(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】医用画像録画装置およびX線撮像装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20240101AFI20240109BHJP
A61B 6/12 20060101ALI20240109BHJP
A61B 1/045 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
A61B6/00 370
A61B6/12
A61B1/045 610
(21)【出願番号】P 2020032940
(22)【出願日】2020-02-28
【審査請求日】2023-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】弁理士法人山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】緒方 与志也
【審査官】松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-220839(JP,A)
【文献】特開2007-068561(JP,A)
【文献】特開2007-068560(JP,A)
【文献】特開2017-176773(JP,A)
【文献】特開2011-036371(JP,A)
【文献】特開平07-275222(JP,A)
【文献】特開2018-148973(JP,A)
【文献】特開2008-000282(JP,A)
【文献】特開2001-061776(JP,A)
【文献】国際公開第2016/190022(WO,A1)
【文献】特開2011-130793(JP,A)
【文献】特開2002-065600(JP,A)
【文献】特開2012-217632(JP,A)
【文献】特開2011-212301(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0059679(US,A1)
【文献】特表2009-529951(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00-1/32、6/00-6/14
G02B 23/24-23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象に対し所定の位置に配置された監視用映像取得装置からの映像信号及び前記検査対象の体内に挿入される医療器具に備えられた内視鏡カメラからの映像信号を入力する画像信号入力部と、
前記画像信号入力部が入力した画像信号を処理する画像処理部と、
前記内視鏡カメラからの映像信号を録画する記録部と、
を備え、
前記画像処理部は、
前記監視用映像取得装置の撮影範囲よりも狭い、前記検査対象を含む領域を検出対象領域と設定し、前記監視用映像取得装置から入力される映像信号を用いて
、前記検出対象領域において前記医療器具が前記検査対象の体内に挿入されたか否かを検出し、前記記録部は前記画像処理部からの検出信号をトリガーとして前記内視鏡カメラからの映像信号を録画することを特徴とする医用画像録画装置。
【請求項2】
請求項1に記載の医用画像録画装置であって、
前記画像処理部は、前記監視用映像取得装置からの映像信号から逐次画像を構成し、各画像における前記医療器具の先端形状のマッチング処理により、前記医療器具の挿入を検出することを特徴とする医用画像録画装置。
【請求項3】
請求項1に記載の医用画像録画装置であって、
前記画像処理部は、前記監視用映像取得装置からの映像信号から逐次画像を構成し、
各画像において所定の閾値を超える高輝度領域を検出し、前記逐次画像において前記高輝度領域のない画像となったときに、前記医療器具が体内に挿入されたと判断することを特徴とする医用画像録画装置。
【請求項4】
請求項1に記載の医用画像録画装置であって、
前記画像処理部は、
前記監視用映像取得装置からの映像信号から、前記医療器具の先端形状を画像マッチングにより検出するマッチング
処理と、逐次構成される画像において
所定の閾値を超える高輝度領域を検出する高輝度領域検出処理とを実行し、前記マッチング処理及び前記高輝度領域検出処理の結果を用いて前記医療器具が体内に挿入されたことを検出し、検出信号を前記記録部に送ることを特徴とする医用画像録画装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の医用画像録画装置であって、
前記画像処理部が構成した画像を表示装置に表示させる表示制御部をさらに備え、
前記表示制御部は、前記監視用映像取得装置が取得した映像及び前記内視鏡カメラが取得した映像を前記表示装置の同一画面に表示させるとともに、録画開始あるいは録画中であることを表示させることを特徴とする医用画像録画装置。
