいては、第1壁部における主面に臨む底面の第1方向に沿った長さは、最小値よりも長くてもよい。この場合、第1壁部における第3壁部との接続部分である両端や、第1壁部における両端の間の中央部分が、第1方向に変位するような第1壁部の変形がさらに抑制される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ノイズを抑制しつつ信頼性を向上可能な光学ユニットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態に係る光モジュールを示す斜視図である。
【
図2】
図1に示された光モジュールの平面図である。
【
図3】
図2におけるIII-III線に沿っての模式的な断面図である。
【
図4】
図3に示されたミラーパッケージを示す模式的な断面図である。
【
図5】
図1に示されるMEMSミラーの平面図である。
【
図6】
図4に示されたミラーユニットの部分的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本実施形態に係る光モジュールを示す斜視図である。
図2は、
図1に示された光モジュールの平面図である。
図3は、
図2におけるIII-III線に沿っての模式的な断面図である。
図4は、
図3に示されたミラーパッケージを示す模式的な断面図である。
図1~4に示される光モジュール100は、ミラーユニット(光学ユニット)40と、磁石部50と、パッケージ60と、を備えている。ミラーユニット40は、電磁駆動方式のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラー(ミラーデバイス)1と、MEMSミラー1を収容するミラーパッケージ41を有している。ミラーパッケージ41は、ベース42と、枠部材43と、窓部材44と、を有している。
【0018】
ベース42は、例えば、窒化アルミニウム又は酸化アルミニウム等の非磁性材料によって矩形板状に形成されている。ベース42は、主面42aと主面42aの反対側の裏面42bとを有している。裏面42bは、磁石部50側に臨む面であり、ミラーパッケージ41の外表面を構成する面である。主面42aは、ミラーパッケージ41の内面の一部を構成する面である。MEMSミラー1は、主面42a上に配置されている。
【0019】
枠部材43は、MEMSミラー1を囲うように主面42aに設けられている。枠部材43は、例えば、窒化アルミニウム又は酸化アルミニウム等の非磁性材料によって矩形枠状に形成されている。窓部材44は、例えば、ガラス等の透光性材料によって形成された矩形平板状の基材の両表面に反射防止膜が形成されることで構成されている。窓部材44は、枠部材43に接合されている。より具体的には、窓部材44は、枠部材43の一方の開口を気密に封止するように、例えば低融点ガラス等の接合材45によって枠部材43に接合されている。
【0020】
ベース42は、枠部材43の他方の開口を気密に封止するように、例えば低融点ガラス等の接合材46によって枠部材43に接合されている。これにより、MEMSミラー1は、ミラーパッケージ41によって気密に封止されている。窓部材44及び枠部材43の一方の開口(すなわち、窓部材44によって封止される開口)は、ベース42に対向している。ベース42と枠部材43とは、非磁性材料によって一体的に形成されていてもよい。
【0021】
MEMSミラー1が有する支持部2は、例えば樹脂によってベース42の主面42aに取り付けられている。磁石部50は、ベース42の裏面42bに対向するように、パッケージ60に収容されている。磁石部50は、パッケージ60の一部、及び、ベース42を介して、MEMSミラー1が有する第1可動部3と対向している。なお、接合材45,46を用いた接合は、低融点ガラスを用いた接合以外にも、例えば、樹脂接着剤、低温はんだ(Sn/Pb、Sn/Cu系)、低温ロウ材(Au/Sn合金、Au/Ge合金等)、高温ロウ材(Ag系等)、プロジェクション溶接、シームシール溶接、レーザ溶接、電子ビーム溶接等を用いた封止でもよい。
【0022】
図5は、
図1に示されるMEMSミラーの平面図である。
図5に示されるように、MEMSミラー1は、支持部2と、第1可動部(可動部)3、第2可動部(可動部)4、一対の第1連結部5、一対の第2連結部6、及び、ミラー7を含む可動ミラー部10と、を有している。支持部2、第1可動部3、第2可動部4、一対の第1連結部5及び一対の第2連結部6は、例えばシリコンによって一体的に形成されている。
【0023】
