(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】位置計測装置、重ね合わせ検査装置、位置計測方法、インプリント装置および物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/00 20060101AFI20240109BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
G01B11/00 H
G01B11/00 G
H01L21/30 502D
(21)【出願番号】P 2020027874
(22)【出願日】2020-02-21
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】岩井 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】古巻 貴光
(72)【発明者】
【氏名】瀧 友和
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-004143(JP,A)
【文献】特開2003-224057(JP,A)
【文献】特開2004-117030(JP,A)
【文献】特開平01-258421(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
H01L 21/30
G03F 7/20- 7/24
G03F 9/00- 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の位置を計測する位置計測装置であって、
前記対象物を第1波長の光と、前記第1波長とは異なる第2波長の光を含む光源からの照明光により照明する照明手段と、
前記照明光で照明された前記対象物からの光を検出することによって前記対象物の位置を計測する計測手段と、
前記計測手段における前記対象物の位置に応じて異なる計測誤差が小さくなるように、前記第1波長の光の強度と、前記第2波長の光の強度との比率を調整する制御手段と、
を有
し、
前記制御手段は、少なくとも以下の(1)~(5)のいずれかを行うことを特徴とする位置計測装置。
(1)前記対象物の重心からの方向に応じた前記計測誤差が小さくなるように前記第1波長の光の強度と、前記第2波長の光の強度との比率を調整する。
(2)前記対象物の水平面の所定の方向に対する前記計測誤差が小さくなるように前記第1波長の光の強度と、前記第2波長の光の強度との比率を調整する。
(3)前記対象物のショット毎に前記第1波長と前記第2波長を含む前記光源からの前記照明光をそれぞれ周期的に分散させて前記対象物を照明する。
(4)前記対象物における縦方向又は横方向それぞれの所定のショット毎に照明する前記第1波長と前記第2波長を含む前記光源からの前記照明光の組み合わせを変える。
(5)前記計測誤差のオフセット量が小さくなるように前記第1波長の光の強度と、前記第2波長の光の強度との比率を調整する。
【請求項2】
前記制御手段は、前記第1波長の光の強度と、前記第2波長の光の強度との比率の調整を重み付けして調整することを特徴とする請求項1に記載の位置計測装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記対象物の重心からの方向に応じた前記計測誤差が小さくなるように前記第1波長の光の強度と、前記第2波長の光の強度との比率を調整することを特徴とする請求項1に記載の位置計測装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記対象物の所定の位置に応じて、前記計測誤差が小さくなるように前記第1波長の光の強度と、前記第2波長の光の強度との比率を調整することを特徴とする請求項1または2に記載の位置計測装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記対象物の水平面の所定の方向に対する前記計測誤差が小さくなるように前記第1波長の光の強度と、前記第2波長の光の強度との比率を調整することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の位置計測装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記対象物のショット毎に前記第1波長と前記第2波長を含む前記光源からの前記照明光をそれぞれ周期的に分散させて前記対象物を照明することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の位置計測装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記対象物における縦方向又は横方向それぞれの所定のショット毎に照明する前記第1波長と前記第2波長を含む前記光源からの前記照明光の組み合わせを変えることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の位置計測装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記第1波長と前記第2波長を含む少なくとも2種類以上の波長から1種類を無作為に選択し、前記対象物を照明することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の位置計測装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記計測誤差のオフセット量が小さくなるように前記第1波長の光の強度と、前記第2波長の光の強度との比率を調整することを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の位置計測装置。
【請求項10】
前記対象物は所定のマークを含むことを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の位置計測装置。
【請求項11】
前記所定のマークは周期的なパターンを有することを特徴とする請求項10に記載の位置計測装置。
【請求項12】
対象物の位置を計測する位置計測装置であって、
前記対象物を第1波長の光と、前記第1波長とは異なる第2波長の光を含む光源からの照明光により照明する照明手段と、
前記照明光で照明された前記対象物からの光を検出することによって前記対象物の位置を計測する計測手段と、
前記計測手段における前記対象物の位置に応じて異なる計測誤差が小さくなるように、前記第1波長の光の強度と、前記第2波長の光の強度との比率を調整する制御手段と、
を有し、
前記対象物は基板を含み、
前記制御手段は、前記基板の半径方向に応じた前記計測誤差が小さくなるように前記第1波長の光の強度と、前記第2波長の光の強度との比率を調整することを特徴とす
る位置計測装置。
【請求項13】
前記照明光は、波長の異なるレーザー光を合成した光であることを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載の位置計測装置。
【請求項14】
前記照明光は、ブロードな波長分布をもつ前記光源から特定の波長帯域を透過させるフィルタを透過した光であることを特徴とする請求項1~13のいずれか1項に記載の位置計測装置。
【請求項15】
前記制御手段は、シミュレーションに基づき前記第1波長の光の強度と、前記第2波長の光の強度との比率を調整することを特徴とする請求項1に記載の位置計測装置。
【請求項16】
基板とモールドの相対位置を計測する重ね合わせ検査装置であって、
請求項1~15のいずれか1項に記載の前記位置計測装置の前記照明手段により前記基板と前記モールドの少なくとも一方に設けた所定のマークを照明するように構成したことを特徴とする重ね合わせ検査装置。
【請求項17】
対象物の位置を計測する位置計測方法であって、
前記対象物を第1波長の光と、前記第1波長とは異なる第2波長の光を含む光源からの照明光で照明する照明工程と、
前記照明光で照明された前記対象物からの光を検出することによって、前記対象物の位置を計測する計測工程と、
前記計測工程における前記対象物の位置に応じて異なる計測誤差が小さくなるように、前記第1波長の光の強度と、前記第2波長の光の強度との比率を調整する調整工程と、
を有
し、
前記調整工程は、少なくとも以下の(1)~(5)のいずれかを行う工程であることを特徴とする位置計測方法。
(1)前記対象物の重心からの方向に応じた前記計測誤差が小さくなるように前記第1波長の光の強度と、前記第2波長の光の強度との比率を調整する。
(2)前記対象物の水平面の所定の方向に対する前記計測誤差が小さくなるように前記第1波長の光の強度と、前記第2波長の光の強度との比率を調整する。
(3)前記対象物のショット毎に前記第1波長と前記第2波長を含む前記光源からの前記照明光をそれぞれ周期的に分散させて前記対象物を照明する。
(4)前記対象物における縦方向又は横方向それぞれの所定のショット毎に照明する前記第1波長と前記第2波長を含む前記光源からの前記照明光の組み合わせを変える。
(5)前記計測誤差のオフセット量が小さくなるように前記第1波長の光の強度と、前記第2波長の光の強度との比率を調整する。
【請求項18】
対象物の位置を計測する位置計測方法であって、
前記対象物を第1波長の光と、前記第1波長とは異なる第2波長の光を含む光源からの照明光で照明する照明工程と、
前記照明光で照明された前記対象物からの光を検出することによって、前記対象物の位置を計測する計測工程と、
前記計測工程における前記対象物の位置に応じて異なる計測誤差が小さくなるように、前記第1波長の光の強度と、前記第2波長の光の強度との比率を調整する調整工程と、
を有し、前記対象物は基板を含み、
前記調整工程は、前記基板の半径方向に応じた前記計測誤差が小さくなるように前記第1波長の光の強度と、前記第2波長の光の強度との比率を調整することを特徴とする位置計測方法。
【請求項19】
基板の上にモールドのパターンを転写するインプリント装置であって、
あらかじめ前記基板の半径方向に応じた計測誤差が小さくなるように調整された第1波長の光の強度と、第2波長の光の強度との比率の情報を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得した前記情報に基づき、前記基板と前記モールドの少なくとも一方に形成された所定のマークへ照明光を照明する照明手段と、
前記照明光で照明された前記マークからの光を検出することによって前記基板と前記モールドの相対位置を計測する計測手段と、
前記相対位置に基づいて前記基板と前記モールドとを位置合わせする位置合わせ手段と、
を有することを特徴とするインプリント装置。
【請求項20】
請求項1
9に記載のインプリント装置によって基板の上にパターンを形成するパターン形成工程と、
前記パターン形成工程で前記パターンが形成された前記基板を加工する加工工程と、
