(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】水素処理装置及び原子力プラント
(51)【国際特許分類】
G21F 9/02 20060101AFI20240109BHJP
G21C 19/317 20060101ALI20240109BHJP
G21C 9/06 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
G21F9/02 541B
G21C19/317
G21C9/06
G21F9/02 541F
G21F9/02 541G
(21)【出願番号】P 2020102569
(22)【出願日】2020-06-12
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹山 大基
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正幸
(72)【発明者】
【氏名】馬渡 峻史
(72)【発明者】
【氏名】田邊 雅士
(72)【発明者】
【氏名】鴻上 弘毅
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-004892(JP,A)
【文献】特開平04-221793(JP,A)
【文献】特開2014-108401(JP,A)
【文献】特表2016-540236(JP,A)
【文献】特開2017-018905(JP,A)
【文献】特開2020-041834(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0379723(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/02
G21C 19/317
G21C 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素と接触することで還元反応を示す反応材が収容された反応管内に被処理ガスを通過させることで、前記被処理ガスに含まれる水素を除去する水素処理装置であって、
前記反応管を内包する反応容器と、この反応容器に前記被処理ガスを供給する供給配管と、前記反応容器に供給されて前記反応管を通過した処理済みガスを前記反応容器外へ排出する排出配管と、を有し、
前記反応容器が複数設置され、それぞれの前記反応容器では、前記反応材の構成、前記反応管の構成、及び前記被処理ガスの供給量の少なくとも一方が異なって構成されたことを特徴とする水素処理装置。
【請求項2】
前記反応材は、異なる性質をもつ複数種類の金属酸化物であり、
複数の反応容器の少なくとも1つが内包する反応管に収容された反応材は、その他の反応容器が内包する前記反応管に収容された前記反応材とは異なる性質の金属酸化物にて構成されたことを特徴とする請求項1に記載の水素処理装置。
【請求項3】
複数の前記反応容器の少なくとも1つが内包する反応管に収容された反応材は、その他の反応容器に内包された前記反応管に収容された前記反応材とは異なる寸法に成形されて構成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の水素処理装置。
【請求項4】
複数の前記反応容器は、供給配管と排出配管との間に直列に接続されて構成されたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の水素処理装置。
【請求項5】
複数の前記反応容器は、供給配管と排出配管との間に並列に接続され、複数の前記反応容器の少なくとも1つへ供給される被処理ガスの供給量が異なって構成されたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の水素処理装置。
【請求項6】
複数の前記反応容器は、被処理ガスを迂回可能なバイパス管に並列に接続されて構成されたことを特徴とする請求項5に記載の水素処理装置。
【請求項7】
複数の前記反応容器は、供給配管と排出配管との間に並列に接続され、
複数の前記反応容器の少なくとも1つが内包する反応管は、その他の反応容器が内包する前記反応管とは流路長が異なって構成されたことを特徴とする請求項1、5及び6のいずれか1項に記載の水素処理装置。
【請求項8】
複数の前記反応容器は、供給配管と排出配管との間に並列に接続され、
複数の前記反応容器の少なくとも1つが内包する複数本の反応管は、その他の反応容器が内包する複数本の前記反応管とは流路断面積の合計が異なって構成されたことを特徴とする請求項1、5、6及び7のいずれか1項に記載の水素処理装置。
【請求項9】
複数の前記反応容器を並列接続させる並列流路は、圧力切換え弁を含むバルブにより隔離可能に構成されたことを特徴とする請求項5乃至8のいずれか1項に記載の水素処理装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の水素処理装置における反応容器の全てが、原子炉格納容器を備えた原子炉建屋内に事前に設置されて構成されたこと特徴とする原子力プラント。
