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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/16 20060101AFI20240109BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
G03G15/16
G03G21/00 370
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020031084
(22)【出願日】2020-02-26
(65)【公開番号】P2021135377
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169155
【弁理士】
【氏名又は名称】倉橋 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075638
【弁理士】
【氏名又は名称】倉橋 暎
(72)【発明者】
【氏名】福水 朋子
(72)【発明者】
【氏名】大田 哲也
【審査官】飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-215594(JP,A)
【文献】特開2019-086553(JP,A)
【文献】特開2014-134718(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/16
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を搬送する回転可能な無端状のベルトと、
前記ベルトを張架する複数の張架ローラであって、内ローラと、前記ベルトの回転方向に関して前記内ローラよりも上流において前記内ローラに隣接して配置された上流ローラと、を含む複数の張架ローラと、
前記内ローラと対向して配置され、前記ベルトの外周面に当接して、前記ベルトから記録材へトナー像を転写する転写部を形成する外部材と、
前記ベルトの回転方向に関して前記内ローラよりも上流かつ前記上流ローラよりも下流で前記ベルトの内周面に接触可能であり、前記ベルトを内周面側から外周面側に押圧可能な押圧部材と、
前記押圧部材が前記ベルトの内周面を押圧する第1の位置と、前記押圧部材が前記ベルトから離間するか又は前記押圧部材が前記第1の位置にある場合よりも小さい押圧量で前記ベルトの内周面を押圧する第2の位置とに、前記押圧部材の位置を変更可能な押圧機構と、
前記押圧機構を制御する制御部と、
通電により発熱するヒータを備え、記録材に転写されたトナー像を記録材に定着させる定着装置と、を有し、
前記制御部は、
前記ヒータへの通電が行われた状態で待機するスタンバイモードと、前記ヒータへの通電が停止された状態で待機するスリープモードと、をそれぞれ実行可能であり、
プリントジョブの画像形成動作の終了時に前記押圧部材が前記第1の位置にある場合に、前記スタンバイモードに移行する場合には、前記押圧部材を前記第1の位置に維持し、前記スリープモードに移行する場合には、前記押圧部材を前記第2の位置に移動させるように前記押圧機構の制御を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記画像形成装置が前記スリープモードから復帰する際に前記押圧部材を前記第2の位置から前記第1の位置に移動させるように前記押圧機構の制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、電源がオフされる、又は前記スリープモードに移行する場合に、前記押圧部材を前記第1の位置から前記第2の位置に移動させるように前記押圧機構の制御を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
トナー像を転写する記録材を設定する設定部を有し、
前記制御部は、前記設定部で設定された記録材に応じて前記押圧部材の位置を変更するように前記押圧機構を制御可能であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記内ローラ又は前記外部材の少なくとも一方の位置を変更して、前記内ローラの周方向に関する前記内ローラと前記外部材との相対位置を変更させて、前記転写部の位置を変更する位置変更機構と、
トナー像を転写する記録材を設定する設定部と、を有し、
前記制御部は、前記設定部で設定された記録材に応じて前記相対位置を変更するように前記位置変更機構を制御可能であり、前記画像形成装置が電源オフ状態又はスリープモードに移行した場合には、前記相対位置が前記設定部で普通紙が設定された場合の画像形成動作時の位置であるように、前記位置変更機構の制御を行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記外部材は、前記ベルトの外周面に直接当接する外ローラ、又は無端状の別のベルトと該別のベルトを介して前記ベルトの外周面に当接する外ローラとを有して構成され、
前記内ローラの回転軸線方向と略直交する断面において、前記ベルトが掛け回される側の前記内ローラと前記上流ローラとの共通の接線を基準線L1、前記内ローラの回転中心を通り前記基準線L1と略直交する直線を内ローラ中心線L2、前記外ローラの回転中心を通り前記基準線L1と略直交する直線を外ローラ中心線L3、前記内ローラ中心線L2と前記外ローラ中心線L3との間の距離をオフセット量X(ただし、前記外ローラ中心線L3が前記内ローラ中心線L2よりも前記ベルトの回転方向の上流側にあるとき正の値)としたとき、
前記位置変更機構は、前記内ローラ又は前記外ローラの少なくとも一方の位置を変更して、前記オフセット量Xを第1のオフセット量X1と、前記第1のオフセット量X1よりも大きい第2のオフセット量X2と、に変更可能であり、
前記制御部は、前記画像形成装置が電源オフ状態又はスリープモードに移行した場合には、前記オフセット量Xが前記設定部で普通紙が設定された場合の画像形成動作時の前記オフセット量Xであるように、前記位置変更機構の制御を行うことを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記画像形成装置が電源オフ状態又はスリープモードに移行した場合には、前記押圧部材が前記第2の位置にあるように前記押圧機構の制御を行うと共に、前記画像形成装置が電源オン状態に移行するか又は前記スリープモードから復帰する場合に、プリントジョブの情報が入力される前に、前記押圧部材を前記第2の位置から前記第1の位置に移動させるように前記押圧機構の制御を行うことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記スタンバイモードは、前記ヒータへの通電が行われて所定の温度での温調が行われている状態であり、前記スリープモードは、前記画像形成装置の消費電力量が前記スタンバイモードよりも少ない状態であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記ベルトは、像担持体から1次転写されたトナー像を前記転写部で記録材に2次転写するために搬送する中間転写体であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式や静電記録方式を用いた複写機、プリンタ、ファクシミリ装置などの画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式などを用いた画像形成装置には、トナー像を担持する像担持体としての無端状のベルト(以下、単に「ベルト」ともいう。)を有するものがある。このようなベルトとしては、例えば、第1の像担持体としての感光体などから1次転写されたトナー像を紙などのシート状の記録材に2次転写するために搬送する、第2の像担持体としての中間転写ベルトがある。以下、主に、中間転写ベルトを有する中間転写方式を採用した画像形成装置を例に説明する。
【0003】
中間転写方式の画像形成装置では、画像形成部において感光体などに形成されたトナー像が、1次転写部において中間転写ベルトに1次転写される。また、中間転写ベルトに1次転写されたトナー像は、2次転写部で記録材に2次転写される。中間転写ベルトの内周面側に設けられた内部材(2次転写内部材)と、中間転写ベルトの外周面側に設けられた外部材(2次転写外部材)とによって、中間転写ベルトと外部材との接触部である、2次転写部としての2次転写ニップが形成される。内部材としては、中間転写ベルトを張架する複数の張架ローラのうちの1つである内ローラが用いられる。外部材としては、中間転写ベルトを挟んで内ローラと対向する位置に配置された外ローラが用いられることが多い。そして、例えば、外ローラにトナーの帯電極性とは逆極性の2次転写電圧が印加されることで、2次転写ニップにおいて中間転写ベルト上のトナー像が記録材上に2次転写される。
【0004】
ここで、2次転写ニップの電界が強すぎると、放電によりトナーには逆極性の電荷が飛び込む。これにより、電荷量が0近傍になるトナーが発生し、このようなトナーは記録材上へ転写されないため、記録材に形成された画像の放電位置に対応する部分が白く抜けてしまう「白抜け現象」が発生することがある。
【0005】
白抜け現象の原因となる放電は、中間転写ベルトのトナー像担持面と記録材の表面との間に空隙があることにより発生しやすいことが知られている。特に、2次転写ニップの近傍で中間転写ベルトが振動していると空隙が発生しやすくなるため、白抜け現象が悪化しやすい。
【0006】
画質に大きく寄与する2次転写ニップの近傍の中間転写ベルトの振動を十分に抑制するためには、2次転写ニップの近傍の中間転写ベルトの内周面に接触する押圧部材を配置することが効果的であることが知られている。この場合、押圧部材は、中間転写ベルトの内周面に接触することで、2次転写ニップの近傍の中間転写ベルトの張り面を変化させる形状に形成される。例えば、中間転写ベルトの回転方向に関して2次転写ニップの上流側の近傍にシート状の押圧部材(振動防止部材)を中間転写ベルトに押し付けるように配置した画像形成装置が提案されている(特許文献1)。
【0007】
また、次のような第1のモードと、第2のモードと、を切り換える画像形成装置が提案されている(特許文献2)。つまり、第1のモードでは、押圧部材が中間転写ベルトを所定の押圧力で押圧する。また、第2のモードでは、押圧部材が中間転写ベルトを該所定の押圧力より小さい押圧力で押圧するか又は押圧部材が中間転写ベルトから離間する。特許文献2では、このように押圧部材の中間転写ベルトに対する押圧力を小さくしたり、押圧部材を中間転写ベルトから離間させたりすることで、中間転写ベルトの経時的な摩耗や破損を抑制できるものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2002-82543号公報
【文献】特開2017-167217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、押圧部材を中間転写ベルトに所定の押圧力で押圧させたまま画像形成装置を放置すると、経時的に押圧部材が変形してしまい、所望の押圧力が得られなくなるおそれがある。特許文献2に記載されるように、押圧部材の中間転写ベルトに対する押圧力を小さくしたり、押圧部材を中間転写ベルトから離間させたりすることで、この経時的な押圧部材の変形を抑制することが可能となる。
【0010】
しかしながら、画像形成が行われない場合に(例えば、画像形成ジョブを待機するスタンバイ中)に押圧部材を中間転写ベルトから離間させてしまうと、画像形成装置にジョブが投入されるごとに、画像形成動作を開始するまでに押圧部材の動作時間が必要となり、生産性を低下させてしまう。
【0011】
なお、以上では中間転写ベルトから記録材へのトナー像の転写部である2次転写部を例として従来の課題について説明したが、感光体などの他のベルト状の像担持体から記録材へのトナー像の転写部に関しても同様の課題がある。
【0012】
したがって、本発明の目的は、押圧部材を有する構成において、生産性の低下を抑制しつつ、経時的な押圧部材の変形を抑制することが可能な画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的は本発明に係る画像形成装置にて達成される。要約すれば、本発明は、トナー像を搬送する回転可能な無端状のベルトと、前記ベルトを張架する複数の張架ローラであって、内ローラと、前記ベルトの回転方向に関して前記内ローラよりも上流において前記内ローラに隣接して配置された上流ローラと、を含む複数の張架ローラと、前記内ローラと対向して配置され、前記ベルトの外周面に当接して、前記ベルトから記録材へトナー像を転写する転写部を形成する外部材と、前記ベルトの回転方向に関して前記内ローラよりも上流かつ前記上流ローラよりも下流で前記ベルトの内周面に接触可能であり、前記ベルトを内周面側から外周面側に押圧可能な押圧部材と、前記押圧部材が前記ベルトの内周面を押圧する第1の位置と、前記押圧部材が前記ベルトから離間するか又は前記押圧部材が前記第1の位置にある場合よりも小さい押圧量で前記ベルトの内周面を押圧する第2の位置とに、前記押圧部材の位置を変更可能な押圧機構と、前記押圧機構を制御する制御部と、通電により発熱するヒータを備え、記録材に転写されたトナー像を記録材に定着させる定着装置と、を有し、前記制御部は、前記ヒータへの通電が行われた状態で待機するスタンバイモードと、前記ヒータへの通電が停止された状態で待機するスリープモードと、をそれぞれ実行可能であり、プリントジョブの画像形成動作の終了時に前記押圧部材が前記第1の位置にある場合に、前記スタンバイモードに移行する場合には、前記押圧部材を前記第1の位置に維持し、前記スリープモードに移行する場合には、前記押圧部材を前記第2の位置に移動させるように前記押圧機構の制御を行うことを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、押圧部材を有する構成において、生産性の低下を抑制しつつ、経時的な押圧部材の変形を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】画像形成装置の概略断面図である。
