(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】配管用水抜き装置、水抜きシステム及び消雪方法
(51)【国際特許分類】
E01H 8/02 20060101AFI20240109BHJP
E01H 3/04 20060101ALI20240109BHJP
E01H 5/00 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
E01H8/02
E01H3/04 A
E01H5/00 Z
(21)【出願番号】P 2020024600
(22)【出願日】2020-02-17
【審査請求日】2022-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000169499
【氏名又は名称】高砂熱学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【氏名又は名称】萩原 康司
(72)【発明者】
【氏名】林 忍
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3132156(JP,U)
【文献】特開2000-154511(JP,A)
【文献】特開昭59-034339(JP,A)
【文献】特開2018-184076(JP,A)
【文献】特開2005-060940(JP,A)
【文献】特開2007-192273(JP,A)
【文献】実開平07-004999(JP,U)
【文献】実開平03-048200(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01H 8/02
E01H 3/04
E01H 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ側から供給出口に通ずる供給配管の途中に設けられた水抜き用配管を通じて、前記供給配管内に残留する水を排出する、配管の水抜き装置であって、
弁本体と、前記弁本体内に収容される弁体とを有し、
前記弁本体は、前記水抜き用配管に通ずる第1の開口部と、排出出口に通ずる排出管に通ずる第2の開口部とを有し、
前記弁体は、前記第1の開口部を通過できない形状を有し、かつ前記第2の開口部よりも大きく、かつ前記第2の開口部を閉塞可能な形状を有し、
前記弁本体は、弁本体内側と弁体の間に隙間をもって前記弁体を収容し、かつ前記弁体が弁本体内を移動可能な形状、大きさを有し、
前記ポンプの作動時には、前記ポンプの作動によって前記水抜き用配管内にかかる圧力により、前記弁体を前記弁本体内で前記第2の開口部側へ移動させて、前記第2の開口部が閉塞され、
前記ポンプの停止時には、前記弁体が前記弁本体内で前記第2の開口部から離れる方向に移動して、前記第2の開口部が開放されるようにし、
前記第1の開口部は前記弁本体の上側に設けられた上側開口部であり、前記第2の開口部は前記弁本体の下側に設けられた下側開口部であり、
前記移動は、弁体の浮力によって実現されることを特徴とする、配管用水抜き装置。
【請求項2】
請求項1に記載の配管用水抜き装置を用いた水抜きシステムであって、
水を供給するためのポンプと、
前記ポンプによって供給出口から水を供給対象領域に供給するための供給配管と、
前記供給配管の途中に接続された水抜き用配管と、
前記
配管用水抜き装置を介して前記水抜き用配管と接続される排出管と、
を有し、
前記供給配管と前記水抜き用配管との接続部に向けて、前記供給配管における当該接続部の上流側と下流側は、下方に傾斜していることを特徴とする、水抜きシステム。
【請求項3】
前記排出管から排出された水は、回収して前記供給配管に戻されることを特徴とする、請求項2に記載の水抜きシステム。
【請求項4】
請求項2または3のいずれか一項に記載の水抜きシステムを用いた消雪方法であって、
前記ポンプは、消雪対象領域の融雪を行った後にその都度稼働を停止し、それによって前記
配管用水抜き装置によって前記
供給配管内が水抜きされることを特徴とする、消雪方法。
【請求項5】
駅の線路に鉄道車両が入線すると前記ポンプを稼働させて、前記供給出口から消雪用の水を前記鉄道車両または前記線路に供給し、
前記鉄道車両が前記駅を発車すると、前記ポンプの稼働を停止して、前記
配管用水抜き装置によって前記
