IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社高見沢サイバネティックスの特許一覧

<>
  • 特許-地震計および地震計の情報記録方法 図1
  • 特許-地震計および地震計の情報記録方法 図2
  • 特許-地震計および地震計の情報記録方法 図3
  • 特許-地震計および地震計の情報記録方法 図4
  • 特許-地震計および地震計の情報記録方法 図5
  • 特許-地震計および地震計の情報記録方法 図6
  • 特許-地震計および地震計の情報記録方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】地震計および地震計の情報記録方法
(51)【国際特許分類】
   G01V 1/22 20060101AFI20240109BHJP
   G01V 1/01 20240101ALI20240109BHJP
【FI】
G01V1/22
G01V1/00 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020012736
(22)【出願日】2020-01-29
(65)【公開番号】P2021117197
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000143396
【氏名又は名称】株式会社高見沢サイバネティックス
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】篠原 芳紀
(72)【発明者】
【氏名】吉田 省吾
(72)【発明者】
【氏名】清水 彬
【審査官】佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-010520(JP,A)
【文献】特開2002-181592(JP,A)
【文献】特開2006-145266(JP,A)
【文献】特開2009-264864(JP,A)
【文献】特開平03-276021(JP,A)
【文献】特開昭59-009582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 1/00-99/00
G08B23/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地震動を計測する地震計であって、
前記地震計に関する所定の情報を紙に印刷して出力する情報出力部を備え、
前記情報出力部から出力される印刷物は、前記所定の情報を二次元コードにより記述してなる二次元コード印刷部を含み、
前記所定の情報は、当該地震計の設定情報を含み、
前記設定情報は、観測地点情報及び計測条件情報に関する項目名及びデータを含む、地震計。
【請求項2】
前記所定の情報は、前記地震動に関する情報を含む、請求項1に記載の地震計。
【請求項3】
前記所定の情報は、前記地震動に関する情報の一覧を含む、請求項2に記載の地震計。
【請求項4】
前記所定の情報は、当該地震計の動作履歴情報を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の地震計。
【請求項5】
地震動を計測する地震計における情報記録方法であって、
前記地震計に関する所定の情報を紙に印刷して出力する情報出力ステップを含み、
前記情報出力ステップにおいて出力される印刷物は、前記所定の情報を二次元コードにより記述してなる二次元コード印刷部を含み、
前記所定の情報は、前記地震計の設定情報を含み、
前記設定情報は、観測地点情報及び計測条件情報に関する項目名及びデータを含む、地震計の情報記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震計および地震計の情報記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び2には、地震計に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-44784号公報