第1可動部3は、例えば矩形板状に形成されている。第2可動部4は、光軸方向Aから見た場合に隙間を介して第1可動部3を囲むように、例えば矩形環状に形成されている。支持部2は、光軸方向Aから見た場合に隙間を介して第2可動部4を囲むように、例えば矩形枠状に形成されている。つまり、支持部2は、光軸方向Aから見た場合に第1可動部3及び第2可動部4を囲むように枠状に形成されている。
【0024】
第1可動部3は、第1軸線X1周りに揺動可能となるように、一対の第1連結部5を介して第2可動部4に連結されている。つまり、第1可動部3は、支持部2において第1軸線X1周りに揺動可能となるように支持されている。第1可動部3は、第1部分31と、第2部分32と、を含んでいる。第1部分31は、光軸方向Aから見た場合に例えば円形状に形成されている。第2部分32は、光軸方向Aから見た場合に例えば矩形環状に形成されている。第1部分31は、光軸方向Aから見た場合に第2部分32に囲まれており、複数(ここでは2つ)の接続部分33を介して第2部分32と接続されている。つまり、第1部分31と第2部分32との間には、複数の接続部分33を除いて隙間が形成されている。
【0025】
接続部分33は、例えば、矩形状の第2部分32の内縁のうち第2軸線X2に交差する2辺の中央部に位置している。すなわち、接続部分33は、ここでは、第2軸線X2上に位置している。第1部分31は、少なくとも第2軸線X2に沿った方向において第2部分32に接続されていればよい。第2可動部4は、第2軸線X2周りに揺動可能となるように、一対の第2連結部6を介して支持部2に連結されている。つまり、第2可動部4は、支持部2において第2軸線X2周りに揺動可能となるように支持されている。第1軸線X1及び第2軸線X2は、光軸方向Aに垂直であり、互いに交差している(ここでは、互いに直交している)。なお、第1部分31は、光軸方向Aから見た場合に矩形状又は多角形状に形成されていてもよい。また、第1部分31は、光軸方向Aから見た場合に、円形状(例えば楕円形状)に形成されていてもよい。第2部分32は、光軸方向Aから見た場合に五角形以上の多角形環状又は円環状に形成されていてもよい。
【0026】
一対の第1連結部5は、第1可動部3の第2部分32と第2可動部4との間の隙間において、第1可動部3を挟むように第1軸線X1上に配置されている。各第1連結部5は、トーションバーとして機能する。一対の第2連結部6は、第2可動部4と支持部2との間の隙間において、第2可動部4を挟むように第2軸線X2上に配置されている。各第2連結部6は、トーションバーとして機能する。
【0027】
ミラー7は、第1可動部3の第1部分31に設けられている。ミラー7は、第1軸線X1と第2軸線X2との交点を含むように、第1部分31の一方の表面(窓部材44側の表面)に形成されている。ミラー7は、例えば、アルミニウム、アルミニウム系合金、金又は銀等の金属材料によって、円形、楕円形又は矩形の膜状に形成されており、ミラー7の中心は、光軸方向Aから見た場合に、第1軸線X1と第2軸線X2との交点に一致している。このように、複数の接続部分33を介して第2部分32と接続された第1部分31にミラー7が設けられているため、第1可動部3が共振周波数レベルで第1軸線X1周りにおいて揺動しても、ミラー7に撓み等の変形が生じることが抑制される。
【0028】
更に、MEMSミラー1は、第1駆動用コイル(コイル)11と、第2駆動用コイル(コイル)12と、配線15a,15bと、配線16a,16bと、電極パッド21a,21bと、電極パッド22a,22bと、を有している。なお、
図2では、説明の便宜上、第1駆動用コイル11及び第2駆動用コイル12を一点鎖線で示し、配線15a,15b及び配線16a,16bを実線で示す。
【0029】
第1駆動用コイル11は、第1可動部3の第2部分32に設けられている。第1駆動用コイル11は、光軸方向Aから見た場合におけるミラー7の外側の領域(すなわち、第2部分32)においてスパイラル状(渦巻き状)に複数回巻かれている。第1駆動用コイル11には、磁石部50によって発生させられる磁界が作用する。
【0030】
第1駆動用コイル11は、第1可動部3の表面に形成された溝内に配置されている。つまり、第1駆動用コイル11は、第1可動部3に埋め込まれている。第1駆動用コイル11の一端は、配線15aを介して電極パッド21aに接続されている。配線15aは、第1可動部3から、一方の第1連結部5、第2可動部4及び一方の第2連結部6を介して、支持部2に延在している。配線15a及び電極パッド21aは、例えば、タングステン、アルミニウム、金、銀、銅又はアルミニウム系合金等の金属材料によって一体的に形成されている。なお、第1駆動用コイル11と配線15aとは、互いに接続されている。
