(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】電力管理装置および電力管理方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/14 20060101AFI20240109BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20240109BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20240109BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20240109BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20240109BHJP
G06Q 50/06 20240101ALI20240109BHJP
【FI】
H02J3/14
H02J3/32
H02J3/38 120
H02J3/00 130
H02J13/00 311T
G06Q50/06
(21)【出願番号】P 2020046460
(22)【出願日】2020-03-17
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【氏名又は名称】冨田 雅己
(72)【発明者】
【氏名】町田 祐規
【審査官】早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-161939(JP,A)
【文献】特開2016-001987(JP,A)
【文献】特開2015-012783(JP,A)
【文献】特開2018-201266(JP,A)
【文献】特開2014-096946(JP,A)
【文献】特開2019-091131(JP,A)
【文献】国際公開第2019/030986(WO,A1)
【文献】特開2014-164393(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0005201(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J13/00
H02J3/00-5/00
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
G06Q50/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力負荷、再生可能エネルギーによる発電装置および前記発電装置および外部の電力系統からの電力を蓄える蓄電装置を含む電力制御システムを制御して前記電力系統との間の送受電電力を管理する装置であって、
将来の送受電電力の調整に係るデマンドを外部から受領する通信部と、
前記送受電電力の予測値であるベースラインを前記電力制御システムに係る電力消費および発電の履歴に基づいて生成するベースライン生成部と、
前記電力消費および前記発電の過去における予測値と実績値との差である予測誤差を取得する予測誤差取得部と、
取得された予測誤差の大きさ
が予め定められた基準を超える場合は前記デマンドに対応可能
でないと判定
するデマンド処理部と、を備える電力管理装置。
【請求項2】
前記デマンド処理部は、前記デマンドに対応可能か否かを前記デマンドの発信元へ送る請求項1に記載の電力管理装置。
【請求項3】
前記デマンド処理部が前記デマンドに対応可能でないと判定した場合に、その判定をユーザーに知らせる通知部をさらに備え
る請求項2に記載の電力管理装置。
【請求項4】
前記デマンド処理部は、取得された予測誤差を予め定められた閾値と比較することにより前記予測誤差の大きさを判定
する請求項1に記載の電力管理装置。
【請求項5】
前記デマンド処理部は、前記閾値のユーザーによる設定または調整を受け付ける請求項4に記載の電力管理装置。
【請求項6】
前記デマンド処理部は、
所定の長さの期間に渡る過去の予測誤差の大きさに基づいて前記判定を行う請求項
4に記載の電力管理装置。
【請求項7】
前記期間の長さに係るユーザーの設定または調節を受付ける期間設定部をさらに備える請求項6に記載の電力管理装置。
【請求項8】
制御部が、
電力負荷、再生可能エネルギーによる発電装置および前記発電装置および外部の電力系統からの電力を蓄える蓄電装置を含む電力制御システムを制御して前記電力系統との間の送受電電力を管理する方法であって、
将来の送受電電力の調整に係るデマンドを外部から受領するステップと、
前記送受電電力の予測値であるベースラインを前記電力制御システムに係る電力消費および発電の履歴に基づいて取得するステップと、
前記電力消費および前記発電の過去における予測値と実績値との差である予測誤差を取得するステップと、
取得された予測誤差の大きさ
が予め定められた基準を超える場合は前記デマンドに対応可能
でないと判定
するステップと、を備える電力管理方法。
【請求項9】
電力負荷、再生可能エネルギーによる発電装置および前記発電装置および外部の電力系統からの電力を蓄える蓄電装置を含む電力制御システムを制御して前記電力系統との間の送受電電力を管理する装置であって、
将来の送受電電力の調整に係るデマンドを外部から受領する通信部と、
前記送受電電力の予測値であるベースラインを前記電力制御システムに係る電力消費および発電の履歴に基づいて生成するベースライン生成部と、
前記電力消費および前記発電の過去における予測値と実績値との差である予測誤差を取得する予測誤差取得部と、
前記ベースラインから調整可能な電力の予測値と過去の予測誤差の大きさとに基づいて前記デマンドに対応可能か否かの判定を行うデマンド処理部と、を備え、
