(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/16 20060101AFI20240109BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
G03G15/16 103
G03G15/00 303
G03G15/00 446
(21)【出願番号】P 2020031083
(22)【出願日】2020-02-26
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169155
【氏名又は名称】倉橋 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075638
【氏名又は名称】倉橋 暎
(72)【発明者】
【氏名】犬塚 智哉
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-064917(JP,A)
【文献】特開2014-134718(JP,A)
【文献】特開2012-093609(JP,A)
【文献】特開2019-152780(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0099896(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/02
G03G 13/14-13/16
G03G 13/34
G03G 15/00
G03G 15/02
G03G 15/14-15/16
G03G 15/36
G03G 21/00
G03G 21/02
G03G 21/14
G03G 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を搬送する回転可能な無端状のベルトと、
前記ベルトを張架する複数の張架ローラであって、内ローラと、前記ベルトの回転方向に関して前記内ローラよりも上流において前記内ローラに隣接して配置された上流ローラと、を含む複数の張架ローラと、
前記ベルトを駆動するベルト駆動部と、
前記内ローラと対向して配置され、前記ベルトの外周面に当接して前記ベルトから記録材へトナー像を転写する転写部を形成する外ローラと、
前記内ローラ又は前記外ローラの少なくとも一方の位置を変更して、前記内ローラの周方向に関する前記内ローラと前記外ローラとの相対位置を、第1の相対位置と、前記第1の相対位置よりも前記内ローラが前記外ローラに対して前記ベルトの回転方向の下流側に位置する第2の相対位置と、に変更可能な位置変更機構と、
前記転写部に記録材を搬送する搬送部材と、
前記搬送部材を駆動する搬送駆動部と、
前記位置変更機構及び前記搬送駆動部を制御する制御部と、
を有する画像形成装置において、
前記制御部は、前記相対位置を前記第1の相対位置として前記転写を行う際には、前記ベルト駆動部による前記ベルトの駆動速度Vbと前記搬送駆動部による前記搬送部材の駆動速度Vpとの速度比Vp/Vbを第1の速度比とし、前記相対位置を前記第2の相対位置として前記転写を行う際には、前記速度比Vp/Vbを前記第1の速度比よりも小さい第2の速度比とするように、前記搬送駆動部を制御可能であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
トナー像を搬送する回転可能な無端状のベルトと、
前記ベルトを張架する複数の張架ローラであって、内ローラと、前記ベルトの回転方向に関して前記内ローラよりも上流において前記内ローラに隣接して配置された上流ローラと、を含む複数の張架ローラと、
前記ベルトを駆動するベルト駆動部と、
前記内ローラと対向して配置され、前記ベルトの外周面に当接して前記ベルトから記録材へトナー像を転写する転写部を形成する外ローラと、
前記内ローラ又は前記外ローラの少なくとも一方の位置を変更して、前記内ローラの周方向に関する前記内ローラと前記外ローラとの相対位置を、第1の相対位置と、前記第1の相対位置よりも前記内ローラが前記外ローラに対して前記ベルトの回転方向の下流側に位置する第2の相対位置と、に変更可能な位置変更機構と、
前記転写部に記録材を搬送する搬送部材と、
前記搬送部材を駆動する搬送駆動部と、
前記位置変更機構及び前記搬送駆動部を制御する制御部と、
トナー像を転写する記録材の坪量に関する情報を前記制御部に入力する入力部と、
を有する画像形成装置において、
前記制御部は、
前記情報が示す坪量が第1の坪量である第1の記録材に前記転写を行う際には前記相対位置を前記第2の相対位置とし、前記情報が示す坪量が前記第1の坪量よりも大きい第2の坪量である第2の記録材に前記転写を行う際には前記相対位置を前記第1の相対位置とするように前記位置変更機構を制御し、
前記相対位置を前記第1の相対位置として前記第2の記録材に前記転写を行う際には、前記ベルト駆動部による前記ベルトの駆動速度Vbと前記搬送駆動部による前記搬送部材の駆動速度Vpとの速度比Vp/Vbを第1の速度比とし、前記相対位置を前記第2の相対位置として前記第1の記録材に前記転写を行う際には、前記速度比Vp/Vbを前記第1の速度比よりも小さい第2の速度比とするように、前記搬送駆動部を制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
トナー像を搬送する回転可能な無端状のベルトと、
前記ベルトを張架する複数の張架ローラであって、内ローラと、前記ベルトの回転方向に関して前記内ローラよりも上流において前記内ローラに隣接して配置された上流ローラと、を含む複数の張架ローラと、
前記ベルトを駆動するベルト駆動部と、
前記内ローラと対向して配置され、前記ベルトの外周面に当接して前記ベルトから記録材へトナー像を転写する転写部を形成する外ローラと、
前記内ローラ又は前記外ローラの少なくとも一方の位置を変更して、前記内ローラの周方向に関する前記内ローラと前記外ローラとの相対位置を、第1の相対位置と、前記第1の相対位置よりも前記内ローラが前記外ローラに対して前記ベルトの回転方向の下流側に位置する第2の相対位置と、に変更可能な位置変更機構と、
前記転写部に記録材を搬送する搬送部材と、
前記搬送部材を駆動する搬送駆動部と、
前記位置変更機構及び前記搬送駆動部を制御する制御部と、
トナー像を転写する記録材の坪量に関する情報を前記制御部に入力する入力部と、
を有する画像形成装置において、
前記制御部は、
前記情報が示す坪量が所定の坪量である所定の記録材に対し、前記相対位置を前記第1の相対位置とした状態で前記転写を行うように前記位置変更機構を制御可能であると共に、前記所定の記録材に対し、前記相対位置を前記第2の相対位置とした状態で前記転写を行うように前記位置変更機構を制御可能であり、
前記相対位置を前記第1の相対位置として前記所定の記録材に前記転写を行う際には、前記ベルト駆動部による前記ベルトの駆動速度Vbと前記搬送駆動部による前記搬送部材の駆動速度Vpとの速度比Vp/Vbを第1の速度比とし、前記相対位置を前記第2の相対位置として前記所定の記録材に前記転写を行う際には、前記速度比Vp/Vbを前記第1の速度比よりも小さい第2の速度比とするように、前記搬送駆動部を制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
前記外ローラは、前記ベルトの回転に伴って従動して回転することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
トナー像を搬送する回転可能な無端状のベルトと、
前記ベルトを張架する複数の張架ローラであって、内ローラと、前記ベルトの回転方向に関して前記内ローラよりも上流において前記内ローラに隣接して配置された上流ローラと、を含む複数の張架ローラと、
前記ベルトを駆動するベルト駆動部と、
前記内ローラと対向して配置され、前記ベルトの外周面に当接して前記ベルトから記録材へトナー像を転写する転写部を形成する外ローラと、
前記外ローラを駆動する外ローラ駆動部と、
前記内ローラ又は前記外ローラの少なくとも一方の位置を変更して、前記内ローラの周方向に関する前記内ローラと前記外ローラとの相対位置を、第1の相対位置と、前記第1の相対位置よりも前記内ローラが前記外ローラに対して前記ベルトの回転方向の下流側に位置する第2の相対位置と、に変更可能な位置変更機構と、
前記位置変更機構及び前記外ローラ駆動部を制御する制御部と、
を有する画像形成装置において、
前記制御部は、前記相対位置を前記第1の相対位置として前記転写を行う際には、前記ベルト駆動部による前記ベルトの駆動速度Vbと前記外ローラ駆動部による前記外ローラの駆動速度Vpとの速度比Vp/Vbを第1の速度比とし、前記相対位置を前記第2の相対位置として前記転写を行う際には、前記速度比Vp/Vbを前記第1の速度比よりも小さい第2の速度比とするように、前記外ローラ駆動部を制御可能であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
トナー像を搬送する回転可能な無端状のベルトと、
前記ベルトを張架する複数の張架ローラであって、内ローラと、前記ベルトの回転方向に関して前記内ローラよりも上流において前記内ローラに隣接して配置された上流ローラと、を含む複数の張架ローラと、
前記ベルトを駆動するベルト駆動部と、
前記内ローラと対向して配置され、前記ベルトの外周面に当接して前記ベルトから記録材へトナー像を転写する転写部を形成する外ローラと、
前記外ローラを駆動する外ローラ駆動部と、
前記内ローラ又は前記外ローラの少なくとも一方の位置を変更して、前記内ローラの周方向に関する前記内ローラと前記外ローラとの相対位置を、第1の相対位置と、前記第1の相対位置よりも前記内ローラが前記外ローラに対して前記ベルトの回転方向の下流側に位置する第2の相対位置と、に変更可能な位置変更機構と、
前記位置変更機構及び前記外ローラ駆動部を制御する制御部と、
トナー像を転写する記録材の坪量に関する情報を前記制御部に入力する入力部と、
を有する画像形成装置において、
前記制御部は、
前記情報が示す坪量が第1の坪量である第1の記録材に前記転写を行う際には前記相対位置を前記第2の相対位置とし、前記情報が示す坪量が前記第1の坪量よりも大きい第2の坪量である第2の記録材に前記転写を行う際には前記相対位置を前記第1の相対位置とするように前記位置変更機構を制御し、
前記相対位置を前記第1の相対位置として前記第2の記録材に前記転写を行う際には、前記ベルト駆動部による前記ベルトの駆動速度Vbと前記外ローラ駆動部による前記外ローラの駆動速度Vpとの速度比Vp/Vbを第1の速度比とし、前記相対位置を前記第2の相対位置として前記第1の記録材に前記転写を行う際には、前記速度比Vp/Vbを前記第1の速度比よりも小さい第2の速度比とするように、前記外ローラ駆動部を制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
トナー像を搬送する回転可能な無端状のベルトと、
前記ベルトを張架する複数の張架ローラであって、内ローラと、前記ベルトの回転方向に関して前記内ローラよりも上流において前記内ローラに隣接して配置された上流ローラと、を含む複数の張架ローラと、
前記ベルトを駆動するベルト駆動部と、
前記内ローラと対向して配置され、前記ベルトの外周面に当接して前記ベルトから記録材へトナー像を転写する転写部を形成する外ローラと、
前記外ローラを駆動する外ローラ駆動部と、
前記内ローラ又は前記外ローラの少なくとも一方の位置を変更して、前記内ローラの周方向に関する前記内ローラと前記外ローラとの相対位置を、第1の相対位置と、前記第1の相対位置よりも前記内ローラが前記外ローラに対して前記ベルトの回転方向の下流側に位置する第2の相対位置と、に変更可能な位置変更機構と、
前記位置変更機構及び前記外ローラ駆動部を制御する制御部と、
トナー像を転写する記録材の坪量に関する情報を前記制御部に入力する入力部と、
を有する画像形成装置において、
前記制御部は、
前記情報が示す坪量が所定の坪量である所定の記録材に対し、前記相対位置を前記第1の相対位置とした状態で前記転写を行うように前記位置変更機構を制御可能であると共に、前記所定の記録材に対し、前記相対位置を前記第2の相対位置とした状態で前記転写を行うように前記位置変更機構を制御可能であり、
前記相対位置を前記第1の相対位置として前記所定の記録材に前記転写を行う際には、前記ベルト駆動部による前記ベルトの駆動速度Vbと前記外ローラ駆動部による前記外ローラの駆動速度Vpとの速度比Vp/Vbを第1の速度比とし、前記相対位置を前記第2の相対位置として前記所定の記録材に前記転写を行う際には、前記速度比Vp/Vbを前記第1の速度比よりも小さい第2の速度比とするように、前記外ローラ駆動部を制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
前記内ローラの回転軸線方向と略直交する断面において、前記ベルトが掛け回される側の前記内ローラと前記上流ローラとの共通の接線を基準線L1、前記内ローラの回転中心を通り前記基準線L1と略直交する直線を内ローラ中心線L2、前記外ローラの回転中心を通り前記基準線L1と略直交する直線を外ローラ中心線L3、前記内ローラ中心線L2と前記外ローラ中心線L3との間の距離をオフセット量X(ただし、前記外ローラ中心線L3が前記内ローラ中心線L2よりも前記ベルトの回転方向の上流側にあるとき正の値)としたとき、
前記位置変更機構は、前記内ローラ又は前記外ローラの少なくとも一方の位置を変更して、前記オフセット量Xを前記第1の相対位置の場合の第1のオフセット量X1と、前記第1のオフセット量X1よりも大きい、前記第2の相対位置の場合の第2のオフセット量X2と、に変更可能であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記第1のオフセット量X1は0又は負の値であり、前記第2のオフセット量X2は正の値であることを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記位置変更機構は、前記内ローラの位置を変更することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
