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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 17/02 20210101AFI20240109BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20240109BHJP
   H04N 23/52 20230101ALI20240109BHJP
   G03B 17/55 20210101ALI20240109BHJP
【FI】
G03B17/02
H05K7/20 F
H04N23/52
G03B17/55
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020076140
(22)【出願日】2020-04-22
(65)【公開番号】P2021173821
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(72)【発明者】
【氏名】川嶋 英幹
(72)【発明者】
【氏名】本田 敬至
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-67901(JP,A)
【文献】特開2014-14015(JP,A)
【文献】特開2014-39163(JP,A)
【文献】特開2013-88519(JP,A)
【文献】特開2018-128556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 17/02
H05K 7/20
H04N 23/52
G03B 17/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装部材と、
発熱素子が実装される基板と、
前記外装部材が組み付けられるシャーシと、
前記シャーシよりも熱伝導率の高い材料で形成され、光軸方向において前記基板と前記シャーシとの間に配置される伝熱部材と、を有し、
前記シャーシは、
左右方向における互いに異なる2つの位置を含む複数の位置で、前記基板と前記伝熱部材とを重ねて支持する第1の接続部と、
前記伝熱部材を支持する第2の接続部と、
前記外装部材を支持する第3の接続部と、を有し、
前記第2の接続部および前記第3の接続部はいずれも、左右方向における、前記第1の接続部の前記2つの位置の間に設けられていることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記基板と前記伝熱部材とを熱的に結合する熱結合部を有し、
前記光軸方向から見て、前記熱結合部の少なくとも一部と前記発熱素子の少なくとも一部とが重なることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
左右方向にいて、前記第2の接続部の位置は前記熱結合部の位置と重なることを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
左右方向にいて、前記第3の接続部の位置は前記熱結合部の位置と重なることを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記光軸に直交する方向において、前記第2の接続部と前記発熱素子との距離、および、前記第3の接続部と前記発熱素子との距離はいずれも、前記第1の接続部と前記発熱素子との距離のうち最も短い距離よりも短いことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記光軸に直交する方向において、前記第2の接続部と前記第3の接続部との距離は、前記第1の接続部と前記第2の接続部との距離のうち最も短い距離、前記第1の接続部と前記第3の接続部との距離のうち最も短い距離、のいずれよりも短いことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記第1の接続部は、前記基板の上下左右の4つの端部に対応する位置に位置することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記第2の接続部は前記第1の接続部に対して前記光軸方向における前方に位置することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記伝熱部材は、金属材料またはグラファイトシートで形成されることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記伝熱部材は、前記第2の接続部に対応する腕部を有し、