加工された前記基板から物品を製造する工程と、
を含むことを特徴とする物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置計測装置、重ね合わせ検査装置、位置計測方法、インプリント装置および物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、モールド上の微細な構造を半導体、ガラス、樹脂や金属等のワークに加圧転写する微細加工技術が開発され、注目を集めている。これらの技術は、数ナノメートルオーダーの分解能を持つためナノインプリントあるいはナノエンボッシングなどと呼ばれ、半導体製造に加え、立体構造をウエハレベルで一括加工可能である。これらは、フォトニッククリスタル等の光学素子、μ-TAS(Micro Total Analysis System)、バイオチップの製造技術等として幅広い分野への応用が期待されている。このようなナノインプリントのうち、例えば、光インプリント方式を半導体製造技術に用いる場合について、以下に説明する。
【0003】
まず、計測する対象物となる基板(ウエハ)上に光硬化樹脂からなる樹脂層を形成する。次に、所望の凹凸構造が形成されたモールドを樹脂層に押し当て、加圧する。その後、紫外線を照射(照明)することで光硬化樹脂を硬化させ、樹脂層に凹凸構造が転写される。更に、この樹脂層をマスクとしてエッチング等を行い、基板へ所望の構造が形成されることになる。ところで、このような半導体製造に際しては、モールドと基板の位置合わせが必要である。例えば、半導体のプロセスルールが100nm以下になるような昨今の状況において、装置に起因する位置合わせ誤差の許容範囲は、数nm~数十nmと言われる程、厳しいものとなっている。
【0004】
このような位置合わせ方法として、例えば、特許文献1ではモールドと基板を、樹脂を介在した状態で接触させ、位置合わせを行う方法が提案されている。まず、基板に設けられているアライメントマーク以外の部分に光硬化性樹脂を選択的に塗布する。次に、基板をモールドに相対する位置に移動する。この状態でモールドとワークの距離を縮め、アライメントマークが樹脂で埋まらないような高さまで近づける。この状態で位置合わせを行い、その後最終的な加圧を行う、という方法が採られている。
【0005】
アライメントマークを検出する時、ウエハの製造工程において加工非対称性誤差があると計測値に誤差が発生する。誤差を小さくするために、例えば、特許文献2では同じマークを異なる条件(波長、偏光など)で計測して、最もコントラストが高くなる波長を用いて位置ずれ量を求めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第6696220号明細書
【文献】特開2004-117030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ウエハ位置を計測するためにウエハ上にパターニングされたアライメントマークを観察している。ウエハの製造工程においてウエハ面内に加工非対称性誤差(Wafer Induced Shift)が生じると、アライメントマーク観察時に計測値がだまされて計測誤差となる。計測誤差が大きいと重ね合わせ露光時に不良となるため、計測誤差を小さくする必要がある。
【0008】
そこで本発明では、例えば、対象物の計測誤差を小さくする位置計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
その目的を達成するために、本発明の一側面としての位置計測装置は、対象物の位置を計測する位置計測装置であって、対象物を第1波長の光と、第1波長とは異なる第2波長の光を含む光源からの照明光により照明する照明手段と、照明光で照明された対象物からの光を検出することによって対象物の位置を計測する計測手段と、計測手段における対象物の位置に応じて異なる計測誤差が小さくなるように、第1波長の光の強度と、第2波長の光の強度との比率を調整する制御手段と、を有し、制御手段は、少なくとも以下の(1)~(5)のいずれかを行うことを特徴とする。(1)対象物の重心からの方向に応じた計測誤差が小さくなるように第1波長の光の強度と、第2波長の光の強度との比率を調整する。(2)対象物の水平面の所定の方向に対する計測誤差が小さくなるように第1波長の光の強度と、第2波長の光の強度との比率を調整する。(3)対象物のショット毎に第1波長と第2波長を含む光源からの照明光をそれぞれ周期的に分散させて対象物を照明する。(4)対象物における縦方向又は横方向それぞれの所定のショット毎に照明する第1波長と第2波長を含む光源からの照明光の組み合わせを変える。(5)計測誤差のオフセット量が小さくなるように第1波長の光の強度と、第2波長の光の強度との比率を調整する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、例えば、対象物の計測誤差を小さくする位置計測装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1に係るアライメント光源の構成の一例を示した図である。
【
図2】実施例1に係るインプリント装置の装置構成の一例を示した図である。
【
図3】実施例1に係る計測光学系の構成の一例を示す図である。
【
図4】実施例1に係る計測光学系の構成の一例を示す図である。
【
図5】アライメント光源の構成の一例を示した図である。
【
図6】実施例1に係る計測光学系の瞳分布を示す図である。
【
図7】モアレ縞を発生する位置合わせマークを示す図である。
【
図8】実施例1に係る位置合わせマークを示す図である。
【
図10】実施例1に係るシミュレーションモデルと結果である。
【
図11】実施例1に係るインプリント装置の動作シーケンス図である。
【
図12】実施例1に係るマーク位置のシフトを示す図である。
【
図13】実施例1に係るランプ光源の合成を示す図である。
【
図14】実施例1に係る視野内のマーク配置例である。
【
図15】実施例1に係るウエハ面内に発生する計測誤差を示す図である。
【
図16】実施例1に係るウエハ面内に発生する計測誤差を示す図である。
【
図17】実施例1に係るウエハ面内に発生する計測誤差を示す図である。
【
図18】実施例1に係る複数の波長においてウエハ径方向に対する計測誤差を計測するためのウエハ面内レイアウトの例である。
【
図19】実施例1に係る複数の波長において計測誤差を計測するためのウエハ面内レイアウトの例である。
【
図20】実施例1に係る複数の波長において計測誤差を計測するためのウエハ面内レイアウトの例である。
【
図21】実施例1に係る複数の波長においてウエハ面内の計測誤差を計測するためのシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について実施例を用いて説明する。なお、各図において、同一の部材ないし要素については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略ないし簡略化する。
【0013】
〔実施例1〕
図2は、本実施例のインプリント装置1の構成を示す図である。このインプリント装置1は、半導体デバイスなどのデバイス製造に使用され、被処理体であるウエハ(基板)上の未硬化の樹脂(レジスト)9をモールド(型。マスク)7で成形し、樹脂9のパターンを基板上に形成(転写)する装置である。ここで、樹脂9は例えば紫外線等により硬化する樹脂である。なお、本実施例のインプリント装置1は、光硬化法を採用するものとする。また、以下の図においては、モールド7およびウエハ8に平行な面内に互いに直交するX軸およびY軸をとり、X軸とY軸とに垂直な方向にZ軸を取っている。このインプリント装置1は、紫外線照射部2と、計測光学系3と、モールド保持部4と、ウエハステージ5と、塗布部6、取得部(不図示)、制御部12とを備える。
【0014】
紫外線照射部2は、モールド7とウエハ8上の樹脂9とを接触させる押型処理の後に、樹脂9を硬化させるために、モールド7に対して紫外線を照射する紫外線照射装置である。この紫外線照射部2は、不図示であるが、光源と、該光源から射出される紫外線を被照射面となる後述の凹凸パターン7aに対して所定の形状で均一に照射するための複数の光学素子とから構成される。特に、紫外線照射部2による光の照射領域(照射範囲)は、凹凸パターン7aの表面積と同程度、または凹凸パターン7aの表面積よりもわずかに大きいことが望ましい。これは、照射領域を必要最小限とすることで、照射に伴う熱に起因してモールド7またはウエハ8が膨張し、樹脂9に転写されるパターンに位置ズレや歪みが発生することを抑えるためである。加えて、ウエハ8などで反射した紫外線が後述の塗布部6に到達し、塗布部6の吐出部に残留した樹脂9を硬化させてしまうことで、後の塗布部の動作に異常が生じることを防止するためでもある。ここで、光源としては、例えば、高圧水銀ランプ、各種エキシマランプ、エキシマレーザーまたは発光ダイオードなどが採用可能である。なお、この光源は、被受光体である樹脂9の特性に応じて適宜選択されるが、本実施例は、光源の種類、数、または波長などにより限定されるものではない。
【0015】
計測光学系3はモールド7に配置されたモールドマーク10とウエハ8に配置されたウエハマーク11を光学的に検出して両者の相対位置を計測するための光学系である。さらに、計測光学系3はアライメント光源23からの照明光によりウエハ8等の対象物を照明するための照明手段の一部として機能する。なお、計測光学系3は照明光で照明された対象物からの光を検出することによって対象物の相対位置を計測する計測手段の一部としても機能する。また、その光軸がモールド7またはウエハ8に対して垂直になるように配置されている。また、計測光学系3はモールドマーク10もしくはウエハマーク11の位置に合わせて、X軸方向およびY軸方向に駆動可能なように構成されている。さらには、モールドマーク10もしくはウエハマーク11の位置に光学系の焦点を合わせるためにZ軸方向にも駆動可能なように構成されている。計測光学系3で計測されたモールド7とウエハ8の相対位置情報に基づいてウエハステージ5や倍率補正機構の駆動が制御される。なお、計測光学系3と位置合わせマークであるモールドマーク10およびウエハマーク11については後で詳述する。
【0016】
モールド保持部(型保持部)4は、真空吸着力や静電力によりモールド7を引きつけて保持する型保持手段である。このモールド保持部4は、モールドチャック(不図示)と、ウエハ8上に塗布された樹脂9にモールド7を押し付けるためにモールドチャックをZ軸方向に駆動するモールド駆動機構とを含む。さらに、モールド保持部4は、モールドをX軸方向およびY軸方向に変形させて樹脂9に転写されるパターンの歪みを補正するモールド倍率補正機構も含む。なお、インプリント装置1における押型および離型の各動作は、このようにモールド7をZ方向に移動させることで実現してもよいが、例えば、ウエハステージ5(ウエハ8)をZ方向に移動させることで実現してもよく、または、その両方を移動させてもよい。
