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特許7414636ガス吸着剤、該ガス吸着剤の製造方法およびガス吸着方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】ガス吸着剤、該ガス吸着剤の製造方法およびガス吸着方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/22 20060101AFI20240109BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20240109BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20240109BHJP
   A61L 9/014 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
B01J20/22 A
B01J20/28 Z
A61L9/01 B
A61L9/01 K
A61L9/014
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020082860
(22)【出願日】2020-05-08
(65)【公開番号】P2021176619
(43)【公開日】2021-11-11
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】722010585
【氏名又は名称】セトラスホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 大介
(72)【発明者】
【氏名】高畑 晴美
(72)【発明者】
【氏名】ド ティ フォン
【審査官】高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/046611(WO,A1)
【文献】特開2000-107274(JP,A)
【文献】特開2001-079075(JP,A)
【文献】特開2009-082786(JP,A)
【文献】特開2000-176277(JP,A)
【文献】特開2004-196574(JP,A)
【文献】特開2001-25660(JP,A)
【文献】特開2001-120649(JP,A)
【文献】特開2007-204892(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00 - 20/28
20/30 - 20/34
A61L 9/00 - 9/22
C01B 33/00 - 33/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ケイ酸塩を含む多孔質体から構成され、該多孔質体に担持されたアミノ基を有し、
1gに含まれる前記アミノ基量が3mmol以下であり、
SiO の含有量が35重量%以上75重量%以下であり、
BET比表面積が200m /g以上であり、メソ細孔容積が0.35cm /g以上である、
ガス吸着剤。
【請求項2】
前記多孔質体がアモルファスの金属ケイ酸塩を含む、請求項1に記載のガス吸着剤。
【請求項3】
前記金属ケイ酸塩がケイ酸マグネシウムを含む、請求項1または2に記載のガス吸着剤。
【請求項4】
1gに含まれる前記アミノ基量が0.1mmol以上である、請求項1からのいずれかに記載のガス吸着剤。
【請求項5】
1gに含まれる前記アミノ基量が2mmol以下である、請求項1からのいずれかに記載のガス吸着剤。
【請求項6】
全細孔容積が0.4cm/g以上である、請求項1からのいずれかに記載のガス吸着剤。
【請求項7】
全細孔容積に対するメソ細孔容積の比(メソ細孔容積/全細孔容積)が0.75以上である、請求項1からのいずれかに記載のガス吸着剤。
【請求項8】
BJH法による細孔分布において、細孔径が10nm以下の範囲内に少なくも1つのピークを有する、請求項1からのいずれかに記載のガス吸着剤。
【請求項9】
前記金属ケイ酸塩を含む多孔質体の前駆体とアミノ基含有化合物との反応物を含む第1の液を得ること、および、
前記第1の液を乾燥すること、を含む、
請求項1からのいずれかに記載のガス吸着剤の製造方法。
【請求項10】
前記第1の液をスプレー乾燥法にて乾燥する、請求項に記載の製造方法。
【請求項11】
請求項1からのいずれかに記載のガス吸着剤にガスを接触させることを含む、
ガス吸着方法。
【請求項12】
請求項1からのいずれかに記載のガス吸着剤を含む、消臭製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス吸着剤、該ガス吸着剤の製造方法およびガス吸着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
悪臭ガスや大気汚染の原因となるガスは、公害や健康被害を引き起こすため、悪臭防止法、大気汚染防止法、建築基準法等により規制されている。例えば、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド等のアルデヒド系ガスは、シックハウス症候群の原因とされていることから、その除去が強く求められている。これに対し、例えば、特許文献1では、アルデヒド系ガスの吸着剤として、シリカ多孔質体の細孔内にアミノ基及び/又はイミノ基を有する化合物を担持させることが提案されている。
【0003】
しかし、上記吸着剤では、アルデヒド系ガス以外の悪臭ガスに対する吸着能が十分でない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-82786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、各種ガスに対して優れた吸着能を示し得るガス吸着剤の提供を目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの局面によれば、ガス吸着剤が提供される。このガス吸着剤は、金属ケイ酸塩を含む多孔質体から構成され、この多孔質体に担持されたアミノ基を有し、1gに含まれる上記アミノ基量は3mmol以下である。