前記腕部は、前記シャーシよりも熱伝導率の高い材料で形成されることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱素子が実装された基板を有する撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ等の撮像装置において、連続的な撮影動作、撮像素子の高画素化、CPUの処理速度の向上などに伴って消費電力量が高まり、装置内の発熱量も増加している。そこで、撮像装置内で効率よく熱を拡散するために、発熱源を有する基板がメインシャーシに固定される構成において、メインシャーシよりも熱伝導率の高いプレートをメインシャーシと外装との間に設ける構成が提案されている(特許文献1)。上記プレートはメインシャーシの背面に接触するように固定される。これにより、基板で発生した熱をメインシャーシの背面に沿って効率良く分散させることができる。また、上記プレートをメインシャーシと外装部材との間に挟み込むことで、基板からメインシャーシに伝わる熱を外装部材に伝わりにくくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-23647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の構成では、基板での発熱量がさらに増加した場合に、プレートによる熱伝達のみでは熱の分散に限界がある。動画撮影など負荷の高い処理を行い続ける場合に極力長い時間動作可能にすることが難しい。従って、基板の熱を効率よく分散させることに関し、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、基板の熱を効率よく分散させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は、外装部材と、発熱素子が実装される基板と、前記外装部材が組み付けられるシャーシと、前記シャーシよりも熱伝導率の高い材料で形成され、光軸方向において前記基板と前記シャーシとの間に配置される伝熱部材と、を有し、前記シャーシは、左右方向における互いに異なる2つの位置を含む複数の位置で、前記基板と前記伝熱部材とを重ねて支持する第1の接続部と、前記伝熱部材を支持する第2の接続部と、前記外装部材を支持する第3の接続部と、を有し、前記第2の接続部および前記第3の接続部はいずれも、左右方向における、前記第1の接続部の前記2つの位置の間に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、基板の熱を効率よく分散させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】撮像装置の斜視図である。
図2】撮像装置の内部の分解斜視図である。
図3】振れ補正機構の斜視図、分解斜視図である。
図4】ベース部材の前面側、背面側の斜視図である。
図5】伝熱プレートの斜視図である。
図6】上カバー、ベース部材、伝熱プレートおよび主基板を組み付けた状態の背面図、図6(a)のA-A線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0010】
図1(a)、(b)は、本発明の一実施の形態に係る撮像装置の斜視図である。図1(a)は、撮像装置1を前方から見た斜視図であり、図1(b)は、撮像装置1を後方から見た斜視図である。
【0011】
撮像装置1は、レンズ交換式のデジタルカメラである。撮像装置1の正面にレンズマウント部28が設けられている。レンズマウント部28は、撮像装置1に着脱可能な撮影レンズを取り付ける部分である。撮像装置1に装着された撮影レンズの光軸をC0とする。以降、各部の方向を、図1等に示したX、Y、Z座標軸を基準として呼称する。ここでは便宜上、光軸C0と平行な方向において、被写体側を前方と称し、レンズマウント部28から見た後カバー112の側を後方と称する。左右方向については、操作者が主に位置する側、すなわち、背面側から見た方向を基準とする。従って、例えば、図1(a)、(b)において、+Y方向が上方、+Z方向が前方である。+X方向は、後方から見て左方である。
【0012】
