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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】コンパクト容器
(51)【国際特許分類】
   A45D 33/00 20060101AFI20240109BHJP
【FI】
A45D33/00 650E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020094770
(22)【出願日】2020-05-29
(65)【公開番号】P2021186264
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】古澤 光夫
【審査官】木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-076709(JP,U)
【文献】実開昭60-002909(JP,U)
【文献】実公昭57-010252(JP,Y2)
【文献】特開2003-116629(JP,A)
【文献】米国特許第02327513(US,A)
【文献】仏国特許発明第00932902(FR,A)
【文献】特開2002-253335(JP,A)
【文献】実公昭42-021997(JP,Y1)
【文献】特開2000-232913(JP,A)
【文献】実開昭50-126499(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に向けて開口し、内容物を収容する収容凹部を有する容器本体と、
前記収容凹部を開放可能に閉塞する上蓋と、
前記収容凹部の開口を閉塞する閉位置と前記開口を開放する開位置との間を、上下方向に延在する回動軸線を中心として回動可能に設けられたフィルム状の中蓋と、
を備え、
前記容器本体および前記中蓋の少なくともいずれか一方に、前記中蓋が前記閉位置から前記開位置まで回動した際に前記中蓋を上方に向けて撓み変形させる変形部が形成されている、コンパクト容器。
【請求項2】
前記容器本体に設けられ、前記回動軸線と同軸に設けられた軸体をさらに備え、
前記中蓋に、前記軸体を挿通させる回動孔が設けられ、
前記回動孔の内周面に、係合凹部が設けられ、
前記容器本体または前記軸体に、前記係合凹部に係合する係合凸部が設けられ、
前記係合凸部が前記係合凹部に係合することによって前記中蓋が所定の回動位置に保持される、請求項1に記載のコンパクト容器。
【請求項3】
前記変形部は、前記中蓋の前記閉位置から前記開位置に向かう回動方向の前方側において前記容器本体から上方に突出し、前記閉位置から前記開位置に移動した前記中蓋を乗り上げさせる乗り上げ壁部から構成されている、請求項1または請求項2に記載のコンパクト容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンパクト容器に関する。
【背景技術】
【0002】
容器本体に収容した内容物を上方から覆う中蓋を備えたコンパクト容器が、従来から知られている。例えば下記の特許文献1には、コンパクト本体と、本体上面を閉塞する蓋体と、コンパクト本体または蓋体に設けられたコイルスプリングと、コンパクト本体に収容した化粧料の上面に載置される透明薄板と、を備えた化粧用コンパクト容器が開示されている。上記の透明薄板が中蓋に相当する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実公平7-19374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のコンパクト容器において、使用者は、化粧料の上面から透明薄板を取り外し、コイルスプリングに挿入して係止させた状態で化粧料を使用することができる。そのため、透明薄板を紛失するおそれをなくすとともに、透明薄板を机上等に置くことなく、コンパクト容器を使用することができる。ところが、透明薄板をコイルスプリングの隙間に挿入する操作が必要であり、透明薄板を開く際の操作性に改善の余地があった。また、使用者がコンパクト容器を保持した際に、透明薄板の下面に付着した化粧料が使用者の手や指に触れたり、透明薄板の位置が不安定になったりするおそれがあった。そのため、コンパクト容器の使用性についても改善の余地があった。
【0005】