1つの実施形態においては、上記ガス吸着剤のSiOの含有量は75重量%以下である。
1つの実施形態においては、上記ガス吸着剤のSiOの含有量は35重量%以上である。
1つの実施形態においては、上記多孔質体はアモルファスの金属ケイ酸塩を含む。
1つの実施形態においては、上記金属ケイ酸塩はケイ酸マグネシウムを含む。
1つの実施形態においては、上記ガス吸着剤1gに含まれる上記アミノ基量は0.1mmol以上である。
1つの実施形態においては、上記ガス吸着剤1gに含まれる上記アミノ基量は2mmol以下である。
1つの実施形態においては、上記ガス吸着剤のBET比表面積は200m/g以上である。
1つの実施形態においては、上記ガス吸着剤のメソ細孔容積は0.35cm/g以上である。
1つの実施形態においては、上記ガス吸着剤の全細孔容積は0.4cm/g以上である。
1つの実施形態においては、上記ガス吸着剤の全細孔容積に対するメソ細孔容積の比(メソ細孔容積/全細孔容積)は0.75以上である。
1つの実施形態においては、上記ガス吸着剤は、BJH法による細孔分布において、細孔径が10nm以下の範囲内に少なくも1つのピークを有する。
【0007】
本発明の別の局面によれば、上記ガス吸着剤の製造方法が提供される。この製造方法は、上記金属ケイ酸塩を含む多孔質体の前駆体とアミノ基含有化合物との反応物を含む第1の液を得ること、および、上記第1の液を乾燥すること、を含む。
1つの実施形態においては、上記第1の液をスプレー乾燥法にて乾燥する。
【0008】
本発明のさらに別の局面によれば、ガス吸着方法が提供される。このガス吸着方法は、上記ガス吸着剤にガスを接触させることを含む。
【0009】
本発明のさらに別の局面によれば、消臭製品が提供される。この消臭製品は、上記ガス吸着剤を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、金属ケイ酸塩を含む多孔質体にアミノ基を担持させることにより、各種ガスに対する優れた吸着能を具備させ得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】実施例3の電子顕微鏡観察写真(2000倍)である。
図1B】実施例3の細孔分布測定結果を示すグラフである。
図2】比較例3の電子顕微鏡観察写真(2000倍)である。
図3A】実施例4の電子顕微鏡観察写真(2000倍)である。
図3B】実施例4の細孔分布測定結果を示すグラフである。
図4】比較例4の電子顕微鏡観察写真(2000倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0013】
A.ガス吸着剤
本発明の1つの実施形態におけるガス吸着剤は、金属ケイ酸塩を含む多孔質体から構成され、この多孔質体に担持されたアミノ基を有する。具体的には、本発明の1つの実施形態におけるガス吸着剤は、金属ケイ酸塩を含む多孔質体を担体とし、この担体にアミノ基が担持されて構成される。
【0014】
上記ガス吸着剤のBET比表面積は、好ましくは200m/g以上であり、さらに好ましくは300m/g以上、特に好ましくは400m/g以上である。このようなBET比表面積であることにより、ガスの吸着サイトを十分に確保し、より高いガス吸着能を有し得る。一方、ガス吸着剤のBET比表面積は、例えば900m/g以下である。
【0015】
ガス吸着剤のメソ細孔容積は、好ましくは0.35cm/g以上であり、さらに好ましくは0.4cm/g以上である。このようなメソ細孔容積であることにより、ガスの吸着サイトを十分に確保し、より高いガス吸着能を有し得る。一方、ガス吸着剤のメソ細孔容積は、例えば1.5cm/g以下である。なお、メソ細孔容積は、BJH法による細孔分布解析により求められる、直径が1nmから100nmの細孔の細孔容積の積算値である。
【0016】
1つの実施形態においては、ガス吸着剤のメソ細孔容積は、好ましくは0.35cm/g以上、さらに好ましくは0.4cm/g以上、特に好ましくは0.6cm/g以上である。
【0017】
ガス吸着剤の全細孔容積は、好ましくは0.4cm/g以上であり、さらに好ましくは0.5cm/g以上である。このような全細孔容積であることにより、ガスの吸着サイトを十分に確保し、より高いガス吸着能を有し得る。一方、ガス吸着剤の全細孔容積は、例えば2.0cm/g以下である。なお、全細孔容積は、全ての細孔の総容積であり、ガス吸着法における最大相対圧での1点法による最大吸着量から求められる。
【0018】
1つの実施形態においては、ガス吸着剤の全細孔容積は、好ましくは0.4cm/g以上、さらに好ましくは0.5cm/g以上、特に好ましくは0.7cm/g以上である。
【0019】
上記全細孔容積に対する上記メソ細孔容積の比(メソ細孔容積/全細孔容積)は、好ましくは0.75以上、さらに好ましくは0.8以上、特に好ましくは0.9以上である。このような比であることにより、ガス吸着能(例えば、アルデヒド系ガスに対する)により優れ得る。具体的には、メソ細孔の存在がガス(例えば、アルデヒド系ガス)の吸着に大きく寄与し得る。
【0020】
ガス吸着剤は、BJH法による細孔分布において、細孔径が10nm以下の範囲内に少なくも1つのピークを有することが好ましい。このような細孔分布であることにより、ガス吸着能(例えば、アルデヒド系ガスに対する)により優れ得る。
【0021】
ガス吸着剤は、任意の適切な形態とされ得る。1つの実施形態においては、取扱性の観点から、ガス吸着剤は粒状(粉体)とされる。この場合、ガス吸着剤の安息角は、好ましくは25°~40°であり、さらに好ましくは27°~37°である。
