(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】ホログラム露光装置
(51)【国際特許分類】
G03H 1/04 20060101AFI20240109BHJP
G03H 1/02 20060101ALI20240109BHJP
G11B 7/135 20120101ALI20240109BHJP
G11B 7/0065 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
G03H1/04
G03H1/02
G11B7/135
G11B7/0065
(21)【出願番号】P 2020146711
(22)【出願日】2020-09-01
【審査請求日】2023-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】392026693
【氏名又は名称】株式会社NTTドコモ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121980
【氏名又は名称】沖山 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100128107
【氏名又は名称】深石 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100183438
【氏名又は名称】内藤 泰史
(72)【発明者】
【氏名】中西 美木子
(72)【発明者】
【氏名】岩村 幹生
(72)【発明者】
【氏名】森永 康夫
【審査官】小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-219540(JP,A)
【文献】特開2003-066271(JP,A)
【文献】国際公開第2017/094369(WO,A1)
【文献】特開2006-330294(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0141846(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03H 1/00 - 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲面部及び平面部を有し、前記曲面部に複数の平面領域が形成された半球レンズと、
前記半球レンズの前記平面部に配置され、入射した物体光及び参照光により干渉縞を記録するホログラム記録媒体と、
物体光及び参照光に係るレーザ光を出射するレーザ装置と、
前記レーザ装置により出射された物体光及び参照光に係る前記レーザ光が、互いに異なる方向から、前記複数の平面領域に垂直に入射し、前記ホログラム記録媒体に到達するように反射する複数のミラーと、
を備える、ホログラム露光装置。
【請求項2】
曲面部及び平面部を有し、前記曲面部に複数の平面領域が形成された半球レンズと、
前記平面部に配置され、入射した物体光及び参照光により干渉縞を記録するホログラム記録媒体と、
物体光及び参照光に係るレーザ光を出射するレーザ装置と、
前記参照光に係るレーザ光が、前記複数の平面領域に垂直に入射し、前記ホログラム記録媒体に到達するように反射する複数のミラーと、
前記物体光に係るレーザ光を、前
記平面部側から前記ホログラム記録媒体に向けて照射するための物体光用レンズと、
前記参照光に係るレーザ
光と、前記物体光用レンズの位置とが
一対一に対応するように、前記物体光用レンズの位置を移動させる移動機構部と、
を備える
、ホログラム露光装置。
【請求項3】
前記レーザ光を分割するビームスプリッタと、
前記ビームスプリッタと前記複数のミラーとの間において、分割された前記参照光に係るレーザ光のそれぞれの光路上に配置され、開閉動作を行うことによって、前記複数の平面領域のうちの選択された一つの平面領域に対し、前記参照光に係るレーザ光を入射させるシャッター
と、をさらに備える、
請求項2記載のホログラム露光装置。
【請求項4】
前記レーザ装置は、コヒーレンスが互いに異なる複数のレーザ光を出射する、請求項2記載のホログラム露光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラム露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の眼鏡型画像表示装置における画像表示方式として、例えば画像光をユーザの眼に向けて投射する網膜投射方式が知られている。しかし、網膜投射方式では、Eyebox(アイボックス)及び視野角が狭いという問題がある。Eyeboxとは、眼鏡型画像表示装置をユーザが装着した場合に、眼を動かしても画像(虚像)が視認可能な範囲である。そこで、Eyebox拡大及び視野角拡大を行う技術の一例として、透過ホログラムによって複製された光が、反射ホログラムによってEyeboxに集束するように反射される技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2020/0174255号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような手法では、Eyeboxを拡大するために一つの光を縦横(放射状)に広げて複製する必要がある。例えば、