【0031】
第1駆動用コイル11の他端は、配線15bを介して電極パッド21bに接続されている。配線15bは、第1可動部3から、他方の第1連結部5、第2可動部4及び他方の第2連結部6を介して、支持部2に延在している。配線15b及び電極パッド21bは、例えば、タングステン、アルミニウム、金、銀、銅又はアルミニウム系合金等の金属材料によって一体的に形成されている。なお、第1駆動用コイル11と配線15bとは、互いに接続されている。
【0032】
第2駆動用コイル12は、第2可動部4に設けられている。第2駆動用コイル12は、第2可動部4においてスパイラル状(渦巻き状)に複数回巻かれている。第2駆動用コイル12には、磁石部50によって発生させられる磁界が作用する。第2駆動用コイル12は、第2可動部4の表面に形成された溝内に配置されている。つまり、第2駆動用コイル12は、第2可動部4に埋め込まれている。
【0033】
第2駆動用コイル12の一端は、配線16aを介して電極パッド22aに接続されている。配線16aは、第2可動部4から、一方の第2連結部6を介して、支持部2に延在している。配線16a及び電極パッド22aは、例えば、タングステン、アルミニウム、金、銀、銅又はアルミニウム系合金等の金属材料によって一体的に形成されている。なお、第2駆動用コイル12と配線16aとは、互いに接続されている。
【0034】
第2駆動用コイル12の他端は、配線16bを介して電極パッド22bに接続されている。配線16bは、第2可動部4から、他方の第2連結部6を介して、支持部2に延在している。配線16b及び電極パッド22bは、例えば、タングステン、アルミニウム、金、銀、銅又はアルミニウム系合金等の金属材料によって一体的に形成されている。なお、第2駆動用コイル12と配線16bとは、互いに接続されている。
【0035】
以上のMEMSミラー1における可動ミラー部10の動作の例を挙げる。第1例としては、第1駆動用コイル11に高周波数の駆動電流が印加される。このとき、第1駆動用コイル11には、磁石部50によって発生させられた磁界が作用しているため、第1駆動用コイル11にローレンツ力が発生する。これにより、第1可動部3は、例えば、共振周波数レベルで第1軸線X1周りにおいて揺動させられる。
【0036】
また、第2駆動用コイル12には、一定の大きさの駆動電流が印加される。このとき、第2駆動用コイル12には、磁石部50によって発生させられた磁界が作用しているため、第2駆動用コイル12にローレンツ力が発生する。これにより、第2可動部4は、例えば、駆動電流の大きさに応じて第2軸線X2周りにおいて回動させられ、その状態で停止させられる。これにより、MEMSミラー1によれば、所定の光源からの光をミラー7により反射させつつ走査することが可能とされている。この第1例では、第1可動部3が共振周波数で揺動されると共に第2可動部4が静的に用いられる。
【0037】
第2例としては、第1例の第1可動部3の動作と同様に、第1駆動用コイル11に高周波数の駆動電流が印加されることによって第1可動部3が共振周波数に応じて揺動されると共に、第2駆動用コイル12に高周波数の駆動電流が印加されることによって第2可動部4が共振周波数に応じて揺動される。このように、この第2例では、第1可動部3及び第2可動部4の両方が、共振周波数で揺動される。
【0038】
第3例としては、第1例の第2可動部4の動作と同様に、第1駆動用コイル11に対して一定の大きさの駆動電流が印加されることによって、第1可動部3が駆動電流の大きさに応じて第1軸線X1周りにおいて回動させられて停止させられると共に、第2駆動用コイル12に対して一定の大きさの駆動電流が印加されることによって、第2可動部4が駆動電流の大きさに応じて第2軸線X2周りにおいて回動させられて停止させられる。このように、この第3例では、第1可動部3及び第2可動部4の両方が、静的に用いられる。
【0039】
第4例としては、例えば第2可動部4が設けられていない場合等であって、第1駆動用コイル11に高周波数の駆動電流が印加されることにより、第1可動部3のみが共振周波数に応じて揺動される。さらに、第5例としては、同様の場合であって、第1駆動用コイル11に対して一定の大きさの駆動電流が印加されることによって、第1可動部3が駆動電流の大きさに応じて第1軸線X1周りにおいて回動させられて停止させられる。これらの第4例及び第5例では、第1可動部3のみが揺動または静的に用いられる。
【0040】
なお、