前記デマンドは、対応可能であると送信した前記電力制御システムが前記デマンドに沿う実績値を達成した場合はインセンティブが与えられ、前記デマンドに沿う実績値が達成されなかった場合はペナルティーが与えられるものであり、
前記デマンド処理部は、過去にインセンティブまたはペナルティーを受けたケースに係る予測誤差を参照して前記デマンドに対応可能か否かの判定を行う電力管理装置。
【請求項10】
制御部が、
電力負荷、再生可能エネルギーによる発電装置および前記発電装置および外部の電力系統からの電力を蓄える蓄電装置を含む電力制御システムを制御して前記電力系統との間の送受電電力を管理する方法であって、
将来の送受電電力の調整に係るデマンドを外部から受領するステップと、
前記送受電電力の予測値であるベースラインを前記電力制御システムに係る電力消費および発電の履歴に基づいて取得するステップと、
前記電力消費および前記発電の過去における予測値と実績値との差である予測誤差を取得するステップと、
前記ベースラインから調整可能な電力の予測値と過去の予測誤差の大きさとに基づいて前記デマンドに対応可能か否かの判定を行うステップと、を備え、
前記デマンドは、対応可能であると送信した前記電力制御システムが前記デマンドに沿う実績値を達成した場合はインセンティブが与えられ、前記デマンドに沿う実績値が達成されなかった場合はペナルティーが与えられるものであり、
前記デマンドに対応可能か否かの判定を行うステップは、過去にインセンティブまたはペナルティーを受けたケースに係る予測誤差を参照して前記デマンドに対応可能か否かの判定を行う電力管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力負荷、再生可能エネルギーによる発電装置および蓄電装置を含む電力制御システムを対象とした電力管理装置および電力管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭や事業所等に設置されてそれを単位とし、発電装置および蓄電装置を含む電力制御システムに対して電力需要の要請を実施して電力系統における電力の需給バランスを維持する試みが検討されている。詳細には、発電事業者や系統運用者からの電力需要削減等の要請に基づいてアグリゲータなどと呼ばれる事業者から家庭や事業所を単位とする電力制御システムに個別の要請(デマンド)が送られる。各電力制御システムは、デマンドに対応可能か否か、可能であればどれだけ対応できるかを予め判断してアグリゲータに送る。各電力制御システムからデマンドに対応可能か否かの情報を受領したアグリゲータは、それらの情報を取りまとめて発電事業者や系統運用者へ送る。情報を受領した発電事業者や系統運用者は必要に応じてアグリゲータに電力削減等の調整を要請する。即ちデマンドを送る。デマンドを受領したアグリゲータは、対応可能な各電力制御システムにデマンドを送って調整量を割り当てる。このようにして、電力系統における電力の需給を調整する。発電事業者や系統運用者からの要請に応じて家庭や事業所単位で電力需要を調整する上述のような仕組みを、デマンドレスポンスあるいはDRとも呼ぶ。また、デマンドに応答して電力制御システムの電力需要を調整する制御をデマンドレスポンス制御と呼ぶ。
【0003】
各電力制御システムでは、デマンドを受領しない場合の電力系統との間の送受電電力の予測値(ベースライン)に対して調整可能な電力の予測値(調整可能量)を予め算出してアグリゲータへ送る。
デマンドレスポンスに関して、以下のものが知られている。デマンドを受付けると設備機器の消費電力を調整してデマンドレスポンス制御を実行するデマンドレスポンス部を備えた制御装置である。制御装置は、前記デマンドに関係なく設備機器の消費電力を増減させる非デマンドレスポンス制御を実行する消費電力変動部と、前記非デマンドレスポンス制御の有効または無効を設定する設定部とを備える(例えば、特許文献1参照)。デマンドレスポンス制御の実行中に、デマンドとは関係のない制御を行うと、デマンドで規定される目標電力を実現できない場合があるので、前述の制御装置はインセンティブの減少を避けるべく非デマンドレスポンス制御を無効に設定できるようにしている。一方、デマンドを受付けていない場合やデマンドに対応しない場合、ユーザーが所望する条件や省エネを考慮した非デマンドレスポンス制御を有効にできるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電力制御システムがデマンドレスポンス制御を行う場合には、その電力制御システムの過去の消費電力、発電電力、日射量の予測情報などに基づいて、将来の消費電力および発電電力の予測を行う。そして、その電力制御システム内で調整可能な送受電電力を見積もったうえで、アグリゲータに対して申告を行う。
しかし、例えば電力制御システムである家庭の生活パターンや事業所の就業パターンが変わったり、発電電力を予測しづらい時期になったりした場合、予測が外れる可能性が高くなる。
この発明は、以上のような事情を考慮してなされたものであって、デマンドに対応可能か否かの判定に際して、デマンドレスポンス不履行によるペナルティーの発生を抑制する手法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、電力負荷、再生可能エネルギーによる発電装置および前記発電装置および外部の電力系統からの電力を蓄える蓄電装置を含む電力制御システムを制御して前記電力系統との間の送受電電力を管理する装置であって、将来の送受電電力の調整に係るデマンドを外部から受領する通信部と、前記送受電電力の予測値であるベースラインを前記電力制御システムに係る電力消費および発電の履歴に基づいて生成するベースライン生成部と、前記電力消費および前記発電の過去における予測値と実績値との差である予測誤差を取得する予測誤差取得部と、前記ベースラインから調整可能な電力の予測値と過去の予測誤差の大きさとに基づいて前記デマンドに対応可能か否かの判定を行うデマンド処理部と、を備える電力管理装置を提供する。
