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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】排気ガス浄化用触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/57 20240101AFI20240109BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20240109BHJP
   B01J 23/63 20060101ALI20240109BHJP
   B01J 35/60 20240101ALI20240109BHJP
   C04B 41/85 20060101ALI20240109BHJP
   C04B 41/90 20060101ALI20240109BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20240109BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
B01J35/04 301F
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
B01J23/63 A ZAB
B01J35/10 301H
C04B41/85 D
C04B41/90 B
F01N3/10 A
F01N3/28 301P
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2020050679
(22)【出願日】2020-03-23
(65)【公開番号】P2021146306
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000220804
【氏名又は名称】東京濾器株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川本 智彦
(72)【発明者】
【氏名】黒田 拓海
(72)【発明者】
【氏名】寺島 進之介
(72)【発明者】
【氏名】丹 功
(72)【発明者】
【氏名】永井 亮
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 菜海
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-223840(JP,A)
【文献】特開2017-217590(JP,A)
【文献】特開2007-326001(JP,A)
【文献】特開2018-164896(JP,A)
【文献】特開2013-180235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
B01D 53/94
C04B 41/85
C04B 41/90
F01N 3/00 - 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハニカム型構造体を有する排気ガス浄化用触媒であって、
触媒組成物が、前記排気ガス浄化用触媒の表面側と内面側の2層で前記ハニカム型構造体に被覆されており、
前記触媒組成物は、
(A)Pd及び/又はRhからなる活性金属と、
(B)Al、(C)La、(D)CeO、(E)ZrO(F)Nd 、及び(G)Y を含む前記活性金属の担体と、
を含み、
前記表面側の層の前記活性金属(A)が、Pdからなり、
前記表面側の層の前記担体が、前記ハニカム型構造体の触媒容積1Lあたり、
(B)60g以上70g以下のAl 、(C)0.5g以上4g以下のLa 、(D)7g以上12g以下のCeO 、(E)30g以上40g以下のZrO 、及び(F)4g以上6g以下のNd を含み、
前記内面側の層の前記活性金属(A)が、Rhからなり、
前記内面側の層の前記担体が、前記ハニカム型構造体の触媒容積1Lあたり、
(B)60g以上70g以下のAl 、(C)3g以上5g以下のLa 、(D)3g以上13g以下のCeO 、(E)35g以上45g以下のZrO 、(F)1.5g以上2.5g以下のNd 、及び(G)2g以上3g以下のY を含む、
排気ガス浄化用触媒。
【請求項2】
前記触媒組成物中の前記担体の表面に、前記活性金属が担持されている、請求項1に記載の排気ガス浄化用触媒。
【請求項3】
前記表面側の層の前記担体の表面に、前記活性金属であるPdが担持されており、前記内面側の層の前記担体の表面に、前記活性金属であるRhが担持されている、請求項1に記載の排気ガス浄化用触媒。
【請求項4】
ハニカム型構造体を有する排気ガス浄化用触媒であって、
前記ハニカム型構造体は、触媒組成物によって、1または複数の層で被覆されており、
前記触媒組成物は、
(A)Pd及び/又はRhからなる活性金属と、
前記活性金属の担体として
CeO 、ZrO 、及びNd からなる多結晶体(1);
Al 、及びLa からなる多結晶体(2);及び
Al 、La 及びZrO からなる多結晶体(3)
を含み、
前記多結晶体(1)のBET比表面積が50m /g以下で、結晶子径のピークが最小6.7nm~最大13.4nmであり、
前記多結晶体(2)のBET比表面積が190m /g以下で、結晶子径のピークが最小1.2nm~最大4.9nmであり、そして
前記多結晶体(3)のBET比表面積が149m /g以下で、結晶子径のピークが最小3.2nm~最大6.28nmである、
排気ガス浄化用触媒。
【請求項5】
前記触媒組成物が、前記排気ガス浄化用触媒の表面側と内面側の2層で前記ハニカム型構造体に被覆されており、
前記表面側の層に含まれる活性金属(A)がPdであり、前記内面側の層に含まれる活性金属(A)がRhであり、
前記表面側の層には、前記多結晶体(1)及び多結晶体(2)が含まれ、
前記内面側の層には、前記多結晶体(1)及び多結晶体(3)が含まれている、
請求項4に記載の排気ガス浄化用触媒。
【請求項6】
前記多結晶体(1)の組成は重量比でCeO :ZrO :Nd =23:67:10であり、
前記多結晶体(2)の組成は重量比でAl :La =94:6であり、
前記多結晶体(3)の組成は重量比でAl :La :ZrO =77:3:20である、
請求項4~5のいずれか一項に記載の排気ガス浄化用触媒。