【文献】特開2006-10520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、地震計は休み無く連続して稼働することが求められる。したがって、地震計の設置や保守の際には、各種の情報(地震動に関する情報、地震計の設定情報、地震計の動作履歴情報など)を迅速に伝達・解析等することが求められる。また、地震計に保存されているデータ量は膨大であるため、地震データの解析時や障害対応時には、設定値やログ情報など出来る限り多くの情報を迅速に収集することが求められる。さらにまた、地震計は、測定対象となる地域において山中や森林など様々な場所に設置される。地震計の設置場所に情報通信網が整備されてない場合も多く、従来より地震計の設置や保守の際には、地震計がロール紙に印刷して出力した上記の各種情報を作業者が目視により確認し、電話やファクシミリ、或いはカメラ付きの携帯情報端末による画像送信等の連絡手段を用いて、別の場所に居る関係者にその内容を伝えていた。しかしながら、このような従来の方法では、大量のデータを迅速且つ正確に伝えることが難しいため、対応に時間を要する。例えば、電話を用いた口頭による連絡では、読み間違えや聞き間違えなどが生じるおそれがある。伝達した内容が誤りである可能性が少なからず存在する場合、その情報を基にした解析結果の信憑性が大きく損なわれてしまう。また、ファクシミリ又は画像送信による連絡では、大量の情報を迅速に伝達することが難しく、情報の解析に長時間を要するという問題がある。また、可搬型の情報記録媒体(例えばUSBメモリ等)の接続端子を地震計に設け、その情報記録媒体に各種情報を記録する方法も考えられる。しかし、その場合には印刷物と同様に作業者が持ち運ぶ必要があり、迅速な情報解析が困難となる。また、年次点検時の点検報告書に設定値情報を添付する必要があるが、印刷物を整理するのに時間を要する。
【0005】
本発明は、上記課題の解決のためになされたものであり、地震計から出力される各種情報を正確且つ迅速に伝達することを可能にする地震計および地震計の情報記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る地震計は、地震動を計測する地震計であって、地震計に関する所定の情報を紙に印刷して出力する情報出力部を備える。情報出力部から出力される印刷物は、所定の情報を二次元コードにより記述してなる二次元コード印刷部を含む。また、本発明に係る情報記録方法は、地震動を計測する地震計における情報記録方法であって、地震計に関する所定の情報を紙に印刷して出力する情報出力ステップを含み、情報出力ステップにおいて出力される印刷物は、所定の情報を二次元コードにより記述してなる二次元コード印刷部を含む。これらの地震計及び情報記録方法によれば、例えば地震動に関する情報、地震計の設定情報、地震計の動作履歴情報等といった所定の情報を、二次元コードを介して携帯情報端末等により電子化データにて読み取ることを可能にする。従って、地震計から出力される各種情報を地震計の設置場所において瞬時に電子化し、携帯情報端末等を介して正確且つ迅速に伝達することが可能になる。
【0007】
上記の地震計及び情報記録方法において、所定の情報は、地震動に関する情報を含んでもよい。この場合、地震動に関する情報を正確且つ迅速に伝達することができ、地震動の解析を正確且つ迅速に行うことができる。また、この場合、地震動に関する情報に含まれる加速度、周期、及び振動時間に基づいて、揺れ方などの被害を予測することが可能になる。
【0008】
上記の地震計及び情報記録方法において、所定の情報は、地震動に関する情報の一覧を含んでもよい。この場合、地震動に関する膨大な情報の主要部分を選択的に、正確且つ迅速に伝達することができる。また、この場合、地震動に関する情報の一覧に基づいて、地震発生の頻度、前震、本震、余震、及び発生状況を把握することが可能になる。
【0009】
上記の地震計及び情報記録方法において、所定の情報は、当該地震計の設定情報を含んでもよい。この場合、地震計の設定情報を正確且つ迅速に伝達することができ、地震計の設置作業を手早く行うことができる。また、この場合、設定情報に含まれる地震計測パラメータ及び外部出力パラメータ等を地震計毎にまとめて取り扱うことができるので、設置作業の迅速化に繋がる。また、通常、設定情報に含まれるパラメータは多数存在し、これらのパラメータは観測局毎に異なる。したがって、各観測局にて、地震計の設置時、年次点検時、及び障害調査時などの機会にこれらのパラメータを目視によりチェックすることは困難である。これに対し、上記の地震計及び情報記録方法のように、設定情報に含まれる多数のパラメータを地震計に関する情報として電子化すれば、規定値(デフォルト値)との違いを瞬時に判別することが可能となる。故に、コンピュータシステムに関する代表的な指標「RASIS」のうちの可用性(Availability)、保守性(Serviceability)及び保全性(Integrity)の向上につながる。