【請求項11】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の水素処理装置における反応容器の全てが運搬可能に設けられて、原子炉格納容器を備えた原子炉建屋外から前記原子炉格納容器に接続可能に構成されたこと特徴とする原子力プラント。
【請求項12】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の水素処理装置における反応容器の少なくとも1つが、原子炉格納容器を備えた原子炉建屋内に事前設置され、その他の反応容器が、運搬可能に設けられて前記原子炉建屋外から前記原子炉格納容器に接続可能に構成されたことを特徴とする原子力プラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、被処理ガスに含まれる水素を除去する水素処理装置、及びこの水素処理装置を備えた原子力プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
原子力プラントでは、炉心を内蔵する原子炉圧力容器を原子炉格納容器に格納している。原子炉格納容器には、原子炉圧力容器を包囲する上部ドライウェル及び下部ドライウェルと、上部ドライウェルとベント管を介して接続され内部に水を貯蔵したサプレッションプールを備えたウェットウェルとが形成されている。
【0003】
上述のような構成の原子炉格納容器において、原子炉事故が発生すると、原子炉格納容器内に水素が発生する。例えば、原子炉圧力容器に接続された主蒸気管等が万一破断した場合、原子炉格納容器内の上部ドライウェルに高温高圧の原子炉一次冷却材(水)が放出され、上部ドライウェル内の圧力及び温度が急激に上昇する。
【0004】
上部ドライウェルに放出された高温高圧の冷却材は、上部ドライウェル内の気体と混合し、ベント管を通してサプレッションプールにおいて吸収される。原子炉圧力容器内には、非常用炉心冷却系によりサプレッションプールの水が注入されて炉心が冷却される。この冷却水は炉心から崩壊熱を吸収し、破断した配管の破断口から上部ドライウェルへ流出し、この上部ドライウェル内の圧力及び温度は上昇して、ウェットウェルよりも高い圧力及び温度状態となる。
【0005】
軽水炉型原子力発電所の原子炉圧力容器内では、冷却材である水が放射分解され、水素ガスと酸素ガスが発生する。更に、燃料被覆管の温度が上昇する場合には、水蒸気と燃料被覆管材料のジルコニウムとの間で反応(Metal-Water反応)が生じ、短時間で水素ガスが大量に発生する。
【0006】
上述のようにして発生する水素ガスは、破断した配管の破断口から原子炉格納容器内に放出され、原子炉格納容器内の水素ガス濃度が次第に上昇する。また、水素ガスは非凝縮性であるから、原子炉格納容器内の圧力も上昇する。
【0007】
このようにして水素ガスが発生し、原子炉格納容器内の水素濃度が上昇する事態に対して何等有効な対策を採ることができず、水素ガス濃度が4vol%且つ酸素濃度が5vol%以上に上昇した場合、すなわち可燃性ガスとしての水素ガスの濃度が可燃限界を超えた場合に水素は可燃状態となる。更に水素ガス濃度が上昇すると水素爆発が発生する可能性が生じる。
【0008】
可燃性ガスである水素ガスが可燃状態となる等の事態を防止する有効な対策として、例えば、従来の沸騰水型原子力発電設備の場合には、圧力抑制式の原子炉格納容器内を窒素ガスで置換して酸素濃度を低く維持する対策がある。このような対策を実践可能な装置等を導入することによって、Metal-Water反応により短時間で大量に発生する水素ガスに対しても原子炉格納容器内が可燃性雰囲気になることを防止でき、安全性が達成される。
【0009】
また、他の対策例としては、再結合器およびブロアを有する可燃性ガス濃度抑制装置を原子炉格納容器外に設置することである。この可燃性ガス濃度抑制装置は、原子炉格納容器内の気体を原子炉格納容器外に吸引して昇温させ、気体中の水素ガスと酸素ガスを再結合させて水に戻し、残りの気体を冷却してから原子炉格納容器内へ戻すように動作する装置である。このように動作する可燃性ガス濃度抑制装置を設置することで、原子炉格納容器内の可燃性ガスの濃度上昇が抑制される。
【0010】
更に、上述の対策(装置)とは異なる別の対策例としては、例えば、水素の酸化触媒を用いて再結合反応を促進させる触媒式再結合装置を原子炉格納容器内に複数設置する技術や、活性金属を用いて水素を処理する技術等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2019-203789号公報
【文献】特開2018-112480号公報
【文献】特開2016-8839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
Metal-Water反応によって大量の水素が発生する事象下において、上述の水素と酸素の再結合による従来の水素処理技術では、低酸素状態で水素の除去を行うことが困難である。水素の除去ができない場合には原子炉格納容器内の圧力を低減することができず、事故を収束に導くことが困難になる。この場合、現行システムでは、原子炉格納容器内の雰囲気を環境に放出して原子炉格納容器内の圧力を低減し、事故を収束させることが計画されているが、同時に放射性廃棄物を環境に放出するリスクを少なからず負うことになる。