本発明の一つの態様は、上記の課題を解決するためになされたものであって、中蓋を開く際の操作性および使用性に優れたコンパクト容器を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の一つの態様のコンパクト容器は、上方に向けて開口し、内容物を収容する収容凹部を有する容器本体と、前記収容凹部を開放可能に閉塞する上蓋と、前記収容凹部の開口を閉塞する閉位置と前記開口を開放する開位置との間を、上下方向に延在する回動軸線を中心として回動可能に設けられたフィルム状の中蓋と、を備え、前記容器本体および前記中蓋の少なくともいずれか一方に、前記中蓋が前記閉位置から前記開位置まで回動した際に前記中蓋を上方に向けて撓み変形させる変形部が形成されている。
【0007】
本発明の一つの態様のコンパクト容器においては、フィルム状の中蓋を上下方向に延在する回動軸線を中心として容器本体に対して回動させることによって収容凹部の開口を開放させ、内容物を使用することができる。そのため、使用者は、中蓋を容器本体から取り外し、他の保持部材に保持させる操作を行う必要がなく、中蓋を開く際の操作性を向上させることができる。さらに、中蓋は、開位置まで回動した際に容器本体および中蓋の少なくともいずれか一方に設けられた変形部によって上方に向けて撓み変形するため、例えば使用者が容器本体を手で下方から保持した場合、中蓋の下面が手から離れる方向に移動する。これにより、中蓋の下面に付着した内容物が使用者の手や指に触れにくくなる。また、中蓋の下面が変形部に当接することで発生する摩擦力によって中蓋が移動しにくくなり、中蓋の位置が安定する。これにより、コンパクト容器の使用性を向上させることができる。
【0008】
本発明の一つの態様のコンパクト容器は、前記容器本体に設けられ、前記回動軸線と同軸に設けられた軸体をさらに備え、前記中蓋に、前記軸体を挿通させる回動孔が設けられ、前記回動孔の内周面に、係合凹部が設けられ、前記容器本体または前記軸体に、前記係合凹部に係合する係合凸部が設けられ、前記係合凸部が前記係合凹部に係合することによって前記中蓋が所定の回動位置に保持される構成であってもよい。
【0009】
この構成によれば、中蓋を回動させた際に、容器本体または軸体の係合凸部が回動孔の係合凹部に係合した状態で中蓋の回動が規制され、中蓋が所定の回動位置に保持される。これにより、例えば使用者が容器本体を保持した際に中蓋が意図せずに回動することが抑制されるため、使用性をさらに高めることができる。
【0010】
本発明の一つの態様のコンパクト容器において、前記変形部は、前記中蓋の前記閉位置から開位置に向かう回動方向の前方側において前記容器本体から上方に突出し、前記閉位置から前記開位置に回動した前記中蓋を乗り上げさせる乗り上げ壁部から構成されていてもよい。
【0011】
この構成によれば、中蓋は、閉位置から開位置に回動した際に容器本体から上方に突出した乗り上げ壁部の上方に乗り上がることによって、上方に向けて撓み変形する。そのため、中蓋を円滑に撓み変形させた状態とすることができ、使用性をさらに高めることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一つの態様によれば、中蓋を開く際の操作性および使用性に優れたコンパクト容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態のコンパクト容器の平面図であって、中蓋を閉じた状態を示す。
図2図1の符号Aの個所を拡大視した平面図である。
図3図2のIII-III線に沿う回動連結部の縦断面図である。
図4】本実施形態のコンパクト容器の平面図であって、中蓋を開いた状態を示す。
図5図4の符号Bの個所を拡大視した平面図である。
図6図4のVI-VI線に沿うコンパクト容器の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係るコンパクト容器について、図1図6を用いて説明する。
本実施形態では、内容物として例えばファンデーション等の化粧料と、化粧料を塗布するためのパフ等の操作具と、を収容可能なコンパクト容器の一例を挙げる。
【0015】
