(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】タービン
(51)【国際特許分類】
F02C 7/141 20060101AFI20240109BHJP
F02C 3/30 20060101ALI20240109BHJP
F02C 7/18 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
F02C7/141
F02C3/30 Z
F02C7/18 E
(21)【出願番号】P 2020030825
(22)【出願日】2020-02-26
【審査請求日】2022-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田島 嗣久
(72)【発明者】
【氏名】小野 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】岩井 章吾
(72)【発明者】
【氏名】野村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】高木 紀和
(72)【発明者】
【氏名】奥山 知視
(72)【発明者】
【氏名】西村 浩輝
【審査官】西山 智宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-190284(JP,A)
【文献】特開2013-050054(JP,A)
【文献】特開2020-029852(JP,A)
【文献】国際公開第98/023851(WO,A1)
【文献】米国特許第06185924(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/141
F02C 3/30
F02C 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンロータと、
前記タービンロータを収容しているタービン車室と、
複数の静翼が前記タービン車室の内部に配置された静翼翼列、および、前記タービン車室の内部において複数の動翼が前記タービンロータのロータホイールに嵌合された動翼翼列を含み、前記タービンロータの軸方向に複数が配列されているタービン段落と、
前記タービン車室の内部に設けられており、作動媒体が前記複数のタービン段落において順次仕事を行った後に排気される排気室と、
前記複数のタービン段落のうち排気段のタービン段落よりも下流側であって、前記タービンロータの径方向において前記排気室よりも内側に位置する排気段ホイールスペースと
を有し、前記作動媒体よりも圧力が高く温度が低い冷却媒体が、前記タービン車室の外部から内部へ導入されるタービンであって、
少なくとも前記排気段のタービン段落において、前記冷却媒体が、前記静翼を通過した後に、前記動翼と前記ロータホイールとの間に介在する
第1の冷却流路を経由して、前記排気段ホイールスペースに流れるように構成されており、
前記排気段のタービン段落において、前記動翼と前記ロータホイールとの間に介在する前記
第1の冷却流路は、前記動翼において径方向の内側部分に位置する植込部の内周面と、前記ロータホイールにおいて前記植込部が設置される部分の外周面との間に介在している隙間であって、一端が前記静翼の先端側と前記タービンロータの外周面との間に介在する空間に連通し、他端が前記排気段ホイールスペースに連通するように前記軸方向に貫通している、
タービン。
【請求項2】
前記排気段のタービン段落よりも上流側に位置する他のタービン段落において、前記冷却媒体が、前記静翼を通過した後に、前記動翼と前記ロータホイールとの間に介在する
第2の冷却流路を流れるように構成されており、
前記他のタービン段落において、前記動翼と前記ロータホイールとの間に介在する前記
第2の冷却流路は、前記動翼において径方向の内側部分に位置する植込部の内周面と、前記ロータホイールにおいて前記植込部が設置される部分の外周面との間に介在している隙間であって、一端が前記静翼の先端側と前記タービンロータの外周面との間に介在する空間に連通し、他端が
前記第1の冷却流路を経由して前記排気段ホイールスペースに連通するように前記軸方向に貫通している、
請求項1に記載のタービン。
【請求項3】
前記静翼は、外周面に管状体が設置されており、前記管状体の内部を前記冷却媒体が流れるように構成されている、
請求項1または2に記載のタービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、タービンに関する。
【背景技術】
【0002】
