(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】半導体記憶装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H10B 43/27 20230101AFI20240109BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240109BHJP
H01L 29/788 20060101ALI20240109BHJP
H01L 29/792 20060101ALI20240109BHJP
H10B 43/40 20230101ALI20240109BHJP
H01L 21/3205 20060101ALN20240109BHJP
H01L 21/768 20060101ALN20240109BHJP
H01L 23/522 20060101ALN20240109BHJP
【FI】
H10B43/27
H01L29/78 371
H10B43/40
H01L21/88 S
(21)【出願番号】P 2020045534
(22)【出願日】2020-03-16
【審査請求日】2022-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今村 克平
【審査官】柴山 将隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-170742(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0060977(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0263620(US,A1)
【文献】特開2019-096880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10B 43/27
H01L 21/336
H10B 43/40
H01L 21/3205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の犠牲層および前記第1の犠牲層とは異種の材料で構成される第2の犠牲層を含む複数の犠牲層と複数の絶縁層とが1層ずつ交互に積層される第1の積層体を形成し、
前記第1の積層体内を前記第1の積層体の積層方向に延び、側面にチャネル層およびメモリ層を有するピラーを形成し、
前記第1の犠牲層を除去し、前記第1の犠牲層が除去されて生じた前記複数の絶縁層間のギャップに第1の導電層を形成して、前記第1の導電層、前記第2の犠牲層、及び前記複数の絶縁層が積層される第2の積層体を形成し、
前記第2の犠牲層を除去し、前記第2の犠牲層が除去されて生じた前記複数の絶縁層間のギャップに第2の導電層を形成して、複数の前記第1および第2の導電層を含む複数の導電層と前記複数の絶縁層とが1層ずつ交互に積層される第3の積層体を形成
し、
前記第1の積層体を形成するときは、
前記絶縁層を介して、前記第1の犠牲層と前記第2の犠牲層とを交互に積層する、
半導体記憶装置の製造方法。
【請求項2】
前記複数の絶縁層の面方向に沿う第1の方向に延びるとともに、前記第1の積層体内を前記積層方向に延びる第1のスリットを、更に形成し、
前記第2の積層体を形成するときは、
前記第1のスリットを介して前記第1の犠牲層を除去し、前記第1の導電層を形成する、
請求項1に記載の半導体記憶装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1の方向に延びるとともに、前記第1の積層体内を前記積層方向に延びる第2のスリットを、更に形成し、
前記第3の積層体を形成するときは、
前記第2のスリットを介して前記第2の犠牲層を除去し、前記第2の導電層を形成する、
請求項
2に記載の半導体記憶装置の製造方法。
【請求項4】
前記第1の犠牲層および前記第2の犠牲層のうちの一方はSiN層であり、もう一方はポリシリコン層である、
請求項1
乃至請求項3のいずれか1項に記載の半導体記憶装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体記憶装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3次元不揮発性メモリでは、積層された複数の導電層に対してメモリセルが3次元に配置される。このような構成においては、積層構造の強度を如何に保つかが課題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6140400号明細書