なお、構成および動作については後で詳しく説明するが、本実施形態のコンパクト容器10は、上蓋12によって容器本体11の全体が開閉可能とされるとともに、中蓋14によって容器本体11の内容物収容凹部が開閉可能とされている。ただし、本明細書で用いる閉蓋状態または開蓋状態との表現は、中蓋14が閉じた状態または開いた状態を意味し、上蓋12が閉じた状態または開いた状態を意味しない。また、内容物収容凹部の開口が中蓋14によって閉塞される位置を閉位置と称し、内容物収容凹部の開口が中蓋14から開放される位置を開位置と称する。
図1および図4は、上蓋12を開いた状態のコンパクト容器10を示す。
【0016】
図1図3に示すように、本実施形態のコンパクト容器10は、内容物Cと操作具(図示略)とを収容する容器本体11と、容器本体11を開放可能に閉塞する上蓋12と、容器本体11に対して上蓋12を回動可能に連結するヒンジ部13と、内容物Cの上方に配置されるフィルム状の中蓋14と、容器本体11に対して中蓋14を回動可能に連結する回動連結部15と、を備える。
【0017】
コンパクト容器10は、平面視矩形状の容器である。なお、本実施形態のコンパクト容器10は、平面視において短辺と長辺とを有する長方形状であるが、正方形状であってもよい。また、本実施形態のコンパクト容器10は、必ずしも矩形状でなくてもよく、例えば楕円形状等、他の形状であってもよい。上蓋12を閉じた状態において、上蓋12と容器本体11とは、それぞれの中心軸線が共通軸上に位置する状態で配設される。本実施形態では、この共通軸を容器軸Oと称し、容器軸Oに沿う方向であって、上蓋12を閉じた状態において、上蓋12が位置する側を上側と称し、容器本体11が位置する側を下側と称する。また、容器軸O方向から見た平面視において、容器軸Oに交差する方向のうち、互いに直交し合う一方向を前後方向と称し、他方向を左右方向と称する。さらに、前後方向のうち、ヒンジ部13側を後方と称し、その反対側を前方と称する。
【0018】
図3に示すように、容器本体11は、本体底壁部17と、本体周壁部18と、仕切壁部19と、乗り上げ壁部20(変形部)と、中蓋位置決め用第1凸部21と、中蓋位置決め用第2凸部22と、を有する。容器本体11は、これらの本体底壁部17、本体周壁部18、仕切壁部19、乗り上げ壁部20、中蓋位置決め用第1凸部21および中蓋位置決め用第2凸部22が樹脂等の材料によって一体に形成されている。
【0019】
本体周壁部18は、平板状の本体底壁部17の外周に沿って延在し、本体底壁部17から上方に突出するように形成されている。また、仕切壁部19は、本体底壁部17の左右方向中央において前後方向に延在し、本体周壁部18と略同じ高さまで本体底壁部17から上方に突出するように形成されている。本体底壁部17と本体周壁部18と仕切壁部19とは、上方に向けて開口し、内容物Cおよび操作具をそれぞれ収容するための収容空間となる2つの収容凹部23を構成する。本実施形態においては、図6に示すように、本体周壁部18の上面は段差を有しており、本体周壁部18は、段差の低い側にあたる外周部181と、外周部181の内側に位置し、段差の高い側にあたる内周部182と、を有している。このような構成において、容器本体11は、外周部181と本体底壁部17とが一体に形成され、その内側に内周部182と仕切壁部19とが一体に形成された中枠が収容される構成であってもよい。
【0020】
本実施形態では、2つの収容凹部23のうち、左側の収容凹部23は内容物Cを収容するための内容物収容凹部25であり、右側の収容凹部23は操作具を収容するための操作具収容凹部26である。内容物収容凹部25には、例えばファンデーション等の化粧料が内容物Cとして収容される。本実施形態において、内容物Cは、中皿に充填された状態で内容物収容凹部25内に収容されている。
【0021】
操作具収容凹部26には、例えばパフ等の塗布具が操作具として収容される。また、操作具収容凹部26の底面には、コンパクト容器10内外の通気性を確保するための複数の通気孔28が形成されている。
【0022】
乗り上げ壁部20、中蓋位置決め用第1凸部21および中蓋位置決め用第2凸部22については、後で詳述する。
【0023】
上蓋12は、天壁部30と、上蓋周壁部31と、ヒンジピン受け部32と、を有する。上蓋12は、これらの天壁部30、上蓋周壁部31、およびヒンジピン受け部32が樹脂等の材料によって一体に形成されている。上蓋周壁部31は、平板状の天壁部30の外周に沿って延在し、下方に突出するように形成されている。ヒンジピン受け部32は、天壁部30の後端側に張り出して形成されている。