超臨界CO2タービンサイクルの火力発電システムにおいては、超臨界状態のCO2を作動媒体として用いることによって、CO2タービンが作動する。ここでは、たとえば、CO2を冷却媒体として用いて静翼を冷却することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
起動運転や部分負荷運転等を実行する場合のように、CO2タービンを流れる作動媒体の流量が少ない状態でタービン軸が高速に回転する場合、排気段(最終段)の付近では、作動媒体の逆流が発生し、風損と呼ばれる損失によって、雰囲気温度が上昇する。その結果、排気段の付近においては、部品が許容温度を超える温度に上昇する可能性がある。たとえば、タービンロータにおいて排気段のホイールよりも下流側に位置する排気段ホイールスペースに、排気段から排気された高温の作動媒体が吸い込まれて、ロータ強度が許容値を超える可能性がある。このため、風損による過熱防止対策を行うことが重要である。
【0005】
超臨界CO2タービンサイクルの火力発電システムでは、蒸気タービンの復水器のように圧力が真空近くまで下げる機器が設置されていないので、比較的、排気圧力が高い状態で起動が行われる。しかし、従来においては風損対策が十分でない。
【0006】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、十分に風損対策を実行可能なタービンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態のタービンは、タービンロータとタービン車室とタービン段落と排気室と排気段ホイールスペースとを有する。タービン車室は、タービンロータを収容している。タービン段落は、複数の静翼がタービン車室の内部に配置された静翼翼列、および、タービン車室の内部において複数の動翼がタービンロータのロータホイールに嵌合された動翼翼列を含み、タービンロータの軸方向に複数が配列されている。排気室は、タービン車室の内部に設けられており、作動媒体が複数のタービン段落において順次仕事を行った後に排気される。排気段ホイールスペースは、複数のタービン段落のうち排気段のタービン段落よりも下流側であって、タービンロータの径方向において排気室よりも内側に位置する。実施形態のタービンは、作動媒体よりも圧力が高く温度が低い冷却媒体が、タービン車室の外部から内部へ導入される。ここでは、少なくとも排気段のタービン段落において、冷却媒体が、静翼を通過した後に、動翼とロータホイールとの間に介在する第1の冷却流路を経由して、排気段ホイールスペースに流れるように、タービンが構成されている。排気段のタービン段落において、動翼とロータホイールとの間に介在する第1の冷却流路は、動翼において径方向の内側部分に位置する植込部の内周面と、ロータホイールにおいて植込部が設置される部分の外周面との間に介在している隙間であって、一端が静翼の先端側とタービンロータの外周面との間に介在する空間に連通し、他端が排気段ホイールスペースに連通するように軸方向に貫通している。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態にかかるCO
2タービン12を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態にかかるCO
2タービン12の一部断面(xz面)を拡大して示す拡大断面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の変形例1にかかるCO
2タービン12の一部断面(xz面)を拡大して示す拡大断面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の変形例2にかかるCO
2タービン12の一部断面(xz面)を拡大して示す拡大断面図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態の変形例3にかかるCO
2タービン12の一部断面(xz面)を拡大して示す拡大断面図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態の変形例4にかかるCO
2タービン12の一部断面(xz面)を拡大して示す拡大断面図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態にかかるCO
2タービン12の一部断面(xz面)を拡大して示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1実施形態>