図5に示すように、透過ホログラム500は、入射した一つの参照光を放射状に広げて複製し、反射ホログラム600側に透過する。このような透過ホログラム500は、例えば、
図6に示すように、一つの参照光と、互いに異なる方向から入射する複数の物体光とを干渉させることにより、作成される。
【0005】
ホログラムを露光する際には、特定の光のみをホログラムに入射させたい。しかしながら、ホログラムは一般的にガラスやプラスチックフィルム等の透明部材で挟んだ構成になっており、参照光又は物体光の入射角度によっては、該透明部材表面によって参照光又は物体光が反射されてしまい、参照光又は物体光がホログラムに到達しない場合がある。このような問題を改善すべく、参照光又は物体光の反射を抑制する構成(光の透過を促進する構成)が設けられる。光の透過を促進する構成としては、ホログラムと空気との屈折率差を無くすプリズムを用いた構成がある。しかしながら、プリズムを用いた構成では、参照光又は物体光がプリズムに対し垂直に入射しない場合に、波長ごとに異なる屈折率により、色収差が生じるという問題があった。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、互いに異なる方向から入射する複数の光について、反射を抑制すると共に色収差が生じることを抑制することができるホログラム露光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係るホログラム露光装置は、曲面部及び平面部を有し、曲面部に複数の平面領域が形成された半球レンズと、半球レンズの平面部に配置され、入射した物体光及び参照光により干渉縞を記録するホログラム記録媒体と、物体光及び参照光に係るレーザ光を出射するレーザ装置と、レーザ装置により出射された物体光及び参照光に係るレーザ光が、互いに異なる方向から、複数の平面領域に垂直に入射し、ホログラム記録媒体に到達するように反射する複数のミラーと、を備える。
【0008】
本開示の一態様に係るホログラム露光装置では、物体光及び参照光に係るレーザ光が何度であっても、半球レンズ内に入射し、半球レンズを経てホログラム記録媒体に入射するため、ホログラム記録媒体と空気との屈折率差によって物体光及び参照光がホログラム記録媒体において反射されてしまうことを適切に抑制することができる。また、本ホログラム露光装置では、レーザ装置により出射された物体光及び参照光に係るレーザ光が、互いに異なる方向から、半球レンズの曲面部に形成された複数の平面領域に垂直に入射して、半球レンズの平面部に配置されたホログラム記録媒体に到達するように複数のミラーによって反射される。このような構成によれば、物体光及び参照光に係るレーザ光(平行光)が、常に、半球レンズの曲面部に形成された平面領域に垂直に入射することとなるため、上述した色収差が問題とならない。以上のように、本開示の一態様に係るホログラム露光装置では、反射を抑制すると共に色収差が生じることを抑制することができる。そして、このような構成によれば、光の色収差及び屈折の影響を別途考慮することなく設計できるため、露光光学系の設計が容易になる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、反射を抑制すると共に色収差が生じることを抑制することができるホログラム露光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】ホログラム露光装置の構成を示す概略図である。
【
図2】透過ホログラムの露光に係る光路の例を示す図である。
【
図3】反射ホログラムの露光に係る光路の例を示す図である。
【
図5】従来のEyebox拡大に係る光路の例を示す図である。
【
図6】従来の透過ホログラムの露光に係る光路の例を示す図である。
【
図7】制御部のハードウェア構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。
【0012】
図1は、ホログラム露光装置1の構成を示す概略図である。ホログラム露光装置1は、複数のレーザ光によりホログラムに干渉縞を記録(露光)する装置である。ホログラム露光装置1は、露光部10と、レーザ装置20と、ビームスプリッタ30と、複数のミラー40と、空間フィルタ50と、を備える。露光部10は、半球レンズ11と、ホログラム記録媒体12と、を有する。
【0013】