【0017】
ウエハステージ5は、ウエハ8を例えば真空吸着により保持し、かつ、XY平面内を移動可能とするウエハ保持部(基板保持部)である。
【0018】
塗布部(ディスペンサ)6は、ウエハ8上に樹脂(未硬化樹脂)9を塗布する塗布手段である。ここで、樹脂9は、例えば、紫外線を受光することにより硬化する性質を有する光硬化性樹脂であって、半導体デバイスの種類などにより適宜選択される。なお、塗布部6は、
図2に示すようにインプリント装置1の内部に設置せず、別途外部に塗布装置を準備し、この塗布装置により予め樹脂9を塗布したウエハ8をインプリント装置1の内部に導入する構成であってもよい。この構成によれば、インプリント装置1の内部での塗布工程がなくなるため、インプリント装置1での処理の迅速化が可能となる。また、塗布部6が不要となることから、インプリント装置1全体としての製造コストを抑えることができる。
【0019】
また、モールド7は、ウエハ8に対する面に所定のパターン(例えば、回路パターン等の凹凸パターン7a)が3次元状に形成された型である。なお、モールド7の材質は、紫外線を透過させることが可能な石英などである。また、ウエハ8は、例えば、単結晶シリコンからなる被処理体であり、この被処理面には、モールド7により成形される樹脂9が塗布される。取得部(不図示)は、後述する、少なくとも2種類以上の調整された波長の光の強度の比率(強度比)の情報を取得する。
【0020】
制御部12は、紫外線照射部2、計測光学系3、モールド保持部4、ウエハステージ5および塗布部6を制御する。制御部12は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)又は、プログラムが組み込まれたコンピュータ、又は、これらの全部または一部の組み合わせによって構成されうる。FPGAには、PLD(Programmable Logic Device)、又は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)が含まれうる。制御部12は、メモリを内蔵し、さらにコンピュータとしてのCPUが内蔵されており、メモリに記憶(保存)された関係式やパラメータやコンピュータプログラムに基づき、例えば、装置全体の各種動作を実行する制御手段として機能する。また、制御部12、アライメント光源23、計測光学系3等によって位置計測装置が構成されている。
【0021】
次に、インプリント装置1によるインプリント処理について説明する。まず、基板搬送部(不図示)によりウエハ8をウエハステージ5に搬送し、このウエハ8を載置および固定させる。続いて、ウエハステージ5を塗布部6の塗布位置へ移動させ、その後、塗布部6は、塗布工程としてウエハ8の所定のショット(インプリント領域)に樹脂9を塗布する(塗布工程)。次に、ウエハ8上の塗布面がモールド7の直下に位置するように、ウエハステージ5を移動させる。次に、モールド駆動機構を駆動させ、ウエハ8上の樹脂9にモールド7を押型する(押型工程)。このとき、樹脂9は、モールド7の押型によりモールド7に形成された凹凸パターン7aに沿って流動する。さらにこの状態で、ウエハ8およびモールド7に配置されたモールドマーク10およびウエハマーク11の相対位置を計測光学系3によって検出(計測)し、ウエハステージ5の駆動によるモールド7の押型面とウエハ8上の塗布面との位置合わせを行う。そして、倍率補正機構(不図示)によるモールド7の倍率補正などを実施する。ここでウエハステージ5は、モールド7とウエハ8とを位置合わせする位置合わせ手段として機能している。樹脂9の凹凸パターン7aへの流動と、モールド7とウエハ8との位置合わせ及びモールドの倍率補正等が十分にされた段階で、紫外線照射部2はモールド7の背面(上面)から紫外線を照射しモールド7を透過した紫外線により樹脂9を硬化させる(硬化工程)。この際、計測光学系3は紫外線の光路を遮らないように退避駆動される。続いて、モールド駆動機構を再駆動させ、モールド7をウエハ8から離型させる(離型工程)ことにより、モールド7の凹凸パターン7aがウエハ8上に転写(形成)される(パターン形成工程)。
【0022】
続いて、計測光学系3とモールド7およびウエハ8にそれぞれ配置された位置合わせのためのモールドマーク10およびウエハマーク11の詳細を説明する。
図3は、本実施例の計測光学系3の構成の一例を示す図である。
【0023】
計測光学系3は検出光学系21と照明光学系22で構成されている。検出光学系21は照明光学系22によって照明されたモールドマーク10とウエハマーク11からの回折光同士の干渉により発生する干渉縞(モアレ縞)を撮像素子25上に結像する。検出光学系21は、後述する回折格子41と回折格子42との相対位置を検出する。さらに制御部12等はモールドマーク10とウエハマーク11からの回折光を計測し、ウエハ8の相対位置を計測する計測手段としても機能する。照明光学系22は、アライメント光源23からの光を、プリズム24などを用いて、検出光学系21と同じ光軸上へ導き、モールドマーク10およびウエハマーク11を照明する照明手段の一部を構成する。アライメント光源23には例えばハロゲンランプやLED、半導体レーザー(LD)、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプが用いられ、レジストを硬化させる紫外線を含まない可視光線や赤外線を照射するように構成されている。また、アライメント光源23は照明手段の一部を構成する。検出光学系21と照明光学系22はそれらを構成する光学部材の一部を共有するように構成されており、プリズム24は検出光学系21と照明光学系22の瞳面もしくはその近傍に配置されている。
【0024】
位置合わせマークであるモールドマーク10およびウエハマーク11はそれぞれ回折格子から構成され、周期的なパターンを有する。検出光学系21は照明光学系22によって照明されたモールドマーク10とウエハマーク11からの回折光同士の干渉により発生する干渉縞(モアレ縞)を撮像素子25上に結像する。撮像素子25はCCDやCMOSなどが用いられる。モールドマーク10およびウエハマーク11の回折光によって干渉縞(モアレ縞)が発生するため、モールド7およびウエハ8の回折効率によって得られるモアレ縞の光量が変わってくる。特に、回折効率は波長に対して周期的に変化するため、効率よくモアレ縞を検出することができる波長とモアレ縞の検出が困難な波長が出てくる。モアレ縞の検出が困難な波長の光はノイズとなりうる。
【0025】
プリズム24はその貼り合せ面において、照明光学系の瞳面の周辺部分の光を反射するための反射膜24aが構成されている。また、反射膜24aは検出光学系21の瞳の大きさ(あるいは検出NA:NAo)を規定する開口絞りとしても働く。ここで、プリズム24は、貼り合せ面に半透膜を有するハーフプリズムや、あるいはプリズムに限らず表面に反射膜を成膜した板状の光学素子などであってもよい。また、
図3のプリズム24の周辺部分を透過部、中心部分を反射部とし、アライメント光源23と撮像素子25の位置を入れ替えた構成としてもよい。
【0026】
また、本実施例にかかるプリズム24が配置される位置は、必ずしも検出光学系21と照明光学系22の瞳面もしくはその近傍でなくてもよい。
図4は、このような計測光学系3の構成の一例を示す図である。この場合の計測光学系3の構成は、
図4に示すように検出光学系21と照明光学系22はそれぞれその瞳面に個別の開口絞り26および27を有する。また、プリズム24にはその貼り合せ面に半透膜を有するハーフプリズム等が用いられる。
【0027】
図1は、実施例1に係るアライメント光源23の詳細を示した図である。
図1(A)は、アライメント光源23の一例を示した模式図であり、
図1(B)はファイバー端面32の一例を示した模式図である。
図1(A)におけるアライメント光源23は、複数の発光素子である光源30a~30gに例えば半導体レーザーが構成される。また、光源30a~30gは、半導体レーザーに限らず、LEDを用いてもよいし、ハロゲンランプやメタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、ナトリウムランプといったランプを用いてもよい。また、それぞれの光源を混在させてもよい。光源30a~30gに構成される半導体レーザーの波長は光源30a~30gですべて異なっていてもよいし、特定の波長の光量を上げるために一部が同じ波長を有していてもよい。ただし、光源30a~30gは、例えば、第1の波長及び第1の波長とは異なる波長帯域である第2の波長を有するように、少なくとも2種類以上の波長を有する。また
図1(A)に示されている光源30a~30gの数は7個であるが、数は7個に限定されず、1つ以上あればよく、任意の数とすることができる。計測精度向上のためには選択できる波長の数は多い方が好ましい。半導体レーザーの場合、各波長の半導体レーザーを個別にON/OFF、また光量を調整することができるというメリットがある。
【0028】
分岐ファイバー(7対1分岐ファイバー)31は、一端が分離され他端が束ねられた複数のファイバー素線で構成され、該一端は複数の光源30a~30gに接続され、該他端はオプティカルロッド33に接続されている。本実施例では、7本のファイバー素線で構成されているが、これに限らず任意の数とすることができる。
図1(B)におけるファイバー端面32は、斜線部が各ファイバーのコアを表している。例えば、各ファイバーのコア径がΦ0.4mmの場合、束ねた後のファイバー端面32の径はおよそクラッド部分も含めておよそΦ1.3mmでありうる。7本のファイバーの素線を面積が広がらないように束ねられているが、直線状に配置されてもよいし、同心円状に配置されてもよいし、他の形状をなすように配置されてもよい。光源30a~30gからの光をそれぞれ7本のファイバーへ導光し、ファイバー端面32でまとめている。分岐ファイバー31を用いて各波長の半導体レーザーを合成することにより、半導体レーザー配置の自由度が増え、また、交換時の調整が容易であるというメリットがある。
【0029】
アライメント光源23は、複数の波長を含む照明光を発生するために、波長帯域のブロード(広波長帯域)な波長分布を有するランプ光源を含む。さらに、アライメント光源23は、当該ランプ光源が発生した光の長波長側を遮断する長波長カットフィルタと、当該ランプ光源が発生した光の短波長側を遮断する短波長カットフィルタとを含みうる。長波長カットフィルタおよび短波長カットフィルタは照射位置によって連続的に透過帯域が変化する波長カットフィルタでありうる、このようなる波長カットフィルタを用いることにより、特定の波長の透過させることができる。
【0030】