【0007】
また、異なる観点からこの発明は、制御部が、電力負荷、再生可能エネルギーによる発電装置および前記発電装置および外部の電力系統からの電力を蓄える蓄電装置を含む電力制御システムを制御して前記電力系統との間の送受電電力を管理する方法であって、将来の送受電電力の調整に係るデマンドを外部から受領するステップと、前記送受電電力の予測値であるベースラインを前記電力制御システムに係る電力消費および発電の履歴に基づいて取得するステップと、前記電力消費および前記発電の過去における予測値と実績値との差である予測誤差を取得するステップと、前記ベースラインから調整可能な電力の予測値と過去の予測誤差の大きさとに基づいて前記デマンドに対応可能か否かの判定を行うステップと、を備える電力管理方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
この発明による電力管理装置は、予測値と実績値との差である予測誤差を取得する予測誤差取得部と、蓄電装置を用いてベースラインから調整可能な電力の予測値と過去の予測誤差の大きさとに基づいて前記デマンドに対応可能か否かの判定を行うデマンド処理部と、を備えるので、デマンドに対応可能か否かの判定に際して、デマンドレスポンス不履行によるペナルティーを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る電力制御システムの構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示す電力制御システムで生成される予測発電量、予測消費電力量およびそれらに基づく蓄電スケジュールの一例を示す説明図である。
【
図3】実施形態においてデマンドに係る送受を行うものとその手順を示す説明図である。
【
図4】実施形態において、デマンド処理部がデマンドに対応可能か否かを判断するにあたり予測誤差を考慮する例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いてこの発明をさらに詳述する。なお、以下の説明は、すべての点で例示であって、この発明を限定するものと解されるべきではない。
(実施の形態1)
≪電力制御システムの構成≫
まず、この実施形態に係る電力制御システムの構成例を述べる。
図1は、この発明の一実施形態に係る電力制御システムの構成を示すブロック図である。
図1に示すように、この実施例に係る電力制御システム11は、太陽光発電装置13、蓄電池15、家電機器17-1~17-n、パワーコンディショナ19および制御装置21を備え、外部の電力系統23と接続される。パワーコンディショナ19は、Power Conditioning Systemの頭文字をとってPCSとも呼ばれる。制御装置21は、ネットワーク98を介して外部のHEMSサーバ97と通信可能である。また、HEMSサーバ97は、ネットワーク98を介して外部のアグリゲーションサーバ99と通信可能である。
【0011】
図1において、太陽光発電装置13が発電する電力をP
PV、蓄電池15の電力をP
bat(放電時が正、充電時が負)、家電機器17-1~17-nが消費する電力をP
L1~P
Lnとしている。さらに、パワーコンディショナの入出力電力をP
PCS、電力系統からの送受電電力をP
sで示している。
太陽光発電装置13は、太陽電池モジュールを含み、その太陽電池モジュールが生成した直流電力をパワーコンディショナ19へ供給する。パワーコンディショナ19のDC/DCコンバータ19aは、太陽光発電装置13から供給される直流電力を、所定の電圧に変換する。DC/DCコンバータ19aは、太陽光発電装置13からの一方向動作であり、逆方向への電力の流れを阻止する。
【0012】
蓄電池15は、例えばリチウムイオン電池等の二次電池を含む。パワーコンディショナ19のDC/DCコンバータ19bは、放電時は蓄電池15からの直流電圧を所定の電圧に変換し、双方向インバータ19cを介して家電機器17-1~17-nおよび電力系統23へ出力する。充電時は太陽光発電装置13または電力系統23からの電圧を充電用の適当な大きさの直流電圧に変換して蓄電池15に提供する。DC/DCコンバータ19bは、双方向動作である。
【0013】
双方向インバータ19cは、太陽光発電装置13または蓄電池15からDC/DCコンバータを経て出力される直流電圧を所定電圧および所定周波数の交流電圧に変換する。また、電力系統23からの交流電圧を直流電圧に変換して蓄電池15側へ提供する。
双方向インバータ19cの交流側における所定電圧の一例は略100Vであり、所定周波数の例は50Hzあるいは60Hzであるが、これに限るものでない。電力系統23の電圧および周波数と整合するものであればよい。
なお、制御装置21とパワーコンディショナ19が一体のものであってもよい。
【0014】
制御装置21は、パワーコンディショナ19を制御して、太陽光発電装置13が発電した電力を蓄電池15や電力系統23へ供給する。また、パワーコンディショナ19を制御することで、蓄電池15の充放と放電の方向およびその電力(電力量)を制御する。
制御装置21は、ハードウェア資源としてCPUを中心に、メモリ、入出力回路、通信インターフェース回路、タイマー回路を含んで構成される。