【文献】特許第6448897号明細書
【文献】特許第6609234号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一つの実施形態は、積層構造の強度を高めることができる半導体記憶装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の半導体記憶装置の製造方法は、第1の犠牲層および前記第1の犠牲層とは異種の材料で構成される第2の犠牲層を含む複数の犠牲層と複数の絶縁層とが1層ずつ交互に積層される第1の積層体を形成し、前記第1の積層体内を前記第1の積層体の積層方向に延び、側面にチャネル層およびメモリ層を有するピラーを形成し、前記第1の犠牲層を除去し、前記第1の犠牲層が除去されて生じた前記複数の絶縁層間のギャップに第1の導電層を形成して、前記第1の導電層、前記第2の犠牲層、及び前記複数の絶縁層が積層される第2の積層体を形成し、前記第2の犠牲層を除去し、前記第2の犠牲層が除去されて生じた前記複数の絶縁層間のギャップに第2の導電層を形成して、複数の前記第1および第2の導電層を含む複数の導電層と前記複数の絶縁層とが1層ずつ交互に積層される第3の積層体を形成し、前記第1の積層体を形成するときは、前記絶縁層を介して、前記第1の犠牲層と前記第2の犠牲層とを交互に積層する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、実施形態にかかる半導体記憶装置の構成の一例を示すY方向に沿う断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態にかかる半導体記憶装置の製造方法の手順の一例を示す断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態にかかる半導体記憶装置の製造方法の手順の一例を示す断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態にかかる半導体記憶装置の製造方法の手順の一例を示す断面図である。
【
図5】
図5は、実施形態にかかる半導体記憶装置の製造方法の手順の一例を示す断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態にかかる半導体記憶装置の製造方法の手順の一例を示す断面図である。
【
図7】
図7は、実施形態にかかる半導体記憶装置の製造方法の手順の一例を示す断面図である。
【
図8】
図8は、実施形態にかかる半導体記憶装置の製造方法の手順の一例を示す断面図である。
【
図9】
図9は、実施形態にかかる半導体記憶装置の製造方法の手順の一例を示す断面図である。
【
図10】
図10は、実施形態の変形例にかかる半導体記憶装置の構成の一例を示すY方向に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施形態により、本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0008】
(半導体記憶装置の構成例)
図1は、実施形態にかかる半導体記憶装置1の構成の一例を示すY方向に沿う断面図である。
図1に示すように、実施形態の半導体記憶装置1は基板SB及び積層体LMを備える。
【0009】
なお、半導体記憶装置1の上下方向は、例えば積層体LMを基準に定義され、積層体LMに対して基板SB側が下方であるものとし、積層体LMに対して基板SBとは反対側が上方であるものとする。
【0010】
積層体LMの下層構造としての基板SBは、例えばシリコン基板等の半導体基板である。基板SBは、半導体記憶装置1において例えばソース線として機能する。基板SBには下受け部SPが配置されている。
【0011】
下受け部SPは、基板SBの上面に開口し、例えばY方向と直交するX方向に延びる溝内にタングステン層等の金属層21が充填された構成を有する。つまり、下受け部SPの上面は、例えば基板SBの上面と略同じ高さである。下受け部SPの下面は、基板SB内の所定深さに埋め込まれている。
【0012】