【請求項7】
前記多結晶体(1)、多結晶体(2)及び多結晶体(3)の各々の表面に、前記活性金属が担持されている、請求項4~6のいずれか一項に記載の排気ガス浄化用触媒。
【請求項8】
ハニカム型構造体を有する排気ガス浄化用触媒であって、
前記ハニカム型構造体は、触媒組成物によって、1または複数の層で被覆されており、
前記触媒組成物は、
(A)Pd及び/又はRhからなる活性金属と、
前記活性金属の担体として
CeO 、ZrO 、及びNd からなる多結晶体(1);
Al 、及びLa からなる多結晶体(4);及び
Al 、La 及びZrO からなる多結晶体(3)
を含み
前記多結晶体(1)のBET比表面積が50m /g以下で、結晶子径のピークが最小6.7nm~最大13.4nmであり、
前記多結晶体(4)のBET比表面積が120m /g以下で、結晶子径のピークが最小1.9nm~最大11.2nmであり、そして
前記多結晶体(3)のBET比表面積が149m /g以下で、結晶子径のピークが最小3.2nm~最大6.28nmである、
排気ガス浄化用触媒。
【請求項9】
前記触媒組成物が、前記排気ガス浄化用触媒の表面側と内面側の2層で前記ハニカム型構造体に被覆されており、
前記表面側の層に含まれる活性金属(A)がPdであり、前記内面側の層に含まれる活性金属(A)がRhであり、
前記表面側の層には、前記多結晶体(1)及び多結晶体(4)が含まれ、
前記内面側の層には、前記多結晶体(1)及び多結晶体(3)が含まれている、
請求項8に記載の排気ガス浄化用触媒。
【請求項10】
前記多結晶体(1)の組成は重量比でCeO :ZrO :Nd =23:67:10であり、
前記多結晶体(4)の組成は重量比でAl :La =99:1であり、そして
前記多結晶体(3)の組成は重量比でAl :La :ZrO =77:3:20である、
請求項8~9に記載の排気ガス浄化用触媒。
【請求項11】
前記多結晶体(1)、多結晶体(3)及び多結晶体(4)の各々の表面に、前記活性金属が担持されている、請求項8~10のいずれか一項に記載の排気ガス浄化用触媒。
【請求項12】
ハニカム型構造体を有する排気ガス浄化用触媒であって、
前記ハニカム型構造体は、触媒組成物によって、1または複数の層で被覆されており、
前記触媒組成物は、
(A)Pd及び/又はRhからなる活性金属と、
前記活性金属の担体として
CeO 、ZrO 、及びNd からなる多結晶体(1);
Al 、及びLa からなる多結晶体(4);
Al 、La 及びZrO からなる多結晶体(3);及び
La 、CeO 、ZrO 、Nd 及びY からなる多結晶体(5)
を含む、排気ガス浄化用触媒。
【請求項13】
前記触媒組成物が、前記排気ガス浄化用触媒の表面側と内面側の2層で前記ハニカム型構造体に被覆されており、
前記表面側の層に含まれる活性金属(A)がPdであり、前記内面側の層に含まれる活性金属(A)がRhであり、
前記表面側の層には、前記多結晶体(1)及び多結晶体(4)が含まれ、
前記内面側の層には、前記多結晶体(3)及び多結晶体(5)が含まれている、
請求項12に記載の排気ガス浄化用触媒。
【請求項14】
前記多結晶体(1)のBET比表面積が50m /g以下で、結晶子径のピークが最小6.7nm~最大13.4nmであり、
前記多結晶体(4)のBET比表面積が120m /g以下で、結晶子径のピークが最小1.9nm~最大11.2nmであり、
前記多結晶体(3)のBET比表面積が149m /g以下で、結晶子径のピークが最小3.2nm~最大6.28nmであり、そして
前記多結晶体(5)のBET比表面積が51m /g以下で、結晶子径のピークが最小9.9nm~最大13.5nmである、請求項12又は13に記載の排気ガス浄化用触媒。
【請求項15】
前記多結晶体(1)の組成は重量比でCeO :ZrO :Nd =23:67:10であり、
前記多結晶体(4)の組成は重量比でAl :La =99:1であり、
前記多結晶体(3)の組成は重量比でAl :La :ZrO =77:3:20であり、そして
前記多結晶体(5)の組成は重量比でLa :CeO :ZrO :Nd :Y =5:10:72:5:8である、
請求項12~14のいずれか一項に記載の排気ガス浄化用触媒。
【請求項16】
前記多結晶体(1)、多結晶体(3)、多結晶体(4)及び多結晶体(5)の各々の表面に、前記活性金属が担持されている、請求項12~15のいずれか一項に記載の排気ガス浄化用触媒。
【請求項17】
ハニカム型構造体を有する排気ガス浄化用触媒であって、
前記ハニカム型構造体は、触媒組成物によって、1または複数の層で被覆されており、
前記触媒組成物は、
(A)Pd及び/又はRhからなる活性金属と、
前記活性金属の担体として
CeO 、ZrO 、及びNd からなる多結晶体(1);
Al 、及びLa からなる多結晶体(4);
Al 、La 及びZrO からなる多結晶体(3);及び
La 、CeO 、ZrO 、Nd 及びY からなる多結晶体(6)
を含む、排気ガス浄化用触媒。
【請求項18】
前記触媒組成物が、前記排気ガス浄化用触媒の表面側と内面側の2層で前記ハニカム型構造体に被覆されており、
前記表面側の層に含まれる活性金属(A)がPdであり、前記内面側の層に含まれる活性金属(A)がRhであり、
前記表面側の層には、前記多結晶体(1)及び多結晶体(4)が含まれ、
前記内面側の層には、前記多結晶体(3)及び多結晶体(6)が含まれている、
請求項17に記載の排気ガス浄化用触媒。
【請求項19】
前記多結晶体(1)のBET比表面積が50m /g以下で、結晶子径のピークが最小6.7nm~最大13.4nmであり、
前記多結晶体(4)のBET比表面積が120m /g以下で、結晶子径のピークが最小1.9nm~最大11.2nmであり、
前記多結晶体(3)のBET比表面積が149m /g以下で、結晶子径のピークが最小3.2nm~最大6.28nmであり、そして
前記多結晶体(6)のBET比表面積が50m /g以下で、結晶子径のピークが最小7.3~最大13.4nmである、請求項17又は18に記載の排気ガス浄化用触媒。
【請求項20】
前記多結晶体(1)の組成は重量比でCeO :ZrO :Nd =23:67:10であり、
前記多結晶体(4)の組成は重量比でAl :La =99:1であり、