撮像装置1の外装は、主に上カバー110、前カバー111、後カバー112、下カバー113により構成される。上カバー110および後カバー112は、マグネシウム合金でダイキャストにより成形された金属部品である。前カバー111および下カバー113は、ポリカーボネートで射出成型により成形された樹脂部品である。
【0013】
撮像装置1の背面に表示部2が設けられている。表示部2は、画像や各種情報を表示する。表示部2の表示面は、タッチパネル3となっている。タッチパネル3は、表示部2の表示面(操作面)に対するタッチ操作を検出する。撮像装置1の上面には、ファインダ外表示部4、シャッタボタン5、モード切替スイッチ6が設けられている。ファインダ外表示部4は、シャッタ速度や絞りをはじめとするカメラの様々な設定値を表示する。シャッタボタン5は、撮影を指示するための操作部である。モード切替スイッチ6は、各種モードを切り替えるための操作部である。
【0014】
シャッタボタン5の近傍に、メイン電子ダイヤル8が配置されている。メイン電子ダイヤル8は、回転操作部材である。ユーザは、メイン電子ダイヤル8を回すことによってシャッタ速度や絞りなどの設定値を変更することができる。また、モード切替スイッチ6を囲むように、サブ電子ダイヤル11が配置されている。サブ電子ダイヤル11は、回転操作部材であり、選択枠の移動や画像送りなどに用いられる。サブ電子ダイヤル11とメイン電子ダイヤル8との間に、動画ボタン14が配置されている。動画ボタン14は、動画撮影(記録)の開始、停止の指示に用いられる。
【0015】
撮像装置1の左側面(+X側面)には、端子カバー7が配置されている。端子カバー7は、外部機器と撮像装置1とを接続する接続ケーブル等のコネクタ(図示省略)を保護するカバーである。撮像装置1の上面左部に電源スイッチ10が配置されている。電源スイッチ10は、撮像装置1の電源のON(オン)及びOFF(オフ)を切り替える操作部材である。
【0016】
撮像装置1の背面において、表示部2に隣接するように操作部9が配置されている。操作部9は、複数の押しボタンおよび背面ダイヤル12等で構成されている。背面ダイヤル12は回転操作部材であり、操作者は背面ダイヤル12を回すことによってシャッタ速度や絞りなどの設定値を変更することができる。背面ダイヤル12の中央部にSETボタン13が配置されている。SETボタン13は、押しボタンであり、主に選択項目の決定などに用いられる。
【0017】
操作部9の上方には、選択部材26が配置されている。選択部材26は、上、下、左、右に斜め方向を加えた8方向への操作と中心押し操作とが可能なマルチコントローラである。選択部材26の押された部分に応じてその部分に応じた操作が可能となる。操作部9の上方には、AEロックボタン15が配置されている。AEロックボタン15は、撮影待機状態で押下されることにより、露出状態を固定することができる。AEロックボタン15に隣接するように、拡大ボタン16が配置されている。拡大ボタン16は、撮影モードのライブビュー表示において拡大モードのON、OFFを行うための操作ボタンである。拡大モードをONとしてからメイン電子ダイヤル8を操作することにより、LV画像の拡大、縮小を行うことができる。拡大ボタン16は、再生モードにおいて再生画像を拡大し、拡大率を増加させるためにも用いられる。
【0018】
操作部9の下部には、再生ボタン17が配置されている。再生ボタン17は、撮影モードと再生モードとを切り替える操作ボタンである。撮影モード中に再生ボタン17を押下することによって再生モードに移行し、記録媒体(図示省略)に記録された画像のうち最新の画像を表示部2に表示させることができる。再生ボタン17を含む操作部9に隣接するように、蓋24が配置されている。蓋24は、記録媒体(図示省略)を格納したスロットの蓋である。
【0019】
撮像装置1の背面における表示部2の左上方には、メニューボタン19が配置されている。メニューボタン19は押しボタンである。メニューボタン19が押下されると各種の設定可能なメニュー画面が表示部2に表示される。ユーザは、表示部2に表示されたメニュー画面と、背面ダイヤル12やSETボタン13を用いて直感的に各種設定を行うことができる。
【0020】
表示部2の上方には、接眼部21が配置されている。接眼部21は、接眼ファインダの接眼部である。ユーザは、接眼部21を介して内部のEVF22に表示された映像を視認することができる。接眼部21の直下に接眼検知部23が設けられている。接眼検知部23は、接眼部21にユーザが接眼しているか否かを検知するセンサである。
【0021】