下受け部SPの延伸方向と直交する断面、つまり、Y方向に沿う断面の形状は、例えば矩形である。ただし、下受け部SPの断面形状は矩形に限られず、後述するコンタクトLIの下端部を取り囲むように配置されていれば他の断面形状であってもよい。
【0013】
基板SB上には積層体LMが配置される。積層体LMは、複数の第1の導電層としてのワード線WL及び複数の絶縁層OLが1層ずつ交互に積層された構成を有する。ワード線WLは、例えばタングステン層またはモリブデン層である。絶縁層OLは例えばSiO2層である。
【0014】
図1の例では、積層体LMは4層のワード線WLを有するが、ワード線WLの層数は任意である。また、積層体LMが、最上層のワード線WLの上方に、図示しない選択ゲート線を備えていてもよい。また、積層体LMが、最下層のワード線WLの下方に、図示しない選択ゲート線を備えていてもよい。
【0015】
積層体LMには、帯状部としてのコンタクトLIが複数配置されている。個々のコンタクトLIは、X方向に延び、積層体LMをY方向に分割している。また、コンタクトLIは積層体LMを貫通しており、コンタクトLIの下端部は下受け部SP内に配置されている。つまり、下受け部SPはコンタクトLIの下端部を取り囲んでおり、これにより、コンタクトLIと基板SBとは離隔されている。
【0016】
コンタクトLIは、コンタクトLIの側壁を覆う絶縁層50をコンタクトLI内に有する。コンタクトLIは、絶縁層50の内側に第2の導電層としての導電層20を有する。つまり、導電層20はコンタクトLIの内側をX方向に延びる。絶縁層50は例えばSiO2層であり、導電層20は例えばポリシリコン層である。導電層20は、コンタクトLIの下端部にまで延び、下受け部SPの金属層21と接続されている。
【0017】
このように、コンタクトLIは物理的には基板SBから離隔されているものの、下受け部SPの金属層21を介して、ソース線として機能する基板SBと電気的に接続される。また、コンタクトLIの導電層20の上端部は図示しない上層配線等に接続される。これにより、コンタクトLIは、基板SBと上層配線とを電気的に接続するソース線コンタクトとして機能する。ただし、帯状部が、導電層20を有さず、例えば絶縁層51等から構成されていてもよい。この場合、帯状部はソース線コンタクトとしての機能は有さない。
【0018】
積層体LMには、上面視で略円形の複数のピラーPRが、マトリクス状に配置されている。個々のピラーPRは、積層体LMを貫通して基板SBに到達する。ピラーPRは、側壁側から順に、ブロック絶縁層BK、電荷蓄積層CT、トンネル絶縁層TN、チャネル層CN、及びピラーPRの芯に相当する位置にコア層CRを備える。チャネル層CNはピラーPRの底部にも配置される。ブロック絶縁層BK、電荷蓄積層CT、及びトンネル絶縁層TNは、例えばメモリ層MEを構成する。
【0019】
ピラーPRのブロック絶縁層BK、トンネル絶縁層TN、及びコア層CRは、例えばSiO2層である。電荷蓄積層CTは例えばSiN層であり、チャネル層CNは例えばアモルファスシリコン層またはポリシリコン層である。
【0020】
ピラーPRのチャネル層CNは、ソース線として機能する基板SBに底部で接続され、チャネル層CNの上端部は、例えばビット線等の図示しない上層配線に接続される。これにより、複数のワード線WLとピラーPRとの交差部には、それぞれ高さ方向に並ぶメモリセルMCが形成される。
【0021】
以上のように、ピラーPRがマトリクス状に配置され、それらの側面にメモリセルMCが形成されることで、半導体記憶装置1は、例えばメモリセルMCが3次元に配置された3次元不揮発性メモリとして構成される。
【0022】
ここで、積層体LM等が有するより詳細の層構成について説明する。
【0023】
図1において、コンタクトLIの下端部近傍の部分拡大図に示すように、ワード線WLの下面には、例えばTiN層であるバリアメタル層、及び例えばAl
2O
3層である金属ブロック層MTが配置されている。また、ワード線WLの上面にも同様に、バリアメタル層BM及び金属ブロック層MTが配置される。すなわち、ワード線WLと絶縁層OLとの間には、ワード線WL側から順に、バリアメタル層BMと、金属ブロック層MTとが介在される。金属ブロック層MTは、コンタクトLIの側面に対向する絶縁層OLの端面と、コンタクトLIの絶縁層50の側面との間を通って、最下層のワード線WLの下面側から下方へと延び、下受け部SPに到達する。