【0010】
上記の地震計及び情報記録方法において、所定の情報は、当該地震計の動作履歴情報を含んでもよい。この場合、地震計の動作履歴情報を正確且つ迅速に伝達することができ、地震計の保守作業を手早く行うことができる。また、この場合、地震発生時又は障害発生時における地震計の動作状況を、様々な面から解析することが可能となる。更には、従来は印刷物を保管していた点検作業時における作業前後の記録を、電子データとして保存することが可能になる。したがって、保管スペースの縮小および検索容易性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一側面に係る地震計および地震計の情報記録方法によれば、地震計から出力される各種情報を正確且つ迅速に伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る地震計10の構成を概略的に示すブロック図である。
図2】地震動に関する情報を印刷した印刷物50を示す図である。
図3】地震動に関する情報の一覧を印刷した印刷物60を示す図である。
図4】地震計10の設定情報を印刷した印刷物70を示す図である。
図5】地震計10の動作履歴情報(システムログ)を印刷した印刷物80の例を示す図である。
図6】一実施形態の地震計10の動作(情報記録方法)のうち、基本的な部分を示すフローチャートである。
図7】一実施形態の地震計10の動作(情報記録方法)のうち、プリンタ34の動作に関わる部分を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本発明による地震計および地震計の情報記録方法の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る地震計10の構成を概略的に示すブロック図である。地震計10は、可搬型の装置であって、計測部20及び処理部30を備える。計測部20は、観測地点に設置され、3つの加速度センサ21と、計測基板22とを有する。加速度センサ21は、観測地点において地動を観測し、地動の地震動を検出する。具体的には、一つの加速度センサ21が東西方向の地震動の加速度を計測し、別の加速度センサ21が南北方向の地震動の加速度を計測し、更に別の加速度センサ21が上下方向の地震動の加速度を計測する。これらの加速度センサ21は、当該3方向の地震動の加速度の大きさを示すアナログ信号を、所定のサンプリング周期に同期して計測基板22に出力する。加速度センサ21は、サーボ加速度センサであってもよく、或いは、サーボ加速度センサに代えてMEMS(Micro Electro Mechanical System)加速度センサであってもよい。なお、サーボ加速度センサ或いはMEMS加速度センサを用いることにより、上記3方向の地震動の加速度について所定の精度が得られることが望ましい。また、加速度センサ21は、上記3方向の加速度の大きさを計測できれば、4つ以上設けられてもよい。
【0015】
計測基板22は、配線基板と、配線基板上に実装されたアナログ/デジタル(A/D)変換器と、配線基板上に実装されたシリアル通信回路とを含んで構成される。A/D変換器は、加速度センサ21の個数に対応して複数設けられ、対応する各加速度センサ21と電気的に接続され、各加速度センサ21から出力されるアナログ信号をデジタル信号(加速度データ)に変換する。A/D変換器は、例えば1秒毎に加速度データを生成する。A/D変換器は、加速度データを所定のデータに細分化したのち、シリアル通信回路を通じて処理部30に出力する。シリアル通信回路は、例えばRS-422規格に準拠した通信回路である。
【0016】