オプティカルロッド33は、オプティカルインテグレータの一例であり、光源30a~30gから放出された光を束ねて、オプティカルロッド33に入射させる。つまり、オプティカルロッド33は、オプティカルロッド33から射出される光の空間光強度分布を均一化することができる。また、分布を均一化にすることができる他のオプティカルインテグレータを用いてもよい。例えば、マイクロレンズアレイが採用されてもよい。
【0031】
合成方法はファイバー(特殊ファイバー)を用いた合成に限らず、例えばダイクロイックミラーを用いて波長の異なる光を合成する方法や、偏光ビームスプリッタまたはハーフミラー等を用いて合成するようにしてもよい。合成方法は配置場所のスペースや半導体レーザーの波長、部品コスト等を考慮して適宜選択することができる。
【0032】
オプティカルロッド33から射出される光は、NDフィルタ34を通過して強度が調整(光量調整)されうる。NDフィルタ34は、通過する光の強度を調整可能な素子であり、例えば石英に付与した金属膜の種類や膜厚によって透過率を調整可能である。NDフィルタ34は、例えば、アライメント光源23としての光量を調整するために透過率が互いに異なるフィルタを複数種類用意し、必要な光量に応じて当該複数のフィルタを切り替えて光路内に挿入されてもよい。あるいは、NDフィルタ34は、光が透過する位置に応じて透過率が連続的に変化するフィルタであってもよく、この場合、光路に対するNDフィルタ34の位置によって透過率が調整されうる。また、光源30a~30gがそれぞれ発生する光の強度は、例えば、光源30a~30gにそれぞれ供給される電流によって調整可能である。さらに、光源30a~30gがそれぞれ発生する光の強度はNDフィルタ34の位置調整によって行ってもよいし、両者の組み合わせで行ってもよい。
【0033】
NDフィルタ34から射出された光は拡散板35を通過してファイバー36に照射しうる。光源30a~30gの全部または一部として半導体レーザーを採用した場合、半
導体レーザーが発生する光の波長帯域が数nmと狭いため、干渉によって観察される像にノイズ(スペックルノイズ)が発生しうる。そこで、拡散板35を回転させて時間的に波形の状態を変化させることによって、観察されるスペックルノイズを低減させることができる。計測精度が数nmのオーダーで必要な場合は、拡散板35を構成し回転させてスペックルノイズを除去することが望ましい。また、拡散板35の駆動方法は回転に限らず、拡散板35の設置スペースに応じて、シフト移動や光軸方向へ駆動するようしてもよい。
【0034】
図5は、アライメント光源23の構成の一例を示した図である。ファイバー36からの射出される光は、照明光としてアライメント光源23から射出される。
図1の例ではファイバーの数は1本であるが、
図5に示すように、光路にハーフミラー37を配置して分割(分岐)し、それぞれの光をファイバー36a、36bに入射させることによって2軸分の照明光を得ることができる。また、分割数(分岐の数)を変更すれば、2軸に限定されず、複数軸分の照明光を得ることができる。光の分割(光の分岐方法)はハーフミラーに限らず、ミラーを配置して光線を部分的に分割するようにしてもよい。
【0035】
図6は、計測光学系3の照明光学系22の瞳強度分布(IL1乃至IL4)と、検出光学系21の開口数NAOとの関係を示す図である。本実施例では、照明光学系22の瞳強度分布は、第1極IL1と、第2極IL2と、第3極IL3と、第4極IL4とを含む。照明光学系22は、XY平面においてモールドマーク10やウエハマーク11のパターンが配列された方向(第1方向)に垂直に入射する光と、かかる方向に平行に入射する光とによって、モールドマーク10やウエハマーク11を照明しうる。上述したように、開口絞りとして機能する反射膜24aを照明光学系22の瞳面に配置し、不要な光を遮光することによって、1つのアライメント光源23から複数の極、即ち、第1極IL1乃至第4極IL4を形成することができる。このように、複数の極を有する瞳強度分布を形成する場合には、複数の光源を必要としないため、計測光学系3を簡略化又は小型化することができる。
【0036】
図7は、モアレ縞を発生する位置合わせマークの一例を示す図である。以下、
図7(A)乃至
図7(D)を参照して、モールドマーク10及びウエハマーク11からの回折光によるモアレの発生の原理、及び、かかるモアレを用いたモールドマーク10とウエハマーク11との相対位置の検出について説明する。
図7に示すように、モールドマーク10としてモールド7に設けられた回折格子(第1回折格子)41と、ウエハマーク11としてウエハ8に設けられた回折格子(第2回折格子)42とは、計測方向のパターン(格子)の周期が僅かに異なっている。このような格子の周期が互いに異なる2つの回折格子を重ねると、2つの回折格子からの回折光同士の干渉によって、回折格子間の周期差を反映した周期を有するパターン、所謂、モアレ(モアレ縞)が現れる。この際、回折格子同士の相対位置によってモアレの位相が変化するため、モアレを検出することでモールドマーク10とウエハマーク11との相対位置、即ち、モールド7とウエハ8との相対位置を求めることができる。
【0037】
具体的には、周期が僅かに異なる回折格子41と回折格子42とを重ねると、回折格子41及び42からの回折光が重なり合うことで、
図7(C)に示すように、周期の差を反映した周期を有するモアレが発生する。モアレは、回折格子41と回折格子42との相対位置によって明暗の位置(縞の位相)が変化する。例えば、回折格子41及び42のうち一方の回折格子をX方向にずらすと、
図7(C)に示すモアレは、
図7(D)に示すモアレに変化する。モアレは、回折格子41と回折格子42との間の実際の位置ずれ量を拡大し、大きな周期の縞として発生するため、検出光学系21の解像力が低くても、回折格子41と回折格子42との相対位置を高精度に検出することができる。
【0038】
モアレを検出するために、回折格子41及び42を明視野で検出する場合、検出光学系21は、回折格子41及び42からの0次光も検出してしまう。回折格子41及び42を明視野で検出する場合とは、回折格子41及び42を垂直方向から照明し、回折格子41及び42で垂直方向に回折される回折光を検出する場合を含みうる。0次光は、モアレのコントラストを低下させる要因となるため、計測光学系3は、0次光を検出しない(即ち、回折格子41及び42を斜入射で照明する)暗視野の構成を有することが望ましい。
図8は、位置合わせ用マーク(アライメントマーク)の一例を示す図である。本実施例では、暗視野の構成でもモアレを検出できるように、回折格子41及び42のうち、一方の回折格子を
図8(A)に示すようなチェッカーボード状の回折格子とし、他方の回折格子を
図8(B)に示すような回折格子としている。
図8(B)に示す回折格子は、計測方向(第1方向)に周期的に配列されたパターンと、計測方向に直交する方向(第2方向)に周期的に配列されたパターンとを含む。
【0039】
図6、
図8(A)及び
図8(B)の構成では、第1極IL1及び第2極IL2からの光は、回折格子に照射され(入射し)、チェッカーボード状の回折格子によってY方向に回折するとともに、X方向にも回折する。さらに、周期が僅かに異なる回折格子によってX方向に回折した光は、X方向の相対位置情報を有して検出光学系21の瞳上の検出領域(NAo)に入射し、撮像素子25で検出される。これを用いて、2つの回折格子の相対位置を求めることができる。
【0040】
図6に示す瞳強度分布と
図8(A)及び
図8(B)に示す回折格子との関係においては、第3極IL3及び第4極IL4からの光は、回折格子の相対位置の検出には使用されない。但し、
図8(C)及び
図8(D)に示された回折格子の相対位置を検出する場合には、第3極IL3及び第4極IL4からの光を回折格子の相対位置の検出に使用され、第1極IL1及び第2極IL2からの光を回折格子の相対位置の検出に使用されない。また、
図8(A)及び
図8(B)に示す回折格子の組と、
図8(C)及び
図8(D)に示す回折格子の組とを、検出光学系21の同一視野内に配置して同時に2つの方向の相対位置を検出する場合には、
図6に示す瞳強度分布は非常に有効となる。
【0041】
図9は、モールドのパターンの断面形状の一例を示した図である、以下、
図9(A)及び
図9(B)を参照しながらマーク(検出対象)の断面構造について例示的に説明する。
図9に示すモデルのマークは、3層で構成された構造を有する。これらの層は段差を有するので、光を照射したときに段差によって光の回折が生じる。そのため、マークとして認識されうる。
図9(A)に示すマーク11aは形状誤差(製造誤差)を有しない状態のマークである。
図9(B)に示すマーク11bは形状誤差を有する状態のマークである。
図9(B)に示しているマーク11bは非対称な形状誤差(製造誤差)を有するマークである。マーク11aについては、は段差等がない対称的な構造ため、回折光の回折角は理想的なものとなる。そのため、計測されるマーク位置に、実際の位置に対する誤差は出ない。しかし、マーク11bは非対称な形状誤差を有するため、回折光の回折角度が理想的な状態から非対称である分だけずれる。そのため、計測されるマーク位置が実際の位置に対して誤差(シフト量)が生じする。この誤差が大きいと、ウエハの層と層(各層)との重ね合わせ精度が悪化し製造不良を引き起こす可能性がある。
【0042】
図10は、実施例1に係るシミュレーションモデルとその結果の一例を示した図である。以下、
図10(A)及び
図10(B)を参照しながら位置計測装置の照明光の波長と位置計測装置の計測誤差との関係を例示的に説明する。
図10(A)にシミュレーションモデルの概略図(モールドマーク10とウエハマーク11の断面形状)の一例を示している。さらに、
図10(A)は、樹脂9に対しインプリント処理中の状態である。
図10(B)は、
図10(A)に例示されている概略図に基づいたシミュレーション結果の一例を示している。このシミュレーションにより位置計測装置の照明光の波長と、位置計測装置の計測誤差との関係を示す計測値(波長特性)が得られる。ここで、位置計測装置の計測誤差は、ウエハマーク11が非対称な形状を有することによって生じる計測誤差である。
【0043】
図10に示しているシミュレーションでは、ウエハマーク11が周期パターンで構成され、該周期パターンの段差52は200nm、ピッチ51は1000nmであるのに対して、形状の誤差量53に40nmであるものとして計測値を算出している。ここで、各層の材質は、ウエハ8においては母材がシリコン基板で構成され、ウエハマーク11はSiO2で構成されている。ウエハマーク11の上には、樹脂9が塗布され、この樹脂9を介してモールド7が配置されている。
【0044】
図10(B)に示したシミュレーション結果のグラフにおいて、横軸は、位置計測装置により照明される波長であり、縦軸は、ウエハマーク11が加工非対称性を有していることに起因する計測誤差(計測位置のだまされ)の量である。そして、