【0013】
そこで、酸素濃度が低く再結合を行うのが困難な低酸素状態下においても、水素を含有するガスから除去する方法として、水素吸蔵合金を利用する技術が提案されている。しかしながら、水素吸蔵合金が吸蔵する水素の重量は、例えば、Ti-Feの場合には合金重量の約1.8%と低く、吸蔵量はその合金重量の数%程度にすぎない。そのため 、水素吸蔵合金を利用する水素除去技術を用いて、原子炉過酷事故発生時のような大量に水素が発生する事態に対処するためには、膨大な量の水素吸蔵合金が必要になり、現実的に適用が困難になるという点で課題がある。
【0014】
また、被処理ガスから水素を除去する別な方法として、水素/酸素反応を促進する触媒を下段に、水素/窒素反応を促進する触媒を上段にそれぞれ設置して、水素を除去する方法が提案されている。しかしながら、原子炉過酷事故の発生から数時間の間、原子炉格納容器内は酸素が少ないため、触媒を処理材(水素との反応材)とする水素除去技術は必ずしも十分な効果を発揮し得ない点で課題がある。
【0015】
一方、水素を除去処理する反応材として、例えば、酸化銅(CuO)、過酸化マンガン(MnmOn)、酸化コバルト(ComOn)等のような金属酸化物、または過酸化物イオン(O2
2-)と金属とで構成される金属過酸化物を用い、水素を酸化させて除去する技術が提案されている。この技術では、反応材として金属過酸化物を用いる場合はもちろんのこと、金属酸化物を用いる場合においても、金属酸化物または金属過酸化物に含まれる酸素と水素ガスとが結合して水(H2O)を生成することができるため、外部からの酸素を必要とすることなく水素を除去することができる利点がある。
【0016】
ただし、反応材は、金属酸化物または金属過酸化物の種類によってその性質が異なる。水素との反応熱が大きいため水素と反応すると反応材の温度が高くなる性質や、水素との反応速度が低いため水素処理に時間を要する性質、低温では水素と良好に反応しない性質など様々である。
【0017】
そして、上述の金属過酸化物等を反応材として用いた水素除去技術を、原子炉格納容器内の雰囲気に含まれる水素除去に適用する場合、事故発生からの時間経過もしくはその水素除去作業の進展によって、原子炉格納容器内の温度、圧力、水素濃度などの条件が変化していくため、水素を効率的に除去するためには被処理ガスの条件に見合った流路構成や反応材の選定が必要になる。
【0018】
例えば、反応速度が大きく、発生する反応熱も大きい反応材を用いる場合は、反応材を封入した容器自体の温度が上昇してしまう。この反応材を封入した容器の温度上昇は当該容器の構造安全性を低下させる恐れがあるため好ましくない。そのため、この場合には供給する被処理ガスの流量を抑制したり、被処理ガスと反応材との接触面積を減らしたりする等の反応抑制策が求められる。また、反応速度が小さく、発生する反応熱も小さい反応材を用いる場合には、単位時間当たりの水素処理量が低下してしまうため、供給する被処理ガスの流量を増大させたり、被処理ガスと反応材との接触面積を増やしたり、反応し易い温度まで昇温させたりするなどの反応促進策が求められる。
【0019】
本発明の実施形態は、上述の事情を考慮してなされたものであり、被処理ガスの温度、圧力、水素濃度等の条件が変化しても、構造安全性を低下させることなく水素を効率的に処理できる水素処理装置、及びこの水素処理装置を備えた原子力プラントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の実施形態における水素処理装置は、水素と接触することで還元反応を示す反応材が収容された反応管内に被処理ガスを通過させることで、前記被処理ガスに含まれる水素を除去する水素処理装置であって、前記反応管を内包する反応容器と、この反応容器に前記被処理ガスを供給する供給配管と、前記反応容器に供給されて前記反応管を通過した処理済みガスを前記反応容器外へ排出する排出配管と、を有し、前記反応容器が複数設置され、それぞれの前記反応容器では、前記反応材の構成、前記反応管の構成、及び前記被処理ガスの供給量の少なくとも一方が異なって構成されたことを特徴とするものである。
【0021】
本発明の実施形態における原子力プラントは、前記発明の実施形態に記載の水素処理装置における反応容器の少なくとも1つが、原子炉格納容器を備えた原子炉建屋内に事前設置され、その他の反応容器が、運搬可能に設けられて前記原子炉建屋外から前記原子炉格納容器に接続可能に構成されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明の実施形態によれば、被処理ガスの温度、圧力、水素濃度等の条件が変化しても、構造安全性を低下させることなく水素を効率的に処理できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】第1実施形態に係る水素処理装置(据置き型)が適用された原子力プラントの原子炉建屋等を示す縦断面図。
【
図2】第1実施形態に係る水素処理装置(可搬型)が適用された原子力プラントの原子炉建屋等を示す縦断面図。
【
図4】
図3における反応容器を、一部を切り欠いて示す斜視図。
【
図6】第2実施形態に係る水素処理装置を示す系統図。