記録材の搬送方向に関して前記転写部よりも上流に、前記転写部に記録材を案内するガイド部材が設けられていることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記ベルトは、像担持体から1次転写されたトナー像を前記転写部で記録材に2次転写するために搬送する中間転写体であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記外ローラは、前記ベルトの外周面に直接当接することを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記外ローラは、前記外ローラと他のローラとに張架された無端状の別のベルトを介して前記ベルトの外周面に当接することを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式や静電記録方式を用いた複写機、プリンタ、ファクシミリ装置などの画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式などを用いた画像形成装置には、トナー像を担持する像担持体としての無端状のベルト(以下、単に「ベルト」ともいう。)を有するものがある。このようなベルトとしては、例えば、第1の像担持体としての感光体などから1次転写されたトナー像を紙などのシート状の記録材に2次転写するために搬送する、第2の像担持体としての中間転写ベルトがある。以下、主に、中間転写ベルトを有する中間転写方式を採用した画像形成装置を例に説明する。
【0003】
中間転写方式の画像形成装置では、画像形成部において感光体などに形成されたトナー像が、1次転写部において中間転写ベルトに1次転写される。また、中間転写ベルトに1次転写されたトナー像は、2次転写部で記録材に2次転写される。中間転写ベルトの内周面側に設けられた内部材(2次転写内部材)と、中間転写ベルトの外周面側に設けられた外部材(2次転写外部材)とによって、中間転写ベルトと外部材との接触部である、2次転写部としての2次転写ニップが形成される。内部材としては、中間転写ベルトを張架する複数の張架ローラのうちの1つである内ローラが用いられる。外部材としては、中間転写ベルトを挟んで内ローラと対向する位置に配置され、内ローラに向けて押圧される外ローラが用いられることが多い。そして、例えば、外ローラにトナーの帯電極性とは逆極性の2次転写電圧が印加されることで、2次転写ニップにおいて中間転写ベルト上のトナー像が記録材上に2次転写される。一般に、記録材の搬送方向に関して2次転写ニップよりも上流には、2次転写ニップに記録材を案内する搬送ガイドが設けられている。
【0004】
ここで、2次転写ニップの形状によって、記録材の搬送方向に関して2次転写ニップの上流近傍や下流近傍での記録材の挙動が変わる。また、近年では、例えば商業印刷市場などにおいて多様化する記録材への対応が求められているが、記録材の剛度によっても、記録材の搬送方向に関して2次転写ニップの上流近傍や下流近傍での記録材の挙動が変わる。例えば、記録材が、剛度の小さい記録材の一例である「薄紙」の場合に、記録材の搬送方向に関して2次転写ニップの下流近傍で中間転写ベルトと記録材とが貼り付いて、中間転写ベルトからの記録材の分離不良によりジャム(紙詰まり)が発生することがある。
【0005】
一方、例えば、記録材が、剛度の大きい記録材の一例である「厚紙」の場合に、記録材の搬送方向の後端が搬送ガイドを抜けた際に、記録材の搬送方向の後端部が中間転写ベルトに衝突することがある。そして、記録材の搬送方向に関して2次転写ニップの上流近傍の中間転写ベルトの姿勢が乱れ、記録材の搬送方向の後端部に画像不良(記録材の搬送方向と略直交する方向に伸びるスジ状の画像乱れなど)が発生することがある。
【0006】
このような課題に対して、記録材の種類に応じて2次転写ニップの形状(2次転写ニップの位置)を変更する構成が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、記録材の中間転写ベルトからの分離性の向上と、記録材の後端部の画像不良の抑制と、を図るためには、記録材の種類に応じて2次転写ニップの形状(2次転写ニップの位置)を変更することが有効である。この2次転写ニップの形状(2次転写ニップの位置)の変更は、内ローラ又は外ローラを移動させて、内ローラの周方向に関する内ローラと外ローラとの相対位置(ここでは、後述する「オフセット量」で代表する。)を変更することで行うことができる。
【0009】
しかしながら、記録材の種類に応じてオフセット量を変更すると、同時に2次転写ニップ(より詳細には2次転写ニップにおける中間転写ベルト及び記録材)の曲率が変化する。2次転写ニップの曲率が変わると、2次転写ニップにおける中間転写ベルトの表面速度Vbsと記録材の表面速度Vpsとの比(ここでは、単に「表面速度比」ともいう。)Vps/Vbsが変化する。そして、この表面速度比が過大になると、トナー像が擦れたような画像不良(ここでは「画像擦れ」ともいう。)が発生することがある。
【0010】
なお、以上では中間転写ベルトから記録材へのトナー像の転写部である2次転写部を例として従来の課題について説明したが、感光体などの他のベルト状の像担持体から記録材へのトナー像の転写部に関しても同様の課題がある。
【0011】
したがって、本発明の目的は、オフセット量の変更に起因する転写部における画像不良の発生を抑制することのできる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的は本発明に係る画像形成装置にて達成される。要約すれば、本発明の代表的な構成によれば、トナー像を搬送する回転可能な無端状のベルトと、前記ベルトを張架する複数の張架ローラであって、内ローラと、前記ベルトの回転方向に関して前記内ローラよりも上流において前記内ローラに隣接して配置された上流ローラと、を含む複数の張架ローラと、前記ベルトを駆動するベルト駆動部と、前記内ローラと対向して配置され、前記ベルトの外周面に当接して前記ベルトから記録材へトナー像を転写する転写部を形成する外ローラと、前記内ローラ又は前記外ローラの少なくとも一方の位置を変更して、前記内ローラの周方向に関する前記内ローラと前記外ローラとの相対位置を、第1の相対位置と、前記第1の相対位置よりも前記内ローラが前記外ローラに対して前記ベルトの回転方向の下流側に位置する第2の相対位置と、に変更可能な位置変更機構と、前記転写部に記録材を搬送する搬送部材と、前記搬送部材を駆動する搬送駆動部と、前記位置変更機構及び前記搬送駆動部を制御する制御部と、を有する画像形成装置において、前記制御部は、前記相対位置を前記第1の相対位置として前記転写を行う際には、前記ベルト駆動部による前記ベルトの駆動速度Vbと前記搬送駆動部による前記搬送部材の駆動速度Vpとの速度比Vp/Vbを第1の速度比とし、前記相対位置を前記第2の相対位置として前記転写を行う際には、前記速度比Vp/Vbを前記第1の速度比よりも小さい第2の速度比とするように、前記搬送駆動部を制御可能であることを特徴とする画像形成装置が提供される。
【0013】
本発明の他の代表的な構成によれば、トナー像を搬送する回転可能な無端状のベルトと、前記ベルトを張架する複数の張架ローラであって、内ローラと、前記ベルトの回転方向に関して前記内ローラよりも上流において前記内ローラに隣接して配置された上流ローラと、を含む複数の張架ローラと、前記ベルトを駆動するベルト駆動部と、前記内ローラと対向して配置され、前記ベルトの外周面に当接して前記ベルトから記録材へトナー像を転写する転写部を形成する外ローラと、前記外ローラを駆動する外ローラ駆動部と、前記内ローラ又は前記外ローラの少なくとも一方の位置を変更して、前記内ローラの周方向に関する前記内ローラと前記外ローラとの相対位置を、第1の相対位置と、前記第1の相対位置よりも前記内ローラが前記外ローラに対して前記ベルトの回転方向の下流側に位置する第2の相対位置と、に変更可能な位置変更機構と、前記位置変更機構及び前記外ローラ駆動部を制御する制御部と、を有する画像形成装置において、前記制御部は、前記相対位置を前記第1の相対位置として前記転写を行う際には、前記ベルト駆動部による前記ベルトの駆動速度Vbと前記外ローラ駆動部による前記外ローラの駆動速度Vpとの速度比Vp/Vbを第1の速度比とし、前記相対位置を前記第2の相対位置として前記転写を行う際には、前記速度比Vp/Vbを前記第1の速度比よりも小さい第2の速度比とするように、前記外ローラ駆動部を制御可能であることを特徴とする画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、オフセット量の変更に起因する転写部における画像不良の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】オフセット量を説明するための2次転写ニップの近傍の概略断面図である。
【
図4】オフセット機構の一部を示す概略側面図である。
【
図5】表面速度比を説明するための2次転写ニップの概略断面図である。
【
図6】オフセット量ごとの2次転写ニップの周辺における中間転写ベルト及び記録材の表面速度を示すグラフ図である。
【
図7】2次転写ニップの曲率を説明するための概略断面図である。
【
図8】実施例1の画像形成装置の要部の制御態様を示す概略ブロック図である。
【
図10】実施例2の制御のフローチャート図である。
【
図11】実施例3の画像形成装置の要部の制御態様を示す概略ブロック図である。
【
図12】実施例2の制御のフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0017】
[実施例1]
1.画像形成装置の全体的な構成及び動作
図1は、本実施例の画像形成装置100の概略断面図である。本実施例の画像形成装置100は、中間転写方式を採用したタンデム型の複合機(複写機、プリンタ、ファクシミリ装置の機能を有する。)である。画像形成装置100は、例えば、外部装置から送信された画像信号に応じて、電子写真方式を用いて紙などのシート状の記録材(転写材、シート材、記録媒体、メディア)Pにフルカラー画像を形成することができる。
【0018】
画像形成装置100は、複数の画像形成部(ステーション)として、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の画像を形成する4つの画像形成部10Y、10M、10C、10Kを有する。これらの画像形成部10Y、10M、10C、10Kは、後述する中間転写ベルト21の略水平に配置される画像転写面の移動方向に沿って直列状に配置されている。各画像形成部10Y、10M、10C、10Kにおける同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、いずれかの色用の要素であることを示す符号の末尾のY、M、C、Kを省略して総括的に説明することがある。本実施例では、画像形成部10は、後述する感光ドラム1(1Y、1M、1C、1K)、帯電器2(2Y、2M、2C、2K)、露光装置3(3Y、3M、3C、3K)、現像器4(4Y、4M、4C、4K)、1次転写ローラ23(23Y、23M、23C、23K)、クリーニング装置5(5Y、5M、5C、5K)などを有して構成される。
【0019】
画像形成部10には、トナー像を担持する第1の像担持体としての、回転可能なドラム型(円筒形)の感光体(電子写真感光体)である感光ドラム1が設けられている。感光ドラム1は、駆動源としてのドラム駆動モータ111aを備えた駆動手段としてのドラム駆動部111(
図8)から駆動力が伝達されて、図中矢印R1方向(反時計回り)に回転駆動される。回転する感光ドラム1の表面は、帯電手段としての帯電器(帯電ローラ)2によって所定の極性(本実施例では負極性)の所定の電位に一様に帯電処理される。帯電処理時に、帯電器2には、帯電電源(図示せず)により所定の帯電電圧が印加される。帯電処理された感光ドラム1の表面は、露光手段(静電像形成手段)としての露光装置3によって画像信号に応じて走査露光され、感光ドラム1上に静電像(静電潜像)が形成される。本実施例では、露光装置3は、画像信号に応じて変調されたレーザ光を感光ドラム1上に照射するレーザスキャナー装置で構成されている。感光ドラム1上に形成された静電像は、現像手段としての現像器4によって現像剤としてのトナーが供給されて現像(可視化)され、感光ドラム1上にトナー像(現像剤像)が形成される。本実施例では、一様に帯電処理された後に露光されることで電位の絶対値が低下した感光ドラム1上の露光部(イメージ部)に、感光ドラム1の帯電極性と同極性(本実施例では負極性)に帯電したトナーが付着する(反転現像)。現像器4は、現像剤を担持して感光ドラム1との対向部である現像位置に搬送する、回転可能な現像剤担持体である現像ローラを有している。現像ローラは、例えば感光ドラム1の駆動系から駆動力が伝達されることによって回転駆動される。また、現像時に、現像ローラには、現像電源(図示せず)により所定の現像電圧が印加される。
【0020】
4つの感光ドラム1Y、1M、1C、1Kと対向するように、トナー像を担持する第2の像担持体としての、無端状のベルトで構成された回転可能な中間転写体である中間転写ベルト21が配置されている。中間転写ベルト21は、複数の張架ローラ(支持ローラ)としての駆動ローラ22、上流補助ローラ25a、下流補助ローラ25b、テンションローラ24、2次転写前ローラ29、及び内ローラ26に掛け回されて、所定の張力で張架されている。駆動ローラ22は、中間転写ベルト21に駆動力を伝達する。テンションローラ24は、中間転写ベルト21に所定の張力(テンション)を付与する。2次転写前ローラ29は、中間転写ベルト21の回転方向(搬送方向、移動方向、走行方向)に関して2次転写ニップN2(後述)の上流近傍の中間転写ベルト21の面を形成する。内ローラ(2次転写対向ローラ、内部材)26は、外ローラ41(後述)の対向部材(対向電極)として機能する。上流補助ローラ25a、下流補助ローラ25bは、略水平に配置される画像転写面を形成する。駆動源としてのベルト駆動モータ112aを備えた駆動手段としてのベルト駆動部112(
図8)から駆動力が伝達されることによって、駆動ローラ22が回転駆動される。これにより、中間転写ベルト21は、駆動ローラ22から駆動が入力されて、図中矢印R2方向(時計回り)に回転(周回移動)する。複数の張架ローラのうち駆動ローラ22以外の張架ローラは、中間転写ベルト21の回転に伴って従動して回転する。中間転写ベルト21の内周面側には、各感光ドラム1Y、1M、1C、1Kに対応して、1次転写手段としてのローラ状の1次転写部材である1次転写ローラ23Y、23M、23C、23Kが配置されている。1次転写ローラ23は、中間転写ベルト21を感光ドラム1に向けて押圧して、感光ドラム1と中間転写ベルト21との接触部である1次転写部としての1次転写ニップN1を形成する。
【0021】
上述のように感光ドラム1上に形成されたトナー像は、1次転写ニップN1において、1次転写ローラ23の作用によって、回転している中間転写ベルト21上に1次転写される。1次転写時に、1次転写ローラ23には、1次転写電源(図示せず)により、トナーの正規の帯電極性(現像時のトナーの帯電極性)とは逆極性の直流電圧である1次転写電圧が印加される。例えば、フルカラー画像の形成時には、各感光ドラム1上に形成されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像が、中間転写ベルト21上の同一画像形成領域に重ね合わされるようにして順次1次転写される。本実施例では、1次転写ニップN1が、中間転写ベルト21にトナー像を形成する画像形成位置である。そして、中間転写ベルト21は、画像形成位置で担持されたトナー像を搬送する回転可能な無端状のベルトの一例である。