供給配管内が水抜きされることを特徴とする、請求項4に記載の消雪方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管用水抜き装置、水抜きシステム及び消雪方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から豪雪地帯や寒冷地においては、線路など鉄道の軌道や道路、駐車場等の路面に対して、散水して消雪、融雪することが行われており、散水量を制御したり、散水しないときには散水用の配管を閉鎖できる自動開閉弁を設けることが提案されている(特許文献1)。このような自動開閉弁を有する消雪用の配管では、散水しない場合には、あらかじめ弁を閉鎖して配管内が凍結することを防止することができる。その他、凍結防止を図るために、配管の外側にヒータを設けて配管自体を加熱することも行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、設置時に制御装置によって制御される自動開閉弁を配管に取り付けなければならず、また運用時にも自動開閉弁を制御するための制御装置を常時稼働させる必要がある。また制御用の配線も整備する必要がある。したがって設置に手間がかかり、イニシャルコストも高くなる。また設置した後も運用している間は制御装置を作動させる必要があり、ランニングコストもかかってしまう。配管の外側にヒータを設ける方法も同様に、設置の際には配管外周に別途ヒータを用意して取り付ける必要があり、また設置した後に運用する際にも、ヒータ用の電力が必要となり、やはりイニシャルコストが高騰し、ランニングコストも避けられない。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、前記したような制御装置や制御装置によって制御される制御弁を不要とし、またヒータ等を用いなくても配管内の凍結を防止して、イニシャルコストを抑え、またランニングコストを不要とすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、ポンプ側から供給出口に通ずる供給配管の途中に設けられた水抜き用配管を通じて、前記供給配管内に残留する水を排出する、配管の水抜き装置であって、弁本体と、前記弁本体内に収容される弁体とを有し、前記弁本体は、前記水抜き用配管に通ずる第1の開口部と、排出出口に通ずる排出管に通ずる第2の開口部とを有し、前記弁体は、前記第1の開口部を通過できない形状を有し、かつ前記第2の開口部よりも大きく、かつ前記開口部を閉塞可能な形状を有し、前記弁本体は、弁本体内側と弁体の間に隙間をもって前記弁体を収容し、かつ前記弁体が弁本体内を移動可能な形状、大きさを有している。
そして前記ポンプの作動時には、前記ポンプの作動によって前記水抜き用配管内にかかる圧力により、前記弁体を前記弁本体内で前記第2の開口部側へ移動させて、前記第2の開口部が閉塞され、前記ポンプの停止時には、前記弁体が前記弁本体内で前記第2の開口部から離れる方向に移動して、前記第2の開口部が開放されるようにしている。
また前記第1の開口部は前記弁本体の上側に設けられた上側開口部であり、前記第2の開口部は前記弁本体の下側に設けられた下側開口部であり、前記移動は、弁体の浮力によって実現されることを特徴としている。
【0007】
本発明によれば、ポンプを作働した際には、供給配管及び水抜き用配管内にはポンプによって圧力(動水圧)がかかるが、それによって水抜き装置の弁本体内の弁体は下側開口部側へと移動して、排出管側の下側開口部が閉塞される。したがってポンプによって圧送された水は、水抜き用配管から排出管へと流れることはなく、供給配管の供給出口から供給対象領域へ吐出させることができる。
一方、ポンプを停止した場合には、弁体が弁本体内で下側開口部から離れる方向に移動して、弁本体の排出管側の下側開口部が開放されるので、供給配管及び水抜き用配管内の残留水は、排出管から排出出口へと排水される。したがって、ポンプが停止すると供給配管及び水抜き用配管内に残留していた水を配管外に排出できる。したがって残留水による配管の凍結や、配管内の残留水による不都合(例えば藻の発生など)を防止することができる。
このように本発明によれば、制御装置や制御装置によって制御される制御弁は不要であり、またヒータ等を用いなくても配管内の凍結を防止でき、さらに残留水による不都合を防止することができる。
【0008】
ポンプを停止すると、ポンプ作動時に弁体を下側開口部側へと移動させていた圧力(動水圧)はなくなり、配管内に残留している水による水圧(静水圧)だけとなる。したがってこれを利用して、弁体の移動は、弁体の浮力によって実現されている。