【請求項6】
X線源と、検査対象を挟んで前記X線源と対向して配置されたX線検出器と、前記X線検出器が検出したX線透過量に相当する信号を画像信号として受け取る画像信号入力部と、前記X線検出器からの画像信号を用いてX線透視画像を作成する画像処理部と、前記X線源に近接して配置された前記検査対象の映像を取得する監視用映像取得装置と、前記検査対象の体内に挿入される医療器具に備えられた内視鏡カメラからの映像信号を記録する記録部と、を備え、
前記画像信号入力部は、前記監視用映像取得装置からの映像信号及び前記内視鏡カメラからの映像信号を取得し、
前記画像処理部は、
前記監視用映像取得装置の撮影範囲よりも狭い、前記検査対象を含む領域を検出対象領域と設定し、前記監視用映像取得装置から入力される映像信号を用いて
、前記検出対象領域において前記医療器具が前記検査対象の体内に挿入されたか否かを検出し、前記記録部は前記画像処理部からの検出信号をトリガーとして前記内視鏡カメラからの映像信号を録画することを特徴とするX線撮像装置。
【請求項7】
請求項6に記載のX線撮像装置であって、
前記画像処理部が構成した画像を表示装置に表示させる表示制御部をさらに備え、
前記表示制御部は、前記監視用映像取得装置が取得した映像、前記内視鏡カメラが取得した映像及び前記X線透視画像を前記表示装置の同一画面に表示させるとともに、録画開始あるいは録画中であることを表示させることを特徴とするX線撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡で取得した映像を録画する医用画像録画装置に係り、特に内視鏡からの映像の録画開始及び終了を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡は、先端に小型レンズを付けた管を被検体(患者)の体内に差し入れて、管内を通る光ファイバを通してビデオスコープから体内に光を照射することで、被検体内部を撮影する装置である。また管には鉗子などの術具が挿入される場合もあり、これにより内視鏡監視下で手術を行うことができる。内視鏡の映像は、ビデオスコープから画像処理装置を介してモニタに表示されたり、記録部に録画される。
【0003】
また、内視鏡手術では、体内の内視鏡先端位置を把握するために、X線撮像装置を併用することも多く、これら内視鏡の画像を処理する機能を備えたX線撮像装置もある(例えば特許文献1)。このようなX線撮像装置では、例えば、内視鏡からの映像信号をX線撮像装置の画像処理部に送り、X撮像装置のモニタで、X線画像と内視鏡からの映像とを表示したり、X線撮像装置の画像処理部を介して内視鏡の映像を録画する。
【0004】
従来、内視鏡の映像の録画は、内視鏡に設けられた録画用のスイッチ等を操作することで開始終了を制御している。例えば、特許文献2には、手術室内に配置されたコントローラに接続されたファンクションキーを操作することで内視鏡の録画のタイミングを制御することが記載されている。また特許文献1には、内視鏡の撮影動作状況に基づいて、録画タイミングを制御することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-130793号公報
【文献】特開2006-000536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に内視鏡下手術では、術者の手はふさがっていることが多い上、術者は被検体やモニタに集中しており、特許文献2に記載されるようなファンクションキー操作による録画の制御は避けたい。特許文献1に記載された技術では、内視鏡の動作状況に基づいて自動的に録画タイミングが制御されるので、その問題はないが、内視鏡の撮影が続いている間は、内視鏡先端が体外にあって録画が必要ではない映像も継続して録画されるため、記録媒体の容量を圧迫し、また録画を再生する場合にも本当に必要な映像を再生するのに時間がかかるという課題がある。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するために、操作者を煩わせることなく、必要な映像だけを自動的に録画可能にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、手術室等に設置された、患者の状態を監視するためのカメラからの映像信号を利用して、その映像信号の解析から内視鏡先端の位置を検出し、体内に挿入されたか否かを判定する。そして判定結果をトリガーとして、内視鏡からの映像の録画の開始/停止を制御する。監視カメラがX線撮像装置のような医用撮像装置に設置されている場合には、その監視カメラの映像を利用する。
【0009】