【0022】
中間転写ベルト21の外周面側において、内ローラ26と対向する位置には、2次転写手段としてのローラ状の2次転写部材(転写回転体)である外ローラ(2次転写ローラ、外部材)41が配置されている。外ローラ41は、中間転写ベルト21を介して内ローラ26に向けて押圧され、中間転写ベルト21と外ローラ41との接触部である2次転写部としての2次転写ニップN2を形成する。上述のように中間転写ベルト21上に形成されたトナー像は、2次転写ニップN2において、外ローラ41の作用によって、中間転写ベルト21と外ローラ41とに挟持されて搬送されている記録材P上に2次転写される。本実施例では、2次転写時に、外ローラ41には、2次転写電源(図示せず)により、トナーの正規の帯電極性とは逆極性の直流電圧である2次転写電圧が印加される。本実施例では、内ローラ26は、電気的に接地(グランドに接続)されている。なお、内ローラ26を2次転写部材として用いてこれにトナーの正規の帯電極性と同極性の2次転写電圧を印加し、外ローラ41を対向電極として用いてこれを電気的に接地してもよい。
【0023】
記録材Pは、中間転写ベルト21上のトナー像とタイミングが合わされて2次転写ニップN2へと搬送されてくる。つまり、記録材Pは、記録材収納庫(カセット)11に収納されている。この記録材Pは、記録材収納庫11に設けられた給送部(給送ローラなど)によって送り出される。この記録材Pは、レジスト調整部12で姿勢を整えられた後に、所定のタイミングで2次転写ニップN2に搬送される。ここで、レジスト調整部12は、搬送手段としてのローラ状の搬送部材である一対のレジストローラ(レジストローラ対)13と、レジストローラ13を駆動する駆動手段としてのレジスト駆動部(搬送駆動部)114(
図8)と、を備えている。レジストローラ13がレジスト駆動部114により回転駆動されることで、一対のレジストローラ13の接触部(ニップ部)において記録材Pが搬送される。なお、レジスト駆動部114は、駆動源としてのレジスト駆動モータ114a(
図8)を備えており、レジスト駆動部114は一対のレジストローラ13のうち少なくとも一方(両方でもよい)を駆動する。本実施例では、制御部150(
図8)によってレジスト駆動部114のレジスト駆動モータ114aの回転数を制御し、レジストローラ13の回転数を制御することで、2次転写ニップN2における記録材Pの搬送速度を変更可能である。記録材収納庫11から給送された記録材Pは、レジストローラ11によって一旦停止させられる。そして、この記録材Pは、2次転写ニップN2において中間転写ベルト21上のトナー像と記録材P上の所望の画像形成領域とが一致するようにレジストローラ11が回転駆動されることで、2次転写ニップN2に送り込まれる。
【0024】
記録材Pの搬送方向に関して、レジストローラ11よりも下流かつ2次転写ニップN2よりも上流には、2次転写ニップN2に記録材Pを案内する搬送ガイド27が設けられている。搬送ガイド27は、記録材Pのオモテ面(搬送ガイド27を通過した直後にトナー像が転写される面)に接触可能な第1のガイド部材27aと、記録材Pのウラ面(オモテ面とは反対側の面)に接触可能な第2のガイド部材27bと、を有して構成される。第1のガイド部材27aと第2のガイド部材27bとは対向して配置され、これら両部材の間を記録材Pが通過する。第1のガイド部材27aは、記録材Pの中間転写ベルト21に近づく方向への移動を規制する。第2のガイド部材27bは、記録材Pの中間転写ベルト21から遠ざかる方向への移動を規制する。
【0025】
トナー像が転写された記録材Pは、搬送ベルト14により定着手段としての定着装置15へと搬送される。搬送ベルト14は、搬送駆動モータ(図示せず)により駆動される。搬送ベルト14の内周面側には、記録材Pを吸着するために吸引ファン(図示せず)が配置され、記録材Pを搬送ベルト14に向けて吸着している。定着装置15は、未定着のトナー像を担持した記録材Pを加熱及び加圧することでトナー像を記録材Pの表面に定着(溶融、固着)させる。その後、トナー像が定着された記録材Pは、排出装置16によって画像形成装置100の装置本体110の外部(機外)に設けられた排出トレイ17へと排出(出力)される。
【0026】
一方、1次転写後に感光ドラム1上に残留したトナー(1次転写残トナー)は、クリーニング手段としてのクリーニング装置5によって感光ドラム1上から除去されて回収される。また、2次転写後に中間転写ベルト21上に残留したトナー(2次転写残トナー)や記録材Pから付着した紙粉などの付着物は、中間転写体クリーニング手段としてのベルトクリーニング装置28によって中間転写ベルト21上から除去されて回収される。
【0027】
なお、本実施例では、複数の張架ローラに張架された中間転写ベルト21、各1次転写ローラ23、ベルトクリーニング装置28、これらを支持するフレームなどを有して、ベルト搬送装置としての中間転写ベルトユニット20が構成されている。中間転写ベルトユニット20は、メンテナンス又は交換のために装置本体110に対して着脱可能とされている。
【0028】
ここで、中間転写ベルト21としては、単層又は多層構造の樹脂系材料で構成されたもの、弾性材料で構成された弾性層を備えた多層構造のものなどを使用することができる。また、中間転写ベルト21としては、例えば、厚さが40μm以上、ヤング率が1.0GPa以上、表面抵抗率が1.0×109~5.0×1013Ω/□であるものを好ましく用いることができる。
【0029】
また、本実施例では、内ローラ26は、金属製の芯金(基材)の外周に、弾性材料としてのゴム材料で形成された弾性層(ゴム層)が設けられて構成されている。この弾性層は、例えば、EPDMゴム(導電剤を含有していてよい。)などで形成することができる。本実施例では、内ローラ26は、その外径が20mm、弾性層の厚さが0.5mmとなるように形成されている。また、本実施例では、内ローラ26の弾性層の硬度は、例えば70°(JIS-A)に設定されている。なお、内ローラ26は、SUMあるいはSUSなどの金属材料で形成された金属ローラで構成されていてもよい。なお、2次転写前ローラ29は、例えば、内ローラ26と同様の構成とすることができる。
【0030】
また、本実施例では、外ローラ41は、金属製の芯金(基材)の外周に、導電性の弾性材料としての導電性のゴム材料で形成された導電性の弾性層(ソリッドゴム層あるいはスポンジ層(発泡弾性体層)であってよい。)が設けられて構成されている。この弾性層は、例えば、金属錯体、カーボンなどの導電剤を含有したNBRゴムやEPDMゴムなどで形成することができる。本実施例では、外ローラ41は、芯金の外径が12mm、弾性層の厚さが6mmとされ、外ローラ41の外径が24mmとなるように形成されている。また、本実施例では、外ローラ41の弾性層の硬度は、例えば28°(アスカーC)に設定されている。また、本実施例では、外ローラ41は、その回転軸線方向の両端部が軸受43(
図3)によって回転可能に支持されている。軸受43は、内ローラ26に向かう方向及びその反対方向にスライド移動可能とされており、付勢手段としての付勢部材(弾性部材)である圧縮ばねで構成された押圧ばね44(
図3)によって内ローラ26に向かって押圧される。これにより、外ローラ41は、中間転写ベルト21を挟んで内ローラ26に対して所定の圧力で当接し、2次転写ニップN2を形成する。また、本実施例では、外ローラ41は、中間転写ベルト21の回転に伴って従動して回転する。
【0031】
なお、本実施例では、内ローラ26を含む中間転写ベルト21の張架ローラ、外ローラ41のそれぞれの回転軸線方向は互いに略平行である。
【0032】
2.オフセット
図2は、2次転写ニップN2の近傍での記録材Pの挙動を説明するための模式的な断面図(内ローラ26の回転軸線方向と略直交する断面)である。なお、
図2において、本実施例の画像形成装置100のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については同一の符号を付している。
【0033】
前述のように、2次転写ニップN2の形状(2次転写ニップN2の位置)や記録材Pの剛度によって、記録材Pの搬送方向に関して2次転写ニップN2の上流近傍や下流近傍での記録材Pの挙動が変わる。そして、例えば、記録材Pが、剛度の小さい記録材Pの一例である「薄紙」の場合に、中間転写ベルト21からの記録材Pの分離不良によりジャム(紙詰まり)が発生することがある。この現象は、記録材Pのコシが弱いことによって記録材Pが中間転写ベルト21に貼り付きやすくなるため、記録材Pの剛度が小さい場合に顕著となる。
【0034】
つまり、
図2に示す断面において、内ローラ26と2次転写前ローラ29とで張架されて形成される中間転写ベルト21の張架面を示す線をニップ前張架線Tとする。なお、2次転写前ローラ29は、複数の張架ローラのうち内ローラ26よりも中間転写ベルト21の回転方向に関して上流で内ローラ26に隣接して配置された上流ローラの一例である。また、同断面において、内ローラ26の回転中心と外ローラ41の回転中心とを通る直線をニップ中心線Lcとする。また、同断面において、ニップ中心線Lcと略直交する線をニップ線Lnとする。なお、
図2は、ニップ前張架線Tに沿う方向に関して内ローラ26の回転中心よりも外ローラ41の回転中心の方が中間転写ベルト21の回転方向の上流側にオフセットされて配置された状態を示している。
【0035】
このとき、記録材Pは、2次転写ニップN2で内ローラ26と外ローラ41との間に挟持された状態では、ほぼニップ線Lnに沿って姿勢を保とうとする傾向がある。そのため、概して、ニップ前張架線Tに沿う方向に関して内ローラ26の回転中心と外ローラ41の回転中心とが近い場合には、
図2中の破線Aで示すように、記録材Pの排出角度θが小さくなる。つまり、記録材Pの搬送方向の先端は、2次転写ニップN2から排出される際に、中間転写ベルト21の近くに排出されるような姿勢となる。これにより、記録材Pが中間転写ベルト21に貼り付きやすくなる。これに対して、概して、ニップ前張架線Tに沿う方向に関して内ローラ26の回転中心よりも外ローラ41の回転中心の方が中間転写ベルト21の回転方向の上流側に配置されるほど、
図2中の実線で示すように、記録材Pの排出角度θが大きくなる。つまり、記録材Pの搬送方向の先端は、2次転写ニップN2から排出される際に、中間転写ベルト21から離れる方向に排出されるような姿勢となる。これにより、記録材Pは中間転写ベルト21に貼り付きにくくなる。
【0036】
一方、前述のように、例えば、記録材Pが、剛度の大きい記録材Pの一例である「厚紙」の場合には、記録材Pの搬送方向の後端が搬送ガイド27を抜けた際に、記録材Pの搬送方向の後端部が中間転写ベルト21に衝突することがある。これにより、記録材Pの搬送方向の後端部に画像不良が発生することがある。この現象は、記録材Pのコシが強いことによって記録材Pの搬送方向の後端部が強い勢いで中間転写ベルト21に衝突しやすくなるため、記録材Pの剛度が大きい場合に顕著となる。
【0037】
つまり、上述のように、
図2に示す断面において、記録材Pは、2次転写ニップN2で内ローラ26と外ローラ41との間に挟持された状態では、ほぼニップ線Lnに沿って姿勢を保とうとする傾向がある。そのため、概して、ニップ前張架線Tに沿う方向に関して内ローラ26の回転中心よりも外ローラ41の回転中心の方が中間転写ベルト21の回転方向の上流側に配置されるほど、ニップ線Lnはニップ前張架線Tに食い込むような形となる。その結果、記録材Pの搬送方向の後端が搬送ガイド27を抜けた際に、
図2中の破線Bで示すように、記録材Pの搬送方向の後端部が中間転写ベルト21に衝突するようになり、記録材Pの搬送方向の後端部に画像不良が発生しやすくなる。これに対して、概して、ニップ前張架線Tに沿う方向に関して内ローラ26の回転中心と外ローラ41の回転中心とを近くすれば、記録材Pの搬送方向の後端が搬送ガイド27から抜けた際に中間転写ベルト21に衝突することは抑制される。これにより、記録材Pの搬送方向の後端部の画像不良は発生しにくくなる。
【0038】
したがって、記録材Pの中間転写ベルト21からの分離性の向上と、記録材Pの搬送方向の後端部の画像不良の抑制と、を図るためには、次のようにすることが有効である。つまり、記録材Pの種類に応じて、内ローラ26の周方向(中間転写ベルト21の回転方向)に関する内ローラ26と外ローラ41との相対位置を変更して、2次転写ニップN2の形状(2次転写ニップN2の位置)を変更することである。
【0039】
図2を参照して、この内ローラ26と外ローラ41との相対位置を示すオフセット量Xの定義について説明する。
図2に示す断面において、中間転写ベルト21が掛け回される側の内ローラ26と2次転写前ローラ29との共通の接線を基準線L1とする。基準線L1は、上記ニップ前張架線Tに対応する。また、同断面において、内ローラ26の回転中心を通り基準線L1と略直交する直線を内ローラ中心線L2とする。また、同断面において、外ローラ41の回転中心を通り基準線L1と略直交する直線を外ローラ中心線L3とする。このとき、内ローラ中心線L2と外ローラ中心線L3との間の距離(垂直距離)をオフセット量X(ただし、外ローラ中心線L3が内ローラ中心線L2よりも中間転写ベルト21の回転方向の上流側にあるとき正の値)と定義する。オフセット量Xは、負の値、0、正の値をとることができる。オフセット量Xを大きくすることで、中間転写ベルト21の回転方向に関する2次転写ニップN2の幅が中間転写ベルト21の回転方向の上流側に広がる。つまり、内ローラ26と中間転写ベルト21との接触領域の中間転写ベルト21の回転方向の上流側の端部よりも、外ローラ41と中間転写ベルト21との接触領域の中間転写ベルト21の回転方向の上流側の端部の方がより上流側に位置するようになる。このように、内ローラ26又は外ローラ41の少なくとも一方の位置を変更して、内ローラ26の周方向に関する内ローラ26と外ローラ41との相対位置を変更させて、2次転写ニップ(転写部)N2の位置を変更可能である。
【0040】