また、機能的側面から制御装置21は、通信部21a、記憶部21b、予測発電量取得部21c、予測消費量取得部21d、予測余剰電力量取得部21eを備える。さらに、蓄電スケジュール生成部21f、ベースライン生成部21g、予測誤差取得部21h、デマンド処理部21jおよび電力制御部21kを備える。
【0015】
制御装置21は、パワーコンディショナ19から太陽光発電装置13の所定期間(例えば30分毎)の発電電力P
PVおよび前記所定期間毎の蓄電池15の充放電電力P
batを逐次取得する。また、それぞれの家電機器17-1~17-nと通信してそれらの前記所定期間毎の消費電力P
L1~P
Lnを逐次取得する。取得された発電電力P
PVおよび消費電力(P
L1~P
Lnの総和)を発電・消費履歴101として記憶部21bに格納する。発電・消費履歴101は、前記所定期間毎の発電電力と消費電力の時系列データである。
さらに、
図1に図示しないスマートメータやCTセンサを用いて前記所定期間毎の電力系統からの送受電電力P
sを取得する。
以上のように、制御装置21は、太陽光発電装置13の発電電力P
PV、蓄電池15の充放電電力P
bat、電力系統23との送受電電力P
Sおよび負荷電力P
L1~P
Lnを逐次取得する。
取得されたそれらの情報に基づいて、太陽光発電装置13の発電電力P
PVから家電機器17-1~17-nの消費電力P
L1~P
Lnの総和を差し引いた余剰電力を逐次算出する。そして、時間の経過に伴う蓄電池15の蓄電量(残容量)を取得する。
さらに制御装置21は、通信部21aを介して通信可能なユーザーの情報端末31に電力制御システム11の状態を通知してユーザーに知らせてもよい。また、ユーザーによる電力制御システム11の制御に係る設定を情報端末31で受付けてもよい。ここで、情報端末31の一例は、ユーザーが所有するスマートフォン、タブレット端末等、携帯型の端末あるいは据置型や可搬型のパーソナルコンピュータ等である。他の一例は、家庭内に設置されるモニタ(専用か否かを問わず)である。
以下、
図1に示す制御装置21の各要素について述べる。
【0016】
〔予測発電量取得部21c〕
予測発電量取得部21cは、ネットワーク98を経由して気象情報を取得する。また、発電・消費履歴101から太陽光発電装置13の過去の発電量の実績値を取得する。取得した気象情報および発電履歴に基づいて、予測発電量取得部21cは、太陽光発電装置13によるデマンドの対象日(以下、当日という)の発電量を事前に予測し、前記所定期間毎の予測発電量の時系列データを生成する。
生成された時系列データは、後述する予測余剰電力量取得部21eで使用されると共に、発電・消費履歴101に予測の履歴として格納されて予測誤差取得部21hに使用される。
〔予測消費量取得部21d〕
予測消費量取得部21dは、予測発電量取得部21cと同様に気象情報を取得し、発電・消費履歴101から各家電機器17-1~17-nの過去の消費電力の実績値を取得する。そして、当日の消費電力量を事前に予測し、前記所定期間毎の予測消費電力量の時系列データを生成する。
生成された時系列データは、後述する予測余剰電力量取得部21eで使用されると共に、発電・消費履歴101に予測の履歴として格納されて予測誤差取得部21hに使用される。
【0017】
〔予測余剰電力量取得部21e〕
予測余剰電力量取得部21eは、生成された予測発電電力の時系列データと生成された予測消費電力量の時系列データとの差分として、時系列の予測余剰電力量を取得する。取得された予測余剰電力量量>0である時間帯があるか否かを判定し、ベースライン生成部21gおよび蓄電スケジュール生成部21fへ時系列データを含む余剰電力量の予測結果を送る。
【0018】
〔蓄電スケジュール生成部21f〕
予測余剰電力量取得部21eから余剰電力量の予測結果が提供されると、蓄電スケジュール生成部は、予測結果に応じて蓄電池15の当日の蓄電スケジュールを事前に生成する。
余剰電力量がないと予測される場合、蓄電スケジュール生成部21fは、当日前の電気料金が割安な深夜電力時間帯に買電して蓄電池15を満容量に充電しておく。当日の電気料金が割高な時間帯に太陽光発電装置13の発電で消費電力を賄えない時間帯は、蓄電池15に蓄えた電力を家電機器17-1~17-nに供給する。蓄電池15の残容量がゼロになれば、電力系統23から買電を行って家電機器17-1~17-nに供給する。このようにして、太陽光発電装置13の発電が消費電力よりも少ない時間帯は深夜電力時間帯に蓄電した電力を充当して割高な買電をできるだけ抑制する。
【0019】
一方、余剰電力が発生する時間帯があると予測される場合、蓄電スケジュール生成部21fは、余剰電力を売電するモードと蓄電するモードのそれぞれに対応する蓄電スケジュールを生成する。
余剰電力を売電するモードに対応する蓄電スケジュールは、以下のように蓄電池15の充放電を行う。
【0020】
当日前の深夜電力時間帯に買電して蓄電池15を満容量に充電しておく。当日の電気料金が割高な時間帯に太陽光発電装置13の発電で消費電力を賄えない時間帯は、蓄電池15に蓄えた電力を家電機器17-1~17-nに供給する。当日に余剰の電力が発生すれば売電する。ただし、蓄電池15の残容量が当日中にゼロになれば、買電を行って家電機器17-1~17-nに供給する。このようにして、太陽光発電装置13の発電が消費電力よりも少ない時間帯は深夜電力時間帯に蓄電した電力を充当して割高な買電を抑制しながら、余剰の電力を売電する。
【0021】
これに対して、余剰電力を蓄電するモードは、以下のように蓄電池15の充放電を行う。