【
図7】(A)、(B)、(C)は第3実施形態に係る水素処理装置における各反応管を示す断面図。
【
図8】第4実施形態に係る水素処理装置を示す系統図。
【
図9】第5実施形態に係る水素処理装置を示す系統図。
【
図10】第6実施形態に係る水素処理装置が適用された原子力プラントの原子炉建屋等を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態を、図面に基づき説明する。
[A]第1実施形態(
図1~
図5)
図1は、第1実施形態に係る水素処理装置(据置き型)が適用された原子力プラントの原子炉建屋等を示す縦断面図である。また、
図2は、第1実施形態に係る水素処理装置(可搬型)が適用された原子力プラントの原子炉建屋等を示す縦断面図である。更に、
図3は、
図1及び
図2に示す水素処理装置を示す系統図である。このうちの
図3に示す水素処理装置10は、
図1の原子力プラントにおける原子炉建屋100に備えられた原子炉格納容器101、
図2の原子力プラントにおける原子炉建屋200に備えられた原子炉格納容器201のそれぞれの雰囲気から水素を除去するものである。
【0025】
水素処理装置10は、
図1では、複数の反応容器11(後述)の全てが原子炉建屋100に事前に設置されて原子炉格納容器101に常時接続された据置き型であり、
図2では、複数の反応容器11の全てがトラック等により運搬可能に設けられて、原子炉建屋200の外側から原子炉格納容器201に接続可能に構成された可搬型である。
【0026】
ここで、
図1に示す原子炉格納容器101は、炉心103を内蔵する原子炉圧力容器102を収納する。更に、原子炉格納容器101は、原子炉圧力容器102を包囲する上部ドライウェル104、下部ドライウェル105及びウェットウェル106を備える。ウェットウェル106には、サプレッションプール水を蓄えるサプレッションプール107が形成され、このサプレッションプール107が、ベント管108を介して上部ドライウェル104に連通している。また、原子炉圧力容器102の外側面は、生体遮蔽壁109により包囲されている。更に、原子炉圧力容器102には、図示しない主蒸気管が接続されている。なお、
図1中の符号110は、原子炉建屋に設けられた燃料プールを示す。
【0027】
図2に示す原子炉格納容器201は、炉心203を内蔵する原子炉圧力容器202を格納する。この原子炉圧力容器202は、ペデスタル204により支持されて設置される。原子炉格納容器201には、原子炉圧力容器202を包囲するドライウェル205が形成される。また、ドライウェル205は、ベント管206を介して、サプレッションプール水を蓄えたサプレッションプール207に連通している。更に、原子炉圧力容器202には、図示しない主蒸気管が接続されている。なお、符号208は、原子炉建屋200に設けられた燃料プールを示す。
【0028】
上述の原子力プラントにおいて原子炉過酷事故が発生し、原子炉圧力容器101、201内に大量の水素が発生した際に、この原子炉格納容器101、201内の水素を水素処理装置10が除去する。この水素処理装置10は、
図3及び
図4に示すように、複数本の反応管12を内包する反応容器11と、この反応容器11に被処理ガスAを供給する供給配管13と、反応容器11に供給されて反応管12を通過した処理済みガスBを反応容器11外へ排出する排出配管14と、を有して構成される。本第1実施形態では、複数台(例えば3台)の反応容器11(11A、11B、11C)が、供給配管13と排出配管14との間に直列に接続されている。
【0029】
各反応容器11のそれぞれの反応管12には、水素と接触することで還元反応を示す反応材15(
図5)が収容される。被処理ガスAが反応管12内を通過して反応材15に接触することで、被処理ガスAに含まれる水素が除去される。また、
図3に示す複数台の反応容器11(11A、11B、11C)は、供給配管13及び排出配管14を介して原子炉格納容器101、201に接続される。このうちの供給配管13には、原子炉格納容器101.201内の被処理ガスAを反応容器11に導くと共に処理済みガスBを反応容器11から原子炉格納容器101、201へ送出するブロア16と、被処理ガスAを反応容器11内へ導く際にその温度を調整する加熱ヒータ17とが設けられている。
【0030】
図4に示すように、各反応容器11(11A、11B、11C)では、容器本体19内に支持板18を用いて複数本の反応管12が支持される。それぞれの反応管12は、独立した1本の流路を構成し、反応材15を通気可能に収容する。また、
図5に示すように、反応管12は、管状の収容体20の両端部(供給配管13側及び排出配管14側)に、金網またはパンチングメタル等からなる蓋体21が取り付けられ、内部に反応材15が収容される。この反応管12のそれぞれは、例えば下面を流入口とし、上面を流出口として、前述の如く1本の流路を構成する。
【0031】
反応材15としては、例えば酸化マグネシウム、過酸化マンガン(MnmOn)、酸化コバルト(ComOn)、酸化銅(CuO)等の金属酸化物または金属過酸化物の粉体が固められたものが用いられる。金属酸化物としては、複数の酸化数を取り得る金属酸化物のうち高次の酸化数をもつものが好ましい。