処理部30は、入出力部32、CPU部33、プリンタ34、表示・操作部35、時刻校正部36、及び電源部38を有する。入出力部32、CPU部33、プリンタ34、表示・操作部35、時刻校正部36、及び電源部38は、防水性の筐体31に収容されている。
【0017】
入出力部32は、計測基板22、CPU部33、プリンタ34、表示・操作部35、及び時刻校正部36と電気的に接続された通信インターフェイスである。入出力部32は、CPU部33、プリンタ34、表示・操作部35、及び時刻校正部36の間でデータの受け渡しを行う。また、入出力部32は、地震計10の外部に設けられた機器と地震計10との間で通信を行う外部インターフェイス(I/F)32aを有する。外部インターフェイス32aは、外部機器との通信に用いられる通信プロトコル(RS-232C,RS-422,LANなど)の変換、及び外部機器と入出力する信号の論理レベル変換を行う。
【0018】
CPU部33は、中央演算処理装置(Central Processing Unit:CPU)、揮発性記憶部(Random Access Memory:RAM)、及び不揮発性記憶部(Read Only Memory:ROM)を有する集積回路または回路基板である。CPUは、ROMに予め記憶されたプログラムを実行することにより、様々な数値計算及び情報処理、並びに、入出力部32、CPU部33、プリンタ34、表示・操作部35、及び時刻校正部36の制御を行う。CPU部33は、計測基板22のシリアル通信回路から入出力部32を介して入力される3つの加速度データに基づいて、地震動の発生を監視する。具体的には、CPU部33は、これらの加速度データから地震動のS波の到達を判定する。CPU部33は、地震動のS波が到達したと判定した後(すなわち地震発生後)の加速度データに基づいて、地震動の震度、SI(Spectrum Intensity)値、及び合成加速度を示す実測データを算出する。CPU部33は、この実測データを入出力部32に出力する。
【0019】
地震動の震度は、震度計算アルゴリズムによって算出される。震度計算アルゴリズムは、気象庁により制定された、震度計が満たすべき性能の技術基準に基づいて定められている。SI値は、地震動の強度の尺度として利用されており、次の式(1)で表される。
【数1】

hは減衰定数、Svは速度応答スペクトル、Tは固有周期を表している。SI値は速度応答スペクトルSvの平均値である。減衰定数hは例えば20%(0.2)であり、固有周期Tは例えば0.1秒~2.5秒である。CPU部33は、加速度データから地震動の変位応答、速度応答、及び加速度応答を算出したのち、速度応答スペクトルSvを算出する。速度応答スペクトルSvは、水平動(東西方向及び南北方向)成分の合成値である。CPU部33は、(1)式を用いてSI値を算出する。
【0020】
CPU部33は、CFカード41が接続される端子33a、SDメモリーカード42が接続される端子33b、及びユニバーサル・シリアル・バス(USB)端子33cを有する。USB端子33cには、このUSB端子33cに接続可能な端子を有する記憶媒体(USBメモリ43)が挿入される。CPU部33は、地震計に関する所定の情報を、これらの端子33a~33cを通じてCFカード41、SDメモリーカード42、及びUSBメモリ43に記録する。地震計に関する所定の情報には、地震動に関する情報(実測データ)、地震動に関する情報の一覧、地震計10の設定情報、及び地震計10の動作履歴情報(システムログ)のうち少なくとも1つが含まれる。
【0021】
プリンタ34は、本実施形態における情報出力部の例であり、上記の地震計に関する所定の情報を紙に印刷して出力する。プリンタ34には、熱転写方式またはインク印字方式など様々な印刷方式を採用し得る。プリンタ34は、ロール紙を保持し、送出されるロール紙に印刷したのち適切な長さに切断して出力する。プリンタ34の印刷物送出口は、筐体31の前面または側面に露出して設けられる。
【0022】
図2は、地震動に関する情報を印刷した印刷物50を示す図である。図2に示すように、印刷物50は、地震動に関する情報を文字により記述してなる文字印刷部51と、地震動に関する情報を二次元コードにより記述してなる二次元コード印刷部52と、を含む。地震動に関する情報には、例えば、観測地点情報(観測局名、観測地点が属する地域の番号、観測地点の番号、観測地点の緯度及び経度、観測地点の高度)、観測日時、P波到達のトリガ条件(加速度)、地震動の震度、及び複数の区間情報(詳細震度、合成加速度、及び卓越周波数)に関する項目名及びデータが含まれる。