【0024】
コンタクトLIの導電層20は、絶縁層OL及び金属ブロック層MTよりも更に下受け部SPの深部へと延びる突出部20pを有する。突出部20pは、絶縁層OL及び金属ブロック層MTの到達深さ近傍の幅よりも、下受け部SPの金属層21と接続される底面の幅が小さいことにより、テーパ形状を有していてもよい。
【0025】
なお、
図1には示されないが、半導体記憶装置1は、例えば積層体LMの外側に周辺回路を備える。周辺回路は、基板SB上に配置された複数のトランジスタを有しており、メモリセルMCの動作に寄与する。
【0026】
(半導体記憶装置の製造方法)
次に、
図2~
図9を用いて、実施形態の半導体記憶装置1の製造方法について説明する。
図2~
図9は、実施形態にかかる半導体記憶装置1の製造方法の手順の一例を示す断面図である。
【0027】
図2(a)に示すように、基板SBの上面に開口部を有し、基板SB内の所定深さに底面を有する凹部RCを基板SBに形成する。凹部RCの形成位置は、後にコンタクトLIの下端部が配置される位置となるよう調整されている。
【0028】
図2(b)に示すように、凹部RCにタングステン層等の金属層21を埋め込んで、下受け部SPを形成する。
【0029】
図2(c)に示すように、下受け部SPが形成された基板SB上に、複数の犠牲層および複数の絶縁層OLが1層ずつ交互に積層された第1の積層体としての積層体LMpnを形成する。
【0030】
複数の犠牲層は、互いに異種材料から構成される犠牲層PLと犠牲層NLとを含む。犠牲層PLは例えばポリシリコン層PLであり、犠牲層NLは例えばSiN層である。複数の犠牲層のうち、犠牲層PLと犠牲層NLとは、例えば交互に絶縁層OL間に配置される。つまり、例えば絶縁層OL、犠牲層PL、絶縁層OL、犠牲層NL、絶縁層OL・・・の順に積層される。
【0031】
犠牲層PL,NLは、後述するリプレース処理でワード線WLに置き換えられる。
【0032】
図3(a)に示すように、積層体LMpnを貫通して基板SBに到達する複数のメモリホールMHを形成する。このとき、例えばC,H,Fを含むガス系を用いてエッチング処理することで、各層間のエッチング選択比および加工形状を調整しつつ、メモリホールMHを形成することができる。
【0033】
図3(b)に示すように、メモリホールMH内に、側壁側から順に、メモリ層ME、チャネル層CN、及びコア層CRを積層してピラーPRを形成する。
【0034】
すなわち、メモリホールMHの側壁および底面に、側壁側から順に、ブロック絶縁層BK、電荷蓄積層CT、及びトンネル絶縁層TNを形成する。メモリホールMHの底面から、ブロック絶縁層BK、電荷蓄積層CT、及びトンネル絶縁層TNを除去する。トンネル絶縁層TNの内側およびメモリホールMHの底面にチャネル層CNを形成する。メモリホールMHの芯に相当する位置にコア層CRを充填する。
【0035】
これにより、積層体LMpn内にマトリクス状に配置される複数のピラーPRが形成される。
【0036】
図4(a)に示すように、積層体LMpnを貫通して基板SBの下受け部SPに到達する複数のスリットSTp,STnを形成する。スリットSTpは、犠牲層PLをワード線WLに置き換える処理に用いられる。スリットSTnは、犠牲層NLをワード線WLに置き換える処理に用いられる。ただし、スリットSTp,STn間に構成上の差異はない。
【0037】
スリットSTpとスリットSTnとはY方向に交互に並んで形成される。このとき、例えばC,H,Fを含むガス系を用いてエッチング処理することで、各層間のエッチング選択比および加工形状を調整しつつ、スリットSTp,STnを形成することができる。
【0038】
図4(b)に示すように、スリットSTp内に犠牲層SCを充填する。犠牲層SCは、例えば積層体LMpnを構成する犠牲層NLとは異種の材料で構成される。また、犠牲層SCは、例えば犠牲層PLを除去するコリン水溶液等で除去されるアモルファスシリコン層等であることが好ましい。
【0039】
このとき、例えば図示しないレジスト膜等でスリットSTnを塞いでおけば、スリットSTn内に犠牲層SCが充填されることなく、スリットSTp内に犠牲層SCを充填することができる。
【0040】