【0022】
ガス吸着剤のSiOの含有量は、例えば75重量%以下であり、好ましくは70重量%以下である。一方、SiOの含有量は、好ましくは35重量%以上であり、さらに好ましくは40重量%以上、特に好ましくは50重量%以上である。このようなSiOの含有量によれば、各種ガスに対する吸着能により優れ得る。例えば、後述の金属塩とSiOとのバランスに優れ(具体的には、金属塩とSiOとの含有比がいずれかに大きく偏ることなく)、各種ガスに対する吸着能により優れ得る。
【0023】
1つの実施形態においては、SiOの含有量を調整することにより、各種ガスに対する吸着能が制御される。具体的には、吸着させたいガスの種類に応じて、SiOの含有量を調整する。
【0024】
A-1.多孔質体
上記多孔質体は、金属ケイ酸塩で形成される。多孔質体の金属ケイ酸塩の含有量は、例えば93重量%以上であり、好ましくは95重量%以上、さらに好ましくは97重量%以上である。このような含有量によれば、上記ガス吸着剤に組み合わせる成分、上記ガス吸着剤を用いて得られる各種製品(例えば、消臭製品)等への悪影響を抑制し得る。具体的には、ガス吸着剤に含まれる不純物(例えば、アルカリ塩類)の溶出が抑制される。その結果、不純物の溶出により、ガス吸着剤に組み合わせる成分、ガス吸着剤を用いて得られる各種製品等の物性が悪化するのを抑制し得る。
【0025】
上記金属ケイ酸塩は、ケイ酸(SiO)の金属塩である。金属ケイ酸塩としては、例えば、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸亜鉛、ケイ酸カルシウム、ケイ酸銅、ケイ酸鉄およびこれらの複合体が挙げられる。これらは、単独で、または、2種以上を組み合わせて用い得る。これらの中でも、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムおよびケイ酸亜鉛からなる群から選択される少なくとも1つが好ましく用いられ、さらに好ましくはケイ酸マグネシウムが用いられる。例えば、取扱性に優れ、容易に入手し得るからである。
【0026】
1つの実施形態においては、上記金属塩とSiOとの含有比(例えば、モル比)を調整することにより、各種ガスに対する吸着能が制御される。具体的には、吸着させたいガスの種類に応じて、金属塩とSiOとの含有比を調整する。
【0027】
上記金属ケイ酸塩は、例えば、下記一般式(I)で表すことができる。
x(M)・y(SiO)・z(HO)・・・(I)
(式(I)中、Mは金属、y/xは0.5以上14以下であり、n/mは1.0または1.5であり、zは0以上5.0以下である。)
【0028】
上記一般式(I)において、Mは、2価または3価の金属を示す。好ましくは、Mは、Mg、Al、Zn、Ca、CuおよびFeからなる群からから選択される1種または2種以上の組み合わせを示す。Mは、Mg、AlおよびZnからなる群から選択される1種または2種以上の組み合わせを示すことが好ましく、さらに好ましくはMgを示す。
【0029】
上記一般式(I)において、y/xは、好ましくは1.0以上、より好ましくは2.0以上、さらに好ましくは3.0以上である。一方、y/xは、好ましくは13以下、さらに好ましくは7.5以下である。
【0030】
上記一般式(I)において、zは、好ましくは0.5以上、さらに好ましくは1.0以上である。一方、zは、好ましくは4.0以下、さらに好ましくは3.5以下である。
【0031】
上記多孔質体は、好ましくは、アモルファスの金属ケイ酸塩で形成される。このような形態を採用することにより、例えば、上述の比表面積、細孔容積(特に、メソ細孔容積)、細孔分布を良好に満足させ得る。具体的には、アモルファスの金属ケイ酸塩によれば、一次粒子を非常に小さくすることができる。また、アモルファスの金属ケイ酸塩は、結晶性の金属ケイ酸塩がミクロ細孔を多く有する傾向にあるのに対し、メソ細孔を多く有する傾向にある。ここで、「メソ細孔」は、直径が1nmから100nmの細孔をいう。また、アモルファスであることの確認は、例えば、X線回折装置による測定(XRD測定)により行うことができる。
【0032】
A-2.アミノ基
上述のとおり、ガス吸着剤は、上記多孔質体に担持されたアミノ基を有する。アミノ基を有することにより、例えば、アルデヒド系ガスに対する吸着能に優れ得る。具体的には、アルデヒド系ガスはアミノ基と反応して化学吸着され、物理吸着の場合に生じる不具合(例えば、吸着したガスが、温度、圧力等の条件により経時的にガス吸着剤から脱離する)が抑制され得る。なお、物理吸着としては、代表的には、ファンデルワールス力による吸着が挙げられる。
【0033】
ガス吸着剤1gに含まれるアミノ基量は、例えば、多孔質体に含まれる金属ケイ酸塩に応じて、適宜、調整され得る。ガス吸着剤1gに含まれるアミノ基量は、例えば0.1mmol以上、好ましくは0.4mmol以上、さらに好ましくは0.8mmol以上である。一方、ガス吸着剤1gに含まれるアミノ基量は、3mmol以下、好ましくは2.5mmol以下、さらに好ましくは2mmol以下、特に好ましくは1.5mmol以下である。このようなアミノ基量であることにより、例えば、上述の比表面積、細孔容積を良好に満足させ得る。なお、アミノ基の担持量は、ケルダール法を用いて測定することができる。
【0034】
1つの実施形態においては、ガス吸着剤1gに含まれるアミノ基量は、2.5mmol以下、好ましくは2mmol以下である。
【0035】
アミノ基量を調整することにより、各種ガスに対する吸着能が制御され得る。1つの実施形態においては、アミノ基量を抑えて、担体である多孔質体(例えば、塩基性物質および/または酸性物質)が吸着するガス(例えば、酸性ガスおよび/または塩基性ガス)の量を増加させる。
【0036】