ホログラム露光装置1の各構成は、3階建ての支持部材(例えば、柱、床、台、枠等)によってそれぞれ固定されてもよい。
図1において、ホログラム露光装置1の1階及び2階を四角形で示しており、ホログラム露光装置1の3階の支持部材を省略している。なお、以下の説明においては、ホログラム露光装置1の1階の長辺方向を「X方向」、ホログラム露光装置1の1階の短辺方向を「Y方向」、X方向及びY方向に直交する方向を「Z方向」として説明する場合がある。また、Z方向に関して、鉛直下向きを「下」、鉛直上向きを「上」として説明する場合がある。
【0014】
半球レンズ11は、曲面部11a及び平面部11bを有し、曲面部11aに複数の平面領域11xが形成された半球状のレンズである。半球レンズ11は、例えば、プラスチック、ガラス等の透明部材により構成され、ホログラム記録媒体12およびホログラム記録媒体12を挟んでいる透明部材と同等の屈折率で構成される。半球レンズ11の曲面部11aとは、半球の曲面に対応する面である。半球レンズ11の平面部11bとは、半球の平面(断面)に対応する面である。複数の平面領域11xとは、レーザ光の入射面となる領域である。
【0015】
複数の平面領域11xは、半球レンズ11の曲面部11aの表面に形成される。複数の平面領域11xは、半球レンズ11の平面部11bの中心から曲面部11aを見たとき、放射状に位置している。複数の平面領域11xは、例えば、半球レンズ11の曲面部11aの表面を削り取るようにして形成されてもよい。複数の平面領域11xは、ポリゴンメッシュ状に互いに連続して形成されてもよいし、互いに離間して形成されてもよい。複数の平面領域11xの数、及び面の形状は限定されない。
【0016】
半球レンズ11は、曲面部11aがZ方向の下、平面部11bがZ方向の上を向くように配置される。半球レンズ11は、例えば、ホログラム露光装置1の中央付近において、平面部11bがホログラム露光装置1の3階に固定され、曲面部11aがホログラム露光装置1の2階に露出するように配置される。半球レンズ11は、例えば、半球レンズ11を保持するための突起等を有していてもよい。
【0017】
ホログラム記録媒体12は、半球レンズ11の平面部11bに配置され、入射した物体光及び参照光により干渉縞を記録する。ホログラム記録媒体12は、例えば、透過ホログラム用途又は反射ホログラム用途の乾板又はフィルムである。ホログラム記録媒体12は、一方の表面と他方の表面とを有する。一方の表面とは、ホログラム記録媒体12が半球レンズ11の平面部11bに配置されたときに、該平面部11bに近くなる(接する)側の表面である。他方の表面とは、ホログラム記録媒体12が半球レンズ11の平面部11bに配置されたときに、該平面部11bから遠くなる側の表面である。透過ホログラムは、ホログラム記録媒体12の同一の面(例えば一方の表面)から物体光と参照光とを干渉させることにより作成される。反射ホログラムは、ホログラム記録媒体12の互いに異なる面(例えば一方の表面と他方の表面)から参照光と物体光とを干渉させることにより作成される。
【0018】
レーザ装置20は、物体光及び参照光に係るレーザ光を出射する。レーザ装置20は、一つでもよいし、複数でもよい。レーザ装置20を物体光の数だけ用いることにより、レーザ装置20は、コヒーレンスが互いに異なる複数のレーザ光を出射してもよい。レーザ装置20を複数用いる場合、物体光とそれに対応する参照光は同じレーザ装置を用いる必要がある。レーザ装置20は、ホログラム露光装置1の1階に配置される。
【0019】
ビームスプリッタ30は、レーザ装置20により出射された物体光及び参照光に係るレーザ光を複数に分割する。ビームスプリッタ30は、例えば、複数のハーフミラー、ミラー等の組合せにより構成される。ビームスプリッタ30には、レーザ装置20により出射されたレーザ光が垂直に入射する。ビームスプリッタ30は、例えば、入射したレーザ光を互いに直交する方向(X方向及びY方向)に4分割する。レーザ光の分割数は限定されない。ビームスプリッタ30は、ホログラム露光装置1の1階の中央に配置される。
【0020】
複数のミラー40は、レーザ装置20により出射された物体光及び参照光に係るレーザ光が、互いに異なる方向から、複数の平面領域11xに垂直に入射し、ホログラム記録媒体12に到達するように反射する。
【0021】
複数のミラー40は、例えば、ホログラム露光装置1の1階の複数のミラー40aと、3階の複数のミラー40bと、2階の複数のミラー40cとを含んで構成されている。複数のミラー40aは、ホログラム露光装置1の1階において、それぞれが同一の高さに配置される。同様に、複数のミラー40b及び40cは、ホログラム露光装置1の3階及び2階において、それぞれが同一の高さに配置される。このように、ホログラム露光装置1の1階、2階、及び3階に配置された複数のミラー40a,40b,40cの高さがそれぞれ揃うことにより、光軸調整の際にZ方向の調整が簡易となる。また、光軸調整のためには2つ以上のミラーにより反射する必要があるところ、本実施形態では複数のミラー40a,40b,40cのすべてが同じ階層ではなく、ホログラム露光装置1の各階層に分けて配置される。これにより、各階層には複数のミラーを配置するための十分なスペースが確保される。複数のミラー40bは、複数のミラー40aのZ方向の上に配置される。複数のミラー40cは、複数のミラー40bと半球レンズ11との間において、ホログラム露光装置1の2階に配置される。