【0032】
また、金属過酸化物としては、一般的には、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、モリブテン(Mo)、テクネチウム(Tc)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、カドミウム(Cd)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、ニオブ(Nb)等から選択される金属の過酸化物が好ましい。
【0033】
金属酸化物または金属過酸化物が反応材15として用いられることで、被処理ガスAに含まれる水素を酸化させて水素を除去する。この水素除去技術は、金属酸化物または金属過酸化物自体に含まれる酸素を利用するため、外部からの酸素を必要とすることなく被処理ガスAから水素を除去することができる利点がある。反応材15として金属酸化物または金属過酸化物を用いると、金属酸化物または金属過酸化物に含まれる酸素と水素とが結合して水(H2O)が生成される。
【0034】
上述のような反応管12内での反応材15による水素との反応は、制御因子によって活性化されたり抑制化されたりする。この制御因子としては、例えば、反応管12に収容される反応材15の構成(反応材15の寸法としての直径など、反応材15の性質としての反応速度など)、反応管12の構成(反応管12の流路長、複数本の反応管12の流路断面積の合計など)、反応材15と共に反応管12内に収容された水素と反応しない非反応材(ダミー材)の混合率(全体量に対してダミー材が占める比率)、被処理ガスAに含まれる水素量(即ちに水素濃度)、被処理ガスAの反応容器11への供給量、反応材15及び被処理ガスAの温度などがある。
【0035】
このうちの反応材15及び被処理ガスAの温度は、反応材15と被処理ガスAとの反応が発熱反応であり、温度が高いほど反応し易くなるので、上述の制御因子を組み合わせ適切に制御して、温度上昇速度を管理する必要がある。
【0036】
また、原子炉格納容器101、201内に溜まる被処理ガスAは、原子炉過酷事故発生後の初期には水素濃度が高く且つ圧力も高いと想定されるが、水素処理装置10による水素除去効果と外部冷却による温度低下によって、原子炉過酷事故発生後の後期には、水素濃度が低く且つ圧力も低くなると想定される。このように、水素処理装置10に流入する被処理ガスAの条件は時間の経過とともに変化する。例えば、全く同じ仕様の反応材15に対して、水素濃度の高い被処理ガスAを反応させると、発熱量が過大になり反応材15が熱暴走を起こす可能性があり、水素濃度の低い被処理ガスAを反応させると、水素の処理速度が下がるため水素処理装置10の効率が低下してしまう。
【0037】
本第1実施形態では、
図3に示すように、複数台(例えば3台)の反応容器11(11A、11B、11C)が直列に接続されると共に、これらの反応容器11が供給配管13及び排出配管14を介して原子炉格納容器101、201に接続されている。従って、原子炉過酷事故発生後に、原子炉格納容器101、201内の被処理ガスAを反応容器11に供給すると、最初に上流側である反応容器11Aに収容された反応材15が反応し、反応する位置は徐々に下流側の反応容器11B、11Cにそれぞれ収容された反応材15へと移行していく。
【0038】
そこで、複数台(例えば3台)の反応容器11(11A、11B、11C)のそれぞれに収容される反応材15は、異なる性質(例えば反応速度など)をもつ複数種類の金属酸化物または金属過酸化物であって、反応材15の構成が異なる。つまり、反応容器11A、11B、11Cの少なくとも1つが内包する反応管12に収容される反応材15は、その他の反応容器11A、11B、11Cが内包する反応管12に収容される反応材15とは異なる性質の金属酸化物または金属過酸化物にて構成されて、反応材15の構成が異なる。または、複数台(例えば3台)の反応容器11(11A、11B、11C)の少なくとも1つが内包する反応管12に収容される反応材15は、その他の反応容器11A、11B、11Cが内包する反応管12に収容される反応材15とは異なる寸法(例えば直径)に形成されて、反応材15の構成が異なる。
【0039】
例えば、原子炉過酷事故発生後の初期に反応が起こる反応容器11Aには、水素濃度が高い被処理ガスAが供給されるので、反応材15の発熱量を抑制するために、反応速度の低い反応材15、または直径が大きくて表面積の小さな反応材15が収容される。上記事故発生後の後期に反応が起こる反応容器11Cには、水素濃度の低い被処理ガスAが供給されるので、被処理ガスAの処理速度を上昇させるために、反応速度の高い反応材15、または直径が小さくて表面積の大きな反応材15が収容される。
【0040】
以上のように構成されたことから、本第1実施形態によれば、次の効果(1)を奏する。