図4に示されるように、ベース42の主面42aには、第1可動部3及び第2可動部4と対向するように凹部42cが形成されている。また、凹部42cの底面には、凹部42dが形成されている。第1可動部3及び第2可動部4は、この凹部42dによって、ベース42に干渉することなく揺動可能とされている。
【0041】
再び
図3を参照する。
図3に示されるように、磁石部50は、ミラーユニット40(MEMSミラー1)に作用する磁界を発生させる。磁石部50は、上面50aと、上面50aの反対側の底面50bと、上面50aから底面50bに延びて上面50aと底面50bとを互いに接続する側面50sと、を有している。磁石部50は、多角形柱状を呈している。ここでは、磁石部50は、六角柱状である。したがって、上面50a及び底面50bは、六角形状であり、側面50sは六角形環状である。上面50aと底面50bとは、互いに略平行である。
【0042】
磁石部50は、複数の磁石が組み合わせられて構成されている。ここでは、磁石部50は、第1磁石51と、第1磁石を挟むように配置された一対の第2磁石52,53と、を含む。第1磁石51は、上面50aから底面50bに至るように延びる多角形柱状(ここでは四角柱状)である。したがって、第1磁石51は、その端面が、上面50a及び底面50bの一部のエリアを構成する。第2磁石52,53は、それぞれ、上面50aから底面50bに至るように延びる多角形柱状(ここでは三角柱状)である。したがって、第2磁石52,53は、その端面が、上面50a及び底面50bの一部のエリアを構成する。
【0043】
第1磁石51及び第2磁石52,53は、それぞれの磁極がハルバッハ配列となるように配列されている(すなわち、磁石部50は、ハルバッハ構造を有している)。ここでは、第2磁石52は、その第1磁極(例えばN極)が底面50b側に位置し、且つ、その第2磁極(例えばS極)が上面50a側に位置するように配置されている。第2磁石53は、第2磁石52と逆向きに配置されている。すなわち、第2磁石53は、その第1磁極が上面50a側に位置し、且つ、その第2磁極が底面50b側に位置するように配置されている。一方、第1磁石51は、第2磁石53側に第1磁極が位置し、且つ、第2磁石52側に第2磁極が位置するように配置されている。
【0044】
第1磁石51、第2磁石52,53は、以上のような磁極の配列となるように配置されて組み合わされている。このため、磁極同士の引力及び斥力によって、第1磁石51には、上面50aから底面50bに向かう方向に力が作用する。一方、第2磁石52,53には、底面50bから上面50aに向かう方向に力が作用する。したがって、磁石部50を一体的に保持するための構成が必要となる。本実施形態においては、パッケージ60がその機能を有する。
【0045】
図1~3に示されるように、パッケージ60は、磁石部50を収容している。パッケージ60は、底壁部61、側壁部62、及び、規制部63を備えている。底壁部61、側壁部62、及び、規制部63は、互いに一体的に形成されている。パッケージ60は、全体として直方体状を呈している。底壁部61は、矩形の平板状を呈している。底壁部61は、磁石部50の底面50bに接触して底面50bを支持している。
【0046】
側壁部62は、底壁部61の外縁に沿って立設されている。したがって、ここでは、側壁部62は、矩形環状となっている。側壁部62は、磁石部50の側面50sに接触して側面50sを支持している。規制部63は、磁石部50の上面50a上に設けられている。規制部63は、磁石部50の上面50aに接触して上面50aを支持している。規制部63は、底面50bから上面50aに向かう方向への磁石部50(例えば第2磁石52,53)の移動を規制する。これにより、パッケージ60は、全体として、第1磁石51に作用する力、及び、第2磁石52,53に作用する力に抗して磁石部50を機械的に一体に保持している。
【0047】
規制部63は、磁石部50の上面50aと、側壁部62における底壁部61と反対側の端部と、の間において、側壁部62から磁石部50の上面50a側に張り出すように、側壁部62から連続的に延在している。すなわち、規制部63は、磁石部50の側面50sと上面50aとの接続部分から上面50aの内側に向けて延在している。規制部63は、上面50aの全体にわたって延びておらず、上面50a上に内縁63eを有する。
【0048】
そして、ミラーユニット40は、規制部63上に載置され、規制部63によって支持されている。すなわち、ミラーユニット40は、パッケージ60(特に規制部63)により上面50a上に支持されている。ミラーユニット40のベース42の裏面42bが、上面50a側に臨み規制部63に接触している。ベース42は、例えば接着樹脂等によって規制部63に接合されている。
【0049】