撮像装置1の右端部はグリップ部25となっている。グリップ部25は、ユーザが撮像装置1を構えた際に右手で握りやすい形状にした保持部である。グリップ部25を右手の小指、薬指、中指で握って撮像装置1を保持した状態で、右手の人差指で操作可能な位置に、上述のシャッタボタン5及びメイン電子ダイヤル8が配置されている。また、撮像装置1を保持した状態で、ユーザの右手の親指で操作可能な位置に、上述のサブ電子ダイヤル11及び選択部材26が配置されている。
【0022】
レンズマウント部28の内側の下部に、通信端子20が設けられている。通信端子20は、撮像装置1とレンズとの間で通信を行う。レンズマウント部28の内側には、撮像素子600(図3(b))が支持されている。撮像素子600は、取り込んだ光情報を信号に変換するCMOSセンサである。レンズマウント部28の左側に、ロックボタン27が配置されている。ロックボタン27は、撮像装置1にレンズが装着された際、当該レンズを保持するためのロック機構(図示省略)として機能する。ユーザは、ロックボタン27を押下することによって、保持ロック機構が解除され、レンズを取り外すことが可能になる。
【0023】
撮像装置1の上部の左右の端部には、それぞれストラップ挿入部材90、95が設けられている。ストラップ挿入部材90、95には、それぞれストラップが挿通される。ユーザは、ストラップ挿入部材90、95にストラップ等の紐状部材(図示省略)を挿通することによって、撮像装置1を吊るして持ち運びすることができる。
【0024】
次に、撮像装置1の内部構成について説明する。
【0025】
図2は、撮像装置1の内部の分解斜視図である。図2では、撮像装置1の内部構成の説明に必要な構成要素が主に示されている。撮像装置1は、ベース部材30、シャッタ部材40、振れ補正機構100、伝熱プレート50、及び主基板60を備えている。ベース部材30に対して、光軸方向においてシャッタ部材40、振れ補正機構100、伝熱プレート50、主基板60の順で組み込まれるように配置されている。
【0026】
ベース部材30は、マグネシウム合金でダイキャストにより形成された金属部材であり、高い剛性を有している。ベース部材30には、レンズマウント部28(図1参照)が固定されている。ベース部材30には、ビス穴31a、31b、31c、取り付け穴32a、32b、32c、及び、ビス穴33a、33b、33c、33dが形成されている。
【0027】
ベース部材30と当接するように、シャッタ部材40が配置されている。シャッタ部材40は、シャッタ幕42を走行させることによってシャッタ幕42を開口、閉口させる機構を備える。シャッタ幕42の開口によって撮像素子600に所望の時間、被写体光が投影される。シャッタ部材40は、穴41a、41b、41cを備えている。穴41a、41b、41cを介して、ビス45a、45b、45cをベース部材30のビス穴31a、31b、31cに螺合することで、シャッタ部材40はベース部材30に固定される。
【0028】
シャッタ部材40は、フレキシブルプリント基板46と、リード線47a、47bとを備えている。フレキシブルプリント基板46が主基板60のコネクタ65に接続されると共に、リード線47a、47bが主基板60のコネクタ66a、66bに接続されることで、シャッタ部材40は主基板60と信号の送受信可能に電気的に接続される。
【0029】
伝熱プレート50は、高い熱伝導率を有する金属材料(アルミニウム、銅など)によって形成された板金部材であり、伝熱部材である。伝熱プレート50は、ベース部材30よりも熱伝導率の高い材料で構成される。伝熱プレート50は、穴52a、52b、52c、52d、52eを備えている。
【0030】
主基板60は、電子回路を構成する回路基板であり発熱性の基板である。主基板60の表面にはCPU64、カードコネクタ69などの発熱する回路部品が実装されている。CPU64は主な発熱素子である。また、主基板60には、コネクタ65、66a、66b、67a、67b、67c、68が実装されている。主基板60は、コネクタを介して後述するフレキシブルプリント基板などの接続部材と電気的に接続されている。主基板60は、また、穴62a、62b、62c、62dを備えている。ビス63a、63b、63c、63dはそれぞれ、穴62a、62b、62c、62d、および伝熱プレート50の穴52a、52b、52c、52dを介して、ベース部材30のビス穴33a、33b、33c、33dに螺合される。これにより、主基板60および伝熱プレート50がベース部材30に共締め固定される。ベース部材30のビス穴33a、33b、33c、33dは、主基板60と伝熱プレート50とを複数の位置で重ねて支持する「第1の接続部」に該当する。