前記多結晶体(3)の組成は重量比でAl :La :ZrO =77:3:20であり、そして
前記多結晶体(6)の組成は重量比でLa :CeO :ZrO :Nd :Y =5:35:47:5:8である、
請求項17~19のいずれか一項に記載の排気ガス浄化用触媒。
【請求項21】
前記多結晶体(1)、多結晶体(3)、多結晶体(4)及び多結晶体(6)の各々の表面に、前記活性金属が担持されている、請求項17~20のいずれか一項に記載の排気ガス浄化用触媒。
【請求項22】
ハニカム型構造体を有する排気ガス浄化用触媒であって、
前記ハニカム型構造体は、触媒組成物によって、1または複数の層で被覆されており、
前記触媒組成物は、
(A)Pd及び/又はRhからなる活性金属と、
(B)Al 、(C)La 、(D)CeO 、(E)ZrO 及び(F)Nd を含む前記活性金属の担体と、
を含み、
以下の条件に示す耐久試験後のBET比表面積の変化率が40%以上であり、耐久試験後のBET比表面積が22m /g以上である、
排気ガス浄化用触媒。
(耐久試験の条件)
940℃~960℃の排気ガスにストイキ雰囲気156秒、リーン雰囲気5秒、リッチ雰囲気30秒を1サイクルとする条件下で300時間接触させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は排気ガス浄化用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの内燃機関から排出される排気ガスには、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)などの有害物質が多く含まれており、これらを浄化するために様々な排気ガス浄化技術が開発されている。その1つとして、排気ガス流路中に設置して排気ガスを浄化する排気ガス浄化用触媒が存在する。とりわけ、HC及びCOの酸化反応とNOxの還元反応を同時に行い、無害化する触媒である三元触媒の研究開発は盛んにおこなわれているが、いまだ改良の余地がある(特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-103088号公報
【文献】特開2006-159016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、熱耐久性にすぐれた排気ガス浄化用触媒を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
三元触媒は、通常、排出ガス分子が効率良く反応するための大きな表面積を有するアルミナ担体;触媒反応を助け、酸素過剰 (リーン) 時には酸素を材料内に取り込み、酸素不足 (リッチ) 時には酸素を材料内から放出する酸素吸蔵放出特性を有するセリア化合物などの触媒;及びこれら触媒の上に高分散に配置される白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)など貴金属活性成分により構成されているが、最高温度が900℃を越えるような高温条件下で長期間使用されるため、高い耐久性が求められる。
熱劣化は、高温条件下で、アルミナ、セリア材などのセラミック粒子が熱により凝集するとともに、粒子上の貴金属が凝集するため、排出ガスとの反応面積が小さくなり、浄化性能が低下する現象である。そのため、三元触媒の研究開発においては、高温でのモデル実験系による評価テストにより、その凝集の度合(すなわち比表面積の変化)に注目してその性能が評価されることが多かった。
しかしながら、実エンジンの運転条件では、温度、雰囲気ともに激しく変化するため,モデル系では把握できない様々な現象が複合して起こることが予想され、また燃料・潤滑油に含まれる成分(S,Pなど)による被毒劣化の影響もある。
本発明者らは鋭意研究の結果、実エンジンの運転条件において、優れた排ガス浄化能を有する排気ガス浄化用触媒を開発した。
【0006】
本発明は以下の態様を含む:
[1]
ハニカム型構造体を有する排気ガス浄化用触媒であって、
前記ハニカム型構造体は、触媒組成物によって、1または複数の層で被覆されており、
前記触媒組成物は、
(A)Pd及び/又はRhからなる活性金属と、
(B)Al23、(C)La23、(D)CeO2、(E)ZrO2及び(F)Nd23を含む前記活性金属の担体と、
を含む
排気ガス浄化用触媒。
[2]
前記触媒組成物が、前記排気ガス浄化用触媒の表面側と内面側の2層で前記ハニカム型構造体に被覆されており、
前記表面側の層に含まれる活性金属(A)がPdであり、前記内面側の層に含まれる活性金属(A)がRhであるか、または
前記表面側の層に含まれる活性金属(A)がRhであり、前記内面側の層に含まれる活性金属(A)がPdである、
[1]に記載の排気ガス浄化用触媒。
[3]
前記内側の層の前記担体が、(G)Y23をさらに含む、
[2]に記載の排気ガス浄化用触媒。
[4]
前記表面側の層の前記活性金属(A)が、Pdからなり、
前記表面側の層の前記担体が、前記ハニカム型構造体の触媒容積1Lあたり、
(B)60g以上70g以下のAl23、(C)0.5g以上4g以下のLa23、(D)7g以上12g以下のCeO2、(E)30g以上40g以下のZrO2、及び(F)4g以上6g以下のNd23を含み、
前記内面側の層の前記活性金属(A)が、Rhからなり、
前記内面側の層の前記担体が、前記ハニカム型構造体の触媒容積1Lあたり、
(B)60g以上70g以下のAl23、(C)3g以上5g以下のLa23、(D)3g以上13g以下のCeO2、(E)35g以上45g以下のZrO2、(F)1.5
g以上2.5g以下のNd23、及び(G)2g以上3g以下のY23を含む、
[3]に記載の排気ガス浄化触媒。
[5]
前記触媒組成物中の前記担体の表面に、前記活性金属が担持されている、[1]
に記載の排気ガス浄化用触媒。
[6]
前記表面側の層の前記担体の表面に、前記活性金属であるPdが担持されており、前記内側の層の前記担体の表面に、前記活性金属であるRhが担持されている、[2] ~[4]
のいずれか一項に記載の排気ガス浄化用触媒。
【0007】
[7]
ハニカム型構造体を有する排気ガス浄化用触媒であって、
前記ハニカム型構造体は、触媒組成物によって、1または複数の層で被覆されており、
前記触媒組成物は、