図2】押圧機構を示す概略側面図である。
図3】実施例1の画像形成装置の要部の制御態様を示す概略ブロック図である。
図4】実施例1の制御のフローチャート図である。
図5】画像形成装置の各状態における押圧部材の位置を説明するための模式図である。
図6】実施例2の画像形成装置の要部の制御態様を示す概略ブロック図である。
図7】実施例2の制御のフローチャート図である。
図8】画像形成装置の各状態における押圧部材の位置の他の例を説明するための模式図である。
図9】実施例3の制御のフローチャート図である。
図10】オフセット機構を示す概略側面図である。
図11】実施例4の画像形成装置の要部の制御態様を示す概略ブロック図である。
図12】実施例4の制御のフローチャート図である。
図13】記録材の搬送姿勢を説明するための概略断面図である。
図14】オフセット量を説明するための概略断面図である。
図15】押圧量(侵入量)を説明するための概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0017】
[実施例1]
1.画像形成装置の全体的な構成及び動作
図1は、本実施例の画像形成装置100の概略断面図である。本実施例の画像形成装置100は、中間転写方式を採用したタンデム型の複合機(複写機、プリンタ、ファクシミリ装置の機能を有する。)である。画像形成装置100は、例えば、外部装置から送信された画像信号に応じて、電子写真方式を用いて紙などのシート状の記録材(転写材、シート材、記録媒体、メディア)Pにフルカラー画像を形成することができる。
【0018】
画像形成装置100は、複数の画像形成部(ステーション)として、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の画像を形成する4つの画像形成部10Y、10M、10C、10Kを有する。これらの画像形成部10Y、10M、10C、10Kは、後述する中間転写ベルト7の略水平に配置される画像転写面の移動方向に沿って直列状に配置されている。各画像形成部10Y、10M、10C、10Kにおける同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、いずれかの色用の要素であることを示す符号の末尾のY、M、C、Kを省略して総括的に説明することがある。本実施例では、画像形成部10は、後述する感光ドラム1(1Y、1M、1C、1K)、帯電器2(2Y、2M、2C、2K)、露光装置3(3Y、3M、3C、3K)、現像器4(4Y、4M、4C、4K)、1次転写ローラ5(5Y、5M、5C、5K)、クリーニング装置6(6Y、6M、6C、6K)などを有して構成される。
【0019】
トナー像を担持する第1の像担持体としての、回転可能なドラム型(円筒形)の感光体(電子写真感光体)である感光ドラム1は、駆動源としてのドラム駆動モータ111(図3)から駆動力が伝達されて、図中矢印R1方向(反時計回り)に回転駆動される。回転する感光ドラム1の表面は、帯電手段としての帯電器2によって所定の極性(本実施例では負極性)の所定の電位に一様に帯電処理される。帯電処理時に、帯電器2には、帯電電源(図示せず)により所定の帯電電圧が印加される。帯電処理された感光ドラム1の表面は、露光手段(静電像形成手段)としての露光装置3によって画像信号に応じて走査露光され、感光ドラム1上に静電像(静電潜像)が形成される。本実施例では、露光装置3は、画像信号(画像情報)に応じて変調されたレーザ光を感光ドラム1上に照射するレーザスキャナー装置で構成されている。感光ドラム1上に形成された静電像は、現像手段としての現像器4によって現像剤としてのトナーが供給されて現像(可視化)され、感光ドラム1上にトナー像(現像剤像)が形成される。本実施例では、一様に帯電処理された後に露光されることで電位の絶対値が低下した感光ドラム1上の露光部(イメージ部)に、感光ドラム1の帯電極性と同極性(本実施例では負極性)に帯電したトナーが付着する(反転現像)。現像器4は、現像剤を担持して感光ドラム1との対向部である現像位置に搬送する、回転可能な現像剤担持体である現像ローラを有している。現像ローラは、例えば感光ドラム1の駆動系から駆動力が伝達されることによって回転駆動される。また、現像時に、現像ローラには、現像電源(図示せず)により所定の現像電圧が印加される。
【0020】
4つの感光ドラム1Y、1M、1C、1Kと対向するように、トナー像を担持する第2の像担持体としての、無端状のベルトで構成された回転可能な中間転写体である中間転写ベルト7が配置されている。中間転写ベルト7は、複数の張架ローラ(支持ローラ)としての駆動ローラ22、上流補助ローラ23a、下流補助ローラ23b、テンションローラ25、2次転写前ローラ24、及び内ローラ21に掛け回されて、所定のテンション(張力)で張架されている。駆動ローラ22は、中間転写ベルト7に駆動力を伝達する。テンションローラ25は、中間転写ベルト7に所定のテンションを付与し、中間転写ベルト7のテンションを一定に制御する。2次転写前ローラ24は、中間転写ベルト7の回転方向(走行方向)に関して2次転写ニップN2(後述)の上流近傍の中間転写ベルト7の面を形成する。内ローラ(2次転写対向ローラ、内部材)21は、外ローラ9(後述)の対向部材(対向電極)として機能する。上流補助ローラ23a、下流補助ローラ23bは、略水平に配置される画像転写面を形成する。駆動源としてのベルト駆動モータ112(図3)から駆動力が伝達されることによって、駆動ローラ22が回転駆動されることで、図中矢印R2方向(時計回り)に回転(周回移動)する。本実施例では、中間転写ベルト7は、周速度が150~470mm/secとなるように回転駆動される。複数の張架ローラのうち駆動ローラ22以外の張架ローラは、中間転写ベルト7の回転に伴って従動して回転する。中間転写ベルト7の内周面側には、各感光ドラム1Y、1M、1C、1Kに対応して、1次転写手段としてのローラ状の1次転写部材である1次転写ローラ5Y、5M、5C、5Kが配置されている。1次転写ローラ5は、中間転写ベルト7を感光ドラム1に向けて押圧して、感光ドラム1と中間転写ベルト7との接触部である1次転写部としての1次転写ニップN1を形成する。また、中間転写ベルト7の内周面側において、中間転写ベルト7の回転方向に関して内ローラ21よりも上流かつ2次転写前ローラ24よりも下流には、押圧部材26が設けられている。押圧部材26は、中間転写ベルト7の内周面に接触して、中間転写ベルト7を内周面側から外周面側へ押圧することができる。これにより、押圧部材26は、内ローラ21と2次転写前ローラ24との間に形成される中間転写ベルト7の張り面T(図2)を、中間転写ベルト7の内周面側から外周面側へ張り出させることができる。押圧部材26、及びこの押圧部材26の位置を変更する押圧機構16については後述して更に説明する。
【0021】
上述のように感光ドラム1上に形成されたトナー像は、1次転写ニップN1において、1次転写ローラ5の作用によって、回転している中間転写ベルト7上に1次転写される。1次転写時に、1次転写ローラ5には、1次転写電源(図示せず)により、トナーの正規の帯電極性(現像時のトナーの帯電極性)とは逆極性(本実施例では正極性)の直流電圧である1次転写電圧が印加される。例えば、フルカラー画像の形成時には、各感光ドラム1上に形成されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像が、中間転写ベルト7上の同一画像形成領域に重ね合わされるようにして順次1次転写される。本実施例では、1次転写ニップN1が、中間転写ベルト7にトナー像を形成する画像形成位置である。そして、中間転写ベルト7は、画像形成位置で担持されたトナー像を搬送する回転可能な無端状のベルトの一例である。
【0022】
中間転写ベルト7の外周面側において、内ローラ21と対向する位置には、2次転写手段としてのローラ状の2次転写部材(転写回転体)である外ローラ(2次転写ローラ、外部材)9が配置されている。外ローラ9は、中間転写ベルト7を介して内ローラ21に向けて押圧され、中間転写ベルト7と外ローラ9との接触部である2次転写部としての2次転写ニップN2を形成する。上述のように中間転写ベルト7上に形成されたトナー像は、2次転写ニップN2において、外ローラ9の作用によって、中間転写ベルト7と外ローラ9とに挟持されて搬送されている記録材P上に2次転写される。本実施例では、2次転写時に、外ローラ9には、2次転写電源(高圧印加手段)18により、トナーの正規の帯電極性とは逆極性(本実施例では正極性)の定電圧制御された直流電圧である2次転写電圧が印加される。本実施例では、例えば、+1~+7KVの2次転写電圧が印加され、+40~+120μAの2次転写電流が流されることで、中間転写ベルト7上のトナー像が記録材P上に2次転写される。本実施例では、内ローラ21は、電気的に接地(グランドに接続)されている。なお、内ローラ21を2次転写部材として用いてこれにトナーの正規の帯電極性と同極性の2次転写電圧を印加し、外ローラ9を対向電極として用いてこれを電気的に接地してもよい。
【0023】
記録材Pは、中間転写ベルト7上のトナー像とタイミングが合わされて2次転写ニップN2へと搬送されてくる。つまり、記録材収納部としての記録材カセット11に格納された記録材Pは、給送手段としての給送部材である給送ローラなどによって、搬送手段としての搬送部材であるレジストローラ(レジストローラ対)8まで搬送され、一旦停止させられる。そして、この記録材Pは、2次転写ニップN2において中間転写ベルト7上のトナー像と記録材P上の所望の画像形成領域とが一致するようにレジストローラ8が回転駆動されることで、2次転写ニップN2に送り込まれる。
【0024】
記録材Pの搬送方向に関して、レジストローラ8よりも下流かつ2次転写ニップN2よりも上流には、2次転写ニップN2に記録材Pを案内する搬送ガイド14が設けられている。搬送ガイド14は、記録材Pのオモテ面(搬送ガイド14を通過した直後にトナー像が転写される面)に接触可能な第1のガイド部材14aと、記録材Pのウラ面(オモテ面とは反対側の面)に接触可能な第2のガイド部材14bと、を有して構成される。第1のガイド部材14aと第2のガイド部材14bとは対向して配置され、これら両部材の間を記録材Pが通過する。第1のガイド部材14aは、記録材Pの中間転写ベルト7に近づく方向への移動を規制する。第2のガイド部材14bは、記録材Pの中間転写ベルト7から遠ざかる方向への移動を規制する。
【0025】
トナー像が転写された記録材Pは、定着前搬送装置41により、定着手段としての定着装置40へと搬送される。定着前搬送装置41は、記録材Pの搬送方向と略直交する方向に関する中央部に、同方向の幅が100~110mm、厚みが1~3mmの、EPDMなどのゴム材料で形成されたベルト体を回動可能に有している。定着前搬送装置41は、このベルト体上に記録材Pを載せて搬送する。このベルト体には、直径3~7mmの穴があいており、内周面側から空気を吸引することで記録材Pの担持力が高められ、記録材Pの搬送性が安定させられている。定着装置40は、通電により発熱するヒータ40aと、記録材Pを挟持して搬送する定着回転体対40bと、を有する。定着装置40は、制御部200(図3)によってヒータ40aへの通電が制御され、定着回転体対40bのうち少なくとも一方の回転体がヒータ40aにより加熱されて、所定の温度(定着温度)となるように温調が行われる。定着装置40は、未定着のトナー像を担持した記録材Pを定着回転体対40bによって挟持して搬送する過程で加熱及び加圧することによって、トナー像を記録材Pの表面に定着(溶融、固着)させる。その後、トナー像が定着された記録材Pは、排出手段としての排出部材である排出ローラなどによって、画像形成装置100の装置本体110の外部(機外)に設けられた排出トレイ15へと排出(出力)される。
【0026】
一方、1次転写後に感光ドラム1上に残留したトナー(1次転写残トナー)は、クリーニング手段としてのクリーニング装置6によって感光ドラム1上から除去されて回収される。また、2次転写後に中間転写ベルト7上に残留したトナー(2次転写残トナー)や記録材Pから付着した紙粉などの付着物は、中間転写体クリーニング手段としてのベルトクリーニング装置12によって中間転写ベルト7上から除去されて回収される。本実施例では、ベルトクリーニング装置12は、中間転写ベルト7上の2次転写残トナーなどの付着物を静電的に回収してクリーニングする。
【0027】
なお、本実施例では、複数の張架ローラに張架された中間転写ベルト7、各1次転写ローラ5、ベルトクリーニング装置12、これらを支持するフレームなどを有して、ベルト搬送装置としての中間転写ベルトユニット20が構成されている。中間転写ベルトユニット20は、メンテナンス又は交換のために装置本体110に対して着脱可能とされている。
【0028】
ここで、中間転写ベルト7としては、単層又は多層構造の樹脂系材料で構成されたもの、弾性材料で構成された弾性層を備えた多層構造のものなどを使用することができる。また、中間転写ベルト7としては、例えば、厚さが40μm以上、ヤング率が1.0GPa以上、表面抵抗率が1.0×10~5.0×1013Ω/□であるものを好ましく用いることができる。
【0029】
また、本実施例では、1次転写ローラ5は、金属製の芯金(芯材)の外周に、イオン導電系発泡ゴムで形成された弾性層が設けられて構成されている。また、本実施例では、1次転写ローラ5は、外径が15~20mmであり、電気抵抗値が23℃、50%RH環境で2kVの電圧を印加して測定した場合に1×10~1×10Ωである。
【0030】