当日、太陽光発電装置13の発電が消費電力を上回ると予測される時間帯は、余剰の電力を蓄電池15に蓄える。電気料金が割高な時間帯に太陽光発電装置13の発電で消費電力を賄えない場合は、蓄電池15に蓄えた電力を家電機器17-1~17-nに供給する。ただし、蓄電池15の残容量が当日中にゼロになれば、買電を行って家電機器17-1~17-nに供給する。このようにして、太陽光発電装置13の発電が消費電力よりも多い時間帯に蓄電した電力を、逆に太陽光発電装置13の発電が消費電力よりも少ない時間帯の消費電力に充当して割高な買電を抑制する。
【0022】
このモードに対応する蓄電スケジュールは、当日前の深夜電力時間帯に蓄電池15を一律に満充電することをせず、当日の発電量で消費電力が賄えないと予測される不足分があればその不足分に見合う充電に留める。そうすることによって、当日の余剰電力を蓄電池15に充電できる余地を残しておく。
【0023】
〔ベースライン生成部21g〕
ベースライン生成部21gは、余剰電力について設定されているモードを参照する。そのモードは、あらかじめ定められ、ユーザーが設定変更可能なものである。また、デマンドを受領した場合に、デマンドに対応するために設定と異なるモードで蓄電池15の充放電を行うことが可能である。余剰電力を売電するモードと蓄電するモードの何れかかが設定されている。
そして、ベースライン生成部21gは、予測発電量の時系列データ、予測消費電力量の時系列データ、余剰電力について設定されているモードに応じた蓄電スケジュールの時系列データに基づいて、電力系統23との間で当日に予測される送受電電力量の時系列データをベースラインとして事前に生成する。
【0024】
図2は、ベースラインの生成に係る予測発電量、予測消費電力量および蓄電スケジュールの一例を示す説明図である。ある日の所定時間Δt毎の推移を示している。なお、
図2の縦軸は電力であるが、Δtを乗ずることで所定時間Δt毎の電力量に換算される。
上述のように、予測発電電力量の時系列データは予測発電量取得部21cによって、予測消費電力量の時系列データは予測消費量取得部21dによって生成される。また、蓄電スケジュールは蓄電スケジュール生成部21fによって生成される。
図2において、時刻t1は深夜から早朝にかけての深夜電力時間帯に相当する。蓄電池15の満容量を目指して充電中であり、予測消費電力量および蓄電池15の充電を電力系統23からの買電によって賄う。
時刻t2は、予測消費電力量が最初のピークを迎える朝の時間帯に相当する。予測消費電力量の一部は太陽光発電装置13の発電で賄えるが、この時点における予測発電量は予測消費電力量よりも小さい。不足分は蓄電池15からの放電で賄う。
【0025】
時刻t3は、太陽光発電装置13が大きな発電電力を提供する昼の時間帯に相当する。発電電力の一部は、予測消費電力量を賄うために充当されるが(自家消費)、予測余剰電力は
図2に示す例では蓄電せずに売電する。
時刻t4は、太陽光発電装置13の発電が停止し、予測消費電力量がピークを迎える夜の時間帯に相当する。蓄電池15に残容量があるうちは予測消費電力量を蓄電池15からの放電で賄う。
時刻t5は、蓄電池15の残容量がなくなった後の状態に相当する。蓄電池15の残容量がなくなったら、電力系統23からの買電によって予測消費電力量を賄う。
時刻t6は、時刻t1と同様の深夜時間帯に相当する。深夜時間帯は、予測消費電力量に加えて蓄電池15の充電を電力系統23からの買電によって賄う。
以上のように、予測発電電力、予測消費電力および蓄電スケジュールが得られると、電力系統23との送受電電力量が予測できる。
図2で、グレーの背景で示す部分(時刻t1、t2、t5、t6の時点を含む)が電力系統23からの買電による受電電力量であり、ドットの背景で示す部分(時刻t3の時点を含む)が電力系統23への売電による送電電力量である。
【0026】
〔予測誤差取得部21h〕
予測誤差取得部21hは、発電・消費履歴101を参照して、発電・消費履歴101に格納された過去の予測値とその予測値に対する実績値に基づいて送受電電力量の予測誤差を提供する。
【0027】
〔デマンド処理部21j〕
デマンド処理部21jは、外部から電力系統23との送受電電力に係るデマンドに係る申告、受領したデマンドに対応した電力制御システム11の制御(デマンドレスポンス制御)およびデマンドレスポンスに係る実績の報告を処理する。
デマンド処理部21jがデマンドに対応可能か否かの判定については後述する。
【0028】
〔電力制御部21k〕
電力制御部21kは、蓄電スケジュール生成部21fが生成した蓄電スケジュールを用いて、パワーコンディショナ19を制御する。即ち、蓄電池15の充放電および電力系統23との買電、売電を制御する。
その制御に際して、制御装置21が逐次取得する太陽光発電装置13の発電電力PPV、蓄電池15の充放電電力Pbat、蓄電池15の蓄電量(残容量)、家電機器17-1~17-nの消費電力PL1~PLnの情報を用いる。さらに、電力系統からの送受電電力Psの情報を用いる。
また、パワーコンディショナ19の動作制御に加えて、電力制御部21kが家電機器17-1~17-nの動作を制御してもよい。
【0029】
原則として電力制御部21kは、ベースラインの事前申告に際して蓄電スケジュール生成部21fが生成した蓄電スケジュールに基づいてパワーコンディショナ19を制御する。
しかし、デマンド処理部21jがそのデマンドに対応可能であると判断し、ベースラインの事前申告後にデマンドを受領した場合は、事前申告したベースラインに係る蓄電スケジュールと異なるモードの蓄電スケジュールに従って蓄電池15の充放電を行うなどする。