(1)複数台(例えば3台)の反応容器11(11A、11B、11C)のそれぞれでは、反応材15の構成(例えば反応速度等の性質、直径等の寸法)が異なって構成されている。従って、例えば被処理ガスAの水素濃度が高いときには、反応材15の発熱量を抑制し得るような、反応速度の低い反応材15、または直径も大きな反応材15を備えた反応容器11へ被処理ガスAを導く。また、例えば被処理ガスAの水素濃度が低いときには、被処理ガスAの処理速度が上昇するような、反応速度の高い反応材15、または直径の小さな反応材15を備えた反応容器11へ被処理ガスAを導く。これにより、被処理ガスAの温度、圧力、水素濃度等の条件が変化しても、反応容器11の構造安全性を低下させることなく水素を効率的に除去処理することができる。
【0041】
[B]第2実施形態(
図6)
図6は、第2実施形態に係る水素処理装置を示す系統図である。この第2実施形態において第1実施形態と同様な部分については、第1実施形態と同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0042】
本第2実施形態の水素処理装置25では、複数台(例えば3台)の反応容器11(11A、11B、11C)が供給配管13と排出配管14との間に並列に接続されると共に、被処理ガスAが反応容器11A、11B、11Cを迂回可能なバイパス管26が、これらの反応容器11A、11B、11Cに並列に接続されている。そして、これらの反応容器11A、11B、11C、バイパス管26と供給配管13との間の並列流路が、バルブ27(27A、27B、27C、27D)により隔離可能に構成されている。このバルブ27の開度調整によって、反応容器11A、11B、11Cへ供給される被処理ガスAの供給量が異なって構成される。
【0043】
例えば、原子炉過酷事故発生後の初期で被処理ガスAの水素濃度が高いときには、反応材15の発熱量を抑制するために、バイパス管26につながるバルブ27Dの開度を、その他のバルブ27A、27B及び27Cの開度よりも大きく調整して、反応容器11A、11B及び11Cへ供給される被処理ガスAの供給量を減少させる。また、上記事故発生後の後期で被処理ガスAの水素濃度が低いときには、被処理ガスAの処理速度を上昇させるために、バイパス管26につながるバルブ27Dの開度を他のバルブ27A、27B及び27Cの開度よりも小さく調整して、反応容器11A、11B及び11Cへ供給する被処理ガスAの供給量を増大させて、これらの反応容器11A、11B及び11Cにより水素を除去する。
【0044】
なお、バルブ27A~27Dのそれぞれは、被処理ガスAの流体圧力により移動するスプール(不図示)によって、上述と同様に被処理ガスAの流れ方向を切り換え且つ開度を調整する圧力切換弁であってもよい。
【0045】
以上のように構成されたから、本第2実施形態によれば、次の効果(2)を奏する。
(2)複数台(例えば3台)の反応容器11(11A、11B、11C)のそれぞれでは、バルブ27(27A、27B、27C、27D)の調整により、被処理ガスAの供給量が異なって構成されている。従って、例えば被処理ガスAの水素濃度が高いときには、反応材15の発熱量を抑制するように、反応容器11ではなくバイパス管26へ被処理ガスAを導く。また、被処理ガスAの水素濃度が低いときには、被処理ガスAの処理速度を上昇させるべく、反応容器11A、11B及び11Cへ被処理ガスAを導く。これにより、被処理ガスAの温度、圧力、水素濃度等の条件が変化しても、反応容器11の構造安全性を低下させることなく水素を効率的に除去処理することができる。
【0046】
[C]第3実施形態(
図7)
図7(A)、(B)、(C)は、第3実施形態に係る水素処理装置における各反応管を示す断面図である。この第3実施形態において第1及び第2実施形態と同様な部分については、第1及び第2実施形態と同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0047】
本第3実施形態の水素処理装置30では、
図6及び
図7に示すように、複数台(例えば3台)の反応容器31(31A、31B、31C)とバイパス管26とが並列に接続されると共に、各反応容器31A、31B、31Cとバイパス管26のそれぞれの並列流路にバルブ27(27A、27B、27C、27D)が配設されている。更に、各反応容器31(31A、31B、31C)にそれぞれ内包された反応管32(32A.32B、32C)に、構成(例えば反応速度、直径)が異なる反応材33(33A、33B、33C)がそれぞれ収容されている。
【0048】
例えば、反応容器31A、31B及びバイパス管26を対象として、反応材33Aを反応速度の高い反応材とし、反応材33Bを反応速度の低い反応材とした場合、原子炉過酷事故発生後の初期で被処理ガスAの水素濃度が高いときには、反応材33の発熱量を抑制するために、バルブ27B及び27Dの開度をバルブ27Aよりも大きくして、被処理ガスAをバイパス管26及び反応容器31Bの反応材33Bへ供給する。上記事故発生後の後期で水素濃度が低いときには、被処理ガスAの処理速度を上昇させるために、バルブ27Aの開度をバルブ27Bの開度よりも大きくし、バルブ27Dを閉じて、被処理ガスAを反応容器31Aの反応材33A及び反応容器31Bの反応材33Bへ供給する。
【0049】