また、本実施例では、外ローラ9は、金属製の芯金(芯材)の外周に、イオン導電系発泡ゴムの弾性層が設けられて構成されている。また、本実施例では、外ローラ9は、外径が例えば20~25mmであり、電気抵抗値が23℃、50%RH環境で2kVの電圧を印加して測定した場合に1×10~1×10Ωである。また、本実施例では、外ローラ9は、その回転軸線方向の両端部が軸受9a(図2)によって回転可能に支持されている。軸受9aは、内ローラ21に向かう方向及びその反対方向にスライド移動可能とされており、付勢手段としての付勢部材(弾性部材)である圧縮ばねで構成された押圧ばね9b(図2)によって内ローラ21に向かって押圧される。これにより、外ローラ9は、中間転写ベルト7を挟んで内ローラ21に対して所定の圧力で当接し、2次転写ニップN2を形成する。
【0031】
また、本実施例では、内ローラ21は、金属製の芯金(芯材)外周に、電子導電性のゴムの弾性層が設けられて構成されている。また、本実施例では、内ローラ21は、外径が例えば10~22mm(一例として16mm)であり、電気抵抗値が23℃、50%RH環境で50Vの電圧を印加して測定した場合に1×10~1×10Ωである。なお、2次転写前ローラ24は、例えば、内ローラ21と同様の構成とすることができる。
【0032】
また、本実施例では、内ローラ21を含む中間転写ベルト7の張架ローラ、外ローラ9のそれぞれの回転軸線方向は互いに略平行である。
【0033】
2.押圧部材、押圧機構
次に、本実施例における押圧部材26、及びこの押圧部材26の位置を変更する押圧機構16について説明する。図2(a)、(b)は、本実施例における2次転写ニップN2の近傍を内ローラ21の回転軸線方向の一端部側(図1の紙面手前側)から該回転軸線方向と略平行に見た要部の概略側面図である。図2(a)は押圧部材26が中間転写ベルト7を所定の押圧力で押圧した状態、図2(b)は押圧部材が中間転写ベルト7から離間した状態を示す。図2(a)、(b)には、内ローラ21の回転軸線方向の一端部の構成を示しているが、他端部の構成も同様(内ローラ21の回転軸線方向の中央に対して略対称)である。
【0034】
本実施例では、画像形成装置100は、シート状の押圧部材(バックアップシート)26を有する。押圧部材26は、2次転写ニップN2の入口近傍において、中間転写ベルト7の内周面を押圧して中間転写ベルト7を外周面側に張り出させることができる。押圧部材26は、中間転写ベルト7の回転方向に関して、内ローラ21よりも上流、かつ、2次転写前ローラ24よりも下流で中間転写ベルト7の内周面に接触可能なように配置されている。特に、本実施例では、押圧部材26は、記録材Pの搬送方向に関して、内ローラ21よりも上流、かつ、搬送ガイド14(第1のガイド部材14a)の下流側の先端よりも下流の位置に対応する中間転写ベルト7の内周面に接触可能なように配置されている。
【0035】
押圧部材26は、樹脂材料を用いて形成することができる。押圧部材26を形成する樹脂材料としては、例えば、PET樹脂などのポリエステル樹脂などを好適に用いることができる。本実施例では、押圧部材26は、中間転写ベルト7の幅方向(表面の移動方向と略直交する方向)と略平行に配置される長手方向と、該長手方向と略直交する短手方向と、にそれぞれ所定の長さを有し、所定の厚さを有する板状の部材で構成されている。押圧部材26の長手方向の長さは、中間転写ベルト7の幅方向の長さと同等である。そして、押圧部材26は、その短手方向の一端部(中間転写ベルト7の回転方向の下流側の端部)である自由端部が、中間転写ベルト7の略全幅にわたり、中間転写ベルト7の内周面に接触可能であり、中間転写ベルト7を押圧可能である。また、一例として、押圧部材26の厚さは0.4mm~0.6mm程度である。
【0036】
なお、例えば、押圧部材26としてPET樹脂シートを用いる場合、電気抵抗が低すぎるPET樹脂シートを用いると、外ローラ9への2次転写電圧の印加に伴い押圧部材26に電流が流れて、転写不良を生じさせる可能性がある。反対に電気抵抗が高すぎるPET樹脂シートを用いると、押圧部材26と中間転写ベルト7との摩擦によって静電気(摩擦帯電)が生じ、押圧部材26に中間転写ベルト7が吸着して、中間転写ベルト7の回転を妨げる可能性がある。そのため、押圧部材26としては、中抵抗の電気抵抗(例えば、体積抵抗率が1×10~1×10Ω・cm)に調整されたPET樹脂シートを用いることが好ましい。
【0037】
そして、本実施例では、画像形成装置100は、押圧部材26の位置を変更して、押圧部材26の中間転写ベルト7に対する押圧量、又は押圧部材26の中間転写ベルト7に対する当接又は離間の状態を変更する、押圧機構16を有する。特に、本実施例では、押圧機構16は、押圧部材26の中間転写ベルト7に対する当接又は離間の状態を変更する。押圧部材26は、支持部材としての押圧部材ホルダ28によって支持されている。押圧部材26は、その短手方向の一端部(中間転写ベルト7の回転方向の上流側の端部)である固定端部が長手方向の略全幅にわたって押圧部材ホルダ28に固定されている。押圧部材ホルダ28は、押圧部材回動軸28aを中心に回動可能なように、中間転写ベルトユニット20のフレームなどに支持されている。このように、押圧部材ホルダ28を押圧部材回動軸28aの周りに回動させ、押圧部材26を押圧部材回動軸28aの周りに回動させることで、押圧部材26の位置を変更することができる。これにより、押圧部材26の中間転写ベルト7に対する押圧量、又は押圧部材26の中間転写ベルト7に対する当接又は離間の状態(特に、本実施例では当接又は離間の状態)を変更することができる。押圧部材ホルダ28は、作動部材としての押圧カム27の作用により回動するように構成されている。押圧カム27は、押圧カム回動軸27aを中心に回動可能なように、中間転写ベルトユニット20のフレームなどに支持されている。押圧カム27は、駆動源としての押圧カム駆動モータ211からの駆動を受けて押圧カム回動軸27を中心に回動する。また、押圧カム27は、押圧部材ホルダ28に設けられたカムフォロワ28bと接触している。また、押圧部材ホルダ28は、カムフォロワ28bが押圧カム27と係合する方向に回動するように、付勢手段としての付勢部材(弾性部材)である引張りばねなどで構成された回動ばね29によって付勢されている。また、本実施例では、画像形成装置100には、押圧カム27の回動方向の位置、特に、本実施例では回動方向におけるホームポジション(HP)を検知するための位置検知手段として、押圧カム位置センサ(カムHPセンサ)212が設けられている。押圧カム位置センサ212は、例えば、押圧カム27又は押圧カム27と同軸上に設けられた指示部としてのフラグ、検知部としてのフォトインタラプタなどを有して構成することができる。このように、本実施例では、押圧部材ホルダ28、押圧カム27、押圧カム駆動モータ211、押圧カム位置センサ212、回動ばね29などを有して押圧機構16が構成されている。
【0038】
図2(a)に示すように、押圧部材26によって中間転写ベルト7を押圧する際には、押圧カム27が押圧カム駆動モータ211によって駆動されて時計回りに回動する。これにより、押圧部材回動軸28aを中心に反時計回りに押圧部材ホルダ28が回動して、押圧部材26の中間転写ベルト7に対する押圧量が所定の押圧量となる第1の押圧部材位置に、押圧部材26が配置された状態となる。本実施例では、このとき押圧部材26の先端が2次転写ニップN2の入口近傍の中間転写ベルト7の内周面に当接し、中間転写ベルト7を外周面側に張り出させる。
【0039】
また、図2(b)に示すように、押圧部材26を中間転写ベルト7から離間させる際には、押圧カム27が押圧カム駆動モータ211により駆動され反時計回りに回動する。これにより、押圧部材回動軸28aを中心に時計回りに押圧部材ホルダ28が回動して、押圧部材26が中間転写ベルト7から離間する第2の押圧部材位置に、押圧部材26が配置された状態となる。
【0040】
図2(a)に示すように、押圧部材26が、中間転写ベルト7と接触して、中間転写ベルト7を所定の押圧力で押圧するときには、中間転写ベルト7の張り面Tが変化し、2次転写ニップN2の近傍のテンションが強くなる。これにより、中間転写ベルト7の振動やそれによる白抜け現象の発生が抑制される。
【0041】
ここで、押圧部材26の中間転写ベルト7に対する押圧量が大きいほど、中間転写ベルト7の回転方向に関する2次転写ニップ部N2の上流における中間転写ベルト7の振動を防止する効果が大きくなる。一方、押圧量が大きくなり過ぎると、次のような問題が生じることがある。つまり、2次転写ニップN2の近傍で中間転写ベルト7上の未定着トナー像と記録材Pとがこすれる画像不良が発生することがある。また、記録材Pの搬送方向の後端が搬送ガイド14を抜けた時に記録材Pの搬送方向の後端部が中間転写ベルト7に衝突することによるショックが大きくなることによる画像不良が発生することがある。そのため、押圧部材26の中間転写ベルト7に対する押圧量(後述する侵入量Y)の初期設定値(所定の押圧力)は、1.0~3.0mmに設定されている。また、押圧部材26は、内ローラ21にできる限り近接させることが望ましいが、内ローラ21と接触しないように配置することが望まれる。押圧部材26は、内ローラ21と中間転写ベルト7とが接触する位置から中間転写ベルト7の回転方向の上流側へ例えば2mm程度以上離した位置で、中間転写ベルト7の内周面と押圧部材26の先端とが接触するように配置することができる。また、押圧部材26は、内ローラ21と中間転写ベルト7とが接触する位置から中間転写ベルト7の回転方向の上流側へ40mm以下程度離した位置で、中間転写ベルト7の内周面と押圧部材26の先端とが接触するように配置されるのが好適である。典型的には、押圧部材26は、内ローラ21と中間転写ベルト7とが接触する領域から中間転写ベルト7の回転方向の上流側へ25mm以内の中間転写ベルト7の内周面に接触可能なように配置される。
【0042】
図2(a)に示すように、第1の押圧部材位置(ここでは「押圧位置」ともいう。)に押圧部材26が配置された状態で画像形成装置100が放置されると、経時的な押圧部材26の変形の要因となる。
【0043】
一方、図2(b)に示すように、第2の押圧部材位置(ここでは「離間位置」ともいう。)に押圧部材26が配置された状態で画像形成装置100が放置されても、経時的な押圧部材26の変形は進行しない。しかし、離間位置に押圧部材26が配置された状態では、押圧部材26によって中間転写ベルト7にテンションが加えられていないため、白抜け現象の発生を抑制する効果が得られない。
【0044】
そこで、本実施例では、押圧部材26と中間転写ベルト7の接触時間帯を、画像形成動作の実行と関連付けられる特定期間に限定するようにしている。これにより、押圧部材26の変形を抑制しつつ、画像形成動作時には中間転写ベルト7の張り面Tを変化させることで白抜け現象の発生を抑制する。
【0045】
また、押圧部材26を中間転写ベルト7に接触させる動作は、画像形成動作中に行うと中間転写ベルト7にショックを与えてしまうおそれがある。そのため、押圧部材26を中間転写ベルト7に接触させる動作は、画像形成動作を行っていない時に実施する必要がある。また、感光ドラム1上に形成された各色のトナー像を中間転写ベルト7上に1次転写する際に押圧部材26で中間転写ベルト7を押圧すると、各色のトナー像の重ね合わせが乱れ、画像不良を引き起こしてしまうおそれがある。
【0046】
そのため、本実施例では、詳しくは後述するような押圧部材26の動作の制御を行う。
【0047】
3.押圧量、オフセット量
押圧部材26の中間転写ベルト7に対する押圧量について更に説明する。押圧部材26の中間転写ベルト7に対する押圧量は、次のような押圧部材26の中間転写ベルト7に対する侵入量で表すことができる。この侵入量は、概略、押圧部材26が、内ローラ21又は外ローラ9と、2次転写前ローラ24と、で張架されて形成される中間転写ベルト7の張り面(張架面)Tに対して、中間転写ベルト7を外側に張り出させる量である。2次転写前ローラ24は、複数の張架ローラのうち内ローラ21よりも中間転写ベルト7の回転方向に関して上流で内ローラ21に隣接して配置された上流ローラの一例である。この侵入量の定義は、より詳細には、内ローラ21の周方向における内ローラ21と外ローラ9との相対位置を示すオフセット量によって変わる。
【0048】
まず、オフセット量について説明する。図14は、内ローラ21と外ローラ9との相対位置を示すオフセット量Xの定義を説明するための2次転写ニップN2の近傍の模式的な断面図(内ローラ21の回転軸線方向と略直交する断面)である。図14に示す断面において、中間転写ベルト7が掛け回される側の内ローラ21と2次転写前ローラ24との共通の接線を基準線L1とする。基準線L1は、押圧部材26によって中間転写ベルト7が外周面側に張り出されていない場合の中間転写ベルト7の張り面Tに対応する。また、同断面において、内ローラ21の回転中心を通り基準線L1と略直交する直線を内ローラ中心線L2とする。また、同断面において、外ローラ9の回転中心を通り基準線L1と略直交する直線を外ローラ中心線L3とする。このとき、内ローラ中心線L2と外ローラ中心線L3との間の距離(垂直距離)をオフセット量X(ただし、外ローラ中心線L3が内ローラ中心線L2よりも中間転写ベルト7の回転方向の上流側にあるとき正の値)と定義する。オフセット量Xは、負の値、0、正の値をとることができる。オフセット量Xを大きくすることで、中間転写ベルト7の回転方向に関する2次転写ニップN2の幅が中間転写ベルト7の回転方向の上流側に広がる。つまり、内ローラ21と中間転写ベルト7との接触領域の中間転写ベルト7の回転方向の上流側の端部よりも、外ローラ9と中間転写ベルト7との接触領域の中間転写ベルト7の回転方向の上流側の端部の方がより上流側に位置するようになる。このように、内ローラ21又は外ローラ9の少なくとも一方の位置を変更し、内ローラ21の周方向に関して、内ローラ21と外ローラ9との相対位置を変更させて、2次転写ニップ(転写部)N2の位置を変更することができる。