代表的には、上記アミノ基は、アミノ基含有化合物を用いて上記多孔質体に担持される。アミノ基含有化合物としては、任意の適切な化合物が用いられ得る。1つの実施形態においては、アミノ基含有化合物として、アミノ基含有珪素化合物が用いられる。
【0037】
上記アミノ基含有珪素化合物としては、アミノ基、および、上記多孔質体表面の官能基(代表的には、水酸基)に結合し得る官能基を有する化合物(例えば、シランカップリング剤)が好ましく用いられる。このような化合物の具体例としては、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。これらは、単独で、または、2種以上を組み合わせて用い得る。これらの中でも、例えば、コスト面から、3-アミノプロピルトリエトキシシランが好ましく用いられる。
【0038】
A-3.製造方法
上記ガス吸着剤の製造方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。1つの実施形態においては、上記ガス吸着剤の製造方法は、上記金属ケイ酸塩を含む多孔質体の前駆体と上記アミノ基含有化合物との反応物を含む第1の液を得ること、および、第1の液を乾燥することを含む。
【0039】
上記金属ケイ酸塩を含む多孔質体の前駆体は、任意の適切な方法により作製され得る。例えば、金属ケイ酸塩を含む多孔質体の前駆体は、金属塩の水溶液とケイ酸アルカリ水溶液とを用いて得られた共沈物である。金属塩としては、好ましくは、硫酸塩、硝酸塩、塩化物等の可溶性金属塩が用いられる。ケイ酸アルカリ水溶液としては、例えば、オルトケイ酸ナトリウム水溶液、メタケイ酸ナトリウム水溶液、ケイ酸ナトリウム水溶液、ケイ酸カリウム水溶液、水ガラスが挙げられる。
【0040】
上記共沈物を得る際(共沈反応の際)、共沈用液を用いてもよい。具体的には、共沈用液(代表的には、水)に、上記金属塩の水溶液と上記ケイ酸アルカリ水溶液を添加して共沈物を得る。共沈用液を用いない場合は、金属塩の水溶液とケイ酸アルカリ水溶液のいずれか一方に、他方の水溶液を添加して共沈物を得る。なお、水溶液の添加の際には、添加される液は攪拌されていることが好ましい。
【0041】
代表的には、上記共沈反応の際、pH値が調整される。共沈反応の際のpH値は、例えば、用いる金属塩の種類に応じて調整される。具体的には、金属塩がマグネシウムを含む場合、9.0~12.0の範囲内に調整される。金属塩がアルミニウムを含む場合、3.0~5.0の範囲内に調整される。金属塩が亜鉛を含む場合、5.5~7.5の範囲内に調整される。
【0042】
1つの実施形態においては、上記共沈物に、適宜、脱水、洗浄等の処理を施し、共沈物を分散媒(代表的には、水)に分散させて分散体(懸濁液)とする。分散体は、さらに、加熱処理が施されてもよい。
【0043】
上記分散媒としては、代表的には、水が用いられる。また、上記分散体の加熱温度は、好ましくは60℃~200℃、さらに好ましくは80℃~170℃である。加熱時間としては、例えば2時間~20時間である。
【0044】
上記第1の液の調製に際し、上記アミノ基含有化合物は、予め、溶液または分散液の状態にされていることが好ましい。例えば、上記分散体と、アミノ基含有化合物の溶液または分散液とを混合し、上記金属ケイ酸塩を含む多孔質体の前駆体とアミノ基含有化合物とを反応させることにより、第1の液を得る。
【0045】
上記第1の液の乾燥方法としては、任意の適切な乾燥方法が採用され得る。好ましくは、スプレー乾燥法が採用される。スプレー乾燥法を採用することにより、例えば、取扱性に優れた乾燥物(ガス吸着剤)を得ることができる。例えば、安息角の低い乾燥物を得ることができる。
【0046】
第1の液の乾燥温度としては、例えば100℃~140℃である。
【0047】
第1の液を乾燥することにより、金属ケイ酸塩を含む多孔質体にアミノ基(アミノ基含有化合物)が担持され得る。このような手法によれば、第1の液に含有させた実質的に全てのアミノ基(アミノ基含有化合物)が、金属ケイ酸塩を含む多孔質体に担持され得る。したがって、第1の液のアミノ基含有化合物の含有量を調整することにより、所望の担持量を有するガス吸着剤を得ることができる。
【0048】
A-4.使用方法
本発明の1つの実施形態におけるガス吸着方法は、上記ガス吸着剤を用いる。具体的には、上記ガス吸着剤にガスを接触させることを含む。ガスの接触は、代表的には、上記ガス吸着剤を、フィルター、シート状の製品、塗料、繊維、樹脂成形品等に含有させた状態で行われる。
【0049】
上記接触させるガスは、各種悪臭ガスを含み得る。悪臭ガスとしては、例えば、アルデヒド系ガス(例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド)等の中性悪臭ガス;酢酸、硫化水素、メルカプタン類等の酸性悪臭ガス;アンモニア、アミン類(例えば、トリメチルアミン)等の塩基性悪臭ガスが挙げられる。
【0050】
上記ガス吸着剤によれば、各種ガスに対する優れた吸着能を示し得る。具体的には、上記アルデヒド系ガスに加えて、酸性悪臭ガスおよび/または塩基性悪臭ガスに対して優れた吸着能を示し得る。
【0051】
上記ガス吸着剤によれば、例えば、上述の金属ケイ酸塩の組成、アミノ基量、比表面積、細孔等の各種特性等を調整することにより、各種ガスに対する吸着能を制御し得る。具体的には、アルデヒド系ガスに対する吸着能と、酸性ガスおよび/または塩基性ガスに対する吸着能とを制御し得る。なお、比表面積および細孔は、例えば、金属ケイ酸塩の製造方法によって制御され得る。
【0052】
上記ガス吸着剤によれば、例えば、構成の異なる吸着剤を2種以上混合して各種ガスを吸着させる場合に比べて、吸着特性および品質面における均一性に優れ得る。
【実施例
【0053】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0054】
[実施例1-1]