図5(a)に示すように、スリットSTnを介して例えば熱リン酸等で処理することにより、積層体LMpnの犠牲層NLを除去する。つまり、スリットSTnから両側に熱リン酸が流入していき、スリットSTnの両側の犠牲層NLが除去される。このとき、スリットSTpには犠牲層SCが充填されており、スリットSTpは犠牲層NLの除去には寄与しない。
【0041】
上述のように、スリットSTp,STnはY方向に沿って交互に配置されている。したがって、1つのスリットSTnを介して、そのスリットSTnと、そのスリットSTnの両側にそれぞれ配置されるスリットSTpとの間の犠牲層NLが除去される。これにより、複数の絶縁層OL間にギャップGPnを有する積層体LMpgが形成される。
【0042】
図5(b)に示すように、スリットSTnを介して絶縁層OL間のギャップGPnにタングステン等の導電材を充填し、複数のワード線WLと、複数の犠牲層PLと、複数の絶縁層OLとが積層された第2の積層体としての積層体LMpwを形成する。
【0043】
より詳細には、ワード線WLを形成するにあたり、スリットSTnを介して、Al
2O
3層等の金属ブロック層MT(
図1参照)が形成される。金属ブロック層MTは、ギャップGPnの上下面、及びギャップGPn内に露出したピラーPRの側壁に形成される。このとき、複数の絶縁層OLの端面と複数の犠牲層PLの端面とで構成されるスリットSTnの側壁、及び下受け部SPの金属層21が露出した底面にも金属ブロック層MTが形成される。
【0044】
次に、スリットSTnを介して、TiN層等のバリアメタル層BM(
図1参照)が形成される。バリアメタル層BMは金属ブロック層MT上に形成される。すなわち、バリアメタル層BMは、ギャップGPnの上下面、及びギャップGPn内に露出したピラーPRの側壁に、金属ブロック層MTの上から形成される。また、バリアメタル層BMは、スリットSTnの側壁および底面にも金属ブロック層MTの上から形成される。
【0045】
これらの処理を行ったうえで、絶縁層OL間のギャップGPn内にワード線WLが形成される。このとき、スリットSTn内にも導電材が堆積され、スリットSTnの一部または全部が導電材で充填される。
【0046】
図6(a)に示すように、スリットSTp内の犠牲層SCを例えば熱したコリン水溶液(Hot TMY)で除去する。
【0047】
図6(b)に示すように、スリットSTp内の犠牲層SCが除去されていくにしたがって、スリットSTpの側壁に積層体LMpwの犠牲層PLの端面が露出する。よって、コリン水溶液は、スリットSTpを介してスリットSTpの両側へと流入していき、積層体LMpwの犠牲層PLも除去される。このとき、スリットSTnには導電材が充填されており、スリットSTnは犠牲層PLの除去には寄与しない。
【0048】
したがって、1つのスリットSTpを介して、そのスリットSTpと、そのスリットSTpの両側にそれぞれ配置されるスリットSTnとの間の犠牲層PLが除去される。これにより、複数の絶縁層OL間にギャップGPpを有する積層体LMgwが形成される。
【0049】
ここで、コリン水溶液は、例えば基板SBを構成するシリコン材等も除去する性質を有する。しかしながら、スリットSTpの下端部は下受け部SP内に配置されており、スリットSTpと基板SBとは直接、接していない。このため、コリン水溶液による基板SBの構成材の除去が抑制される。
【0050】
図7(a)に示すように、スリットSTpを介して絶縁層OL間のギャップGPpにタングステン等の導電材を充填し、複数のワード線WLと、複数の絶縁層OLとが積層された第3の積層体としての積層体LMを形成する。
【0051】
より詳細には、ワード線WLを形成するにあたり、スリットSTpを介して、Al
2O
3層等の金属ブロック層MT(
図1参照)が形成される。金属ブロック層MTは、ギャップGPpの上下面、及びギャップGPp内に露出したピラーPRの側壁に形成される。このとき、複数の絶縁層OLの端面と、スリットSTnを介して形成済みの複数のワード線WLの端面とで構成されるスリットSTpの側壁、及び下受け部SPの金属層21が露出した底面にも金属ブロック層MTが形成される。
【0052】
次に、スリットSTpを介して、TiN層等のバリアメタル層BM(
図1参照)が形成される。バリアメタル層BMは金属ブロック層MT上に形成される。すなわち、バリアメタル層BMは、ギャップGPpの上下面、及びギャップGPp内に露出したピラーPRの側壁に、金属ブロック層MTの上から形成される。また、バリアメタル層BMは、スリットSTpの側壁および底面にも金属ブロック層MTの上から形成される。