即ち、本発明の医用画像録画装置は、検査対象に対し所定の位置に配置された監視用映像取得装置からの映像信号及び前記検査対象の体内に挿入される医療器具に備えられた内視鏡カメラからの映像信号を入力する画像信号入力部と、前記画像信号入力部が入力した画像信号を処理する画像処理部と、前記内視鏡カメラからの映像信号を録画する記録部と、を備え、前記画像処理部は、前記監視用映像取得装置から入力される映像信号を用いて前記医療器具が前記検査対象の体内に挿入されたか否かを検出し、前記記録部は前記画像処理部からの検出信号をトリガーとして前記内視鏡カメラからの映像信号を録画することを特徴とする。
【0010】
また本発明のX線撮像装置は、X線源と、検査対象を挟んで前記X線源と対向して配置されたX線検出器と、前記X線検出器が検出したX線透過量に相当する信号を画像信号として受け取る画像信号入力部と、前記X線検出器からの画像信号を用いてX透視画像を作成する画像処理部と、前記X線源に近接して配置された前記検査対象の映像を取得する映像取得装置と、前記検査対象の体内に挿入される医療器具に備えられた内視鏡カメラからの映像信号を記録する記録部と、を備え、前記画像信号入力部は、前記映像取得装置からの映像信号及び前記内視鏡カメラからの映像信号を取得し、前記画像処理部は、前記監視用映像取得装置から入力される映像信号を用いて前記医療器具が前記検査対象の体内に挿入されたか否かを検出し、前記記録部は前記画像処理部からの検出信号をトリガーとして前記内視鏡カメラからの映像信号を録画することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、内視鏡先端が検査対象の体内に挿入されている状態のときだけに自動的に録画が行われるので、操作者の手を煩わすことなく、且つ最小限の記録媒体領域を用いて必要な映像の録画を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】第1実施形態の画像処理部の処理を示すフローチャート
【
図4】(a)、(b)はそれぞれモニタの表示例を示す図
【
図5】第3実施形態の画像処理部の処理を示すフローチャート
【
図6】第4実施形態の先端検出有効領域を説明する図
【
図7】第4実施形態の画像処理部の処理を示すフローチャート
【
図8】医用画像処理システムを含む医用撮像装置の一実施形態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の医用画像録画システムの実施形態を、図面を参照して説明する。
【0014】
医用画像録画システムは、被検体(通常、治療が施される患者)の体内に内視鏡を挿入しながら内視鏡先端に備えられた術具を操作して手術等の処置を行う際に、内視鏡カメラおよびX線診断装置や超音波診断装置などの映像を、手術室内あるいは操作室に置かれたモニタに映しだすとともに、必要な画像の録画を行うためのシステムである。
【0015】
なお本明細書において、医用画像録画システムは、内視鏡やその他の画像取得装置と画像取得装置で取得した画像を録画する医用画像録画装置とで構成されるシステム全体を指すものとする。本実施形態の医用画像録画システム10は、
図1に示すように、内視鏡300、被検体の状態を監視するための映像取得装置(以下、監視カメラという)200、及び医用画像録画装置100を備えている。
【0016】
医用画像録画装置100は、複数の撮像部からの画像信号を入力する画像入力部101と、画像入力部101が受け付けた複数の画像信号を用いて、合成や画像認識等の処理を行う画像処理部102と、画像処理部102で加工した画像を表示する表示制御部103と、加工した画像や加工前の画像の録画タイミングを制御する録画制御部104と、画像を保存する画像記録部105とを備えている。また医用画像録画システム100には、内視鏡カメラの映像やそれ以外の医用撮像装置で取得した画像などを表示するディスプレイ400や、図示していないが、ユーザがシステムの動作に必要な指示などを入力するための入力装置や処理に必要なデータなどを格納した記憶装置などが接続されている。
【0017】
このような構成の医用画像録画装置100は、CPUやGPUおよびメモリを備えたコンピュータ上に構築することができ、医用画像録画装置100の画像処理部102、表示制御部103、および録画制御部104の各機能は、予めプログラムされたソフトウェアをコンピュータが読み込み実行することにより実現することができる。またこれら機能の一部は、ASICやPFGAなどのハードウェアで実現することも可能である。各部の具体的な機能については、後述する実施形態において詳述する。
【0018】