このような支持構造とすることにより、ミラーユニット40(裏面42b)と磁石部50の上面50aとの間には、規制部63のミラーユニット40が載置される部分、及び、規制部63の高さに相当する空気層63dから構成される緩和層Sが介在することとなる。すなわち、ミラーユニット40と上面50aとの間には、磁石部50の応力を緩和するための緩和層Sが設けられている。空気層63dは、規制部63の内縁63eにより規定される空間に形成される。これにより、ハルバッハ構造の磁石部50を用いた光モジュール100において、磁石部50からミラーユニット40への応力の伝達が抑制され、ミラーユニット40の傾きが抑制される。
【0050】
なお、光モジュール100は、コネクタ70と、コネクタ70に接続された配線部71と、をさらに備えている。コネクタ70は、パッケージ60の側壁部62内に埋設されている。配線部71は、コネクタ70から延び、規制部63の解放部分63pを介して光モジュール100(例えばベース42)に接続されている。ベース42の内部には、配線部71とMEMSミラー1とを電気的に接続するための配線が形成されている。当該配線とMEMSミラー1とは、例えばワイヤWによって電気的に接続されている。
【0051】
引き続いて、
図4及び
図6を参照してミラーユニット40について具体的に説明する。
図6は、
図4に示されたミラーユニットの部分的な平面図である。
図6においては、ベース42及び枠部材43のみが図示されている。
図4,6に示されるように、枠部材43は、ベース42の主面42aに設けられた第1壁部81、第2壁部82、及び、一対の第3壁部83を有している。ここでは、枠部材43は、第1壁部81と第2壁部82と第3壁部83とによって矩形環状に一体に形成されている。第1壁部81、第2壁部82、及び、第3壁部83は、それぞれ、枠部材43の辺部分を構成している。
【0052】
第1壁部81と第2壁部82とは、互に対向している。より具体的には、第1壁部81と第2壁部82とは、互に離間した状態において互いに平行に延在している。以下、第1壁部81から第2壁部82に向かう方向を第1方向と称し、主面42aに交差する方向を第2方向と称する場合がある。第1壁部81は、主面42aと反対側の第1頂面81sを含む。第1頂面81sは、第2壁部82に向かうにつれて主面42aから遠ざかるように傾斜している。
【0053】
したがって、第1壁部81の主面42aからの高さは、第2壁部82側において最も高く、第2壁部82と反対側において最も低くなっている。第1壁部81の高さの最小値H81が0である場合、第1壁部81の短手方向の断面形状は三角形状となり、最小値H81が0よりも大きい場合、第1壁部81の短手方向の断面形状は台形状となる(図示は台形状)。第1方向に沿った第1頂面81sの長さL81aは、この最小値H81よりも長い。
【0054】
第2壁部82は、主面42aと反対側の第2頂面82sを含む。第2頂面82sは、第1壁部81に向かうにつれて主面42aに近づくように傾斜している。したがって、第2壁部82の主面42aからの高さは、第1壁部81側において最も低く、第1壁部81と反対側において最も高くなっている。第2壁部82の短手方向の断面形状は台形状となっている。第1壁部81の主面42aからの高さは、第2壁部82の主面42aからの高さよりも低くされている。一例として、第1壁部81の主面42aからの高さの最大値は、第2壁部82の主面42aからの高さの最小値よりも小さい。さらには、第1壁部81の主面42aからの高さの平均値が、第2壁部82の主面42aからの高さの平均値よりも低いことが望ましい。
【0055】
一対の第3壁部83は、互に対向しており、互に離間した状態において互いに平行に延在している。第3壁部83は、第1壁部81の長手方向の両端と第2壁部82の長手方向の両端とにおいて、第1壁部81と第2壁部82とを互いに接続している。第3壁部83は、主面42aと反対側の第3頂面83sを含む。第3頂面83sは、第1壁部81から第2壁部82に向かうにつれて主面42aから遠ざかるように傾斜している。したがって、第3壁部83の主面42aからの高さは、第1壁部81側において最も低く、第2壁部82側において最も高い。第3壁部83は、短手方向からの側面視において台形状となっている。
【0056】
第1頂面81s、第2頂面82s、及び、第3頂面83sは、面一となっており、単一の平面を規定する。窓部材44は、これらの第1頂面81s、第2頂面82s、及び、第3頂面83sに接合材45を介して接合されることにより、第1壁部81から第2壁部82に向かうにつれて主面42aから遠ざかるように傾斜している。換言すれば、第1頂面81s、第2頂面82s、及び、第3頂面83sは、窓部材44の傾斜に応じた角度で傾斜している。ただし、窓部材44は、第3頂面83sの一部又は全部に接触するものの第3頂面83sに接合されていなくてもよい。すなわち、窓部材44は、少なくとも第1頂面81s及び第2頂面82sに接合されればよい。