【0031】
図3(a)、(b)はそれぞれ、振れ補正機構100の斜視図、分解斜視図である。振れ補正機構100は、フロントヨーク200、可動枠300、ベース板410、リアヨーク400a、リアヨーク400b、センサプレート500、及びセンサ基板610を備えている。
【0032】
フロントヨーク200には、穴201a、201b、201cが形成されている。ベース板410には、磁石420a、420b、420cが接着固定されている。磁石420a、420b、420cの片側面(-Z側面)を覆うようにリアヨーク400a、400bが配置されている。リアヨーク400aには、穴401a、401cが形成されており、リアヨーク400bには、穴401bが形成されている。穴401a、401b、401cに対応して、ビス402a、402b、402cが設けられている。
【0033】
磁石420a、420b、420cによって、フロントヨーク200とリアヨーク400a、400bとの間に磁気回路が形成される。この磁気回路は、いわゆる閉磁路を構成する。磁石420a、420b、420cは、それぞれ光軸方向(Z軸方向)に磁束密度が生じるように着磁されている。フロントヨーク200とベース板410との間には強い吸引力が生じるので、スペーサ230a、230b、230cで一定の間隔を保つように構成されている。
【0034】
ベース板410には、穴411a、411b、411cが形成されている。ベース板410の穴411a、411b、411cと、フロントヨーク200に形成された穴201a、201b、201cとの間に、スペーサ230a、230b、230cが配置される。フロントヨーク200側からビス220a、220b、220cがスペーサ230a、230b、230cに螺合されると共に、リアヨーク400a、400b側からビス402a、402b、402cがスペーサ230a、230b、230cに螺合される。これによって、フロントヨーク200は、リアヨーク400a、400bと共締め状態で固定される。スペーサ230a、230b、230cの胴部にはゴムが配置されている。スペーサ230a、230b、230cの胴部のゴムは、移動する可動枠300のストッパとなる。
【0035】
ベース板410には、ベース部材30の取り付け穴32a、32b、32cに対応する箇所に、穴430a、430b、430cが形成される。ビス431a、431b、431cが、穴430a、430b、430cを介して取り付け穴32a、32b、32cに螺合されることで、ベース板410はベース部材30に固定される。その際、ベース板410とベース部材30との間に、不図示のワッシャを挟み込むことによって振れ補正機構100の傾きが調整される。
【0036】
可動枠300は、マグネシウムダイキャスト若しくはアルミダイキャストで形成されており、軽量で剛性が高い。可動枠300は、光軸方向においてフロントヨーク200とベース板410との間に位置する。可動枠300は、ボール305a、305b、305cを備える。ボール305a、305b、305cは、可動枠300の受け部304a、304b、304cとベース板410との間で転動可能に挟持される。
【0037】
また、ベース板410には、磁石420a、420b、420cに対向する位置に、コイル350a、350b、350cが接着固定されている。コイル350a、350b、350cがフレキシブル基板670にはんだ付けされることによって、フレキシブル基板670はコイル350a、350b、350cと電気的に導通される。フレキシブル基板670は、不図示の位置検出素子を備えている。この位置検出素子としては、上述した磁気回路を利用して位置を検出できるようにホール素子などが用いられる。ホール素子は小型であるため、コイル350a、350b、350cの巻線の内側に位置するように配置することができる。フレキシブル基板670が、主基板60(図2)に実装されたコネクタ67cに接続されることによって、主基板60とコイル350a、350b、350cとが電気的に接続される。
【0038】
撮像素子600は、センサ基板610の片側の面(+Z側面)に実装されている。センサ基板610における撮像素子600が実装される面とは反対側の面(-Z側面)に、各種回路素子が実装されている。また、センサ基板610にはコネクタ612a、612bが実装されている。コネクタ612a、612bにそれぞれフレキシブル基板650、660(図3(a))が接続される。フレキシブル基板650、660の他端側は、それぞれ主基板60に実装されたコネクタ67a、67bに接続される。これによって、主基板60とセンサ基板610とが電気的に接続される。