図10(B)では、それぞれの波長でシミュレーションした結果である計測値を近似曲線で描いている。さらに
図10(B)の近似曲線にあるように、それぞれの波長に応じて計測誤差の量が異なり、また、増減を繰り返していることが分かる。そのため、アライメント(位置合わせ)に用いる波長を複数、少なくとも2種類以上選択することにより、計測誤差を小さくすることが可能である。
図10(A)及び(B)に示したシミュレーションモデルは一例であるが、波長に応じて、位置計測装置の計測誤差が変化する。つまり、ウエハマーク11に非対称な形状の誤差があると波長に応じて計測値が周期的にシフトする。また、このシミュレーションは暗視野で行っているが、明視野で行った場合においても照明光の波長に応じて位置計測装置の計測誤差は変化する。
【0045】
図11は、本実施例における位置計測装置を含むインプリント装置1の動作シーケンスを示すフローチャートである。以下、
図11を参照しながら、本実施例におけるアライメント光源23からの照明光を構成する少なくとも2種類以上の波長の光の強度比をそれぞれ独立に変更して、最適な波長の決定方法について説明する。なお、
図11における位置計測装置を含むインプリント装置1の動作は、制御部12(制御手段)がコンピュータプログラムを実行することによって制御される。
【0046】
まず、ステップS101で、生産に用いる積層構造をもったウエハ(物品の製造に用いる基板)8およびモールド7をインプリント装置内に搬送し、ウエハ保持部によって保持される。さらに、ステップS101では、物品の製造のためのモールド7がモールド保持部4の駆動機構によってモールド保持部4に搬送され、該モールド保持部4によって保持される。次に、ステップS102では、ウエハ8のショット領域とモールド7のパターン領域とがプリアライメントされる。プリアライメントは、例えば、モールドマーク10およびウエハマーク11の相対位置を位置計測装置によって計測されうる。次に、ステップS103では、ウエハ8のショット領域に塗布部6により樹脂9(インプリント材、レジスト)が塗布(配置)される。そして、ウエハ8上の樹脂9にモールド7が接触するようにモールド保持部4の駆動機構またはウエハステージ5のいずれか一方を駆動させ、ウエハ8上の樹脂9にモールド7の所定のパターンを接触させた後にウエハ8を露光して樹脂9を硬化させる。
【0047】
次に、ステップS104では、モールド7の所定のパターンと樹脂9とを接触させている状態で、最適波長の条件出しを行う。具体的には、制御部12は、複数の波長の照明光のそれぞれが、ウエハ8を照明するようにアライメント光源23を制御し、複数の波長を切り替える。そして、複数の波長条件、つまりぞれぞれの波長の照明光においてモールドマーク10およびウエハマーク11の相対位置を計測して相対位置情報を取得する。制御部12は、当該複数の波長の照明光のそれぞれについて位置計測装置によって得られた相対位置情報に基づいて計測値を得る。計測値は、照明光の波長と位置計測装置の計測誤差との関係を示すデータであり、
図10(B)に例示された計測値と同様である。
【0048】
次に、ステップS105では、制御部12は、ステップS104で得た計測値に基づいて、モールド7を用いて物品を製造する際の位置計測装置のアライメント光源23による最適波長(照明条件)を決定する。最適波長は、アライメント光源23に発生させる照明光を構成する複数の波長の光のそれぞれの強度である。なお、ウエハマーク11は製造誤差によって、位置に応じて異なる非対象な形状を有する。そしてそれよって位置計測装置による計測誤差はウエハ8の位置に応じて異なる。前記の最適波長は、この計測誤差を小さくする(低減)ように決定される。この最適波長の決定方法については、後述する。次に、ステップS106では、制御部12は、ステップS105の最適波長の情報を記憶部(不図示)に保存する。これにより、モールド7を用いて物品を製造する際に、ウエハマーク11が製造誤差によって非対象な形状を有することに起因する位置計測装置による計測誤差を低減しつつモールドマーク10とウエハマーク11との相対位置(位置情報)を得ることができる。
【0049】
ここで、ステップS104における最適波長の条件出しの方法について詳述する。条件出しの際には複数の波長のそれぞれにおいて、モールドマーク10およびウエハマーク11の相対位置を計測する。まず、アライメント光源23が半導体レーザーの場合を例として以下に説明する。この場合、特定の波長の半導体レーザーの電流値をON/OFFすることによって波長を切り替えることが可能である。半導体レーザーは安定して発振するまでの立ち上がり時間が数秒以内であり高速であるため、ON/OFFを繰り返しても計測時間の遅延は少ないため、ステップS104の処理を短時間に完了することができる。また半導体レーザーのON/OFFは行わずに、シャッタを用いて、特定波長を遮光するようにしても良い。
【0050】
次に、アライメント光源23がランプの場合を例として以下に説明する。この場合、波長帯域がブロード(広波長帯域)であるため、波長カットフィルタを用いることが有利である。例えば、短波長カットフィルタと長波長カットフィルタの組み合わせを変えることにより、所望の波長帯域の光源を得ることができる。また、光の入射位置によって連続的に透過帯域が変化する波長カットフィルタを使用することによって、アライメント光源23が発生する照明光の波長を細かく制御することができる。さらに、アライメント光源23に波長帯域が200nm以上のブロードなランプ光源を用いて、かつ、撮像素子25にカラー(RGB)を検出することのできるセンサ(RGBセンサ)を用いる。その場合、アライメント光源23の波長を切り替えることなく、各波長の光を一度に検出することが可能となる。これにより計測に必要な時間を短縮することができる。一般的なRGBセンサでは計測できる波長の点数がRed、Green、Blueの3点となる。また、撮像素子25にRGBのカラーフィルタを有するようにしてもよい。
【0051】
次に、アライメント光源23に半導体レーザーを、撮像素子25にRGBセンサを用いた場合を例として以下に説明する。この場合、RGBの帯域毎に半導体レーザーの波長を混ぜて検出することによって計測時間を短縮できる。例えば、RGBセンサの撮像素子25の感度がR:590~720nm、G:480~600nm、B:400~540nmの場合を考える。この場合、半導体レーザーの波長は、400~480nmの範囲内の波長帯域の光を発生し、これをB画素(B帯域の光を通過するフィルタを有する画素)によって検出することができる。またで1つ、540~590nmの内の波長帯域の光を発生し、これをG画素(G帯域の光を通過するフィルタを有する画素)によって検出することができる。また、600~720nmの範囲内の波長帯域の光を発生し、これをR画素(R帯域の光を通過するフィルタを有する画素)によって検出することができる。それぞれの波長より、1つの波長を計測できるため、それぞれの帯域から1波長ずつ、合計3波長を計測することが可能となる。これにより、ステップS104における最適波長の条件出しの波長を切り替えた位置計測に必要な時間を短縮することができる。
【0052】
また、最適波長の決定に必要な時間を短縮する方法として、アライメント光源23に構成される光源の波長から一部を選択してデータを取得し、内挿することによってアライメント光源23のすべての波長の計測誤差を推測することができる。内挿の方法として、ウエハ8と同様の構造を有するモデルに基づいてシミュレーションによって得られた結果を元にフィッティングする方法が挙げられる。例えば
図10(B)のようなシミュレーション結果が得られた場合、
図10(B)を近似する関数を算出しておき、その関数をフィッティング関数の初期関数として、実測されたデータを用いて係数をフィッティングすることができる。これによりシミュレーション結果と傾向の等しいグラフを作成することができる。さらに、そのグラフから実測していない波長の計測誤差を算出する。また、シミュレーション結果を用いるのではなく、過去の似たプロセス条件での実測結果に基づいて、フィッティング初期関数を定めてフィッティングを行う方法も挙げられる。これにより、計測点数を減らしても実測値に対する誤差を減らすことが可能である。
【0053】
また、
図10に示すようなシミュレーションによって計測値を取得してもよい。シミュレーションは、制御部12において実行されてもよいし、制御部12に接続されたコンピュータを利用して実行されてもよい。シミュレーションにおいては、マークが有する非対称な形状が変化した場合にシミュレーションによって得られる計測値と実際の計測値との間に乖離(ばらつき)が生じることが考慮されるべきである。このような乖離は、計測値に基づいて決定される照明条件で検出される位置情報に誤差を生じさせうる。そこで、このような原因で生じる誤差を低減する方法として、積層構造に予想される非対称な形状のシミュレーションを複数のモデルで行う方法がある。例えば、複数のモデルとは、積層される物質の厚さ又は傾きの量が互いに異なるモデルがありうる。次いで、それら複数のモデルのシミュレーション結果から各波長の形状誤差に対する計測誤差の敏感度が求められる。非対称形状の複数のモデルでの計測結果(計測位置だまされの敏感度)を足し合わせ、形状誤差に対する敏感度の低い複数の波長を検出用の波長として選択して用いる。これにより、計算に用いた非対称形状の複数のモデルにおいて平均的に非対称な形状誤差に対して有利なアライメントを行うことができる。
【0054】
また、
図10(B)ではシミュレーションのためアライメント誤差(モールド7とウエハ8との位置合わせ誤差)がない状態を前提としてシミュレーションを行った結果の一例である。よって、計測誤差=0nmがアライメント誤差=0である。また、実際の計測ではウエハマーク11の非対称な形状に起因して、ステップS102のプリアライメントによる相対位置には計測誤差が生じる。したがって、位置計測装置によって検出されたモールドマーク10とウエハマーク11との相対位置に基づいて位置合わせがなされたウエハ8のショット領域とモールド7との間にもアライメント誤差が存在し得る。アライメント誤差が存在すると、その状態において複数の波長でモールドマーク10とウエハマーク11の相対位置を検出すると、
図10(B)のグラフに対して位置合わせ誤差に相当するオフセット量が加えられた結果が得られる。
【0055】
ここで、位置計測装置によって計測された結果(実測した値)からオフセット量を求めるためには、モールドマーク10とウエハマーク11との正しい相対位置(アライメント誤差)を知る必要がある。そのために、重ね合わせ検査装置等の検査装置(評価装置)を用いてインプリントした後のウエハ8の重ね合わせ状態を検査し、重ね合わせ誤差を計測し取得する。その際に取得した誤差量をプリアライメントによるモールド7とウエハ8の重ね合わせ誤差として用いて、ステップ104の際の位置計測で得られた計測誤差の量を評価する。制御部12は、上記の方法で得られた計測値と、重ね合わせ検査装置等を用いて得られた、重ね合わせ誤差とに基づいて、オフセット量が補正された計測値を取得する。補正された計測値は、