【0057】
また、第3壁部83のそれぞれは、複数の部分から構成されていてもよい。第3壁部83のそれぞれが複数の部分から構成される場合には、各部分の間に間隙が形成されて互いに不連続に形成されていてもよい。この場合、第3頂面83sも、間隙に対応して複数の領域に分割されて不連続となる。一方、第3壁部83のそれぞれが単一の部分から構成されていた場合であっても、例えば第3頂面83sに切り欠き等の凹部が形成されることにより、第3頂面83sが複数の領域に分割されていてもよい。さらに、第3頂面83sについては、その全体が、窓部材44の傾斜に応じた角度で傾斜している必要もない。第3頂面83sは、第3頂面83s内の2点を結んだ直線が窓部材44の傾斜に応じた角度で傾斜するようにされていればよい。
【0058】
第1頂面81s及び第2頂面82sについても同様である。すなわち、第1頂面81s及び第2頂面82sについても、切り欠き等が形成されて複数の領域に分割されていてもよい。さらに、第1頂面81s及び第2頂面82sについても、その全体が、窓部材44の傾斜に応じて傾斜している必要もない。第1頂面81s及び第2頂面82sは、それらの内の2点を結んだ直線が窓部材44の傾斜に応じた角度で傾斜するようにされていればよい。この場合、第1頂面81s及び第2頂面82sのうち、窓部材44の傾斜に応じて傾斜している領域において、窓部材44に接合されればよい。換言すれば、この場合、第1頂面81s及び第2頂面82sのうちの窓部材44に接合される領域が、窓部材44の傾斜角度に応じた角度で傾斜していればよい。
【0059】
ここで、第1頂面81sに突起や切り欠き等が形成されている場合も含め、第1頂面81sの長さL81aとは、第1壁部81の底面81rに直交し、第1壁部81の内縁を通る直線と第1頂面81sのうちの窓部材44の傾斜角度に沿った領域との交点から、第1壁部81の底面81rに直交し、第1壁部81の外縁を通る直線と当該傾斜角度に沿った領域の延長線との交点までの長さである。或いは、第1頂面81sの長さL81aとは、第1壁部81の底面81rに直交し、第1壁部81の内縁を通る直線と第1頂面81sのうちの窓部材44の傾斜角度に沿った直線の延長線との交点から、第1壁部81の底面81rに直交し、第1壁部81の外縁を通る直線と当該傾斜角度に沿った領域との交点までの長さである。なお、第1壁部81の底面81rとは、第1壁部81におけるベース42の主面42aに臨む(主面42aに接合される)面である。また、第1壁部81から第2壁部82に向かう第1方向に沿った第1壁部81の底面81rの長さL81rは、主面42aからの第1壁部81の高さの最小値H81よりも長い。
【0060】
窓部材44の厚さT44は、第1壁部81の主面42aからの高さの最小値H81よりも厚い。なお、窓部材44の厚さT44は、第1頂面81s等に交差(直交)する方向における窓部材44の寸法である。なお、窓部材44については、その一部にレンズ等が形成されることによって厚さが異なる部分があってもよい。すなわち、窓部材44の厚さT44は、図示の形態では均一であるが、不均一であってもよい。その場合、窓部材44のうちの第1壁部81との接合が形成される部分の厚さが、最小値H81よりも厚ければよい。さらには、窓部材44の最大の厚さが最小値H81よりも厚ければよい場合もある。一例として、窓部材44の平均の厚さが最小値H81よりも大きいことが望ましい。
【0061】
ここでは、第1頂面81sのうちの窓部材44が接合される部分(第1頂面81sに交差する方向からみて窓部材44に重複する部分)の第1方向に沿った長さL81bは、最小値H81よりも長い。一方で、ここでは、第1頂面81sのうちの窓部材44が接合される部分の第1方向に沿った長さL81bは、第1頂面81sの全体の第1方向に沿った長さL81aよりも短い。すなわち、ここでは、第1頂面81sの第2壁部82側の大部分は窓部材44との接合に供されるが、第1頂面81sの第2壁部82と反対側の一部は窓部材44から露出されている。
【0062】