画像記録部105は、コンピュータに接続されるハードディスクHDDのような外部記憶装置でもよいし、コンピュータに接続可能な可搬媒体あるいはインターネットやイントラネットを介して接続される記憶装置(クラウドを含む)であってもよい。
【0019】
内視鏡カメラ(以下、単に内視鏡ともいう)300は、光ファイバを内蔵し、先端にレンズや医療器具が固定された管(医療器具)301と、光ファイバが連結されたビデオスコープ302、ビデオスコープ302が受信したビデオ信号を画像信号に変換する画像プロセッサ303、およびディスプレイ304を備えている。通常、内視鏡300は、被検体500が寝かせられたベッドの近傍に設置され、患者の体内に光ファイバ301を挿入しながら、ビデオスコープ302が捉えた映像を、近傍に設置されたディスプレイ304で確認できるようになっている。またビデオスコープ302が捉えた映像は、画像プロセッサ303を介して、医用画像録画装置100の画像入力部101に入力される。
【0020】
本実施形態の医用画像録画システム10は、被検体が置かれた室内に設置された患者監視用のカメラ(監視カメラ)200の映像信号を画像入力部101に入力するように構成されている。監視カメラ200は、医用画像録画システム10がX線撮像装置などの医用撮像装置を含む場合には、その医用撮像装置に設置されている患者監視用のカメラを利用することができる。また内視鏡の動きを監視するために専用の監視カメラを設置してもよい。監視カメラ200としては、一般的に入手可能なビデオカメラ等を用いることができる。監視カメラ200は、内視鏡先端が被検体の体内に挿入される部位を映し出すことができる場所、例えば、ベッドに寝かせられた被検体の上部などに設置される。なお
図1には示していないが、内視鏡カメラ300以外の画像診断装置、例えばX線診断装置を併用する場合には、その撮像範囲(X線照射範囲)と重複しない位置に配置する。
【0021】
監視カメラ200と医用画像録画装置100とは有線で接続されていてもよいし、無線で映像信号を受信する構成としてもよい。監視カメラ200からの映像は、患者の状態を監視するという目的のほかに、内視鏡先端が体内に挿入されたか、また体内から引き出されたか、を検出するために用いられ、医用画像録画装置100は、内視鏡先端の検出結果によって、内視鏡カメラ300の画像データの録画のタイミングを制御する。
【0022】
上記構成の医用画像録画システム10は、
図2に示すように、監視カメラ200と内視鏡カメラ300がそれぞれ作動し始めると、医用画像録画装置100の画像入力部101が両者からの画像信号を入力する。画像入力部101に入力された画像信号は画像処理部102に渡され、画像の合成が行われる。例えば、監視カメラの画像と内視鏡カメラの画像とを併置した画像が作成される。表示制御部103は、画像処理部102から合成画像データを受け取り、ディスプレイ400に表示させる。
【0023】
一方、画像処理部102は、監視カメラ200からの画像データを解析し、内視鏡の先端が被検体の体内に挿入されたか否かを判断する。この判断の手法は後述の実施形態で説明する。画像処理部102は、内視鏡先端が体内に挿入されたと判断すると、その結果を録画制御部104に送る。録画制御部104は、画像処理部102の判断結果を受け取ると、画像入力部101および記録部105に制御信号を送り、画像入力部101に入力される内視鏡ビデオ画像プロセッサ303からの画像信号を記録部105に書き込ませる。すなわち、記録部105は、録画制御部104からの制御信号をトリガーとして、内視鏡カメラの映像の録画を開始する。
【0024】
また画像処理部102は、監視カメラ200からの画像データを解析し、体内に挿入されていた管(光ファイバ)301が引き抜かれ、内視鏡先端が体外に出たと画像処理部102が判断すると、その結果を録画制御部104に送る。録画制御部104は、記録部105に制御信号を送り、内視鏡カメラの映像の録画を停止する。
【0025】
以下、画像処理部102による処理の具体的な実施形態を説明する。
【0026】
<第1実施形態>
本実施形態では、画像処理部102は、監視カメラ200から送られてくる映像信号を時系列の画像データに変換し、これら画像データに含まれる内視鏡先端の形状をもとに内視鏡先端が体内に挿入されたか否かを判断する。具体的には、画像データの特徴点を抽出し、その特徴点の図形と内視鏡先端図形との類似性から、先端の有無を判断する特徴ベースの画像マッチングや、先端形状のテンプレート画像を用いて、テンプレート画像を探索範囲内で動かして合致する画像の有無を検索するテンプレートマッチングなど公知の手法を用いることができる。
【0027】
本実施形態の処理の流れを、
図3のフローを参照して説明する。
【0028】