第1実施形態にかかるCO
2タービン12に関して、
図1を用いて説明する。
図1は、鉛直方向zと第1水平方向xとによって規定される鉛直面(xz面)における断面を示している。
【0010】
CO
2タービン12は、
図1に示すように、タービンロータ20とタービン車室30とタービン段落40とを備える。CO
2タービン12は、多段式の軸流タービンであって、作動媒体導入管51を介して、CO
2を含む作動媒体Fがタービン車室30の内部に導入され、タービンロータ20の回転軸AXに沿った軸方向(x)において上流側Usから下流側Dsに並ぶ複数のタービン段落40において仕事を行う。その後、排気管52を介して、作動媒体Fが外部へ排出される。また、CO
2タービン12は、冷却媒体導入管53を介して、CO
2を含む冷却媒体CFが外部からタービン車室30の内部に導入されるように構成されている。作動媒体Fは、たとえば、燃焼器での燃焼によって生じた燃焼ガスを含む超臨界の媒体であり、冷却媒体CFは、たとえば、CO
2タービン12から排気された後に冷却等が行われた超臨界の媒体であって、作動媒体Fよりも温度が低く、作動媒体Fよりも圧力が高い状態で導入される。
【0011】
本実施形態のCO2タービン12を構成する各部の詳細に関して順次説明する。
【0012】
タービンロータ20は、
図1に示すように、回転軸AXが第1水平方向xに沿うように、軸受60に回転可能に支持されている。タービンロータ20には、複数のロータホイール21が外周面に設けられている。複数のロータホイール21は、回転軸AXに沿った軸方向(x)に並ぶように配列されている。また、タービンロータ20の外周面には、バランスピストン22が設けられている。
図1では図示を省略しているが、タービンロータ20は、発電機に連結されている。
【0013】
タービン車室30は、
図1に示すように、二重車室構造であって、内部車室31と外部車室32とを有する。
【0014】
タービン車室30において、内部車室31は、
図1に示すように、第1内部車室部31aおよび第2内部車室部31bを含み、第1内部車室部31aと第2内部車室部31bとが回転軸AXに沿った軸方向(x)に並ぶように設置されている。
【0015】
第1内部車室部31aは、複数のタービン段落40のうち上流側Us(前段側)のタービン段落40およびバランスピストン22を囲うように、タービンロータ20の周囲に設置されている。
【0016】
第2内部車室部31bは、複数のタービン段落40のうち下流側Ds(後段側)のタービン段落40を囲うように、タービンロータ20の周囲に設置されている。第2内部車室部31bは、排気段(最終段)のタービン段落40よりも下流側Dsであって径方向の内側部分に設置されたシールヘッド311を含む。そして、第2内部車室部31bには、排気室R31bが形成されている。排気室R31bは、タービンロータ20の周りを回転方向Rに囲うリング状の空間である。
【0017】
タービン車室30において、外部車室32は、内部車室31を介して、タービンロータ20を収容するように構成されている。
【0018】
また、タービン車室30においては、内部車室31の内周面とタービンロータ20の外周面、および、外部車室32の内周面とタービンロータ20の外周面との間との間を密封するために、シール部材35が設けられている。
【0019】
タービン段落40は、複数の静翼41(ノズル翼)で構成された静翼翼列、および、複数の動翼42で構成された動翼翼列を含む。
【0020】
静翼翼列を構成する複数の静翼41は、内部車室31の内部に設けられている。複数の静翼41は、内部車室31の内部においてタービンロータ20の周りを囲うように、回転方向Rに配列されている。動翼翼列を構成する複数の動翼42は、内部車室31の内部においてタービンロータ20の周りを囲うように、回転方向Rに配列されている。動翼42は、タービンロータ20のロータホイール21に設けられている。
【0021】
タービン段落40は、静翼翼列と、静翼翼列の下流側Dsにおいて隣接する動翼翼列とによって構成されており、複数が回転軸AXに沿った軸方向に並んでいる。複数のタービン段落40のうち前段側のタービン段落40は、内部車室31のうち第1内部車室部31aの内部に設けられている。そして、複数のタービン段落40のうち後段側のタービン段落40は、内部車室31のうち第2内部車室部31bの内部に設けられている。タービン段落40においては、静翼41の内周面とタービンロータ20の外周面との間および動翼42の内周面とタービンロータ20の外周面との間を密封するために、適宜、シールフィン43が設けられている。