【0049】
次に、侵入量(押圧量)について説明する。図15(a)、(b)は、中間転写ベルト7に対する押圧部材26の侵入量Yの定義を説明するための2次転写ニップN2の近傍の模式的な断面図(内ローラ21の回転軸線方向と略直交する断面)である。なお、侵入量Yの定義は、オフセット量Xが正の場合と、0又は負の場合と、で異なる。一般に、押圧部材26によって押圧されない状態での中間転写ベルト7の張り面Tが内ローラ21と2次転写前ローラ24とで形成されるか、又は外ローラ9と2次転写前ローラ24とで形成されるかがオフセット量Xによって変わるからである。図15(a)はオフセット量Xが0又は負の値(特に負の値)である場合を示し、図15(b)はオフセット量Xが正の値である場合を示している。
【0050】
まず、オフセット量Xが0又は負の値である場合について説明する。図15(a)に示す断面において、中間転写ベルト7が掛け回される側の内ローラ21と2次転写前ローラ24との共通の接線を基準線L1とする。また、同断面において、基準線L1と略平行な、押圧部材26が中間転写ベルト7と接触する領域において中間転写ベルト7の外周面に接触する中間転写ベルト7の接線を押圧部接線L4とする。このとき、オフセット量Xが0又は負の値の場合、基準線L1と押圧部接線L4との間の距離(垂直距離)を、中間転写ベルト7に対する押圧部材26の侵入量Y(ただし、押圧部接線L4が基準線L1よりも中間転写ベルト7の外周面側にあるとき正の値)と定義する。この侵入量Yは、0、正の値をとることができる。
【0051】
次に、オフセット量Xが正の値である場合について説明する。図15(b)に示す断面において、中間転写ベルト7が掛け回される側の外ローラ9と2次転写前ローラ24との共通の接線を基準線L1’とする。また、同断面において、基準線L1’と略平行な、押圧部材26が中間転写ベルト7と接触する領域において中間転写ベルト7の外周面に接触する中間転写ベルト7の接線を押圧部接線L4’とする。このとき、オフセット量Xが正の値の場合、基準線L1’と押圧部接線L4’との間の距離(垂直距離)を、中間転写ベルト7に対する押圧部材26の侵入量Y(ただし、押圧部接線L4’が基準線L1’よりも中間転写ベルト7の外周面側にあるとき正の値)と定義する。この侵入量Yは、0、正の値をとることができる。
【0052】
一例として、本実施例では、押圧部材26が第1の押圧部材位置に配置された際の侵入量Yである第1の侵入量Y1は1.5mmである。また、本実施例では、押圧部材26が第2の押圧部材位置に配置された際の侵入量Yである第2の侵入量Y2は0mmであり、このとき押圧部材26の先端は中間転写ベルト7の内周面から離間する。
【0053】
4.制御態様
図3は、本実施例の画像形成装置100の要部の制御態様を示す概略ブロック図である。制御手段としての制御部200は、演算処理を行う中心的素子である演算制御手段としてのCPU、記憶手段としてのROM、RAMなどのメモリ(記憶媒体)、インターフェース部(入出力回路)などを有して構成される。書き換え可能なメモリであるRAMには、制御部200に入力された情報、検知された情報、演算結果などが格納され、ROMには制御プログラム、予め求められたデータテーブルなどが格納されている。CPUとメモリとは互いにデータの転送や読込みが可能となっている。インターフェース部は、制御部200とこれに接続された機器との間の信号の入出力(通信)を制御する。
【0054】
制御部200には、画像形成装置100の各部(画像形成部10、中間転写ベルト7及び記録材Pの搬送に関する部材の駆動装置、各種電源など)が接続されている。本実施例との関係では、制御部200は、機能ブロックとして、演算部201、駆動制御部210、記憶部220を有する。演算部201、駆動制御部210は、上記CPUが所定のプログラムに従って動作することで実現される。記憶部220は上記メモリによって実現される。駆動制御部210には、例えば、ドラム駆動モータ111、ベルト駆動モータ112、押圧カム駆動モータ211などの、画像形成装置100の各部の駆動手段が接続されている。駆動制御部210は、演算部201からの指令によって、例えば、上記例示のものを含む画像形成装置100の各部を動作させる。記憶部220には、押圧カム27のホームポジション(HP)を検知する押圧カム位置センサ212から取得した押圧カム位置情報222が記憶される。また、記憶部220には、最適画像を得るために押圧カム27を所定の位置に回転駆動するための押圧量変換テーブル223などが記憶されている。
【0055】
また、制御部200には、画像形成装置100に設けられた操作部(操作パネル)101が接続されている。操作部101は、制御部200の制御によって情報を表示する表示手段、及びユーザやサービス担当者などの操作者による操作によって制御部200に情報を入力する入力手段を有する。操作部101は、表示手段及び入力手段の機能を有するタッチパネルを有して構成されていてよい。また、制御部200には、画像形成装置100に設けられるか又は画像形成装置100に接続された画像読取装置(図示せず)や、画像形成装置100に接続されたパーソナルコンピュータなどの外部装置(図示せず)が接続されていてよい。
【0056】
制御部200は、ジョブの情報に基づいて画像形成装置100の各部を制御して画像形成動作を行なわせる。ジョブの情報は、操作部101や外部装置から入力される開始指示(開始信号)、記録材Pの種類などの画像形成条件に関する情報(指令信号)を含む。また、ジョブの情報は、画像読取装置、外部装置あるいは操作部101から入力される画像情報(画像信号)を含む。なお、記録材Pの種類に関する情報(単に「記録材に関する情報」ともいう。)とは、普通紙、上質紙、光沢紙、コート紙、エンボス紙、厚紙、薄紙などの一般的な特徴に基づく属性(いわゆる、紙種カテゴリー)、坪量、厚さ、サイズ、剛度などの数値や数値範囲、あるいは銘柄(メーカー、品番などを含む。)などの、記録材を区別可能な任意の情報を包含するものである。また、本実施例では、制御部200は、押圧機構16の押圧カム駆動モータ211を制御することにより、押圧部材26の位置を変更する動作を制御する。
【0057】
画像形成装置100は、1つの開始指示により開始される、単一又は複数の記録材Pに画像を形成して出力する一連の動作であるジョブ(プリントジョブ、印刷ジョブ)を実行する。ジョブは、一般に、画像形成工程(画像形成動作、プリント動作、印刷動作)、前回転工程、複数の記録材Pに画像を形成する場合の紙間工程、及び後回転工程を有する。画像形成工程は、実際に記録材Pに形成して出力する画像の静電像の形成、トナー像の形成、トナー像の1次転写、2次転写を行う期間であり、画像形成時(画像形成期間)とはこの期間のことをいう。より詳細には、これら静電像の形成、トナー像の形成、トナー像の1次転写、2次転写の各工程を行う位置で、画像形成時のタイミングは異なる。前回転工程は、開始指示が入力されてから実際に画像を形成し始めるまでの、画像形成工程の前の準備動作を行う期間である。紙間工程は、複数の記録材Pに対する画像形成を連続して行う際(連続画像形成)の記録材Pと記録材Pとの間に対応する期間である。後回転工程は、画像形成工程の後の整理動作(準備動作)を行う期間である。非画像形成時(非画像形成期間)とは、画像形成時以外の期間であって、上記前回転工程、紙間工程、後回転工程、更には画像形成装置100の電源投入時又はスリープモード(後述)からの復帰時の準備動作である前多回転工程などが含まれる。
【0058】
ここで、本実施例では、画像形成装置100には、画像形成装置100の消費電力量を低減させるスリープモードを有する。スリープモード(スリープ状態、休止状態)時には、画像形成装置100は、例えば制御部200(又はその一部)以外の画像形成装置100の各部への電力の供給が停止される。本実施例のスリープモードでは、定着装置40のヒータ40aへの通電が停止される。これにより、画像形成装置100は、スリープモード時には、後述するスタンバイモード時よりも、消費電力量が少ない状態とされる。また、本実施例では、画像形成装置100は、スリープモードよりも画像形成装置100の消費電力量を増大させて画像形成動作を待機するスタンバイモードを有する。スタンバイモード(待機状態)時には、画像形成装置100は、ジョブの情報の入力待ち状態にある。例えば、電源オフ状態から電源オン状態とされた際、スリープモードから復帰した際、又は先のジョブの画像形成動作が終了して次のジョブの情報の入力待ちをしている際に、画像形成装置100はスタンバイモードとなる。尚、スリープモードから復帰するとは、典型的には、スリープモードからスタンバイモードに移行することを指す。スタンバイモードでは、定着装置40のヒータ40aへの通電が行われて所定の温度での温調が行われる。本実施例では、スタンバイモードでは、定着装置40は画像形成動作時と同等の温度で温調が行われる。すなわち、スタンバイモードでは、画像形成装置100は、制御部200へのプリント命令(ジョブの情報)の入力により、実質的に直ちに画像形成動作を開始することが可能な状態となっている。さらに、本実施例では、画像形成装置100は、スタンバイモード時の定着装置40の温調温度を下げた低電力モードを有する。低電力モードは、スタンバイモードよりも消費電力を抑制できる代わりに、プリント命令が入力されてから出力されるまでの時間はスタンバイモードよりも長くなる。尚、低電力モードは、スタンバイモードの一部とみなすこともできる。すなわち、上記スタンバイモードを第1のスタンバイモードとしたとき、低電力モードは、スリープモードよりも消費電力量が多く、第1のスタンバイモードよりも消費電力量が少ない第2のスタンバイモードとみなすこともできる。
【0059】
なお、本実施例では、制御部200は、操作部101(又は外部装置)からの操作者による操作に応じて、スリープモードからの復帰を行うことができる。また、本実施例では、制御部200は、スタンバイモードが所定時間にわたり継続した場合に自動的に、又は操作部101(又は外部装置)からの操作者による操作に応じて、スリーブモードへの移行を行うことができる。スタンバイモードからスリープモードに自動的に切り替える場合の上記所定時間は、予め設定されていてよく、また操作部101や外部装置などから操作者が適宜設定(変更)できるようになっていてよい。また、本実施例では、制御部200は、電源オフ状態から電源オン状態への切り替え、及び電源オン状態から電源オフ状態への切り替えを、操作部101からの操作者による操作に応じて行うことができる。また、本実施例では、制御部200は、スタンバイモードから低電力モードへの切り替えを、操作部101からの操作者による操作に応じて、あるいはスタンバイモードが所定時間にわたり継続した場合に自動的に行うことができる。スタンバイモードから低電力モードに自動的に切り替える場合の上記所定時間は、予め設定されていてよく、また操作部101や外部装置などから操作者が適宜設定(変更)できるようになっていてよい。画像形成装置100は、スタンバイモード(第1のスタンバイモード)と低電力モード(第2のスタンバイモード)とのいずれか一方のみを有していてもよい。低電力モード時に画像形成装置100にジョブが投入された場合には、画像形成準備動作時に定着装置40の温調温度を画像形成動作時と同等の温度まで上昇させればよい。
【0060】
このように、本実施例では、画像形成装置100は、通電により発熱するヒータ40aを備え、記録材Pに転写されたトナー像を記録材Pに定着させる定着装置40を有する。また、本実施例では、制御部200は、ヒータ40aへの通電が行われた状態で待機するスタンバイモードと、ヒータ40aへの通電が停止された状態で待機するスリープモードと、をそれぞれ実行可能である。そして、本実施例では、制御部200は、プリントジョブの画像形成動作の終了時に押圧部材26が押圧位置(第1の位置)にある場合に、スタンバイモードに移行する場合には、押圧部材26を押圧位置(第1の位置)に維持し、スリープモードに移行する場合には、押圧部材26を離間位置(第2の位置)に移動させるように押圧機構16の制御を行う。
【0061】
更に説明すると、本実施例では、画像形成装置100は、押圧機構16を制御する制御部200に次のような信号を入力可能な入力部を有する。つまり、画像形成装置100の電源オフ状態から電源オン状態への移行を示す電源オン信号、画像形成装置100の電源オン状態から電源オフへの移行を示す電源オフ信号、画像形成装置100のスリープ状態への移行を示すスリープ移行信号、及び画像形成装置100のスリープ状態からの復帰を示すスリープ復帰信号のうち少なくとも1つである。本実施例では、電源スイッチやスリープモードスイッチを備えた操作部101や、スタンバイモードの継続時間を計測してスタンバイモードの継続時間が所定時間に達した場合に制御部200にスタンバイ移行信号を入力するタイマ(制御部200が内蔵していてよい。)などによって上記入力部が構成される。
【0062】
そして、本実施例では、制御部100は、画像形成装置100が電源オフ状態又はスリープ状態にあるときには押圧部材26が離間位置(第2の位置)にあるように押圧機構16の制御を行う。また、本実施例では、制御部200は、電源オン信号又はスリープ復帰信号が入力された場合に、プリントジョブの情報が入力される前に、押圧部材26を離間位置(第2の位置)から押圧位置(第1の位置)に移動させるように押圧機構16の制御を行う。本実施例では、制御部200は、電源オン信号又はスリープ復帰信号が入力された場合に画像形成装置100をスタンバイ状態とする制御を行い、画像形成装置100がスタンバイ状態に移行する際に押圧部材26を離間位置(第2の位置)から押圧位置(第1の位置)に移動させるように押圧機構16の制御を行う。本実施例では、入力部としての操作部101が、操作者の操作に応じてスリープ復帰信号を制御部200に入力する。