例えば、当日の電力需要を抑制するデマンドを受領した場合を例に挙げる。デマンド処理部21jは、余剰電力を蓄電するモードが現在設定されている場合、余剰電力を売電するモードに切り替えた場合に当日の電力需要が抑制できるか否かを判断する。即ち、当日前の深夜時間に蓄電池15を満充電にすることで当日の電力需要を抑制できるか否かを判断する。ただし、この実施形態では、後述するように予測誤差を考慮したうえでそのデマンドに対応可能か否かを判断する。
【0030】
別の例として、当日の売電を抑制するデマンドを受領した場合を例に挙げる。デマンド処理部21jは、余剰電力を売電するモードが現在設定されている場合、余剰電力を蓄電するモードに切り替えた場合に当日の電力需要が抑制できるか否かを判断する。即ち、当日前の深夜時間に蓄電池15を満充電にしないことで当日の売電を抑制できるか否かを判断する。ただし、この実施形態では、後述するように予測誤差を考慮したうえでデマンドに対応可能か否かを判断する。
デマンドへの対応だけでなく、予測が外れたことによって、予測値と実際の電力需給との乖離が起こりえる。その場合は、予測値との乖離を調整するように、蓄電池15の充放電および電力系統23との買電、売電を調整する。さらに、調整のために家電機器17-1~17-nの動作を制御してもよい。
【0031】
≪デマンドへの対応≫
この実施形態におけるデマンドの受領と応答について述べる。
図3は、この実施形態においてデマンドに係る送受を行うものとその手順を示す説明図である。
図3で、左右は時間の経過に対応しており、左から右へ行くにしたがって時間が経過する。上下はデマンドを送受するものとその階層を示している。最も上位のアグリゲーションコーディネータ96は、デマンドの発信元である発電事業者や系統運用者等が運用するサーバ等を示している。下位のアグリゲーションサーバ99は、電力系統23の電力需給の調整を行う事業者(リソースアグリゲータまたはアグリゲータと呼ばれる)が運用するサーバである。一つのアグリゲーションコーディネータ96は、複数のアグリゲーションサーバとデマンドに係る通信を行い、その一つがアグリゲーションサーバ99とする。逆に、一つのアグリゲーションサーバ99が複数のアグリゲーションコーディネータ96とデマンドに係る通信を行う態様も考えられるが、この実施形態ではアグリゲーションコーディネータ96は一つとする。
【0032】
アグリゲーションサーバ99の下位にHEMSサーバ97が位置する。HEMSサーバ97は、例えば太陽光発電装置と蓄電池を含む電力制御システムを提供する事業者が、自社の顧客にサービスを提供するために運用するサーバである。一つのアグリゲーションサーバ99は、複数のHEMSサーバとデマンドに係る通信を行い、その一つがHEMSサーバ97とする。
HEMSサーバ97の下位に
図1に示す電力制御システム11が位置する。一つのHEMSサーバ97は、複数の電力制御システムとデマンドに係る通信を行い、その一つが電力制御システム11とする。
【0033】
図3に示すDR期間は、デマンドレスポンスの期間を示し、この実施形態ではデマンドが対象とする日(当日)の全日に対応する。当日の開始時刻(一例では当日0時)から第1期間前(一例では、前日の14時)になると、電力制御システム11のデマンド処理部21jは、ベースラインの事前申告を行う。即ち、ベースライン生成部21gは余剰電力について設定されているモードに応じた当日のベースライン(電力系統23との予測される送受電電力)を生成し、デマンド処理部21jは、ベースラインから需要電力を抑制可能な調整可能量を算出し、HEMSサーバ97に送信する。
【0034】
各電力制御システム11を含む各電力制御システムからベースラインおよび調整可能量の申告を受けたHEMSサーバ97は、各電力制御システムのベースラインと調整可能量を取りまとめてアグリゲーションサーバ99へ送る。HEMSサーバ97を含む各HEMSサーバから申告を受けたアグリゲーションサーバ99は、それらを取りまとめてアグリゲーションコーディネータ96に送る。なお、ベースラインと調整可能量の事前申告は異なってもよい。例えば、前日の14時にベースラインの事前申告を行い、前日の15時に調整可能量の事前申告を行ってもよい。
【0035】
ベースラインと調整可能量の事前申告を受けたアグリゲーションコーディネータ96は、デマンドを送る必要があるか否かを判断し、送る場合は当日の開始時刻から第2期間前(一例では、前日の16時)にアグリゲーションサーバ99に調整指示(デマンド)を送る。
アグリゲーションコーディネータ96からデマンドを受信したアグリゲーションサーバ99は、各HEMSサーバに調整量を割り当て、デマンドを送る。
アグリゲーションサーバ99からデマンドを受信したHEMSサーバ97は、各電力制御システムに調整量を割り当て、デマンドを送る。
【0036】
HEMSサーバ97からデマンドを受信した電力制御システム11のデマンド処理部21jは、ベースラインに係る蓄電スケジュールをデマンドに対応した蓄電スケジュールに変更し、電力制御部21kはデマンドに対応した蓄電スケジュールに沿うように当日の蓄電池15の充放電、買電および売電を制御する。ただし、当日の太陽光発電装置13の発電や家電機器17-1~17-nの消費電力が予測と異なる場合は、充放電、買電および売電の調整を行う。
当日の終了から第3期間後(一例では翌日0時)、デマンド処理部21jは当日の調整の実績値をHEMSサーバ97に報告する。
【0037】
各電力制御システム11を含む各電力制御システムから調整実績の報告を受けたHEMSサーバ97は、各電力制御システムの調整実績をまとめてアグリゲーションサーバ99へ送る。HEMSサーバ97を含む各HEMSサーバから申告を受けたアグリゲーションサーバ99は、それらをまとめてアグリゲーションコーディネータ96に送る。アグリゲーションコーディネータ96は、調整実績に応じて各電力制御システムにインセンティブまたはペナルティーを与えるか否か、与える場合はその程度を決定する。