反応容器中でイオン交換水を攪拌しつつ、ここに、硫酸マグネシウム水溶液(1.36mol/L)と3号水ガラス水溶液(NaO:0.55mol/L、SiO:1.73mol/L)とを同時に注加し、共沈反応させた。共沈反応時の温度は30℃であり、pHは10.4であった。
得られた共沈物を、脱水・水洗した後、イオン交換水に再懸濁させ、得られた懸濁液を90℃にて2時間加熱しながら撹拌した。
【0055】
上記加熱攪拌後の懸濁液(固形分濃度:292g/L)1Lを室温で撹拌しながら、これに、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業株式会社製、「KBE-903」)の5wt%水溶液を650mL注加した。
次いで、懸濁液をスプレー乾燥して、非晶質の含水ケイ酸マグネシウム化合物(モル比(SiO/MgO):3.69)を含む乾燥物を得た。
【0056】
[実施例1-2]
反応容器中でイオン交換水を攪拌しつつ、ここに、硫酸マグネシウム水溶液(1.36mol/L)と3号水ガラス水溶液(NaO:0.55mol/L、SiO:1.73mol/L)とを同時に注加し、共沈反応させた。共沈反応時の温度は30℃であり、pHは10.4であった。
得られた共沈物を、脱水・水洗した後、イオン交換水に再懸濁させ、得られた懸濁液を90℃にて2時間加熱しながら撹拌した。
【0057】
上記加熱攪拌後の懸濁液(固形分濃度:292g/L)700mLを室温で撹拌しながら、これに、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業株式会社製、「KBE-903」)の5wt%水溶液を1.02L注加した。
次いで、懸濁液をスプレー乾燥して、非晶質の含水ケイ酸マグネシウム化合物(モル比(SiO/MgO):3.81)を含む乾燥物を得た。
【0058】
[比較例1]
反応容器中でイオン交換水を攪拌しつつ、ここに、硫酸マグネシウム水溶液(1.36mol/L)と3号水ガラス水溶液(NaO:0.55mol/L、SiO:1.73mol/L)とを同時に注加し、共沈反応させた。共沈反応時の温度は30℃であり、pHは10.4であった。
得られた共沈物を、脱水・水洗した後、イオン交換水に再懸濁させ、得られた懸濁液を90℃にて2時間加熱しながら撹拌した。
その後、懸濁液を脱水・水洗した後、熱風乾燥器で15時間乾燥して、非晶質の含水ケイ酸マグネシウム化合物(モル比(SiO/MgO):3.58)を含む乾燥物を得た。
【0059】
[実施例2-1]
反応容器中でイオン交換水を攪拌しつつ、ここに、硫酸マグネシウム水溶液(1.36mol/L)と3号水ガラス水溶液(NaO:0.55mol/L、SiO:1.73mol/L)とを同時に注加し、共沈反応させた。共沈反応時の温度は30℃であり、pHは10.3であった。
得られた共沈物を、脱水・水洗した後、イオン交換水に再懸濁させ、得られた懸濁液を90℃にて2時間加熱しながら撹拌した。
【0060】
上記加熱攪拌後の懸濁液(固形分濃度:293g/L)1Lを室温で撹拌しながら、これに、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、「KBM-603」)の5wt%水溶液を650mL注加した。
次いで、懸濁液をスプレー乾燥して、非晶質の含水ケイ酸マグネシウム化合物(モル比(SiO/MgO):3.59)を含む乾燥物を得た。
【0061】
[実施例2-2]
反応容器中でイオン交換水を攪拌しつつ、ここに、硫酸マグネシウム水溶液(1.36mol/L)と3号水ガラス水溶液(NaO:0.55mol/L、SiO:1.73mol/L)とを同時に注加し、共沈反応させた。共沈反応時の温度は30℃であり、pHは10.3であった。
得られた共沈物を、脱水・水洗した後、イオン交換水に再懸濁させ、得られた懸濁液を90℃にて2時間加熱しながら撹拌した。
【0062】
上記加熱攪拌後の懸濁液(固形分濃度:293g/L)700mLを室温で撹拌しながら、これに、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、「KBM-603」)の5wt%水溶液を1.03L注加した。
次いで、懸濁液をスプレー乾燥して、非晶質の含水ケイ酸マグネシウム化合物(モル比(SiO/MgO):3.87)を含む乾燥物を得た。
【0063】
[比較例2-1]
反応容器中でイオン交換水を攪拌しつつ、ここに、硫酸マグネシウム水溶液(1.36mol/L)と3号水ガラス水溶液(NaO:0.55mol/L、SiO:1.73mol/L)とを同時に注加し、共沈反応させた。共沈反応時の温度は30℃であり、pHは10.3であった。
得られた共沈物を、脱水・水洗した後、イオン交換水に再懸濁させ、得られた懸濁液を90℃にて2時間加熱しながら撹拌した。
その後、懸濁液を脱水・水洗した後、熱風乾燥器で15時間乾燥して、非晶質の含水ケイ酸マグネシウム化合物(モル比(SiO/MgO):3.64)を含む乾燥物を得た。
【0064】
[比較例2-2]
反応容器中でイオン交換水を攪拌しつつ、ここに、硫酸マグネシウム水溶液(1.36mol/L)と3号水ガラス水溶液(NaO:0.55mol/L、SiO:1.73mol/L)とを同時に注加し、共沈反応させた。共沈反応時の温度は30℃であり、pHは10.3であった。
得られた共沈物を、脱水・水洗した後、イオン交換水に再懸濁させ、得られた懸濁液を90℃にて2時間加熱しながら撹拌した。
【0065】
上記加熱攪拌後の懸濁液(固形分濃度:293g/L)350mLを室温で撹拌しながら、これに、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、「KBM-603」)の5wt%水溶液を1.37L注加した。
次いで、懸濁液をスプレー乾燥して、非晶質の含水ケイ酸マグネシウム化合物(モル比(SiO/MgO):3.77)を含む乾燥物を得た。