【0053】
これらの処理を行ったうえで、絶縁層OL間のギャップGPp内にワード線WLが形成される。このとき、スリットSTp内にも導電材が堆積され、スリットSTpの一部または全部が導電材で充填される。
【0054】
なお、
図5(a)~
図7(a)に示す処理をリプレース処理と呼ぶことがある。
【0055】
図7(b)に示すように、複数のワード線WL間での導通を回避するため、スリットSTp,STn内の導電材およびバリアメタル層BMを順次除去する。Al
2O
3層等の金属ブロック層MTは絶縁性であり、また、スリットSTp,STnの側壁を構成するワード線WLの端面には形成されていないため、除去しなくともよい。
【0056】
ここで、下受け部SPを構成する金属層21は例えばタングステン層等であり、スリットSTp,STn内から除去される導電材と同種の材料から構成されている。上記のように、例えばスリットSTp,STnの下端部には金属ブロック層MTが残っているので、スリットSTp,STnの下端部に接触する下受け部SPの金属層21はほとんど除去されない。
【0057】
一方で、スリットSTp,STnの側壁を構成するワード線WLの端面が、若干除去されて、スリットSTp,STnの側壁側から後退することがある。しかしながら、半導体記憶装置1の性能に影響を及ぼすことは殆どない。
【0058】
図8に示すように、スリットSTp,STnの側壁および底面を覆う絶縁層50を形成する。このときのスリットSTp,STnの下端部近傍の詳細構成を部分拡大図に示す。
【0059】
部分拡大図に示すように、ワード線WLと絶縁層OLとの間には、ワード線WL側から順に、バリアメタル層BMと、金属ブロック層MTとが介在される。金属ブロック層MTは、コンタクトLIの側面に対向する絶縁層OLの端面と、スリットSTp,STnの絶縁層50の側面との間を通って、最下層のワード線WLの下面側から下方へと延び、下受け部SPに到達する。また、金属ブロック層MTは、スリットSTp,STnの底面を覆っている。
【0060】
絶縁層50は、スリットSTp,STnの側面および底面を覆っている。スリットSTp,STnの側面を構成するワード線WLの端面および絶縁層OLの端面のうち、ワード線WLの端面は、バリアメタル層BMも金属ブロック層MTも介さず直接、絶縁層50で覆われている。絶縁層OLの端面は、金属ブロック層MTを介して絶縁層50で覆われている。スリットSTp,STnの底面もまた、金属ブロック層MTと絶縁層50とにこの順で覆われている。
【0061】
図9に示すように、スリットSTp,STnの底面を追加エッチングし、底面の絶縁層50を除去する。このとき、スリットSTp,STnの底面からは、金属ブロック層MTも除去される。このときのスリットSTp,STnの下端部近傍の詳細構成を部分拡大図に示す。
【0062】
部分拡大図に示すように、スリットSTp,STnの底面からは、絶縁層50及び金属ブロック層MTが除去されている。追加エッチングされたスリットSTp,STnの下端部は、絶縁層50及び金属ブロック層MTから下受け部SPの金属層21中へと突出した突出部STeを有する。このとき、スリットSTp,STnの追加エッチングにより形成された突出部STeは、金属ブロック層MTを貫通し、また、金属層21内を下方へ延びる際に、絶縁層OL及び金属ブロック層MTの到達深さ近傍の幅よりも、下受け部SPの金属層21と接続される底面の幅が小さいテーパ形状となることがある。
【0063】
以上のように、スリットSTp,STnの下端部は、下受け部ST内における絶縁層50及び金属ブロック層MTの到達深さよりも、更に深い位置に到達することとなる。
【0064】
この後、スリットSTp,STn内にポリシリコン等の導電材が充填されて導電層20が形成されることで、下受け部SPの金属層21を介して基板SBと電気的に接続されるコンタクトLIが形成される。
【0065】
また、コンタクトLIの導電層21の上端部を、図示しない上層配線等に接続する。また、ピラーPRのチャネル層CNの上端部を、ビット線等の図示しない上層配線等に接続する。
【0066】
なお、スリットSTp,STnをソース線コンタクトに転用しない場合には、例えば