また、例えば反応容器31A、31C及びバイパス管26を対象として、反応材33Aを直径が大きく表面積の小さな反応材とし、反応材33Cを直径が小さくて表面積の大きな反応材とした場合、上記事故の初期で被処理ガスAの水素濃度が高いときには、反応材33の発熱量を抑制するために、バルブ27A及び27Dの開度をバルブ27Cの開度よりも大きくして、被処理ガスAをバイパス管26及び反応容器31Aへ供給する。上記事故発生後の後期で水素濃度が低いときには、被処理ガスAの処理速度を上昇させるために、バルブ27Aの開度をバルブ27Cの開度よりも大きくし、バルブ27Dを閉じて、被処理ガスAを反応容器31Aの反応材33A及び反応容器31Cの反応材33Cへ供給する。
【0050】
以上のように構成されたことから、本第3実施形態によれば、次の効果(3)を奏する。
(3)反応容器31(31A、31B、31C)では、反応材33の構成(例えば反応速度などの性質、直径などの寸法)、及び被処理ガスAの供給量が異なって構成されている。従って、例えば被処理ガスAの水素濃度が高いときには、反応材33の発熱量を抑制し得るような、例えば反応速度の低い反応材33もしくは直径の大きな反応材33を備えた反応容器31、またはバイパス管26へ被処理ガスAを供給する。また、被処理ガスAの水素濃度が低いときには、被処理ガスAの処理速度を上昇させるように、バイパス管26への被処理ガスAの供給を遮断して、例えば反応速度の高い反応材33または直径の小さな反応材33へ被処理ガスAを積極的に供給する。これにより、被処理ガスAの温度、圧力、水素濃度等の条件が変化しても、反応容器31の構造安全性を低下させることなく水素を効率的に除去処理することができる。
【0051】
[D]第4実施形態(
図8)
図8は、第4実施形態に係る水素処理装置を示す系統図である。この第4実施形態において第1及び第2実施形態と同様な部分については、第1及び第2実施形態と同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0052】
第4実施形態の水素処理装置40では、
図8に示すように、複数台(例えば3台)の反応容器41(41A、41B、41C)が供給配管13と排出配管14との間に並列に接続され、これらの反応容器41が内包する反応管42(42A、42B、42C)の流路長は、少なくとも1台の反応容器41では他の反応容器41と異なって構成されている。
【0053】
例えば、反応容器41Aの反応管42Aと反応容器41Bの反応管42Bと反応容器41Cの反応管42Cとは、流量断面積が同程度であるが、流路長は互いに異なって設定され、反応管42Aが最も長く、反応管42Cが最も短く設定されている。流路長の長い反応管42ほど、反応材15の収容量が多くなるため反応管42の圧力損失が増大する。
【0054】
従って、原子炉過酷事故発生後の初期で被処理ガスAの水素濃度が高いときには、反応材15の発熱量を抑制するために、流路長の長い反応管42Aを備える反応容器41Aへ、反応容器41B及び41Cよりも多くの被処理ガスAを供給して、ブロア16による出力制御を行なうことなく、反応容器41への被処理ガスAの供給量を減少させる。また、上記事故発生後の後期で被処理ガスAの水素濃度が低いときには、被処理ガスAの処理速度を上昇させるために、流路長の短い反応管42B、42Cをそれぞれ備える反応容器41B、41Cへ反応容器41Aよりも多く被処理ガスAを供給して、ブロア16による出力制御を行なうことなく、反応容器41への被処理ガスAの供給量を増大させる。
【0055】
以上のように構成されたことから、本第4実施形態によれば次の効果(4)を奏する。
(4)複数台の反応容器41(41A、41B、41C)のそれぞれでは、反応管42の構成(例えば流路長)が異なって構成されている。従って、例えば被処理ガスAの水素濃度が高いときに、反応材15の発熱量を抑制し得るような、例えば圧力損失の大きな流路長の長い反応管42を備えた反応容器41へ被処理ガスAをより多く導いて、反応容器41への被処理ガスAの供給量を減少させる。また、被処理ガスAの水素濃度が低いときは、被処理ガスAの処理速度が上昇するような、例えば圧力損失の小さな流路長の短い反応管42を備えた反応容器41へ被処理ガスAをより多く導いて、反応容器41への被処理ガスAの供給量を増大させる。これにより、被処理ガスAの温度、圧力、水素濃度等の条件が変化しても、反応容器41の構造安全性を低下させることなく、且つブロア16の出力制御を伴うことなく、水素を効率的に除去処理することができる。
【0056】
[E]第5実施形態(
図10)
図9は、第5実施形態に係る水素処理装置を示す系統図である。この第5実施形態において第1及び第2実施形態と同様な部分については、第1及び第2実施形態と同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0057】
第5実施形態の水素処理装置50では、
図9に示すように、複数台(例えば3台)の反応容器51(51A、51B、51C)が供給配管13と排出配管14との間に並列に接続され、これらの反応容器51が内包する複数本の反応管52(52A、52B、52C)は、それらの流路長が同程度であるが、少なくとも1台の反応容器51では他の反応容器51よりも多数本配置されて、流路断面積の合計が互いに異なって構成されている。
【0058】