【0023】
図3は、地震動に関する情報の一覧を印刷した印刷物60を示す図である。図3に示すように、印刷物60は、地震動に関する情報の一覧を文字により記述してなる文字印刷部61と、地震動に関する情報の一覧を二次元コードにより記述してなる二次元コード印刷部62と、を含む。地震動に関する情報の一覧には、例えば、観測地点情報(観測局名、観測地点が属する地域の番号、観測地点の番号)、複数の観測日時、観測日時毎の計測震度、及び観測日時毎の加速度値に関する項目名及びデータが含まれる。
【0024】
図4は、地震計10の設定情報を印刷した印刷物70を示す図である。図4に示すように、印刷物70は、地震計10の設定情報を文字により記述してなる文字印刷部71と、地震計10の設定情報を二次元コードにより記述してなる二次元コード印刷部72と、を含む。地震計10の設定情報は、主に地震計10の設置時にユーザ仕様に基づいて設定される種々の設定値であり、地震計10の保守に用いられる場合もある。地震計10の設定情報には、例えば、観測地点情報(観測局名、観測地点が属する地域の番号、観測地点の番号、観測地点の緯度及び経度、観測地点の高度)、計測条件情報(トリガモード、トリガレベル、警報のオン/オフ等)、及び、外部機器へ信号出力を行う震度等のレベルに関する項目名及びデータが含まれる。
【0025】
図5は、地震計10の動作履歴情報(システムログ)を印刷した印刷物80の例を示す図である。図4に示すように、印刷物80は、地震計10の動作履歴情報を文字により記述してなる文字印刷部81と、地震計10の動作履歴情報を二次元コードにより記述してなる二次元コード印刷部82と、を含む。地震計10の動作履歴情報は、地震計10内部のシステムが動作したログ(記録)を含み、地震計10の利用者による利用、及び/又は地震計10の保守の際の作業者による利用に供される。地震計10の動作履歴情報には、例えば、観測地点情報(観測局名、観測地点が属する地域の番号、観測地点の番号)、複数の記録日時、及び記録日時毎の記録内容(システム動作情報)に関する項目名及びデータが含まれる。
【0026】
一例では、二次元コード印刷部52,62,72,及び82は、それぞれ文字印刷部51,61,71,及び81の下方(ロール紙の送り方向後方)に配置される。二次元コード印刷部52,62,72,及び82の二次元コードは、例えばQRコード(登録商標)といったマトリックス型二次元コードである。但し、二次元コードはQRコードに限られず、一次元のバーコードよりも情報量が多い他の様々な二次元コードを適用可能である。二次元コードを読み取り可能な携帯情報端末などに読み取られる際に、解析を容易にするための所定のフォーマット(例えば気象庁標準8行フォーマット)に合わせて各データの配置が調整される。
【0027】
なお、プリンタ34は、上記の各情報の他に、地震動の波形の印刷、計測部20の動作チェック結果の印刷、後述する内部バッテリ38aの動作チェック結果の印刷、プリンタ34の動作チェックのための印刷、地震の発生と無関係の保守時の加速度データ(リアルタイムデータ)の波形の印刷、及び設定ファイル内容の印刷のうち少なくとも1つを可能であってもよい。
【0028】
再び図1を参照する。表示・操作部35は、入出力部32と電気的に接続されている。表示・操作部35は、液晶ディスプレイとタッチパネルとを含む。液晶ディスプレイは、入出力部32から実測データを受けると、この実測データを表示する。なお、液晶ディスプレイは、保守運用のための表示及びエラー画面の表示も行う。
【0029】
表示・操作部35のタッチパネルは、液晶ディスプレイの表示画面を視認可能な状態にて、液晶ディスプレイに取り付けられる。タッチパネルは、利用者のタッチ操作を受け付ける。タッチパネルがタッチ操作されることにより、液晶ディスプレイの表示画面の操作が行われる。また、タッチパネルを通じて、保守運用の操作、画面表示のクリア、及び、推定データや実測データの一覧の表示といった操作が行われる。保守運用の操作は、S波のトリガレベル、地震計10の動作テスト、及び、上述したログ情報の収集を含む。
【0030】