【0022】
複数のミラー40は、物体光及び参照光に係るレーザ光を半球レンズ11に導く。
図1において、レーザ装置20は、ビームスプリッタ30に向けてレーザ光を出射する。ビームスプリッタ30は、レーザ装置20により出射されたレーザ光を互いに直交する方向(X方向及びY方向)に4分割する。4分割されるレーザ光に対応する位置にそれぞれ設けられた複数のミラー40aは、ビームスプリッタ30により分割された物体光及び参照光に係るレーザ光を複数のミラー40b(ホログラム露光装置1の3階)に向けて反射する。すなわち、各ミラー40aと各ミラー40bとは一対一で対応付いており、各ミラー40aは対応するミラー40bに向けてレーザ光を反射する。複数のミラー40bは、複数のミラー40aにより反射されたレーザ光を、複数のミラー40c(ホログラム露光装置1の2階)に向けて反射する。すなわち、各ミラー40bと各ミラー40cとは一対一で対応付いており、各ミラー40bは対応するミラー40cに向けてレーザ光を反射する。複数のミラー40cは、複数のミラー40bにより反射されたレーザ光を半球レンズ11に向けて反射する。
【0023】
空間フィルタ50は、入射した光の干渉縞を除去し、ノイズのない整形された平行光を出射する。空間フィルタ50は、例えば、集光レンズ、ピンホール、及びコリメートレンズ等の組合せにより構成される。空間フィルタ50は、複数のミラー40aと複数のミラー40bとの間に配置される。空間フィルタ50は、複数のミラー40a側から入射した物体光及び参照光に係るレーザ光について、空間フィルタ50の内部を通過させて複数のミラー40c側に出射する。
図1において、空間フィルタ50は一つのみ示されるが、例えば、ビームスプリッタ30により分割された物体光及び参照光に係るレーザ光のそれぞれの光路上に空間フィルタ50が配置されてもよい。
【0024】
図2は、透過ホログラムの露光に係る光路の例を示す図である。
図2は、複数の物体光に係るレーザ光と、一つの参照光に係るレーザ光とが、互いに異なる方向から、半球レンズ11の複数の平面領域11xに垂直に入射していることを示す。物体光及び参照光に係るレーザ光は、半球レンズ11の内部を屈折することなく進み、半球レンズ11の平面部11bの中心に集約され、ホログラム記録媒体12に到達する。
図2に示すように、ホログラム記録媒体12の一方の表面に、複数の物体光と一つの参照光とが到達して干渉することにより、ホログラム記録媒体12が透過ホログラムとして露光される。
【0025】
図3は、反射ホログラムの露光に係る光路の例を示す図である。
図3は、複数の参照光に係るレーザ光が、互いに異なる方向から、半球レンズ11の複数の平面領域11xに垂直に入射していることを示す。露光部10は、物体光用レンズ13と、移動機構部14と、をさらに有する。ホログラム露光装置1は、制御部60と、シャッター70と、をさらに備える。
【0026】
物体光用レンズ13は、物体光に係るレーザ光を、半球レンズ11の平面部11b側からホログラム記録媒体12に向けて照射するためのレンズである。物体光用レンズ13は、半球レンズ11の平面部11bよりもZ方向の上側に配置される。物体光用レンズ13は、物体光に係るレーザ光をホログラム記録媒体12の他方の表面に照射する。
【0027】
移動機構部14は、参照光に係るレーザ光の選択された一つと、物体光用レンズ13の位置とが対応するように、物体光用レンズ13の位置を移動させる。移動機構部14は、例えば、制御部60からの制御信号に従って物体光用レンズ13の位置をX方向及びY方向に移動させてもよい。
【0028】
制御部60は、各種の制御を行う回路である。制御部60は、シャッター70に制御信号を送信して、シャッター70の動作を制御する。制御部60は、移動機構部14に制御信号を送信して、移動機構部14の動作を制御する。制御部60は、例えば、参照光に係るレーザ光の選択された一つが通過するようにシャッター70の動作を制御すると共に、該参照光の選択された一つと物体光用レンズ13の位置とが一対一に対応するように、移動機構部14の動作を制御してもよい。
【0029】
シャッター70は、物体光及び参照光に係るレーザ光の光路上に配置され、制御部60から受信した制御信号に従って開閉動作を行うことにより、レーザ光の通過又は遮断を制御する。シャッター70は、例えば、ビームスプリッタ30と複数のミラー40aとの間に配置される。