例えば、反応容器51Aの反応管52Aと反応容器51Bの反応管52Bと反応容器51Cの反応管52Cとは、流路長が同程度であるが、配置本数が異なることで流路断面積の合計は異なって設定されて、反応管52Cが最も大きく、反応管52Aが最も小さい。反応管52の流量断面積の合計が大きいほど、反応管52を通過する被処理ガスAの流速が小さくなるので、反応管52の圧力損失が低下する。
【0059】
従って、原子炉過酷事故発生後の初期で被処理ガスAの水素濃度が高いときには、反応材15の発熱量を抑制するために、流路断面積の合計の小さな反応管52Aを備える反応容器51Aへ、反応容器51B及び51Cよりも多くの被処理ガスAを供給して、ブロア16による出力制御を行なうことなく、反応容器51への被処理ガスAの供給量を減少させる。また、上記事故発生後の後期で被処理ガスAの水素濃度が低いときには、被処理ガスAの処理速度を上昇させるために、流路断面積の合計の大きな反応管52B、52Cをそれぞれ備える反応容器51B、51Cへ反応容器51Aよりも多く被処理ガスAを供給して、ブロア16による出力制御を行なうことなく、反応容器51への被処理ガスAの供給量を増加させる。
【0060】
以上のように構成されたことから、本第5実施形態によれば次の効果(5)を奏する。
(5)複数台の反応容器51(51A、51B、51C)のそれぞれでは、反応管52の構成(例えば流路断面積の合計)が異なって構成されている。従って、例えば被処理ガスAの水素濃度が高いときに、反応材15の発熱量を抑制し得るような、例えば圧力損失の大きな流路断面積の合計が小さな反応管52を備えた反応容器51へ被処理ガスAをより多く導いて、反応容器51への被処理ガスAの供給量を減少させる。また、被処理ガスAの水素濃度が低いときは、被処理ガスAの処理速度が上昇するような、例えば圧力損失の小さな流路断面積の合計の大きな反応管52を備えた反応容器51へ被処理ガスAをより多く導いて、反応容器51への被処理ガスAの供給量を増大させる。これにより、被処理ガスAの温度、圧力、水素濃度等の条件が変化しても、反応容器51の構造安全性を低下させることなく、且つブロア16の出力制御を伴うことなく、水素を効率的に除去処理することができる。
【0061】
[F]第6実施形態(
図10)
図10は、第6実施形態に係る水素処理装置が適用された原子力プラントの原子炉建屋等を示す縦断面図である。この第6実施形態において第1及び第2実施形態と同様な部分については、第1及び第2実施形態と同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0062】
本第6実施形態の水素処理装置60では、複数台(例えば2台)の反応容器61(61A、61B)が並列に接続され、このうちの1台の反応容器61Aが、原子炉格納容器101を備えた原子炉建屋100に事前に常時設置された据置き型である。他の反応容器61Bは、例えばトラックなどにより運搬可能に設けられて、原子炉建屋100外から原子炉格納容器101に、必要に応じて追加して接続可能に構成された可搬型である。これらの据置き型の反応容器61Aと可搬型の反応容器61Bは、それぞれ、第1~第5実施形態に記載された、直列または並列に接続された複数台の反応容器であってもよい。
【0063】
以上のように構成されたことから、本第6実施形態によれば、次の効果(6)及び(7)を奏する。
(6)例えば、原子炉過酷事故発生後の初期には、原子炉格納容器101内の水素濃度の高い被処理ガスAを反応容器61Aに供給して、この反応容器61Aにより被処理ガスAに含まれる水素を除去させ、上記事故発生後の後期には、原子炉格納容器101内の水素濃度の低い被処理ガスAを反応容器61Bへ供給して、この反応容器61Bにより被処理ガスA中の水素を除去させるなどの使い分けを行うことができる。
【0064】
(7)可搬型の反応容器61Bは、事故の進捗(被処理ガスAの状態)に合わせて必要に応じて交換し、反応材15の構成(反応速度などの性質、直径などの寸法)や、反応管12の構成(流路長、流量断面積の合計など)を、水素を効率的に除去可能なものに選択することができる。
【0065】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができ、また、それらの置き換えや変更は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0066】
10…水素処理装置、11、11A、11B、11C…反応容器、12…反応管、13…供給配管、14…排出配管、15…反応材、25…水素処理装置、26…バイパス管、27、27A、27B、27C、27D…バルブ、30…水素処理装置、31、31A、31B、31C…反応容器、32、32A、32B、32C…反応管、33、33A、33B、33C…反応材、40…水素処理装置、41、41A、41B、41C…反応容器、42、42A、42B、42C…反応管、50…水素処理装置、51、51A、51B、51C…反応容器、52、52A、52B、52C…反応管、60…水素処理装置、61、61A、61B…反応容器、100…原子炉建屋、101…原子炉格納容器、200…原子炉建屋、201…原子炉格納容器、A…被処理ガス、B…処理済みガス