【0010】
前記した配管用水抜き装置を用いた水抜きシステムとしては、たとえば水を供給するためのポンプと、前記ポンプによって供給出口から水を供給対象領域に供給するための供給配管と、前記供給配管の途中に接続された水抜き用配管と、前記配管用水抜き装置を介して前記水抜き用配管と接続される排出管と、を有し、前記供給配管と前記水抜き用配管との接続部に向けて、前記供給配管における当該接続部の上流側と下流側は、下方に傾斜していることを特徴とする、水抜きシステムが提案できる。
このような水抜きシステムにおいても、制御装置や制御装置によって制御される制御弁は不要であり、またヒータ等を用いなくても配管内の凍結などを防止できるから、システム構築の際のイニシャルコストやランニングコストを、従来よりも低く抑えることができる。
なお本発明において、水は、湯も含む概念である。
【0011】
そして前記供給配管と水前記抜き用配管との接続部に向けて、前記供給配管における当該接続部の上流側と下流側は、下方に傾斜しているように構成しているので、供給配管内の残留水は、ポンプ停止時にすべて水抜き用配管へ流れるから、ポンプ停止時には配管内の残留水をすべて排出することが可能である。
【0012】
排出管から排出された水は、回収して供給配管に戻すように構成すれば、再利用が図れるので、供給対象領域に供給する水を節約することが可能である。
【0013】
また前記したような水抜きシステムを用いれば、たとえばポンプは、消雪対象領域の消雪、融雪を行った後にその都度稼働を停止し、それによって前記水抜き装置によって消雪用配管内を水抜きする消雪方法が実現できる。
【0014】
前記した消雪方法の一例として、駅の線路に鉄道車両が入線すると前記ポンプを稼働させて、前記供給出口から消雪用の水を前記鉄道車両または前記線路に供給し、前記鉄道車両が前記駅を発車すると、前記ポンプの稼働を停止して、前記水抜き装置によって前記消雪用配管内が水抜きされ消雪方法が提案できる。
このような消雪方法によって、例えば豪雪地帯や寒冷地においてこれまで人員が手作業にて行っていた、駅停車時の鉄道車両の台車の除雪作業を容易に行え、しかも消雪に用いた水が配管内に残留して凍結することも防止できるから、格別のメンテナンスも不要である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、制御装置や制御装置によって制御される制御弁を不要とし、またヒータ等を用いなくても配管内の凍結を防止して、イニシャルコストを抑え、またランニングコストを不要とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施の形態にかかる水抜き装置を有する消雪システムの説明図である。
【
図2】実施の形態にかかる水抜き装置の断面説明図である。
【
図3】ポンプの作動時における実施の形態にかかる水抜き装置の断面説明図である。
【
図4】ポンプの停止時における実施の形態にかかる水抜き装置の断面説明図である。
【
図5】駅の線路に鉄道車両が入線した際に、実施の形態にかかる消雪システムによって台車の消雪作業を行っている様子を示す平面説明図である。
【
図6】他の実施の形態にかかる水抜き装置の断面説明図である。
【
図7】ポンプの作動時における他の実施の形態にかかる水抜き装置の断面説明図である。
【
図8】ポンプの停止時における他の実施の形態にかかる水抜き装置の断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本実施形態にかかる水抜き装置について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省略する。
【0018】
図1は、実施の形態にかかる消雪システム1の説明図である。この消雪システムは、消雪用の水を供給するためのポンプ10と、ポンプ10によって、供給出口となるノズル11から消雪用の水を消雪対象領域に供給するための供給配管12と、供給配管12の途中に接続された水抜き用配管13とを有している。そして水抜き用配管13は水抜き装置20を介して、排出出口(図示せず)に通ずる排出管14と接続されている。
【0019】
ポンプ10は、消雪用水の供給源2から消雪用の水を、供給配管12を通じて圧送し、ノズル11から吐出する。また本実施の形態では、供給配管12と水抜き用配管13との接続部15に向けて、供給配管12における接続部15の上流側配管12a、下流側配管12bは、勾配がつけられて下方に傾斜している。すなわち、