なお、ここでは、枠部材43の幅(内側面43sと、内側面43sの反対側の外側面と、の間の距離)は、窓部材44の厚さT44よりも大きい。これにより、第1頂面81sの長さL81aが、窓部材44の厚さT44よりも大きいこととなる。上述したように、窓部材44の厚さは不均一な場合がある。したがって、第1頂面81sの長さL81aは、窓部材44の厚さの平均値よりも長いことが望ましい。このように、枠部材43の幅を窓部材44の厚さT44よりも大きくすることにより、枠部材43の強度が向上される。また、ここでは、枠部材43の幅は、ベース42の厚さ(主面42aと裏面42bとの間の距離)よりも大きい。これにより、枠部材43の強度がさらに向上される。
【0063】
上述したように、枠部材43と窓部材44とは、低融点ガラス等の接合材45によって互いに接合されている。これにより、枠部材43(第1頂面81s、第2頂面82s、第3頂面83s)と窓部材44との間には接合材45が介在すると共に、枠部材43と窓部材44との接合端部には、接合材45のフィレット45a,45bが形成される。具体的には、枠部材43の内側面43sにおける窓部材44側の部分にはフィレット45bが形成されており、窓部材44の外側面44sにはフィレット45aが形成されている。
【0064】
なお、枠部材43の外側面の角部43p、及び、内側面の角部43rは、第2方向からみて曲面状とされている。ここでは、角部43p,43rは、第2方向からみて枠部材43の外側に凸となる円弧状とされている。角部43p,43rは、第1壁部81と第3壁部83との接続部分、及び、第2壁部82と第3壁部83との接続部分である。
【0065】
ここで、上述したように、ベース42の主面42aには、凹部42cが形成されている。MEMSミラー1は、第2方向からみて凹部42cに配置されている。ここでは、支持部2が凹部42cに配置されて凹部42cの底面に支持されている。上述したように、凹部42cの底面には、凹部42dがさらに形成されている。ここでは、可動ミラー部10は、第2方向からみて凹部42dに配置されている。凹部42cの角部42p、及び、凹部42dの角部42rは、第2方向からみて曲面状とされている。角部42p,42rは、第2方向からみてベース42の外側に向けて凸となる円弧状とされている。
【0066】
以上説明したように、ミラーユニット40においては、光の入出射部を提供する窓部材44が、当該窓部材44を支持する枠部材43の第1壁部81から第2壁部82に向かうにつれて、ベース42の主面42aから遠ざかるように傾斜している。したがって、可動ミラー部10での反射光のスキャンに対して、窓部材44での反射で生じるノイズ光が影響し難く、ノイズが抑制される。
【0067】
一方、このようなミラーユニットにおいては、可動ミラーを覆うパッケージは可動ミラーの気密を保つためや、防塵のために必要であり、パッケージの窓部材の厚さは厚い方が気密性を確保しやすく、外部からの衝撃にも強い。他方、パッケージの側壁の高さが高いと可動ミラーの振れ角を大きくしたときに可動ミラーで反射した光がパッケージの側壁に遮られてしまう。そこで、パッケージの側壁を構成する枠状部材の高さを小さくすることで、可動ミラーの振れ角を大きくしても反射光が遮られない構成としている。可動ミラー部(ミラー面)をできるだけ大きくすることが有利となる。しかしながら、可動ミラー部を大きくすると、ミラーデバイスのサイズが大きくなり、結果としてミラーデバイスを囲う枠部材も大きくなる。ノイズの抑制の観点から傾斜させた窓部材の傾斜角を維持しつつ、窓部材及び枠部材を大きくすると、第1壁部と第2壁部との高低差が大きくなる。そうすると、枠部材の強度のバランスが悪くなり、全体としての強度が低下するおそれがある。
【0068】
これに対して、ミラーユニット40にあっては、第1壁部81の高さの最小値H81よりも厚い窓部材44を枠部材43に接合するようにすることによって、全体としての強度のバランスを保ち、強度の低下を抑制している。また、このミラーユニット40にあっては、第1壁部81から第2壁部82に向かう第1方向に沿った第1壁部81の第1頂面81sの長さL81aを、第1壁部81の高さの最小値H81よりも長くしている。これにより、第1壁部81における第3壁部83との接続部分である両端や、第1壁部81における両端の間の中央部分が、第1方向に変位するような第1壁部81の変形が抑制される。さらには、第1壁部81(枠部材43)に対して、第1壁部81の高さの最小値H81よりも厚い窓部材44が接合されることにより、第1壁部81の高さ方向への変形も抑制される。少なくとも以上の理由から、ミラーユニット40によれば、信頼性も向上される。
【0069】
また、ミラーユニット40においては、第1頂面81sのうちの窓部材44が接合される部分の第1方向に沿った長さL81bは、最小値H81よりも長い。このため、第1壁部81における第3壁部83との接続部分である両端や、第1壁部81における両端の間の中央部分が、第1方向に変位するような第1壁部81の変形がさらに抑制される。したがって、信頼性がさらに向上される。