【0066】
[実施例3]
反応容器中でイオン交換水を攪拌しつつ、ここに、硫酸マグネシウム水溶液(1.36mol/L)と3号水ガラス水溶液(NaO:0.55mol/L、SiO:1.73mol/L)とを同時に注加し、共沈反応させた。共沈反応時の温度は30℃であり、pHは10.5であった。
得られた共沈物を、脱水・水洗した後、イオン交換水に再懸濁させ、得られた懸濁液を120℃にて15時間加熱しながら撹拌した。
【0067】
上記加熱攪拌後の懸濁液(固形分濃度:313g/L)500mLを室温で撹拌しながら、これに、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業株式会社製、「KBE-903」)の5wt%水溶液を780mL注加した。
次いで、懸濁液をスプレー乾燥して、非晶質の含水ケイ酸マグネシウム化合物(モル比(SiO/MgO):3.95)を含む乾燥物を得た。
【0068】
[比較例3]
反応容器中でイオン交換水を攪拌しつつ、ここに、硫酸マグネシウム水溶液(1.36mol/L)と3号水ガラス水溶液(NaO:0.55mol/L、SiO:1.73mol/L)とを同時に注加し、共沈反応させた。共沈反応時の温度は30℃であり、pHは10.5であった。
得られた共沈物を、脱水・水洗した後、イオン交換水に再懸濁させ、得られた懸濁液を120℃にて15時間加熱しながら撹拌した。
その後、懸濁液を脱水・水洗した後、熱風乾燥器で15時間乾燥して、非晶質の含水ケイ酸マグネシウム化合物(モル比(SiO/MgO):3.61)を含む乾燥物を得た。
【0069】
[実施例4]
反応容器中でイオン交換水を攪拌しつつ、ここに、硫酸マグネシウム水溶液(0.45mol/L)とケイ酸ソーダ水溶液(NaO:0.6mol/L、SiO:0.95mol/L)とを同時に注加し、共沈反応させた。共沈反応時の温度は30℃であり、pHは11.2であった。
得られた共沈物を、脱水・水洗した後、イオン交換水に再懸濁させ、得られた懸濁液を180℃にて15時間加熱しながら撹拌した。
【0070】
上記加熱攪拌後の懸濁液(固形分濃度:148g/L)700mLを室温で撹拌しながら、これに、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業株式会社製、「KBE-903」)の5wt%水溶液を520mL注加した。
次いで、懸濁液をスプレー乾燥して、非晶質の含水ケイ酸マグネシウム化合物(モル比(SiO/MgO):2.11)を含む乾燥物を得た。
【0071】
[比較例4]
反応容器中でイオン交換水を攪拌しつつ、ここに、硫酸マグネシウム水溶液(0.45mol/L)とケイ酸ソーダ水溶液(NaO:0.6mol/L、SiO:0.95mol/L)とを同時に注加し、共沈反応させた。共沈反応時の温度は30℃であり、pHは11.2であった。
得られた共沈物を、脱水・水洗した後、イオン交換水に再懸濁させ、得られた懸濁液を180℃にて15時間加熱しながら撹拌した。
その後、懸濁液を脱水・水洗した後、熱風乾燥器で15時間乾燥して、非晶質の含水ケイ酸マグネシウム化合物(モル比(SiO/MgO):1.83)を含む乾燥物を得た。
【0072】
[実施例5]
反応容器中でイオン交換水を攪拌しつつ、ここに、硫酸マグネシウム水溶液(0.79mol/L)630mLと硫酸(1.86mol/L)242mLとの混合液と、3号水ガラス水溶液(NaO:0.57mol/L、SiO:1.8mol/L)1.744Lとを同時に注加し、共沈反応させた。共沈反応時の温度は30℃であり、pHは9.7であった。
得られた共沈物を、脱水・水洗した後、イオン交換水に再懸濁させ、得られた懸濁液を90℃にて2時間加熱しながら撹拌した。
【0073】
上記加熱攪拌後の懸濁液(固形分濃度:132g/L)500mLを室温で撹拌しながら、これに、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業株式会社製、「KBE-903」)の5wt%水溶液を330mL注加した。
次いで、懸濁液をスプレー乾燥して、非晶質の含水ケイ酸マグネシウム化合物(モル比(SiO/MgO):7.79)を含む乾燥物を得た。
【0074】
[実施例6]
反応容器中でイオン交換水を攪拌しつつ、ここに、硫酸マグネシウム水溶液(2.18mol/L)1.377Lとオルトケイ酸ソーダ水溶液(NaO:2mol/L、SiO:1mol/L)1.5Lとを同時に注加し、共沈反応させた。共沈反応時の温度は30℃であり、pHは10.6であった。
得られた共沈物を、脱水・水洗した後、イオン交換水に再懸濁させ、得られた懸濁液を90℃にて2時間加熱しながら撹拌した。
【0075】
上記加熱攪拌後の懸濁液(固形分濃度:156g/L)500mLを室温で撹拌しながら、これに、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業株式会社製、「KBE-903」)の5wt%水溶液を390mL注加した。
次いで、懸濁液をスプレー乾燥して、非晶質の含水ケイ酸マグネシウム化合物(モル比(SiO/MgO):0.65)を含む乾燥物を得た。
【0076】
[比較例5]
シリカゲル(富士フイルム和光純薬株式会社製、「ワコーゲルC-500HG」、5~20μm破砕状)100gをイオン交換水500mLに懸濁させて懸濁液を得た。
得られた懸濁液を室温で撹拌しながら、これに、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業株式会社製、「KBE-903」)の5wt%水溶液を500mL注加した。
次いで、懸濁液をスプレー乾燥して、非晶質の含水ケイ酸化合物を含む乾燥物を得た。
【0077】
[実施例A-1]