図2において、外ローラ41は仮想的に基準線L1(ニップ前張架線T)に対して変形せずに接するように表されている。しかし、外ローラ41の最外層の材質はゴムやスポンジなどの弾性体であり、実際には押圧ばね44によって内ローラ26に向かう方向に押圧されて変形している。外ローラ41が、内ローラ26に対して中間転写ベルト21の回転方向の上流側にオフセットされて配置され、内ローラ26との間で中間転写ベルト21を挟持するように押圧ばね44によって押圧されると、略S字形状の2次転写ニップN2が形成される。そして、搬送ガイド27にガイドされて送られてくる記録材Pの姿勢もその2次転写ニップN2の形状にならって決定される。オフセット量Xが大きくなるほど、記録材Pの屈曲量が増加する。そのため、例えば記録材Pが「薄紙」の場合には、オフセット量Xを大きくすることで、2次転写ニップN2を通過した後の記録材Pの中間転写ベルト21からの分離性を向上させることができる。しかし、オフセット量Xが大きいと、記録材Pの屈曲量が大きいことで、例えば記録材Pが「厚紙」の場合には、記録材Pの搬送方向の後端が搬送ガイド27を抜けた際に記録材Pの搬送方向の後端部の中間転写ベルト21への衝突が発生しやすくなる。これにより、記録材Pの搬送方向の後端部の画質を低下させる要因となる。そのため、この場合にはオフセット量Xを小さくすればよい。
【0041】
本実施例では、画像形成装置100は、内ローラ26又は外ローラ41の少なくとも一方の位置を変更してオフセット量Xを変更する。特に、本実施例では、画像形成装置100は、内ローラ26の位置を変更してオフセット量Xを変更する。また、本実施例では、画像形成装置100は、記録材Pの剛度と関連する記録材Pの種類に関する情報としての記録材(紙)Pの坪量の情報に基づいて、オフセット量Xを変更する。例えば記録材Pが「厚紙」の場合には、オフセット量Xが第1のオフセット量X1となる第1の内ローラ位置に内ローラ26を配置する。そして、例えば記録材Pが「薄紙」の場合には、オフセット量Xが第1のオフセット量X1よりも大きい第2のオフセット量X2となる第2の内ローラ位置に内ローラ26を配置する。第1のオフセット量X1は、正の値、0、負の値であってよく、第2のオフセット量X2は、典型的には正の値である。本実施例では、オフセット量Xが第1のオフセット量X1の場合の内ローラ26と外ローラ41との相対位置が第1の相対位置であり、オフセット量Xが第2のオフセット量X2の場合の内ローラ26と外ローラ41との相対位置が第2の相対位置である。換言すれば、本実施例では、オフセット量Xが第1のオフセット量X1の場合の2次転写ニップN2の位置が転写部の第1の位置であり、オフセット量Xが第2のオフセット量X2の場合の2次転写ニップN2の位置が転写部の第2の位置である。
【0042】
3.オフセット機構
次に、本実施例におけるオフセット機構101について説明する。ここでは、剛度の小さい記録材Pの一例として「薄紙」、剛度の大きい記録材Pの一例として「厚紙」を用いるものとする。
図3(a)、(b)は、本実施例における2次転写ニップN2の近傍を内ローラ26の回転軸線方向の一端部側(
図1の紙面手前側)から該回転軸線方向と略平行に見た要部の概略側面図である。
図3(a)は「厚紙」の場合、
図3(b)は「薄紙」の場合の状態を示している。なお、例えば、記録材Pが「薄紙」、「厚紙」の場合とは、より詳細には、それぞれ「薄紙」、「厚紙」が2次転写ニップN2を通される場合のことをいう。
【0043】
図3(a)、(b)に示すように、本実施例では、画像形成装置100は、外ローラ41に対する内ローラ26の相対位置を変更してオフセット量Xを変更する、位置変更機構としてのオフセット機構(オフセット量変更手段)101を有する。
図3(a)、(b)には、内ローラ26の回転軸線方向の一端部の構成を示しているが、他端部の構成も同様(内ローラ26の回転軸線方向の中央に対して略対称)である。
【0044】
内ローラ26の回転軸線方向の両端部は、支持部材としての内ローラホルダ38によって回転可能に支持されている。内ローラホルダ38は、内ローラ回動軸38aを中心に回動可能なように、中間転写ベルトユニット20のフレームなどに支持されている。このように、内ローラホルダ38を内ローラ回動軸38aの周りに回動させ、内ローラ26を内ローラ回動軸38aの周りに回動させることで、外ローラ41に対する内ローラ26の相対位置を変更してオフセット量Xを変更することができるようになっている。
【0045】
内ローラホルダ38は、作動部材としてのオフセットカム39の作用により回動するように構成されている。オフセットカム39は、オフセットカム回動軸39aを中心に回動可能なように、中間転写ベルトユニット20のフレームなどに支持されている。オフセットカム39は、駆動源としてのオフセットカム駆動モータ113からの駆動を受けてオフセットカム回動軸39aを中心に回動可能である。また、オフセットカム39は、内ローラホルダ38に設けられたオフセットカムフォロワ(アーム部)38cと接触している。また、内ローラホルダ38は、オフセットカムフォロワ38cがオフセットカム39と係合する方向に回動するように、後述するように本実施例では中間転写ベルト21のテンションによって付勢されている。ただし、これに限定されるものではなく、内ローラホルダ38は、オフセットカムフォロワ38cがオフセットカム39と係合する方向に回動するように、付勢手段としての付勢部材(弾性部材)であるばねなどで付勢されてもよい。また、本実施例では、画像形成装置100には、内ローラ26と外ローラ41との相対位置(本実施例では内ローラ26の位置)を検知する検知手段として、オフセットカム39の回動方向の位置を検知するオフセットカム位置センサ37が設けられている。オフセットカム位置センサ37は、例えば、オフセットカム39又はオフセットカム39と同軸上に設けられた指示部としてのフラグ、検知部としてのフォトインタラプタなどを有して構成することができる。
【0046】
このように、本実施例では、内ローラホルダ38、オフセットカム39、オフセットカム駆動モータ113、オフセットカム位置センサ37などを有してオフセット機構101が構成されている。
【0047】
図3(a)に示すように、「厚紙」の場合には、オフセットカム39がオフセットカム駆動モータ113によって駆動されて例えば時計回りに回動する。これにより、内ローラ回動軸38aを中心に反時計回りに内ローラホルダ38が回動して、外ローラ41に対する内ローラ26の相対位置が決められる。これにより、オフセット量Xが相対的に小さい第1のオフセット量X1である第1の内ローラ位置に、内ローラ26が配置された状態となる。そして、2次転写ニップN2内での記録材Pの屈曲を低減することができる。その結果、前述のように、「厚紙」の搬送方向の後端部の画質の低下を抑制することができる。
【0048】
また、
図3(b)に示すように、「薄紙」の場合には、オフセットカム39がオフセットカム駆動モータ113によって駆動されて例えば反時計回りに回動する。これにより、内ローラ回動軸38aを中心に時計回りに内ローラホルダ38が回動して、外ローラ41に対する内ローラ26の相対位置が決められる。これにより、オフセット量Xが相対的に大きい第2のオフセット量X2である第2の内ローラ位置に、内ローラ26が配置された状態となる。そして、2次転写ニップN2内で記録材Pが屈曲しやすくなる。その結果、前述のように2次転写ニップN2を通過した後の「薄紙」の中間転写ベルト21からの分離性が向上する。
【0049】
本実施例では、記録材Pの坪量M(gsm)に基づいて、オフセット量X(X1、X2)が、例えば次のような2パターンとなるように設定されている。なお、gsmはg/m2を意味する。
(a)M≧52gsm:X1=-1.3mm
(b)M<52gsm:X2=+2.5mm
【0050】
本実施例では、
図3(a)に示す上記設定(a)における内ローラ26の位置(内ローラ26と外ローラ41との相対位置)が内ローラ26(内ローラ26と外ローラ41との相対位置)のホームポジションである。ここで、ホームポジションとは、画像形成装置100がスリープ状態(後述)又は主電源がOFFされた状態のときの位置のことをいう。ただし、これに限定されるものではなく、
図3(b)に示す上記設定(b)における内ローラ26の位置を内ローラ26のホームポジションとしてもよい。
【0051】
オフセット量X、及び各オフセット量Xに割り当てる記録材Pの種類(ここでは、記録材Pの坪量)は、上述の具体例に限定されるものではない。これらは、前述したような記録材Pの中間転写ベルト21からの分離性の向上や2次転写ニップN2の近傍で発生する画像不良の抑制の観点から、実験などを通して適宜設定することができる。これに限定されるものではないが、オフセット量Xは、-3mm~+3mm程度が好適である。このような設定により、良好な転写性を得ることができる。
【0052】
また、オフセット量Xのパターンは2パターンであることに限定されるものではなく、3パターン以上が設定されていてもよい。そして、本実施例に準じて、記録材Pの剛度と関連する記録材Pの種類に関する情報としての記録材Pの坪量の情報などに基づいて、3パターン以上の設定から適切な設定を選択するようにすることができる。
【0053】
ここで、本実施例では、
図3に示す断面において、内ローラホルダ38は、中間転写ベルト21のテンションによって、内ローラ回動軸38aを中心に反時計周りのモーメントが常に加えられている。つまり、本実施例では、内ローラホルダ38は、中間転写ベルト21のテンションによって、オフセットカムフォロワ38cがオフセットカム39と係合するように回動する方向のモーメントが常に加えられている。また、本実施例では、
図3に示す断面において、内ローラ回動軸38aは、内ローラ26の回転中心と外ローラ41の回転中心とを結んだ直線(ニップ中心線)Lcに対して、記録材Pの搬送方向の下流側に配置されている。これにより、外ローラ41が中間転写ベルト21を介して内ローラ26に当接させられている場合、内ローラホルダ38が外ローラ41から受ける反力も、
図3中の反時計回りのモーメントとなる。このような構成により、別途ばねなどの付勢部材を用いることなく、カム機構を構成することができる。
【0054】
また、中間転写ベルト21の交換などのために、中間転写ベルトユニット20に対して中間転写ベルト21を装着する又は取り外す操作の作業性を阻害しないように、内ローラホルダ38は中間転写ベルト21の張架面の内側に配置することが望ましい。そのため、
図3に示す断面において、内ローラ回動軸38aは、上記直線(ニップ中心線)Lcと、ニップ後張架線Uとの間の領域Aに配置することが望ましい。ここで、ニップ後張架線Uは、
図3に示す断面において、内ローラ26と駆動ローラ22(
図1参照)とで張架されて形成される中間転写ベルト21の張架面を示す線である。なお、駆動ローラ22は、複数の張架ローラのうち内ローラ26よりも中間転写ベルト21の回転方向に関して下流で内ローラ26に隣接して配置された下流ローラの一例である。
【0055】
図4は、内ローラホルダ38の近傍を内ローラ26の回転軸線方向の一端部側(
図1の紙面手前側)から該回転軸線方向と略平行に見た概略側面図である。
図4中の実線で示した状態が、「厚紙」に対応する内ローラ26のホームポジションの状態である。この状態では、上述のように、中間転写ベルト21のテンションと外ローラ41から受ける反力により、内ローラホルダ38が内ローラ回動軸38aを中心に反時計回りのモーメントを受ける。そして、内ローラホルダ38に設けられた、内ローラ26と同軸円筒状の突き当て部38bが第1の位置決め部40aに突き当たる。これにより、第1のオフセット量X1(=-1.3mm)の位置に内ローラ26が位置決めされる。
図4中の二点鎖線で示した状態が、「薄紙」の場合の状態である。オフセットカム39が回転することで、オフセットカム39が内ローラホルダ38のアーム部38cに接触してこれを押圧することで、内ローラホルダ38が内ローラ回動軸38aを中心に時計回りに回動する。そして、突き当て部38bが第2の位置決め部40bに突き当たる。これにより、第2のオフセット量X2(=+2.5mm)の位置に内ローラ26が位置決めされる。なお、第1、第2の位置決め部40a、40bは、中間転写ベルトユニット20のフレームなどに設けられている。
【0056】
4.表面速度比と画像擦れ
次に、2次転写ニップN2における中間転写ベルト21と記録材Pとの表面速度比と画像擦れについて説明する。
【0057】
図5は、2次転写ニップN2における中間転写ベルト21及び記録材Pの概略断面(内ローラ26の回転軸線方向と略直交する断面)を示す。
【0058】
中間転写ベルト21の搬送速度をVb、記録材Pの搬送速度をVp、2次転写ニップN2における中間転写ベルト21の表面速度をVbs、2次転写ニップN2における記録材Pの表面速度をVps、中間転写ベルトの厚さをTb、記録材Pの厚さをTpとする。
【0059】
ここで、中間転写ベルト21の搬送速度Vbは、中間転写ベルト21の内周面(裏面)の移動速度である。そして、中間転写ベルト21の搬送速度Vbは、具体的にはベルト駆動部112による中間転写ベルト21の駆動速度、より詳細には駆動ローラ22の周速度(回転速度、回転数)で代表することができる。また、記録材Pの搬送速度Vpは、記録材Pの外ローラ41と接触する側の面(裏面)の移動速度である。そして、記録材Pの搬送速度Vpは、具体的にはレジスト駆動部114によるレジストローラ13の駆動速度、より詳細にはレジストローラ13の周速度(回転速度、回転数)で代表することができる。また、2次転写ニップN2における中間転写ベルト21の表面速度Vbsは、2次転写ニップN2における中間転写ベルト21の外周面(オモテ面)の移動速度である。また、2次転写ニップN2における記録材Pの表面速度は、2次転写ニップN2における記録材Pの中間転写ベルト21と接触する側の面(オモテ面)の移動速度である。
【0060】
前述したように、2次転写ニップN2では、2次転写外ローラ41に押圧されて、中間転写ベルト21及び記録材Pに屈曲形状がつく。この屈曲による曲率をRとする。
【0061】
このとき、2次転写ニップN2における中間転写ベルト21の表面速度Vbsと記録材Pの表面速度Vpsとの比である表面速度比Vps/Vbsは、下記式(1)で表せる。
Vps/Vbs={1+(Tb+Tp)}×R×(Vp/Vb) ・・・(1)
【0062】
上記式(1)から、曲率Rが大きいほど表面速度比Vps/Vbsが大きくなることがわかる。
【0063】
図6は、本実施例の構成における、オフセット量Xの違いによる、2次転写ニップN2の周辺の各位置における記録材P及び中間転写ベルト21の表面速度の違いを示すグラフ図である。
図6の横軸は、中間転写ベルト21と記録材Pとの接触開始点を0とした場合の記録材Pの搬送方向の座標(記録材Pの搬送方向の下流側がマイナス)を示す。
図6の縦軸は、各座標における記録材Pの表面速度Vps、中間転写ベルト21の表面速度Vbsを示す。Vps(2.5)、Vps(-1.3)は、それぞれオフセット量Xが+2.5mm、-1.3mmの場合の記録材Pの表面速度Vpsを表す。また、Vbs(2.5)、Vbs(-1.3)は、それぞれオフセット量Xが+2.5mm、-1.3mmの場合の中間転写ベルト21の表面速度Vbsを表す。また、
図6では、記録材Pの表面速度Vps、中間転写ベルト21の表面速度Vbsは、それぞれ2次転写ニップN2の外部(屈曲がつかない条件)における速度を基準速度10と設定した場合の速度比で表している。つまり、Vps≒Vp、Vbs≒Vbとみなせる位置におけるVps、Vbsを基準速度10とした場合の速度比で表している。また、