CPU部33は、表示・操作部35のタッチパネルへの操作に応じて、プリンタ34に印刷動作を行わせてもよい。その場合、タッチパネルにおいて、印刷する情報を選択可能としてもよい。或いは、CPU部33は、震度等がトリガレベルを超えた場合にプリンタ34が自動的に印刷動作を行うように、プリンタ34を制御してもよい。
【0031】
時刻校正部36は、入出力部32に電気的に接続されている。時刻校正部36には、時刻を管理する高精度時計が内蔵されている。屋外に設置されているGPSレシーバ39から1秒ごとに出力されるパルス信号によって、高精度時計の校正処理が自動的に行われる。3つの加速度センサ21のサンプリング周期は、高精度時計に同期している。サンプリング周期の同期は、3つの加速度センサ21に対して同時に行われる。
【0032】
電源部38は、入出力部32に電気的に接続されている。電源部38は、商用電源(例えばAC100V)からの交流電源電圧を直流電源電圧に変換し、この直流電源電圧を、入出力部32、CPU部33、プリンタ34、表示・操作部35、時刻校正部36、及び計測部20に供給する。電源部38は、停電対策用の電源である内部バッテリ38aを有する。内部バッテリ38aは、平常時には、電源部38において生成される直流電源電圧を受けて、蓄電(充電)を行う。また、内部バッテリ38aは、商用電源からの電力供給が途絶えた場合には、入出力部32、CPU部33、プリンタ34、表示・操作部35、時刻校正部36、及び計測部20へ向けて放電を行い、これらに直流電源電圧を供給する。
【0033】
次に、地震計10の動作とともに、本実施形態の地震計10における情報記録方法について説明する。図6は、本実施形態の地震計10の動作(情報記録方法)のうち、基本的な部分を示すフローチャートである。まず、ステップS11において、電源部38は、計測部20及び処理部30に直流電源電圧を供給する。次に、ステップS12において、各加速度センサ21は、所定のサンプリング周期に同期して地震動の加速度の大きさを計測する。そして、各加速度センサ21は、地震動の加速度の大きさを示すアナログ信号を計測基板22に出力する。計測基板22の各A/D変換器は、各加速度センサ21からのアナログ信号を、デジタル信号である加速度データに変換し、該加速度データを処理部30へ出力する。
【0034】
続いて、ステップS13において、CPU部33は、加速度データに基づいて、地震動のS波の到達を判定する。そして、地震動のS波が到達したと判定した場合(ステップS13:YES)、CPU部33は、そのS波が到達したと判定した時刻以降の加速度データを用いて、最大震度の実測データを算出する(ステップS14)。CPU部33は、算出された最大震度を含む地震動に関する情報を、CFカード41、SDメモリーカード42、又はUSBメモリ43といった情報記録媒体に記録する(ステップS15)。また、地震動に関する情報を自動的に印刷する設定が為されている場合には、CPU部33は、地震動に関する情報をプリンタ34によりロール紙に印刷して出力させる(ステップS16、本実施形態における情報出力ステップ)。プリンタ34から出力される印刷物は、例えば図2に示したもの(印刷物50)である。すなわち、このステップS16においてプリンタ34から出力される印刷物は、地震動に関する情報を文字により記述してなる文字印刷部と、地震動に関する情報を二次元コードにより記述してなる二次元コード印刷部とを含む。但し、設定情報において二次元コード印刷部を不要と設定している場合には、ステップS16において、CPU部33は、文字印刷部のみを含む印刷物をプリンタ34から出力させる。
【0035】
図7は、本実施形態の地震計10の動作(情報記録方法)のうち、プリンタ34の動作に関わる部分を示すフローチャートである。まず、表示・操作部35を介した使用者の操作により又は設定に応じて自動的に、CPU部33は印刷処理を開始する。まず、CPU部33は、プリンタ34への通信処理中であるかを確認する(ステップS21)。CPU部33は、プリンタ34への通信処理の終了を確認したのち(ステップS21:NO)、設定情報を参照し、二次元コード印刷部の要否を確認する(ステップS22)。設定情報において二次元コード印刷部を必要と設定している場合には(ステップS22:YES)、CPU部33は、使用者の操作または設定により要求された所定の情報のコード化処理を行い、二次元コードを作成する(ステップS23)。そして、CPU部33は、プリンタ34に印字処理を行わせて、文字印刷部及び二次元コード印刷部を含む印刷物をプリンタ34から出力させる(ステップS24、本実施形態における情報出力ステップ)。なお、設定情報において二次元コード印刷部を不要と設定している場合には(ステップS22:NO)、ステップS24において、CPU部33は、文字印刷部のみを含む印刷物をプリンタ34から出力させる。