図8における絶縁層50の形成処理で、スリットSTp,STn内を絶縁層50で略完全に充填し、後の処理を省略してよい。この場合、下端部に導電層20による突出部20pを有さず、また、スリットSTp,STn内に充填された絶縁層50と下受け部SPの金属層21との間に金属ブロック層MTが介在された帯状部が形成される。
【0067】
以上により、実施形態の半導体記憶装置1が製造される。
【0068】
(比較例)
次に、比較例の半導体記憶装置について説明する。比較例の半導体記憶装置の製造方法では、例えばSiN層等の1種類の犠牲層と、絶縁層とが1層ずつ交互に積層されて、リプレース前の積層体が形成される。リプレース時には、個々の絶縁層間の犠牲層が除去されて、ギャップと1層の絶縁層とが交互に積層された積層体となる。このとき、絶縁層が応力によって撓み、ワード線の形成に支障が生じるほか、積層体が倒壊してしまう恐れがある。メモリセルの集積度を高めるため、積層体を構成する各層はいっそう薄くなる傾向にあり、絶縁層の撓みはより顕著となる。
【0069】
実施形態の半導体記憶装置1の製造方法によれば、リプレース対象の犠牲層を例えば2種類の犠牲層PL,NLから構成し、犠牲層PLと犠牲層NLとは、例えば交互に絶縁層OL間に配置される。そして、リプレース処理を、犠牲層NLのリプレース処理と、犠牲層PLのリプレース処理との2段階で行う。
【0070】
これにより、犠牲層NLのリプレース処理時、各ギャップGPn間には、1層の犠牲層PLと、その両側の絶縁層OLとの3層が配置されることとなる。また、犠牲層PLのリプレース処理時、各ギャップGPp間には、1層のワード線WLと、その両側の絶縁層OLとの3層が配置されることとなる。よって、いずれのリプレース処理時にも、ギャップGPn間に配置される層の厚み及び強度が増して、応力による撓みが抑制される。
【0071】
実施形態の半導体記憶装置1によれば、基板SBの上面に埋め込まれた下受け部SPを備え、コンタクトLIの下端部は下受け部SP内に配置される。コンタクトLIの形成前のスリットSTpの状態において、スリットSTpを介して犠牲層PLを除去する薬液が流入する。このとき、スリットSTpの下端部が下受け部SP内に配置され、基板SBとは直接接していないので、上記薬液により基板SBの一部が除去されてしまうのが抑制される。
【0072】
ここで、上述のように、スリットSTp,STnから導電材を除去する際、例えば金属ブロック層MTに保護されて、下受け部SPの金属層21は除去されずに残っている。半導体記憶装置1に残った金属層21を含む下受け部SPは、スリットSTpを介して、例えばポリシリコン層のような、基板SBの構成材と同種の犠牲層PLがリプレース処理されたことを示すものとなる。
【0073】
(変形例)
次に、
図10を用いて、実施形態の変形例の半導体記憶装置2について説明する。
図10は、実施形態の変形例にかかる半導体記憶装置2の構成の一例を示すY方向に沿う断面図である。
図10に示すように、変形例の半導体記憶装置2は、積層体LMの下層構造がソース線SLである点が、上述の実施形態とは異なる。
【0074】
半導体記憶装置2においては、基板SB上に複数のトランジスタTRを含む周辺回路CUAが配置される。周辺回路CUAは絶縁層51で覆われている。
【0075】
絶縁層51上には、積層体LMの下層構造としてのソース線SLが配置される。ソース線SLは、例えば第3の導電層としてのポリシリコン層である。
【0076】
ソース線SLには、ソース線SLの上面に開口し、例えばX方向に延びる溝内にタングステン層等の金属層21が充填された下受け部SPpが配置されている。このように、下受け部SPpは、ソース線SLに配置されるほかは、上述の実施形態の下受け部SPと同様の構成を備える。
【0077】
ソース線SL上には積層体LMpが配置される。積層体LMpは、ソース線SL上に配置されるほかは、上述の実施形態の積層体LMと同様の構成を備える。
【0078】
積層体LMpには、帯状部としてのコンタクトLIpが複数配置されている。個々のコンタクトLIpは、X方向に延び、積層体LMpをY方向に分割している。コンタクトLIpの下端部は下受け部SPp内に配置されている。このように、コンタクトLIpは、ソース線SLに配置される下受け部SPpに下端部が配置されるほかは、上述の実施形態のコンタクトLIと同様の構成を備える。
【0079】
以上のような構成を備える半導体記憶装置2においても、上述の実施形態の半導体記憶装置1と同様の製造方法が適用され得る。