(A)Pd及び/又はRhからなる活性金属と、
前記活性金属の担体として
CeO2、ZrO2、及びNd23からなる多結晶体(1);
Al23、及びLa23からなる多結晶体(2);及び
Al23、La23及びZrO2からなる多結晶体(3)
を含む、排気ガス浄化用触媒。
[8]
前記触媒組成物が、前記排気ガス浄化用触媒の表面側と内面側の2層で前記ハニカム型構造体に被覆されており、
前記表面側の層に含まれる活性金属(A)がPdであり、前記内面側の層に含まれる活性金属(A)がRhであり、
前記表面側の層には、前記多結晶体(1)及び多結晶体(2)が含まれ、
前記内面側の層には、前記多結晶体(1)及び多結晶体(3)が含まれている、
[7]に記載の排気ガス浄化用触媒。
[9]
前記多結晶体(1)のBET比表面積が50m2/g以下で、結晶子径のピークが最小
6.7nm~最大13.4nmであり、
前記多結晶体(2)のBET比表面積が190m2/g以下で、結晶子径のピークが最
小1.2nm~最大4.9nmであり、そして
前記多結晶体(3)のBET比表面積が149m2/g以下で、結晶子径のピークが最
小3.2nm~最大6.28nmである、
[7]又は[8]に記載の排気ガス浄化用触媒。
[10]
前記多結晶体(1)の組成は重量比でCeO2:ZrO2:Nd23=23:67:10であり、
前記多結晶体(2)の組成は重量比でAl23:La23=94:6であり、そして
前記多結晶体(3)の組成は重量比でAl23:La23:ZrO2=77:3:20
である、
[7]~[9]のいずれか一項に記載の排気ガス浄化用触媒。
[11]
前記多結晶体(1)、多結晶体(2)及び多結晶体(3)の各々の表面に、前記活性金属が担持されている、[7]~[10]のいずれか一項に記載の排気ガス浄化用触媒。
【0008】
[12]
ハニカム型構造体を有する排気ガス浄化用触媒であって、
前記ハニカム型構造体は、触媒組成物によって、1または複数の層で被覆されており、
前記触媒組成物は、
(A)Pd及び/又はRhからなる活性金属と、
前記活性金属の担体として
CeO2、ZrO2、及びNd23からなる多結晶体(1);
Al23、及びLa23からなる多結晶体(4);及び
Al23、La23及びZrO2からなる多結晶体(3)
を含む、排気ガス浄化用触媒。
[13]
前記触媒組成物が、前記排気ガス浄化用触媒の表面側と内面側の2層で前記ハニカム型構造体に被覆されており、
前記表面側の層に含まれる活性金属(A)がPdであり、前記内面側の層に含まれる活性金属(A)がRhであり、
前記表面側の層には、前記多結晶体(1)及び多結晶体(4)が含まれ、
前記内面側の層には、前記多結晶体(1)及び多結晶体(3)が含まれている、
[12]に記載の排気ガス浄化用触媒。
[14]
前記多結晶体(1)のBET比表面積が50m2/g以下で、結晶子径のピークが最小
6.7nm~最大13.4nmであり、
前記多結晶体(4)のBET比表面積が120m2/g以下で、結晶子径のピークが最
小1.9nm~最大11.2nmであり、そして
前記多結晶体(3)のBET比表面積が149m2/g以下で、結晶子径のピークが最
小3.2nm~最大6.28nmである、
[12]又は[13]に記載の排気ガス浄化用触媒。
[15]
前記多結晶体(1)の組成は重量比でCeO2:ZrO2:Nd23=23:67:10
であり、
前記多結晶体(4)の組成は重量比でAl23:La23=99:1であり、そして
前記多結晶体(3)の組成は重量比でAl23:La23:ZrO2=77:3:20
である、
[12]~[14]のいずれか一項に記載の排気ガス浄化用触媒。
[16]
前記多結晶体(1)、多結晶体(3)及び多結晶体(4)の各々の表面に、前記活性金属が担持されている、[12]~[15] のいずれか一項に記載の排気ガス浄化用触媒。
【0009】
[17]
ハニカム型構造体を有する排気ガス浄化用触媒であって、
前記ハニカム型構造体は、触媒組成物によって、1または複数の層で被覆されており、
前記触媒組成物は、
(A)Pd及び/又はRhからなる活性金属と、
前記活性金属の担体として
CeO2、ZrO2、及びNd23からなる多結晶体(1);
Al23、及びLa23からなる多結晶体(4);
Al23、La23及びZrO2からなる多結晶体(3);及び
La23、CeO2、ZrO2、Nd23及びY23からなる多結晶体(5)
を含む、排気ガス浄化用触媒。
[18]
前記触媒組成物が、前記排気ガス浄化用触媒の表面側と内面側の2層で前記ハニカム型構造体に被覆されており、
前記表面側の層に含まれる活性金属(A)がPdであり、前記内面側の層に含まれる活性金属(A)がRhであり、
前記表面側の層には、前記多結晶体(1)及び多結晶体(4)が含まれ、
前記内面側の層には、前記多結晶体(3)及び多結晶体(5)が含まれている、
[17]に記載の排気ガス浄化用触媒。
[19]
前記多結晶体(1)のBET比表面積が50m2/g以下で、結晶子径のピークが最小
6.7nm~最大13.4nmであり、
前記多結晶体(4)のBET比表面積が120m2/g以下で、結晶子径のピークが最
小1.9nm~最大11.2nmであり、
前記多結晶体(3)のBET比表面積が149m2/g以下で、結晶子径のピークが最
小3.2nm~最大6.28nmであり、そして
前記多結晶体(5)のBET比表面積が51m2/g以下で、結晶子径のピークが最小
9.9nm~最大13.5nmである、[17]又は[18]に記載の排気ガス浄化用触媒。[20]
前記多結晶体(1)の組成は重量比でCeO2:ZrO2:Nd23=23:67:10であり、
前記多結晶体(4)の組成は重量比でAl23:La23=99:1であり、
前記多結晶体(3)の組成は重量比でAl23:La23:ZrO2=77:3:20
であり、そして
前記多結晶体(5)の組成は重量比でLa23:CeO2:ZrO2:Nd23:Y23=5:10:72:5:8である、
[17]~[19]のいずれか一項に記載の排気ガス浄化用触媒。
[21]
前記多結晶体(1)、多結晶体(3)、多結晶体(4)及び多結晶体(5)の各々の表面に、前記活性金属が担持されている、[17]~[20]のいずれか一項に記載の排気ガス
浄化用触媒。
【0010】
[22]
ハニカム型構造体を有する排気ガス浄化用触媒であって、