図3において、シャッター70は一つのみ示されるが、物体光及び参照光に係るレーザ光のそれぞれの光路上にシャッター70が配置されてもよい。シャッター70は、例えば、物体光及び参照光に係るレーザ光を全て通過させる動作、物体光及び参照光に係るレーザ光を全て遮断する動作、物体光及び参照光に係るレーザ光を個別に遮断する動作等を行う。例えば、シャッター70は、参照光に係るレーザ光が、常に一つとなるように光路を遮断する。
【0030】
次に、本実施形態に係るホログラム露光装置1の作用効果について説明する。
【0031】
本実施形態に係るホログラム露光装置1は、曲面部11a及び平面部11bを有し、曲面部11aに複数の平面領域11xが形成された半球レンズ11と、半球レンズ11の平面部11bに配置され、入射した物体光及び参照光により干渉縞を記録するホログラム記録媒体12と、物体光及び参照光に係るレーザ光を出射するレーザ装置20と、レーザ装置20により出射された物体光及び参照光に係るレーザ光が、互いに異なる方向から、複数の平面領域11xに垂直に入射し、ホログラム記録媒体12に到達するように反射する複数のミラー40と、を備える。
【0032】
本実施形態に係るホログラム露光装置1では、物体光及び参照光に係るレーザ光が何度であっても、半球レンズ11内に入射し、半球レンズ11を経てホログラム記録媒体12に入射するため、ホログラム記録媒体12と空気との屈折率差によって物体光及び参照光がホログラム記録媒体12において反射されてしまうことを適切に抑制することができる。また、本ホログラム露光装置1では、レーザ装置20により出射された物体光及び参照光に係るレーザ光が、互いに異なる方向から、半球レンズ11の曲面部11aに形成された複数の平面領域11xに垂直に入射して、半球レンズ11の平面部11bに配置されたホログラム記録媒体12に到達するように複数のミラー40によって反射される。このような構成によれば、物体光及び参照光に係るレーザ光(平行光)が、常に、半球レンズ11の曲面部11aに形成された平面領域11xに垂直に入射することとなるため、上述した色収差が問題とならない。以上のように、本実施形態に係るホログラム露光装置1では、反射を抑制すると共に色収差が生じることを抑制することができる。そして、このような構成によれば、光の色収差及び屈折の影響を別途考慮することなく設計できるため、露光光学系の設計が容易になる。
【0033】
本実施形態に係るホログラム露光装置1において、物体光に係るレーザ光を、半球レンズ11の平面部11b側からホログラム記録媒体12に向けて照射するための物体光用レンズ13と、参照光に係るレーザ光の選択された一つと、物体光用レンズ13の位置とが対応するように、物体光用レンズ13の位置を移動させる移動機構部14と、をさらに備えてもよい。このような構成によれば、半球レンズ11の平面部11b側から物体光に係るレーザ光がホログラム記録媒体12に照射されると共に、半球レンズ11の曲面部11aの複数の平面領域11xから参照光に係るレーザ光が入射してホログラム記録媒体12に到達する。これにより、半球レンズ11の平面部11b側から入射した物体光と、半球レンズ11の曲面部11aの複数の平面領域11xから入射した参照光とが干渉し、ホログラム記録媒体12を露光することができる。また、参照光に係るレーザ光の選択された一つに対応して物体光用レンズ13が動かされることにより、それぞれの参照光の入射角度に対応する物体光の再生位置がホログラム記録媒体12に記録される。このような構成において、参照光がホログラム記録媒体12と空気との屈折率差によって、ホログラム記録媒体12の他方の表面で反射する場合には、プリズム等をホログラム記録媒体12の上に設置することが望ましい。
【0034】
本実施形態に係るホログラム露光装置1において、シャッター70は、参照光に係るレーザ光が、常に一つとなるように光路を遮断してもよい。このような構成によれば、半球レンズ11の平面部11b側から物体光に係るレーザ光がホログラム記録媒体12に照射されると共に、半球レンズ11の曲面部11aの複数の平面領域11xのうちの一つの平面領域11xから、一つの参照光に係るレーザ光が入射してホログラム記録媒体12に到達する。これにより、参照光を独立に分離させながら、ホログラム記録媒体12を露光することができる。
【0035】
本実施形態に係るホログラム露光装置1において、レーザ装置20は、コヒーレンスが互いに異なる複数のレーザ光を出射してもよい。このような構成の場合、参照光に対応する物体光は同じレーザ光源(同じコヒーレンス光)である必要がある。このような構成によれば、同様の位置に重なって形成される複数のホログラムであってもコヒーレンスが互いに異なるため、対応する参照光と物体光とが個別に干渉し、それぞれの干渉縞がホログラム記録媒体12に記録される。これにより、参照光を独立に分離させながら、参照光の干渉タイミングを調整することなく一度にホログラム記録媒体12を露光することができる。