【0080】
(その他の変形例)
上述の実施形態では、犠牲層NLのワード線WLへのリプレース処理を先に実施し、犠牲層PLのワード線WLへのリプレース処理を後から実施することとしたが、これらの処理は入れ替え可能である。この場合、スリットSTp,STnを形成した後、犠牲層PLとは異種の材料から構成されるSiN層等の犠牲層をスリットSTn内に充填し、スリットSTpを介して犠牲層PLのリプレースを行う。その後、スリットSTnを介して犠牲層NLのリプレースを行う。
【0081】
また、上述の実施形態では、両方のスリットSTp,STnの配置位置に下受け部SPを設けることとした。しかし、基板SBは犠牲層PLのリプレース処理時に保護されればよく、少なくともスリットSTpの配置位置に下受け部SPが設けられていればよい。この場合、半導体記憶装置は、Y方向に並ぶ複数のコンタクトLIに対し、1つおきに下受け部SPが配置された構成を有することとなる。
【0082】
また、上述の実施形態では、犠牲層PLと犠牲層NLとのリプレース処理において、スリットSTp,STnを使い分けることとした。しかし、両方のスリットSTp,STnを、犠牲層PLと犠牲層NLとのリプレース処理の両方に用いてもよい。つまり、例えば両方のスリットSTp,STnを介して熱リン酸等を供給することで、犠牲層PLを残したまま犠牲層NLがリプレースされる。その後、両方のスリットSTp,STnを介してコリン水溶液等を供給することで、犠牲層PLをリプレースできる。ただし、上記フローの場合、犠牲層NLのリプレース処理後と、犠牲層PLのリプレース処理後との2回、それぞれのスリットSTp,STnに充填されたタングステン等の導電材を除去する必要がある。このように、両方のスリットSTp,STnを同時に用いることにより、リプレース処理の時間を短縮することができる。
【0083】
また、上述の実施形態では、犠牲層PLと犠牲層NLとが交互に絶縁層OL間に配置されることとした。しかし、犠牲層PLと犠牲層NLとが、例えば2つおきに交互に絶縁層OL間に配置されてもよい。つまり、犠牲層PLと犠牲層NLとは、例えば絶縁層OL、犠牲層PL、絶縁層OL、犠牲層PL、絶縁層OL、犠牲層NL、絶縁層OL、犠牲層NL、絶縁層OL・・・のような2つおきの周期で積層されてよい。また、犠牲層PLと犠牲層NLとの積層の周期数は、3つおき、4つおきなど、各層の撓みが抑制可能な範囲内において適宜、変更されてよい。
【0084】
また、上述の実施形態では、犠牲層PLと犠牲層NLとの積層体LMpn内の層数は等しいこととした。しかし、犠牲層PLと犠牲層NLとの積層体LMpn内の層数は異なっていてもよい。例えば、犠牲層PLの層数の比率を1とし、犠牲層NLの層数の比率を2などとすることができる。また例えば、犠牲層PLの層数の比率を3とし、犠牲層NLの層数の比率を2などとしてもよい。このように、犠牲層PLと犠牲層NLとの層数の比率は、各層の撓みが抑制可能な範囲内において適宜、変更されてよい。
【0085】
また、上述の実施形態では、半導体記憶装置1のピラーPRが1階層の構造について説明したが、2階層以上の多段構造(Multi-Tier構造)であってもよい。この場合、上述の実施形態の積層体LMに相当する構成が多段積みされ、それらの積層体内にピラーがそれぞれ形成されることとなる。
【0086】
また、上述の実施形態では、半導体記憶装置1の積層体LMが基板SB上に配置されるとともに、周辺回路も基板SB上に配置されることとした。また、上述の変形例では、積層体LMpの下方に周辺回路CUAが配置されることとした。しかし、これら以外にも、例えば積層体の上方に周辺回路が配置されていてもよい。このような構成は、例えば、周辺回路が配置された基板とは別基板に積層体が形成された後、周辺回路が配置された基板に積層体が貼り合わせられることで得られる。この場合においても、積層体はソース線上に形成され、ソース線と共に周辺回路の基板に貼り合わされる。
【0087】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0088】
1,2…半導体記憶装置、20…導電層、21…金属層、LI,LIp…コンタクト、LM,LMp,LMpn,LMpw…積層体、MC…メモリセル、NL…犠牲層、OL…絶縁層、PL…犠牲層、PR…ピラー、SB…基板、SL…ソース線、STn,STp…スリット、SP…下受け部、WL…ワード線。