図6では、レジストローラ13の駆動速度Vpはオフセット量Xに関わらず、一定値であり、中間転写ベルト21の駆動速度Vbに対して僅かに大きい値としている。
【0064】
Vbs(2.5)は、中間転写ベルト21と記録材Pとの接触開始点から記録材Pの搬送方向の下流側に3mm付近の区間にかけて10を下回っている。これは、次のような理由による。
図7(a)は、オフセット量Xが正の値の場合の2次転写ニップN2の形状を説明するための模式的な断面図(内ローラ26の回転軸線方向と略直交する断面)である。オフセット量Xが正の値の場合、すなわち、外ローラ中心線L3が内ローラ中心線L2よりも中間転写ベルト21の回転方向の上流側にある場合、次のようになる。つまり、内ローラ26と中間転写ベルト21との接触開始点よりも中間転写ベルト21の回転方向の上流側における、外ローラ41と中間転写ベルト21との接触領域(
図7(a)中の領域B)が広がる。この領域Bにおいて、中間転写ベルト21の外周面のニップ形状に外ローラ41を中心とした曲率Rがつく。そのため、2次転写ニップN2、特に、上記領域Bにおいて、その曲率の影響により中間転写ベルト21の厚さの分だけVbsが低速度となり、
図6に示すようなVbsの推移となる。
【0065】
一方、Vbs(-1.3)は、10以上で推移する。これは、次のような理由による。
図7(b)は、オフセット量Xが0又は負の値(特に負の値)の場合の2次転写ニップN2の形状を説明するための模式的な断面図(内ローラ26の回転軸線方向と略直交する断面)である。オフセット量Xが0又は負の値(特に負の値)の場合、すなわち、外ローラ中心線L3が内ローラ中心線L2と同じ位置か又は内ローラ中心線L2よりも中間転写ベルト21の回転方向の下流側にある場合、
図7(a)の場合のような領域Bが無い。つまり、中間転写ベルト21の外周面のニップ形状に外ローラ41を中心とした曲率Rがつく領域がない。その代わりに、中間転写ベルト21の表面のニップ形状には内ローラ26を中心とした曲率がつく。そのため、2次転写ニップN2において、その曲率の影響により中間転写ベルト21の厚さの分だけVbsが高速度となり、
図6に示すようなVbsの推移となる。
【0066】
これに対し、
図6に示すように、Vpsに関しては、厚さの影響が少ないことなどにより、2次転写ニップN2内においてVbsほどの速度変化がなく、オフセット量Xによる差もVbsよりも相対的に少ない。
【0067】
以上から、2次転写ニップN2における表面速度比Vps/Vbsがオフセット量Xによって異なることがわかる。オフセット量Xによる2次転写ニップN2における中間転写ベルト21の表面速度Vbsの変動が相対的に大きいのに対して、オフセット量Xによる2次転写ニップN2における記録材Pの表面速度Vpsの変動が小さいためである。特に、オフセット量Xが正の値の場合は、表面速度比Vps/Vbsがより大きくなるため、中間転写ベルト21の表面速度と記録紙Pの表面速度との間の速度差に起因する、トナー像が擦れたような画像不良である「画像擦れ」が発生しやすくなる。
【0068】
上述のような傾向は弾性層を有する中間転写ベルト21を用いる場合には、中間転写ベルト21のニップ形状に曲率がつきやすいこと、厚さが比較的厚いことなどから、より顕著となりやすい。なお、ここでは、オフセット量Xが正の値の場合と0又は負の値の場合とを比較して説明しているが、正の値の異なるオフセット量Xの間でも同様の傾向(オフセット量Xが大きいほどVbsが低速度となり表面速度比Vps/Vbsが大きくなる)がある。
【0069】
そこで、本実施例では、画像形成装置100は、オフセット量Xに応じて、中間転写ベルト21の搬送速度Vbと記録材Pの搬送速度Vpとの比(ここでは、単に「搬送速度比」ともいう。)Vp/Vbを変更する。上述のように、中間転写ベルト21の搬送速度Vbは、ベルト駆動部112による中間転写ベルト21の駆動速度で代表でき、記録材Pの搬送速度は、レジスト駆動部114によるレジストローラ13の駆動速度で代表できる。そのため、上記搬送速度比は、ベルト駆動部112による中間転写ベルト21の駆動速度Vbとレジスト駆動部114によるレジストローラ13の駆動速度Vpとの比(ここでは、単に「駆動速度比」ともいう。)Vp/Vbと言い換えることができる。特に、本実施例では、画像形成装置100は、中間転写ベルト21の搬送速度Vbは、記録材Pの坪量が所定範囲であれば、坪量が変更されても同一速度(略同一)に設定されている。本実施例では、後述するように、記録材Pの坪量が所定の坪量以下(300gsm以下)であれば、「薄紙」と「厚紙」で中間転写ベルト21の搬送速度Vbは同一に設定されている。そして、本実施例では、中間転写ベルト21の搬送速度Vbが略同一である場合に、オフセット量Xに応じて、記録材Pの搬送速度Vpを変更して、搬送速度比Vp/Vbを変更する。画像形成装置100は、中間転写ベルト21の搬送速度Vbが異なる場合でも、オフセット量Xが略同一であれば、記録材Pの搬送速度Vpを変更して、搬送速度Vp/Vbを略同一とすることができる。具体的には、本実施例では、画像形成装置100は、オフセット量Xが第1のオフセット量X1の場合の搬送速度比Vp/Vbよりも、オフセット量Xが第1のオフセット量X1よりも大きい第2のオフセット量X2の場合の搬送速度比Vp/Vbの方を小さくする。特に、本実施例では、画像形成装置100は、中間転写ベルト21の搬送速度Vbが略同一である場合に、オフセット量Xが第1のオフセット量X1の場合の記録材Pの搬送速度Vp(レジストローラ13の駆動速度Vp)よりも、オフセット量Xが第2のオフセット量X2の場合の記録材Pの搬送速度Vp(レジストローラ13の駆動速度Vp)の方を小さくする。これにより、オフセット量Xが第1のオフセット量X1の場合の搬送速度比Vp/Vbよりも、オフセット量Xが第2のオフセット量X2の場合の搬送速度比Vp/Vbの方を小さくする。より具体的には、本実施例では、オフセット量Xが-1.3mm(第1のオフセット量X1)の場合の記録材Pの搬送速度Vp(-1.3)よりも、オフセット量Xが+2.5mm(第2のオフセット量X2)の場合の記録材Pの搬送速度Vp(2.5)の方を低速度とする。そして、オフセット量Xが-1.3mm(第1のオフセット量X1)の場合の搬送速度比Vp(-1.3)/Vb(-1.3)よりも、オフセット量Xが+2.5mm(第2のオフセット量X2)の場合の搬送速度比Vp(2.5)/Vb(2.5)の方を小さくする。これにより、オフセット量X(X1、X2)の変更による2次転写ニップN2における表面速度比Vps/Vbsの変動を小さくして、「画像擦れ」を抑制する。
【0070】
ここでは、記録材Pの搬送速度(レジストローラ13の駆動速度)Vpを「レジ速」ともいう。また、中間転写ベルト21の搬送速度(中間転写ベルト21の駆動速度)Vbを「プロセススピード」ともいう。本実施例では、レジ速Vpは、プロセススピードVbごとに、オフセット量Xが内ローラ26のホームポジションに対応する第1のオフセット量X1の場合の値がデフォルト値として設定されている。また、本実施例では、プロセススピードVbは、等速がデフォルト値として設定されている。
【0071】
なお、レジ速をデフォルト値から変更した場合は、2次転写時に搬送方向に関する画像の倍率変動が生じる。そのため、本実施例では、制御部150(
図8)は、画像形成装置100に送信されたデジタルの画像情報(画像データ)のうち、搬送方向に関する画像の倍率に関する情報を修正することで、上記倍率変動を抑制するように補正を行う。ここでは、この補正のことを「デジレジ補正」ともいう。なお、デジレジ補正の具体的な方法自体は、例えば公知のものから利用可能なものを適宜用いることができる。概略、レジ速を小さくした場合には、2次転写時に搬送方向に関する画像の倍率が縮小されるので、予め中間転写ベルト21上に形成する画像の搬送方向に関する倍率を拡大すればよい。逆に、レジ速を大きくした場合には、2次転写時に搬送方向に関する画像の倍率が拡大されるので、予め中間転写ベルト21上に形成する画像の搬送方向に関する倍率を縮小すればよい。
【0072】
本実施例では、画像形成装置100は、プロセススピードVbとして等速と半速とを持っている。等速時は、プロセススピードVbが345.9mm/sであり、レジ速Vpが348.0mm/sである。半速時は、プロセススピードVbが172.9mm/sであり、レジ速Vpが174.0mm/sである。なお、本実施例では、Tb=355μm、Tp=100μmである。表1は、本実施例の構成において、実際の印刷動作を行って「画像擦れ」の発生有無を目視で確認した結果(等速時)を示している。
【0073】
【0074】
表1からわかるように、例えば等速時において、オフセット量Xが+2.5mm(第2のオフセット量X2)の場合は、デフォルト値のレジ速Vp(348.0mm/s)では「画像擦れ」が発生することがある。したがって、本実施例では、この「画像擦れ」を抑制するようにレジ速Vpを変更して搬送速度比Vp/Vbを変更する制御を行う。
【0075】
5.制御態様
図8は、本実施例の画像形成装置100の要部の制御態様を示す概略ブロック図である。制御手段としての制御部(コントローラ)150は、演算処理を行う中心的素子である演算制御手段としてのCPU151、記憶手段としてのROM、RAMなどのメモリ(記憶媒体)152、インターフェース部153などを有して構成される。書き換え可能なメモリであるRAMには、制御部150に入力された情報、検知された情報、演算結果などが格納され、ROMには制御プログラム、予め求められたデータテーブルなどが格納されている。CPU151とメモリ152とは互いにデータの転送や読込みが可能となっている。インターフェース部153は、制御部150とこれに接続された機器との間の信号の入出力(通信)を制御する。
【0076】
制御部150には、画像形成装置100の各部(画像形成部10、中間転写ベルト21及び記録材Pの搬送に関する部材の駆動装置、各種電源など)が接続されている。例えば、制御部150には、オフセット機構101、ドラム駆動部111、ベルト駆動部112、レジスト駆動部114、各種高圧電源(帯電電圧、現像電圧、1次転写電圧、2次転写電圧)などが接続されている。また、制御部150には、オフセットカム位置センサ37などの各種センサの検知結果を示す信号(出力値)が入力される。オフセットカム位置センサ37の出力値、すなわち、内ローラ26の位置(内ローラ26と外ローラ41との相対位置)に関する情報)は、メモリ152に記憶される。また、制御部150には、画像形成装置100に設けられた操作部(操作パネル)160が接続されている。操作部160は、制御部150の制御によって情報を表示する表示手段、及びユーザやサービス担当者などの操作者による操作によって制御部150に情報を入力する入力手段を有する。操作部160は、表示手段及び入力手段の機能を有するタッチパネルを有して構成されていてよい。また、制御部150には、画像形成装置100に設けられるか又は画像形成装置100に接続された画像読取装置(図示せず)や、画像形成装置100に接続されたパーソナルコンピュータなどの外部装置200が接続されていてよい。
【0077】
制御部150は、ジョブの情報に基づいて画像形成装置100の各部を制御して画像形成を行なわせる。ジョブの情報は、操作部160や外部装置200から入力される、開始指示(開始信号)や、記録材Pの種類などの印刷動作条件に関する情報(指令信号)を含む。また、ジョブの情報は、画像読取装置、外部装置200あるいは操作部160から入力される画像情報(画像信号)を含む。なお、記録材の種類に関する情報(単に「記録材に関する情報」ともいう。)とは、普通紙、上質紙、光沢紙、コート紙、エンボス紙、厚紙、薄紙などの一般的な特徴に基づく属性(いわゆる、紙種カテゴリー)、坪量、厚さ、サイズなどの数値や数値範囲、あるいは銘柄(メーカー、品番などを含む。)などの、記録材を区別可能な任意の情報を包含するものである。本実施例では、記録材Pの種類に関する情報は、記録材Pの剛度と関連する記録材Pの種類に関する情報、特に、一例として記録材Pの坪量の情報を含むものとする。操作部160から印刷動作条件に関する情報が入力される場合は、操作部160が、トナー像を転写する記録材Pの坪量に関する情報を制御部150に入力する入力部として機能する。また、パーソナルコンピュータなどの外部装置200から印刷動作条件に関する情報が入力される場合は、インターフェース部153が、トナー像を転写する記録材Pの坪量に関する情報を制御部150に入力する入力部として機能する。
【0078】
ここで、画像形成装置100は、1つの開始指示により開始される、単一又は複数の記録材Pに画像を形成して出力する一連の動作であるジョブ(印刷ジョブ、プリントジョブ)を実行する。ジョブは、一般に、画像形成工程(印刷動作、プリント動作、画像形成動作)、前回転工程、複数の記録材Pに画像を形成する場合の紙間工程、及び後回転工程を有する。画像形成工程は、実際に記録材Pに形成して出力する画像の静電像の形成、トナー像の形成、トナー像の1次転写、2次転写を行う期間であり、画像形成時(画像形成期間)とはこの期間のことをいう。より詳細には、これら静電像の形成、トナー像の形成、トナー像の1次転写、2次転写の各工程を行う位置で、画像形成時のタイミングは異なる。前回転工程は、開始指示が入力されてから実際に画像を形成し始めるまでの、画像形成工程の前の準備動作を行う期間である。紙間工程は、複数の記録材Pに対する画像形成を連続して行う際(連続画像形成)の記録材Pと記録材Pとの間に対応する期間である。後回転工程は、画像形成工程の後の整理動作(準備動作)を行う期間である。非画像形成時(非画像形成期間)とは、画像形成時以外の期間であって、上記前回転工程、紙間工程、後回転工程、更には画像形成装置100の電源投入時又はスリープ状態からの復帰時の準備動作である前多回転工程などが含まれる。なお、スリープ状態(休止状態)とは、例えば制御部150(又はその一部)以外の画像形成装置100の各部への電力の供給が停止され、スタンバイ状態よりも電力消費量が少なくされた状態である。本実施例では、非画像形成時に、オフセット機構101が内ローラ26又は外ローラ41の少なくとも一方(特に、本実施例では内ローラ26)の位置を変更してオフセット量を変更する動作(ここでは、「オフセット動作」ともいう。)を行う。
【0079】
6.制御手順
図9は、本実施例におけるジョブの制御手順の一例の概略を示すフローチャート図である。ここでは、内ローラ26がホームポジションにあり、オフセット量Xが第1のオフセット量X1となっている状態から、1枚の記録材Pに画像を形成する1つのジョブを実行する場合について説明する。また、ここでは、操作者が装置本体110の操作部160から画像形成装置100にジョブを実行させる場合を例として説明する。なお、