【0038】
≪予測誤差を考慮したデマンド対応に係る判定≫
この実施形態においてデマンド処理部21jは、予測したベースラインに対する調整可能量を申告する際に、調整可能な電力の有無を調べるだけでなく、過去の予測値と実績値との誤差である予測誤差の大きさを参照して調整可能か否かおよび調整可能な場合の調整量を決定する。
図4は、この実施形態において、デマンド処理部がデマンドに対応可能か否かを判断するにあたり予測誤差を考慮する例を示す説明図である。
図4を参照しながら、予測誤差取得部21hおよびデマンド処理部21jが実行する処理について述べる。
【0039】
この実施形態で、デマンド処理部21jが調整可能量を申告するにあたり、予測誤差取得部21hは、過去の予め定められた期間に渡る予測誤差をデマンド処理部21jに提供する。
図4に示す例では、その期間を過去1週間としている。
図4のグラフは、ある月における第1日から第28日までにおける送受電電力量の日毎の予測誤差の大きさを示している。送受電電力量の予測誤差は、発電・消費履歴101に格納された過去の予測値とその予測値に対する実績値に基づいて算出する。予測誤差は、前記所定期間(例えば30分)毎に予測誤差が得られるが便宜上、
図4のグラフは日毎の予測誤差を示している。日毎の予測誤差は、例えば、前記所定期間毎の予測誤差の絶対値の平均に相当するものである。
【0040】
デマンド処理部21jがデマンド対応可否に係る判定に用いる予測誤差の判定期間が1週間であるので、予測誤差取得部21hは、例えば第8日の判定に際して第1~7日の予測誤差の平均を提供するものとする。
図4に示す例で、第1~7日の予測誤差の平均値が47%である。また、1週間後の第15日の判定に際しては、第8~14日の予測誤差の平均を提供し、さらに1週間後の第22日の判定に際しては、第15~21日の予測誤差の平均を提供するものとする。
デマンド処理部21jは、過去1週間の予測誤差の平均を予め定められた閾値と比較し、予測誤差の平均が閾値を超えていれば、デマンドに対応可能でないと判定する。即ち、調整可能量がゼロであると判定する。近頃は予測誤差が大きいので、予測が外れデマンド不履行によるペナルティーを受けるリスクが高いとする判断である。
【0041】
図4に示す例で、判定の閾値は50%である。その場合、第8日の判定において予測誤差の平均は47%であり閾値未満である。従って、第8日から1週間は、予測誤差が大きいためにデマンド対応不可との判断は行わない。第8~14日は、日毎の調整可能量を申告する。勿論、得られた調整可能量がゼロの日はデマンドレスポンスに参加しない。1週間後の第15日の判定において予測誤差の平均は37%であり閾値未満である。従って、この場合も予測誤差が大きいためにデマンド対応不可との判断は行わない。第15~21日は、日毎の調整可能量を申告する。さらに1週間後の第22日の判定において、予測誤差の平均は57%であり閾値以上である。よって、第22~28日の一週間については、予測誤差が大きいためにデマンド対応不可と判断し、デマンドレスポンスに参加しない。第22~28日の期間は、調整可能量がゼロであると毎日申告する。
【0042】
なお、予測誤差が大きいためにデマンド対応不可とデマンド処理部21jが判断した場合、その旨を情報端末31へ送信してメッセージを表示させ、ユーザーに知らせるようにしてもよい。
また、予測誤差の判定に用いる閾値(
図4に示す例では50%の閾値)のユーザーによる設定または調節を情報端末31で受付けてもよい。
さらに、予測誤差の判定に用いる期間(
図4に示す例では1週間の判定期間)のユーザーによる設定または調節を情報端末31で受付けてもよい。
【0043】
(実施の形態2)
実施の形態1において
図4に示す例では、予測誤差の判定に用いる閾値は予め定められた値(50%)であるとしている。また、その閾値をユーザーが設定または調節できるようにしてもよいと述べた。
それに対してこの実施の形態では、デマンド処理部21jが、過去にインセンティブまたはペナルティーを受けたケースに係る予測誤差を参照して閾値を設定または調節する。
デマンド処理部21jは、デマンド対応可能か否かの判定に用いた予測誤差を記憶部21bに格納しておく。そうして、デマンドレスポンスに対してインセンティブまたはペナルティーが与えられたら、記憶部21bに格納されている予測誤差にそれを紐付けて格納しておくようにする。
そして、インセンティブまたはペナルティーと紐付けられて記憶部21bに格納された予測誤差を用いて、閾値を更新する。
そうすることで、過去にインセンティブまたはペナルティーを受けた際の予測誤差に基づいて、より適切な閾値を用いた判定が可能になる。即ち、より確実にペナルティーを回避できると期待される予測誤差、より確実にインセンティブが得られると期待される予測誤差に基づいて好適な閾値を決定できる。
【0044】
(実施の形態3)
実施の形態1では、電力制御システム11の制御装置21が、デマンドに対応可能か否かを判定する態様を述べた。しかし、
図1に示すように制御装置21とHEMSサーバ97は、ネットワーク98を介して通信可能である。従って、
図1に示す制御装置21のうち、ハードウェア資源に係る処理を除く要素の少なくとも一部がHEMSサーバ97にあってもよい。即ち、発電・消費履歴101、予測発電量取得部21c、予測消費量取得部21d、予測余剰電力量取得部21e、蓄電スケジュール生成部21f、ベースライン生成部21g、予測誤差取得部21h、デマンド処理部21jの少なくとも一部である。
従って、電力管理装置が、