【0022】
作動媒体導入管51は、タービン車室30の上方から外部車室32と内部車室31とを貫通するように径方向に延在する部分と、タービンロータ20の周りを回転方向Rに囲うリング状の部分とが連結されている。作動媒体導入管51は、作動媒体Fを初段のタービン段落40に導入するように、初段のタービン段落40に連通している。
【0023】
排気管52は、タービン車室30の下方から外部車室32と内部車室31とを貫通するように径方向に延在している。排気管52は、排気段のタービン段落40から排気室R31bに排気された作動媒体Fをタービン車室30の外部へ排出するように、排気室R31bに連通している。
【0024】
冷却媒体導入管53は、
図1に示すように、外部車室32を貫通するように設けられている。冷却媒体導入管53は、外部に設置されたバルブV53を経由して冷却媒体CFが内部を流れ、その内部を流れる冷却媒体CFが、内部車室31の第2内部車室部31bに形成された内部車室冷却通路61に導入されるように構成されている。
【0025】
上記のCO
2タービン12において冷却媒体CFが流れる部分に関して、
図2を用いて説明する。
図2は、
図1において破線で囲った部分Aを拡大して示している。
【0026】
図2に示すように、第2内部車室部31bに形成された内部車室冷却通路61は、第1の内部車室冷却通路部611と第2の内部車室冷却通路部612とを有する。第1の内部車室冷却通路部611は、タービンロータ20の軸方向に沿った孔であって、一端が冷却媒体導入管53に連通している。第2の内部車室冷却通路部612は、タービンロータ20の径方向に沿った孔であって、径方向において第1の内部車室冷却通路部611よりも内側に形成されている。第2の内部車室冷却通路部612は、径方向において外側の一端が第1の内部車室冷却通路部611に連通している。これに対して、第2の内部車室冷却通路部612のうち径方向において内側の他端は、ノズル冷却通路62に連通している。
【0027】
図2に示すように、静翼41は、ノズル内輪411とノズル外輪412との間に設けられることで静翼翼列(ノズルダイアフラム)を構成しており、ノズル冷却通路62は、排気段のタービン段落40において、ノズル内輪411と静翼41とノズル外輪412との内部を径方向に貫通するように形成されている。
【0028】
図1では図示を省略しているが、
図2に示すように、タービンロータ20の外周面のうち静翼41に対面する部分には、遮熱ピース70が設けられている。ここでは、遮熱ピース70は、タービンロータ20の外周面において複数のロータホイール21の間に位置する部分であって、ノズル内輪411の内周面に対面する部分に支持されている。遮熱ピース70は、タービン車室30の内部において作動媒体Fが流れる主流路と、タービンロータ20との間を遮熱するために設けられている。
【0029】
遮熱ピース70は、遮熱板71と脚部72とを備えており、タービンロータ20の径方向において外側から内側へ(
図2では上側から下側へ)向かうに伴って、遮熱板71と脚部72とが順次設けられている。
【0030】
遮熱ピース70において、遮熱板71は、タービンロータ20の回転軸AXに沿って延在する部分を含む。遮熱板71は、遮熱板71の外周面とノズル内輪411の内周面との間に隙間が介在していると共に、遮熱板71の内周面とタービンロータ20の外周面との間に空間が介在するように設置されている。脚部72は、タービンロータ20の径方向に延在しており、脚部72において径方向の内側には係合部72aが形成されている。係合部72aは、タービンロータ20の回転軸AXに沿った軸方向における幅が、脚部72よりも広くなるように形成されている。係合部72aは、タービンロータ20に形成された被係合溝に係合されている。
【0031】
排気段のタービン段落40を構成する静翼41に対面する遮熱ピース70の遮熱板71には、冷却媒体CFが流れる遮熱板冷却通路63が形成されている。遮熱板冷却通路63は、径方向において遮熱板71を貫通するように形成されている。
【0032】
図2に示すように、動翼42は、径方向において外側部分にスナッバ421が設けられており、径方向において内側部分には、植込部422が設けられている。植込部422は、タービンロータ20のロータホイール21の外周面に嵌合されている。
【0033】