図9には、オフセット動作やレジ速の変更に注目した制御手順の概略が示されており、ジョブを実行して画像を出力するために通常必要となる他の多くの動作は省略されている。
【0080】
まず、ユーザなどの操作者が操作部160を操作してジョブをセットすると、その情報が制御部150に通知される。制御部150は、その情報に基づいて画像形成装置100の各部に指令を送ることで、ジョブを開始させる(S101)。制御部150に送られるジョブの情報には、記録材Pの種類に関する情報が含まれる。本実施例では、記録材Pの種類に関する情報は、少なくとも記録材Pの坪量の情報を含む。記録材Pに関する情報は、記録材Pの坪量の情報の他に、記録材Pの表面性の情報、記録材Pの電気抵抗値の情報などの情報を含んでいてよい。なお、制御部150は、操作者の操作により操作部160(あるいは外部装置200)から直接的に入力(複数の選択肢から選択することも含む。)された記録材Pの種類に関する情報を取得することができる。また、制御部150は、操作者の操作により操作部160(あるいは外部装置200)から入力された、当該ジョブで記録材Pを送出する記録材収納庫11の情報に基づいて、記録材Pの種類に関する情報を取得することもできる。この場合、制御部150は、例えば複数設けられた記録材収納庫11のそれぞれに対して予め関係付けられてメモリ152に記憶されている記録材Pの種類に関する情報から、記録材Pの種類に関する情報を取得することができる。ここで、記録材Pの種類に関する情報を登録する際には、予めメモリ152やネットワークを通じて制御部150と接続された記憶装置に記憶されている記録材Pの種類のリストの中から該当するものを選択するようになっていてよい。制御部150は、ジョブに用いる記録材Pの種類に関する情報を取得すると、ジョブの印刷動作条件を、記録材Pの種類ごとに予め定められた印刷動作条件に設定する。表2は、本実施例において印刷動作条件として記録材Pの坪量に応じて予め定められた、プロセススピード、オフセット量、レジ速の設定の一例を示す。表2に示すような印刷動作条件の情報は、予めメモリ152に記憶されている。
【0081】
【0082】
次に、制御部150は、ジョブに用いる記録材Pの坪量が52gsm(第1の閾値)以上であるか否かを判定する(S102)。制御部150は、S102で坪量が52gsm以上であると判断した場合は、オフセット量Xは内ローラ26のホームポジションに対応するデフォルト値である-1.3mm(第1のオフセット量X1)のままでよいため、オフセット量Xの変更は行わない。次に、制御部150は、ジョブに用いる記録材Pの坪量が300gsm(第2の閾値)以上であるか否かを判定する(S103)。制御部150は、S103で坪量が300gsm未満であると判断した場合は、メモリ152内のプロセススピードの設定をデフォルト値である等速のままとして変更せず、S105の処理に進む。一方、制御部150は、S103で坪量が300gsm以上であると判断した場合は、プロセススピードをデフォルト値である等速から半速に変更するように、メモリ152内のプロセススピードの設定を変更する(S104)。また、S104において、制御部150は、レジ速を、半速のプロセススピードに対するデフォルト値である174.0mm/sに変更するように、メモリ152内のレジ速の設定を変更する。その後、制御部150は、印刷動作を開始し(S105)、操作者がセットした所定の印刷枚数分の印刷動作が完了した後に印刷動作を終了する(S106)。印刷動作の終了後に、制御部150は、メモリ152内のプロセススピードの設定をデフォルト値である等速に戻して(S107)、ジョブを終了する(S108)。
【0083】
一方、制御部150は、S102で坪量が52gsm以上ではない、すなわち、52gsm未満であると判断した場合は、オフセット機構101(より詳細にはオフセットカム駆動モータ113)に指令を送り、オフセット機構101の駆動をONして、オフセット量Xを+2.5mm(第2のオフセット量X2)に変更する(S109)。その後、制御部150は、オフセット機構101に指令を送り、オフセット機構101の駆動をOFFする(S110)。また、制御部150は、レジ速を、等速のプロセススピードに対するデフォルト値である348.0mm/sから減速した344.5mm/sに変更するように、メモリ152内のレジ速の設定を変更する(S111)。なお、制御部150は、S102で坪量が52gsm未満であると判断した場合は、プロセススピードはデフォルト値である等速のままでよいため、メモリ152内のプロセススピードの設定の変更は行わない。その後、制御部150は、印刷動作を開始し(S112)、操作者がセットした所定の印刷枚数分の印刷動作が完了した後に印刷動作を終了する(S113)。印刷動作の終了後に、制御部150は、オフセット機構101に指令を送り、オフセット機構101の駆動をONして、オフセット量Xをデフォルト値である-1.3mmに変更する(S114)。その後、制御部150は、オフセット機構101に指令を送り、オフセット機構101の駆動をOFFする(S115)。また、制御部150は、メモリ152内のレジ速の設定をデフォルト値である等速に戻して(S116)、ジョブを終了する(S108)。なお、制御部150は、レジ速をデフォルト値から変更した場合には、前述のデジレジ補正により画像倍率を補正して印刷動作を行う。
【0084】
図9の制御手順では、1枚の記録材Pに画像を形成するジョブを例に説明した。複数の記録材Pに連続して画像を形成する連続画像形成のジョブにおいて、ジョブの途中で記録材Pの種類が変わり、オフセット量Xを変更する必要がある場合は、次のようにすればよい。つまり、紙間工程において、オフセット量Xを変更して、変更後のオフセット量Xに応じてレジ速を変更するようにすればよい。
【0085】
ここで、オフセット量Xは、2次転写ニップN2を記録材Pが通過している際(2次転写中)に、所望のオフセット量Xとなっていればよい。つまり、オフセット量の変更は、変更後のオフセット量Xで画像を形成する記録材Pが2次転写ニップN2に到達する前に完了するようにする。典型的には、オフセット量Xの変更は、レジストローラ13によるその記録材Pの搬送、あるいは記録材収納庫11からのその記録材Pの給送が開始される前に完了するように実行される。また、レジ速(レジストローラ13の搬送速度、記録材Pの搬送速度)は、2次転写ニップN2を記録材Pが通過している際(2次転写中)に、所望のレジ速(レジストローラ13の搬送速度、記録材Pの搬送速度)となっていればよい。つまり、レジ速の変更は、変更後のレジ速で搬送する記録材Pが2次転写ニップN2に到達する前に完了するようにする。典型的には、レジ速の変更(設定の変更)は、レジストローラ13によるその記録材Pの搬送、あるいは記録材収納庫11からのその記録材Pの給送が開始される前に完了するように実行される。例えば、レジストローラ13の駆動は、その変更後のレジ速の設定で開始される。
【0086】
また、ここでは、オフセット量Xが第1のオフセット量X1の場合のレジ速(レジストローラ13の駆動速度、記録材Pの搬送速度)がデフォルト値である場合を例として説明している。そのため、オフセット量Xを第2のオフセット量X2とした場合には、レジ速は該デフォルト値よりも減速することとなる。これに対し、オフセット量Xが第2のオフセット量X2の場合のレジ速をデフォルト値としてもよい。その場合は、オフセット量Xを第1のオフセット量X1とした場合には、レジ速は該デフォルト値よりも増速することとなる。
【0087】
7.レジ速の変更に関する他の観点
次に、本実施例に従うレジ速の変更態様を他の観点から説明する。
図6中のVbsの推移からわかるように、2次転写ニップN2における中間転写ベルト21の表面速度は、内ローラ26の曲率の影響で、中間転写ベルト21が内ローラ26に巻き掛けられる部分において中間転写ベルト21の厚さの分だけ速くなる傾向がある。そして、オフセット量Xが異なる場合、表面速度が連続的に変化している中間転写ベルト21の表面のどの位置で記録材Pをグリップするかが異なることになる。そのため、オフセット量Xが大きいほど2次転写ニップN2における記録材Pの搬送速度が遅くなり、オフセット量Xが小さいほど2次転写ニップN2における記録材Pの搬送速度が速くなる傾向がある。
【0088】
2次転写ニップN2では、中間転写ベルト21の表面速度と記録材Pの表面速度とを同じにすることが理想的である。一方、2次転写ニップN2における中間転写ベルト21と外ローラ41とによる記録材Pの搬送効率の観点から、プロセススピードよりもレジ速を若干早くして、レジストローラ13によって記録材Pを2次転写ニップN2に押し込み気味にすることがある。つまり、2次転写ニップN2を通過中の記録材Pがレジストローラ13によって引っ張られることを抑制して、記録材Pの搬送方向に関する二次転写ニップN2の上流において記録材Pのループを形成できるようにするためである。2次転写ニップN2を通過中の記録材Pがレジストローラ13によって引っ張られると、記録材Pの搬送方向の後端部がレジストローラ13を抜けた際に発生するショックにより、画像不良が発生することがある。
【0089】
このような観点から、本実施例に従うレジ速の設定としては、次のような設定とすることが好適である。つまり、表3(a)に示すように、オフセット量Xを+2.5mmとした場合には、レジ速をプロセススピードに対して+0.3%~+0.1%とする。これにより、2次転写ニップN2を通過中の記録材Pがレジストローラ13で引っ張られ気味になることを抑制することができる。ここで、本実施例の構成では、記録材Pの坪量が比較的小さい場合(「薄紙」~「普通紙」)に、オフセット量Xを+2.5mmとすることができる(実施例2参照)。表3(a)に示すように、例えば坪量150gsm未満の「薄紙」の場合はレジ速をプロセススピードに対して+0.3%程度とし、例えば坪量150gsm以上の「普通紙」の場合はレジ速をプロセススピードに対して+0.1%程度とする。このように、オフセット量Xが+2.5mmの場合に、記録材Pの坪量が大きい場合にレジ速を小さくするのは、次のような理由による。つまり、記録材Pの坪量が大きくなると、2次転写ニップN2における曲率の影響で記録材Pの厚さの分だけ2次転写ニップN2における記録材Pの表面速度が速くなる傾向があることなどによる。
【0090】
一方、表3(a)に示すように、オフセット量Xを-1.3mmとした場合には、レジ速をプロセススピードに対して+1.3%とする。これにより、上述のようにオフセット量Xが小さいことにより2次転写ニップN2における記録材Pの搬送速度が速くなっても、2次転写ニップN2を通過中の記録材Pがレジストローラ13で引っ張られ気味になることを抑制することができる。ここで、本実施例の構成では、記録材Pの坪量が比較的大きい場合(「厚紙」)に、オフセット量Xを-1.3mmとすることができる。そして、オフセット量Xが-1.3mmの場合には、2次転写ニップN2において記録材Pが屈曲しにくいので、レジ速の記録材Pの坪量(厚さ)に対する感度は比較的小さい。そのため、オフセット量Xが-1.3mmの場合に記録材Pの坪量が更に大きくなっても、オフセット量Xが-1.3mmの場合のレジ速を、オフセット量Xが+2.5mmの場合のレジ速よりも小さくすることはない。
【0091】
これに対して、例えばオフセット量Xが+2.5mmの場合における、従来のレジ速の設定は、表3(b)に示すような設定とされることがあった。つまり、「薄紙」の場合は、上述のように2次転写ニップN2を通過中の記録材Pがレジストローラ13で引っ張られ気味になることを抑制するために、レジ速はプロセススピードに対して+0.3%とされていた。また、「厚紙」の場合は、記録材Pのコシが強いことでループが形成しにくく、2次転写ニップN2で記録材Pがスリップしてしまうことなどを理由として、レジ速に上限が設定され、プロセススピードに対して+0.1%とされていた。
【0092】
【0093】
このように、従来、記録材Pの坪量に応じてレジ速が変更されることがあった。しかし、この従来技術では、記録材Pの坪量が相対的に大きい場合に、記録材Pの坪量が相対的に小さい場合よりも、レジ速を小さくする。これに対して、本実施例によれば、記録材Pの坪量が相対的に大きい場合に、記録材Pの坪量が相対的に小さい場合よりも、オフセット量を相対的に小さくして、それに応じてレジ速を相対的に大きくする。つまり、上記従来技術における記録材Pの坪量とレジ速との増減関係と、本実施例による記録材Pの坪量とレジ速との増減関係とは、逆の関係である。
【0094】
8.効果
本実施例では、制御部150は、内ローラ26と外ローラ41との相対位置を第1の相対位置として転写を行う際には、ベルト駆動部112によるベルト21の駆動速度Vbと搬送駆動部114による搬送部材13の駆動速度Vpとの速度比Vp/Vbを第1の速度比とし、上記相対位置を第2の相対位置として転写を行う際には、速度比Vp/Vbを第1の速度比よりも小さい第2の速度比とするように、搬送駆動部114を制御可能である。
【0095】
このように、本実施例では、記録材Pの種類に応じてオフセット量Xを変更した場合は、オフセット量Xに応じてレジ速Vpを変更して搬送速度比Vp/Vbを変更する。これにより、2次転写ニップN2における表面速度比Vps/Vbsの変動を抑制して、「画像擦れ」の発生を抑制することができる。したがって、本実施例によれば、オフセット量Xを変更して複数の種類の記録材Pのそれぞれに対する転写性の向上を図ると共に、オフセット量の変更に起因する2次転写ニップN2における画像不良の発生を抑制できる。
【0096】
なお、本実施例では、記録材Pの坪量に応じてプロセススピードを等速と半速とに切り替える場合について説明したが、プロセススピードの変更は記録材Pの坪量に応じて行うことに限定されるものではない。したがって、例えば、プロセススピードを記録材Pの坪量に基づかずに半速とした場合において、記録材Pの坪量に応じてオフセット量Xを変更し、そのオフセット量Xに応じてレジ速Vpを変更して搬送速度比Vp/Vbを変更してもよい。つまり、複数のプロセススピードのそれぞれに対して、複数のオフセット量X、及び各オフセット量Xに対応する搬送速度比Vp/Vbが設定されていてよい。
【0097】
また、搬送速度比Vp/Vbは、中間転写ベルト21の搬送速度Vbと記録材Pの搬送速度Vpとの差分を示す指標を代表するものであり、本発明は制御目標値などとして搬送速度比Vp/Vb自体を用いることに限定されるものではない。例えば、制御目標値などとして中間転写ベルト21の搬送速度Vbと記録材Pの搬送速度Vpとの差分自体を用いるなどして結果として搬送速度比Vp/Vbを変更する場合なども、搬送速度比Vp/Vbを変更することに含まれる。
【0098】