前記ハニカム型構造体は、触媒組成物によって、1または複数の層で被覆されており、
前記触媒組成物は、
(A)Pd及び/又はRhからなる活性金属と、
前記活性金属の担体として
CeO2、ZrO2、及びNd23からなる多結晶体(1);
Al23、及びLa23からなる多結晶体(4);
Al23、La23及びZrO2からなる多結晶体(3);及び
La23、CeO2、ZrO2、Nd23及びY23からなる多結晶体(6)
を含む、排気ガス浄化用触媒。
[23]
前記触媒組成物が、前記排気ガス浄化用触媒の表面側と内面側の2層で前記ハニカム型構造体に被覆されており、
前記表面側の層に含まれる活性金属(A)がPdであり、前記内面側の層に含まれる活性金属(A)がRhであり、
前記表面側の層には、前記多結晶体(1)及び多結晶体(4)が含まれ、
前記内面側の層には、前記多結晶体(3)及び多結晶体(6)が含まれている、
[22]に記載の排気ガス浄化用触媒。
[24]
前記多結晶体(1)のBET比表面積が50m2/g以下で、結晶子径のピークが最小
6.7nm~最大13.4nmであり、
前記多結晶体(4)のBET比表面積が120m2/g以下で、結晶子径のピークが最
小1.9nm~最大11.2nmであり、
前記多結晶体(3)のBET比表面積が149m2/g以下で、結晶子径のピークが最
小3.2nm~最大6.28nmであり、そして
前記多結晶体(6)のBET比表面積が50m2/g以下で、結晶子径のピークが最小
7.3~最大13.4nmである、[22]又は[23]に記載の排気ガス浄化用触媒。[25]
前記多結晶体(1)の組成は重量比でCeO2:ZrO2:Nd23=23:67:10であり、
前記多結晶体(4)の組成は重量比でAl23:La23=99:1であり、
前記多結晶体(3)の組成は重量比でAl23:La23:ZrO2=77:3:20
であり、そして
前記多結晶体(6)の組成は重量比でLa23:CeO2:ZrO2:Nd23:Y23=5:35:47:5:8である、
[22]~[24]のいずれか一項に記載の排気ガス浄化用触媒。
[26]
前記多結晶体(1)、多結晶体(3)、多結晶体(4)及び多結晶体(6)の各々の表面に、前記活性金属が担持されている、[22]~[25]のいずれか一項に記載の排気ガス浄化用触媒。
【0011】
[27]
ハニカム型構造体を有する排気ガス浄化用触媒であって、
前記ハニカム型構造体は、触媒組成物によって、1または複数の層で被覆されており、
前記触媒組成物は、
(A)Pd及び/又はRhからなる活性金属と、
(B)Al23、(C)La23、(D)CeO2、(E)ZrO2及び(F)Nd23を含む前記活性金属の担体と、
を含み、
耐久試験後のBET比表面積の変化率が40%以上であり、耐久試験後のBET比表面積が22m2/g以上である、
排気ガス浄化用触媒。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施例における、実機耐久テスト後のHC浄化性能を示すグラフである。
図2図2は、実施例における、実機耐久テスト後のBET比表面積を示すグラフである。
図3図3は、実施例における、実機耐久テスト後のDOSCを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、添付図面を用いて詳細に説明するが、必ずしもこれに限定するわけではない。なお、本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を再現できる。以下に記載された発明の実施の形態及び具体的な実施例などは、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図並びに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々な改変並びに修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
【0014】
本発明において、ハニカム型構造体の触媒容積1Lあたりのg数、BET比表面積(m2/g)、結晶子径(nm)及び重量比(無単位)は、測定誤差を鑑み、特に限定しなけ
れば、請求項においては、その数値の±5%の値を許容するものとし、たとえば「60g以上70g以下」と請求項にある場合は、「60±3g以上70±3.5g以下」、すなわち、「57g以上73.5g以下」を含むものとする。
【0015】
==排気ガス浄化用触媒==
本発明の一実施態様は、ハニカム型構造体を有する排気ガス浄化用触媒であって、前記ハニカム型構造体は、触媒組成物によって、1または複数の層で被覆されており、前記触媒組成物は、(A)Pd及び/又はRhからなる活性金属と、(B)Al23、(C)La23、(D)CeO2、(E)ZrO2及び(F)Nd23を含む前記活性金属の担体と、を含む排気ガス浄化用触媒である。
【0016】
ハニカム型構造体は、高い耐熱性を有し、セルの断面形状が四角セル又は六角セル化したハニカム構造体が好ましく、その素材はセラミックが好ましい。
【0017】
Pd及び/又はRhからなる活性金属は、ハニカム型構造体の触媒容積1Lあたり、各々0.5g、1g、2g、3g、4g、5g、6g、7g、8g、9g、10g、11g、12g、13g、14g又は15g以上含まれることが好ましく、各々20g以下、18g以下又は17g以下含まれることが好ましい。
活性金属は、硝酸塩などの形で添加され、焼成することにより、金属原子となり、排気ガス浄化用触媒内に含まれることが好ましい。
【0018】
活性金属の担体は、(B)Al23、(C)La23、(D)CeO2、(E)ZrO2
及び(F)Nd23を含み、さらに(G)Y23を含んでもよい。
触媒組成物が1層で形成されている場合、ハニカム型構造体の触媒容積1Lあたり、
Al23は、110g、115g、120g、121g、122g,123g又は124g以上含まれることが好ましく;140g、135g、130g、129g、128g、127g、126g又は125g以下含まれることが好ましく;
La23は、2g、2.5g、3g、3.5g又は4g以上含まれることが好ましく;6.5g、6.0g、5.5g、5.0g、4.5g又は4g以下含まれることが好ましく;
CeO2は、13g、14g、15g、16g、17g、18g、19g、20g、2