図10(B)に示されたシミュレーション結果が正確である場合、該シミュレーション結果と同等のものとなりうる。すなわち、
図10(B)の計測誤差が0nmとなる位置が重ね合わせ検査装置で計測された結果となる。
【0056】
例えば、モールド7とウエハ8が100nmずれた位置で、ステップS103におけるインプリント動作した場合、
図10(B)に示した計測誤差=0nmの位置が実際には100nmオフセットした位置として計測される。そのウエハ8を重ね合わせ検査装置等で計測(評価)すると、ウエハ8の重ね合わせ誤差が100nmと計測される。この計測後、計測した値をステップS102におけるプリアライメントの際の重ね合わせ誤差として装置内のコンピュータに入力し、これを除去して評価する。
【0057】
次に、ステップS105における評価に基づいて最適波長を決定する方法について詳述する。
図10(B)に例示される計測値のように、照明光の波長によって計測誤差が変化する。制御部12は、位置計測装置の計測誤差(位置計測装置によって検出される位置情報の誤差)が低減されるように、位置計測装置のアライメント光源23による照明条件を決定する。具体的には、アライメント光源23に発生させる照明光を構成する複数の波長の光のそれぞれの強度を、比率を調整して決定する。ここで、アライメント光源23は、複数の波長の光のそれぞれの強度を少なくとも2つの波長の光の強度に調整可能なように構成されうる。アライメント光源23は、複数の波長の光の少なくとも1つについては、強度を連続的に調整可能なように構成されうる。一例において、制御部12は、アライメント光源23に発生される照明光を構成する複数の波長の光の重み付けを決定する。ここで、例えば、照明光を構成する複数の光の波長の数をn個、それぞれの波長をλ1、λ2、・・・λn、それぞれの波長を用いた計測誤差をm1、m2、・・・mnとして、重み付けの係数をk1、k2、・・・knとする。重み付け後の計測誤差mは以下の式(1)で表される。
m=k1×m1+k2×m2+・・・+kn×mn (1)
上記式(1)において、k1+k2+・・・+kn=1である。
【0058】
制御部12は上記式(1)のm=0となるようにk1~knの値を決定する。各波長λ1~λnの光を決定されたk1~knの比で合成(足し合わせる)することによって、波長による計測誤差をなくすことができる。計測誤差m1~mnの符号がすべて同じ場合は、足し合わせて計測誤差mを0にすることができない。そのため、特定の計測誤差をオフセットとして記録しておき、計測誤差から除去する必要がある。
【0059】
そこで、制御部12は、計測誤差m1~mnのうちいずれかに0となる波長λmがあった場合、その波長の係数kmを1とし、他の係数を0とすることによって波長による計測誤差をなくすことができる。しかし、
図10(B)に示すように、計測誤差が0となる波長は変化量(微分値)が大きくなる波長であるため、形状誤差に対する敏感度が高くなると考えられる。そのため、同じ波長の光のみで構成される照明光を用いて位置計測装置がウエハ1枚のアライメントを行う場合、ウエハ8のショットごとに形状誤差にばらつきがあるとショットごとの計測誤差が大きくなりうる。
【0060】
そこで、制御部12は、次のような方法で重み付けを行う。制御部12は、まず波長に対する計測誤差の敏感度を算出する。次に、制御部12は、敏感度の小さい波長を優先的に選択する(用いる)。次に、制御部12は、計測誤差m1~mnの符号の異なる少なくとも2種類の波長を選択する。波長を選択する際には、計測誤差の符号が互いに異なる波長を選択してもよい。この際に、制御部12は、光量が足りない場合には波長を3種類以上混ぜて用いることによって光量を上げることができるため、さらに1種類以上の波長を選択してもよい。また、制御部12は、同時に計測する他のマークの光量との兼ね合いから、マークの計測できるように各波長の光の強度比(光量比)を調整して変更する。
【0061】
図11の評価に基づいて最適波長を決定する方法、具体的には、
図10(B)に例示される計測値に基づいて、アライメント光源23に発生させる照明光を構成する複数の波長の光のそれぞれの強度を決定する方法を説明する。ここでは、一例として、
図10(B)において例示される波長特性に基づいて、波長600nmと波長680nmを1対3の光量比で合成して照明光を生成することを考える。
図12は、波長600nm、波長680nmの光を、1対3の光量比で合成して得られる照明光でモールドマーク10及びウエハマーク11を照明したときに位置計測装置のセンサによって得られる波形が例示されている。この際の、波形は画像を計測方向に平行な線でスライスしたモアレ縞の計測波形である。
図12において、縦軸は光量を、横軸はセンサ上の位置を示す。波長600nmでの計測誤差は120nm、波長680nmでの計測誤差は-40nmであるため、それぞれ1対3の光量比で合成した照明光を使用すると、計測誤差は合計で0nm(120nm-40nm×3)となる。そのため、オフセット分を除去する必要がない。また、波長600nmおよび680nmは段差52の変化量に対して鈍感であるため、段差52の変化量のばらつきに係わらず、高精度な計測(モールドマーク10とウエハマーク11の相対位置)をすることができる。
【0062】
複数の光の波長の強度比を考慮した合成の方法としては、アライメント光源23が複数の半導体レーザーの場合を例として以下に説明する。この場合、各々の半導体レーザーの駆動電流値を調整することによって出力光量を調整する方法を挙げることができる。また、他の方法として、それぞれの半導体レーザーの光路を合成する前にNDフィルタ34を配置し、NDフィルタ34の透過率を変更する方法が挙げられる。
【0063】
アライメント光源23がハロゲンランプ等の波長帯域がブロードな光源の場合を例として以下に説明する。この場合、1つの光源から波長600nmと波長680nmのみを取り出し導光することは困難である。ここで、
図13は、アライメント光源23を構成する光源30の構成の一例を示している。
図13(A)の例では、アライメント光源23は、ハロゲンランプ等のランプ60a、60b、短波長カットフィルタ61a、61bは、長波長カットフィルタ62a、62bおよびハーフミラー63を含む。ランプ60a、60bからの光をそれぞれカットオフ波長が異なる波長カットフィルタを通し、ハーフミラー63で合成する。これにより、例えば、ランプ60aが発生する光から波長600nmの光を取り出し、ランプ60bが発生する光から波長680nmの光を取り出して、それらを合成して照明光を生成することができる。
【0064】
各波長の光の光量については、ランプ60a、60bに印加する電圧を調整すること、または、NDフィルタ34を合成前の光路中に配置する方法によって調整されうる。ハーフミラー63を用いた場合、ランプ60aおよび60bからの光の半分は透過、半分は反射するため、それぞれの光をスコープ2眼分に供給すると効率的である。
図13(B)の例では、ハロゲンランプ等のランプ60からの光をハーフミラー63aで分離し、それぞれの光路に波長カットフィルタである61a、62aおよび61b、62bが配置されている。各波長の光の光量の調整には、NDフィルタ34が用いられうる。NDフィルタ34によって調光された光がハーフミラー63bで合成して照明光が生成されうる。
【0065】
また、ブロードな波長帯域であって、積分したときに計測誤差が0nmとなるように波長範囲を選択することによって全体として計測誤差を小さくすることが可能である。例えば、
図10(B)において波長610nmから700nmの範囲の計測誤差を積分すると0nmとなる。そのため、このような範囲の照明光を使用すると計測誤差のオフセットは生じない。また、段差52の変化量に対して計測誤差の敏感な波長640nmのみでなく、鈍感な波長も用いているため、段差52の変化量に対する計測誤差の敏感度は減少する。
【0066】
以下、アライメント光源23に波長帯域がブロードな光源を用い、撮像素子25にカラー(RGB)センサを用いた例について説明する。この場合、R,G,Bのそれぞれの波長帯域で検出されたモアレ縞の位置を検出することができる。そのため、アライメント光源23の波長帯域を変更しなくてもセンサ側でR,G,Bのそれぞれの波長帯域で検出されたモアレ縞位置を重み付けして平均化することによって、波長による計測誤差を除去した位置計測ができる。具体的に、ハロゲンランプはアライメント光源23に波長400~720nmの範囲で出力する。撮像素子25のカラー(RGB)センサの感度は、R:590~720nm、G:480~600nm、B:400~540nmとした場合について説明する。ハロゲンランプの波長帯域がブロードであるため、撮像素子25のカラー(RGB)センサのR,G,Bそれぞれの帯域で波形が検出される。それぞれの波長が異なるため、それぞれ検出される位置が異なる。そして、重ね合わせ検査装置等での計測結果と同様になるように、R,G,Bそれぞれの波長帯域を重み付けして平均化することによって、計測誤差を減らすことができる。また、この方法はシミュレーションの結果を用いたものであるが、各波長で実測した値を用いることにより、信頼性よく計測誤差を小さくすることが可能である。
【0067】
ここで、アライメント光源23内の光源(発光素子)30として3種類(3領域)の波長のレーザー光源(660nm、730nm、760nm)を用いた例について説明する。レーザーの波長の種類は細かい方が高い精度での計測が可能であるが、アライメント光源23のためのスペースやコストを鑑みてレーザーの数が決定されうる。またレーザーの種類については、波長によって発光強度に差があるため、必要となる光量を満たすものが選択されうる。例えば1W以上の出力が必要となる場合、波長の種類は限られてくる。上記3種類の波長(660nm、730nm、760nm)は小型で高出力なレーザーを選択している。
【0068】
ハロゲンランプなどの波長帯域がブロードな光源から3領域の波長を切り出す方法と比較して、レーザー光源を用いると光出力を高くすることが可能である。例えば、ハロゲンランプやメタルハライドランプの場合、発光点から光が広がって出てくるため、Φ3mm以下の小さな領域に効率よく集光することが困難である。半導体ウエハのアライメントのためには、ウエハ8上のΦ3mm以下の領域を光照射しマーク位置を観察する必要がある。そのため、ウエハ8上のマーク領域に集光できない光は計測に用いることができず、不要な光となる。つまり、ハロゲンランプなどを微小な領域に集光して使用する場合、効率が悪化する。レーザー光源であればΦ1mm以下の領域に高輝度に照射することが可能である。ウエハ8上のウエハマーク11を高輝度に照射することができれば、プロセス上、ウエハ8に積層される物質が光を透過しにくい物質であっても、ウエハマーク11の反射光を検知することが可能である。