図1における上流側配管12aが水平線とおりなす角度θ1と、下流側配管12bが水平線とおりなす角度θ2は、いずれも0度より大きく90度より小さい。
【0020】
下流側配管12bから水抜き用配管13への流入を助長するために、水抜き用配管13は供給配管12の下側に接続されていることが望ましい。また下流側配管12bから水抜き用配管13への流入をより確実にするため、上流側配管12aと下流側配管12bとの間の流れを阻害するような管路構成とすることが好ましい。例えば供給配管12の途中でエルボ部分を設け、当該エルボ部分に水抜き用配管13を接続するようにしてもよい。あるいは直管の供給配管12における、供給先寄りに、流れを阻害する曲がっている箇所を設定し、当該箇所よりもポンプ13側に、水抜き用配管13を接続するようにしてもよい。
【0021】
水抜き装置20は、
図2にその構造を示したように、弁本体となる筒状の弁箱21と、弁箱21内に収容された弁体であるボールフロート22を有している。弁箱21の上端には第1の開口部である上側開口部23が形成され、弁箱21の下端には第2の開口部である下側開口部24が形成されている。そして弁箱21の上端部には、フランジ21aが設けられ、水抜き用配管13の下端部に形成されたフランジ13aと水密に接続されている。また弁箱21の下端部には、フランジ21bが設けられ、排出管14の上端部に形成されたフランジ14aと水密に接続されている。
【0022】
ボールフロート22の直径は、上側開口部23の直径よりも大きく、ボールフロート22は上側開口部23を通過できない大きさである。また下側開口部24の直径は、ボールフロート22の直径よりも小さく、
図2に示したように、ボールフロート22を押し下げることにより、下側開口部24は閉塞される。
【0023】
ボールフロート22は、弁箱21内に収容されているが、弁箱21の内径は、ボールフロート22の直径よりも、例えば1mm~20mm程度大きく設定されており、ボールフロート22は弁箱21内を上下動可能である。すなわち、ボールフロート22の外周面と弁箱21の内側との間には上記1mm~20mmの隙間dが確保されている。この隙間dの大きさは、後述の
図4に示す状態でボールフロート22の浮力Bによって弁箱21内をボールフロート22が上昇でき、かつ水抜きに支障がない範囲で定められる。
【0024】
そして本実施の形態では、ボールフロート22は比重が1より小さいものであり、水の中では浮力によって上昇する。
【0025】
本実施の形態にかかる消雪システム1は以上のように構成されており、消雪対象領域に消雪用の水を吐出させるには、ポンプ10を作動させて供給源2から消雪用の水を、供給配管12を通じて圧送する。
【0026】
このとき供給配管12には、接続部15にて水抜き用配管13と接続されているから、ポンプ10によって圧送された水は、水抜き用配管13にも流れていく。しかしながら
図3に示したように、水抜き用配管13には水抜き装置20が設けられており、この水抜き装置20は、弁箱21内にボールフロート22を有している。したがってポンプ10の作動時には、同図に示したように、ボールフロート22の浮力Bよりも大きいポンプ作動時の圧力(動水圧DP)によって、ボールフロート22は下方に押し下げられて水抜き装置20の下側開口部24は閉塞される。したがって、水抜き用配管13内の水が排出管14へと流出することはない。すなわち、ポンプ10によって圧送された水は排出管14から流出することなく、そのまま供給配管12からノズル11へと圧送され、ノズル11から吐出させることができる。
【0027】
一方、消雪作業が終わるなどしてポンプ10を停止した場合には、ボールフロート22を押し下げていたポンプ作動時の圧力(動水圧DP)はなくなり、供給配管12と水抜き用配管13内に残留している水の圧力(静水圧)だけになる。そのため
図4に示したように、ボールフロート22自体が保有する浮力Bによって、ボールフロート22は上昇する。これによって、水抜き装置20の下側開口部24は開放され、供給配管12内に残留している水は、水抜き用配管13内に残留している水とともに水抜き用配管13を経て、
図4中の白抜き矢印で占めたしたように、弁箱21内側とボールフロート22との間の隙間dから下側開口部24を通じて排出管14へと自重によって流れていく。したがって供給配管12内に残留している水の水抜きを行うことができ、供給配管12内の残留水をなくして供給配管12の凍結を防止することができる。
【0028】