【0039】
センサプレート500は、高い熱伝導率を有する金属(アルミニウム、銅など)によって形成された板金部材である。センサ基板610の撮像素子600は、センサプレート500にUV接着にて固定されている。センサプレート500には、可動枠300に形成された位置決めボス301に対応する箇所に、位置決め穴501が形成されている。さらに、センサプレート500には、可動枠300のビス穴302に対応する箇所に穴503が形成されている。ビス504が穴503を介してビス穴302に螺合されることで、センサプレート500は可動枠300に固定される。
【0040】
以上説明した振れ補正機構100において、コイル350a~350cに電流を流すことで、フレミング左手の法則に従った力が発生する。これにより、可動枠300、ひいては撮像素子600を光軸方向に対して垂直な方向、すなわち光軸C0に直交する面内で移動可能である。可動枠300の移動によって手振れを補正することができる。振れ補正機構100の制御方法の詳細に関しては説明を省略する。
【0041】
図4(a)、(b)はそれぞれ、ベース部材30の前面側、背面側の斜視図である。上述したように、ベース部材30は、ベース板410を固定するための取り付け穴32a、32b、32cとは別に、主基板60及び伝熱プレート50を固定するためのビス穴33a、33b、33c、33dを備える。さらに、ベース部材30には、主基板60の固定に関わらない位置にビス穴33eが設けられている。ビス穴33eは、伝熱プレート50の穴52e(図2図5)に対応し、伝熱プレート50を固定するために設けられている。ビス穴33eは、伝熱プレート50を支持する「第2の接続部」に該当する。ベース部材30の上部前部には、上カバー110をビス固定する際に使用する貫通孔34a、34bが設けられている。
【0042】
図5は、伝熱プレート50の斜視図である。図5では、伝熱プレート50に貼り付け固定される熱伝導ゴム80も併せて示されている。伝熱プレート50は、図2で説明したように、複数の曲げ加工や絞り加工により、他の部品との干渉を避けた形状で且つ強度を高くした形状を備えている。伝熱プレート50の上下左右の端部には、主基板60を受けつつ共締めするための腕部51a、51b、51c、51dが形成されている。腕部51a、51b、51c、51dの各先端には、穴52a、52b、52c、52dが形成されている。穴52a、52b、52c、52dは、ベース部材30のビス穴33a、33b、33c、33dへのビス締結の際に使用される。
【0043】
伝熱プレート50の中央部付近には熱伝導ゴム80が貼り付けられ、熱伝導ゴム80は主基板60と圧接されている。伝熱プレート50は、腕部51a、51b、51c、51d以外に腕部51eを有する。腕部51eの先端に穴52eが形成されている。穴52a、52b、52c、52dは互いに、光軸に直交する同一平面上に位置する。しかし、腕部51eは前方へ曲げられている。そのため、腕部51eの穴52eは、穴52a、52b、52c、52dと同一面には無く、光軸方向において穴52a、52b、52c、52dより前方に位置する。第1の接続部であるビス穴33a、33b、33c、33dは、伝熱プレート50の穴52a、52b、52c、52dに対応し、第2の接続部であるビス穴33eは穴52eに対応する。従って、第2の接続部は第1の接続部に対して光軸方向前方に位置する。
【0044】
次に、図6で、上カバー110、ベース部材30、伝熱プレート50、主基板60の組み付け関係について説明する。図6(a)は、上カバー110、ベース部材30、伝熱プレート50および主基板60を組み付けた状態の背面図である。図6(b)は、図6(a)のA-A線に沿う断面図である。
【0045】
主基板60には複数の部品が実装されている。そのため主基板60は、伝熱プレート50に対し、回路部品の配線に影響が少なくコネクタへのフレキシブル基板の経路の邪魔にならない位置である4角(上下左右の4つの端部)付近でビス63a、63b、63c、63dによって固定される。
【0046】
ベース部材30のビス穴33a、33b、33c、33d(第1の接続部)が、主基板60の上下左右の4つの端部に対応する位置に位置することで、主基板60の熱が四方に拡散しやすい。
【0047】