初期状態では、内視鏡300の映像は録画停止状態である(S31)。この状態で、画像入力部101が監視カメラ200からの映像の取り込みを開始し、画像処理部102に渡す(S32)。画像処理部102は、映像信号から逐次画像データを作成し、画像マッチングにより画像データ中に内視鏡先端(管301の先端)301Aが存在するか否かを判断する(S33、S34)。先端を検出した場合には、先端は被検体外にあるので、そのまま先端検出S32、S33が継続される。ステップS34で先端が検出されない場合は、先端が被検体内に挿入されたと判断し、画像処理部102は検出信号を録画制御部104に送り、録画制御部104が記録部(HDD)105による記録を開始する(S35)。
【0029】
記録部105は、録画制御部104からの録画停止信号が送られるまで、録画を継続する。この間も画像処理部102は、監視カメラ200からの映像信号を処理し画像データ中に内視鏡先端301Aが存在するか否かを判断する。先端が検出されると(S36)、画像処理部102は、先端が被検体の外に出たたと判断し、検出信号を録画制御部104に送り、録画制御部104が記録部(HDD)105による記録を停止する(S37)。
【0030】
また録画停止状態において、内視鏡を用いた手技が終了するまで(S38)、上述した処理を継続する。なお手技の終了は、ユーザが入力装置(不図示)を介してその旨を指示してもよいし、ビデオスコープ302がOFFになり、画像入力部101へのビデオスコープ302からの映像信号が停止したときに終了を判断してもよい。
【0031】
画像入力部101が、監視カメラ200からの映像信号とビデオスコープ302からの映像信号を入力している間は、表示制御部103はこれら映像信号を表示用の画像に変換してディスプレイ400に表示させる。表示の形態は任意であり、ユーザが入力装置を介して変更することも可能であるが、例えば、
図4(a)に示すように、2つの画像40A、40Bを並列に示し、ユーザが両方の画像を確認できるようになっている。この際、上述した録画制御によって、録画状態にある場合には、内視鏡映像を映し出す画面中に「録画中」「REC」40Cなどの表示を行い、録画中であることを示してもよい。これによりユーザは、必要な画像が録画されていること、不要な画像が録画されていないことを確認できる。
【0032】
また内視鏡先端が体内から出されたとき、すなわち録画が停止状態のときには、
図4(b)に示すように、内視鏡からの映像40Bを小さくして、監視カメラ200からの映像40Aを大きく映しだすように表示してもよい。このような表示の変化から、録画状態を確認することができ、適切に制御されているかを確かめることができる。
【0033】
本実施形態によれば、監視カメラの映像を用いて、内視鏡先端形状を検出し、録画の開始終了を制御するので、内視鏡を扱いながら手技を進める術者を煩わせることなく、映像の録画の制御を行うことができ、不必要な録画とそれによる記憶媒体の無駄な使用を防止することができる。
【0034】
<第2実施形態>
第1実施形態では、画像データにおいて内視鏡先端の形状の有無を検出したが、本実施形態は、画像データの輝度情報から内視鏡先端を検出する。内視鏡先端301Aには光ファイバの先端が位置しており、光ファイバが接続されたビデオスコープ302から被検体内部を照らす強い光が送られてくる。このため内視鏡先端301Aが監視カメラ200に捉えられているときは、監視カメラ200の映像では強い輝度を持つ。内視鏡先端301Aが被検体内に挿入されると、高輝度部分(光源)が消失する。
【0035】
画像処理部102は、内視鏡先端がない場合の画像の輝度平均値あるいは最大値をもとに所定の閾値を設定して起き、この閾値を超える高輝度部分すなわち光源がある場合には、映像内に内視鏡先端があり、閾値を超える高輝度部がないときには、先端が体内に挿入されたものと判断する。
【0036】
本実施形態の処理フローは、
図3に示す第1実施形態の処理フローにおいて、先端の検出を光源の検出と置き換えればよく、説明を省略する。
本実施形態によれば、先端形状の検出が困難な暗い室内においても、先端の検出を行うことができ、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0037】
<第3実施形態>
本実施形態は、第1及び第2実施形態を組み合わせて、先端検出の確実性を高めたものである。以下、
図5に示すフローを参照して、本実施形態における画像処理部102の処理を説明する。
【0038】