【0036】
[変形例]
以上、本開示の実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本開示は上記実施形態に限定されるものではない。本開示はその要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0037】
実施形態では、半球レンズ11の複数の平面領域11xは、半球レンズ11の曲面部11aの表面を削り取るようにして形成されてもよいと説明したが、半球レンズと平凹レンズとを組み合わせて形成されてもよい。
図4は、変形例に係る半球レンズ110を示す図である。
図4(a)は、半球レンズ110の曲面部110aの曲率と平凹レンズ111の凹面の曲率とが同一であることを示す。
図4(b)は、半球レンズ110の曲面部110aと平凹レンズ111の凹面とが接着していることを示す。
図4において、平凹レンズ111は一つのみ示されるが、複数の平面領域11xの数に対応して平凹レンズ111が接着されてもよい。このような構成によれば、平凹レンズ111の平面が半球レンズ11の複数の平面領域11xに対応する。これにより、半球レンズ110を削り取ることなく、半球レンズ11の複数の平面領域11xに対応する領域を簡易的に形成することができる。
【0038】
最後に、ホログラム露光装置1に含まれる制御部60のハードウェア構成について、
図7を参照して説明する。上述の制御部60は、物理的には、プロセッサ1001、メモリ1002、ストレージ1003、通信装置1004、入力装置1005、出力装置1006、バス1007などを含むコンピュータ装置として構成されてもよい。
【0039】
なお、以下の説明では、「装置」という文言は、回路、デバイス、ユニットなどに読み替えることができる。制御部60のハードウェア構成は、図に示した各装置を1つ又は複数含むように構成されてもよいし、一部の装置を含まずに構成されてもよい。
【0040】
制御部60における各機能は、プロセッサ1001、メモリ1002などのハードウェア上に所定のソフトウェア(プログラム)を読み込ませることで、プロセッサ1001が演算を行い、通信装置1004による通信や、メモリ1002及びストレージ1003におけるデータの読み出し及び/又は書き込みを制御することで実現される。
【0041】
プロセッサ1001は、例えば、オペレーティングシステムを動作させてコンピュータ全体を制御する。プロセッサ1001は、周辺装置とのインターフェース、制御装置、演算装置、レジスタなどを含む中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)で構成されてもよい。例えば、制御部60におけるシャッター70に所定の制御信号を出力する等の制御機能はプロセッサ1001で実現されてもよい。
【0042】
また、プロセッサ1001は、プログラム(プログラムコード)、ソフトウェアモジュールやデータを、ストレージ1003及び/又は通信装置1004からメモリ1002に読み出し、これらに従って各種の処理を実行する。プログラムとしては、上述の実施の形態で説明した動作の少なくとも一部をコンピュータに実行させるプログラムが用いられる。例えば、制御部60におけるシャッター70に所定の制御信号を出力する等の制御機能は、メモリ1002に格納され、プロセッサ1001で動作する制御プログラムによって実現されてもよく、他の機能ブロックについても同様に実現されてもよい。上述の各種処理は、1つのプロセッサ1001で実行される旨を説明してきたが、2以上のプロセッサ1001により同時又は逐次に実行されてもよい。プロセッサ1001は、1以上のチップで実装されてもよい。なお、プログラムは、電気通信回線を介してネットワークから送信されても良い。
【0043】
メモリ1002は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(ElectricallyErasable Programmable ROM)、RAM(Random Access Memory)などの少なくとも1つで構成されてもよい。メモリ1002は、レジスタ、キャッシュ、メインメモリ(主記憶装置)などと呼ばれてもよい。メモリ1002は、本発明の一実施の形態に係る無線通信方法を実施するために実行可能なプログラム(プログラムコード)、ソフトウェアモジュールなどを保存することができる。
【0044】