【0024】
上蓋12は、内容物収容凹部25および操作具収容凹部26の上部開口を開放可能に閉塞する。ヒンジピン受け部32は、左右方向に延在する孔34を有し、孔34に挿通されたヒンジピン35を支持する。上蓋12は、ヒンジピン35の中心軸Eを中心として容器本体11に対して回動する。本実施形態においては、2本のヒンジピン35が用いられているが、ヒンジピン35の数、形態、材質等の具体的構成については特に限定されない。さらに、上蓋12を容器本体11に対して回動可能に連結するヒンジ構造については、ピン以外のヒンジ構造を用いてもよい。また、天壁部30の下面には、鏡部材36が嵌め込まれている。
【0025】
本体周壁部18の前部の左右方向中央部には、後方に向けて凹む凹部38が形成され、凹部38内に本体嵌合部39が設けられている。一方、上蓋12の前部には、上蓋12が閉じた状態において本体嵌合部39に対応する位置に上蓋嵌合部40が設けられている。上蓋12が閉じた状態において、上蓋嵌合部40が本体嵌合部39に嵌合することによって、例えばコンパクト容器10が落下した際などに上蓋12が意図せずに開くことが抑制される。これら嵌合部39,40の具体的な構成は特に限定されない。さらに、凹部38内には、上蓋12を開く際に後方に押圧されることで上蓋嵌合部40と本体嵌合部39との嵌合を解除させ、上蓋嵌合部40を本体嵌合部39から離脱させるプッシュピース41が備えられている。
【0026】
中蓋14は、樹脂等の材料からなるフィルム状の部材で構成され、内容物Cの飛散や破損を抑制して内容物Cを保護する、または鏡部材36への内容物Cの付着を抑制する等の機能を有する。中蓋14は、平面視矩形状で角部がR状に丸められた形状を有する平面部42と、平面部42の左側後方の角部から外方に略半円形に張り出した連結部43と、平面部42の前側から前方に張り出した把持部44と、を有する。
【0027】
図2に示すように、連結部43には、平面視円形の回動孔46が形成されている。また、図3に示すように、容器本体11の本体底壁部17には、上方に向けて開口し、上下方向に延在するピン挿入孔47が形成されている。ピン挿入孔47の中心軸Gは回動孔46の中心と同軸上に配置され、ピン挿入孔47の内部には回動孔46を介して固定ピン48が挿入されている。中蓋14の連結部43は、本体底壁部17の上面17aと固定ピン48の頭部下面48bとの間に挟み込まれている。ただし、本体底壁部17の上面17aと固定ピン48の頭部下面48bとの間隙は、連結部43(中蓋14)の厚さよりも大きく、固定ピン48と連結部43との間には僅かなクリアランスが設けられている。本実施形態の固定ピン48は、特許請求の範囲の軸体に相当する。
【0028】
上記の構成により、図1および図4に示すように、中蓋14は、内容物収容凹部25の開口を閉塞する閉位置と、内容物収容凹部25の開口を開放する開位置との間を、固定ピン48(ピン挿入孔47)の中心軸線Gを中心として上下方向に交差する方向に沿って回動可能とされている。したがって、中蓋14を回動させるための回動連結部15は、固定ピン48と、容器本体11のピン挿入孔47と、中蓋14の回動孔46と、から構成される。また、本実施形態の場合、上下方向に延在する固定ピン48(ピン挿入孔47)の中心軸線は、中蓋14が回動する際の回動中心となる軸線であり、以下、回動軸線Gと称する。
【0029】
図4においては、図1に示す閉位置から、中蓋14を時計回りに所定の角度θだけ回動させ、開位置とした例を図示する。図1に示す閉位置から図4に示す開位置までの中蓋14が回動する角度を回動角度θと称する。本実施形態の場合、回動角度θは約120°であるが、回動角度θは特に限定されず、適宜設定することができる。
本明細書では、図4に矢印Yで示すように、回動させる側の中蓋14が閉位置から開位置に移動する方向を回動方向と称し、矢印Yの先端が向かう側を回動方向の前方と称し、矢印Yの後端側を回動方向の後方と称する。
【0030】