また本実施の形態では、供給配管12と水抜き用配管13との接続部15に向けて、供給配管12における接続部15の上流側配管12a、下流側配管12bは、勾配がつけられて下方に傾斜しているので、供給配管12内の残留水は、ポンプ停止時に接続部15から水抜き用配管13へ流れるから、供給配管12内の残留水をすべて排出することが可能である。したがって供給配管12、並びに水抜き用配管13の凍結のおそれはない。
【0029】
このように実施の形態にかかる消雪システム1によれば、従来のような制御装置によって電気的に制御される自動弁を用いることなく、配管内の水抜きを行うことができ、供給配管12内の凍結を防止することが可能である。しかもそれを実現するための水抜き装置20は簡易な構造であり、イニシャルコストも低廉である。そのうえポンプ10の作動時、停止時に応じてボールフロート22が自動的に押し下げられたり、上昇したりするので、運用中も格別な制御、制御装置は不要である。したがってランニングコストもかからない。
【0030】
このような消雪システム1は、例えば
図5に示したように鉄道の駅31の軌道、鉄道車両に対して適用可能である。すなわち、この駅31にはホーム32を挟んで線路33、34が敷設されている。そして線路34上には、鉄道車両35が停車している。
【0031】
この停車中の鉄道車両35に対して消雪システム1を適用することで、たとえば鉄道車両35の特に台車部分に消雪システム1のノズル11を向けることで、停車中の鉄道車両35の台車部分に付着した雪を、作業員の手を借りずに消雪することが可能である。
【0032】
より詳述すれば、鉄道車両35が駅の線路34に入線して停車した際に、ポンプ10を作動することで、消雪用の水が鉄道車両35の台車に吐出され、台車に付着して雪を融雪、消雪させることができる。したがってこれまで人員が手作業にて行っていた厄介な除雪作業も、作業員を動員することなく、速やかに実施できる。なお消雪システム1は鉄道車両35の両側に並べて配置することが好ましく、ホーム32側についてはホーム32の下側に設置すればよく、ホーム32の反対側については、線路34の外側に配置すればよい。
【0033】
そして消雪作業が終了すれば、ポンプ10の作動を停止させることで、既述したように、自動的に供給配管12内の残留水が水抜きされるので、配管内にとどまって凍結することはなく、また格別のメンテナンスも不要である。
【0034】
このように駅31に停車した鉄道車両35に対して消雪を行う場合、上記のように駅31の線路34に鉄道車両35が入線するとポンプ10を稼働させて、ノズル11から消雪用の水を鉄道車両35や線路34に吐出し、鉄道車両35が駅31を発車すると、ポンプ10の稼働を停止して、水抜き装置20によって供給配管12が水抜きされるように、運用することが提案できる。かかる場合、鉄道車両35の駅31への入線をトリガとしてポンプ10を作動させ、鉄道車両35が発車すると、それによってポンプ10停止するように制御してもよい。これによって鉄道車両35に付着した雪の除雪作業が自動的に行え、しかもそれに供した水が配管内で凍結することが防止できる。
また排出管14から排出した水を回収して、再び供給配管12に戻すようにすれば、水の節約もできる。
【0035】
もちろん鉄道車両35のみならず、線路33、34自体や線路に設けられている分岐器に対して消雪用の水を吐出するように配置してもよい。
【0036】
また駅31の軌道のみならず、駅間の軌道に対しても消雪の必要がある場合には、線路に向けてノズル11から消雪用の水が吐出されるようにノズル11を配置して、消雪システム1を線路の傍に設置するようにしてもよい。
【0037】
さらにまた豪雪地帯や寒冷地の家屋の屋根の消雪にも実施の形態にかかる消雪システム1は適用できる。また道路の融雪にも適用できる。この場合、道路の融雪自体は降雪センサーや路面温度などで自動的に散水を行っているので、実施の形態にかかる消雪システム1そのまま適用したり、水抜き装置20を散水用の供給配管に用いることで、供給配管凍結防止のための電気、機械的(自動制御を含む)操作が不要となる。さらに潅水設備や散水設備における供給配管、凍結の恐れのある湧水ポンプの配管、地下駐車場の給水配管にも本発明は適用可能である。その他、例えば別荘などシーズンによって人がいなくなる家屋における給水管にも実施の形態にかかる消雪システム1は適用可能である。この場合、消雪、融雪目的ではなくとも、給水管内に長期間水を残留させたくない場合に本発明は有用である。