ここでは、植込部422の内周部分とロータホイール21の外周部分との間に隙間が介在している。排気段のタービン段落40では、この隙間が、冷却媒体CFが流れるホイール冷却通路64として機能する。ホイール冷却通路64は、軸方向に延在している。ホイール冷却通路64において上流側Usに位置する一端は、遮熱板71の内周面とタービンロータ20の外周面との間に介在する空間に連通している。これに対して、ホイール冷却通路64において下流側Dsに位置する一端は、排気段ホイールスペースRWに連通している。
【0034】
排気段ホイールスペースRWは、軸方向において排気段のロータホイール21よりも下流側Dsであって、径方向において排気室R31bよりも内側に位置する。
【0035】
なお、内部車室冷却通路61、ノズル冷却通路62、および、遮熱板冷却通路63は、機械加工によって各部に作製される。
【0036】
上記のCO
2タービン12における冷却媒体CFの流れに関して、
図2を用いて説明する。ここでは、部分負荷運転等のように、作動媒体Fの流量が定格負荷運転よりも少ない場合を示している。
【0037】
冷却媒体CFは、冷却媒体導入管53から内部車室31の第2内部車室部31bに形成された内部車室冷却通路61に導入される。ここでは、冷却媒体CFは、作動媒体Fよりも温度が低く、作動媒体Fよりも圧力が高い状態で導入される。
【0038】
つぎに、冷却媒体CFは、排気段のタービン段落40において、ノズル内輪411と静翼41とノズル外輪412との内部を径方向に貫通するように形成されたノズル冷却通路62を流れる。
【0039】
つぎに、冷却媒体CFは、排気段のタービン段落40において、遮熱ピース70の遮熱板71に形成された遮熱板冷却通路63を流れる。冷却媒体CFは、遮熱板冷却通路63を介して、遮熱板71の内周面とタービンロータ20の外周面との間に介在する空間に導入される。
【0040】
つぎに、冷却媒体CFは、排気段のタービン段落40において、植込部422とロータホイール21との間に介在するホイール冷却通路64を流れた後に、排気段ホイールスペースRWに流れる。これにより、冷却媒体CFが流れた各部が冷却される。
【0041】
排気段の動翼42の植込部422において下流側Dsには、シールフィンF422が設けられ、第2内部車室部31bを構成するシールヘッド311において上流側Usには、シールフィンF311が設けられている。これにより、排気段の出口において、作動媒体Fが排気室R31bから排気段ホイールスペースRWへ漏洩することが抑制されている。しかし、部分負荷運転等を実行する場合のように、CO2タービンを流れる作動媒体Fの流量が定格負荷運転よりも少ない状態では、排気室R31bと排気段ホイールスペースRWとの間の差圧が小さい。このため、シールフィンF422とシールフィンF311との間を介して、排気室R31bから排気段ホイールスペースRWへ、温度が高い作動媒体Fが吸い込まれる。また、風損によって排気段の付近において雰囲気温度が上昇し、部品が許容温度を超える可能性がある。
【0042】
しかしながら、本実施形態では、上記のように、冷却媒体CFが排気段ホイールスペースRWに導入されて、冷却される。ここでは、冷却媒体CFは、上述したように、作動媒体Fよりも圧力が高い状態に調整されて、外部から導入される。このため、本実施形態では、シールフィンF422とシールフィンF311との間の隙間を介して、排気段ホイールスペースRWから排気室R31bへ漏れるので、排気室R31bから排気段ホイールスペースRWへ、温度が高い作動媒体Fが吸い込まれることを防止可能である。
【0043】
同様に、本実施形態では、冷却媒体CFは、径方向において遮熱板71の内周面とタービンロータ20の外周面との間に位置する空間から、径方向において遮熱板71よりも外側に位置し作動媒体Fが流れる作動媒体流路へ、遮熱板71と植込部422などとの間の隙間を介して漏れる。このため、本実施形態では、作動媒体流路から、遮熱板71の内周面とタービンロータ20の外周面との間に位置する空間へ、温度が高い作動媒体Fが吸い込まれることを防止可能である。
【0044】
したがって、本実施形態は、風損によって排気段のタービン段落40付近において雰囲気温度が上昇することを抑制し、部品が許容温度を超えることを効果的に防止可能である。その結果、耐熱性が高い材料を用いて部品を作製する必要がなくなるため、コストを低減することができる。
【0045】
[変形例1]
上記の実施形態では、排気段のタービン段落40において冷却媒体CFが流れるようにCO
2タービン12の各部が構成されているが、これに限らない。
図3に示すように、たとえば、排気段のタービン段落40よりも1つ前のタービン段落40において冷却媒体CFが流れるように各部が構成されていてもよい。つまり、排気段のタービン段落40よりも上流側のタービン段落40において冷却媒体CFが流れるように各部が構成されていてもよい。これにより、冷却をより確実に実行することができる。