図2に示すように、容器本体11の本体底壁部17に、回動軸線Gを中心として径方向外側に向けて平面視半円形に突出する係合凸部50が形成されている。本実施形態の場合、2つの係合凸部50が回動軸線Gを中心とした径方向において互いに対向する位置、すなわち、回動軸線Gを中心として周方向に180°離れた位置に形成されている。また、図3に示すように、係合凸部50は、ピン挿入孔47の周縁部において、係合凸部50の上面50aが本体底壁部17の上面17aよりも高く位置するように形成されている。なお、本実施形態において、径方向は、回動軸線Gを中心とした仮想円の半径方向を示し、周方向は、回動軸線Gを中心とした仮想円の円周方向を示す。
【0031】
図2に示すように、中蓋14の回動孔46の内周面には、係合凸部50に係合する係合凹部52が形成されている。本実施形態の場合、4つの係合凹部52が形成されているが、4つの係合凹部52のうち、2つずつの係合凹部52は、回動軸線Gを中心とした径方向において互いに対向する位置、すなわち、回動軸線Gを中心として周方向に180°離れた位置に形成されている。回動軸線Gを中心とした径方向において互いに対向する位置にある2つの係合凹部52を1組の係合凹部52とすると、一つの組の係合凹部52の一方と他の組の係合凹部52の一方とは、回動軸線Gを中心として周方向に中蓋14の回動角度θだけ離れた位置に形成されている。
【0032】
2つの係合凸部50の各々は同一の大きさおよび形状を有しているが、以下では、説明の都合上、図2に示す左側の係合凸部50を第1係合凸部501と称し、右側の係合凸部50を第2係合凸部502と称する。同様に、4つの係合凹部52の各々は同一の大きさおよび形状を有しているが、以下では、説明の都合上、図2に示す左側に向けて凹む係合凹部52を第1係合凹部521と称し、第1係合凹部521から時計回りに順次、第2係合凹部522、第3係合凹部523、第4係合凹部524と称する。
【0033】
したがって、これら係合凹部52の名称を用いて上記の構成を言い換えると、第1係合凹部521と第3係合凹部523、および第2係合凹部522と第4係合凹部524がそれぞれ1組の係合凹部52であり、第2係合凹部522と第3係合凹部523とが回動軸線Gを中心として周方向に中蓋14の回動角度θだけ離れた位置に形成され、第4係合凹部524と第1係合凹部521とが回動軸線Gを中心として周方向に中蓋14の回動角度θだけ離れた位置に形成されている。
【0034】
したがって、図1に示すように、閉位置において、第1係合凸部501が第1係合凹部521に係合し、第2係合凸部502が第3係合凹部523に係合することによって、中蓋14が所定の回動位置、すなわち、閉位置に位置決めされ、その位置で保持される。また、図5に示すように、開位置においては、第1係合凸部501が第4係合凹部524に係合し、第2係合凸部502が第2係合凹部522に係合することによって、中蓋14が所定の回動位置、すなわち、開位置に位置決めされ、その位置で保持される。
【0035】
容器本体11の本体底壁部17には、上方に向けて突出する中蓋位置決め用第1凸部21が形成されている。中蓋位置決め用第1凸部21は、平面視円形の突起状に形成されている。閉位置において、中蓋位置決め用第1凸部21は、中蓋14の把持部44の左端に当接する。また、本体底壁部17には、上方に向けて突出する中蓋位置決め用第2凸部22が形成されている。中蓋位置決め用第2凸部22は、中蓋14の角部のR形状に沿った壁状に形成されている。閉位置において、中蓋位置決め用第2凸部22は、中蓋14の左側前方の角部に当接する。これら中蓋位置決め用第1凸部21および中蓋位置決め用第2凸部22によって、閉位置における中蓋14の位置が固定されるとともに、中蓋の反時計回りへの回動が規制される。また、中蓋位置決め用第1凸部21および中蓋位置決め用第2凸部22は、使用者が中蓋14を時計回りに回動させる際には中蓋14が容易に乗り越えられる程度の高さを有する。
【0036】
また、中蓋14の把持部44には、上方に向けて突出し、使用者が把持部44を把持した際に指を引っ掛けるための指掛け用凸部54が形成されている。
【0037】
図1に示すように、乗り上げ壁部20は、容器本体11の本体周壁部18のうち、中蓋14の回動方向前方側にあたる位置、具体的には、右側の本体周壁部18における前後方向の略中央から右後方の角部にわたって延在する位置に、平面視逆L字状に形成されている。図6に示すように、乗り上げ壁部20は、本体周壁部18から上方に突出するように本体周壁部18と一体に形成されている。乗り上げ壁部20は、外周部181と内周部182との段差部に位置し、内周部182の上面182aに対して傾斜した傾斜面20aを有している。