【0038】
なお前記した実施の形態では、ボールフロート22に浮力Bを持たせていたが、そのような機能に鑑みボールフロート22の材質は、例えば合成樹脂製のものが提案でき、浮力Bをより確保するためには、中空形状とするのがよい。ただし、ボールフロート22がポンプ10の作動時に押し下げられて下側開口部24を閉塞した際、その時の圧力(動水圧DP)が非常に大きい場合には、ボールフロート22の外周面が下側開口部24に圧入されて変形し、ポンプ10の停止時に圧力(動水圧DP)がなくなって、静水圧のみになった際に、浮力Bだけでは上昇しないこともあり得ないことではない。
【0039】
かかる事情に鑑み、例えば少なくともボールフロート22の表面だけは硬度の高い硬質の材料を用いたり、ボールフロート22の表面を硬質の膜でコーティングすれば、ポンプ作動時の動水圧DPによってボールフロート22が押し下げられても、下側開口部24の閉塞時に変形することは抑えられ、そのような事態を防止して浮力Bによって上昇させることが可能である。
【0040】
前記したポンプ作動時の動水圧DPによるボールフロート22の下側開口部24への圧入に伴う、ポンプ停止時のボールフロート22の上昇をより確実に実現するためには、例えば
図6に示した水抜き装置20が提案できる。
【0041】
この水抜き装置20は、弁箱21の下側開口部24の内壁に環状の台座41を設け、この台座41の上にコイルバネ42を取り付けた構成を有している。そしてコイルバネ42の上端部は弁体としてのボール弁43の下端部と固定されている。台座41の中心には通流開口部44が形成されている。ボール弁43自体の比重は1より小さくてもよく、また1より大きくてもよい。ボール弁43自体の比重が1より大きい場合には、ポンプ停止時の静水圧の環境でコイルバネ42の付勢力Eのみによって弁箱21内で上昇している状態を維持できるものである必要がある。またコイルバネ42の弾性は、ポンプ作動時における動水圧DPによって、下方に押し下げられて下側開口部24を閉塞できるものである必要がある。
【0042】
以上の構成にかかる水抜き装置20によれば、先の実施の形態と同様、ポンプの作動時には、
図7に示したように、コイルバネ42の付勢力Eよりも大きい水抜き用配管13内にかかる圧力(動水圧DP)によって、ボール弁43は押し下げられ、弁箱21の下側開口部は閉塞される。
【0043】
そしてポンプ停止時には
図8に示したように動水圧DPはなくなり、それに伴ってコイルバネ42の付勢力Eによってボール弁43は上昇し、下側開口部24は開放される。これによって管内の水は自重で落下し、ボール弁43の外周と弁箱21の内側との間の隙間dから水は流出し、通流開口部44から排出管14へと流れていく。
【0044】
またコイルバネ42による付勢力Eによってボール弁43は上側に付勢されているから、ポンプ作動時の動水圧によるボール弁43の下側開口部24への圧入に伴う、ポンプ停止時のボール弁43の上昇を確実に実現できる。なおボール弁43の比重が1より小さい場合には浮力によって上昇可能であるが、先に述べたようにボール弁43が押し下げられて圧入変形した場合には、浮力のみで上昇させるのは難しい場合があるため、浮力Bと共にボール弁43を下側開口部24から離脱させるだけの付勢力Eをコイルバネ42が備えていればよい。
【0045】
もちろんかかる場合でもボール弁43の表面は硬質の材質でコーティングして硬度を高くするようにしてもよい。これによってボール弁43の圧入変形自体を抑えることが可能で
【0046】
なお前記したボールフロート22、ボール弁43は、いずれも球形であったが、必ずしも弁体は球形である必要はなく、下側開口部24を閉塞自在でかつポンプ作動時に動水圧DPを受け、またポンプ停止時に水の自重による落下を妨げない形状のものであればよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、消雪用の水をポンプによって供給する配管に有用である。
【符号の説明】
【0048】
1 消雪システム
2 供給源
10 ポンプ
11 ノズル
12 供給配管
13 水抜き用配管
13a フランジ
14 排出管
14a フランジ
15 接続部
12a 上流側配管
12b 下流側配管
20 水抜き装置
21 弁箱
21a、21b フランジ
22 ボールフロート
23 上側開口部
24 下側開口部
31 駅
32 ホーム
33、34 線路
35 鉄道車両
41 台座
42 コイルバネ
43 ボール弁
44 通流開口部