【0070】
また、ミラーユニット40においては、第1頂面81sのうちの窓部材44が接合される部分の第1方向に沿った長さL81bは、第1頂面81sの全体の第1方向に沿った長さL81aよりも短い。このため、第1壁部81の相対的に低い部分に対して、窓部材44のとの接合を形成しない(窓部材44と接触しない)余白部分が生じるため、第1壁部81の破損が抑制される。したがって、信頼性がさらに向上される。
【0071】
また、ミラーユニット40においては、ベース42の主面42aには、主面42aに交差する第2方向からみてMEMSミラー1が配置される凹部42cが形成されている。そして、第2方向からみて、当該凹部42cの角部42pは曲面状とされている。このため、ベース42からMEMSミラー1へ作用する応力が緩和される。したがって、信頼性がさらに向上される。なお、ミラーユニット40においては、ベース42の主面42aに凹部42cが形成されていることによって、凹部42cの段差近傍で接合材46に表面張力が働き、当該接合材46がMEMSミラー1に到達してしまうことが抑制される。
【0072】
また、ミラーユニット40においては、枠部材43の内側面43sにおける窓部材44側の部分、及び、窓部材44の外側面44sには、枠部材43と窓部材44との接合材45のフィレット45a,45bが形成されている。このため、枠部材43と窓部材44との接合部が延びる方向について、枠部材43と窓部材44とを強固に接合し、ずれが生じることが抑制される。したがって、信頼性がさらに向上される。なお、フィレット45a,45bのうちの一方のみが形成される場合であっても、枠部材43と窓部材44とが強固に接合されてずれが生じることが抑制されるが、フィレット45a,45bの両方が形成されることがより望ましい。
【0073】
さらに、ミラーユニット40においては、第1壁部81から第2壁部82に向かう第1方向に沿った第1壁部81の底面81rの長さL81rは、主面42aからの第1壁部81の高さの最小値H81よりも長い。このため、第1壁部81における第3壁部83との接続部分である両端や、第1壁部81における両端の間の中央部分が、第1方向に変位するような第1壁部81の変形がさらに抑制される。したがって、信頼性がさらに向上される。
【0074】
以上の実施形態は、本発明に係る光学ユニットの一形態を説明したものである。したがって、本発明に係る光学ユニットは、上述したミラーユニット40に限定されず、任意に変形したものとすることができる。
【0075】
例えば、ミラーユニット40においては、第1壁部81の主面42aからの高さの最小値H81及び窓部材44の厚さT44等との条件に応じて、第1頂面81sのうちの窓部材44が接合される部分の第1方向に沿った長さL81bを、最小値H81よりも短くしてもよい場合もある。また、同様に、第1頂面81sのうちの窓部材44が接合される部分の第1方向に沿った長さL81bを、第1頂面81sの全体の第1方向に沿った長さL81aよりも短くしなくてもよい(長さL81bと長さL81aとを一致させてもよい)。すなわち、長さL81bの最大値は長さL81aである。
【0076】
また、ベース42と枠部材43との接合端部には、接合材46のフィレットが形成され得る。より具体的には、枠部材43の内側面43sのベース42側の端部、及び、枠部材43の内側面43sの反対側の外側面のベース42側の端部には、接合材46のフィレットが形成され得る。このようにフィレットを形成することにより、ベース42と枠部材43との接合部が延びる方向について、ベース42と枠部材43とのずれが生じることが抑制される。
【0077】
また、上記実施形態においては、MEMSミラー1がミラーパッケージ41によって気密に封止される例を挙げたが、ミラーパッケージ41の一部(例えば、ベース42や枠部材43等の一部)に対して外部と通じる空気孔を設けてもよい。
【0078】
さらに、ミラーデバイスとしては、上述した電磁駆動式のMEMSミラー1以外にも、静電式や圧電式のものであってもよい。
【符号の説明】
【0079】
1…MEMSミラー(ミラーデバイス)、10…可動ミラー部、40…ミラーユニット(光学ユニット)、42…ベース、42a…主面、42c…凹部、43…枠部材、43s…内側面、43p,43r…角部、44…窓部材、44s…外側面、45…接合材、45a,45b…フィレット、81…第1壁部、81s…第1頂面、82…第2壁部、82s…第2頂面、83…第3壁部、83s…第3頂面。