【0036】
以上に説明した本実施形態の地震計10によって得られる効果について説明する。従来より、地震計の設置や保守の際には、地震計がロール紙に印刷して出力した各種の情報を作業者が目視により確認し、電話やファクシミリ、或いはカメラ付きの携帯情報端末による画像送信等の連絡手段を用いて、別の場所に居る関係者にその内容を伝えている。しかしながら、このような従来の方法では、大量のデータを迅速且つ正確に伝えることが難しいため、対応に時間を要する。例えば、電話を用いた口頭による連絡では、読み間違えや聞き間違えなどが生じるおそれがある。また、ファクシミリ又は画像送信による連絡では、大量の情報を迅速に伝達することが難しく、情報の解析に長時間を要するという問題がある。また、USBメモリといった可搬型の情報記録媒体との接続端子を地震計に設け、その情報記録媒体に各種情報を記録する方法も考えられる。しかし、その場合には印刷物と同様に作業者が持ち運ぶ必要があり、迅速な情報解析が困難となる。また、年次点検時の点検報告書に設定値情報を添付する必要があるが、印刷物を整理するのに時間を要する。更には、情報記録媒体の紛失時における第三者の閲覧防止や、情報記録媒体を通じた地震計へのコンピュータウイルスの侵入を防ぐ為に、セキュリティ対策も必要となる。加えて、防水等の理由により情報記録媒体との接続端子を筐体の外面に設置できない場合には、筐体の内部に収容された情報記録媒体を取り出す為に筐体を開ける操作が必要になり、作業が煩雑となる。
【0037】
これらの課題を解決するために、本実施形態の地震計10は、地震動に関する情報といった地震計に関する所定の情報を紙に印刷して出力するプリンタ34を備える。プリンタ34から出力される印刷物50,60,70,80は、所定の情報を二次元コードにより記述してなる二次元コード印刷部52,62,72,82を含む。同様に、本実施形態の情報記録方法は、所定の情報を紙に印刷して出力する情報出力ステップS24を含み、情報出力ステップS24において出力される印刷物50,60,70,80は、所定の情報を二次元コードにより記述してなる二次元コード印刷部52,62,72,82を含む。これらの地震計10及び情報記録方法によれば、例えば地震動に関する情報、地震計の設定情報、地震計の動作履歴情報等といった所定の情報を、二次元コードを介して携帯情報端末等により電子化データにて読み取ることを可能にする。従って、地震計10から出力される各種情報を地震計の設置場所において瞬時に電子化し、携帯情報端末等を介して(例えば、電子メール等により)正確且つ迅速に伝達することが可能になる。故に、従来は紙に記録して持ち帰った後に電子化していた各種情報を、地震計の設置場所において電子化することが可能になる。更に、年次点検時の点検報告書に設定値情報を添付する際においても、印刷物を整理することが不要となり、作業工数を削減することができる。
【0038】
例えば、読み取った電子化データを、クラウドコンピューティングによりネットワーク上に提供された、外部サーバ若しくはデータセンター内の記憶領域にその場で保存することにより、作業時間の短縮(効率化)、作業ミス(印刷物からの転記ミス等)の軽減、専用フォーマットによるセキュリティ確保が実現できる。また、地震計10に異常が生じた際には、他の場所に居る技術者への問合せが必要になることがある。その場合においても、読み取った電子化データを情報通信ネットワークを介して技術者と共有することにより、大量の情報を迅速且つ正確に伝えることが可能となる。
【0039】
更に、プリンタ34の印刷物送出口は、筐体31の前面または側面に露出して設けられるので、筐体31を閉じた状態で所定の情報を読み出すことができ、作業が容易となる。
【0040】