【0063】
また、本実施例では、制御部200は、電源オフ信号又はスリープ移行信号が入力された場合に、押圧部材26を押圧位置(第1の位置)から離間位置(第2の位置)に移動させるように押圧機構16の制御を行う。本実施例では、制御部200は、プリントジョブの画像形成動作の終了後に、電源オフ信号又はスリープ移行信号が入力される前に、画像形成装置100をスタンバイ状態とする制御を行い、画像形成装置100がスタンバイ状態にあるときには押圧部材26を押圧位置(第1の位置)に維持するように押圧機構16の制御を行う。本実施例のように低電力モードを有する場合は、低電力モードをスリープモードの一部とみなしても良い。この場合、スタンバイモード時には押圧部材26を押圧位置(第1の位置)に維持させ、低電力モード時には押圧部材26を離間位置(第2の位置)へ移行する構成としても良い。
【0064】
5.制御手順
次に、本実施例の画像形成装置100における押圧部材26の動作について説明する。図4は、本実施例におけるジョブの制御手順の概略を示すフローチャート図である。ここでは、操作者が装置本体110の操作部101から画像形成装置100に1つのジョブを実行させる場合を例として説明する。なお、図4には、押圧部材26の位置を変更する動作に注目した制御手順の概略が示されており、ジョブを実行して画像を出力するために通常必要となる他の多くの動作は省略されている。
【0065】
画像形成装置100の電源オフ時又はスリープモード時には、押圧部材26は、中間転写ベルト7から離間している(第2の押圧部材位置、離間位置)。制御部200は、操作者が操作部101に設けられた電源スイッチやスリープモードスイッチを操作することで操作部101から制御部200に入力される、電源オン信号又はスリープ復帰信号を取得する。すると、制御部200は、画像形成装置100に電力を投入して電源オフ状態から電源オン状態とするか、又はスリープモードからの復帰動作に入る(S101)。また、制御部200は、電源オン状態となるか又はスリープモードからの復帰動作に入ると、押圧機構16を制御して押圧部材26を所定の位置(第1の押圧部材位置、押圧位置)まで移動させ、押圧部材26で中間転写ベルト7を押圧させる(S102)。S102において、制御部200は、押圧カム位置センサ212から入力される押圧カム位置情報222に基づいて、押圧カム駆動モータ211に指令を送り、押圧カム27をHP位置まで回転駆動させる。また、S102において、制御部200は、押圧カム27のHPからの回動量などに基づいて予め設定された押圧量変換テーブル223に基づいて、押圧カム駆動モータ211に指令を送り、最適画像を得るために押圧カム27を所定の位置まで回転駆動する。これにより、押圧部材26を所定の位置まで移動させ、押圧部材26で中間転写ベルト7を押圧させる。そして、制御部200は、押圧部材26を中間転写ベルト7に押圧させた状態のまま、画像形成装置100をジョブの情報の入力待ち状態であるスタンバイモード又は低電力モードに移行させる(S103)。
【0066】
次に、制御部200は、ジョブの情報を受け付けると(S104)、ドラム駆動モータ111、ベルト駆動モータ112などの画像形成装置100の各部に指令を送り、画像形成準備動作(前回転工程)を開始させる(S105)。次に、制御部200は、所定の画像形成準備動作(前回転工程)の終了後に、露光装置3、記録材Pの搬送に関する部材の駆動装置などの画像形成装置100の各部に指令を送り、画像形成動作を開始させる(S106)。制御部200は、画像形成動作の終了後に(S107)、画像形成装置100の電源オフ信号又はスリープ移行信号を取得するまで(S108)、画像形成装置100をジョブの情報の入力待ち状態であるスタンバイモード又は低電力モードとする。制御部200は、スタンバイモードでは、押圧部材26を中間転写ベルト7に押圧させた状態のままとする。そして、制御部200は、S108で画像形成装置100の電源オフ信号又はスリープ移行信号を取得すると、押圧機構16を制御して押圧部材26を中間転写ベルト7から離間させる(S109)。S108において、制御部200は、操作者が操作部101に設けられた電源スイッチやスリープモードスイッチを操作することで操作部101から制御部200に入力される、電源オフ信号又はスリープ移行信号を取得する。あるいは、S108において、制御部200は、スタンバイモードの継続時間が所定時間に達した場合に、制御部200が内蔵するタイマからスリープ移行信号を取得する。また、S109において、制御部200は、押圧カム位置センサ212から入力される押圧カム位置情報22に基づいて、押圧カム駆動モータ211に指令を送り、押圧部材26を中間転写ベルト7から離間させ、押圧カム27をHP位置に移動させる。そして、制御部200は、押圧部材26を中間転写ベルト7から離間させた状態のまま、画像形成装置100を電源オフ状態又はスリープモードに移行させる(S110)。
【0067】
なお、ここでは1つのジョブを実行する場合を例としているため図示は省略しているが、制御部200は、S108にて電源オフ信号又はスリープ移行信号が入力される前にジョブの情報が入力された場合には、S104以降の処理を実行する。また、制御部200は、スタンバイモードに移行した後に(S103)、ジョブの情報が入力される前に電源オフ信号又はスリープ移行信号が入力された場合には(S108)、S104~S107の処理は実行せずに、S109以降の処理を実行する。
【0068】
6.効果
図5は、画像形成装置100の各状態(電源オフ、スリープモード、低電力モード、スタンバイモード、ジョブ投入後)における押圧部材26の位置を説明するための模式図である。図5中の「A」は、押圧部材26を常に中間転写ベルト7に押圧した状態とする構成における押圧部材26の位置を示す(比較例1)。また、図5中「B」は、画像形成装置100にジョブが投入された後(より詳細には前回転工程の終了後)に押圧部材26を中間転写ベルト7に当接させて中間転写ベルト7を押圧した状態とする構成における押圧部材26の位置を示す(比較例2)。図5中の「C」、「D」は、それぞれ電源オン時又はスリープモードからの復帰時に押圧部材26を中間転写ベルト7に当接させて中間転写ベルト7を押圧した状態とする本実施例の構成における押圧部材26の位置を示す。なお、図5中のフライングスタート(スタンバイモードの一形態)については実施例2で説明する。
【0069】
本実施例では、画像形成動作を行う際には、押圧部材26を中間転写ベルト7に当接させる。これにより、中間転写ベルト7の振動による空隙を低減することで、白抜け現象の発生を抑制することができる。また、本実施例では、スリープモード、低電力モードといった、長時間にわたり画像形成動作が行われず画像形成装置100が放置されると想定される場合には、押圧部材26を中間転写ベルト7から離間させる(図5中のC、D)。これにより、押圧部材26を中間転写ベルト7に当接させた状態よりも、押圧部材26の変形を抑制することができる。その結果、経時的な押圧部材26の変形を抑制しつつ、中間転写ベルト7の振動による空隙に起因する白抜け現象の発生を抑制することができる。そして、本実施例では、電源オン時又はスリープモードからの復帰時など、画像形成装置100にジョブが投入される前に押圧部材26を中間転写ベルト7に当接させる。これにより、画像形成装置100にジョブが投入された後に押圧部材26を中間転写ベルト7に当接させる場合(図5中のB)よりも早く、画像形成動作を開始することができる。その結果、生産性の低下を抑制することが可能となる。また、本実施例では、ジョブの画像形成動作の終了後に画像形成装置100がスタンバイモードにある間は押圧部材26を中間転写ベルト7に当接させた状態に維持し、電源オフ時やスリープモードへの移行時に押圧部材26を中間転写ベルト7から離間させる。これにより、スタンバイモード中にジョブの情報が入力された場合には、無駄な押圧部材26の移動を行うことなく、ジョブの画像形成動作をより早く開始することができる。その結果、生産性の低下を抑制することが可能となる。
【0070】
なお、本実施例では、押圧部材26が第2の押圧部材位置に配置された際には押圧部材26が中間転写ベルト7から離間するが、本発明はこれに限定されるものではない。押圧部材26は、第2の押圧部材位置に配置された際に、第1の押圧部材位置に配置された際の第1の押圧量(第1の侵入量Y1)よりも小さい第2の押圧量(第2の侵入量Y2)で中間転写ベルト7に当接してもよい。この場合、第1の押圧量(第1の侵入量Y1)は正の値であり、第2の押圧量(第2の侵入量Y2)は正の値であってもよいし、0であってもよい(すなわち、Y1>Y2≧0)。つまり、画像形成装置100が放置されている際に、押圧部材26が中間転写ベルト7を画像形成動作時の所定の押圧力より小さい押圧力で中間転写ベルト7に当接するようにしてもよい。この場合も、押圧部材26が中間転写ベルト7を画像形成動作時の所定の押圧力で押圧する場合よりも、押圧部材26の変形を抑制することができる。また、この場合も、画像形成装置100にジョブが投入される前に押圧部材26の中間転写ベルト7に対する押圧量を変更する。これにより、画像形成装置100にジョブが投入された後に押圧量を変更する(例えば前回転の終了後に押圧量を変更する)場合よりも早く、画像形成動作を開始することができ、生産性の低下を抑制することが可能となる。
【0071】
また、本実施例では、押圧部材26は、ポリエステル樹脂などの樹脂材料で形成されたシート状の部材であったが、本発明はこれに限定されるものではない。長期間の押圧によって変形が予想される材料(例えば、ソリッドゴムや発泡ゴムなど)で押圧部材26(例えば、パッド状のものなど)が形成されている場合には、本発明を適用することで、本実施例と同様の効果が得られる。
【0072】
[実施例2]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1の画像形成装置のものと同じである。したがって、本実施例の画像形成装置において、実施例1の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素には、実施例1と同一の符号を付して、詳しい説明は省略する。
【0073】
実施例1では、制御部200は、操作者による操作に応じて電源オン信号又はスリープ復帰信号が入力された時点を起点として、押圧部材26の中間転写ベルト7への当接を行った。本実施例では、より具体的なスリープモードからの復帰の一例として、制御部200は、人感センサがユーザなどの操作者の人体を感知したことを示す信号が入力された時点を起点として、押圧部材26の中間転写ベルト7への当接を行う。つまり、本実施例では、制御部200は、入力部としての人感センサが、操作者による操作(ジョブの開始指示の入力など)が予測される状況を感知して制御部200にスリープ復帰信号を入力したことに応じて、押圧部材26の中間転写ベルト7への当接を行う。
【0074】
図6は、本実施例の画像形成装置100の要部の制御態様を示す概略ブロック図である。本実施例の画像形成装置100の制御態様は、図3に示す実施例1の画像形成装置100のものと同様であるが、本実施例では制御部200には、人感センサ102が接続されている。本実施例では、操作部101に人感センサ102が搭載されている。なお、本実施例では、操作部101内に人感センサ102が設けられているが、人体の接近と離脱の検知結果を示す信号を制御部200へ伝達できるように構成されていれば、人感センサ102は装置本体110の他の箇所に設けられていてもよい。制御部200は、人感センサ102が人体を感知したことを示す信号が人感センサ102から入力されると、演算部201からの指令によって画像形成装置100の各部を動作させて、画像形成装置100をスリープモードから復帰させる。ここでは、このようにして画像形成装置100をスリープモードから復帰させてスタンバイモードに移行させることを「フライングスタート」ともいう。このように、本実施例では、入力部としての人感センサ102は、操作者による操作の予測結果に応じて、スリープ復帰信号を制御部200に入力する。
【0075】
次に、図7を参照して本実施例の画像形成装置100における押圧部材26の動作について説明する。図7は、本実施例におけるジョブの制御手順の概略を示すフローチャート図である。ここでは、操作者が人感センサ102で感知された後に操作部101から画像形成装置100に1つのジョブを実行させる場合を例として説明する。
【0076】
画像形成装置100の電源オフ時又はスリープモード時には、押圧部材26は、中間転写ベルト7から離間している(第2の押圧部材位置、離間位置)。制御部200は、人感センサ102が人体を感知して制御部200に入力した信号を取得する(S201)。すると、制御部200は、押圧機構16を制御して押圧部材26を所定の位置(第1の押圧部材位置、押圧位置)まで移動させ、押圧部材26で中間転写ベルト7を押圧させる(S202)。その後、制御部200は、S203~S210の処理を実行する。なお、図7のS202~S210の処理は、それぞれ実施例1における図4のS102~S110の処理と同様である。
【0077】
なお、ここでは1つのジョブを実行する場合を例としているため図示は省略しているが、制御部200は、S208にて電源オフ信号又はスリープ移行信号が入力される前にジョブの情報が入力された場合には、S204以降の処理を実行する。また、制御部200は、スタンバイモードに移行した後に(S203)、ジョブの情報が入力される前に電源オフ信号又はスリープ移行信号が入力された場合には(S208)、S204~S207の処理は実行せずに、S109以降の処理を実行する。例えば、制御部200は、ジョブの情報が入力されずに、人感センサ102から人体が離脱したこと(人体が感知されなくなったこと)を示す信号が入力された際、又はそれから所定時間が経過した際に、スリープモードに移行するように制御することができる。
【0078】