初期状態では、内視鏡カメラの映像は録画停止状態である(S51)。この状態で、画像入力部101が監視カメラ200からの映像の取り込みを開始し、画像処理部102に渡す(S52)。画像処理部102は、映像信号から逐次画像データを作成し、画像マッチングにより画像データ中にビデオスコープ先端が存在するか否かを判断する(S53、S54)。ステップS54で先端が検出されない場合は、次に、画像に閾値を超える高輝度部分(光源)が存在するか否かを判断する(S55、S56)。光源がある場合には、再び先端検出ステップS53、S54および光源検出ステップS55、S56が継続される。ステップS56で光源が検出されない場合は、先端が被検体内に挿入されたと判断し、画像処理部102は検出信号を録画制御部104に送り、録画制御部104が記録部(HDD)105による記録を開始する(S55)。
【0039】
記録部105は、録画制御部104からの録画停止信号が送られるまで、録画を継続する。この間も画像処理部102は、監視カメラ200からの映像信号を処理し画像データ中にビデオスコープ先端が存在するか、および、光源が検出できるか否かを判断する。先端または光源が検出されると(S58)、画像処理部102は、先端が被検体の外に出たたと判断し、検出信号を録画制御部104に送り、録画制御部104が記録部(HDD)105による記録を停止する(S57)。
【0040】
また記録停止状態において、内視鏡を用いた手技が終了するまで(S60)、上述した処理を継続する。
【0041】
本実施形態によれば、録画開始を、先端形状検出及び光源検出の両方の検出信号(AND)をトリガーとすることで、室内が明るくて光源の検出ができない場合や室内が暗くて形状検出ができない場合にも、確実に内視鏡先端が体内に挿入したことを確認することができ、適切なタイミングで録画できる。また内視鏡先端が体外に引き出された時には、先端形状検出及び光源検出のいずれか一方を録画停止のトリガーとすることで、不要な録画を防止できる。
【0042】
<第4実施形態>
本実施形態は、監視カメラからの映像のうち、所定の領域のみを先端検出を有効とする範囲として予め設定し、有効範囲内で先端検出結果に基づき内視鏡先端の体内へ挿入を判定することが特徴である。これにより、ビデオスコープの先端が体内に挿入されていないにも拘わらず、術者等の陰に隠れたりして録画開始と誤認定してしまうことを防止する。
【0043】
監視カメラの撮影範囲は、ユーザの設定にもよるが、患者の監視を兼ねているので、患者を含む比較的広い範囲である。本実施形態では、例えば、
図6に示すように、内視鏡先端の検出結果を有効とする領域61を、被検体500を含む狭い領域(撮影範囲の50%など)に設定し、その情報を画像処理部102に与えておく。監視カメラ200の映像が画像入力部101に送られ、画像処理部102及び表示制御部103を介してディスプレイ400に表示されることは第1実施形態と同様であるが、画像処理部102は、内視鏡先端(管301の先端)が有効範囲内にあるときに、先端検出の判定を行う。本実施形態において、先端検出の手法は、第1~第3実施形態のいずれの手法を用いてもよい。ここでは、画像マッチングによって内視鏡先端を検出する場合を例として説明する。
【0044】
以下、
図7に示すフローを参照して、本実施形態における画像処理部102の処理を説明する。
【0045】
初期状態では、内視鏡カメラの映像は録画停止状態である(S71)。この状態で、画像入力部101が監視カメラ200からの映像の取り込みを開始し、画像処理部102に渡す(S72)。画像処理部102は、映像信号から逐次画像データを作成し、例えば、画像マッチングにより画像データ中に内視鏡先端が有効範囲内に存在するか否かを判断する(S73、S74)。有効範囲内に検出した場合、さらに、画像データ中にビデオスコープ先端が存在するか否かを判断する(S75)。先端を検出した場合には、先端は被検体外にあるので、そのまま先端検出ステップS74、S75が継続される。ステップS75で先端が検出されない場合は、先端が被検体内に挿入されたと判断し、画像処理部102は検出信号を録画制御部104に送り、録画制御部104が記録部(HDD)105による記録を開始する(S76)。
【0046】
記録部105は、録画制御部104からの録画停止信号が送られるまで、録画を継続する。この間も画像処理部102は、監視カメラ200からの映像信号を処理し画像データ中にビデオスコープ先端が存在するか否かを判断する。先端が検出されると(S77)、画像処理部102は、先端が被検体の外に出たと判断し、検出信号を録画制御部104に送り、録画制御部104が記録部(HDD)105による記録を停止する(S78)。
【0047】
また記録停止状態において、内視鏡を用いた手技が終了するまで(S79)、上述した処理を継続する。なお手技の終了は、ユーザが入力装置を介してその旨を指示してもよいし、ビデオスコープ302がOFFになり、画像入力部101へのビデオスコープ302からの映像信号が停止したときに終了を判断してもよい。
【0048】