1g、22g又は23g以上含まれることが好ましく;25g、24g、23g、22g、21g、20g、19g、18g、17g、16g又は15g以下含まれることが好ましく;
ZrO2は、55g、56g、57g、58g、59g、60g、61g、62g、6
3g、64g又は65g以上含まれることが好ましく;100g以下、90g、89g、88g、87g、86g、85g、84g、83g、82g、81g又は80g以下含まれることが好ましく;
Nd23は、5.5g以上、6.0g以上又は6.5g以上含まれることが好ましく;8.0g以下、7.5g以下又は7.0g以下含まれることが好ましい。
さらに、Y23を含む場合、Y23は、1.5g以上、2.0g以上又は2.5g以上含まれることが好ましく;4g以下、3.5g以下又は3.0g以下含まれることが好ましい。
【0019】
触媒組成物がPd担持層とRh担持層の2層で形成されている場合、ハニカム型構造体の触媒容積1Lあたり、
Pd担持層において
Al23は、50g、55g又は60g以上含まれることが好ましく;75g、70g又は65g以下含まれることが好ましく;
La23は、0.1g、0.2g、0.3g、0.4g又は0.5g以上含まれることが好ましく;5g、4.5g、4g、3.5g、3g、2.5g、2g、1.5g又は1g以下含まれることが好ましく;
CeO2は、5g、6g又は6.5g以上含まれることが好ましく;13g、12g又
は11g以下含まれることが好ましく;
ZrO2は、20g、25g又は30g以上含まれることが好ましく;60g、50g
又は40g以下含まれることが好ましく;
Nd23は、2g、2.5g又は3g以上含まれることが好ましく;7g、6g又は5g以下含まれることが好ましい。
また、Rh担持層においては、ハニカム型構造体の触媒容積1Lあたり、
Al23は、50g、55g又は60g以上含まれることが好ましく;75g、70g又は65g以下含まれることが好ましく;
La23は、1g、2g又は3g以上含まれることが好ましく;6g、5g又は4g以下含まれることが好ましく;
CeO2は、5g、6g又は6.5g以上含まれることが好ましく;13g、12g又
は11g以下含まれることが好ましく;
ZrO2は、20g、25g又は30g以上含まれることが好ましく;60g、50g
又は40g以下含まれることが好ましく;
Nd23は、2g、2.5g又は3g以上含まれることが好ましく;7g、6g又は5g以下含まれることが好ましく;
さらに、Y23を含む場合、Y23は、1.5g、2.0g又は2.5g以上含まれることが好ましく;4g以下、3.5g又は3.0g以下含まれることが好ましい。
【0020】
活性金属の担体は、多結晶体(複数種の分子単結晶の集合体)で構成されていてもよい。多結晶体としては、
CeO2、ZrO2、及びNd23からなる多結晶体;
Al23、及びLa23からなる多結晶体;
Al23、La23及びZrO2からなる多結晶体;及び
La23、CeO2、ZrO2、Nd23及びY23からなる多結晶体等が挙げられる。
【0021】
実エンジン作動中において、CeO2はリッチ雰囲気下での気相中への酸素の放出とリ
ーン雰囲気下での気相中の酸素の貯蔵に関与して、活性金属の近傍での雰囲気変動を抑制し、触媒の浄化活性を高く保つ。高温によるCeO2の粒成長(融解)はCeO2上に存在する活性金属の粒成長を促進させるばかりではなく、CeO2のOSCも低下させる。C
eO2にZrO2、Nd23などの酸化物を添加することにより、CeO2の粒成長を防止
することができる。
Al23担体は貴金属を高分散にナノメートルレベルに保持する役割を担っている。しかし、触媒が高温に晒されると、Al23担体の比表面積が小さくなり、それに伴ってその上に存在する活性金属粒子が移動し、粒子同士が合体して、活性金属が粒成長し、触媒効率が減少する。Al23にLa23、Nd23、Y23などを添加することにより、Al23担体の耐熱性を向上させることができる。
【0022】
CeO2、ZrO2、及びNd23からなる多結晶体は、
重量比でCeO2:ZrO2:Nd23=23:67:10で形成されていることが好ましく;
BET比表面積が55m2/g、50m2/g、49m2/g、48m2/g、47m2
/g又は46m2/g以下であることが好ましく、35m2/g、40m2/g、41m2/g、42m2/g、43m2/g又は44m2/g以上が好ましく;
結晶子径のピークが最小6.7nm~最大13.4nmであることが好ましい。
【0023】
Al23、及びLa23からなる多結晶体は、重量比でAl23:La23=99:1~94:6で形成されていることが好ましく;
BET比表面積が190m2/g、180m2/g、175m2/g、120m2/g、115m2/g以下、110m2/g以下が好ましく、90m2/g、95m2/g又は100m2/g以上が好ましく;
結晶子径のピークが最小1.2nm~最大4.9nm又は最小1.9nm~最大11.2nmであることが好ましい。
【0024】
Al23、La23及びZrO2からなる多結晶体は、重量比でAl23:La23
ZrO2=77:3:20で形成されていることが好ましく;
BET比表面積が160m2/g、155m2/g又は150m2/g以下が好ましく、
130m2/g、135m2/g又は140m2/g以上が好ましく;
結晶子径のピークが最小3.2~最大6.28nmであることが好ましい。
【0025】
La23、CeO2、ZrO2、Nd23及びY23からなる多結晶体は、重量比でLa23:CeO2:ZrO2:Nd23:Y23=5:10~35:72~47:5:8で形成されていることが好ましく;
BET比表面積が60m2/g、55m2/g、54m2/g、53m2/g、52m2
g又は51m2/g以下が好ましく、40m2/g、45m2/g、46m2/g、47m2
/g、48m2/g、49m2/g又は50m2/g以上が好ましく;
結晶子径のピークが最小9.9nm~最大13.5nm又は最小7.3~最大13.4nmであることが好ましい。
【0026】
本発明に係る排気ガス浄化用触媒の、耐久試験前後のBET比表面積の変化率(耐久試験後のBET比表面積/耐久試験前のBET比表面積)(%)が40%、45%、50%又は55%以上が好ましく、耐久試験後のBET比表面積が21m2/g、22m2/g又は23m2/g以上であることが好ましい。