図8は、画像形成装置100の各状態における押圧部材26の位置を説明するための模式図であり、図5に示したものに本実施例を追加したものである。本実施例では、人感センサ102で人体が感知されると、押圧部材26の中間転写ベルト7への当接が行われる(図8中のE)。これにより、操作者による操作が予測された時点で押圧部材26の中間転写ベルト7への当接を開始できるので、より確実に、画像形成装置100がジョブの情報を受け付けてから画像形成動作を開始するまでの期間が延長されることを抑制することができる。
【0079】
なお、本実施例では、スリープモードからの復帰の一例として、人感センサ102の検知結果を用いる場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。制御部200は、画像形成装置100に対する人体の接近に限らず、画像形成動作の開始指示が予測される状況を検知したことに応じて押圧部材26を中間転写ベルト7に当接させる動作を行うことができ、これによっても本実施例と同様の効果が得られる。例えば、制御部200は、外部装置から制御部200に画像形成装置100の状態(例えばトナーの残量、記録材の残量など)を問い合わせる信号が入力された場合に、押圧部材26を中間転写ベルト7に当接させる動作を行うことができる。この場合、外部装置との通信を制御するインターフェース部などが、操作者による操作の予測結果に応じてスリープ復帰信号を制御部200に入力する入力部として機能する。
【0080】
[実施例3]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1の画像形成装置のものと同じである。したがって、本実施例の画像形成装置において、実施例1の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素には、実施例1と同一の符号を付して、詳しい説明は省略する。
【0081】
実施例1では、記録材Pの種類などの画像形成条件によらずに、画像形成動作時に押圧部材26は所定の押圧力で中間転写ベルト7を押圧するものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、記録材Pの種類などの画像形成条件に応じて、画像形成動作時に押圧部材26が異なる押圧力で中間転写ベルト7を押圧したり、押圧部材26が中間転写ベルト7から離間されたりしてよい。
【0082】
図13(b)は、2次転写ニップN2の近傍での記録材Pの搬送姿勢を説明するための模式的な断面図(内ローラ21の回転軸線方向と略直交する断面)である。記録材Pの剛度によって、搬送ガイド14から2次転写ニップN2へと搬送される記録材Pの姿勢が変わる。例えば、記録材Pが剛度の大きい記録材Pの一例である「厚紙」の場合に、記録材Pの剛度が大きいことが原因で、2次転写ニップN2の入口近傍において中間転写ベルト7と記録材Pとの間に空隙Gが生じやすくなる。そして、転写電界の影響によって、その空隙において放電が起り、トナー像が飛び散ってしまう画像不良である「飛び散り」が発生しやすくなる。
【0083】
つまり、図13(b)において、2次転写ニップN2の入口近傍(中間転写ベルト7の回転方向に関して内ローラ21の上流近傍)において中間転写ベルト7の移動方向に沿って中間転写ベルト7と記録材Pとが接触している距離を接触距離Dと定義する。より詳細には、接触距離Dは、中間転写ベルト7の移動方向に関する、内ローラ21と中間転写ベルト7との接触開始位置と、記録材Pと中間転写ベルト7との接触開始位置と、の間の距離である。例えば記録材Pが「厚紙」の場合には、記録材Pの剛度が大きいために、2次転写ニップN2の入口近傍で屈曲しにくいことにより、接触距離Dが小さくなる。そのため、中間転写ベルト7と記録材Pとの間に空隙Gが生じ、転写電界の影響によってその空隙Gにおいて放電が起こり、飛び散りが発生することがある。
【0084】
このような課題の対策として、前述の白抜け現象の場合と同様、2次転写ニップN2の入口近傍の中間転写ベルト7の内周面に接触する押圧部材26を設けることで、2次転写ニップN2の入口近傍における空隙Gを低減することが有効である。
【0085】
図15(a)、(b)に示すように押圧部材26によって中間転写ベルト7を外周面側に張り出させることにより、接触距離Dを大きくして、2次転写ニップN2の入口近傍における中間転写ベルト7と記録材Pとの空隙Gを低減することができる。これにより、「飛び散り」を抑制することができる。
【0086】
そこで、本実施例では、画像形成装置100は、記録材Pの剛度と関連する記録材Pの種類に関する情報に基づいて、押圧機構16によって押圧部材26の位置を変更する。そして、押圧部材26の中間転写ベルト7に対する押圧量(侵入量Y)、又は押圧部材26の中間転写ベルト7に対する当接又は離間の状態を変更する。特に、本実施例では、画像形成装置100は、記録材Pの剛度と関連する記録材Pの種類に関する情報に基づいて、押圧機構16によって押圧部材26の中間転写ベルト7に対する当接又は離間の状態を変更する。
【0087】
例えば記録材Pが「厚紙」(例えば坪量M≧52g/m)の場合には、侵入量Yが第1の侵入量Y1となる第1の押圧部材位置に押圧部材26を配置する。そして、例えば記録材Pが「薄紙」(例えばM<52g/m)の場合には、侵入量Yが第1の侵入量Y1よりも小さい第2の侵入量Y2となる第2の押圧部材位置に押圧部材26を配置する。第1の侵入量Y1は正の値であり、第2の侵入量Y2は0、正の値であってよい(すなわち、Y1>Y2≧0)。特に、本実施例では、押圧部材26が第2の押圧部材位置にあるとき、押圧部材26の先端が中間転写ベルト7の内周面から離間する。一例として、本実施例では、Y1=1.5mm、Y2=0mm(離間)である。
【0088】
次に、図9を参照して本実施例の画像形成装置100における押圧部材26の動作について説明する。図9は、本実施例におけるジョブの制御手順の概略を示すフローチャート図である。ここでは、操作者が装置本体110の操作部101から画像形成装置100に1つのジョブを実行させる場合を例として説明する。図9において、図4に示す実施例1における処理と同様の処理には同じステップ番号(S101~S110)を付して、詳しい説明は適宜省略する。
【0089】
なお、本実施例では、記録材Pの種類に関する情報は、記録材Pの剛度と関連する記録材Pの種類に関する情報、特に、一例として記録材Pとしての紙の坪量の情報を含むものとする。そして、本実施例では、剛度の小さい記録材Pの一例として「薄紙」、剛度の大きい記録材Pの一例として「厚紙」を用いるものとする。
【0090】
まず、制御部200は、実施例1と同様にしてS101~S103の処理を実行して、画像形成装置100をスタンバイモード又は低電力モードに移行させる。スタンバイモード又は低電力モードに移行する際に、押圧部材26は、侵入量Yが第1の侵入量Y1となる第1の押圧部材位置(押圧位置)に配置されて、中間転写ベルト7を押圧する。
【0091】
次に、制御部200は、ジョブの情報を受け付けると(S104)、ジョブの情報に含まれる、画像形成動作に用いられる記録材Pの種類に関する情報を取得する(S301)。本実施例では、記録材Pの種類に関する情報は、少なくとも記録材Pの坪量の情報を含む。なお、制御部200は、操作者の操作により操作部101(又は外部装置)から直接的に入力(複数の選択肢から選択することも含む。)された記録材Pの種類に関する情報を取得することができる。また、制御部200は、操作者の操作により操作部101(又は外部装置)から入力された、当該ジョブで記録材Pを送出する記録材カセット11の情報に基づいて、記録材Pの種類に関する情報を取得することもできる。この場合、制御部200は、例えば複数設けられているカセット11のそれぞれと関係付けられて記憶部220に記憶されている記録材Pの種類に関する情報から、記録材Pの種類に関する情報を取得することができる。ここで、記録材Pの種類に関する情報を登録する際には、予め記憶部220やネットワークを通じて制御部200と接続された記憶装置に記憶されている記録材Pの種類のリストの中から該当するものを選択するようになっていてよい。
【0092】
次に、制御部200は、S301で取得した記録材Pの種類に関する情報に基づいて、画像形成動作時の押圧部材26の位置を決定する(S302)。S302において、制御部200は、記憶部220に予め記憶されている上述のような記録材Pの坪量に応じた押圧部材26の位置の情報に基づいて、今回のジョブで用いる記録材Pに対応する押圧部材26の位置を決定する。換言すれば、制御部200は、今回のジョブで用いる記録材Pの坪量が所定の閾値(一例として前述の52g/m)以上の場合は、押圧部材26の位置を侵入量Yが相対的に大きい第1の侵入量Y1である第1の押圧部材位置に決定する。また、制御部200は、今回のジョブで用いる記録材Pの坪量が該閾値未満の場合は、押圧部材26の位置を侵入量Yが相対的に小さい第2の侵入量Y2である第2の押圧部材位置に決定する。
【0093】
次に、制御部200は、S302で決定した押圧部材26の位置に基づいて、現在の押圧部材26の位置(すなわち、第1の押圧部材位置(押圧位置))に対して押圧部材26の位置の変更が必要か否かを判断する(S303)。そして、制御部200は、S303で変更が必要であると判断した場合は、押圧機構16に指令を送り、押圧部材26の位置を変更(すなわち、第2の押圧部材位置(離間位置)に変更)して(S304)、S105の処理に進む。一方、制御部200は、S303で変更が必要ないと判断した場合は、押圧部材26の位置の変更を行わず(すなわち、第1の押圧部材位置(押圧位置)に維持して)、S105の処理に進む。
【0094】
その後、制御部200は、実施例1と同様にしてS105~S107の処理を実行する。そして、制御部200は、画像形成装置100の電源オフ信号又はスリープ移行信号を取得すると(S108)、押圧部材26の位置が第1の押圧部材位置(押圧位置)であるか否かを判断する(S305)。なお、ジョブの画像形成動作の終了後に、画像形成装置100がスタンバイモードにある間は、押圧部材26はジョブの最後の画像形成動作時の位置に維持されている。そして、制御部200は、S305で第1の押圧部材位置(押圧位置)であると判断した場合は、S109の処理(押圧部材26の離間動作)に進む。一方、制御部200は、S305で第1の押圧部材位置(押圧位置)ではない(すなわち、第2の押圧部材位置(離間位置))である)と判断した場合は、S109の処理を実行せずにS110の処理(電源オフ状態又はスリープモードへの移行)に進む。制御部200は、S109、S110の処理を、実施例1と同様にして実行する。
【0095】
なお、画像形成装置100にジョブが投入された後の押圧部材26の位置の変更動作は、記録材Pが2次転写ニップN2に到達するまでに終了しているようにする。また、例えば、1つのジョブで用いられる記録材Pに複数の種類の記録材Pが混在する場合には、紙間工程において押圧部材26の位置の変更動作を行うことができる。この場合、先行する記録材Pが2次転写ニップN2を通過し終えてから、後続の記録材Pが2次転写ニップN2に到達するまでに押圧部材26の位置の変更動作が行われるようにする。
【0096】
また、本実施例では、記録材Pの種類などの画像形成条件に応じて変更される押圧部材26の位置のうち、第2の押圧部材位置に押圧部材26が配置された際には、押圧部材26が中間転写ベルト7から離間するが、本発明はこれに限定されるものではない。実施例1で説明したのと同様、押圧部材26は、第2の押圧部材位置に配置された際に、第1の押圧部材位置に配置された際の第1の押圧量(第1の侵入量Y1)よりも小さい第2の押圧量(第2の侵入量Y2)で中間転写ベルト7に当接してもよい。また、押圧部材26は、段階的に又は連続的に侵入量が変化する3つ以上の異なる位置に配置可能とされていてもよい(少なくとも1つの位置において中間転写ベルト7から離間してよい。)。この場合、電源オフ状態又はスリープモードでは、最も侵入量が小さくなる位置又は中間転写ベルト7から離間した位置に押圧部材26を配置することが好ましい。
【0097】
以上のように、本実施例では、制御部200は、設定部としての操作部101などで設定された記録材Pに応じて押圧部材26の位置を変更するように押圧機構16を制御可能である。そして、本実施例では、制御部200は、プリントジョブの画像形成動作の終了後に、電源オフ信号又はスリープ移行信号が入力される前に、画像形成装置100をスタンバイ状態とする制御を行い、プリントジョブの画像形成動作の終了時に押圧部材26が押圧位置(第1の位置)にある場合には、画像形成装置100がスタンバイ状態にあるときには押圧部材26を押圧位置(第1の位置)に維持する。また、制御部200は、電源オフ信号又はスリープ移行信号が入力された場合に押圧部材26を押圧位置(第1の位置)から離間位置(第2の位置)に移動させるように押圧機構16の制御を行う。このように、スタンバイモードでは、押圧部材26を、一般に次のジョブの画像形成動作時に用いられる可能性が高いと予測される、先のジョブの画像形成動作の終了時(すなわち、最後の画像の形成時)の位置に維持する。そして、電源オフ状態又はスリープモードへの移行時に、必要に応じて押圧部材26を中間転写ベルト7から離間させる。これにより、電源オフ状態又はスリープモードに移行する前に画像形成装置100に次のジョブが投入された場合に、押圧部材26を移動させる機会を低減することができる。その結果、画像形成動作を開始するまでの期間を短くして、生産性の低下を抑制することができる。
【0098】
なお、本実施例では、記録材Pの種類などの画像形成条件に応じて画像形成動作時の押圧部材26の位置を変更する制御を、実施例1で説明した制御と組み合わせたが、実施例2で説明した制御と組み合わせてもよい。
【0099】