ストレージ1003は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、CD-ROM(Compact Disc ROM)などの光ディスク、ハードディスクドライブ、フレキシブルディスク、光磁気ディスク(例えば、コンパクトディスク、デジタル多用途ディスク、Blu-ray(登録商標)ディスク)、スマートカード、フラッシュメモリ(例えば、カード、スティック、キードライブ)、フロッピー(登録商標)ディスク、磁気ストリップなどの少なくとも1つで構成されてもよい。ストレージ1003は、補助記憶装置と呼ばれてもよい。上述の記憶媒体は、例えば、メモリ1002及び/又はストレージ1003を含むデータベース、サーバその他の適切な媒体であってもよい。
【0045】
通信装置1004は、有線及び/又は無線ネットワークを介してコンピュータ間の通信を行うためのハードウェア(送受信デバイス)であり、例えばネットワークデバイス、ネットワークコントローラ、ネットワークカード、通信モジュールなどともいう。
【0046】
入力装置1005は、外部からの入力を受け付ける入力デバイス(例えば、キーボード、マウス、マイクロフォン、スイッチ、ボタン、センサなど)である。出力装置1006は、外部への出力を実施する出力デバイス(例えば、ディスプレイ、スピーカー、LEDランプなど)である。なお、入力装置1005及び出力装置1006は、一体となった構成(例えば、タッチパネル)であってもよい。
【0047】
また、プロセッサ1001やメモリ1002などの各装置は、情報を通信するためのバス1007で接続される。バス1007は、単一のバスで構成されてもよいし、装置間で異なるバスで構成されてもよい。
【0048】
また、制御部60は、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP:Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などのハードウェアを含んで構成されてもよく、当該ハードウェアにより、各機能ブロックの一部又は全てが実現されてもよい。例えば、プロセッサ1001は、これらのハードウェアの少なくとも1つで実装されてもよい。
【0049】
以上、本実施形態について詳細に説明したが、当業者にとっては、本実施形態が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本実施形態は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。したがって、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本実施形態に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
【0050】
本明細書で説明した各態様/実施形態は、LTE(Long Term Evolution)、LTE-A(LTE-Advanced)、SUPER 3G、IMT-Advanced、4G、5G、FRA(Future Radio Access)、W-CDMA(登録商標)、GSM(登録商標)、CDMA2000、UMB(Ultra Mobile Broad-band)、IEEE 802.11(Wi-Fi)、IEEE 802.16(WiMAX)、IEEE 802.20、UWB(Ultra-Wide Band)、Bluetooth(登録商標)、その他の適切なシステムを利用するシステム及び/又はこれらに基づいて拡張された次世代システムに適用されてもよい。
【0051】
本明細書で説明した各態様/実施形態の処理手順、シーケンス、フローチャートなどは、矛盾の無い限り、順序を入れ替えてもよい。例えば、本明細書で説明した方法については、例示的な順序で様々なステップの要素を提示しており、提示した特定の順序に限定されない。
【0052】
入出力された情報等は特定の場所(例えば、メモリ)に保存されてもよいし、管理テーブルで管理してもよい。入出力される情報等は、上書き、更新、または追記され得る。出力された情報等は削除されてもよい。入力された情報等は他の装置へ送信されてもよい。
【0053】
判定は、1ビットで表される値(0か1か)によって行われてもよいし、真偽値(Boolean:trueまたはfalse)によって行われてもよいし、数値の比較(例えば、所定の値との比較)によって行われてもよい。
【0054】
本明細書で説明した各態様/実施形態は単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよいし、実行に伴って切り替えて用いてもよい。また、所定の情報の通知(例えば、「Xであること」の通知)は、明示的に行うものに限られず、暗黙的(例えば、当該所定の情報の通知を行わない)ことによって行われてもよい。
【0055】
ソフトウェアは、ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、マイクロコード、ハードウェア記述言語と呼ばれるか、他の名称で呼ばれるかを問わず、命令、命令セット、コード、コードセグメント、プログラムコード、プログラム、サブプログラム、ソフトウェアモジュール、アプリケーション、ソフトウェアアプリケーション、ソフトウェアパッケージ、ルーチン、サブルーチン、オブジェクト、実行可能ファイル、実行スレッド、手順、機能などを意味するよう広く解釈されるべきである。