耐久試験とは、実エンジン耐久試験であり、特に限定しないが、排気ガス浄化用触媒をエンジンの排気管に取り付け、940℃~960℃の排気ガスに
1)ストイキ雰囲気50~250秒;好ましくは100~200秒;より好ましくは150~160秒、
2)リーン雰囲気1~10秒;好ましくは3~8秒;より好ましくは4~6秒、
3)リッチ雰囲気10~60秒;好ましくは20~50秒;より好ましくは25~35秒を1サイクルとする条件下で
200~400時間;好ましくは250~350時間;より好ましくは275~325時間接触させる実エンジン耐久試験が好ましい。
【0027】
==排気ガス浄化用触媒の製造方法==
本発明の一実施態様における排気ガス浄化用触媒は
(1)活性金属の担体の表面に活性金属イオンを含む溶液を噴霧し、混錬し、
(2)400~500度で1~2時間、大気雰囲気で焼成し、活性金属の担体及び活性金属を含む貴金属担持パウダーを作製し、
(3)作製された貴金属担持パウダー、水、硫酸バリウム、結合剤(バインダー)を混錬し、スラリーを作製し、
(4)作製したスラリーをボールミルで直径50~5μm以下になるように粉砕し、
(5)粉砕したスラリーでハニカム構造体をコーティングし、130度で乾燥後、400~500度で1~2時間、大気雰囲気で焼成することにより、作製される。
【実施例
【0028】
<排気ガス浄化用触媒の製造>
1.材料
CeO2、ZrO2、及びNd23からなる多結晶体(1)として、セリアジルコニアC(CeO2:ZrO2:Nd23=23:67:10(重量比))を用いた。
Al23、及びLa23からなる多結晶体(2)として、アルミナA(Al23:La23=94:6(重量比))を用いた。
Al23、La23及びZrO2からなる多結晶体(3)として、アルミナC(Al23:La23:ZrO2=77:3:20(重量比))を用いた。
Al23、及びLa23からなる多結晶体(4)として、アルミナB(Al23:La23=99:1(重量比))を用いた。
La23、CeO2、ZrO2、Nd23及びY23からなる多結晶体(5)として、セリアジルコニアA(La23:CeO2:ZrO2:Nd23:Y23=5:10:72:5:8(重量比))を用いた。
La23、CeO2、ZrO2、Nd23及びY23からなる多結晶体(6)として、セリアジルコニアB(La23:CeO2:ZrO2:Nd23:Y23=5:35:47:5:8(重量比))を用いた。
バインダーとしてジルコニア(ZrO2)を用いた。
なお、以下で用いる「g/L」はハニカム型構造体の触媒容積1Lあたり用いるg数を意味する。
【0029】
2.実施例1及び実施例2の作製
アルミナA(61.985g/L)に硝酸Pd溶液を貴金属量で10.825g/Lを噴霧し、混錬し、450℃で1.5時間大気雰囲気で焼成した(Pd担持パウダー1)。
セリアジルコニアC(29.55g/L)に硝酸Pd溶液を貴金属量で1.616g/
Lを噴霧し、混錬し、450℃で1.5時間大気雰囲気で焼成した(Pd担持パウダー2)。
アルミナC(69.827g/L)に硝酸Rh溶液を貴金属量で0.59g/Lを噴霧し、混錬し、450℃で1.5時間大気雰囲気で焼成した(Rh担持パウダー1)。
セリアジルコニアC(34.965g/L)に硝酸Rh溶液を貴金属量で0.119g/Lを噴霧し、混錬し、450℃で1.5時間大気雰囲気で焼成した(Rh担持パウダー2)。
Pd担持パウダー1、Pd担持パウダー2、水、硫酸バリウム(12.3g/L)及びバインダー(5g/L)を混錬しスラリー化した。スラリー化後、ボールミルにて直径50から5μm以下になるよう粉砕した(Pd担持スラリー)。
Rh担持パウダー1、Rh担持パウダー2、水、アルミナD(Al23:La23=96:4(重量比))(10g/L)及びバインダー(5g/L)を混錬しスラリー化した。スラリー化後、ボールミルにて直径50から5μm以下になるよう粉砕した(Rh担持スラリー)。
実施例1の場合、Pd担持スラリー及びRh担持スラリーを混合して一緒にハニカム構造体(セル数900ミル数2.5)にコーティングした。130℃で乾燥後、450℃で1.5時間大気雰囲気で焼成した。
実施例2の場合、Rh担持スラリーをハニカム構造体にコーティングし、130℃で乾燥後、さらにPd担持スラリーをコーティングすることにより二層構造とした。その後、450℃で1.5時間大気雰囲気で焼成した。
【0030】
3.実施例3の作製
アルミナB(61.985g/L)に硝酸Pd溶液を貴金属量で10.825g/Lを噴霧し、混錬し、450℃で1.5時間大気雰囲気で焼成した(Pd担持パウダー1)。
セリアジルコニアC(29.55g/L)に硝酸Pd溶液を貴金属量で1.616g/Lを噴霧し、混錬し、450℃で1.5時間大気雰囲気で焼成した(Pd担持パウダー2)。
アルミナC(69.827g/L)に硝酸Rh溶液を貴金属量で0.59g/Lを噴霧し、混錬し、450℃で1.5時間大気雰囲気で焼成した(Rh担持パウダー1)。
セリアジルコニアC(34.965g/L)に硝酸Rh溶液を貴金属量で0.119g/Lを噴霧し、混錬し、450℃で1.5時間大気雰囲気で焼成した(Rh担持パウダー2)。
Pd担持パウダー1、Pd担持パウダー2、水、硫酸バリウム(12.3g/L)及びバインダー(5g/L)を混錬しスラリー化した。スラリー化後、ボールミルにて直径50から5μm以下になるよう粉砕した(Pd担持スラリー)。
Rh担持パウダー1、Rh担持パウダー2、水、アルミナD(10g/L)及びバインダー(5g/L)を混錬しスラリー化した。スラリー化後、ボールミルにて直径50から5μm以下になるよう粉砕した(Rh担持スラリー)。
Rh担持スラリーをハニカム構造体(セル数900ミル数2.5)にコーティングした。130℃で乾燥後、さらにPd担持スラリーをコーティングした。その後、450℃で1.5時間大気雰囲気で焼成した。
【0031】
4.実施例4の作製
アルミナB(61.985g/L)に硝酸Pd溶液を貴金属量で10.825g/Lを噴霧し、混錬し、450℃で1.5時間大気雰囲気で焼成した(Pd担持パウダー1)。
セリアジルコニアC(29.55g/L)に硝酸Pd溶液を貴金属量で1.616g/Lを噴霧し、混錬し、450℃で1.5時間大気雰囲気で焼成した(Pd担持パウダー2)。