[実施例4]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1の画像形成装置のものと同じである。したがって、本実施例の画像形成装置において、実施例1の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素には、実施例1と同一の符号を付して、詳しい説明は省略する。
【0100】
実施例1では、内ローラ21の周方向に関する内ローラ21と外ローラ9との相対位置を示すオフセット量Xは一定である構成について説明したが、オフセット量Xが変更可能な構成とされることがある。本発明はそのような構成においても適用できるものである。
【0101】
図13(a)は、2次転写ニップN2の近傍での記録材Pの挙動を説明するための模式的な断面図(内ローラ21の回転軸線方向と略直交する断面)である。2次転写ニップN2の形状(2次転写ニップN2の位置)や記録材Pの剛度によって、記録材Pの搬送方向に関して2次転写ニップN2の上流近傍や下流近傍での記録材Pの挙動が変わる。例えば、記録材Pが剛度の小さい記録材Pの一例である「薄紙」の場合に、2次転写ニップN2の下流近傍で中間転写ベルト7と記録材Pとが貼り付いて、中間転写ベルト7からの記録材Pの分離不良によりジャム(紙詰まり)が発生することがある。この現象は、記録材Pのコシが弱いことによって記録材Pが中間転写ベルト7に貼り付きやすくなるため、記録材Pの剛度が小さい場合に顕著となる。
【0102】
つまり、図13(a)に示す断面において、内ローラ21と2次転写前ローラ24とで張架されて形成される中間転写ベルト7の張り面(張架面)を示す線を張架線Tとする。また、同断面において、内ローラ21の回転中心と外ローラ9の回転中心とを通る直線をニップ中心線Lcとする。また、同断面において、ニップ中心線Lcと略直交する線をニップ線Lnとする。なお、図13(a)は、張架線Tに沿う方向に関して内ローラ21の回転中心よりも外ローラ9の回転中心の方が中間転写ベルト7の回転方向の上流側にオフセットされて配置された状態を示している。
【0103】
このとき、記録材Pは、2次転写ニップN2で内ローラ21と外ローラ9との間に挟持された状態では、ほぼニップ線Lnに沿って姿勢を保とうとする傾向がある。そのため、概して、張架線Tに沿う方向に関して内ローラ21の回転中心と外ローラ9の回転中心とが近い場合には、図13(a)中の破線Aで示すように、記録材Pの排出角度θが小さくなる。つまり、記録材Pの搬送方向の先端は、2次転写ニップN2から排出される際に、中間転写ベルト7の近くに排出されるような姿勢となる。これにより、記録材Pが中間転写ベルト7に貼り付きやすくなる。これに対して、概して、張架線Tに沿う方向に関して内ローラ21の回転中心よりも外ローラ9の回転中心の方が中間転写ベルト7の回転方向の上流側に配置されるほど、図13(a)中の実線で示すように、記録材Pの排出角度θが大きくなる。つまり、記録材Pの搬送方向の先端は、2次転写ニップN2から排出される際に、中間転写ベルト7から離れる方向に排出されるような姿勢となる。これにより、記録材Pは中間転写ベルト7に貼り付きにくくなる。
【0104】
一方、例えば、記録材Pが剛度の大きい記録材Pの一例である「厚紙」の場合には、記録材Pの搬送方向の後端が搬送ガイド14を抜けた際に、記録材Pの搬送方向の後端部が中間転写ベルトに衝突することがある。そして、記録材Pの搬送方向に関して2次転写ニップN2の上流近傍の中間転写ベルト7の姿勢が乱れ、記録材Pの搬送方向の後端部に画像不良(記録材Pの搬送方向と略直交する方向に伸びるスジ状の画像乱れなど)が発生することがある。この現象は、記録材Pのコシが強いことによって記録材Pの搬送方向の後端部が強い勢いで中間転写ベルト7に衝突しやすくなるため、記録材Pの剛度が大きい場合に顕著となる。
【0105】
つまり、上述のように、図13(a)に示す断面において、記録材Pは、2次転写ニップN2で内ローラ21と外ローラ9との間に挟持された状態では、ほぼニップ線Lnに沿って姿勢を保とうとする傾向がある。そのため、概して、張架線Tに沿う方向に関して内ローラ21の回転中心よりも外ローラ9の回転中心の方が中間転写ベルト7の回転方向の上流側に配置されるほど、ニップ線Lnは張架線Tに食い込むような形となる。その結果、記録材Pの搬送方向の後端が搬送ガイド14を抜けた際に、図13(a)中の破線Bで示すように、記録材Pの搬送方向の後端部が中間転写ベルト7に衝突するようになり、記録材Pの搬送方向の後端部に画像不良が発生しやすくなる。これに対して、概して、張架線Tに沿う方向に関して内ローラ21の回転中心と外ローラ9の回転中心とを近くすれば、記録材Pの搬送方向の後端が搬送ガイド14から抜けた際に中間転写ベルト7に衝突することは抑制される。これにより、記録材Pの搬送方向の後端部の画像不良は発生しにくくなる。
【0106】
このような課題の対策として、記録材Pの種類に応じて、内ローラ21の周方向(中間転写ベルト7の回転方向)に関する内ローラ21と外ローラ9との相対位置(前述のオフセット量X)を変更することが有効である。
【0107】
例えば記録材Pが「薄紙」の場合には、オフセット量Xを大きくすることで、2次転写ニップN2を通過した後の記録材Pの中間転写ベルト7からの分離性を向上させることができる。しかし、オフセット量Xが大きいと、上述のように、例えば記録材Pが「厚紙」の場合には、記録材Pの搬送方向の後端が搬送ガイド14を抜けた際に記録材Pの搬送方向の後端部が中間転写ベルト7に衝突することになる。これにより、記録材Pの搬送方向の後端部の画質を低下させる要因となる。そのため、この場合にはオフセット量Xを小さくすればよい。
【0108】
そこで、本実施例では、画像形成装置100は、記録材Pの剛度と関連する記録材Pの種類に関する情報に基づいて、内ローラ21又は外ローラ9の少なくとも一方の位置を変更して、オフセット量Xを変更する。特に、本実施例では、画像形成装置100は、記録材Pの剛度と関連する記録材Pの種類に関する情報に基づいて、内ローラ21の位置を変更してオフセット量Xを変更する。
【0109】
例えば記録材Pが「厚紙」(例えば坪量M≧52g/m)の場合には、オフセット量Xが第1のオフセット量X1となる第1の内ローラ位置に内ローラ21を配置する。そして、例えば記録材Pが「薄紙」(例えばM<52g/m)の場合には、オフセット量Xが第1のオフセット量X1よりも大きい第2のオフセット量X2となる第2の内ローラ位置に内ローラ21を配置する。第1のオフセット量X1は、正の値、0、負の値であってよく、第2のオフセット量X2は、典型的には正の値である。一例として、本実施例では、X1=-1.3mm、X2=2.5mmである。
【0110】
図10(a)、(b)を参照して、本実施例におけるオフセット機構17について説明する。図10(a)、(b)は、オフセット機構17を説明するための、2次転写ニップN2の近傍を内ローラ21の回転軸線方向の一端部側(図1の紙面手前側)から該回転軸線方向と略平行に見た要部の概略側面図である。図10(a)、(b)では、簡単のため、押圧部材26及び押圧機構16の図示は省略されている。図10(a)は、「厚紙」を用いる場合、図10(b)は、「薄紙」を用いる場合の状態を示している。
【0111】
本実施例では、画像形成装置100は、外ローラ9の周方向に関する内ローラ21の相対位置を変更してオフセット量Xを変更する、位置変更機構としてのオフセット機構17を有する。図10(a)、(b)には、内ローラ21の回転軸線方向の一端部の構成を示しているが、他端部の構成も同様(内ローラ21の回転軸線方向の中央に対して略対称)である。
【0112】
内ローラ21の回転軸線方向の両端部は、支持部材としての内ローラホルダ38によって回転可能に支持されている。内ローラホルダ38は、内ローラ回動軸38aを中心に回動可能なように、中間転写ベルトユニット20のフレームなどに支持されている。このように、内ローラホルダ38を内ローラ回動軸38aの周りに回動させ、内ローラ21を内ローラ回動軸38aの周りに回動させることで、外ローラ9に対する内ローラ21の相対位置を変更してオフセット量Xを変更することができるようになっている。内ローラホルダ38は、作動部材としてのオフセットカム39の作用により回動するように構成されている。オフセットカム39は、オフセットカム回動軸39aを中心に回動可能なように、中間転写ベルトユニット20のフレームなどに支持されている。オフセットカム39は、駆動源としてのオフセットカム駆動モータ213からの駆動を受けてオフセットカム回動軸39aを中心に回動する。また、オフセットカム39は、内ローラホルダ38に設けられたカムフォロワ38bと接触している。また、内ローラホルダ38は、カムフォロワ38bがオフセットカム39と係合する方向に回動するように、付勢手段としての付勢部材(弾性部材)である引張りばねなどで構成された回動ばねによって付勢されていてよい。なお、中間転写ベルト7のテンション、あるいは外ローラ9による押圧によって、カムフォロワ38bがオフセットカム39と係合する方向に内ローラホルダ38を回動させる十分なモーメントが得られる場合がある。この場合には、上記回動ばねは設けられていなくてよい。また、本実施例では、画像形成装置100には、オフセットカム39の回動方向の位置、特に、回動方向におけるホームポジション(HP)を検知するための位置検知手段として、オフセットカム位置センサ(カムHPセンサ)214が設けられている。オフセットカム位置センサ214は、例えば、オフセットカム39又はオフセットカム39と同軸上に設けられた指示部としてのフラグ、検知部としてのフォトインタラプタなどを有して構成することができる。
【0113】
このように、本実施例では、内ローラホルダ38、オフセットカム39、オフセットカム駆動モータ213、オフセットカム位置センサ214などを有してオフセット機構17が構成されている。
【0114】
図10(a)に示すように、「厚紙」の場合には、オフセットカム39がオフセットカム駆動モータ213によって駆動されて時計回りに回動する。これにより、内ローラ回動軸38aを中心に反時計回りに内ローラホルダ38が回動して、外ローラ9に対する内ローラ21の相対位置が決められる。これにより、オフセット量Xが相対的に小さい第1のオフセット量X1である第1の内ローラ位置に、内ローラ21が配置された状態となる。その結果、前述のように、「厚紙」の搬送方向の後端部の画質の低下を抑制することができる。
【0115】
また、図10(b)に示すように、「薄紙」の場合には、オフセットカム39がオフセットカム駆動モータ213によって駆動されて反時計回りに回動する。これにより、内ローラ回動軸38aを中心に時計回りに内ローラホルダ38が回動して、外ローラ9に対する内ローラ21の相対位置が決められる。これにより、オフセット量Xが相対的に大きい第2のオフセット量X2である第2の内ローラ位置に、内ローラ21が配置された状態となる。その結果、前述のように2次転写ニップN2を通過した後の「薄紙」の中間転写ベルト7からの分離性が向上する。
【0116】
ここで、これに限定されるものではないが、オフセット量Xは、-3mm~+3mm程度が好適である。特に、記録材Pとして高剛度の厚紙などの剛度の高い記録材Pを用いる場合には、記録材Pの搬送方向の後端が搬送ガイド14を抜けた時に記録材Pの搬送方向の後端部が中間転写ベルト7に衝突することによるショックが大きくなることがある。そのため、これによる画像不良を抑制するなどのために、オフセット量Xは0mm以下であることが好ましい。一方、記録材Pとして低剛度の薄紙などの剛度の低い記録材Pを用いる場合には、記録材Pの中間転写ベルト7からの分離性の観点などから、押圧部材26の押圧量は0mmより大きくすることが好ましい。また、オフセット量Xは、2次転写ニップN2を記録材Pが通過している際(2次転写中)に、所望のオフセット量Xとなっていればよい。
【0117】
図11は、本実施例の画像形成装置100の要部の制御態様を示す概略ブロック図である。本実施例の画像形成装置100の制御態様は、図3に示す実施例1の画像形成装置100のものと同様であるが、本実施例では制御部200には、オフセットカム駆動モータ213、オフセットカム位置センサ214が接続されている。そして、本実施例では、駆動制御部210は、演算部201からの指令によってオフセットカム駆動モータ213を動作させることができる。また、本実施例では、記憶部220には、オフセットカム39のホームポジション(HP)を検知するオフセットカム位置センサ214から取得したオフセットカム位置情報224が記憶される。また、本実施例では、記憶部220には、最適画像を得るためにオフセットカム39を所定の位置に回転駆動するためのオフセット量変換テーブル225が記憶されている。また、本実施例では、制御部200は、オフセット機構17のオフセットカム駆動モータ213を制御することにより、内ローラ21の位置を変更する動作を制御する。
【0118】
次に、図12を参照して本実施例の画像形成装置100の動作について説明する。図12は、本実施例におけるジョブの制御手順の概略を示すフローチャート図である。ここでは、操作者が装置本体110の操作部101から画像形成装置100に1つのジョブを実行させる場合を例として説明する。図12において、図4に示す実施例1における処理と同様の処理には同じステップ番号(S101~S110)を付して、詳しい説明は適宜省略する。
【0119】
なお、本実施例では、記録材Pの種類に関する情報は、記録材Pの剛度と関連する記録材Pの種類に関する情報、特に、一例として記録材Pとしての紙の坪量の情報を含むものとする。そして、本実施例では、剛度の小さい記録材Pの一例として「薄紙」、剛度の大きい記録材Pの一例として「厚紙」を用いるものとする。
【0120】
まず、制御部200は、実施例1と同様にしてS101~S103の処理を実行して、画像形成装置100をスタンバイモード又は低電力モードに移行させる。スタンバイモード又は低電力モードに移行する際に、押圧部材26は、侵入量Yが所定の侵入量Yとなる押圧位置(第1の押圧部材位置)に配置されて、中間転写ベルト7を押圧する。