監視カメラ200の映像から先端がなくなったことを検出して録画状態に移行する制御を行う場合、監視カメラ200の映像には、術者や機器(ケーブルなど)遮蔽となるものが写りこむ可能性があり、内視鏡先端が遮蔽された際にも録画状態と認識される可能性がある。本実施形態によれば、検出結果を判断するための有効範囲を予め設定しておき、有効範囲において内視鏡先端が検出されなくなったときにのみ録画を開始するので、遮蔽物による誤判定を防止することができる。
【0049】
以上、本発明の医用画像録画装置とそれを含む医用画像録画システムの実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく、種々の変更を含むことができる。例えば、上記実施形態では、医用画像録画装置の画像処理部に、監視カメラの映像信号と内視鏡の映像信号とが入力される場合を説明したが、それ以外の医用撮像装置が取得した画像信号も入力し、ディスプレイやモニタに表示させてもよいし、単にディスプレイやモニタに表示させるのではなく、離れた場所に送ることも可能である。
【0050】
次に、医用画像録画装置の構成を含む医用撮像装置の実施形態を説明する。
<医用撮像装置の実施形態>
以下、医用撮像装置としてX線撮像装置、特にX線透視装置を例に説明する。
最初に本発明の医用画像録画システムを採用したX線透視装置について説明する。
図8は、X線透視装置80の全体構成を示す図である。図示するように、X線透視装置80は、撮像部800と、撮像部800が取得した画像の録画及び表示を行う画像録画装置900とを備えている。撮像部800は、被検体500を載せる天板801と、被検体にX線を照射するX線源802と、X線源802の被検体側に設置され、被検体に対するX線照射領域を設定する絞り装置803と、X線源802に電力を供給する高電圧発生部804と、被検体500を挟んでX線源802と対抗する位置に配置されたX線検出器805と、X線を検出したX線検出器805から出力されるX線信号を入力し、X線画像を作成するX線画像処理部806と、を備える。
【0051】
また絞り装置803の近傍には、天板801に載せられた被検体500を監視するための監視カメラ200が固定されている。監視カメラ200の映像と、X線画像処理部806によって画像処理されたX線透視画像の画像信号は、画像録画装置900に送信される。
【0052】
内視鏡300は、
図1に示す構成と同様であり、光ファイバを内蔵する管301とビデオスコープ302及び内視鏡ビデオ画像プロセッサ303を備えている。ビデオスコープ302が取得した映像は内視鏡ビデオ画像プロセッサ303で処理され、内視鏡映像信号として画像録画装置900に送信される。
【0053】
画像録画装置900の構成は、
図1に示す医用画像録画装置100と同様であるが、この画像録画装置900は、X線透視装置に特化した画像処理部を備えていてもよい。また
図8では省略しているが、X線透視画像等を表示するディスプレイや、ユーザが撮影条件等を入力するための入力装置などが備えられている。
【0054】
以下、画像録画装置900の動作を簡単に説明する。
画像録画装置900の画像入力部101は、監視カメラ200の映像信号と、X線画像処理部806からのX線透視画像の画像信号と、内視鏡300からの内視鏡映像信号を入力し、画像処理部102は、3つの信号を用いて、それぞれモニタに表示させる表示画像を作成する。表示制御部103は、表示画像を並べて、或いはユーザによって選ばれた1ないし複数の画像を所定の表示形態で、モニタに表示させる。
【0055】
画像処理部102は、また監視カメラ200からの映像信号から作成した時系列の画像を用いて、画像データに内視鏡先端があるか否かの検出を行う。検出の手法は、上述した第1~第4の実施形態のいずれでもよい。そして検出されていた内視鏡先端が検出されなくなったときに、録画制御部104に検出信号を送り、内視鏡からの映像信号の録画を開始する。また監視カメラ200からの画像において内視鏡先端を検出した場合には、録画を停止する。
【0056】
本実施形態においても、モニタには録画中であることを示すマークや文字等を表示してもよいし、録画中か否かで表示形態を自動的に変化させてもよい。
本実施形態の効果は、医用画像録画装置の効果と同様であり、術者の手を煩わすことなく自動録画開始停止を行うことができ、且つ、不要な記録媒体の使用を防止することができる。
【符号の説明】
【0057】
10:医用画像録画システム、80:X線透視装置、100:医用画像録画装置、101:画像入力部、102:画像処理部、103:表示制御部、104:録画制御部、105:記録部、200:監視カメラ、300:内視鏡、301:管、302:ビデオスコープ、303:内視鏡ビデオ画像プロセッサ、400:ディスプレイ、800:X線撮像部、900:画像録画装置