アルミナC(69.827g/L)に硝酸Rh溶液を貴金属量で0.59g/Lを噴霧し、混錬し、450℃で1.5時間大気雰囲気で焼成した(Rh担持パウダー1)。
セリアジルコニアA(34.965g/L)に硝酸Rh溶液を貴金属量で0.119g/Lを噴霧し、混錬し、450℃で1.5時間大気雰囲気で焼成した(Rh担持パウダー2)。
Pd担持パウダー1、Pd担持パウダー2、水、硫酸バリウム(12.3g/L)及びバインダー(5g/L)を混錬しスラリー化した。スラリー化後、ボールミルにて直径50から5μm以下になるよう粉砕した(Pd担持スラリー)。
Rh担持パウダー1、Rh担持パウダー2、水、アルミナD(10g/L)及びバインダー(5g/L)を混錬しスラリー化した。スラリー化後、ボールミルにて直径50から5μm以下になるよう粉砕した(Rh担持スラリー)。
Rh担持スラリーをハニカム構造体(セル数900ミル数2.5)にコーティングした。130℃で乾燥後、さらにPd担持スラリーをコーティングした。その後、450℃で1.5時間大気雰囲気で焼成した。
【0032】
5.実施例5の作製
アルミナB(61.985g/L)に硝酸Pd溶液を貴金属量で10.825g/Lを噴霧し、混錬し、450℃で1.5時間大気雰囲気で焼成した(Pd担持パウダー1)。
セリアジルコニアC(29.55g/L)に硝酸Pd溶液を貴金属量で1.616g/Lを噴霧し、混錬し、450℃で1.5時間大気雰囲気で焼成した(Pd担持パウダー2)。
アルミナC(69.827g/L)に硝酸Rh溶液を貴金属量で0.59g/Lを噴霧し、混錬し、450℃で1.5時間大気雰囲気で焼成した(Rh担持パウダー1)。
セリアジルコニアB(34.965g/L)に硝酸Rh溶液を貴金属量で0.119g/Lを噴霧し、混錬し、450℃で1.5時間大気雰囲気で焼成した(Rh担持パウダー2)。
Pd担持パウダー1、Pd担持パウダー2、水、硫酸バリウム(12.3g/L)及びバインダー(5g/L)を混錬しスラリー化した。スラリー化後、ボールミルにて直径50から5μm以下になるよう粉砕した(Pd担持スラリー)。
Rh担持パウダー1、Rh担持パウダー2、水、アルミナD(10g/L)及びバインダー(5g/L)を混錬しスラリー化した。スラリー化後、ボールミルにて直径50から5μm以下になるよう粉砕した(Rh担持スラリー)。
Rh担持スラリーをハニカム構造体(セル数900ミル数2.5)にコーティングした。130℃で乾燥後、さらにPd担持スラリーをコーティングした。その後、450℃で1.5時間大気雰囲気で焼成した。
【0033】
<各多結晶体の結晶子径及びBET比表面積>
1.結晶子径
X線回折装置(SmartLab、Rigaku製)を使用して、以下の条件で、各多結晶体の粉末X線回折測定を行った。
線源 : CuKα線(λ=1.541862Å)
測定モード : 連続
スキャン条件: 10deg/min
発散スリット: 1.00deg
散乱スリット: 1.00deg
入射スリット: 0.25deg
受光スリット: 15mm
計測時間 : 3.0秒
測定範囲 : 5~90°
得られたXRDパターンから結晶面に相当するピークの半価幅を算出した。より詳細には
、半価幅は測定結果をバックグランド除去した後、ピークフィッティング処理を行った結果から求めた。半価幅を用い、以下の式より結晶子径を算出した。
結晶子径(Å)=κλ/βcosθ
(上記式において、κはシェーラー定数(=0.9400)、λはCuKα線を線源とした場合のλで
あり、1.541862Åである。βはXRDピークの半価幅、及びθはXRDピークのブラック角θである)
【0034】
2.BET比表面積
各多結晶体のBET比表面積をBET1点法の窒素吸着により測定した。測定装置には一般的な流動式比表面積自動測定装置(BET)FlowSorb 2300(SHIM
ADZU製)を用いた。
【0035】
3.結果
結果を以下の表1に示す。
【表1】
【0036】
<電気炉を用いた熱劣化試験>
電気炉を用いて、実施例1~5の排気ガス浄化用触媒の熱劣化試験を行った。具体的には、電気炉において、1000度で6時間(大気雰囲気中)又は1150度で6時間(大気雰囲気中)処理した。
処理前後のBET比表面積を、BET1点法の窒素吸着により測定し、変化率(試験後のBET比表面積)/(試験前のBET比表面積)(%)を算出した。
結果を以下の表2に示す。
【表2】
【0037】
<実エンジン耐久テスト>
実施例1~5の排気ガス浄化用触媒をエンジンの排気管に取り付け、940℃~960℃の排気ガスにストイキ雰囲気156秒、リーン雰囲気5秒、リッチ雰囲気30秒を1サイクルとする条件下で300時間接触させて、実エンジン耐久テストを行った。
エンジンは、2.5L水平対向エンジンを用いた。
テスト前後のBET比表面積並びにテスト後のT50とDOSCを測定した。
【0038】
エンジン台上運転での定常流れにおいて、実エンジン耐久テスト後の実施例1~5の排気ガス浄化用触媒のライトオフ性能を計測した。エンジンは実エンジン耐久テストと同じ2.5L水平対向エンジンを用い、λを0.997、空間速度(SV)を87580h-1とし、20degC/分の昇温速度で計測した。HC、CO及びNOxの浄化性能の指標は浄化率が50%に達した時の触媒入口温度(T50)を用いた。
【0039】
結果を図1(HC浄化性能)及び以下の表3(HC、CO及びNOxの浄化性能)に示す。
【表3】
【0040】
DOSCは、マイクロトラック・ベル製BELCAT IIを用いて測定した。詳細には
、耐久試験後の排気ガス浄化用触媒をHeで前処理を実施し、その後所定の温度でO2
パルス注入した。その後、H2、O2の順に10回パルス注入し、合計の酸素の吸着量を測定し、
DOSC=酸素吸着量×触媒重量÷(触媒1個当たりのCeO2量)とした。
結果を図3及び以下の表4に示す。
【0041】
【表4】
【0042】
実エンジン耐久テスト後のBET比表面積の測定結果を図2に、実エンジン耐久テスト前後のBET比表面積の測定結果及び変化率を以下の表5に示す。
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明によって、実エンジンにおいても長期にわたり、排気ガスを浄化できる触媒を提供できるようになった。
図1
図2
図3