【0121】
次に、制御部200は、ジョブの情報を受け付けると(S104)、ジョブの情報に含まれる、画像形成動作に用いられる記録材Pの種類に関する情報を取得する(S401)。本実施例では、記録材Pの種類に関する情報は、少なくとも記録材Pの坪量の情報を含む。なお、制御部200は、実施例3で説明したのと同様にして記録材Pの坪量の情報を取得することができる。
【0122】
次に、制御部200は、S401で取得した記録材Pの種類に関する情報に基づいて、画像形成動作時の内ローラ21の位置(オフセット量X)を決定する(S402)。S402において、制御部200は、記憶部220に予め記憶されている上述のような記録材Pの坪量に応じた内ローラ21の位置の情報に基づいて、今回のジョブで用いる記録材Pに対応する内ローラ21の位置を決定する。換言すれば、制御部200は、今回のジョブで用いる記録材Pの坪量が所定の閾値(一例として前述の52g/m)以上の場合は、内ローラ21の位置をオフセット量Xが相対的に小さい第1のオフセット量X1である第1の内ローラ位置に決定する。また、制御部200は、今回のジョブで用いる記録材Pの坪量が該閾値未満の場合は、内ローラ21の位置をオフセット量Xが相対的に大きい第2のオフセット量X2である第2の内ローラ位置に決定する。
【0123】
次に、制御部200は、S402で決定した内ローラ21の位置に基づいて、現在の内ローラ21の位置に対して内ローラ21の位置の変更が必要か否かを判断する(S403)。そして、制御部200は、S403で変更が必要であると判断した場合は、オフセット機構17に指令を送り、内ローラ21の位置を変更して(S404)、S105の処理に進む。S404において、制御部200は、オフセットカム位置センサ214から入力されるオフセットカム位置情報224に基づいて、オフセットカム駆動モータ213に指令を送り、オフセットカム39をHP位置まで回転駆動させる。また、S404において、制御部200は、オフセットカム39のHPからの回動量などに基づいて予め設定されたオフセット量変換テーブル225に基づいて、オフセットカム駆動モータ213に指令を送り、オフセットカム39を所定位置まで回転駆動する。これにより、内ローラ21を所定の位置まで移動させ、オフセット量Xを所定のオフセット量Xとする。一方、制御部200は、S403で変更が必要ないと判断した場合は、内ローラ21の位置の変更を行わず、S105の処理に進む。
【0124】
その後、制御部200は、実施例1と同様にしてS105~S107の処理を実行する。そして、制御部200は、画像形成装置100の電源オフ信号又はスリープ移行信号を取得すると(S108)、内ローラ21の位置がホームポジションであるか否かを判断する(S405)。ここで、内ローラ21のホームポジションとは、画像形成装置100の電源オフ状態又はスリープモードでの内ローラ21の位置のことをいう。本実施例では、内ローラ21のホームポジションは、操作部101(又は外部装置)で記録材Pとして「普通紙」が設定された場合の画像形成動作時の内ローラ21の位置に設定されている。典型的には、「普通紙」の坪量は52g/m以上350g/m未満である。本実施例では、坪量が52g/m未満のものを「薄紙」、坪量が350g/m以上のものを「厚紙」としている。り、本実施例では内ローラ21のホームポジションは、第1のオフセット量X1に対応する第1の内ローラ位置に設定されている。そして、制御部200は、S405でホームポジションではないと判断した場合は、オフセット機構17に指令を送り、内ローラ21の位置を変更して(S406)、S109の処理(押圧部材26の離間動作)に進む。一方、制御部200は、S405でホームポジションであると判断した場合は、内ローラ21の位置の変更を行わず、S109の処理に進む。その後、制御部200は、S109、S110の処理を、実施例1と同様にして実行する。
【0125】
以上のように、本実施例では、制御部200は、設定部としての操作部101などで設定された記録材Pに応じて内ローラ21の位置(オフセット量X)を変更するようにオフセット機構17を制御可能である。そして、本実施例では、制御部200は、画像形成装置100が電源オフ状態又はスリープ状態にあるときには、内ローラ21の位置(オフセット量X)が、「普通紙」が設定された場合の画像形成動作時の位置であるようにオフセット機構17の制御を行う。このように、電源オフ状態又はスリープモードへの移行時に、画像形成装置100において記録材Pとして使用されることが多い「普通紙」に対応する内ローラ21の位置(オフセット量X)にしておく。これにより、次の画像形成動作を開始する際に内ローラ21を移動させる機会を低減することができる。その結果、画像形成動作を開始するまでの期間を短くして、生産性の低下を抑制することができる。
【0126】
なお、本実施例では、電源オフ状態又はスリープモードに移行する際に内ローラ21の位置をホームポジションに移動させたが、画像形成動作が終了してスタンバイモードに移行する際に内ローラ21をホームポジションに移動させてもよい。
【0127】
また、本実施例では、内ローラ21のホームポジションは、オフセット量Xが第1のオフセット量X1となる位置であったが、第2のオフセット量X2となる位置であってもよい。また、内ローラ21は、段階的に又は連続的に侵入量が変化する3つ以上の異なる位置に配置可能とされていてもよい。この場合も、電源オフ状態又はスリープモードでは、「普通紙」に対応する内ローラ21の位置とすることで、本実施例と同様の効果が得られる。
【0128】
また、本実施例では、画像形成装置100は、内ローラ21の位置を変更することでオフセット量Xを変更する構成とされていたが、外ローラ9の位置を変更することでオフセット量Xを変更する構成とされていてもよい。また、内ローラ21又は外ローラ9のいずれかを移動させる構成に限らず、内ローラ21と外ローラ9との両方を移動させてオフセット量Xを変更するようにしてもよい。
【0129】
また、本実施例では、記録材Pの種類などの画像形成条件に応じて画像形成動作時の内ローラ21の位置を変更する制御を、実施例1で説明した制御と組み合わせたが、実施例2、3で説明した制御と組み合わせてもよい。
【0130】
[その他]
以上、本発明を具体的な実施例に即して説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではない。
【0131】
上述の実施例では、内部材としての内ローラと共に2次転写ニップを形成する外部材として、中間転写ベルトの外周面に直接当接する外ローラが用いられていた。これに対して、外部材として外ローラ及び該外ローラと他のローラとに張架された2次転写ベルトが用いられる構成とされていてもよい。つまり、画像形成装置は、外部材として、張架ローラと、外ローラと、これらのローラ間に張架された2次転写ベルトと、を有していてよい。そして、外ローラが2次転写ベルトを介して中間転写ベルトの外周面に当接するようにすることができる。つまり、中間転写ベルトの内周面に接触する内ローラと、2次転写ベルトの内周面に接触する外ローラとで、中間転写ベルト及び2次転写ベルトを挟持することによって2次転写ニップを形成するようにすることができる。この場合、中間転写ベルトと2次転写ベルトとの接触部が2次転写部としての2次転写ニップである。なお、この場合も、オフセット量Xは、前述と同様に、内ローラと外ローラとの相対位置によって定義される。また、侵入量Yも、内ローラと2次転写前ローラとで形成される基準線L1及び押圧部接線L4、あるいは外ローラと2次転写前ローラとで形成される基準線L1’及び押圧部接線L4’を用いて前述と同様に定義される。
【0132】
また、記録材の剛度と関連する記録材の種類に関する情報は、記録材の坪量の情報に限定されるものではない。紙種カテゴリー(例えば、普通紙、コート紙などの表面性に基づく紙種カテゴリーなど)あるいは銘柄(メーカー、品番などを含む。)が同じである場合、記録材の坪量と記録材の厚さとは略比例関係にあることが多い(厚さが大きいほど坪量が大きい。)。また、紙種カテゴリーあるいは銘柄が同じである場合、記録材の剛度と、記録材の坪量あるいは厚さと、は略比例関係にあることが多い(坪量あるいは厚さが大きいほど剛度が大きい。)。したがって、例えば、紙種カテゴリーごと、銘柄ごと、あるいは紙種カテゴリーと銘柄との組み合わせごとに、記録材の坪量、厚さ、あるいは剛度に基づいて、侵入量やオフセット量を設定することができる。そして、制御部は、操作部や外部装置から入力された、紙種カテゴリー、銘柄などの情報と、記録材の坪量、厚さ、剛度などの情報と、に基づいて、当該記録材に応じた侵入量やオフセット量となるように押圧機構やオフセット機構を動作させることができる。また、記録材の種類に関する情報として、例えば、記録材の坪量、厚さ、あるいは剛度といった定量的な情報を用いることに限定されるものではない。記録材の種類に関する情報として、例えば、紙種カテゴリー、銘柄、あるいは紙種カテゴリーと銘柄との組み合わせといった定性的な情報のみを用いることもできる。例えば、紙種カテゴリー、銘柄、あるいは紙種カテゴリーと銘柄との組み合わせに応じて侵入量やオフセット量を設定しておくことができる。そして、制御部が操作部や外部装置などから入力された紙種カテゴリー、銘柄などの情報に応じて侵入量やオフセット量を決定するようにすることができる。この場合も、それぞれの記録材の剛度の違いに基づいて、侵入量やオフセット量を割り当てておくことになる。なお、記録材の剛度は、ガーレー剛度(MD/縦目)[mN]で代表することができ、市販のガーレー剛度試験機で測定することができる。例えば、上述の坪量の閾値52g/m未満の記録材としての、「薄紙」の一例のガーレー剛度(MD)は0.3mN程度であることがある。また、上述の坪量の閾値52g/m以上の記録材としての、「普通紙」(坪量80g/m程度)の一例のガーレー剛度(MD)は2mN程度、「厚紙」(坪量200g/m程度)の一例のガーレー剛度(MD)は20mN程度であることがある。
【0133】
また、制御部は、記録材の種類に関する情報を、操作者の操作による操作部や外部装置からの入力に基づいて取得するものとして説明したが、記録材の種類に関する情報を検知する検知手段の検知結果の入力に基づいて取得してもよい。例えば、記録材の坪量と相関する指標値を検知する坪量検知手段として坪量センサを用いることができる。坪量センサとしては、例えば、超音波の減衰を利用した坪量センサが知られている。この坪量センサは、記録材の搬送路を挟むように配置された、超音波発生部と、超音波受信部と、を有する。そして、坪量センサは、超音波発生部から発生され、記録材を透過することで減衰した超音波を超音波受信部で受信して、その超音波の減衰量に基づいて記録材の坪量と相関する指標値を検知する。なお、坪量検知手段は、記録材の坪量と相関する指標値を検知できるものであればよく、超音波を利用したものに限定されるものではなく、例えば光を利用したものであってもよい。また、記録材の坪量と相関する指標値は、坪量自体に限定されず、坪量に対応する厚さであってもよい。また、紙種カテゴリーの検知に利用できる記録材の表面の平滑性と相関する指標値を検知する平滑性検知手段としての表面性センサを用いることができる。表面性センサとしては、記録材に光を照射し、正反射光、乱反射光の強さを光量センサで読み取る正乱反射光センサが知られている。記録材の表面が平滑である場合、正反射光が強くなり、粗いと乱反射光が強くなる。そのため、表面性センサは、正反射光量と乱反射光量とを測定することで、記録材の表面の平滑性と相関する指標値を検知することができる。なお、平滑性検知手段は、記録材の表面の平滑性と相関する指標値を検知できるものであればよく、上記の光量センサを用いたものに限定されるものではなく、例えば撮像素子を用いたものであってもよい。記録材の表面の平滑性と相関する指標値は、ベック平滑度などの所定の規格に従う値に換算された値に限定されるものではなく、記録材の表面の平滑性と相関性を有する値であればよい。これらの検知手段は、例えば、記録材の搬送方向に関してレジストローラよりも上流の記録材の搬送路に隣接して配置することができる。また、例えば上記坪量センサ、表面性センサなどが1つのユニットとして構成されたもの(メディアセンサ)を用いてもよい。
【0134】
また、押圧機構、オフセット機構として、カムにより可動部を作動させるアクチュエータを用いたが、これに限定されるものではない。押圧機構、オフセット機構は、それぞれ上述のものに準じた動作を実現できるものであればよく、例えば、ソレノイドを用いて可動部を作動させるアクチュエータを用いてもよい。
【0135】
また、ベルト状の像担持体が中間転写ベルトである場合について説明したが、画像形成位置で担持されたトナー像を搬送する無端状のベルトで構成された像担持体であれば、本発明を適用することができる。このようなベルト状の像担持体としては、上述の中間転写ベルトの他、感光体ベルトや静電記録誘電体ベルトが例示できる。
【0136】
また、本発明は、上述の実施形態の構成の一部または全部を、その代替的な構成で置き換えた別の実施形態でも実施できる。したがって、ベルト状の像担持体を用いる画像形成装置であれば、タンデム型/1ドラム型、帯電方式、静電像形成方式、現像方式、転写方式、定着方式の区別無く実施できる。上述の実施例では、トナー像の形成/転写に係る主要部を中心に説明したが、本発明は、必要な機器、装備、筐体構造を加えて、プリンタ、各種印刷機、複写機、FAX、複合機など、種々の用途で実施できる。
【符号の説明】
【0137】
7 中間転写ベルト
9 外ローラ
16 押圧機構
17 オフセット機構
21 内ローラ
26 押圧部材
100 画像形成装置
200 制御部
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