図2に示したように、二次元コードにより記述される所定の情報は、地震動に関する情報を含んでもよい。この場合、地震動に関する情報を正確且つ迅速に伝達することができ、地震動の解析を正確且つ迅速に行うことができる。また、この場合、地震動に関する情報に含まれる加速度、周期、及び振動時間に基づいて、揺れ方などの被害を予測することが可能になる。
【0041】
図3に示したように、二次元コードにより記述される所定の情報は、地震動に関する情報の一覧を含んでもよい。この場合、地震動に関する膨大な情報の主要部分を選択的に、正確且つ迅速に伝達することができる。また、この場合、地震動に関する情報の一覧に基づいて、地震発生の頻度、前震、本震、余震、及び発生状況を把握することが可能になる。
【0042】
図4に示したように、二次元コードにより記述される所定の情報は、当該地震計10の設定情報を含んでもよい。この場合、地震計10の設定情報を正確且つ迅速に伝達することができ、地震計10の設置作業を手早く行うことができる。また、この場合、設定情報に含まれる地震計測パラメータ及び外部出力パラメータ等を地震計毎にまとめて取り扱うことができるので、設置作業の迅速化に繋がる。また、通常、設定情報に含まれるパラメータは多数存在し、これらのパラメータは観測局毎に異なる。したがって、各観測局にて、地震計の設置時、年次点検時、及び障害調査時などの機会にこれらのパラメータを目視によりチェックすることは困難である。これに対し、本実施形態の地震計10のように、設定情報に含まれる多数のパラメータを地震計10に関する情報として電子化すれば、規定値(デフォルト値)との違いを瞬時に判別することが可能となる。故に、コンピュータシステムに関する代表的な指標「RASIS」のうちの可用性(Availability)、保守性(Serviceability)及び保全性(Integrity)の向上につながる。
【0043】
図5に示したように、二次元コードにより記述される所定の情報は、当該地震計10の動作履歴情報を含んでもよい。この場合、地震計10の動作履歴情報を正確且つ迅速に伝達することができ、地震計10の保守作業を手早く行うことができる。また、この場合、地震発生時又は障害発生時における地震計の動作状況を、様々な面から解析することが可能となる。更には、従来は印刷物を保管していた点検作業時における作業前後の記録を、電子データとして保存することが可能になる。したがって、保管スペースの縮小および検索容易性の向上を図ることができる。
【0044】
図2図5に示したように、プリンタ34から出力される印刷物50,60,70,80は、地震計に関する所定の情報を文字により記述してなる文字印刷部51,61,71,及び81を更に含んでもよい。この場合、印刷物50,60,70,80に記載された所定の情報を目視にて確認することができる。したがって、設置場所において作業者が所定の情報に基づき何らかの判断を行う際に、利便性を高めることができる。
【0045】
本発明による地震計及び地震計の情報記録方法は、上述した実施形態の例示に限定されるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、図2図5に示した例では、印刷物に文字印刷部及び二次元コード印刷部の双方が含まれているが、文字印刷部を省略して二次元コード印刷部のみ含まれてもよい。また、二次元コードにより記述される所定の情報として、地震動に関する情報、地震動に関する情報の一覧、地震計10の設定情報、及び地震計10の動作履歴情報を例示したが、これら以外にも、地震計10に関わる様々な情報を二次元コードにより記述することができる。
【符号の説明】
【0046】
10…地震計、20…計測部、21…加速度センサ、22…計測基板、30…処理部、31…筐体、32…入出力部、32a…外部インターフェイス、33…CPU部、33a,33b…端子、33c…USB端子、34…プリンタ、35…表示・操作部、36…時刻校正部、38…電源部、38a…内部バッテリ、39…GPSレシーバ、41…CFカード、42…SDメモリーカード、43…USBメモリ、50,60,70,80…印刷物、51,61,71,81…文字印刷部、52,62,72,82…二次元コード印刷部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7