【0046】
[変形例2]
図3では、冷却媒体導入管53は、排気段のタービン段落40、および、排気段のタービン段落40よりも1つの前のタービン段落40に対して、作動媒体Fの上流側Usに設けられているが、これに限らない。
図4に示すように、冷却媒体導入管53は、たとえば、排気段のタービン段落40において静翼41が設置された部分よりも径方向の外側(
図4では上側)に設けられていてもよい。つまり、冷却媒体CFの導入位置は、任意に選択可能である。
【0047】
[変形例3]
上記の実施形態では、遮熱ピース70が設けられている場合について説明したが、これに限らない。
図5に示すように、遮熱ピース70を設けなくてもよい。この場合には、たとえば、冷却媒体CFは、ノズル内輪411の内部において径方向に延在する部分から、軸方向に延在する部分を通過し、ノズル内輪411よりも下流に位置する部分へ排出される。
【0048】
[変形例4]
図5に示した場合の他に、
図6に示すように、冷却媒体CFが、ノズル内輪411の内部において径方向に延在する部分を通過し、ノズル内輪411よりも径方向の内側に部分へ排出されるように、ノズル内輪411が構成されていてもよい。
【0049】
<第2実施形態>
第2実施形態のCO
2タービン12において冷却媒体CFが流れる部分に関して、
図7を用いて説明する。
図7は、
図2と同様な部分に関して示している。
【0050】
図7に示すように、本実施形態では、ノズル冷却通路62の形態が上記の第1実施形態の場合(
図2参照)と異なる。この点および関連する点を除き、本実施形態は、第1実施形態の場合と同様である。このため、重複する内容に関しては、適宜、説明を省略する。
【0051】
第1実施形態の場合には、
図2に示したように、ノズル冷却通路62は、ノズル内輪411と静翼41とノズル外輪412との内部を径方向に貫通する孔である。
【0052】
しかしながら、本実施形態では、ノズル冷却通路62は、
図7に示すように、静翼41の内部には、孔が形成されていない。本実施形態では、静翼41の外周面に管状体が設置されており、冷却媒体CFが流れるノズル冷却通路62の一部として管状体の内部が機能するように構成されている。ここでは、たとえば、静翼41において温度が高くなりやすい前縁部分に管状体が設置されている。
【0053】
本実施形態では、ノズル冷却通路62は、静翼41の内部に孔を機械加工で形成せずに、静翼41の外部に管状体を用いて形成されているので、製作時間を容易に短縮することができる。
【0054】
<その他>
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0055】
上記の実施形態では、複数のタービン段落40のうち後段側のタービン段落40に冷却媒体CFを供給する場合について説明したが、これに限らない。複数のタービン段落40のうち前段側のタービン段落40に冷却媒体CFを供給するように構成してもよい。たとえば、作動媒体導入管51の周囲から冷却媒体CFを第1内部車室部31aの内部に供給し、その冷却媒体CFを前段側のタービン段落40を構成する静翼41等に供給するように構成してもよい。その他、冷却が必要な部分に冷却媒体CFを適宜供給するように構成してもよい。また、上記の実施形態では、バランスピストン22が設けられている場合について説明したが、これに限らない。
【0056】
上記の実施形態では、タービン車室30が二重車室構造である場合について説明したが、これに限らない。タービン車室30は、一重車室構造であってもよい。
【符号の説明】
【0057】
12…タービン、20…タービンロータ、21…ロータホイール、22…バランスピストン、30…タービン車室、31…内部車室、31a…第1内部車室部、31b…第2内部車室部、32…外部車室、35…シール部材、40…タービン段落、41…静翼、42…動翼、43…シールフィン、51…作動媒体導入管、52…排気管、53…冷却媒体導入管、60…軸受、61…内部車室冷却通路、62…ノズル冷却通路、63…遮熱板冷却通路、64…ホイール冷却通路、70…遮熱ピース、71…遮熱板、72…脚部、72a…係合部、311…シールヘッド、411…ノズル内輪、412…ノズル外輪、421…スナッバ、422…植込部、611…第1の内部車室冷却通路部、612…第2の内部車室冷却通路部、AX…回転軸、CF…冷却媒体、F…作動媒体、F311…シールフィン、
F422…シールフィン、R31b…排気室、RW…排気段ホイールスペース、V53…バルブ