【0069】
また、アライメント光源23の波長を1種類とした場合、ウエハ8に積層される物質やその厚みによっては透過しにくい波長となり、ウエハ8上のウエハマーク11を検出できなくなる可能性がある。そのため、レーザーの波長を3種類とし、それぞれのレーザーからの光を合成して用いることによって、ウエハ8の積層構造によってウエハマーク11を検出できなくなるという可能性を減らすことができる。
【0070】
上述したような3種類の波長を用いた場合の最適波長の選択方法について
図11の位置計測装置を含むインプリント装置1の動作シーケンスを示すフローチャートに基づき以下に説明する。ここで、位置計測装置で計測することによって得られた計測値は、重ね合わせ検査装置等の評価装置を用いて得られた評価結果と比較し、差分を算出する。算出される差分値は、計測するモールドマーク10およびウエハマーク11の条件に応じて、
図10(B)に示すように、それぞれの波長に応じて異なった計測値となる。
【0071】
計測して得られた上記差分値の符号について、3種類の波長のうち、1つの波長の計測値の符号が他の2種類の波長で得られた計測値の符号と異なる場合、符号の異なる1波長と他の1波長を用いて重み付けする。重み付けすることによって重ね合わせ計測結果に合わせることが可能となる。例えば波長660nmの計測値は負、波長730nmは正、波長760nmは負となった場合、波長760nmと波長660nm(または波長760nm)の光出力を重み付けして平均化する。これにより、基準となる重ね合わせ計測結果に合わせや照明光を生成することができる。計測値の符号が同じ2種類の波長についてはどちらを選択してもよいし、同じ視野で観察する他のマークとの強度比から波長を選択してもよい。
【0072】
3種類の波長のうち、計測値の符号が3種類の波長ともに同じ符号である場合、どの波長を選択してもオフセット分を除去する必要がある。この場合、同時に観察する粗アライメント(粗い位置合わせ)用のマークの光量から、重み付けの比率を決めることができる。
【0073】
ここで、同じ視野で観察するマークについて詳述する。
図14は、モールド7とウエハ8を重ね合わせたときに計測されるアライメントマークを模式的に表した図である。外枠の範囲73は位置計測装置で一度に観察することが可能な範囲を示している。モールドマーク71a-1とウエハマーク72a-1の幾何的な中心位置を基準として、計測光学系3のマーク位置の計測結果からモールド7とウエハ8の相対的な位置ずれD1を求めることができる。モールドマーク71a-1とウエハマーク72a-1は小型化できるため、これにより、専有領域の小さいマークを用いた、粗い位置合わせが可能となる。このとき、モールドマーク71a-1とウエハマーク72a-1の反射率の違いによって検出されるマークに強度比が生じる。強度比が大きいと強度の弱いマークを検出できる明るさの照明を照射するため、強度の強いマークが飽和して計測誤差が生じる。そのため、マークの強度比を抑える必要がある。
【0074】
次に、モールドマーク71a-2とウエハマーク72a-2が重なることにより形成させるモアレ縞について以下に説明する。モールドマーク71a-2とウエハマーク72a-2は、
図8(C)または(D)に示す周期的なパターンで構成されており、計測方向の周期が微小に異なるため、重ね合わせるとY方向にモアレ縞が形成される。また、モールドマーク10とウエハマーク11の周期の違いによって、相対位置が変化したときのモアレ縞のシフト方向が異なる。
【0075】
例えば、モールドマーク71a-2の周期の方がウエハマークの周期よりも微小に大きい場合、ウエハ8が相対的に+Y方向へシフトすると、モアレ縞も+Y方向へシフトする。一方、モールドマーク10の周期の方がウエハマーク11の周期よりも微小に小さい場合、ウエハ8が相対的に+Y方向へシフトすると、モアレ縞は-Y方向へシフトする。ここで、2段目のモアレ縞(71a-2′、72a-2′)はモールドマーク71a-2′とウエハマーク72a-2′で形成され、モールドマーク71a-2とウエハマーク72a-2と計測方向の周期が入れ替わっている。そのため、相対位置が変わると計測される2段のモアレ縞の位置が反対方向に変化する。そして、相対的な位置ずれD2から、モールド7とウエハ8の相対的な位置ずれを求める。このとき、モアレ信号を発生させるモールド側と基板側の周期的なマークが1周期分ずれていても、モアレ信号検出の原理上、1周期分のずれを検出できない。そのため計測精度の低いモールドマーク71a-1とウエハマーク72a-1を用いて、モールド7とウエハ8に1周期分の相対的な位置ずれがないことを確認している。
【0076】
モールドマーク71a-1とウエハマーク72a-1はモールド7側とウエハ8側の周期的マークが1周期分の位置誤差を生じないピッチであれば、モアレ信号を発生するマークとしてもよい。
【0077】
モールドマーク71a-1とウエハマーク72a-1は構成する物質が異なるため、検出される光量が波長によって異なりうる。そのため、3種類のレーザーの光出力を変えることによってマークの強度比を変えることができる。よってモールドマーク71a-1とウエハマーク72a-1とモアレ縞の強度比が計測可能な範囲になるように、3種類のレーザー出力に重み付けを行う。これにより1度の計測でモールドマーク71a-1とウエハマーク72a-1、モアレ縞を計測することが可能である。
【0078】
また、実測を行う3種類の波長以外の波長での計測値については、モールド7とウエハ8の構造に想定される非対称形状の誤差を与えてシミュレーションを行うことによって類推することが可能である。これにより、マーク形状の非対称誤差の量に対する各波長の敏感度を算出し、敏感度の低くなる波長を優先的に使用することができる。
【0079】
以下、
図15乃至
図17を参照して、ウエハ8面内の計測誤差の分布について説明する。
図15乃至
図17は、ウエハ8面内に発生する計測誤差の一例を示す図である。
図15(A)は、ウエハ位置によるマークのパターンの違いの模式図である。
図15(A)にてウエハ8の左端、中央部分、右端においてモールドマーク10とウエハマーク11をそれぞれ示している。ウエハ8上にスピンコートでインプリント材(レジスト)等の溶剤を塗布する場合、ウエハ8の中心対称に膜厚のムラが発生する。そのため、ウエハパターンの形成条件によっては中心対称に徐々に加工非対称性誤差が発生し、ウエハ端で大きな非対称性が発生する。この場合、ウエハ径方向(ウエハ8の径方向)に応じてパターンの加工非対称性誤差形状が大きくなるため、単一の波長で計測するとウエハ径方向に応じて計測誤差が大きくなる。ウエハ径方向とは、例えば、ウエハ8の重心からの方向または、ウエハ8の半径方向等の方向である。
図15(B)は、その一例について示している。横軸はウエハ径方向の位置、縦軸は真の位置に対する計測誤差である。真の位置は、例えば基準となる装置の外部で計測装置等を用いて計測して求める。
図15(B)の条件81および条件82のラインはそれぞれ異なる波長での計測誤差を表している。また、
図15(B)で示している条件81および条件82のラインは一例であり、ウエハ径方向に対して計測誤差を1次の関数で表しているが、高次の成分を含みうる。
【0080】
単一波長で計測するとウエハの径方向に対して計測誤差が発生するが、複数の波長を混合して計測することにより、ウエハ径方向に対する計測誤差を小さくまたはなくすことができる。例えば
図15(B)の場合を一例とすると、条件81の波長の光の強度を2、条件82の波長の光の強度を1の比で合成すればウエハ径方向に対して計測誤差が0になる。そのため、ウエハ径方向の所定の位置によらず高精度な計測(モールドマーク10とウエハマーク11の相対位置)をすることができる。
【0081】
ここで、条件81および条件82で得られた計測結果に対して、条件81の計測結果と条件82の計測結果の比率=2(条件81):1(条件82)の比率として重み付けして平均化することで真の位置を求めることも可能である。この時、それぞれ個別に求めた単一波長における計測の結果を重み付けして平均化することで計測誤差を求める場合、一つのマークに対して使用する波長の数だけ計測を行う必要があり、計測時間が長くなってしまう問題が生じる。そこで、各波長の光の強度を最適な強度比率で合成して照明光を生成し、マークに対して照射すると一度に計測することができるため計測時間の短縮が図れる。
図15(A)にはウエハ8中心部のマーク形状が理想的な対称形状のウエハマーク11を示したが、サンプルウエハまたは通常製造に使用するウエハ8では、ウエハ8中心においても加工非対称性誤差が発生する。
図16(A)は、その模式図を示している。ウエハ8の中心位置において加工非対称性誤差があるため、条件81および条件82の単一波長での計測結果では計測誤差が発生しうる。その際の計測値の一例を
図16(B)に示す。
図16(B)では、ウエハ8中心においてオフセットが発生し、加工非対称性誤差のない位置で計測誤差が0となる。
【0082】
一例として、
図16に示すようなモデルであれば、ウエハ径方向に対する単一波長で計測した計測誤差の傾きがなくなるように波長を合成することによって、計測誤差のオフセットも小さくまたはなくすことが可能となる。しかし、通常製造に使用するウエハ8のマーク構造(ウエハマーク11の構造)は、
図16に示すようなモデルのように単純なものとは限らない。
図17(A)は、ウエハ8の2カ所に加工非対称性誤差が発生するモデルの一例の模式図である。
図17(B)は、
図17(A)に示したモデルにおいて単一波長での計測結果の一例を示している。ここで、
図17に示す条件81と条件82において、ウエハ径方向に対する計測誤差の傾きの比を、1:2とする。その場合、ウエハ径方向に対する計測誤差の傾きがなくなるように、条件81および条件82を、2(条件81):1(条件82)の比で重み付けして平均化した場合、計測誤差にオフセットが発生する。ここで、条件81と条件82の、2条件しかない場合、オフセット(オフセット量)を小さくまたは除去することはできない。しかし、条件83の波長を選択することができれば、条件81、条件82、条件83を重み付けして平均化することによって、ウエハ径方向に対する計測誤差の傾きを小さくまたはなくすだけでなく、オフセットも小さくまたは除去することが可能となる。
【0083】
ここで、選択できる波長の数が少ないと波長の光の強度比の合成によりウエハ径方向に対する計測誤差の傾きを小さくまたはなくすこと、オフセットを小さくまたは除去することはできない場合が想定される。そのため、選択できる波長の数が多いと計測誤差の傾きを小さくまたはなくすこと、オフセットを小さくまたは除去することに対して最適な波長の光の強度比を調整して選択できる。また、発生するオフセットは各ショットの計測時に常に発生する誤差として扱い、これを除去することによって高精度な計測(モールドマーク10とウエハマーク11の相対位置)をすることができる。