[実施例2]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1の画像形成装置のものと同じである。したがって、本実施例の画像形成装置において、実施例1の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、実施例1のものと同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
【0099】
1.本実施例の概要
実施例1では、記録材Pの坪量に応じて、オフセット量Xを変更し、そのオフセット量Xに応じてレジ速Vpを変更して搬送速度比Vp/Vbを変更した。
【0100】
これに対して、本実施例では、坪量が所定の坪量である所定の記録材Pに対して複数のオフセット量Xの設定で画像形成可能な場合において、オフセット量Xに応じてレジ速Vpを変更して搬送速度比Vp/Vbを変更する。坪量が同じである記録材Pに対して複数のオフセット量Xの設定で画像形成可能な場合としては、例えば以下に説明するような場合が挙げられる。
【0101】
電子写真方式などを用いた画像形成装置では、例えば製本印刷などのために、複数の種類の記録材Pに画像を形成する連続画像形成のジョブ(ここでは「混載ジョブ」ともいう。)が実行されることがある。例えば、記録材Pが「薄紙」(例えば坪量48gsm)と「普通紙」(例えば坪量81gsm)とに変更される場合などがある。このような混載ジョブを実行する場合、実施例1で説明したようにある所定の閾値(実施例1では52gsm)を用いてオフセット量Xを変更すると、ジョブの途中でオフセット量Xが頻繁に変更される場合がある。オフセット量Xを変更する動作を行っている際には画像形成を行うことができない。また、ジョブの途中でオフセット量Xを変更する場合、内ローラ26の移動を行う前に、帯電電圧、現像電圧、1次転写電圧、2次転写電圧などの作像系の高圧の停止を行う必要がある場合がある。また、中間転写ベルト21の回転の停止、更には外ローラ41の中間転写ベルト31からの離間を行うことが必要となる場合がある。そのため、オフセット量Xの変更を過度に頻繁に行うと、生産性が低下するおそれがある。また、オフセット量Xの変更を過度に頻繁に行うと、中間転写ベルト21、あるいは内ローラ26や外ローラ41の摩耗、劣化が促進されてしまうおそれがある。
【0102】
ここで、実施例1では上記所定の閾値(=52gsm)を用い、坪量が該閾値未満の記録材Pの場合は第2のオフセット量X2(=+2.5mm)、該閾値以上の記録材Pの場合は第1のオフセット量X1(=-1.3mm)とした。しかし、オフセット量Xが第1のオフセット量X1(=-1.3mm)、第2のオフセット量X2(=+2.5mm)のいずれの場合でも、中間転写ベルト21からの記録材Pの分離不良(ここでは、単に「分離不良」ともいう。)及び記録材Pの搬送方向の後端部の画像不良(ここでは、単に「後端部画像不良」ともいう。)が発生しない坪量の領域がある場合がある。例えば、本実施例の構成では、坪量が52gsm以上、300gsm未満の記録材Pの場合、第1のオフセット量X1、第2のオフセット量X2のいずれでも、分離不良及び後端画像不良は発生しない。より詳細には、この坪量が52gsm以上、300gsm未満の記録材Pの場合、オフセット量Xを第2のオフセット量X2(=+2.5mm)とすると、まれに後端部画像不良が発生することがある。そのため、画質を優先すると、坪量が52gsm以上、300gsm未満の記録材Pの場合は、オフセット量Xを第1のオフセット量X1(=-1.3mm)とすることが好ましい。しかし、生産性(速度)を優先すると、坪量が52gsm以上、300gsm未満の記録材Pの場合は、オフセット量Xは第1のオフセット量X1(=-1.3mm)、第2のオフセット量X2(=+2.5mm)のいずれでもよい。
【0103】
そこで、本実施例では、画像形成装置100は、第1のモードとしての「画質優先モード(あるいは「通常モード」)」と、第2のモードとしての「速度優先モード(あるいは「生産性優先モード」)」と、でジョブを実行可能な構成とされている。「画質優先モード」がONの場合(速度優先モードがOFFの場合)は、オフセット量Xを変更する記録材Pの坪量の閾値として、第1の閾値(=52gsm)を用いる。そして、坪量が該第1の閾値未満の記録材Pの場合は第2のオフセット量X2(=+2.5mm)、坪量が該第1の閾値以上の記録材Pの場合は第1のオフセット量X1(=-1.3mm)とする。一方、「速度優先モード」がONの場合は、オフセット量Xを変更する記録材Pの坪量の閾値として、第1の閾値(=52gsm)よりも大きい第2の閾値(=300gsm)を用いる。そして、坪量が該第2の閾値未満の記録材Pの場合は第2のオフセット量X2(=+2.5mm)、坪量が該第2の閾値以上の記録材Pの場合は第1のオフセット量X1(=-1.3mm)とする。なお、本実施例では、実施例1と同様に、坪量が第2の閾値(=300gsm)以上の記録材Pの場合はプロセススピードを半速とすることも行う。これにより、「速度優先モード」がONの場合は、例えば「薄紙」や「普通紙」を主に使用するようなユーザに対して、オフセット量Xの変更の頻度を低減して、生産性を向上させることができる。つまり、「速度優先モード」では、「薄紙」や「普通紙」の使用頻度が「厚紙」の使用頻度よりも高い場合に、「画質優先モード」と比較して、オフセット量Xの変更の頻度を低減し、生産性を向上させることができる。
【0104】
そして、本実施例では、このように坪量が所定の坪量である所定の記録材P(例えば坪量81gsmの普通紙)に第1、第2のオフセット量X1、X2で画像形成可能な場合に、オフセット量Xに応じてレジ速Vpを変更して搬送速度比Vp/Vbを変更する。
【0105】
表4は、本実施例における印刷動作条件として記録材Pの坪量に応じて予め定められた、プロセススピード、オフセット量、レジ速の設定の一例を示す。表4に示すような印刷動作条件の情報は、予めメモリ152に記憶されている。
【0106】
【0107】
2.制御手順
図10は、本実施例におけるジョブの制御手順の一例の概略を示すフローチャート図である。ここでは、操作者が装置本体110の操作部160から画像形成装置100に連続画像形成のジョブを実行させる場合を例として説明する。また、
図10には、オフセット量やレジ速を変更する動作に注目した制御手順の概略が示されており、ジョブを実行して画像を出力するために通常必要となる他の多くの動作は省略されている。
【0108】
制御部150は、操作部160におけるユーザなどの操作者による操作に応じてジョブの情報を取得すると、画像形成装置100の各部に指令を送り、ジョブを開始させる(S201)。制御部150は、ジョブの情報に含まれる記録材Pの坪量の情報を取得すると(S202)、記録材Pの坪量が52gsm(第1の閾値)以上であるか否かを判断する(S203)。制御部150は、S203で坪量が52gsm以上であると判断した場合は、記録材Pの坪量が300gsm(第2の閾値)以上であるか否かを判断する(S204)。制御部150は、S204で坪量が300gsm以上であると判断した場合は、オフセットカム位置センサ37の出力値に基づいて、現在のオフセット量Xが-1.3mm(第1のオフセット量X1)であるか否かを判断する(S205)。そして、制御部150は、S205で現在のオフセット量Xが-1.3mmではないと判断した場合はオフセット機構101に指令を送り、オフセット量Xを-1.3mmに変更する(S206)。また、制御部150は、メモリ152内のプロセススピードの設定を半速に設定し、メモリ152内のレジ速の設定を、半速のプロセススピードに対するデフォルト値である174.0mm/sに設定する(S207)。そして、制御部150は、画像形成装置100の各部に指令を送り、必要に応じて変更したオフセット量X、並びに、設定したプロセススピード及びレジ速で印刷動作を実行させる(S208)。その後、制御部150は、今回形成した画像がジョブの最後の画像であるか否かを判断する(S209)。そして、制御部150は、S209で最後の画像であると判断した場合は、画像形成装置100の各部に指令を送り、ジョブの動作を終了させる(S210)。また、制御部150は、S209で最後の画像ではないと判断した場合は、S202の処理に戻る。
【0109】
また、制御部150は、S204で坪量が300gsm以上ではない(坪量が52gsm以上、300gsm未満である)と判断した場合は、メモリ152内のモード設定の情報を取得して、「速度優先モード」がONであるか否かを判断する(S211)。なお、本実施例では、「速度優先モード」のON(有効)、OFF(無効)の設定は、操作部160のタッチパネルなどに表示されるモード設定画面から行うことができるようになっている。例えば、この画面には、「速度優先モード」をONとするためのボタン、OFFとするためのボタンが設けられており、操作者がいずれかのボタンを選択(押下)することでメモリ152に「速度優先モード」のON/OFFの設定に関する情報が記憶される。「画質優先モード」についても上記同様にして設定できるようにしてもよいが、「速度優先モード」がOFFの場合に「画質優先モード」がONとなるようにしてもよい。
【0110】
制御部150は、S211で「速度優先モード」がONではない(すなわち「画質優先モード」がONである)と判断した場合は、オフセットカム位置センサ37の出力値に基づいて、現在のオフセット量Xが-1.3mm(第1のオフセット量X1)であるか否かを判断する(S212)。そして、制御部150は、S212で現在のオフセット量Xが-1.3mmではないと判断した場合はオフセット機構101に指令を送り、オフセット量Xを-1.3mmに変更する(S213)。また、制御部150は、メモリ152内のプロセススピードの設定を等速に設定し、メモリ152内のレジ速の設定を、等速のプロセススピードに対するデフォルト値である348.0mm/sに設定する(S214)。そして、制御部150は、画像形成装置100の各部に指令を送り、必要に応じて変更したオフセット量X、並びに、設定したプロセススピード及びレジ速で印刷動作を実行させる(S208)。S209以降の制御手順は上述のとおりである。また、制御部150は、S211で「速度優先モード」がONであると判断した場合は、オフセットカム位置センサ37の出力値に基づいて、現在のオフセット量Xが+2.5mm(第2のオフセット量X2)であるか否かを判断する(S215)。そして、制御部150は、S215で現在のオフセット量Xが+2.5mmではないと判断した場合はオフセット機構101に指令を送り、オフセット量Xを+2.5mmに変更する(S216)。また、制御部150は、メモリ152内のプロセススピードの設定を等速に設定し、メモリ152内のレジ速の設定を、等速のプロセススピードに対するデフォルト値から減速した344.5mm/sに設定する(S217)。そして、制御部150は、画像形成装置100の各部に指令を送り、必要に応じて変更したオフセット量X、並びに、設定したプロセススピード及びレジ速で印刷動作を実行させる(S208)。S209以降の制御手順は上述のとおりである。
【0111】
さらに、制御部150は、S203で坪量が52gsm以上ではない(すなわち52gsm未満である)と判断した場合は、S215の処理に進み、以降の処理を上述と同様にして行う。
【0112】
3.効果
以上のように、本実施例では、坪量が略同一の記録材Pに異なるオフセット量Xで画像形成可能な場合に、オフセット量Xに応じてレジ速Vpを変更して搬送速度比Vp/Vbを変更する。これにより、2次転写ニップN2における表面速度比Vps/Vbsの変動を抑制して、「画像擦れ」の発生を抑制できる。したがって、本実施例によれば、オフセット量の変更に起因する2次転写ニップN2における画像不良の発生を抑制することができる。
【0113】
[実施例3]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1の画像形成装置のものと同じである。したがって、本実施例の画像形成装置において、実施例1の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、実施例1のものと同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
【0114】
1.本実施例の概要
実施例1では、外ローラ41は中間転写ベルト21の回転に伴って従動して回転した。そして、実施例1では、2次転写ニップN2における記録材Pの搬送速度は、レジストローラ13による記録材Pの搬送速度(レジスト駆動部114によるレジストローラ13の駆動速度(回転数)を変更することで制御した。
【0115】
これに対して、本実施例では、外ローラ41は駆動回転する。そして、本実施例では、2次転写ニップN2における記録材Pの搬送速度は、後述する外ローラ駆動部115による外ローラ41の駆動速度(回転数)を変更することで制御する。
【0116】
2.制御態様
図11は、本実施例の画像形成装置100の要部の制御態様を示す概略ブロック図である。
図11に示す本実施例の制御態様は、
図8に示す実施例1の制御態様と概略同様であるが、本実施例では、制御部150には、駆動源としての外ローラ駆動モータ115aを備えた駆動手段としての外ローラ駆動部115が接続されている。
【0117】
本実施例では、外ローラ41は、外ローラ駆動部115によって駆動トルクを得る。そして、本実施例では、制御部150によって外ローラ駆動部115の外ローラ駆動モータ115aの回転数を制御し、外ローラ41の回転数を制御することで、2次転写ニップN2における記録材Pの搬送速度を変更可能である。
【0118】
実施例1で説明したように、記録材Pの搬送速度Vpは、記録材Pの外ローラ41と接触する側の面(裏面)の移動速度である。そして、本実施例では、記録材Pの搬送速度Vpは、具体的には外ローラ駆動部115による外ローラ41の駆動速度、より詳細には外ローラ41の周速度(回転速度、回転数)で代表することができる。ここでは、記録材Pの搬送速度(外ローラ41の駆動速度)Vpを「外ローラ速度」ともいう。本実施例では、外ローラ速度Vpは、プロセススピードVbごとに、オフセット量Xが内ローラ26のホームポジションに対応する第1のオフセット量X1の場合の値がデフォルト値として設定されている。また、本実施例では、プロセススピードVbは、等速がデフォルト値として設定されている。
【0119】
本実施例では、実施例1と同様に、画像形成装置100は、オフセット量Xに応じて、中間転写ベルト21の搬送速度Vbと記録材Pの搬送速度Vpとの比(搬送速度比)Vp/Vbを変更する。実施例1で説明したように、中間転写ベルト21の搬送速度Vbは、ベルト駆動部112による中間転写ベルト21の駆動速度で代表できる。また、上述のように、本実施例では、記録材Pの搬送速度は、外ローラ駆動部115による外ローラ41の駆動速度で代表できる。そのため、本実施例では、上記搬送速度比は、ベルト駆動部112による中間転写ベルト21の駆動速度Vbと外ローラ駆動部115による外ローラ41の駆動速度Vpとの比(駆動速度比)Vp/Vbと言い換えることができる。本実施例では、実施例1においてレジ速を変更したのに代えて、外ローラ速度を変更することで、実施例1と同様に搬送速度比Vp/Vbを変更することができる。これにより、オフセット量X(X1、X2)の変更による2次転写ニップN2における表面速度比Vps/Vbsの変動を小さくして、「画像擦れ」を抑制する。