【0056】
また、ソフトウェア、命令などは、伝送媒体を介して送受信されてもよい。例えば、ソフトウェアが、同軸ケーブル、光ファイバケーブル、ツイストペア及びデジタル加入者回線(DSL)などの有線技術及び/又は赤外線、無線及びマイクロ波などの無線技術を使用してウェブサイト、サーバ、又は他のリモートソースから送信される場合、これらの有線技術及び/又は無線技術は、伝送媒体の定義内に含まれる。
【0057】
本明細書で説明した情報、信号などは、様々な異なる技術のいずれかを使用して表されてもよい。例えば、上記の説明全体に渡って言及され得るデータ、命令、コマンド、情報、信号、ビット、シンボル、チップなどは、電圧、電流、電磁波、磁界若しくは磁性粒子、光場若しくは光子、又はこれらの任意の組み合わせによって表されてもよい。
【0058】
なお、本明細書で説明した用語及び/又は本明細書の理解に必要な用語については、同一の又は類似する意味を有する用語と置き換えてもよい。
【0059】
また、本明細書で説明した情報、パラメータなどは、絶対値で表されてもよいし、所定の値からの相対値で表されてもよいし、対応する別の情報で表されてもよい。
【0060】
ユーザ端末は、当業者によって、移動端末、加入者局、モバイルユニット、加入者ユニット、ワイヤレスユニット、リモートユニット、モバイルデバイス、ワイヤレスデバイス、ワイヤレス通信デバイス、リモートデバイス、モバイル加入者局、アクセス端末、モバイル端末、ワイヤレス端末、リモート端末、ハンドセット、ユーザエージェント、モバイルクライアント、クライアント、またはいくつかの他の適切な用語で呼ばれる場合もある。
【0061】
本明細書で使用する「判断(determining)」、「決定(determining)」という用語は、多種多様な動作を包含する場合がある。「判断」、「決定」は、例えば、計算(calculating)、算出(computing)、処理(processing)、導出(deriving)、調査(investigating)、探索(looking up)(例えば、テーブル、データベースまたは別のデータ構造での探索)、確認(ascertaining)した事を「判断」「決定」したとみなす事などを含み得る。また、「判断」、「決定」は、受信(receiving)(例えば、情報を受信すること)、送信(transmitting)(例えば、情報を送信すること)、入力(input)、出力(output)、アクセス(accessing)(例えば、メモリ中のデータにアクセスすること)した事を「判断」「決定」したとみなす事などを含み得る。また、「判断」、「決定」は、解決(resolving)、選択(selecting)、選定(choosing)、確立(establishing)、比較(comparing)などした事を「判断」「決定」したとみなす事を含み得る。つまり、「判断」「決定」は、何らかの動作を「判断」「決定」したとみなす事を含み得る。
【0062】
本明細書で使用する「に基づいて」という記載は、別段に明記されていない限り、「のみに基づいて」を意味しない。言い換えれば、「に基づいて」という記載は、「のみに基づいて」と「に少なくとも基づいて」の両方を意味する。
【0063】
本明細書で「第1の」、「第2の」などの呼称を使用した場合においては、その要素へのいかなる参照も、それらの要素の量または順序を全般的に限定するものではない。これらの呼称は、2つ以上の要素間を区別する便利な方法として本明細書で使用され得る。したがって、第1および第2の要素への参照は、2つの要素のみがそこで採用され得ること、または何らかの形で第1の要素が第2の要素に先行しなければならないことを意味しない。
【0064】
「含む(include)」、「含んでいる(including)」、およびそれらの変形が、本明細書あるいは特許請求の範囲で使用されている限り、これら用語は、用語「備える(comprising)」と同様に、包括的であることが意図される。さらに、本明細書あるいは特許請求の範囲において使用されている用語「または(or)」は、排他的論理和ではないことが意図される。
【0065】
本明細書において、文脈または技術的に明らかに1つのみしか存在しない装置である場合以外は、複数の装置をも含むものとする。
【0066】
本開示の全体において、文脈から明らかに単数を示したものではなければ、複数のものを含むものとする。
【符号の説明】
【0067】
1…ホログラム露光装置、10…露光部、11…半球レンズ、11a…曲面部、11b…平面部、11x…平面領域、12…ホログラム記録媒体、13…物体光用レンズ、14…移動機構部、20…レーザ装置、40…ミラー、60…制御部、70…シャッター。