反応容器中でイオン交換水を攪拌しつつ、ここに、硫酸アルミニウム水溶液(0.16mol/L)と3号水ガラス水溶液(NaO:0.8mol/L、SiO:2.53mol/L)とを同時に注加し、共沈反応させた。共沈反応時の温度は30℃であり、pHは4であった。
得られた共沈物を、脱水・水洗した後、イオン交換水に再懸濁させ、得られた懸濁液を95℃にて4時間加熱しながら撹拌した。
【0078】
上記加熱攪拌後の懸濁液(固形分濃度:113g/L)1Lを室温で撹拌しながら、これに、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業株式会社製、「KBE-903」)の5wt%水溶液を1.22L注加した。
次いで、懸濁液をスプレー乾燥して、非晶質の含水ケイ酸アルミニウム化合物(モル比(SiO/Al):12.7)を含む乾燥物を得た。
【0079】
[実施例A-2]
反応容器中でイオン交換水を攪拌しつつ、ここに、硫酸アルミニウム水溶液(0.16mol/L)と3号水ガラス水溶液(NaO:0.8mol/L、SiO:2.53mol/L)とを同時に注加し、共沈反応させた。共沈反応時の温度は30℃であり、pHは4であった。
得られた共沈物を、脱水・水洗した後、イオン交換水に再懸濁させ、得られた懸濁液を95℃にて4時間加熱しながら撹拌した。
【0080】
上記加熱攪拌後の懸濁液(固形分濃度:113g/L)700mLを室温で撹拌しながら、これに、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業株式会社製、「KBE-903」)の5wt%水溶液を1.58L注加した。
次いで、懸濁液をスプレー乾燥して、非晶質の含水ケイ酸アルミニウム化合物(モル比(SiO/Al):12.8)を含む乾燥物を得た。
【0081】
[比較例A-1]
反応容器中でイオン交換水を攪拌しつつ、ここに、硫酸アルミニウム水溶液(0.16mol/L)と3号水ガラス水溶液(NaO:0.8mol/L、SiO:2.53mol/L)とを同時に注加し、共沈反応させた。共沈反応時の温度は30℃であり、pHは4であった。
得られた共沈物を、脱水・水洗した後、イオン交換水に再懸濁させ、得られた懸濁液を95℃にて4時間加熱しながら撹拌した。
その後、懸濁液を脱水・水洗した後、熱風乾燥器で15時間乾燥して、非晶質の含水ケイ酸アルミニウム化合物(モル比(SiO/Al):10.3)を含む乾燥物を得た。
【0082】
[実施例B-1]
反応容器中でイオン交換水を攪拌しつつ、ここに、塩化亜鉛水溶液(0.4mol/L)と1号水ガラス水溶液(NaO:0.4mol/L、SiO:0.84mol/L)とを同時に注加し、共沈反応させた。共沈反応時の温度は30℃であり、pHは6.2であった。
得られた共沈物を、脱水・水洗した後、イオン交換水に再懸濁させた。
【0083】
上記懸濁液(固形分濃度:194g/L)500mLを室温で撹拌しながら、これに、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業株式会社製、「KBE-903」)の5wt%水溶液を485mL注加した。
次いで、懸濁液をスプレー乾燥して、非晶質の含水ケイ酸亜鉛化合物(モル比(SiO/ZnO):2.3)を含む乾燥物を得た。
【0084】
[比較例B-1]
反応容器中でイオン交換水を攪拌しつつ、ここに、塩化亜鉛水溶液(0.4mol/L)と1号水ガラス水溶液(NaO:0.4mol/L、SiO:0.84mol/L)とを同時に注加し、共沈反応させた。共沈反応時の温度は30℃であり、pHは6.2であった。
得られた共沈物を、脱水・水洗した後、熱風乾燥器で15時間乾燥して、非晶質の含水ケイ酸亜鉛化合物(モル比(SiO/ZnO):2.22)を含む乾燥物を得た。
【0085】
<評価>
各実施例および比較例で得られた乾燥物について、下記に示す項目の評価を行った。参考例として、活性炭(和光純薬工業株式会社製、破砕状、0.2~1mm)および活性白土(和光純薬工業株式会社製、主成分:モンモリロナイト)についても同様の評価を行った。
評価結果を表1から表3にまとめる。
【0086】
<評価項目>
1.乾燥物1gに含まれるアミノ基量
ケルダール法により窒素含有量を定量することで、アミノ基量を求めた。窒素含有量は、硫酸と分解剤(硫酸カリウム/硫酸銅混合粉末)を用いて乾燥物を加熱分解し、乾燥物に含まれる窒素を硫酸アンモニウムに変換した後、これに、水酸化ナトリウム水溶液を加えてアルカリ性として蒸留し、発生したアンモニアをホウ酸水溶液に捕集し、滴定により求めた。
2.比表面積
マイクロトラック・ベル株式会社の「BELsorp-max」で測定した。具体的には、窒素ガスを用いた定容量式ガス吸着法で測定し、BET多点法による解析で比表面積を求めた。なお、比表面積の測定にあたり、乾燥物の前処理として、105℃で1時間の真空脱気を行った。
3.全細孔容積
マイクロトラック・ベル株式会社の「BELsorb-max」で測定した。具体的には、窒素ガスを用いた定容量式ガス吸着法で測定し、最大相対圧での1点法による最大吸着量から全細孔容積を求めた。なお、全細孔容積の測定にあたり、乾燥物の前処理として、105℃で1時間の真空脱気を行った。
4.メソ細孔容積
マイクロトラック・ベル株式会社の「BELsorb-max」で測定した。具体的には、窒素ガスを用いた定容量式ガス吸着法で測定し、BJH法による細孔分布解析でメソ細孔容積(直径が1nmから100nmの細孔の積算細孔容積)を求めた。なお、メソ細孔容積の測定にあたり、乾燥物の前処理として、105℃で1時間の真空脱気を行った。
5.SiOの含有量
重量法にて測定した。具体的には、乾燥物を塩酸と過塩素酸を用いて蒸発乾固し、残留物を濾紙にて濾別して十分に水洗後、残留物を濾紙と共に磁性るつぼに入れ、加熱して燃焼炭化し、次いで950℃で強熱し、冷却後の質量を測定しSiOの含有量(重量%)を求めた。