【0120】
なお、外ローラ速度をデフォルト値から変更した場合は、2次転写時に搬送方向に関する画像の倍率変動が生じる。そのため、制御部150は、実施例1と同様に、画像形成装置100に送信されたデジタルの画像情報(画像データ)のうち搬送方向に関する画像の倍率に関する情報を修正することで、上記倍率変動を抑制するように補正(デジレジ補正)を行うことができる。
【0121】
表5は、本実施例における印刷動作条件として記録材Pの坪量に応じて予め定められた、プロセススピード、オフセット量、外ローラ速度の設定の一例を示す。表5に示すような印刷動作条件の情報は、予めメモリ152に記憶されている。
【0122】
【0123】
3.制御手順
図12は、本実施例におけるジョブの制御手順の一例の概略を示すフローチャート図である。
図12の制御手順におけるS301~S316の処理は、それぞれ実施例1で説明した
図9の制御手順におけるS101~S116の処理と同様である。ただし、本実施例では、S304において、制御部150は、外ローラ速度を、半速のプロセススピードに対するデフォルト値である174.0mm/sに変更するように、メモリ152内の外ローラ速度の設定を変更する。また、本実施例では、S311において、制御部150は、外ローラ速度を、等速のプロセススピードに対するデフォルト値である348.0mm/sから減速した344.5mm/sに変更するように、メモリ152内の外ローラ速度の設定を変更する。また、本実施例では、S316において、制御部150は、メモリ152内の外ローラ速度の設定をデフォルト値である等速に戻す。
【0124】
図12の制御手順は、1枚の記録材Pに画像を形成するジョブを例としている。複数の記録材Pに連続して画像を形成する連続画像形成のジョブにおいて、ジョブの途中で記録材Pの種類が変わり、オフセット量Xを変更する必要がある場合は、次のようにすればよい。つまり、紙間工程において、オフセット量Xを変更して、変更後のオフセット量Xに応じて外ローラ速度を変更するようにすればよい。
【0125】
ここで、外ローラ速度(外ローラ41の搬送速度、記録材Pの搬送速度)は、2次転写ニップN2を記録材Pが通過している際(2次転写中)に、所望の外ローラ速度(外ローラ41の搬送速度、記録材Pの搬送速度)となっていればよい。つまり、外ローラ速度の変更は、変更後の外ローラ速度で搬送する記録材Pが2次転写ニップN2に到達する前に完了するようにする。典型的には、外ローラ速度の変更(設定の変更)は、外ローラ41によるその記録材Pの搬送、あるいはレジストローラ13によるその記録材Pの搬送や、記録材収納庫11からのその記録材Pの給送が開始される前に完了するように実行される。例えば、外ローラ41の駆動は、その変更後の外ローラ速度の設定で開始される。
【0126】
また、ここでは、オフセット量Xが第1のオフセット量X1の場合の外ローラ速度(外ローラ41の駆動速度、記録材Pの搬送速度)がデフォルト値である場合を例として説明している。そのため、オフセット量Xを第2のオフセット量X2とした場合には、外ローラ速度は該デフォルト値よりも減速することとなる。これに対し、オフセット量Xが第2のオフセット量X2の場合の外ローラ速度をデフォルト値としてもよい。その場合は、オフセット量Xを第1のオフセット量X1とした場合には、外ローラ速度は該デフォルト値よりも増速することとなる。
【0127】
尚、本実施例では、オフセット量Xの変更に伴って外ローラ速度の変更を行ったが、オフセット量Xの変更に伴ってレジ速の変更も合わせて行ってもよい。即ち、実施例1と同様の制御を合わせて行っても良い。
【0128】
4.効果
本実施例では、制御部150は、内ローラ26と外ローラ41との相対位置を第1の相対位置として転写を行う際には、ベルト駆動部112によるベルト21の駆動速度Vbと外ローラ駆動部114による外ローラ41の駆動速度Vpとの速度比Vp/Vbを第1の速度比とし、上記相対位置を第2の相対位置として転写を行う際には、速度比Vp/Vbを第1の速度比よりも小さい第2の速度比とするように、外ローラ駆動部114を制御可能である。
【0129】
このように、オフセット量Xに応じて外ローラ速度を変更して搬送速度比Vp/Vbを変更することによっても、2次転写ニップN2における表面速度比Vps/Vbsの変動を抑制して、「画像擦れ」の発生を抑制できる。したがって、本実施例によれば、オフセット量Xを変更して複数の種類の記録材Pのそれぞれに対する転写性の向上を図ると共に、オフセット量の変更に起因する2次転写ニップN2における画像不良の発生を抑制できる。
【0130】
[実施例4]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例3の画像形成装置のものと同じである。したがって、本実施例の画像形成装置において、実施例3の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、実施例3のものと同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
【0131】
実施例3では、記録材Pの坪量に応じて、オフセット量Xを変更し、そのオフセット量Xに応じて外ローラ速度Vpを変更して搬送速度比Vp/Vbを変更した。
【0132】
これに対して、本実施例では、坪量が所定の坪量である所定の記録材Pに対して複数のオフセット量Xの設定で画像形成可能な場合において、オフセット量Xに応じて外ローラ速度Vpを変更して搬送速度比Vp/Vbを変更する。
【0133】
本実施例では、実施例2においてレジ速を変更したのに代えて、外ローラ速度を変更する点を除いて、制御手順などは実施例2と同様である。したがって、ここではレジ速を外ローラ速度と読み替えて実施例2の説明を援用し、重複する説明は省略する。表6は、本実施例における印刷動作条件として記録材Pの坪量に応じて予め定められた、プロセススピード、オフセット量、外ローラ速度の設定の一例を示す。表6に示すような印刷動作条件の情報は、予めメモリ152に記憶されている。
【0134】
【0135】
以上のように、本実施例では、画像形成装置100は、外ローラ速度Vpを変更して搬送速度比Vp/Vbを変更する構成である。本実施例では、この構成において、坪量が略同一の記録材Pに異なるオフセット量Xで画像形成可能な場合に、オフセット量Xに応じて外ローラ速度Vpを変更して搬送速度比Vp/Vbを変更する。これにより、2次転写ニップN2における表面速度比Vps/Vbsの変動を抑制して、「画像擦れ」の発生を抑制できる。したがって、本実施例によれば、オフセット量の変更に起因する2次転写ニップN2における画像不良の発生を抑制することができる。
【0136】
[その他]
以上、本発明を具体的な実施例に即して説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではない。
【0137】
上述の実施例では、画像形成装置は、内ローラの位置を変更することでオフセット量を変更する構成とされていたが、外ローラの位置を変更することでオフセット量を変更する構成とされていてもよい。また、内ローラ又は外ローラのいずれかを移動させる構成に限らず、内ローラと外ローラとの両方を移動させてオフセット量を変更するようにしてもよい。
【0138】
上述の実施例では、内部材としての内ローラと共に2次転写ニップを形成する外部材として、中間転写ベルトの外周面に直接当接する外ローラが用いられていた。これに対して、外部材として外ローラ及び該外ローラと他のローラとに張架された2次転写ベルトが用いられる構成とされていてもよい。つまり、画像形成装置は、外部材として、張架ローラと、外ローラと、これらのローラ間に張架された2次転写ベルトと、を有していてよい。そして、外ローラが2次転写ベルトを介して中間転写ベルトの外周面に当接するようにすることができる。斯かる構成においては、中間転写ベルトの内周面に接触する内ローラと、2次転写ベルトの内周面に接触する外ローラとで、中間転写ベルト及び2次転写ベルトを挟持することによって2次転写ニップを形成する。この場合、中間転写ベルトと2次転写ベルトとの接触部が2次転写部としての2次転写ニップである。なお、この場合も、オフセット量Xは、前述と同様に、内ローラと外ローラとの相対位置によって定義される。
【0139】
上述の実施例では、記録材の剛度と関連する記録材の種類に関する情報として記録材の坪量の情報を用いたが、これに限定されるものではない。紙種カテゴリー(例えば、普通紙、コート紙などの表面性に基づく紙種カテゴリーなど)あるいは銘柄(メーカー、品番などを含む。)が同じである場合、記録材の坪量と記録材の厚さとは略比例関係にあることが多い(厚さが大きいほど坪量が大きい。)。また、紙種カテゴリーあるいは銘柄が同じである場合、記録材の剛度と、記録材の坪量あるいは厚さと、は略比例関係にあることが多い(坪量あるいは厚さが大きいほど剛度が大きい。)。したがって、例えば、紙種カテゴリーごと、銘柄ごと、あるいは紙種カテゴリーと銘柄との組み合わせごとに、記録材の坪量、厚さ、あるいは剛度に基づいて、オフセット量を設定することができる。そして、制御部は、操作部や外部装置から入力された、紙種カテゴリー、銘柄などの情報と、記録材の坪量、厚さ、剛度などの情報と、に基づいて、当該記録材に応じたオフセット量となるようにオフセット機構を動作させることができる。また、記録材の種類に関する情報として、例えば、記録材の坪量、厚さ、あるいは剛度といった定量的な情報を用いることに限定されるものではない。記録材の種類に関する情報として、例えば、紙種カテゴリー、銘柄、あるいは紙種カテゴリーと銘柄との組み合わせといった定性的な情報のみを用いることもできる。例えば、紙種カテゴリー、銘柄、あるいは紙種カテゴリーと銘柄との組み合わせに応じてオフセット量を設定しておき、制御部が操作部や外部装置などから入力された紙種カテゴリー、銘柄などの情報に応じてオフセット量を決定するようにすることができる。この場合も、それぞれの記録材の剛度の違いに基づいて、オフセット量を割り当てておくことになる。なお、記録材の剛度は、ガーレー剛度(MD/縦目)[mN]で代表することができ、市販のガーレー剛度試験機で測定することができる。例えば、上述の実施例における坪量の閾値52g/m2未満の記録材としての、「薄紙」の一例のガーレー剛度(MD)は0.3mN程度であることがある。また、上述の実施例における坪量の閾値52g/m2以上の記録材としての、「普通紙」(坪量80g/m2程度)の一例のガーレー剛度(MD)は2mN程度、「厚紙」(坪量200g/m2程度)の一例のガーレー剛度(MD)は20mN程度であることがある。
【0140】
また、上述の実施例では、制御部は、記録材の種類に関する情報を、操作者の操作による操作部や外部装置からの入力に基づいて取得するものとして説明したが、記録材の種類に関する情報を検知する検知手段の検知結果の入力に基づいて取得してもよい。例えば、記録材の坪量と相関する指標値を検知する坪量検知手段として坪量センサを用いることができる。坪量センサとしては、例えば、超音波の減衰を利用した坪量センサが知られている。この坪量センサは、記録材の搬送路を挟むように配置された、超音波発生部と、超音波受信部と、を有する。そして、坪量センサは、超音波発生部から発生され、記録材を透過することで減衰した超音波を超音波受信部で受信して、その超音波の減衰量に基づいて記録材の坪量と相関する指標値を検知する。なお、坪量検知手段は、記録材の坪量と相関する指標値を検知できるものであればよく、超音波を利用したものに限定されるものではなく、例えば光を利用したものであってもよい。また、記録材の坪量と相関する指標値は、坪量自体に限定されず、坪量に対応する厚さであってもよい。また、紙種カテゴリーの検知に利用できる記録材の表面の平滑性と相関する指標値を検知する平滑性検知手段としての表面性センサを用いることができる。表面性センサとしては、記録材に光を照射し、正反射光、乱反射光の強さを光量センサで読み取る正乱反射光センサが知られている。記録材の表面が平滑である場合、正反射光が強くなり、粗いと乱反射光が強くなる。そのため、表面性センサは、正反射光量と乱反射光量とを測定することで、記録材の表面の平滑性と相関する指標値を検知することができる。なお、平滑性検知手段は、記録材の表面の平滑性と相関する指標値を検知できるものであればよく、上記の光量センサを用いたものに限定されるものではなく、例えば撮像素子を用いたものであってもよい。記録材の表面の平滑性と相関する指標値は、ベック平滑度などの所定の規格に従う値に換算された値に限定されるものではなく、記録材の表面の平滑性と相関性を有する値であればよい。これらの検知手段は、例えば、記録材の搬送方向に関してレジストローラよりも上流の記録材の搬送路に隣接して配置することができる。また、例えば上記坪量センサ、表面性センサなどが1つのユニットとして構成されたもの(メディアセンサ)を用いてもよい。
【0141】
また、上述の実施例では、オフセット機構として、カムにより可動部を作動させるアクチュエータを用いたが、これに限定されるものではない。オフセット機構は、それぞれ上述の実施例に準じた動作を実現できるものであればよく、例えば、ソレノイドを用いて可動部を作動させるアクチュエータを用いてもよい。
【0142】
また、上述の実施例では、ベルト状の像担持体が中間転写ベルトである場合について説明したが、画像形成位置で担持されたトナー像を搬送する無端状のベルトで構成された像担持体であれば、本発明を適用することができる。このようなベルト状の像担持体としては、上述の実施例における中間転写ベルトの他、感光体ベルトや静電記録誘電体ベルトが例示できる。
【0143】
また、本発明は、上述の実施形態の構成の一部または全部を、その代替的な構成で置き換えた別の実施形態でも実施できる。したがって、ベルト状の像担持体を用いる画像形成装置であれば、タンデム型/1ドラム型、帯電方式、静電像形成方式、現像方式、転写方式、定着方式の区別無く実施できる。上述の実施例では、トナー像の形成/転写に係る主要部を中心に説明したが、本発明は、必要な機器、装備、筐体構造を加えて、プリンタ、各種印刷機、複写機、FAX、複合機など、種々の用途で実施できる。
【符号の説明】
【0144】
13 レジストローラ
21 中間転写ベルト
26 内ローラ
41 外ローラ
100 画像形成装置
101 オフセット機構
112 ベルト駆動部
114 レジスト駆動部
115 外ローラ駆動部
150 制御部