図1に示す制御装置21(の一部)に対応する態様もあるが、HEMSサーバ97(の一部)に対応する態様もあり得る。さらに、両者のそれぞれ(の一部)に対応する態様もあり得る。
【0045】
以上に述べたように、
(i)この発明による電力管理装置は、電力負荷、再生可能エネルギーによる発電装置および前記発電装置および外部の電力系統からの電力を蓄える蓄電装置を含む電力制御システムを制御して前記電力系統との間の送受電電力を管理する装置であって、将来の送受電電力の調整に係るデマンドを外部から受領する通信部と、前記送受電電力の予測値であるベースラインを前記電力制御システムに係る電力消費および発電の履歴に基づいて生成するベースライン生成部と、前記電力消費および前記発電の過去における予測値と実績値との差である予測誤差を取得する予測誤差取得部と、前記ベースラインから調整可能な電力の予測値と過去の予測誤差の大きさとに基づいて前記デマンドに対応可能か否かの判定を行うデマンド処理部と、を備えることを特徴とする。
【0046】
この発明において、再生可能エネルギーによる発電装置は、例えば、太陽光発電装置であるが、その他に風力発電装置や他の態様も考えられる。前述の実施形態における太陽光発電装置は、この発明に係る再生可能エネルギーによる発電装置に相当する。
また、蓄電装置は、電気を蓄え、蓄えられた電気を出力するものである。その具体的な態様は、例えば、リチウムイオン電池等の蓄電池である。前述の実施形態における蓄電池は、この発明の蓄電装置に相当する。
さらにまた、デマンドは、発電事業者や系統運用者からの電力需要削減等の要請に関するものである。
ベースラインから調整可能な電力は、電力消費および発電の履歴に基づいて予測される送受電電力の予測値(ベースライン)に対し、少なくとも蓄電装置の制御を変更することによって増減可能と見込める電力である。
【0047】
さらに、この発明の好ましい態様について説明する。
(ii)前記デマンド処理部は、前記デマンドに対応可能か否かを前記デマンドの発信元へ送ってもよい。
このようにすれば、判定結果に基づいて、デマンドレスポンス制御を行うか否かをデマンドの発信元に知らせることができる。
【0048】
(iii)前記デマンド処理部が前記デマンドに対応可能でないと判定した場合に、その判定をユーザーに知らせる通知部をさらに備えてもよい。
このようにすれば、デマンドレスポンスに参加するか否かの判定結果をユーザーに認識させることができる。
【0049】
(iv)前記デマンドは、対応可能であると送信した前記電力制御システムがそのデマンドに沿う実績値を達成した場合はインセンティブが与えられ、そのデマンドに沿う実績値が達成されなかった場合はペナルティーが与えられるものであり、前記デマンド処理部は、過去にインセンティブまたはペナルティーを受けたケースに係る予測誤差を参照して前記デマンドに対応可能か否かの判定を行ってもよい。
このようにすれば、過去にインセンティブまたはペナルティーを受けたケースに係る予測誤差を参照して判定に係る予測誤差の大小を判断し、前記デマンドに対応可能か否かの判定を行うことができる。
【0050】
(v)前記デマンド処理部は、取得された予測誤差を予め定められた閾値と比較することにより前記予測誤差の大きさを判定し、その閾値のユーザーによる設定または調節を受付けてもよい。
このようにすれば、デマンドに対応可能か否かの判定に係る閾値をユーザーが設定または調節できる。
【0051】
(vi)期間の長さに係るユーザーの設定または調節を受付ける期間設定部をさらに備え、前記デマンド処理部は、設定された長さの期間に渡る過去の予測誤差の大きさに基づいて前記判定を行ってもよい。
このようにすれば、デマンドに対応可能か否かの判定に用いる予測誤差の対象期間をユーザーが設定または調節できる。
【0052】
(vii)この発明の好ましい態様は、制御部が、電力負荷、再生可能エネルギーによる発電装置および前記発電装置および外部の電力系統からの電力を蓄える蓄電装置を含む電力制御システムを制御して前記電力系統との間の送受電電力を管理する方法であって、将来の送受電電力の調整に係るデマンドを外部から受領するステップと、前記送受電電力の予測値であるベースラインを前記電力制御システムに係る電力消費および発電の履歴に基づいて取得するステップと、前記電力消費および前記発電の過去における予測値と実績値との差である予測誤差を取得するステップと、前記ベースラインから調整可能な電力の予測値と過去の予測誤差の大きさとに基づいて前記デマンドに対応可能か否かの判定を行うステップと、を備える電力管理方法を含む。
【0053】
この発明の好ましい態様には、上述した複数の態様のうちの何れかを組み合わせたものも含まれる。
前述した実施の形態の他にも、この発明について種々の変形例があり得る。それらの変形例は、この発明の範囲に属さないと解されるべきものではない。この発明には、請求の範囲と均等の意味および前記範囲内でのすべての変形とが含まれるべきである。
【符号の説明】
【0054】
11:電力制御システム、 13:太陽光発電装置、 15:蓄電池、 17-1
,17-n:家電機器、 19:パワーコンディショナ、 19a、19b:DC/DCコンバータ、 19c:双方向インバータ、 21:制御装置、 21a:通信部、 21b:記憶部、 21c:予測発電量取得部、 21d:予測消費量取得部、 21e:予測余剰電力量取得部、 21f:蓄電スケジュール生成部、 21g:ベースライン生成部、 21h:予測誤差取得部、 21j:デマンド処理部、 21k:電力制御部、 23:電力系統、 31:情報端末、 96:アグリゲーションコーディネータ、 97:HEMSサーバ、 98:ネットワーク、 99:アグリゲーションサーバ、 101:発電・消費履歴