【0038】
また、図1に示すように、上蓋周壁部31には、上蓋12が閉じた状態において乗り上げ壁部20と対向する位置に、上蓋周壁部31が切り欠かれた収容溝部59が形成されている。収容溝部59は、上蓋12が閉じた状態において乗り上げ壁部20を収容可能な大きさと深さとを有する。これにより、上蓋12が閉じた状態において乗り上げ壁部20が収容溝部59内に収容されるため、上蓋12は、隙間なく容器本体11の収容凹部23を閉塞することができる。
【0039】
以下、本実施形態のコンパクト容器10において、中蓋14を開く際の手順について説明する。
図1に示すように、上蓋12を開いた後、中蓋14の閉蓋状態において、中蓋14は、平面視で内容物収容凹部25と重なる位置に配置されており、内容物収容凹部25の開口を閉塞している。このとき、図2に示すように、容器本体11の第1係合凸部501が中蓋14の第1係合凹部521に係合し、第2係合凸部502が第3係合凹部523に係合した状態にある。また、図1に示すように、中蓋14は、平面視で乗り上げ壁部20とは重なっていない。
【0040】
この状態から、使用者が中蓋14の把持部44を把持し、中蓋14を時計回りに回動させる。このとき、中蓋14は、樹脂等の材料で形成された薄いフィルム状の部材であり、容易に弾性変形するため、第1係合凸部501と第1係合凹部521との係合、および第2係合凸部502と第3係合凹部523との係合が解除されるとともに、中蓋位置決め用第1凸部21および中蓋位置決め用第2凸部22を乗り越えて、回動することができる。
【0041】
次に、図4に示すように、中蓋14を回動させた後、回動角度θに到達した時点で、中蓋14は、平面視で内容物収容凹部25と重ならない位置まで移動し、内容物収容凹部25の上部開口を開放する。このとき、図5に示すように、中蓋14の第2係合凹部522と第3係合凹部523とが回動角度θだけ離れた位置に配置され、第4係合凹部524と第1係合凹部521とが回動角度θだけ離れた位置に配置されているため、容器本体11の第1係合凸部501の位置に中蓋14の第4係合凹部524が移動し、第2係合凸部502の位置に第2係合凹部522が移動してくる。ここで、第1係合凸部501と第4係合凹部524とが係合し、第2係合凸部502と第2係合凹部522とが係合するため、中蓋14は、開位置で位置決めされ、保持される。
【0042】
このとき、図4に示すように、中蓋14は、平面視において乗り上げ壁部20と重なる位置に配置される。すなわち、平面視において中蓋14の一部が乗り上げ壁部20と重なる位置まで回動する。ここで、図6に示すように、中蓋14は、乗り上げ壁部20上に乗り上げ、内周部182と乗り上げ壁部20とに当接しつつ、回動角度θに到達するまで回動する。乗り上げ壁部20の頂部の位置が内周部182の上面182aの位置よりも高いため、中蓋14は、回動軸線Gを中心とした径方向外側が上方に位置するように撓み変形する。なお、中蓋14をどの程度撓み変形させるかについては、図6に示す乗り上げ壁部20の断面形状によって調整することが可能である。
【0043】
例えば特許文献1に示すように、従来のコンパクト容器は、容器本体に設けられた保持部材によって中蓋を内容物の使用に邪魔にならない位置に保持する構成を有していた。ところが、この構成では、中蓋を一旦取り外した後、保持部材に保持させる操作が必要であり、中蓋を開く際の操作性に改善の余地があった。また、使用者がコンパクト容器を保持した際に、中蓋が容器本体の上面から略水平方向に配置されるため、中蓋の位置が使用者の手や指に近く、中蓋の下面に付着した内容物が手や指に触れるおそれがあった。また、中蓋の一端のみが保持部材に保持された姿勢であるため、中蓋の位置が不安定になるおそれがあった。そのため、コンパクト容器の使用性にも改善の余地があった。
【0044】
これに対して、本実施形態のコンパクト容器10においては、フィルム状の中蓋14を上下方向に交差する方向に沿って容器本体11に対して回動させることによって内容物収容凹部25の上部開口を開放させ、内容物Cを取り出すことができる。そのため、使用者は、中蓋14を容器本体11から取り外し、別途設けられた保持部材に保持させる操作を行う必要がない。これにより、中蓋14を開く際の操作性を向上させることができる。