【0084】
以下、
図18を参照して、ウエハ8の面内において、各波長におけるウエハ径方向に対する計測誤差のグラフを取得するための方法について説明する。
図18は、複数の波長においてウエハ径方向に対する計測誤差を計測するためのウエハ8の面内におけるレイアウトの一例を示す図である。通常、ウエハ8を露光する際には、ウエハ1枚において複数のショットで行う。ここで、ウエハ径方向に対する計測誤差を取得するために、ウエハ1枚のショット領域のすべてを、ある1つの波長(特定の波長)で計測することによって、ウエハ径方向に対する計測誤差を計測することができる。しかし、ある1つの波長を用いてウエハ1枚のショットすべてを当該1つの波長で計測した場合、ウエハ8の枚数が計測したい波長の数だけ必要となるのと、計測するウエハ8によっての形状等の差異が発生し、結果ウエハ毎の誤差が発生する。ここで、
図18に示す方法で、制御部12は、マーク位置計測(モールドマーク10とウエハマーク11の相対位置)を実施することによって、ウエハ8の枚数による誤差およびウエハ8の計測誤差を低減することができる。
図18の横軸はX方向、縦軸はY方向の位置を示している。円Wはウエハ8のエッジを示している。ウエハ面内の略長方形状の区画は個々のショット領域を示している。条件81、条件82、条件83はそれぞれ異なる波長の条件であり、それぞれの波長で計測するショット領域を異なる網掛け表示とすることでそれぞれの波長の違いを示している。
図18では一例として、3つの波長を示している。つまり、ショット領域に応じて、モールドマーク10とウエハマーク11の相対位置のために用いる波長を変更することによって、ウエハ1枚で複数の波長におけるウエハ径方向の位置に対する計測誤差を効率よく求めることが可能となる。
【0085】
ここで、ウエハ8の露光後の計測誤差を、外部の計測器等を用いて計測して基準となる評価値を求め、制御部12は、計測誤差とその評価値からの差分を算出する。差分を求めることによって複数の波長におけるそれぞれの計測誤差を得ることができる。
図18では3波長分を一定の周期性を持たせてウエハ8のショット領域対して照射しているが、3波長に限らず、それ以上の波長を用いてもよい。少なくとも2つ以上の波長であれば好ましい。
【0086】
図19は、ある波長をウエハ8の中心付近に集中して分布させてマーク位置計測をした場合の一例を示している。
図19に示すように、ある1つの波長をウエハ8面内の中心付近のみに集中して分布させてマーク位置計測すると、その波長ではウエハ径方向に対する計測値の分布を中心付近でしか検出できない問題が生じる。
図19では、条件82がウエハ8の中心付近に集中しているため、条件82の波長では、ウエハ径方向に対して小さな範囲でしか計測誤差を求めることができない。そのため、真の位置に対する計測誤差が大きくなってしまい、波長の光の強度比の重み付けして平均化した場合の最適な強度比に誤差が大きく発生してしまう。そのため、計測誤差を小さくするために制御部12は、
図18に示すように、複数の波長においてウエハ径方向に対する計測誤差を取得することが好ましい。
【0087】
また、ウエハ8の全面において少なくとも2種類以上の複数の波長をランダムに各ショット領域に分配し、マーク位置計測をして計測誤差を取得することがさらに好ましい。具体的には、少なくとも2種類以上の波長から1種類をショット領域毎に無作為に選択して、あるショット領域に対しマーク位置計測をして計測誤差を取得する。また、ショット毎(ショット領域毎)に少なくとも2種類以上の波長をそれぞれ周期的に分散させてマーク位置計測をして計測誤差を取得するようにしてもよい。さらに、ウエハ8の縦方向又は横方向それぞれの所定のショット毎に照射する波長の光(照明光)の組み合わせを変更してマーク位置計測をして計測誤差を取得するようにしてもよい。ここで、所定のショット領域は予め設定していたショット領域であってもよいし、ユーザが任意で選択したショット領域であってもよい。
【0088】
図20は、ある波長をウエハ8の水平面における所定の方向に分布させてマーク位置計測をした場合の一例を示している。水平面方向とは、ウエハ8の表面におけるX方向(横方向)またはY方向(縦方向)である。この
図20に示しているように、ウエハ径方向以外にもウエハ8の断面構造によっては、ウエハ8のX方向、Y方向に特定の波長分布を持つこともある。
図20では、条件81はY方向に対して分布を有し、条件83はX方向に対して分布を有している。ここで、例えば、ウエハマーク11の形状パターンがX方向に対して加工非対称性誤差をもって形成された場合、単一波長で計測したときにウエハ8のX方向に対して計測誤差の傾きが発生する。そのため、ウエハ8のX方向に対しての計測誤差が小さくまたはなくなるように波長の光の強度比を決める必要がある。Y方向についてもX方向と同様である。そのため、例えば、
図20に示す分布の場合で各波長の計測誤差を取得したとしても計測誤差が大きくなる。条件81ではX方向に対する計測誤差の分布を精度よく取得することが困難となり、条件83ではY方向に対する計測誤差の分布を精度よく取得することが困難となるため、重み付けして平均かした場合にも計測誤差が大きくなる。したがって、上述した方法を用いて、マーク位置計測をして計測誤差を小さくする必要がある。
【0089】
前述の例ではウエハ径方向に対する計測誤差を、ウエハ1枚のデータから取得しているが、同様の計測を複数枚のウエハ8に対して行い、その平均値を用いてもよい。平均値した値を用いることで、計測誤差の分布を取得する精度を上げることができる。
【0090】
以下、
図21を参照してウエハ径方向に対する計測誤差の取得方法について説明する。
図21は、複数の波長においてウエハ8面内の計測誤差を計測するためのシーケンス図の一例である。
図21(A)は
図11のステップS104の処理内容の詳細を示し、
図21(B)は
図11のステップS105の処理内容の詳細を示している。なお、
図21における位置計測装置を含むインプリント装置1の動作は、制御部12(制御手段)によって制御される。
【0091】
図21に示すように、計測誤差を3つの波長によってそれぞれ取得している。まず、ステップS201では、ウエハ8面内の各ショット領域をインプリント装置1内部の位置計測装置より特定の波長(波長A)の照明光によりマーク位置計測をして計測誤差を取得する。次に、ステップS202では、ウエハ8面内の各ショット領域をインプリント装置内部の位置計測装置より特定の波長(波長B)の照明光によりマーク位置計測をして計測誤差を取得する。次に、ステップS203では、ウエハ8面内の各ショット領域をインプリント装置1内部の位置計測装置より特定の波長(波長C)の照明光によりマーク位置計測をして計測誤差を取得する。
図12では一例として3つの波長で行ったが、これに限らず、3つ以上の波長を用いてもよい。その場合、用いる波長の数分、同様の処理を実施しうる。
【0092】
ステップS201~S203の処理を実施する際に、
図18に示すように、ウエハ8の全面において少なくとも2種類以上の複数の波長がランダムに分配され照射されることがさらに好ましい。また、特定の波長から別の波長へと変更すると、変更直後は計測が不安定になる場合もあるため、例えば、ショット領域毎に波長を変えて計測するのではなく、波長を変えずに次のショット領域を計測することが好ましい。具体的には、特定の波長(波長A)でウエハ面内の波長Aで計測する各ショット領域のマーク位置計測をして計測誤差を取得する。波長Aでの計測が完了した後に、波長Aではない特定の波長(波長B)で波長Aが計測していない領域で、波長Bが計測する各ショット領域のマーク位置計測をして計測誤差を取得する。波長Bでの計測が完了した後に、波長A及び波長Bではない特定の波長(波長C)において、波長A及び波長Bが計測していない領域で、波長Cが計測するショット領域のマーク位置計測をして計測誤差を取得する。
【0093】
次に、ステップS301において、外部の重ね合わせ検査装置等の検査装置を用いてウエハ8の重ね合わせ状態を計測(検査)し、重ね合わせ誤差を計測し取得する。この際の計測した値が真の位置である。次に、ステップS302において、インプリント装置1内部の位置計測装置で求めた計測値と、外部の重ね合わせ検査装置等で求めた真の位置との差分から、計測誤差を求める。次に、ステップS303において、ウエハ径方向に対する計測誤差の傾きおよびオフセットの量に基づいて最適な波長を算出する。
【0094】
2枚以上のウエハ8を用いて最適波長の条件出しをする場合、
図21(A)及び
図21(B)の処理をウエハ8の枚数分繰り返して計測し、得られた波長の光の強度比をそれぞれ平均化して最適波長を求めてもよい。ここで、1枚目と全く同じショット領域の分布で最適な波長の光の強度比を求めても良いし、2枚目では1枚目のウエハ8におけるショット領域の分布とは別の分布として計測するようしてもよい。複数枚のウエハ8での算出結果を平均化することによって、より信頼性のある波長の光の強度比を得ることができる。
【0095】
インプリント装置1に基づき実施例を記載したが、半導体露光装置にも同様に適用される。また、モールド7とウエハ8の相対位置の計測方法として、モアレ縞検出で行う方法について記載したが、ウエハ位置上のパターンを明視野・暗視野計測する場合や、パターンからの回折光を計測する計測方法に対しても本実施例は適用可能である。
【0096】
〔物品製造方法に係る実施例〕
次に、前述の露光装置(位置計測装置を有するインプリント装置1)を利用した半導体デバイス(半導体IC素子、液晶表示素子、MEMS等)の製造方法を説明する。半導体デバイスは、前述の露光装置を使用して、ウエハ8とモールド7との位置計測をする工程を有する、さらに、位置計測の工程の後に、ウエハ8の上にパターンを形成するパターン形成工程を有する。さらに、パターン形成工程でパターンが形成されたウエハ8を加工する加工工程と、加工された前記基板から物品を製造する工程とを少なくとも有する。なお、前記加工工程には、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージング等が含まれる。本半導体デバイス製造方法によれば、従来よりも高品位の半導体デバイスを製造することができる。
【0097】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明は、これらの実施例に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0098】
1 インプリント装置
2 紫外線照射装置
3 計測光学系
4 モールド保持部
5 ウエハステージ
6 塗布部
7 モールド(型、マスク)
8 ウエハ(基板)
9 樹脂(レジスト、インプリント材)
10 モールドマーク
11 ウエハマーク
21 検出光学系(検出器)
22 照明光学系
23 アライメント光源
30 光源