なお、上記モル比は、上記SiOの含有量をモル換算した値を、Mの含有量をモル換算した値で除した値である。ここで、Mの含有量は、キレート滴定法により求めた。具体的には、乾燥物に塩酸を加えて加熱溶解させ、残留物を濾紙にて濾別して十分に水洗し、この洗液と濾液とを合わせ、これをイオン交換水にて希釈後、キレート滴定法にて金属塩濃度を測定し、Mの含有量を求めた。
6.ガス吸着能(吸着率)
(1)アセトアルデヒド
乾燥物30mgを入れた1Lのテドラバッグ(GLサイエンス社、「スマートバッグPA」)に、100ppmのアセトアルデヒドガス(被検ガス)を充填し、1、60、120分間放置して吸着試験を行った後、テドラバッグ中の残留被検ガス1mlをガクロマトグラフ(島津製作所製、「GC-2014」)に導入して残留被検ガス濃度を測定した。吸着率は、下記式(1)により算出した。
吸着率={(吸着試験前の被検ガス濃度―吸着試験後の被検ガス濃度)/吸着試験前の被検ガス濃度}×100・・・式(1)
なお、ガスクロマトグラフによる測定条件は、下記のとおりである。
・キャリヤーガス:N、50ml/min
・検出器:FID検出器
・カラムオーブン温度:130℃
・試料気化室温度:200℃
・検出器温度:200℃
・カラム:SHIMADZU GlassColum FFAP+H3PO4を使用
(2)トリメチルアミン
乾燥物30mgを入れた1Lのテドラバッグに、200ppmのトリメチルアミンガス(被検ガス)を充填し、1、60、120分間放置して吸着試験を行った後、テドラバッグ中の残留被検ガス1mlをガクロマトグラフに導入して残留被検ガス濃度を測定し、上記式(1)により吸着率を算出した。
なお、ガスクロマトグラフによる測定条件は、下記のとおりである。
・キャリヤーガス:N、50ml/min
・検出器:FID検出器
・カラムオーブン温度:80℃
・試料気化室温度:130℃
・検出器温度:130℃
・カラム:SHIMADZU GlassColum Diglycerol+TetraehylenePentamine+KOHを使用
(3)アンモニア
乾燥物30mgを入れた1Lのテドラバッグに、200ppmのアンモニアガス(被検ガス)を充填し、1、60、120分間放置して吸着試験を行った後、テドラバッグ中の残留被検ガス濃度をガス検知管(ガステック社製、「3La」)で測定し、上記式(1)により吸着率を算出した。
(4)酢酸
乾燥物30mgを入れた1Lのテドラバッグに、100ppmの酢酸ガス(被検ガス)を充填し、1、60、120分間放置して吸着試験を行った後、テドラバッグ中の残留被検ガス1mlをガクロマトグラフに導入して残留被検ガス濃度を測定し、上記式(1)により吸着率を算出した。
なお、ガスクロマトグラフによる測定条件は、下記のとおりである。
・キャリヤーガス:N、60ml/min
・検出器:FID検出器
・カラムオーブン温度:150℃
・試料気化室温度:200℃
・検出器温度:200℃
・カラム:SHIMADZU GlassColum FFAP+H3PO4を使用
(5)硫化水素
乾燥物30mgを入れた1Lのテドラバッグに、100ppmの硫化水素ガス(被検ガス)を充填し、1、60、120分間放置して吸着試験を行った後、テドラバッグ中の残留被検ガス1mlをガクロマトグラフに導入して残留被検ガス濃度を測定し、上記式(1)により吸着率を算出した。
なお、ガスクロマトグラフによる測定条件は、下記のとおりである。
・キャリヤーガス:N、50ml/min
・検出器:FPD検出器
・カラムオーブン温度:60℃
・試料気化室温度:130℃
・検出器温度:130℃
・カラム:SHIMADZU GlassColumbeββ’-OxyDiPropionNitrilを使用
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
【表3】
【0090】
アミノ基量が増加するにつれ、アセトアルデヒドガスに対する吸着能が高い傾向にあるといえる。また、メソ細孔容積/全細孔容積の値が1に近いほどアセトアルデヒドガスに対する吸着能が高い傾向にあるといえる。
【0091】
各実施例において、各種ガスに対する吸着能が確認できる。金属ケイ酸塩を担体とすることで、各種ガス(所望のガス)に対する吸着能を高め得るといえる。
【0092】
<FE-SEM観察>
実施例3、比較例3、実施例4および比較例4について、電界放出型走査電子顕微鏡(日本電子株式会社製の「JSM-7600F」)による観察(2000倍)を行った。
実施例3の観察結果を図1Aに、比較例3の観察結果を図2に、実施例4の観察結果を図3Aに、比較例4の観察結果を図4に示す。
【0093】
図1Aおよび図3Aから、スプレー乾燥を行った実施例3および実施例4では、球状の粒子が得られることが確認できる。
【0094】
<安息角>
実施例3、比較例3、実施例4および比較例4について、吊下・電磁振動式安息角測定器(筒井理化学器機株式会社製、「TYPE AOR-14」)を用い、注入法にて安息角を測定した。
測定結果を表4にまとめる。
【0095】
【表4】
【0096】
<細孔分布測定>
実施例3および実施例4について、マイクロトラック・ベル株式会社の「BELsorb-max」による測定を行った。具体的には、窒素ガスを用いた定容量式ガス吸着法で測定し、BJH法による解析で微分細孔容積分布(dV/dD)を求めた。
実施例3の測定結果を図1Bに、実施例4の測定結果を図3Bに示す。
【0097】
いずれも、細孔径が10nm以下の範囲内にピークを有することが確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明のガス吸着剤は、任意の適切な用途の消臭剤、脱臭剤として用いられ得る。例えば、空気清浄機用フィルター、自動車等の内装材、壁紙、シート製品、各種繊維、塗料、樹脂成形品に用いられ得る。

図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4