主基板60に実装されたコネクタ67a、67b(図2)には、センサ基板610から延出するフレキシブル基板650、フレキシブル基板660が接続される。主基板60に実装されたコネクタ67c(図2)には、振れ補正機構100から延出するフレキシブル基板670が接続される。その他の接続部や素子の図示は省略または簡略化されている。
【0048】
図6(b)に示すように、光軸方向(Z軸方向)において、主基板60とベース部材30との間に伝熱プレート50が配置される。上述のように、ビス63a、63b、63c、63dによって、主基板60、伝熱プレート50およびベース部材30が共締め状態で固定される。主基板60を固定するために、穴62a、62b、62c、62dは互いに同一平面に設けられると共に、穴52a、52b、52c、52dは互いに同一平面に設けられている。穴52eを介してビス穴33eにビスが螺合されることで、伝熱プレート50がベース部材30に対して固定される。
【0049】
伝熱プレート50に貼り付けられた熱伝導ゴム80は、主基板60と伝熱プレート50とに挟み込まれた形態となる。熱伝導ゴム80は、主基板60と伝熱プレート50とを熱的に結合する熱結合部である。熱伝導ゴム80の貼り付け位置は主基板60上のCPU64と投影上重なる。これにより、CPU64での発生熱が伝熱プレート50へ効率よく伝達される。なお、この観点からは、光軸方向から見て、熱伝導ゴム80の少なくとも一部とCPU64の少なくとも一部とが重なっていてもよい。
【0050】
ベース部材30において、貫通孔34a(第3の接続部)および貫通孔34bは、上カバー110を固定するために設けられている。ベース部材30と上カバー110とにビス座が設けられている。貫通孔34a、34bを介して、ビスによりベース部材30が上カバー110に締結される。従って、貫通孔34a、34bの2箇所でベース部材30が上カバー110に対して固定されている。この観点で、ベース部材30は、外装部材としての上カバー110が組み付けられるシャーシである。
【0051】
装置内部における主な熱源は、主基板60に実装されたCPU64である。CPU64で発生した熱を、伝熱プレート50に伝えて拡散しつつ、放熱経路上で比較的遠くにある上カバー110へ効率よく伝えたい。そのため、本実施の形態では、熱伝導ゴム80及び伝熱プレート50を使用することで、CPU64から上カバー110への伝熱経路を形成している。熱伝導率については、ベース部材30よりも伝熱プレート50の方が高いため、ベース部材30を延長するよりも、伝熱プレート50を延長することで熱を効率よく伝える構成としている。
【0052】
主な伝熱経路は次のように形成される。まず、CPU64で発生した熱は主基板60を伝わり、ビス63a等、主基板60の穴62a等、伝熱プレート50の穴52a等、およびベース部材30のビス穴33a等(第1の接続部)を介して、ベース部材30へ伝わる。これが第1の伝熱経路である。また、CPU64で発生した熱は主基板60から熱伝導ゴム80を介して伝熱プレート50へ大量に伝わり拡散される。さらに、熱伝導ゴム80から伝熱プレート50に伝わった熱は、腕部51eの穴52e、ベース部材30のビス穴33e(第2の接続部)を介してベース部材30に伝わる(第2の伝熱経路)。なお、熱伝導ゴム80から伝熱プレート50に伝わり拡散した熱は、第1の接続部を介してもベース部材30へ伝わる(第3の伝熱経路)。ベース部材30からは、貫通孔34a(第3の接続部)を介して上カバー110へ熱が伝わる(第4の伝熱経路)。上カバー110は金属製であり、体積も比較的大きいため、熱容量も大きく拡散性も良く、ベース部材30から効率よく吸熱することができる。
【0053】
図6(a)に示すように、穴52eは、左右方向(X軸方向)における撮像装置1の中央付近の上寄りの位置に設けられている。従って、穴52eに対応するビス穴33e(第2の接続部)は、左右方向における、主基板60の穴62aと穴62bとの間、つまりビス穴33a、33bの間(中間付近)の領域に設けられている。また、貫通孔34a(第3の接続部)も同様に、左右方向における、主基板60の穴62aと穴62bとの間、つまりビス穴33a、33bの間に設けられている。これにより、主基板60の熱が、腕部51eを経由して、ベース部材30から上カバー110へと伝わりやすい。
【0054】
さらに、左右方向において、ビス穴33e(第2の接続部)および貫通孔34a(第3の接続部)の位置は共に、熱伝導ゴム80の位置と重なる。これにより、熱伝導ゴム80と腕部51eとを経由した、CPU64→熱伝導ゴム80→伝熱プレート50の腕部51e→ベース部材30→上カバー110という伝熱経路(第2、第4の伝熱経路を含む)を短くすることができる。