【0045】
さらに、中蓋14は、開位置まで回動した際に容器本体11上の乗り上げ壁部20によって上方に向けて撓み変形するため、例えば使用者が容器本体11を手で下方から保持した場合、中蓋14の下面が手から離れる方向に移動する。これにより、中蓋14の下面に付着した内容物Cが使用者の手や指に触れにくくなる。また、中蓋14の下面が乗り上げ壁部20に当接するため、中蓋14と乗り上げ壁部20との当接面に発生する摩擦力によって中蓋14の位置が安定する。これにより、コンパクト容器10の使用性を向上させることができる。
【0046】
また、本実施形態のコンパクト容器10は、容器本体11に係合凸部50が設けられ、中蓋14の回動孔46に係合凹部52が設けられ、係合凸部50が係合凹部52に係合する構成を有しているため、中蓋14を回動させた際に係合凸部50が係合凹部52に係合した状態で中蓋14の回動が規制され、中蓋14が所定の回動位置に保持される。これにより、例えば使用者が容器本体11を保持した際に、中蓋14が意図せずに回動することが抑制され、中蓋14が内容物Cや鏡部材36の上方に移動することが抑制されるため、使用性をさらに高めることができる。特に本実施形態の場合、2つの係合凸部50と4つの係合凹部52とを有し、閉位置と開位置のそれぞれで異なる組合せの係合凸部50と係合凹部52とが係合する構成を有しているため、閉位置と開位置の双方において、中蓋14の位置を安定させることができる。
【0047】
また、本実施形態のコンパクト容器10において、変形部が閉位置から開位置に回動した際に中蓋14を乗り上げさせる乗り上げ壁部20から構成されているため、中蓋14は、閉位置から開位置に回動した際に容器本体から上方に突出した乗り上げ壁部20の上方に乗り上がり、上方に向けて撓み変形する。そのため、中蓋14を円滑に撓み変形させることができる。また、本実施形態の乗り上げ壁部20の場合、例えば中蓋14を撓み変形させるための変形部を突起状に形成した場合に比べて、中蓋14と変形部との当接面に発生する摩擦力が大きくなるため、中蓋14の位置をより安定させることができる。これにより、コンパクト容器10の使用性をさらに高めることができる。
【0048】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば上記実施形態では、中蓋14を撓み変形させるための変形部を、連続した一つの乗り上げ壁部20として形成したが、例えば途中が途切れた複数の壁部または複数の凸部として形成されていてもよい。また、上記実施形態では、容器本体11に変形部が設けられていたが、この構成に代えて、中蓋14に変形部が設けられていてもよいし、容器本体11と中蓋14の双方に変形部が設けられていてもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、回動軸線Gを中心とした径方向外側に突出し、中蓋14の回動位置を規制する係合凸部50が、容器本体11に形成されているが、固定ピン48に形成されていてもよい。また、上記実施形態では、固定ピン48は、容器本体11とは別部材として構成されているが、容器本体11と一体に形成された軸部であってもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、内容物Cは、中皿に充填された状態で内容物収容凹部25内に収容されているが、中皿を介することなく、内容物収容凹部25内に直接収容されていてもよい。また、上記実施形態では、内容物収容凹部25と操作具収容凹部26とを備えたコンパクト容器に本発明を適用したが、内容物収容凹部25のみを備えたコンパクト容器に本発明を適用してもよい。
【0051】
その他、コンパクト容器10を構成する各部の形状、数、配置、構成材料等の具体的な記載は、上記実施形態に限ることなく、適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0052】
10 コンパクト容器
11 容器本体
12 上蓋
14 中蓋
20 乗り上げ壁部(変形部)
23 収容凹部
46 回動孔
48 固定ピン(軸体)
50 係合凸部
52 係合凹部
C 内容物
G 回動軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6