【0055】
光軸C0に直交する方向(X-Y方向)において、ビス穴33eとCPU64との距離、および、貫通孔34aとCPU64との距離はいずれも、ビス穴33a、33b、33c、33dとCPU64との距離のうち最も短い距離よりも短い。これらにより、第2、第4の伝熱経路を短くすることができる。
【0056】
光軸C0に直交する方向(X-Y方向)において、貫通孔34aは穴52eの近傍に位置する。特に、X-Y方向において、ビス穴33eと貫通孔34aとの距離は、ビス穴33a、33b、33c、33dとビス穴33eとの距離のうち最も短い距離よりも短い。なおかつ、ビス穴33eと貫通孔34aとの距離は、ビス穴33a、33b、33c、33dと貫通孔34aとの距離のうち最も短い距離よりも短い。これらにより、第4の伝熱経路を短くすることができる。
【0057】
このように、光軸C0に直交する方向に関する距離の関係から、第1の接続部を経由した伝熱効率と比較して、第2、第3の接続部を経由した伝熱効率を相対的に高めやすくすることができる。
【0058】
ところで、伝熱プレート50の4角に設けた腕部51a、51b、51c、51dの断面積を適宜設計することで、第1の接続部までの伝熱量の調整が容易である。また、腕部51eの断面積を適宜設計することで、第2の接続部までの伝熱量の調整が容易である。例えば、腕部51a、51b、51c、51dに対して腕部51eの断面積を大きくすることで、上カバー110への伝熱量を増加させることができ、腕部51eの断面積を小さくすることで上カバー110への伝熱量を抑えることができる。
【0059】
本実施の形態によれば、ベース部材30よりも熱伝導率の高い伝熱プレート50が、光軸方向において主基板60とベース部材30との間に配置される。ベース部材30は、左右方向における互いに異なる少なくとも2つの位置(33a、33b)で、主基板60と伝熱プレート50とを重ねて支持する第1の接続部(33a~d)を有する。ベース部材30において、第2の接続部(33e)、第3の接続部(34a)はいずれも、左右方向における、第1の接続部におけるビス穴33a、33bの間に設けられている。これにより、主基板60の熱を効率よく分散させることができる。
【0060】
また、光軸方向から見て、熱伝導ゴム80の少なくとも一部とCPU64の少なくとも一部とが重なるので、CPU64での発生熱の伝熱プレート50への伝熱効率を高めることができる。
【0061】
また、左右方向において、ビス穴33eおよび貫通孔34aの位置は共に、熱伝導ゴム80の位置と重なる。これにより、熱伝導ゴム80および第2、第3の接続部を経由した伝熱経路を短くすることができる。
【0062】
また、光軸C0に直交する方向において、ビス穴33eとCPU64との距離、および、貫通孔34aとCPU64との距離はいずれも、ビス穴33a、33b、33c、33dとCPU64との距離のうち最も短い距離よりも短い。また、光軸C0に直交する方向において、ビス穴33eと貫通孔34aとの距離は、ビス穴33a、33b、33c、33dとビス穴33eとの距離のうち最も短い距離よりも短い。なおかつ、ビス穴33eと貫通孔34aとの距離は、ビス穴33a、33b、33c、33dと貫通孔34aとの距離のうち最も短い距離よりも短い。これらにより、第2、第3の接続部を経由した伝熱効率を相対的に高めやすくなる。
【0063】
また、ベース部材30のビス穴33a、33b、33c、33dが、主基板60の上下左右の4つの端部に対応する位置に位置することで、主基板60の熱を効率よく四方に拡散させやすい。
【0064】
なお、伝熱プレート50は、その本体部と腕部51eとが一体に形成された。しかし、本体部と腕部51eとを別部材で構成し、本体部に腕部51eを固定してもよい。その場合、腕部51eの熱伝導率をベース部材30よりも高くすればよい。例えば、腕部51eを、グラファイトシートなどのシート部材で構成し、伝熱プレート50の本体部とベース部材30とを接続してもよい。
【0065】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0066】
30 ベース部材
33a、33b、33c、33d ビス穴
33e ビス穴
34a 貫通孔
50 伝熱プレート
60 主基板
64 CPU
110 上カバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6